(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
図1に示されるように、本実施形態の小火器用弾丸10(以下、単に「弾丸10」という。)は、弾心11の外側を被甲21で覆ってなる。弾丸10の弾頭10Aは先細り状に形成され、弾丸10の弾尾10Bは弾頭10Aから離れるに従って縮径される円錐台形状に形成されている。被甲21は、弾頭10A側が閉塞される一方、弾尾10B側が開放した容器状に形成されている。なお、以下では、弾丸10における弾頭10A側を「前側」と、弾尾10B側を「後側」と、適宜、呼ぶことにする。
【0018】
弾心11は、弾丸10の中心軸J1に沿って直線状に延びる弾心ストレート部12と、弾心ストレート部12から弾頭10A側に延設された弾心頭部13と、弾心ストレート部12から弾尾10B側に延設された弾心尾部14と、で構成されている。また、被甲21は、弾丸10の中心軸J1に沿って延びる直筒状の被甲ストレート部22と、被甲ストレート部22から弾頭10A側に延設された被甲頭部23と、被甲ストレート部22から弾尾10B側に延設された被甲尾部24と、で構成されている。
【0019】
弾心頭部13は、前側に向かうに従って(弾心ストレート部12から離れるに従って)縮径される先細り形状に形成され、被甲頭部23は、弾心頭部13に対応した先細り形状に形成されている。また、弾心尾部14は、後側へ向かうに従って(弾心ストレート部12から離れるに従って)縮径される円錐台形状に形成され、被甲尾部24は、弾心尾部14に対応した円錐台形状に形成されている。そして、被甲頭部23が弾心頭部13と嵌合し、被甲尾部24が弾心尾部14と嵌合することにより、被甲21が弾心11を保持している。
【0020】
なお、詳細には、弾心頭部13の前端面13Fは平坦であるのに対し、被甲頭部23の内面は先端が尖った形状になっている。そして、被甲頭部23は、弾心頭部13の前端面13Fとの間に前端隙間23Sを有している。また、被甲尾部24は、弾心尾部14と嵌合する嵌合筒壁24Aと、弾心尾部14の後面の外周部に宛がわれて弾心11を抜け止めする抜止壁24Bと、で構成されている。
【0021】
図1に示されるように、被甲ストレート部22は、弾丸10において外径が最大となる部位を構成する。即ち、本実施形態の弾丸10では、被甲ストレート部22の全体が本発明の最大外径筒部31を構成する。
【0022】
被甲ストレート部22の内径は、弾心11(詳細には、弾心ストレート部12)の外径よりも大きくなっていて、被甲ストレート部22は、弾丸10の軸方向全域に亘って、弾心11との間に環状の隙間32を有している。
【0023】
図2(A)及び
図2(B)に示されるように、弾心ストレート部12の軸長は、被甲ストレート部22の軸長よりも長くなっている。そして、
図2(A)に示されるように、被甲頭部23の後端部(被甲ストレート部22側の端部)は、弾心11(詳細には、弾心ストレート部12)との間に環状の隙間33を有している。また、
図2(B)に示されるように、被甲尾部24の前端部(被甲ストレート部22側の端部)は、弾心11(詳細には、弾心ストレート部12)との間に環状の隙間34を有している。
【0024】
図3,4には、銃身70を通過するときの弾丸10が示されている。
図3,4の例では、弾丸10は、薬莢42の前端筒部42Aに嵌合されて弾薬41の一部を構成する。銃身70には、薬莢42に前側から連絡する銃腔71が形成されている。詳細には、銃腔71は、薬莢42と連絡すると共に前側へ向かうに従って縮径される誘導部72と、誘導部72に前側から連絡したストレート部73と、を備えている。ストレート部73の内径は、弾丸10の最大外径よりも若干小さくなっている。
【0025】
図3は、弾丸10が発射されて、弾丸10の前端部が銃腔71のストレート部73に突入しているところを示す。ここで、弾丸10の最大外径部位において被甲21と弾心11との間が詰まっていると、弾丸10が縮径され難くなり、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗が大きくなる。その結果、銃腔71の内圧が高くなって銃腔71に被甲21を構成する材料が付着しやすくなるという問題が起こり得る。しかしながら、本実施形態では、
図3から
図4への変化に示されるように、最大外径筒部31(被甲ストレート部22)が銃身70を通過するときに、被甲21の最大外径筒部31と弾心11との間に環状の隙間
32が形成されているので、弾丸10(詳細には、被甲
21の最大外径筒部31)が内側に変形することができる。これにより、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗が小さくなり、銃腔71に被甲21を構成する材料が付着しやすくなるという問題が生じることを抑えることができる。
【0026】
次に、弾丸10の製造方法について説明する。弾丸10が製造されるには、まず、
