(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
弁体が設けられた弁軸と、前記弁体が接離又は近接離間する弁シート部を有する弁口オリフィスが設けられるとともに、流体が導入導出される弁室が形成された弁本体と、前記弁軸に連結されたロータ及び該ロータを回転させるためのステータを有するモータと、前記弁本体側に設けられた固定ねじ部と前記弁軸側に設けられた可動ねじ部とからなり、前記ロータの回転駆動に応じて前記弁軸の前記弁体を前記弁本体の前記弁シート部に対して昇降させるためのねじ送り機構と、前記弁軸の回転下動規制を行うための下部ストッパ機構と、を備え、
前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるときに、流体が前記弁室から前記弁口オリフィスに向かう正方向と前記弁口オリフィスから前記弁室に向かう逆方向との双方向に流されるようにされている電動弁であって、
前記弁体には、昇降方向で外径が一定の弁体側ストレート部が設けられ、前記弁シート部には、昇降方向で内径が一定の弁シート側ストレート部が設けられるとともに、
前記弁体における前記弁体側ストレート部の上側に、前記弁口オリフィスのオリフィス径よりも大きな寸法且つ昇降方向に対して垂直な平面を有する弁体側当接部が設けられており、
前記弁本体に、前記弁体側当接部と平面で当接する弁本体側当接部が設けられており、
前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるとき且つ前記正方向に流体が流されるときに、前記弁体側当接部と前記弁シート部との間に、昇降方向に前記弁体側ストレート部の長さよりも短い所定の大きさの間隙が形成されるとともに、
前記弁体側ストレート部は、前記弁体の前記弁体側当接部の下方に連接され、前記ねじ送り機構における固定ねじ部と可動ねじ部との間のバックラッシ分と前記間隙の寸法をあわせた長さ以上であり、
前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるときに、前記弁体側ストレート部の少なくとも一部と前記弁シート側ストレート部の少なくとも一部とが昇降方向で重なるようにされていることを特徴とする電動弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記した如くの従来の閉弁レスタイプの電動弁では、弁本体の弁室の一側部に冷媒入出用の第1導管が、また、弁室の下部に冷媒入出用の第2導管がそれぞれろう付け等により連結固定され、流体(冷媒)が、第1導管から弁室を介して第2導管に向かう一方向(正方向)と、第2導管から弁室を介して第1導管に向かう他方向(逆方向)との双方向に流されるようになっているが、ねじ送り機構(を構成する固定ねじ部と可動ねじ部との間)にはバックラッシ(ねじガタ)が必然的に存在するため、流体(冷媒)の流れ方向が正方向から逆方向、あるいは、逆方向から正方向に変化すると、その流体の圧力によって弁体が付勢され、当該弁体が弁シート部に対して前記バックラッシ(ねじガタ)分だけ上下動してしまう(
図7(A)、(B)参照)。
【0006】
また、上記従来の電動弁では、通常、弁口オリフィスを流れる流体の通過流量を制御する弁体が逆円錐台面ないしは逆円錐面(テーパ面)で構成されている。そのため、上述のように流体の流れ方向の変化に応じて弁体が弁シート部に対して上下動してしまうと、弁体が原点位置(最下降位置ともいい、モータに対する供給パルス数が0パルスとされる位置)にあるときに、その流体の流れ方向の変化前後で、弁口オリフィスを流れる流体の通過流量(0パルス流量ともいう)が変化してしまうといった課題が生じる(
図8参照)。
【0007】
また、上記従来の電動弁では、通常、組立時の弁体の原点位置出しにおいて、弁体のテーパ面を弁シート部に当接させて基準位置を形成し、その基準位置から弁体を弁シート部に対してリフトさせて弁体の原点位置出しを行っている。すなわち、弁体のテーパ面が弁体の原点位置出しの基準面とされている(詳細は、特許文献1等参照)。そのため、原点位置における弁体と弁シート部との間の前記間隙の寸法精度が、弁体のテーパ面の部品精度(加工精度)に依存することとなり、概して前記間隙の寸法ばらつきが大きくなって、流量特性(例えば、中間開度での流量の変曲点)がばらつく可能性がある。
【0008】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、弁体が最下降位置にあるときの、流体(冷媒)の流れ方向の変化に伴う流量変化を抑えることのできる電動弁、及びその組立方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的とするところは、原点位置における弁体と弁シート部との間に形成される間隙の寸法ばらつき、ひいては、流量特性のばらつきを抑えることのできる電動弁、及びその組立方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記する課題を解決するために、本発明に係る電動弁は、弁体が設けられた弁軸と、前記弁体が接離又は近接離間する弁シート部を有する弁口オリフィスが設けられるとともに、流体が導入導出される弁室が形成された弁本体と、前記弁軸に連結されたロータ及び該ロータを回転させるためのステータを有するモータと、前記弁本体側に設けられた固定ねじ部と前記弁軸側に設けられた可動ねじ部とからなり、前記ロータの回転駆動に応じて前記弁軸の前記弁体を前記弁本体の前記弁シート部に対して昇降させるためのねじ送り機構と、前記弁軸の回転下動規制を行うための下部ストッパ機構と、を備え、前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるときに、流体が前記弁室から前記弁口オリフィスに向かう正方向と前記弁口オリフィスから前記弁室に向かう逆方向との双方向に流されるようにされており、前記弁体には、昇降方向で外径が一定の弁体側ストレート部が設けられ、前記弁シート部には、昇降方向で内径が一定の弁シート側ストレート部が設けられるとともに、前記弁体における前記弁体側ストレート部の上側に、前記弁口オリフィスのオリフィス径よりも大きな寸法且つ昇降方向に対して垂直な
