特許第6676584号(P6676584)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676584
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】ポリペプチドワクチン
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/00 20060101AFI20200330BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20200330BHJP
   A61P 35/02 20060101ALI20200330BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 38/16 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 38/08 20190101ALI20200330BHJP
   A61K 38/10 20060101ALI20200330BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20200330BHJP
   C07K 16/32 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
   A61K39/00 HZNA
   A61P35/00
   A61P35/02
   A61P35/04
   A61K38/16
   A61K38/08
   A61K38/10
   !C12N15/11
   !C07K16/32
【請求項の数】5
【外国語出願】
【全頁数】97
(21)【出願番号】特願2017-106379(P2017-106379)
(22)【出願日】2017年5月30日
(62)【分割の表示】特願2014-529643(P2014-529643)の分割
【原出願日】2012年8月29日
(65)【公開番号】特開2017-186352(P2017-186352A)
(43)【公開日】2017年10月12日
【審査請求日】2017年6月29日
(31)【優先権主張番号】61/531,290
(32)【優先日】2011年9月6日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】201201158-1
(32)【優先日】2012年2月17日
(33)【優先権主張国】SG
(31)【優先権主張番号】201204644-7
(32)【優先日】2012年6月21日
(33)【優先権主張国】SG
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】503231882
【氏名又は名称】エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100120112
【弁理士】
【氏名又は名称】中西 基晴
(72)【発明者】
【氏名】ツォン,チ
【審査官】 六笠 紀子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2008/008311(WO,A1)
【文献】 国際公開第2010/016806(WO,A1)
【文献】 特表2010−508861(JP,A)
【文献】 特表2011−503174(JP,A)
【文献】 特表2010−535503(JP,A)
【文献】 Cancer Biology & Therapy,2008年,7(5),p.750-757
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 38/00−38/58
WPI
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
20〜150アミノ酸、好ましくは20〜100アミノ酸を有する細胞内腫瘍性タンパク質の断片であるポリペプチドを含む、癌の処置または予防用の医薬組成物であって、ポリペプチドが、それを必要とする対象において抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体の産生を刺激し、細胞内腫瘍性タンパク質が、VHZであり、癌がVHZの過剰発現と関係する、またはVHZの過剰発現により引き起こされる、前記医薬組成物。
【請求項2】
ポリペプチドがVHZからの複数の断片を含む、請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
癌転移を予防または低減するための、請求項1または2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
VHZを発現する原発癌を有する患者に投与するための、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項5】
癌が以下:乳癌、肝細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、血液癌、骨癌、脳腫瘍、女性生殖器系の癌、男性生殖器系の癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児横紋筋肉腫、小児期肉腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸直腸癌、結腸癌、子宮内膜癌、子宮内膜肉腫、食道癌、眼癌、胆嚢癌、胃癌、胃腸管癌、有毛細胞白血病、頭頸部癌、ホジキン病、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、肝臓癌、肺癌、悪性繊維性組織球腫、悪性胸腺腫、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経系癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、原発性CNSリンパ腫、前立腺癌、直腸癌、呼吸器系、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、泌尿器系癌、子宮肉腫、腟癌、血管系、ワルデンストレームマクログロブリン血症およびウィルムス腫瘍からなる群より選択される、請求項1〜に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は細胞生物学、分子生物学および生化学の分野に関する。この発明は医学の分野にも関する。特に、それは疾患、特に癌の予防および処置、ならびにそのような使用のための組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は過去20年間熱烈な研究の対象となってきた。しかし、癌転移を引き起こす基礎となる原因は不十分にしか理解されておらず、ほとんどのタイプの癌予防はまだ限られている。癌転位を予防するための効率的な方法が緊急に必要とされている。
【0003】
抗体に基づく療法は、癌の処置に有効であることが証明されてきた;しかし、このアプローチは伝統的に癌細胞により発現される細胞外タンパク質または分泌タンパク質に限られてきた1,2。従って、いくつかの可能性のある癌マーカーまたは腫瘍マーカーおよび癌抗原が文献において同定されており、それらの一部に対して抗体療法が開発されてきた。
【0004】
例えば、周知の癌療法であるHerceptin(トラスツズマブ)はHER2陽性癌細胞を殺すことができるモノクローナル抗体である。Herceptinは癌細胞上のHER2(ヒト上皮成長因子受容体2)抗原に結合する。同様に、ベバシズマブ(Bevacizumab)(Avastins(商標))は新しい血管の形成に関わっていることが示されている成長因子の1つである血管内皮成長因子(VEGF)を標的としたモノクローナル抗体である。血管新生を阻害することにより、ベバシズマブは腫瘍細胞が一定の血液の供給を受けて腫瘍が生存するために必要な酸素および栄養素を受け取ることを妨げる。
【0005】
しかし、様々な癌に関する抗体療法の適用可能性は普遍的ではない。抗体療法の一般的な使用を妨げてきた制限の1つは、抗体分子の大きなサイズおよび結果としてそれらが形質膜または細胞膜を越えることができないことである。修飾がない場合、抗体(モノクローナル抗体が含まれる)は一般的に宿主細胞の表面または外部に位置する癌抗原の標的化にのみ適している14,15。上記の例において、HER2受容体は細胞表面上に位置しており、従ってHerceptinによる抗体結合のために接近可能である。同様に、VEGFは血流中に分泌され、ベバシズマブにより結合されることができる。
【0006】
ほとんどの発癌タンパク質は細胞内タンパク質(例えば細胞内ホスファターゼ、細胞内キナーゼ、転写因子等)であり、抗体療法のアプローチにより探求されていない(under−explored)ままであった。抗体は大きすぎて細胞膜を透過することができないという長く保持されてきた考え方は、抗体療法の技術が細胞内タンパク質の標的化において用いられることを妨げてきた。
【0007】
従って、癌転移を処置および予防する有効な方法に関する緊急の必要性が存在する。抗体は今まで、抗体は細胞膜を越えることができず、結果的にその抗原に接近できないため、細胞内抗原または癌マーカーを標的とするために用いられてこなかった。
【0008】
抗体に基づく療法はより優れた特異性を、従って標準的な化学療法計画よりも向上した有効性を有する。抗体は大きすぎて細胞内の(細胞の内部の)部位に接近することができないと考えられているため、抗体療法は伝統的に癌細胞により発現される細胞外(細胞の外側または細胞表面)タンパク質を標的としてきた。しかし、発癌タンパク質の大きなプ
ールが細胞内に見付かっており(例えば細胞内ホスファターゼ/キナーゼおよび転写因子)、従って抗体療法に関して追求されてこなかった。
【0009】
我々は以前に3種類の異なる抗体が細胞内タンパク質:癌関連ホスファターゼであるPRL−3(再生肝のホスファターゼ(phosphatase of regenerating liver)3);一般的なレポーターであるEGFP(強化緑色蛍光タンパク質);およびポリオーマウイルス中型T腫瘍性タンパク質であるmT(ポリオーマウイルス中型T)をそれぞれ標的とすることができることを示した(国際公開第2011/065923号)。しかし、PRL−3細胞内ホスファターゼ(酵素)のみがヒトの癌転移に結び付けられており(Saha et al., Science 294; 1343 (2001)およびWang et al., Cancer cell 18; 52-63 (2010)参照)、他の2種類の細胞内タンパク質(EGFPおよび中型T)は抗体が細胞内タンパク質を標的とすることができるという一般的な現象を解明するために用いられている。しかし、腫瘍性タンパク質の癌ワクチンとしての使用は議論の余地があり、より特異的であり、副作用を低減するために相同性タンパク質とのより低い交差反応を示し、一方で類似の、または向上した療法的結果を達成する向上した腫瘍性タンパク質癌ワクチンを開発する必要性が存在する。
【0010】
発癌性変異は多数のヒトの癌への寄与において非常に一般的である。しかし、これらの発癌性変異はしばしば細胞内タンパク質または細胞表面タンパク質の細胞内ドメインにおいて検出される。我々の最近の研究は、細胞内腫瘍性タンパク質は療法用抗体またはペプチドワクチン接種により標的とすることができるという常識にとらわれない概念を示唆している。この新しい考察において、それらの特異的な変異に対する抗体の生成または変異体ペプチドを用いたワクチン接種は、それぞれの変異した標的を発現している癌細胞を特異的に除去するが、正常な組織は無傷で残すことができるであろう。しかし、発見された無数の点変異に対して特異的にインビトロで次々に抗体を作製することは今のところ非常に困難であり、現実的でない。従って、変異体ペプチドを用いるワクチン接種が選択肢となり得るであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】国際公開第2011/065923号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Saha et al., Science 294; 1343 (2001)
【非特許文献2】Wang et al., Cancer cell 18; 52-63 (2010)
【発明の概要】
【0013】
本明細書で記述されるように、細胞内腫瘍性タンパク質をワクチン接種により標的として癌および癌転位を予防することができる。
【0014】
本明細書で記述されるように、B16F0またはB16F10メラノーマ細胞のどちらかを静脈内(i.v.)注射し、続いてPRL−3モノクローナル抗体(mAb)を静脈内注射した野生型C57BL6マウスは、内因性PRL−3細胞内ホスファターゼを発現するB16F0メラノーマ細胞により形成される腫瘍を低減することができるが、PRL−3を発現しないB16F10メラノーマ細胞により形成される腫瘍は低減することができないことを示した。
【0015】
EGFP−B16F0またはEGFP−B16F10細胞(ここで両方の細胞株がEGFPを過剰発現するように操作されている)のどちらかを静脈内注射し、続いてEGFPモノクローナル抗体を静脈内注射したC57BL6マウスは、PRL−3の発現状態に関
わらず、EGFP mAbがEGFP−B16F0およびEGFP−B16F10メラノーマ細胞株により形成された腫瘍を根絶することができた。さらに、mT抗体を静脈内注射したポリオーマウイルス中型T(Py−mT)トランスジェニックの若い雌は、mT抗体がmTを発現する乳房腫瘍の形成を有効に低減することができることを示した。
【0016】
さらに、PRL−3またはEGFP抗原でワクチン接種したC57BL6マウスは、免疫しなかったマウスと比較した場合に、それぞれPRL−3またはEGFPタンパク質のどちらかを発現する転移性腫瘍の形成において有意な低減を示した。さらに、mT抗原でワクチン接種したPy−mTマウスは、乳腺における腫瘍形成を著しく予防した。194匹の野生型のマウスから得られた結果は、細胞内の腫瘍性タンパク質により引き起こされる癌転移を抗体療法およびワクチン接種によりうまく阻止することができることを実証している。
【0017】
本明細書で示されるように、中型Tタンパク質の断片を注射した若いPymTトランスジェニックマウスは、GST(陰性対照)で免疫したマウスよりも低減した乳房腫瘍の発生率を示した。さらに、細胞内ドメインの断片のみを含有するHer2/neu断片によるマウスの免疫処置は、B16F10メラノーマ癌細胞により形成されるHer2/neuを発現する腫瘍の形成を阻害した。
【0018】
さらに、エストロゲン受容体ペプチドで、またはエストロゲン受容体抗体でワクチン接種したMMTV−PymTマウスはGST(陰性対照)で免疫したマウスと比較して低減した乳房腫瘍の負荷を有する。
【0019】
従って、我々は細胞内腫瘍性タンパク質の断片を用いて癌を処置する、および癌転移を予防する方法を提供する。用語“細胞内腫瘍性タンパク質”には、本明細書で用いられる際、細胞内領域を有する腫瘍性タンパク質が含まれてよい。例えば、膜に固定されたタンパク質は細胞外、膜貫通、および細胞内のドメインまたは領域を有する可能性がある。
【0020】
その断片は、野生型または非発癌タンパク質と比較した場合に変異を含む腫瘍性タンパク質の領域の断片であってよい。その変異は癌と関係しているか、または癌の原因であってよい(すなわち発癌性変異)。
【0021】
本発明の1観点によれば、宿主を刺激してそれ自身の抗体を産生させて腫瘍形成を予防するためのワクチン接種のための細胞内腫瘍性タンパク質断片を含むワクチン療法の使用が提供される。
【0022】
それを必要とする対象において抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体の産生を刺激する方法における使用のためのポリペプチドも提供され、そのポリペプチドは10〜150アミノ酸、好ましくは10〜100アミノ酸を有する細胞内腫瘍性タンパク質の断片である。10〜150アミノ酸を有する細胞内腫瘍性タンパク質の断片であるポリペプチドを投与することを含む、それを必要とする対象において抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体の産生を刺激する方法も提供される。
【0023】
そのポリペプチドは、細胞内である腫瘍性タンパク質の断片、または腫瘍性タンパク質の細胞内領域の断片であってよい。その断片は発癌性変異を含んでいてよい。
【0024】
そのポリペプチドは複数の断片を含んでいてよい。従って、腫瘍性タンパク質の1個より多くの断片が1つのポリペプチド中で提供されてよい。1種類より多くのポリペプチドが患者に投与されてよい。それらのポリペプチドの一部または全部が1個より多くの腫瘍性タンパク質断片を含んでいてよい。その1個より多くの腫瘍性タンパク質断片は同じ腫
瘍性タンパク質の断片であってよく、または異なる腫瘍性タンパク質の断片であってよい。一部の場合において、そのポリペプチドは同じ断片の1より多くのコピーを含む。
【0025】
我々は、本発明の別の観点によれば、癌を患っている、または患っていることが疑われる個体における癌、好ましくは転移性の癌の処置の方法を提供する。その方法は、療法上有効量の細胞内腫瘍性タンパク質の断片をその個体に投与することを含んでいてよい。その細胞内腫瘍性タンパク質はその個体が患っている癌において発現していることが決定されていてよい。
【0026】
その断片はその腫瘍性タンパク質の変異を含む領域に対応していてよい。すなわち、その断片は発癌性変異を含んでいてよい。例えば発癌性変異が含まれる腫瘍性タンパク質の断片を含むペプチドを用いて発癌性変異を標的とすることの利点は、癌に特異的な免疫応答を発生し、正常な細胞を無傷なままにすることができることである。その患者に複数の腫瘍性タンパク質断片を投与してよい。その複数の腫瘍性タンパク質断片を組み合わせて、それぞれが複数の異なるペプチドを含み、それぞれが場合によりペプチドリンカーにより連結されている1個以上のペプチドにすることができる。その断片は同じ腫瘍性タンパク質からのものであってよく、または異なる腫瘍性タンパク質からのものであってよい。その方法は、患者が抗癌抗体、例えば腫瘍性タンパク質またはその腫瘍性タンパク質断片の発癌性変異に対する抗体を産生するように誘導することを含んでいてよい。その方法は、その断片またはペプチドをアジュバントと共に投与することを含んでいてよい。
【0027】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片は、それが細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインを含まないようなものであってよい。その細胞内腫瘍性タンパク質断片は細胞質または核腫瘍性タンパク質断片を含んでいてよい。
【0028】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片はエストロゲン受容体タンパク質、例えばER(エストロゲン受容体)、またはB型肝炎ウイルスタンパク質、例えばHBV X−タンパク質、PRL−3タンパク質、VHZ、Her2/neuまたはポリオーマウイルス中型T(Py−mT)タンパク質、Kras、EGFR、B−raf、PI3KCA、ベータカテニン、GNAS、Ret、EZH2またはGNAQの一部を含んでいてよい。
【0029】
その癌は、その腫瘍性タンパク質断片が免疫処置のために用いられる細胞内腫瘍性タンパク質の過剰発現と関係していてよく、またはそれにより引き起こされてよい。その癌は以下の癌からなる群から選択されてよい:乳癌、肝細胞癌(hepatocellular cancer)、例えば肝細胞癌(hepatocellular carcinoma)、卵巣癌、肝臓癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、肺癌、陰茎癌、子宮頚癌、脳癌、食道癌、膀胱癌、腎臓腎細胞癌、卵巣リンパ腫および皮膚メラノーマ。その癌は転移癌を含んでよい。
【0030】
その方法は、処置された個体における転移性腫瘍の数が未処置の個体と比較して少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%または少なくとも90%低減するような方法であってよい。一部の場合において、その癌の転移が完全に予防される。
【0031】
本発明のさらなる観点として、癌、例えば転移癌の予防の方法における使用のための細胞内腫瘍性タンパク質断片、またはその変異体、相同体、もしくは誘導体が提供され、その方法は予防的に有効な量の細胞内腫瘍性タンパク質断片、その変異体、相同体、もしくは誘導体を癌を患っている、または患っている疑いがある個体に投与することを含む。
【0032】
我々は、本発明の別の観点によれば、(a)細胞内腫瘍性タンパク質断片、またはその
変異体、相同体、もしくは誘導体を薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリヤーと一緒に含む医薬組成物を提供する。
【0033】
本発明の実施は、別途示さない限り、化学、分子生物学、微生物学、組み換えDNAおよび免疫学の従来の技法を用いると考えられ、それは当業者の能力の範囲内である。そのような技法は文献において説明されている。例えば以下の文献を参照:J. Sambrook, E. F. Fritsch, and T. Maniatis, 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 第2
版, Books 1 -3, Cold Spring Harbor Laboratory Press; Ausubel, F. M. et al. (1995および定期的な補遺; Current Protocols in Molecular Biology, 9、13、および16章、John Wiley & Sons, ニューヨーク州ニューヨーク); B. Roe, J. Crabtree, and A. Kahn,
1996, DNA Isolation and Sequencing: Essential Techniques, John Wiley & Sons; J.
M. Polak and James O'D. McGee, 1990, In Situ Hybridization: Principles and Practice; Oxford UniversityPress; M. J. Gait (編者), 1984, Oligonucleotide Synthesis: A Practical Approach, Irl Press; D. M. J. Lilley and J. E. Dahlberg, 1992, Methods of Enzymology: DNA Structure Part A: Synthesis and Physical Analysis ofDNA Methods in Enzymology, Academic Press; Using Antibodies: A Laboratory Manual: Portable Protocol NO. I by Edward Harlow, David Lane, Ed Harlow (1999, Cold Spring HarborLaboratory Press, ISBN 0-87969- 544-7); Antibodies: A Laboratory Manual by Ed Harlow (編者), David Lane (編者) (1988, Cold Spring Harbor Laboratory Press, ISBN 0-87969-314-2), 1855. Handbook of Drug Screening, Ramakrishna Seethala, Prabhavathi B. Fernandesによる編集(2001, ニューヨーク州ニューヨーク, Marcel Dekker, ISBN 0-8247-0562-9);ならびにLab Ref: A Handbook of Recipes, Reagents, and Other Reference Tools for Use at the Bench, Jane RoskamsおよびLinda Rodgersによる
編集, 2002, Cold Spring Harbor Laboratory, ISBN 0-87969-630-3。これらの一般的な
テキストのそれぞれが参照により本明細書に援用される。
【0034】
本発明には、記述された観点および好ましい特徴の組み合わせが、そのような組み合わせが明確に許容できない、または特に避けられる場合を除いて含まれる。
【0035】
本明細書で用いられる節の見出しは組織化の目的のためだけのものであり、記述される主題を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0036】
本発明の観点および態様は、ここで例として添付の図を参照して説明されるであろう。さらなる観点および態様は当業者には明らかであろう。本書において言及される全ての文書は参照により本明細書に援用される。
【0037】
本発明の原理を説明する態様および実験は、ここで添付の図を参照して論じられ、ここで:
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1-1】図1は、PRL−3 mAbがPRL−3を発現している癌細胞により形成される転移性腫瘍の形成を有効に阻害することを示す図である。A、総細胞溶解物をB16F0およびB16F10メラノーマ癌細胞から調製し、内因性PRL−3タンパク質の発現を免疫ブロットを用いて決定した。GAPDHをロードの対照として用いた。B、C57BL6マウスに1×10個のB16F0細胞を注射し(1日目)、続いて療法計画によりPRL−3マウス抗体(mAb、クローン#318)処置を行った。C、17〜20日目に、未処置のマウス(n=5)では腫瘍が肺、肝臓、副腎、腎臓、および骨において高頻度で見られ、一方でPRL−3 mAbは処置されたマウス(n=5)のほとんどの組織において腫瘍の形成を排除した。D、PRL−3 mAbで‘処置された’B 16F0受容マウスの体重は、その実験の期間全体を通して一定して増加した。E、PRL−3を発現していないB16F10メラノーマ癌細胞株を用いて平行実験を実施し、PRL−3 mAb療法により療法的成果は得られなかった。F、処置された、および未処置のB16F10受容マウスの体重は両方ともその実験の期間にわたって一定して減少した。
図1-2】同上。
図1-3】同上。
図1-4】同上。
図1-5】同上。
図2-1】図2は、B細胞が抗体療法的事象の媒介において重要であることを示す図である。A.カプラン・マイヤー生存曲線を用いて、B16F0細胞を注射したB細胞欠損muMTマウスの‘処置’および‘未処置’群を比較した。未処置(18.5日)および処置(19日)群に関する生存率の中央値に差がないのは明らかであった。B.B16F0を注射した野生型C57BL6マウスのカプラン・マイヤー分析は、未処置(17日)および処置(21.5日)群の間で生存の中央値において統計的に有意な差(P=0.0002)を有していた。C.B16F10を注射した野生型C57BL6マウスのカプラン・マイヤー分析は、未処置(16.5日)および処置(17.5日)の間で統計的に有意な差を有しなかった。D.処置されたマウスおよび未処置のマウスの間の結果を要約した。無効な(または腫瘍を有する)マウスの数を分子に置き、マウスの総数を分母に置いた。Y軸に示した分数は、それぞれの群中の腫瘍を有するマウス対総マウス(n)の百分率を表す。柱はX軸に示したマウスのタイプを表す。
図2-2】同上。
図3-1】図3は、mT抗体がmT腫瘍性タンパク質を発現する乳房腫瘍の形成を有効に阻害することを示す図である。遺伝子型決定を用いてトランスジェニックMMTV−PymTの雌を同定した。マウス#2、#6、#7、および#10はヘテロ接合体トランスジェニックの雌(+/−)である。B、#2および#6のトランスジェニックマウスは、乳腺腫瘍の進行を監視するための対照として未処置のままであった。#7および#10トランスジェニックマウスはmT抗体の静脈内注射を受けた。実験の終了時(3ヶ月)に、全てのマウスを屠殺した。乳房組織(腫瘍)の大きさおよび重量を測定した。5対の乳腺を示し、それぞれの下のパネルにおいて4つの群として示した。棒:1.5cm。C、乳房組織の全組織標本の形態を未処置(a)、処置(b)、および野生型(c)からの乳房において調べた。E.カプラン・マイヤー生存曲線を用いてMMTV−PymTヘテロ接合性トランスジェニックの雌の‘処置’および‘未処置’群を比較した。F.Y軸に示した分数は、それぞれの群中の腫瘍を有するマウス対総マウス(n)の百分率を表す。柱はX軸に示したマウスのタイプを表す。
図3-2】同上。
図4-1】図4は、mT抗原によるMMTV−PyMTマウスの免疫処置がmT細胞内タンパク質を発現する乳房腫瘍の形成を予防することができたことを示す図である。A、mT抗原によるワクチン接種の療法計画。B〜D.MMTV−PymTヘテロ接合性トランスジェニックマウス(TG)をその実験のために用いた。TGの雌(#43、#44、#45)をGSTタンパク質で免疫した。ELISA分析により、これらのマウスはそれらの血清中にmT抗体を有さず、乳腺腫瘍の劇的な進行を示した。対照的に、TGの雌(#37、#40、#41)をGST−mT融合タンパク質で免疫し;これらのマウスはそれらの血清中に高レベルのmT抗体を有し、乳腺腫瘍の著しい抑制を示した。その10個の乳腺をそれぞれのパネルの下部に4つの群として示した。上の2つの乳房の群は上部の3対の乳腺からなり、一方で下の2つの群は下部の2対の乳腺に相当する。合計10個の乳腺の重量を測定した。野生型のマウス(n=3)を対照として用いた。棒:1.5cm。E.カプラン・マイヤー生存曲線を‘免疫した’および‘未免疫の’MMTV−PymTマウスの間で比較し、生存時間の中央値(p=0.0004)はmTで免疫した群(19.5週)において未免疫の群(14.5週)に対して明確に長い。F.免疫したマウスおよび未免疫のマウスの間の結果の要約。Nはそれぞれの群中のマウスの数を表し;それぞれの柱における分数は、腫瘍を有するMMTV−PymTマウスの用いられた総TG雌に対する割合を表す。
図4-2】同上。
図4-3】同上。
図5-1】図5は、PRL−3−、EGFP−、またはmT抗体がPRL−3、EGFP、およびmTを発現する腫瘍の形成を有効に阻害することを示す図である。A、総細胞溶解物をEGFP−F0およびEGFP−F10癌細胞から調製した。外因性のEGFPタンパク質が両方の細胞株において検出された。PRL−3はEGFP−F0においてのみ(しかしEGFP−F10において低く)発現していた。GAPDHをロードの対照として用いた。B、EGFP−F0およびEGFP−F10のプールされた細胞の安定な集団はEGFPを不均一に発現していることが示された。C.療法計画は(1日目に)尾静脈経由で10個の癌細胞を注射されたC57BL6マウスを示した。処置されたマウスはEGFP mAbを静脈内注射された。未処置のマウスはPBSを静脈内注射された。D〜E、17〜20日目に器官を回収し、調べ、画像化した。未処置群において腫瘍が肺、骨、副腎および卵巣において見られたが、処置されたマウスでは大きく低減していた。EGFP抗体はEGFP腫瘍を特異的に阻害するが肺における非EGFP腫瘍は阻害しないことを特筆する(パネル、e)。F.a.未処置のFVB/N−MMTV−PymT、b.mT mAbはトランスジェニックMMTV−PymTマウスにおいて乳房腫瘍の形成を有効に阻害する。c.非トランスジェニックマウスは対照として正常な大きさの乳房組織を示す。G.細胞内標的に対する抗体により処置されなかった、および処置されたマウスの間の結果の要約。無効な(または腫瘍を有する)マウスの数を分子に置き、マウスの総数を分母に置いた。146匹のマウスを3種類の異なる抗体療法によりそれらのそれぞれの細胞内標的に対して試験した。Nはそれぞれの群中のマウスの数を表し;それぞれの柱における分数は重い腫瘍を有するマウスの割合を表す。
