特許第6676535号(P6676535)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイションの特許一覧 ▶ サビック・イノベーティブ・プラスチックス・アイピー・ベスローテン・フェンノートシャップの特許一覧

特許6676535高沸点炭化水素供給原料をより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法
<>
  • 特許6676535-高沸点炭化水素供給原料をより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法 図000002
  • 特許6676535-高沸点炭化水素供給原料をより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法 図000003
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676535
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】高沸点炭化水素供給原料をより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/10 20060101AFI20200330BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   C10G65/10
   C10G47/00
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2016-553871(P2016-553871)
(86)(22)【出願日】2014年12月23日
(65)【公表番号】特表2017-511829(P2017-511829A)
(43)【公表日】2017年4月27日
(86)【国際出願番号】EP2014079207
(87)【国際公開番号】WO2015128038
(87)【国際公開日】20150903
【審査請求日】2017年12月11日
(31)【優先権主張番号】14156630.7
(32)【優先日】2014年2月25日
(33)【優先権主張国】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502132128
【氏名又は名称】サウディ ベーシック インダストリーズ コーポレイション
(73)【特許権者】
【識別番号】508171804
【氏名又は名称】サビック グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(72)【発明者】
【氏名】オプリンス、アーノ ヨハネス マリア
(72)【発明者】
【氏名】ナレイアナスワミー、ラヴィチャンダー
(72)【発明者】
【氏名】ウォード、アンドリュー マーク
【審査官】 森 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2012−503072(JP,A)
【文献】 特表2012−503071(JP,A)
【文献】 特開2010−235670(JP,A)
【文献】 米国特許第03317419(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高沸点炭化水素供給原料を、石油化学製品の処理のための供給原料として適したより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法であって、
重質炭化水素供給原料を、少なくとも2つの水素化分解ユニットを含む水素化分解ユニットのカスケードへ供給するステップと、
水素化分解ユニット内で前記供給原料を分解するステップと、
前記分解した供給原料を、軽沸点炭化水素留分を含む頂部の流れと重質炭化水素留分を含む底部の流れに分離するステップと
前記水素化分解ユニットの前記底部の流れを、前記水素化分解ユニットのカスケード内の後続の水素化分解ユニットのための供給原料として供給するステップであって、ここで、水素化分解ユニットのそれぞれの処理条件が互いに異なり、第1の水素化分解ユニットから後続の水素化分解ユニットまで温度が上昇する、ステップと、
水素化分解ユニットのそれぞれからのより軽沸点の炭化水素留分を、水素化分解ユニットであるBTXおよびLPG製造ユニットのための供給原料として処理するステップであって、該水素化分解ユニットで使われる処理条件は、前記水素化分解ユニットのカスケード内の前記水素化分解ユニットのいずれか1つで使われる処理条件と異なるステップと、を備え、
前記水素化分解ユニットのカスケード内の水素化分解ユニットすべてからのより軽沸点の炭化水素留分が、沸点がナフタレンより低い炭化水素であり、
前記方法が、前記より軽沸点の炭化水素留分から水素を分離するステップと、分離した前記水素を、前記水素化分解ユニットのカスケード内の水素化分解ユニットへ供給するステップとをさらに備え、特に
分離した前記水素を、前記水素化分解ユニットのカスケード内の先の水素化分解ユニットへ供給するステップをさらに備え、特に
分離した前記水素を前記BTXおよびLPG製造ユニットへ供給するステップをさらに備える、方法。
【請求項2】
前記水素化分解ユニットのカスケード内の水素化分解ユニットのそれぞれが、液相水素化分解条件下で運転され、前記BTXおよびLPG製造ユニットとしての前記水素化分解ユニットが、気相水素化分解条件下で運転される請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記水素化分解ユニットからのより軽沸点の炭化水素留分が分離セクションに送られ、該セクションにおいて、C5−材料を含む留分が前記より軽沸点の炭化水素留分から分離され、前記より軽沸点の炭化水素留分の残存部分が前記BTXおよびLPG製造ユニットの供給原料として処理される請求項1乃至のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項4】
脱水素化ユニット内で、好ましくは、前記C5−材料を、C3を含む流れとC4を含む流れとにさらに予め分離し、前記流れを、それぞれ、プロパン脱水素化ユニットとブタン脱水素化ユニットに供給することによって、前記C5−材料を処理するステップをさらに備える請求項に記載の方法。
【請求項5】
前記重質炭化水素供給原料が、底部の流れ、常圧軽油などの原油常圧蒸留ユニット(ADU)、並びにFCCユニットからの軽質循環油または重質分解ナフサなどの精錬機プロセスからの生成物の群から選択される請求項1乃至のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項6】
