特許第6676529号(P6676529)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676529
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】樹脂組成物およびそれを用いた積層体
(51)【国際特許分類】
   C08G 59/42 20060101AFI20200330BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20200330BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20200330BHJP
   C08G 63/197 20060101ALI20200330BHJP
   B32B 27/36 20060101ALI20200330BHJP
   B32B 27/38 20060101ALI20200330BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20200330BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20200330BHJP
   B32B 15/092 20060101ALN20200330BHJP
   B32B 15/09 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
   C08G59/42
   C08L63/00 A
   C08L67/03
   C08G63/197
   B32B27/36
   B32B27/38
   C09J7/30
   H05K1/03 610L
   !B32B15/092
   !B32B15/09
【請求項の数】8
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-542578(P2016-542578)
(86)(22)【出願日】2015年8月10日
(86)【国際出願番号】JP2015072648
(87)【国際公開番号】WO2016024569
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年5月31日
(31)【優先権主張番号】特願2014-165370(P2014-165370)
(32)【優先日】2014年8月15日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100103115
【弁理士】
【氏名又は名称】北原 康廣
(72)【発明者】
【氏名】今西 浩治
(72)【発明者】
【氏名】鍋島 穣
【審査官】 佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−224890(JP,A)
【文献】 特開2002−356544(JP,A)
【文献】 特開平03−139583(JP,A)
【文献】 特開平05−247322(JP,A)
【文献】 特開平04−325590(JP,A)
【文献】 特開平04−233936(JP,A)
【文献】 特開2011−144209(JP,A)
【文献】 特開2014−189605(JP,A)
【文献】 特開2015−067813(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G59/00− 59/72
C08L 1/00−101/14
B32B 1/00− 43/00
H05K 1/03
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、ポリアリレート樹脂(B)および硬化剤(C)を含有する樹脂組成物であって、
前記ポリアリレート樹脂(B)のガラス転移温度が200℃以上であり、
前記エポキシ樹脂(A)の前記ポリアリレート樹脂(B)に対する含有比率(A)/(B)が30/70〜90/10(質量比)であり、
前記ポリアリレート樹脂(B)が芳香族ジカルボン酸残基および1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン残基を含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が90〜500g/eqである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリアリレート樹脂(B)がさらに下記一般式(v)で表される二価フェノール残基を含んでいる、請求項1または2に記載の樹脂組成物:
【化1】
[一般式(v)中、R5、R6、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる]。
【請求項4】
前記樹脂組成物が接着シート用樹脂組成物である、請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜のいずれかに記載の樹脂組成物を有機溶剤に溶解して得られる樹脂ワニス。
【請求項6】
請求項5に記載の樹脂ワニスを乾燥してなる被膜。
【請求項7】
基材上に、請求項に記載の被膜を形成してなる積層体。
【請求項8】
請求項に記載の積層体を用いた配線板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐熱性が高く、吸湿後のハンダ耐性に優れた接着層を形成可能な樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エレクトロニクス分野の発展が目覚しく、特に電子機器の小型化、軽量化、高密度化が進み、これらの性能に対する要求が強まっている。このような要求に対応するため、電子材料の薄型化、多層化、高精細化の検討が盛んに行われている。プリント配線板は、フレキシブルプリント配線板が使用されるケースが多く、さらには高集積化、多層化されることが多い。
【0003】
このようなプリント配線板の多層化の手法として、導体層(主として銅あるいは銀が用いられる)と有機絶縁層とを交互に積層するビルドアップ方式の多層プリント配線板の製造技術が注目されている。導体層と有機絶縁層を交互に積み上げる一般的な手法は、導体層と有機絶縁基材(主としてポリイミドが用いられる)とからなる積層物どうしを絶縁接着層で接着して積層される場合が多い。この絶縁接着層は回路を形成している導体層および有機絶縁基材の両方と強固に接着することが必須特性であり、さらには、回路パターンにおける導体層の隙間への埋め込み性も必要とされている。
【0004】
このような要求に応えるため、様々な検討が行われており、ポリアリレートおよびエポキシ樹脂を必須成分とするフレキシブル配線板用接着剤(特許文献1,2)、特定の酸価を有するポリエステル・ポリウレタンおよびエポキシ樹脂を主成分とする接着剤組成物(例えば、特許文献3)、ウレタン変性カルボキシル基含有ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂および硬化剤を含む接着剤組成物(例えば、特許文献4)等が開示されている。
【0005】
一方、エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂およびアミン系硬化剤を特定比率で含有する樹脂組成物を加熱硬化してなる、耐熱性、柔軟性に優れる熱硬化性エラストマー(特許文献5)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−263058号公報
【特許文献2】特開平5−271637号公報
【特許文献3】特開平11−116930号公報
【特許文献4】特開2007−51212号公報
【特許文献5】特開2013−189544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者らは、以下のようなことを見出した。
特許文献1〜5のような技術によると、導体層および有機絶縁基材の両方または一方に対して優れた接着性が得られないことがあった。たとえ導体層および有機絶縁基材の両方に対して優れた接着性が得られたとしても、耐熱性が低下した。詳しくは、フレキシブルプリント配線板は、近年その薄さや柔軟性のほか、微細な回路が作製可能なことなどの特徴を活かし、幅広い分野で利用されており、電子機器用途では使用温度が100℃以下であるが、照明や車載用途では150℃以上の使用温度に耐え得る耐熱性が求められている。しかしながら、上記特許文献1〜5の組成物を接着層に用いたフレキシブルプリント配線板は、照明や車載用途での使用に耐えられなかった。
【0008】
また接着層の吸湿により、ハンダ耐性が低下することがあった。詳しくは接着層が高温高湿下で吸湿した後、ハンダの溶融により、加熱された際、蒸発した水分により気泡が発生することで接着層が膨れたり、導体層あるいは有機絶縁基材から剥離したりするという問題があった。
さらには接着層を硬化するために加熱プレスすると、樹脂組成物の流動性が良すぎるためにはみ出しが多く発生する点も問題であった。
【0009】
本発明は、導体層および有機絶縁基材の両方に対する接着性に優れているとともに、耐熱性が高く、吸湿後のハンダ耐性に優れた接着層を形成可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0010】
本発明はまた、導体層および有機絶縁基材の両方に対する接着性に優れているとともに、耐熱性が高く、吸湿後のハンダ耐性に優れ、硬化のための加熱プレス時の耐はみ出し特性が良好な接着層を形成可能な樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、本発明に到達した。
すなわち本発明の要旨は下記の通りである。
