特許第6676485号(P6676485)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 東洋ゴム工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6676485-空気入りタイヤ 図000003
  • 特許6676485-空気入りタイヤ 図000004
  • 特許6676485-空気入りタイヤ 図000005
  • 特許6676485-空気入りタイヤ 図000006
  • 特許6676485-空気入りタイヤ 図000007
  • 特許6676485-空気入りタイヤ 図000008
  • 特許6676485-空気入りタイヤ 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676485
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】空気入りタイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/03 20060101AFI20200330BHJP
   B60C 11/12 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B60C11/03 300B
   B60C11/03 300E
   B60C11/12 A
   B60C11/12 C
【請求項の数】6
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-130580(P2016-130580)
(22)【出願日】2016年6月30日
(65)【公開番号】特開2018-1941(P2018-1941A)
(43)【公開日】2018年1月11日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076314
【弁理士】
【氏名又は名称】蔦田 正人
(74)【代理人】
【識別番号】100112612
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲士
(74)【代理人】
【識別番号】100112623
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 克幸
(74)【代理人】
【識別番号】100163393
【弁理士】
【氏名又は名称】有近 康臣
(72)【発明者】
【氏名】藤岡 剛史
【審査官】 鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−107918(JP,A)
【文献】 特開2016−97822(JP,A)
【文献】 特開2013−107555(JP,A)
【文献】 特開2015−700(JP,A)
【文献】 特開2012−51504(JP,A)
【文献】 特開2011−195045(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/119336(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60C 11/00−11/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タイヤ周方向にジグザグ状に延びる3本の周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる複数の第1横溝と、1本の前記周方向溝を挟んでタイヤ幅方向に隣接する2列のブロック列とが、トレッド部に形成された空気入りタイヤにおいて、
前記ブロック列を構成するブロックは、タイヤ周方向の中央部がタイヤ幅方向に広がった6角形状をなし、タイヤ周方向の中央部に位置する一対の頂部を通る直線である対角延長線が、隣接する前記ブロック列の前記第1横溝とタイヤ周方向に重なり、
前記ブロックは、タイヤ幅方向に延びブロック内で終端する第1サイプを備え、
前記第1サイプは、前記対角延長線よりタイヤ周方向にズレた位置で、かつ、隣接する前記ブロック列の前記第1横溝の一対の溝壁面を第1横溝が延びる方向に延長させた面で挟まれた領域にある空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記第1サイプは、湾曲又は屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延びる波形状をなし、波形状がサイプ長さ方向の一方側に変位しながらサイプ深さ方向に延びる請求項1に記載の空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記ブロックは、タイヤ周方向の中央部に位置する一対の頂部からタイヤ周方向一方側に隣接する頂部へ延びる長辺部と、タイヤ周方向他方側に隣接する頂部へ延び前記長辺部より短い短辺部とを備え、
