(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を
図1〜
図8に基づいて説明する。
図1及び
図2に示すように、本実施形態の製造ライン10は、金型搬送路11に沿って金型70を搬送する金型搬送装置20と、金型70に発泡樹脂原料を注入する注入装置31と、金型70を型閉じする型閉じ装置32と、金型70を加熱する加熱炉50と、金型70を型開きする型開き装置33と、を備えている。そして、製造ライン10は、金型70を搬送しながら、金型70内に注入した発泡樹脂原料を加熱炉50にて発泡硬化させて、発泡成形品を製造する。なお、
図3に示すように、金型70は、容器状をなす下型72の開口縁部に上型71が回動可能に取り付けられた構成になっていて、上型71が下型72の開口を開放したときに型開き状態となり、上型71が下型72の開口を閉塞したときに型閉じ状態となる。金型70が型閉じ状態になると、上型71と下型72との間には、発泡成形品を成形するための図示しないキャビティが形成される。
【0018】
金型搬送装置20は、金型70を金型搬送路11に沿って周回搬送する。ここで、
図1及び
図2における上下方向、左右方向をそれぞれ縦方向、横方向と呼ぶことにすると、金型搬送路11には、縦方向に延びる1対の縦搬送路11A,11Aと、横方向に延びて1対の縦搬送路11A,11Aの間を連絡する複数の横搬送路11Bと、が備えられている。1対の縦搬送路11A,11Aは、互いに逆方向に金型70を搬送するように構成されている。具体的には、1対の縦搬送路11A,11Aのうち一方の縦搬送路11Aは、縦方向の一端側から他端側へ金型70を搬送する縦送給路11A1となっていて、他方の縦搬送路11Aは、縦方向の他端側から一端側へ金型70を搬送する縦返還路11A2となっている。また、複数の横搬送路11Bには、横方向の一端側から他端側へ金型70を搬送する横送給路11B1と、横方向の他端側から一端側へ金型70を搬送する横返還路11B2の2種類が設けられている。横返還路11B2は、縦送給路11A1と縦返還路11A2の一端部同士を連絡する。横送給路11B1は、横返還路11B2に対して縦方向の他端側で縦送給路11A1と縦返還路11A2との間を連絡する。
【0019】
上述の如く構成された金型搬送路11によって、金型70は、以下のように、搬送される。即ち、金型70は、まず、縦送給路11A1の一端部から他端側へと搬送され、横送給路11B1を通って縦返還路11A2へと渡される。次いで、金型70は、縦返還路11A2の一端側へと搬送され、横返還路11B2を通って縦送給路11A1の一端部へと戻される。以上を繰り返して、金型70は、金型搬送路11を周回する。
【0020】
なお、金型搬送路11には、金型70の交換を目的として、金型搬送路11上から金型70を外部に排出するための排出路11Cと、金型搬送路11上に金型70を導入するための導入路11Dと、が備えられている。本実施形態では、排出路11C及び導入路11Dは、横方向に延びて縦送給路11A1の中間部に連絡している。
【0021】
図1に示すように、金型搬送装置20は、縦搬送路11Aと横搬送路11Bを構成するチェーンコンベア21を複数備えている。
図3及び
図4に示すように、チェーンコンベア21は、金型搬送路11の幅方向に対向配置される1対の支持ベース22、22と、各支持ベース22に回転可能に支持されるチェーンベルト23と、を有し、図示しない駆動源により1対のチェーンベルト23,23を駆動して、それら1対のチェーンベルト23,23上に取り付けられるパレット75を金型搬送路11に沿って搬送する。そして、このパレット75上に、金型70が搭載される。本実施形態では、チェーンベルト23に取り付けられるパレット75に金型70が搭載されるので、チェーンベルト23に金型70が直接取り付けられる場合と比較して、金型70の交換が容易となる。
【0022】
また、金型搬送装置20には、
図6に示すように、縦搬送路11Aと横搬送路11Bとの間でパレット75を受け渡すための方向転換装置25が備えられている。具体的には、縦搬送路11Aと横搬送路11Bとは、異なる高さに配置され、方向転換装置25は、下流側の搬送路(
図6の例では、横搬送路11B)に配設されて、上流側の搬送路(