図5(A)に示されるように、弾心11と、被甲21を形成するための弾心受容体51とが準備される。弾心受容体51は、一端が閉塞された筒状構造になっていて、直筒部52と、直筒部52の一端から延設された尖り部53と、で構成されている。直筒部52の内径は、弾心11の外径より若干大きくなっている。なお、直筒部52は被甲ストレート部22より長く形成され、尖り部53は被甲頭部23と同形状に形成されている。
【0027】
次いで、
図5(A)の矢印で示されるように、弾心頭部13側から弾心11が弾心受容体51内に挿入され、
図5(B)に示されるように、弾心11が弾心受容体51に受容される。このとき、弾心頭部13が尖り部53の内面に当接し、弾心尾部14が弾心受容体51の開口端(直筒部52の他端)よりも挿入方向の前側に配置される。
【0028】
次いで、
図5(B)の矢印で示されるように、直筒部52の他端部がかしめられて、直筒部52から被甲尾部24と被甲ストレート部22が形成される。また、尖り部53から被甲頭部23が形成される。以上により、
図1に示した弾丸10が完成する。
【0029】
次に、本実施形態の弾丸10の作用効果について説明する。本実施形態の弾丸10では、被甲21に形成された全ての最大外径筒部31(被甲ストレート部22)が、弾丸10の軸方向の全域に亘って弾心11との間に環状の隙間32を有しているので、最大外径筒部31が弾丸10の軸方向の全域に亘って、弾丸10の中心軸J1側に変形することが可能となる。これにより、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗を小さくすることが可能となる。
【0030】
また、本実施形態の弾丸10では、被甲頭部23が弾心頭部13と嵌合し、被甲尾部24が弾心尾部14と嵌合することで、被甲21が弾心11を保持するので、弾心11の固定の安定化を図ることが可能となる。
【0031】
[第2実施形態]
以下、本発明の第2実施形態を図面に基づいて説明する。
図6に示されるように、本実施形態の小火器用弾丸10V(以下、単に「弾丸10V」という。)は、上記第1実施形態の弾丸10を変形したものであり、被甲121の構成が上記第1実施形態の被甲21と異なっている。なお、弾丸10Vは、上記第1実施形態の弾丸10と同じ弾心11を備えている。
【0032】
被甲121は、被甲ストレート部122と、被甲頭部123と、被甲尾部124と、からなる。被甲ストレート部122は、弾丸10Vの中心軸J1に沿って延びる直筒状をなし、周方向全体に亘って弾心11側に陥没してなる括れ部125を有している。そして、括れ部125によって被甲ストレート部122の外周面に環状溝126が形成されている。被甲頭部123と被甲尾部124は、上記第1実施形態の被甲21の被甲頭部23と被甲尾部24と同様の構成をなしている。
【0033】
図6に示されるように、被甲121の環状溝126は、薬莢42と係合する。具体的には、薬莢42における前端筒部42Aの開口端が内側に折れ曲がった状態になっていて、前端筒部42Aの折れ曲がり部分が環状溝126と凹凸係合する。
【0034】
弾丸10Vにおいては、上記第1実施形態と同様に、被甲頭部123と弾心頭部13が嵌合し、被甲尾部124と弾心尾部14が嵌合する。また、弾丸10Vでは、被甲ストレート部122の括れ部125が弾心ストレート部12と嵌合する。即ち、弾丸10Vでは、弾心11が、弾心ストレート部12、弾心頭部13及び弾心尾部14の3箇所で被甲121に保持されている。
【0035】
上述の如く、被甲ストレート部122の括れ部125は弾心11と嵌合するので、被甲ストレート部122のうち括れ部125より前側に位置する部分と後側に位置する部分のそれぞれが、弾丸10Vにおいて外径が最大となる部位を構成する最大外径筒部31となっている。なお、各最大外径筒部31は、弾丸10Vの軸方向全域に亘って、弾心ストレート部12との間に環状の隙間32を有している。
【0036】
弾丸10Vは、以下のようにして製造される。弾丸10Vが製造されるには、まず、
図7(A)に示されるように、弾心11と、被甲121を形成するための弾心受容体151とが準備される。弾心受容体151は、上記第1実施形態の弾心受容体51を変形した構造になっていて、直筒部52に括れ部125が形成されている点が弾心受容体51と異なっている。
【0037】
上記第1実施形態と同様にして、弾心11が弾心受容体151内に挿入され(
図7(A))、弾心11が弾心受容体151に受容される(
図7(B))。次いで、
図7(B)の矢印で示されるように、直筒部52の他端部がかしめられて、直筒部52から被甲尾部124と被甲ストレート部122が形成される。また、弾心受容体151の尖り部53から被甲頭部123が形成される。以上により、図
6に示した弾丸10Vが完成する。
【0038】
なお、弾丸10Vの別の製造方法として、弾心受容体151の代わりに前記第1実施形態の弾心受容体51を用い、弾心受容体51に弾心11を挿入した後に、弾心受容体51に括れ部125を形成してもよい。
【0039】