前記第1サイプは、前記対角延長線より前記長辺部側にズレた位置にある請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
【請求項4】
3本の前記周方向溝は、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ幅方向に間隔をあけて設けられた一対の第1周方向溝と、前記第1周方向溝の間に設けられた第2周方向溝を備え、
前記第2周方向溝が前記第1周方向溝より溝幅が狭い請求項1〜3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項5】
3本の前記周方向溝は、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ幅方向に間隔をあけて設けられた一対の第1周方向溝と、前記第1周方向溝の間に設けられた第2周方向溝を備え、
前記トレッド部は、前記第1周方向溝のタイヤ幅方向外側にタイヤ周方向にジグザグ状に延びる第3周方向溝と、前記第1周方向溝と前記第3周方向溝とを連結する第2横溝と、前記第1周方向溝と前記第3周方向溝との間に前記第2横溝によりタイヤ周方向に分断された複数の外側ブロックからなる外側ブロック列とを備え、
前記第1横溝は、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して延び、
前記第2横溝は、タイヤ幅方向に対して前記第1横溝と逆方向に傾斜して延び、
前記外側ブロックは、タイヤ周方向の中央部がタイヤ幅方向に広がった形状をなし、タイヤ周方向の中央部にノッチが設けられた請求項1〜4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記外側ブロックは、前記ノッチに開口する第2サイプを備え、
前記第2サイプは、湾曲又は屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延びる波形状をなし、波形状がサイプ長さ方向の一方側に変位しながらサイプ深さ方向に延びる請求項5に記載の空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
空気入りタイヤのトレッド部には、タイヤ周方向に延びる複数の周方向溝が設けられており、周方向溝により区画された陸部に横溝を設けて、複数のブロックからなるブロック列を設けた、ブロックパターンのタイヤも知られている。
【0003】
このようなトレッドパターンを持つタイヤにおいては、湿潤路面でのトラクション性能を高めるために、周方向溝に開口するサイプをブロックに設けることがある(例えば、特許文献1,2参照)。
【0004】
しかし、サイプを周方向溝に開口させると、ブロック剛性が低下し、ブロックの倒れ込みが大きくなることにより、偏摩耗が発生しやすくなる。サイプをブロック内で終端させると、ブロック剛性の低下を抑えることができるが、サイプが周方向溝に開口しなくなるため、サイプによるトラクション効果が低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014−133549号公報
【特許文献2】特許第5285762号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、ブロックパターンを持つタイヤにおいて、サイプを設けたことによるブロック剛性の低下を抑制して、トラクション性能と耐偏摩耗性能を改善することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る空気入りタイヤは、タイヤ周方向にジグザグ状に延びる3本の周方向溝と、タイヤ幅方向に延びる複数の第1横溝と、1本の前記周方向溝を挟んでタイヤ幅方向に隣接する2列のブロック列とが、トレッド部に形成された空気入りタイヤにおいて、前記ブロック列を構成するブロックは、タイヤ周方向の中央部がタイヤ幅方向に広がった6角形状をなし、タイヤ周方向の中央部に位置する一対の頂部を通る直線である対角延長線が、隣接する前記ブロック列の前記第1横溝とタイヤ周方向に重なり、前記ブロックは、タイヤ幅方向に延びブロック内で終端する第1サイプを備え、前記第1サイプは、前記対角延長線よりタイヤ周方向にズレた位置で、かつ、隣接する前記ブロック列の前記第1横溝の一対の溝壁面を第1横溝が延びる方向に延長させた面で挟まれた領域にあるものである。
