特許第6676489号(P6676489)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676489自動分析装置で液体をピペッティングする方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676489
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】自動分析装置で液体をピペッティングする方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/10 20060101AFI20200330BHJP
   G01F 13/00 20060101ALI20200330BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   G01N35/10 C
   G01F13/00 311A
   G01N1/00 101K
【請求項の数】16
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-137210(P2016-137210)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2017-21030(P2017-21030A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2018年6月13日
【審判番号】不服2019-6140(P2019-6140/J1)
【審判請求日】2019年5月13日
(31)【優先権主張番号】15176410.7
(32)【優先日】2015年7月13日
(33)【優先権主張国】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510259921
【氏名又は名称】シーメンス ヘルスケア ダイアグノスティクス プロダクツ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・コーン
(72)【発明者】
【氏名】クリスティーン・モーザー
(72)【発明者】
【氏名】ホルガー・プファール
(72)【発明者】
【氏名】ダーヴィト・ゾルバッハ
(72)【発明者】
【氏名】クリスティアン・ヴェルハーレン
【合議体】
【審判長】 福島 浩司
【審判官】 ▲高▼見 重雄
【審判官】 東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−68432(JP,A)
【文献】 特開2013−134254(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3120180(JP,U)
【文献】 特開2005−164506(JP,A)
【文献】 特開2013−88114(JP,A)
【文献】 特開2015−87305(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/092844(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00-37/00
G01N1/00-1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体量を第1の液体容器から第2の液体容器に移送する方法であって、自動的に変位可能または枢動可能な移送アーム上に固定されるとともに、充填レベルセンサを有するピペット針が使用され;前記方法は、
a)ピペット針を第1の液体容器に収容された液体に浸漬し、充填レベルを測定する工程と;
b)測定された充填レベルを、所定の最低充填レベルおよび所定の最高充填レベルと比較する工程と;
c)測定された充填レベルが、
i.所定の最高充填レベルを上回るか、または、
ii.所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回るか、または、
iii.所定の最低充填レベルを下回るかを決定する工程と、
d)ピペット針を液体から引き抜く工程とを含み、
測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るかまたは所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、液体量を吸入せずにピペット針が液体から引き抜かれ、次いで、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回ると決定されるまで、工程a)〜d)が繰り返され、次いで、ピペット針が引き抜かれる前に、移送される液体量が吸入され、その後、第2の液体容器内に移送される、前記方法。
【請求項2】
