(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、サンルーフは、専ら車両の天壁部に設けられているため、車両の運転手は、運転中にルーフがどの程度開口しているのかを視認することは困難である。これに対し、例えば運転手から視認できる位置にルーフの開口率を表示し、運転者に開口の程度を知らせることも考えられる。しかしながら、サンルーフには前述のような機構的誤差が存在するため、それを考慮してサンルーフを制御するコントローラによってOPEN動作とCLOSE動作で制御形態を異ならせるのが通例である。このため、単にモータのパルスカウント値からルーフの開口状態を算出しようとすると、ルーフパネル(開閉体)が同じ位置にあっても、コントローラはOPEN動作とCLOSE動作で異なるカウント値として認識してしまう惧れがあった。
【0006】
図5は、サンルーフの制御形態を示す説明図であり、サンルーフの状態とパルスカウント値との関係を示している。
図5に示すように、サンルーフは、全閉位置(基準パルス値0:以下、基準パルス値は適宜RPVと略記する)からサンフールの車両後方側を僅かに上昇させるチルト動作を行い、チルト全開状態となった後、サンルーフを車両後方側にスライド動作を行い全開位置(RPV=2000)まで作動する。その場合、スライド動作の開始位置は、図中のS1(RPV=600)からとなりスライド動作は全閉位置まで作動する。つまり、OPEN動作では、RPV=600〜2000の間がスライド領域となる。これに対し、サンルーフがCLOSE動作を行う場合には、機構的誤差を考慮して、車両前方側へのスライド領域が拡大され、全閉位置から図中のS2までがスライド領域となる(RPV=2000〜400)。
【0007】
ここで、サンルーフの開口率を考えると、スライド領域におけるサンルーフの開口率(%)は、
{(現在位置のパルスカウント値−スライド領域始点の基準パルス値)/スライド領域パルスカウント数}×100
・・・(式1)
にて表される。従って、OPEN動作における開口率50%の位置は、「スライド領域始点の基準パルス値」がスライド領域始点S1のRPV=600、「スライド領域パルスカウント数」が1400(=2000-600)となり、S1と全閉位置の中間地点であるP1(パルスカウント値=1300)となる。一方、CLOSE動作では、(式1)における「スライド領域始点の基準パルス値」がスライド領域始点S2のRPV=400、「スライド領域パルスカウント数」が1600(=2000-400)となり、CLOSE動作における開口率50%の位置はP2(パルスカウント値=1200)の位置となる。つまり、コントローラが認識する開口率50%の位置がOPEN動作とCLOSE動作で異なっている。
【0008】
この場合、OPEN動作における開口率50%の位置P1(パルスカウント値=1300)は、CLOSE動作の(式1)にそのパルスカウント値を代入すると、開口率は56%となる。つまり、同じ位置でありながら、OPEN動作とCLOSE動作では開口率が異なる、という事態が生じる。また、これは、前述のように同じ開口率50%であっても、OPEN動作とCLOSE動作では、ルーフパネルの位置が異なる、という事態でもある。従って、開口率50%とした場合、ユーザ側がそのとき見るルーフパネルの位置が開閉時で異なることになり、ユーザがサンルーフ動作に違和感を持つおそれがある。このため、サンルーフの動作制御にルーフパネルの開口率をパラメータとして適用しにくいという問題があり、その対策が求められていた。
【0009】
本発明の目的は、車両用開閉体における機構的誤差の影響を抑え、制御上の機械的な開閉体位置と、ユーザ側から見た開閉体の位置とを感覚的に一致させ得る制御システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の開閉体制御システムは、車両の開口部に配置され、第1方向と該第1方向とは逆方向の第2方向に作動して前記開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体を前記第1及び第2方向に作動させるためのモータと、前記モータの回転に伴ってパルス信号を出力するセンサと、前記パルス信号に基づいて前記モータを制御し、前記開口部を開閉するように前記開閉体を作動させる制御手