前記LPG製造ユニットで生成されたLPGを含む留分を、スチームクラッキングユニット、芳香族化ユニット、プロパン脱水素化ユニット、ブタン脱水素化ユニットおよび混合プロパン−ブタン脱水素化ユニットの群から選択される1つ以上の処理ユニットのための供給原料として処理するステップをさらに備える請求項1乃至のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項7】
前記水素化分解ユニットは、好ましくは水素化処理ユニットの前に置かれ、前記水素化処理ユニットの底部の流れは、前記第1の水素化分解ユニットの供給原料として使用され、特に、前記水素化処理ユニットで使われる温度は、前記第1の水素化分解ユニットでの温度より高い請求項1乃至のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の水素化分解ユニット内の温度が、第2の水素化分解ユニット内の温度より低く、特に水素化分解ユニットのカスケードに存在する触媒の粒径が、前記第1の水素化分解ユニットから後続の水素化分解ユニットにかけて減少する請求項1乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
水素化分解ユニットのカスケード内の温度が上昇し、前記第2の水素化分解ユニットで使われる温度が、前記水素化処理ユニットのものより高い請求項乃至のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記水素化分解ユニットの反応器タイプの設計が、固定床タイプ、沸騰床反応器タイプおよびスラリー相タイプの群から選択され、前記水素化処理ユニットの反応器タイプの設計が、好ましくは固定床タイプのものであり、前記第1の水素化分解ユニットの反応器タイプの設計は、好ましくは沸騰床反応器タイプのものであり、前記第2の水素化分解ユニットの反応器タイプの設計は、好ましくはスラリー相タイプのものである請求項1乃至のいずれか1項以上に記載の方法。
【請求項11】
最後の水素化分解ユニットの底部の流れが、前記最後の水素化分解ユニットの入口へ再循環される請求項1乃至10のいずれか1項以上に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高沸点炭化水素供給原料をより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法に関する。より詳細には、本発明は、炭化水素、特に、例えば常圧蒸留ユニットまたは流動接触分解ユニット(FCC)などの精錬機の運転に由来する炭化水素を、沸点がナフタレンより低いより軽沸点の水素化分解炭化水素へ転換する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
米国特許第4,137,147号明細書は、蒸留点が約360℃より低く、1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有するノルマルパラフィン類およびイソパラフィン類を少なくとも含有する装入物からエチレンおよびプロピレンを製造する方法に関する。水素化分解区域内で、触媒の存在下で装入物の水素化分解反応が行われ、(b)水素化分解反応からの流出物は分離区域へ供給され、該分離区域から、(i)頂部からのメタンおよび場合により水素、(ii)1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分、並びに(iii)底部からの1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分が排出され、(c)1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分のみ、水蒸気の存在下でスチームクラッキング区域に供給されて、1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素の少なくとも一部をモノオレフィン系炭化水素へ変換し;分離区域の底部から得られた、1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分は、第2の水素化分解区域へ供給され、そこで触媒の存在下で処理され、第2の水素化分解区域からの流出物は分離区域に供給されて、一方では1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する炭化水素を排出し、その少なくとも一部が第2の水素化分解区域へ再循環され、他方では、水素、メタン、および1分子当たり2および3個の炭素原子を有する飽和炭化水素の混合物から本質的になる留分を排出し;水素の流れとメタン流れが混合物から分離され、2および3個の炭素原子を有する、混合物の炭化水素が、第1の水素化分解区域に続く分離区域から回収された1分子当たり2および3個の炭素原子を有する炭化水素から本質的になる留分と共にスチームクラッキング区域へ供給される。このようにして、スチームクラッキング区域の出口において、メタンおよび水素の流れと、1分子当たり2および3個の炭素原子を有するパラフィン系炭化水素の流れに加えて、1分子当たり2および3個の炭素原子を有するオレフィンと、1分子当たり少なくとも4個の炭素原子を有する生成物が得られる。
【0003】
米国特許第3,317,419号明細書は、ガソリン沸点範囲を超える沸点を有する炭化水素を含む炭化水素仕込み原料を水素化精製する方法に関する。該方法は、(a)水素化精製する触媒性複合材を含有する第1の反応区域内で水素と混合した前記仕込み原料を水素化分解し、水素化精製するステップと;(b)前記第1の反応区域からの通常液体の生成物の流出物を、第1の軽質留分とより重質な留分に分離するステップと;(c)前記第1の軽質留分の少なくとも一部を炭化水素混合物と混合し、水素化精製する触媒性複合材を含有し、かつ前記第1の区域よりあまり厳しくない転換条件下で維持されている第2の反応区域内で、生じた混合物を、前記範囲内の温度で水素と反応させるステップと;(d)前記第2の反応区域からの通常液体の生成物の流出物を、第2の軽質留分と水素化精製した第2の重質留分に分離するステップと;(e)前記第2の軽質留分の少なくとも一部を炭化水素混合物と混合し、水素化精製する触媒複合材料を含有し、かつ最小の水素化分解で前記混合物の水素化精製をもたらすような条件下で維持されている第3の反応区域内で、生じた混合物を水素と反応させるステップと;(f)前記第3の反応区域からの生成物の流出物を通常気体の相と水素化精製した第3の重質留分に分離するステップと、を備える。
【0004】
