(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676548
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】水性外用剤
(51)【国際特許分類】
A61K 47/18 20060101AFI20200330BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20200330BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20200330BHJP
A61K 47/10 20060101ALI20200330BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20200330BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20200330BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20200330BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20200330BHJP
A61K 31/405 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
A61K47/18
A61K9/08
A61K47/12
A61K47/10
A61K45/00
A61P29/00
A61P17/00
A61K31/196
A61K31/405
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-572213(P2016-572213)
(86)(22)【出願日】2016年1月29日
(86)【国際出願番号】JP2016052838
(87)【国際公開番号】WO2016121996
(87)【国際公開日】20160804
【審査請求日】2018年11月20日
(31)【優先権主張番号】特願2015-16365(P2015-16365)
(32)【優先日】2015年1月30日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-110902(P2015-110902)
(32)【優先日】2015年5月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】302005628
【氏名又は名称】株式会社 メドレックス
(74)【代理人】
【識別番号】100104802
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 尚人
(72)【発明者】
【氏名】山中 勝弘
【審査官】
磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2009/066457(WO,A1)
【文献】
国際公開第91/012821(WO,A1)
【文献】
国際公開第2010/103844(WO,A1)
【文献】
国際公開第2004/064817(WO,A1)
【文献】
特表2009−519958(JP,A)
【文献】
特表2009−519956(JP,A)
【文献】
特表2009−519940(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/18
A61K 9/08
A61K 31/196
A61K 31/405
A61K 45/00
A61K 47/10
A61K 47/12
A61P 17/00
A61P 29/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸性薬物又はその塩と、イソステアリン酸、アルカノールアミン、及びC2−6脂肪族ヒドロキシ酸とを含む水性外用剤であって、
上記アルカノールアミンの含有量が、上記イソステアリン酸と上記C2−6脂肪族ヒドロキシ酸との総和に対して0.2〜2.5モル倍である、水性外用剤(但し、乳剤性水性外用剤を除く。)。
【請求項2】
pHが4.5〜7.8である、請求項1に記載の水性外用剤。
【請求項3】
上記C2−6脂肪族ヒドロキシ酸が、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸から成る群より選択される1種又は2種以上の組み合わせである、請求項1又は2に記載の水性外用剤。
【請求項4】
上記酸性薬物が、アリール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤である、請求項1〜3いずれかの項に記載の水性外用剤。
【請求項5】
さらに、グリセリンを含む、請求項1〜4のいずれかの項に記載の水性外用剤。
【請求項6】
さらに、イソプロパノール及びプロピレングリコールの低級アルコールを1:3〜3:1(イソプロパノール:プロピレングリコール)の割合で含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の水性外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有効成分として酸性薬物又はその塩を含む水性の外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性薬物の外用剤としては、ジクロフェナク等のフェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤、ロキソプロフェン等のプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤などの消炎鎮痛剤の外用剤が広く知られており、薬物の経皮吸収性向上のための多様な技術が提案されている(例えば、特許文献1〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07−173058号公報
【特許文献2】特開平10−182450号公報
【特許文献3】特開2005−336063号公報
【特許文献4】特開2014−208623号公報
【特許文献5】特開2014−172857号公報
