(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(車両ドア開閉用アクチュエータ)
図1は、本発明の実施形態における車両ドア開閉用アクチュエータ100(以下、単にアクチュエータ100という)を備えた車両の例を示す斜視図である。
同図に示すように、アクチュエータ100は、自動車1の例えばテールゲート(ドア)2を開閉する。テールゲート2は、自動車1の車体後部に形成された開口部3に対し、開口部3の上部3aに図示しないヒンジ機構を介して開閉可能に設けられている。
【0024】
アクチュエータ100は、開口部3の左右両側にそれぞれ設けられ、それぞれ、一端100aが開口部3の側枠部3sにピン(図示無し)を介して回動可能に連結され、他端100bがテールゲート2にピン(図示無し)を介して回動可能に連結されている。
【0025】
図2は、アクチュエータ100の外観を示す側面図である。
図3は、アクチュエータ100の断面図である。
図4は、アクチュエータ100のモータ部30および減速ギヤ部50を示す拡大断面図である。
図2、
図3に示すように、アクチュエータ100は、略円筒状の第1ハウジング10と、第1ハウジング10の他端10b側(
図3における右端側)に設けられた略円筒状の第2ハウジング20と、第1ハウジング10内に収納されたモータ部30、モータ部30に給電を行うための給電装置としてのブラシホルダユニット80、ブラシホルダユニット80と第1ハウジング10とシール性を確保するためのシール部110、モータ部30の回転力を減速して出力する減速ギヤ部50および、減速ギヤ部50を介して伝達されるモータ部30の回転力により回転するスクリュー軸60と、第1ハウジング10および第2ハウジング20内に設けられたコイルスプリング70と、を備えている。
なお、以下の説明では、各ハウジング10,20の中心軸に沿う方向を単に軸方向、各ハウジング10,20の径方向を単に径方向、各ハウジング10,20の外周面に沿う方向を単に周方向と称する。
【0026】
第1ハウジング10は、鉄等の金属製材料により形成されており、一端10a(
図4における左側端)には、テールゲート2側にピン(図示無し)を介して連結されるジョイント部材11が設けられている。ジョイント部材11は、円板状で第1ハウジング10の一端10aの内側に嵌め込まれた略円板状のプレート部11aと、プレート部11aから第1ハウジング10の軸方向外方に突出し、ピン(図示無し)が連結されるジョイント部11bと、を備えている。プレート部11aには、後述するハーネスカバー112を挿通可能な挿通孔11cが形成されている。
【0027】
また、第1ハウジング10の一端10aには、略有底筒状のキャップ12が装着されている。キャップ12は、第1ハウジング10の一端10aの開口を閉塞する閉塞部12aと、閉塞部12aの外周部から筒状に連続して延び、第1ハウジング10の一端10a側に外嵌固定(圧入)される筒状部12bと、が一体形成されたものである。キャップ12は、筒状部12b内に第一ハウジング10の一端10aが圧入されることで第一ハウジング10に固定されている。
さらに、閉塞部12aの径方向略中央の大部分には、ジョイント部材11のジョイント部11b、およびシール部110の後述するハーネスカバー112を挿通可能な挿通孔12hが形成されている。
【0028】
図3に示すように、第2ハウジング20の外径は、第1ハウジング10の内径よりも小さく設定されている。これにより、第1ハウジング10に対し、第2ハウジング20が出没自在とされている。また、第2ハウジング20は、樹脂等の第1ハウジング10よりも軟らかい材料により形成されている。このように、第2ハウジング20は、第1ハウジング10に対して軽量化が図られている。
第2ハウジング20は、一端20a側(
図3における左端側)が、第1ハウジング10の他端10b側(
図3における右端側)から第1ハウジング10内に挿入されている。第2ハウジング20は、第1ハウジング10に対し、他端10bから出没する方向に相対移動可能とされている。
【0029】
第2ハウジング20の他端20bは、深絞り加工等により底部20cが形成されている。また、第2ハウジング20の他端20bには、ジョイント部材21が設けられている。
第2ハウジング20の底部20cには、径方向中央に、ジョイント部材21の後述するジョイント部21bを挿通可能な貫通孔20dが形成されている。
【0030】
