(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記蓋材を前記容器からイージーピール方式で剥離でき、かつ前記蓋材をイージーピール方式で剥離するときに、前記フランジ部と接触している部分で、前記熱接着層が前記紙基材から剥離して前記フランジ部側に残るように、前記蓋材と前記フランジ部とが貼り合わされる請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤用プレススルー包装体。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<薬剤用PTP>
本発明の薬剤用PTP(プレススルー包装体)は、容器と蓋材とを備え、前記容器が、薬剤を収容するためのポケット部と、前記蓋材と接合するフランジ部とを備えるものである。
【0012】
以下、本発明の薬剤用PTPについて、添付の図面を参照し、実施形態を示して説明する。
図1は、本発明の薬剤用PTPの第一実施形態を模式的に示す断面図である。
図1には、本実施形態の薬剤用PTP10に薬剤が内封された状態を示す。
本実施形態の薬剤用PTP10は、容器1と蓋材3と熱接着層5とを備える。熱接着層5は、容器1と蓋材3との間に配置されている。
容器1は、薬剤19を収容するための複数のポケット部15と、該複数のポケット部15の開口の周囲に設けられ、熱接着層5を介して蓋材3と接合するフランジ部17とを備える。
フランジ部17の蓋材3側の表面は平面状であり、蓋材3と密着する。
複数のポケット部15はそれぞれ、フランジ部17の蓋材3側とは反対側の表面から突出して形成されており、突出した部分の内側に、薬剤19を収容する凹部を有する。凹部は、フランジ部17の蓋材3側の表面に開口し、該開口が熱接着層5を介して蓋材3で封止されることにより、薬剤19を収容する空間が形成されている。
【0013】
(容器)
容器1としては特に限定されず、PTP用の容器として公知のものであってよく、たとえば、容器用基材シートの成形品が挙げられる。
容器用基材シートについては、特に限定するものではないが、透明熱可塑性樹脂シートが好ましく、たとえば以下のものが挙げられる。その他、公知の各種の素材が使用できる。
(a)ポリプロピレン(PP)シート、
(b)ポリ塩化ビニル(PVC)シート、
(c)環状ポリオレフィン(COC)シート、
(d)前記(a)〜(c)のいずれか2以上のシートが積層した積層シート、並びに
(e)前記(a)〜(d)からなる群から選ばれる1または2以上のシートにポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)及びポリエチレン(PE)から選ばれる1または2以上のポリマーのシートをラミネートまたは前記ポリマーをコーティングしたシート。
前記(e)のシートとしては、たとえばアクラー(登録商標)(PVC/PCTFE)、スミライト(登録商標)VSL−4610N(PVC/PVDC/PE/PVDC/PVC)等が挙げられる。
【0014】
容器1は、たとえば、前述の容器用基材シートに複数のポケット部15を成形することにより製造できる。ポケット部15の成形方法については、特に限定するものではないが、たとえばプラグアシスト成形法、真空成形法、圧空成形法、真空圧空成形法、熱プレス法等が挙げられる。
【0015】
(蓋材)
蓋材3は、紙基材31を有する。
紙基材31は、パルプにより構成された原紙と、前記原紙の少なくとも熱接着層5側の面に設けられた塗布層とを備える。塗布層はポリアクリルアミド樹脂を含む。
紙基材31において、塗布層は通常、少なくとも一部が原紙の表面下に存在する。塗布層の一部が原紙の表面上に存在していてもよい。
したがって、紙基材31中を構成している原紙には通常、塗布層に由来するポリアクリルアミド樹脂が含まれている。原紙中のポリアクリルアミド樹脂の濃度(原紙の厚さ方向における濃度)は均一でもよく、原紙の表面から内側に向かって濃度が低下していくような濃度勾配を有していてもよい。
【0016】
原紙を構成するパルプとしては、木材パルプ、非木材パルプ等が挙げられる。木材パルプとしては、針葉樹パルプ、広葉樹パルプ等が挙げられ、いずれを用いてもよい。また、蒸解方法や漂白方法には特に限定されない。非木材パルプとしては、麻パルプ、ケナフパルプ、竹パルプ等が挙げられる。これらのパルプは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0017】
原紙を構成するパルプの叩解度は、JIS P 8121−2:2012に準じて測定されるフリーネス(以下、「標準フリーネス」ともいう。)として、600mL以下であり、350mL以下が好ましい。
一般にパルプの叩解と紙力の関係については、叩解をあまりすすめない状態では紙力は得られにくく、その理由としては、パルプ繊維同士のからみが弱く、繊維間結合(水素結合)のポイントも少ないためと考えられており、ある程度叩解を進めることで紙力は向上する。パルプの標準フリーネスが前記の上限値以下であれば、原紙、ひいては紙基材31の紙力が充分に高く、蓋材3のイージーピール適性が優れる。
【0018】
前記パルプの叩解度は、下記の変則フリーネスとして、50〜500mLであることがより好ましく、100〜500mLがさらに好ましい。
