特許第6676568号(P6676568)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676568抄紙用ドライヤーカンバス及び抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676568
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】抄紙用ドライヤーカンバス及び抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法
(51)【国際特許分類】
   D21F 7/08 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   D21F7/08 A
【請求項の数】3
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-48843(P2017-48843)
(22)【出願日】2017年3月14日
(65)【公開番号】特開2017-172100(P2017-172100A)
(43)【公開日】2017年9月28日
【審査請求日】2019年3月22日
(31)【優先権主張番号】特願2016-55516(P2016-55516)
(32)【優先日】2016年3月18日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591197507
【氏名又は名称】愛媛製紙株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002923
【氏名又は名称】ダイワボウホールディングス株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】306024090
【氏名又は名称】ダイワボウプログレス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】石川 健治
(72)【発明者】
【氏名】宮國 修治
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−360102(JP,A)
【文献】 特開2008−081923(JP,A)
【文献】 特開2006−257602(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0207739(US,A1)
【文献】 特開平09−313835(JP,A)
【文献】 特開2004−218186(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2006/0162889(US,A1)
【文献】 特開2001−262484(JP,A)
【文献】 特開2002−155489(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第60237547(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D21B−D21J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
経糸若しくはスパイラルコイルと緯糸を織成した抄紙用ドライヤーカンバスであって、
前記抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面には凹部が形成されており、凹部の平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の範囲であり、当該凹部の表面には汚染防止剤が付着されていることを特徴とする抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項2】
前記経糸若しくはスパイラルコイル及び緯糸のいずれもモノフィラメントである請求項1に記載の抄紙用ドライヤーカンバス。
【請求項3】
抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法であって、
経糸若しくはスパイラルコイルと緯糸を織成した抄紙用ドライヤーカンバスにおいて、接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の範囲の凹部を形成した後、
前記凹部の表面に汚染防止剤を付着させることで、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側への汚れの付着を抑制することを特徴とする抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抄紙機で使用される抄紙用ドライヤーカンバス及び抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙との接触面積が多い抄紙用ドライヤーカンバス(以下、カンバスとも記す。)は、ピッチカス等の汚れがカンバス表面に付着しやすい。この汚れがカンバス表面に堆積していくと接触する紙にマーク欠点の発生や汚れが混入し、問題となる。その対策として、例えば、特許文献1では、カンバスにピッチカス等の汚れを付着させないために操業中カンバスに抄紙機用汚染防止剤を噴霧して、汚れが付着しにくい状態で使用することが提案されている。また、特許文献2では、基布層と該基布層にバット繊維がニードリングによって絡合一体化された表層を少なくとも備える製紙用フェルトにおいて、研磨した表層の製紙面に所定の溶液を塗布、含浸もしくは散布して表面処理層を形成することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−213587号公報