図5-2】同上。
図6-1】図6は、PRL−3、EGFP、またはmT細胞内抗原で免疫したマウスはPRL−3、EGFP、およびmTを発現する腫瘍を予防することができたことを示す図である。A、それぞれの抗原によるワクチン接種の療法計画。B、次いで、未免疫の、PRL−3で免疫した、またはGFPで免疫したマウスに、尾静脈経由で100万個のEGFP−F0またはEGFP−F10癌細胞のどちらかにより負荷をかけた。全ての器官を癌細胞の注射の3週間後に調べ、蛍光顕微鏡を用いて写真撮影して転移性腫瘍の形態を示した。黒色の腫瘍はEGFPを発現していないメラノーマ細胞を表し、一方で緑色の腫瘍はEGFPを発現している腫瘍を表す。C、MMTV−PymTヘテロ接合性トランスジェニックの雌の全体像:a.未免疫のMMTV−PymTマウス。b.mTで免疫したマウスは乳房腫瘍の低減を示した。D、細胞内抗原により免疫しなかった、および免疫したマウスの間の結果の要約。84匹のマウスをワクチン接種実験において用いた。Nはそれぞれの群中のマウスの数を表し;それぞれの柱における分数は重い腫瘍を有するマウスの割合を表す。
図6-2】同上。
図7図7は、PRL−3抗原と特異的に反応するPRL−3キメラmAbの生成を示す図である。A.キメラmAbの構築の主要な工程を概説する概略図。B.PRL−3キメラmAbはDLD−Iヒト結腸直腸癌細胞において過剰発現したEGFP−PRL−3を間接免疫蛍光により認識する:a、固定されたDLD−I細胞におけるEGFP−PRL−3の分布(緑);b、PRL−3タンパク質への結合を明らかにするための、PRL−3キメラ抗体および抗ヒトTexas−Red;c、重ね合わせた画像。棒:20μm。C.EGFP−PRL−3を過剰発現するDLD−I細胞に由来する細胞溶解物、ならびにmyc−PRL−3、myc−PRL−1、およびmyc−PRL−2を過剰発現するCHO安定細胞株に由来する溶解物を、ウェスタンブロットにより分析した。PRL−3キメラ抗体はEGFP−PRL−3(48kDa)およびmyc−PRL−3(20kDa)を特異的に認識したが、myc−PRL−1およびmyc−PRL−2とは反応しない。
図8-1】図8は、PRL−3キメラ抗体が内因性のPRL−3を発現するB16F0細胞により形成される転移性腫瘍の形成を有効に阻害することを示す図である。A.総細胞溶解物をF0およびF10メラノーマ細胞から調製し、免疫ブロットにより分析した。豊富な内因性PRL−3タンパク質がF0において検出されたが、F10細胞ではほとんど検出できなかった。B.1日目に、ヌードマウス(n=27)に1×10個のF0細胞を尾静脈経由で注射し、続いて1週あたり2回のPRL−3キメラmAbの静脈内投与を行った(3、6、9、12、15日目)。C.その実験の終了時(17日目)に、マウスを写真撮影し、組織を解剖した。転移性腫瘍が未処置のマウス(左)の副腎、肝臓、骨、および腹部において見られたが、処置されたマウス(右)においては見られなかった。D.その実験のためにヌードマウス(n=22)に1×10個のF0細胞を注射した。その実験の終了時(17日目)に、数十個の肺転移性腫瘍が未処置の(上のパネル)、および処置されたマウス(下のパネル)の両方において見られた。‘処置された’および‘未処置の’F10受容マウスに関するカプラン・マイヤー生存曲線を示した。
図8-2】同上。
図9図9は、PRL−3キメラmAbが内因性のPRL−3を発現するA2780細胞およびHCT−116細胞により形成される転移性腫瘍の形成を阻害することを示す図である。A.総細胞抽出物をHCT−116−luc2、HCT−116、A2780、およびNCI−H460癌細胞株から調製した。内因性のPRL−3タンパク質はHCT−116−luc2、HCT−116、およびA2780細胞において検出されたが、H460では検出されなかった。B.1日目に、ヌードマウス(n=6)に1×10個のHCT−116−luc2癌細胞を注射し、続いて3日目にPRL−3キメラmAb(n=3、処置)またはPBS(n=3、未処置)を投与し、続いて7週間で2回のPRL−3キメラmAbの静脈内投与を行った。癌細胞および抗体は両方とも尾静脈経由で注射した。7週目にIVIS(登録商標)画像化システムを用いてインビボで腫瘍の発生を追跡および監視した。C.1日目に、Bにおいて記述したようにヌードマウスに1×10個の癌細胞を注射し、処置した。マウスが非常に病的に(sick)見えた場合、対になった実験(未処置/処置)を終了した。実験期間をそれぞれのパネルの上部に示す。D.3種類のヒト癌細胞株を注射したヌードマウスにおけるマウスPRL−3(R3−mAb)またはキメラPRL−3(R3−hAb)抗体療法からの療法的結果の要約。腫瘍を有するマウスの百分率をそれぞれの群から平均し(n=マウスの数)、Y軸に示す。合計101匹のマウスをこの実験で用いた。
図10-1】図10は、B細胞がPRL−3キメラ抗体の療法的有効性の媒介において重要であることを示す図である。A.‘処置された’および‘未処置の’HCT−116を注射されたヌードマウスおよびscidマウスのカプラン・マイヤー生存曲線(a、b)。‘処置された’および‘未処置の’B16F0を注射されたヌードマウスおよびscidマウスのカプラン・マイヤー生存曲線(c、d)。B.ヌードマウスおよびscidマウスにおける療法実験に関する結果の要約(a〜d)。腫瘍を有するマウスの百分率をそれぞれの群から平均し(n=マウスの数)、Y軸に示す。合計151匹のマウスをこの実験で用いた。
図10-2】同上。
図10-3】同上。
図11-1】図11は以下のことを示す図である:A.PRL−3は細胞表面において検出できない。a.EGF受容体抗体と共に培養したA431細胞(黒線)の間で、EGF受容体抗体と共に培養しなかったA431細胞(赤線)と比較してピークシフトが観察された。b.PRL−3 mAbと共に(黒線)、およびAbなしで(赤線)培養したF0細胞の間ではピークシフトは観察されなかった。c.PRL−3 mAbと共に(黒線)、および抗体なしで(赤線)培養したF10細胞の間ではピークシフトは観察されなかった。B.標識した抗体を、IVISライブイメージングに基づく研究モデルの1時間前に静脈内注射した:a.処置されたマウス。抗体の早期の送達が癌細胞を持続的に攻撃してそれらがさらに進行するのを妨げ、結果としてオープンステージ(open stages)における微小転移をもたらすと考えられ、従って蛍光標識されたPRL−3抗体は‘処置されたマウス’において転移性肺腫瘍に接近および結合することができる。我々は処置されたマウスにおいて強い蛍光で標識された肺を観察した。b、未処置のマウス。制御されない癌細胞は急速に増殖した。それらは自由に微小転移へと発展し、抗体および免疫系に対する接近可能性をより低くするある種の腫瘍微小環境である防御領域を確立し、結果として蛍光標識されたPRL−3抗体は‘未処置のマウス’において転移性肺腫瘍を標識することができなかった。従って、我々は未処置のマウスにおいて蛍光標識された転移性の肺(metastatic lungs)を観察することができなかった。H&E染色切片において、黒い矢印は転移性肺腫瘍の未処置のB 16F0受容マウスからの転移性肺腫瘍の明確な境界(‘柵(fence)’)を示した。スケールバー:200μm。赤い矢印は血管を示した。
図11-2】同上。
図12-1】図12は、PRL−3タンパク質が肺癌およびAMLにおいて上方制御されていることを示す図である。A.肺扁平上皮細胞癌におけるPRL−3発現の代表的なIHC染色。B.肺腺癌。スケールバー:100μm。C.免疫組織化学(IHC)により検出した際のPRL−3陽性肺癌の百分率を要約し、癌の亜型に従って分類した。D.AML骨髄試料をIHCにより調べ、69の内の24(35%)がPRL−3発現を示した。3個の選択された画像を示した。
図12-2】同上。
図13図13は、先天免疫系におけるNK細胞がその療法に関わっていることを示す図である。ヌードマウスにその実験の24時間前にGM1抗体を注射した(n=2);および注射しなかった(n=2)。1日目に、全てのマウスに1×10個のF0細胞を尾静脈経由で注射し、続いてGM1を注射したマウスにおいて1週あたり2回のPRL−3キメラmAbの静脈内投与を行った(3、6、9、12、15日目)。18日目に、その療法的有効性を調べた。GM1を注射したヌードマウスは、PRL−3 mAbで処置されたか未処置であるかに関わらず、肺、肝臓、副腎、精巣、および骨においてGM1を注射しなかったマウスよりも重症の(黒い)腫瘍を有する負荷を示した。
図14図14は、その処置の結果がその標的の組織発現パターンと高度に関係していることを示す図である。A、B.ウェスタンブロットによる正常なマウスの組織におけるPRL−3およびPRL−2のタンパク質発現パターン、GAPDHをロードの対照として用いた。C.HCT−116(PRL−2陽性細胞株)の受容マウスはPRL−2抗体(その抗体はPRL−1とも交差反応する)療法に対して応答せず、これはPRL−2は我々が調べたマウスの組織のほとんどにおいて遍在性に発現しているという事実によるものである可能性が最も高い。
図15図15は、C57BL6マウスのVHZによる免疫処置および腫瘍発生の監視の結果を示す。8週齢のC57BL6マウスを総量200mlのフロイントアジュバント:100mlの生理食塩水中の20mgのVHZ抗原を100mlの完全アジュバント(カタログ番号77140、Pierce)と混合したものを用いた腹腔内注射により免疫した。次の2回の免疫処置は、総量200mlのアジュバント:100mlの生理食塩水中の20mgのVHZ抗原を100mlの不完全アジュバント(カタログ番号77145、Pierce)と混合したものと混合したものを注射した。2回目および3回目の注射は2週ごとに投与され、100〜200mlの尾の血液をヘパリンでコートされた毛細管チューブ中に採取した。血漿を血液試料から調製し、抗体価をEL1SAにより測定した。ELISAの詳細な工程は前に記述された。高力価のVHZ抗体をそれらの血清中に有するマウスを選択し、側部尾静脈に1×10個のVHZを発現している癌細胞を注射した。ワクチン接種しなかったマウスはこの試験において陰性対照の役目を果たす。
図16図16は、実施例40および41において用いられたHer2/neu腫瘍性タンパク質およびmT腫瘍性タンパク質の断片の配列を示す。Her2a細胞内ペプチドはHer2に特有であり、EGFR(Her1)と交差反応しない。
図17-1】図17:Her2断片で免疫したマウスはB16F0メラノーマ癌細胞により形成されるHer2を発現する腫瘍の形成を抑制することができた。(A)Her2の内部、外部(extra)、およびC末端断片を用いたワクチン接種計画。(B)16週目において、未免疫の、Her2内部で免疫した、またはHer2外部で免疫したマウス、およびHer2のC末端で免疫したマウスに、次いで100万個のB16F0癌細胞を用いて尾静脈経由で負荷をかけた。全ての器官を癌細胞の注射の約17日後に調べ、転移性腫瘍の形態を示すために写真撮影した。黒色の腫瘍はB16F0メラノーマ細胞を表す。(C、上)Her2断片で免疫したマウスは高レベルのHer2抗体をそれらの血清中に有していた(が未免疫のマウスは有していなかった)ことを示すために、ELISA分析を確証した。(C、下)それぞれのマウスからの肺腫瘍の総数を計数して示した。それぞれの群においてN=3。
図17-2】同上。
図18-1】図18:Her2a短鎖ペプチドまたは断片で免疫したマウスはB16F0メラノーマ癌細胞により形成されるHer2を発現する腫瘍の形成を抑制することができた。(A)Her2a短鎖ペプチド、Her2外部断片を用いたワクチン接種計画。(B)16週目において、Her2短鎖ペプチドで免疫した、Her2外部で免疫した、および未免疫のマウスに、次いで100万個のB16F0癌細胞を用いて尾静脈経由で負荷をかけた。全ての器官を癌細胞の注射の約17日後に調べ、転移性腫瘍の形態を示すために写真撮影した。黒色の腫瘍はB16F0メラノーマ細胞を表す。(C、上)Her2短鎖ペプチドで免疫した、Her2外部断片で免疫したマウスは高レベルのHer2抗体をそれらの血清中に有していた(が未免疫のマウスは有していなかった)ことを示すために、ELISA分析を確証した。(C、下)それぞれのマウスからの肺腫瘍の総数を示した。それぞれの群においてN=3。Her2jp’はHer2外部と同等である。
図18-2】同上。
図19-1】図19:mTペプチドをワクチン接種したMMTV−PymT TGの若い雌は乳腺腫瘍の形成を低減する。(A)mTペプチドによるワクチン接種の療法計画。(B)mTペプチドで免疫したマウスはGSTで免疫したマウス(陰性対照としての無関係な免疫したマウス)と比較して腫瘍の顕著な抑制を示した。(C、上)10個の乳腺をそれぞれのパネルの下部において4つの群として示した。(C、下)それぞれのマウスからの乳腺の平均重量を示し、野生型のマウスを乳腺の正常な大きさに関する対照として用いた。
図19-2】同上。
図20図20:エストロゲン受容体(ER)およびHBV−Xタンパク質に関する配列を示す。エストロゲン受容体ペプチドは、その結果を図21において詳細に示す実験において用いられる。ER−赤およびER−紫は、赤および紫の配列で示した2つの領域(または断片)を表す。
図21-1】図21:エストロゲン受容体ペプチド(ER−紫およびER−赤)でワクチン接種したMMTV−PymT TGの若い雌は乳腺腫瘍の負荷を低減する。(A)エストロゲン受容体ペプチド(ER−紫およびER−赤)によるワクチン接種の療法計画。(B)適切な処置のために標的とする腫瘍がエストロゲン受容体を発現していることを確証するため、ウェスタンブロットを実施してエストロゲン受容体タンパク質がMMTV−PymT TGの成体の雌からの腫瘍(T.乳房およびT.肺)(レーン4〜5)組織において発現していることを示した。(C)陰性対照のため、マウスを標的腫瘍で発現していないGST抗原を用いて免疫し、ER−紫ペプチドおよびER−赤ペプチドで免疫し、これらの2つのペプチドの群はGSTで免疫した対照のマウスと比較して腫瘍の顕著な抑制を示した。
【0039】
その10個の乳腺をそれぞれのパネルの下部において4つの組織の群として示した。スケールバー、1.0cm。(D)それぞれのマウスの群からの乳腺の平均重量を、正常な乳房の大きさに関する対照としての野生型(wt)マウスと一緒に示した(平均±SD)

図21-2】同上。
図22-1】図22:抗体処置の結果はその標的の組織発現パターンと高度に関係している。A.正常なマウスの組織におけるエストロゲン受容体(ERa)のタンパク質発現パターンを腫瘍(T.乳房およびT.肺)組織と一緒にERa抗体を用いたウェスタンブロットにより調べ、GAPDHをロードの対照として用いた。B.エストロゲン受容体1(ERa)抗体処置の療法スケジュール。C.スチューデントt検定分析は、未処置の群およびERaで処置された群の間の平均乳房腫瘍重量における有意差(P=0.0163)(平均±SD)を明らかにした。P<0.05を統計的に有意と見なした。D.終了時(13週齢)に全てのマウスを殺して調べた。乳房組織(腫瘍)の大きさおよび重量を測定した。5対の乳腺を示し、それぞれの下のパネルにおいて4つの群として示した。
図22-2】同上。
図23図23:細胞内抗原を標的とする抗体に関する3つの可能性のある機序:A.抗体はPRL−3を発現している細胞に入って細胞内のPRL−3を標的とし、その機能を中和することができる可能性がある。B.細胞内のPRL−3の一部が非定型の(unconventional)分泌により外在化され(externalized)、癌細胞の表面上に提示される可能性がある。C.細胞内のPRL−3のタンパク質分解による断片がMHCクラスI分子により提示されて細胞傷害性T細胞を誘引する可能性がある。
図24-1】図24:PRL−3ペプチド(EVTYDKTPLEKDGITVGGSGDPHTHKTRC−KLH)のワクチン接種はC57BL6マウスにおいてPRL−3を発現している癌細胞株(B16F0)により形成される腫瘍を阻止することができた。
図24-2】同上。
図25-1】図25:PRL−3ペプチドのワクチン接種はC57BL6マウスにおいてPRL−3を発現している細胞(B16F0)により形成される腫瘍を低減することができたが、PRL−3を発現していない細胞(B16F10)により形成される腫瘍は低減することができなかった。
図25-2】同上。
図26-1】図26:Ras変異ペプチド(CMTEYKLVVVGADGVGKSALT)で免疫したBalb/cマウスはRas(G12D)変異を発現しているCT−26癌細胞により形成される腫瘍を阻止することができた。
図26-2】同上。
図27-1】図27:A.発癌性変異(太字で示した変異)を含有するペプチド。B.他の発癌性変異。
図27-2】同上。
図28-1】図28:http://share.gene.com/mutation_classification/cancer.variants.txtから同定された発癌性変異。
図28-2】同上。
図28-3】同上。
図28-4】同上。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の1個以上の態様の詳細を、本発明を実施するために本発明者らが意図する最高の方式の具体的な詳細を含めて下記の添付の記述で例として述べる。当業者には、本発明はこれらの具体的な詳細に限定されることなく実施されてよいことは明らかであろう。
【0041】
細胞内タンパク質の標的化の可能性を探求するため、この研究において、我々は動物モデルにおける抗癌療法に関する3つの代表的な細胞内標的に焦点を合わせることを選択してきた。
【0042】
我々は、癌関連PRL−3細胞内ホスファターゼをPRL−3抗体療法のための標的として選択する。PRL−3は、1994年および1998年に同定された5,6PRL(再生肝のホスファターゼ)ファミリー中の3つのメンバー(PRL−1、−2、および−3)の1つである。その3種類のPRLはタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーの亜群を形成している
【0043】
PRL−3は2001年に最初に結腸直腸癌の転移に結び付けられた。続いて、個々のPRL−PTPの上方制御はそれらの正常な対応物と比較した場合に数多くのタイプの進行したヒトの転移癌と相関していることが報告された
【0044】
PRLホスファターゼはヒトの癌におけるバイオマーカーおよび療法標的として検証されている興味深いタンパク質の群である10。PRLは細胞内のC末端がプレニル化されたホスファターゼであり、一方でプレニル化シグナルを欠くPRLの変異型はしばしば核に局在している11,12
【0045】
PRL−1およびPRL−3の細胞膜の内葉および早期エンドソームへの局在がEM免疫金標識により明らかになっている13。外因性試薬によりPRLを標的化してPRL癌細胞を除去することはそれらの細胞中への浸透を必要とし、それは挑戦的な課題である。
【0046】
我々は、元々クラゲエクオレア・ビクトリア(Aequorea victoria)から単離された一般的なレポータータンパク質であり、青色光に曝露した際に緑色の蛍光を発する細胞質ゾル性強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)を選択した。EGFPは細胞内タンパク質であり、時々核に入る。中性の外因性タンパク質として、EGFPはEGFP−B16F0およびEGFP−B16F10メラノーマ細胞において人工の癌細胞に特異的な細胞内タンパク質の役目を果たす。
【0047】
次いで、これらのEGFPを過剰発現するメラノーマ細胞をEGFP mAbによる標的とする。我々は、EGFPは宿主組織では発現していないため、EGFP抗体は動物モデルにおいてより少ない望まれない副作用を有するはずであると予想する。
【0048】
我々は、周知の腫瘍性タンパク質であるポリオーマウイルス中型T(mT)細胞内キナーゼを第3の標的として選択した14。我々は、マウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター/エンハンサーの転写制御下のそのmT腫瘍性タンパク質を有するPy−mTトランスジェニックヘテロ接合性の雌(+/−)の乳癌モデルを用いた。そのトランスジェニックマウスは、転移性乳腺腫瘍の表現型の相対的寄与を評価するために、癌研究学界において数十年間優秀なマウス腫瘍モデルとして広く用いられてきた15,16
【0049】
我々は、周知の腫瘍性タンパク質であるHer2(ErbB−2としても知られている)を選択した。我々は癌転移のモデルとしてC57BL6マウスにB16F0メラノーマ細胞を注射し、Her2断片がHer2を発現する腫瘍の形成を阻害することができるかどうか調べた。
【0050】
断片およびペプチドワクチン接種は、腫瘍性タンパク質全体の配列から設計および選択されたより短い配列を、宿主の免疫系を刺激して腫瘍細胞中で発現している腫瘍性タンパク質全体に由来するその特定の断片またはペプチドに対する抗体を産生させるための抗原として用いている。その‘断片およびペプチド’ワクチン接種は、より特異的であり、同じファミリー中のそれらの相同メンバーとの交差反応性がより低いと予想される。従って、腫瘍性タンパク質全体のワクチンと比較して、断片またはペプチドワクチンはより少ない副作用を有し、より特異的である。他のファミリーのメンバーと交差反応するその腫瘍
性タンパク質全体中に位置する配列を削除し、避けることができる。結果として得られる独特のペプチドはその標的に非常に特異的であり、その関連する標的の配列と反応しない。よりよい理解を得て、我々の以前の有望な前臨床データ17を将来のヒトにおける臨床適用へと拡張するため、本明細書において、我々は抗体療法を細胞内腫瘍性タンパク質を標的とするために用いることができるという今までに認識されていなかった概念を明らかにするために野生型動物モデルにおいて全体抗体療法試験を実施した。
【0051】
発癌性変異はヒトの癌への寄与において一般的である。現代技術はその腫瘍が特定の発癌性変異と関係している、またはそれにより引き起こされた患者を容易に同定することができるため、我々は次いでこれらの発癌性変異に対応するペプチドを設計することができた。この特異的な変異体ペプチドを含むワクチンは、患者の免疫系をその変異体タンパク質に対して誘導することができる可能性があり、その患者は彼ら自身の抗癌療法のために適切な抗体“薬”および細胞傷害性Tリンパ球(CTL)を産生するであろう。ワクチンは長続きする免疫を引き出すことができると考えられるため、適正な抗原(ペプチドまたは遺伝子断片)を用いて患者の免疫系を彼らの腫瘍の除去においてその適正な変異した標的に対する彼ら自身の抗体およびCTLを作るように誘導した場合、彼らは抗体療法に類似した結果を達成することができるであろう。
【0052】
樹状細胞(DC)は適応免疫応答の制御において重要な役割を果たす抗原提示細胞(APC)であるため、多数のDCをインビトロでCD34+骨髄前駆体から、またはCD14+単球から単離および生成することができるであろう。インビトロワクチン接種はAPCをそれらの細胞表面においてそのペプチド抗原を提示することができるように教育するであろう。その教育されたAPCを再導入して同じ宿主に戻し、これらのペプチド抗原に対するBおよびT細胞応答を誘発し、抗体およびCTLを産生させてその特異的な抗原を発現している癌細胞を除去する。
【0053】
あるいは、場合により発癌性変異を含む、標的抗原を含有するように合成されたペプチドをその患者に投与し、彼らの免疫系を生体内で教育することができる。
【0054】
本実施例は、上記の細胞内タンパク質のそれぞれがその同族の抗原に対する抗体により標的化され得ることを実証する。
【0055】
抗体がその細胞内抗原を認識することができるならば、細胞内抗原を宿主の免疫系を刺激してそれに対する抗体を産生させるためのワクチン接種のために用いることができる可能性がある。これは我々が特異的な細胞内抗原を発現する腫瘍に対する細胞内腫瘍性タンパク質を用いたワクチン接種を探究することを促した。
【0056】
ワクチン接種は宿主の免疫の刺激において安価であるが有効である。細胞外抗原と比較して、ワクチン接種において用いられる細胞内タンパク質はそれらの細胞内の位置のためにはるかに少ない注目しか受けていない。このワクチン接種の主な目的は、特定の細胞内タンパク質に対して免疫系を人為的に活性化して、ある個体においてその細胞内タンパク質を発現する特定の悪性細胞に対する抗体を予備刺激し(prime)、そうして将来における腫瘍の形成を予防することである。
【0057】
次に、我々は同じ3種類の細胞内抗原(PRL−3、EGFP、およびmT)を用いてC57BL6野生型マウスにおいてワクチン接種を実施した。我々は、実施例において示されるように、細胞内腫瘍抗原で免疫したマウスはその特異的な腫瘍抗原を発現しているこれらの癌細胞を根絶して腫瘍の形成を低減することができるという興味深い結果を得た。より重要なことに、そのデータはワクチン接種が既知の細胞内腫瘍性タンパク質により引き起こされる特定の癌を発症する危険性が遺伝的に高い個体に関して疾患の進行を予防
する可能性を示唆している。そのような癌の特異的な能動的免疫療法は、うまくいき、有効であれば、受動的免疫療法を超える明確な利点を有する。
【0058】
この研究において、我々は抗癌のための抗体療法および細胞内タンパク質によるワクチン接種の両方に関して194匹のマウスを用いた(図6)。癌の研究は、腫瘍学者が個々の患者への処置方針の適合(tailoring)を用い始めているため、個別化された癌療法に向けて急速に動いている。抗体療法およびワクチン接種は、我々は全て我々自身の回復のために抗体を作る能力を有するため、個人に合わせた(personalized)処置の有望性(promise)を満たすことができ、個別化された医療の未来である可能性がある。
【0059】
現在、ワクチンは主に細菌およびウイルス感染を予防するために、ならびに癌細胞上の少数の細胞外タンパク質(受容体)を標的とするために用いられている。我々のデータは、細胞内腫瘍性タンパク質を標的とする方針が将来における癌予防に関する莫大な有望性を保持していることを示している。
【0060】
本明細書において記述されるような腫瘍性タンパク質は、腫瘍原性の細胞増殖に結び付いたタンパク質の制御または合成に関わるタンパク質である。腫瘍性タンパク質は、正常な細胞の癌細胞への転換に関わる発癌ポリペプチドであってよい。腫瘍性タンパク質は腫瘍細胞において正常細胞におけるよりも高い発現を有していてよい。その腫瘍性タンパク質は細胞内にあり、これはそれらが細胞の内部に、例えば核もしくは細胞質中に位置している、または細胞膜の細胞内表面に付着していることを意味する。好ましくは、その腫瘍性タンパク質は自己抗原であり、これはそれらがその動物中に普通にあるタンパク質であり、その動物のゲノムから発現されるタンパク質集団の一部を形成しており、ウイルスタンパク質のようにその動物に対して異種性ではないことを意味する。
【0061】
あるいは、その細胞内腫瘍性タンパク質は細胞内領域を有する腫瘍性タンパク質であってよい。例えば、それは細胞質中に伸びた領域を有する膜に固定されたタンパク質であってよい。
【0062】
腫瘍性タンパク質は非自己抗原、例えば感染した細胞により発現されるウイルスタンパク質であることができる。一部の場合において、その細胞内腫瘍性タンパク質は微生物に由来しない。例えば、それはウイルス性腫瘍性タンパク質ではなく、または細菌性腫瘍性タンパク質ではなく、または真菌性腫瘍性タンパク質ではない。一部の場合において、その腫瘍性タンパク質はHPV腫瘍性タンパク質ではない。好ましくは、その腫瘍性タンパク質は自己抗原である。細胞内自己抗原を用いることの1つの可能性のある利点は、細胞外の自己抗原を標的とする免疫細胞は一般に発生の間に排除されるため、それらが細胞外自己抗原よりも免疫応答を誘発するよりよい機会を有する可能性があることである。
【0063】
細胞内腫瘍性タンパク質を用いたワクチン接種による癌の予防
以前は、療法用抗体は細胞の外部表面上に出ている分子にのみ接近すると考えられていた。文献における予想によれば、癌細胞および癌転移を除去するために細胞内のPRLおよびそのような他の細胞内腫瘍性タンパク質を抗体を用いて標的とすることは、それらの細胞内の位置のため、以前は可能であるとは全く考えられていなかった。
【0064】
従って、癌細胞形成、癌細胞増殖および癌転移を予防するための細胞内腫瘍性タンパク質によるワクチン接種は、以前は可能であるとは全く考えられていなかった。我々はこれが事実ではないことを示している。さらに、我々は、細胞内腫瘍性タンパク質の断片によるワクチン接種も可能であり、それは細胞外腫瘍性タンパク質の断片と比較した場合に向上した有効性を有し得ることを示している。
【0065】
本明細書で開示されるように、細胞内腫瘍性タンパク質またはその断片を用いたワクチン接種は結果として宿主による抗体産生の刺激をもたらす。B細胞を刺激して細胞内腫瘍性タンパク質またはその断片に特異的な抗体を産生させることができる。従って、ワクチン接種は結果として細胞内腫瘍性タンパク質またはその断片に特異的なB細胞応答の刺激をもたらすことができる。
【0066】
従って、我々は概して癌を引き起こす腫瘍性タンパク質(その腫瘍性タンパク質は天然に細胞内にある)の断片を癌ワクチン、特に癌転移に対する、または癌の拡散もしくは増殖を抑制するためのワクチンとして提供する。
【0067】
我々は、腫瘍性タンパク質断片(その腫瘍性タンパク質は天然に細胞内にある)の癌を引き起こす腫瘍性タンパク質と関係する癌転移が含まれる癌の予防の方法における使用を提供する。
【0068】
ワクチン接種は特定の腫瘍性タンパク質からの単一の断片(すなわち、同一のペプチドの均一な集団)を含むことができる。あるいは、1種類より多くの配列を有するペプチドを用いることができる。例えば、配列Xおよび配列Yのペプチドの混合物。そのペプチドは重複していてよく、または1つの腫瘍性タンパク質の異なる領域からのものであってよい。一部の場合において、そのペプチドはその腫瘍性タンパク質の全部または実質的に全部に及んでいない。すなわち、そのペプチドの混合物はその腫瘍性タンパク質の一部しか含まない。一部の場合において、1種類より多くの腫瘍性タンパク質からの異なるペプチドの混合物を用いることができる。異なるペプチドの混合物が用いられる場合(同じ腫瘍性タンパク質からの異なるペプチドまたは異なる腫瘍性タンパク質からのペプチドのどちらでも)、これらは同時に、または順次投与されてよい。好ましくは、そのペプチドのそれぞれはその細胞内腫瘍性タンパク質に対する抗体を産生するように宿主を誘導することができるであろう。
【0069】
本発明によれば、単一のペプチドのみを用いてよい。あるいは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、またはより多くの種類のペプチドの混合物を用いてよい。
【0070】
我々は、天然に細胞内にある癌を引き起こす腫瘍性タンパク質と関係する癌転移が含まれる癌を、予防的に有効な量のその細胞内腫瘍性タンパク質の断片のそれを必要とする患者への投与により予防する方法を提供する。
【0071】
我々は、細胞内腫瘍性タンパク質断片を薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリヤーと一緒に含む医薬組成物を提供する。我々は、そのような医薬組成物の癌転移が含まれる癌の予防のための使用を提供する。