段と、を備えてなる開閉体制御システムであって、前記開閉体は、該開閉体により前記開口部が閉塞された状態を示す開口部全閉領域、前記開閉体が前記第1又は第2方向に動作する区間を示す開閉体動作領域、前記開閉体が前記第1方向への動作を完了し前記開口部が開放された状態を示す開口部全開領域の各領域を移動し、前記制御手段は、前記パルス信号を計数し、現在の前記開閉体の位置に対応したパルスカウント値を算出するパルスカウント部と、前記各領域を示す前記パルス信号のカウント値である基準パルス値が格納され、前記第1方向への動作における前記各領域に対応する基準パルス値が格納された第1領域記憶部と、前記第2方向への動作における前記各領域に対応する基準パルス値が格納された第2領域記憶部と、を備える領域記憶部と、前記パルス信号に基づいて前記開閉体の移動方向を検出すると共に、前記パルスカウント部にて計数された前記パルスカウント値と、前記領域記憶部に格納された前記基準パルス値に基づいて、前記開閉体が、前記各領域のうち何れの領域に属しているのかを判定する領域判定部と、前記パルスカウント部にて計数された前記パルスカウント値と、前記領域判定部の判定結果に基づいて、前記開閉体動作領域における前記開口部の開口率を演算する開口率演算部と、を備え、前記開口率演算部は、前記開閉体が前記第2方向に移動する際、前記第1領域記憶部に格納された前記第1方向への動作の前記基準パルス値を参照して、前記開閉体動作領域における開口率を演算することを特徴とする。
【0011】
本発明にあっては、開閉体が第2方向に移動する際、開閉体動作領域における開口部の開口率を演算するための制御手段の開口率演算部が、第1領域記憶部に格納された第1方向への動作の基準パルス値を参照して開口率を演算する。このため、システムの機構的誤差の影響を抑えつつ、開閉体動作領域においては、動作方向に関わらず、開口率が等しければパルスカウント値が等しくなる。従って、開閉体が同じ位置にありながら、動作方向によって開口率が異なる、あるいは、同じ開口率でありながら、動作方向で開閉体の位置が異なる、という事態を防止できる。
【0012】
前記開閉体制御システムにおいて、前記第2方向への動作における前記開閉体動作領域が、前記第1方向への動作における前記開閉体動作領域よりも広く設定されていても良い。また、前記開閉体の前記開口部全閉領域と前記開閉体動作領域との間に、前記開閉体の動作準備領域をさらに設け、前記開閉体が前記第2方向に動作する際に、前記領域判定部により前記開閉体が前記動作準備領域に属すると判定された場合、前記
開口率演算部が、前記開閉体動作領域における前記開口部の開口率を0とする演算を行うようにしても良い。
【0013】
また、当該開閉体制御システムにおいて、前記開閉体は、前記第1方向と前記第2方向にスライド動作し、前記開口部を開閉するものであっても、また、前記第1方向と前記第2方向にチルト動作し、前記開口部を開閉するものであっても良い。
【0014】
当該開閉体制御システムに、前記開口部の開口率として任意の値を入力可能な入力手段を設け、前記入力手段から開口率が入力された場合、前記制御手段は、該開口率と、前記開口率演算部における演算結果が一致するように前記モータを駆動制御するようにしても良い。これにより、ユーザがモータ制御上の誤差を気にすることなく開閉体を操作することができる。
【0015】
また、当該開閉体制御システムに、前記制御手段に接続され、前記開口率演算部における演算結果を外部へ出力するための通信手段をさらに設けても良い。これにより、モータの制御状況によらず統一された数値として開口率を出力できるので、他の機器との調和性を高めることが可能となる。
【0016】
さらに、当該開閉体制御システムに、前記開口率演算部における演算結果を表示するための表示手段を設けても良い。これにより、ユーザに対し、モータの制御を意識させず、直感的な表示を行うことができる。
【0017】
一方、本発明による開閉体制御システムは、車両の開口部に配置され、チルト動作とスライド動作を行うことにより前記開口部を開閉する開閉体と、前記開閉体にチルト動作とスライド動作を行わせるためのモータと、前記モータの回転に伴ってパルス信号を出力するセンサと、前記パルス信号に基づいて前記モータを制御し、前記開口部を開閉するように前記開閉体を作動させる制御手段と、を備えてなる開閉体制御システムであって、前記開閉体は、該開閉体により前記開口部が閉塞された状態を示す開口部全閉領域、前記開閉体がチルト動作を完了した状態を示すチルト全開領域、前記開口部全閉領域と前記チルト全開領域の間に設定され前記開閉体がチルト動作を行うチルト領域、前記開閉体が
