特許第6676462号(P6676462)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676462
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】堤防補強工法
(51)【国際特許分類】
   E02B 3/10 20060101AFI20200330BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20200330BHJP
   E02D 17/20 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   E02B3/10
   E02D17/18 A
   E02D17/20 103G
   E02D17/20 103B
   E02D17/18 Z
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-98169(P2016-98169)
(22)【出願日】2016年5月16日
(65)【公開番号】特開2017-206826(P2017-206826A)
(43)【公開日】2017年11月24日
【審査請求日】2019年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】515162442
【氏名又は名称】旭化成アドバンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100122404
【弁理士】
【氏名又は名称】勝又 秀夫
(74)【代理人】
【識別番号】100135895
【弁理士】
【氏名又は名称】三間 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100142387
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 都子
(72)【発明者】
【氏名】関下 啓誠
【審査官】 神尾 寧
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−268426(JP,A)
【文献】 特開2003−82666(JP,A)
【文献】 特開平6−17435(JP,A)
【文献】 特開平8−209704(JP,A)
【文献】 特開2014−70477(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0291962(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02B 3/10
E02D 17/18
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
網状部材からなる外枠を備えたかご型枠と、該かご型枠の一端側に延びるように予め一体化された補強用シートとを有するかご型枠複合体を用いた堤防補強工法であって、以下の工程:
(1)堤体法面の法尻部を掘削する、
(2)掘削された前記法尻部に、前記補強用シートの端部を該法尻部に合わせて、1つ目の前記かご型枠複合体を敷設する、
(3)1つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土、転圧する、
(4)前記堤体法面のうち前記盛土の上段部分を掘削する、
(5)前記盛土の法面を前記かご型枠で覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体を敷設する、
(6)前記盛土の上面を覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを敷設する、
(7)2つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土する、
(8)前記堤体法面のうち2つ目の前記かご型枠複合体の上段部分を掘削する、
(9)(5)〜(8)を繰り返し、
(10)所定の高さまで前記かご型枠複合体を敷設した後、前記かご型枠内に中詰め材を充填する、
を有することを特徴とする堤防補強工法。
【請求項2】
前記補強用シートの長さが、1m以上である、請求項1に記載の堤防補強工法。
【請求項3】
前記補強用シートが、織布、不織布、ジオグリッドおよび金網からなる群から選ばれる1つ、あるいは2つ以上を組み合わせたものである、請求項1または2に記載の堤防補強工法。
【請求項4】
前記工法が施される前記堤体法面が、堤内側である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の堤防補強工法。
【請求項5】
前記外枠が、網状部材よりなるパネルを箱型に固定したものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の堤防補強工法。
【請求項6】
前記網状部材が、鉄線、鉄筋から構成されたものである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の堤防補強工法。
【請求項7】
前記かご型枠において、前記外枠の中に合成繊維シートからなる袋体が取り付けされ一体化されている、請求項1〜6のいずれか一項に記載の堤防補強工法。