【0072】
樹状細胞(DC)は適応免疫応答の制御において重要な役割を果たす抗原提示細胞(APC)であるため、我々は多数のDCをインビトロでCD34+骨髄前駆体から、またはCD14+単球から単離および生成することができるであろう。インビトロワクチン接種は、APCをそれらの細胞表面においてそのペプチド抗原を提示することができるように教育するであろう。その教育されたAPCを再導入して同じ宿主に戻し、これらのペプチド抗原に対するBおよびT細胞応答を誘発し、抗体およびCTL応答を生成させてその特異的な腫瘍抗原を発現している癌細胞を除去することができる。
【0073】
あるいは、または加えて、患者の免疫系を腫瘍性タンパク質または断片によるワクチン接種を用いて直接教育することができる。患者の癌に特異的な腫瘍性タンパク質、抗原お
よび/または変異を同定することができる。これには細胞内または細胞外腫瘍性タンパク質、抗原および/または変異が含まれてよい。次いでこれらの腫瘍性タンパク質、抗原および/または変異の関連する断片を含有するペプチドを合成し、ワクチンとして用いることができる。ワクチン接種は1種類以上のアジュバントの存在下または非存在下でのそのペプチドの投与を含んでよい。例えば、フロイント完全アジュバント。免疫処置はそのペプチドを多数回または多数の部位で投与することを含んでよい。例えば、月1回の間隔で。免疫処置の有効性を試験するため、ELISAを用いてペプチド特異的抗体がその患者により産生されていたかどうかを決定することができる。
【0074】
従って、1種類以上の異なるペプチドを患者に投与することができる。患者の癌と関係している、またはその原因であることが既知である特定の腫瘍性タンパク質の断片、エピトープまたは発癌性変異を含有するペプチドをそのペプチドへの投与に関して選択することができる。従って、選択されるペプチドの混合物は個々の患者に関して個別の(すなわち個人に合わせた)ものであってよい。1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、またはより多くの種類のペプチドの混合物を選択することができる。
【0075】
従って、処置の方法は、患者から得られた試料中の特定の発癌性変異または腫瘍性タンパク質の存在を決定する工程を含んでよい。その試料は、腫瘍生検、または血液もしくは尿試料であってよい。その腫瘍に特異的な抗原は、あらゆる適切な方法、例えばウェスタンブロット、ELISAまたはPCT法により決定することができる。ペプチドはその患者中に存在することが既知である腫瘍性タンパク質または発癌性変異に対応するように設計または選択することができる。
【0076】
細胞内腫瘍性タンパク質
細胞内腫瘍性タンパク質および細胞内抗原は当該技術において既知であり、それにはとりわけ以下のもののいずれか1種類以上、またはそれらの変異体、誘導体、相同体もしくは断片が含まれてよい。
【0077】
当業者は適切な細胞内腫瘍性タンパク質を容易に認識できるであろう。腫瘍形成の間に特異的に上方制御されるが宿主組織において発現が乏しい、または発現していない遺伝子は、腫瘍特異的な標的として特に有望である。遺伝的連鎖(genetic link)を示す癌に関して、その家族性癌と関係のある抗原(エピトープに基づくペプチドワクチン)による免疫適格性の若い感受性の家族のメンバーの免疫処置は、その腫瘍性タンパク質に対して免疫系を予備刺激することができるであろう。次いで、これらの内因性に刺激された抗体は、その特定の腫瘍性タンパク質を発現する癌細胞と潜在的に戦うことができるであろう。本明細書で記述される結果は、癌に対する抗体に基づく療法およびワクチン接種を療法標的としてのより広い多様な細胞内腫瘍性タンパク質に拡張することができることを示唆している。以前は療法用抗体またはワクチン接種により標的とすることができないと考えられていた細胞内腫瘍性タンパク質の全部のクラスが、今やテーラーメイド癌療法ならびに癌ワクチンの新時代における先導役へとその範囲を拡張することができる。我々は、細胞内自己抗原を用いることの1つの可能性のある利点は、細胞外の自己抗原を標的とする免疫細胞は一般に発生の間に排除されるため、それらが細胞外自己抗原よりも免疫応答を誘発するよりよい機会を有する可能性があることであると予想している。我々は、外因性に送達された抗体と比較して、抗原に誘導される抗体療法は類似の抗腫瘍療法的有効性を達成することができることを発見した。既存の従来型の臨床抗体療法は費用がかかるため、ワクチン接種は高力価の抗原に誘導される抗体を誘導する手段としてより有用かつ経済的であり得る。この“癌ワクチン接種”の概念は有望かつ挑戦的である。
【0078】
エストロゲン受容体
本発明において有用な腫瘍性タンパク質がエストロゲン受容体(ER)である。その腫瘍性タンパク質はヒトのERであってよい。それはP03372(GI:544257)において示されるタンパク質配列を含んでよく、またはそれで構成されてよい。
【0079】
エストロゲン受容体およびその断片は、エストロゲン受容体(ER)の過剰発現により引き起こされる、またはそれと関係する乳癌の処置に有用であろう。ERに対する抗体またはER腫瘍性タンパク質もしくはその断片を用いたワクチン接種は拡散を予防するために用いることができるであろう。これは特に、Her2または他のタンパク質の発現に関わらずER陽性乳癌患者を標的とするために有用である。
【0080】
エストロゲン受容体(ER)は、ホルモン結合、DNA結合、および転写の活性化に重要ないくつかのドメインからなるリガンドで活性化される転写因子である。オルタナティブスプライシングは結果としていくつかのERのmRNA転写産物をもたらし、それは主にそれらの5−プライム非翻訳領域において異なっている。その翻訳された受容体はより低い多様性を示す(OMIM参考文献133430を参照)。
【0081】
エストロゲン受容体は周知の細胞内受容体である(Ross-Innes CS, Stark R, Holmes KA, et al. Cooperative interaction between retinoic acid receptor alpha and estrogen receptor in breast cancer. Genes Dev. 2010;24:171-182を参照)。
【0082】
B型肝炎ウイルス(HBV)タンパク質
B型肝炎タンパク質は本発明における使用に適している可能性がある。HBVは8種類の遺伝子型として存在する。
【0083】
1つの適切なHBVタンパク質はHBV Xタンパク質である。HBV Xタンパク質は感染した細胞の核の中に局在している。ほとんどの肝細胞癌(HCC)はHBV感染と関係している。従って、HBVタンパク質はHCCを処置するために有用である可能性があり、抗体はウイルスタンパク質を標的としてウイルスに感染した細胞を特異的に破壊し、一方で正常な細胞を無傷なままにする。
【0084】
HBV−Xタンパク質に関するタンパク質配列はGenBankに寄託されており、本発明における使用に適している。例えば、用語“HBV−Xタンパク質”は、GenBank CBX46805.1(GI:310923520)またはEMBL受入番号FR714506.1において示される配列を含む、もしくはそれで構成されるタンパク質、または受入番号AB670311.1(GI:371919030)において示されるような配列を有する遺伝子によりコードされるタンパク質を指して用いられてよい。
【0085】
PRL−3
以下の文章はOMIM登録番号606449から適合させている。
【0086】
PRL−3はタンパク質チロシンホスファターゼ、タイプ4A,3;PTP4A3としても知られている。PRL−3の染色体上の位置は、遺伝子地図座位8q24.3にある。
【0087】
心臓において、プロテインキナーゼは収縮性、イオン輸送、代謝、および遺伝子発現を制御している。ホスファターゼは、それらの脱リン酸化における役割に加えて、心肥大および心機能不全に関わっている。
【0088】
データベース検索および心臓cDNAライブラリーのスクリーニングにより、Matter et al. 2001 , Biochem. Biophys. Res. Commun. 283: 1061-1068はPTP4A3をコード
するcDNAを同定し、彼らはそれをPRL3と名付けた。推測されるPRL3タンパク質はPRL1(PTP4A1;601585)に76%同一であり、マウスのPrl3に96%同一である。ノーザンブロット分析は主に心臓および骨格筋におけるおおよそ2.3kbのPRL3転写産物の発現を明らかにし、膵臓でより低く発現していた。この発現パターンはPRL1およびPRL2(PTP4A2;601584)のより広い発現とは異なっている。インサイチュハイブリダイゼーション分析はPRL3発現を心筋細胞に位置付けた。トリスグリシンゲル分析は、PRL3が22kDのタンパク質として発現していることを示した。機能および変異の分析は、ホスファターゼの切断がPRL3のcysl04に依存していることを示した。PRL3の過剰発現は結果として増大した細胞増殖をもたらした。ウェスタンブロット分析はアンギオテンシンII(106150)に応答するpl30cas(BCAR1;602941)の脱リン酸化を示し、これはアンギオテンシンIIにより誘導される細胞内カルシウム移行の調節におけるPRL3の役割を示唆している。
【0089】
転移に関する分子的基礎への洞察を得るため、Saha et al. 2001, Science 294: 1343-1346は転移性結腸直腸癌の全体的な遺伝子発現プロフィールを原発癌、良性結腸直腸腫瘍、および正常な結腸直腸上皮の遺伝子発現プロフィールと比較した。PRL3は研究された18の癌転移のそれぞれにおいて高レベルで発現していたが、非転移性腫瘍および正常な結腸直腸上皮ではより低いレベルで発現していた。調べられた12個の転移の内の3個では、多コピーのPRL3遺伝子が染色体8q24.3に位置する小さいアンプリコン内で見付かった。Saha et al. (2001)は、PRL3遺伝子は結腸直腸癌の転移に重要であると結論付けた。
【0090】
スタンフォードG3放射線ハイブリッドパネルおよびデータベース配列分析を用いて、Saha et al. (2001)はPRL3遺伝子を周辺のマーカー145.20に位置付けた(mapped)。PRL3遺伝子はマーカーSHGC−22154にも密接に連鎖しており、それは8q24.3に位置し、8qテロメアからおおよそ3Mbである。
【0091】
マウスおよびヒトのPRL−3タンパク質はLi et al (2005), Clin Cancer Res; 11 :2195-204において詳細に記述された。
【0092】
PRL−3の配列
本明細書で記述される方法および組成物はPRL−3ポリペプチドを利用しており、それは下記で詳細に記述される。本明細書で用いられる際、“PRL−3”は以下から選択される配列を指すことを意図している。
【0093】
【表1-1】
【0094】
【表1-2】
【0095】
【表1-3】
【0096】
“PRL−3ポリペプチド”は、ヒトPRL−3ポリペプチド、例えばUnigene受入番号AF041434.1を有する配列を含んでよく、またはそれで構成されてよい。
【0097】
これらのポリペプチドのいずれか、一部、もしくは全部の相同変異体およびその誘導体も含まれる。例えば、PRL−3にはUnigene受入番号BC066043.1が含まれてよい。
【0098】
VHZ
本明細書で記述される方法および組成物はVHZを利用し、それは下記で詳細に記述される。
【0099】
VHZはDUSP23、MOSP、LDP−3、DUSP25、FLJ20442およびRP11 −190A12.1としても知られている。
【0100】
本明細書で用いられる際、用語“VHZ”はGenBank受入番号NP_060293.2、NP_081001.1、XP_341 157.1、XP_001 170819.1、XP_001 170835.1、XP_545747.2、NP_001076078.1、NP 00101 1371.1、NP_783859.1、NP_001034709.1、XP_001480730.1、XP_001 1 17253.1またはXP 001 1 17256.1を有するポリペプチド配列を指してよい。
【0101】
“VHZポリペプチド”はヒトのVHZポリペプチド、例えば受入番号NP 060293を有する配列を含んでよく、またはそれで構成されてよい。
【0102】
核酸配列に関して、用語“VHZポリヌクレオチド”、“VHZヌクレオチド”および“VHZ核酸”は互換的に用いられてよく、特にcDNAおよびゲノムVHZ配列の両方が含まれるものと理解されるべきである。これらの用語にはVHZポリペプチドおよび/またはこれの断片、誘導体、相同体または変異体をコードすることができる核酸配列が含まれることも意図されている。
【0103】
VHZ核酸に言及する場合、これはVHZファミリーの核酸のあらゆるメンバーへの言及として受け取られるべきである。特に興味深いのは、以下:NM_017823.3、NM_026725.2、XM_341 156.3、XM_001 170819.1、XM_ 170835.1、XM_545747.2、ΝM_001082609.1、ΝM_00101 1371.1、Ν_175732.1、ΝM_001039620.1、XM_001480680.1、XM_001 1 17253.1またはXM 001 1 17256.1からなる群から選択されるVHZ核酸である。
【0104】
下記で“他のVHZ核酸配列”として示される核酸配列のいずれか1個以上も含まれる。
【0105】
例えば、そのVHZ核酸はGenBank受入番号NM 017823.3を有するヒトVHZ配列を含んでよい。
【0106】
Her2
Her2/neu(ErbB−2としても知られている)は“ヒト上皮成長因子受容体2”を表し、乳癌においてより高い侵攻性(aggressiveness)を与えるタンパク質である。それはErbBタンパク質ファミリー、より一般的には上皮成長因子受容体ファミリーとして知られているタンパク質ファミリーのメンバーである。HER2/neuはCD340(分化抗原群(cluster of differentiation)340)およびp185とも呼ばれてきた。HER2は細胞膜表面結合受容体チロシンキナーゼであり、通常は細胞増殖および分化につながるシグナル伝達経路に関わっている。
【0107】
本明細書で記述される際、HER2はGenBank受入番号NP_004439.2、NP_001005862.1、NP_001003817.1、AAI67147.1から選択されるポリペプチド配列を指してよい。
【0108】
“Her2ポリペプチド”は、本明細書で言及される際、ヒトのHER2ポリペプチド配列、例えば受入番号P04626.1のポリペプチド配列を含んでよく、またはそれで構成されてよい。
【0109】
Her2ポリペプチドは米国特許第6,333,169号および欧州特許第1,418,235号において記述されている。
【0110】
本発明において有用な他の腫瘍性タンパク質には、EGFR(GenBank受入番号CAA25240(GI:119533)、ADZ75461.1(GI326467049))、SHP1(GenBank受入番号NP002822.2(GI:18104989)、NP536858.1(GI:18104991)、NP536859.1(GI:18104991))、Tiam(GenBank受入番号NP003244.2(GI:115583670)、AAA98443.1(GI:897557)、Q13009.2(GI:152031709))、Myc(GenBank受入番号AAA59886.1(GI:188975)、AAA59887.1(GI:188977)、CAA25015.2(GI:29839758)、NP002458.2(GI:71774083))、Ras(GenBank受入番号AAA34557.1(GI:171374))およびRunx−1(GenBank受入番号NP001079966.1(GI:148232064))が含まれる。
【0111】
好ましい細胞内腫瘍性タンパク質標的には、アンドロゲン受容体(AAA51772;GI:178882)、Her2(P04626.1;GI:119533、その受容体の細胞内ドメインを標的とする)、変異体Ras(GenBank受入番号AAA34557.1;GI:171374)、Jak(AAA19626.1;GI:508731)、FLT3(ITD3;CAA81393.1;GI:406323)、Runx1(AAI36381.1;GI:223459612)、Tiam、Gfi(NP_005254.2 GI:71037377)、Cot(MAP3K8;CAG47079.1;GI:49457560)、Myc、SHP1、FGF(CAA28027.1;GI:31362)が含まれる。
【0112】
他の好ましい腫瘍性タンパク質には、KRas(V−Ki−ras2 カーステン・ラット肉腫ウイルス腫瘍遺伝子相同体;GenBank P01116.1 GI:131875);EGFR(上皮成長因子受容体;P00533.2 GI:2811086);BRaf(P15056.4 GI:50403720);PI3KCA(ホスファチジルイノシトール3−キナーゼ制御サブユニットアルファ;P27986.2 GI:118572681);ベータカテニン(CAA61107.1 GI:860988);GNAS(グアニンヌクレオチド結合タンパク質;Q5JWF2.2 GI:116248089);Ret(CAA73131.1 GI:1946207)およびEZH2(ヒストン−リシン N−メチルトランスフェラーゼ;zesteのエンハンサー相同体2(enhancer of zeste homolog 2);Q15910.2 GI:3334180)が含まれる。
【0113】
発癌性変異には、同封の図27および28において列挙されている発癌性変異、ならびにhttp://share.gene.com/mutation_classification/cancer.variants.txtから得ること
ができる発癌性変異が含まれる。
【0114】
発癌性変異
発癌性変異は、癌と関係する、または癌の原因である遺伝子中の変異である。その変異は単一のアミノ酸残基の置換、欠失または付加である可能性がある。あるいは、それは1個より多くのアミノ酸残基に影響を及ぼす可能性がある。多くの発癌性変異が当該技術において既知である。特定の発癌性変異がhttp://share.gene.com/mutation_classification/cancer.variants.txtにおいて列挙されている。発癌性変異は、癌から得られた、また
は癌と関係するタンパク質の配列を、癌を患っていない個体から得られた相同タンパク質と比較することにより同定することができる。タンパク質配列を比較するための方法は当該技術において周知である。
【0115】
タンパク質断片およびペプチド
本発明に従うタンパク質断片またはペプチド(本明細書において互換的に用いられる)は、細胞内発癌タンパク質または発癌タンパク質の細胞内部分からのアミノ酸残基の連続した配列に基づく、またはそれを含む小さいポリペプチド、ペプチドまたはペプチド模倣体である。そのタンパク質断片およびペプチドは発癌タンパク質全体は含まない。ペプチドは、通常細胞内に位置している腫瘍性タンパク質の断片、または通常細胞内に位置しているその腫瘍性タンパク質の領域に対応する腫瘍性タンパク質の断片を含んでよく、またはそれで構成されてよい。
【0116】
本発明に従うタンパク質断片またはペプチドは、150、140、130、120、110または100アミノ酸の最大長、かつその対応する腫瘍性タンパク質の完全長よりも小さい最大長を有していてよい。より好ましくは、その最大ペプチド長は90アミノ酸、さらにもっと好ましくは80アミノ酸、さらにもっと好ましくは70アミノ酸、さらにもっと好ましくは60アミノ酸、さらにもっと好ましくは50アミノ酸、さらにもっと好ましくは40アミノ酸であり、さらにもっと好ましくはその最大長は30、29、28、27、26、25、24、23、22、21、20、19、18、17、16、15、14、13、12、11、10または9アミノ酸の1つから選択される。例えば、ペプチドは150、140、130、120、110、100、90、80、70、60、50、40、30、25、20または15アミノ酸の最大長を有していてよい。
【0117】
本発明に従うタンパク質断片またはペプチドは、7アミノ酸の最小長を有していてよい。より好ましくは、その最小長は7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25アミノ酸の1つから選択される。
【0118】
本発明に従うペプチドは、前記の最小値および最大値の間のあらゆる長さを有していてよい。従って、例えば、ペプチドは5から100まで、7から100まで、7から80まで、7から60まで、7から50まで、7から40まで、8から30まで、10から25まで、12から20まで、9から15アミノ酸まで、8から11アミノ酸まで、9から11アミノ酸まで、9から13アミノ酸まで、または9から14アミノ酸までの長さを有していてよい。特に、そのペプチドは7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、72、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99または100アミノ酸の1つから選択されるアミノ酸長を有していてよい。
【0119】
一部の態様において、そのタンパク質断片は10〜50、10〜40、10〜30、10〜20、15〜50、15〜40、15〜30、15〜20、20〜50、20〜40、20〜30、20〜25、25〜50、25〜40、25〜30、30〜50、30〜40、または40〜50アミノ酸長の1つであってよい。
【0120】
そのタンパク質断片またはペプチドは、前記の最小長および最大長の間のどの長さを有していてもよい。
【0121】
そのタンパク質断片またはペプチドは、好ましくは、その患者の免疫系により認識され、かつ好ましくはその患者における抗腫瘍性タンパク質抗体の産生を刺激することができるその腫瘍性タンパク質の少なくとも1個のエピトープ(場合により2個以上のエピトープ)を含む。
【0122】
一部の態様において、その断片のアミノ酸配列はその対応する完全長腫瘍性タンパク質中に存在するアミノ酸の連続した配列を含み、またはそれで構成される。
【0123】
タンパク質断片またはペプチドは発癌性変異を含むように設計されてよい。すなわち、そのペプチドは変異を含むその腫瘍性タンパク質の領域の断片である。その変異は、そのタンパク質の野生型または非発癌性形態と比較した場合に、その腫瘍性タンパク質中に存在していてよい。従って、そのペプチドはあるタンパク質の発癌性形態に特有の配列を有していてよい。そのペプチドは、その変異の片側または両側に1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、またはより多くのアミノ酸を有していてよい。そのペプチドはその変異のそれぞれの側に同じ数のアミノ酸を有していてよく、またはその変異のそれぞれの側に異なる数のアミノ酸を有していてよい。
【0124】
現代技術はその腫瘍が特定の発癌性変異と関係している、またはそれにより引き起こされた患者を容易に同定することができるため、我々は次いでこれらの発癌性変異に対応するペプチドを設計することができるであろう。
【0125】
他の態様において、その断片はその対応する完全長タンパク質中に存在するアミノ酸の連続した配列に対して少なくとも60%のアミノ酸配列の同一性を有する。より好ましくは、配列の同一性の程度は65%、70%、75%、80%、85%、87%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%の同一性の1つである。
【0126】
本発明は、タンパク質断片を形成する腫瘍性タンパク質からのアミノ酸の連続した配列の誘導体および模倣体を組み込む。
【0127】
ペプチドはその腫瘍性タンパク質の単一のエピトープまたは単一の領域を含むように合成されてよく、かつ発癌性変異を含んでいてよい。あるいは、ペプチドは腫瘍性タンパク質の1個より多くの領域または1個より多くのエピトープの組み合わせを含んでいてよい。例えば、同じまたは異なる腫瘍性タンパク質の2、3、4、5、6、7、8、9、10、またはより多くの領域またはエピトープを同じペプチド中で組み合わせてよい。これはその1個より多くの領域またはエピトープを連結するための短いリンカーペプチドの使用を含んでよい。そのリンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、またはより多くのアミノ酸で構成されていてよい。ペプチド誘導体には所与のアミノ酸の配列の変異体が含まれ、野生型完全長タンパク質アレルゲンにおいて同定されたようなペプチド配列に対する実質的なアミノ酸配列同一性を有する天然に
存在する対立遺伝子変異体および合成変異体が含まれてよい。
【0128】
ペプチド誘導体には、少なくとも60%のアミノ酸配列同一性を有し、抗腫瘍性タンパク質抗体の生成を刺激することができるペプチドが含まれてよい。
【0129】
ペプチド誘導体は、好ましくはその腫瘍性タンパク質中の対応するアミノ酸配列と5個未満のアミノ酸が異なっている。より好ましくは、異なるアミノ酸の数は4アミノ酸以下、3アミノ酸以下、2アミノ酸以下、または1アミノ酸のみである。
【0130】
ペプチド誘導体は、そのペプチドが由来するタンパク質ファミリーのメンバーの間に存在し得る天然の変異または多型により生じ得る。全てのそのような誘導体は本発明の範囲内に含まれる。
【0131】
ペプチド誘導体は、そのアミノ酸配列の付加、置換、欠失または修飾をもたらす天然または非天然(例えば合成)の介入の結果生じ得る。
【0132】
そのような多型中で見付かる可能性のある保存的置換および修飾は、以下の群内のアミノ酸の間であることができる:
(i)アラニン、セリン、スレオニン;
(ii)グルタミン酸およびアスパラギン酸;
(iii)アルギニンおよびロイシン;
(iV)アスパラギンおよびグルタミン;
(V)イソロイシン、ロイシンおよびバリン;
(Vi)フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファン;
(Vii)メチオニンおよびロイシン;
(Viii)システインおよびバリン。
【0133】
ペプチド誘導体は、例えばそのペプチドの分解に耐えるようにその腫瘍性タンパク質からのアミノ酸配列を修飾することにより提供することもできる。
【0134】
ペプチド模倣体
既知の薬学的に有効な化合物に対する模倣体の設計は、“リード”化合物に基づく医薬の開発に対する既知のアプローチである。これは、その有効化合物が合成が困難である、もしくは費用がかかる場合、またはそれが特定の投与方法に適さない場合に望ましい可能性があり、例えば一部のペプチドは、それらが消化管中のプロテアーゼにより急速に分解される傾向があるため、経口組成物に関して不適切な有効薬剤である可能性がある。模倣体の設計、合成および試験は、一般に標的特性に関して多数の分子をランダムにスクリーニングするのを避けるために用いられる。
【0135】
所与の標的特性を有する化合物からの模倣体の設計において一般的に用いられるいくつかの工程がある。第1に、その標的特性の決定において決定的および/または重要であるその化合物の特定の部分を決定する。ペプチドの場合、これはそのペプチド中のアミノ酸残基を、例えばそれぞれの残基を順番に置換することにより系統的に変更することにより行うことができる。その化合物の活性な領域を構成するこれらの部分または残基は、その“ファルマコフォア”として知られている。
【0136】
一度そのファルマコフォアを見付けたら、その構造を、ある範囲の源、例えば分光分析技法、X線回折データおよびNMRからのデータを用いて、その物理特性、例えば立体化学、結合、大きさおよび/または電荷に従ってモデルする(modelled)。コンピューター分析、類似性マッピング(それは原子間の結合よりもむしろファルマコフォアの
電荷および/または体積をモデルする)および他の技法をこのモデリングプロセスにおいて用いることができる。
【0137】
このアプローチの変形において、リガンドおよびその結合パートナーの3次元構造をモデルする。これはリガンドおよび/または結合パートナーが結合の際に立体構造を変化させる場合に特に有用である可能性があり、その模倣体の設計においてそのモデルがこれを考慮することを可能にする。
【0138】
次いでその上にそのファルマコフォアを模倣する化学基を移植することができる鋳型分子を選択する。その鋳型分子およびその上に移植された化学基は、その模倣体を合成し易い、それが薬学的に許容可能でありそうである、そしてインビボで分解せず、一方でそのリード化合物の生物学的活性を保持しているように選択することができる。次いでこのアプローチにより見付かった模倣体(単数または複数)を、それらがその標的特性を有するかどうか、またはどの程度までそれらがそれを示すかを調べるためにスクリーニングすることができる。次いで、インビボまたは臨床試験のための1種類以上の最終的な模倣体に到達するため、さらなる最適化または修飾を実施することができる。
【0139】
本発明に関して、ペプチド模倣体はペプチド誘導体の1形態である。免疫応答を刺激することができるペプチド誘導体を同定する方法は、ペプチド構造を修飾してペプチド模倣体を生成する工程を含んでよい。このペプチド模倣体に対して、場合により抗体産生アッセイでの試験を行うことができる。このペプチドまたはペプチド模倣体の修飾および試験のプロセスを、所望であるように、抗腫瘍性タンパク質抗体の増殖への所望の作用、または所望のレベルの作用を有するペプチドが同定されるまで何回も繰り返してよい。
【0140】
用いられる修飾工程は、そのペプチドまたはペプチド模倣体の長さを切り詰めること(これはより短い長さのペプチドまたはペプチド模倣体を合成することを含んでよい)、1個以上のアミノ酸残基もしくは化学基の置換、および/またはそのペプチドもしくはペプチド模倣体を修飾して安定性、分解に対する耐性、細胞膜を越える輸送、および/または体からの排除に対する耐性を増大させることを含んでよい。
【0141】
細胞内腫瘍性タンパク質エピトープ
その抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体は、その細胞内腫瘍性タンパク質上のエピトープに特異的に結合することができる。
【0142】
特定の抗体が結合するエピトープを決定するための方法は、当該技術で既知である。そのようなエピトープマッピング法は、例えばHanson et al., (2006). Respiratory Research, 7: 126において記述されている。さらに、当業者は抗体を作製してそれらを特定の
特性に関してスクリーニングすることができるであろう。
【0143】
ポリペプチド
“ポリペプチド”は、ペプチド結合または修飾されたペプチド結合(すなわちペプチドイソスター(isosteres))により互いに連結された2個以上のアミノ酸を含むあらゆるペプチドまたはタンパク質を指す。“ポリペプチド”は、短い鎖(一般にペプチドと呼ばれる)、オリゴペプチドまたはオリゴマー、およびより長い鎖(一般にタンパク質と呼ばれる)の両方を指す。ポリペプチドは遺伝子がコードする20種類のアミノ酸以外のアミノ酸を含有していてよい。
【0144】
“ポリペプチド”には、天然のプロセス、例えば翻訳後プロセシングによるか、または当該技術で周知の化学修飾技法によるかのどちらで修飾されたアミノ酸配列も含まれる。そのような修飾は基本的な教科書において、そしてより詳細な研究書において、ならびに