工程a)〜d)は、間を置かずに連続して、最大3回から10回繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)〜d)の最大繰返し回数を実行する際に、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るか、または所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、ピペット針は液体量を吸入せずに液体から引き抜かれ、ピペット針は、少なくとも5〜600秒の期間が経過するまで当該液体に再び浸漬されない、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも5〜600秒の期間が経過した後、ピペット針は、第1の液体容器に収容された液体に再び浸漬され;前記方法は:
e)充填レベルを測定する工程と;
f)測定された充填レベルを、所定の最低充填レベルおよび所定の最高充填レベルと比較する工程と;
g)測定された充填レベルが、
i.所定の最高充填レベルを上回るか、または、
ii.所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回るか、または

iii.所定の最低充填レベルを下回るかを決定する工程と、
h)ピペット針を液体から引き抜く工程とをさらに含み、
測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るかまたは所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、液体量を吸入せずにピペット針が液体から引き抜かれ、次いで、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回ると決定されるまで、工程e)〜h)が繰り返され、次いで、ピペット針が引き抜かれる前に、移送される液体量が吸入され、その後、第2の液体容器内に移送される、
請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ピペット針は、少なくとも5〜600秒の期間の間に、洗浄ステーションに駆動され、該洗浄ステーションで洗浄され、次いで駆動されて第1の液体容器に戻される、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
ピペット針は、少なくとも5〜600秒の期間の間に、洗浄ステーションに駆動され、該洗浄ステーションで洗浄され、次いで第3の液体容器に駆動され、次いで該第3の液体容器に収容された液体に浸漬され、移送される液体量を吸入し、液体から引き抜かれ、第4の液体容器に駆動され、移送される液体量を第4の液体容器の中に放出し、次いで再び洗浄ステーションに駆動され、該洗浄ステーションで洗浄され、次いで駆動されて第1の液体容器に戻される、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
工程a)〜d)の最大繰返しを実行する際に、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るか、または所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、ピペット針は液体量を吸入せずに液体から引き抜かれ、第1の液体容器は液体のさらなる取出しから除外される、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
第1の液体容器は試料液または試薬液を収容し、第2の液体容器は反応容器または測定セルである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
自動的に変位可能または枢動可能な移送アーム上に固定されるとともに、充填レベルセンサを有する少なくとも1つのピペット針と、液体容器を受け入れる複数の受入れ位置と、液体量を第1の液体容器から第2の液体容器に移送する方法を制御するように構成されたコントローラと含む、自動分析装置であって、方法は:
a)ピペット針を第1の液体容器に収容された液体に浸漬し、充填レベルを測定する工程と;
b)測定された充填レベルを、所定の最低充填レベルおよび所定の最高充填レベルと比較する工程と;
c)測定された充填レベルが、
i.所定の最高充填レベルを上回るか、または、
ii.所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回るか、または、
iii.所定の最低充填レベルを下回るかを決定する工程と、
d)ピペット針を液体から引き抜く工程とを含み、
コントローラはさらに、
測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るかまたは所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、液体量を吸入せずにピペット針が液体から引き抜かれ、次いで、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回ると決定されるまで、工程a)〜d)が繰り返され、次いで、ピペット針が引き抜かれる前に、移送される液体量が吸入され、その後、第2の液体容器内に移送されるように構成された、前記装置。