【請求項8】
前記中詰め材が、前記袋体内に充填されるコンクリートである、請求項7に記載の堤防補強工法。
【請求項9】
前記袋体が、コンクリートの注入口を有する、請求項7または8に記載の堤防補強工法。
【請求項10】
前記中詰め材が、砕石である、請求項1〜6のいずれか一項に記載の堤防補強工法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、河川や海岸の堤防補強工法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、堤防又は法面保護工事は、例えば保護すべき土面を整地して突き固めた上にフィルターを敷設し、更に栗石を積み重ねた後、その上面にセメントモルタルを目地に施しながらコンクリートブロックを張り付けていた。
しかしながら、かかる工法は手間を要し工期が長引き、また、コンクリートブロックの張り付けに熟練した専門工を必要とする等の欠点があった。
【0003】
そこで、これらの欠点を解消するために、予め織布等のシートにコンクリートブロックを接着した地表浸食防止用マット(ブロックマット)を工場で生産し、保護すべき法面を整地した上にこのマットを敷設する考案が開示されている(例えば特許文献1参照)。通常の法面保護工(ブロックマット)は法面に置かれた状況であり、必要に応じてアンカーピン(杭)などで固定される。法面に敷設されたブロックは、その重量や形状によって決まる抵抗力により水流の掃流力に抵抗する。
上述したようなブロックマットを法面に敷設する際には、ブロックマットをクレーンでつり上げての作業となる。この場合、現場にクレーンを据えての作業となるが、現場の状況によってはクレーン作業が困難な場合もある。
これに対し、金属線等からなるかご型枠内にコンクリートを打設した、かごを用いた補強工法が採用されている(例えば特許文献2参照)。この工法によればクレーンを必要とせず、現場での組み立て、打設が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−026947号公報
【特許文献2】特開2009−046819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、海岸堤防や河川堤防においては、津波や河川水流が堤防を越えて越流する際に、法面保護工の破壊、流失が発生する事例がある。例えば図15に示すように、(1)押し波の作用により水流が海岸堤防を破壊、(2)水流が天端部で高速となることによって裏法面の保護工などが流失、(3)さらに天端保護工の流失、保護工の隙間から堤体土の流失などが発生し、堤防の決壊につながるおそれがある。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて考案されたものであり、従来の法面保護工より掃流力に対する抵抗性を向上させるとともに、堤体盛土の補強もすることができる、改良された堤防補強工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を行った結果、かご型枠の端部に補強用シートを予め一体化させておき、この補強用シートを堤体内に埋め込むことで、保護工に作用する掃流力に、シートと堤体土質との摩擦力、シートの引張力を加味することができることに想到し、本発明を実現するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
網状部材からなる外枠を備えたかご型枠と、該かご型枠の一端側に延びるように予め一体化された補強用シートとを有するかご型枠複合体を用いた堤防補強工法であって、以下の工程:
(1)堤体法面の法尻部を掘削する、
(2)掘削された前記法尻部に、前記補強用シートの端部を該法尻部に合わせて、1つ目の前記かご型枠複合体を敷設する、
(3)1つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土、転圧する、
(4)前記堤体法面のうち前記盛土の上段部分を掘削する、
(5)前記盛土の法面を前記かご型枠で覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体を敷設する、
(6)前記盛土の上面を覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを敷設する、
(7)2つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土する、
(8)前記堤体法面のうち2つ目の前記かご型枠複合体の上段部分を掘削する、
(9)(5)〜(8)を繰り返し、
(10)所定の高さまで前記かご型枠複合体を敷設した後、前記かご型枠内に中詰め材を充填する、
を有することを特徴とする堤防補強工法。
[2]
前記補強用シートの長さが、1m以上である、[1]に記載の堤防補強工法。
[3]
前記補強用シートが、織布、不織布、ジオグリッドおよび金網からなる群から選ばれる1つ、あるいは2つ以上を組み合わせたものである、[1]または[2]に記載の堤防補強工法。
[4]
前記工法が施される前記堤体法面が、堤内側である、[1]〜[3]のいずれか一つに記載の堤防補強工法。