英国出願公開第1,161,725号明細書は、水素化分解によってガソリン沸点範囲の炭化水素を選択的に製造する方法に関し、該方法は、水素化分解条件の下で重質石油炭化水素供給物と、非晶質基材の水素化分解触媒とゼオライト基材の水素化分解触媒とを接触させ、前記接触を、前記非晶質基材触媒が前記ゼオライト基材触媒から分離されている一連の触媒床で実施するステップと、最後の触媒床からの通常液体の流出物を回収するステップと、ガソリン沸点範囲の留分を前記液体流出物から分離するステップと、ガソリン沸点範囲を超える沸点を有する液体流出物の少なくとも一部を、非晶質基材の水素化分解触媒床と接触するように再循環させるステップとを備える。第1の水素化分解段階での条件は、550F°〜750F°の範囲の温度、1000psig〜3000psigの範囲の合計圧力で維持され、一方で第2の水素化分解段階での条件は類似しており、すなわち、550F°〜750F°の温度、1000psig〜2000psigの合計圧力で維持される。
【0005】
米国特許第3,360,456号明細書は、2段階で炭化水素を水素化分解して、水素の消費が低減されたガソリンを生成する方法であって、第1の水素化分解段階での温度条件が、第2の水素化分解段階での温度条件より高い方法に関する。
【0006】
英国出願公開第1,020,595号明細書は、ナフタレンおよびベンゼンを製造する方法であって、沸点が200〜600F°の範囲内であるアルキル置換芳香族炭化水素を含有し、かつ両方アルキルベンゼンおよびアルキルナフタレンの両方を含む供給原料を、800〜1100F°の温度および150〜1000psigの圧力で、または触媒の非存在下で1000〜1100F°の温度および150〜1000psigの圧力で、第1のハイドロクラッカーに通すステップと、分解した生成物を、第2のハイドロクラッカー内で、触媒の存在下で900〜1200F°の温度および150〜1000psigの圧力で、または触媒の非存在下で1100〜1800F°の温度および50〜2500psigの圧力で水素化分解するステップと、を備える方法に関する。
【0007】
米国特許第3,660,270号明細書は、ガソリンを製造する方法であって、第1の転換区域内で石油留分を水素化分解するステップと、第1の転換区域からの流出物を軽質ナフサ留分と、最初の沸点が180〜280F°であり、終わりの沸点が約500〜600F°である第2の留分と、第3の重質留分とに分離するステップと、第2の転換区域内で、触媒の存在下で第2の留分を水素化分解し、脱水素化するステップと、第2の転換区域から少なくとも1つのナフサ生成物を回収するステップと、を備える方法に関する。
【0008】
米国特許出願公開第2007/112237号明細書は、炭化水素混合物から芳香族炭化水素および液化石油ガス(LPG)を調製する方法であって、(a)炭化水素供給原料混合物および水素を少なくとも1つの反応区域へ導入するステップと;(b)炭化水素供給原料混合物を、触媒の存在下で、(i)水素化分解によりLPGに富む非芳香族炭化水素化合物と、(ii)反応区域内での脱アルキル化/トランスアルキル化によりベンゼン、トルエンおよびキシレン(BTX)に富む芳香族炭化水素化合物とに転換するステップと、(c)ガス−液体分離および蒸留によりステップ(b)の反応生成物からLPGおよび芳香族炭化水素化合物をそれぞれ回収するステップと、を備える方法に関する。
【0009】
国際公開第2008/043066号は、1つ以上の中間留分燃料を製造する方法であって、(a)パラフィン系ナフサの流れを、オレフィンおよび芳香族炭化水素を含有する組成物に脱水素化/芳香族化するステップと、(b)オレフィンおよび芳香族成分を芳香族アルキル化するステップと、(c)中間留分範囲のアルキル芳香族分を分離するステップとを備える方法に関する。
【0010】
米国特許第5,603,824号明細書は、水素化分解、脱ろうおよび脱硫がすべて単一の、直立の2床反応器内で起こる統合した水素化処理方法であって、蒸留物が重質留分と軽質留分に分割され、頂部の反応器の床において、該重質留分が水素化分解され、その一部が脱硫され、その後、頂部の床からの流出物が軽質留分と混合され、流動点を低下させるための脱ろうおよび更なる脱硫が起こる底部の反応器の床に流れる方法に関する。
【0011】
米国特許出願公開第2003/221990号明細書は、多段階ハイドロクラッカーの第2の段階でケロシンを処理することによって、ガスおよびナフサなどの軽質生成物を製造する方法であって、他の供給源からのケロシン、ディーゼルおよびナフサが再循環に含まれ、後の水素化処理段階が、最初の水素化処理段階より低い圧力で維持される方法に関する。
【0012】
従来、原油は、蒸留により、ナフサ、軽油および残油などの多くのカットに処理される。これらのカットは、それぞれ、ガソリン、ディーゼルおよびケロシンなどの輸送燃料の製造用、またはいくつかの石油化学製品および他の処理ユニットへの供給物としてなどの多くの可能性のある用途を有する。
【0013】
ナフサのものおよびいくつかの軽油などの軽質原油カットは、スチームクラッキングなどのプロセスにより、軽質オレフィンおよび単環芳香族化合物を製造するために使用でき、該スチームクラッキングでは、炭化水素供給物の流れが蒸発し、蒸気で希釈され、その後、短い滞留時間(<1秒)の炉(反応器)の管内で非常に高い温度(800℃〜860℃)に曝される。そのようなプロセスにおいて、供給物中の炭化水素分子は、供給物の分子と比較した場合に、(平均で)より短い分子と、炭素に対する水素の比率がより低い分子(オレフィンなど)に変換される。このプロセスは、有用な副生成物としての水素、並びにメタンおよびC9+芳香族分および縮合芳香族種(辺を共有する2つ以上の芳香族環を含有する)などの価値がより低い副産物も多く生成する。
【0014】
典型的には、残油などの、より重質な(またはより高い沸点の)芳香族に富んだ流れが、原油精錬機内でさらに処理されて、原油からのより軽質な(蒸留可能な)生成物の生産量を最大化する。この処理は、水素化分解などのプロセスによって実施できる(ハイドロクラッカー供給物が、水素の同時添加でより短い炭化水素分子に壊れた供給物分子のいくつかの留分を生じる条件下で、適した触媒に曝される)。重質な精錬機の流れの水素化分解は、典型的には、高い圧力および温度で実施され、それ故にその資本コストが高い。
【0015】
原油蒸留およびより軽質な蒸留カットのスチームクラッキングのそのような組み合わせの側面として、原油の分別蒸留と関連した資本および他のコストがある。より重質な原油カット(すなわち、沸点が350℃超のもの)は、置換芳香族種、特に置換縮合芳香族種(辺を共有する2つ以上の芳香族環を含有する)に比較的富み、スチームクラッキング条件の下で、これらの材料は、C9+芳香族分および縮合芳香族分などの重質副生成物を多く生成する。それ故に、原油蒸留とスチームクラッキングとの従来の組み合わせの結果、より重質なカットからの有益な生成物のクラッキング収量が十分に高いと考えられないことから、原油の実質的な留分、例えば50質量%がスチームクラッカーにより処理されないことになる。
