特許第6676490号(P6676490)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676490
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】熱源装置およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20200330BHJP
   F24F 11/46 20180101ALI20200330BHJP
   F24F 140/20 20180101ALN20200330BHJP
【FI】
   F24F11/70
   F24F11/46
   F24F140:20
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-137516(P2016-137516)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2018-9720(P2018-9720A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年4月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】505461072
【氏名又は名称】東芝キヤリア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】築山 誠二
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
(72)【発明者】
【氏名】松本 勇司
【審査官】 奈須 リサ
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−77621(JP,A)
【文献】 特開2011−137611(JP,A)
【文献】 特開2008−045800(JP,A)
【文献】 特開2016−006355(JP,A)
【文献】 特開昭63−140236(JP,A)
【文献】 特開2014−066453(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2010/0070092(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用するエネルギーの種類が互いに異なる第1および第2熱源機を備え、これら熱源機から流出する熱源水を合流して負荷へ供給する熱源装置であって、
前記合流後の熱源水に対し定められた設定温度T3sを前記第1熱源機から流出する熱源水に対する第1設定温度T1sとして定め、前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御する第1制御手段と、
前記第1熱源機の運転だけでは能力が不足する場合に、前記設定温度T3sから負荷増大側に所定値だけシフトした値を前記第1熱源機から流出する熱源水に対する新たな第1設定温度T1sとして定めるとともに、前記設定温度T3s、前記合流後の熱源水の温度T3、前記合流後の熱源水の流量と前記第1熱源機から流出する熱源水の流量との比率R1、前記合流後の熱源水の流量と前記第2熱源機から流出する熱源水の流量との比率R2、および前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2に基づいて、前記第2熱源機から流出する熱源水に対する第2設定温度T2sを定め、前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記新たな第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御し、かつ前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2が前記第2設定温度T2sとなるように前記第2熱源機の運転を制御する第2制御手段と、
を備えることを特徴とする熱源装置。
【請求項2】
前記第2制御手段は、
前記合流後の熱源水の温度T3と前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2との差“T3−T2”を、前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1と前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2との差“T1−T2”で除算することにより前記比率R1[=(T3−T2)/(T1−T2)]を求め、この比率R1から前記比率R2を求め、
前記第2設定温度T2s[=(T3s−T3)×(R1/R2)+T2]を定める、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱源装置。
【請求項3】
前記第2制御手段は、