【0008】
本発明の好ましい態様において、前記第1サイプは、湾曲又は屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延びる波形状をなし、波形状がサイプ長さ方向の一方側に変位しながらサイプ深さ方向に延びてもよい。
【0009】
他の好ましい態様において、前記ブロックは、タイヤ周方向の中央部に位置する一対の頂部からタイヤ周方向一方側に隣接する頂部へ延びる長辺部と、タイヤ周方向他方側に隣接する頂部へ延び前記長辺部より短い短辺部とを備え、前記第1サイプは、前記対角延長線より長辺部側にズレた位置にあってもよい。
【0010】
他の好ましい態様において、3本の前記周方向溝は、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ幅方向に間隔をあけて配置された一対の第1周方向溝と、前記第1周方向溝の間に配置された第2周方向溝を備え、前記第2方向溝が前記第1周方向溝より溝幅が狭くてもよい。
【0011】
また、他の好ましい態様において、3本の前記周方向溝は、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ幅方向に間隔をあけて配置された一対の第1周方向溝と、前記第1周方向溝の間に配置された第2周方向溝を備え、前記トレッド部は、前記第1周方向溝のタイヤ幅方向外側にタイヤ周方向にジグザグ状に延びる第3周方向溝と、前記第1周方向溝と前記第3周方向溝とを連結する第2横溝と、前記第1周方向溝と前記第3周方向溝との間に前記第2横溝によりタイヤ周方向に分断された複数の外側ブロックからなる外側ブロック列とを備え、前記第1横溝は、タイヤ幅方向に対してタイヤ周方向に傾斜して延び、前記第2横溝は、タイヤ幅方向に対して前記第1横溝と逆方向に傾斜して延び、前記外側ブロックは、タイヤ周方向の中央部がタイヤ幅方向に広がった形状をなし、タイヤ周方向の中央部にノッチが設けられてもよい。その場合、前記外側ブロックは、前記ノッチに開口する第2サイプを備え、前記第2サイプは、湾曲又は屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向に延びる波形状をなし、波形状がサイプ長さ方向の一方側に変位しながらサイプ深さ方向に延びてもよい。
【発明の効果】
【0012】
上記のようにブロックに設けられた第1サイプがブロック内で終端しているため、ブロック剛性の低下を抑えることができ、偏摩耗を抑制するとができる。しかも、第1サイプは、ブロックにおいてタイヤ周方向の中央部に位置する一対の頂部を通る直線である対角延長線よりタイヤ周方向にズレた位置で、かつ、隣接する前記ブロック列の前記第1横溝の一対の溝壁面を第1横溝14が延びる方向に延長させた面で挟まれた領域に配置されている。これにより、タイヤ転動時にトラクション性能を発揮する第1サイプやブロックの頂部がタイヤ周方向に分散して配置され、トラクションを効率的に発生することができるとともに、第1サイプをブロックのタイヤ周方向中央部に配置することができ、ブロックにおける接地圧を均一化することができ偏摩耗を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1実施形態に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図。
図2図1の空気入りタイヤのトレッド部の要部を示す展開図。
図3図2の要部拡大図。
図4】(a)は第1サイプの平面図、(b)は第1サイプの内壁面を示す図。
図5】(a)は第2サイプの平面図、(b)は第2サイプの内壁面を示す図。
図6】第2実施形態に係る空気入りタイヤのトレッド部の要部を示す展開図。
図7】(a)は比較例1の空気入りタイヤのトレッド部の要部を示す展開図、(b)は比較例2の空気入りタイヤのトレッド部の要部を示す展開図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、本発明の第1実施形態について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る空気入りタイヤTの一例を示すタイヤ子午線断面図である。
【0015】