変則フリーネス:パルプ懸濁液の固形分濃度を0.30%±0.01%から0.030%±0.001%に変更した以外は、JIS P 8121−2:2012に準じて測定されるフリーネス。
変則フリーネスは、測定に使用されるパルプの量が標準フリーネスの10分の1であるため、標準フリーネスよりも、叩解がある程度進んだ状態での評価に適している。たとえば変則フリーネスの770mLは、標準フリーネスの380mL程度である。
【0019】
前記パルプの変則フリーネスが前記の範囲内であれば、優れたイージーピール適性とプレススルー適性とを両立できる。
前述のように、パルプの叩解をある程度進めることで紙力は向上する。しかし、過剰に叩解を進めると逆に、繊維自体の傷みが進むため、紙力低下が起こる。
変則フリーネスが前記範囲の上限値以下であれば、紙力低下が起こり、紙基材31の破裂強度が低下し、また破れた端部からのケバも発生しにくくなるため優れたプレススルー適性が得られる。ただし、繊維同士のからみも進んでいるため、イージーピール方式での剥離時の材破は比較的起こり難くなっていると考えられる。
変則フリーネスが前記範囲の下限値以上であれば、過剰な紙力低下が生じにくく、イージーピール適性が優れる。また、叩解に要する時間が長くならず、抄紙時の脱水性も良好であり、操業効率に優れる。
【0020】
原紙は、レーヨン繊維やナイロン繊維、その他熱融着繊維など、パルプ以外の繊維材料を副資材として含んでいてもよい。
原紙は、各種の製紙用内添薬品、歩留向上剤、消泡剤、填料、着色剤等を含んでいてもよい。内添薬品としては、サイズ剤、紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、硫酸バンド、カチオン化デンプン等の各種の定着剤が挙げられる。
【0021】
原紙は、パルプスラリーを含む抄紙原料を抄紙することにより製造できる。
パルプスラリーは、パルプを水の存在下で叩解することにより得られる。叩解により得られたパルプスラリーに製紙用内添薬品等が添加され、抄紙原料が調成される。
パルプの叩解方法、叩解装置は特に限定されるものではないが、叩解効率が高いダブルディスクリファイナー(DDR)が好適に使用される。
抄紙原料の抄紙は定法により実施できる。
原紙の坪量は、紙基材31の坪量および下塗り剤の塗布量に応じて設定される。
なお、原紙の製造に使用されたパルプの叩解度(標準フリーネス、変則フリーネス)は、原紙を構成しているパルプの叩解度に等しい。
【0022】
塗布層は、ポリアクリルアミド樹脂を含む。
ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位を有する重合体である。「(メタ)アクリルアミド」は、アクリルアミドおよびメタクリルアミドの総称である。ポリアクリルアミド樹脂は、アクリルアミド単位およびメタクリルアミド単位のいずれか一方を有してもよく、両方を有してもよい。ポリアクリルアミド樹脂は、(メタ)アクリルアミド単位以外の他の単位を有していてもよい。
【0023】
ポリアクリルアミド樹脂としては、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂、カチオン性ポリアクリルアミド樹脂、両性ポリアクリルアミド樹脂、ノニオン性ポリアクリルアミド樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ、製紙分野における紙力剤等として公知のものを使用でき、たとえば特開2002−317393号公報、特開2004−231901号公報、特開2014−205938号公報等に記載のものが挙げられる。
ポリアクリルアミド樹脂は、1種を単独で用いてもよく2種以上を組み合わせて用いてもよい。入手容易性の点では、アニオン性ポリアクリルアミド樹脂が好ましい。
アニオン性ポリアクリルアミド樹脂は、カルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、それらの塩等のアニオン性官能基を含有し、たとえば(メタ)アクリルアミドとアニオン性官能基含有モノマー(アクリル酸等)との共重合体、ポリ(メタ)アクリルアミドの部分加水分解物等が挙げられる。
【0024】
ポリアクリルアミド樹脂としては、質量平均分子量(Mw)が5万〜50万であるものが好ましく、5万〜30万であるものがより好ましい。
ポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量が前記の範囲内であれば、原紙のISO2758に準じて測定される破裂強度を上昇させることなく紙基材表面の毛羽立ちを抑える効果がより優れる。質量平均分子量が前記範囲の下限値以上であれば、熱接着層5が剥離する際の蓋材3(紙基材31)の表面の毛羽立ちを抑える効果が得られやすい。質量平均分子量が前記範囲の上限値以下であれば、塗布層を形成するための塗布液(後述する塗布層用塗料)の粘度が塗布するのに充分に低く、塗布層用塗料の調製および塗布が容易である。また、塗布層用塗料中のポリアクリルアミド樹脂の濃度を高くでき、目的の塗布量が得られやすい。質量平均分子量が50万を超えるものについては、内添の紙力剤としては用いられるが、溶液の粘度が高くなり、塗布層用塗料の調製および塗布が難しく、また満足な塗布量が得られにくい。