前記合流後の熱源水の温度T3と前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2との差“T3−T2”を、前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1と前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2との差“T1−T2”で除算することにより前記比率R1[=(T3−T2)/(T1−T2)]を求め、
前記合流後の熱源水の温度T3と前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1との差“T3−T1”を、前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2と前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1との差“T2−T1”で除算することにより前記比率R2[=(T3−T1)/(T2−T1)]を求める、
前記第2設定温度T2s[=(T3s−T3)×(R1/R2)+T2]を定める、
ことを特徴とする請求項1に記載の熱源装置。
【請求項4】
前記第1熱源機は、電気のエネルギーで動作するヒートポンプ熱源機であり、
前記第2熱源機は、電気とは異なるエネルギーで動作する熱源機である、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の熱源装置。
【請求項5】
使用するエネルギーの種類が互いに異なる第1および第2熱源機を備え、これら熱源機から流出する熱源水を合流して負荷へ供給する熱源装置の制御方法であって、
前記合流後の熱源水に対し定められた設定温度T3sを前記第1熱源機から流出する熱源水に対する第1設定温度T1sとして定め、
前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御し、
前記第1熱源機の運転だけでは能力が不足する場合に、前記設定温度T3sから負荷増大側に所定値だけシフトした値を前記第1熱源機から流出する熱源水に対する新たな第1設定温度T1sとして定めるとともに、前記設定温度T3s、前記合流後の熱源水の温度T3、前記合流後の熱源水の流量と前記第1熱源機から流出する熱源水の流量との比率R1、前記合流後の熱源水の流量と前記第2熱源機から流出する熱源水の流量との比率R2、および前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2に基づいて前記第2熱源機から流出する熱源水に対する第2設定温度T2sを定め、
前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記新たな第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御し、
前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2が前記第2設定温度T2sとなるように前記第2熱源機の運転を制御する、
を備えることを特徴とする熱源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数種の熱源機を備えた熱源装置およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用するエネルギーの種類が互いに異なる複数種の熱源機を備え、これら熱源機から流出する熱源水を負荷へ供給する熱源装置が知られている。複数種の熱源機として、電気のエネルギーで動作するヒートポンプ式熱源機、電気とは異なるエネルギーである例えば蒸気の熱エネルギーで動作する吸収式熱源機などがある。
【0003】
この熱源装置では、通常はエネルギー消費効率(COP)にすぐれたヒートポンプ式熱源機を優先運転しながら必要に応じて吸収式熱源機を追掛け運転(追従運転ともいう)し、電力不足が予想される状況では吸収式熱源機を優先運転しながら必要に応じてヒートポンプ式熱源機を追掛け運転するといった運用が考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−45800号公報
【特許文献2】特開2004−278884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
複数種の熱源機のいずれかを優先運転する場合、その優先運転と他の熱源機の追掛け運転とを負荷の要求に応じてどのように組み合わせればよいか、その制御は非常に難しい。
【0006】
本実施形態の目的は、複数種の熱源機の優先運転と追掛け運転とを負荷の要求に合せて適切かつ効率よく組み合わせることができる熱源装置およびその制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の熱源機は、使用するエネルギーの種類が互いに異なる第1および第2熱源機を備え、これら熱源機から流出する熱源水を合流して負荷へ供給するものであって、第1制御手段および第2制御手段を備える。第1制御手段は、前記合流後の熱源水に対し定められた設定温度T3sを前記第1熱源機から流出する熱源水に対する第1設定温度T1sとして定め、前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御する。