(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ガラスブランクの、前記内側領域が形成された部分のヘイズ値は40%以下であり、前記外側領域が形成された部分のヘイズ値は35%以上であって、かつ前記内側領域のヘイズ値が前記外側領域のヘイズ値よりも小さい、請求項1〜9のいずれか一項に記載のガラスブランク。
前記内側領域形成部の算術平均粗さRaは0.5〜1.5μmであり、前記外側領域形成部の算術平均粗さRaは、前記内側領域形成部の算術平均粗さよりも大きい、請求項11に記載のガラスブランクの製造方法。
前記内側領域形成部の算術平均粗さRaは0.5〜1.5μmであり、前記外側領域形成部の算術平均粗さRaは、前記内側領域形成部の算術平均粗さよりも大きい、請求項13に記載の磁気ディスク用ガラス基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
下型の上部に溶融ガラスを滴下し、滴下された溶融ガラスを下型と上型との間でプレス成形する場合、滴下した溶融ガラスはプレス成形されるまでに下型に接触する側が冷却され、その後プレスされ下型に載置された状態となる。このため、ガラスブランクの両主表面のうち、成形前に冷却が進行する下側の主表面と、成形時のみ上型と接触していた上側の主表面とで熱履歴が異なる。
【0008】
一方、磁気ディスクを製造する工程においては、(1)溶融ガラスからガラスブランクを成形する工程、(2)ガラスブランクを穴あけ、研削、研磨等により所望の形状および寸法のガラス基板に加工する工程、(3)ガラス基板に対して磁性膜を付与して磁気ディスクとする成膜工程を経る。ここで、ガラスブランクの上側の主表面および下側の主表面の外観には差異がないため、成形されたガラスブランクをその後の加工処理のために搬送する際にガラスブランクの主表面の向きが反転すると、成形工程における上側の主表面と下側の主表面とを判別することが困難となる。主表面の向きが反転したガラスブランクが混在した状態で加工処理が行われると、得られる磁気ディスク用ガラス基板の品質にバラツキが生じるという問題がある。
【0009】
また、プレス成形後のガラスブランクが金型に張り付いて離形するのが困難であったり、金型に張り付いた溶融ガラスの成分がプレス成形を繰り返すことにより突起物として成長し、成形されたガラスブランクに凹陥部形状の欠陥として転写される問題があった。一方、金型表面の粗さを大きくし、ガラスブランクとの接触面積を小さくすることで張り付きや突起物の形成を抑制することが可能であるが、プレス成形されたガラスブランクの表面粗さが大きくなり、その後の研磨処理に時間を要するだけでなく、下型を載せた回転テーブルを回転させながら、下型の上部で成形されたガラスブランクを冷却するとき、遠心力によってガラスブランクが下型に対して回転径方向外側に移動して飛び出すおそれがある。
【0010】
そこで、本発明は、回転テーブル上の下型の上で冷却されるガラスブランクが下型に対して張り付いたり、下型の表面にガラス成分の付着による突起物が形成されることによりガラスブランクに凹陥部形状の欠陥が形成されることを防ぐとともに、成形後のガラスブランクの両主表面の判別を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者がガラスブランクの形状について検討したところ、ガラスブランクの一方の面の少なくとも一部に、粗さ曲線要素の平均長さRSmが異なる領域を設けることで、視認性が高まり、両主表面の判別を容易にすることができることがわかった。また、ガラスブランクの両主表面のうち、下型と接触する下側主表面に粗さ曲線要素の平均長さRSmが異なる領域を設けることで、ガラスブランクのプレス成形時の金型に対する離形性を向上させ、ガラス成分の付着による突起物の形成を抑制するとともに下側主表面と下型との摩擦により、下型が配置された回転テーブルを回転させても、遠心力によってガラスブランクが下型に対して回転径方向外側に移動することを防ぐことができることがわかった。
【0012】
本発明の第一の態様は、磁気ディスク用ガラス基板を製造するための円板状のガラスブランクであって、
前記ガラスブランクの両主表面の少なくとも一方は、
外周部における粗さ曲線要素の平均長さRSmが500μm以下の外側領域と、
前記外側領域に囲まれた中央部に、粗さ曲線要素の平均長さRSmが200μm以上の内側領域とを有し、
前記外側領域の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS1、前記内側領域の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS2とするときRS1<RS2であることを特徴とする。
【0013】
ここで、ガラスブランクの主表面の「中央部」とは、ガラスブランクの主表面における中心からの距離が半径の18〜38%となる円よりも内側に位置する前記中心を含む領域をいい、ガラスブランクの「中心」とは、ガラスブランクの外周形状が正円ではない場合には、ガラスブランクの外周に対する最小の外接円の中心をいう。また、ガラスブランクの「半径」とは、ガラスブランクの外周形状が正円ではない場合には、ガラスブランクの外周に対する最小の外接円の半径をいう。
なお、ガラスブランクに円孔が形成される場合には、内側領域は中央部内でかつガラスブランクの中心から半径の20〜25%までの距離となる半径方向内側に形成され、円孔は内側領域の外側でかつ中央部内の位置で切断することが好ましいが、内側領域内に円孔が形成されるように、円孔が形成される領域よりも広い範囲を「内側領域」としてもよい。
粗さ曲線要素の平均長さRSmは、JIS B0601:2001に準拠して、接触式粗さ測定器により測定することができる。
【0014】
RS1/RS2は0.5〜0.9であることが好ましい。
また、RS1は200〜400μmであり、RS2は300〜600μmであることが好ましい。
【0015】