大部の研究文献において十分に記述されている。修飾は、ペプチド主鎖、アミノ酸側鎖およびアミノまたはカルボキシル末端を含め、ポリペプチド中のあらゆる部位で起こり得る。同じタイプの修飾が所与のポリペプチド中のいくつかの部位において同じまたは異なる程度で存在していてよいことは理解されるであろう。また、所与のポリペプチドが多くのタイプの修飾を含有していてよい。
【0145】
ポリペプチドはユビキチン化の結果として分枝していてよく、それらは分枝を含む、または含まない環状であってよい。環状の、分枝した、および分枝した環状のポリペプチドは、翻訳後の天然のプロセスの結果であってよく、または合成法により作製されてよい。修飾には、アセチル化、アシル化、ADP−リボシル化、アミド化、フラビンの共有結合、ヘム部分の共有結合、ヌクレオチドまたはヌクレオチド誘導体の共有結合、脂質または脂質誘導体の共有結合、ホスファチジルイノシトールの共有結合、架橋、環化、ジスルフィド結合形成、脱メチル化、共有結合性架橋の形成、シスチンの形成、ピログルタメートの形成、ホルミル化、ガンマ−カルボキシル化、糖鎖付加、GPIアンカー形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、ミリストイル化、酸化、タンパク質分解性プロセシング、リン酸化、プレニル化、ラセミ化、セレノイル化(selenoylation)、硫酸化、転移RNAに媒介されるアミノ酸のタンパク質への付加、例えばアルギニン化(arginylation)、およびユビキチン化が含まれる。例えば、Proteins - Structure and Molecular Properties, 第2版, T. E. Creighton, W. H. Freeman and Company, ニューヨーク, 1993およびPosttranslational Covalent Modification of Proteins, B. C. Johnson編集, Academic Press, ニューヨーク, 1983中のWold, F., Posttranslational Protein Modifications: Perspectives and Prospects, 1〜12ページ;Seifter et al., “Analysis for protein modifications and nonprotein cofactors”, Meth Enzymol (1990) 182:626-646およびRattan et al, “Protein Synthesis: Posttranslational Modifications and Aging”, Ann NY AcadSci (1992) 663:48-62を参照。
【0146】
用語“ポリペプチド”には、当該技術で既知の様々な合成ペプチド変異体、例えばレトロインベルソDペプチドが含まれる。そのペプチドは抗原決定基および/またはT細胞エピトープであってよい。そのペプチドはインビボで免疫原性であってよい。そのペプチドはインビボで抗体の中和を誘導することができてよい。
【0147】
細胞内腫瘍性タンパク質に適用される際、結果として生じるアミノ酸配列は1種類以上の活性、例えば細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチド、例えばヒトの細胞内腫瘍性タンパク質と共通する生物学的活性を有していてよい。例えば、細胞内腫瘍性タンパク質相同体は癌細胞において正常な乳房細胞と比較して増大した発現レベルを有していてよい。特に、用語“相同体”は、結果として生じるアミノ酸配列が細胞内腫瘍性タンパク質活性を有することを提供する構造および/または機能に関する同一性を含む。配列の同一性(すなわち類似性)に関して、少なくとも70%、例えば少なくとも75%、例えば少なくとも85%、例えば少なくとも90%の配列の同一性が存在していてよい。少なくとも95%、例えば少なくとも98%の配列の同一性が存在していてよい。これらの用語は、細胞内腫瘍性タンパク質核酸配列の対立遺伝子変異であるアミノ酸に由来するポリペプチドも含んでよい。
【0148】
ポリペプチド、例えば細胞内腫瘍性タンパク質の“活性”または“生物学的活性”に言及する場合、これらの用語は、類似の活性もしくは向上した活性または減少した望ましくない副作用を有するこれらの活性を含め、その細胞内腫瘍性タンパク質の代謝的または生理的機能を指すことを意図している。その細胞内腫瘍性タンパク質の抗原性および免疫原性活性も含まれる。そのような活性の例、ならびにこれらの活性をアッセイおよび定量化する方法は当該技術で既知であり、この文書の別の箇所で詳細に記述される。
【0149】
予防的および療法的方法
我々は、過剰量の細胞内腫瘍性タンパク質の発現または活性に関連して、異常な状態、例えば癌を処置する方法を開示する。癌を予防する方法(すなわち予防法)も、同じまたは類似のアプローチを適切に用いる。
【0150】
概して言えば、我々の方法は、細胞中の細胞内腫瘍性タンパク質の発現、量または活性を調節する(例えば下方制御する)ことによる癌細胞の操作を含む。その方法は、癌細胞を破壊または根絶する方法を含んでよい。その癌細胞は、細胞内腫瘍性タンパク質を発現する癌細胞を含んでよい。その癌細胞は、癌性でない細胞と比較して細胞内腫瘍性タンパク質を過剰発現する癌細胞であってよい。我々の方法は、患者を細胞内腫瘍性タンパク質断片に曝露させることを含んでよい。
【0151】
その癌細胞は、細胞内腫瘍性タンパク質陽性癌患者からのものであってよい。従って、我々の方法は、細胞内腫瘍性タンパク質陽性癌患者から細胞内腫瘍性タンパク質を過剰発現する癌細胞を根絶することを含んでよい。
【0152】
調節された細胞中の細胞内腫瘍性タンパク質の発現、量または活性を検出する工程は、その操作工程の前または後に実施されてよい。その検出工程は、上方制御または下方制御された細胞内腫瘍性タンパク質の発現、量または活性を検出してよい。この文書の別の箇所で詳細に記述されるような、または当該技術で既知の、細胞内腫瘍性タンパク質を調節または下方制御する方法のいずれを用いてもよい。
【0153】
特に、その方法はその細胞を細胞内腫瘍性タンパク質に特異的に結合することができる抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体に曝露させることを含んでよい。癌を患っている、または患っていることが疑われる個体の状況において、その方法は療法上有効量の細胞内腫瘍性タンパク質断片をその個体に投与することを含んでよい。細胞内腫瘍性タンパク質断片およびそれらを投与する方法は、この文書の別の箇所で詳細に記述される。
【0154】
我々の方法によれば、その操作の結果として癌細胞は非癌性になり、またはその浸潤性もしくは転移性癌細胞は非浸潤性もしくは非転移性になる。その癌は特に、以下の癌からなる群から選択される浸潤性または転移性癌のような癌を含んでよい:結腸直腸癌、卵巣癌、乳癌、肝臓癌、膵臓癌、前立腺癌、胃癌、肺癌、陰茎癌、子宮頚癌、脳癌、食道癌、膀胱癌、腎臓腎細胞癌、卵巣リンパ腫および皮膚メラノーマ。
【0155】
細胞内腫瘍性タンパク質は癌の侵攻性および浸潤性と関係しているため、細胞内腫瘍性タンパク質のレベルを癌を有する個体の細胞において、癌または癌ではない細胞において検出し、癌の侵攻性を評価することができる。正常な細胞と比較して高レベルの細胞内腫瘍性タンパク質の量、発現または活性は、侵攻性または浸潤性の癌を示し、従ってより強い、またはより苛酷な療法が必要とされ、選択され得る。同様に、より低いレベルは積極性(aggressive)または侵襲性がより低い療法の必要を示している可能性がある。
【0156】
本明細書で記述されるアプローチは、あらゆる細胞内腫瘍性タンパク質関連疾患一般の療法のために用いることができる。細胞内腫瘍性タンパク質関連疾患には増殖性疾患が含まれ、特に癌が含まれる。例えば、細胞内腫瘍性タンパク質関連疾患には転移癌、浸潤癌または侵攻性の癌が含まれてよい。
【0157】
本発明の方法は、まだ癌を発症していない、または癌の症状を示さない、もしくは癌の早期症状を示す個体における癌の形成を処置または予防するために有用である。その個体は、家族のメンバーにおけるその癌の有病率の評価を通して、癌の疑いがある、または癌
を患っていそうであると同定されていてよい。例えば、1人以上の家族のメンバー、例えば兄弟姉妹、母方または父方の親戚における特定の細胞内腫瘍性タンパク質と関係する癌の存在は、その人もその癌を発症しそうであることを示している。例えば、その親(単数または複数)がある細胞内腫瘍性タンパク質と関係する癌を発症したことがある乳児または若年成人は、その(細胞内)腫瘍性タンパク質と関係する癌を患っていそうである、またはそれを発症する危険性があると決定されてよい。
【0158】
ある細胞内腫瘍性タンパク質と関係する癌を発症しそうであると同定された人は、その癌を発症する前に、またはその癌と関係する症状を発現する前に、細胞内腫瘍性タンパク質断片に基づくワクチンの1以上の用量を投与されてよい。あるいは、または加えて、その用量の1以上がその人がその癌を発症した後に、またはその癌と関係する症状を発現した後に投与されてよい。
【0159】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片に基づくワクチンは予備刺激−追加免疫(prime−boost)投与計画で投与されてよく、ここでその人は細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンの第1用量を投与され、続いて細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンの1以上のさらなる用量を投与される。適切な予備刺激−追加免疫投与計画は、当業者には周知であろう。例えば、その細胞内腫瘍性タンパク質断片に基づくワクチンの第1用量をゼロの時点で投与し、腫瘍性タンパク質のさらなる用量を1週、1ヶ月、3ヶ月、1年、または他の適切な期間の後投与することができる。一部の場合において、続く用量は前の用量の投与の1週、1ヶ月、3ヶ月、1年、または他の期間の後投与される。
【0160】
その方法はさらに、その患者がその細胞内腫瘍性タンパク質に特異的である抗体を産生しているかどうか分析し、続いてその細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンを投与する工程を含んでよい。
【0161】
本明細書で記述される方法および組成物は、その処置が適用された個体における測定可能な基準における、その処置を受けなかった個体と比較した向上を適切に可能にする。
【0162】
この目的に関して、その患者の癌の進行または健康を反映するいくつかの基準を指定することができる。有用な基準には、腫瘍サイズ、腫瘍の寸法、腫瘍の最大寸法、腫瘍の数、腫瘍マーカー(例えばアルファフェトプロテイン)の存在、転移の程度または数等が含まれ得る。
【0163】
従って、例として、処置された個体は適切なアッセイまたは試験により測定した際に腫瘍サイズまたは数における減少を示し得る。処置された個体は、処置されなかった個体と比較して、例えば1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、100%の、またはより大きい個々の腫瘍の腫瘍サイズにおける減少、または腫瘍の数における減少、または両方を示し得る。
【0164】
例えば、細胞内腫瘍性タンパク質関連疾患は、その疾患と関係する状態が対照と比較して有意に(すなわち50%以上)抑制される場合、“処置された”と定義されてよい。その抑制は、対照と比較して少なくとも75%、例えば90%、95%または100%であってよい。その状態は細胞増殖を含んでよく、またはそれは細胞周期時間、細胞数、細胞移動、細胞の浸潤性、腫瘍形成、腫瘍転移、腫瘍拡散等を含んでよい。用語“処置”により、我々は癌の予防または緩和も含むことを意味している。
【0165】
増殖性障害という用語は、本明細書において、細胞周期の制御を必要とするあらゆる障害を含む広い意味で用いられている。特に、増殖性障害には悪性および前新生物障害が含
まれる。本明細書で記述される方法および組成物は、腺癌、例えば:小細胞肺癌、および腎臓、子宮、前立腺、膀胱、卵巣、結腸および乳房の癌の処置または診断に関して特に有用である。例えば、処置することができる可能性のある悪性腫瘍には、急性および慢性白血病、リンパ腫、骨髄腫、肉腫、例えば線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、リンパ管内皮細胞肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、血管肉腫、内皮細胞肉腫、軟骨肉腫、骨肉腫、脊索腫、リンパ管肉腫、滑膜腫、中皮腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、膵臓癌、乳癌、扁平上皮細胞癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、絨毛腫、腎細胞癌、肝細胞癌、胆管癌、精上皮腫、胎児性癌、子宮頚癌、精巣腫瘍、肺癌、小細胞肺癌、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、髄芽細胞腫、頭蓋咽頭腫、乏突起神経膠腫、髄膜腫、メラノーマ、神経芽細胞腫(neutroblastoma)および網膜芽細胞腫が含まれる。
【0166】
本発明により処置することができる、または予防することができる癌は、特定の腫瘍性タンパク質の発現と関係している。癌細胞は、特定の腫瘍性タンパク質を発現している、もしくは異常に発現している(例えば過剰発現している)、またはその腫瘍性タンパク質をそれが正常な細胞中よりも高いレベルでその癌細胞中にあるように不正確に処理する可能性がある。
【0167】
例えば、試料(例えば生検)を癌を有する、または癌を有することが疑われる、または癌を発症する危険性がある対象から得る。その試料を検査して、選択された腫瘍性タンパク質、好ましくは細胞内腫瘍性タンパク質が異常に発現しているかどうか、またはその患者が癌の発症のより高い危険性と相関しているその腫瘍性タンパク質の特定のイソ型もしくは変異体に関する保因者であるかどうか決定する。従って、その対象をその腫瘍性タンパク質の発現プロフィールに基づく処置に関して類別することができ、本発明に従うタンパク質断片(単数または複数)またはペプチド(単数または複数)を用いた処置(予防的であってもよい)を開始することができる。
【0168】
腫瘍性タンパク質の過剰発現は、所与のタイプの細胞または組織に関して通常予想されるであろうレベルよりも高いレベルでの発現を含む。従って、過剰発現はタンパク質の発現のレベルを細胞間で比較することにより決定することができる。例えば、同じタイプの、そして好ましくは同じ組織型からの(しかし場合により異なる対象からの)癌性細胞および非癌性(健康な)細胞の間で比較を行うことができる。別の例において、癌組織中に存在する細胞型および(場合により同じ対象中の)非癌性組織中に存在する対応する細胞型の間で比較を行うことができる。
【0169】
発現のレベルは、絶対的比較のために定量化されてよく、または相対的比較を行ってよい。
【0170】
一部の態様において、タンパク質の過剰発現は、その試験試料中の発現のレベルが対照試料中の発現のレベルの少なくとも1.1倍である場合に存在すると考えられてよい。より好ましくは、その発現のレベルは、対照試料中の発現のレベルの少なくとも1.2、少なくとも1.3、少なくとも1.4、少なくとも1.5、少なくとも1.6、少なくとも1.7、少なくとも1.8、少なくとも1.9、少なくとも2.0、少なくとも2.1、少なくとも2.2、少なくとも2.3、少なくとも2.4、少なくとも2.5、少なくとも2.6、少なくとも2.7、少なくとも2.8、少なくとも2.9、少なくとも3.0、少なくとも3.5、少なくとも4.0、少なくとも5.0、少なくとも6.0、少なくとも7.0、少なくとも8.0、少なくとも9.0、または少なくとも10.0倍の1つから選択されてよい。
【0171】
細胞内腫瘍性タンパク質断片の使用を含む本明細書で記述される療法に対するアプローチは、遺伝子機能を阻害して腫瘍細胞が増殖または進行するのを妨げるための、本明細書で記述したような細胞内腫瘍性タンパク質ポリヌクレオチドに対して向けられたアンチセンスコンストラクトの発現およびそれらの腫瘍細胞への投与が含まれる、そのような障害の療法に関する他のアプローチと組み合わせることができる。
【0172】
アンチセンスコンストラクトを用いて、増殖性細胞において遺伝子機能を阻害して増殖または進行を妨げることができる。センス核酸またはmRNAに相補的なアンチセンスコンストラクト、すなわち核酸(例えばRNA)コンストラクトは、米国特許第6,100,090号(Monia et al.)およびNeckers et al, 1992, Crit Rev Oncog 3(1-2): 175-231において詳細に記述されており、その文書の教示は参照により具体的に援用される。
【0173】
特定の例において、癌は、細胞内腫瘍性タンパク質の量、発現または活性を、例えば細胞内腫瘍性タンパク質のmRNAに結合して破壊することができるsiRNAにより、完全に、または部分的に低減することにより処置または予防することができる。
【0174】
RNA干渉(RNAi)は、二本鎖RNA(dsRNA)の直接導入により誘導される転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)の方法であり、様々な生物において特定の遺伝子の発現をノックアウトするための有用な道具として登場した。RNAiはFire et al, Nature 391 :806-811 (1998)により記述されている。他のPTGSの方法が既知であり、それには例えば導入遺伝子またはウイルスの導入が含まれる。一般に、PTGSにおいて、そのサイレンシングされた遺伝子の転写産物は合成されるが、それが急速に分解されるため蓄積しない。RNAiが含まれるPTGSに関する方法は、例えばAmbion.comのワールドワイドウェブサイトにおいて、“/hottopics/”のディレクトリにおいて
、“rnai”ファイルにおいて記述されている。
【0175】
インビトロでのRNAiのための適切な方法が本明細書において記述される。1つのそのような方法は、siRNA(低分子干渉RNA)の導入を含む。現在のモデルは、これらの21〜23ヌクレオチドのdsRNAはPTGSを誘導することができることを示している。有効なsiRNAを設計するための方法は、例えば上記で記述したAmbionのウェブサイトにおいて記述されている。RNA前駆体、例えばショートヘアピンRNA(shRNA)はその細胞内腫瘍性タンパク質核酸配列の全部または一部によりコードされている可能性もある。
【0176】
あるいは、二本鎖(ds)RNAはある範囲の生物において遺伝子発現を妨げる強力な方法であり、最近哺乳類においてうまくいくことが示されてきた(Wianny and Zernicka-Goetz, 2000, Nat Cell Biol 2:70-75)。細胞内腫瘍性タンパク質ポリヌクレオチドの配列に対応する二本鎖RNAを候補生物の卵母細胞および細胞中に導入して、またはその中で発現させて、細胞内腫瘍性タンパク質の活性を妨げることができる。
【0177】
細胞内腫瘍性タンパク質遺伝子の発現を調節する他の方法は当業者には既知であり、それにはドミナントネガティブのアプローチが含まれる。また、これらは抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体を用いる抗体療法と組み合わせることができる。従って、別のアプローチは、内因性遺伝子産物と競合して結果として機能の阻害をもたらす、この文書における細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドの機能しない変異体を用いることである。
【0178】
細胞内腫瘍性タンパク質遺伝子の発現は、遺伝子発現または機能活性を阻害するペプチドまたは小分子を導入することにより調節することもできる。そのようなペプチドまたは小分子は、癌、例えば転移癌の処置のために、抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体との組み合わせで投与することができる。
【0179】
従って、アッセイにより細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドに結合する、またはその量、活性もしくは発現を調節する、例えば下方制御するものとして同定された化合物を腫瘍または増殖性細胞に投与して、細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドの機能を妨げることができる。そのような化合物を、薬学的に許容可能なキャリヤーと共に、細胞内腫瘍性タンパク質の発現もしくは活性を下方制御するために、または細胞内腫瘍性タンパク質の発現、活性もしくは量を制御している二次シグナルを活性化もしくは下方制御することにより細胞内腫瘍性タンパク質の発現もしくは活性を下方制御するために有効な量で投与し、それによりその異常な状態を緩和することができる。
【0180】
あるいは、遺伝子療法を用いて、対象中の関連する細胞、例えば癌細胞による細胞内腫瘍性タンパク質の内因性の生成を制御することができる。例えば、下記で論じるように、細胞内腫瘍性タンパク質のsiRNAまたはこの一部をコードするポリヌクレオチドを、複製欠損レトロウイルスベクターでの発現のために設計することができる。次いでそのレトロウイルス発現コンストラクトを単離し、抗細胞内腫瘍性タンパク質siRNAをコードするRNAを含有するレトロウイルスプラスミドベクターを形質導入されたパッケージング細胞中に、そのパッケージング細胞がここで目的の配列を含有する感染性ウイルス粒子を産生するように導入することができる。これらの産生細胞(producer cells)を、細胞を生体内で操作し、その細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドの発現を生体内で制御するために、対象に投与することができる。遺伝子療法の概要に関して、Human Molecular Genetics, T Strachan and A P Read, BIOS Scientific Publishers Ltd (1996)中の第20章、Gene Therapy and other Molecular Genetic-based Therapeutic Approaches(およびその中で引用されている参考文献)を参照。
【0181】
一部の態様において、細胞内腫瘍性タンパク質のレベルが癌細胞中で減少する。さらに、そのような態様において、処置はそのような癌細胞を標的としてよく、またはそれに特異的であってよい。細胞内腫瘍性タンパク質の発現は、疾患状態の細胞(すなわち癌性である細胞)においてのみ特異的に減少させてよく、他の疾患状態ではない細胞においては実質的に減少させてはならない。これらの方法において、細胞内腫瘍性タンパク質の発現は、他の細胞、すなわち癌細胞ではない細胞においては実質的に低減させてはならない。従って、そのような態様において、細胞内腫瘍性タンパク質のレベルは、癌ではない細胞において、処置の過程において、または処置の後に、実質的に同じまたは類似したままである。
【0182】
患者
処置すべき対象はあらゆる動物またはヒトであってよい。その対象は好ましくは哺乳類、より好ましくはヒトである。その対象は非ヒト哺乳類であってよいが、より好ましくはヒトである。その対象は男性または女性であってよい。その対象は患者であってよい。療法的使用はヒトまたは動物(獣医学的使用)においてであってよい。
【0183】
ポリペプチド配列
本明細書で開示されるポリペプチド配列はこの文書において示される特定の配列に限定されず、あらゆる源から得られた相同配列、例えば関連する細胞性相同体、他の種からの相同体およびその変異体または誘導体も、それらが抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体の生物学的活性の少なくとも1種類を有する限り、場合により含まれることは理解されるであろう。
【0184】
従って、この開示は、この文書において示されるアミノ酸配列の変異体、相同体または誘導体、ならびに本明細書で開示されるヌクレオチド配列によりコードされるアミノ酸配列の変異体、相同体または誘導体を含む。そのような配列は一般に“細胞内腫瘍性タンパ
ク質”配列と呼ばれる。
【0185】
生物学的活性
一部の態様において、その配列は、細胞内腫瘍性タンパク質断片の少なくとも1種類の生物学的活性を場合により含む。
【0186】
その生物学的活性は免疫学的活性を含んでよい。その細胞内腫瘍性タンパク質断片は、細胞内腫瘍性タンパク質抗体またはそのヒト化版と比較した場合に同一または類似の免疫学的活性を含み得る。“免疫学的活性”により、我々は、その抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体の、細胞内腫瘍性タンパク質抗原との結合の際に適切な動物または細胞において特異的な免疫応答を誘導する能力を意味している。
【0187】
その活性には、例えば腫瘍サイズもしくは腫瘍の数の低減、または例えば実施例において記述されるアッセイにより測定されるような転移活性の阻害により測定されるような癌活性の阻害が含まれ得る。その低減または阻害は、試験動物において発癌を引き起こし、その細胞内腫瘍性タンパク質断片をその動物に投与し、そしてそのように処置されなかった類似の対照動物と比較した場合のその細胞内腫瘍性タンパク質断片の作用を決定することにより、好都合にアッセイすることができる。実施例はそのようなアッセイを詳細に記述する。
【0188】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片は、同族の(cognate)断片と同じ、それより低減した、またはそれより高められた腫瘍阻害または転移阻害活性を有していてよい。例えば、その細胞内腫瘍性タンパク質断片は、その同族の抗体と比較して少なくとも10%、例えば20%、例えば30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%またはより大きく有効であってよい。これにより、我々は、例えばその同族の断片が腫瘍の数を90%低減することができる場合(実施例参照)、その細胞内腫瘍性タンパク質断片は腫瘍の数を未処置の動物と比較した場合に90%、85%、80%、75%、70%、65%、60%、55%、50%、45%、40%、35%、30%等低減することができる可能性があることを意味している。
【0189】
記述したアッセイの代わりに、またはそれに加えて、抗体事象を検出する他のアッセイを用いることもできる。
【0190】
相同体
開示される細胞内腫瘍性タンパク質断片ポリペプチドには、あらゆる源、例えば関連するウイルス/細菌タンパク質から得られた相同配列、細胞性相同体および合成ペプチド、ならびにその変異体または誘導体が含まれる。従って、ポリペプチドには、動物、例えば哺乳類(例えばマウス、ラットまたはウサギ)、特にヒトが含まれる他の種からの細胞内腫瘍性タンパク質断片の相同体をコードするポリペプチドも含まれる。
【0191】
本文書の文脈において、相同配列または相同体は、関連するポリペプチド配列、例えば本明細書における配列リストで示されるような配列と少なくとも30、例えば50、70、90または100アミノ酸にわたってアミノ酸レベルで少なくとも60、70、80または90%同一、例えば少なくとも95または98%同一であるアミノ酸配列を含むように受け取られる。この文書の文脈において、相同配列は、関連するポリペプチドの配列と例えば少なくとも15、25、35、50または100、例えば200、300、400または500アミノ酸にわたってアミノ酸レベルで少なくとも15、20、25、30、40、50、60、70、80または90%同一である、例えば少なくとも95または98%同一であるアミノ酸配列を含むように受け取られる。相同性は類似性(すなわち類似の化学的特性/機能を有するアミノ酸残基)という点で考えることもできるが、本文書の
文脈では相同性は配列の同一性の点で表されていてよい。配列の同一性は、その関連する配列の長さの全体に関して、すなわち、例えばその関連する遺伝子の全長または完全長配列にわたって決定されてよい。
【0192】
相同性の比較は、目により、またはより通常には容易に入手可能な配列比較プログラムの助けにより実施することができる。これらの商業的に入手可能なコンピュータープログラムは、2個以上の配列の間の相同性%を計算することができる。
【0193】
相同性%は連続した配列にわたって計算することができ、すなわちある配列を他の配列と整列させ、一方の配列中のそれぞれのアミノ酸を他方の配列中の対応するアミノ酸と、一度に1残基ずつ直接比較する。これは“無ギャップ(ungapped)”アラインメントと呼ばれる。典型的には、そのような無ギャップアラインメントは比較的短い残基の数(例えば50未満の連続したアミノ酸)にわたってのみ実施される。
【0194】
これは非常に単純かつ一貫性のある方法であるが、それは例えば、他の点では同一の配列の対において、1個の挿入または欠失が後に続くアミノ酸残基をアラインメントから外れさせると考えられ、そうして結果として全体のアラインメントが実施された際に相同性%における大きな低減をもたらす可能性があることを考慮に入れ損ねている。結果として、ほとんどの配列比較法は、全体の相同性スコアを過度に不利にすることなく可能性のある挿入および欠失を考慮にいれる最適なアラインメントを生成するように設計されている。これは配列アラインメントにおいて局所的な相同性を最大化することを試みるために“ギャップ”を挿入することにより達成される。
【0195】
しかし、これらのより複合的な方法は、同じ数の同一のアミノ酸に関して可能な限り少ないギャップを有する配列アライメントが(2つの比較される配列間のより高い関連性を反映して)多くのギャップを有する配列アライメントよりも高いスコアを達成するであろうように、アライメント中に生じるそれぞれのギャップに“ギャップペナルティー”を割り当てる。典型的には、ギャップの存在に比較的高いコストを課し、かつギャップ中の各後続残基に関してより小さいペナルティーを課す“アファインギャップコスト(Affine gap cost)”が用いられる。これは最も一般的に用いられるギャップ採点システムである。当然、高いギャップペナルティーはより少ないギャップを有する最適化されたアライメントを生成するであろう。ほとんどのアライメントプログラムはギャップペナルティーを修正できるようにしている。
【0196】
しかし、配列比較のためにそのようなソフトウェアを用いる場合、デフォルト値を用いてもよい。例えば、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(下記参照)を用いる場合、アミノ酸配列に関するデフォルトのギャップペナルティーは1ギャップにつき−12および各伸長につき−4である。
【0197】
従って、最大相同性%の計算は、最初にギャップペナルティーを考慮した最適なアライメントの生成を必要とする。そのようなアライメントを実施するための適切なコンピュータープログラムは、GCG Wisconsin Bestfitパッケージ(米国ウィスコンシン大学; Devereux et al., 1984, Nucleic Acids Research 12:387)である。配列比較を実施することができる他のソフトウェアの例には、BLASTパッケージ(Ausubel et al., 1999 ibid - 第18章参照)、FASTA(Atschul et al., 1990, J. Mol.