ポリアクリルアミド樹脂の質量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリエチレンオキシド換算値である。
【0025】
塗布層は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、ポリアクリルアミド樹脂以外の他の成分を含んでもよい。
他の成分としては、特に限定するものではないが、たとえばデンプン、変性デンプン、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、カゼイン、アラビアガム、ジイソブチレン・無水マレイン酸共重合体塩、スチレン・無水マレイン酸共重合体塩等の水溶性高分子化合物、スチレン−ブタジエン共重合体エマルション、アクリル酸エステル共重合体エマルション、ウレタン樹脂、尿素樹脂、スチレン−アクリル樹脂エマルション、エチレン−アクリル樹脂エマルション等の水性高分子化合物、離型剤、消泡剤、分散剤、濡れ剤、有色染料、有色顔料、白色顔料等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
塗布層中のポリアクリルアミド樹脂の含有量は、塗布層の全質量(100質量%)に対し、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であればイージーピール適性が良好である。
【0027】
紙基材31において、熱接着層5側の面に設けられた塗布層におけるポリアクリルアミド樹脂の含有量は、0.1〜10.0g/m
2であり、0.2〜3.0g/m
2がより好ましい。熱接着層5側の面における塗布層の単位面積当たりのポリアクリルアミド樹脂の含有量が前記範囲の下限値以上であれば、イージーピール時に紙基材31(蓋材3)と熱接着層5とが良好に剥離し、紙基材31の表面の毛羽立ちや基材破壊が生じにくい。該塗布量が前記範囲の上限値以下であれば、蓋材3の破裂強度が低く抑えられ、プレススルー適性が優れる。
【0028】
紙基材31において、熱接着層5側とは反対側の面に塗布層が設けられる場合、この塗布層におけるポリアクリルアミド樹脂の含有量は特に限定されないが、10.0g/m
2以下が好ましく、0.1〜5.0g/m
2がより好ましく、0.2〜3.0g/m
2がさらに好ましい。該塗布量が前記範囲の上限値以下であれば、蓋材3の破裂強度が低く抑えられ、プレススルー適性が優れる。
【0029】
紙基材31の坪量は、18g/m
2以上であり、20g/m
2以上が好ましい。紙基材31の坪量が前記下限値以上であれば、イージーピールに耐えうる強度が得られやすく、剥離時の基材破壊が起こりにくい。
紙基材31の坪量の上限は特に限定されないが、50g/m
2以下であることが好ましく、40g/m
2以下がより好ましく、35g/m
2以下がさらに好ましい。紙基材31の坪量が前記上限値以下であれば、蓋材3の破裂強度を低く抑えることができ、PTPのポケット部から薬剤を押し出すのに必要な力が少なく、プレススルー適性に優れる。
紙基材31の坪量は、JIS P 8124:2011に準拠して測定される。原紙の坪量も同様である。
【0030】
紙基材31の密度は、0.95〜1.30g/cm
3が好ましく、1.00〜1.25g/cm
3がより好ましい。紙基材31の密度が前記下限値以上であれば、プレススルー適性がより優れる。紙基材31の密度が前記上限値以下であれば、イージーピール適性がより優れる。
紙基材31の密度は、JIS P 8118:1998に準拠して厚さを測定して、厚さと坪量の測定値から計算で求められる。
【0031】
紙基材31は、原紙の少なくとも一方の面に、ポリアクリルアミド樹脂を含む塗布液(以下、「塗布層用塗料」ともいう。)を塗布し、乾燥して塗布層を形成することにより製造できる。
塗布層用塗料が原紙の一方の面に塗布される場合、塗布層用塗料が塗布されるのは、熱接着層5が積層される側の面である。
【0032】
塗布層用塗料は、通常、液体媒体を含む。
液体媒体としては、ポリアクリルアミド樹脂を溶解するものが好ましく、たとえば水が挙げられる。
塗布層用塗料は、必要に応じて、前述の他の成分を含んでもよい。
【0033】
塗布層用塗料中のポリアクリルアミド樹脂の含有量(濃度)は、塗布層用塗料中の総固形分(100質量%)に対し、50〜100質量%が好ましく、80〜100質量%がより好ましい。総固形分は、下塗り剤から液体媒体を除いた全量であり、ポリアクリルアミド樹脂と他の成分との合計である。総固形分に対するポリアクリルアミド樹脂の含有量は、塗布層の全質量に対するポリアクリルアミド樹脂の含有量に等しい。
【0034】
原紙への塗布層用塗料の塗布量は、ポリアクリルアミド樹脂の量に応じて設定される。
原紙の熱接着層5が積層される側の面における塗布層用塗料の塗布量は、ポリアクリルアミド樹脂の量に換算して、0.1〜10g/m
2であり、0.2〜3.0g/m
2がより好ましい。ポリアクリルアミド樹脂の量に換算した下塗り剤の塗布量は、塗布層におけるポリアクリルアミド樹脂の含有量に等しい。
【0035】
原紙の熱接着層5が積層される側とは反対側の面に塗布層用塗料が塗布される場合、その塗布量は特に限定されないが、ポリアクリルアミド樹脂の量に換算して、10.0g/m
