特許第6676560号(P6676560)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676560
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】小火器用弾丸
(51)【国際特許分類】
   F42B 12/80 20060101AFI20200330BHJP
   F42B 12/78 20060101ALI20200330BHJP
   F42B 12/82 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F42B12/80
   F42B12/78
   F42B12/82
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-14732(P2017-14732)
(22)【出願日】2017年1月30日
(65)【公開番号】特開2018-123985(P2018-123985A)
(43)【公開日】2018年8月9日
【審査請求日】2018年8月31日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】山下 学
(72)【発明者】
【氏名】表 雄一
(72)【発明者】
【氏名】中村 良平
【審査官】 志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−230294(JP,A)
【文献】 米国特許第04517897(US,A)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0000404(US,A1)
【文献】 仏国特許出願公開第02821151(FR,A1)
【文献】 特表2007−523313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F42B 12/72 − 12/82
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの異なる部材の弾心構成体が軸方向に並べられて構成される弾心の外側が被甲で覆われた小火器用弾丸において、
前記弾心は、
前記小火器用弾丸の軸方向に直線状に延びる弾心ストレート部と、
前記弾心ストレート部から弾頭側に延設される先細り形状の弾心頭部と、
前記弾心ストレート部から弾尾側に延設される円錐台形状の弾心尾部と、を有し、
前記被甲は、
前記小火器用弾丸の最大外径部分をなす円筒形状の被甲ストレート部と、
前記被甲ストレート部から弾頭側に延設される先細り形状をなし、前記弾心頭部と嵌合する被甲頭部と、
前記被甲ストレート部から弾尾側に延設される円錐台形状をなし、前記弾心尾部と嵌合する被甲尾部と、
前記被甲ストレート部のうち弾頭寄りの途中位置のみに配置され、周方向全体に亘って絞られ、2つの前記弾心構成体の境界面か、前記境界面より弾尾側かに嵌合する括れ部と、を有し、
前記被甲ストレート部の括れ部を除く全体と前記弾心ストレート部との間に環状の隙間を有している小火器用弾丸。
【請求項2】
前記弾心は、2つの前記弾心構成体のうち、前記境界面より弾尾側が弾頭側より長くなっている請求項1に記載の小火器用弾丸。
【請求項3】
弾心の外側が被甲で覆われた小火器弾丸において、
前記被甲には、前記小火器弾丸において外径が最大となる部位を構成し、且つ、前記小火器用弾丸の軸方向に延在する最大外径筒部が少なくとも1つ設けられ、
全ての前記最大外径筒部は、前記小火器用弾丸の軸方向の全域に亘って前記弾心との間に環状の隙間を有していて、
前記弾心は、前記小火器用弾心の軸方向に直線状に延びる弾心ストレート部と、前記弾心ストレート部から弾頭側に延設されると共に先細りとなった弾心頭部と、前記弾心ストレート部から弾尾側に延設されると共に弾尾側で縮経される円錐台形状の弾心尾部と、で構成され、
前記被甲は、前記小火器用弾丸の軸方向に延びた直筒状の被甲ストレート部と、前記被甲ストレート部から弾頭側に延設されて前記弾心頭部に対応した先細り形状をなす被甲頭部と、前記被甲ストレート部から弾尾側に延設されて前記弾心尾部に対応した円錐台形状をなす被甲尾部と、で構成され、