【特許文献2】特開2011−162911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の操業中にカンバスに抄紙機用汚染防止剤を噴霧する方法では、汚染防止剤の噴霧量が汚れの堆積に追いつかない場合があった。また、特許文献2に記載の製紙用フェルトでは、基布層とバット繊維とをニードリングによって一体化された構造であるため、繊維の隙間に汚れが堆積し、通気度を低下させるという問題があった。
【0005】
本発明は、前記問題を解決するため、接紙面側の表面への汚れの付着を軽減し、汚染防止剤の使用量を低減することができる抄紙用ドライヤーカンバス及び抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、経糸若しくはスパイラルコイルと緯糸を織成した抄紙用ドライヤーカンバスであって、前記抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面には凹部が形成されており、凹部の平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の範囲であり、当該凹部の表面に汚染防止剤が付着されていることを特徴とする抄紙用ドライヤーカンバスに関する。
【0007】
本発明は、また、抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法であって、経糸若しくはスパイラルコイルと緯糸を織成した抄紙用ドライヤーカンバスにおいて、接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の範囲の凹部を形成した後、前記凹部の表面に汚染防止剤を付着させることで、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側への汚れの付着を抑制することを特徴とする抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、接紙面側の表面への汚れの付着を軽減し、汚染防止剤の使用量を低減することができる抄紙用ドライヤーカンバス及び抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は本発明の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。
図2図2は本発明の他の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。
図3図3は本発明の他の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。
図4図4は本発明の他の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。
図5図5は抄紙用ドライヤーカンバスを研磨する一例の方法の説明図である。
図6図6A−Cは、剥離試験用サンプルへ透明粘着テープを貼り付ける方法の説明図である。
図7図7A及びBは、剥離試験の説明図である。
図8図8は実施例1の抄紙用ドライヤーカンバスにおける汚染防止剤を付与する前の経糸の断面写真である。
図9図9は比較例1の抄紙用ドライヤーカンバスにおける汚染防止剤を付与する前の抄紙用ドライヤーカンバスにおける経糸の断面写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態において、抄紙用ドライヤーカンバスは経糸と緯糸を織成した抄紙用ドライヤーカンバスであり、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の経糸及び/又は緯糸の表面には凹部が形成されており、凹部の平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の範囲である。本発明の他の一実施形態において、抄紙用ドライヤーカンバスは経糸の代わりにスパイラルコイルを使用したスパイラルカンバスであり、この場合、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側のスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の凹部が形成される。なお、経糸の代わりにスパイラルコイルを用いたスパイラルカンバスの場合、緯糸は芯線とも称される。本発明において、「凹部の平均深さ」は、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の断面において、任意に選択した5カ所の糸断面をマイクロスコープで300倍拡大して観察し、各糸断面において、任意に選択した5か所の凹部の深さを測定し、これらを平均したものをいう。マイクロスコープとしては、例えば、ハイロック社製の「KH−3000」などを用いることができる。前記凹部の平均深さが0.022mm未満であると、汚染防止剤を用いた際の接紙面側の表面への汚れの付着を軽減することができず、それゆえ、汚染防止剤の使用量を低減することもできない。一方、前記凹部の平均深さが0.090mmを超えると、抄紙用ドライヤーカンバスの強度が低下し、耐久性が劣る恐れがある。汚れの付着の軽減及び汚染防止剤の使用量を低減する観点から、前記凹部の平均深さは、0.025mm以上であることが好ましく、0.030mm以上であることがより好ましく、0.035mm以上であることがさらに好ましい。また、強度の観点から、前記凹部の平均深さは、0.085mm以下であることが好ましく、0.080mm以下であることがより好ましく、0.075mm以下であることがさらに好ましい。