2以下が好ましく、0.1〜5.0g/m
2がより好ましく、0.2〜3.0g/m
2がさらに好ましい。
【0036】
塗布層用塗料の塗布方法としては、特に限定されず、各種公知の湿式塗布法を利用して行うことができる。たとえば抄紙機のオンマシンサイズプレス装置やトランスファーロールコーター(シムサイザー、ゲートロールコーター等)、スプレー装置等を用いて行うことができる。また、オフマシンでは、一般的な塗工装置、例えばブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、シムサイザー、ゲートロールコーター、バーコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、ツーロールコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター等を用いて塗布することができる。
操業性、生産性を考慮すれば、塗布層用塗料の塗布および乾燥は、オンマシン式で行われることが好ましい。従って、原紙を抄紙する抄紙機の形式については、長網抄紙機、短網抄紙機、円網抄紙機等、特に限定されるものではないが、オンマシンで塗工機が装備されているものを用いることが好ましい。
【0037】
塗布された塗布層用塗料は、通常、少なくとも一部が原紙に浸み込み、塗布後の原紙中にはポリアクリルアミド樹脂が含まれている。塗布層用塗料の一部が原紙に浸み込んだ場合、浸み込まなかった塗布層用塗料が塗布面上で乾燥することにより、原紙の塗布面上にポリアクリルアミド樹脂を含む層(以下、「表面樹脂層」ともいう。)が形成される。
紙基材31は、原紙の塗布面上に表面樹脂層を有していてもよく有していなくてもよい。表面樹脂層を有しない場合でも、原紙の表面およびその近傍にポリアクリルアミド樹脂が含浸しているため、優れたイージーピール適性が得られる。表面樹脂層の有無は、表面と中層部分をかみそり等で削いで、熱分解GCMS(ガスクロマトグラフ質量分析)等で確認が可能である。
原紙中のポリアクリルアミド樹脂の濃度(原紙の厚さ方向における濃度)は均一でもよく、原紙の表面から内側に向かって濃度が低下していくような濃度勾配を有していてもよい。
【0038】
表面樹脂層の形成方法としては、たとえばゲートロールコーター等のトランスファーロールコーターを用いる方法、塗布層用塗料中のポリアクリルアミド樹脂の含有量を高める方法等が挙げられる。トランスファーロールコーターを用いる場合、サイズプレス装置を用いる場合よりも塗布層用塗料が原紙に浸み込みにくいため、表面樹脂層が形成されやすく、前記のようなポリアクリルアミド樹脂の濃度勾配が形成されやすい傾向がある。また、塗布層用塗料中のポリアクリルアミド樹脂の含有量が多いほど、塗布層用塗料の粘度が高くなり、塗布層用塗料が原紙に浸み込み難くなって、表面樹脂層が形成されやすく、前記のようなポリアクリルアミド樹脂の濃度勾配が形成されやすい傾向がある。
【0039】
(熱接着層)
熱接着層5を構成する材料は、特に限定されず、各種熱接着性を発現する材料が使用でき、熱接着層5が熱接着される容器の材質や熱接着条件に応じて適宜選択される。
熱接着性を発現する材料としては、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、アクリル酸エステル重合体、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリブテン混合体等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく、2種以上を組合わせて用いてもよい。
【0040】
熱接着層5は、たとえば、上記の材料と液体媒体とを含むヒートシール剤を、蓋材3(紙基材31)の一方の面に塗布し乾燥することにより形成できる。
ヒートシール剤は、上記の材料が水に溶解または分散した水系ヒートシール剤でもよく、上記の材料が溶剤に溶解した溶剤系ヒートシール剤でもよい。
水系ヒートシール剤としては、たとえば、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体エマルション、アクリル酸エステル重合体エマルション、ポリエチレンエマルション、ポリエチレン−ポリブテン混合体エマルション、ポリ塩化ビニルエマルション、ポリ酢酸ビニルエマルション、ポリプロピレンエマルション等が挙げられる。これらのなかでも、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション、アクリル酸エステルエマルション、ポリエチレンエマルション、ポリプロピレンエマルションが、安定した剥離力を発現し、且つISO2758に準じて測定した破裂強度を上昇させることなく紙基材表面のケバ立ちを抑える効果が高いため、好ましい。
【0041】
ヒートシール剤の塗布方法としては、特に限定されず、各種公知の湿式塗布法を利用して行うことができる。たとえば塗布層用塗料の塗布方法と同様の方法が挙げられる。
乾燥設備については、シリンダードライヤーによる塗布面直接接触方式では、ドライヤーやカンバスが汚染する虞があるため、塗布面と接触しないエアードラーヤーや赤外線ヒーター等の乾燥設備による乾燥が好ましい。