この空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、そのビード部1からタイヤ径方向外側に延びるサイドウォール部2と、そのサイドウォール部2の各々のタイヤ径方向外側端に連なるトレッド部3とを備える。ビード部1には、環状のビードコア1aとビードフィラー1bが設けられ、一対のビード部1の間に配設されたトロイダル形状のカーカス4の端部が、ビードコア1aを介して折り返されている。図中、符号Eはタイヤ幅方向Xの中心を通る仮想面であるタイヤ赤道面を示す。
【0016】
カーカス4は、タイヤ周方向Yに対して略直交する方向に配列したプライコードを、トッピングゴムで被覆して形成されている。プライコードとしては、スチールコードや有機繊維コードが好適に使用される。
【0017】
トレッド部3のカーカス4の外周には、内外に積層された2枚のプライからなるベルト5が積層され、更にその外周にトレッドゴム6が設けられている。ベルト5は、スチールコードをタイヤ周方向Yに対して10〜35度の角度で配列した1層又は複数層のスチールベルト層からなり、この例では2層のスチールベルト層で形成されている。
【0018】
トレッド部3の表面には、タイヤ周方向Yに延びる3本以上の周方向溝と、周方向溝に連結されたタイヤ幅方向Xに延びる複数の横溝と、これらの周方向溝及び横溝によって区画形成された複数のブロック列が設けられている。
【0019】
具体的には、図2に示すように、トレッド部3は、タイヤ赤道面を挟んでタイヤ幅方向Xに間隔をあけて設けられた一対の第1周方向溝11、11と、第1周方向溝11,11の間に設けられた第2周方向溝12と、第1周方向溝11,11のタイヤ幅方向Xの外側に設けられた一対の第3周方向溝13,13とを備え、合計5本の周方向溝が設けられている。
【0020】
一対の第1周方向溝11,11は、タイヤ幅方向Xの一方側及び他方側に交互に屈曲を繰り返しながらタイヤ周方向Yに延びるジグザグ状の溝である。この例では、一対の第1周方向溝11、11は、互いに同一長さの繰り返しピッチで屈曲するが、屈曲する位置がタイヤ周方向Yで異なっている。一対の第1周方向溝11、11の間には、第2周方向溝12を挟んでタイヤ幅方向Xに隣接する2列のセンターブロック列20,20が区画されている。
【0021】
第2周方向溝12は、タイヤ幅方向Xの一方側及び他方側に交互に屈曲を繰り返しながらタイヤ赤道面E上でタイヤ周方向Yに沿って延びるジグザグ状の溝である。この例では、第2周方向溝12は、タイヤ幅方向X外側に隣接する一対の第1周方向溝11,11と同一の長さの繰り返しピッチで屈曲するが、屈曲する位置がタイヤ周方向Yで異なっている。
【0022】
第2周方向溝12の溝幅W2は、第1周方向溝11の溝幅W1より狭く設けられている(図3参照)。好ましくは、タイヤ接地時(空気入りタイヤTを正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、正規荷重を加えた時)に2列のセンターブロック列20,20の対向面が当接し第2周方向溝12が閉じる間隔に設けることが好ましい。また、第2周方向溝12の深さH2は、第1周方向溝11の深さH1より浅くなるように設けられている。
【0023】
なお、正規リムは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば「Design Rim」、ETRTOであれば「Measuring Rim」となる。
【0024】
正規内圧は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に記載の最大値、ETRTOであれば「INFLATIONPRESSURE」であるが、タイヤが乗用車用である場合には180KPaとする。また、正規荷重は、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている荷重であり、JATMAであれば最大負荷能力、TRAであれば上記の表に記載の最大値、ETRTOであれば「LOAD CAPACITY」であるが、タイヤが乗用車用である場合には内圧180KPaの対応荷重の85%とする。
【0025】
このような第2周方向溝12は、一対の第1周方向溝11で挟まれた領域をタイヤ幅方向Xに分割し、複数の第1横溝14によってタイヤ周方向Yに分断された複数のセンターブロック21を備えた2列のセンターブロック列20,20を区画形成している。
【0026】
一対の第3周方向溝13、13は、第1周方向溝11,11や第2周方向溝12と同様、タイヤ幅方向Xの一方側及び他方側に交互に屈曲を繰り返しながらタイヤ周方向Yに沿って延びるジグザグ状の溝である。第3周方向溝13,13は、第1周方向溝11,11や第2周方向溝12と同一の長さの繰り返しピッチで屈曲するが、屈曲する位置がタイヤ周方向Yで異なっている。
【0027】