ジョイント部材21は、自動車1の開口部3の側枠部3sと第2ハウジング20とを連結するためのものである。ジョイント部材21は、第2ハウジング20の他端20bの内側に嵌め込まれた略円板状のプレート部21aと、プレート部21aから底部20cに形成された貫通孔20dを介して軸方向外方に突出するジョイント部21bと、を有している。このジョイント部21bに、ピン(図示無し)を介して開口部3の側枠部3sが連結される。
【0031】
プレート部21aは底部20cに面するように配置され、第2ハウジング20の他端20bにかしめ加工等により固定されている。また、プレート部21aの径方向中央には、第2ハウジング20の軸方向内方に突出する雄ネジ部21cが設けられている。この雄ネジ部21cに、円筒状のインナーチューブ24の他端24bが螺合されている。
【0032】
円筒状のインナーチューブ24は、第2ハウジング20内に配置されている。インナーチューブ24は、例えばアルミに引き抜き加工を施して形成される。このインナーチューブ24の他端24bに、ジョイント部材21の雄ネジ部21cに螺合する雌ネジ部24cが刻設されている。
【0033】
(モータ部)
図4に示すように、モータ部30は、ヨーク31と、ヨーク31の内周面31fに固定されたマグネット32と、ヨーク31の径方向内側に回転自在に設けられたアーマチュア130と、を備えている。
ヨーク31は、導電性を有する金属により略円筒状に形成されている。ヨーク31の外径は、第1ハウジング10の内径よりも所定寸法小さく設定されている。ヨーク31の内周面31fに固定されたマグネット32は、ヨーク31の中心軸方向に長く、ヨーク31の内周面31fの周方向に間隔を空けて複数個が設けられている。
【0034】
ヨーク31の径方向内側に設けられたアーマチュア130は、ヨーク31内で回転可能となるように設けられたシャフト33と、シャフト33に固定されたコア34aと、コア34aに巻回されているコイル34bと、を有している。
シャフト33は、ヨーク31の中心軸方向に沿って延びるように設けられている。シャフト33は、一端33aがブラシホルダユニット80に回転自在に支持されている。一方、シャフト33の他端33bは、減速ギヤ部50に回転自在に支持されている。
【0035】
コア34aは、シャフト33のマグネット32に対応する位置に外嵌固定されている。また、コア34aは、放射状に延びる複数のティース131を有している。これらティース131に、それぞれ絶縁性のインシュレータ132を介してコイル34bが巻回されている。
このように構成されたモータ部30のコイル34bに、図示しないバッテリの電力がブラシホルダユニット80を介して供給される。
【0036】
(ブラシホルダユニット)
ブラシホルダユニット80は、ヨーク31の一端31a側に配置されている。ブラシホルダユニット80は、樹脂製のブラシホルダ81を有している。ブラシホルダ81は、ホルダ本体82と、ホルダ本体82のコア34aとは反対側(
図4における左側)に配置された略有底筒状のカバー部83と、に分割構成されている。
ホルダ本体82は、ヨーク31の一端31aを塞ぐ円板状のプレート部37aと、プレート部37aの外周縁から延出形成され、ヨーク31の内側に挿入された第1筒状部37bと、プレート部37aから第1筒状部37bと反対側に向かって延びるよう形成された第2筒状部37cと、が一体成形されたものである。
【0037】
ホルダ本体82は、第1筒状部37bをヨーク31内に挿入し、プレート部37aをヨーク31の一端31a(
図4における左側端)に突き当てて装着される。そして、ヨーク31の一端31aに、第1筒状部37bが相対回転不能に固定されている。また、プレート部37aの径方向略中央に、シャフト33の一端33a側を回転自在に支持するための軸受38Aが設けられている。シャフト33の一端33aは、軸受38Aを介して軸方向外方側に突出している。
【0038】
プレート部37aおよび第1筒状部37bにより形成された凹部84には、アーマチュア130のコイル34bに給電を行うための給電部35が収納されている。
給電部35は、プレート部37aの給電部35側で保持されているブラシ35aと、シャフト33の一端33a側に外嵌固定されブラシ35aと摺接する整流子35bと、を有している。ブラシ35aには、ハーネス99の一端99aが電気的に接続されている。ハーネス99は、ホルダ本体82のプレート部37a、シール部110、ジョイント部材11のプレート部11aを貫通し、アクチュエータ100の他端10b(
図4における左側端)から外部に導出されている。整流子35bは、コイル34bと電気的に接続されている。