前記内側領域の面積をS1、前記主表面の全面積をS0とするとき、S1/S0は0.01〜0.2であることが好ましい。
【0016】
前記ガラスブランクの板厚の平均が0.9mm未満、標準偏差が0.015mm未満であることが好ましい。
【0017】
前記ガラスブランクの、前記内側領域が形成された部分の最大高さRyは1.0〜7.0μmであることが好ましい。
最大高さRyは、JIS B0601:2001に準拠して、接触式粗さ測定器により測定することができる。
【0018】
前記外側領域の算術平均粗さRaは0.8μm以上であって、前記外側領域の算術平均粗さRaをR1とし、
前記内側領域の算術平均粗さRaは2μm以下であって、前記内側領域の算術平均粗さRaをR2とするとき、
R1>R2である、ことが好ましい。
【0019】
R1/R2は1.1〜6.0である、ことが好ましい。
【0020】
R1は0.95〜3.0μmであり、R2は0.5〜1.5μmである、ことが好ましい。
【0021】
前記ガラスブランクの、前記内側領域が形成された部分のヘイズ値は40%以下であり、前記外側領域が形成された部分のヘイズ値は35%以上であって、かつ前記内側領域のヘイズ値が前記外側領域のヘイズ値よりも小さい、ことが好ましい。
【0022】
本発明の第二の態様は、磁気ディスク用ガラス基板を製造するための円板状のガラスブランクの製造方法であって、
下部金型の上面に溶融ガラスを滴下し、前記溶融ガラスを上部金型と前記下部金型との間に挟み込んで加圧することで溶融ガラスを円板状に押し伸ばしてガラスブランクを成形するプレス成形処理を含み、
前記下部金型の上面は、粗さ曲線要素の平均長さRSmが200μm以上の内側領域形成部と、前記内側領域形成部の外側に粗さ曲線要素の平均長さRSmが500μm以下の外側領域形成部とを有し、
前記外側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS1、前記内側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS2とするときRS1<RS2であり、
前記溶融ガラスを前記内側領域形成部に滴下することを特徴とする。
【0023】
前記内側領域形成部の算術平均粗さRaは0.5〜1.5μmであり、前記外側領域形成部の算術平均粗さRaは、前記内側領域形成部の算術平均粗さよりも大きい、ことが好ましい。
【0024】
本発明の第三の態様は、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法であって、
下部金型の上面に溶融ガラスを滴下し、前記溶融ガラスを上部金型と前記下部金型との間に挟み込んで加圧することで溶融ガラスを円板状に押し伸ばしてガラスブランクを成形するプレス成形処理と、
前記ガラスブランクに円孔を形成する円孔形成処理と、
を含み、
前記下部金型の上面は、粗さ曲線要素の平均長さRSmが200μm以上の内側領域形成部と、前記内側領域形成部の外側に粗さ曲線要素の平均長さRSmが500μm以下の外側領域形成部とを有し、
前記外側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS1、前記内側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS2とするときRS1<RS2であり、
前記プレス成形処理では、前記溶融ガラスを前記内側領域形成部に滴下し、
前記円孔形成処理では、成形されたガラスブランクの前記内側領域形成部により成形された内側領域を含む領域に円孔を形成することを特徴とする。
【0025】
前記内側領域形成部の算術平均粗さRaは0.5〜1.5μmであり、前記外側領域形成部の算術平均粗さRaは、前記内側領域形成部の算術平均粗さよりも大きい、ことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ガラスブランクのプレス成形時の金型に対する離形性を向上するとともにガラスブランクを上記形状とすることで、回転テーブル上の下型の上で冷却されるガラスブランクが下型に対して張り付いたり、下型の表面にガラス成分の付着による突起物が形成されることを防ぐとともに、成形後のガラスブランクの両主表面の判別を容易にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る磁気ディスク用ガラス基板の製造方法について詳細に説明する。なお、本発明は、公称2.5〜3.5インチサイズ(直径65〜95mm)、板厚0.4〜2.0mmの磁気ディスク用ガラス基板の製造に好適である。
また、本明細書でいう算術平均粗さRa、粗さ曲線要素の平均長さRSm、及び最大高さRyは、JIS B0601:2001に準拠して、スタイラス(触針)を用いた触針式粗さ計(接触式粗さ測定機)により測定したものである。
【0029】
(磁気ディスク用ガラス基板)
まず、磁気ディスク用ガラス基板について説明する。磁気ディスク用ガラス基板は、円板形状である。なお、磁気ディスク用ガラス基板は、外周と同心の円形の中心孔がくり抜かれたリング状であってもよい。磁気ディスク用ガラス基板の両面の円環状領域に磁性層(記録領域)が形成されることで、磁気ディスクが形成される。
【0030】
(磁気ディスク用ガラスブランク)
磁気ディスク用ガラスブランク(以降、単にガラスブランクという)は、プレス成形により作製されるガラス板であり、後述する研削処理が行われる前のものである。ガラスブランクの形状は略円形である。ここで、「略円形」には、真円形状および楕円形状を含み、その外周形状は単一の曲率半径の円弧のみからなるものであってもよいし、異なる曲率半径の円弧からなるものであってもよい。
ガラスブランクの材料として、アルミノシリケートガラス、ソーダライムガラス、ボロシリケートガラスなどを用いることができる。特に、ガラス基板とした際に化学強化を施すことができ、また主表面の平面度及び基板の強度において優れた磁気ディスク用ガラス基板を作製することができるという点で、アルミノシリケートガラスを好適に用いることができる。