【0011】
前記抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に形成された凹部の表面には、汚染防止剤が付着されている。前記抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の範囲の凹部を形成するとともに、該凹部の表面に汚染防止剤を付着させることで、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の表面へ汚れが堆積することを抑制することができる。
【0012】
前記汚染防止剤としては、特に限定されず、市販の抄紙機用汚染防止剤を含む各種抄紙機用汚染防止剤を用いることができる。例えば、植物油、鉱物油、合成油、シリコーン油、及びワックスなどを用いることができる。具体的には、メンテック社製の「クリーンキーパー」、ダイキン工業社製のフッ素系撥水性材料「TG−470B」、信越シリコン製の「シリコンエマルジョン」等が挙げられる。凹部の表面への汚染防止剤の付着は、特に限定されないが、例えば、汚染防止剤の溶液をカンバスの接紙面側の表面に塗布、含浸又は散布することで行うことができる。接紙面側の表面に汚染防止剤を付着させることで、凹部の表面に汚染防止剤が付着する。
【0013】
前記経糸、スパイラルコイル及び緯糸の素材は、特に限定されず、例えば、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン等からなる群から選ばれる一種以上の合成樹脂を用いることができる。前記経糸、スパイラルコイル及び緯糸の素材は、耐久性の観点から、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルであることが好ましい。また、前記経糸又は緯糸のいずれも合成樹脂からなるモノフィラメント、合成樹脂からなるマルチフィラメント等を用いることができるが、強度の観点から、モノフィラメントであることが好ましい。
【0014】
前記経糸、スパイラルコイルを構成するスパイラル線条及び緯糸の断面形状は、特に限定されないが、例えば、円形、楕円形又は扁平形であることが好ましい。経糸及びスパイラルコイルを構成するスパイラル線条は、扁平断面のモノフィラメント又は楕円断面のモノフィラメントであることが好ましく、緯糸は、円形断面のモノフィラメントであることが好ましい。円形断面のモノフィラメントの場合、直径が0.2〜1.2mmであることが好ましく、0.4〜0.9mmであることがより好ましい。扁平断面のモノフィラメントの場合は、長辺が0.4〜1.2mmであることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.7mmであり、短辺は0.2〜0.8mmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.6mmである。楕円断面のモノフィラメントの場合、長径が0.4〜1.2mmであることが好ましく、より好ましくは0.4〜0.7mmであり、短径は0.2〜0.8mmであることが好ましく、より好ましくは0.2〜0.6mmである。これにより抄紙用ドライヤーカンバスの表面の均一性を保持しつつ、汚染防止剤と併用した際の防汚性を向上させることができる。
【0015】
前記抄紙用ドライヤーカンバスは、一重織であってもよく、二重織以上の多重織であってもよい。また、織組織も特に限定されず、例えば、平織、綾織、朱子織、及び変織等のその他の組織、並びにこれらの組合せのいずれであってもよい。前記抄紙用ドライヤーカンバスが平織の場合、接紙面側において、経糸及び緯糸に凹部が形成される。経糸の代わりにスパイラルコイルを用いる場合、織組織はスパイラルとなる。
【0016】
本発明において、抄紙用ドライヤーカンバスの単位長さあたりの糸の本数(密度)は、特に限定されないが、経糸が8〜130本/2.54cmであることが好ましく、より好ましくは30〜130本/2.54cmであり、さらに好ましくは40〜130本/2.54cmである。緯糸は、8〜80本/2.54cmであることが好ましく、より好ましくは25〜60本/2.54cmであり、さらに好ましくは30〜60本/2.54cmである。
【0017】
以下、図面を参照しながら、本発明の抄紙用ドライヤーカンバスについて詳細に説明する。但し、本発明は、以下の図面に示された実施形態に限定されるものではない。
【0018】
図1は本発明の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。該実施形態のカンバス10は、経糸1と緯糸2、3を織成した2/1綾組織の二重織である。カンバス10の接紙面側の経糸1の表面には平均深さが0.022〜0.090mmの範囲の凹部が形成されており、該凹部の表面には汚染防止剤が付着されている(図示なし)。該実施形態のカンバス10において、緯糸1は扁平断面のモノフィラメントであり、緯糸2及び3は、いずれも、円形断面のモノフィラメントであり、接紙面側の緯糸2の線径は、機械面側の緯糸3の線径より細い。