前記被甲頭部が前記弾心頭部と嵌合し、前記被甲尾部が前記弾心尾部と嵌合することにより、前記被甲が前記弾心を保持する一方、前記被甲ストレート部は、前記小火器用弾丸の軸方向全体に亘って前記弾心ストレート部との間に環状の隙間を有し、
前記被甲ストレート部に全ての前記最大外径筒部が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弾心の外側が被甲で覆われた小火器用弾丸に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被甲の最大外径部位の内周面に形成された環状の突起が弾心と当接する小火器用弾丸が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5244010号公報(段落[0018]、図1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の小火器用弾丸では、被甲の最大外径部位のうち環状の突起が設けられた部分は内側に変形することができないため、小火器用弾丸が銃身を通過するときに受ける抵抗が大きくなり、銃腔内圧が高くなって銃身が破損するという問題が起こり得た。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、銃身を通過するときに受ける抵抗を小さくすることが可能な小火器用弾丸の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するためになされた請求項1の発明は、2つの異なる部材の弾心構成体が軸方向に並べられて構成される弾心の外側が被甲で覆われた小火器用弾丸において、前記弾心は、前記小火器用弾丸の軸方向に直線状に延びる弾心ストレート部と、前記弾心ストレート部から弾頭側に延設される先細り形状の弾心頭部と、前記弾心ストレート部から弾尾側に延設される円錐台形状の弾心尾部と、を有し、前記被甲は、前記小火器用弾丸の最大外径部分をなす円筒形状の被甲ストレート部と、前記被甲ストレート部から弾頭側に延設される先細り形状をなし、前記弾心頭部と嵌合する被甲頭部と、前記被甲ストレート部から弾尾側に延設される円錐台形状をなし、前記弾心尾部と嵌合する被甲尾部と、前記被甲ストレート部のうち弾頭寄りの途中位置のみに配置され、周方向全体に亘って絞られ、2つの前記弾心構成体の境界面か、前記境界面より弾尾側かに嵌合する括れ部と、を有し、前記被甲ストレート部の括れ部を除く全体と前記弾心ストレート部との間に環状の隙間を有している小火器用弾丸。
請求項2の発明は、前記弾心は、2つの前記弾心構成体のうち、前記境界面より弾尾側が弾頭側より長くなっている請求項1に記載の小火器用弾丸。
【0007】
請求項の発明は、弾心の外側が被甲で覆われた小火器弾丸において、前記被甲には、前記小火器弾丸において外径が最大となる部位を構成し、且つ、前記小火器用弾丸の軸方向に延在する最大外径筒部が少なくとも1つ設けられ、全ての前記最大外径筒部は、前記小火器用弾丸の軸方向の全域に亘って前記弾心との間に環状の隙間を有していて、前記弾心は、前記小火器用弾心の軸方向に直線状に延びる弾心ストレート部と、前記弾心ストレート部から弾頭側に延設されると共に先細りとなった弾心頭部と、前記弾心ストレート部から弾尾側に延設されると共に弾尾側で縮経される円錐台形状の弾心尾部と、で構成され、前記被甲は、前記小火器用弾丸の軸方向に延びた直筒状の被甲ストレート部と、前記被甲ストレート部から弾頭側に延設されて前記弾心頭部に対応した先細り形状をなす被甲頭部と、前記被甲ストレート部から弾尾側に延設されて前記弾心尾部に対応した円錐台形状をなす被甲尾部と、で構成され、前記被甲頭部が前記弾心頭部と嵌合し、前記被甲尾部が前記弾心尾部と嵌合することにより、前記被甲が前記弾心を保持する一方、前記被甲ストレート部は、前記小火器用弾丸の軸方向全体に亘って前記弾心ストレート部との間に環状の隙間を有し、前記被甲ストレート部に全ての前記最大外径筒部が設けられている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、全てに最大外径筒部が小火器用弾丸の軸方向全体に亘って小火器用弾丸の中心軸側に変形することが可能となる。これにより、小火器用弾丸が銃腔を通過するときに受ける抵抗を小さくすることが可能となる。また、被甲頭部と被甲尾部と括れ部の3箇所で2つの弾心構成体で構成される弾心を保持するので、弾心の固定の安定化を図ることが可能となり、弾頭側に位置する括れ部が、少なくとも、弾尾側には配された弾心構成体と嵌合するため、弾尾側に配された弾心構成体は両端で被甲に保持されるのでより安定化を図ることが可能となる。