第2制御手段は、前記第1熱源機の運転だけでは能力が不足する場合に、前記設定温度T3sから負荷増大側に所定値だけシフトした値を前記第1熱源機から流出する熱源水に対する新たな第1設定温度T1sとして定めるとともに、前記設定温度T3s、前記合流後の熱源水の温度T3、前記合流後の熱源水の流量と前記第1熱源機から流出する熱源水の流量との比率R1、前記合流後の熱源水の流量と前記第2熱源機から流出する熱源水の流量との比率R2、および前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2に基づいて、前記第2熱源機から流出する熱源水に対する第2設定温度T2sを定め、前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記新たな第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御し、かつ前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2が前記第2設定温度T2sとなるように前記第2熱源機の運転を制御する。
【0008】
請求項5の熱源機の制御方法は、使用するエネルギーの種類が互いに異なる第1および第2熱源機を備え、これら熱源機から流出する熱源水を合流して負荷へ供給する熱源装置の制御方法であって;前記合流後の熱源水に対し定められた設定温度T3sを前記第1熱源機から流出する熱源水に対する第1設定温度T1sとして定め;前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御し;前記第1熱源機の運転だけでは能力が不足する場合に、前記設定温度T3sから負荷増大側に所定値だけシフトした値を前記第1熱源機から流出する熱源水に対する新たな第1設定温度T1sとして定めるとともに、前記設定温度T3s、前記合流後の熱源水の温度T3、前記合流後の熱源水の流量と前記第1熱源機から流出する熱源水の流量との比率R1、前記合流後の熱源水の流量と前記第2熱源機から流出する熱源水の流量との比率R2、および前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2に基づいて前記第2熱源機から流出する熱源水に対する第2設定温度T2sを定め;前記第1熱源機から流出する熱源水の温度T1が前記新たな第1設定温度T1sとなるように前記第1熱源機の運転を制御し;前記第2熱源機から流出する熱源水の温度T2が前記第2設定温度T2sとなるように前記第2熱源機の運転を制御する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態の構成を示すブロック図。
図2】一実施形態の制御を示すフローチャート。
図3】一実施形態における各熱源機の能力P1,P2、熱源水の温度T1,T2,T3、および設定温度T1s,T2s,T3sの変化の一例を示すタイムチャート。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、使用するエネルギーの種類が互いに異なる複数種の熱源機として、ヒートポンプ式熱源機(第1熱源機)1および吸収式熱源機(第2熱源機)2が互いに並列に水配管接続されている。
【0011】
ヒートポンプ式熱源機1は、電気をエネルギーとして動作するヒートポンプ式冷凍サイクルを含み、付属または後付のポンプ1pの運転によって水を取込み、取込んだ水をヒートポンプ式冷凍サイクルの運転によって冷却または加熱し空調用の熱源水として送り出す。また、ヒートポンプ式熱源機1は、ヒートポンプ式冷凍サイクルの圧縮機能力およびポンプ1pの運転を制御するコントローラ1aを有する。
【0012】
吸収式熱源機2は、周知の蒸発器・吸収器・再生器・凝縮器により構成され、電気とは異なるエネルギー例えばガスバーナー等で加熱された蒸気の熱エネルギーで動作するもので、付属または後付のポンプ2pの運転によって水を取込み、取込んだ水を冷却し空調用の熱源水として送り出す。また、吸収式熱源機2は、蒸発器・吸収器・再生器・凝縮器の運転およびポンプ2pの運転を制御するコントローラ2aを有する。
【0013】
ヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水と吸収式熱源機2から流出する熱源水とが1つの水配管において合流し、合流した熱源水が負荷3に供給される。負荷3は、例えば、空調用の水熱交換器、空調用の空気熱交換器(ラジエータ)、給水用の貯水タンク、給湯用の貯湯タンクなどである。負荷3から流出する水は、2つの水配管に分流して上記ポンプ1p,2pへと流れる。
【0014】
ヒートポンプ式熱源機1の出口側水配管に、そのヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1を検知する温度センサ(第1温度センサ)11が配置されている。吸収式熱源機2の出口側水配管に、その吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2を検知する温度センサ(第2温度センサ)12が配置されている。ヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水と吸収式熱源機2から流出する熱源水とが合流して流れる水配管に、その合流した熱源水の温度T3を検知する温度センサ(第3温度センサ)13が配置されている。