Biol., 403-410)およびGENEWORKS比較ツール一式が含まれるが、それらに限
定されない。BLASTおよびFASTAは両方ともオフラインおよびオンライン検索のために利用可能である(Ausubel et al., 1999 ibid, pages 7-58 to 7-60参照)。GC
G Bestfitプログラムを用いることができる。
【0198】
最終的な相同性%は同一性の点から測定することができるが、アラインメントのプロセス自体は典型的には全か無かの対比較に基づくものではない。代わりに、化学的類似性または進化距離に基づいてそれぞれの対比較にスコアを割り当てるスケール化(scaled)類似性スコアマトリックスが一般的に用いられる。一般に用いられるそのようなマトリックスの一例は、BLOSUM62マトリックス(BLASTのプログラム一式に関するデフォルトマトリックス)である。GCG Wisconsinプログラムは一般にパブリックデフォルト値または供給されるのであればカスタムシンボル比較表のどちらかを用いる(さらなる詳細に関してはユーザーマニュアルを参照)。GCGパッケージに関してパブリックデフォルト値を、またはBLOSUM62のような他のソフトウェアの場合にはデフォルトマトリックスを用いることができる。
【0199】
一度そのソフトウェアが最適なアライメントを作成したら、相同性%、例えば配列同一性%を計算することが可能である。そのソフトウェアは典型的にはこれを配列比較の一部として行い、数値結果を生成する。
【0200】
変異体および誘導体
本明細書で記述されるアミノ酸配列に関する用語“変異体”または“誘導体”には、その配列からの、またはその配列への1個(またはより多く)のアミノ酸のあらゆる置換、変更、修飾、交換、欠失または付加が含まれる。結果として生じるアミノ酸配列は、修飾されていない配列と実質的に同じ活性を保持することができ、例えばこの文書において、例えば配列リストにおいて示される抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体ポリペプチドと少なくとも同じ活性を有することができる。従って、その配列の重要な特徴(すなわち、他の箇所で記述されるような細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドに結合する能力または腫瘍低減活性)を保持することができる。
【0201】
実施例中で示されるアミノ酸配列を有するポリペプチドまたはその断片もしくは相同体は、本明細書で記述される方法および組成物における使用のために修飾することができる。典型的には、その配列の生物活性を維持する修飾が行われる。修飾された配列が未修飾の配列の生物学的活性を保持する限り、アミノ酸置換、例えば1、2または3個から10、20または30個までの置換を行うことができる。アミノ酸置換には、例えば療法的に投与されるポリペプチドの血漿中半減期を増大させるための天然に存在しない類似体の使用が含まれてよい。
【0202】
細胞内腫瘍性タンパク質断片の自然変異体は、おそらく保存的アミノ酸置換を含む。保存的置換は、例えば下記の表に従って定義することができる。第2の列における同じ区画中のアミノ酸、例えば第3の列における同じ行中のアミノ酸は、互いに置換することができる:
【0203】
【表2】
【0204】
細胞内腫瘍性タンパク質断片、相同体、変異体および誘導体は、組換え手段により作製することができる。しかし、それらは固相合成のような当業者に周知の技法を用いる合成手段により作製することもできる。そのタンパク質は、例えば抽出および精製を助けるために、融合タンパク質として生成することもできる。融合タンパク質パートナーの例には、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、6×His、GAL4(DNA結合および/または転写活性化ドメイン)およびβ−ガラクトシダーゼが含まれる。融合タンパク質配列の取り出しを可能にするために融合タンパク質パートナーおよび対象のタンパク質配列の間にタンパク質分解性切断部位を含ませることも好都合である可能性がある。融合タンパク質は、それが対象配列のタンパク質の機能を妨害しないと考えられるようなものであってよい。タンパク質は、動物細胞からの細胞抽出物の精製により得ることもできる。本件では、融合タンパク質は1個以上の腫瘍性タンパク質の2個以上の断片を含んでいてよく、場合によりさらにリンカーペプチドが含まれる。その断片は同じ腫瘍性タンパク質からのものであってよく、または異なる腫瘍性タンパク質からのものであってよい。その融合タンパク質は、2コピー以上の同じ断片、または同じエピトープもしくは発癌性変異の重複する断片を含んでいてよい。
【0205】
本明細書で開示される細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチド、変異体、相同体および誘導体は、実質的に単離された形態であってよい。そのようなポリペプチドは、そのタンパク質の意図される目的に干渉しないであろうキャリヤーまたは希釈剤と混合することができ、なお実質的に単離されているとみなすことができることは理解されるであろう。細胞内腫瘍性タンパク質断片の変異体、相同体または誘導体も実質的に精製された形態であってよく、その場合、それは一般に製剤中にそのタンパク質を含むと考えられ、ここで製剤中のそのタンパク質の90%より多く、例えば95%、98%または99%は1つのタンパク質である。
【0206】
本明細書で開示される抗細胞内腫瘍性タンパク質断片ポリペプチド、変異体、相同体および誘導体は、検出ラベルで標識することができる。その検出ラベルは、そのポリペプチド等の検出を可能にするあらゆる適切な標識であってよい。適切な標識には、放射性同位体、例えば125I、酵素、抗体、ポリヌクレオチドおよびリンカー、例えばビオチンが含まれる。標識されたポリペプチドは、試料中のポリペプチドの量を決定するための免疫アッセイのような診断手順で用いることができる。ポリペプチドまたは標識化ポリペプチドは、標準的なプロトコルを用いる動物およびヒトにおける前記のポリペプチドに対する
免疫反応性の検出のための血清学的または細胞媒介免疫アッセイにおいて用いることもできる。
【0207】
本明細書で開示される任意に標識された細胞内腫瘍性タンパク質断片ポリペプチド、変異体、相同体、および誘導体は、固相、例えば免疫アッセイウェルまたはディップスティックの表面に固定することもできる。そのような標識および/または固定されたポリペプチドは、適切な試薬、対照、説明書等と共に適切な容器中に包装してキットにすることができる。そのようなポリペプチドおよびキットは、免疫アッセイによるそのポリペプチドまたはそれらの対立遺伝子変異体もしくは種変異体に対する抗体の検出の方法において用いることができる。
【0208】
免疫アッセイ法は当該技術で周知であり、一般に以下の工程を含むであろう:(a)前記のタンパク質に対する抗体が結合することができるエピトープを含むポリペプチドを提供し;(b)生物学的試料を前記のポリペプチドと共に抗体−抗原複合体の形成を可能にする条件下で保温し;そして(c)前記のポリペプチドを含む抗体−抗原複合体が形成されたかどうかを決定する。
【0209】
本明細書で開示される細胞内腫瘍性タンパク質断片ポリペプチド、変異体、相同体、および誘導体は、それらの対応する遺伝子およびその相同体の細胞機能における役割を、疾患におけるそれらの機能を含めて研究するために、インビトロまたはインビボの細胞培養系で用いることができる。例えば、切り詰められた、または修飾されたポリペプチドを細胞中に導入してその細胞中で行われている正常な機能を破壊することができる。そのポリペプチドは、組換え発現ベクターからのそのポリペプチドのインサイチュ発現によりその細胞中に導入することができる(下記参照)。その発現ベクターは場合によりそのポリペプチドの発現を制御するための誘導可能なプロモーターを有する。
【0210】
適切な宿主細胞、例えば昆虫細胞または哺乳類細胞の使用は、組換え発現産物に最適な生物学的活性を付与するために必要とされ得るような翻訳後修飾(例えばミリストイル化、糖鎖付加、切り詰め、脂質付加、およびチロシン、セリンまたはスレオニンリン酸化)を提供することが予想される。本明細書で開示される細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチド、変異体、相同体、および誘導体が発現されるそのような細胞培養系は、細胞中でそのポリペプチドの機能を妨げる、または高める候補物質を同定するためのアッセイ系において用いることができる。
【0211】
ポリヌクレオチド配列
可変領域、モノクローナル抗体配列およびヒト化抗体配列はポリヌクレオチドを含むことができる。これらはDNAまたはRNAを含むことができる。
【0212】
それらは一本鎖または二本鎖であることができる。それらはそれらの内部に合成ヌクレオチドまたは修飾されたヌクレオチドを含むポリヌクレオチドであることもできる。オリゴヌクレオチドに対するいくつかの異なるタイプの修飾が当該技術で既知である。これらには、メチルホスホネートおよびホスホロチオエート主鎖、その分子の3’末端および/または5’末端におけるアクリジンまたはポリリシン鎖の付加が含まれる。本文書の目的に関して、本明細書で記述されるポリヌクレオチドは当該技術で利用可能なあらゆる方法により修飾されてよいことは理解されるべきである。そのような修飾は、ポリヌクレオチドの生体内での活性または寿命を高めるために実施することができる。
【0213】
そのポリヌクレオチドが二本鎖である場合、その二本鎖の両方の鎖が、単独または組合せのどちらかで、本明細書で記述される方法および組成物に包含される。そのポリヌクレオチドが一本鎖である場合、そのポリヌクレオチドの相補的配列も含まれることは理解さ
れるべきである。
【0214】
変異体、誘導体、および相同体
この文書で記述されるヌクレオチド配列に関する用語“変異体”、“相同体”または“誘導体”には、その配列からの、またはその配列への1個(またはより多く)のヌクレオチドのあらゆる置換、変更、修飾、交換、欠失または付加が含まれる。結果として生じる配列は、この文書の他の箇所で記述されるような細胞内腫瘍性タンパク質結合活性を有するポリペプチドをコードすることができる可能性がある。
【0215】
上記で示したように、配列の同一性に関して、“相同体”は、関連する配列に対して例えば少なくとも5%の同一性、少なくとも10%の同一性、少なくとも15%の同一性、少なくとも20%の同一性、少なくとも25%の同一性、少なくとも30%の同一性、少なくとも35%の同一性、少なくとも40%の同一性、少なくとも45%の同一性、少なくとも50%の同一性、少なくとも55%の同一性、少なくとも60%の同一性、少なくとも65%の同一性、少なくとも70%の同一性、少なくとも75%の同一性、少なくとも80%の同一性、少なくとも85%の同一性、少なくとも90%の同一性、または少なくとも95%の同一性を有する。
【0216】
少なくとも95%の同一性、例えば少なくとも96%の同一性、例えば少なくとも97%の同一性、例えば少なくとも98%の同一性、例えば少なくとも99%の同一性が存在する可能性がある。ヌクレオチド相同性比較は上記で記述したように実施することができる。上記で記述したGCG Wisconsin Bestfitプログラムのような配列比較プログラムをこの目的のために用いることができる。デフォルトの採点マトリックスは、それぞれの同一のヌクレオチドごとに10およびそれぞれのミスマッチごとに−9のマッチ値を有する。それぞれのヌクレオチドに関するデフォルトのギャップ生成ペナルティーは−50であり、デフォルトのギャップ伸長ペナルティーは−3である。
【0217】
ハイブリダイゼーション
我々はさらに、本明細書で提示される配列のいずれか、例えば269、223および318の可変領域、抗体、およびヒト化抗体、またはそれらのあらゆる変異体、断片もしくは誘導体に、または上記のいずれかの相補物に選択的にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を記述する。ヌクレオチド配列は、少なくとも1ヌクレオチド長、例えば少なくとも20、30、40または50ヌクレオチド長であることができる。
【0218】
用語“ハイブリダイゼーション”には、本明細書で用いられる際、“核酸の鎖が塩基対合を通して相補鎖と一緒になるプロセス”ならびにポリメラーゼ連鎖反応技術で行われるような増幅のプロセスが含まれるものとする。
【0219】
本明細書で提示されるヌクレオチド配列に、またはそれらの相補物に選択的にハイブリダイズすることができるポリヌクレオチドは一般に、少なくとも20個、例えば少なくとも25もしくは30個、例えば少なくとも40、60、もしくは100個、またはより多くの連続したヌクレオチドの領域にわたって、本明細書で提示される対応するヌクレオチド配列に対して少なくとも70%、例えば少なくとも80または90%、例えば少なくとも95%または98%相同であろう。
【0220】
用語“選択的にハイブリダイズすることができる”は、プローブとして用いられるポリヌクレオチドが、標的ポリヌクレオチドがプローブに対してバックグラウンドを有意に上回るレベルでハイブリダイズすることが分かっている条件下で用いられることを意味する。例えばスクリーニングされているcDNAまたはゲノムDNAライブラリー中に存在する他のポリヌクレオチドのため、バックグラウンドハイブリダイゼーションが起こる可能
性がある。この事象において、バックグラウンドはプローブおよびそのライブラリーの非特異的DNAメンバーの間の相互作用により生成されるシグナルのレベルを暗に示し、それはその標的DNAを用いて観察される特異的相互作用の強度の10分の1未満、例えば100分の1未満である。相互作用の強度は、例えば、プローブを例えば32Pで放射性標識することにより測定することができる。
【0221】
ハイブリダイゼーション条件は、Berger and Kimmel (1987, Guide to Molecular Cloning Techniques, Methods in Enzymology, Vol 152, Academic Press, カリフォルニア州サンディエゴ)において教示されているように、核酸結合複合体の融解温度(Tm)に基
づいており、下記で説明されるように定義された“ストリンジェンシー”を付与する。
【0222】
最大ストリンジェンシーは、典型的には約Tm−5℃(プローブのTmの5℃下)で生じ;高ストリンジェンシーはTmの約5℃〜10℃下で生じ;中間ストリンジェンシーはTmの約10℃〜20℃下で生じ;そして低ストリンジェンシーはTmの約20℃〜25℃下で生じる。当業者には理解されるであろうが、最大ストリンジェンシーでのハイブリダイゼーションは同一のポリヌクレオチド配列を同定または検出するために用いることができ、一方で中間(または低)ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは類似のまたは関連するポリヌクレオチド配列を同定または検出するために用いることができる。
【0223】
我々は、ストリンジェントな条件(例えば65℃および0.1×SSC{1×SSC=0.15M NaCl、0.015M Naシトレート pH7.0})下で核酸、またはその断片、相同体、変異体もしくは誘導体にハイブリダイズすることができるヌクレオチド配列を開示する。
【0224】
ポリヌクレオチドが二本鎖である場合、二本鎖の両方の鎖が、単独または組合せのどちらかで、本開示に包含される。ポリヌクレオチドが一本鎖である場合、そのポリヌクレオチドの相補的配列も開示および包含されることは理解されるべきである。
【0225】
本明細書で開示される配列に対して100%相同ではないが本開示の範囲内に入るポリヌクレオチドは、いくつかの方法で得ることができる。本明細書で記述される配列の他の変異体は、例えばある範囲の個体、例えば異なる集団からの個体から作製されたDNAライブラリーを調べる(probing)ことにより得ることができる。加えて、他のウイルス性/細菌性、または細胞性相同体、特に哺乳類細胞(例えばラット、マウス、ウシおよび霊長類の細胞)中に見出される細胞性相同体を得ることができ、そのような相同体およびその断片は一般に本明細書中の配列リストにおいて示される配列に選択的にハイブリダイズすることができるであろう。そのような配列は、他の動物種から作製されたcDNAライブラリーまたは他の動物種からのゲノムDNAライブラリーを調べることにより、および開示された配列の全部または一部を含むプローブを用いて中程度〜高ストリンジェンシーの条件下でそのようなライブラリーを調べることにより得ることができる。
【0226】
本明細書で記述されるポリヌクレオチドは、プライマー、例えばPCRプライマー、代替の増幅反応用のプライマー、プローブ、例えば放射性もしくは非放射性標識を用いた従来の手段により検出ラベルで標識されたプローブを作製するために用いることができ、またはそのポリヌクレオチドはベクター中にクローニングすることができる。そのようなプライマー、プローブおよび他の断片は、少なくとも15、例えば少なくとも20、例えば少なくとも25、30または40ヌクレオチド長であると考えられ、それらも本明細書で用いられるポリヌクレオチドという用語に包含される。断片は500、200、100、50または20ヌクレオチド長未満であってよい。
【0227】
ポリヌクレオチド、例えばDNAポリヌクレオチドおよびDNAプローブは、組換えに
より、合成により、または当業者に利用可能なあらゆる手段により作製することができる。それらは標準的技法によりクローニングすることもできる。
【0228】
一般に、プライマーは1回に1ヌクレオチドでの所望の核酸配列の段階的製造を含む合成手段により作製されるであろう。自動化技法を用いてこれを成し遂げるための技法は当該技術で容易に利用可能である。
【0229】
より長いポリヌクレオチドは一般に組換え手段を用いて、例えばPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)クローニング技法を用いて作製されるであろう。これは、クリーニングすることが望まれる配列の領域に隣接する(例えば約15〜30ヌクレオチドの)1対のプライマーを作製し、そのプライマーを動物細胞またはヒト細胞から得られたmRNAまたはcDNAと接触させ、所望の領域の増幅をもたらす条件下でポリメラーゼ連鎖反応を実施し、増幅された断片を(例えばその反応混合物をアガロースゲル上で精製することにより)単離し、そして増幅されたDNAを回収することを含むであろう。そのプライマーは、増幅されたDNAを適切なクローニングベクター中にクローニングすることができるように、適切な制限酵素認識部位を含有するように設計することができる。
【0230】
細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドおよび核酸
細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドの相同体、変異体、誘導体および断片は、前の段落で述べられたのと同様に定義することができる。
【0231】
文脈が許容する場合、細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドへの言及は細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドの相同体、変異体、誘導体または断片への言及を含むものと受け取られるべきである。同様に、細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドへの言及は細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドの相同体、変異体、誘導体または断片への言及を含むものと受け取られるべきである。
【0232】
同様に、文脈が許容する場合、細胞内腫瘍性タンパク質核酸への言及は細胞内腫瘍性タンパク質核酸の相同体、変異体、誘導体または断片への言及を含むものと受け取られるべきである。同様に、細胞内腫瘍性タンパク質ポリペプチドへの言及は細胞内腫瘍性タンパク質核酸の相同体、変異体、誘導体または断片への言及を含むものと受け取られるべきである。
【0233】
抗細胞内腫瘍性タンパク質断片の作製
細胞内腫瘍性タンパク質断片は、当業者に周知の組換えDNA法または合成ペプチドの化学的方法により作製することができる。
【0234】
例として、細胞内腫瘍性タンパク質断片は、“Solid Phase Peptide Synthesis: A Practical Approach” E. Atherton and R. C. Sheppard, IRL Press(英国オックスフォー
ド)により例示されるような当該技術で周知の技法により合成することができる。同様に、多数の断片を合成し、続いてそれを一緒に連結してより大きい断片を形成することができる。これらの合成ペプチド断片は、インビトロおよびインビボでの活性に関して試験するために特定の位置においてアミノ酸置換を有するように作製することもできる。
【0235】
細胞内腫瘍性タンパク質は標準的な微量化学施設で合成することができ、純度をHPLCおよび質量分光光度法を用いて検査することができる。ペプチド合成、HPLC精製および質量分光光度法の方法は、当業者に一般的に知られている。
【0236】
細胞内腫瘍性タンパク質断片は、本明細書で記述されるDNA配列(例えば可変配列)またはその対立遺伝子変異体が組み込まれており、かつ癌関連疾患の予防および/または
処置において用いることができる形質転換された宿主細胞中で、インビトロおよびインビボの条件下で発現させることもできる。
【0237】
用語“ベクター”には発現ベクターおよび形質転換ベクターが含まれる。用語“発現ベクター”は、インビボまたはインビトロ発現が可能なコンストラクトを意味する。用語“形質転換ベクター”は、ある種から別の種へと移すことができるコンストラクトを意味する。
【0238】
発現のために用いることができるベクターには、組換えウイルスベクター、特に組換えレトロウイルスベクター(RRV)、例えばレンチウイルスベクター、アデノウイルスベクターが含まれ、レトロウイルスベクターの組合せも含まれる。
【0239】
用語‘組換えレトロウイルスベクター”(RRV)は、パッケージング構成要素の存在下で標的細胞に感染することができるウイルス粒子中にRNAゲノムをパッケージングすることを可能にするために十分なレトロウイルス遺伝子情報を有するベクターを指す。標的細胞の感染には逆転写および標的細胞ゲノム中への組み込みが含まれる。RRVはベクターにより標的細胞に送達されるべき非ウイルス性コード配列を有する。RRVは、最終的な標的細胞内で独立した複製を行って感染性レトロウイルス粒子を産生することはできない。通常、RRVは機能するgag polおよび/またはenv遺伝子および/または複製に不可欠な他の遺伝子を欠いている。用いることができるベクターには、組換えポックスウイルスベクター、例えば鶏痘ウイルス(FPV)、エントモポックスウイルス、ワクシニアウイルス、例えばNYVAC、カナリア痘ウイルス、MVAまたは他の非複製ウイルスベクター系、例えば国際公開第9530018号において記述されている非複製ウイルスベクター系が含まれる。
【0240】
ポックスウイルスを組換え遺伝子発現のために、および二重免疫療法的アプローチにおける組換え生ワクチンとしての使用のために操作することができる。弱毒化生ウイルス、例えば送達媒体および/またはベクターに基づくワクチン候補としてのウイルスを用いることに関する主な理論的根拠は、細胞媒介性免疫応答を誘発するそれらの能力に由来する。上記で概説したようなウイルスベクターは、免疫応答を増進するためのアジュバントとして作用し、そうして対象のヌクレオチド配列(NOI)、例えば細胞内腫瘍性タンパク質をコードするヌクレオチド配列をより免疫原性にするそれらの構成タンパク質の免疫原性のため、送達媒体として、およびベクターに基づくワクチン候補として用いることができる。
【0241】
ポックスウイルスワクチン接種戦略は、NOIをポックスウイルスのゲノム中に導入するために組み換え技法を用いてきた。NOIがウイルスの生活環に不可欠ではないウイルスDNA中の部位に組み込まれた場合、その新しく作製された組み換えポックスウイルスは感染性である、すなわち、外来細胞に感染し、そうしてその組み込まれたNOIを発現することが可能である。この方法で調製された組み換えポックスウイルスは、病的および感染性の疾患および/または癌の予防および/または処置のための生ワクチンとして用いることができる。
【0242】
ポックスウイルスベクター送達系に関する他の必要条件には、良好な免疫原性および安全性が含まれる。MVAは良好な安全性記録を有する複製障害ワクシニア株である。ほとんどの細胞型および正常なヒト組織では、MVAは複製されない。MVAの限られた複製は、BHK21細胞のような少数の形質転換された細胞型で観察される。Carroll et al (1997 Vaccine1 5: 387-394)は、その組み換えMVAが防御CD8+T細胞応答の発生において従来の組み換えワクシニアベクターと同じくらい良好であり、より一般的に用いられる複製能力のあるワクシニアウイルスの有効な代替手段であることを示している。MV
Aに由来するワクシニアウイルス株、またはMVAをワクチンにおける使用に特に適切であるようにするMVAの特徴を有する独立して開発された株も、送達媒体としての使用に適している。
【0243】
その発現が望まれる対象のヌクレオチド配列は、転写単位に操作可能であるように(operably)連結することができる。用語“転写単位”は、本明細書で記述される際、コード配列およびそれらのコード配列の発現をあらゆる他のコード配列と独立して達成するためのシグナルを含有する核酸の領域である。従って、各転写単位は一般に少なくともプロモーター、任意のエンハンサーおよびポリアデニル化シグナルを含む。用語“プロモーター”は当該技術の通常の意味で用いられており、例えばRNAポリメラーゼ結合部位である。プロモーターはエンハンサーエレメントを含有してよい。用語“エンハンサー”には、転写開始複合体の他のタンパク質構成要素に結合し、そうしてその関連するプロモーターにより指示される転写の開始を促進するDNA配列が含まれる。用語“細胞”にはあらゆる適切な生物が含まれる。細胞は哺乳類細胞、例えばヒト細胞を含んでよい。
【0244】
用語“形質転換細胞”は、修飾された遺伝子構造を有する細胞を意味する。例えば、本明細書で記述されるように、細胞は、発現ベクターのようなベクターがその細胞中に導入されている場合、修飾された遺伝子構造を有する。用語“生物”にはあらゆる適切な生物が含まれる。その生物は、哺乳類、例えばヒトを含んでよい。
【0245】
ここで、用語“トランスジェニック生物”は修飾された遺伝子構造を含む生物を意味する。例えば、その生物は、ベクター、例えば発現ベクターがその生物中に導入されている場合、修飾された遺伝子構造を有し得る。
【0246】
細胞内腫瘍性タンパク質断片の発現
我々はさらに、宿主細胞をこの文書において記述される一つ又は特定のヌクレオチド配列で形質転換することを含む方法を記述する。
【0247】
我々は、形質転換された宿主細胞(その細胞は一つ又は特定のそのようなヌクレオチド配列を用いて形質転換されている)を、前記のヌクレオチド配列によりコードされる細胞内腫瘍性タンパク質断片の発現に適した条件下で培養することを含む方法も提供する。
【0248】
我々はさらに、形質転換された宿主細胞(その細胞は一つ又は特定のそのようなヌクレオチド配列を用いて形質転換されている)を、前記のヌクレオチド配列によりコードされる細胞内腫瘍性タンパク質断片の発現に適した条件下で培養し;次いで前記の細胞内腫瘍性タンパク質断片をその形質転換された宿主細胞の培養物から回収することを含む方法を提供する。
【0249】
従って、細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列、その融合タンパク質または機能的均等物を用いて適切な宿主細胞中でその発現を方向付ける組み換えDNA分子を生成することができる。
【0250】
例として、細胞内腫瘍性タンパク質断片を組み換え大腸菌、酵母または哺乳類発現系で生成し、カラムクロマトグラフィーで精製することができる。
【0251】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列は、適切な宿主細胞中でその細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列の発現を方向付けることができるプロモーター配列に操作可能であるように連結することができる。宿主細胞中に挿入された際、その形質転換された宿主細胞を適切な条件下で細胞内腫瘍性タンパク質断片の十分なレベルが達成されるまで培養することができ、その後その細胞を溶解させる
ことができ、そしてその細胞内腫瘍性タンパク質断片を単離する。
【0252】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列を用いて形質転換された宿主細胞は、その細胞内腫瘍性タンパク質断片の発現および細胞培養物からの回収に適した条件下で培養することができる。組み換え細胞により産生されたタンパク質は、用いられた配列および/またはベクターに依存して、分泌されてよく、または細胞内に含有されてよい。当業者には理解されるであろうが、その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列を含有する発現ベクターは、その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列の特定の原核または真核細胞膜を通る分泌を方向付けるシグナル配列を有するように設計することができる。他の組み換え構築は、その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列を可溶性タンパク質の精製を容易にするであろうポリペプチドドメインをコードするヌクレオチド配列に連結することができる(Kroll
DJ et al(1993) DNA Cell Biol 12:441 - 5 3'、融合タンパク質を含有するベクターに
関する下記の論考も参照)
その細胞内腫瘍性タンパク質断片は、タンパク質精製を容易にするために追加された1個以上の追加のポリペプチドドメインを有する組み換えタンパク質として発現させることもできる。そのような精製を容易にするドメインには、固定された金属上での精製を可能にするヒスチジン−トリプトファンモジュールのような金属キレート形成ペプチド(Porath J (1992) Protein Expr Purif 3-26328 1)、固定された免疫グロブリン上での精製を可能にするプロテインAドメイン、およびFLAGS伸長/親和性精製システム(Immunex Corp,ワシントン州シアトル))で利用されているドメインが含まれるが、それらに限定されない。精製を容易にするために、精製ドメインおよび細胞内腫瘍性タンパク質断片の間に第XA因子またはエンテロキナーゼ(Invitrogen,カリフォルニア州サンディエゴ)のような切断可能リンカー配列を含ませることが有用である。
【0253】
本明細書で記述されるヌクレオチド配列は、様々な理由でその細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードする配列に変更を加えるために操作することができ、それにはクローニング、プロセシングおよび/または遺伝子産物の発現を改変する変更が含まれるが、それらに限定されない。
【0254】