【0019】
図2は本発明の他の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。該実施形態のカンバス110は、経糸111と緯糸112を織成した2/1綾組織の二重織である。カンバス110の接紙面側の経糸111の表面には平均深さが0.022〜0.090mmの範囲の凹部が形成されており、該凹部の表面には汚染防止剤が付着されている(図示なし)。
【0020】
図3は本発明の他の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。該実施形態のカンバス210は、経糸211と緯糸212を織成したヨコ二重織である。カンバス210の接紙面側の経糸211の表面には平均深さが0.022〜0.090mmの範囲の凹部が形成されており、該凹部の表面には汚染防止剤が付着されている(図示なし)。
【0021】
図4は本発明の他の一実施形態の抄紙用ドライヤーカンバスの緯糸方向の断面模式図である。該実施形態のカンバス310は、スパイラルコイル311と緯糸312を織成したスパイラル織物である。カンバス310の接紙面側のスパイラルコイル311の表面には平均深さが0.022〜0.090mmの範囲の凹部が形成されており、該凹部の表面には汚染防止剤が付着されている(図示なし)。
【0022】
本発明において、抄紙用ドライヤーカンバスを構成する織物の接紙面側の表面を研磨加工することにより、接紙面側の表面に突出している経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に凹部を形成することができる。研磨加工時に、凹部の深さが所定の範囲になるように研磨度を調整すればよい。研磨加工は、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、研磨ロールにて研磨加工することができる。また、例えば、図5に示されているアムスラー式試験機で、研磨加工を行うことができる。該アムスラー試験機は、支持台21、プーリー22a及び22b、固定具23、重り24、摩擦子26、並びに回転ロール27を備えている。支持台21の上にカンバス10を配置し、カンバス10の一方の端部をプーリー22aを介して固定具23で固定し、カンバス10の他の一方の端にはプーリー22bを介して重り24を掛けた後、回転ロール27により、サンドペーパー25を貼合した摩擦子26を、経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸と平行な方向に沿って水平移動させ、カンバスの接紙面側の表面を研磨することで、接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に凹部を形成する。所定の種類のサンドペーパーを用い、所定回数研磨することにより、凹部の平均深さを所定のサイズにすることができる。
【0023】
所定の平均深さの凹部を形成しつつ、糸の強度の低下を抑える観点から、抄紙用ドライヤーカンバスは、接紙面側において、経糸が少なくとも2本の緯糸を跨ぐ長浮き構造を有することが好ましい。このような抄紙用ドライヤーカンバスとしては、例えば、2/1綾組織の二重織が挙げられる。
【0024】
本発明において、テープ剥離強力を用い、カンバス表面への汚れの付着しにくさ、すなわち防汚性能を評価することができる。テープ剥離強力が低いほど、カンバス表面へ汚れが付着しにくく、汚れの付着が軽減されていることを意味する。本発明において、テープ剥離強力は、180度テープ剥離試験にて測定する。本発明において、180度テープ剥離試験は、JIS K 6854に準じ、後述するとおりに行う。
【0025】
本発明の抄紙用ドライヤーカンバスの汚染防止方法では、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の経糸若しくはスパイラルコイル及び/又は緯糸の表面に平均深さが0.022mm以上0.090mm以下の範囲の凹部を形成した後、該凹部の表面に汚染防止剤を付着させることで、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の表面へ汚れが堆積することを抑制することができる。なお、抄紙用ドライヤーカンバスの接紙面側の表面に汚染防止剤を付着させることで、凹部にも汚染防止剤が付着する。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0027】
(実施例1)
<凹部の形成>