【0039】
一方、プレート部37aおよび第2筒状部37bにより形成された凹部85には、アーマチュア130の回転位置を検出するための検出部36が収納されている。第2筒状部37cの外径は、ヨーク31の外径とほぼ同径に設定されている。第2筒状部37cの外周縁には、段差により縮径された縮径部86が形成されている。
検出部36は、センサマグネット39と、センサ基板40と、を備えている。センサマグネット39は、軸受38Aを介して凹部85側に突出されたシャフト33の一端33aに一体に設けられている。
【0040】
センサ基板40は、板状に形成されたものであって、シャフト33の一端33aと軸方向で対向するように配置されている。センサ基板40には、センサマグネット39と対向する側に、センサマグネット39がシャフト33と共に回転したときに、その回転を検出するホールIC等の図示しない磁気検出子が設けられている。センサ基板40には、磁気検出子における検出信号を外部に出力する出力信号線(図示無し)が接続されている。このように構成されたセンサ基板40は、カバー部83に保持されている。
【0041】
図5は、
図4のA部拡大図である。
図6は、シール部110にカバー部83が取り付けられている状態を示すホルダ本体82側からみた斜視図である。
図5、
図6に示すように、カバー部83は、開口部83a側をホルダ本体82側に向けた状態で配置されている。カバー部83の周壁83cの外径は、ホルダ本体82の第2筒状部37cの外径とほぼ同径に設定されている。
カバー部83の底部83bには、内周面寄りに、この内周面の軸方向に沿って台座87が立設されている。台座87には、ボルト88が螺入される雌ネジ部89が刻設されている。そして、台座87上にセンサ基板40が載置され、このセンサ基板40がボルト88によって台座87に締結固定される。
【0042】
また、カバー部83の周壁83cには、係合爪91が延出形成されている。係合爪91は、カバー部83をホルダ本体82に係合させるためのものである。これにより、カバー部83とホルダ本体82とが一体化される。
ここで、カバー部83の周壁83cの先端とホルダ本体82の第2筒状部37cの先端とを突き合わせることにより、ブラシホルダ81全体でみると、第2筒状部37cの外周縁に形成された縮径部86が、ブラシホルダ81の外周面の全周に渡って形成された凹部90となる。この凹部90は、シール部110の軸方向への移動を規制する役割を有している。
【0043】
(シール部)
図7は、シール部110をホルダ本体82側からみた斜視図である。
図5、
図7に示すように、シール部110は、弾性を有したゴム系材料により形成されている。シール部110は、カバー部83の外面を覆うように略有底筒状に形成されたシール本体111を有している。すなわち、シール本体111は、カバー部83の底部83bを覆う円板状の底部111aと、底部111aの外周縁から延出形成されカバー部83の周壁83cの外周面を覆う周壁111bと、が一体成形されたものである。
【0044】
底部111aは、カバー部83の底部83bとジョイント部材11のプレート部11aとにより挟持された形になる。底部111aには、軸方向外方に突出するハーネスカバー112が一体成形されている。
ハーネスカバー112は、略パイプ状に形成されており、シール本体111の内外を連通している。このように構成されたハーネスカバー112内に、給電部35に一端99aが接続されたハーネス99が挿通される。これにより、ハーネス99は、アクチュエータ100の他端10b(
図5における左側端)から外部に導出される。
【0045】
一方、シール本体111の周壁111bは、底部111aからホルダ本体82の第2筒状部37cの軸方向略中央に至る間に延出されている。周壁111bがカバー部83の周壁83cおよびホルダ本体82の第2筒状部37cを覆うことにより、ブラシホルダ81と第1ハウジング10との間に周壁111bが介在した形になる。これにより、ブラシホルダ81およびヨーク31と第1ハウジング10との間に、クリアランスC1が形成される。
【0046】
また、シール本体111の周壁111bの内周面には、先端よりもやや手前の縮径部86(凹部90)に対応する位置に、全周に渡ってリブ113が一体成形されている。リブ113の内径は、縮径部86の外径とほぼ同径か、またはやや小さい程度に設定されている。このようなリブ113が、縮径部86(凹部90)に収納される。そして、第2筒状部37cの縮径部86の段差面86aとカバー部83の周壁83cとにより、リブ113を軸方向両側から挟持した形になる。