【請求項10】
コントローラは、工程a)〜d)を、間を置かずに連続して、最大3回から10回繰り返すようにさらに構成された、請求項9に記載の自動分析装置。
【請求項11】
コントローラは、工程a)〜d)の最大繰返しを実行する際に、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るか、または所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、ピペット針が液体量を吸入せずに液体から引き抜かれ、少なくとも5〜600秒の期間が経過するまでピペット針が当該液体に再び浸漬されないようにさらに構成された、請求項10に記載の自動分析装置。
【請求項12】
コントローラは、少なくとも5〜600秒の期間が経過した後、ピペット針が第1の液体容器に収容された液体に再び浸漬されるようにさらに構成され、液体量を第1の液体容器から第2の液体容器に移送する方法が:
e)充填レベルを測定する工程と;
f)測定された充填レベルを、所定の最低充填レベルおよび所定の最高充填レベルと比較する工程と;
g)測定された充填レベルが、
i.所定の最高充填レベルを上回るか、または、
ii.所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回るか、または、
iii.所定の最低充填レベルを下回るかを決定する工程と、
h)ピペット針を液体から引き抜く工程とをさらに含み、
コントローラは、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るかまたは所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、液体量を吸入せずにピペット針が液体から引き抜かれ、次いで、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回ると決定されるまで、工程e)〜h)が繰り返され、次いで、ピペット針が引き抜かれる前に、移送される液体量が吸入され、その後、第2の液体容器内に移送されるようにさらに構成された、請求項11に記載の自動分析装置。
【請求項13】
ピペット針用の少なくとも1つの洗浄ステーションをさらに含み、ここで、コントローラは、少なくとも5〜600秒の期間の間に、ピペット針が洗浄ステーションに駆動され、該洗浄ステーションで洗浄され、次いで駆動されて第1の液体容器に戻されるようにさらに構成された、請求項11に記載の自動分析装置。
【請求項14】
ピペット針用の少なくとも1つの洗浄ステーションをさらに含み、ここで、コントローラは、少なくとも5〜600秒の期間の間に、ピペット針が洗浄ステーションに駆動され、該洗浄ステーションで洗浄され、次いで第3の液体容器に駆動され、次いで該第3の液体容器に収容された液体に浸漬され、移送される液体量を吸入し、液体から引き抜かれ、第4の液体容器に駆動され、移送される液体量を第4の液体容器の中に放出し、次いで再び洗浄ステーションに駆動され、該洗浄ステーションで洗浄され、次いで駆動されて第1の液体容器に戻されるようにさらに構成された、請求項11に記載の自動分析装置。
【請求項15】
コントローラは、工程a)〜d)の最大繰返しを実行する際に、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るか、または所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、ピペット針が液体量を吸入せずに液体から引き抜かれ、第1の液体容器が液体のさらなる取出しから除外されるようにさらに構成された、請求項10に記載の自動分析装置。
【請求項16】
ピペット針は容量性の充填レベルセンサを有する、請求項9に記載の自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動分析装置の分野において、ある液体量を第1の液体容器から第2の液体容器に移送する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の分析装置は、分析学、法医学、微生物学、および臨床診断で日常的に使用されているように、複数の試料を用いて複数の検出反応および分析を実施することができる。複数の試験を自動的に実施することができるようにするために、測定セル、反応器、および試薬液コンテナを空間的に移送する様々な自動的に動作するデバイス、例えば、把持具機能を備えた移送アーム、輸送ベルトまたは回転式輸送ホイール、また、液体を移送するデバイス、例えばピペッティングデバイスが必要とされる。装置は、適切なソフトウェアを用いて、大部分は自律的に、所望の分析のための作業工程を計画し処理することができる中央制御装置を含む。