経糸1としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度5980dtex、扁平断面、短辺0.57mm、長辺0.88mm)を、緯糸2としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度2235dtex、円形断面、直径0.45mm)を、緯糸3としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度6950dtex、円形断面、直径0.80mm)を用い、図1に示すように、2/1綾組織のヨコ二重織りのカンバス10(厚み1.88mm)を作製した。接紙面側に緯糸2が配置されるようにした。織物の単位長さあたりの糸の本数(密度)は、経糸は31.0本/2.54cmとし、緯糸は、33.0本/2.54cmとした。得られた織物(カンバス)の接紙面側の表面において、経糸が突出していた。次に、カンバス10の接紙面側の表面を図5に示されているアムスラー試験機で研磨加工した。具体的には、支持台21の上にカンバス10を配置し、カンバス10の一方の端部をプーリー22aを介して固定具23で固定し、カンバス10の他の一方の端にはプーリー22bを介して重り24を掛けた後、回転ロール27により、サンドペーパー25を貼合した摩擦子26を、経糸と平行な方向に沿って水平移動させ、カンバスの接紙面側の表面を研磨することで、接紙面側の経糸の表面に凹部を形成した。サンドペーパーとして120番を用い、研磨回数(摩擦子の水平移動の往復回数)を15回とした。研磨加工により、カンバスの接紙面側の経糸の表面に凹部が形成された。
<汚染防止剤の付与>
上記で得られた接紙面側の経糸の表面に凹部が形成されたカンバスを抄紙機用汚染防止剤(メンテック社製、品名「クリーンキーパー」、以下において、「汚染防止剤1」とも記す。)を導入した槽に漬けて凹部の表面に汚染防止剤を付着させた後、治具で挟んで吊るして、カンバスの緯糸が床面と水平になるようにし、液が落ちなくなるまで5分間放置した。その後、乾燥機(TABAI社製、「GEER OVEN GPHH−200」)に入れて100℃で5分間乾燥した。汚染防止剤1の付着量は7.02g/m2であった。汚染防止剤1は、植物油、鉱物油、シリコーン油及びワックスを含み、前記槽には汚染防止剤1を100質量%導入した。
【0028】
(実施例2)
アムスラー試験機での研磨加工時に、180番のサンドペーパーを用い、研磨回数を10回とした以外は、実施例1と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は7.01g/m2であった。
【0029】
(実施例3)
アムスラー試験機での研磨加工時に、80番のサンドペーパーを用い、研磨回数を10回とした以外は、実施例1と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は7.09g/m2であった。
【0030】
(比較例1)
研磨加工を行わない以外は、実施例1と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は6.67g/m2であった。
【0031】
(比較例2)
アムスラー試験機での研磨加工時に、240番のサンドペーパーを用い、研磨回数を10回とした以外は、実施例1と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は
6.85g/m2であった。
【0032】
(比較例3)
汚染防止剤を付与していない以外は、比較例1と同様にしてカンバスを作製した。
【0033】
(比較例4)
汚染防止剤を付与していない以外は、比較例2と同様にしてカンバスを作製した。
【0034】
(比較例5)
汚染防止剤を付与していない以外は、実施例1と同様にしてカンバスを作製した。
【0035】
(実施例4)
汚染防止剤として、ダイキン工業社製のフッ素系撥水性材料「TG−470B」(以下において、「汚染防止剤2」とも記す。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は3.21g/m2であった。なお、汚染防止剤2は、フッ素系ポリマー、トリプロピレングリコール及び乳化剤を含み、前記槽には汚染防止剤2及び水(汚染防止剤2:水=10質量部:90質量部)を導入した。
【0036】
(実施例5)
汚染防止剤として、信越シリコン製の「シリコンエマルジョン」(以下において、「汚染防止剤3」とも記す。)を用いた以外は、実施例1と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は8.74g/m2であった。なお、汚染防止剤3は、シリコーンオイル、シリカ及び乳化剤を含み、前記槽には汚染防止剤3及び水(汚染防止剤3:水=20質量部:80質量部)を導入した。
【0037】
(比較例6)
研磨加工を行わない以外は、実施例4と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は3.09g/m2であった。
【0038】
(比較例7)
研磨加工を行わない以外は、実施例5と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は8.33g/m2であった。
【0039】
(実施例6)
経糸111としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度3385dtex、円形断面、直径0.55mm)を、緯糸112としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度3934dtex、円形断面、直径0.60mm)を用い、図2に示すように、2/1綾組織のヨコ二重織りのカンバス110(厚み
2.08mm)を作製した。織物の単位長さあたりの糸の本数(密度)は、経糸は55.0本/2.54cmとし、緯糸は、31.8本/2.54cmとした。その後、研磨加工及び汚染防止剤1の付与を実施例1と同様に行った。汚染防止剤1の付着量は9.95g/m2であった。