図6の例では、縦搬送路11A)に沿って延びるチェーンコンベア26が昇降可能な構造になっている。方向転換装置25は、チェーンコンベア26が上流側の搬送路を構成するチェーンコンベア21と略同じ高さに配置された状態で、上流側の搬送路から搬送されてきたパレット75を受け取る。次いで、方向転換装置25は、チェーンコンベア26を昇降させて、チェーンコンベア26を下流側の搬送路を構成するチェーンコンベア21と略同じ高さに配置し、下流側の搬送路へパレット75を渡す。これにより、縦搬送路11Aと横搬送路11Bとの間でパレット75が受け渡される。なお、
図6では、チェーンコンベア21,26が模式的に示されている。
【0023】
図4に示すように、パレット75は、複数の金型70を横並びにして搭載可能となっている。具体的には、金型70には、サイズが異なる複数種類が存在し、サイズの大きい金型70については、パレット75に1つだけ搭載され(
図5(A)参照)、サイズの小さい金型70については、パレット75に複数搭載されるようになっている(
図5(B)には、金型70が2つ搭載された例が示されている。)。このように、本実施形態によれば、パレット75に搭載する金型70のバリエーションを変更することで、種々の発泡成形品の製造に対応することが可能となる。なお、パレット75は、例えば、ステンレス等の金属で構成されている。
【0024】
パレット75の前面には、パレット75に搭載可能な金型70の数だけカードホルダ76が設けられている。カードホルダ76には、パレット75に搭載可能な金型70を識別するための識別子(例えば、バーコードや2次元コード)が記載されたカード77が取り付けられる。カード77に記載された識別子は、金型搬送路11の近傍に備えられた読取装置78(
図7参照)によって読み取られる。後に説明するが、読取装置78は、製造ライン10における複数箇所に備えられている。なお、
図4及び
図5において、カードホルダ76に取り付けられたカード77には、ハッチングが施されて示されている。
【0025】
図1及び
図2に示すように、注入装置31と型閉じ装置32は、横返還路11B2と縦送給路11A1との連絡部分の近傍に配置され、型開き装置33は、縦返還路11A2と横返還路11B2との連絡部分の近傍に備えられている。また、加熱炉50は、縦送給路11A1と縦返還路11A2との間に配置されている。そして、上述した横送給路11B1が加熱炉50内を通過するように配置されている。
【0026】
注入装置31は、例えば、ロボットで構成されている。なお、製造ライン10には、発泡樹脂原料を貯留する貯留タンク(図示せず)が備えられていて、その貯留タンクから発泡成形品の製造に必要な量の発泡樹脂原料が計量されて、注入装置31に供給される。
【0027】
型閉じ装置32は、型開き状態の金型70における上型71のレバー71A(
図3参照。
図4及び
図5では、省略されている。)を押し下げることで、上型71を下方に回動させ、金型70を型閉じする。詳細には、注入装置31と型閉め装置32は、金型70の搬送方向に沿って順番に配置され、型閉め装置32は、金型70内に発泡樹脂原料が注入されると直ぐに金型70を型閉じするようになっている。従って、パレット75に複数の金型70が搭載される場合には、発泡樹脂原料の注入が終了した金型70から順番に型閉じが行われる。なお、本実施形態では、型閉じ装置32は、ロボットで構成されてもよいし、型閉じ専用の装置で構成されてもよい。なお、金型70の上型71が複数の分割型に分かれている場合には、発泡樹脂原料の注入前に上型71の一部の分割型が型閉じされ、発泡樹脂原料の注入後に上型71の残りの分割型が型閉じされてもよい。この場合、型閉じ装置32は、注入装置31の上流側と下流側の2箇所に設けられることになる。
【0028】
型開き装置33は、加熱炉50を通過してきた型閉じ状態の金型70を型開きする。具体的には、型開き装置33は、型閉じ状態の金型70における上型71のレバー71A(
図3参照)を上方に持ち上げることで、上型71を上方に回動させ、金型70を型開きする。本実施形態では、型開き装置33は、型開き専用の装置で構成されていて、パレット75に複数の金型70が搭載されている場合であっても、それら複数の金型70における上型71のレバー71Aを同時に持ち上げて、複数の金型70を一斉に型開きするように構成されている。
【0029】