【0031】
本実施形態におけるガラスブランクは、第1の主表面の中央部を構成する元素中の窒素、酸素、アルミニウムの含有率が、第1の主表面の外周部を構成する元素中の窒素、酸素、アルミニウムの含有率よりも高い。ここで、ガラスブランクの「第1の主表面」とは、下型と上型との間でプレス成形されたガラスブランクの両主表面のうち、下型と接触することにより形成された主表面をいう。また、「中央部」とは、主表面の中心から外縁の輪郭線までの距離(ガラスブランクの半径)の18〜38%となる長さを半径とする円の内側の領域をいい、「外周部」とは、中央部の外側の領域であって、主表面の中心から外縁の輪郭線までの距離(ガラスブランクの半径)の70%以上100%以下の距離となる領域をいう。
なお、ガラスブランクの輪郭線が真円でない場合、ガラスブランクの「中心」は、ガラスブランクの輪郭線に外接する最小の外接円の中心である。
【0032】
(ガラス基板の製造方法)
次に、磁気ディスク用ガラス基板の製造方法を説明する。先ず、一対の主表面を有する板状の磁気ディスク用ガラス基板の素材となる溶融ガラス塊をプレス成形することによりガラスブランクを作製する(プレス成形処理)。次に、作製されたガラスブランクの中心部分に円孔を形成しリング形状(円環状)とする(円孔形成処理)。
次に、ガラスブランクに対して端面研削による形状加工を行う(形状加工処理)。これにより、リング形状(円環状)のガラス基板が生成される。次に、固定砥粒による主表面研削を行い(研削処理)、平坦となったガラス基板に対して端面研磨を行う(端面研磨処理)。次に、ガラス基板の主表面に第1研磨を行う(第1研磨処理)。次に、必要に応じてガラス基板に対して化学強化を行う(化学強化処理)。次に、化学強化されたガラス基板に対して第2研磨を行う(第2研磨処理)。以上の処理を経て、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。以下、各処理について、詳細に説明する。
【0033】
(a)プレス成形処理
溶融ガラス流の先端部を切断器により切断し、切断された溶融ガラス塊を一対の金型のプレス成形面の間に挟みこみ、プレスしてガラスブランクを成形する。本実施形態においては、後述するように、下部金型の上面に溶融ガラス塊を滴下し、この溶融ガラス塊を上から上部金型によって下方に加圧することで、ガラスブランクを成形する。
所定時間プレスを行った後、金型を開いてガラスブランクが取り出される。なお、本実施形態においては、後述するように、下部金型の上面に、内側領域形成部と、内側領域形成部の外側に設けられ、内側領域形成部を囲む外側領域形成部とを有している。このため、ガラスブランクの下部金型により成形される主表面(下側主表面)は、内側領域形成部によって形成される内側領域と、内側領域を囲み、外側領域形成部によって形成される外側領域とを有する。ここで、内側領域はガラスブランクの中央部内に形成されることが好ましく、ガラスブランクの中心を含む半径5〜30mm、好ましくは半径10〜20mmの円形の領域をいう。また、外側領域はガラスブランクの中央部又は内側領域の外方でガラスブランクの外縁の輪郭線までの領域をいう。
【0034】
下部金型の上面の内側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmは200μm以上、好ましくは350μm以上であり、外側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmが500μm以下である。また、外側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS1、内側領域形成部の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS2とするとき、RS1<RS2である。
さらに、内側領域形成部の算術平均粗さRa(JIS B0601)は0.5〜1.5μmであり、外側領域形成部の算術平均粗さRaは、内側領域形成部の算術平均粗さよりも大きい、ことが好ましい。
【0035】
ガラスブランクの内側領域には内側領域形成部の凹凸形状が転写され、外側領域には外側領域形成部の凹凸形状が転写される。このため、内側領域の粗さ曲線要素の平均長さRSmは200μm以上、好ましくは350〜500μmとなり、外側領域の粗さ曲線要素の平均長さRSmは500μm以下、好ましくは200〜350μmとなる。また、外側領域の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS1、内側領域の粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS2とすると、RS1<RS2となる。
また、外側領域の算術平均粗さRaは0.8μm以上であって、外側領域の算術平均粗さRaをR1とし、内側領域の算術平均粗さRaは2μm以下であって、内側領域の算術平均粗さRaをR2とするとき、R1>R2である、ことが好ましい。
【0036】
(b)円孔形成処理
ガラスブランクに対して、コアリング、スクライビング等により円形状の孔(円孔)を形成することで、ガラスブランクは円孔があいたディスク状のガラス基板中間体を得る。
【0037】
コアリングは、一方の端が開口した筒状のコアドリルによってガラスブランクを一方の主表面から切削することで、円孔の円周部を削り取り中心部(コア)のガラスをくり抜き、貫通孔を形成する方法である。なお、円孔の円周部(内側円)を削り取るとともに、ガラスブランクの外側輪郭線となる円形の切断線(外側円)をコアドリルによって削り取って
もよい。その後、ガラスブランクの外側円よりも外側の部分および内側円よりも内側の部分が除去されることで、ディスク状のガラス基板中間体が得られる。