平面を有する弁体側当接部が設けられており、
前記弁本体に、前記弁体側当接部と平面で当接する弁本体側当接部が設けられており、前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるとき且つ前記正方向に流体が流されるときに、前記弁体側当接部と前記弁シート部との間に、昇降方向に
前記弁体側ストレート部の長さよりも短い所定の大きさの間隙が形成されるとともに、前記弁体側ストレート部は、前記弁体の前記弁体側当接部の下方に連接され、前記ねじ送り機構における固定ねじ部と可動ねじ部との間のバックラッシ分と前記間隙の寸法をあわせた長さ以上であ
り、前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるときに、前記弁体側ストレート部の少なくとも一部と前記弁シート側ストレート部の少なくとも一部とが昇降方向で重なるようにされていることを特徴としている。
【0011】
好ましい態様では、
前記弁体側ストレート部は、前記バックラッシ分と前記間隙の寸法をあわせた長さである。
【0014】
前記弁シート部及び前記弁口オリフィスは、好ましくは、前記弁本体の一部に形成される。
【0015】
前記弁シート部及び前記弁口オリフィスは、好ましくは、前記弁本体の一部に形成された嵌挿穴に内挿固定されたシート部材に形成される。
【0016】
本発明に係る電動弁の組立方法は、弁体が設けられた弁軸と、該弁軸が軸線方向に相対移動可能及び相対回転可能な状態で内挿される円筒部を有するガイドブッシュと、前記弁体が接離又は近接離間する弁シート部を有する弁口オリフィスが設けられるとともに、流体が導入導出される弁室が形成され、かつ、前記ガイドブッシュが取付固定された弁本体と、前記ガイドブッシュが内挿される円筒部と前記弁軸の上端部が挿通される挿通穴が貫設された天井部とを有するとともに、前記弁軸と連結固定される弁軸ホルダと、前記弁体を閉弁方向に付勢すべく前記弁軸と前記弁軸ホルダとの間に介装された付勢部材と、前記弁軸ホルダを前記ガイドブッシュに対して回転させるべく、前記弁軸ホルダに連結されたロータ及び該ロータを回転させるためのステータを有するモータと、前記ガイドブッシュの外周に形成された固定ねじ部と前記弁軸ホルダの内周に形成された可動ねじ部とからなり、前記ロータの回転駆動に応じて前記弁軸の前記弁体を前記弁本体の前記弁シート部に対して昇降させるためのねじ送り機構と、前記弁軸ホルダの回転下動規制を行うべく、前記ガイドブッシュの前記固定ねじ部に螺着される雌ねじ部を持つ下部ストッパに設けられた固定ストッパ体と、前記弁軸ホルダに設けられた可動ストッパ体とからなる下部ストッパ機構と、を備え、前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるときに、
流体が前記弁室から前記弁口オリフィスに向かう正方向と前記弁口オリフィスから前記弁室に向かう逆方向との双方向に流されるようにされている電動弁の組立方法であって、前記電動弁における前記弁体には、昇降方向で外径が一定の弁体側ストレート部が設けられ、前記弁シート部には、昇降方向で内径が一定の弁シート側ストレート部が設けられるとともに、前記弁体における前記弁体側ストレート部の上側に、昇降方向に対して垂直な面を有する弁体側当接部が設けられており、
前記下部ストッパ機構により前記弁体が最下降位置にあるとき且つ前記正方向に流体が流されるときに、前記弁体側当接部と前記弁シート部との間に、昇降方向に所定の大きさの間隙が形成されるとともに、前記弁体側ストレート部は、前記弁体の前記弁体側当接部の下方に連接され、前記ねじ送り機構における固定ねじ部と可動ねじ部との間のバックラッシ分と前記間隙の寸法をあわせた長さ以上であり、前記組立方法が、前記弁軸と前記弁軸ホルダとを連結固定していない状態で、前記下部ストッパを前記ガイドブッシュに相対回転可能に螺合して所定位置に配置し、前記下部ストッパ機構により前記弁軸ホルダを最下動位置に位置せしめるとともに、前記弁体を前記最下降位置より下降せしめて前記弁体側当接部を前記弁本体に当接させる工程と、前記弁軸と前記弁軸ホルダとを連結固定する工程と、前記弁体が前記最下降位置にあるときに、前記弁体側ストレート部の少なくとも一部と前記弁シート側ストレート部の少なくとも一部とが昇降方向で重なるように、前記弁体側当接部が前記弁本体に当接した位置を基準として、前記所定位置にある前記下部ストッパを前記ガイドブッシュに対して開弁方向に所定回転角度だけ回転させて該ガイドブッシュに相対回転不能に連結する工程とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、弁体が最下降位置にあるときに、弁体に設けられた弁体側ストレート部の少なくとも一部と弁シート部に設けられた弁シート側ストレート部の少なくとも一部とが昇降方向で重なるように、各部の寸法形状が設定されている。より詳細には、弁体が最下降位置にあるときにおいて弁体が弁シート部から最も離れるときに(流体が逆方向に流されるときに)、弁体側ストレート部の少なくとも一部と弁シート側ストレート部の少なくとも一部とが昇降方向で重なるようにされている。そのため、弁体が最下降位置にあるときに、流体の流れ方向の変化に応じて弁体が弁シート部に対して上下動しても、弁口オリフィスを流れる流体の通過流量(0パルス流量)が連続的に変化するようになり、例えば弁口オリフィスを流れる流体(冷媒)の通過流量を制御する弁体がテーパ面で構成される従来の電動弁と比べて、弁体が最下降位置にあるときの、流体(冷媒)の流れ方向の変化に伴う流量変化を確実に抑えることができる。