【0003】
自動的に動作するかかる分析装置で使用される分析方法の多くは、光学的方法に基づいている。測光(例えば、濁度測定、比濁分析、蛍光測定、光度測定)、または放射測定の原理に基づく測定システムが、特に普及している。これらの方法により、追加の分離工程を提供する必要なしに、液体試料中の検体を定性的および定量的に検出することが可能になっている。臨床的に関連のあるパラメータ、例えば検体の濃度または活性の判定は、多くの場合、一定分量の患者の体液を反応容器内の1つもしくはそれ以上の試験試薬と同時に、または連続して混合することによって実施され、その結果、生化学反応が動作中に設定され、試験標本の光学的性質における測定可能な変化がもたらされる。
【0004】
測定結果は、次いで、測定システムによって記憶装置に転送され、評価される。その後、分析装置は、出力媒体、例えばモニタ、プリンタ、またはネットワーク接続を用いて、試料特有の測定値をユーザに供給する。
【0005】
試料液または試薬液は、通常、自動ピペッティングデバイスを用いて移送される。かかるピペッティングデバイスは、一般に、高さ調節可能なピペット針を含み、ピペット針は、変位可能または枢動可能な移送アーム上に垂直に配置されるとともに、ピペット針を用いて所望量の液体をコンテナから取り出し、別の位置にある標的のコンテナ内に放出することができるようにして、ポンプユニットに接続される。通常、ピペット針は、移送アームを利用して液体コンテナの上方の位置に変位され、次いで液体コンテナ内に下ろされ、その中に収容された液体に入れられる。所望量が取り出されると、ピペット針は上方に駆動され、次いで、移送アームを利用して、液体コンテナの上方の、例えば測定セルの上方の所望の標的位置に駆動される。そこで、ピペット針は再び下ろされ、液体の含量が放出される。
【0006】
従来、ピペッティングデバイスは充填レベルセンサを備える。この目的は、第一に、自動分析装置が動作している間の試薬液コンテナ内における試薬液の充填レベルを決定し、これを制御装置に報告できるようにすることである。これにより、例えば、試薬コンテナの交換の必要性に関してユーザに適時に報告できることが確実化される。第二に、充填レベルを決定することによって、液体の代わりに空気が吸入されるのを回避するために、取り出される液体中にピペット針が常に十分な深さで浸漬していることが確実化される。
【0007】
充填レベルを決定する最も一般的な方法は、容量性手段によって充填レベルを決定するものである。この目的のために、ピペット針は導電性材料から、したがって原則的な形態では測定電極から成り、さらに、基準電極を含む。充填レベルは、ピペット針と基準電極との間の電気容量の変化から、継続的に決定することができる。別の方法は、光学的手段によって充填レベルを決定することを伴う。この目的のために、ピペット針は、光源および光センサから成る、光電子充填レベルセンサを含む。浸漬の場合、光は液体によって屈折し、光センサには達しなくなるか、または減衰された状態でのみ光センサに達する。充填レベルは、光信号の減衰から決定することができる。
【0008】
問題は、個々の液体コンテナ内の液面に泡が生じ得ることである。液体泡、即ち液体に取り囲まれた気泡は、多くの場合、界面活性剤を含有する試薬液で発生し、または液体量をピペッティングする際、液体だけではなく空気も吸い上げられ、標的コンテナ内に放出された場合にも発生する。液面に泡が存在すると、充填レベルセンサを備えたピペット針を浸漬する際に泡が既に液体として検出されているため、液体の充填レベルを決定するのが困難になる。これには、通常、高すぎる誤った充填レベルが検出されるという影響があり、それがひいては、液体を取り出す際に、吸入される容量の少なくとも一部が泡から成るという結果につながる。このことは、ピペッティングの不正確さに結び付き、最終的には適正でない測定結果につながる。
【0009】
泡の形成によるピペッティングの不正確さを回避するための様々な方策が、従来技術で知られている。
【0010】
特許文献1は、充填レベルセンサを備えたピペット針を用いて、液体量を吸入する前後に試薬液コンテナ内の充填レベルを決定する方法について記載している。前もって固定した値と関連して充填レベルの変化が異常である場合、これは泡が存在することを示す。
【0011】
特許文献2は、充填レベルセンサを備えたピペット針を用いて、針を浸漬している間の充填レベルの連続的な決定を実施し、論理ユニットを使用して、泡が存在するか否かを決定し、泡が存在する場合、液面が泡の下で検出されるように基準を導入する、別の方法について記載している。
【0012】
欠点は、ピペッティングの不正確さを回避するために、泡が検出された液体コンテナが自動分析装置の警報もしくは警告をトリガするか、またはそれ以上液体が取り出されないように自動的に除外されることである。これには、分析を実施できず、また場合によってはユーザによる液体コンテナの交換を要するという影響がある。