【0047】
また、リブ113と底部111aとの間の距離L1(
図7参照)は、カバー部83の周壁83cの高さL2(
図5参照)とほぼ同一に設定されている。すなわち、リブ113の底部111a側の端面113aは、カバー部83とシール部110との軸方向の位置決めを行う位置決め部(第1位置決め部)114として機能している。
さらに、リブ113には、カバー部83の係合爪91に対応する位置に、この係合爪91を受け入れる切除部115が形成されている。この切除部115に、係合爪91の一部が嵌り込む形になる。すなわち、リブ113の切除部115の周方向の端面115aは、カバー部83とシール部110との周方向の位置決めを行う位置決め部(第2位置決め部)116として機能している。
【0048】
また、シール本体111の周壁111bの外周面には、リブ113の近傍に補助シール部117が形成されている。補助シール部117は、周壁111bの全周に渡って凸条に形成されている。ブラシホルダ81にシール部110を取り付けた状態では、補助シール部117は、第1ハウジング10の内周面によって押し潰される。これにより、ブラシホルダ81と第1ハウジング10との間のシール性が高まる。
【0049】
このような構成のもと、ハーネス99、および給電部35(ブラシ35a)を介してコイル34bに通電すると、コイル34bで発生する磁力と、ヨーク31に固定されたマグネット32で発生する磁力との間に生じる磁気的な吸引力や反発力によって、シャフト33がその中心軸回りに回転駆動される。
【0050】
検出部36では、シャフト33と一体に設けられた検出部36のセンサマグネット39の回転を、センサ基板40の図示しない磁気検出子で検出することにより、シャフト33の回転数を検出する。磁気検出子で検出されたセンサマグネット39の回転、すなわちシャフト33の回転は、出力信号線(図示無し)を介し、アクチュエータ100の他端10bから外部に出力される。
【0051】
(減速ギヤ部)
図4に示すように、モータ部30の給電部35とは反対側に、減速ギヤ部50が設けられている。減速ギヤ部50は、インターナルギヤ51と、第1サンギヤ52と、第1段遊星ギヤ53と、第1キャリア54と、第2サンギヤ55と、第2段遊星ギヤ56と、第2キャリア57と、を備えている。
【0052】
インターナルギヤ51は、ヨーク31の他端31b側(
図4における右端側)に挿入されている。インターナルギヤ51は、略円板状のプレート部51aと、プレート部51aの外周部からヨーク31の他端31bに向かって延びる略円筒状の筒状部51bと、プレート部51aとは反対側の端部で筒状部51bから外周側に拡径したフランジ部51cと、を一体に備えている。
【0053】
インターナルギヤ51は、プレート部51aがヨーク31の一端31a側に向けられている。そして、インターナルギヤ51は、筒状部51bがヨーク31内に挿入され、フランジ部51cをヨーク31の他端31bに突き当てて装着される。インターナルギヤ51のフランジ部51cは、ヨーク31の他端31bにかしめ加工等によってヨーク31に対し周方向に相対移動不能に固定されている。
【0054】
また、インターナルギヤ51には、筒状部51bの内周面に、ギヤ歯51gが形成されている。さらに、インターナルギヤ51のプレート部51aには、径方向略中央に軸受38Bが設けられている。この軸受け38Bに、シャフト33の他端33b側が回転自在に支持されている。
第1サンギヤ52は、シャフト33の他端33bに嵌め込まれ、その外周面にギヤ歯52gが形成されている。
【0055】
第1段遊星ギヤ53は、第1サンギヤ52の外周部に、例えば3個が設けられている。各第1段遊星ギヤ53は、その外周面に第1サンギヤ52のギヤ歯52gおよびインターナルギヤ51のギヤ歯51gに噛み合うギヤ歯53gが形成されている。
第1キャリア54は略円板状に形成されており、複数の第1段遊星ギヤ53に対し、シャフト33とは反対側に配置されている。第1キャリア54は、略円板状に形成され、且つ第1段遊星ギヤ53を回転自在に支持する支持軸が組み付けられている。
【0056】
第2サンギヤ55は、第1キャリア54の中心部に、シャフト33とは反対側に一体に設けられている。第2サンギヤ55は、その外周面にギヤ歯55gが形成されている。
第2段遊星ギヤ56は、第2サンギヤ55の外周部に、例えば3個が設けられている。各第2段遊星ギヤ56は、その外周面に第2サンギヤ55のギヤ歯55gおよびインターナルギヤ51のギヤ歯51gに噛み合うギヤ歯56gが形成されている。