また、乾燥工程と巻き取り工程の間にクーリングロールを通過させることが好ましい。
【0042】
熱接着層5の坪量(ヒートシール剤の乾燥塗布量)は、特に限定されず、熱接着層5が接着される被着体の材質やヒートシール条件に応じて適宜選択される。好ましくは0.1〜30g/m
2であり、より好ましくは0.5〜20g/m
2である。熱接着層5の坪量が0.1g/m
2以上であれば、満足な熱接着力が得られやすい。たとえば容器1のポケット部15に薬剤19を収容し、容器1のフランジ部17と蓋材3とを熱接着層5を介して接合した状態においてポケット部15を押し込んで薬剤19を押し出す際に、蓋材が剥がれにくい。熱接着層5の坪量が30g/m
2以下であれば、イージーピール時に紙基材31の破壊が発生しにくい。また、熱接着層5が曳糸性を発現しにくく、被収容物の汚染が生じにくい。
【0043】
薬剤用PTP10において、容器1のフランジ部17と蓋材3とは、蓋材3を容器1からイージーピール方式で剥離できるように貼り合わされることが好ましい。
また、この場合、フランジ部17と蓋材3との貼り合わせは、蓋材3をイージーピール方式で剥離したときに、
図2に示すように、フランジ部17と接触している部分で、熱接着層5の一部が紙基材31から剥離してフランジ部17側に残るように行われることが好ましい。
剥離時に熱接着層5がフランジ部17側に残るようであれば、紙基材31側に残った熱接着層5によって紙基材31のケバ立ちが抑えられる。
剥離時に熱接着層5がフランジ部17側に残るかどうかは、紙基材31の熱接着層5側の面におけるポリアクリルアミド樹脂の塗布量、蓋材3とフランジ部17とを貼り合わせる際の熱接着条件(加熱温度、圧力、時間等)、熱接着層5を構成する材料と被着体の材質との組み合わせ等により調整できる。
【0044】
薬剤用PTP10においては、蓋材3と熱接着層5との積層体のISO2758に準じて測定される破裂強度が、40〜200kPaであることが好ましく、50〜150kPaがより好ましく、60〜130kPaがさらに好ましい。
前記積層体の破裂強度が200kPa以下であると、薬剤19を取り出すためにポケット部15を押し込んで熱接着層5および蓋材3を押し破るのに要する力が大きくならず、非力な人でも負担が小さい。また、力の掛け具合の調節が容易であり、力を掛けたときに薬剤19を飛び出させることなく熱接着層5および蓋材3を押し破ることができる。また、取り出された薬剤19への蓋材3の付着、このような薬剤を服用することによる蓋材3の誤飲等が生じにくい。また、熱接着層5および蓋材3を押し破るために必要な力が小さいため、熱接着層5および蓋材3を押し破る際に薬剤19の変形や割れが生じにくい。特に薬剤19が顆粒状の薬剤を内包したカプセル剤の場合、カプセル剤の変形は押し出しに支障を来たす虞がある。
破裂強度が40kPa以上であると、イージーピールに耐え得る充分な強度を有し、剥離時に紙基材31の破壊が生じにくい。また、小さな衝撃で薬剤19が押し出されにくく、PTPの取り扱いが容易になる。
前記積層体の破裂強度は、紙基材31を構成するパルプのフリーネス(標準フリーネス、変則フリーネス)、紙基材31の坪量、塗布層のポリアクリルアミド樹脂の含有量(塗布層用塗料の塗布量)、熱接着層5の坪量等により調整できる。
【0045】
蓋材3と容器1との剥離強度については、上記の接着条件や貼り合わせ方法(平判、ロール)や加熱部材表面の形状(プレーン、エンボス加工)により適性範囲が変わるため特に限定しないが、たとえば下記の剥離強度が、20〜700N/mであることが好ましく、30〜450N/mであることがより好ましい。剥離強度が前記範囲の下限値以上であれば、ポケット部15を押し込んで薬剤19を取り出す際に蓋材3が剥離しにくい。剥離強度が前記範囲の上限値以下であれば、イージーピール方式での剥離時に基材破壊を来たさずに剥離できる。
剥離強度:引張試験機(例えば、テンシロンRTC−1250A、オリエンテック社製)を用いて、JIS P 8113:2006に準じて、幅15mmに断裁した薬剤用PTP10の蓋材3、容器1それぞれの端部をチャッキングして180°ピール法で剥離速度300mm/分にて測定した剥離強度。
【0046】
(PTPの製造方法)
薬剤用PTP10は、たとえば、以下の工程(α1)〜(α4)を有する製造方法により製造できる。
(α1)パルプを水の存在下で叩解してパルプスラリーを得、該パルプスラリーに製紙用内添薬品を添加して抄紙原料を調成し、該抄紙原料を抄紙することで原紙を得る工程。
(α2)原紙の少なくとも一方の面に表面樹脂層用塗料を塗布し乾燥することで紙基材31を製造し、蓋材3を得る工程。
(α3)蓋材3の一方の面(ポリアクリルアミド樹脂の塗布量が0.1〜10.0g/m
2である面)にヒートシール剤を塗布し乾燥することで熱接着層5を形成してヒートシールシートを得る工程。
(α4)容器1のポケット部15に薬剤19を収容し、該容器1に、前記ヒートシールシートを、熱接着層5側を容器1側に向け、ポケット部15の開口を封止するように重ねて熱接着し、薬剤用PTP10を得る工程。
【0047】
工程(α1)〜(α3)はそれぞれ前述の手順で実施できる。