【特許文献6】特開2014−101338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、酸性薬物の経皮吸収性に優れ、しかも、使用感に優れた水性外用剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意検討した結果、イソステアリン酸及びアルカノールアミンを含む水性外用剤により上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成した。すなわち本発明は酸性薬物又はその塩とイソステアリン酸及びアルカノールアミンを含む水性外用剤を提供する
【0006】
本発明の水性外用剤は、さらに、C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸を含み、pHが4.5〜7.8であることが好ましい。
【0007】
上記C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸は、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸から成る群より選択される、1種又は2種以上の組み合わせであり得る。
【0008】
上記酸性薬物は、アリール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤が好ましい。
【0009】
本発明の水性外用剤は、さらに、グリセリンを含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の水性外用剤は、経皮吸収性に優れ、特に薬物がアリール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤等の消炎鎮痛剤である場合は、短時間で十分な消炎鎮痛効果が期待される。
【0011】
本発明の水性外用剤はまた、使用感に優れ、先端に発泡樹脂やボールがついた塗布用器に充填して用いる液剤として好適に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施例3、5、及び11で調製した本発明の水性外用剤及び市販の1%ジクロフェナクナトリウム液剤のラット皮膚透過性試験の結果を示すグラフ
【
図2】実施例12で調製した本発明の水性外用剤及び市販の1%ジクロフェナクナトリウムゲル剤のヒト皮膚透過性試験の結果を示すグラフ
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の水性外用剤には、有効成分として酸性薬物又はその塩を含む。酸性薬物としては、アルクロフェナク、ジクロフェナク、フェルビナク等のフェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤;インドメタシン、エトドラク、アセメタシン等のインドール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤;サリチル酸、アスピリン、エテンザミド、ジフルニサル等のサリチル酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤;イブプロフェン、ケトプロフェン、ザルトプロフェン、スプロフェン、プラノプロフェン、フルルブプロフェン、ロキソプロフェン等のプロピオン酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤;メフェナム酸等のフェナム酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤;セファゾリン、ペニシラミン、イミペナム、シラスタチン等の抗生物質;チオペンタール、ペントバルビタール、アモバルビタール、フェノバルビタール等のバルビツール酸系薬物;クロモグリク酸等の抗アレルギー剤;プラバスタチン、ロスバスタチン、アトルバスタチン、シンバスタチン等のHMG-CoA還元酵素阻害薬が例示できる。これらの中で、フェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤、インドール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤等のアリール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤が好ましく、フェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤が特に好ましい。本発明に用い得る酸性薬物の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アンモニウム塩;ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン等のアルキルアミン塩;エポラミン(ヒドロキシエチルピロリジン塩)等の環状アミン塩等が例示できる。
【0014】
酸性薬物又はその塩の含有量は、特に制限されないが、例えば、0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、特に好ましくは0.5〜5重量%の範囲から選択することができる。酸性薬物又はその塩の含有量が上記範囲未満であると、十分な薬効が得られない場合があり、好ましくない。酸性薬物又はその塩の含有量が上記範囲を超えると、酸性薬物又はその塩が十分に溶解しなかったり、経時的に結晶析出する場合があり、好ましくない。
【0015】
本発明の水性外用剤は、水を必須の構成成分として含み、代表的には液剤であるが、ゼリー剤、クリーム剤、パップ剤等に応用可能である。例えば、水と低級アルコールとの混合溶液に、酸性薬物又はその塩と、イソステアリン酸、及びアルカノールアミン、さらに必要に応じてC
2−6脂肪族ヒドロキシ酸を溶解してなる溶液は、本発明の好ましい態様である。
【0016】
経皮吸収促進剤として脂肪酸を用いることは知られているが、酸性薬物を含む水性外用剤においては、イソステアリン酸を用いると他の脂肪酸を用いた場合に比して薬物の経皮吸収性が飛躍的に向上する。特に、酸性薬物がアリール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤である場合は、イソステアリン酸の添加による経皮吸収促進効果が顕著である。イソステアリン酸の含有量は、例えば、水性外用剤の重量の0.5〜20重量%、好ましくは2〜15重量%、特に好ましくは3〜10重量%の範囲から選択することができる。また、酸性薬物又はその塩に対して、0.1〜8倍モル、好ましくは0.5〜3倍モル、さらに好ましくは1.0〜2.5倍モル、特に好ましくは1.5〜2.4倍モルの範囲から選択することができる。