【0018】
また、弁体における弁体側ストレート部の上側に、昇降方向に対して垂直な面を有する弁体側当接部が設けられており、組立時の弁体の原点位置出しにおいて前記弁体が前記最下降位置より下降せしめられたときに、前記弁体の当接部が弁本体に当接せしめられるようにされている。すなわち、弁体における弁体側ストレート部の上側に設けられた当接部(昇降方向に対して垂直な面)が弁体の原点位置出しの基準面とされ、原点位置における弁体と弁シート部との間の間隙の寸法精度が、基本的に弁体の当接部の部品精度(加工精度)に依存することとなる。そのため、例えば弁体のテーパ面が弁体の原点位置出しの基準面とされる従来の電動弁と比べて、前記間隙の寸法ばらつき、ひいては、流量特性(例えば、中間開度での流量の変曲点)のばらつきを効果的に抑えることができる。また、前記した弁体側ストレート部(の昇降方向における長さ)は、当接部(基準面)を基準として決められるので、前記弁体側ストレート部の寸法精度を確保でき、この点からも、流量特性(例えば、中間開度での流量の変曲点)のばらつきをより効果的に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る電動弁及びその組立方法の実施形態を図面を参照しながら説明する。なお、各図において、部材間に形成される隙間や部材間の離隔距離等は、発明の理解を容易にするため、また、作図上の便宜を図るため、誇張して描かれている場合がある。また、本明細書において、上下、左右等の位置、方向を表わす記述は、
図1の方向矢印表示を基準としており、実際の使用状態での位置、方向を指すものではない。
【0021】
また、本明細書では、弁本体における弁室の側方に連結された第1導管から、弁室及び該弁室の底部に形成された縦向きの弁口オリフィスを介して弁室の下方に連結された第2導管に向かう方向を「正方向」とし、第2導管から、弁口オリフィス及び弁室を介して第1導管に向かう方向を「逆方向」としている。
【0022】
<電動弁の構成及び動作>
図1は、本発明に係る電動弁の一実施形態を示す縦断面図である。
【0023】
図示実施形態の電動弁1は、主に、弁軸10と、ガイドブッシュ20と、弁軸ホルダ30と、弁本体40と、キャン55と、ロータ51とステータ52とからなるステッピングモータ50と、圧縮コイルばね(付勢部材)60と、抜け止め係止部材70と、ねじ送り機構28と、下部ストッパ機構29とを備える。
【0024】
前記弁軸10は、上側から、上部小径部11と、中間大径部12と、下部小径部13とを有し、その下部小径部13の下端部に、弁口オリフィス46を流れる流体(冷媒)の通過流量を制御するための弁体14が一体的に形成されている。
【0025】
前記弁体14は、
図1とともに
図2を参照すればよく分かるように、上側(弁室40a側)から、弁軸10の下部小径部13より若干小径の円筒面(昇降方向で外径が一定)からなるストレート部(弁体側ストレート部)14sと、逆円錐台面からなる上側テーパ面部14tと、上側テーパ面部14tより制御角(弁体14の中心軸線Oと平行な線との交差角)が大きい逆円錐台面からなる下側テーパ面部14uとを有している。
【0026】
前記ストレート部14sの昇降方向(上下方向)における長さは、ねじ送り機構28(を構成する固定ねじ部23と可動ねじ部33との間)のバックラッシ(ねじガタ)分以上に設計されている(詳細は後述)。
【0027】
また、弁体14におけるストレート部14sの上側には(当該ストレート部14sに連接して)、弁軸10の下部小径部13と弁体14(のストレート部14s)との間に形成された段丘面で構成される環状平坦面(水平面)(弁体側当接部)14fが設けられている。この環状平坦面14fは、昇降方向に対して垂直な面とされており、当該電動弁1の組立時の弁体14の原点位置(最下降位置)出しにおいて当該弁体14が最下降位置より下降せしめられたときに、弁本体40(詳細には、弁本体40の底部壁45の上面に形成された弁本体側当接部としての環状平坦面45f)に当接せしめられる基準面とされる(詳細は後述)。
【0028】
前記ガイドブッシュ20は、前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で内挿される円筒部21と、該円筒部21の上端部から上方に延びており、該円筒部21よりも内径が大きく、前記弁軸10の中間大径部12の上端側と上部小径部11の下端側とが内挿される延設部22とを有している。前記ガイドブッシュ20の円筒部21の外周には、ロータ51の回転駆動に応じて前記弁軸10の弁体14を弁本体40の弁シート部46aに対して昇降させるねじ送り機構28の一方を構成する固定ねじ部(雄ねじ部)23が形成されている。また、前記円筒部21の下部(固定ねじ部23より下側の部分)は、大径とされ、弁本体40の嵌合穴44への嵌合部27とされる。前記固定ねじ部23(における弁軸ホルダ30より下側)には、下部ストッパ25が、嵌合部27の上面27aと所定の隙間hをあけて螺着されて固定されており、その下部ストッパ25の外周には、弁軸ホルダ30(すなわち、弁軸ホルダ30に連結された弁軸10)の回転下動規制を行う下部ストッパ機構29の一方を構成する固定ストッパ体24が一体的に突設されている。なお、後で詳述するように、本実施形態では、嵌合部27の上面27aは、下部ストッパ25の下動規制を行う(言い換えれば、下部ストッパ25の下動限界位置もしくは最下動位置を規定する)ストッパ部とされる。