【0015】
そして、コントローラ1a,2aおよび温度センサ11,12,13がシステムコントローラ10に接続されている。システムコントローラ10には、さらに、操作表示器14も接続されている。
【0016】
システムコントローラ10は、ヒートポンプ式熱源機1および吸収式熱源機2の運転を制御するもので、主要な機能として次の(1)〜(5)の手段を備える。
【0017】
(1)ヒートポンプ式熱源機1および吸収式熱源機2のどちらを優先的に運転するかを、外部の電力デマンド制御部からの指令や操作表示器14の操作などに応じて選定する選定手段。例えば、通常はエネルギー消費効率(COP)にすぐれたヒートポンプ式熱源機1の優先運転を選定し、電力不足が予想される状況では蒸気の熱エネルギーで動作する吸収式熱源機2の優先運転を選定する。
【0018】
(2)ヒートポンプ式熱源機1の優先運転時、合流後の熱源水に対し定められた設定温度T3sをヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水に対する設定温度(第1設定温度)T1sとして定め、ヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1がその設定温度T1sとなるようにヒートポンプ式熱源機1の運転(および能力P1)を制御する第1制御手段。上記設定温度T3sは、操作表示器14の操作あるいは負荷3からの指示により設定される。
【0019】
(3)第1制御手段によるヒートポンプ式熱源機1の運転だけでは能力が不足する場合に、上記設定温度T3sから負荷増大側に所定値ΔT1だけシフトした値をヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水に対する新たな設定温度T1sとして定めるとともに、上記設定温度T3s、合流後の熱源水の温度T3、流量比率R1,R2、および吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2に基づく演算により吸収式熱源機2から流出する熱源水に対する設定温度(第2設定温度)T2s[=(T3s−T3)×(R1/R2)+T2]を定め、ヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1が上記新たな設定温度T1sとなるようにヒートポンプ式熱源機1の運転(および能力P1)を制御し、かつ吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2が上記定めた設定温度T2sとなるように吸収式熱源機2の運転(および能力P2)を制御する第2制御手段。
【0020】
冷却時は設定温度T1s=[T3s−ΔT1]、加熱時は設定温度T1s=[T3s+ΔT1]を定める。所定値ΔT1は、ヒートポンプ式熱源機1の定格能力の範囲内で変化させることが可能な熱源水温度の任意の値である。流量比率R1は、合流後の熱源水の流量とヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の流量との比率のことであり、温度センサ13の検知温度T3と温度センサ12の検知温度T2との差“T3−T2”を、温度センサ11の検知温度T1と第2温度センサ12の検知温度T2との差“T1−T2”で除算することにより、検出できる。R1=(T3−T2)/(T1−T2)。流量比率R2は、合流後の熱源水の流量と吸収式熱源機2から流出する熱源水の流量との比率のことであり、温度センサ13の検知温度T3と温度センサ11の検知温度T1との差“T3−T1”を、温度センサ12の検知温度T2と温度センサ11の検知温度T1との差“T2−T1”で除算することにより、検出できる。R2=(T3−T1)/(T2−T1)。
【0021】
(4)吸収式熱源機2の優先運転時、上記設定温度T3sを吸収式熱源機2から流出する熱源水に対する設定温度(第1設定温度)T2sとして定め、吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2がその設定温度T2sとなるように吸収式熱源機2の運転(および能力P2)を制御する第3制御手段。
【0022】
(5)第3制御手段による吸収式熱源機2の運転だけでは能力が不足する場合に、上記設定温度T3sから負荷増大側に所定値ΔT2だけシフトした値を吸収式熱源機2から流出する熱源水に対する新たな設定温度T2sとして定めるとともに、上記設定温度T3s、合流後の熱源水の温度T3、流量比率R2,R1、およびヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1に基づく演算によりヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水に対する設定温度(第2設定温度)T1s[=(T3s−T3)×(R2/R1)+T1]を定め、吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2が上記新たな設定温度T2sとなるように吸収式熱源機2の運転(および能力P2)を制御し、かつヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1が上記定めた設定温度T1sとなるようにヒートポンプ式熱源機1の運転(および能力P1)を制御する第4制御手段。