(1)一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)、ポリアリレート樹脂(B)および硬化剤(C)を含有する樹脂組成物であって、
前記ポリアリレート樹脂(B)のガラス転移温度が200℃以上であり、
前記エポキシ樹脂(A)の前記ポリアリレート樹脂(B)に対する含有比率(A)/(B)が30/70〜90/10(質量比)である、樹脂組成物。
(2)前記エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量が90〜500g/eqである、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記ポリアリレート樹脂(B)が芳香族ジカルボン酸残基および下記一般式(i)〜(iv)で表される二価フェノール残基からなる群から選択される1種以上の二価フェノール残基を含む、(1)または(2)に記載の樹脂組成物:
【化1】
[一般式(i)中、R、R、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる];
【化2】
[一般式(ii)中、R11、R12、R13およびR14は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれ、R15は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、あるいは炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれる];
【化3】
[一般式(iii)中、R21、R22、R23およびR24は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれ、R25は各々独立に、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれ、kは2〜12の整数であり、mは0以上であって、2k以下の整数である];および
【化4】
[一般式(iv)中、R31、R32、R33およびR34は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれ、R35は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれ、R36は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる]。
(4)前記ポリアリレート樹脂(B)がさらに下記一般式(v)で表される二価フェノール残基を含んでいる、(1)〜(3)のいずれかに記載の樹脂組成物:
【化5】
[一般式(v)中、R5、R6、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる]。
(5)前記樹脂組成物が接着シート用樹脂組成物である、(1)〜(4)のいずれかに記載の樹脂組成物。
(6)(1)〜(5)のいずれかに記載の樹脂組成物を有機溶剤に溶解して得られる樹脂ワニス。
(7)(5)に記載の樹脂ワニスを乾燥してなる被膜。
(8)基材上に、(7)に記載の被膜を形成してなる積層体。
(9)(8)に記載の積層体を用いた配線板。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、耐熱性が高く、吸湿後のハンダ耐性に優れた接着層を形成可能な樹脂組成物が得られる。
このような樹脂組成物を用いた積層体は、特に配線板等で好適に使用ができ、ハンダの溶融により配線板が加熱される場合であっても、接着絶縁層の膨れや剥離の発生を抑制することができる。
本発明の樹脂組成物は、導体層および有機絶縁基材の両方に対する接着性にも優れた接着層を形成できる。
本発明の樹脂組成物はまた、硬化のための加熱プレス時の耐はみ出し特性にも優れた接着層を形成できる。
本発明の樹脂組成物はまた、誘電特性にも優れた接着層を形成できる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明で用いられるエポキシ樹脂(A)が有するエポキシ基の数は、一分子中に2個以上であれば特に制限はない。エポキシ樹脂(A)は、公知のエポキシ樹脂を用いることができ、好ましくは、一分子中のエポキシ基が2個以上、5個以下であるエポキシ樹脂を用いる。一分子中に含まれるエポキシ基数が5個を超えると、得られる樹脂組成物から樹脂ワニスを作製する際、粘度上昇が顕著となることがある。なお、前記エポキシ基数はエポキシ樹脂が分子量分布を有するため、1分子あたりのエポキシ基数の平均を意味する。
【0014】
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、90〜500g/eqであることが好ましく、90〜300g/eqであることがより好ましく、90〜250g/eqであることがさらに好ましい。エポキシ当量が90g/eq未満であると、エポキシ基が密集しすぎるため硬化剤との反応性が低下し、一方架橋密度が上がりすぎるため、樹脂組成物を有機溶剤に溶解した樹脂ワニスの粘度が過度に高くなることがある。エポキシ当量が500g/eqを超えると、硬化反応後のエポキシ樹脂の架橋密度が低くなるため、得られる樹脂組成物のガラス転移温度が高いものとならず、耐熱性を向上することができない。
【0015】
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、イソシアヌレート型エポキシ樹脂、ヒダントイン型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、アクリル酸変性エポキシ樹脂、多官能エポキシ樹脂、臭素化エポキシ樹脂及びリン変性エポキシ樹脂等が挙げられる。中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂およびフェノールノボラック型エポキシ樹脂、特にビスフェノールA型エポキシ樹脂は、好適に使用できる。このようなエポキシ樹脂は市販品として入手が可能である。市販品の具体例としては、製品名:GAN(日本化薬社製)、製品名:jER630(三菱化学社製)、製品名:HP4032(DIC社製)、製品名:セロキサイド2081(ダイセル化学工業社製)、製品名:jER828(三菱化学社製)、製品名:jER807(三菱化学社製)、製品名:エピクロンEXA−1514(DIC社製)、製品名:jER152(三菱化学社製)、製品名:jER604(三菱化学社製)、製品名:MY−0500(ハンツマン社製)、製品名:MY−0600(ハンツマン社製)、製品名:TETRAD−X(三菱瓦斯化学社製)、製品名:SR−HHPA(阪本薬品工業社製)、製品名:EXA−4580−1000(DIC社製)、製品名:アラルダイトAER4152(旭化成イーマテリアルズ株式会社製)などを例示することができるが、これらに限定されるものではない。前記エポキシ樹脂は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。エポキシ樹脂(A)は、一分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、それ以外の他の官能基を有してもよい。
【0016】
上記エポキシ樹脂の中でも、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(市販品の例:jER828等)、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(市販品の例:jER152等)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(市販品の例:jER807等)、グリシジルアミン型エポキシ樹脂(市販品の例:jER604等)が好ましく、得られる被膜の銅箔やポリイミドフィルムとの接着性向上の効果が高い点で、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂が特に好ましい。
【0017】
上記したビスフェノールA型エポキシ樹脂は、ビスフェノール骨格の繰り返し単位の数によって、常温で液体のものと、常温で固体のものが存在する。主鎖のビスフェノール骨格の繰り返し単位の数が1〜3のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で液体であり、主鎖のビスフェノール骨格の繰り返し単位の数が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂は常温で固体である。したがって、基材上に被膜を形成し積層体を得る工程において、加熱によって被膜が被着体に密着し、固化することによって被膜と被着体とが強固に接着するため、接着強度を高めることができる。また、このような比較的低分子量のビスフェノールA型エポキシ樹脂は、架橋密度が高くなるため、機械的強度が高く、耐薬品性がよく、硬化性が高く、吸湿性(自由体積が小さくなるため)が小さくなる特徴もある。
【0018】
本発明においては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、上記したような常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂と、常温で液体のビスフェノールA型エポキシ樹脂とを併用して使用することが好ましい。常温で固体のものと液体のものとを併用することにより、機械的強度を保ちつつ、柔軟性を得ることが出来るため、樹脂組成物が本来有する機械的強度を維持しつつ、柔軟性を得ることができる。その結果、被着体どうしの接合強度を向上させることができる。常温で固体のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、機械的強度および耐熱性の観点から、ガラス転移温度が50〜150℃の範囲にあるものが好ましい。具体的には、常温で液体である、主鎖のビスフェノール骨格の繰り返し単位の数が1〜3のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、jER828(三菱化学社製)が、常温で固体である、主鎖のビスフェノール骨格の繰り返し単位の数が2〜10のビスフェノールA型エポキシ樹脂としては、jER1001(三菱化学社製)などが例示できる。