上述したように、ガラスブランクの下側主表面は、算術平均粗さRaが異なる2種類の領域(内側領域および外側領域)を有する。コアドリルによってガラスブランクを下側主表面から切削する場合、下側主表面に形成された内側領域と外側領域との算術平均粗さRaの違いにより、コアドリルによる切削が不均一となるおそれがある。このため、ガラスブランクの上部金型により成形される主表面(上側主表面)からコアドリルによって切削することが好ましい。
【0038】
スクライビングは、超鋼合金製あるいはダイヤモンド粒子からなるカッター(スクライバ)によりガラスブランクの一方の主表面に円形の切断線を設け、その後ガラスブランクを加熱することにより円形の切断線をガラスブランクの厚さ方向に伸展させ、円形の切断線の内部を押圧して分離する方法である。なお、円孔の輪郭線となる円形の切断線と同時に、ガラスブランクの外縁輪郭線となる円形の切断線を同時に形成してもよい。この場合、ガラスブランクの外縁輪郭線となる円形の切断線(外側円)と、円孔の輪郭線となる円形の切断線(内側円)とを同心円となるように形成する。その後、ガラスブランクを部分的に加熱することにより、ガラスブランクの熱膨張の差異によって、ガラスブランクの外側円よりも外側の部分および内側円よりも内側の部分が除去され、ディスク状のガラス基板中間体が得られる。
【0039】
上述したように、ガラスブランクの下側主表面は、粗さ曲線要素の平均長さRSmが異なる2種類の領域(内側領域および外側領域)を有する。この下側主表面に円形の切断線をつけるとき、切断線が内側領域と外側領域とにまたがって形成されると、均一な切断線が形成されないおそれがある。このため、ガラスブランクの下部金型により成形される主表面(下側主表面)に切断線を付ける場合には、ガラスブランクの下部金型により成形される下側主表面のうち相対的に粗さ曲線要素の平均長さRSmが大きい内側領域内に円形の切断線を付けるとこが好ましい。
この場合、下側主表面の切断線を形成する領域のRSmが小さすぎると、スクライビングの際に切断線が断続的となるおそれがある。切断線が断続的になると、切断線をガラスブランクの厚さ方向に伸展させることが困難となる。このため、下側主表面の切断線を形成する領域における粗さ曲線要素の平均長さRSmは200μm以上好ましくは350〜500μmとなっている。
【0040】
また、上述したように、ガラスブランクの下側主表面が、算術平均粗さRaが異なる2種類の領域(平滑領域および外側領域)を有する場合、この下側主表面に円形の切断線をつけるとき、切断線が平滑領域と外側領域とにまたがって形成されると、均一な切断線が形成されないおそれがある。このため、ガラスブランクの上部金型により成形される主表面(上側主表面)に円形の切断線を付けることも好ましい。
この場合、上側主表面の切断線を形成する領域の粗さが大きいと、スクライビングの際に切断線が断続的となるおそれがある。切断線が断続的になると、切断線をガラスブランクの厚さ方向に伸展させることが困難となる。このため、上側主表面の切断線を形成する領域における算術平均粗さ(Ra)は5μm以下となっていることが好ましく、2μm以下となっていることがより好ましい。
【0041】
(c)形状加工処理
形状加工処理では、ガラス基板中間体の外周端部に対する面取り加工を行う。ガラスブランクに円孔を形成した場合は、円孔の内周端部に対する面取り加工も行う。
【0042】
(d)研削処理
研削処理では、遊星歯車機構を備えた両面研削装置を用いて、円孔を形成したガラス基板中間体の主表面に対して研削加工を行う。具体的には、ガラス基板中間体の外周側端面を、両面研削装置の保持部材に設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板中間体の両主表面の研削を行う。両面研削装置は、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板中間体が狭持される。そして、上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させ、ガラス基板中間体と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板中間体の両主表面を研削することができる。
【0043】
(e)端面研磨処理
端面研磨処理では、ガラス基板中間体の外周側端面に対して、ブラシ研磨により鏡面仕上げを行う。ガラスブランクに円孔を形成した場合は、円孔の内周側端面に対しても、鏡面仕上げを行う。このとき、酸化セリウム等の微粒子を遊離砥粒として含む砥粒スラリが用いられる。
【0044】
(f)第1研磨処理
第1研磨は、例えば研磨処理工程において、固定砥粒による研削を行った場合に主表面に残留したキズや歪みの除去、あるいは微小な表面凹凸(マイクロウェービネス、粗さ)の調整を目的とする。具体的には、研削処理により得られたガラス基板中間体の外周側端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板中間体の両側の主表面の研磨が行われる。
【0045】
第1研磨処理では、固定砥粒による研削処理に用いる両面研削装置と同様の構成を備えた両面研磨装置を用いて、研磨スラリを与えながらガラス基板が研磨される。第1研磨処理では、固定砥粒による研削と異なり、固定砥粒の代わりに遊離砥粒を含む研磨スラリが用いられる。
【0046】
両面研磨装置は、両面研削装置と同様に、上下一対の定盤(上定盤および下定盤)を有しており、上定盤および下定盤の間にガラス基板が狭持される。下定盤の上面及び上定盤の底面には、全体として円環形状の平板の研磨パッド(例えば、樹脂ポリッシャ)が取り付けられている。上定盤または下定盤のいずれか一方、または、双方を移動操作させることで、ガラス基板中間体と各定盤とを相対的に移動させることにより、ガラス基板中間体の両主表面が研磨される。
【0047】
なお、第1研磨処理後のガラス基板中間体を化学強化液中に浸漬することで、ガラス基板中間体を化学強化してもよい(化学強化処理)。化学強化液として、例えば硝酸カリウムと硫酸ナトリウムの混合熔融液等を用いることができる。
【0048】
(g)第2研磨(最終研磨)処理