【0023】
冷却時は設定温度T2s=[T3s−ΔT2]、加熱時は設定温度T2s=[T3s+ΔT2]を定める。所定値ΔT2は、吸収式熱源機2の定格能力の範囲内で変化させることが可能な熱源水温度の任意の値である。
【0024】
なお、流量比率R1,R2は合流後の熱源水の流量を基準として互いに関連するものなので、いずれか一方の流量比率が分かればその流量比率から他方の流量比率を求めることが可能である。この点を考慮し、流量比率R1を上記演算“R1=(T3−T2)/(T1−T2)”により求め、求めた流量比率R1から流量比率R2を算出してもよい。あるいは、流量比率R2を上記演算“R2=(T3−T1)/(T2−T1)”により求め、求めた流量比率R2から流量比率R1を算出してもよい。
【0025】
ポンプ1p,2pの定格能力運転などにより所定の流量比率R1,R2が規定値として決まっている場合には、その流量比率R1,R2のデータをシステムコントローラ10の内部メモリに予め記憶しておき、その流量比率R1,R2のデータを逐次に読出すようにしてもよい。
【0026】
ヒートポンプ式熱源機1が優先運転の場合の設定温度(第2設定温度)T2sをT2s[=(T3s−T3)×(R1/R2)+T1]と定め、吸収式熱源機2が優先運転の場合の設定温度(第2設定温度)T1sをT1s[=(T3s−T3)×(R2/R1)+T2]と定めたが、ヒートポンプ式熱源機1が優先運転の場合の設定温度(第2設定温度)T2sをT2s[=(T3s−T1)×(R1/R2)+T3s]と定め、吸収式熱源機2が優先運転の場合の設定温度(第2設定温度)T1sをT1s[=(T3s−T2)×(R2/R1)+T3s]と定めてもよい。
【0027】
つぎに、システムコントローラ10が実行する冷却時の制御を図2のフローチャートおよび図3のタイムチャートを参照しながら説明する。
操作表示器14で冷却運転の開始操作がなされた場合(ステップS1のYES)、システムコントローラ10は、追従フラグf1,f2をそれぞれ初期値“0”にセットする(ステップS2)。続いて、システムコントローラ10は、ヒートポンプ式熱源機1および吸収式熱源機2のどちらの優先運転が選定されているかを判定する(ステップS3)。
【0028】
[ヒートポンプ式熱源機1の優先運転]
ヒートポンプ式熱源機1の優先運転が選定されている場合(ステップS3のYES)、システムコントローラ10は、ポンプ1pを定格能力で運転をオンするとともに、仮に追従フラグf2が“1”であればそれを初期値“0”に戻しておく(ステップS4)。このポンプ1pの運転オンにより、熱源水がヒートポンプ式熱源機1から流出し、その熱源水が負荷3を通ってヒートポンプ式熱源機1へと流れる。この熱源水の循環に伴い、ヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1が温度センサ11で検知されるとともに、合流部の熱源水の温度T3(=T1)が温度センサ13で検知される。
【0029】
ポンプ1pの運転オンに続き、システムコントローラ10は、追従フラグf1が初期値“0”であることにより(ステップS5のYES)、合流後の熱源水に対し定められた設定温度T3sをヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水に対する設定温度(第1設定温度)T1sとして定める(ステップS6)。そして、システムコントローラ10は、温度センサ11の検知温度T1がその設定温度T1sとなるようにヒートポンプ式熱源機1の運転および能力P1を制御する(ステップS7)。すなわち、負荷3の要求に見合う温度の熱源水がヒートポンプ式熱源機1の単独運転によって得られ、その熱源水が負荷3に送られる。
【0030】
このヒートポンプ式熱源機1の能力P1が上限値に至らない段階では、システムコントローラ10は、能力不足ではないとの判断の下に(ステップS8のNO)、吸収式熱源機2の運転オフ、ポンプ2pの運転オフ、追従フラグf1の初期値“0”を維持し(ステップS9,S10,S11)、かつ操作表示器14における運転停止操作を監視する(ステップS12)。運転停止操作がなければ(ステップS12のNO)、システムコントローラ10は、ステップS3の優先運転判定に戻って同様の処理を繰り返す。運転停止操作があれば(ステップS12のYES)、システムコントローラ10は、全ての運転をオフし(ステップS13)、最初のステップS1の運転開始判定に戻る。
【0031】
ヒートポンプ式熱源機1の能力P1が上限値に達した場合、そのままでは負荷3の要求に見合う温度の熱源水を負荷3に供給できない状態となる。この場合、システムコントローラ10は、能力不足であるとの判断の下に(ステップS8のYES)、ポンプ2pを定格能力で運転オンする(ステップS14)。このポンプ2pの運転オンにより、熱源水が吸収式熱源機2から流出し、その熱源水がヒートポンプ式熱源機1からの熱源水の流れに合流する。吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2は、温度センサ12で検知される。