薬剤19としては、特に限定されず、たとえば錠剤(普通錠、口腔内崩壊錠、チュアブル錠)、丸剤、坐剤、カプセル剤(硬カルセル剤、軟カプセル剤)等が挙げられる。
工程(α4)における熱圧着条件としては、特に限定されない。
【0048】
(作用効果)
従来、蓋材の基材が紙を主体とする場合、優れたイージーピール適性とプレススルー適性とを両立することは難しかった。
薬剤用PTP10にあっては、蓋材3が特定の原紙の少なくとも熱接着層5側の面にポリアクリルアミド樹脂を含む塗布層を有し、前記ポリアクリルアミド樹脂の含有量および坪量がそれぞれ特定量である紙基材31を有するため、優れたイージーピール適性とプレススルー適性とを両立できる。たとえば容器1から蓋材3を剥離する際に、紙基材31の破壊や表面の毛羽立ちが生じにくい。また、充分に少ない力でポケット部15を押し込んで蓋材3を破断させ、薬剤19を取り出すことができる。
紙基材31が破れにくいため、蓋材3を容器1からイージーピール方式で剥離する際に、一度に全体を剥離することができる。また、毛羽立ちや紙片の剥離が抑制されているため、毛羽立った部分から脱落した繊維や剥離した紙片が容器1や薬剤19に付着することを防止できる。そのため、取り出した薬剤19を服用する場合に、付着した繊維や紙片を誤飲することを防止できる。
また、蓋材3が紙を主体とするため、従来のアルミニウム箔を用いたものに比べて、蓋材を誤飲したときの人体への負荷が少ない。また、ヒートシール剤により密封されることにより埃等の異物混入を防ぐことができる。
したがって、薬剤用PTP10は、実用上極めて有用なものである。
【0049】
紙基材31の熱接着層5が積層する側の面にポリアクリルアミド樹脂を含む塗布層を有することで、蓋材3を容器1から剥離する際の蓋材3(紙基材31)の破壊や表面の毛羽立ち、表面からの紙片の脱落等を抑制できる理由は、以下のように考えられる。
ポリアクリルアミド樹脂は、分子内のアミド基が、セルロースおよびヘミセルロース分子中の水酸基との間に、あるいはポリアクリルアミド樹脂自身のアミド基との間に、水素結合を形成し、パルプ繊維間に作用する水素結合の数を増加させる。それによりパルプ繊維のネットワークの結合が強化され、容器1から蓋材3を剥離する際に、紙基材31から剥離した熱接着層5にパルプ繊維が取られるのを防ぐことができる。
ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコールや疎水化デンプン等の水溶性高分子は、製紙分野で紙力増強剤等として知られているが、本発明者らの検討によれば、ポリアクリルアミド樹脂は、他の水溶性高分子に比べて、上記のような基材破壊や毛羽立ちを抑制する効果に優れる。
また、ポリアクリルアミド樹脂は、他の水溶性高分子に比べて、水溶液の粘度が低く、安定性に優れる(水溶液がゲル化しにくい)。そのため、充分な塗布性を確保しつつポリアクリルアミド樹脂の濃度を高くすることができる。表面樹脂層中のポリアクリルアミド樹脂の濃度が高いと、片面あたりの塗布量を0.1g/m
2以上としやすい。
また、ポリアクリルアミド樹脂は、原紙の破裂強度(ISO2758に準じて測定)を上昇させにくい。そのため、原紙のプレススルー適性を損なうことなくイージーピール適性を高めることができる。
【0050】
以上、本発明の薬剤用PTPについて、実施形態を示して説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。上記実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。
たとえば、薬剤用PTPを構成する蓋材は、紙基材31を有するものであればよく、蓋材3に限定されない。
たとえば、蓋材は、紙基材31に加えて、紙基材31の熱接着層5側の面に他の層を有してもよい。他の層としては、たとえば水蒸気バリア層、酸素バリア層、印刷層、印刷適性向上層、オーバープリント層、遮光層等が挙げられる。蓋材が有する他の層は1層でもよく2層以上でもよい。紙基材31の熱接着層5側とは反対側の面に印刷層を有してもよい。印刷層上にさらにオーバープリント層を有してもよい。
また、容器1の少なくとも片面に印刷層を有してもよい。印刷層上にさらにオーバープリント層を有してもよい。
さらに容器側から視認できるように鏡像図柄の印刷、両面から個別の図柄を視認できるよう鏡像図柄、白ベタ、正像図柄を重ねて印刷することもできる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。なお、本発明はこれらの例に何ら限定されるものではない。
【0052】
<実施例1>
[紙基材の製造]
針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)80%と広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)20%を混合し、DDRにて、変則フリーネス(パルプ採取量0.3g/L)が200mLになるように叩解し、パルプスラリーを得た。該パルプスラリーに内添薬品として、パルプ質量に対し、絶乾で硫酸バンド1%、濾水性向上剤(商品名:ソフトール(登録商標)3503、油化産業社製)0.07%を添加し、抄紙原料を得た。該抄紙原料を長網抄紙機で抄紙して原紙を得た後、抄紙機に付設されたゲートロールコーターにて、下記の塗布層用塗料(A)を、片面の乾燥後の塗布量が0.4g/m