【0029】
前記弁軸ホルダ30は、前記ガイドブッシュ20が内挿される円筒部31と前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部が挿通される挿通穴32aが貫設された天井部32とを有している。前記弁軸ホルダ30の円筒部31の内周には、前記ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と螺合して前記ねじ送り機構28を構成する可動ねじ部(雌ねじ部)33が形成されると共に、その円筒部31の外周下端には、前記下部ストッパ機構29の他方を構成する可動ストッパ体34が一体的に突設されている。
【0030】
また、前記弁軸10の上部小径部11と中間大径部12との間に形成された段丘面と前記弁軸ホルダ30の天井部32の下面との間には、弁軸10の上部小径部11に外挿されるように、前記弁軸10と前記弁軸ホルダ30とが昇降方向(軸線O方向)で離れる方向に付勢する、言い換えれば前記弁軸10(弁体14)を常時下方(閉弁方向)に付勢する圧縮コイルばね(付勢部材)60が縮装されている。
【0031】
前記弁本体40は、例えば真鍮やSUS等の金属製円筒体から構成されている。この弁本体40は、内部に流体が導入導出される弁室40aを有し、該弁室40aの側部に設けられた横向きの第1開口41に第1導管41aがろう付け等により連結固定され、該弁室40aの天井部に前記弁軸10(の中間大径部12)が軸線O方向に相対移動(摺動)可能及び軸線O回りに相対回転可能な状態で挿通される挿通穴43及び前記ガイドブッシュ20の下部(嵌合部27)が嵌合されて取付固定される嵌合穴44が形成され、該弁室40aの下部に設けられた縦向きの第2開口42に第2導管42aがろう付け等により連結固定されている。また、前記弁室40aと前記第2開口42との間に設けられた底部壁45に、前記弁体14が接離又は近接離間する弁シート部46aを有する略円錐台状の弁口オリフィス46が形成されるとともに、その弁シート部46aには、円筒面(昇降方向で内径が一定)からなるストレート部(弁シート側ストレート部)46sが設けられている(
図2参照)。
【0032】
前記ストレート部46s(の内径)は、前記弁体14のストレート部14sより若干大径、かつ、前記弁軸10の下部小径部13より小径に設計されている。
【0033】
また、弁本体40の底部壁45の上面における弁口オリフィス46(弁シート部46a)周りは、環状平坦面(水平面)(弁本体側当接部)45fとされており、当該環状平坦面45fが、当該電動弁1の組立時の弁体14の原点位置(最下降位置)出しにおいて弁体14側の環状平坦面14fと平面で当接せしめられる当接面(基準面)とされる(詳細は後述)。
【0034】
一方、前記弁本体40の上端部には鍔状板47がかしめ等により固着されると共に、該鍔状板47の外周に設けられた段差部に、天井付き円筒状のキャン55の下端部が突き合わせ溶接により密封接合されている。
【0035】
前記キャン55の内側かつ前記ガイドブッシュ20及び前記弁軸ホルダ30の外側には、ロータ51が回転自在に配在され、前記キャン55の外側に、前記ロータ51を回転駆動すべく、ヨーク52a、ボビン52b、ステータコイル52c、及び樹脂モールドカバー52d等からなるステータ52が配置されている。ステータコイル52cには、複数のリード端子52eが接続され、これらのリード端子52eには、基板52fを介して複数のリード線52gが接続され、ステータコイル52cへの通電励磁によってキャン55内に配在されたロータ51が軸線O回りで回転するようになっている。
【0036】
キャン55内に配在された前記ロータ51は、前記弁軸ホルダ30に係合支持されており、当該弁軸ホルダ30は前記ロータ51とともに(一体に)回転するようになっている。
【0037】
詳細には、前記ロータ51は、内筒51a、外筒51b、及び内筒51aと外筒51bとを軸線O回りの所定の角度位置で接続する接続部51cからなる二重管構成とされ、内筒51aの内周に、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)軸線O方向(上下方向)に延びる縦溝51dが形成されている。
【0038】
一方、前記弁軸ホルダ30の外周(の上半部分)には、(例えば、軸線O回りで120度の角度間隔で)上下方向に延びる突条30aが突設され、その突条30aの下部両側には、前記ロータ51を支持する上向きの係止面(不図示)が形成されている。
【0039】
ロータ51の内筒51aの縦溝51dと弁軸ホルダ30の突条30aとが係合し、かつロータ51の内筒51aの下面と弁軸ホルダ30の係止面とが当接することにより、ロータ51が弁軸ホルダ30に対して位置合わせされた状態で支持固定され、前記弁軸ホルダ30は、前記ロータ51を前記キャン55内で支持しながら当該ロータ51と共に回転される。
【0040】
前記ロータ51及び弁軸ホルダ30の上側には、弁軸ホルダ30とロータ51との昇降方向における相対移動を防止する(言い換えれば、弁軸ホルダ30に対してロータ51を下方に押し付ける)と共に弁軸10と弁軸ホルダ30とを連結すべく、前記弁軸10(の上部小径部11)の上端部に圧入・溶接等により外嵌固定されたプッシュナット71と、該プッシュナット71とロータ51との間に介在され、弁軸10の上端部が挿通される挿通穴72aが中央に形成された円板状部材からなるロータ押さえ72とから構成される抜け止め係止部材70が配在されている。すなわち、前記ロータ51は、圧縮コイルばね60の付勢力により上方に付勢される弁軸ホルダ30と前記ロータ押さえ72との間で挟持されている。なお、弁軸ホルダ30の上端から係止面までの(上下方向の)高さは、ロータ51の内筒51aの(上下方向の)高さと同じであり、弁軸ホルダ30(の天井部32)の上面は、前記ロータ押さえ72の下面(平坦面)と当接している。