【0057】
第2キャリア57は、複数の第2段遊星ギヤ56に対し、シャフト33とは反対側に配置されている。第2キャリア57は、円板状に形成され、且つ第2段遊星ギヤ56を回転自在に支持する支持軸(図示無し)が組み付けられている。
【0058】
ここで、インターナルギヤ51のプレート部51aと第1段遊星ギヤ53との間、および第1キャリア54と第2段遊星ギヤ56との間には、ワッシャ58A,58Bが配置されている。
これら第1サンギヤ52、第2サンギヤ55は、それぞれ焼結材などの金属により形成されている。また、第1キャリア54、第2キャリア57も金属により形成されている。さらに、インターナルギヤ51、第1段遊星ギヤ53、および第2段遊星ギヤ56は、それぞれ樹脂により形成されている。
【0059】
さらに、インターナルギヤ51のギヤ歯51g、第1サンギヤ52のギヤ歯52g、第1段遊星ギヤ53のギヤ歯53g、第2サンギヤ55のギヤ歯55g、および第2段遊星ギヤ56のギヤ歯56gは、それぞれハス歯歯車とされている。これにより、減速ギヤ部50の各ギヤ間における噛み合い代を増やし、作動音を低減することができる。
また、インターナルギヤ51のギヤ歯51gは、第1段遊星ギヤ53のギヤ歯53gに噛み合う部分と、第2段遊星ギヤ56のギヤ歯56gに噛み合う部分とが、連続する同一ピッチのギヤ歯51gにより形成されている。これにより、インターナルギヤ51を容易に製作することができる。
【0060】
このような減速ギヤ部50においては、シャフト33が回転すると、第1サンギヤ52がシャフト33と一体に回転する。第1サンギヤ52の回転は、その外周側の第1段遊星ギヤ53に伝達される。各第1段遊星ギヤ53は、第1サンギヤ52のギヤ歯52gと、外周側のインターナルギヤ51のギヤ歯51gとに噛み合いながら、第1サンギヤ52の外周部を公転すると同時に、第1キャリア54に組み付けられた支持軸を中心に自転する、いわゆる遊星運動する。
これら複数の第1段遊星ギヤ53の遊星運動により、第1キャリア54がシャフト33と同軸回りに減速されて回転する。
【0061】
第1キャリア54が回転すると、第2サンギヤ55が一体に回転し、その外周側の第2段遊星ギヤ56に伝達される。各第2段遊星ギヤ56は、第2サンギヤ55のギヤ歯55gと、外周側のインターナルギヤ51のギヤ歯51gとに噛み合いながら、第2サンギヤ55の外周部を公転すると同時に、第2キャリア57に組み付けられた支持軸を中心に自転する、いわゆる遊星運動する。
これら複数の第2段遊星ギヤ56の遊星運動により、第2キャリア57がシャフト33と同軸回りに減速されて回転する。
【0062】
第1ハウジング10の減速ギヤ部50よりも他端10b側(
図4における右側)には、円環状の軸受ホルダ62が内嵌されている。軸受ホルダ62は、第1ハウジング10内にかしめ加工等によって固定されている。軸受ホルダ62には、スクリュー軸60の一端60aを回転自在に支持する軸受61が保持されている。
【0063】
また、軸受61および軸受ホルダ62と、インターナルギヤ51のフランジ部51cとの間には、ダンパ部材63が設けられている。ダンパ部材63は、第一ハウジング10にモータ部30および減速ギヤ部50の振動が伝達されてしまうことを抑制するためのものである。ダンパ部材63は、弾性を有したゴム系材料に形成されている。
ダンパ部材63は、軸受61および軸受ホルダ62と、インターナルギヤ51のフランジ部51cとの間に挟み込まれた円板状のプレート部63aを有している。プレート部63aの外周縁には、この外周縁からインターナルギヤ51側に延び、インターナルギヤ51のフランジ部51cが内側に挿入される筒状部63bが一体成形されている。
【0064】
ここで、ヨーク31の他端31b側では、ダンパ部材63の筒状部63bが、ヨーク31の他端31bおよびインターナルギヤ51のフランジ部51cと第1ハウジング10との間に介在した形になる。これにより、ヨーク31と第1ハウジング10との間に、クリアランスC1が形成される。すなわち、モータ部30および減速ギヤ部50は、これらの軸方向両端に設けられたシール部110およびダンパ部材63によって、第1ハウジング10にフローティング支持される。このように、シール部110は、ブラシホルダユニット80と第1ハウジング10とシール性を確保すると共に、第一ハウジング10にモータ部30および減速ギヤ部50の振動が伝達されてしまうことを抑制するダンパ機能も有している。