このような第3周方向溝13,13は、タイヤ幅方向Xに隣接する第1周方向溝11、11との間に複数の第2横溝15によってタイヤ周方向Yに分断された複数の外側ブロック31を備えた外側ブロック列30を区画形成するとともに、第3周方向溝13,13のタイヤ幅方向X外側に複数の第3横溝16によってタイヤ周方向Yに分断された複数のショルダーブロック41を備えたショルダーブロック列40,40を区画形成する。
【0028】
第1横溝14は、一対の第1周方向溝11、11の間に複数形成されたタイヤ幅方向Xに沿って延びる溝である。第1横溝14は、ジグザグ状に屈曲する第1周方向溝11,11の頂部と第2周方向溝12の頂部とを繋ぐように設けられている。この例では、複数の第1横溝14は、タイヤ幅方向Xに対してタイヤ周方向Y一方側へ(図2において右上がりに)互いに平行になるように傾斜している。
【0029】
このような第1横溝14は、第1周方向溝11,11と第2周方向溝12との間に形成された領域をタイヤ周方向Yに分断し、タイヤ周方向Yに複数のセンターブロック21が並んだセンターブロック列20を区画形成する。
【0030】
第2横溝15は、第1周方向溝11、11と第3周方向溝13,13との間に複数形成されたタイヤ幅方向Xに沿って延びる溝である。第2横溝15は、ジグザグ状に屈曲する第1周方向溝11,11の頂部と第3周方向溝13の頂部とを繋ぐように設けられている。この例では、複数の第2横溝15は、タイヤ幅方向Xに対して第1横溝14と逆方向に傾斜している。つまり、複数の第2横溝15は、タイヤ幅方向Xに対してタイヤ周方向Y他方側へ(図2において右下がりに)互いに平行になるように傾斜している。
【0031】
このような第2横溝15は、第1周方向溝11,11と第3周方向溝13、13との間に形成された領域をタイヤ周方向Yに分断し、タイヤ周方向Yに複数の外側ブロック31が並んだ外側ブロック列30を区画形成する。
【0032】
センターブロック列20を構成する複数のセンターブロック21は、第1周方向溝11、11、第2周方向溝12、及び第1横溝14によってトレッドゴム6に区画された6角形状をなした陸部である。
【0033】
このセンターブロック21は、タイヤ周方向Yの中央部に位置する一対の頂部22,22の間隔が、タイヤ周方向Yの端部に比べて長くなっており、タイヤ周方向Yの中央部がタイヤ幅方向Xに広がった6角形状をなしている。なお、本明細書における6角形状とは、6つの頂点を持つ6角形だけでなく、図2に示すブロック21のようにタイヤ周方向Yの端部に位置する頂点を落としたり、あるいは当該頂点を丸めたりした形状も含む概念である。
【0034】
センターブロック21は、図3に示すように、タイヤ周方向Yの中央部に位置する一対の頂部22,22が、ジグザグ状に屈曲する第1周方向溝11及び第2周方向溝12の頂部に位置している。センターブロック21は、平面視において、タイヤ周方向Yの中央部に位置する一対の頂部22,22を通る直線(以下、この直線を対角延長線Lという)が、隣接するセンターブロック列20の第1横溝14に重なっている。
【0035】
また、この例では、2列のセンターブロック列20、20の一方のブロック列20(例えば、図3の右側のセンターブロック列)を構成するセンターブロック21aは、タイヤ周方向Yの中央部に位置する一対の頂部22,22からタイヤ周方向Yの一方側(図3において上側)に隣接する頂部23,23へ延びる辺部24,24(以下、この辺部を長辺部24,24ということもある)は、頂部22,22からタイヤ周方向Yの他方側(図3において下側)に隣接する頂部25、25へ延びる辺部26,26(以下、この辺部を短辺部26,26ということもある)より長くなっている。
【0036】
一方、2列のセンターブロック列20、20の他方のブロック列20(例えば、図3の左側のブロック列)を構成するセンターブロック21bは、タイヤ径方向を回転軸として180度回転させると一方のセンターブロック列20を構成するセンターブロック21aと一致する形状をなしている。具体的には、センターブロック21bは、タイヤ周方向Yの中央部に位置する一対の頂部22,22からタイヤ周方向Y一方側(図3において上側)に隣接する頂部25,25へ延びる短辺部26,26は、頂部22,22からタイヤ周方向Y他方側(図3において下側)に隣接する頂部23、23へ延びる長辺部24,24より短くなっている。
【0037】
この例では、一方のセンターブロック列20を構成するセンターブロック21aの長辺部24と他方のセンターブロック列20を構成するセンターブロック21bの長辺部24が第2周方向溝12を挟んで対向し、一方のセンターブロック21aの短辺部26と他方のセンターブロック21bの短辺部26が第2周方向溝12を挟んで対向している。