【0019】
一分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(A)の粘度は、上記理由から、25℃における粘度が5〜30Pa・sであることが好ましく、8〜25Pa・sであることがより好ましく、10〜20Pa・sであることがさらに好ましい。エポキシ樹脂(A)は、25℃における粘度が上記範囲内である代わりに、52℃における粘度が所定の範囲内であってもよい。例えば、52℃における粘度は0.5〜10Pa・sであることが好ましく、0.8〜8Pa・sであることがより好ましく、1〜3Pa・sであることがさらに好ましい。
【0020】
本発明で用いられるポリアリレート樹脂(B)は、芳香族ジカルボン酸および/またはその誘導体と、二価フェノールおよび/またはその誘導体とよりなる芳香族ポリエステル重合体であり、溶液重合、溶融重合、界面重合などの方法により製造される。
【0021】
芳香族ジカルボン酸残基を導入するためのポリアリレート原料としては、特に制限はないが、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、クロルフタル酸、ニトロフタル酸、2,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、メチルテレフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、2,2’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸、4,4’−ジフェニルメタンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルスルフォンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ビス(4−カルボキシフェノキシ)エタン、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等が挙げられる。中でも、テレフタル酸およびイソフタル酸が好ましく、溶剤に対する溶解性の観点から、両者を混合して用いることが特に好ましい。その場合、混合比率(テレフタル酸/イソフタル酸)は100/0〜0/100(モル%)の範囲の任意であるが、好ましくは80/20〜10/90(モル%)、より好ましくは75/25〜25/75(モル%)の範囲とすると、得られるポリアリレート樹脂(B)の溶解性が優れたものとなる。
【0022】
本発明の特性や効果を損なわない範囲で、上記芳香族ジカルボン酸類と共に、脂肪族ジカルボン酸類を用いてもよい。脂肪族ジカルボン酸類としては、特に限定されず、ジカルボキシメチルシクロヘキサン、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、ドデカン二酸等を挙げることができる。
【0023】
二価フェノール残基を導入するためのポリアリレート原料としては、特に制限はないが、得られる樹脂組成物の耐熱性を向上し、有機溶剤に対する溶解性を向上させる観点から、下記一般式(i)〜(iv)で表される二価フェノール残基からなる群から選択される1種以上の二価フェノール残基(以下、ビスフェノールI残基ということがある)を導入することが好ましい。
【0024】
【化6】
【0025】
一般式(i)中、R、R、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる。前記ハロゲン原子として、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。好ましいハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子である。前記脂肪族炭化水素基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などのアルキル基、およびビニル基、アリル基などのアルケニル基が挙げられる。好ましい脂肪族炭化水素基はアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記脂環族炭化水素基として、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、シクロデシル基などのシクロアルキル基が挙げられる。好ましい脂環族炭化水素基は炭素数3〜10、特に3〜6のシクロアルキル基である。前記芳香族炭化水素基として、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基などのアリール基が挙げられる。好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。
【0026】
好ましい一般式(i)の二価フェノール残基においては、RおよびRは、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基、または炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である;RおよびRは、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基、である。
【0027】
より好ましい一般式(i)の二価フェノール残基においては、RおよびRは、各々独立に、好ましくは同時に、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;RおよびRは、同時に、水素原子である。
【0028】
上記一般式(i)の二価フェノール残基を導入するための化合物としては、例えば、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)フルオレン等が挙げられる。
【0029】
【化7】
【0030】
一般式(ii)中、R11、R12、R13およびR14は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる。前記ハロゲン原子は、一般式(i)におけるハロゲン原子と同様であり、好ましいハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子である。前記脂肪族炭化水素基は、一般式(i)における脂肪族炭化水素基と同様であり、好ましい脂肪族炭化水素基はアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記脂環族炭化水素基は、一般式(i)における脂環族炭化水素基と同様であり、好ましい脂環族炭化水素基は炭素数3〜10、特に3〜6のシクロアルキル基である。前記芳香族炭化水素基は、一般式(i)における芳香族炭化水素基と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。
【0031】
15は水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、あるいは炭素数6〜20のアリール基からなる群から選ばれる。前記アルキル基として、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基が挙げられる。好ましいアルキル基は炭素数1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記アルケニル基として、ビニル基、アリル基が挙げられる。好ましいアルケニル基は、炭素数2〜3のアルケニル基である。前記アリール基として、フェニル基、ナフチル基、アントラニル基が挙げられる。好ましいアリール基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。
【0032】
好ましい一般式(ii)の二価フェノール残基においては、R11およびR13は、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R12およびR14は、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R15は、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基、または炭素数6〜20、特に6〜10のアリール基である。
【0033】
より好ましい一般式(ii)の二価フェノール残基においては、R11〜R14は、同時に、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R15は、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基、または炭素数6〜20、特に6〜10のアリール基である。
【0034】
上記一般式(ii)の二価フェノール残基を導入するための化合物としては、例えば、N−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)、N−メチル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン等が挙げられる。
【0035】
【化8】
【0036】