例えば、当該技術で周知である技法、例えば部位特異的変異誘発を用いて変異を導入して、新しい制限部位を挿入する、糖鎖付加パターンを変更する、またはコドン選好性を変化させることができる。
【0255】
別の態様において、一つ又は特定の天然の、修飾された、または組み換え細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列を、融合タンパク質をコードするように異種配列に連結することができる。例として、親和性タグ、例えばグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、ビオチン、His6、ac−mycタグ(Emrich etal 1993
BiocemBiophys Res Commun 197(1 ): 21220参照)、赤血球凝集素(HA)(Wilson et al (1984 Cell 37 767)において記述されているような赤血球凝集素)またはFLAGエ
ピトープ(Ford etal 1991 Protein Expr Purif Apr; 2 (2):95-107)に連結された細胞
内腫瘍性タンパク質断片またはその酵素的に活性な断片もしくは誘導体を含む融合タンパク質を産生することができる。
【0256】
融合組み換えタンパク質は、抗原性共タンパク質(coprotein)、例えばGST、ベータ−ガラクトシダーゼ、または比較的大きい共タンパク質であるヘモフィルス・インフルエンザからのリポタンパク質Dを含むことができ、それは可溶化し、その産生および精製を容易にする。あるいは、その融合タンパク質はキャリヤータンパク質、例えばウシ血清アルブミン(BSA)またはキーホールリンペットヘモシアニン(KLH)を含むことができる。特定の態様において、そのマーカー配列は、pQEベクター(Qiag
en Inc)中で提供され、Gentz et al (1989 PNAS 86: 821-824)において記述され
ているヘキサヒスチジンペプチドを含むことができる。そのような融合タンパク質は(Mitchell et al 1993 Yeast 5:715-723において記述されているように)酵母培養において
容易に発現可能であり、親和性クロマトグラフィーにより容易に精製される。細胞内腫瘍性タンパク質断片を異種部分から切り離して精製することができるように、細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列および異種タンパク質配列の間に位置する切断部位を含有するように融合タンパク質を操作することもできる。別の態様において、結合した融合タンパク質全体を用いてその標的タンパク質に関するアッセイを実施することができる。あるいは、その共タンパク質は免疫系の一般化された(generalised)刺激を提供する意味でアジュバントとして作用することができる。その共タンパク質は、第1のタンパク質のアミノまたはカルボキシ末端のどちらかに結合させることができる。
【0257】
マーカー遺伝子発現の存在/非存在は細胞内腫瘍性タンパク質断片に関するヌクレオチド配列も存在することを示唆するが、その存在および発現は確証されるべきである。例えば、その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列をマーカー遺伝子配列内に挿入した場合、その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードする領域を含有する組み換え細胞をマーカー遺伝子の機能の非存在により同定することができる。あるいは、マーカー遺伝子を単一のプロモーターの制御下で細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列と直列に配置することができる。
【0258】
誘導または選択に応答するマーカー遺伝子の発現は、通常はその細胞内腫瘍性タンパク質断片の発現も示している。
【0259】
特定の分子の発現を定量化するための追加の方法には、ヌクレオチドの放射能標識(Melby PC etal 1993 J Immunol Methods 159:235-44)またはビオチン化(Duplaa C et al 1993 Anal Biochem229-36)、対照核酸の同時増幅、およびその上に実験結果が内挿され
る標準曲線が含まれる。
【0260】
ELISA形式でアッセイを行うことにより多数の試料の定量化を迅速化することができ、ここで対象の細胞内腫瘍性タンパク質断片が様々な希釈度で提供され、分光光度的または比色定量的応答が迅速な定量化を与える。
【0261】
作製することができる、または用いることができる変更された細胞内腫瘍性タンパク質断片ヌクレオチド配列には、結果として同じ、または機能的に均等な細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列をもたらす様々なヌクレオチド残基の欠失、挿入または置換が含まれる。例として、その発現された細胞内腫瘍性タンパク質断片は、サイレント変化をもたらし、結果として機能的に均等な細胞内腫瘍性タンパク質断片を生じるアミノ酸残基の欠失、挿入または置換を有することもできる。抗細胞内腫瘍性タンパク質断片の結合親和性が保持される限り、残基の極性、電荷、溶解性、疎水性、親水性、および/または両親媒性の性質における類似性に基づいて意図的なアミノ酸置換を行うことができる。例えば、負に荷電したアミノ酸にはアスパラギン酸およびグルタミン酸が含まれ;正に荷電したアミノ酸にはリシンおよびアルギニンが含まれ;そして類似の親水性値を有する非荷電極性頭部基を有するアミノ酸にはロイシン、イソロイシン、バリン、グリシン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、フェニルアラニン、およびチロシンが含まれる。
【0262】
本明細書で記述されるような抗細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列が生体内で制御される遺伝子療法を用いることもできる。例えば、発現制御はその抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体をコードするヌクレオチド配列またはその細胞内腫瘍性タン
パク質断片をコードするヌクレオチド配列と関係する調節領域またはその対応するRNA転写産物に結合して転写または翻訳の速度を修正する化合物を投与することにより成し遂げることができる。
【0263】
例として、本明細書で記述される細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列は、発現制御エレメント、通常はプロモーターまたはプロモーターおよびエンハンサーの発現制御下にあることができる。そのエンハンサーおよび/またはプロモーターは、その細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列が対象の特定の組織で、例えば腫瘍細胞または腫瘍塊の環境で優先的に発現されるように、低酸素または虚血または低グルコース環境で優先的に活性であることができる。このようにして、処置される個体へのその細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列のあらゆる著しい生物学的作用または有害作用を低減または排除することができる。制御された発現を与えるエンハンサーエレメントまたは他のエレメントは多重コピーで存在していてよい。
【0264】
そのプロモーターおよび/またはエンハンサーは、構成的に効率的であることができ、またはそれらの活性において組織もしくは時間的に限定されていることができる。適切な組織限定的プロモーター/エンハンサーの例は、腫瘍細胞において高度に活性であるプロモーター/エンハンサー、例えばMUC1遺伝子、CEA遺伝子、またはSTV抗原遺伝子からのプロモーター/エンハンサーである。時間限定的プロモーター/エンハンサーの例は、虚血および/または低酸素に応答するプロモーター/エンハンサー、例えば低酸素応答エレメントまたはagrp78もしくはagrp94遺伝子のプロモーター/エンハンサーである。アルファフェトプロテイン(AFP)プロモーターも腫瘍特異的プロモーターである。別のプロモーター−エンハンサーの組合せは、ヒトサイトメガロウイルス(hCMV)主要前初期(MIE)プロモーター/エンハンサーの組合せである。
【0265】
そのプロモーターは組織特異的であることができる。すなわち、それらはある組織において細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列の転写を駆動し、一方で他の組織型では大部分は“サイレント”のままであることが可能であってよい。
【0266】
用語“組織特異的”は、活性において単一の組織型に限定されないが、それでもそれらがある組織群において活性であり別の群においてより活性が低いかまたはサイレントであることができる点で選択性を示すプロモーターを意味する。そのようなプロモーターの望ましい特徴は、それらは活性化された低酸素に制御されるエンハンサーエレメントの非存在下では標的組織においてさえも比較的低い活性を有することである。これを達成する1つの手段は、選択されたプロモーターの活性を低酸素の非存在下で抑制する“サイレンサー”エレメントを用いることである。
【0267】
用語“低酸素”は、特定の器官または組織が不十分な酸素の供給を受ける条件を意味する。
【0268】
特定のプロモーターの制御下の細胞内腫瘍性タンパク質断片をコードするヌクレオチド配列の発現のレベルは、プロモーター領域を操作することにより調節することができる。例えば、プロモーター領域内の異なるドメインは異なる遺伝子制御活性を有し得る。これらの異なる領域の役割は、典型的には特定の領域を欠失させたそのプロモーターの様々な変異体を有するベクターコンストラクトを用いて評価される(すなわち、欠失分析)。このアプローチは、例えば組織特異性を付与することができる最小領域または低酸素感受性を付与する最小領域を同定するために用いることができる。
【0269】
上記で記述したいくつかの組織特異的プロモーターを用いることができる。ほとんどの場合、これらのプロモーターは選択されたベクター中にクローニングするのに適した好都
合な制限消化断片として単離することができる。あるいは、ポリメラーゼ連鎖反応を用いてプロモーター断片を単離することができる。プライマーの5’末端に制限部位を組み込むことにより、増幅された断片のクローニングを容易にすることができる。
【0270】
組合せ療法
細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンが含まれる本明細書で記述される方法および組成物は、疾患の処置のための他の組成物および手順との組み合わせで用いることができる。
【0271】
例として、その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンを癌のような疾患の従来の治療との組み合わせで用いることもできる。例えば、腫瘍は手術、放射線または化学療法を細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンと組み合わせて用いて従来法で処置することができ、それを後でその患者に投与して微小転移の休止状態を延長させる、およびあらゆる残留する原発性腫瘍を安定化することができる。
【0272】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは、時間において同じ瞬間に、かつ同じ部位において療法上有効な薬剤と共に送達することができる。あるいは、その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンおよびその療法上有効な薬剤は、異なる時点で、かつ異なる部位に送達することができる。その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンおよびその療法上有効な薬剤は、癌の予防および/または処置のために同じ送達ビヒクル中で送達することさえできる。
【0273】
細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは、血管新生および/または癌の予防および/または処置のための細胞毒性薬剤との組み合わせで用いることができる。細胞内腫瘍性タンパク質断片に連結された細胞毒性薬剤、例えばリシンは、細胞内腫瘍性タンパク質または細胞内腫瘍性タンパク質を発現する細胞の破壊のための手段を提供する。これらの細胞は、微小転移および原発性腫瘍が含まれるがそれらに限定されない多くの部位において見出され得る。
【0274】
細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは、遺伝子療法においてプロドラッグ活性化酵素との組み合わせで用いることができる。標的組織で選択的に発現させる代わりに、またはそれと共に、その細胞内腫瘍性タンパク質抗体および/または細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンを、別の分子、例えばその個体がその酵素(単数または複数)が作用する1種類以上のプロドラッグで処置されるまで著しい作用または有害な作用を有しないプロドラッグ活性化酵素(単数または複数)との組み合わせで用いることができる。プロドラッグ活性化酵素の存在下では、適切なプロドラッグを用いた個体の積極的処置が腫瘍の増殖または生存における増強された低減をもたらす。
【0275】
プロドラッグ活性化酵素は、癌の処置のために腫瘍部位に送達することができる。それぞれの場合において、適切なプロドラッグが適切なプロドラッグ活性化酵素との組み合わせでその患者の処置において用いられる。適切なプロドラッグはベクターと合わせて投与される。プロドラッグの例には以下のプロドラッグが含まれる:リン酸エトポシド(アルカリホスファターゼと併用、Senter et al 1988 Proc Natl Acad Sci 85: 48424846));5−フルオロシトシン(シトシンデアミナーゼと併用、Mullen et al 1994 Cancer Res 54: 1503-1506);ドキソルビシン−N−p−ヒドロキシフェノキシアセトアミド(ペニシリン−V−アミダーゼと併用、Kerr et al 1990 Cancer Immunol Immunother 31 : 202-206);パラ−N−ビス(2−クロロエチル)アミノベンゾイルグルタメート(カルボキシペプチダーゼG2と併用);セファロスポリンナイトロジェンマスタードカルバメート類(ベータ−ラクタマーゼと併用);SR4233(P450レダクターゼと併用);ガンシクロビル(HSVチミジンキナーゼと併用、Borrelli et al 1988 Proc Natl Acad Sci
85: 7572-7576);ニトロレダクターゼと併用されるマスタードプロドラッグ(Friedlos
el al 1997 J Med Chem 40: 1270-1275)およびシクロホスファミド(P450と併用、Chen et a/1996 Cancer Res 56: 1331-1340)。
【0276】
プロドラッグ活性化酵素の例には、5−フルオロ−ウラシルプロドラッグであるカペシタビンおよびフルツロンを活性化するチミジンホスホリラーゼ;ガンシクロビルを活性化する単純ヘルペスウイルスからのチミジンキナーゼ;シクロホスファミドのようなプロドラッグを活性化してDNA損傷剤にするシトクロムP450;ならびに5−フルオロシトシンを活性化するシトシンデアミナーゼが含まれる。ヒト由来の酵素を用いることができる。
【0277】
他の適切な分子には、療法および/または診断適用の分子、例えば以下:サイトカイン、ケモカイン、ホルモン、抗体、操作された免疫グロブリン様分子、一本鎖抗体、融合タンパク質、酵素、免疫共刺激分子、免疫調節分子、アンチセンスRNA、標的タンパク質のトランスドミナントネガティブ変異体、毒素、条件付き毒素(conditional
toxin)、抗原、腫瘍抑制タンパク質および増殖因子、膜タンパク質、血管作動性タンパク質およびペプチド、抗ウイルス性タンパク質およびリボザイム、ならびにそれらの誘導体(例えば結合したレポーター基を有するもの)をコードする配列が含まれるが、それらに限定されない。含まれる場合、そのようなコード配列は典型的には適切なプロモーターに作動可能に連結することができ、それはリボザイム(単数または複数)の発現を駆動するプロモーターであってよく、または異なるプロモーター(単数または複数)、例えば1種類以上の特定の細胞型における発現を駆動するプロモーターであってよい。
【0278】
その分子は細胞から分泌されるタンパク質であることができる。あるいは、その分子は分泌されずに細胞内で活性である。いずれにしても、その分子はバイスタンダーエフェクター(bystander effector)または遠位バイスタンダー(distant bystander)作用を示してよく;すなわち、ある細胞中での発現産物の産生が隣接または遠位(例えば転移細胞)のどちらかの共通の表現型を有する追加の関連する細胞の死滅をもたらす。
【0279】
癌の処置または予防における使用のための適切な分子には、標的細胞を破壊する(例えばリボソーム性毒素)、腫瘍抑制因子として作用する(例えば野生型p53);抗腫瘍免疫機序の活性化因子として作用する(例えばサイトカイン、共刺激分子および免疫グロブリン);血管新生の阻害剤として作用する;または高められた薬物感受性を提供する(例えばプロドラッグ活性化酵素);天然のエフェクター細胞による標的細胞の破壊を間接的に刺激する(例えば免疫系を刺激する強い抗原)、または前駆体物質を標的細胞を破壊する毒性物質に変換する(例えばプロドラッグ活性化酵素)タンパク質(またはタンパク質をコードする核酸)が含まれる。コードされるタンパク質は、(例えば分泌される抗腫瘍抗体−リボソーム性毒素融合タンパク質により)バイスタンダー腫瘍細胞を破壊する、バイスタンダー腫瘍細胞の破壊を間接的に刺激する(例えば免疫系を刺激するサイトカインまたは局所的な血管閉塞を引き起こす凝血原タンパク質)、または前駆体物質をバイスタンダー腫瘍細胞を破壊する毒性物質に変換する(例えばプロドラッグを活性化して拡散性薬物にする酵素)こともできる可能性がある。
【0280】
腫瘍残存性(persistence)に関する細胞遺伝子の発現を妨げるアンチセンス転写産物またはリボザイム(例えばバーキットリンパ腫における異常なmyc転写産物に対するもの、または慢性骨髄性白血病におけるbcr−abl転写産物に対するもの)を送達してその抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体および/または細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンの癌細胞死滅機能または転移予防機能を増強することができる。そのような分子の組合せの使用も予想される。
【0281】
低酸素により制御可能な療法用分子の例をPCT/GB95/00322(WO−A−9521927)において見付けることができる。
【0282】
医薬組成物
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは、癌関連疾患の処置において有効であり得る。
【0283】
我々は、細胞内腫瘍性タンパク質断片をワクチンとして用いるワクチン接種により癌関連疾患を予防する方法を開示する。
【0284】
ワクチンとしての使用のための細胞内腫瘍性タンパク質断片は、当業者に既知の配合法を用いて、薬学的に許容可能な組成物中の単離された、および実質的に精製されたタンパク質およびタンパク質断片として提供することができる。
【0285】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは医薬組成物の形態で投与することができる。そのような医薬組成物には、療法上有効量の抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体および/または細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンが適切な賦形剤、希釈剤またはキャリヤーと一緒に含まれてよい。
【0286】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは、特に例えば患者中に例えば静脈経由で注射することにより、患者の循環中に導入することができる。
【0287】
非経口投与に適した配合物には、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、およびその配合物を意図される受容者の血液と等張にする溶質を含有し得る水性および非水性の無菌注射溶液;ならびに懸濁化剤および増粘剤を含み得る水性および非水性の無菌懸濁液が含まれる。その配合物は、単位用量または多数回用量の容器、例えば密封されたアンプルおよびバイアル中で提供されてよく、使用直前に無菌液体キャリヤー、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライされた(凍結乾燥された)条件下で貯蔵することができる。即時注射用の溶液および懸濁液は、前に記述した種類の無菌の粉末、顆粒および錠剤から調製することができる。
【0288】
これらの組成物は標準的な経路により投与することができる。これらには、以下:経口、直腸、経眼(硝子体内または前房内が含まれる)、経鼻、局所(バッカルおよび舌下が含まれる)、子宮内、経膣または非経口(皮下、腹腔内、筋肉内、静脈内、皮内、頭蓋内、気管内、および硬膜外が含まれる)、経皮、腹腔内、頭蓋内、脳室内、脳内、膣内、子宮内、または非経口(例えば静脈内、脊髄内、皮下または筋肉内)の経路が含まれるが、それらに限定されない。
【0289】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチン配合物は、好都合には単位剤形で提供することができ、従来の薬学的技法により調製することができる。そのような技法には、有効成分および医薬用キャリヤーまたは賦形剤(単数または複数)を一体化させる(bringing into association)工程が含まれる。一般に、その配合物は有効成分を液体キャリヤーもしくは微細に分割された固体キャリヤーまたは両方と一体化させ、次いで必要であれば製品を形造ることにより調製される。
【0290】
加えて、その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンはその化合物の持続放出を可能にする生分解性ポリマー中に組み込むことができ、そのポリマーを薬物送達が望まれる部位の近傍に、例えば腫瘍の部位に埋め込み、またはその抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体および/または細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンがゆっくりと全身的に放出されるように埋め込む。その生分解性ポリマーおよびそれらの使用は、例えばBrem et al (1. Neurosurg 199
1 74:441-446)において詳細に記述されている。浸透圧ミニポンプを用いて、高濃度の抗
細胞内腫瘍性タンパク質抗体および/または細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンのカニューレを通した対象の部位への、例えば直接の転移性増殖物中への、またはその腫瘍への血管供給中への制御送達を提供することもできる。
【0291】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは細胞毒性薬剤に連結されていてよく、それは所望の位置への送達を最大化するように設計された方法で注入される。例えば、リシンに連結された高親和性抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体および/または細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンがカニューレを通して標的部位に供給している血管中に、またはその標的中に直接送達される。そのような薬剤はまた、注入カニューレに結合された浸透圧ポンプを通して制御された方法で送達される。
【0292】
好ましい単位剤形配合物は、本明細書において上記で述べたような1日量または単位、1日サブ用量(daily sub−dose)、またはその適切な部分量(fraction)の投与される成分を含有する配合物である。上記で特に言及された成分に加えて、本明細書で記述される配合物には問題の配合物のタイプを考慮して当該技術で一般的に用いられる他の薬剤が含まれていてよいことは理解されるべきである。
【0293】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンコンジュゲートは、希釈剤およびキャリヤー、例えば等張生理食塩水(静脈内に投与する場合)の標準的な無菌の非発熱性配合物中で、あらゆる適切な方法で、通常は非経口で、例えば静脈内または腹腔内に投与することができる。一度その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンコンジュゲートが標的細胞に結合し、(必要であれば)血流から排除されると(それは典型的には1日程度かかる)、そのプロドラッグが通常は単回注入用量で投与され、または腫瘍が画像化される。必要とされるなら、その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンコンジュゲートは免疫原性である可能性があるため、より長い処置期間を提供するためにシクロスポリンまたはいずれかの他の免疫抑制剤を投与することができるが、通常はこれは必要ではない。
【0294】
本明細書で記述される細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンの投与量は、処置される疾患状態または病気および他の臨床因子、例えばヒトまたは動物の体重および健康状態、ならびに化合物の投与経路に依存するであろう。
【0295】
特定の動物またはヒトにおける細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンの半減期に依存して、その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンを1日数回〜1週間に1回投与することができる。本明細書で記述される方法および組成物はヒトにおける使用および獣医学的使用の両方に関する適用を有することは理解されるべきである。本明細書で記述される方法は、同時にまたは長期間にわたってのどちらかで与えられる単回ならびに多回投与を意図している。
【0296】
その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンコンジュゲートおよびプロドラッグの投与の間のタイミングは、コンジュゲートの腫瘍/正常組織比(少なくとも静脈内送達後)は約4〜6日後に最も高いが、この時点で腫瘍に結合しているコンジュゲートの絶対量は1グラムあたりの注射された用量のパーセントの点ではより早い時点におけるよりも低いため、型にはまった方法で最適化することができる。
【0297】
従って、その細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンコンジュゲートおよびプロドラッグの投与の間の最適な間隔は、酵素のピーク腫瘍濃度(tumour concentration)ならびに腫瘍および正常組織間の最適な分布比率の間で妥協するであろう。細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンコンジュゲートの投与量は、通常の基準に従って医師により選択されるであろう。少なくともβ−グルコシダーゼのような標的となる酵素およ
び毒性プロドラッグとしての静脈内アミグダリンを用いる方法の場合では、1〜50回の体表面積1平方メートルあたり0.1〜10.0グラム、好ましくは1.0〜5.0g/mの1日量が適切でありそうである。経口療法に関して、1日あたり3用量の0.05〜10.0g、好ましくは1.0〜5.0gを1〜50日間が適切であり得る。細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンコンジュゲートの投与量は、同様に、通常の基準に従って、特に腫瘍のタイプ、病期および位置ならびに患者の体重を参照して選択されるであろう。処置の期間は、部分的にはその細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンコンジュゲートに対するあらゆる免疫反応の迅速性および程度に依存するであろう。
【0298】
本発明はさらに、患者を細胞内腫瘍性タンパク質に対する抗体を産生するように誘導する処置の方法を提供する。そのような方法は、その細胞内腫瘍性タンパク質の断片のそのような処置を必要とする患者への投与を含む。そのペプチドは、発癌性変異を含む腫瘍性タンパク質の断片であってよい。その方法は、その患者から得られた試料中の1種類以上の腫瘍性タンパク質または発癌性変異の存在を同定し、その後その患者中に存在することが同定された腫瘍性タンパク質の断片を含む、または発癌性変異を含むペプチドを投与する工程を含んでいてよい。その試料は、腫瘍試料、例えば生検試料であってよく、またはそれは別の試料、例えば組織、尿、血液、粘液、もしくは他の試料であってよい。特定の腫瘍性タンパク質または発癌性変異の存在は、ウェスタンブロットにより、またはELISAもしくはPCTに基づく方法により決定することができる。適切な方法は当該技術において既知である。
【0299】
疾患
例えば医薬組成物の形態の本明細書で記述される細胞内腫瘍性タンパク質断片ワクチンは、癌の予防/処置において用いることができる。
【0300】
この文書の目的に関して、用語“癌”は、以下のいずれか1種類以上を含み得る:急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、血液癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、女性生殖器系の癌、男性生殖器系の癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児横紋筋肉腫、小児期肉腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸直腸癌、結腸癌、子宮内膜癌、子宮内膜肉腫、食道癌、眼癌、胆嚢癌、胃癌、胃腸管癌、有毛細胞白血病、頭頸部癌、肝細胞癌、ホジキン病、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、白血病、肝臓癌、肺癌、悪性繊維性組織球腫、悪性胸腺腫、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経系癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、原発性CNSリンパ腫、前立腺癌、直腸癌、呼吸器系、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、胃癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、泌尿器系癌、子宮肉腫、腟癌、血管系、ワルデンストレームマクログロブリン血症およびウィルムス腫瘍。