【0065】
軸受ホルダ62の軸受61に回転自在に支持されたスクリュー軸60の一端60aには、減速ギヤ部50の第2キャリア57の中央部に形成された出力ギヤ孔57hに噛み合うギヤ64が設けられている。これにより、スクリュー軸60は、モータ部30におけるシャフト33の回転が、減速ギヤ部50を介して伝達され、その中心軸回りに回転駆動される。
【0066】
図3に示すように、スクリュー軸60の外周面には、螺旋状に連続したネジ条60nが形成されている。スクリュー軸60の他端60b側は、第2ハウジング20のインナーチューブ24の一端24a内に設けられたナット部材25内に螺合されている。ナット部材25は、端部25aが、インナーチューブ24内に図示しないスナップリングやかしめ加工等によって固定されている。これにより、ナット部材25は、インナーチューブ24に対する周方向の回転が規制されている。
インナーチューブ24は、他端24bが第2ハウジング20の他端20bに設けられたジョイント部材21に螺合されているので、このジョイント部材21とインナーチューブ24とを介し、ナット部材25と第2ハウジング20との相対回転が規制される。
【0067】
第1ハウジング10および第2ハウジング20内に設けられたコイルスプリング70は、例えば金属により形成されている。第2ハウジング20内では、コイルスプリング70のさらに径方向内側に、インナーチューブ24が挿入される。一方、第1ハウジング10内では、コイルスプリング70のさらに径方向内側に、筒状のガイドチューブ18が挿入される。
ガイドチューブ18は、内径がインナーチューブ24の外径よりも大きく設定されている。このため、ガイドチューブ18の径方向内側に、インナーチューブ24が挿入配置される。
【0068】
また、
図4に示すように、ガイドチューブ18の一端18a側には、外周側に張り出すフランジ部18cが一体に形成されている。さらに、ガイドチューブ18のフランジ部18cと、軸受ホルダ62との間には、円環状のシール部材66が挟み込まれている。シール部材66は、ゴム系材料等の防水性および弾性を有した材料により形成されており、その外周面は、第1ハウジング10に密着している。
コイルスプリング70は、その内側に、インナーチューブ24およびガイドチューブ18が挿通されることにより、コイルスプリング70の伸縮時に、コイルスプリング70が伸縮方向側方に撓んだり座屈したりするのが抑えられる。
【0069】
このようなコイルスプリング70は、
図3に示すように、第2ハウジング20のジョイント部材21のプレート部21aと、ガイドチューブ18のフランジ部18cとの間に、圧縮状態で設けられている。これにより、コイルスプリング70は、第1ハウジング10と第2ハウジング20とが互いに離間して、アクチュエータ100の全長を延ばす方向に付勢している。
また、コイルスプリング70によって、ガイドチューブ18のフランジ部18cがシール部材66側に押圧される。換言すれば、ガイドチューブ18のフランジ部18cと軸受ホルダ62とにより、シール部材66が挟持されている。
【0070】
さらに、第1ハウジング10の他端10bには、その外周側に円筒状のアウターリング105が設けられている。アウターリング105は、金属等の剛性の高い材料により形成されており、第1ハウジング10の他端10bに圧入されて固定されている。アウターリング105は、第1ハウジング10と第2ハウジング20との隙間からアクチュエータ100内に水や塵埃等が侵入してしまうことを防止するためのものである。
【0071】
(車両ドア開閉用アクチュエータの動作)
次に、アクチュエータ100の動作について説明する。
操作者の操作によって、図示しないバッテリの電力がモータ部30に印加され、モータ部30のシャフト33を回転駆動させると、シャフト33の回転が減速ギヤ部50を介してスクリュー軸60に伝達される。これによってスクリュー軸60が回転すると、ナット部材25がスクリュー軸60の軸方向に沿って移動する。ナット部材25は、第2ハウジング20と一体化されたインナーチューブ24に固定されているので、これによって、第1ハウジング10に対して第2ハウジング20が出没し、アクチュエータ100が伸縮する。
【0072】
このとき、第1ハウジング10は鉄等の金属製材料から形成されている一方、第2ハウジング20は樹脂等の軟らかい材料で形成されているので、第1ハウジング10と第2ハウジング20の双方にスライド痕が付くことない。つまり、第2ハウジング20のみにスライド痕が付く。しかも第2ハウジング20を樹脂等により形成することにより、スライド痕が目立たず、意匠性が維持される。