図1に示すように、加熱炉50は、横方向に延びるトンネル状をなし、加熱炉50の入口部分と出口部分は、2重シャッター構造になっている。具体的には、加熱炉50は、入口側から順に、導入部屋51、中間部屋52及び排出部屋53を並べて備えた構造になっていて、導入部屋51の入口側と排出部屋53の出口側のそれぞれに、外シャッター54を有し、導入部屋51と中間部屋52との境界部分と排出部屋53と中間部屋52との境界部分のそれぞれに、内シャッター55を有している。加熱炉50は、金型70を受け入れる際には、まず、導入部屋51の外シャッター54を開いて導入部屋51に金型70を受け入れ、その後、外シャッター54を閉じる。次いで、導入部屋51の内シャッター55を開いて、導入部屋51内の金型70を中間部屋52に受け入れ、その後、内シャッター55を閉じる。中間部屋52に受け入れられた金型70は、金型搬送装置20によって排出部屋53側へと搬送される。加熱炉50は、金型70を排出する際には、まず、排出部屋53の内シャッター55を開いて排出部屋53に金型70を受け入れ、その後、内シャッター55を閉じる。次いで、排出部屋53の外シャッター54を開いて、排出部屋53内の金型70を外部に排出し、その後、外シャッター54を閉じる。このように、加熱炉50では、2重シャッター構造をとることで、中間部屋52が加熱炉50の外部と連通した状態になることが抑制され、中間部屋52の温度を一定に保ち易くなっている。
【0030】
ところで、本実施形態の製造ライン10は、ホットキュアフォームで構成される発泡成形品(以下、「ホットキュアフォーム成形品」と言う。)と、コールドキュアフォームで構成される発泡成形品(以下、「コールドキュアフォーム成形品」と言う。)の2種類を製造可能となっている。ホットキュアフォームは、コールドキュアフォームよりも比重が大きく、耐久性が高くなっている。なお、コールドキュアフォーム成形品の例としては、自動車のシートクッションやアームレスト等が挙げられ、ホットキュアフォーム成形品の例としては、自動二輪車のサドル等が挙げられる。
【0031】
製造ライン10では、発泡樹脂原料として、コールドキュアフォーム用ウレタン原料とホットキュアフォーム用ウレタン原料の2種類が用いられる。ホットキュアフォーム用ウレタン原料は、コールドキュアフォーム用ウレタン原料よりも発泡硬化温度が高温で、発泡硬化時間が長くなっている。なお、コールドキュアフォームは、コールドキュアフォーム用ウレタン原料を60〜80℃の温度下に4〜10分間保持することで得られ、ホットキュアフォームは、ホットキュアフォーム用ウレタン原料を120〜150℃の温度下に15〜25分間保持することで得られる。
【0032】
図1及び
図2に示すように、製造ライン10では、加熱炉50として、互いに独立して温度を設定可能な第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bが設けられている。製造ライン10がホットキュアフォーム成形品とコールドキュアフォーム成形品の2種類の発泡成形品を製造する場合、第1加熱炉50Aは、コールドキュアフォーム用ウレタン原料の発泡硬化温度である60〜80℃に設定され、第2加熱炉50Bは、ホットキュアフォーム用ウレタン原料の発泡硬化温度である120〜150℃に設定される。
【0033】
また、
図1及び
図2に示すように、製造ライン10では、金型搬送路11に、縦送給路11A1と縦返還路11A2との間に差し渡される横送給路11B1が複数備えられていて、各横送給路11B1が加熱炉50を通過するようになっている。そして、複数の横送給路11B1のうち一部の横送給路11B1が、第1加熱炉50Aを通過する第1分岐路13を構成し、残りの横送給路11B1が、第2加熱炉50B内を通過する第2分岐路14を構成する。ここで、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bとは同じ長さになっていて第2分岐路14の数は、第1分岐路13の数より多くなっている。具体的には、本実施形態では、横送給路11B1が3つ備えられていて、1つの横送給路11B1が第1分岐路13を構成し、残り2つの横送給路11B1がそれぞれ第2分岐路14を構成する。このように、本実施形態の製造ライン10では、金型搬送路11のうち加熱炉50を通過する部分に、第1加熱炉50A内を通過する1本の第1分岐路13と、第2加熱炉50B内を通過する2本の第2分岐路14と、が分岐して設けられている。なお、本実施形態では、第1分岐路13は、1対の第2分岐路14,14に対して、横返還路11B1に近い側に配置されている。また、本実施形態では、第1分岐路13と第2分岐路14においても同じ長さになっている。
【0034】