一般式(iii)中、R21、R22、R23およびR24は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる。前記ハロゲン原子は、一般式(i)におけるハロゲン原子と同様であり、好ましいハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子である。前記脂肪族炭化水素基は、一般式(i)における脂肪族炭化水素基と同様であり、好ましい脂肪族炭化水素基はアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記脂環族炭化水素基は、一般式(i)における脂環族炭化水素基と同様であり、好ましい脂環族炭化水素基は炭素数3〜10、特に3〜6のシクロアルキル基である。前記芳香族炭化水素基は、一般式(i)における芳香族炭化水素基と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。
【0037】
25は、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基、炭素数1〜20のハロゲン化アルキル基からなる群より選ばれる。前記脂肪族炭化水素基は、一般式(i)における脂肪族炭化水素基と同様であり、好ましい脂肪族炭化水素基はアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記脂環族炭化水素基は、一般式(i)における脂環族炭化水素基と同様であり、好ましい脂環族炭化水素基は炭素数3〜10、特に3〜6のシクロアルキル基である。前記芳香族炭化水素基は、一般式(i)における芳香族炭化水素基と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。前記ハロゲン化アルキル基は炭素数が1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基において、1〜2個の水素原子がハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)によって置換されたアルキル基である。好ましいハロゲン化アルキル基として、モノフルオロメチル基、ジフルオロメチル基、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基が挙げられる。後述するmが2以上の整数のとき、当該2以上のR25は各々独立に上記群より選ばれればよい。
【0038】
kは2〜12の整数であり、好ましくは4〜11、より好ましくは4〜6の整数である。当該kの値により構成炭素原子の数が変動する炭素環において、各炭素原子が有する水素原子は省略されている。mが1以上のとき、当該1以上のR25は、当該炭素環を構成する炭素原子が有する水素原子と置換されている。
mは0以上であって、2k以下の整数であり、好ましくは0〜4、より好ましくは1〜4の整数である。
【0039】
好ましい一般式(iii)の二価フェノール残基においては、R21およびR23は、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R22およびR24は、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R25は、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;特にmが2以上の整数のとき、当該2以上のR25は各々独立に上記アルキル基であればよく、好ましくは同時に、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;kは4〜11、特に4〜6の整数である;mは0〜4、特に1〜4の整数である。
【0040】
より好ましい一般式(iii)の二価フェノール残基においては、R21〜R24は、同時に、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R25は、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;特にmが2以上の整数のとき、当該2以上のR25は同時に、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;kは4〜6の整数である;mは2〜4の整数である。
【0041】
上記一般式(iii)の二価フェノール残基を導入するための化合物としては、例えば、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロドデカンが挙げられる。
【0042】
【化9】
【0043】
一般式(iv)中、R31、R32、R33およびR34は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる。前記ハロゲン原子は、一般式(i)におけるハロゲン原子と同様であり、好ましいハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子)である。前記脂肪族炭化水素基は、一般式(i)における脂肪族炭化水素基と同様であり、好ましい脂肪族炭化水素基はアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記脂環族炭化水素基は、一般式(i)における脂環族炭化水素基と同様であり、好ましい脂環族炭化水素基は炭素数3〜10、特に3〜6のシクロアルキル基である。前記芳香族炭化水素基は、一般式(i)における芳香族炭化水素基と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。
【0044】
35は水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる。前記ハロゲン原子は、一般式(i)におけるハロゲン原子と同様であり、好ましいハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子である。前記脂肪族炭化水素基は、一般式(i)における脂肪族炭化水素基と同様であり、好ましい脂肪族炭化水素基はアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記脂環族炭化水素基は、一般式(i)における脂環族炭化水素基と同様であり、好ましい脂環族炭化水素基は炭素数3〜10、特に3〜6のシクロアルキル基である。前記芳香族炭化水素基は、一般式(i)における芳香族炭化水素基と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。
【0045】
36は炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群より選ばれる。前記芳香族炭化水素基は、一般式(i)における芳香族炭化水素基と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。R36が水素原子またはアルキル基であると、耐熱性が低下し、特に接着層の吸湿後においてハンダ耐性が低下する。
【0046】
好ましい一般式(iv)の二価フェノール残基においては、R31およびR33は、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基、または炭素数6〜20、特に6〜10のアリール基である;R32およびR34は、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R35は、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R36は、炭素数6〜20、特に6〜10のアリール基である。
【0047】
より好ましい一般式(iv)の二価フェノール残基においては、R31〜R34は、同時に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R35は、水素原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;R36は、炭素数6〜20、特に6〜10のアリール基である。
【0048】
上記一般式(iv)の二価フェノール残基を導入するための化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(BPAP)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−フェニルフェニル)−1−フェニルエタン等が挙げられる。
【0049】
上記ビスフェノールI残基を導入するための化合物の中でも、前記耐熱性、溶解性向上の観点から、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン(BPF)、9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)、N−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン(BPZ)、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)シクロヘキサン(DMBPC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(BPAP)を好ましく用いることができる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。
【0050】
上記した一般式(i)〜(iv)で表される1種以上の二価フェノール残基以外に、さらに、下記一般式(v)で表される二価フェノール残基(以下、ビスフェノールII残基ということがある)を導入することで有機溶剤に対する溶解性が増し、得られる被膜の被着体に対する接着性を高めることができる。
【0051】
【化10】
【0052】