【0038】
また、この例では、一方のセンターブロック列20を構成するセンターブロック21aの一部が、他方のセンターブロック列20を構成するセンターブロック21bとタイヤ幅方向Xに重なるように配置されている。
【0039】
このようなセンターブロック21,21には、第1横溝14と略平行に延び、両端がブロック縁に開口しない切り込み(つまり、第1周方向溝11及び第2周方向溝12に開口せずにブロック21内で終端する切り込み)からなる第1サイプ27が設けられている。この第1サイプ27は、図3に示すように、センターブロック21の頂部22,22を通る対角延長線Lと位置しないようにタイヤ周方向Yにズレた位置に設けられている。
【0040】
更に、第1サイプ27は、タイヤ幅方向Xに隣接するセンターブロック列20の第1横溝14を区画する一対の溝壁面15、15を、第1横溝14が延びる方向に延長させた面S,Sで挟まれた領域Rに設けられており、好ましくは、上記した対角延長線Lよりセンターブロック21の長辺部24側にズレた位置に設けられている。
【0041】
この例では、第1サイプ27は、平面視において図4(a)に示すように湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向G1に延びる波形状をなし、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしている。また、第1サイプ27は、図4(b)に示すように波形状がサイプ長さ方向G1の一方側(図4において右側)に変位しながらサイプ深さ方向に延びている。
【0042】
なお、第1サイプ27の長さ(長さ方向G1に沿った長さ)Kは、センターブロック21で終端していれば特に限定されないが、第1サイプ27が設けられた位置でのセンターブロック21の幅(第1サイプ27を長さ方向G1に延長させた直線Nに沿ったセンターブロック21の長さ)Mの40%以上80%以下であることが好ましい。第1サイプ27の長さKをセンターブロック21の幅Mの40%以上とすることで、サイプのエッジ効果を発揮されやすくなりトラクション性能を向上することができ、センターブロック21の幅Mの80%以下とすることで、第1サイプ27の端部におけるクラック発生を抑制することができる。
【0043】
第1サイプ27のサイプ深さは、特に限定されないが、第1周方向溝11の深さの30%以上70%以下であることが好ましい。第1サイプ27のサイプ深さを第1周方向溝11の深さの30%以上とすることで、サイプのエッジ効果を発揮されやすくなりトラクション性能を向上することができ、第1周方向溝11の深さの70%以下とすることで、センターブロック21の剛性を確保しセンターブロック21の偏摩耗を抑制することができる。
【0044】
また、第1サイプ27のサイプ深さ方向に対する傾斜角度θ1は、5°以上30°以下であることが好ましい。傾斜角度θ1を5°以上とすることで、サイプ内壁面が噛み合いやすくなり、センターブロック21の剛性を高めて偏摩耗を抑制することができ、傾斜角度θ1を30°以下とすることで、サイプ内壁面の噛合力が強くなり過ぎることがなく、サイプ内壁面の擦れ合いによるクラックの発生を抑えることができる。
【0045】
外側ブロック列30を構成する複数の外側ブロック31は、第1周方向溝11、11、第3周方向溝13、及び第2横溝15によってトレッドゴム6に区画された陸部である。
【0046】
外側ブロック31には、第1周方向溝11と第3周方向溝13に面した一対の側壁32,32のタイヤ周方向Yの中央部にそれぞれノッチ33,33が設けられている。ノッチ33は、ブロック上面から第1周方向溝11あるいは第3周方向溝13の溝底に向かって切り欠かれた周方向溝11、13に開口する平面視略矩形状の凹みである。
【0047】
外側ブロック31には、ノッチ33に開口し、かつタイヤ幅方向X両側のノッチ33、33間を繋ぐ第2サイプ34が設けられている。
【0048】
第2サイプ34は、第2横溝15と略平行に延び、両端が各ノッチ33に開口することで、外側ブロック31をタイヤ幅方向Xに横断するように設けられている。
【0049】
この例では、第2サイプ34は、平面視において図5(a)に示すように湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向G2に延びる波形状をなし、トレッド表面に平行な断面形状がサイプ幅方向に振幅を持つ波形状をなしている。また、第2サイプ34は、図5(b)に示すように波形状がサイプ長さ方向G2の一方側(図5において右側)に変位しながらサイプ深さ方向に延びている。