【0041】
また、前記弁軸10の上端部に固定された前記プッシュナット71には、動作時にガイドブッシュ20に対して弁軸ホルダ30が上方に移動し過ぎて、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33との螺合が外れるのを防止すべく、弁軸ホルダ30をガイドブッシュ20側に付勢するコイルばねからなる復帰ばね75が外装されている。
【0042】
そして、当該電動弁1では、例えば弁シート部46aへの弁体14の喰いつきを防止すると共に、低流量域での制御性を確保すべく、弁体14が最下降位置(原点位置)にあるときに、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙が形成されるようになっている。本例では、弁体14のストレート部14sと弁本体40の底部壁45のストレート部46sとの間、及び、ストレート部14sに連接する環状平坦面14fとストレート部46sに連接する環状平坦面45fとの間に、所定の大きさの間隙が形成されるようになっている。
【0043】
かかる構成の電動弁1では、ステータ52(のステータコイル52c)への通電励磁によってロータ51が回転せしめられると、それと一体に弁軸ホルダ30及び弁軸10が回転せしめられる。このとき、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28により、弁軸10が弁体14を伴って昇降せしめられ、これによって、弁体14と弁シート部46aとの間の間隙(リフト量、弁開度)が増減されて、冷媒等の流体の通過流量が調整される。また、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34とガイドブッシュ20に固定された下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、弁体14が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に間隙(閉弁時要求リフト量)が形成されるため、所定量の通過流量が確保される(
図3参照)。
【0044】
ところで、本実施形態の電動弁1では、流体(冷媒)が、双方向、具体的には、第1導管41a(第1開口41)から弁室40a及び弁口オリフィス46を介して第2導管42a(第2開口42)に向かう方向(つまり、横→下方向)(以下、この状態を正方向流れ状態という)と、第2導管42a(第2開口42)から弁口オリフィス46及び弁室40aを介して第1導管41a(第1開口41)に向かう方向(つまり、下→横方向)(以下、この状態を逆方向流れ状態という)との双方向に流されるようになっており、その流体の圧力によって、前記正方向流れ状態では、弁体14が下方に付勢され、前記逆方向流れ状態では、弁体14が上方に付勢される。そして、弁体14を弁シート部46aに対して昇降させるねじ送り機構28では、弁体14(弁軸10)が連結される弁軸ホルダ30の可動ねじ部33と、弁本体40に連結固定されるガイドブッシュ20の固定ねじ部23との間に、バックラッシ(ねじガタ)が存在する。そのため、前記正方向流れ状態では、弁体14が(弁軸ホルダ30の可動ねじ部33の下面側とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の上面側とが接触するまで)下方に移動せしめられ(
図2(A)に示される状態)、前記逆方向流れ状態では、弁体14が(弁軸ホルダ30の可動ねじ部33の上面側とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の下面側とが接触するまで)上方に移動せしめられる(
図2(B)に示される状態)。すなわち、流体(冷媒)の流れ方向が正方向から逆方向、あるいは、逆方向から正方向に変化すると、弁体14が弁シート部46aに対して前記バックラッシ分だけ上下動する。
【0045】
ここで、本実施形態では、弁体14が最下降位置にあるときに、弁体14側のストレート部14sの少なくとも一部と弁シート部46a側のストレート部46sの少なくとも一部とが昇降方向(上下方向)で重なる(ラップする)ように、各部の寸法形状が設定されている。より詳細には、ストレート部14sの昇降方向(上下方向)における長さが、ねじ送り機構28(を構成する固定ねじ部23と可動ねじ部33との間)のバックラッシ分以上に設計され、弁体14が最下降位置にあるときにおいて弁体14が弁シート部46aから最も離されるときに(逆方向流れ状態)、弁体14側のストレート部14sの下側部分と弁シート46a側のストレート部46sの上側部分とが、昇降方向で重なり量(ラップ量)Lminだけ重なるようにされている(
図2(B)に示される状態)。
【0046】
また、この場合、正方向流れ状態では、弁体14側のストレート部14sと弁シート部46a側のストレート部46sとの昇降方向での重なり量Lmaxは、前記重なり量Lminにねじ送り機構28のバックラッシ分を足した量となっている(
図2(A)に示される状態)。
【0047】
そのため、
図3に示される如くに、弁体14が最下降位置にあるときに、正方向から逆方向、あるいは、逆方向から正方向に流体の流れ方向が変化して弁体14が弁シート部46aに対して上下動しても、弁口オリフィス46を流れる流体の通過流量(0パルス流量)が連続的に変化するようになり、例えば弁口オリフィスを流れる流体(冷媒)の通過流量を制御する弁体がテーパ面で構成される従来の電動弁と比べて、弁体14が最下降位置にあるときの、流体(冷媒)の流れ方向の変化に伴う流量変化を確実に抑えることができる。