金型搬送装置20は、第1分岐路13及び第2分岐路14において、パレット75を間欠的に搬送する。第1分岐路13によるパレット75の搬送ペースは、第2分岐路14によるパレット75の搬送ペースよりも速くなっている。具体的には、第1分岐路13上のパレット75は、60秒間隔で所定距離ずつ搬送され、第2分岐路14上のパレット75は、240秒間隔で所定距離ずつ搬送される。また、1対の第2分岐路14,14の間では、パレット75を搬送するタイミングがずらされていて、一方の第2分岐路14においてパレット75が搬送される周期は、他方の第2分岐路14においてパレット75の搬送される周期に対して半周期分(120秒)だけずれている。従って、1対の第2分岐路14,14は、第2加熱炉50Bにパレット75を交互に導入し、第2加熱炉50Bからパレット75を交互に排出する。なお、第1分岐路13にて搬送されるパレット75が第1加熱炉50Aを通過する時間は、コールドキュアフォーム用ウレタン原料の発泡硬化時間である4〜10分になっていて、第2分岐路14にて搬送される金型70が第2加熱炉50Bを通過する時間は、ホットキュアフォーム用ウレタン原料の発泡硬化時間である15〜25分になっている。
【0035】
図1及び
図2に示すように、製造ライン10には、型開き装置33によって型開きされた金型70を冷却するための冷却ブース35が備えられている。冷却ブース35は、水冷式であっても空冷式であってもよいが、冷却効率の観点から水冷式が好ましい。詳細には、
図1に示すように、金型搬送路11の横返還路11B2には、型開き装置33によって型開きされた金型70から発泡成形品を脱型するための脱型エリアR1と、注入装置31によって金型70内に発泡樹脂原料が注入される注入エリアR2とが設けられていて、冷却ブース35は、脱型エリアR1と注入エリアR2の間に配設されている。なお、脱型エリアR1では、金型70の清掃や成形面への離型剤の塗布が行われてもよい。
【0036】
ここで、ホットキュアフォーム用ウレタン原料が注入されるときの金型70の温度は、30〜40℃程度であって、コールドキュアフォーム用ウレタン原料が注入されるときの金型70の温度は、60〜80℃程度であることが好ましい。従って、製造ライン10では、第2加熱炉50Bを通過してきた金型70のみが冷却ブース35に案内される構成となっている。このような構成を実現するため、製造ライン10では、金型搬送路11のうち型開き装置33によって型開きされた金型70を注入装置31へと搬送する部分(詳細には、横返還路11B2のうち脱型エリアR1と注入エリアR2に挟まれた部分)に、冷却ブース35を通過する冷却ブース通過路15と、冷却ブース35を迂回する冷却ブース迂回路16と、が分岐して設けられている。
【0037】
具体的には、
図1に示すように、金型搬送路11の横返還路11B2には、横方向に延びる1対のチェーンコンベア21,21が並列に備えられると共に、それら1対のチェーンコンベア21,21を横方向に挟む1対のスライド機構40,40が備えられている。1対のチェーンコンベア21,21のうち一方のチェーンコンベア21は、冷却ブース35を通過し、他方のチェーンコンベア21は、冷却ブース35の裏側に配置される。また、スライド機構40は、縦方向に延びるスライドレール41と、スライドレール41に沿って移動するスライドベース42と、を備えた構造になっていて、各スライドベース42上には、横方向に延びるチェーンコンベア21が備えられている。そして、1対のスライド機構40,40のスライドベース42,42がスライドレール41,41に沿って移動することで、横返還路11B2に搬送される金型70は、上記した1対のチェーンコンベア21,21のうち何れか一方のチェーンコンベア21を通過する。このように、本実施形態では、冷却ブース35内を通過するチェーンコンベア21によって冷却ブース通過路15が構成され、1対のスライド機構40,40と、冷却ブース35の裏側に配置されるチェーンコンベア21とによって冷却ブース迂回路16が構成されている。
【0038】
ところで、本実施形態の製造ライン10では、第1加熱炉50Aを通過する第1分岐路13を構成するチェーンコンベア21と、第2加熱炉50Bを通過する1対の第2分岐路14,14のそれぞれを構成するチェーンコンベア21と、冷却ブース35を通過する冷却ブース通過路15を構成するチェーンコンベア21とが、金型搬送路11のうち第1分岐路13、1対の第2分岐路14,14及び冷却ブース通過路15を除いた部分を構成するチェーンコンベア21とは分離して備えられている。本実施形態によれば、チェーンコンベア21のチェーンベルト23に対する温度変化が抑えられ、チェーンベルト23の劣化の抑制が図られる。