[5]
前記外枠が、網状部材よりなるパネルを箱型に固定したものである、[1]〜[4]のいずれか一つに記載の堤防補強工法。
[6]
前記網状部材が、鉄線、鉄筋から構成されたものである、[1]〜[5]のいずれか一つに記載の堤防補強工法。
[7]
前記かご型枠において、前記外枠の中に合成繊維シートからなる袋体が取り付けされ一体化されている、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の堤防補強工法。
[8]
前記中詰め材が、前記袋体内に充填されるコンクリートである、[7]に記載の堤防補強工法。
[9]
前記袋体が、コンクリートの注入口を有する、[7]または[8]に記載の堤防補強工法。
[10]
前記中詰め材が、砕石である、[1]〜[6]のいずれか一項に記載の堤防補強工法。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、かご型枠の端部に、補強用シートを予め一体化させておき、この補強用シートを堤体内に埋め込むことで、かご型枠に作用する掃流力に、シートと堤体土質との摩擦力、シートの引張力を加味することができ、従来の保護工より掃流力に対する抵抗性を向上させるとともに、堤体盛土の補強もすることができる、改良された堤防補強工法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】発明の堤防補強工法により形成された堤防保護工を模式的に示す断面図。
図2】本発明において用いられるかご型枠複合体の一例を示す斜視図。
図3】網状部材よりなる外枠の組立て方法の例を示す図。
図4】網状部材よりなる外枠の組立て方法の例を示す図。
図5】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図6】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図7】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図8】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図9】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図10】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図11】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図12】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図13】本発明の堤防補強工法を説明するための模式図。
図14】本発明において用いられるかご型枠複合体の他の一例を示す斜視図。
図15】堤防裏法面保護工からの被災メカニズムを説明するための模式図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の堤防補強工法により形成された堤防保護工を模式的に示す断面図である。
本発明の堤防補強工法は、かご型枠を用いた堤防補強工法であって、かご型枠1一端側に延びるように補強用シート8が予め一体化されてかご型枠複合体9とされており、補強用シート8を堤体内に埋め込むことを特徴とする。
かご型枠を用いた堤防法面補強工事において、補強用シート8を堤体内に埋め込むことで、かごに作用する掃流力に、シートと堤体土質との摩擦力、シートの引張力を加味することができ、従来の法面保護工より掃流力に対する抵抗性を向上させるとともに、堤体盛土の補強もすることができる。
【0011】
<第1実施形態>
まず、本発明の工法において用いられるかご型枠複合体9について説明する。
図2は、本発明において用いられるかご型枠複合体9の一例を示す斜視図である。
かご型枠複合体9は、かご型枠1と、かご型枠1の一端側に延びるように、予め一体化された補強用シート8とを有する。かご型枠1は、網状部材よりなる外枠2に合成繊維シートにて作製した袋体3を取り付け一体化して成る。
【0012】
図3図4に網状部材よりなる外枠2の組立て方法の例を示す。外枠2の組立ては、工場、作業ヤード、施工現場近くの陸上、または施工現場近くの船上等の任意の場所で実施することができる。また、外枠2の組立て方法としては、網状部材から直接外枠2を組立てることもできるが、網状部材からパネルを作成し、これを組み立てて箱型とすることが好ましい。網状部材を箱型にして現場に搬入せず、パネル6,7を搬入し箱型に組み立て固定することにより、運送容積を稼いで運送コストの低減が図れるのでより好ましい。パネルの形状としては、図3のように2つのコの字パネル6を組立てる方法や、図4のように6枚の平パネル7を組立てる方法がある。好適なのはコの字パネル6を2つ組立てる方法である。
【0013】