【0040】
(実施例7)
汚染防止剤として、汚染防止剤2を用いた以外は、実施例6と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は3.90g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤2及び水(汚染防止剤2:水=10質量部:90質量部)を導入した。
【0041】
(実施例8)
汚染防止剤として、汚染防止剤3を用いた以外は、実施例6と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は10.99g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤3及び水(汚染防止剤3:水=20質量部:80質量部)を導入した。
【0042】
(比較例8)
研磨加工を行わず、汚染防止剤を付与していない以外は、実施例6と同様にしてカンバスを作製した。
【0043】
(比較例9)
汚染防止剤を付与していない以外は、実施例6と同様にしてカンバスを作製した。
【0044】
(比較例10)
研磨加工を行わない以外は、実施例6と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は9.13g/m2であった。
【0045】
(比較例11)
研磨加工を行わない以外は、実施例7と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は3.75g/m2であった。
【0046】
(比較例12)
研磨加工を行わない以外は、実施例8と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は10.16g/m2であった。
【0047】
(実施例9)
経糸111としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度2830dtex、扁平断面、短辺0.38mm、長辺0.57mm)を、緯糸112としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度8804dtex、円形断面、直径0.90mm)を用い、図2に示すように、2/1綾組織のヨコ二重織りのカンバス110(厚み2.28mm)を作製した。織物の単位長さあたりの糸の本数(密度)は、経糸は48.6本/2.54cmとし、緯糸は、28.2本/2.54cmとした。その後、研磨加工及び汚染防止剤1の付与を実施例1と同様に行った。汚染防止剤1の付着量は10.99g/m2であった。
【0048】
(実施例10)
汚染防止剤として、汚染防止剤2を用いた以外は、実施例9と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は4.05g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤2及び水(汚染防止剤2:水=10質量部:90質量部)を導入した。
【0049】
(実施例11)
汚染防止剤として、汚染防止剤3を用いた以外は、実施例9と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は12.18g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤3及び水(汚染防止剤3:水=20質量部:80質量部)を導入した。
【0050】
(比較例13)
研磨加工を行わず、汚染防止剤を付与していない以外は、実施例9と同様にしてカンバスを作製した。
【0051】
(比較例14)
汚染防止剤を付与していない以外は、実施例9と同様にしてカンバスを作製した。
【0052】
(比較例15)
研磨加工を行わない以外は、実施例9と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は10.80g/m2であった。
【0053】
(比較例16)
研磨加工を行わない以外は、実施例10と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は3.84g/m2であった。
【0054】
(比較例17)
研磨加工を行わない以外は、実施例11と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は10.25g/m2であった。
【0055】
(実施例12)
経糸111としてポリフェニレンアルファイド(PPS)モノフィラメント(繊度2799dtex、扁平断面、短辺0.38mm、長辺0.57mm)を、緯糸112としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度8426dtex、円形断面、直径0.90mm)を用い、図2に示すように、2/1綾組織のヨコ二重織りのカンバス110(厚み2.38mm)を作製した。織物の単位長さあたりの糸の本数(密度)は、経糸は48.9本/2.54cmとし、緯糸は、28.1本/2.54cmとした。その後、研磨加工及び汚染防止剤1の付与を実施例1と同様に行った。汚染防止剤1の付着量は11.86g/m2であった。
【0056】
(実施例13)