【0073】
第1ハウジング10に対して第2ハウジング20が没入すると、自動車1の開口部3に設けられたテールゲート2(
図1参照)が閉じられる。一方、第1ハウジング10に対して第2ハウジング20が突出すると、自動車1の開口部3に設けられたテールゲート2が開けられる。このとき、アクチュエータ100を伸ばした状態でモータ部30の動作を停止させても、コイルスプリング70の付勢力によって、第1ハウジング10に対し第2ハウジング20が突出した状態が維持される。
【0074】
(シール部の組付け方法)
次に、ブラシホルダ81へのシール部110の組付け方法について説明する。
まず、予めホルダ本体82に給電部35(ブラシ35a)を組み付けておくと共に、カバー部83に検出部36(センサ基板40)を組み付けておく。
そして、シール部110のシール本体111の開口部に、ブラシホルダ81を構成するカバー部83の底部83bを向ける。また、シール部110のリブ113に形成されている切除部115(位置決め部116)に、カバー部83の係合爪91の位置を合わせる。そして、シール本体111内にカバー部83を底部83b側から挿入する。
【0075】
このとき、シール本体111の底部111aにカバー部83の底部83bを当接させると、カバー部83の周壁83cの先端とシール本体111のリブ113の端面113a(位置決め部114)とが当接する。すなわち、シール本体111に対するカバー部83の軸方向の位置決めが行われると共に、カバー部83の周壁83cがシール本体111のリブ113に係合される。
また、リブ113の切除部115(位置決め部116)にカバー部83の係合爪91が嵌り込むことにより、シール本体111に対するカバー部83の周方向の位置決めが行われる。
【0076】
次に、ブラシホルダ81のホルダ本体82にカバー部83が組み付けられたシール部110を組み付ける。これには、まず、シール本体111の開口部をホルダ本体92側に向ける。そして、ホルダ本体92の第2筒状部37にシール本体111を外嵌させるように、シール部110を組み付ける。換言すれば、第1ハウジング10とホルダ本体82の第2筒状部37との間に、シール本体111の周壁111bが挿入されるように、シール部110を組み付ける。
【0077】
このとき、第2筒状部37の縮径部86にシール本体111のリブ113を外嵌させ、さらに、縮径部86の段差面86aにリブ113を当接させる程度まで、ホルダ本体82側にシール本体111を押し込む。すると、ホルダ本体82の縮径部86とカバー部83の周壁83cとにより形成される凹部90に、シール本体111のリブ113が収納される。
【0078】
ここで、シール本体111の周壁111bの外周面には、リブ113の近傍に補助シール部117が形成されている。このため、第1ハウジング10とホルダ本体82の第2筒状部37との間に、シール本体111の周壁111bを挿入していく途中で、第1ハウジング10によって補助シール部117が押し潰される。さらに、ホルダ本体82の第2筒状部37cに向かって、リブ113が押圧される。このため、シール部110の組付け途中でシール本体111の周壁111bが捲れあがってしまうことが防止される。
この後、ホルダ本体82にカバー部83の係合爪91を係合させ、ブラシホルダ81へのシール部110の組付けが完了する。
【0079】
なお、シール部110のハーネスカバー112にハーネス99や出力信号線(図示無し)を挿通するタイミングは、都度選択可能である。すなわち、先にハーネスカバー112にハーネス99や出力信号線を挿通した後、ブラシホルダ81にハーネスカバー112を組み付けてもよいし、ブラシホルダ81にハーネスカバー112を組み付けた後、ハーネスカバー112にハーネス99や出力信号線を挿通してもよい。
【0080】
このように、上述の実施形態では、ブラシホルダ81に、ホルダ本体82の縮径部86とカバー部83の周壁83cとにより形成される凹部90を設けている。また、シール部110のシール本体111に凹部90に収納されるリブ113を一体成形している。このため、ブラシホルダ81に対してシール部110が軸方向にずれてしまうことを防止できる。このため、アクチュエータ100の組立性を向上できると共に、シール性を向上できる。
【0081】