請求項2の発明によれば、2つの弾心構成体で構成された弾心のうち、被甲が軸長の長い弾心構成体を2箇所で保持するので、弾心の固定の安定化を図ることが可能となる。
【0012】
請求項の発明では、全ての最大外径筒部が小火器用弾丸の軸方向全体に亘って小火器用弾丸の中心軸側に変形することが可能となる。これにより、小火器用弾丸が銃腔を通過するときに受ける抵抗を小さくすることが可能となる。また、被甲頭部が弾心頭部と嵌合し、被甲尾部が弾心尾部と嵌合することで、被甲が弾心を保持するので、弾心の固定の安定化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る小火器用弾丸の一部破断側面図
図2】(A)被甲頭部周辺の断面図、(B)被甲尾部周辺の断面図
図3】小火器用弾丸が銃身を通過する過程を示す断面図
図4】小火器用弾丸が銃身を通過する過程を示す断面図
図5】小火器用弾丸の製造工程を示す断面図
図6】第2実施形態に係る小火器用弾丸の一部破断側面図
図7】小火器用弾丸の製造工程を示す断面図
図8】第3実施形態に係る小火器用弾丸の一部破断側面図
図9】他の実施形態に係る小火器用弾丸の側断面図
図10】他の実施形態に係る小火器用弾丸の側断面図
図11】他の実施形態に係る小火器用弾丸の側断面図
図12】他の実施形態に係る小火器用弾丸の側断面図
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示されるように、本実施形態の小火器用弾丸10(以下、単に「弾丸10」という。)は、弾心11の外側を被甲21で覆ってなる。弾丸10の弾頭10Aは先細り状に形成され、弾丸10の弾尾10Bは弾頭10Aから離れるに従って縮径される円錐台形状に形成されている。被甲21は、弾頭10A側が閉塞される一方、弾尾10B側が開放した容器状に形成されている。なお、以下では、弾丸10における弾頭10A側を「前側」と、弾尾10B側を「後側」と、適宜、呼ぶことにする。
【0018】
弾心11は、弾丸10の中心軸J1に沿って直線状に延びる弾心ストレート部12と、弾心ストレート部12から弾頭10A側に延設された弾心頭部13と、弾心ストレート部12から弾尾10B側に延設された弾心尾部14と、で構成されている。また、被甲21は、弾丸10の中心軸J1に沿って延びる直筒状の被甲ストレート部22と、被甲ストレート部22から弾頭10A側に延設された被甲頭部23と、被甲ストレート部22から弾尾10B側に延設された被甲尾部24と、で構成されている。
【0019】
弾心頭部13は、前側に向かうに従って(弾心ストレート部12から離れるに従って)縮径される先細り形状に形成され、被甲頭部23は、弾心頭部13に対応した先細り形状に形成されている。また、弾心尾部14は、後側へ向かうに従って(弾心ストレート部12から離れるに従って)縮径される円錐台形状に形成され、被甲尾部24は、弾心尾部14に対応した円錐台形状に形成されている。そして、被甲頭部23が弾心頭部13と嵌合し、被甲尾部24が弾心尾部14と嵌合することにより、被甲21が弾心11を保持している。
【0020】
なお、詳細には、弾心頭部13の前端面13Fは平坦であるのに対し、被甲頭部23の内面は先端が尖った形状になっている。そして、被甲頭部23は、弾心頭部13の前端面13Fとの間に前端隙間23Sを有している。また、被甲尾部24は、弾心尾部14と嵌合する嵌合筒壁24Aと、弾心尾部14の後面の外周部に宛がわれて弾心11を抜け止めする抜止壁24Bと、で構成されている。
【0021】
図1に示されるように、被甲ストレート部22は、弾丸10において外径が最大となる部位を構成する。即ち、本実施形態の弾丸10では、被甲ストレート部22の全体が本発明の最大外径筒部31を構成する。
【0022】
被甲ストレート部22の内径は、弾心11(詳細には、弾心ストレート部12)の外径よりも大きくなっていて、被甲ストレート部22は、弾丸10の軸方向全域に亘って、弾心11との間に環状の隙間32を有している。
【0023】