一般式(v)中、R5、R6、RおよびRは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族炭化水素基、炭素数3〜20の脂環族炭化水素基、炭素数6〜20の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる。前記ハロゲン原子は、一般式(i)におけるハロゲン原子と同様であり、好ましいハロゲン原子はフッ素原子、塩素原子、臭素原子である。前記脂肪族炭化水素基は、一般式(i)における脂肪族炭化水素基と同様であり、好ましい脂肪族炭化水素基はアルキル基であり、より好ましくは炭素数1〜10、さらに好ましくは1〜5、特に1〜3のアルキル基である。前記脂環族炭化水素基は、一般式(i)における脂環族炭化水素基と同様であり、好ましい脂環族炭化水素基は炭素数3〜10、特に3〜6のシクロアルキル基である。前記芳香族炭化水素基は、一般式(i)における芳香族炭化水素基と同様であり、好ましい芳香族炭化水素基は炭素数6〜14、特に6〜10のアリール基である。
【0053】
好ましい一般式(v)の二価フェノール残基においては、RおよびRは、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である;RおよびRは、各々独立に、好ましくは同時に、水素原子、ハロゲン原子、または炭素数1〜10、特に1〜3のアルキル基である。
【0054】
上記一般式(v)の二価フェノール残基を導入するための化合物としては、例えば、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(BPC)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等が挙げられる。これらの化合物は単独で使用してもよいし、あるいは2種類以上混合して使用してもよい。
【0055】
上記一般式(v)の二価フェノール残基を導入するための化合物の中でも、耐熱性のさらなる向上の観点から、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)プロパン(BPC)、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン(TMBPA)を好ましく用いることができ、耐熱性と経済性のバランスが優れる上で、2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)が特に好ましい。他のビスフェノール類と混合して用いることもできるが、得られるポリアリレート樹脂(B)の耐熱性と経済性の観点より、上記一般式(i)〜(iv)の二価フェノール残基を導入するための化合物に加え、一般式(v)の二価フェノール残基を導入するための化合物として、BPAを含め2種類以下、特にBPAを単独で使用することが好ましい。
【0056】
ポリアリレート樹脂(B)に、ビスフェノールI残基から選ばれる二価フェノール残基を導入し、所望によりビスフェノールII残基を導入する場合、(ビスフェノールI残基)/(ビスフェノールI残基+ビスフェノールII残基)が10/100〜100/100(モル比)であることが好ましく、30/100〜100/100(モル比)であることがより好ましい。二価フェノール成分の合計に対し、ビスフェノールI残基が10モル%未満であると、ポリアリレート樹脂(B)の耐熱性が劣ることがある。経済性のさらなる向上の観点からは、(ビスフェノールI残基)/(ビスフェノールI残基+ビスフェノールII残基)は10/100〜80/100(モル比)であることが好ましく、20/100〜80/100(モル比)であることがさらに好ましい。
【0057】
ポリアリレート樹脂(B)には、本発明の特性や効果を損なわない範囲で、ビスフェノールI残基やビスフェノールII残基以外のビスフェノール残基を導入してもよい。そのようなビスフェノール類として、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルメタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、4−メチル−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン等を挙げることができる。
【0058】
さらに、ポリアリレート樹脂(B)には、本発明の特性や効果を損なわない範囲で、脂肪族グリコール類やジヒドロキシベンゼンを用いてもよい。脂肪族グリコール類としては、特に限定されず、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ペンタンジオール、ヘキサンジール、ノナンジオール、デカンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物、同プロピレンオキサイド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等を、ジヒドロキシベンゼンとしては、ヒドロキノン、レゾルシノール、カテコールを挙げることができる。
【0059】
ポリアリレート樹脂(B)のインヘレント粘度は、0.30〜1.00dL/gであることが好ましく、0.35〜0.80dL/gであることがより好ましい。インヘレント粘度が0.30dL/g未満であると、得られる樹脂組成物の可撓性が劣ったものとなって、打ち抜きやルーター加工する際に積層体端面より樹脂組成物が粉末状に脱落することがある。インヘレント粘度が1.00dL/gを超えると、エポキシ樹脂や有機溶剤と混合する際の粘度が高まり、分散性や塗工性が悪くなることがあり好ましくない。なお、インヘレント粘度は分子量の指標であり、温度25℃条件下、フェノール/1,1,2,2−テトラクロロエタンの60/40(質量比)の混合液に濃度1g/dLとなるように溶解した樹脂溶液を用い測定されるものである。
【0060】
ポリアリレート樹脂(B)のインヘレント粘度、すなわち分子量を所定の範囲とするには、重合時間を調節することで反応率を制御し分子量を調整する方法、芳香族ジカルボン酸成分あるいは二価フェノール成分のモノマーの配合比率をいずれかの成分をわずかに過剰に配合して重合することで分子量を調整する方法、反応性官能基を分子中に1つだけ有する脂肪族モノアルコール類、フェノール類、あるいは、モノカルボン酸類を末端封鎖剤としてモノマーとともに添加して分子量を調整する方法などが挙げられる。これらの中では末端封鎖剤を添加する方法が分子量の制御をしやすく好適である。
【0061】
前記末端封鎖剤としては、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、2−ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ドデシルアルコール、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等の脂肪族モノアルコール類;フェノール、クレゾール、2,6−キシレノール、2,4−キシレノール、p−tert−ブチルフェノール(PTBP)、p−tert−オクチルフェノール、クミルフェノール等のフェノール類;および安息香酸、メチル安息香酸、ナフトエ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オレイン酸、ステアリン酸等のモノカルボン酸類、あるいはそれらの誘導体が挙げられる。
【0062】
本発明で用いるポリアリレート樹脂(B)のガラス転移温度は200℃以上であり、200℃以上320℃未満であることが好ましく、210℃以上310℃未満であることがより好ましく、220℃以上300℃未満であることがさらに好ましく、230℃以上290℃未満であることが最も好ましい。ガラス転移温度を所定範囲とすることで、得られる樹脂組成物の耐熱性が高いものとなる。ガラス転移温度が200℃未満であると、樹脂組成物の耐熱性が劣ったものとなる。ガラス転移温度が320℃以上であると樹脂組成物のガラス転移温度が高くなりすぎるため、硬化反応が十分に進行しなくなる。
【0063】
ポリアリレート樹脂(B)のカルボキシル価は、10mol/ton以上であることが好ましく、20mol/ton以上であることがより好ましく、30mol/ton以上であることがさらに好ましい。ポリアリレート樹脂(B)のカルボキシル価は、ポリアリレート樹脂(B)中の末端カルボキシル基の含有比率を表しているが、カルボキシル基がエポキシ樹脂(A)の有するエポキシ基と反応することで、硬化生成物中でのエポキシ樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)とを相溶化しやすくなる。ポリアリレート樹脂(B)に末端カルボキシル基を導入する方法は、重合反応を反応が完結する前に停止する方法、およびアルカリ等によりエステル結合を加水分解する方法などが挙げられる。
【0064】
本発明の樹脂組成物において、エポキシ樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)の含有比率は、(A)/(B)が30/70〜90/10(質量比)であり、35/65〜85/15(質量比)であることが好ましく、40/60〜80/20(質量比)であることがより好ましく、40/60〜70/30(質量比)であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量が30質量%未満では樹脂組成物の被着体に対する接着性が不十分なものとなる。エポキシ樹脂(A)の含有量が90質量%を超えると湿熱処理後の耐熱性が十分なものとならない。
【0065】