【0016】
残油などの重質な精錬機の流れの従来の水素化分解の別の側面は、典型的には、所望の全部の転換を達成するように選択される妥協条件の下で実施されることである。供給物の流れが、分解するのが容易な範囲で種の混合物を含有することから、これによって、比較的容易に水素化分解される種の水素化分解によって形成された蒸留可能な生成物の一部の留分が、水素化分解がより困難である種を水素化分解するのに必要な条件下でさらに転換されることになる。これは、プロセスと関連した水素消費および熱管理の困難性を増加させる。また、これは、より有益な種を犠牲にして、メタンなどの軽質分子の収量も増加させる。
【0017】
米国特許出願公開第2012/0125813号明細書、米国特許出願公開第2012/0125812号明細書および米国特許出願公開第2012/0125811号明細書は、蒸発ステップと、蒸留ステップと、コーキングステップと、水素化処理ステップと、スチームクラッキングステップとを備える重質炭化水素供給物を分解する方法に関する。例えば、米国特許出願公開第2012/0125813号明細書は、重質炭化水素供給物をスチームクラッキングして、エチレン、プロピレン、C4オレフィン、熱分解ガソリン、および他の生成物を製造する方法に関し、炭化水素、すなわち、エタン、プロパン、ナフサ、軽油、または他の炭化水素留分などの炭化水素供給物の混合物のスチームクラッキングは、エチレン、プロピレン、ブテン、ブタジエンなどのオレフィン、並びにベンゼン、トルエン、およびキシレンなどの芳香族分を製造するのに広く使用されている非触媒の石油化学的なプロセスである。
【0018】
米国特許出願公開第2009/0050523号明細書は、水素化分解運転と一体化するように、液体全原油および/または天然ガス由来の凝縮物を熱分解炉内で熱分解することによるオレフィンの形成に関する。
【0019】
米国特許出願公開第2008/0093261号明細書は、原油精錬機と一体化するように、液体全原油および/または天然ガス由来の凝縮物を熱分解炉内で炭化水素熱分解することによるオレフィンの形成に関する。
【発明の概要】
【0020】
本発明の目的は、高沸点炭化水素供給原料をより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法を提供することにある。
【0021】
本発明の別の目的は、更なる化学的処理のための供給原料として使用できる軽沸点炭化水素生成物を製造する方法を提供することにある。
【0022】
本発明の別の目的は、高沸点炭化水素供給原料をBTX芳香族留分およびLPG留分へ転換する方法であって、前記LPG留分は軽質オレフィンの製造のために使用できる方法を提供することにある。
【0023】
本発明の別の目的は、メタンおよびC9+芳香族種などの低価値の生成物の生成を最小限にした、高沸点の炭化水素供給物を高価値の生成物へ転換する方法を提供することにある。
【0024】
本発明は、高沸点炭化水素供給原料を、石油化学製品の処理のための供給原料として適したより軽沸点の炭化水素生成物へ転換する方法であって、
重質炭化水素供給原料を、1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケードへ供給するステップと、
水素化分解ユニット内で前記供給原料を分解するステップと、
前記分解した供給原料を、軽沸点炭化水素留分を含む頂部の流れと重質炭化水素留分を含む底部の流れに分離するステップと、
前記水素化分解ユニットの前記底部の流れを、前記1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケード内の後続の水素化分解ユニットのための供給原料として供給するステップであって、ここで、1つまたは複数の水素化分解ユニットのそれぞれの処理条件が互いに異なり、第1の水素化分解ユニットから後続の1つまたは複数の水素化分解ユニットまでの水素化分解条件は、最も過酷でないものから最も過酷なものまで上昇するステップと、
1つまたは複数の水素化分解ユニットのそれぞれからのより軽沸点の炭化水素留分を、水素化分解ユニットであるBTXおよびLPG製造ユニットのための供給原料として処理するステップと、
を備え、前記水素化分解ユニットで使われる処理条件は、1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケード内の1つまたは複数の水素化分解ユニットのいずれか1つで使われる処理条件とは異なることを特徴とする方法に関する。
【0025】
本方法に従い、前記1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケード内の水素化分解ユニットすべてからのより軽沸点の炭化水素留分が、沸点がナフタレンより低い炭化水素であることが好ましい。
【0026】
本発明に従い、炭化水素供給原料、例えば原油は、分別蒸留塔(ADU)に供給され、218℃(ナフタレンの沸点)より高い温度で沸騰する材料は、供給物水素化分解(FHC)プロセスまたはガソリン水素化分解(GHC)プロセスなどの水素化分解プロセスによるLPGおよびBTX芳香族分の製造に適した材料の収量を最大にするように選択された(ますます厳しい)運転条件/触媒などの範囲で、一連の(またはカスケードの)水素化分解プロセス反応器に供給される。各水素化分解ステップの後、残存する重質材料(沸点>218℃)がより軽質な生成物と分離され、より重質な材料のみ、次に、より厳しい水素化分解の段階へ供給され、一方で、より軽質な材料は分離され、それ故にさらなる水素化分解に曝されない。このより軽質な材料(沸点<218℃)は、LPGおよびBTX芳香族分の製造のためのFHCまたはGHCプロセスに供給される。GHC/FHCユニットからのLPG生成物は、その後、スチームクラッキング、脱水素化プロセスまたはこれらのプロセスの組み合わせを用いて軽質オレフィンへ転換してもよい。本願の実験の部において、本発明をより詳細に説明する。「ガソリン水素化分解ユニット」または「GHC反応器」は後述する。「供給物の水素化分解ユニット」または「FHC反応器」も同様に後述する。
【0027】
本発明者らは、所望の生成物(沸点がメタンより高く、かつナフタレンより低い炭化水素材料)の最終的な収量を最大化し、資本および関連する運転コストを最小限に抑えるように、水素化分解カスケードの各ステップを最適化する(選択された運転条件、触媒タイプおよび反応器設計により)。
【0028】