次に、弾丸10Vの作用効果について説明する。弾丸10Vでは、上記第1実施形態と同様に、最大外径筒部31が弾丸10の軸方向の全域に亘って弾丸10の中心軸J1側に変形することが可能となる。これにより、弾丸10が銃身70を通過するときに受ける抵抗を小さくすることが可能となる。また、弾丸10Vでは、被甲頭部123と被甲尾部124と括れ部125の3箇所で弾心11が保持されるので、弾心11の固定の安定化が図られる。
【0040】
[第3実施形態]
以下、本発明の第3実施形態を図面に基づいて説明する。
図8に示されるように、本実施形態の小火器用弾丸10W(以下、単に「弾丸10W」という。)は、上記第2実施形態の弾丸10Vを変形したものであり、弾心111の構成が上記第2実施形態の弾心11と異なっている。弾丸10Wは、上記第2実施形態の弾丸10Vと同じ被甲121を有している。
【0041】
弾心111は、第1弾心構成体111Aと、第1弾心構成体111Aとは異なる部材で構成された第2弾心構成体111Bの2つの弾心構成体からなる。第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bは、前後に並べて配置される。第1弾心構成体111Aは、弾心ストレート部112の一部と弾心頭部113を構成し、第2弾心構成体111Bは、弾心ストレート部112の残り部分と弾心尾部114を構成する。
図8の例では、第1弾心構成体111Aが前側に配置されている。なお、第1弾心構成体111A及び第2弾心構成体111Bは、同じ材料で構成されてもよいし、異なる材料で構成されてもよい。
【0042】
本実施形態では、括れ部125が第2弾心構成体111Bと嵌合する。ここで、第2弾心構成体111Bの軸長は、第1弾心構成体111Aの軸長よりも長くなっていて、括れ部125は、第2弾心構成体111Bの前端部に嵌合する。このように、本実施形態では、第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bのうち軸長が長い方の弾心構成体が2箇所で被甲
121に保持されるので、弾心111の固定の安定化が図られる。しかも、第2弾心構成体111Bは、両端部で被甲
121に保持されるので、第2弾心構成体111Bが安定的に保持される。
【0043】
本実施形態の弾丸10Wは、上記第2実施形態の弾丸10Vと同様にして製造される。なお、その際、括れ部125を有する弾心受容体151を用いることが好ましい。
【0044】
本実施形態の弾丸10Wによれば、上記第2実施形態と同様の効果を奏することが可能となる。また、弾丸10Wでは、弾心111が第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bの2つの弾心構成体で構成されていることから、弾心111の固定が不安定になるところ、被甲頭部123と被甲尾部124と括れ部125の3箇所で弾心111が保持されるので、弾心111の固定の安定化が図られている。
【0045】
[他の実施形態]
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下に説明するような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0046】
(1)上記第1実施形態において、
図9に示されるように、被甲21の外周面に環状溝126が形成されていてもよい。この場合、被甲21のうち環状溝126の非形成部分に最大外径筒部31が形成される。
図9の例では、被甲21のうち環状溝126に対して弾頭10A側に配される部分と弾尾10B側に配される部分のそれぞれが最大外径筒部31を構成する。
【0047】
(2)上記第3実施形態において、
図10(A)に示されるように、括れ部125が第1弾心構成体111Aと嵌合してもよいし、
図10(B)に示されるように、第1弾心構成体111Aと第2弾心構成体111Bの両方と嵌合してもよい。
【0048】
(3)上記第3実施形態において、
図11に示されるように、第1弾心構成体111Aの後端面に突部111Tを形成するとともに、第2弾心構成体111Bの前端面に突部111Tと係合する凹部111Hを形成してもよい。そして、第1弾心構成体111Aの突部111Tと第2弾心構成体111Bの凹部とを係合させて位置決めしてもよい。なお、第1弾心構成体111Aの後端面に凹部、第2弾心構成体111Bの前端面に突部を形成してもよい。
【0049】
(4)
図12に示される小火器用弾丸10Xのように、被甲21Xの被甲ストレート部22Xと被甲尾部24Xとの間に、被甲尾部24X側で段付き状に縮径される段差部21Dが形成された構成であってもよい。この場合、弾心11Xは、弾心ストレート部12Xと弾心頭部13Xのみで構成され、上記実施形態で示したような後側で縮径される円錐台形状の弾心尾部14,114を有しない。そして、被甲尾部24Xは、弾心ストレート部12Xの後端部と嵌合し、弾心ストレート部12Xの非嵌合部分より前側に配された部分と被甲ストレート部22Xとの間に環状の隙間32が形成されている。