開方向へのスライド動作を完了し前記開口部が開放された状態を示す開口部全開領域、前記チルト全開領域と前記開口部全開領域の間に設定され前記開閉体がスライド動作する区間を示すスライド領域の各領域を移動し、前記制御手段は、前記パルス信号を計数し、現在の前記開閉体の位置に対応したパルスカウント値を算出するパルスカウント部と、前記各領域を示す前記パルス信号のカウント値である基準パルス値が格納され、前記開口部を開放する開方向の動作における前記各領域に対応する基準パルス値が格納された第1領域記憶部と、前記開口部を閉鎖する閉方向の動作における前記各領域に対応する基準パルス値が格納された第2領域記憶部と、を備える領域記憶部と、前記パルス信号に基づいて前記開閉体の移動方向を検出すると共に、前記パルスカウント部にて計数された前記パルスカウント値と、前記領域記憶部に格納された前記基準パルス値に基づいて、前記開閉体が、前記各領域のうち何れの領域に属しているのかを判定する領域判定部と、前記パルスカウント部にて計数された前記パルスカウント値と、前記領域判定部の判定結果に基づいて、前記スライド領域における前記開口部の開口率を演算する開口率演算部と、を備え、前記開口率演算部は、前記開閉体が前記閉方向に移動する際、前記第1領域記憶部に格納された前記開方向への動作の前記基準パルス値を参照して、前記スライド領域における開口率を演算することを特徴とするものであっても良い。
【発明の効果】
【0018】
本発明の開閉体制御システムによれば、開閉体が第2方向に移動する際、開閉体動作領域における開口部の開口率を演算するための制御手段の開口率演算部が、第1領域記憶部に格納された第1方向への動作の基準パルス値を参照して開口率を演算するようにしたので、開閉体動作領域においては、動作方向に関わらず、開口率とパルスカウント値を一致させることが可能となる。これにより、システムの機構的誤差の影響を抑えつつ、制御上の機械的な開閉体位置と、ユーザ側から見た開閉体の位置とを感覚的に一致させることが可能となる。
【0019】
また、本発明による他の開閉体制御システムによれば、開閉体が閉方向に移動する際、スライド領域における開口部の開口率を演算するための制御手段の開口率演算部が、第1領域記憶部に格納された開方向への動作の基準パルス値を参照して開口率を演算するようにしたので、スライド領域においては、動作方向に関わらず、開口率とパルスカウント値を一致させることが可能となる。これにより、システムの機構的誤差の影響を抑えつつ、制御上の機械的な開閉体位置と、ユーザ側から見た開閉体の位置とを感覚的に一致させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施の形態である開閉体制御システムが適用されるサンルーフ装置の概略を示す説明図である。サンルーフ装置1は、自動車(車両)の乗員室の天壁部(屋根部)2に設けられ、
図1に示すように、開閉移動可能なルーフパネル3を備えている。天壁部2には開口部4が形成されており、ルーフパネル3はこの開口部4を開閉する。ルーフパネル3の両側部にはそれぞれ、一対のシュー5a,5bが固定されている。これに対し、開口部4の両側部となる天壁部2の内部にはそれぞれ、車両前後方向に延びるガイドレール6が固定されており、各シュー5a,5bは対応するガイドレール6に移動自在に取り付けられる。そして、シュー5a,5bがガイドレール6に沿って移動することにより、ルーフパネル3が車両前後方向に移動し、開口部4が開閉される。
【0022】
車両後方側の各シュー5bには、それぞれ天壁部2の内部に配策された駆動ケーブル7a,7bの一端が連結されている。駆動ケーブル7a,7bはギヤ付きのケーブルとなっており、その他端はそれぞれ開口部4の車両前方側に取り回されている。ルーフ2の前端部、フロントガラス8と開口部4との間の天壁部2の内部には、サンルーフモータ9が配置されている。駆動ケーブル7a,7bのギヤ部は、サンルーフモータ9に取り付けられた駆動ギヤ11に噛合している。サンルーフモータ9が作動すると、各駆動ケーブル7a,7bは、駆動ギヤ11によって互いに逆向きに作動する。サンルーフモータ9の正・逆転動作により、ルーフパネル3は、シュー5bを介して連結される駆動ケーブル7a,7bに押し引きされ、開口部4内にて開閉する。