本発明で用いられる硬化剤(C)は、エポキシ樹脂(A)と反応して硬化が進むものであれば特に制限はなく、例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトンラミンやテトラエチレンペンタミンのような脂肪族ポリアミン化合物、メンセンジアミン、イソホロンジアミン、ビス(4−アミノ−3−メチルシクロヘキシル)メタンやビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン等の脂環族ポリアミン化合物、メタキシレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホンやメタフェニレンジアミン等の芳香族ポリアミン化合物、ジシアンジアミド、アジピン酸ジヒドラジドやポリアミドポリアミン等のポリアミン化合物、あるいは、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ドデシル無水コハク酸、無水クロレンディック酸等の1官能性酸無水物、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物、エチレングリコールビス(アンヒドロトリメート)やメチルシクロヘキサンテトラカルボン酸無水物等の2官能性酸無水物、無水トリメリット酸やポリアゼライン酸無水物等の遊離酸無水カルボン酸を挙げることができる。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【0066】
硬化剤(C)の含有量は、特に限定はされず、一般的にはエポキシ樹脂(A)のエポキシ基の化学量論量と硬化剤の官能基の化学量論量の比率(エポキシ/硬化剤)が0.5〜1.5となるような範囲とすることが好ましい。硬化剤の種類によって反応メカニズムと化学量論量が異なるため一概には言えないが、硬化剤が有する活性水素の当量とエポキシ当量の比率によって、硬化剤の含有量を決定することができる。例えば、硬化剤がアミン系化合物の場合、アミノ基に結合する活性水素の当量とエポキシ当量の比率によって、アミン系化合物の配合量を算出することができる。ここで、エポキシ当量とはエポキシ樹脂の平均分子量を1分子あたりのエポキシ基数で割った値である。硬化剤がアミン化合物の場合の活性水素当量はアミン化合物の平均分子量を1分子あたりのアミノ基に結合する水素の数で割った値である。
【0067】
本発明の樹脂組成物において、硬化剤に代えて、あるいは硬化剤とともに硬化促進剤を用いることもできる。硬化促進剤としては、特に限定はされず、例えば、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾールや2−フェニルイミダゾール等のイミダゾール類、ベンジルジメチルアミン、2−(ジメチルアミノメチル)フェノールや2,4,6−トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン類を用いることができる。硬化促進剤の配合量も適宜に設定することができる。
【0068】
本発明の樹脂組成物において、所望の性能を付与するため、本発明で必要とする性能の範囲内でポリアリレート樹脂(B)以外の他の樹脂を配合してもよい。他の樹脂の一例としては、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリエステル、アクリル樹脂、ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、およびポリエーテルイミド等が挙げられる。また、酸化防止剤、難燃剤、紫外線吸収剤、流動性改質剤、微粒子無機フィラー等の各種添加剤を混合して用いてもよい。
【0069】
本発明の樹脂組成物の製造方法について説明をする。
本発明の樹脂組成物は、少なくともエポキシ樹脂(A)、ポリアリレート樹脂(B)および硬化剤(C)を所定比率となるように、有機溶剤に溶解、混合することで調製することができる。
【0070】
溶解の方法としては、エポキシ樹脂(A)、ポリアリレート樹脂(B)および硬化剤(C)を一括して有機溶剤に投入して溶解しながら混合する方法、エポキシ樹脂(A)、ポリアリレート樹脂(B)および硬化剤(C)を混合した後、有機溶剤に投入して溶解する方法、エポキシ樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)を混合した後、硬化剤(C)を加えながら有機溶剤に投入し溶解する方法等が挙げられる。溶解、混合時の作業性を向上し、得られる樹脂組成物の均一性を増すことが容易な点で、エポキシ樹脂(A)、ポリアリレート樹脂(B)および硬化剤(C)を一括して有機溶剤に投入して溶解しながら混合する方法が特に好ましい。なお、エポキシ樹脂(A)、ポリアリレート樹脂(B)および硬化剤(C)を溶融混合する方法も考えられるが、得られる樹脂組成物の粘性が高くなりすぎて基材上に薄膜状に塗工することが困難になるため、本発明においては必要がない限り採用すべきでない。
【0071】
用いる有機溶剤については、下記の点に留意する必要がある。すなわち、エポキシ樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)は個々に溶解のしやすい有機溶剤の種類が異なることである。もし、どちらか一方が溶解しにくい有機溶剤を用いた場合は、得られる樹脂組成物を均一なものとすることが困難となる。
【0072】
好ましい実施態様においては、本発明で使用するエポキシ樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)は共通の有機溶剤に溶解し、樹脂溶液中でこれらを混合し、樹脂ワニスとすることができる。樹脂ワニスを調製する際、エポキシ樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)の両成分が互いに分離することなく、相溶性の高い樹脂ワニスが得られることが好ましい。このような樹脂ワニスを用いて被膜を形成する場合、樹脂組成物内部でエポキシ樹脂(A)とポリアリレート樹脂(B)が分離せず、均一な樹脂組成物となるため、被膜の品質を均一なものとすることが可能となる。言い換えると、ポリアリレート樹脂(B)は、エポキシ樹脂(A)を溶解する有機溶剤と同じ有機溶剤に溶解しなくてはならないが、本発明で用いるポリアリレート樹脂(B)は特に、溶解可能な溶媒の種類が多く、溶媒の選択肢が広いため、目的に応じ、種々の有機溶剤を選択し、各種被膜の形成が可能となる。
【0073】
用いる有機溶剤としては、ポリアリレート樹脂(B)単独を、固形分濃度20質量%以上で溶解できるものが好ましく、30質量%以上で溶解できるものがより好ましい。
【0074】
前記有機溶剤としては、併用するエポキシ樹脂(A)と必要に応じて用いる他の樹脂の種類によって適当なものを選択する必要があるが、1,4−ジオキサン、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、トルエン、キシレン等を挙げることができ、これらを単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。これらの中でも、1,4−ジオキサン、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、トルエンやそれらの1種以上とメチルエチルケトンと混合したものが好ましい。
【0075】
硬化剤(C)も溶剤に溶解した方が硬化後の樹脂組成物が機械特性、耐熱性が優れたものとなりやすいが、エポキシ樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)とともに硬化剤(C)を可溶な有機溶剤は限られる場合が多い。そのような場合には硬化剤(C)を可能な限り細かく粉砕し、エポキシ樹脂(A)およびポリアリレート樹脂(B)を溶解した溶液中に均一に分散させることが好ましい。
【0076】
前記有機溶剤に溶解し樹脂組成物を含有する樹脂ワニスを得る際、固形分濃度は10〜70質量%とすることが好ましく、15〜60質量%とすることがより好ましく、20〜50質量%とすることがさらに好ましい。固形分濃度が10質量%未満であると被膜を形成する際に必要な厚みとすることが難しくなり、固形分濃度が70質量%を超えると被膜の形成が難しくなるばかりでなく、得られる被膜の厚み精度が低下するため好ましくない。
【0077】
前記樹脂ワニスを用い被膜を形成する方法としては、例えば、マイヤーバーコート、グラビアコート、キスコート、スピンコート等公知の塗布方式を用いて、各種基材に塗布、乾燥することで被膜の形成ができる。具体的には、離型処理を施したポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などからなるフィルム基材上に塗布後、乾燥させることで、樹脂組成物からなる被膜を形成することができる。
【0078】
被膜はフィルム基材から引き剥がし樹脂組成物被膜単体として用いることもできるし、基材上に被膜が形成された積層体として用いることもできる。
【0079】
樹脂組成物からなる被膜の形成時の乾燥温度は、本発明において被膜あるいは積層体として接着等の用途で用いる場合の接着特性に対し大きく影響を及ぼすため、その選択は非常に重要である。
【0080】
本発明において乾燥時の加熱温度は、樹脂ワニスからの有機溶剤の蒸発を促す温度であるとともに、樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)と硬化剤(C)とが反応する温度でもある。この反応温度はエポキシ樹脂(A)と硬化剤(C)との組み合わせで異なり、一概に決めることはできないが、80〜160℃の範囲で行うことが好ましい。したがって、用いる有機溶剤は、前記溶解性の観点以外に、この温度範囲で乾燥可能なものを選択することが好ましい。また、加熱時間は有機溶剤を除去するだけでなく、樹脂組成物を所望の反応率に到達させるように設定すべきであるが、反応速度が加熱温度に依存するため一概には決められない。一例としては加熱温度が80〜160℃の場合、加熱時間は5〜50分間とする。加熱後の樹脂組成物の反応率はエポキシ樹脂が半硬化状態のBステージに到達するように設定することが好ましい。このようにして樹脂組成物からなる被膜を形成することができる。乾燥は、反応温度(乾燥温度)が異なる多段階で行うことが好ましい。この場合、温度が上記範囲内で段階的に上昇するように多段階で乾燥を行い、合計時間が上記範囲内になるように各段階の乾燥時間を設定すればよい。