【0048】
また、本実施形態では、弁体14におけるストレート部14sの上側に、昇降方向に対して垂直な面を有する環状平坦面(弁体側当接部)14fが設けられると共に、弁本体40の底部壁45の上面における弁口オリフィス46(弁シート部46a)周りに環状平坦面(弁本体側当接部)45fが設けられており、組立時の弁体14の原点位置(最下降位置)出しにおいて前記弁体14が前記最下降位置より下降せしめられたときに、弁体14側の環状平坦面14fが弁本体40側の環状平坦面45fに当接せしめられるようにされている。すなわち、弁体14におけるストレート部14sの上側に設けられた環状平坦面14f及び弁本体40の環状平坦面45fが弁体14の原点位置出しの基準面とされ、原点位置における弁体14と弁シート部46aとの間の間隙の寸法精度が、基本的に弁体14の環状平坦面14fの部品精度(加工精度)に依存することとなる(後で詳述)。そのため、例えば弁体のテーパ面が弁体の原点位置出しの基準面とされる従来の電動弁と比べて、前記間隙の寸法ばらつき、ひいては、流量特性(例えば、中間開度での流量の変曲点)のばらつきを効果的に抑えることができる。また、前記した弁体14側のストレート部14sの昇降方向における長さは、環状平坦面14f(基準面)を基準として決められるので、前記弁体14側のストレート部14sの寸法精度を確保でき、この点からも、流量特性(例えば、中間開度での流量の変曲点)のばらつきをより効果的に抑えることができる。
【0049】
なお、
図3に示される例では、弁体14が上方に付勢される逆方向流れ状態において、弁体14側のストレート部14sの下側部分と弁シート部46a側のストレート部46sの上側部分とが昇降方向で所定の重なり量Lminだけ重なるようにされているが、例えば、
図4に示される如くに、前記逆方向流れ状態において、弁体14側のストレート部14sの下端部と弁シート部46a側のストレート部46sの上端部とが一致する(つまり、昇降方向での重なり量Lminを0とする)ように、各部の寸法形状を設定してもよい。この場合、正方向流れ状態では、弁体14側のストレート部14sと弁シート部46a側のストレート部46sとの昇降方向での重なり量Lmaxは、ねじ送り機構28のバックラッシ分となる。
【0050】
また、上記実施形態では、弁体14側の環状平坦面14fと弁本体40側の環状平坦面45fとが面で当接する構成としたが、面以外で当接する構成でもよく、例えば、弁体14側の環状平坦面14f及び弁本体40側の環状平坦面45fの一方又は双方を断面突起状としてもよい。
【0051】
また、上記実施形態では、弁本体40の底部壁45に、ストレート部46sが設けられた弁シート部46aを有する弁口オリフィス46が形成されているが、例えば、
図5に示される如くに、ストレート部46sが設けられた弁シート部46aを有する弁口オリフィス46が形成されたシート部材48を切削加工等により作製し、そのシート部材48を弁本体40の底部壁45に設けられた嵌挿穴49に内挿固定してもよい。この場合、シート部材48の上面における弁口オリフィス46(弁シート部46a)周りが、環状平坦面(水平面)(弁本体側当接部)48fとされ、当該電動弁1の組立時の弁体14の原点位置(最下降位置)出しにおいて弁体14側の環状平坦面14fと平面で当接せしめられる当接面(基準面)とされる。
【0052】
図5に示される如くに、弁本体40とは別部品のシート部材48を使用することにより、シート部材48の部品精度、特に、ストレート部46sや環状平坦面48fの寸法精度等を高められるので、流量特性のばらつきを更に効果的に抑えることができる。
【0053】
<電動弁の組立方法>
前述の電動弁1の組立工程の一例、特に、弁体14の原点位置(最下降位置)出し工程の一例を、
図1及び
図2を参照しながら概説すると、まず、弁軸10、ガイドブッシュ20、下部ストッパ25、圧縮コイルばね60、弁軸ホルダ30、ロータ51、弁本体40等を組み付ける。このとき、下部ストッパ25は、ガイドブッシュ20に対して相対回転可能に螺合させておく。なお、下部ストッパ25は、この段階で、ガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて配置してもよいし、そのストッパ部27aと間隔をあけて配置してもよい。次いで、弁軸10の下端部に設けられた弁体14が弁シート部46aに当接し(すなわち、弁体14の環状平坦面14fが弁本体40の環状平坦面45fに当接し)、圧縮コイルばね60が若干圧縮され、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、かつ、下部ストッパ25(の下面)がガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接するまで、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28を利用して、前記弁軸ホルダ30、ロータ51、及び弁軸10を回転させながら下降させる。そして、このように弁軸ホルダ30が最下動位置に位置せしめられ、かつ、弁体14が最下降位置より下降せしめられてその環状平坦面14fが弁本体40の環状平坦面45fに当接された状態で、弁軸10の上端部に、ロータ押さえ72を嵌め込むと共にプッシュナット71を圧入・溶接等により外嵌固定する。
【0054】