【0050】
なお、第2サイプ34のサイプ深さは、特に限定されないが、ノッチ33と同じ深さとすることができ、第1周方向溝11や第3周方向溝13の深さの30%以上70%以下であることが好ましい。第2サイプ34のサイプ深さを第1周方向溝11や第3周方向溝13の深さの30%以上とすることで、サイプのエッジ効果を発揮されやすくなりトラクション性能を向上することができ、第1周方向溝11や第3周方向溝13の深さの70%以下とすることで、外側ブロック31の剛性を確保し外側ブロック31の偏摩耗を抑制することができる。
【0051】
以上よりなる本実施形態に係る空気入りタイヤTでは、第1周方向溝11、11と第2周方向溝12との間に形成されたセンターブロック21にブロック内で終端する第1サイプ27を設けることで、ブロック剛性の低下を抑えつつ、第1サイプ27のエッジ効果によりトラクション性能を向上することができる。
【0052】
また、第1サイプ27は、センターブロック21においてタイヤ周方向Yの中央部に位置する一対の頂部22,22を結ぶ対角延長線Lよりタイヤ周方向Yにズレた位置で、かつ、隣接するセンターブロック列20の第1横溝14の一対の溝壁面15,15を第1横溝14が延びる方向に延長させた面S,Sで挟まれた領域R内に配置されている。そのため、タイヤ転動時にトラクション性能を発揮する第1サイプ27やセンターブロック21の頂部22,23,25がタイヤ周方向Yに分散して配置され、トラクションを効率的に発生することができる。
【0053】
しかも、第1サイプ27は、第1横溝14の一対の溝壁面15,15を第1横溝14が延びる方向に延長させた面S,Sで挟まれた領域R内に配置され、センターブロック21の略中央部に設けられているため、センターブロック21における接地圧を均一化することができ、偏摩耗を抑制することができる。
【0054】
本実施形態においてセンターブロック21に設けられた第1サイプ27が、平面視において湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向G1に延びる波形状をなし、かつ、波形状がサイプ長さ方向G1の一方側に変位しながらサイプ深さ方向に延びている。これにより、第1サイプ27において対向するサイプ内壁面の噛合力が強くなり、センターブロック21の剛性を高めることができ、より一層、偏摩耗を抑制することができる。
【0055】
また、本実施形態では、対角延長線Lよりセンターブロック21の長辺部24側にズレた位置に第1サイプ27を設けることで、第1サイプ27を対角延長線Lよりタイヤ周方向にズラして配置してもセンターブロック21の中央部付近に第1サイプ27を配置することができ、第1サイプ27を上記のようにズラして配置することによるトラクション性の向上と接地圧の均一化とを高いレベルで両立することができる。
【0056】
また、本実施形態では、一対の第1周方向溝11の間に配置されセンターブロック列20をタイヤ幅方向Xに分断する第2周方向溝12の溝幅W2が、第1周方向溝11の溝幅W1より狭く設けられているため、トレッド部3の中で接地圧の高いタイヤ幅方向中央部の接地面積を大きくすることができ、トレッド部3における接地圧を均一化することができる。
【0057】
また、センターブロック列20のタイヤ幅方向Xの外側に設けられた外側ブロック列30を構成する外側ブロック31には、タイヤ周方向の中央部にノッチ33と、第2サイプ34が設けられているため、ノッチ33及び第2サイプ34のエッジ効果によりトラクション性能を向上することができる。
【0058】
しかも、第2サイプ34が、平面視において湾曲または屈曲を繰り返しながらサイプ長さ方向G2に延びる波形状をなし、かつ、波形状がサイプ長さ方向G2の一方側に変位しながらサイプ深さ方向に延びているため、第2サイプ34において対向するサイプ内壁面の噛合力が強くなり、外側ブロック31の剛性を高めることができ、偏摩耗を抑制することができる。
【0059】
また、外側ブロック列30において外側ブロック31を区画する第2横溝15が、センターブロック列20に設けられた第1横溝14と逆方向に傾斜している。これにより、センターブロック列20におけるセンターブロック21の動きと、外側ブロック列30における外側ブロック31の動きとが打ち消しあい、トレッドゴム6全体の動きを抑制することができ、耐摩耗性能を向上させることができる。
【0060】
なお、本明細書における上記各寸法は、特に言及した場合を除いて、空気入りタイヤを正規リムに装着して正規内圧を充填した無負荷の正規状態でのものである。
【0061】