【0301】
例えば医薬組成物の形態の本明細書で記述される細胞内腫瘍性タンパク質ワクチンは、癌関連障害の処置において用いることもできる。
【0302】
そのような障害には以下のものが含まれるが、それらに限定されない:固形腫瘍;血液由来腫瘍、例えば白血病;腫瘍転移;良性腫瘍、例えば血管腫、聴神経腫、神経繊維腫、トラコーマ、および化膿性肉芽腫;リウマチ様関節炎;乾癬;眼性血管新生疾患、例えば糖尿病性網膜症、未熟児の網膜症、黄斑変性、角膜移植拒絶反応、血管新生緑内障、水晶体後繊維増殖症、ルベオーシス;オスラー・ウェーバー症候群;心筋血管新生;プラーク血管新生;毛細血管拡張症;血友病関節;血管線維腫;創傷肉芽形成;冠状動脈側枝;脳側枝;動静脈奇形;虚血性肢血管新生;血管新生緑内障;水晶体後繊維増殖症;糖尿病性血管新生;ヘリコバクター関連疾患、骨折、脈管形成、造血、排卵、月経および胎盤形成
【実施例】
【0303】
我々の結果は、腫瘍特異的抗原負荷により宿主の免疫を刺激して腫瘍の阻害につながるその特異的な抗原に対する内因性抗体を産生させることができることを実証した。この‘癌ワクチン接種’の概念は長い間有望であるが挑戦的な見通しであった21。重要なことだが、我々は抗原誘導型抗体療法は外因性に送達される抗体と比較して類似の抗腫瘍療法的有効性を達成することができることを見出した。より経済的であることに加え、我々は天然に我々自身の内部に高力価の抗原に誘導される抗腫瘍抗体を生成する非常に大きな潜在的柔軟性を有するため、我々は前者のアプローチは後者よりも有用であり得ると信じている。ワクチン接種のために腫瘍性タンパク質を用いることは現実的な考えではないように思われるが、我々はこのアプローチが将来の研究のために価値があると信じている。腫瘍性タンパク質は、癌細胞のシグナル伝達ネットワークにおける発癌性機能を保持するために、正しいコミュニケーションのためにその天然の細胞内局在においてその近隣のパートナーと共に正しく納まっている(sit)べきである。‘腫瘍性タンパク質’がその天然の細胞内局在の動的複雑性から単離された場合、それはそのつながりを失い、そのような‘単離された’状況においてその正常な生物学的役割を果たすことができない可能性がある。
【0304】
我々の生体内でのデータは、免疫療法は抗癌活性に関して細胞外腫瘍性タンパク質だけでなく細胞内腫瘍性タンパク質も標的とすることができるという今まで認識されていなかった現象を明らかにしている。
【0305】
実施例節E1(実施例1〜18)。抗体療法またはワクチン接種により細胞内腫瘍性タンパク質を標的とすることに関する概念実証
節E1は実施例1〜18を含む。実施例1は節E1への導入であり、実施例2〜10は節E1に関する材料および方法であり、実施例11〜16は節E1に関する結果であり、実施例17は節E1の論考であり、実施例18は節E1に関する参考文献である。
【0306】
実施例1.導入(節E1)
モノクローナル抗体(mAb)は、人類の最も致命的な疾患の一部に対する強力かつ高度に特異的な生物学的薬剤であることが証明されてきた。生物学的標的に特異的に結合する抗体の能力を探求するため、かなりの研究および開発が細胞外/細胞表面の発癌性標的に対するモノクローナル抗体を開発することに焦点を合わせてきた。そのような分子標的癌療法からの成功の第一波は、それぞれ結腸直腸癌および乳癌の処置における使用のための抗血管内皮成長因子抗体であるベバシズマブ(Avastins)および抗Her2/neu抗体であるトラスツズマブ(Herceptin)のFDAの認可であった。これらは慣習的に細胞外タンパク質に対して作用する抗体の例である。残念なことに、細胞のタンパク質の大部分は細胞内であり、従って、抗体は細胞内の部位に接近できないという一般的な考え方のため、抗体療法のアプローチにより探求されないままであった。しかし、1978年以来数多くの実験的発見および臨床観察がそうではないことを示唆してきており、免疫学者は自己抗体の生細胞中への浸透は一般的な細胞の現象である可能性があることを示してきた4,5
【0307】
可能な細胞内標的に対する免疫療法の概念を証明するため、我々は3種類の細胞内標的、すなわち再生肝のホスファターゼ3(PRL−3)、強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)、およびポリオーマウイルス中型T(mT)腫瘍性タンパク質をこの研究における癌処置に関して選択した。PRL−3は1994年〜1998年に同定された3種類のPRL−ホスファターゼの1つであり6,7、PRL−1、PRL−2、およびPRL−3はタンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)ファミリーの亜群を形成している。PR
Lは細胞内のC末端がプレニル化されたホスファターゼであり9,10、PRL−1およびPRL−3の細胞膜の内葉および早期エンドソームへの局在がEM免疫金標識により明らかになっている11。PRLホスファターゼはヒトの癌におけるバイオマーカーおよび療法標的として検証されている興味深いタンパク質の群である。PRL−3のmRNAレベルの上方制御は、2001年に最初に、遺伝子発現の逐次分析(SAGE)技術を用いて、転移性結腸直腸癌の全体的な遺伝子発現プロフィールと原発癌、良性結腸直腸腫瘍、および正常な結腸直腸上皮の全体的な遺伝子発現プロフィールにより、結腸直腸癌の転移と密接に相関していることが分かった12。PRL−3のタンパク質レベルが癌試料で平均22.3%上昇している(n=1008)ことも報告されている13。加えて、個々のPRLの上方制御は、多数のタイプの進行したヒトの転移癌と、それらの正常な対応物と比較した場合に相関していることが報告されている14。従って、発癌性PRL−3をその研究に関する理想的な細胞内標的として選択した。
【0308】
第2に、その抗体療法が他の細胞内タンパク質に対して一般的な適用を有し得るかどうかを探求するため、我々は、元々クラゲエクオレア・ビクトリアから単離された一般的なレポータータンパク質である細胞質ゾル性強化緑色蛍光タンパク質(EGFP)を選択した。EGFPは核〜細胞質性局在パターンを有する細胞内タンパク質として発現される。EGFPは宿主組織では発現していないため、癌細胞中で人為的に過剰発現させた際、EGFPは癌細胞に特異的な細胞内タンパク質の役目を果たす。これは、我々が、EGFPに方向付けられた抗体療法がEGFPを発現する腫瘍を特異的に根絶し、宿主に対して何らかの非特異的な望まれない副作用を示すであろうかどうかを調べることを可能にする。
【0309】
最後に、別の動物腫瘍モデルにおいて抗体療法の原理を試験するため、我々は周知の乳癌モデルであるマウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター/エンハンサーの転写制御下の中型T(mT)癌遺伝子を有するMMTV−PymTトランスジェニックマウス15を用いる。そのようなトランスジェニックマウスは、転移性乳腺腫瘍の表現型の相対的寄与を評価するために、癌研究学界において数十年間優秀な自然発生腫瘍モデルとして広く用いられてきた16,17
【0310】
ワクチンは既存の癌の処置または癌発生の予防において安価であるが有効である18。そのような癌の特異的な能動的免疫療法は、成功すれば、受動的免疫療法を超える明確な利点を有する。抗体がその細胞内抗原を認識することができるならば、我々は、細胞内抗原は宿主の免疫系による天然の抗体産生を誘発して癌に対する抗体療法の作用と類似の作用を達成することができるであろうと予想することができる。ここで、我々は我々の研究を抗原誘導型抗体療法に関する精製されたPRL−3、EGFPおよびmTタンパク質を用いたワクチン接種の信頼性の評価へと拡張する。
【0311】
実施例2.材料および方法(節E1):細胞株および細胞培養
B16F0(CRL−6322)およびB16F10(CRL−6475)マウスメラノーマ細胞株(C57BL/6J株由来)はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、バージニア州マナサス)から購入した。細胞を10%ウシ胎児血清および抗生物質を補ったRPMI培地中で増殖させ、5%COを供給した37℃の恒温器中で維持した。
【0312】
実施例3.材料および方法(節E1):ウェスタンブロット分析
詳細な工程は我々の以前の研究22において記述された。
【0313】
実施例4.材料および方法(節E1):抗体
マウスモノクローナル抗体(クローン#318、IgG1)は、以前に記述されたように22組織内(in−house)で作製した。EGFPマウスモノクローナル抗体(sc−9996、IgG2a)およびポリオーマウイルス中型T抗原(PymT)ラットモ
ノクローナル抗体(sc−53481、IgG2b)はSanta Cruz biotechnology,Inc.からのものであった。
【0314】
実施例5.材料および方法(節E1):GST−PRL−3、GST−中型Tプラスミドの構築、およびGST融合タンパク質の調製
GST−PRL−3融合タンパク質を作製するための詳細な工程は以前に記述された。GST−中型Tを作製するため:順方向プライマー5’ gcggatecatggatagagttctgagcagagctgac 3’および逆方向プライマー5’ ctgaattcctagaaatgccgggaacg 3’を、pXJ40ベクター(すなわちpXJ40−PyMT)を鋳型として用いるPCRのために用いた。そのPCR断片をBamHIおよびEcoRIで消化し、pGEX−KGベクターのそれぞれの部位の中にライゲーションした。GST融合タンパク質の調製は以前に詳細に記述された22
【0315】
実施例6.材料および方法(節E1):実験的転移アッセイ23
全ての動物試験は所内の動物実験委員会(IACUC)により認可され、分子および細胞生物学審査委員会(IRB)(シンガポール)の方針に従って実施された18。C57BL6およびScidマウスはBRC(シンガポール科学技術研究庁生物資源センター)からのものであり、muMTマウスは米国ジャクソン研究所からのものであり、Rag 2−/−マウスは米国Taconicからのものであり、Rag T1’マウスは米国Taconicからのものであった。8週齢のマウスに100万個の癌細胞をそれらの尾静脈経由で注射した(1日目)。処置されたマウスにmAbを尾静脈経由で3日目に投与し、続いて週2回投与した。4週齢のトランスジェニックマウス(PymT)を2つの群に分け、抗mT抗体またはPBSを週2回与えた。マウスを屠殺し、全ての臓器を肉眼で見える転移の存在に関して調べた。転移性腫瘍または器官を取り出し、組織学的分析のために4%パラホルムアルデヒド中で固定した。肺転移結節を解剖顕微鏡下で計数した。それぞれの実験において抗体療法で用いられたマウスの数を、表5Gにおいて要約する。
【0316】
実施例7.材料および方法(節E1):MMTV−PymTマウスの遺伝子型決定
MMTV−PymTマウス系統はヒト癌のマウスモデルコンソーシアム(MMHCC)から購入した。雌は乳を分泌せず、従ってこの系統はFVB/N(+/+)の野生型の雌によりヘテロ接合性(Tg/+)の雄を産ませることにより維持される。尾の先端のDNAをDNA消化緩衝液(12ml:10.08ml、1.2mlの10×GB緩衝液、0.6mlの10% TritonX−100、0.12mlの2−メルカプトエタノール)で抽出した。Gitschier’s緩衝液(10ml:3.35mlの2MトリスpH8.8、1.66mlの1M(NHSO 1.34mlの0.5M MgCl、1.65mlのMQ HO)。順方向プライマーP001:5’−cAA ATG TTG cTT GTc TGG TG−3’および逆方向プライマーP002:5’−GTc AGT cGA GTG cAc AGT TT−3’を野生型200bp断片のPCRのために用いた。順方向プライマーP003:5’−GGA AGc AAG TAc TTc AcA AGG G−3’および逆方向プライマーP004:5’−GGA AAG TcA cTA GGA GcA GGG−3’を566bpの導入遺伝子断片のPCRのために用いた。遺伝子型決定手順は以前に記述されている(http://inouse.ncicrf.gov/pi tocols)。
【0317】
実施例8.材料および方法(節E1):全組織標本の調製およびカーミンミョウバン(Carmine Alum)染色
下記の全ての手順は室温で実施された。腹部の乳腺を全組織標本の調製のために検死の間に切除し、スライドガラス上に広げ、カルノア固定液(6部の100%エタノール、3部のクロロホルム、および1部の氷酢酸)中で4時間固定した。続いて、その組織を70%エタノール中で15分間洗浄し、エタノールを徐々に蒸留水に変え、次いでそれを最後
に蒸留水で5分間すすいだ。カーミンミョウバン染色液中で一夜染色を行った。次いでその組織を段階的なアルコール溶液(70、95、および100%;各15分間)中で脱水し、キシレンの2回交換で透徹し、マウントし、パーマウント(Permount)を用いてカバーガラスを被せた。全組織標本をLeica解剖顕微鏡(Leica Microsystems GmbH、ヴェッツラー、ドイツ)下で観察し、SPOT FLEX(登録商標)カラーデジタルカメラ(Diagnostic Instruments,Inc. ミシガン州スターリングハイツ)を用いて、SPOTソフトウェアパッケージ(バージョン4.5、Diagnostic Instruments,Inc. ミシガン州スターリングハイツ)を用いてデジタル画像を記録した。
【0318】
実施例9.材料および方法(節E1):C57BL6マウスおよびMMTV−PymTトランスジェニックマウスの免疫処置
フロイント完全アジュバントは、免疫応答を高めるためのマイコバクテリウム・ブチリカム(Mycobacterium butyricum)の死菌細胞を含有する形態である。その完全アジュバントは最初の注射で用いられる。この細菌を含有しない形態はフロイント不完全アジュバントとして知られ、後の注射で追加免疫するために用いられる。8週齢のC57BL6マウスを、総量200μlのフロイントアジュバント:100μlの生理食塩水中のPRL−3(20μg)またはEGFP(20μg)を100μlの完全アジュバント(カタログ番号77140、Pierce)と混合したものを用いた腹腔内注射により免疫した。4週齢のMMTV−PymT TGマウスを、総量200μlのフロイントアジュバント:100μlの生理食塩水中のmT(10μg)抗原を100μlの完全アジュバント(カタログ番号77140、Pierce)と混合したものを用いた腹腔内注射により免疫した。次の2回の免疫処置は、総量200μlの不完全アジュバント(カタログ番号77145、Pierce)を注射した。2回目および3回目の注射を2週間間隔で行った。続いて、100〜200μlの尾の血液をヘパリンでコートされた毛細管チューブ中に採取し、血漿を血液試料から調製し、抗体価をELISAにより測定した。ELISAの詳細な工程は以前に記述された22。高力価のPRL−3、EGFP、またはmT抗体をそれらの血清中に有するマウスを実験およびさらなる分析のために選択した。ワクチン接種のために用いたマウスの数を図6Dにおいて要約する。
【0319】
実施例10.材料および方法(節E1):ELISAアッセイ
PRL−3およびmT抗原のストックをpH7.4の炭酸塩−重炭酸塩緩衝液中で作製した。50ngの適切な抗原を含有する100μlの溶液をそれぞれの96ウェルプレートに入れ、4℃で一夜保温して抗原をプレート上にコートした。次いでそのプレートを0.05%Tween20を含有するPBS中3%BSAで37℃において1時間ブロッキングし、次いでPBSで3回洗浄した。それぞれのマウスからの血清(1.0μl)を100μlのブロッキング溶液中で希釈し、それぞれのウェルに添加し、次いで37℃で2時間保温した。100μlのPBS中で1:5000で希釈した適切なHRPとコンジュゲートした二次抗体(Pierce、米国)をそれぞれのウェルに添加し、37℃で1時間保温した。プレートを0.05%Tween−20を含有するPBSで3回すすぎ、続いて滅菌水で3回洗浄した。基質である100μlのTurbo−TMB(商標)(Pierce、米国)をそれぞれのウェルに添加し、室温で10分間保温した。その反応を100μlの濃H2SO4を添加することにより停止した。吸光度をDynatech MR7000プレートリーダー(Dynatech、米国)を用いて450nmにおいて測定した。
【0320】
実施例11.材料および方法(節E1):統計分析
カプラン・マイヤー法を用いて‘処置された’対‘未処置の’マウスに関する累積生存率を概算した。0.05未満のp値を統計的に有意であると考えた。
【0321】
実施例12.結果(節E1):C57BL6野生型マウスにおいて、PRL−3 mAb(IgG1)は内因性PRL−3タンパク質を発現する転移性腫瘍を有効に阻止した
我々は以前に、免疫不全のヌードマウスの転移性腫瘍モデルにおいて細胞内PRLタンパク質に対する抗体療法の有効性を実証した19。この療法的アプローチを将来の臨床適用のためにより関連のあるモデルにおいて調べるため、我々はこの研究を拡張してその抗体処置が免疫応答性のC57BL6野生型マウスにおいて機能し得るかどうか調べた。1日目に、マウス(8週齢)に側部尾静脈経由で内因性のPRL−3を発現しているC57BL6由来のB 16F0(F0)メラノーマ癌細胞を静脈内(i.v.)注射した(図1A、レーン1)。3日目に、マウスを‘未処置’および‘処置’群に分け、次いでそれは実験の全期間の間週2回のそれぞれPBSまたはPRL−3 mAbの投与を受けた。(図1B)。実験の終了時(17日目)に、‘未処置の’マウスは重篤な体重の減少、肺、肝臓、副腎、腎臓および骨を含む様々な器官における多数の転移性腫瘍を示した。対照的に、‘処置された’マウスは見たところより活発かつより健康に見えた。‘処置された’マウスの群は、腫瘍転移の低減と一致して、その実験の期間全体を通して一定して体重が増えたが、‘未処置の’群はそうではなかった(図1C〜D)。PRL−3 mAbの特異性を確証するため、同一の実験を並行して実施し、ここでマウスに非常に低レベルのPRL−3を発現している別のメラノーマ細胞株であるC57BL6由来のB16F10(F10)細胞を静脈内注射した(図1A、レーン2)。実験の終了時(17日目)までに、全てのF10受容マウスは、それらがPRL−3 mAbを与えられたかどうかに関わらず、卵巣、副腎、腎臓、および骨において転移を発生していた。両方の群のマウスは体重の著しい低下を経験し、弱く/不活発に見え(図1E〜F)、これはPRL−3を発現していないF10の受容マウスはPRL−3抗体処置に対して乏しい応答を有したことを示している。F10受容マウスは肺においてF0受容マウスからの肺(図1C)と比較してより侵攻性の転移性腫瘍を発症している(図1E)ことを特筆する。これらのデータは、PRL−3抗体処置の効率はその癌細胞のPRL−3発現状態と密接に相関していたが転移活性の程度とは相関していなかったことを示唆している。従って、免疫応答性の野生型C57BL6マウスに由来する最新のデータは、我々の以前の免疫不全のヌードマウスからの発見19を実証している。
【0322】
実施例13.結果(節E1):B細胞欠損マウスでは、PRL−3 mAb(IgG1)は内因性のPRL−3タンパク質を発現する転移性腫瘍を阻止できない
観察された抗体療法の作用においてリンパ球が関わっているかどうかを調べるため、我々は2種類の操作された免疫不全マウスの系統を用いた:ミュー鎖遺伝子の膜エキソンの不活性化変異に関してホモ接合性のC57BL6マウスであるmuMTマウス。それらはプレBCRを形成することができず、結果として成熟Bリンパ球を欠いている。我々は、RAG−2コード領域の大部分が欠失している生殖細胞系列変異を有し、従って生存可能であるが成熟BまたはTリンパ球を産生することができないホモ接合性変異体(Rag2−/−)をもたらすRag−2マウス21も用いた。カプラン・マイヤー生存曲線を用いてmuMT−F0、C57BL6−F0、およびC57BL6−F10マウスの間で‘処置された’および‘未処置の’マウスを比較した。驚くべきことに、我々はmuMT−F0マウスにおいて腫瘍抑制におけるPRL−3 mAbの療法的有効性を一切観察せず、PRL−3 mAb療法はmuMT−F0マウスに関する寿命の延長において影響を有さず、生存の中央値は‘処置された’マウスに関して19日および‘未処置の’マウスに関して18.5日であった(図2A、p値=0.8661)。同様に、BおよびT細胞欠損Rag2−F0マウスの‘処置’および‘未処置’群の間で腫瘍転移における違いは観察されなかった(データは示していない)。対照的に、PRL−3 mAb療法はC57BL6−F0マウスに関する生存率を延長し、生存の中央値は‘処置された’マウスに関して21.5日および‘未処置の’マウスに関して17日であった(図2B、p=0002)。以前の所見と一致して、PRL−3 mAb療法はPRL−3を発現しない腫瘍を有するC57BL6−F10マウスの全体的な生存を延長せず、生存の中央値は‘処置され
た’マウスに関して17.5日および未処置のマウスに関して16.5日であった(図2C、>=0.535)。異なるマウスの背景の間での抗体療法の有効性を要約するため、我々はPRL−3 mAbに関するそれぞれの群における未処置のマウスと比較して転移性腫瘍形成の程度を低減する能力を採点した。転移性腫瘍形成の少なくとも70%(±10%)の低減が有効な結果と採点され、明確に有益な作用はC57BL6−F0群においてのみ見られ、muMT−F0マウスにおいては見られなかった(図2D)。従って、PRL−3抗体療法はおそらく抗腫瘍活性に関して成熟B細胞の機能を必要とする。
【0323】
実施例14.結果(節E1):C57BL6マウスでは、EGFP mAb(IgG2a)はEGFPタンパク質を発現する転移性腫瘍を有効に阻止する
腫瘍転移を阻害するPRL−3 mAbの興味深い能力は、我々にその療法戦略を他の細胞内タンパク質にも適用することができるかどうか調べる動機を与えた。EGFPは癌と関連しないタンパク質であるため、我々はEGFPを癌細胞において特異的に発現される細胞内タンパク質マーカーとして用いることを選択した。EGFPは宿主組織では発現していないため、我々はEGFP抗体は動物モデルにおいてわずかな望ましくない副作用しか有しないはずであると予想した。外因性のEGFPタンパク質を不均一に過剰発現するプールされたF0およびF10メラノーマ癌細胞株(図5A図5B)を利用して、そのEGFP−F0およびEGFP−F10を発現する細胞を注射し、同じ療法スケジュールに従ってEGFP mAbで処置した(図5C)。予想されたように、EGFP−F0およびEGFP−F10細胞は両方とも、PRL−3発現に関わらず、腫瘍退縮の点でEGFP抗体処置に同等によく応答した。特に、別個の緑色蛍光または黒色の転移性腫瘍の集団が肺中に見付かった(図5D〜E、パネルa、e)。従って、EGFPを発現していない黒色の転移はこのモデルにおいて緑色の転移性腫瘍に対する内部陰性対照の役目を果たした。注目すべきことに、EGFP mAbはEGFP転移の数を特異的に低減したが、非EGFP転移の数は低減せず(図5D〜E、パネルe)これはEGFPを発現する腫瘍のみがEGFP mAb療法に応答することを示している。その結果を転移性腫瘍の負荷の低減に基づいて採点する際、我々は、EGFP mAbの作用の有効性は癌細胞中のEGFP発現状態と密接に相関していることを見出した(図5G)。従って、抗体療法は療法的有効性に関して細胞上(または細胞内)の特異的な抗体−抗原相互作用に依存している。
【0324】
実施例15.結果(節E1):MMTV−PymTトランスジェニックマウスでは、mT(ラットIgG2b)mAbはmTを発現する乳腺腫瘍進行の形成を予防する
抗体療法は内因性(例えばPRL−3)および外因性(例えばEGFP)細胞内タンパク質の両方に対して作用することができることを述べた後、我々はこのアプローチが自然発生腫瘍の動物モデルにおいて腫瘍形成を阻害することができるかどうかを問いかけた。この目的のため、我々は自然発生的な乳腺腫瘍発生の一般的なMMTV−PymTトランスジェニックマウスモデルを選択した。MMTV−PymTトランスジェニックマウスは421アミノ酸を含有するDNAウイルスタンパク質であるポリオーマウイルス中型T(mT)発癌タンパク質を発現しており、それは乳腺上皮において強力な腫瘍遺伝子として作用する。mTは直線的に表され(represented)、そのカルボキシ末端において膜に繋ぎ止められ(21aa)、おそらく短いKRSRHFモチーフが細胞表面に露出する(一般に短すぎて外部エピトープにはなり得ない)。従って、このタンパク質のほとんどは細胞質ゾル区画に面しており、従って細胞内タンパク質であると考えられてきた15。mTを発現する細胞は高められた転移可能性を有する16。全ての雌の保因者(遺伝子型+/−)は2〜3月齢において触知可能な乳腺腫瘍(腺癌)を発症する(http://mouse.ncifcrf.gov/information/order livem ice.asp)。中型T発現は雄および雌の乳腺において高レベルで検出され、mT腫瘍遺伝子の発現は乳腺上皮細胞の形質転換に十分である。我々は44匹のヘテロ接合性(+/−)の若いトランスジェニックの雌(RT−PCRを用いてそれらの遺伝子型を確証した(図3A))を用いて、次いでそれらを‘処置’
(n=18)および‘未処置’(n=26)群に分けた。mT抗体がmTを発現する乳腺腫瘍の発現を低減することができるかどうか決定するため、‘処置された’マウスに4週齢においてmT抗体を静脈内注射し、続いて約3ヶ月間のその実験の全期間の間週2回抗体の投与を行った(図3B)。図3Cにおいて、‘未処置の’マウス(#2、#6)および‘処置された’マウス(#7、#10)を代表的な例として選択し;FVB/N非トランスジェニックの雌(#3)を乳腺(5対)の正常なサイズに関する対照として用いた。‘未処置の’マウスの乳腺の病理組織学的試験は、側枝の不規則な形成、拡大した末梢芽状突起(terminal buds)、およびいくつかの大きな多葉性の腫瘍塊を示した(図3D、a)。対照的に、処置されたマウスからの乳房組織は野生型マウスからの正常な乳房と比較してより正常な成長および発達を示した(図3D、b〜c)。‘処置された’対‘未処置の’MMTV−PymTトランスジェニックマウスに関してカプラン・マイヤー法を用いて累積生存率を概算して、我々は、mT抗体療法は処置されたマウスの寿命を延長することができ、‘処置された’MMTV−PymTマウスに関する生存の中央値の未処置のマウスに関する15週間と比較した19.5週間への増大をもたらしたことを見出した(図3E、p=0.0018)。全部で、我々は100%(26/26)の‘未処置の’マウスが劇的な乳房腫瘍を有し、一方でmT抗体で処置されたマウスの16.6%(3/18)のみが腫瘍を有する乳房を発達させ、残りはmT腫瘍遺伝子を発現する転移性乳房腫瘍の形成における有意な低減を示したことを見出した(図3F、および図5F)。これらの結果は、MMTV−PymTマウスをmT抗体のみで処置することにより自然発生的腫瘍形成の大規模な抑制を達成することができることを示唆した。
【0325】
実施例16.結果(節E1):PRL−3タンパク質またはEGFPによりワクチン接種したC57BL6マウスはPRL−3またはEGFPを発現する腫瘍の形成に抵抗した
3種類の別個の細胞内タンパク質(PRL−3、EGFP、およびmT)をそれらのそれぞれの抗体を用いてどのように標的とすることができるかをうまく実証した後、我々は次に細胞内タンパク質を抗原負荷(ワクチン接種)の際の免疫応答により生成される天然の抗体により標的とすることができるかどうかを問いかけた。我々は、8週齢のC57BL6マウスの3用量(それぞれ20g)のPRL−3抗原(n=16)またはEGFPタンパク質(n=14)を用いた2週間間隔での免疫処置に取りかかった(図6A)。免疫処置の終了時に、14週齢の免疫されたC57BL6マウスからの血清をそれらのPRL−3抗原またはEGFPタンパク質に対する抗体力価に関してELISAにより試験した(データは示していない)。続いてうまく免疫されたマウスを2つの群に分け、EGFP−F0(PRL−3陽性)またはEGFP−F10(PRL−3陰性)メラノーマ細胞を静脈内注射した。未免疫のマウス(n=18)(図6B、a〜d)と比較して、PRL−3で免疫したマウスはEGFP−F0癌細胞により副腎、卵巣および肺中に形成される転移性腫瘍の低減を示した(図6B、e〜g)。EGFP−F0メラノーマ細胞はEGFPおよびPRL−3タンパク質の両方を発現し、それはEGFPおよびPRL−3抗体療法の両方に応答するはずであるため、これは予想されていた。注目すべきことに、未免疫のマウスからの転移性の肺(図6B、d)と比較して、PRL−3で免疫したマウスはPRL−3タンパク質を発現していない(図5A)EGFP−F10メラノーマ細胞により形成される転移性肺腫瘍の侵攻性の程度を低減することができなかった(図6B、h)。また、これは抗原に誘導される天然に産生されるPRL−3抗体はPRL−3を発現していないEGFP−F10腫瘍の阻害には影響を有しないことを示唆した。優雅にも、我々はGFP免疫処置は副腎、卵巣および肺においてEGFP−F0およびEGFP F10癌細胞の両方により形成される転移性腫瘍をPRL−3の発現レベルに関わらず低減することができる(図6B、i−1)ことを示した。まとめると、これらの結果は、ワクチン接種による宿主免疫系における抗PRL−3または抗EGFP抗体の誘導はそれぞれPRL−3またはEGFPを発現する腫瘍の形成を特異的に阻害することができることを示唆した。
【0326】
実施例17.結果(節E1):mT抗原でワクチン接種されたMMTV−PymTトランスジェニックの若い雌は乳腺mT腫瘍の形成を予防した
細胞内タンパク質を用いた癌ワクチンの可能性をさらに確証するため、我々は再度MMTV−PymTトランスジェニックの乳腺腫瘍モデルを用いた。38匹のFVB/Nヘテロ接合性の雌(4週齢)を、GSTで免疫する群(n=3)、GST−mTで免疫する群(n=17)、および免疫しない対照群(n=18)に分けた。マウスに対してそれぞれ3用量(各10μg)のGSTまたはGST−mT抗原を用いた免疫接種を2週間間隔で行った(図4A)。そのようなマウスをELISAによりmT抗体の力価に関して調べて、それらの血液循環中のmT抗体の存在を確証した(代表的な例に関して図4Bを参照)。注目すべきことに、GSTで免疫したマウス(#43、#44、#45)と比較して、mTで免疫したマウス(#37、#40、#41)は乳腺腫瘍の大きさおよび重量における劇的な低減を示し(図4C〜D)、GSTで免疫したマウス、GST−mTで免疫したマウス、および野生型の対照マウスからの乳房組織のマウスあたりの平均重量は、それぞれ5.6g、1.3g、および0.6gであることが分かった(図4D)。そのワクチン接種実験の結果を図6C〜Dにおいて要約する。カプラン・マイヤー生存曲線は、mT抗原が免疫したマウスに関する平均生存率(19.5週間)を未免疫の群(14.5週間)と比較して延長することができる(p=0.0004)ことを実証し(図4E)、これは生存時間の劇的な延長における癌ワクチンの明確な利益を示している。まとめると、そのデータは抗原に誘導される宿主のmT抗体はまたもmTを発現する癌細胞による自然発生的な乳房腫瘍の形成を有効に予防することができたことを示唆している。
【0327】
実施例18.論考(節E1)
細胞外タンパク質の標的化における進歩にも関わらず、細胞内タンパク質の標的化は抗体療法の点でほとんど注目を受けてこなかった。本明細書で示された我々の発見は、細胞内タンパク質に対する抗癌抗体療法は生体内で腫瘍の進行を劇的に低減することができるであろうという独特の概念実証に証拠を提供している。