本明細書において、「1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケード」とは、一連の水素化分解ユニットを意味する。水素化分解ユニットは、分離ユニット、すなわち、分解した供給原料を、軽沸点炭化水素留分を含む頂部の流れと重質炭化水素留分を含む底部の流れとに分離するユニットによって左右に分けられる。また、そのような水素化分解ユニットの重質炭化水素留分を含む底部の流れは、後続の水素化分解ユニットのための供給原料である。そのような構造は、数個の触媒床が垂直に配置され、1つの床からの流出物が別の床へ、すなわち頂部の床から底部の床へつながる構造とは異なり、これは、そのようなカスケードは、完了した流出物の抜き取りの中間ステップ、並びに軽沸点炭化水素留分を含む頂部の流れと、後続の水素化分解ユニットのための供給原料である重質炭化水素留分を含む底部の流れへの該流出物の分離を採用しないからである。ここでの分離ユニットは数個の分離セクションを含んでもよい。
【0029】
本方法の好ましい実施形態によれば、すべての水素化分解ユニットからのより軽沸点の炭化水素生成物が、メタンより高く、かつナフタレンより低い沸点を有する炭化水素である。
【0030】
本方法の好ましい実施形態によれば、1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケードにおける水素化分解ユニットのそれぞれが、液相水素化分解条件下で運転され、ここで、前記BTXおよびLPG製造ユニットのような水素化分解ユニットは、気相水素化分解条件下で運転される。実際に、液相水素化分解条件下で運転する1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケードが直列に配置される一方で、気相水素化分解条件下で運転する水素化分解ユニット、すなわち、BTXおよびLPG製造ユニットが、液相水素化分解条件下で運転する1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケードに並列に配置される。
【0031】
水素化分解ユニットのすべてからのより軽沸点の炭化水素留分を混合し、この混合した流れを、好ましくは水素化分解ユニットである前記BTXおよびLPG製造ユニットのための供給原料として処理することが好ましく、前記BTXおよびLPG製造ユニットで使われる処理条件、すなわち、気相水素化分解条件は、1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケードのいずれか1つで使われる処理条件、すなわち、液相水素化分解条件と異なる。
【0032】
別の実施形態では、水素化分解ユニットのすべてからのより軽沸点の炭化水素生成物を最初に分離セクションへ送ることが好ましく、該分離セクションでは、C5−材料を含む留分が、より軽沸点の炭化水素生成物から分離され、より軽沸点の炭化水素生成物の残存部分が、前記BTXおよびLPG製造ユニットの供給原料として処理される。さらに、好ましくは、前記C5−材料を、C3を含む流れとC4を含む流れとに予め分離し、前記流れを、それぞれ、プロパン脱水素化ユニットとブタン脱水素化ユニットに供給することによって、脱水素化ユニット内で前記C5−材料をさらに処理することが好ましい。
【0033】
一実施形態によれば、この流れのより軽質な部分、すなわち、より軽沸点の炭化水素生成物を、すべての水素化分解ユニットから分離し、より重質な部分のみをGHC/FHCにより処理することが好ましい。これは、GHC/FHCが、BTX共沸非芳香族種(例えばパラフィン類およびオレフィン)を、他の石油化学プラント(例えば脱水素化ユニット)への供給物として分離し、使用できるLPG種と、純粋なBTX芳香族分に変えることを意図したものであるからである。水素化分解ユニットからのより軽沸点の炭化水素生成物中にLPG種が既にある場合、それらをGHC/FHCユニットにより処理する必要はなく、理由もあまりない(例えばより大きいユニットの必要性)。
【0034】
流れがGHC/FHCへ行く正確なカット点は、このユニットが供給物中のLPGを対処でき、GHC/FHCへの供給物中にC5種を含むことが依然として有用である可能性があり、それ故に、これらは、脱水素化ユニットのための供給物として使用できるエタン、プロパンおよびブタンへ転換できることから、いくらか柔軟である。このため、GHC/FHCへの供給物中にスプリッター(蒸留などの従来の技術を用いる)を含むことが好ましい。
【0035】
そのような実施形態では、より軽沸点の炭化水素生成物のための3つの妥当である代替のカット点が存在する。第1の好ましい実施形態は、全く分離せずにGHC/FHCにより全体の流れを処理することであり、このことは、GHC/FHCのサイズなどを大きく増加させることなく、処理ユニットの数(それ故にコスト)を減らすことから、LPGが少量のみ既に存在する場合に妥当である。
【0036】
第2の好ましい実施形態は、より軽沸点の炭化水素生成物をC5−部分とC6+部分に分離し、GHC/FHCによりC6+部分を処理して純粋なBTXを製造し、いずれのC6+非芳香族分もLPG種へ転換することに関係する。並行して、C5−部分を、これが良好な供給物であるいくつかの他のユニット(特定されない)により処理する。
【0037】
第3の好ましい実施形態は、より軽沸点の炭化水素生成物をC4−部分(LPG)とC5+部分に分離し、GHC/FHCにより、C5+部分を処理して純粋なBTXを製造し、いずれのC5+非芳香族分もLPG種へ転換することに関係する。並行して、可能性があれば、エタン・スチームクラッカーおよびプロパン−ブタン−脱水素化ユニットなどのC2、C3およびC4種への更なる分離の後に、C4−部分を(GHC/FHCからのLPG生成物と組み合わせ得る)いくつかの他のユニットにより処理する。
【0038】
本方法は、より軽沸点の炭化水素生成物から水素を分離するステップと、そのように分離した水素を、1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケード内の水素化分解ユニットへ供給するステップとをさらに含み、ここで、そのように分離した水素は、好ましくは、1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケード内の先のハイドロクラッカーユニットへ供給される。
【0039】
別の実施形態では、そのように分離した水素をBTXおよびLPG製造ユニットへ供給することも好ましい。
【0040】
炭化水素供給原料は、底部の流れまたは常圧軽油などの原油常圧蒸留ユニット(ADU)からのカットや、FCCユニットからの軽質循環油(Light Cycle Oil)または重質分解ナフサなどの精錬機プロセスからの生成物であり得る。
【0041】
本方法は、前記LPG製造ユニットにて製造されたLPGを含む留分を、スチームクラッキングユニット、芳香族化ユニット、プロパン脱水素化ユニット、ブタン脱水素化ユニットおよび混合プロパン−ブタン脱水素化ユニットの群から選択される1つ以上の処理ユニットのための供給原料としてさらに処理するステップをさらに含む。