【0023】
サンルーフモータ9は、車両の任意の部位に設けられたコントローラ(制御手段)12によって制御される。サンルーフモータ9には回転センサ13(
図3参照)が設けられており、回転センサ13からは、モータの回転に伴ってコントローラ12に対しパルス信号が送出される。回転センサ13は、サンルーフモータ9の回転方向(正転・逆転)を検出するため2個設けられている(13a,13b)。コントローラ12は、両回転センサ13a,13bから出力されるパルス信号に基づいて、ルーフパネル3の位置や動作状況を把握し、サンルーフモータ9の動作を制御する。
【0024】
このようなサンルーフ装置1では、ルーフパネル3が閉じた状態で、図示しないチルトスイッチやサンルーフ開閉スイッチを操作すると、サンルーフモータ9が作動し、ルーフ全閉位置にてまずルーフパネル3の車両前方側を支点としてルーフパネルの車両後方側を角度θ分上昇させるチルト動作(チルト開動作)を行う(
図1(b)参照)。チルト動作が完了しチルト全開状態となった後、ルーフパネル3は、ルーフ全閉(及びチルト全開)位置から車両後方側に向かってスライド動作を行う。スライド動作領域では、ルーフパネル3は、スイッチ操作状態に応じてルーフ全開位置まで作動する。一方、ルーフパネル3が全開、あるいは、スライド動作領域内に停止している状態で、サンルーフ開閉スイッチが操作されると、ルーフパネル3は、車両前方側に向かってスライド動作を行う。そして、ルーフ全閉位置まで戻った後、ルーフパネル3の車両後方側を角度θ分下降させるチルト閉動作が行われ、ルーフ2が閉じられる。なお、スライド動作領域における全閉・全開位置のそれぞれ外側には、ルーフパネル3の動作を機械的に停止させるメカロック位置が設定されている。
【0025】
一方、前述のような開閉動作では、駆動ケーブル7a,7bや駆動ギヤ11の遊び等による機構的誤差を考慮してパルスカウント制御が実施される。
図2は、本発明によるサンルーフ装置1の制御形態を示す説明図であり、ルーフパネル3の状態とパルスカウント値との関係を示している。
図2において、「OPEN動作」(第1方向への動作)はルーフパネル3を開く動作、「CLOSE動作」(第2方向への動作)はルーフパネル3を閉じる動作、停止中はスイッチがOFFされルーフパネル3の動作が停止されている状態をそれぞれ示している。
図2に示した制御においても、ルーフパネル3は、全閉位置と、チルト動作・スライド動作を経た全開位置との間で作動する。この場合も、サンルーフのOPEN動作ではRPV=600〜2000の間(S1〜全開位置)がスライド領域(開閉体動作領域)となり、CLOSE動作では、RPV=2000〜400の間(全開位置〜S2)がスライド領域(開閉体動作領域)となる。
【0026】
図2のパルスカウント制御では、ルーフパネル3の位置や状態が5個の制御領域に分けて認識されて開閉動作が制御される。すなわち、パルスカウント値に応じて、(1)開口部全閉領域、(2)チルト領域、(3)チルト全開領域、(4)スライド領域、及び、(5)開口部全開領域の5つの領域が設定されている。なお、(2)チルト領域と(3)チルト全開領域は、(1)開口部全閉領域と(4)スライド領域の間に配置され、ルーフパネル3がスライド動作を行う前段階の準備を行う動作準備領域として設定されている。
【0027】
(1)開口部全閉領域
ルーフパネル3がルーフ全閉位置にあり、開口部4が完全に閉塞された状態にある領域を示す。
開口部全閉領域の基準パルス値(RPV)は、0〜50に設定されている。
(2)チルト領域
開口部全閉領域とチルト全開領域の間の領域を示す。チルト領域では、ルーフパネル3はチルト開・閉動作を行う。OPEN動作では、全閉状態のルーフパネル3がチルト開動作を行い、
図1(b)のように、ルーフパネル3の車両後方側が開放される。CLOSE動作では、車両後方側が開放された状態のルーフパネル3に対しチルト閉動作が行われ、開口部4が閉塞された状態となる。
基準パルス値は、CLOSE動作・停止中:50〜200,OPEN動作:50〜400。
【0028】
(3)チルト全開領域