(第2実施形態)
図6に基づいて第2実施形態に係る空気入りタイヤについて説明する。
【0062】
第2実施形態では、外側ブロック列30を構成する外側ブロック31にノッチ33及び第2サイプ34が設けられていない点で、上記した第1実施形態と相違する。このような場合であっても、接地圧の高いタイヤ幅方向Xの中央部において、第1サイプ27によってセンターブロック21内での接地圧の均一化を図り、耐偏摩耗性を向上させることができるとともに、第1サイプ27を対角延長線Lからタイヤ周方向Yにズラして配置することによりトラクション性を向上させることができる。なお、第2実施形態について、その他の構成及び作用効果については第1実施形態と同様であり、説明は省略する。
【0063】
(他の実施形態)
上記実施形態では、第1周方向溝11及び第2周方向溝12で区画されたブロック列が、タイヤ赤道面Eを含むタイヤ幅方向中央部に位置する場合について説明したが、本実施形態はかかるトレッドパターンに限定されるものではなく、タイヤ赤道面Eよりタイヤ幅方向X外側に第1周方向溝11及び第2周方向溝12で区画されたブロック列が位置してもよい。また、上記実施形態では、周方向に延びる周方向溝を5本設けた場合について説明したが、本発明では周方向溝が3本以上あればよい。また、上記実施形態では、第1横溝14や第2横溝15をタイヤ幅方向Xに対して傾斜させて設けたが、タイヤ幅方向Xに平行に設けてもよい。
【0064】
本実施形態に係る空気入りタイヤとしては、乗用車用タイヤ、SUV車やピックアップトラックなどのライトトラック用タイヤ、トラックやバスなどの重荷重用タイヤなど、各種車両用のタイヤが挙げられ、また、サマータイヤ、ウインタータイヤ、オールシーズンタイヤなどの用途も特に限定されない。
【0065】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これら実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0066】
上記の効果を確認するために、実施例1〜2および比較例1〜2の空気入りタイヤ(タイヤサイズ:11R22.5)を22.5×7.50のリムに装着し、内圧700kPaを充填して、定積載量10tの車輌に装着し、耐偏摩耗性、トラクション性について評価を行った。
【0067】
実施例1は図6に示す第2実施形態のトレッドパターンのタイヤであり、実施例2は図2に示す第1実施形態のトレッドパターンのタイヤである。
【0068】
比較例1のタイヤは、図7(a)に示すトレッドパターンのタイヤであり、センターブロックに設けられたサイプが対角延長線と一致するように配置されている点で実施例1と相違するが、他の構成は実施例1と同一であるタイヤである。比較例2のタイヤは、図7(b)に示すトレッドパターンのタイヤであり、センターブロックに設けられたサイプが第1周方向溝及び第2周方向溝に開口している点で実施例1と相違するが、他の構成は実施例1と同一であるタイヤである。
【0069】
各評価方法は以下の通りである。
【0070】
・耐偏摩耗性:20,000km走行後の偏摩耗状態(ヒールアンドトウ摩耗量)を測定し、ヒールアンドトウ摩耗量の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、偏摩耗の発生が少なく、耐偏摩耗性に優れることを示す。
【0071】
・トラクション性:水深1.0mmの路面上を停止状態から20m進んだ時点の到達時間を測定し、到達時間の逆数について比較例1の値を100として指数化した。指数が大きい程、到達時間が短く、トラクション性が良いことを示す。
【0072】
【表1】
【0073】
結果は、表1に示す通りであり、比較例2では、センターブロックに設けられたサイプが周方向溝に開口しているため、トラクション性は良好であったが、比較例1に比べて耐偏摩耗性の大幅な低下が確認された。
これに対して、実施例1及び2では、比較例1に比べて優れた耐偏摩耗性及びトラクション性能を発揮した。
【符号の説明】
【0074】
3…トレッド部、6…トレッドゴム、11…第1周方向溝、12…第2周方向溝、13…第3周方向溝、14…第1横溝、15…第2横溝、15…溝壁面、20…センターブロック列、21…センターブロック、24…長辺部、26…短辺部、27…第1サイプ、30…外側ブロック列、31…外側ブロック、32…側壁、33…ノッチ、34…第2サイプ、Eタイヤ赤道面、L…対角延長線、S…面、T…タイヤ、X…タイヤ幅方向、Y…タイヤ周方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7