【0042】
特定の実施形態では、アルキル化プロセス、高過酷度接触分解(高過酷度FCCを含む)、軽質ナフサ芳香族化(LNA)、改質および軽度の水素化分解を同様に挙げることができる。前述した石油化学製品プロセスの選択は、とりわけ、軽沸点炭化水素留分の組成に依存する。例えば主にC5を含む流れが得られる場合、ペンタン脱水素化ユニットが好ましい。さらに、そのような主にC5を含む流れは、プロピレンおよびエチレンの製造のための高過酷度接触分解(高過酷度FCCを含む)に同様に送ることができる。例えば主にC6を含む流れが得られる場合、軽質ナフサ芳香族化(LNA)、改質および軽度の水素化分解などのプロセスが好ましい。
【0043】
本水素化分解ユニットのカスケードは、好ましくは少なくとも2つの水素化分解ユニットを備え、好ましくは前記水素化分解ユニットに先行して水素化処理ユニットがあり、前記水素化処理ユニットの底部の流れは、前記第1の水素化分解ユニットのための供給原料として使用され、特に、前記水素化処理ユニットで使われる温度は、前記第1の水素化分解ユニットでの温度より高い。
【0044】
さらに、第1の水素化分解ユニット内の温度は、第2の水素化分解ユニット内の温度より低いことが好ましい。
【0045】
さらに、水素化分解ユニットのカスケードに存在する触媒の粒径が、第1の水素化分解ユニットから後続の1つまたは複数の水素化分解ユニットに向かって減少することも好ましい。
【0046】
好ましい実施形態によれば、水素化分解ユニットのカスケード内の温度が上昇し、前記第2の水素化分解ユニットで使われる温度が、前記水素化処理ユニットのものより高い。
【0047】
1つまたは複数の本水素化分解ユニットの反応器タイプの設計が、固定床タイプ、沸騰床反応器タイプおよびスラリー相タイプの群から選択される。これは、1番目に固定床水素化処理装置、続いて固定床ハイドロクラッカー、続いて沸騰床ハイドロクラッカー、任意に、続いてスラリーハイドロクラッカーなどの一連の非類似のプロセスを含んでもよい。したがって、前記水素化処理ユニットの反応器タイプの設計は、固定床タイプのものであり、前記第1の水素化分解ユニットの反応器タイプの設計は、固定床タイプまたは沸騰床反応器タイプのものであってもよく、前記第2の水素化分解ユニットの反応器タイプの設計は、沸騰床反応器タイプまたはスラリー相タイプのものであってもよい。
【0048】
本方法では、最後の水素化分解ユニットの底部の流れを前記最後の水素化分解ユニットの入口へ再循環させることが好ましい。
【0049】
BTXおよびLPG製造ユニットで使われる処理条件は、1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケードのいずれか1つで使われる処理条件と異なる。
【0050】
本発明は、さらに、BTXおよびLPG製造ユニットのための供給原料としての、ナフタレンより低い沸点を有し、かつ1つまたは複数の水素化分解ユニットのカスケード内で製造された炭化水素の使用に関する。
【0051】
上述した使用は、前記BTXおよびLPG製造ユニットの1つまたは複数の流出物から水素を回収するステップと、そのように回収した前記水素を前記BTXおよびLPG製造ユニットの入口へ再循環させるステップとをさらに含む。
【0052】
したがって、本方法は、好ましくは、C5+を含む流れを第2の水素化分解ユニットへ供給するステップを備える。追加の利点は、第1の水素化分解ユニットから来る第2の水素化分解ユニットへのC5+供給物の予熱を熱い流出物と一体化し得ることである。
【0053】
本明細書において、「ガソリン水素化分解ユニット」または「GHC」は、芳香族炭化水素化合物に比較的富む複合炭化水素供給物(改質装置ガソリン、FCCガソリンおよび熱分解ガソリン(pygas)が挙げられるが、これらに限定されない精錬機ユニット由来軽質留分など)をLPGおよびBTXへ転換するのに適した水素化分解プロセスを実施するためのユニットを指し、ここで、該プロセスは、GHC供給物の流れに含まれる芳香族分の1つの芳香族環を無傷のままとするが、芳香族環から側鎖の多くを除去するように最適化される。したがって、ガソリン水素化分解によって生成した主生成物はBTXであり、プロセスは、薬品グレードのBTXを提供するように最適化できる。好ましくは、ガソリン水素化分解を受ける炭化水素供給物は、精錬機ユニット由来軽質留分を含む。より好ましくは、ガソリン水素化分解を受ける炭化水素供給物は、好ましくは2つ以上の芳香族環を有する炭化水素を1wt.%より多く含まない。好ましくは、ガソリン水素化分解条件としては、300〜580℃、より好ましくは450〜580℃、さらにより好ましくは470〜550℃の温度が挙げられる。芳香族環の水素化が有利となることから、より低い温度は避けなければならない。しかしながら、触媒がスズ、鉛またはビスマスなどの触媒の水素化活性を低下させる更なる元素を含む場合、ガソリン水素化分解のためにより低い温度を選択してもよい(例えば国際公開第02/44306A1号および国際公開第2007/055488号参照)。反応温度が高すぎる場合、LPG類の収量(特にプロパンおよびブタン)が低下し、メタンの収量が上昇する。触媒の寿命に渡って触媒活性が低下し得ることから、触媒の寿命に渡って反応器温度を徐々に上昇させて、水素化分解転換率を維持するのが好都合である。このことは、運転サイクルの開始時の最適な温度が、好ましくは水素化分解温度範囲の下限であることを意味する。触媒が失活することから最適な反応器温度が上昇し、それ故にサイクルの終わりでは(触媒が置換されるか、または再生される直前)、温度が、好ましくは水素化分解温度範囲の上限で選択される。
【0054】
好ましくは、炭化水素供給物の流れのガソリン水素化分解は、0.3〜5MPaゲージの圧力で、より好ましくは0.6〜3MPaゲージの圧力で、特に好ましくは1〜2MPaゲージの圧力で、最も好ましくは1.2〜1.6MPaゲージの圧力で行う。反応器の圧力を上昇させることによって、C5+非芳香族分の転換を増加できるが、これは、メタンの収量と、LPG種へ分解できるシクロヘキサン種への芳香族環の水素化も増加させる。これによって、圧力が増加することから芳香族分の収量が減少する。一部のシクロヘキサンおよびその異性体であるメチルシクロペンタンが十分に水素化分解されないことから、1.2〜1.6MPaの圧力で、得られたベンゼンの純度における最適条件がある。
【0055】