図2(A)及び図2(B)に示されるように、弾心ストレート部12の軸長は、被甲ストレート部22の軸長よりも長くなっている。そして、図2(A)に示されるように、被甲頭部23の後端部(被甲ストレート部22側の端部)は、弾心11(詳細には、弾心ストレート部12)との間に環状の隙間33を有している。また、図2(B)に示されるように、被甲尾部24の前端部(被甲ストレート部22側の端部)は、弾心11(詳細には、弾心ストレート部12)との間に環状の隙間34を有している。
【0024】
図3,4には、銃身70を通過するときの弾丸10が示されている。図3,4の例では、弾丸10は、薬莢42の前端筒部42Aに嵌合されて弾薬41の一部を構成する。銃身70には、薬莢42に前側から連絡する銃腔71が形成されている。詳細には、銃腔71は、薬莢42と連絡すると共に前側へ向かうに従って縮径される誘導部72と、誘導部72に前側から連絡したストレート部73と、を備えている。ストレート部73の内径は、弾丸10の最大外径よりも若干小さくなっている。
【0025】
図3は、弾丸10が発射されて、弾丸10の前端部が銃腔71のストレート部73に突入しているところを示す。ここで、弾丸10の最大外径部位において被甲21と弾心11との間が詰まっていると、弾丸10が縮径され難くなり、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗が大きくなる。その結果、銃腔71の内圧が高くなって銃腔71に被甲21を構成する材料が付着しやすくなるという問題が起こり得る。しかしながら、本実施形態では、図3から図4への変化に示されるように、最大外径筒部31(被甲ストレート部22)が銃身70を通過するときに、被甲21の最大外径筒部31と弾心11との間に環状の隙間32が形成されているので、弾丸10(詳細には、被甲21の最大外径筒部31)が内側に変形することができる。これにより、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗が小さくなり、銃腔71に被甲21を構成する材料が付着しやすくなるという問題が生じることを抑えることができる。
【0026】
次に、弾丸10の製造方法について説明する。弾丸10が製造されるには、まず、図5(A)に示されるように、弾心11と、被甲21を形成するための弾心受容体51とが準備される。弾心受容体51は、一端が閉塞された筒状構造になっていて、直筒部52と、直筒部52の一端から延設された尖り部53と、で構成されている。直筒部52の内径は、弾心11の外径より若干大きくなっている。なお、直筒部52は被甲ストレート部22より長く形成され、尖り部53は被甲頭部23と同形状に形成されている。
【0027】
次いで、図5(A)の矢印で示されるように、弾心頭部13側から弾心11が弾心受容体51内に挿入され、図5(B)に示されるように、弾心11が弾心受容体51に受容される。このとき、弾心頭部13が尖り部53の内面に当接し、弾心尾部14が弾心受容体51の開口端(直筒部52の他端)よりも挿入方向の前側に配置される。
【0028】
次いで、図5(B)の矢印で示されるように、直筒部52の他端部がかしめられて、直筒部52から被甲尾部24と被甲ストレート部22が形成される。また、尖り部53から被甲頭部23が形成される。以上により、図1に示した弾丸10が完成する。
【0029】
次に、本実施形態の弾丸10の作用効果について説明する。本実施形態の弾丸10では、被甲21に形成された全ての最大外径筒部31(被甲ストレート部22)が、弾丸10の軸方向の全域に亘って弾心11との間に環状の隙間32を有しているので、最大外径筒部31が弾丸10の軸方向の全域に亘って、弾丸10の中心軸J1側に変形することが可能となる。これにより、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗を小さくすることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態の弾丸10では、被甲頭部23が弾心頭部13と嵌合し、被甲尾部24が弾心尾部14と嵌合することで、被甲21が弾心11を保持するので、弾心11の固定の安定化を図ることが可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。図6に示されるように、本実施形態の小火器用弾丸10V(以下、単に「弾丸10V」という。)は、上記第1実施形態の弾丸10を変形したものであり、被甲121の構成が上記第1実施形態の被甲21と異なっている。なお、弾丸10Vは、上記第1実施形態の弾丸10と同じ弾心11を備えている。