ルーフパネル3がチルト動作を完全に終了した状態にある領域を示す。
基準パルス値は、CLOSE動作:200〜400,OPEN動作:400〜600,停止中:200〜600。
なお、
図2に示すように、OPEN動作はCLOSE動作に比してチルト領域が広くなっており、OPEN動作の200≦RPV<400にてチルト動作を途中停止した場合は、「停止中のチルト全開領域」に移行する。このとき、コントローラ12は、ルーフパネル3の状態をチルト全開状態と認識し、その後にチルトスイッチがONされたときの小さなチルト動作を防止する。なお、サンルーフ開閉スイッチが操作された場合はOPEN動作に戻り、チルト開動作を行い、その後、適宜スライド動作に移行する。
【0029】
(4)スライド領域
チルト全開領域と開口部全開領域の間に設定され、ルーフパネル3がスライド動作する領域を示す。
基準パルス値は、CLOSE動作:400〜2000,OPEN動作・停止中:600〜2000。
前述のように、OPEN動作とCLOSE動作ではスライド領域幅が異なり、OPEN動作のスライド領域(第1スライド領域)におけるパルスカウント数は1400(RPV=600〜2000)、CLOSE動作のスライド領域(第2スライド領域)におけるパルスカウント数は1600(RPV=400〜2000)となる。
(5)開口部全開領域
ルーフパネル3がルーフ全開位置にあり、ルーフパネル3がOPEN動作を完了して開口部4が完全に開放された状態にある領域を示す。
基準パルス値は2000超(RPV>2000)。
【0030】
当該サンルーフ装置1はこのような設定にてOPEN動作・CLOSE動作が行われ、コントローラ12は、チルトスイッチやサンルーフ開閉スイッチの状態に応じて、サンルーフモータ9の動作を制御する。
図3は、コントローラ12の構成を示す機能ブロック図である。コントローラ12は、中央処理装置であるCPU21と、算出データ等を格納するRAM22、制御プログラムや前記各領域(1)〜(5)を示す基準パルス値等が予め格納されたROM23、外部機器と接続されデータ等のやり取りを行う通信部24、スイッチ操作に基づいてサンルーフモータ9を駆動するモータ制御駆動部25と、を備えている。
【0031】
CPU21には、回転センサ13a,13bからのパルス信号を受信し計数し、現在のルーフパネル3の位置に対応したパルスカウント値を算出するパルスカウント部31が設けられている。CPU21は、パルスカウント部31によって算出されたパルスカウント値に基づいてモータ制御駆動部25に対し制御信号を送出し、モータ制御駆動部25はその指示に沿ってサンルーフモータ9の動作を制御する。また、CPU21には、ルーフパネル3の移動方向を検出すると共に、パルスカウント部31におけるパルスカウント値が前記(1)〜(5)の何れの領域に属するのかを判定する領域判定部32が設けられている。
【0032】
領域判定部32は、ROM23内の領域記憶部33に格納されている制御データ(前記各領域(1)〜(5)の基準パルス値)に基づいて、カウント値が何れの領域に属するのかを判定する。この場合、領域記憶部33には、OPEN動作における各領域の基準パルス値が格納されたOPEN動作領域記憶部(第1領域記憶部)34と、CLOSE動作おける各領域の基準パルス値が格納されたCLOSE動作領域記憶部(第2領域記憶部)35が設けられている。領域判定部32は、回転センサ13a,13bからのパルス信号の出力順によってサンルーフモータ9の回転方向、すなわち、ルーフパネル3の動作方向(OPEN動作かCLOSE動作か)を判定すると共に、パルスカウント値に基づいてルーフパネル3が属する領域を判定する。これらの判定結果は、RAM22に一時的に記憶される。
【0033】
また、CPU21には、スライド領域(前記(4))における開口部4の開口率(ルーフ開口率)を演算する開口率演算部36が設けられている。開口率演算部36は、パルスカウント部31によって算出されたパルスカウント値と、領域判定部32による判定結果に基づいて、ルーフ開口率(%)を演算する。開口率演算部36によって算出された開口率(演算結果)は、通信部24を介して、外部(例えば、速度計等が配置されたインストルメント・パネル)に配置された表示部(表示手段)14に送信・表示され、運転者に通知される。なお、通信部24から他の車載機器へのデータ送信も可能であり、これにより、サンルーフモータ9の制御状況によらず統一された数値として開口率(開口量の割合)を公開・出力できるので、他の機器との調和性を高めることが可能となる。