【0081】
本発明の樹脂組成物を混合するために有機溶剤に溶解する際に、本発明の目的を損なわない範囲で消泡剤、レベリング剤、イオン補修剤等を添加してもよい。
【0082】
本発明の被膜あるいは基材上に被膜が形成された積層体は、各種用途で使用が可能となる。特に電気、電子部品用途では、好適に使用が可能である。具体的な使用例としてボンディングシートを例にして説明をする。ボンディングシートは、基板上に、回路、部品あるいは他の基板等を相互に接着するための、いわゆる接着剤層であり、通常、フィルム基材上に接着剤層が形成されてなっているが、その使い道は用途において様々である。多層プリント配線板を作製する場合を例にとると、まず、ボンディングシートとしてパターン加工された回路基板上にラミネートしたのち、接着剤層からフィルム基材を剥離して、有機絶縁層、導体、または別途作製している回路基板を積層する。その後、最終硬化させて多層プリント配線板が完成する。ここで、最終硬化時には、配線等の酸化を防止、配線と基材の密着性低下を抑制するため、低温で加熱して硬化が促進されることが好ましい。したがって、本発明において、加熱硬化温度は100℃以上250℃以下であることが好ましく、120℃以上200℃以下であることがより好ましく、130℃以上190℃以下であることがさらに好ましい。最終加熱温度が250℃を超えると配線の酸化劣化が進むことがある。加熱硬化時間は十分な硬化が達成される限り特に限定されず、例えば、上記加熱硬化温度の場合、30〜120分間、特に60〜100分間とする。
【0083】
本発明の樹脂組成物から形成した被膜あるいは積層体は、耐熱性、耐薬品性、柔軟性、平滑性に優れており、ビルドアップ方式の多層プリント配線、特に多層フレキシブルプリント配線板の積層用接着シートに適している。本発明の被膜あるいは積層体を用いることにより、フレキシブルプリント配線板はハンダを溶融するために加熱されても、接着絶縁層の膨れや剥離の発生を抑制することができる。
【0084】
配線板を具体的に説明すると、多層フレキシブルプリント配線板の一例の製造においては、まず、ポリイミド樹脂からなるフレキシブル基板材料の両面に貼り付けた銅箔の各々にパターンエッチングして内層回路を形成し、場合によって、例えばポリイミド樹脂からなるカバーレイを両側の内装回路形成面の全体を覆うように圧着して、フレキシブルプリント配線板を得る。さらにその両面に、例えばポリイミド樹脂からなる別の基材のフレキシブルプリント配線板の反対面にのみ銅張りした外層フレキシブル基板が接着剤によって接合され、加圧加工によって圧着して、電子部品を搭載するための多層構造を有する多層フレキシブルプリント配線板が得られる。また、フレックスリジッドプリント配線板は、上記と同様のフレキシブルプリント配線板に、基材に樹脂を含浸させて得たプリプレグを積層したリジッド基板材料を接着剤によって積層した多層配線板である。このような多層フレキシブルプリント配線板およびフレックスリジッドプリント配線板における接着剤として本発明の樹脂組成物から形成された接着シートが使用される。
【実施例】
【0085】
次に実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0086】
1.評価方法
(1)ポリアリレート樹脂のインヘレント粘度
ポリアリレート樹脂を1,1,2,2−テトラクロロエタンに溶解し、濃度1g/dLの試料溶液を作製した。続いて、ウベローデ型粘度計を用い、25℃の温度にて試料溶液の流下時間Tおよび溶媒の落下時間Tを測定し、以下の式を用いてインヘレント粘度ηを求めた。
インヘレント粘度η=Ln(ηrel)/c
ただし、ηrelは相対粘度であり、次式で計算される。またc=1g/dLである。
ηrel=T/T
【0087】
(2)ガラス転移温度
示差走査熱量測定装置(パーキンエルマー社製DSC7)を用いて、昇温速度20℃/分で40℃から340℃まで昇温し、得られた昇温曲線中のガラス転移温度に由来する不連続変化の開始温度をガラス転移温度とした。
【0088】
(3)銅箔との接着性
後述する実施例または比較例で得られた樹脂ワニスを、PETフィルム基材(パナック製PET37SG−1)上に、アプリケータを用い、最終乾燥厚みが15μmになるよう流涎・塗布した。
80℃で30分乾燥後、120℃もしくは150℃で10分間加熱することで、形成された樹脂組成物の被膜を半硬化のBステージ状態にした(以下、積層体[A]という)。なおBステージ状態にするための加熱温度は、硬化剤(c1)を使用する場合は150℃、硬化剤(c2)を使用する場合は120℃である。前記積層体の被膜形成面を、銅張積層板(以下、片面CCLという、住友金属鉱山社製、銅箔/ポリイミドフィルム=8/25μm)の銅箔側に重ね合わせ、真空ラミネーターを用いてラミネートしたのち、積層体よりPETフィルム基材を離形し、銅張積層板の銅箔面に被膜が積層された積層体[B]を得た。さらに積層体[B]の被膜形成面を、別の片面CCLの銅箔側に、上記と同様にラミネートすることで、2枚の片面CCLの銅箔で被膜を挟み込んだ構成の積層体[C]を得た。この積層体[C]を加熱温度190℃、プレス圧力3MPaで90分間熱プレスして被膜を完全硬化し、接着性評価のための試料とした。前記試料を10mm幅の短冊型にカットし、引張速度100mm/minの試験条件で角度90°の引き剥がし強さを測定した。引き剥がし強さは、2.0N/cmを超える場合が「◎」、1.5N/cmを超える場合が「○」、1.0N/cmを超える場合が「△」(実用上問題なし)、1.0N/cm以下の場合が「×」と判定した。
本発明においては、評価結果が「○」以上、特に「◎」、であることが実用上好ましい。
【0089】
(4)ポリイミドフィルムとの接着性
片面CCLに代えて厚さ25μmであるポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製カプトン)を用いた以外は、上記(3)における積層体[C]の製造方法と同じ方法により、2枚のポリイミドフィルムで被膜を挟み込んだ構成の積層体[D]を得た。前記積層体[D]を加熱温度190℃、プレス圧力3MPaで90分間熱プレスし被膜を完全硬化し、接着性評価のための試料とした。前記試料を10mm幅の短冊型にカットし、引張速度100mm/minの試験条件で角度90°の引き剥がし試験を実施し、破壊モードを評価した。破壊モードは優れたものから、ポリイミドフィルムが破壊する「材料破壊」、接着層が破壊する「凝集破壊」(実用上問題なし)、ポリイミドフィルムから接着層が剥離する「界面剥離」の順である。
本発明においては、評価結果が「材料破壊」であることが実用上好ましい。
【0090】
(5)ハンダ浴試験
(3)で作製した積層体[C]を、加熱温度190℃、プレス圧力3MPaで90分間熱プレスした後、50mm×50mmのサイズに切り出し試料とした。前記試料を、乾燥剤入りデシケータ中で24時間保管したもの(以下、絶乾試料という)と、40℃90%RHの恒温恒湿槽内で16時間保管したもの(以下、吸湿試料という)との2種類を準備した。吸湿試料の水分率は0.3%であった。これら絶乾試料、吸湿試料のそれぞれについて260℃のハンダ浴に1分間浮かべ、その前後の外観変化を評価した。ハンダ浴後、外観変化が見られなかった場合が「○」、小さな膨れが見られた場合が「△」(実用上問題なし)、激しい膨れや剥離が見られた場合が「×」と判定した。
本発明においては、「○」であることが実用上好ましい。
絶乾試料による評価結果により、耐熱性を評価できる。
吸湿試料による評価結果により、吸湿後のハンダ耐性を評価できる。
【0091】
(6)誘電特性
基材としてガラス基材を用いたこと以外、「(3)銅箔との接着性」の積層体[C]と同様の方法により、積層体を製造した。この積層体を、加熱温度190℃、プレス圧力3MPaで90分間熱プレスした後、被膜をガラス基材から剥離した。50mm×50mmのサイズに切り出し試料とした。得られた被膜単体を、下記測定用治具にセットし、下記装置により室温で、比誘電率および誘電正接を測定した。
<装置>アジレント・テクノロジー社製(現 キーサイト・テクノロジー社) インピーダンス/マテリアル・アナライザ E4991A
<測定用治具> 同社製 16453A
【0092】
2.原料
(1)エポキシ樹脂
(a1)ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学社製jER828)、エポキシ当量184〜194g/eq、粘度120〜150P(=12〜15Pa・s)(25℃)、一分子中に存在するエポキシ基の数=2個
(a2)フェノールノボラック型エポキシ樹脂(三菱化学社製jER152)、エポキシ当量176〜178g/eq、粘度14〜18P(=1.4〜1.8Pa・s)(52℃)、一分子中に存在するエポキシ基の数=3個以上
【0093】
(2)ポリアリレート樹脂
後述する製造例に記載する方法で下記特性を有するポリアリレート樹脂(b1)〜(b9)を得た。
【0094】
(3)硬化剤
(c1)ジシアンジアミド(日本カーバイド工業社製DD)
(c2)ジアミノジフェニルスルホン(関東化学社製特級試薬)
【0095】
製造例1
攪拌装置を備えた反応容器中に水1.2Lを入れ、水酸化ナトリウム0.79mol、二価フェノールである9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(BCF)0.194mol、分子量調整剤としてp−tert−ブチルフェノール(PTBP)0.0116molを溶解させ、0.0013molの重合触媒(トリブチルベンジルアンモニウムクロライド)を添加し、激しく撹拌した(アルカリ水溶液)。別の容器にテレフタル酸クロライド(TPC)0.100molとイソフタル酸クロライド(IPC)0.100molを秤り取り、0.7Lの塩化メチレンに溶解させた。