次に、上記状態から、弁軸10、弁軸ホルダ30、ロータ51、抜け止め係止部材70(プッシュナット71とロータ押さえ72)等が一体とされた組立体を、前記ねじ送り機構28を利用して回転させながら上昇させてガイドブッシュ20から取り外した後、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向(図示例では、平面視で反時計回り)に所定回転角度だけ回転させる。そして、その下部ストッパ25を、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)に溶接・溶着・接着等により相対回転不能に連結固定した後、再びねじ送り機構28を利用して前記組立体をガイドブッシュ20に組み付ける。これにより、下部ストッパ25の固定ストッパ体24のガイドブッシュ20に対する位置が変わるので、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接して、弁軸ホルダ30が最下動位置にあるとき(つまり、弁体14が最下降位置にあるとき)でも、弁体14と弁シート部46aとの間に所定の大きさの間隙(正方向流れ状態での昇降方向における寸法がHの間隙)が形成される(
図2(A)参照)。このとき、弁体14側のストレート部14sと弁シート部46a側のストレート部46sとの昇降方向での重なり量Lmaxは、例えば、ねじ送り機構28のバックラッシ分とされる。なお、前記組立体を上昇させてガイドブッシュ20から取り外した後、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向に所定回転角度だけ回転させ、その下部ストッパ25をガイドブッシュ20に溶接・溶着・接着等により相対回転不能に連結固定するものとして説明したが、前記組立体をガイドブッシュ20に対して上昇させるだけで、下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向に所定回転角度だけ回転させることができ、かつ下部ストッパ25をガイドブッシュ20に溶接・溶着・接着等により相対回転不能に連結固定することができる程度の隙間を形成することができれば、前記組立体をガイドブッシュ20から取り外す必要はない。
【0055】
なお、下部ストッパ25の雌ねじ部26やガイドブッシュ20の固定ねじ部(雄ねじ部)23にバックラッシレス(ノンバックラッシ)タイプのねじ部を採用する場合には、弁体14と弁シート部46aとの間に形成される間隙の昇降方向における寸法Hは、下部ストッパ25(の下面)とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの隙間hと一致もしくは略一致する。しかし、一般に、ねじ部にはバックラッシ(遊び又はガタ)が設けられている。そのため、上記実施形態のように下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ後に開弁方向に回転させて(緩めて)弁体14の原点位置出しを行う場合、前記下部ストッパ25は、回転当初の段階では、ガイドブッシュ20のストッパ部27aに当接したまま(すなわち、上昇せずに)回転するため、前記寸法Hは前記隙間hと必ずしも一致しない。
【0056】
具体的には、
図6を参照すればよく理解されるように、下部ストッパ25の雌ねじ部26とガイドブッシュ20の固定ねじ部23との間のバックラッシ分の回転角度をθb[°](図示例では、約180°)とした場合、上記した原点位置出し工程において、下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ状態(この状態では、下部ストッパ25の雌ねじ部26の上面側とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の下面側とが接触)から、当該下部ストッパ25を開弁方向に回転させる(緩める)と、バックラッシ分の回転角度θb[°]の範囲内では、自重により下部ストッパ25(の下面)はガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接し続ける(
図6の(1)〜(3))。ただし、下部ストッパ25自体は回転するため、当該下部ストッパ25に設けられた固定ストッパ体24の回転位置は変化する。
【0057】
仮に、このバックラッシ分の回転角度θb[°]の範囲内で下部ストッパ25をガイドブッシュ20に固定し、ねじ送り機構28を利用して弁軸ホルダ30を回転させながら下降させ、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34と下部ストッパ25の固定ストッパ体24とを当接させると、弁軸ホルダ30の最下動位置は、下部ストッパ25の回転量に応じて次第に上昇することとなる。例えば、バックラッシ相殺時点での弁軸ホルダ30の最下降位置の上昇量Hbは、下部ストッパ25の雌ねじ部26のねじピッチ(ねじ山同士の間隔)をpとしたとき、p×θb/360で規定される(
図6の(3))。
【0058】
バックラッシが相殺された後(下部ストッパ25の回転角度がバックラッシ分の回転角度θb[°]に到達した後)(この状態では、下部ストッパ25の雌ねじ部26の下面側とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の上面側とが接触)、下部ストッパ25を開弁方向に更に回転させると、下部ストッパ25は回転しながら上昇し始め、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間に隙間hが形成される。
【0059】
最終的に、下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ状態から回転角度θ[°]だけ開弁方向に回転させてガイドブッシュ20に固定したとすると、弁軸ホルダ30の最下降位置は、p×θ/360で規定される上昇量Hだけ上昇するため、弁軸ホルダ30が最下動位置にあるとき(つまり、弁体14が最下降位置にあるとき)に、弁体14と弁シート部46aとの間に、(正方向流れ状態での)昇降方向における所定の寸法Hの間隙が形成される(