【0034】
さらに、CPU21は、通信部24を介して入力部15(入力手段)と接続されている。入力部15からは任意の開口率を入力することができ、入力部15から開口率(%)を入力することにより、ルーフパネル3を所望の位置に移動させることができる。入力部15にて開口率が入力されると、CPU21は、ROM23内の領域記憶部33を参照し、当該開口率に対応するパルスカウント値を決定する。その上で、CPU21は、モータ制御駆動部25に対し、サンルーフモータ9のパルスカウント値が決定したカウント値となるよう指令を行う。これにより、ルーフパネル3が作動し、その状況を回転センサ13a,13bからのパルス信号をカウントしつつフィードバック監視する。すなわち、開口率演算部36によって算出された開口率が、入力部15から入力された開口率と一致するようにサンルーフモータ9を駆動制御する。この際、開口率はOPEN動作とCLOSE動作で同じ値となっているため、指示された開口率に対しルーフパネル3の位置は一義的に決定され、ユーザの意思に沿ったサンルーフ動作が可能となる。
【0035】
このような構成からなるサンルーフ装置1では、コントローラ12は、OPEN動作・CLOSE動作に関わらず、常にOPEN動作におけるスライド領域を基準にサンルーフの開口率(%)を算出する。すなわち、OPEN動作とCLOSE動作で異なる値を取るスライド領域のパルスカウント数のうち、小さい方のスライド領域のパルスカウント数(ここでは、OPEN動作のスライド領域のパルスカウント数=1400)を全体領域と考え開口率を算出する。また、現在位置のパルスカウント値との差分を算出する際の基準となる「スライド領域始点の基準パルス値」も、OPEN動作におけるスライド領域の始点を基準とする。
【0036】
従って、サンルーフ装置1における開口率は、OPEN動作・CLOSE動作共に次式(式2)によって算出される。
{(現在位置のパルスカウント値−OPEN動作スライド領域始点の基準パルス値)/OPEN動作スライド領域パルスカウント数}×100・・・(式2)
そして、(式2)を前述の実施形態に当てはめると、サンルーフ装置1における開口率は、{(現在位置のパルスカウント値−600)/1400}×100(%)と算出される。この場合、CLOSE動作スライド領域におけるパルスカウント値=400〜600の間は開口率が負の数となるが、そのときは開口率を0%とする。すなわち、開口率が0%未満のときは0%(固定値)に補正する。これにより、例えば、マニュアル操作によってチルト全開領域とOPEN動作のスライド領域の境界にルーフパネル3が移動しても、誤動作することなく制御を継続することができる。
【0037】
このような制御形態を採用することにより、スライド領域においては、OPEN動作・CLOSE動作に関わらず、開口率が等しければパルスカウント値が等しくなる。すなわち、開口率50%であれば、OPEN動作・CLOSE動作に関わらず、パルスカウント値はP1(=1300)となり、ルーフパネル3も同じ位置に配される。このため、ルーフパネル3が同じ位置にありながら、OPEN動作とCLOSE動作では開口率が異なる、あるいは、同じ開口率でありながら、OPEN動作とCLOSE動作でルーフパネル3の位置が異なる、という事態を防止できる。従って、OPEN動作・CLOSE動作に関わらず、開口率とルーフパネル3の位置を一義的に対応させることができ、ユーザが開口率とサンルーフ動作の関係に違和感を持つことなく、サンルーフの動作制御に開口率をパラメータとして適用することが可能となる。また、開口率とルーフパネル3の位置が対応しているため、開口率をパラメータとして、車両の他の機器とサンルーフの動作を対応させるような制御形態も採用することが容易となる。
【0038】
一方、上述のような制御形態は、ルーフパネル3のチルト動作にも適用することができる。
図4に示すように、OPEN動作(第1方向への動作)とCLOSE動作(第2方向への動作)では、「チルト領域(前記(2))」の幅が異なっている。つまり、(式1)を、
図1(b)におけるチルト開口部16の開口率(チルト開口率)に適用した場合、