この塩化メチレン溶液を、先に調製したアルカリ水溶液を撹拌したところへ混合し、重合を開始させた。重合反応温度は20℃前後になるように調製した。重合は攪拌下で2時間行い、その後、攪拌を停止して反応液を静置して水相と有機相を分離し、水相のみを反応容器から抜き取って、残った有機相に酢酸2gを添加した。そして、水1.5Lを加えて30分間攪拌し、再度静置分離して水相を抜き出した。この水洗操作を、水洗後の水相のpHが7前後になるまで繰り返した。得られた有機相を、ホモミキサーを装着した50℃の温水槽中に徐々に投入しながら塩化メチレンを蒸発させることで、粉末状のポリマーを析出させ、これを取り出して脱水・乾燥を行い、ポリアリレート樹脂(b1)を得た。このポリアリレート樹脂(b1)のインヘレント粘度は0.49dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は285℃であった。その結果を表1に示す。
【0096】
製造例2
二価フェノールをN−フェニル−3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フタルイミジン(PPPBP)とした以外は製造例1と同様にしてポリアリレート樹脂(b2)を得た。このポリアリレート樹脂(b2)のインヘレント粘度は0.49dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は300℃であった。その結果を表1に示す。
【0097】
製造例3
二価フェノールを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)とした以外は製造例1と同様にしてポリアリレート樹脂(b3)を得た。このポリアリレート樹脂(b3)のインヘレント粘度は0.49dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は255℃であった。その結果を表1に示す。
【0098】
製造例4
二価フェノールを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(BPAP)とした以外は製造例1と同様にしてポリアリレート樹脂(b4)を得た。このポリアリレート樹脂(b4)のインヘレント粘度は0.49dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は240℃であった。その結果を表1に示す。
【0099】
製造例5
二価フェノールを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン(BPAP)とし、TPCとIPCの配合量をそれぞれ0.14molおよび0.06molとした以外は製造例1と同様にしてポリアリレート樹脂(b5)を得た。このポリアリレート樹脂(b5)のインヘレント粘度は0.48dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は265℃であった。その結果を表1に示す。
【0100】
製造例6
TPCとIPCの配合量をそれぞれ0.06molおよび0.14molとした以外は製造例5と同様にしてポリアリレート樹脂(b6)を得た。このポリアリレート樹脂(b6)のインヘレント粘度は0.49dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は220℃であった。その結果を表1に示す。
【0101】
製造例7
二価フェノールを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)0.136molおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)0.058molとした以外は製造例1と同様にしてポリアリレート樹脂(b7)を得た。このポリアリレート樹脂(b7)のインヘレント粘度は0.49dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は240℃であった。その結果を表1に示す。
【0102】
製造例8
二価フェノールを1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(BPTMC)0.058molおよび2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)0.136molとした以外は製造例7と同様にしてポリアリレート樹脂(b8)を得た。このポリアリレート樹脂(b8)のインヘレント粘度は0.48dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は215℃であった。その結果を表1に示す。
【0103】
製造例9
二価フェノールを2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(BPA)0.194molとした以外は製造例7と同様にしてポリアリレート樹脂(b9)を得た。このポリアリレート樹脂(b9)のインヘレント粘度は0.48dL/gであり、DSC測定を行ったところ、結晶融解ピークは見られず、ガラス転移温度は190℃であった。その結果を表1に示す。
【0104】
【表1】
【0105】
実施例1
攪拌機、冷却管を備えたセパラブルフラスコを使用し、有機溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド250質量部を用いた。当該有機溶剤に対して、始めにエポキシ樹脂(a1)50質量部を60℃で加熱溶解し、次いでポリアリレート樹脂(b1)50質量部を溶解してから、エポキシ樹脂硬化剤(c1)2.8質量部および硬化促進剤として2−エチル−4−メチルイミダゾール0.35質量部を溶解した。その後、攪拌を停止し脱気することで樹脂組成物からなる樹脂ワニスを調製した。
【0106】
得られた樹脂ワニスを用い、被膜および積層体を形成し各種評価を行った。その結果を表2に示す。
【0107】
実施例2〜11および比較例1〜4
エポキシ樹脂、ポリアリレート樹脂および硬化剤の種類および配合量を表2記載のように変更した以外は、実施例1と同様の方法で、被膜および積層体を形成し各種評価を行った。その結果を表2および表3に示す。
【0108】
実施例12
攪拌機、冷却管を備えたセパラブルフラスコを使用し、有機溶剤としてトルエン200質量部を用いた。当該有機溶剤に対して、始めにエポキシ樹脂(a1)50質量部を60℃で加熱溶解し、次いでポリアリレート樹脂(b4)50質量部を溶解した。この溶液へ、別の容器で有機溶剤としてのメチルエチルケトン50質量部に対して、エポキシ樹脂硬化剤(c2)16.3質量部を溶解してなる溶液を全量投入して均一混合した。その後、攪拌を停止し脱気することで樹脂ワニスを得た。実施例1と同様の方法で、被膜および積層体を形成し各種評価を行った。その結果を表2に示す。
【0109】
比較例5
攪拌機、冷却管を備えたセパラブルフラスコを使用し、有機溶剤としてN,N−ジメチルホルムアミド300質量部を用いた。当該有機溶剤に対して、ポリアリレート樹脂(b4)100質量部を60℃で加熱溶解した。その後、攪拌を停止し脱気することで樹脂ワニスを得た。実施例1と同様の方法で、被膜および積層体を形成し各種評価を行った。その結果を表3に示す。
【0110】
比較例6
ポリアリレート樹脂に代えてポリカーボネート樹脂(三菱エンジニアリングプラスチックス社製ユーピロンS−3000:インヘレント粘度は0.48dL/g、ガラス転移温度145℃)50質量部を用いる以外は、実施例1と同様にして樹脂ワニスの作製を試みた。
しかし、60℃で加熱溶解しようとしたが、ほとんど溶解することなく不溶分が発生したため、試験を中止した。
【0111】
【表2】

【0112】
【表3】
【0113】
以下の実施例/比較例における誘電特性の評価結果は以下の通りであった。
実施例3:比誘電率3.1、誘電正接0.010;
実施例8:比誘電率3.2、誘電正接0.011;
比較例4:比誘電率3.3、誘電正接0.012。
※試験周波数=1GHz
【0114】
実施例1〜12で得られた樹脂組成物は、所定の配合としたため、銅箔またはポリイミドフィルムとの接着性が良好で、耐熱性が向上した。さらに優れた吸湿後のハンダ耐性も有した。
【0115】
比較例1では、ポリアリレート樹脂を含有しなかったため、被膜の耐熱性が不足し、吸湿後のハンダ耐性が低下し、膨れが生じた。
【0116】
比較例2では、ポリアリレート樹脂の含有量が下限値未満であったため、被膜の耐熱性が不足し、吸湿後のハンダ耐性が低下し、膨れが生じた。
【0117】
比較例3では、エポキシ樹脂の含有量が下限値未満であったため、銅箔およびポリイミドフィルム双方に対しての接着性が劣った。
【0118】
比較例4では、ポリアリレート樹脂のガラス転移温度が低いため、吸湿後のハンダ耐性が低下した。
【0119】
比較例5では、エポキシ樹脂を含有しなかったため、銅箔またはポリイミドフィルムとの接着性評価において、いずれも容易に剥離し、銅箔およびポリイミドフィルム双方に対する接着性は全く有さなかった。さらに、ハンダ浴試験においては、絶乾試料、吸湿試料ともに被膜はCCLから剥離しハンダ耐性を全く有さなかった。
【0120】
比較例6では、ポリアリレート樹脂に替えてポリカーボネート樹脂を使用したが、溶剤に溶解しないため、エポキシ樹脂との樹脂組成物を得られなかった。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明の樹脂組成物は、接着性と耐熱性が同時に求められる用途に有用であり、例えば、配線板、特に多層フレキシブルプリント配線板およびフレックスリジッドプリント配線板、における接着層の形成に有用である。