【0032】
被甲121は、被甲ストレート部122と、被甲頭部123と、被甲尾部124と、からなる。被甲ストレート部122は、弾丸10Vの中心軸J1に沿って延びる直筒状をなし、周方向全体に亘って弾心11側に陥没してなる括れ部125を有している。そして、括れ部125によって被甲ストレート部122の外周面に環状溝126が形成されている。被甲頭部123と被甲尾部124は、上記第1実施形態の被甲21の被甲頭部23と被甲尾部24と同様の構成をなしている。
【0033】
図6に示されるように、被甲121の環状溝126は、薬莢42と係合する。具体的には、薬莢42における前端筒部42Aの開口端が内側に折れ曲がった状態になっていて、前端筒部42Aの折れ曲がり部分が環状溝126と凹凸係合する。
【0034】
弾丸10Vにおいては、上記第1実施形態と同様に、被甲頭部123と弾心頭部13が嵌合し、被甲尾部124と弾心尾部14が嵌合する。また、弾丸10Vでは、被甲ストレート部122の括れ部125が弾心ストレート部12と嵌合する。即ち、弾丸10Vでは、弾心11が、弾心ストレート部12、弾心頭部13及び弾心尾部14の3箇所で被甲121に保持されている。
【0035】
上述の如く、被甲ストレート部122の括れ部125は弾心11と嵌合するので、被甲ストレート部122のうち括れ部125より前側に位置する部分と後側に位置する部分のそれぞれが、弾丸10Vにおいて外径が最大となる部位を構成する最大外径筒部31となっている。なお、各最大外径筒部31は、弾丸10Vの軸方向全域に亘って、弾心ストレート部12との間に環状の隙間32を有している。
【0036】
弾丸10Vは、以下のようにして製造される。弾丸10Vが製造されるには、まず、図7(A)に示されるように、弾心11と、被甲121を形成するための弾心受容体151とが準備される。弾心受容体151は、上記第1実施形態の弾心受容体51を変形した構造になっていて、直筒部52に括れ部125が形成されている点が弾心受容体51と異なっている。
【0037】
上記第1実施形態と同様にして、弾心11が弾心受容体151内に挿入され(図7(A))、弾心11が弾心受容体151に受容される(図7(B))。次いで、図7(B)の矢印で示されるように、直筒部52の他端部がかしめられて、直筒部52から被甲尾部124と被甲ストレート部122が形成される。また、弾心受容体151の尖り部53から被甲頭部123が形成される。以上により、図に示した弾丸10Vが完成する。
【0038】
なお、弾丸10Vの別の製造方法として、弾心受容体151の代わりに前記第1実施形態の弾心受容体51を用い、弾心受容体51に弾心11を挿入した後に、弾心受容体51に括れ部125を形成してもよい。
【0039】
次に、弾丸10Vの作用効果について説明する。弾丸10Vでは、上記第1実施形態と同様に、最大外径筒部31が弾丸10の軸方向の全域に亘って弾丸10の中心軸J1側に変形することが可能となる。これにより、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗を小さくすることが可能となる。また、弾丸10Vでは、被甲頭部123と被甲尾部124と括れ部125の3箇所で弾心11が保持されるので、弾心11の固定の安定化が図られる。
【0040】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。図8に示されるように、本実施形態の小火器用弾丸10W(以下、単に「弾丸10W」という。)は、上記第2実施形態の弾丸10Vを変形したものであり、弾心111の構成が上記第2実施形態の弾心11と異なっている。弾丸10Wは、上記第2実施形態の弾丸10Vと同じ被甲121を有している。
【0041】
弾心111は、第1弾心構成体111Aと、第1弾心構成体111Aとは異なる部材で構成された第2弾心構成体111Bの2つの弾心構成体からなる。第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bは、前後に並べて配置される。第1弾心構成体111Aは、弾心ストレート部112の一部と弾心頭部113を構成し、第2弾心構成体111Bは、弾心ストレート部112の残り部分と弾心尾部114を構成する。図8の例では、第1弾心構成体111Aが前側に配置されている。なお、第1弾心構成体111A及び第2弾心構成体111Bは、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。