【0032】
ポンプ2pの運転オンに伴い、システムコントローラ10は、追従フラグf1を“1”にセットするとともに(ステップS15)、設定温度T3sから負荷増大側(下降方向)に所定値ΔT1だけシフトした値“T3s−ΔT1”をヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水に対する新たな設定温度T1sとして定める(ステップS16)。続いて、システムコントローラ10は、ヒートポンプ式熱源機1の流量比率R1および吸収式熱源機2の流量比率R2を検出し(ステップS17)、設定温度T3sと温度センサ13の検知温度T3との差“T3s−T3”にその流量比率R1,R2の比“R1/R2”を乗算し、この乗算結果と温度センサ12の検知温度T2との和を吸収式熱源機2から流出する熱源水に対する設定温度T2s[=(T3s−T3)×(R1/R2)+T2]として定める(ステップS18)。流量比率R1,R2をパラメータとして定める設定温度T2sは、合流後の熱源水の温度T3を吸収式熱源機2の追掛け運転(追従運転ともいう)によって設定温度T3s一定に保つためのものである。
【0033】
設定温度T2sを定めた後、システムコントローラ10は、温度センサ12の検知温度T2がその設定温度T2sとなるように吸収式熱源機2の運転および能力P2を制御し(ステップS19)、かつ操作表示器14における運転停止操作を監視する(ステップS12)。運転停止操作がなければ(ステップS12のNO)、システムコントローラ10は、ステップS3の優先運転判定に戻って同様の処理を繰り返す。
【0034】
この繰り返しに際しては、追従フラグf1が“1”にセットされているので(ステップS5のNO)、設定温度T3sを設定温度T1sとして定めるステップS6の処理は実行されることはなく、上記ステップ16で定められた新たな設定温度T1s(=T3s−ΔT1)がステップS7の処理に供される。すなわち、システムコントローラ10は、ヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1が新たな設定温度T1s(=T3s−ΔT1)となるようにヒートポンプ式熱源機1の運転(および能力P1)を制御する。
【0035】
このように、ヒートポンプ式熱源機1の運転だけでは能力が不足する場合に、そのヒートポンプ式熱源機1に対する設定温度T1sを負荷増大方向に所定値ΔT1だけシフトすることにより、ヒートポンプ式熱源機1の優先運転を保ちながら、能力の不足分だけ吸収式熱源機2を追掛け運転することができる。しかも、そのときの流量比率R1,R2の比“R1/R2”に応じて追掛け運転側の吸収式熱源機2に対する設定温度T2sを補正し、補正後の設定温度T2sに基づいて吸収式熱源機2の運転および能力P2を制御するので、合流後の熱源水の温度T3を設定温度T3s一定に保つことができる。すなわち、ヒートポンプ式熱源機1の優先運転と吸収式熱源機2の追掛け運転とを負荷3の要求に合せて適切かつ効率よく組み合わせることができる。ヒートポンプ式熱源機1の設定温度Ts1を所定値ΔT1シフトするだけの簡単な操作でヒートポンプ式熱源機1の優先運転を維持できるので、システムコントローラ10に余計な制御負担がかからない。システムコントローラ10に制御負担を軽減できるので、システムコントローラ10の開発および採用に関わるコストの低減が可能である。
【0036】
[吸収式熱源機2の優先運転]
吸収式熱源機2の優先運転が選定されている場合(ステップS3のNO)、システムコントローラ10は、ポンプ2pを定格能力で運転をオンするとともに、仮に追従フラグf1が“1”であればそれを初期値“0”に戻しておく(ステップS20)。このポンプ2pの運転オンにより、熱源水が吸収式熱源機2から流出し、その熱源水が負荷3を通って吸収式熱源機2へと流れる。この熱源水の循環に伴い、吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2が温度センサ12で検知されるとともに、合流部の熱源水の温度T3(=T2)が温度センサ13で検知される。
【0037】
ポンプ2pの運転オンに続き、システムコントローラ10は、追従フラグf2が初期値“0”であることにより(ステップS21のYES)、合流後の熱源水に対し定められた設定温度T3sを吸収式熱源機2から流出する熱源水に対する設定温度(第1設定温度)T2sとして定める(ステップS22)。そして、システムコントローラ10は、温度センサ12の検知温度T2がその設定温度T2sとなるように吸収式熱源機2の運転および能力P2を制御する(ステップS23)。すなわち、負荷3の要求に見合う温度の熱源水が吸収式熱源機2の単独運転によって得られ、その熱源水が負荷3に送られる。
【0038】
この吸収式熱源機2の能力P2が上限値に至らない段階では、システムコントローラ10は、能力不足ではないとの判断の下に(ステップS24のNO)、ヒートポンプ式熱源機1の運転オフ、ポンプ1pの運転オフ、追従フラグf2の初期値“0”を維持し(ステップS25,S26,S27)、かつ操作表示器14における運転停止操作を監視する(ステップS12)。運転停止操作がなければ(ステップS12のNO)、システムコントローラ10は、ステップS3の優先運転判定に戻って同様の処理を繰り返す。運転停止操作があれば(ステップS12のYES)、システムコントローラ10は、全ての運転をオフし(ステップS13)、最初のステップS1の運転開始判定に戻る。