【0013】
さらなる問題は、液体コンテナの動きによって、液体の残留物が液面の上方でコンテナの内壁に付着し、結果として、コンテナの充填レベルが最初から低くなりすぎる恐れがあることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】EP−A1−0526210
【特許文献2】EP−A1−0990907
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、自動分析装置における液体量の自動移送において、本発明の目的は、ピペッティングの不正確さを回避すること、また特に妥当と思えない液体の充填レベルが測定された場合であっても、単純かつコスト効率のよい手段によって、即時の警報または液体コンテナの交換なしに、精密な液体の取出しを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明によれば、この目的は、ピペット針を液体に浸漬する際に妥当と思えない液体の充填レベルが測定された場合、液体量を吸入せずにピペット針が液体から引き抜かれ、次いで再び浸漬されるという事実によって達成される。この手順は複数回繰り返すことができる。ピペット針の浸漬および引抜きの繰返しによって、液体コンテナ内にある泡が壊れ、少なくとも妥当と思えない充填レベルの原因が泡にあり得る場合、液体の精密な取出しがそれによって可能になることが観察されている。本発明による方法は、特に単純でコスト効率のよいように、例えば対応する制御ソフトウェアの形態で、充填レベルセンサが統合された自動ピペッティングデバイスを有する任意の従来の自動分析装置上で実施できることが特に有利である。
【0017】
したがって、本発明の主題は、液体量を第1の液体容器から第2の液体容器に移送する方法であり、自動的に変位可能または枢動可能な移送アーム上に固定されるとともに、充填レベルセンサを有するピペット針が使用され、方法は:
a)ピペット針を第1の液体容器に収容された液体に浸漬し、充填レベルを測定する工程;
b)測定された充填レベルを、所定の最低充填レベルおよび所定の最高充填レベルと比較する工程と;
c)測定された充填レベルが、
i.所定の最高充填レベルを上回るか、または、
ii.所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回るか、または、
iii.所定の最低充填レベルを下回るかを決定する工程と、
d)ピペット針を液体から引き抜く工程とを含み、
測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るかまたは所定の最低充填レベル
を下回ると決定された場合、液体量を吸入せずにピペット針が液体から引き抜かれ、次いで、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回ると決定されるまで、工程a)〜d)が繰り返され、次いで、ピペット針が引き抜かれる前に、移送される液体量が吸入され、その後、第2の液体容器内に移送される。
【0018】
所定の最高充填レベルおよび所定の最低充填レベルは、所与の液体容器に対して、例えば試料容器もしくは試薬液コンテナに対して、予測されるパラメータまたは前もって固定されているパラメータであり、あるいは、第1の充填レベル測定値から、またその後に取り出される既知の液体量から計算され、あるいは、既知の液体量が空の容器内に放出された後で計算される。後者の2つの場合では、充填レベルのセットポイント値は、通常は計算され、許容差(±)が追加され、その結果、最高充填レベルおよび最低充填レベルが事前定義される。
【0019】
好ましくは、工程a)〜d)が、間を置かずに連続して、最大10回繰り返され、特に好ましくは最大3回、4回、または5回繰り返される。この繰返し回数によって、妥当と思えない充填レベルが最初に決定されていた、非常に多数の液体容器から液体を精密に取り出すことが既に可能になっていることが分かっている。
【0020】
工程a)〜d)の最大繰返し回数を実施する際に、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るか、または所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、ピペット針は、液体量を吸入せずに液体から引き抜かれ、第1の液体容器は液体のさらなる取出しから除外される。影響を受ける液体コンテナは、例えば、さらなる自動アクセスを防ぐエラーメッセージによって識別することができ、または液体コンテナの交換が必要であることを示す警報をトリガすることができる。
【0021】