【0039】
図7に示すように、製造ライン10では、金型搬送装置20、注入装置31、型閉じ装置32、型開き装置33、加熱炉50(詳細には、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50B)及び冷却ブース35は、ライン制御部60によって制御される。ライン制御部60には、入力操作部61と、表示部62と、記憶部63と、が備えられている。入力操作部61は、加熱炉50の温度、金型70(パレット75)の搬送速度等の製造条件(発泡成形条件)を設定するためのものである。表示部62は、製造ライン10のリアルタイムの状況、入力操作部61による設定内容、異常時の警告等を表示可能となっている。記憶部63は、入力操作部61により設定された製造条件(発泡成形条件)を記憶する。
【0040】
図8には、金型搬送路11を周回する一のパレット75についてライン制御部60が行う制御フローS10が示されている。同図に示されるように、ライン制御部60は、まず、金型判別処理(ステップS11)を実行する。金型判別処理(ステップS11)では、ライン制御部60は、パレット75に取り付けられたカード77の識別子を読み取った読取装置78から情報を取得して、そのパレット75に搭載されている金型70の種類を判別する。カード77に記載される識別子には、金型70に注入する発泡樹脂原料の種類(即ち、コールドキュアフォーム用ウレタン原料とホットキュアフォーム用ウレタン原料の何れか)、その発泡樹脂原料の注入量、発泡硬化温度、発泡硬化時間等の情報が含まれている。なお、金型判別処理(ステップS11)で用いられる読取装置78は、注入エリアR2(
図1参照)より若干上流側に配置されている。
【0041】
金型判別処理(ステップS11)が終了すると、注入処理(ステップS12)が実行される。注入処理(ステップS12)では、ライン制御部60は、金型搬送装置20によってパレット75を注入装置31へと搬送し、注入装置31によってパレット75上の金型70に発泡樹脂原料を注入する。発泡樹脂原料の種類、注入量は、金型判別処理(ステップS11)で取得した情報(即ち、読取装置78が読み取った情報)に基づいて決定される。
【0042】
注入処理(ステップS12S)が終了すると、型閉じ処理(ステップS13)が実行される。型閉じ処理(ステップS13)では、ライン制御部60は、金型搬送装置20によってパレット75を型閉じ装置32へと搬送し、そのパレット75上の金型70を型閉じ装置32にて型閉じする。
【0043】
型閉じ処理(ステップS13)が終了すると、加熱炉送給処理(ステップS14)が実行される。加熱炉送給処理(ステップS14)では、ライン制御部60は、金型搬送装置20によって所定の加熱炉50へとパレット75を搬送する。具体的には、金型70にコールドキュアフォーム用ウレタン原料が注入されている場合には、ライン制御部60は、縦送給路11A1及び第1分岐路13を介して、パレット75を第1加熱炉50Aへと搬送し、金型70にホットキュアフォーム用ウレタン原料が注入されている場合には、ライン制御部60は、縦送給路11A1及び第2分岐路14を介して、パレット75を第2加熱炉50Bへと搬送する。
【0044】
加熱炉送給処理(ステップS14)が終了すると、加熱炉搬送処理(ステップS15)が実行される。加熱炉搬送処理(ステップS15)では、ライン制御部60は、パレット75が通過する加熱炉50の外シャッター54及び内シャッター55を適宜制御しながら、パレット75を横送給路11B1に沿って搬送する。このとき、パレット75は、金型70に注入された発泡樹脂原料に応じて設定された時間をかけて加熱炉50内を通過する。
【0045】
加熱炉搬送処理(ステップS15)が終了すると、型開き処理(ステップS16)が実行される。型開き処理(ステップS16)では、ライン制御部60は、縦返還路11A2を介して、パレット75を型開き装置33へと搬送し、そのパレット75上の金型70を型開き装置33にて型開きする。
【0046】