【0039】
吸収式熱源機2の能力P2が上限値に達した場合、そのままでは負荷3の要求に見合う温度の熱源水を負荷3に供給できない状態となる。この場合、システムコントローラ10は、能力不足であるとの判断の下に(ステップS24のYES)、ポンプ1pを定格能力で運転オンする(ステップS28)。このポンプ1pの運転オンにより、熱源水がヒートポンプ式熱源機1から流出し、その熱源水が吸収式熱源機2からの熱源水の流れに合流する。ヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水の温度T1は、温度センサ11で検知される。
【0040】
ポンプ1pの運転オンに伴い、システムコントローラ10は、追従フラグf2を“1”にセットするとともに(ステップS28)、設定温度T3sから負荷増大側(下降方向)に所定値ΔT2だけシフトした値“T3s−ΔT2”を吸収式熱源機2から流出する熱源水に対する新たな設定温度T2sとして定める(ステップS30)。続いて、システムコントローラ10は、吸収式熱源機2の流量比率R2およびヒートポンプ式熱源機1の流量比率R1を検出し(ステップS31)、設定温度T3sと温度センサ13の検知温度T3との差“T3s−T3”にその流量比率R2,R1の比“R2/R1”を乗算し、この乗算結果と温度センサ11の検知温度T1との和をヒートポンプ式熱源機1から流出する熱源水に対する設定温度T1s[=(T3s−T3)×(R2/R1)+T1]として定める(ステップS32)。流量比率R2,R1をパラメータとして定める設定温度T1sは、合流後の熱源水の温度T3をヒートポンプ式熱源機1の追掛け運転によって設定温度T3s一定に保つためのものである。
【0041】
設定温度T1sを定めた後、システムコントローラ10は、温度センサ11の検知温度T1がその設定温度T1sとなるようにヒートポンプ式熱源機1の運転および能力P1を制御し(ステップS33)、かつ操作表示器14における運転停止操作を監視する(ステップS12)。運転停止操作がなければ(ステップS12のNO)、システムコントローラ10は、ステップS3の優先運転判定に戻って同様の処理を繰り返す。
【0042】
この繰り返しに際しては、追従フラグf2が“1”にセットされているので(ステップS21のNO)、設定温度T3sを設定温度T2sとして定めるステップS22の処理は実行されることはなく、上記ステップ30で定められた新たな設定温度T2s(=T3s−ΔT2)がステップS23の処理に供される。すなわち、システムコントローラ10は、吸収式熱源機2から流出する熱源水の温度T2が新たな設定温度T2s(=T3s−ΔT2)となるように吸収式熱源機2の運転(および能力P2)を制御する。
【0043】
このように、吸収式熱源機2の運転だけでは能力が不足する場合に、その吸収式熱源機2に対する設定温度T2sを負荷増大方向に所定値ΔT2だけシフトすることにより、吸収式熱源機2の優先運転を保ちながら、能力の不足分だけヒートポンプ式熱源機1を追掛け運転することができる。しかも、そのときの流量比率R2,R1の比“R2/R1”に応じて追掛け運転側のヒートポンプ式熱源機1に対する設定温度T1sを補正し、補正後の設定温度T1sに基づいてヒートポンプ式熱源機1の運転および能力P1を制御するので、合流後の熱源水の温度T3を設定温度T3s一定に保つことができる。すなわち、吸収式熱源機2の優先運転とヒートポンプ式熱源機1の追掛け運転とを負荷3の要求に合せて適切かつ効率よく組み合わせることができる。吸収式熱源機2の設定温度Ts2を所定値ΔT2シフトするだけの簡単な操作で吸収式熱源機2の優先運転を維持できるので、システムコントローラ10に余計な制御負担がかからない。システムコントローラ10に制御負担を軽減できるので、システムコントローラ10の開発および採用に関わるコストの低減が可能である。
【0044】
なお、上記実施形態では、使用するエネルギーの種類がヒートポンプ式熱源機1と異なる複数種の熱源機として吸収式熱源機2を用いたが、電気のエネルギーを使用しない熱源機であれば、吸収式熱源機2に限らず、他の熱源機を用いてもよい。
【0045】
その他、上記実施形態および変形例は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態および変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、書き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形は、発明の範囲は要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0046】
1…ヒートポンプ式熱源機(第1熱源機)、2…吸収式熱源機(第2熱源機)、3…負荷、10…システムコントローラ、11,12,13…温度センサ、14…操作表示器
図1
図2
図3