第2研磨処理は、主表面の鏡面研磨を目的とする。第2研磨においても、第1研磨に用いる両面研磨装置と同様の構成を有する両面研磨装置が用いられる。具体的には、ガラス基板中間体の外周側端面を、両面研磨装置の研磨用キャリアに設けられた保持孔内に保持しながらガラス基板中間体の両側の主表面の研磨が行われる。第2研磨処理が第1研磨処理と異なる点は、遊離砥粒の種類及び粒子サイズが異なることと、樹脂ポリッシャの硬度が異なることである。具体的には、粒径5〜100nm程度のコロイダルシリカを遊離砥粒として含む研磨液が両面研磨装置の研磨パッドとガラス基板の主表面との間に供給され、ガラス基板中間体の主表面が研磨される。研磨されたガラス基板を中性洗剤、純水、イソプロピルアルコール等を用いて洗浄することで、磁気ディスク用ガラス基板が得られる。
【0049】
(プレス成形処理用の金型)
ここで、プレス成形処理に用いるプレス成形処理装置について説明する。
図1はガラスブランクのプレス成形処理に用いるプレス成形処理装置の斜視図である。
図1に示すように、プレス成形処理装置は、ターンテーブル11と、複数のプレス機下部12と、複数の下部金型20と、上部金型30と、プレス機上部13と、回転軸14と、流出ノズル15と、を備える。
【0050】
ターンテーブル11は円板状であり、ターンテーブル11の上部には、複数のプレス機下部12が周方向に等間隔に配列された状態で固定されている。複数のプレス機下部12の上部には、それぞれ下部金型20が固定されている。
ターンテーブル11の中心には回転軸14が設けられている。ターンテーブル11は複数のプレス機下部12、複数の下部金型20、下部金型20の上面に滴下された溶融ガラスおよび成形されたガラスブランクとともに、回転軸14を中心に回転する。
プレス機下部12の上部には、下部金型20が設けられている。また、プレス機下部12の内部には、下部金型20の温度を制御する図示しないヒータが埋め込まれている。
【0051】
下部金型20の上面は平坦であり、この上面(プレス面21)の中央部に溶融ガラスが滴下される。下部金型20の溶融ガラスと接触するプレス面を構成する元素中の酸素濃度は、15atomic%以上であることが好ましい。
下部金型20は、無機化合物、例えば無機物(ケイ素、金属等)の窒化物、炭化物、ホウ化物からなり、あるいは、金属窒化物(例えば窒化アルミニウム)からなる。下部金型20は、例えば冷間等方圧プレスにより金属窒化物を成形することで、製造することができる。
【0052】
下部金型20が金属窒化物からなる場合、プレス成形処理に用いる前に、あらかじめ、下部金型20に対し、プレス面21を構成する金属窒化物の少なくとも一部を酸化して金属酸化物にする酸化処理を行っておくことが好ましい。酸化処理は、例えば、金属窒化物を下部金型20の形状に成形した後、酸素を含む雰囲気中で1000〜1200℃で10〜12時間加熱することにより、表面の金属窒化物の酸化処理を行うことができる。
【0053】
また、プレス面21を構成する金属窒化物を酸化して金属酸化物にする酸化処理を行うとともに、プレス面21に形成された金属酸化物の一部を除去する除去処理を行うことで、残った金属酸化物の領域がプレス面21内に分散して存在するようにしてもよい。例えば、酸化処理後の下部金型20のプレス面21に対してサンドブラスト等による除去処理を行うことにより、プレス面21に形成された金属酸化物の一部を除去してもよい。
上記の酸化処理および必要に応じて粗面化処理、除去処理を行った後の下部金型20のプレス面21の算術平均粗さ(Ra)は5μm以下となっていることが好ましく、3μm以下となっていることがより好ましい。
【0054】
複数の下部金型20のいずれか1つの上方には、流出ノズル15が設けられている。流出ノズル15は、流出ノズル15の下方に配置された下部金型20の上面(プレス面21)に、溶融ガラス16を流出させる。溶融ガラス16は図示しないブレードによって切断され、溶融ガラス塊17として下部金型20の上面(プレス面21)に載置される。
【0055】
また、複数の下部金型20のうち、上方に流出ノズル15が配置されたものよりもターンテーブル11の回転方向の下流側に配置された下部金型20の上方には、プレス機上部13が設けられている。プレス機上部13の下部には、上部金型30が設けられている。また、プレス機上部13の内部には、上部金型30の温度を制御する図示しないヒータが埋め込まれている。
溶融ガラス塊17が滴下された下部金型20を支持するプレス機下部12がターンテーブル11によってプレス機上部13の下方に移送される毎に、プレス機上部13は上部金型30が溶融ガラス塊17に接触して溶融ガラス塊17を下方に加圧するまで下降し、上昇することを繰り返す。
【0056】
上部金型30は下部金型20の上面に滴下された溶融ガラス塊17を下方に加圧するものである。上部金型30は下部金型20よりも熱伝導性が高い材料(例えばタングステン合金)からなる。このため、下部金型20の上面に滴下された溶融ガラス塊17は上部金型30と接触するまでは高温の状態が維持され、溶融ガラス塊17の上方から上部金型30が溶融ガラス塊17を押圧することで、上部金型30に接触した溶融ガラス塊17が急速に冷却され、ガラスブランク18に成形される。
成形されたガラスブランク18は、下部金型20の上面に載置された状態で冷却されながら、ターンテーブル11によって搬送される。冷却されたガラスブランク18は、図示しない吸着手段によって下部金型20の上面から取り外され、以後の形状加工等の処理を行う装置へ搬送される。
【0057】