網状部材としては、通水性、通気性を有し、かつ、袋体3を支持するに必要な強度を有する材料であれば金属材料、樹脂、繊維等の有機高分子材料等またはそれらを組みあわせた複合材料等、任意の材料を用いることができる。金属材料としては鉄線、異型鉄線、エキスパンドメタル、有孔金網等の金属材料が好ましく用いられる。より好適なのは線径や間隔が自由に設定できる鉄線、鉄筋である。この鉄線の線径は2.6〜8.0mm、間隔は50〜250mmのものが用いられる。また鉄筋においては呼び径D10〜D16、間隔は100〜300mmのものが用いられる。最も好適なのは鉄線であり、線径は5.0〜8.0mmで間隔が100〜200mmのものであり、この線径、間隔にすることにより、正確な寸法に形状保持が可能である。パネルの固定方法としては、点溶接、結束線、金属結束タイ等があるが、外枠の大きさにより適宜使い分ける。
【0014】
外枠2内に取り付ける袋体3に使用する合成繊維シートは、織布や不織布が通常用いられ、織布のものが好ましく用いられる。ここで、織布としては、ナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の糸を、経糸と緯糸と交差させて織り上げたものが用いられ、特にポリエステルのものが好ましく用いられる。またこの糸の太さは500〜5,000dtex、織密度は10〜40本/インチのものが用いられ、特に糸の太さが1,500〜2,000dtex、織密度が20〜30本/インチのものが好ましく用いられる。このような織布は、引張強さの大きいことと適度な伸びがあることから極めてタフであり高度の耐衝撃性を有し、常態では勿論のこと、水中など湿潤時においても引張強さの低下はほとんどなく、コンクリート打設に充分耐え得るものである。
【0015】
袋体3には、コンクリートの注入口4と、かご型枠1内の水を排出させたい場合は排出口5を取り付けるが、材質は袋体3に使用する合成繊維シートが用いられ、形状、サイズは、コンクリート注入ホースの形状、サイズに合わせ、任意に替えたものを取り付け可能である。また、この注入口4と排出口5にはあらかじめ結束ロープを取り付けておくのが好ましい。この注入口4の結束ロープは、差し込んだコンクリート注入ホースと注入口4を縛ったり、コンクリート注入が終了した後の注入口4を閉じることに使用する。また、この排出口5の結束ロープは、袋体の水を排出したい時、ポンプホースと排出口5を縛ったり、コンクリート注入が終了し袋体の水の排出が終了した後の排出口5を閉じることに使用する。
【0016】
なお、注入口4と排出口5の位置は、注入コンクリートと排出水が混じらないように、お互いを離して袋体3の端部側に取り付けることが好ましい。
【0017】
この合成繊維シートで製作した袋体3を外枠2へ取り付け一体化する方法としては、外枠2、袋体3にあらかじめ取り付けた連結治具同士を連結する方法や、ベルト、ロープ等で結束する方法等任意の方法を用いることができる。袋体3にあらかじめ結束ベルトや結束ロープを取り付けて外枠2に結束する方法や、袋体3に穴開ベルトをあらかじめ取り付けて穴開ベルトにロープ等を通し外枠と結束する方法が好ましく用いられ、袋体3にあらかじめ結束ベルトを取り付け外枠2に結束する方法がより好ましく用いられる。
【0018】
補強用シート8は、外枠2の一端側に延びるように取り付けられ一体化されている。補強用シート8は、外枠2の少なくとも一面を覆うように取り付けられていてもよいし、外枠2の一辺のみに取り付けられていてもよい。補強用シート8は、外枠2の外側に配されていても、一部が外枠2の内側に配されていてもよい。図2に示す例では、外枠2の2面を覆うように取り付けられている。
補強用シート8は、織布、不織布、ジオグリッドおよび金網からなる群から1つ、あるいは2つ以上を組み合わせたものであることが好ましい。織布としては、合成繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等のオレフィン系繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリ塩化ビニリデン繊維、ポリビニルアルコール繊維等の汎用繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド等の機能繊維、天然繊維、再生化学繊維等が挙げられ、これらを単独でも組み合わせて用いてもよい。また、タスラン加工糸やスパン加工糸を使用してもよい。シートは織布、編物を問わないが、伸びの少ない織布であることが好ましい。
【0019】
補強用シート8としては、ジオグリッドを用いることが好ましい。ジオグリッドを用いることにより、シートと堤体土質との摩擦力を高めることができる。
ジオグリッドは格子状の高分子材料であり、補強土壁を構築する際に盛土に敷設される盛土補強用の面状補強材や層厚管理材に用いられるものであるが、本発明の目的を満たすために、強度、厚さ、高分子材料の太さ、縦横方向の間隔等を適宜調整したものを用いることが可能である。
【0020】
ジオグリッドとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリエステル、ポリアミド等の単独の高分子材料からなるもの、または、これらの高分子材料を被覆材とし、更に、アラミド繊維、高延伸ポリプロピレン繊維、高延伸ポリプロピレンテープ、高延伸ポリアセタール繊維等の高強度繊維またはテープ等を芯材として含むものを用いることもできる。
法面補強工事において堤体に埋め込まれる補強用シート8の長さは、1m以上とすることが好ましい。1m以上とすることにより、シートと堤体土質との摩擦力を十分に確保することができる。