{(現在位置のパルスカウント値−チルト領域始点の基準パルス値)/チルト領域パルスカウント数}×100・・・(式3)
となり、その分母(チルト領域パルスカウント数)がルーフパネル3の動作方向によって異なっている。従って、そのまま(式3)を適用すると、OPEN動作とCLOSE動作でチルト開口率とチルト開度(角度)との関係が異なることになる。
【0039】
そこで、ルーフパネル3のチルト動作にも上述の制御形態を適用し、OPEN動作とCLOSE動作で異なる値を取るチルト領域のパルスカウント数のうち、小さい方のチルト領域のパルスカウント数(ここでは、CLOSE動作のスライド領域のパルスカウント数=150)を全体領域と考えチルト開口率を算出する。すなわち、サンルーフ装置1におけるチルト開口率を、OPEN動作・CLOSE動作共に次式(式4)によって算出する。
{(現在位置のパルスカウント値−チルト領域始点の基準パルス値)/CLOSE動作チルト領域パルスカウント数}×100・・・(式4)
【0040】
そして、(式4)を前述の実施形態に当てはめると、サンルーフ装置1におけるチルト開口率は、{(現在位置のパルスカウント値−50)/150}×100(%)と算出される。この場合、OPEN動作チルト領域におけるパルスカウント値=200〜400の間は開口率が100%を超えるが、そのときは開口率を100%とする。すなわち、開口率が100%超のときは100%(固定値)に補正する。なお、チルト動作制御も前述のコントローラ12によって、スライド動作制御と同様に実行される。
【0041】
このような制御形態を採用することにより、OPEN動作・CLOSE動作に関わらず、チルト領域においても開口率が等しければパルスカウント値が等しくなる。このため、ルーフパネル3が同じ開度にありながら、OPEN動作とCLOSE動作ではチルト開口率が異なる、あるいは、同じチルト開口率でありながら、OPEN動作とCLOSE動作でルーフパネル3の開度が異なる、という事態を防止することができる。従って、OPEN動作・CLOSE動作に関わらず、チルト開口率とルーフパネル3の開度を一義的に対応させることができ、ユーザがチルト開口率とサンルーフ動作の関係に違和感を持つことなく、サンルーフの動作制御にチルト開口率をパラメータとして適用することが可能となる。
【0042】
このように、本発明にあっては、スライドやチルトなど同種の制御を行うに際し、OPEN動作とCLOSE動作とで制御形態を異にする開閉体制御システムにおいて、開閉体の動作割合を算出するに当たり、同種制御を行う領域のうち、最小幅の領域(最小領域)を全体領域とする。すなわち、スライド動作では、同じスライド領域のうちOPEN動作のスライド領域を全体領域とし、チルト動作では、同じチルト領域のうちCLOSE動作のスライド領域を全体領域とする。また、現在位置のパルスカウント値との差を求める基準となる領域始点を、最小幅の領域の始点に設定する。その上で、開閉体の動作割合を次式(式5)にて求める。
{(現在位置のパルスカウント値−領域始点の基準パルス値)/全体領域パルスカウント数}×100・・・(式5)
但し、最小領域との差分が負数になる場合は動作割合を0%に補正し、計算上、動作割合が100%を超える場合は超過領域として100%に補正する。
【0043】
これにより、OPEN動作・CLOSE動作に関わらず、同種制御領域における開閉体の動作割合が等しければパルスカウント値が等しくなり、動作割合と開閉体の動作状態を一義的に対応させることが可能となる。すなわち、前述のように、スライド動作では、ルーフ開口率とルーフパネル3の位置が、チルト動作では、チルト開口率とルーフパネル3の開度を一義的に対応させることが可能となる。
【0044】
実施形態として、車両の外側にルーフパネルが張り出すとともにスライド動作をする例を示したが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
例えば、前述の実施の形態における基準パルス値やその配分は一例であり、本発明の制御形態が前記数値に限定されないのは言うまでもない。また、チルト動作とスライド動作の両方に前述の制御を適用する必要はなく、チルト動作のみ、あるいは、スライド動作のみに本発明を適用することも可能である。さらに、チルト動作のみ、あるいは、スライド動作のみを行う開閉体にも本発明は適用可能である。