好ましくは、炭化水素供給物の流れのガソリン水素化分解は、0.1〜20h−1の単位時間当たりの質量空間速度(WHSV)で、より好ましくは0.2〜10h−1の単位時間当たりの質量空間速度で、最も好ましくは0.4〜5h−1の単位時間当たりの質量空間速度で行われる。空間速度が高すぎる場合、すべてのBTX共沸パラフィン成分が水素化分解されるわけではなく、それ故に、反応器の生成物の単蒸留によってBTXの微粒子化を達成できない。空間速度が低すぎると、プロパンおよびブタンを犠牲にしてメタンの収量が増える。最適な単位時間当たりの質量空間速度を選択することによって、驚くべきことに、ベンゼン・コボイラーの十分に完了した反応を達成して、液体の再循環を必要とせずに、BTXを投機的に生成することを見出した。
【0056】
したがって、好ましいガソリン水素化分解条件は、450〜580℃の温度、0.3〜5MPaゲージの圧力および0.1〜20h−1の単位時間当たりの質量空間速度を含む。より好ましいガソリン水素化分解条件は、470〜550℃の温度、0.6〜3MPaゲージの圧力および0.2〜10h−1の単位時間当たりの質量空間速度を含む。特に好ましいガソリン水素化分解条件は、470〜550℃の温度、1〜2MPaゲージの圧力および0.4〜5h−1の単位時間当たりの質量空間速度を含む。
【0057】
本明細書において、「供給物の水素化分解ユニット」または「FHC」は、ナフサを含むがこれらに限定されない直留カットなどの、ナフテン系炭化水素化合物およびパラフィン系炭化水素化合物に比較的富む複雑な炭化水素供給物を、LPGおよびアルカンへ転換するのに適した水素化分解プロセスを実施するためのユニットを指す。好ましくは、供給物の水素化分解を受ける炭化水素供給物はナフサを含む。したがって、供給物の水素化分解によって生成される主生成物は、オレフィンへ転換される(すなわち、オレフィンへのアルカンの転換のための供給物として使用される)LPGである。FHCプロセスは、FHC供給物の流れに含まれる芳香族分の1つの芳香族環を無傷のままとするが、芳香族環から多くの側鎖を除去するように最適化されてもよい。そのような場合、FHCのために採用される処理条件は、本明細書で上述したGHCプロセスに使用される処理条件に匹敵する。代替として、FHCプロセスは、FHC供給物の流れに含まれる芳香族炭化水素の芳香族環を開くように最適化できる。これは、任意により低いプロセス温度の選択と組み合わせて、任意に空間速度の減少と組み合わせて触媒の水素化活性を増加させることにより、本明細書に記載のGHCプロセスを改変することによって達成できる。そのような場合、好ましい供給物の水素化分解条件は、それ故に、300〜550℃の温度、300〜5000kPaゲージの圧力および0.1〜20h−1の単位時間当たりの質量空間速度を含む。より好ましい供給物の水素化分解条件は、300〜450℃の温度、300〜5000kPaゲージの圧力および0.1〜10h−1の単位時間当たりの質量空間速度を含む。さらにより好ましくは、芳香族炭化水素の開環に最適化されたFHC条件は、300〜400℃の温度、600〜3000kPaゲージの圧力および0.2〜5h−1の単位時間当たりの質量空間速度を含む。
【0058】
本明細書において、「C#炭化水素」または「C#」(「#」は正の整数)は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を表すものとして用いられる。また、「C#+炭化水素」または「C#+」は、#以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を表すものとして用いられる。したがって、「C5+炭化水素」または「C5+」は、5以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を表すものとして用いられる。「C5+アルカン」は、5以上の炭素原子を有するアルカンに関する。したがって、「C#マイナス炭化水素」または「C#マイナス」は、水素を含む、#以下の炭素原子を有する炭化水素の混合物を表すものとして用いられる。例えば、「C2−」または「C2マイナス」は、エタン、エチレン、アセチレン、メタンおよび水素の混合物に関する。最後に、「C4mix」は、ブタン、ブテンおよびブタジエン、すなわち、n−ブタン、i−ブタン、1−ブテン、cis−およびtrans−2−ブテン、i−ブテンおよびブタジエンの混合物を表すものとして用いられる。
【0059】
本明細書において、「オレフィン」は、確立された意味を持つものとして使用される。したがって、オレフィンは、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含有する不飽和炭化水素化合物に関する。好ましくは、「オレフィン」は、エチレン、プロピレン、ブタジエン、ブチレン−1、イソブチレン、イソプレンおよびシクロペンタジエンの2つ以上を含む混合物に関する。
【0060】
本明細書において「LPG」とは、「液化石油ガス(liquefied petroleum gas)」の確立された頭字語を指す。LPGは、一般に、C3−C4炭化水素のブレンド、すなわち、C3およびC4炭化水素の混合物からなる。
【0061】
本発明の方法で製造される石油化学的な生成物の1つは、BTXである。本明細書において、「BTX」は、ベンゼン、トルエンおよびキシレンの混合物に関する。好ましくは、本発明の方法で製造される生成物は、さらに、エチルベンゼンなどの有用な芳香族炭化水素を含む。したがって、本発明は、好ましくは、ベンゼン、トルエン、キシレンおよびエチルベンゼンの混合物(「BTXE」)を製造する方法を提供する。製造される生成物は、異なる芳香族炭化水素の物理的混合物であってもよく、または例えば蒸留によって直接さらに分離されて、異なる精製した生成物の流れを提供してもよい。そのような精製した生成物の流れは、ベンゼン生成物の流れ、トルエン生成物の流れ、キシレン生成物の流れおよび/またはエチルベンゼン生成物の流れを含み得る。
【0062】
以下、本発明を、添付の図面と共にさらに詳細に説明する。添付の図面では、同じまたは類似の要素は、同じ符号を付して示される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
図1】本発明の方法のある実施形態の略図である。
図2】本発明の方法の別の実施形態の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0064】