下部金型20は上部金型30よりも高温の溶融ガラスと接触している時間が長くなる。このため、無機物(ケイ素、金属等)の窒化物、炭化物、ホウ化物からなる下部金型20を用いてガラスブランクのプレス成形を行うと、下部金型20に経時的に溶融ガラスの融着が発生しやすくなる。特に溶融ガラスが高温の状態で下部金型20の溶融ガラスと接触するプレス面21には、溶融ガラスが融着しやすい。融着したガラスが突起物としてプレス面21に残存すると、プレス成形を繰り返すことにより突起物を核としてさらに溶融ガラスが融着して突起物が成長し、最終的に大きな突起物が形成される。このような大きな突起物がプレス面21に形成された下部金型20を用いると、プレス成形されるガラスブランクには、突起物の形状が転写された凹陥部が形成される。凹陥部の形状や大きさによっては、ガラスブランクの加工時にひびや割れを発生させるおそれがある。
【0058】
これに対し、酸化処理を行った下部金型20を用いてガラスブランクのプレス成形を行うと、ガラスの下部金型20への融着を抑制することができる。この理由は、下部金型20の酸化処理によりプレス面21に酸化皮膜が形成されるため、溶融ガラスが酸化皮膜と融着しても、ガラスブランクを下部金型20から取り外すときに酸化皮膜が下部金型20から剥離し、酸化皮膜と融着したガラスがプレス面21に残存しないためであると考えられる。一方、プレス成形後の下部金型20は、溶融ガラスにより加熱されることで新たに酸化皮膜が形成されるため、プレス面21における金属酸化物の領域の割合が一定に維持される。
このように、ガラスの下部金型20への融着を抑制することで、下部金型20の寿命が伸び、生産コストを低減することができる。
【0059】
また、カリウムやナトリウム等のアルカリ成分を含む溶融ガラスのプレス成形を行う場合、アルカリ成分が下部金型20のプレス面21に被膜として付着することで、突起物の形成をさらに抑制することができる。
このようなアルカリ成分の被膜は、プレス面21の溶融ガラス塊が最初に接触する領域に形成されやすい。ここで、「最初に接触する領域」とは、溶融ガラス塊がプレス面21に滴下されてから、上部金型30によって下方に加圧されるよりも前の期間に接触する領域である。この「最初に接触する領域」では、被膜によって粗さ曲線要素の平均長さRSmが200μm以上、好ましくは350〜500μmとなり、プレス成形時の転写性、密着性が向上する。プレス面21のうち、アルカリ成分の被膜が形成された領域が内側領域形成部21aとなる。
一方、内側領域形成部21aよりも外側の領域は外側領域形成部21bとなる。外側領域形成部21bでは、アルカリ成分の被膜が形成されにくく、摩擦係数が小さくなり、プレス成形時の延伸性が良好に保たれる。
【0060】
なお、プレス面21のアルカリ成分の被膜が形成された領域では、溶融ガラスに対する離型性が良好となる。このため、プレス面21に離型剤を塗布する必要がなくなる。離型剤を用いない場合、ガラスブランクに対して円孔形成処理をしたときに除去される内側部分(カレット)に離型剤が付着しないため、カレットのリサイクルが容易となる。
【0061】
図2は下部金型20の中心を通る鉛直断面図である。本実施形態においては、下部金型20の上面(プレス面21)は平坦であり、プレス面21の算術平均粗さRaは例えば0.5〜3.0μmである。
プレス面21は、内側領域形成部21aと、外側領域形成部21bとを有している。内側領域形成部21aの粗さ曲線要素の平均長さRSmは200μm以上であり、外側領域形成部21bの粗さ曲線要素の平均長さRSmが500μm以下である。また、外側領域形成部21bの粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS1、内側領域形成部21aの粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS2とするとき、RS1<RS2である。RS1/RS2は0.5〜0.9であることが好ましい。例えば、RS1は200〜400μmであり、RS2は300〜600μmであることが好ましい。
内側領域形成部21aの算術平均粗さRaは0.5〜1.5μmであり、外側領域形成部21bの算術平均粗さRaは、内側領域形成部21aの算術平均粗さよりも大きい、ことが好ましい。この場合、平滑領域形成部21aの算術平均粗さRaは0.5〜1.5μmであることが好ましい。外側領域形成部21bは内側領域形成部21aの外側に設けられ、内側領域形成部21aよりも算術平均粗さRaが大きい。外側領域形成部21bの算術平均粗さRaは、0.95〜3.0μmであることが好ましい。
【0062】
なお、下部金型20は、あらかじめプレス面21の中央部に内側領域形成部21aを有するとともに、内側領域形成部21aの外側に外側領域形成部21bを有するように成形してもよい。また、成形後の下部金型20のプレス面21の全体の粗さ曲線要素の平均長さRSmが上記のRS1の範囲の値となるように下部金型20を成形し、その後、プレス面21となる面の中央部にアルカリ成分の被膜を形成する処理等を施し、粗さ曲線要素の平均長さRSmが上記のRS2の要件を満たすように加工することで、あるいは、これにさらに加えて、算術平均粗さRaが0.5〜1.5μmとなるように加工することで、内側領域形成部21aを形成してもよい。
【0063】
あるいは、あらかじめプレス面21の全体の粗さ曲線要素の平均長さRSmが上記のRS2の範囲の値となるように下部金型20を成形し、あるいは、これにさらに加えて、プレス面21の全体の算術平均粗さRaが0.5〜1.5μmとなるように下部金型20を成形し、その後、プレス面21の中央部を除く部分に酸化被膜を形成する処理等を施し、粗さ曲線要素の平均長さRSmが上記のRS1の要件を満たすように、あるいは、これに加えて、内側領域形成部21aの算術平均粗さRaに比べて算出平均粗さRaが大きくなるように、加工することで、外側領域形成部21bを環状に形成してもよい。例えば、下部金型20を金属窒化物(例えば窒化アルミニウム)により形成し、その後、プレス面21の外側領域形成部21bとなる領域に、酸化処理によって金属酸化物層を形成してもよい。
【0064】
溶融ガラス16を内側領域形成部21aに滴下すると、溶融ガラス16は内側領域形成部21aと接触している部分から冷却され、後述する下側主表面の内側領域18aが内側領域形成部21aと接触している部分に形成される。その後、溶融ガラス16が切断された溶融ガラス塊17が上部金型30によって下方に加圧されると、溶融ガラス塊17は水平方向に広がり、プレス面21の外側領域形成部21bと接触し、冷却されることで、後述する下側主表面の外側領域18bが形成される。