型開き処理(ステップS16)が終了すると、返還処理(ステップS17)が実行される。返還処理(ステップS17)では、ライン制御部60は、横返還路11B2に沿ってパレット75を注入装置31へと搬送する。このとき、パレット75が第1加熱炉50Aを通過してきた場合には、ライン制御部60は、そのパレット75に冷却ブース迂回路16を通過させ、パレット75が第2加熱炉50Bを通過してきた場合には、ライン制御部60は、そのパレット75に冷却ブース通過路15を通過させる。パレット75に冷却ブース通過路15を通過させる際には、冷却ブース35により金型70を冷却する。ここで、パレット75が通過してきた加熱炉50の判別は、金型判別処理(ステップS11)と同様に、読取装置78から取得した情報に基づいて行われる。なお、返還処理(ステップS17)で用いられる読取装置78は、型開き装置33内に配置されている。
【0047】
返還処理(ステップS17)が終了すると、制御フローS10が終了し、金型搬送路11に沿って1つのパレット75が1周する。
【0048】
次に、ホットキュアフォーム成形品とコールドキュアフォーム成形品の2種類を製造する際の製造ライン10の動作の一例について説明する。この例では、製造ライン10は、コールドキュアフォーム用のパレット75(即ち、第1加熱炉50Aを通過するパレット75)を、60秒間隔で注入エリアR2(
図1参照)から送り出し、ホットキュアフォーム用のパレット75(即ち、第2加熱炉50Bを通過するパレット75)を、120秒間隔で注入エリアR2から送り出す。注入エリア2では、複数の金型70がパレット75に搭載される場合、それら複数の金型70には、コールドキュアフォーム用ウレタン原料のみ、或いは、ホットキュアフォーム用ウレタン原料のみが注入される。なお、本例では、ライン制御部60は、金型搬送路11を周回する複数のパレット75のそれぞれについて、
図8に示した制御フローを実行することとなる。
【0049】
製造ライン10は、注入エリアR2から送り出したパレット75を、縦送給路11A1に沿って搬送する。そして、製造ライン10は、パレット75がコールドキュアフォーム用のパレット75である場合には、そのパレット75を第1分岐路13に振り分けて搬送し、パレット75がホットキュアフォーム用のパレット75である場合には、そのパレット75を1対の第2分岐路14,14に振り分けて搬送する。このとき、製造ライン10は、1対の第2分岐路14,14にホットキュアフォーム用のパレット75を交互に通過させる。従って、1対の第2分岐路14,14のうち片方の第2分岐路14については、240秒間隔でパレット75を間欠的に搬送することになる。
【0050】
パレット75が第1分岐路13を通過する場合には、製造ライン10は、第1加熱炉50Aの外シャッター54及び内シャッター55を開閉して、第1加熱炉50A内にパレット75を通過させる。一方、パレット75が第2分岐路14を通過する場合には、製造ライン10は、第2加熱炉50Bの外シャッター54及び内シャッター55を開閉して、第2加熱炉50B内にパレット75を通過させる。すると、第1加熱炉50Aからは、60秒間隔でパレット75が排出され、第2加熱炉50Bからは、120秒間隔でパレット75が排出される。
【0051】
第1加熱炉50A又は第2加熱炉50Bからパレット75が排出されると、製造ライン10は、そのパレット75を縦返還路11A2に沿って型開き装置33へと搬送する。そして、パレット75が型開き装置33に到達すると、型開き装置33によってパレット75上の金型70を一斉に型開きする。このとき、型開き装置33内に配置された読取装置78が、パレット75に取り付けられたカード77の識別子を読み取り、その読取装置78が読み取った情報がライン制御部60へと送信される。
【0052】
型開き装置33によって金型70が型開きされると、製造ライン10は、パレット75を横返還路11B2に沿って搬送する。パレット75が横返還路11B2の脱型エリアR1に到達すると、作業者により金型70内の発泡成形品が取り出される。パレット75が脱型エリアR1を通過すると、製造ライン10は、パレット75を冷却ブース通過路15と冷却ブース迂回路16の何れかに振り分け、パレット75を注入エリアR2へと搬送する。具体的には、製造ライン10は、パレット75が第1加熱炉50Aを通過してきた場合には、そのパレット75を冷却ブース迂回路16に振り分け、パレット75が第2加熱炉50Bを通過してきた場合には、そのパレット75を冷却ブース通過路15に振り分ける。
【0053】
パレット75が注入エリアR2に搬送されると、製造ライン10は、パレット75に搭載された金型70に発泡樹脂原料を注入して、その金型70を型閉じする。そして、金型70の型閉じが終了すると、再び、パレット75を注入エリアR2から送り出す。
【0054】