図1に概略的に図示したプロセスおよび装置1を参照すると、原油供給物1、沸点がナフタレンより低い炭化水素を含む流れ29に原油を分離するための常圧蒸留ユニット2が示されている。蒸留ユニット2を出る底部の流れ3は、水素化処理ユニット4、例えば水素処理ユニットに供給され、そのように処理した炭化水素5は、気体の流れ7および沸点がナフタレンのもの以上である炭化水素を含む底部の流れ13を生成する分離ユニット6に送られる。流れ7は、水素を含む流れ9と、沸点がナフタレンより低い炭化水素を含む底部の流れ12に、分離ユニット8においてさらに分離される。流れ13は水素化分解ユニット15に供給され、その流出物16は、気体の流れ18と、沸点がナフタレンのもの以上である炭化水素を含む底部の流れ20を生成する分離ユニット17へ送られる。流れ18は、水素を含む流れ14と、沸点がナフタレンより低い炭化水素を含む流れ21に、分離ユニット19においてさらに分離される。水素の補給は参照番号10で示される。分離ユニット17からの流出物20は、更なる水素化分解ユニット22へ送られ、その流出物23は、頂部の流れ44と底部の流れ27を生成する分離ユニット24へ送られる。頂部の流れ44は、水素を含む流れ26と、沸点がナフタレンより低い炭化水素を含む底部の流れ28に、分離ユニット38においてさらに分離される。分離ユニット38を出る水素を含有する流れは、コンプレッサー11へ送られ、水素化分解ユニット22の入口へ戻される。同様の水素の再循環を流れ9、14に適用する。蒸留ユニット2から来る頂部の流れ、並びに流れ12、21および28は、流れ29として混合され、流れ29はハイドロクラッカー30へ直接送られる。全体の流れ29をユニット30で分離を一切せずに処理することは、流れ29中にLPGが少量のみ既に存在する場合、ハイドロクラッカーユニット30のサイズなどを大きく増やすことなく処理ユニットの数(それ故にコスト)を減らすことから、妥当である。
【0065】
好ましい実施形態によれば、分離ユニット60において流れ29を、C5−部分(流れ61)とC6+部分(流れ62)に分離し、C6+部分をユニット30で処理して、純粋なBTXを製造し、いずれのC6+非芳香族分もLPG種へ転換することも可能である。並行して、C5−部分を、これが良好な供給物であるいくつかの他のユニット(特定されない)により処理する。
【0066】
別の好ましい実施形態によれば、流れ29をC4−部分(LPG)(流れ61)とC5+部分(流れ62)に分離し、ユニット30でC5+部分(流れ62)を処理して、純粋なBTXを製造し、いずれのC5+非芳香族分もLPG種へ転換することも可能である。並行して、C4−部分(流れ61、ユニット30からのLPG生成物、すなわち流れ36と組み合わせ得る)を、いくつかの他のユニット、例えばプロパン/ブタン脱水素化ユニットにより処理する。
【0067】
水素化分解ユニット30からの流出物31は、頂部の流れ33と、主にBTXを含む底部の流れ35を生成する分離ユニット32へ送られる。頂部の流れ33は、LPGを含む流れ36と、水素を含む頂部の流れ37へ、分離ユニット34においてさらに分離される。流れ37は、水素化分解ユニット30の入口へ再循環される。
【0068】
図2によれば、プロセスおよび装置は参照符号2で特定され、原油1は蒸留ユニット2へ送られ、頂部の流れ29と底部の流れ3に分離される。底部の流れ3は、流出物5を生成する水素化分解ユニット4、特に水素処理ユニットへ送られる。流出物5は、頂部の流れ7と、沸点がナフタレンのもの以上である炭化水素を含む底部の流れ13を生成する分離ユニット6へ送られる。頂部の流れ7は、主に水素を含む頂部の流れ40と、沸点がナフタレンより低い炭化水素を含む底部の流れ12に、分離ユニット8においてさらに分離される。流れ13は、流出物の流れ16を生成する第1の水素化分解ユニット15へ送られる。流出物の流れ16は、頂部の流れ18と底部の流れ20を生成する分離ユニット17へ送られる。流れ18は、水素を含む流れ43を生成する分離ユニット19においてさらに分離される。流れ43は、図2では、水素化分解ユニット4の入口へ再循環される。分離ユニット19の底部の流れ21はユニット2からの頂部の流れ29と混合され、水素化分解ユニット30へ送られる。
【0069】
分離を一切せずに全体の流れ29をユニット30で処理することは、流れ29中にLPGが少量のみ既に存在する場合、処理ユニットの数(それ故にコスト)を、ハイドロクラッカーユニット30のサイズなどを大きく増やすことなく減らすことから、妥当である。
【0070】
好ましい実施形態によれば、ユニット30に入る前に、流れ29をC5−部分(流れ61)と、C6+部分(流れ62)に分離し、C6+部分(流れ62)をユニット30で処理して、純粋なBTXを製造し、いずれのC6+非芳香族分もLPG種へ転換することも可能である。並行して、C5−部分(流れ61)を、これが良好な供給物であるいくつかの他のユニット(特定されない)により処理する。
【0071】
別の好ましい実施形態によれば、ユニット30に入る前に、流れ29をC4−部分(流れ61)(LPG)とC5+部分(流れ62)に分離し、C5+部分(流れ62)をユニット30で処理して、純粋なBTXを製造し、いずれのC5+非芳香族分もLPG種に転換することも可能である。並行して、C4−部分(流れ62、ユニット30からのLPG生成物、すなわち流れ36と組み合わせ得る)を、いくつかの他のユニット、例えば(プロパン/ブタン脱水素化ユニット)により処理する。
【0072】
分離ユニット17からの底部の流れ20は、流出物23を生成する第2の水素化分解ユニット22へ送られる。流出物23は、頂部の流れ45と、重質ピッチとしての資格がある底部の流れ27に、分離塔24においてさらに分離される。流れ27の一部は、流れ25として第2の水素化分解ユニット22の入口に再循環される。分離塔38において、頂部の流れ45は、主に水素を含む頂部の流れ42と、沸点がナフタレンの沸点より低い炭化水素を主に含む底部の流れ28にさらに分離される。水素を含有する流れ42は、水素化分解ユニット15の入口へ再循環される。分離塔8を出る頂部の流れ40は、水素の補給10と混合され、水素化分解ユニット30へ流入する流れとして流れ41を形成する。水素化分解ユニット30から来る流出物31は、頂部の流れ33と、BTXを含む底部の流れ35に、分離ユニット32においてさらに分離される。頂部の流れ33は、主にLPGを含む流れ36に、分離塔34においてさらに分離される。
【0073】
別の実施形態によれば、流れ29(流れ12、21および28からの材料を含む)中の芳香族種およびナフテン種をLPGへ転換するように、ユニット30、32および33を再設計することが好ましい。この実施形態は、カスケード内のハイドロクラッカーユニットがそれぞれ一部のLPG材料を製造するが、第2のハイドロクラッカー内でLPGへ転換される他の種も製造することから、「間接的な」経路と特定できる。これは、水素化分解ユニット30をより低い温度とより高い水素分圧で運転することを意味する。塔32を除く(BTX生成物の流れ35がまったくない)か、またはLPGより重質な材料(流れ35)を反応器(ユニット30)へ再循環させる手段として塔32を使用して、この設備の蒸留セクションを変更する。このような運転で、前述した残りのハイドロクラッカーのための反応器および分離システムを運転し続け得る。
図1
図2