【0017】
アルカノールアミンとしては、例えば炭素数2〜12程度の第1級、第2級、又は第3級アルカノールアミンをいずれも用いることができるが、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第3級アルカノールアミンが好ましい。
【0018】
アルカノールアミンの含有量は、イソステアリン酸の含有量の0.4〜8.0モル倍、好ましくは0.5〜4.0倍モルの範囲から選択することができる。酸性薬物がジクロフェナク等のフェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤である場合は、アルカノールアミンの含有量はイソステアリン酸の含有量の0.4〜1.5倍モル、特に好ましくは0.6〜1.2倍モルの範囲から選択することができる。酸性薬物がインドメタシン等のインドール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤である場合は、アルカノールアミンの含有量はイソステアリン酸の含有量の2.5〜8.0倍モル、好ましくは3.0〜4.0倍モルの範囲から選択することができる。
【0019】
水性外用剤が後述のC
2−6脂肪族ヒドロキシ酸をさらに含む場合には、アルカノールアミンの含有量は、イソステアリン酸と脂肪族ヒドロキシ酸との総和に対して、例えば0.2〜2.5モル倍、好ましくは0.3〜1.2モル倍、特に好ましくは0.4〜0.8モル倍の範囲から選択することができる。アルカノールアミンの添加量が上記範囲外であると、水性外用剤が一様な溶液にならない場合や、経時的又は振動等の刺激により分離する場合があり好ましくない。
【0020】
酸性薬物がジクロフェナク等のフェニル酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤である場合は、アルカノールアミンの含有量はイソステアリン酸の含有量の0.6〜1.2倍モルであり、かつ、イソステアリン酸と脂肪族ヒドロキシ酸との総和に対して、0.3〜0.5倍モルであるのが好ましい。酸性薬物がインドメタシン等のインドール酢酸系非ステロイド性消炎鎮痛剤である場合は、アルカノールアミンの含有量はイソステアリン酸の含有量の3.0〜4.5倍モルであり、かつ、イソステアリン酸と脂肪族ヒドロキシ酸との総和に対して、0.6〜0.9倍モルであるのが好ましい。
【0021】
C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸としては、乳酸、グリコール酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸を例示できる。C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸は、1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸を含ませることで、水性外用剤の液性を適切な範囲に調整すると、酸性薬物の溶解性が高まり、長期保存後も結晶析出や分離等が生じない安定な外用剤が得られるばかりでなく、酸性薬物の経皮吸収性が向上する。イソステアリン酸及びアルカノールアミンを含む本発明の水性外用剤では、液性が酸性になると分離しやすくなるが、C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸を含むことにより、安定な液剤となる。C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸の含有量は、水性外用剤の液性が後述する適切な範囲となるように、適宜調節することができ、特に制限されない。例えば、酸性薬物に対して1.0〜10モル倍、好ましくは1.0〜5.0モル倍、特に好ましくは1.5〜3.5モル倍の範囲から選択することができる。
【0022】
C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸としては、少なくとも酒石酸又は乳酸を含むことが好ましく、酒石酸を含むことが特に好ましい。酒石酸を含むことにより、水性外用剤の安定性が向上するばかりでなく、経皮吸収性が特に向上する。これは、酒石酸が水性溶媒及び脂性溶媒の双方に易溶であるため、水性外用剤を皮膚に適用後、水、アルコール等の水性溶媒が蒸発した後も溶解した状態を保持するため、皮膚に浸透しやすいためだと考えられる。C
2−6脂肪族ヒドロキシ酸としては、酒石酸と乳酸とを組み合わせて用いることが好ましい。酒石酸と乳酸とを組み合わせて用いる場合、両者の配合比は、酒石酸:乳酸=1:1〜1:3の範囲から選択することができる。
【0023】
本発明の水性外用剤の液性は、pH4.5〜7.8、好ましくはpH5.6〜7.5、さらに好ましくはpH5.0〜6.8、特に好ましくは5.0〜5.8、最も好ましくは5.2〜5.5の範囲から選択することができる。pHが上記範囲外であると、経時的に結晶を析出するなど水性外用剤の安定性に劣る場合や、皮膚刺激等がある場合があり好ましくない。水性外用剤のpHは、上述のイソステアリン酸及びアルカノールアミン、ヒドロキシ酸の含有量により調整することができるが、さらに、塩酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のpH調整剤を用いて調整してもよい。
【0024】
水と混合して溶媒として用いる低級アルコールとしては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、プロピレングリコール等の炭素数2〜5である1価、又は2価のアルコールを例示できる。低級アルコールは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。低級アルコールの含有量は、例えば、ジクロフェナク又はその塩の溶解性、使用感等を考慮して、例えば20〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の範囲から選択することができる。本発明においては、イソプロパノールとプロピレングリコールとを、例えば1:3〜3:1、好ましくは1:2〜2:1、特に好ましくは1:1〜1:2の割合で組み合わせて用いることが好ましい。
【0025】
本発明の水性外用剤は、少なくとも10重量%、好ましくは20重量%、特に好ましくは25重量%以上の水を含む。