【0021】
この補強用シート8を外枠へ取り付け一体化する方法としては、上述したような袋体の外枠2へ取り付け一体化する方法と同様に、外枠2、補強用シート8にあらかじめ取り付けた連結治具同士を連結する方法や、ベルト、ロープ等で結束する方法等任意の方法を用いることができる。補強用シート8にあらかじめ結束ベルトや結束ロープを取り付けて外枠2に結束する方法や、補強用シート8に穴開ベルトをあらかじめ取り付けて穴開ベルトにロープ等を通し外枠2と結束する方法、補強用シート8にあらかじめ結束ベルトを取り付け外枠2に結束する方法が用いられる。
網状部材を組み立てて外枠とした後に補強用シート8を取り付けてもよいし、網状部材の1つに補強用シート8を取り付けた後に、組み立てて外枠2としてもよい。
【0022】
図5図13は、本発明の堤防補強工法を説明するための模式図である。
本実施形態の堤防補強工法は、網状部材からなる外枠の中に合成繊維シートからなる袋体を取り付け一体化させたかご型枠と、該かご型枠の一端側に延びるように予め一体化された補強用シートとを有するかご型枠複合体を用いた堤防補強工法であって、以下の工程:
(1)堤体法面の法尻部を掘削する、
(2)掘削された前記法尻部に、前記補強用シートの端部を該法尻部に合わせて、1つ目の前記かご型枠複合体を敷設する、
(3)前記補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土、転圧する、
(4)前記堤体法面のうち前記盛土の上段部分を掘削する、
(5)前記盛土の法面を前記かご型枠で覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体を敷設する、
(6)前記盛土の上面を覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを敷設する、
(7)2つ目の前記かご型枠複合体の前記補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土する、
(8)前記堤体法面のうち2つ目の前記かご型枠複合体の上段部分を掘削する、
(9)(5)〜(8)を繰り返し、
(10)所定の高さまで前記かご型枠複合体を敷設した後、前記袋体内にコンクリートを打設する、
を有する。
以下、各工程について詳しく説明する。
【0023】
(1)堤体法面10の法尻部11を掘削する。
図5図6に示すように、堤体法面10の法尻部11を掘削する。
【0024】
(2)掘削された法尻部に、補強用シート8の端部を法尻部に合わせて、1つ目のかご型枠複合体9を敷設する。
図7に示すように、補強用シート8の端部を法尻部11に合わせて、かご型枠複合体9を敷設する。アンカーピンを打ち込むことなどにより、かご型枠複合体9を固定してもよい。
【0025】
(3)1つ目のかご型枠複合体9の前記補強用シート8を埋めるように所定高さまで盛土、転圧する。
図8に示すように、補強用シート8上に盛土12を施す。盛土12は、法面13と上面14とを有する略台形状に形成される。盛土12の法面13を規定する法面材を用いてもよい。
次いで、盛土12の上面14を転圧して平坦な転圧面を形成する。これにより補強用シート8を堤体中に強固に埋設することができる。
続く(5)の工程で、盛土12の法面13にかご型枠複合体9のかご型枠1を敷設する際に、かご型枠1が余ったり不足したりすることがないように、盛土12の法面13の長さは、かご型枠1の長さとほぼ同じとすることが好ましい。
また、続く(6)の工程で、盛土12の上面14にかご型枠複合体9の補強用シート8を敷設する際に、補強用シート8が余ることがないように、盛土12の上面14の長さは、補強用シート8の長さよりも長くすることが好ましい。
【0026】
(4)堤体法面10のうち盛土12の上段部分を掘削する。
図9に示すように、堤体法面10のうち盛土12の上段部分を掘削する。
【0027】
(5)盛土12により形成される法面13をかご型枠1で覆うように、2つ目のかご型枠複合体9を敷設する。
図10に示すように、2つ目のかご型枠複合体9のかご型枠1を盛土12の法面13に敷設する。このとき、かご型枠複合体9の補強用シート8の部分は、折り曲げて、かご型枠複合体9側に重ねておく。
アンカーピンを打ち込むことなどにより、かご型枠1を法面に固定してもよい。これによりかご型枠1を強固に敷設することができる。
【0028】
(6)盛土12の上面14を覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体9の補強用シート8を敷設する。
図11に示すように、かご型枠1と補強用シート8との境を支点として補強用シート8を回動させることにより、盛土12の上面14を覆うように補強用シート8を敷設する。
【0029】
(7)2つ目のかご型枠複合体9の補強用シート8を埋めるように所定高さまで盛土する。
図12に示すように、2つ目の補強用シート8上に盛土12を施し、盛土12の上面14を転圧して平坦な転圧面を形成する。
これにより、法面の法尻部11の補強(1つ目)と、1段目のかご型枠複合体9(2つ目)の法面への敷設が完了する。
【0030】
(8)堤体法面のうち2つ目のかご型枠複合体9の上段部分を掘削する。