2(両面で0.8g/m
2)となるように塗布および乾燥し、オフマシンカレンダーにて平滑化処理を行って、坪量30g/m
2、密度1.05g/cm
3の紙基材を得た。
塗布層用塗料(A):アニオン性ポリアクリルアミド樹脂(質量平均分子量20万)の水溶液(荒川化学工業社製のポリマセット(登録商標)512を水で希釈してアニオン性ポリアクリルアミド樹脂濃度10質量%に調整したもの)。
【0053】
[ヒートシールシートの製造]
上記で得られた紙基材の片面に、バーコーターを用いて、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルション系ヒートシール剤(商品名:EA−H700、東洋インキ社製)を、乾燥後の塗布量が1.4g/m
2となるように塗布および乾燥して熱接着層を形成し、ヒートシールシートを得た。
【0054】
[薬剤入りPTPの製造]
以下の容器を用意した。
容器:厚さ250μmのポリ塩化ビニル樹脂フィルムシートを用いて、PTP充填包装機により当該シート上に、直径10mm、深さ5mmの薬剤収納部(ポケット部)を10個(5個×2列)エアーアシストプラグ成形法により設けた。
上記容器のポケット部に薬剤(錠剤の直径9.5mm、厚さ4mm)を充填し、上記で得られたヒートシールシート(熱接着層付き蓋材)を熱接着層側の面が容器と接するように重ね、蓋材側ロール(格子状のエンボスロール)のみ加熱された熱ロール式貼合部にて蓋材と容器を熱圧着させて、上記薬剤が封緘されたPTPを製造した。
【0055】
<実施例2>
実施例1の紙基材の製造において、パルプの変則フリーネスを460mLとした以外は実施例1と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0056】
<実施例3>
実施例2の紙基材の製造において、原紙の坪量を減らして紙基材の坪量を25g/m
2とした以外は実施例2と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0057】
<実施例4>
実施例2の紙基材の製造において、原紙の坪量を増やして紙基材の坪量を40g/m
2とした以外は実施例2と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0058】
<実施例5>
実施例2の紙基材の製造において、原紙の坪量を増やして紙基材の坪量を55g/m
2とした以外は、実施例2と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0059】
<実施例6>
実施例1の紙基材の製造において、塗布層用塗料(A)の片面の乾燥後の塗布量を3.0g/m
2(両面で6.0g/m
2)とし、紙基材の坪量が実施例1と同じになるように原紙の坪量を減らした以外は実施例1と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0060】
<比較例1>
実施例1の紙基材の製造において、パルプの変則フリーネスを770mL(通常フリーネスとして380mL)とし、塗布層用塗料(A)の片面の乾燥後の塗布量を1.1g/m
2(両面で2.2g/m
2)とし、紙基材の坪量が実施例1と同じになるように原紙の坪量を減らした以外は実施例1と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0061】
<比較例2>
実施例1の紙基材の製造において、塗布層用塗料(A)を塗布せず、紙基材の坪量が実施例1と同じになるように原紙の坪量を増やした以外は実施例1と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0062】
<比較例3>
実施例1の紙基材の製造において、塗布層用塗料(A)の片面の乾燥後の塗布量を0.05g/m
2(両面で0.1g/m
2)とし、紙基材の坪量が実施例1と同じになるように原紙の坪量を増やした以外は実施例1と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0063】
<比較例4>
実施例2の紙基材の製造において、塗布層用塗料(A)の片面の乾燥後の塗布量を1.1g/m
2(両面で2.2g/m
2)とし、原紙の坪量を減らして紙基材の坪量を14g/m
2とした以外は、実施例2と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
【0064】
<比較例5>
実施例1の紙基材の製造において、塗布層用塗料(A)の代わりに下記の塗布層用塗料(B)を用いた以外は、実施例1と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
塗布層用塗料(B):ポリビニルアルコール(商品名:PVA117、クラレ社製)の4質量%水溶液。
【0065】
<比較例6>
実施例1の紙基材の製造において、塗布層用塗料(A)の代わりに下記の塗布層用塗料(C)を用い、片面の乾燥後の塗布量を0.8g/m
2(両面で1.6g/m
2)とし、紙基材の坪量が実施例1と同じになるように原紙の坪量を減らした以外は、実施例1と同様にして紙基材、ヒートシールシートおよび薬剤入りPTPを順次製造した。