図2(A)参照)。一方で、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間には、前記上昇量Hからバックラッシ分を差し引いた隙間h、すなわち、p×(θ−θb)/360で規定される隙間hが形成される。
【0060】
なお、図示実施形態では、下部ストッパ25をバックラッシ分の回転角度θb[°]を超えて回転させることで、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間に隙間hが形成されているが、弁体14と弁シート部46aとの間に形成される間隙の昇降方向における寸法が上記Hb以下に設定される場合には、下部ストッパ25はバックラッシの回転角度θb[°]の範囲内で回転すればよいので、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの間に隙間は形成されず、下部ストッパ25(の下面)はガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接したままとなる。
【0061】
また、上記の実施形態では、下部ストッパ25をガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接させて締め込んだ状態を、下部ストッパ25の開弁方向への回転の基準状態としたが、その基準状態における下部ストッパ25の締結状態や上下方向における位置は、図示実施形態に限定されないことは当然である。例えば、下部ストッパ25は、
図6の(1)〜(3)に示すバックラッシ分の回転角度の範囲内における如何なる状態を基準状態としてもよい。また、当該下部ストッパ25は、その基準状態においてガイドブッシュ20のストッパ部27aと当接している必要はなく、例えば
図6の(4)に示すような、ガイドブッシュ20(の固定ねじ部23)における如何なる位置を基準状態としてもよい。なお、下部ストッパ25がガイドブッシュ20のストッパ部27aと離間している(当接していない)状態を前記基準状態とする場合、上記バックラッシは存在しなくなり、組立完了後において、弁体14と弁シート部46aとの間に形成される間隙の昇降方向における寸法Hは、下部ストッパ25(の下面)とガイドブッシュ20のストッパ部27aとの隙間hより小さくなる(言い換えれば、下部ストッパ25とガイドブッシュ20のストッパ部27aの昇降方向における隙間hが、前記寸法Hより大きくなる)。
【0062】
かかる組立方法により組み立てられた電動弁1では、上述したように、ステータ52(のステータコイル52c)への通電励磁によってロータ51が回転せしめられると、それと一体に弁軸ホルダ30及び弁軸10が回転せしめられる。このとき、ガイドブッシュ20の固定ねじ部23と弁軸ホルダ30の可動ねじ部33とからなるねじ送り機構28により、弁軸10が弁体14を伴って昇降せしめられ、これによって、弁体14と弁シート部46aとの間の間隙(リフト量、弁開度)が増減されて、冷媒等の流体の通過流量が調整される。また、弁軸ホルダ30の可動ストッパ体34とガイドブッシュ20に固定された下部ストッパ25の固定ストッパ体24とが当接し、弁体14が最下降位置にあるときでも、弁体14と弁シート部46aとの間に間隙(閉弁時要求リフト量)が形成されるため、所定量の通過流量が確保される(
図3参照)。
【0063】
本実施形態の電動弁1においては、ねじピッチpの雌ねじ部26を持つ下部ストッパ25がガイドブッシュ20の所定位置に相対回転可能に螺合され、下部ストッパ機構29により弁軸ホルダ30が最下動位置に位置せしめられるとともに、弁体14を最下降位置より下降せしめて弁体14の環状平坦面14fを弁本体40の環状平坦面45fに当接させ、その後、弁体14の環状平坦面14fが弁本体40の環状平坦面45fに当接した位置を基準として、前記所定位置にある下部ストッパ25をガイドブッシュ20に対して開弁方向に所定回転角度θだけ回転させて該ガイドブッシュ25に相対回転不能に連結すると、下部ストッパ機構29により弁軸ホルダ30が最下動位置にあるときに、弁体14と弁シート部46aとの間(具体的には、環状平坦面14fと環状平坦面45fとの間)に、正方向流れ状態での昇降方向における寸法Hがp×θ/360で規定される間隙が形成されるとともに、弁体14におけるストレート部14sの少なくとも一部と弁シート部46aにおけるストレート部46sの少なくとも一部とが昇降方向で重なるようになっている。つまり、下部ストッパ25がガイドブッシュ20に対して開弁方向に回転された後に当該ガイドブッシュ20に相対回転不能に連結されることにより、正方向流れ状態での弁体14の最下降位置、言い換えれば弁体14が最下降位置にあるときの弁体14と弁シート部46aとの間の昇降方向における間隙が規定される。すなわち、原点位置における弁体14と弁シート部46aとの間の間隙の寸法精度が、基本的に下部ストッパ機構29を構成する下部ストッパ25の雌ねじ部26とガイドブッシュ20の固定ねじ部23の寸法精度に依存することとなるため、前記間隙の寸法ばらつきを抑えることができ、もって、低流量域における流体(冷媒)流量の制御性を向上させることができる。さらに、弁体14におけるストレート部14sの上側に設けられた環状平坦面14f及び弁本体40の環状平坦面45fを弁体14の組立時の原点位置出しの基準面としたことで、原点位置における弁体14と弁シート部46aとの間の間隙の寸法精度が、基本的に弁体14の環状平坦面14fの部品精度(加工精度)に依存することとなり、前記間隙の寸法ばらつき、ひいては、流量特性(例えば、中間開度での流量の変曲点)のばらつきを効果的に抑えることができる。