【0042】
本実施形態では、括れ部125が第2弾心構成体111Bと嵌合する。ここで、第2弾心構成体111Bの軸長は、第1弾心構成体111Aの軸長よりも長くなっていて、括れ部125は、第2弾心構成体111Bの前端部に嵌合する。このように、本実施形態では、第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bのうち軸長が長い方の弾心構成体が2箇所で被甲121に保持されるので、弾心111の固定の安定化が図られる。しかも、第2弾心構成体111Bは、両端部で被甲121に保持されるので、第2弾心構成体111Bが安定的に保持される。
【0043】
本実施形態の弾丸10Wは、上記第2実施形態の弾丸10Vと同様にして製造される。なお、その際、括れ部125を有する弾心受容体151を用いることが好ましい。
【0044】
本実施形態の弾丸10Wによれば、上記第2実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。また、弾丸10Wでは、弾心111が第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bの2つの弾心構成体で構成されていることから、弾心111の固定が不安定になるところ、被甲頭部123と被甲尾部124と括れ部125の3箇所で弾心111が保持されるので、弾心111の固定の安定化が図られている。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)上記第1実施形態において、図9に示されるように、被甲21の外周面に環状溝126が形成されていてもよい。この場合、被甲21のうち環状溝126の非形成部分に最大外径筒部31が形成される。図9の例では、被甲21のうち環状溝126に対して弾頭10A側に配される部分と弾尾10B側に配される部分のそれぞれが最大外径筒部31を構成する。
【0047】
(2)上記第3実施形態において、図10(A)に示されるように、括れ部125が第1弾心構成体111Aと嵌合してもよいし、図10(B)に示されるように、第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bの両方と嵌合してもよい。
【0048】
(3)上記第3実施形態において、図11に示されるように、第1弾心構成体111Aの後端面に突部111Tを形成するとともに、第2弾心構成体111Bの前端面に突部111Tと係合する凹部111Hを形成してもよい。そして、第1弾心構成体111Aの突部111Tと第2弾心構成体111Bの凹部とを係合させて位置決めしてもよい。なお、第1弾心構成体111Aの後端面に凹部、第2弾心構成体111Bの前端面に突部を形成してもよい。
【0049】
(4)図12に示される小火器用弾丸10Xのように、被甲21Xの被甲ストレート部22Xと被甲尾部24Xとの間に、被甲尾部24X側で段付き状に縮径される段差部21Dが形成された構成であってもよい。この場合、弾心11Xは、弾心ストレート部12Xと弾心頭部13Xのみで構成され、上記実施形態で示したような後側で縮径される円錐台形状の弾心尾部14,114を有しない。そして、被甲尾部24Xは、弾心ストレート部12Xの後端部と嵌合し、弾心ストレート部12Xの非嵌合部分より前側に配された部分と被甲ストレート部22Xとの間に環状の隙間32が形成されている。
【符号の説明】
【0050】
10,10V,10W,10X 小火器用弾丸
11,11X,111 弾心
12,12X,112 弾心ストレート部
13,13X,113 弾心頭部
14,14X,114 弾心尾部
21,21X,121 被甲
22,22X,122 被甲ストレート部
23,23X,123 被甲頭部
24,24X,124 被甲尾部
31 最大外径筒部
32〜34 隙間
125 括れ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12