【0065】
図3はガラスブランク18の鉛直断面図である。ガラスブランク18の板厚の平均は0.9mm未満、標準偏差が0.015mm未満であることが好ましい。
ガラスブランク18の下側主表面は、内側領域18aと、外側領域18bとを有する。内側領域18aがガラスブランク18の下側主表面の中央部に形成され、外側領域18bは下側主表面の内側領域18aよりも外側の領域に、内側領域18aを囲むように形成されている。
【0066】
ここで、ガラスブランク18の主表面の「中央部」とは、ガラスブランクの主表面における中心からの距離が半径の18〜38%となる円よりも内側に位置するガラスブランクの中心を含む円形の領域をいい、ガラスブランクの「中心」とは、ガラスブランクの外周形状が正円ではない場合には、ガラスブランクの外周に対する最小の外接円の中心をいう。また、ガラスブランクの「半径」とは、ガラスブランクの外周形状が正円ではない場合には、ガラスブランクの外周に対する最小の外接円の半径をいう。
なお、ガラスブランクに円孔が形成される場合には、内側領域内に円孔が形成されるように、円孔が形成される領域よりも広い範囲を「内側領域」としてもよい。スクライビングにより円孔の輪郭線となる円形の切断線(内側円)を形成するときに、内側円を形成する領域の粗さ曲線要素の平均長さRSm(RS2)を200μm以上とすることで、内側円を均一に形成することができる。特に、ガラスブランクの外側輪郭線となる円形の切断線(外側円)が形成される領域(外側領域18b)の粗さ曲線要素の平均長さRSm(RS1)よりも内側円が形成される領域(内側領域18a)の粗さ曲線要素の平均長さRSm(RS2)を大きくすることで、通常は外側円よりも不均一となりにくい内側円を、外側円と同様に均一に形成することができる。
【0067】
ガラスブランク18の下側主表面に粗さ曲線要素の平均長さRSmが異なる内側領域18aおよび外側領域18bが形成される一方、ガラスブランク18の上側主表面は一様に形成されるため、成形後のガラスブランク18の両主表面の判別を容易にすることができる。すなわち、両主表面のうち、内側領域18aおよび外側領域18bが識別される面が下側主表面であると区別することができる。外側領域18bの粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS1、内側領域18aの粗さ曲線要素の平均長さRSmをRS2とするとき、RS1が500μm以下であり、RS2が200μm以上であり、RS1<RS2であることで、内側領域18aおよび外側領域18bの視認性さらに、ガラスブランクのプレス形成後の金型からの離形性を高めることができる。よりガラスブランクの離形性、視認性を高めるために、RS1/RS2は0.5〜0.9であることが好ましい。例えば、RS1は200〜400μm、好ましくは200〜350μmであり、RS2は300〜600μm、さらに350〜500μmであることが好ましい。
【0068】
また、外側領域18bの算術平均粗さRaは0.8μm以上であって、外側領域18bの算術平均粗さRaをR1とし、内側領域18aの算術平均粗さRaは2μm以下であって、内側領域18aの算術平均粗さRaをR2とするとき、R1>R2である、ことが好ましい。この場合、R1/R2は1.1〜6.0である、ことが好ましい。R1は、例えば0.95〜3.0μmであり、R2は、例えば0.5〜1.5μmである、ことが好ましい。
外側領域18bの算術平均粗さRaは0.8μm以上であって、内側領域18aの算術平均粗さRaは2μm以下であって、R1>R2とすることにより、ガラスブランクの平滑領域18aおよび外側領域18bが識別される面が下側主表面であると区別することができる視認性がより向上する。
また、R1>R2とすることにより、ガラスブランク18が下部金型20の上部に載置された状態では、ともに算術平均粗さRaが小さい内側領域18aと下部金型20の内側領域形成部21aとが密着し、摩擦抵抗が大きくなる。このため、ターンテーブル11が回転しても、下部金型20の上部に載置されたガラスブランク18が遠心力によって下部金型20に対して回転径方向外側に移動することを防ぐことができる。
【0069】
内側領域18aおよび外側領域18bの目視での識別を容易にするために、内側領域18aと外側領域18bとを視覚的に区別できることが好ましい。このため、ガラスブランク18の内側領域18aが形成された部分のヘイズ値が40%以下、好ましくは35%以下であり、外側領域18bが形成された部分のヘイズ値が35%以上、好ましくは45%以上、さらに好ましくは55%以上であり、かつ、内側領域18aが形成された部分のヘイズ値は外側領域18bが形成された部分のヘイズ値よりも小さいことが好ましい。これによりガラスブランク18の中央部に形成される内側領域18aは透明である一方、外側領域18bはすりガラス状に曇った状態として、視覚的に区別することが容易となる。
【0070】
下部金型20のプレス面21に内側領域形成部21aが設けられるとともに、ガラスブランク18の下側主表面に内側領域18aが設けられることで、ガラスブランク18が下部金型20の上部に載置された状態では、ともに粗さ曲線要素の平均長さRSmが200μm以上の内側領域18aと下部金型20の内側領域形成部21aとが密着し、摩擦抵抗が大きくなる。このため、ターンテーブル11が回転しても、下部金型20の上部に載置されたガラスブランク18が遠心力によって下部金型20に対して回転径方向外側に移動することを防ぐことができる。さらに、算術平均粗さRaに関して、上述したようにR1>R2とすることにより、ガラスブランク18が下部金型20の上部に載置された状態では、ともに算術平均粗さRaが小さい内側領域18aと下部金型20の内側領域形成部21aとが密着し、摩擦抵抗が大きくなるので、ターンテーブル11が回転しても、下部金型20の上部に載置されたガラスブランク18が遠心力によって下部金型20に対して回転径方向外側に移動することを防ぐ効果は大きくなる。