このように、製造ライン10では、60秒ごとに、コールドキュアフォーム成形品が成形され、120秒ごとに、ホットキュアフォーム成形品が成形される。また、製造ライン10では、第1加熱炉50Aをパレット75が通過する時間が4〜10分であり、第2加熱炉50Bをパレット75が通過する時間が15〜25分であることから、コールドキュアフォーム成形品の生産サイクルは、ホットキュアフォーム成形品の生産サイクルよりも短くなっている。従って、製造ライン10では、ホットキュアフォーム用のパレット75が金型搬送路11を1周する間(詳細には、ホットキュアフォーム用のパレット75が第2加熱炉50Bを通過する間)に、コールドキュアフォーム用のパレット75が金型搬送路11を複数回繰り返し周回する。
【0055】
ホットキュアフォーム成形品とコールドキュアフォーム成形品の2種類を製造するときの製造ライン10の動作に関する説明は以上である。なお、本実施形態の製造ライン10では、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bを同じ温度に設定して、ホットキュアフォーム成形品のみ、又は、コールドキュアフォーム成形品のみが製造されてもよい。また、製造ライン10において、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bのうち何れか一方の加熱炉のみを用いて発泡成形品が製造されてもよい。
【0056】
本実施形態の製造ライン10の構成に関する説明は以上である。なお、本実施形態では、コールドキュアフォーム用ウレタン原料が本発明の「第1発泡樹脂原料」に相当し、ホットキュアフォーム用ウレタン原料が本発明の「第2発泡樹脂原料」に相当する。また、本実施形態では、金型搬送装置20が本発明の「金型搬送手段」に、注入装置31が本発明の「注入手段」に、ライン制御部60が本発明の「搬送制御手段」に、それぞれ相当する。
【0057】
次に、本実施形態の製造ライン10の作用効果について説明する。本実施形態の製造ライン10では、コールドキュアフォーム用ウレタン原料が注入された金型70は、第1分岐路13により第1加熱炉50Aを通過する。一方、ホットキュアフォーム用ウレタン原料が注入された金型は、第2分岐路14によって第2加熱炉50Bを通過する。このように、本実施形態の製造ライン10では、金型搬送路11のうち加熱炉50を通過する部分が、第1加熱炉50Aを通過する第1分岐路13と、第2加熱炉50Bを通過する第2分岐路14とに分岐しているので、発泡硬化時間が異なるコールドキュアフォーム用ウレタン原料とホットキュアフォーム用ウレタン原料を、1つの製造ライン10で発泡硬化させて、複数種類の発泡成形品を製造することが可能となる。また、第1加熱炉50Aと第2加熱炉50Bとは略同じ長さになっているので、製造ライン10のコンパクトな設計が図られる。また、第2分岐路14の数は、第1分岐路13の数よりも多くなっているので、ホットキュアフォーム成形品の生産量の増大が図られる。
【0058】
また、本実施形態の製造ライン10では、第1加熱炉50Aより高温に設定される第2加熱炉50Bを通過してきた金型70は、冷却ブース35を通過する冷却ブース通過路15にて搬送され、第1加熱炉50Aを通過してきた金型70は、冷却ブース35を迂回する冷却ブース迂回路16にて搬送される。本実施形態によれば、第1加熱炉50Aを通過してきた金型70については、冷却することなくコールドキュアフォーム用ウレタン原料を注入し、第1加熱炉50Aよりも高温に設定される第2加熱炉50Bを通過してきた金型70については、冷却されてからホットキュアフォーム用ウレタン原料を注入することが可能となる。また、第1加熱炉50Aを通過してきた金型70については、冷却ブース35による冷却が省かれるので、素早く第1加熱炉50Aに戻すことが可能となる。その結果、金型70の温度変化を小さくすると共に、コールドキュアフォーム成形品の生産サイクルを短くすることが可能となる。しかも、第1加熱炉50Aを通過する第1分岐路13は、第2加熱炉50Bを通過する第2分岐路14に対して、横返還路11B1に近い側に配置されているので、コールドキュアフォーム成形品を製造するための金型70を一層素早く第1加熱炉50Aに戻すことが可能となる。
【0059】