工程a)〜d)の最大繰返し回数を実施する際に、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るか、または所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、別の方法として、最後の繰返しの最後の工程で、液体量を吸入せずにピペット針を液体から引き抜くことができ、針は次いで、少なくとも5〜600秒の期間が経過するまで液体に再び浸漬されず、前記少なくとも5〜600秒の期間が経過した後、ピペット針は次いで、第1の液体容器に収容された液体に再び浸漬され、浸漬する工程、充填レベルを測定する工程、測定された充填レベルを所定の最低充填レベルおよび所定の最高充填レベルと比較する工程、引き抜く工程などを含む、最初に記載した方法が繰り返される。工程a)〜d)の第1の繰返し回数と第2の繰返し回数との間の一時停止は、妥当と思えない充填レベルが最初に決定されていた、さらに多数の液体容器から液体を精密に取り出すことが可能になるという効果を有する。
【0022】
好ましい一実施形態では、ピペット針は、少なくとも5〜600秒の期間の間に、洗浄ステーションに駆動することができ、そこで洗浄し、次いで駆動して第1の液体容器に戻すことができる。ピペット針用に自動分析装置内に設けられた洗浄ステーションでは、ピペット針は、通常、外側および内側から清浄化される。この工程によって、ピペット針上の付着物によって引き起こされる、妥当と思えない充填レベルが決定されるリスクが低減される。
【0023】
あるいは、ピペット針は、少なくとも5〜600秒の期間の間に、洗浄ステーションに駆動することができ、そこで洗浄し、次いで第3の液体容器に駆動することができる。そこで、ピペット針は次いで第3の液体容器に収容された液体に浸漬され、移送される液体量が吸入され、ピペット針は液体から引き抜かれ、第4の液体容器に駆動され、移送される液体量がその中に放出される。次いで、ピペット針は再び洗浄ステーションに駆動され、そこで洗浄され、次いで駆動されて第1の液体容器に戻される。この場合、工程a)〜d)の第1の繰返し回数と第2の繰返し回数との間の一時停止は、第1の液体容器から第2の液体容器への液体量の第1の移送の間、第2の独立した移送手順を実施するのに利用される。これには、液体容器の妥当と思えない充填レベルが原因で問題を含んでいる移送手順が、さらに必要な移送手順の実行を不必要に遅らせることがなく、したがって、自動分析装置の所望のスループットが維持されるという利点がある。
【0024】
第1の液体容器から第2の液体容器に液体量を移送する本発明による方法では、第1の(および第3の)液体容器は、例えば体液の試料を収容する試料容器、または試薬液を収容する試薬液コンテナであることができる。第2の(および第4の)液体容器は、好ましくは、反応容器または測定セル、例えば微小滴定プレート内のキュベットもしくはウェルである。
【0025】
本発明のさらなる主題は、自動的に変位可能または枢動可能な移送アーム上に固定されるとともに、充填レベルセンサを有する少なくとも1つのピペット針と、液体容器を受け入れる複数の受入れ位置と、液体量を第1の液体容器から第2の液体容器に移送する、本発明による方法を制御するように構成されたコントローラとを備えた、自動分析装置であり、コントローラは、特に:
a)ピペット針を第1の液体容器に収容された液体に浸漬し、充填レベルを測定する工程と;
b)測定された充填レベルを、所定の最低充填レベルおよび所定の最高充填レベルと比較する工程と;
c)測定された充填レベルが、
i.所定の最高充填レベルを上回るか、または、
ii.所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回るか、または、
iii.所定の最低充填レベルを下回るかを決定する工程と、
d)ピペット針を液体から引き抜く工程と、を制御するように構成され、
測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを上回るかまたは所定の最低充填レベルを下回ると決定された場合、液体量を吸入せずにピペット針が液体から引き抜かれ、次いで、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルを下回り、かつ所定の最低充填レベルを上回ると決定されるまで、工程a)〜d)が繰り返され、次いで、ピペット針が引き抜かれる前に、移送される液体量が吸入され、その後、第2の液体容器内に移送される。
【0026】
好ましい一実施形態では、コントローラはさらに、工程a)〜d)が、間を置かずに連続して、最大10回繰り返され、好ましくは最大3回、4回、または5回繰り返されるように構成される。
【0027】
原則的に、コントローラは、好ましくは、本発明による上述の方法のすべての変形例および実施形態を制御できるように構成される。
【0028】
本発明による自動分析装置の一実施形態では、装置は、ピペット針用の少なくとも1つの洗浄ステーションをさらに含む。
【0029】