(9)(5)〜(8)を、所定の高さとなるまで繰り返す。
3つ目以降(2段目以降)のかご型枠複合体9も、(5)〜(8)で説明した、2つ目(1段目)のかご型枠複合体9の敷設と同じように、かご型枠複合体9の敷設、補強用シート8の敷設、盛土および転圧、法面の掘削、からなる一連の工程を進行させ、所望の高さになるまで繰り返す(図13)。
【0031】
(10)所定の高さまでかご型枠複合体を敷設した後、かご型枠内に中詰め材を充填する。
具体的には、所定の高さまでかご型枠複合体9を敷設した後、袋体3内にコンクリートを打設する。
袋体3へのコンクリート注入の方法は、袋体3の注入口4に、コンクリート注入ホースを指し込み、注入口4と注入ホースを接続し、その後袋体内にコンクリートを注入し、袋体内に所定のコンクリートが充填されたら、注入口4からコンクリート注入ホースを抜き取り、注入口4を閉鎖する。注入口4と注入ホースとの取付け、及び注入口4の閉鎖には、注入口4に取り付けたロープを用いるのが好ましい。順次、連続してかご型枠複合体9の袋体内にコンクリートの注入を行う。
かご型枠1の袋体3へのコンクリートの注入は、一段ずつ行ってもよいし、複数段すべてのかご型枠複合体9を敷設した後に、一度にまとめて行ってもよい。
なお、最上部には、管理用道路等アスファルト、コンクリート舗装がなされたり、他の構造物を構築するために、盛土以外の材料が積上げられる場合がある。
【0032】
<第2実施形態>
つぎに、本発明の工法において用いられるかご型枠複合体9の他の実施形態について説明する。なお、以下の説明では上述した第1実施形態と異なる部分について主に説明し、同様の部分についてはその説明を省略する。
図14は、かご型枠複合体9の他の一例(第2実施形態)を示す斜視図である。
かご型枠複合体9は、かご型枠1と、かご型枠1の一端側に延びるように、予め一体化された補強用シート8とを有する。かご型枠1は、網状部材よりなる外枠2からなる。かご型枠1内には、中詰め材として砕石20等が充填されている。
【0033】
外枠2に袋体が取り付けられていないこと、中詰め材として袋体内に充填されたコンクリートではなく、かご型枠1内に砕石20等を充填していること以外は、基本的には第1の実施形態のかご型枠複合体と同様であり、その施工方法もほぼ同様である。すなわち、
(1)堤体法面の法尻部を掘削する、
(2)掘削された前記法尻部に、補強用シートの端部を法尻部に合わせて、1つ目の前記かご型枠複合体を敷設する、
(3)1つ目のかご型枠複合体の前記補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土、転圧する、
(4)堤体法面のうち前記盛土の上段部分を掘削する、
(5)盛土の法面を前記かご型枠で覆うように、2つ目のかご型枠複合体を敷設する、
(6)盛土の上面を覆うように、2つ目の前記かご型枠複合体の補強用シートを敷設する、
(7)2つ目のかご型枠複合体の補強用シートを埋めるように所定高さまで盛土する、
(8)堤体法面のうち2つ目のかご型枠複合体の上段部分を掘削する、
(9)(5)〜(8)を繰り返し、
(10)所定の高さまで前記かご型枠複合体を敷設した後、かご型枠内に中詰め材を充填する。
(10)において、所定の高さまでかご型枠複合体9を敷設した後、かご型枠1内に砕石20等の中詰め材を充填する。かご型枠1への砕石20の充填は、一段ずつ行ってもよいし、複数段すべてのかご型枠複合体9を敷設した後に、一度にまとめて行ってもよい。
【0034】
上記のように構成されたかご型枠複合体を用いることで、盛土上に補強用シートが位置するように敷き込んで補強用シートを固定することで、かご型枠全体を固定することが可能である。そして、かご型枠を法面の表面に敷き込むことで、該法面を補強することが可能である。
このようにして形成される堤防保護工は、補強用シートが堤体内に埋め込まれていることで、かご型枠に作用する掃流力に、シートと堤体土質との摩擦力、シートの引張力を加味することができ、従来のブロックマットおよび蛇篭より掃流力に対する抵抗性が向上するとともに、堤体盛土も補強されたものとなる。
とくに、本発明の目的が、海岸や河川堤防において津波や河川水流が堤防を越えて越流する際の、法面保護工の破壊、流失を防ぐことであることから、本発明の堤防補強工法が施される堤体法面は、堤内側であることが好ましい。もちろん、堤外側法面の補強工事や、堤防以外の法面補強工事にも本発明の工法を適用することができる。
【0035】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明による工法を用いることで、掃流力に対する抵抗性を向上させるとともに、堤体盛土の補強もすることができるものとなり、堤防法面の補強工法として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0037】
1 :かご型枠
2 :外枠
3 :袋体
4 :注入口
5 :排出口
6 :コの字パネル
7 :平パネル
8 :補強用シート
9 :かご型枠複合体
10 :堤体法面
11 :法尻部
12 :盛土
13 :法面
14 :上面
20 :砕石
図1
図2
図3
図4
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