塗布層用塗料(C):疎水化デンプン(商品名:GRS−T110、王子コーンスターチ社製)の8質量%水溶液。
【0066】
表1に、実施例1〜6、比較例1〜6それぞれにおけるパルプの変則フリーネス、原紙の坪量、原紙に塗布した塗布層用塗料の種類および片面あたりの塗布量(乾燥後)、ならびに紙基材の坪量および密度をそれぞれ示す。
なお、各例における塗布層用塗料の片面あたりの塗布量(乾燥後の塗布量)は、塗布層用塗料中の水溶性高分子(アニオン性ポリアクリルアミド樹脂、ポリビニルアルコールまたは疎水化デンプン)としての塗布量に等しい。
【0067】
<評価>
実施例1〜6、比較例1〜6それぞれで得たヒートシールシート(熱接着層付き蓋材)および薬剤入りPTPについて以下の評価を行い、結果を表2に示した。
【0068】
[破裂強度の測定]
各例のヒートシールシートの破裂強度(kPa)を、破裂試験機(型式:MD200、熊谷理機工業社製)を用いて、ISO2758に準じて測定した。
【0069】
[剥離強度の測定および基材破壊の状態の評価]
上記、薬剤入りPTPの製造で得られたPTPのフランジ部分を幅15mmに断裁して、剥離強度測定用サンプルを作成した。
得られたサンプルの剥離強度(N/m)を、引張試験機(型式:テンシロンRTC1250A、オリエンテック社製)を用いて、JIS P 8113:2006に準じて、サンプルのポリ塩化ビニル樹脂フィルム、蓋材それぞれの端部をチャッキングして180°ピール法で剥離速度300mm/分で測定した。
また、剥離強度の測定の際、蓋材の基材破壊の状態を目視で確認し、以下の基準で評価した。
(剥離試験時の基材破壊の状態の評価基準)
○:基材破壊が起こらなかった。
△:蓋材を剥離できたが、ポリ塩化ビニル樹脂フィルムに紙片やケバの付着が見られ
た。
×:基材破壊が発生した。
【0070】
[薬剤押し出し力の測定]
各例のヒートシールシートと、あらかじめ直径10mmの孔を開けた容器用ポリ塩化ビニル樹脂フィルム(ポケットは未成形)とを、ヒートシールシートの熱接着層側の面がポリ塩化ビニル樹脂フィルムと接するように重ねて、熱プレス試験機を用いて、150℃、3.0kgf/cm
2、1.1秒間の熱圧着条件で熱圧着物を作成した。
次にテクスチャーアナライザー(型式:TA−XT plus、英弘精機社製)を用いて、直径20mmの孔が開けられたポリカーボネート製の樹脂板(10cm×10cm、厚さ30mm)を、孔の中心が円柱状プローブの中心と重なるようにセットした。
次に、上記樹脂板の上に、樹脂板の孔の中心に上記熱圧着物のポリ塩化ビニル樹脂フィルムに開けられた孔の中心が来るように、またポリ塩化ビニル樹脂フィルムが上になるようにセットした。
次に、テクスチャーアナライザーの円柱状プローブの先端に薬剤(錠剤の直径9.5mm、厚さ4mm)を貼り付け、プローブの下降速度300mm/分で下降させて、薬剤の押し出しに掛かった力(薬剤押し出し力)(N)を測定した。薬剤押し出し力は、プローブ先端の薬剤がPTPの熱接着層および蓋材を押し破ってPTPの下側に押し出されるのに要した力であり、薬剤押し出し力が小さいほど、プレススルー適性が優れる。なお、無理なく押し出せる力としては概ね18N以下程度と考えられる。
【0071】
[プレススルー適性およびイージーピール適性の官能評価]
得られた薬剤入りPTPについて実際に、以下の基準でプレススルー性およびイージーピール適性を官能評価した。
(プレススルー適性)
○:問題なく薬剤が押し出せた。
○’:薬剤を押し出すのにやや大きな力を要した。
△:薬剤を押し出すのに大きな力を要した。
×:蓋材が強すぎて薬剤が押し出せなかった。または、薬剤を押し出す前に蓋材が剥がれてしまった。
(イージーピール適性)
○:蓋材が問題なくイージーピールできた。
△:蓋材がイージーピールできたが、容器側に紙片やケバの付着が見られた。
×:基材破壊が起こり、イージーピールできなかった。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
表2中、剥離強度の欄の「−」は、基材破壊が発生したため、剥離強度が測定不可であったことを示す。
【0075】
上記結果に示すとおり、実施例1〜6の薬剤入りPTPは、剥離試験での剥離強度が小さかった。また、剥離試験時に基材破壊が見られず、薬剤入りPTPについて行った実際の官能評価でも同様の結果であった。これらの結果から、イージーピール適性に優れることが確認できた。
また、実施例1〜6、特に実施例1〜3、6の薬剤入りPTPに用いたヒートシールシートは、薬剤押し出し力が小さかった。薬剤押し出し力は、破裂強度とほぼ対応していた。また、薬剤入りPTPについて行った実際の官能評価でも、問題なく薬剤が押し出せた。
これらの結果から、実施例1〜6の薬剤入りPTPが、優れたイージーピール適性とプレススルー適性とを兼ね備えることが確認できた。
【0076】
一方、比較例1〜6のヒートシールシートは、剥離試験において、剥離強度が測定不可能であったり、測定できても剥離強度が実施例1〜6に比べて大きかった。また、剥離試験時に基材破壊、表面の毛羽立ちや紙片の剥離が見られ、薬剤入りPTPについて行った実際の官能評価でも同様の結果であった。