【0026】
本発明の外用剤は、さらに、はグリセリンを含んでいることが好ましい。グリセリンを含有すると、酸性薬物又はその塩の皮膚透過速度が向上し、皮膚に適応後速やかに酸性薬物又はその塩が皮膚透過し、即効性に優れた外用剤が得られる。グリセリンの含有量は、例えば0.1〜10重量%、好ましくは0.2〜5重量%、特に好ましくは0.2〜1.0重量%の範囲から選択することができる。グリセリンの含有量が上記範囲未満であると、透過速度向上効果が得られ難く、上記範囲より多くても効果の増強はみられず、かえって皮膚透過性に劣る場合があり、好ましくない。
【0027】
本発明の水性外用剤は、酸性薬物又はその塩の可溶化剤、経皮吸収促進剤として、さらに、親油性成分を含んでいてもよい。親油性成分は、水性外用剤の20重量%未満、好ましくは15重量%未満の範囲で配合することができる。親油性成分としては、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、セバシン酸ジエチル等の脂肪酸エステル類;N−メチルピロリドン;ジメチルイソソルビド等を例示できる。これらの中で、N−メチルピロリドン又はジメチルイソソルビドが好ましい。
【0028】
本発明の水性外用剤は、必要に応じて粘稠剤、保湿剤、溶解補助剤、安定剤、香料等の添加剤を含んでもよい。上記粘稠剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルメロース、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム等のセルロース類;ポリビニルピロリドン;ポリビニルアルコール;カルボキシビニルポリマー;ポリアクリル酸ナトリウム等のポリアクリル酸塩等を例示できる。粘稠剤の含有量は、例えば、0.05〜20重量%の範囲から選択できる。本発明の水性外用剤が液剤の場合は、0.05〜0.5重量%の範囲から選択できる。安定剤としては、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム等を例示できる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例により何ら限定されない。
【0030】
[水性外用剤の調製]
表1及び表2に示す組成(重量%)の水性外用剤を調製した。各剤のpHを測定した。また、水性外用剤をガラス容器に充填したときの外観を肉眼で観察した。結果を表1及び2に併せて示す。
外観の評価は以下の基準で行った。
○:澄明な溶液
△:透明な溶液が得られるが経時的に又は振動等の刺激により油相と水相に分離する
【0031】
[皮膚透過性試験]
調整した水性外用剤及び市販の1%ジクロフェナクナトリウム液剤について、常法に従ってフランツ・セルを用いた皮膚透過性試験を行った。試験にはラット(5週齢、ウィスターラット、雄)の腹部摘出皮膚を用いた。試験開始後2、4、6時間後にサンプリングを行った。6時間後の累積透過量を表1及び2に併せて示す。実施例3、5、11、及び市販の液剤の累積皮膚透過量の推移を表すグラフを
図1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
イソステアリン酸及びアルカノールアミンを含む本発明の実施例1及び実施例2の水性外用剤は、両者を含まない比較例5の剤に比べて高い皮膚透過性を示した。イソステアリン酸にかえて脂肪酸としてデカン酸、レブリン酸を含む比較例1〜4の液剤は、比較例5の剤よりも皮膚透過性が劣っていた。実施例3の剤は乳酸をさらに含むことにより実施例2の剤より優れた皮膚透過性を示した。実施例4の剤はグリセリンをさらに含むことにより実施例3の剤より優れた皮膚透過性を示した。
【0034】
【表2】
【0035】
イソステアリン酸の含有量が4〜6重量%である実施例4〜実施例11の水性外用剤は、いずれも良好な皮膚透過性を示した。これらの中では、イソステアリン酸の含有量が多い方が優れ皮膚透過性を示す傾向がみられた。有機アミンの含有量が少ない実施例7〜実施例9の水性外用剤は、皮膚透過性がやや劣る傾向がみられた。
【0036】
図1に示されるように、本発明の水性外用剤は皮膚透過性に優れ、市販のジクロフェナクナトリウム液剤に比べ、最大で約3倍のジクロフェナクの皮膚透過が観察された。特に、グリセリンを含有する実施例5の液剤は、透過速度が速い。
【0037】
[実施例12〜21]
表3に示す組成(重量%)の水性外用剤を調製した。各剤のpHを測定した。また、水性外用剤をガラス容器に充填したときの外観を肉眼で観察した。結果を表3に併せて示す。
外観の評価は以下の基準で行った。
○:澄明な溶液
△:透明な溶液が得られるが経時的に又は振動等の刺激により油相と水相に分離する
【0038】
実施例12〜15の水性外用剤について、常法に従ってフランツ・セルを用いた皮膚透過性試験を行った。試験にはブタ皮膚(ユカタン・マイクロ・ピッグ 雄性、5か月齢)を用いた。試験開始後8、及び24時間後にサンプリングを行った。累積皮膚透過量(μg/cm
2)を表3に併せて示す。
【0039】
【表3】
【0040】
pHが5.0〜7.5の範囲内にある外用剤はいずれも、保存後も分離等を生じない安定な液剤であった。
【0041】
実施例12の水性外用剤及び市販の1%ジクロフェナクナトリウムゲル剤について、常法に従ってフランツ・セルを用いたヒト皮膚透過性試験を行った。
図2にジクロフェナクの累積皮膚透過量の推移を表すグラフを示す。
【0042】
[実施例2−1〜2−6]
表4に示す組成(重量%)のインドメタシンを活性成分として含む水性外用剤を調製した。各剤のpHを測定した。また、水性外用剤をガラス容器に充填したときの外観を肉眼で観察した。結果を4に示す。
外観の評価は以下の基準で行った。
○:澄明な溶液
【0043】
実施例2−1〜2−5の水性外用剤及び市販の1%インドメタシン液剤について、常法に従ってフランツ・セルを用いた皮膚透過性試験を行った。試験にはブタ皮膚(ユカタン・マイクロ・ピッグ 雄性、5か月齢)を用いた。試験開始後24時間後までの累積皮膚透過量(μg/cm
2)を表4に示す。
【0044】
【表4】
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の水性外用剤は、優れた消炎鎮痛効果を速やかに発現する液剤として、特に、先端に発泡樹脂やボールがついた塗布用器に充填して用いる液剤として利用できる。