汚染防止剤として、汚染防止剤2を用いた以外は、実施例12と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は4.43g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤2及び水(汚染防止剤2:水=10質量部:90質量部)を導入した。
【0057】
(実施例14)
汚染防止剤として、汚染防止剤3を用いた以外は、実施例12と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は11.92g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤3及び水(汚染防止剤3:水=20質量部:80質量部)を導入した。
【0058】
(比較例18)
研磨加工を行わず、汚染防止剤を付与していない以外は、実施例12と同様にしてカンバスを作製した。
【0059】
(比較例19)
汚染防止剤を付与していない以外は、実施例12と同様にしてカンバスを作製した。
【0060】
(比較例20)
研磨加工を行わない以外は、実施例12と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は10.99g/m2であった。
【0061】
(比較例21)
研磨加工を行わない以外は、実施例13と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は4.24g/m2であった。
【0062】
(比較例22)
研磨加工を行わない以外は、実施例14と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は11.54g/m2であった。
【0063】
(実施例15)
経糸211としてナイロン610モノフィラメント(繊度3206dtex、円形断面、直径0.60mm)を、緯糸212としてナイロン610モノフィラメント(繊度3206dtex、円形断面、直径0.60mm)を用い、図3に示すように、ヨコ二重織りのカンバス210(厚み2.35mm)を作製した。織物の単位長さあたりの糸の本数(密度)は、経糸は50.6本/2.54cmとし、緯糸は、30.2本/2.54cmとした。その後、研磨加工及び汚染防止剤1の付与を実施例1と同様に行った。汚染防止剤1の付着量は6.66g/m2であった。
【0064】
(実施例16)
汚染防止剤として、汚染防止剤2を用いた以外は、実施例15と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は1.50g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤2及び水(汚染防止剤2:水=10質量部:90質量部)を導入した。
【0065】
(実施例17)
汚染防止剤として、汚染防止剤3を用いた以外は、実施例15と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は5.20g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤3及び水(汚染防止剤3:水=20質量部:80質量部)を導入した。
【0066】
(比較例23)
研磨加工を行わず、汚染防止剤を付与していない以外は、実施例15と同様にしてカンバスを作製した。
【0067】
(比較例24)
汚染防止剤を付与していない以外は、実施例15と同様にしてカンバスを作製した。
【0068】
(比較例25)
研磨加工を行わない以外は、実施例15と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は2.77g/m2であった。
【0069】
(比較例26)
研磨加工を行わない以外は、実施例16と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は1.31g/m2であった。
【0070】
(比較例27)
研磨加工を行わない以外は、実施例17と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は4.15g/m2であった。
【0071】
(実施例18)
スパイラルコイル311としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度5323dtex、円形断面、直径0.70mm)を、緯糸312としてポリエチレンテレフタレート(PET)モノフィラメント(繊度8804dtex、円形断面、直径0.90mm)を用い、図4に示すように、スパイラル(織物組織)のカンバス310(厚み2.78mm)を作製した。織物の単位長さあたりの糸の本数(密度)は、経糸は16.5本/2.54cmとし、緯糸は、5.6本/2.54cmとした。その後、研磨加工及び汚染防止剤1の付与を実施例1と同様に行った。汚染防止剤1の付着量は13.55g/m2であった。
【0072】
(実施例19)
汚染防止剤として、汚染防止剤2を用いた以外は、実施例18と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は2.57g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤2及び水(汚染防止剤2:水=10質量部:90質量部)を導入した。
【0073】
(実施例20)