さらに、本実施形態の製造ライン10では、金型70を搭載するパレット75を金型搬送路11に沿って搬送するので、金型75の交換が容易となる。しかも、パレット75には、複数の金型70が搭載可能となっているので、金型70のサイズ、即ち、製造する発泡成形品のサイズに応じてパレット75に搭載する金型70のバリエーションを変更することが可能となり、種々の発泡成形品の製造に対応することが可能となる。また、パレット75に複数の金型70が搭載される場合には、それら複数の金型70に、同じ種類の発泡樹脂原料のみが注入されるので、発泡硬化温度や発泡硬化時間をパレット単位で管理することが可能となる。
【0060】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0061】
(1)上記実施形態では、第1分岐路13及び第2分岐路14は、縦送給路11A1と縦返還路11A2との間に、複数の横送給路11B1が差し渡されることで構成されていたが、
図9(A)に示すように、1つの横送給路11B1の中間部を分岐させることで構成されてもよい。なお、上記実施形態の構成によれば、第1分岐路13又は第2分岐路14の増減が容易に行える。
【0062】
(2)上記実施形態では、第1加熱炉50Aを通過する第1分岐路13の数が1つで、第2加熱炉50Bを通過する第2分岐路14の数が2つであったが、第2分岐路14の数が第1分岐路13の数より多くなっていればよく、例えば、第1分岐路13の数が1つで、第2分岐路14の数が3つ以上であってもよいし、第1分岐路13の数が2つで、第2分岐路14の数が3つ以上であってもよい。
【0063】
(3)製造ライン10では、第2加熱炉50Bを通過する1対の第2分岐路14,14の間で、第2加熱炉50Bに金型70を通過させる時間を異ならせて(即ち、発泡硬化時間を異ならせて)、異なる発泡成形品が製造されてもよい。
【0064】
(4)冷却ブース35に対して下流側(注入エリアR2側)に配置されるスライドベース42に作業スペースを設けて、その作業スペースで、不織布シートやワイヤー等のインサート部品が金型70にインサートされてもよい。
【0065】
(5)
図9(B)に示すように、加熱炉50として、第1加熱炉50A及び第2加熱炉50Bとは独立に温度設定可能な第3加熱炉50Cをさらに備え、第3加熱炉50Cを通過する第3分岐路17が、第1分岐路13及び第2分岐路14に並設されてもよい。その際、第3分岐路17の数は、1つであってもよいし、複数であってもよい。
【0066】
(6)上記実施形態において、金型搬送装置20は、チェーンコンベア21に加えてローラコンベアを備えてもよい。
【0067】
上記実施形態及び上記(1)〜(6)の他の実施形態で開示した本発明の技術的範囲は、以下[1]〜[3]のように表現することも可能である。
[1]上型と下型とを開閉することでキャビティが形成される1以上の金型を搭載可能な金型搬送手段と、
前記金型が複数である場合に、互いに異なる金型のキャビティに、異なる発泡樹脂原料を注入する注入手段と、
前記発泡樹脂原料が充填された前記キャビティを有する閉じた金型を、加熱炉へと搬送する際に、そのキャビティに充填された前記発泡樹脂原料の発泡硬化条件に応じて、複数の分岐する搬送路から一の搬送路を選択して、前記発泡樹脂原料の発泡硬化条件に応じた加熱温度を有する加熱炉に前記金型を誘導する選択手段と、
前記上型を開き、前記発泡樹脂原料が発泡硬化してなる発泡成形品を前記金型から取り出し可能とする取出手段と、を備えてなる発泡成形品の製造ラインである。
[2]上記[1]に記載の製造ラインにおいて、
前記発泡樹脂原料には、第1発泡樹脂原料と、前記第1発泡樹脂原料より反応硬化時間が長い第2発泡樹脂原料とが設けられ、
前記キャビティ内に前記第2発泡樹脂原料が充填された第2の前記金型が第2の前記加熱炉に誘導されて、前記第2発泡樹脂原料が発泡硬化する間に、
前記第1発泡樹脂原料が第1の前記金型の前記キャビティに充填され、その第1の金型が、前記第1発泡樹脂原料の反応硬化条件に応じた加熱温度を有する第1の前記加熱炉に誘導され、前記取出手段へと搬送される動作が複数回繰り返される製造ラインである。
[3]上記[1]又は[2]の製造ラインを使用した発泡成形品の製造方法である。
なお、上記実施形態では、ライン制御部60が「選択手段」に相当し、第1分岐路13と1対の第2分岐路14,14が「分岐する搬送路」に相当し、型開き装置33が「取出手段」に相当する。また、第1加熱炉50A、第2加熱炉50Bがそれぞれ、「第1の加熱炉」、「第2の加熱炉」に相当し、コールドキュアフォーム用ウレタン原料が注入される金型70が「第1の金型」に相当し、ホットキュアフォーム用ウレタン原料が注入される金型70が「第2の金型」に相当する。