本発明による自動分析装置のさらなる実施形態では、ピペット針は容量性の充填レベルセンサを有する。
【0030】
本発明の例示的な実施形態について、図面を参照してさらに詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】液体量が液体容器から取り出されていることを示す概略図である。
図2】第1の液体容器から第2の液体容器に液体量を移送する方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
すべての図面において、同一の部分には同じ参照符号を与える。
【0033】
図1は、ヒト血漿の試料を収容した試料容器1の概略図を示す。試料容器1は、血液、血漿、血清、尿、または他の体液の多種多様な分析を、ユーザの身体部分に対する作用を必要とせずに、完全に自動で行うように設計された、自動分析装置(図示なし)内に載置される。
【0034】
泡の層3が血漿液2上にある。血漿試料の部分量を取り出すために、分析装置の自動的に変位可能な移送アーム(やはり図示なし)上に固定されたピペット針4が、試料容器1に挿入されている。ピペット針4は、ピペット針の先端が液面と接触したときにそれを検出する、充填レベルセンサ(図示なし)を有する。このように、液体容器内の液体の充填レベルを測定することができる。
【0035】
図示される例では、自動ピペッティングデバイスを用いて、主要試料チューブ(図示なし)から既定量の血漿液2が取り出されており、試料容器1内にピペッティングされている。移送された血漿液2の既知の量から、また試料容器1の既知の寸法から、試料容器1内の血漿液2の充填レベルに対するセットポイント値が分析装置によって計算される。特定の許容差(±)を考慮に入れて、最高充填レベルMAXおよび最低充填レベルMINが決定される。
【0036】
しかしながら、血漿液2の部分量が取り出されることが意図されている、ここに図示される状況では、ピペット針の先端と泡3との接触が液面との接触として既に検出されているので、充填レベルIは計算された最高充填レベルMAXを上回ると決定される。測定された充填レベルIは許容可能な最高充填レベルMAXを上回っているので、液体は吸入されず、ピペッティングの不正確さが回避される。それにもかかわらず、試料容器1から液体を精密に取り出すのを可能にするため、図2に概略的に表される方法が使用される。
【0037】
図2は、ある量の血漿液を、図1に示される試料容器1からキュベット内に自動的に移送する方法のフローチャートを示す。方法は、特に、変位可能な移送アーム上に固定されるとともに容量性の充填レベルセンサを有するピペット針4を含む、自動分析装置で実施される。
【0038】
工程10で、ピペット針4が下ろされ、試料容器1に収容された血漿液に浸漬され、充填レベルIが測定される。さらに、工程10で、測定された充填レベルIは、所定の最低充填レベルMINおよび所定の最高充填レベルMAXと比較される。工程12で、測定された充填レベルが所定の最高充填レベルMAXを上回るか、または所定の最高充填レベルMAXを下回り、かつ所定の最低充填レベルMINを上回るか、または所定の最低充填レベルMINを下回るかを確認するチェックが行われる。工程12で、測定された充填レベルIが所定の最高充填レベルMAXを上回るか、または所定の最低充填レベルMINを下回ると決定された場合(この例では、最高充填レベルMAXを上回っている)、ピペット針4が、工程14で、液体量を吸入せずに血漿液から引き抜かれ、測定された充填レベルIが所定の最高充填レベルMAXを下回り、かつ所定の最低充填レベルMINを上回ると工程12で決定されるまで、工程10、12、および14が最大5回繰り返される。そうなった場合、工程16で、移送される血漿液の量が吸入され、ピペット針4が引き抜かれ、次いでキュベットに駆動され、血漿液の量がその中に放出される。
【0039】
妥当と思える充填レベルが最終的に工程12で測定されるこの状態が発生しない場合、工程18で、ピペット針4が、液体量を吸入せずに血漿液から引き抜かれ、少なくとも300秒の期間が経過するまで液体に再び浸漬されない。この期間が経過した後、測定された充填レベルIが所定の最高充填レベルMAXを下回り、かつ所定の最低充填レベルMINを上回ると工程12で決定されるまで、工程10、12、および14がやはり最大5回繰り返される。
【0040】
工程18が実施されているとき、妥当と思える充填レベルが最終的に工程12で測定される状態が発生しない場合、適正でないピペッティングのリスクが大きすぎるため、工程20で、試料容器1は液体のさらなる取出しから除外される。この目的のために、試料容器1には、ピペッティングデバイスの自動アクセスを防止する情報が記される。次いで、試料容器1は廃棄コンテナに移送される。
【符号の説明】
【0041】
1 試料容器
2 血漿液
3 泡の層
4 ピペット針
10〜20 方法工程
MIN 最低充填レベル
MAX 最高充填レベル
I 測定された充填レベル
図1
図2