汚染防止剤として、汚染防止剤3を用いた以外は、実施例18と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は7.02g/m2であった。なお、前記槽には汚染防止剤3及び水(汚染防止剤3:水=20質量部:80質量部)を導入した。
【0074】
(比較例28)
研磨加工を行わず、汚染防止剤を付与していない以外は、実施例18と同様にしてカンバスを作製した。
【0075】
(比較例29)
汚染防止剤を付与していない以外は、実施例18と同様にしてカンバスを作製した。
【0076】
(比較例30)
研磨加工を行わない以外は、実施例18と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤1の付着量は12.21g/m2であった。
【0077】
(比較例31)
研磨加工を行わない以外は、実施例19と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤2の付着量は2.27g/m2であった。
【0078】
(比較例32)
研磨加工を行わない以外は、実施例20と同様にしてカンバスを作製した。汚染防止剤3の付着量は6.00g/m2であった。
【0079】
実施例1〜20における汚染防止剤を付与する前のカンバスのサンプルを用い、接紙面側の経糸又はスパイラルコイルの表面に形成された凹部の平均深さを下記のように測定算出した。その結果を下記表1〜表3に示した。図8及び図9に、それぞれ、実施例1及び比較例1の抄紙用ドライヤーカンバスにおける汚染防止剤を付与する前の経糸の断面写真を示した。
【0080】
(凹部の平均深さ)
カンバスの接紙面側の経糸において、任意に選択した5か所の断面をマイクロスコープ(ハイロックス社製、型番「KH−3000」)で300倍拡大して観察し、各断面において、任意に選択した5つの凹部の深さを測定し、これらを平均した。
【0081】
実施例1〜20及び比較例1〜32のカンバスのテープ剥離強力を下記のように180度テープ剥離試験にて測定した。その結果を下記表2〜表3に示した。
【0082】
(180度テープ剥離試験)
JIS K 6854に準じて180度テープ剥離試験を行った。カンバスを、図6Aに示すように、巾(W1)が70mm、長さ(L1)が125mmになるように裁断し、剥離試験用サンプル30を得た。剥離試験用サンプル30の接紙面側に、図6Bに示されている透明テープ40を貼り付けた。具体的には、図6Cに示しているように、マークテスト用ローラー機(ダイワボウプログレス社製)の上下二段のローラー100aと100bの間に剥離試験用サンプル30と透明粘着テープ40(ニチバン株式会社製、ポリエステルテープ、長さ(L2):180mm、巾(W2):50mm)を配置して一定荷重200(線圧7.8kg/cm)にて挟み込みながらローラー間を3回通過させて剥離試験用サンプル30と透明粘着テープ40を貼り付けた。次に、図7A及び図7Bに示すように、透明粘着テープ40の剥離試験用サンプル30と貼り付けた端部とは反対側の端部はチャックの挟みしろとして長さ45mmを残し、つかみ部として巾(W3)60mm、長さ(L3)90mm程度の紙50を張り付け、180°折り返して置いた。透明粘着テープ40を張り付けた剥離試験用サンプル30はテンシロン引張試験機(オリエンテック社製、型番「RTC1310A」)にて、上下が長手方向となるようチャックでつかみ、つかみ間距離は100mm、引張速度200mm/min、テープ引きはがし距離を50mmとしてテープの引きはがし強力を計測した。テープの引きはがし強力を積分平均し、テープ剥離強力とした。
【0083】
【表1】
【0084】
【表2】
【0085】
【表3】
【0086】
表1〜表3の結果から、接紙面側の経糸の表面における凹部の平均深さが0.022mm以上であり、該凹部の表面に汚染防止剤が付着された実施例1〜20のカンバスは、接紙面側の表面への汚れの堆積を軽減することが分かった。また、実施例と比較例の対比から、本発明のカンバスは、接紙面側の経糸の表面に所定の平均深さの凹部が形成されているとともに、該凹部の表面に汚染防止剤が付着されていることで、接紙面側の表面への汚れの堆積を軽減する特異の効果を奏することが分かる。
【0087】
汚染防止剤を付与する前の実施例1及び比較例1のカンバスを抄紙機のドライヤーカンバスとして使用し、抄紙機に対して汚染防止剤の溶液(メンテック社製、品名「クリーンキーパー」)を供給しながら製紙したところ、比較例1のカンバスの場合、ピッチ除去作業を一箇所につきカンバス3周程度走行させたが、実施例1のカンバスの場合、一箇所につきカンバス1周程度走行させることでピッチ除去が可能であった。また、比較例1のカンバスの場合、汚染防止剤の供給量が10mL/分であったが、実施例1のカンバスの場合、汚染防止剤の供給量を8mL/分に低減することができた。なお、抄紙機に対して汚染防止剤の溶液を供給することで、カンバスの接紙面側に汚染防止剤の溶液が散布され、接紙面側の凹部の表面に汚染防止剤が付着される。
【符号の説明】
【0088】
1、111、211、311 経糸
2、3、112、212、312 緯糸
10、110、210、310 カンバス
20 アムスラー試験機
21 支持台
22a、22b プーリー
23 固定具
24 重り
25 サンドペーパー
26 摩擦子
27 回転ロール
30 剥離試験用サンプル
40 透明粘着テープ
50 紙
100a、100b ローラー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9