また、ブラシホルダ81は、ホルダ本体82とカバー部83とに分割構成されている。そして、ホルダ本体82とカバー部83とを一体化させた際に(ホルダ本体82とカバー部83とが協働して)凹部90が形成されるように構成されている。このため、予めシール本体111にカバー部83を組み付けた後、これらシール本体111とカバー部83とを纏めてホルダ本体82に組み付けることができる。よって、ブラシホルダ81へのシール部110の組付け、および位置決めを容易に行うことができる。
さらに、凹部90に収納されたシール部110のリブ113を、ホルダ本体82とカバー部83とにより挟持する形になるので、ブラシホルダ81に対するシール部110の軸方向へのずれを、確実に防止できる。
【0082】
また、リブ113の底部111a側の端面113aを、カバー部83とシール部110との軸方向の位置決めを行う位置決め部(第1位置決め部)114として機能させている。さらに、カバー部83に、ホルダ本体82と係合可能な係合爪91を一体成形する一方、リブ113に、この係合爪91を受け入れる切除部115を形成している。そして、リブ113の切除部115の周方向の端面115aを、カバー部83とシール部110との周方向の位置決めを行う位置決め部(第2位置決め部)116として機能させている。
このように、ブラシホルダ81に対する軸方向の位置決め、周方向の位置決めをそれぞれ別々に行うことにより、ブラシホルダ81に対するシール部110の位置を精度よく決めることができる。このため、アクチュエータ100の組立性をさらに向上できる。
【0083】
また、シール本体111の周壁111bの外周面には、リブ113の近傍に補助シール部117が形成されている。このため、第1ハウジング10とホルダ本体82の第2筒状部37との間に、シール本体111の周壁111bを挿入していく途中で、第1ハウジング10によって補助シール部117が押し潰される。これにより、ホルダ本体82の第2筒状部37cに向かって、リブ113が押圧される。したがって、シール部110の組付け途中でシール本体111の周壁111bが捲れあがってしまうことが防止される。よって、アクチュエータ100の組立性をさらに向上できる。
【0084】
また、モータ部30および減速ギヤ部50は、これらの軸方向両端に設けられたシール部110およびダンパ部材63によって、第1ハウジング10にフローティング支持される。このため、モータ部30や減速ギヤ部50の振動、およびこれらモータ部30や減速ギヤ部50と、スクリュー軸60との間における振動が、第1ハウジング10に伝わるのを抑制できる。よって、アクチュエータ100の作動時の振動や騒音を低減できる。
【0085】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、アクチュエータ100の各部の構成は、本発明の主旨の範囲内で適宜変更することができる。一例として、上述の実施形態では、減速ギヤ部50を遊星減速機構により構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、遊星減速機構に代えてさまざまな減速機構を適用することが可能である。この場合、モータ部30のヨーク31の内周面に減速機構のギヤケースを配置し、さらに、ギヤケースに、シャフト33を回転自在に支持するための軸受38Bを設ければよい。
【0086】
また、上述の実施形態では、モータ部30をブラシ35aによってアーマチュア130の整流子35bに電力が印加される、いわゆるブラシモータとし、給電装置として、モータ部30に給電を行うブラシ35aを支持すブラシホルダ81から構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、モータ部を、ブラシを有さないいわゆるブラシレスモータとして、給電装置をバッテリの電力を選択的にコイルに通電させるためのバスバーユニットとして構成してもよい。
【0087】
さらに、上述の実施形態では、給電装置としてのブラシホルダユニット80のブラシホルダ81を、ホルダ本体82とカバー部83とに分割構成した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、ホルダ本体82とカバー部83とを一体成形としてもよい。この場合、ブラシホルダ81の外周面に、リブ113を受け入れる凹部90が形成されていればよい。
【0088】
さらに、アクチュエータ100の用途は、テールゲート2の開閉用に限らず、他の様々なドアの開閉に用いることができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更したりすることが可能である。