【0071】
ガラスブランク18の内側領域18aと下部金型20の内側領域形成部21aとが密着するように、内側領域18aの最大高さRyは1.0〜7.0μmであることが好ましい。また、内側領域形成部21aの最大高さRyは5〜20μmであることが好ましい。最大高さRyは、JIS B 0601:1994に準拠して測定される粗さ曲線からその平均線基準長さだけを抜き取り、この部分の最も高い山頂線の高さと最も低い谷底線の深さの和により得られる値である。
【0072】
ガラスブランク18の内側領域18aと下部金型20の内側領域形成部21aとが密着することでガラスブランク18が下部金型20に対して固定されるため、内側領域18aを大きくすることで、ガラスブランク18を下部金型20に対してより強固に固定することができる一方、内側領域18aが大きすぎるとガラスブランク18を下部金型20から取り外すことが困難となる。また、内側領域18aが小さすぎると内側領域18aと外側領域18bとの識別が困難になり、両主表面の区別ができなくなる。
このため、ガラスブランク18の内側領域18aの面積をS1、主表面の全面積をS0とするとき、S1/S0は0.01〜0.2であることが好ましい。
【0073】
以上説明したように、本実施形態によれば、ガラスブランクの下側主表面の中央部に、粗さ曲線要素の平均長さRSmが外側領域よりも大きい内側領域を設けることで、回転テーブル上の下型の上で冷却されるガラスブランクが下型に対して移動することを防ぐとともに、成形後のガラスブランクの両主表面の判別を容易にすることができる。
【0074】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。例えば、ガラスブランクの下側主表面に内側領域を設ける代わりに、上側の主表面に内側領域を設けることで、成形後のガラスブランク18の両主表面の判別をしてもよい。
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0075】
〔実施例および比較例〕
〔ガラスブランクの評価〕
種々のプレス面を用いてプレス成形によりガラスブランクを3000枚作成し、各プレス面で作製した3000枚目のガラスブランクの下部金型と接触していた側の主表面(下面)の外周部における粗さ曲線要素の平均長さRSm(RS1)及び中央部における粗さ曲線要素の平均長さRSm(RS2)の値と、ガラスブランクの凹陥部形状の欠陥の有無、金型に付着した突起の有無、視認性および離型性との関係について、3名の評価員による官能評価を行った。ガラスブランクの凹陥部形状の欠陥は、下型の表面にガラス成分が付着することにより形成される突起物に起因するものである。なお、RSmは、JIS B 0601:2001に準拠して、接触式粗さ測定機(株式会社ミツトヨ製SV−600)を用いて測定した。
また、3000枚目のガラスブランクに対し、プレス成形後、アニール処理を行った研削処理前のガラスブランクの主表面の全面を多機能ディスク用干渉計(オプティフラットPhase Shift Technology. Inc.製)により計測することで、反り量(平坦度)を測定した。
測定対象のガラスブランクの内側領域18a及び外側領域18bの算術平均粗さRaは、いずれも2μm以下であって、R1>R2であった。
【0076】
評価内容は以下の通りである。
A:3名の評価員がガラスブランクの中央部において凹陥部形状の欠陥なしと識別した。B:2名の評価員がガラスブランクの中央部において凹陥部形状の欠陥なしと識別した。C:1名の評価員がガラスブランクの中央部において凹陥部形状の欠陥なしと識別した。D’:外周部と中央部とで外観上の差が大きく生じた。1名の評価員がガラスブランクの中央部において凹陥部形状の欠陥なしと識別した。
D:少なくとも1名の評価員が下面と上面との識別ができなかった。
X1:ガラス成分が金型に付着し突起物が生じた。
X2:ガラスブランクの離型性が悪い。
X3:反り量が18μmよりも大きかった。
結果を表1に示す。
【0078】
RS1が500μmよりも大きい場合、成型時にプレス成形されたガラスが金型に張り付き、離型性が悪かった(評価X2)。
RS2が200μmよりも小さい場合、ガラス成分が付着し金型に突起物が生じた(評価X1)。
また、RS1が500μm以下かつRS2が200μm以上であっても、RS1がRS2よりも大きい場合、算術平均粗さRaおよび最大高さRyが小さくなる傾向がある一方、反り量が18μmよりも大きかった(評価X3)。このため、研削時の取り代(研削量)を大きく設定する必要が生じた。また、RS1がRS2よりも相対的に大きくなると、研削時に固定砥粒の食いつきが悪くなり、研削時間が長くなった。
また、RS1とRS2が等しい場合、外周部と中央部の識別ができなかった(評価D)。
【0079】
RS1が500μm以下、RS2が200μm以上、かつRS1<RS2の範囲において、RS1が600μm以上の範囲、RS2が100μm以下の範囲、RS1≧RS2の範囲と比較して、ガラスブランクの凹陥部形状の欠陥が少ないことがわかる(評価A、B、C、D’)。
また、RS1が400μm以下、RS2が300μm以上、かつRS1<RS2の範囲において、ガラスブランクの凹陥部形状の欠陥がより少ないことがわかる(評価A、B、C)。
さらに、RS1が200〜400μm、RS2が300〜600μm、かつRS1<RS2の範囲で、ガラスブランクの凹陥部形状の欠陥がさらに少ないことがわかる(評価A、B)。
特に、RS1が200〜350μm、RS2が350〜500μmかつRS1<RS2の範囲でガラスブランクにおいて凹陥部形状の欠陥が特に少ないことがわかる(評価A)。
【0080】
なお、RS1/RS2<0.5となるガラスブランクでは、円孔を形成する領域に凹陥部形状の欠陥が生じたが、評価上は問題がないものとした。