【0328】
本明細書において、我々は野生型C57BL6マウスにおいてマウスのメラノーマ転移に対する2種類の細胞内タンパク質(PRL−3およびEGFP)に対する抗体療法の有効性を実証した。MMTV−PymTトランスジェニックマウスの自然発生腫瘍モデルにおける細胞内mT抗原に対しても類似の成功が得られた。IgG1(PRL−3 mAb)、lgG2a(EGFP mAb)、IgG2b(PymTラットmAb)、および自己生成抗体が腫瘍の進行を有効に阻害することができたため、観察された療法的応答はアイソタイプと無関係であるようである。適正な抗体−抗原相互作用が優勢な要因であるように思われ;関連のない抗体を用いた腫瘍の標的化は有益な応答を全くもたらさなかった。興味深いことに、我々は成熟B細胞が抗体療法応答の重要な構成要素を構成していることも見出した。これらの結果は、B細胞が結腸腺癌に対する抗DR5抗体療法に不可欠であることが分かった最近の報告23とよく似ている。
【0329】
我々の結果は、腫瘍特異的抗原負荷により宿主の免疫を刺激して腫瘍の阻害をもたらすその特異的な抗原に対する内因性抗体を産生させることができることも実証した。この‘癌ワクチン接種’の概念は長い間有望であるが挑戦的な見通しであった。重要なことだが、我々は抗原誘導型抗体療法は外因性に送達される抗体と比較して類似の抗腫瘍療法的有効性を達成することができることを見出した。我々は天然に我々自身で高力価の抗原に誘導される抗体を生成する非常に大きな潜在的柔軟性を有するため、我々はそれがより有用かつ経済的であり得ると信じている。ワクチン接種のために腫瘍性タンパク質を用いることは現実的な考えではないように思われるが、我々はこのアプローチが将来の研究のために価値があると信じている。癌細胞のシグナル伝達ネットワークにおける発癌性機能を保持するために、腫瘍性タンパク質は正しいコミュニケーションのためにその近隣のパートナーと調和したその天然の細胞内状況に正確に位置しているべきである。腫瘍性タンパ
ク質がその天然の細胞内局在の動的複雑性から単離された場合、それはそのつながりを失い、その正常な生物学的役割を果たすことができない可能性がある。
【0330】
本明細書で示した研究は、将来の臨床癌処置のための可能性のある方法論を概説している。第1に、原発腫瘍を取り出し、調べて腫瘍特異的抗原を同定する。これに続いて、その腫瘍抗原に対する特異的なキメラまたはヒト化抗体を導入して播種された細胞を排除し、そうして微小転移の形成を阻害する24。この工程は癌患者におけるさらなる拡散または再発を十分に予防することができる。あるいは、密接な遺伝的素因がある癌に関して、その家族性癌と関係のある抗原による免疫適格性の若い感受性の家族のメンバーの免疫処置は、その腫瘍性タンパク質に対して免疫系を‘予備刺激する’ことができるであろう。これらの内因性に刺激された抗体は長期持続性であると考えられ、その特定の腫瘍性タンパク質を発現している癌細胞を中和するであろう。我々はこのアプローチの基礎を、若いMMTV−PymTトランスジェニックマウス中に導入された非常に少量のmT抗原(10μg)は宿主の免疫系を活性化し、mT抗体を産生してmTを発現する腫瘍の形成を阻害し、4ヶ月間に至るまでの無症候の生存を可能にすることができたという我々の観察に置いている。マウスにおける数週間の寿命の延長は、人における数十年の延長に匹敵し得る。
【0331】
最後に、本明細書で示した前臨床データは、細胞外および細胞内両方の腫瘍特異的抗原を標的とする外因性および内因性抗体療法を用いることによる癌処置に関する一般的な適用を示唆している。既存の従来の臨床抗体療法は費用がかかるため、我々は研究者に本明細書で調べた強力な抗原誘導型抗体療法応答のさらなる開発に目を向けるように促す。より大きな療法的応答のため、我々は、このアプローチを最高の作用のために他の免疫刺激剤と一緒に組み合わせることができるであろうと感じている。癌研究は個別化された癌療法に向けて急速に動いており、細胞内(または細胞外)腫瘍性タンパク質の特異的標的化に関する我々の戦略は将来の適合された癌療法のための莫大な将来性を保持している。
【0332】
実施例19.参考文献(節E1)
【0333】
【化1】
【0334】
【化2】
【0335】
【化3】
【0336】
実施例節E2(実施例20〜38)。宿主免疫は動物モデルにおける細胞内PRL−3を標的とするキメラ抗体の抗癌有効性に極めて重要である
節E2は実施例20〜38を含む。実施例20は節E2への導入であり、実施例21〜29は節E2に関する材料および方法であり、実施例30〜36は節E2に関する結果であり、実施例37は節E2の論考であり、実施例38は節E2に関する参考文献である。
【0337】
実施例20.導入(節E2)
1世紀前、ドイツ人化学者Paul Ehrlichは“魔法の弾丸”としての抗体の概念を提案した。実際、モノクローナル抗体(mAb)は人類の最も致命的な疾患の一部に対する天然の生物学的弾頭であることが証明されてきた1,2。一般に、抗体標的化療法は小分子阻害剤を用いる化学療法よりもはるかに少ない毒性を有する。抗体はヒトの療法の最も急速に成長しているクラスを構成しており、免疫系を介して悪性細胞を認識および破壊するための理想的な薬剤である。しかし、この療法的アプローチは、部分的には抗体は大きすぎて(150kDa)細胞膜を透過することができないという仮定により、癌細胞により発現される表面または分泌タンパク質に限られてきた3,4。結果として、広範囲の細胞内腫瘍性タンパク質が抗体療法アプローチに関して探求されていないままである。しかし、完全な抗体は生細胞中に浸透することができないという概念は、あり余る程の実験的発見および臨床観察により疑念を抱かれてきた5,6,7。過去30年間にわたって、免疫学者は異なる自己免疫疾患を有する患者の血清中にある自己抗体はそれらのそ
れぞれの細胞内抗原にどうにかして結合することができることを見出してきた6,7,8。自己免疫患者中に見られる細胞内タンパク質に対する抗体が実際にその疾患またはさらには細胞の破壊を引き起こしていることは確実ではないが、我々はそれでもなお我々のこの研究の主な寄与は細胞内タンパク質に対する抗体が療法的作用を発揮し得ることであると強調する。
【0338】
PRL−1(再生肝のホスファターゼ−1)、PRL−2、およびPRL−3は、細胞内タンパク質チロシンホスファターゼ(PTP)の興味深い亜群である。個々のPRLは、様々な癌細胞株および癌組織においてそれらの正常な対応物と比較した場合に過剰発現している。最近の重要な総説は、癌の進行におけるこれらのPRL−PTPを十分に記述している10。PRLは細胞内のC末端がプレニル化されたホスファターゼである。PRL−1およびPRL−3の細胞膜の内葉および早期エンドソームへの局在がEM免疫金標識により明らかになった11、12。対照的に、プレニル化シグナルを欠くPRLの変異型は核に局在している13。PRL−3は、それはCRCの肝転移の100%において過剰発現している唯一の遺伝子であるという発見により、最初に結腸直腸癌(CRC)転移に関連する転移関連ホスファターゼとして発見された14。PRLの過剰発現は癌転移の促進において原因となる役割を有することが続いて示されており、それらは多様な癌処置に関する可能性のある独特の標的になっている15。しかし、これらのホスファターゼは細胞内に局在しているため、療法抗体を用いる従来のアプローチはひるませる(daunting)課題であるように思われるであろう。我々のより早期の研究において、我々はPRL−1およびPRL−3に対するマウスモノクローナル抗体(mAb)は細胞内EGFPタグ化PRL−1およびPRL−3を過剰発現する癌細胞の実験的な転移を阻止することができることを報告した16
【0339】
この研究において、我々はさらに新しく作製したキメラPRL−3抗体を用いてそのような標的化戦略の信頼性を評価する。ここで、我々は細胞内腫瘍性タンパク質に対する可能性のある将来の臨床療法に関する我々のより早期の発見を5つの重要な観点において拡張する。第1に、我々はマウス抗体の代わりに臨床的に意義のあるキメラ抗体を作製し、利用した。第2に、我々はチャイニーズハムスター細胞(CHO)中の外因性のPRL−3の代わりに内因性のPRL−3を発現する自然発生のヒトの癌細胞を有するマウスを処置した。第3に、我々はナチュラルキラー(NK)細胞の枯渇は腫瘍の生着(engraftment)を増進することを示した。第4に、対になったヌードマウスおよびscidマウスモデルを用いて、我々は我々の抗体療法の結果の決定におけるB細胞の重要な役割を発見した。最後に、抗体を追跡するために蛍光標識された抗体(IVISライブイメージングシステムによる腫瘍結合活性)を用いて、我々は処置されたマウスおよび未処置のマウスにおける抗体療法に関する2つの作業モデルを提案した。証拠に基づく今までの概念は、抗体療法を用いた細胞内腫瘍性タンパク質の標的化における可能なアプローチに関して提案されている。その結果は、広範囲の細胞内腫瘍性タンパク質(例えばホスファターゼ、キナーゼ、転写因子)の抗癌療法に関する可能な標的としての評価を保証することができることを示唆している。
【0340】
実施例21.材料および方法(節E2):特異的なPRL−3ヒト/マウスキメラmAb(クローン番号318)の作製
PRL−3キメラmAbの作製のため、総RNAを6×10個のハイブリドーマ細胞(クローン番号318)からRNeasy Miniキット(QIAGEN、カタログ番号74104)を用いて抽出した。次いでそのRNAを、Superscript II
RNアーゼH(Invitrogen、カタログ番号18064−014)を用いて逆転写してcDNAにした。結果として得られた総cDNAを鋳型として用いて、Ig−Primeキット(Novagen、カタログ番号69831−3)をPCR(95℃−4℃−72℃、30サイクル)のために用いて‘普遍的可変領域’を生成した。そのPCR
断片をPCRII−TOPO−ベクター中にTAクローニングキット(Invitrogen、製品番号45−0640)を用いてクローニングした。そのPCR断片をMfeIおよびXhoIで切断し、次いでヒトIgG1定常領域発現ベクターpCMV−human IgG117のそれぞれの部位中に挿入してマウスの重鎖の可変領域(クローン番号318)18をヒトIgG1定常領域と連結した。類似のPCR手順をマウスの軽鎖の可変領域(クローン番号318)に関して、末端がApaLIおよびPstIに関する制限部位を含有するように実施した。そのPCR断片をApaLIおよびPstIで切断し、次いでクローン番号318の重鎖の可変領域を含有するヒトIgG1定常領域発現ベクターのそれぞれの部位中に挿入した。その完全なコンストラクトを、超低IgG FBS(Gibco,16250−078)中で培養された293T細胞中に一過性形質移入した。続いてそのキメラmAbを培養上清から回収し、遠心フィルター装置(Millipore、カタログ番号UFC900596)を用いて40倍まで濃縮した。そのキメラmAbをその特異性に関して間接免疫蛍光(IF)およびウェスタンブロット分析により試験した。
【0341】
実施例22.材料および方法(節2):細胞株および細胞培養
HCT116(CCL−247)ヒト結腸直腸癌細胞株、H460(NCI−H460)ヒト非小細胞肺癌(non−small lung cancer)細胞株、A431(CRL−1555)ヒト類表皮癌細胞株、B16F0(CRL−6322)、およびB16F10(CRL−6475)マウスメラノーマ細胞株はアメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC、バージニア州マナサス)から購入した。A27.80(カタログ番号931 12519)ヒト卵巣癌細胞株はECACC(英国)から購入した。細胞を供給業者により推奨される適切な培地中で増殖させた。
【0342】
実施例23.材料および方法(節2):ウェスタンブロット分析
マウスPRL−3モノクローナル抗体の生成およびウェスタンブロットの手順は以前に記述されている18。GAPDH抗体はCell Signaling Technology(マサチューセッツ州ビバリー)からのものであった。
【0343】
実施例24.材料および方法(節2):マウスにおける実験的転移アッセイ20
1日目に1×10個の癌細胞を8週齢のヌードマウス(Jackson Labs,米国)の循環中に尾静脈経由で注射した。キメラPRL−3 mAbまたはマウスPRL−3またはPRL−1 mAbのどちらかを用いてマウスを処置し;最初の抗体処置は癌細胞注射の3日後に実施され、続いて1週間あたり2回の投与を行った。対照の未処置群に関してはPBSを尾静脈経由で投与した。全ての動物試験はIMCBの施設内審査委員会により認可され、シンガポール科学技術研究庁(A STAR)の動物施設センター(Animal Facility Center)のルールおよび方針を厳しく遵守した。
【0344】
実施例25.材料および方法(節2):NK細胞の枯渇
抗アシアロGM1抗血清(ウサギ)は和光純薬工業株式会社(大阪540−8605、日本)から購入した。GM1抗血清(50μl)を8週齢のヌードマウス(Jackson Labs,米国)の循環中に実験的転移アッセイの24時間前に尾静脈経由で注射した。
【0345】
実施例26.材料および方法(節2):統計分析
カプラン・マイヤー法を用いて累積生存率および生存率における差を概算し、0.01未満のp値を有意であると考えた。
【0346】
実施例27.材料および方法(節2):抗体標識およびIVISライブイメージング
精製されたPRL−3抗体をCF(商標)750色素抗体標識キット(http://www.biotium.coin/product/product info/Newproduct/M ix-n-Stain Kits.asp)を用いて標識した
。標識された抗体をライブイメージングの1時間前に尾静脈経由で注射した。Bioware Ultra Cell Line HCT 116−luc2(www.caliperLS.com)は、ヒトユビキチンCプロモーター下のホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc2)を安
定形質移入されたルシフェラーゼ発現細胞株である。HCT116−Luc2細胞株は、HCT116ヒト腺癌(ATCC、CCL−247(商標))を用いて、ヒトユビキチンCプロモーターの制御下のシフェラーゼ2遺伝子を含有するレンチウイルス(pGL4 luc2)を形質導入することにより確立された。1×10個のHCT116−luc2癌細胞を8週齢のヌードマウス(Jackson Labs,米国)の尾静脈中に注射した。3日目に抗体を処置されたマウス中に尾静脈経由で注射し、続いて1週間あたり2回の抗体注射を行った。7週間の処置後、マウスに腹腔内経路によりルシフェリン溶液(PBS中15mg/mlまたは30mg/kg、150mg/kgの用量)を注射し、それを覚醒している動物中で約5〜15分間分布させた。そのマウスを透明なプレキシガラスの麻酔箱(2.5〜3.5%イソフルラン(isofluorane)中に置き、それは腫瘍発生を生体内で追跡および監視するためのIVIS(登録商標)スペクトル画像化システム3Dシリーズを用いたその動物の妨げられない視覚的監視を可能にする。処置されたマウス対未処置のマウスの間の結果が決定された。
【0347】
実施例28.材料および方法(節2):FACS分析
ヒト類表皮癌細胞株A431を10% FBSおよび5%抗生物質を補った高グルコース(4.5g/L)を含むDMEM中で増殖させた。B16F0およびB16F10細胞を10% FBSおよび5%抗生物質を補ったRPMI中で増殖させた。細胞(5×10)を非酵素的な予め温めた細胞解離溶液(Sigma,カタログ番号c−5914)を用いてディッシュから剥がし、5mlのポリスチレンチューブに移し、完全培地で1回洗浄した。次いでその細胞を100μlの完全培地中1μlのEGFR(Genetech、米国)または5μlのPRL−3一次マウス抗体18と共に室温(RT)で1時間保温した。細胞を15分ごとに撹拌して凝集を防いだ。次いで細胞を完全培地で2回洗浄し、ヤギ抗マウスAlexaFluor 546抗体(Invitrogen、米国)と共に室温で1時間培養し、洗浄し、1mlの完全培地中で再懸濁した後、BD FACS Caliberを用いて分析した。生データをWinMDl ver2.8ソフトウェアを用いて処理した。
【0348】
実施例29.材料および方法(節2):免疫組織化学(IHC)を用いた組織病理学的分析
ヒト肺組織アレイ009−01−004;およびCCOO−01−006;CC04−01−CC04をCybrdi,Inc.(メリーランド州ロックビル 20850 米国: http://cybrdi.com/index.php)から購入した。ヒトAML骨髄試料をシンガポール
国立大学−国立大学病院(NUH−NUS)組織貯蔵所から研究使用に関するNUH−NUSの施設内審査委員会(IRB)の認可により得た。商業的試料を含む全てのヒト組織試料の使用は、分子・細胞生物学研究所の施設内審査委員会(IRB)により認可された。我々はDako En Vision(商標)システムK 1395(Dako、カリフォルニア州カーピンテリア)を用いてIHC分析を実施した18,19
【0349】
実施例30.結果(節2):PRL−3マウス/ヒトキメラ抗体(クローン番号318)の作製
我々は以前に、PRL−3またはPRL−1マウスmAbはそれらのそれぞれの細胞内のPRL−3またはPRL−1ホスファターゼを特異的に標的としてヌードマウスにおいて癌転移を阻害することができることを報告した16。我々の研究室での所見を臨床設定に変換する試みにおいて、我々はヒトにおけるマウスmAbの潜在的抗原性を最小限にす
るためにPRL−3に対するマウス/ヒトキメラmAbを設計した。組み換えDNA技術を用いて、我々はヒトIgG1分子17の重鎖または軽鎖の定常ドメインをマウスのPRL−3 mAb(クローン番号318)18の可変領域と免疫グロブリン遺伝子のトランスジェニック融合により別々に融合させた(図7A)。その発現コンストラクトをヒト胎児性腎臓293T細胞中に形質移入して組み換えPRL−3キメラmAbを産生させ、次いでそれを培地から回収し、さらに濃縮した。そのPRL−3キメラmAbの抗原結合特異性は、外因性EGFP−PRL−3を過剰発現するDLD−1細胞上での間接免疫蛍光(図7B)およびウェスタンブロット分析(図7C)を実施することにより確証されたように、十分に保存されていた。そのPRL−3キメラmAbはEGFP−PRL−3(〜48kDa)およびmyc−PRL−3(〜21kDa)を特異的に認識したが(図7C、レーン1〜2)、myc−PRL−1タンパク質ともmyc−PRL−2タンパク質とも反応しなかった(図7C、レーン3〜4)。50%細胞阻害細胞毒性濃度(IC50)をそのキメラ抗体に関してマウスメラノーマB16F0細胞において実施し、我々は細胞を10%FBS培地中で通常の培養条件下で培養した際に高濃度(40g/ml)においてさえも生存度において細胞毒性を観察しなかった(データは示していない)。PRL−1、−2、および−3は広い範囲のヒトの癌において過剰発現しているため19、我々はそのPRL抗体が異なるタイプのPRL陽性癌の拡散を、特にしばしば短い時間フレーム内で再発する一部の致死的な悪性腫瘍、例えば肺癌および急性骨髄性白血病(AML)において阻止するための広い適用を有していそうであると予想する。肺癌の中で、我々はPRL−3がヒトの肺癌の80%を構成する高度に再発する非小細胞肺癌の2つの主な亜型である扁平上皮癌の31%および腺癌の26%において過剰発現していることを見出した(図1A〜C)(http://en.wikipedia.org/wiki/Lung_cancer#Non-small_cell_lung_carcinoma_.28NSCLC.29)。我々は、PRL−3がAMLの35%(69中24症例)において過剰発現していることも見出した(図12D)。PRL−3キメラ抗体を少数回注射する療法は、PRL−3陽性癌の手術後に微小転移および循環している癌細胞の残りを一掃して再発を予防するであろう。
【0350】
実施例31.結果(節2):PRL−3キメラ抗体は内因性のPRL−3を発現するB16F0癌細胞により形成される転移性腫瘍を有効に阻害するが、内因性のPRL−3を発現しないB16F10癌細胞により形成される転移性腫瘍は阻害しない
PRL−3と関係する癌に関する臨床的に意義のある動物モデルを見付けるため、我々は数十種類の癌細胞株をウェスタンブロット分析により内因性のPRL−3タンパク質の発現レベルに関してスクリーニングした。我々の動物モデルのための理想的な細胞株の対は内因性のPRL−3の対照的なレベルを示すべきであり、かつマウスにおいて短い時間フレーム内で転移性腫瘍を誘導する能力を有するべきである。我々は、その所望の実験に関する基準を満たすことができる2種類のマウスメラノーマ細胞株B16F0およびB16F10(F0およびF10)を見付けた。F10細胞は天然にF0細胞よりも転移性であるが、我々は親のF0細胞はF10細胞よりも高いレベルの内因性のPRL−3タンパク質を発現していることを見出し(図8A)、これはF10細胞の転移活性がもはやPRL−3に依存していない可能性があることを示唆している。我々が培養された癌細胞をヌードマウスの循環中に側部尾静脈注射により導入する実験的転移アッセイ20を用いた際、F0およびF10細胞株は両方とも17日以内にマウスにおいて急速に多数の転移性腫瘍を形成することができる。そのような侵攻性の生体内転移モデルは、我々が抗体療法の短時間後に処置および未処置群の間の有効性における違いを見ることを可能にする。癌細胞注射後の3日目(我々が処置において遅らせることができる最も遅い時点)に、キメラPRL−3抗体が‘処置されるマウス’中に尾静脈経由で同様に投与され、続いて1週間あたり2回のそれに続くその抗体の投与が行われた(図8B)。実験の終了時に、我々はPRL−3キメラ抗体がPRL−3を発現するF0癌細胞により形成された腫瘍を根絶することができることを見出した;多数の組織中の転移性腫瘍は‘処置されたマウス’において実験の終了時に劇的に低減した(図8C)。F0受容マウスに関するカプラン・マイ
ヤー生存分析は後で論じられるであろう(図10A、c)並行する実験において、そのPRL−3抗体はPRL−3タンパク質を発現しないF10癌細胞により形成される転移性腫瘍の阻止において作用を有しなかった。数百個の転移性腫瘍が、処置された、および未処置のF10細胞受容マウス両方の肺中で見付かり、‘処置されたマウス’(図8D、上のパネル)および‘未処置のマウス’(図8D、下のパネル)の間で明らかな違いは見られなかった。さらに、カプラン・マイヤー生存分析は、そのPRL−3抗体は‘処置された’F10受容マウスに関して生存時間を延長することができなかったことを実証した(図8E)。
【0351】
実施例32.結果(節2):PRL−3キメラ抗体は内因性のPRL−3を発現するヒトの癌細胞により形成される転移性腫瘍の形成を有効に阻害するが、内因性のPRL−3を発現しない癌細胞により形成される転移性腫瘍の形成は阻害しない
マウスF0メラノーマ細胞に加えて、我々はさらに、HCT116−luc2、HCT116ヒト結腸直腸癌細胞株、およびA2780ヒト卵巣癌細胞株は内因性のPRL−3タンパク質を発現していることを見出した(図9A レーン:1〜3)。A2780はまた、以前にPRL−3陽性細胞株として報告されている21。対照として、我々は内因性レベルのPRL−3を発現していないヒト非小細胞肺癌(non−small lung
cancer)細胞株(NCI−H460)(図9A レーン4)を見付けた。PRL−3陽性か陰性かに関わらず、その4種類のヒト癌細胞株はヌードマウスにおいてそれぞれ1〜2ヶ月以内に急速に転移性腫瘍を形成することができる。HCT116−luc2は、HCT116細胞においてホタルルシフェラーゼ遺伝子(luc2)を安定形質移入したルシフェラーゼ発現細胞株である。その細胞株は、ヒトユビキチンCプロモーターの制御下のシフェラーゼ2遺伝子を含有するレンチウイルスを形質導入することにより確立された。この細胞株を生体内で用いてXenogenのIVIS(登録商標)スペクトルシリーズの画像化により腫瘍形成を監視することができる。このシステムを用いて、抗体療法の7週目においてライブイメージングにおいて転移性肺腫瘍の明らかな低減が観察されたため(図9B)、我々はPRL−3抗体がHCT116−luc2癌細胞の転移を阻害することができることを実証した。さらに、HCT116細胞の接種の2ヵ月後において(図9C、a)、およびA2780細胞の接種の1ヵ月後において(図9C、b)、PRL−3抗体で処置されたマウスおよび未処置のマウスの間で有意な差が見付かった。PRL−3 mAbで処置された動物は活気があり健康に見えた(4ヶ月まで)が、未処置のマウスは全て体重が減少し、瀕死であった。並行して、NCI−H460(PRL−3陰性細胞)の受容マウスはPRL−3抗体処置に応答しなかった(図9C、c)。まとめると、これらの結果は、PRL−3抗体処置の有効性はその癌細胞のPRL−3発現状態と密接に相関しているという結論をさらに支持している。我々は、マウスおよびキメラPRL−3抗体療法の両方の有効性が比較可能であることを示した(図9D)。
【0352】
実施例33.結果(節2):NK細胞は抗癌療法において重要である
次いで我々は、NK細胞は自然免疫系の主な構成要素を構成する細胞傷害性リンパ球の1タイプであるため、ナチュラルキラー(NK)細胞がPRL−3抗体療法において役割を果たしているかどうかを調べた。ヌードマウスのNK細胞を枯渇させるため、我々はヌードマウスに抗アシアロGM−1抗体22を予め注射した。我々の上記で言及した抗体療法の手順をこれらのGM−1を注射したヌードマウスにおいて実施した。我々は、その療法の有効性がGM−1を注射したマウスにおいて本質的に失われていることを見出した(図13)。さらに悪いことに、そのようなGM1を注射したヌードマウスは、肺、肝臓、副腎、精巣、および骨において、注射していないマウスよりも重症の(黒い)腫瘍を有する負荷を示し、これは自然免疫系が我々の抗体療法において重要であることを示している。NK細胞はヒトの造血幹細胞移植片拒絶において役割を有していることが示されており22、NK細胞の除去は結果としてNK細胞の移植片拒絶活性の消滅をもたらす可能性があり、これは腫瘍の生着がよりうまくいくことにつながり、従ってGM1を注射された‘
PRL−3で処置された’マウスは腫瘍増殖の点でGM1を注射されていない‘PRL−3で処置されていない’マウスよりも悪かった。
【0353】
実施例34.結果(節2):B細胞はPRL−3抗体の療法的作用の媒介において重要である可能性がある
ここまでは、我々はT細胞欠損ヌードマウスにおいてPRL−3抗体療法を実施した。Bリンパ球が我々の抗体療法モデルにおいて重要であるかどうかに取り組むため、我々は次に重症複合免疫不全(scid)マウスにおいて抗体療法を実施し、それらは免疫グロブリンおよびT細胞抗原受容体遺伝子の分離した遺伝子要素の再編成を損ない、従ってBおよびTリンパ球前駆細胞両方の分化および成熟を崩壊させる欠陥を有するため、機能するリンパ球を欠いている。従ってそれらはBおよびTリンパ球両方に影響を及ぼす重症複合免疫不全を示すが、それらは正常なNK細胞、マクロファージ、および顆粒球を有する。HCT−116に誘導される転移性腫瘍に関して、PRL−3抗体で処置されたマウス対未処置のマウスの生存曲線のカプラン・マイヤー分析はヌードマウスの寿命における統計的に有意な(P<0.001)増大を示したが、scidマウスの寿命における統計的に有意な増大は示さなかった(図10A、a〜b)。興味深いことに、我々は処置されたHCT−116を注射されたヌードマウス(16週間)に関して未処置のマウス(11週間)と比較して生存時間の中央値における45%の増大を見出した。対照的に、HCT−116を注射されたscidマウスの未処置または処置群において、我々はPRL−3抗体療法の作用における違いを観察せず、それは類似の生存期間の中央値(11週間)を示した。さらに、我々はF0 PRL−3陽性癌細胞株を用いて、類似の戦略を用いてこの発見を確証した。F0を注射されたヌードマウス(図10A、c〜d)では、PRL−3抗体処置は生存期間の中央値を47%増大させた(処置されたマウスに関して24日対未処置のマウスに関して17日)。一貫して、その抗体は未処置の、または処置されたF0を注射されたscidマウスにおいて作用を有さず、両方の群は類所の寿命の中央値(約17日)を示した。マウスまたはキメラPRL−3抗体を用いて類似の結果が得られたため(図10B、a〜d)、その機序は抗体の種と無関係である。まとめると、これらの遺伝的マウスモデルからの結果は、転移性腫瘍形成に対するPRL−3抗体の有効性は宿主のB細胞に依存しているがT細胞には依存していないことを示唆している。我々は、抗体産生以外に、B細胞は抗体の作用を促進し得る未知の因子(単数または複数)を分泌する追加の機能を有している可能性があることを提唱する。実際、我々の予備的データは、B細胞が癌細胞による抗体の取り込みを促進し得る因子を分泌している可能性があることを示している。我々は、アッセイをヒトB細胞からの培養上清の存在下で実施した際に、PRL−3陽性F0細胞における抗体の内在化における実質的な増大を観察した。並行して、PRL−3ヌルのF10細胞はB細胞馴化培地の存在下または生きたB細胞の存在下のどちらにおいても抗体を内部に持つ(harbor)ことが全くできなかった(データは示していない)。
【0354】
実施例35.結果(節2):PRL−3抗原は細胞表面において重要ではない
PRL−3抗体の作用の可能性のある機序は、細胞表面抗原に結合し、PRL−3を発現している細胞のB細胞依存性の排除を誘発することである可能性がある。しかし、現在までにPRL−3の細胞表面局在を記述する報告はない。PRL−3抗体が細胞表面上のその抗原に結合する可能性に取り組むため、我々は細胞表面標識においてルーチン的に用いられるFACSアッセイを用いた。陽性対照として、EGFRを過剰発現するヒト類表皮癌A431細胞株の抗EGFR抗体結合をこのアッセイに関して用いた。我々は、A431細胞の抗EGFR抗体との保温がFACSアッセイにおいて明瞭なピークシフトを引き起こすことを見出した(図11A、a)。しかし、抗PRL−3抗体と共に、または抗PRL−3抗体なしで保温されたF0(PRL−3陽性)またはF10(PRL−3陰性)細胞に関しては、ピークシフトは観察されなかった(図11A、b〜c)。これらの結果は、細胞表面のPRL−3抗原はたとえあるとしても抗体の結合および取り込みの主な
原因ではなさそうであることを暗示している。しかし、免疫系は生体内で常に侵入者、例えば細菌およびウイルス、ならびに癌細胞と戦っているため、癌細胞が破壊され、どうにかしてそれらの細胞内タンパク質を免疫系に対して露出する可能性がある。もしそうであれば、同じ可能性が他の細胞内腫瘍性タンパク質にも当てはまる可能性がある。
【0355】
実施例36.結果(節2):IVISライブイメージングに基づく作業モデル
我々の動物モデル系において、我々は抗体療法が癌細胞注射の3日後に無効であったことを見出しており、これは最初の3日間が癌細胞の新しい組織における生着に十分である可能性があることを示唆している。IVISシステムを用いて標識された抗体抗原結合による転移性腫瘍の部位を追跡し、我々は本明細書において2つの作業モデルを提案した(図11B):a.処置されたマウス。1.早期において、癌細胞はクラスター状であり、その抗体の適時の導入がどうにかして循環中またはリンパ系中で自然免疫系を介してリンパ球(例えばB、およびNK細胞)の助けと一緒に抗原特異的癌細胞を捕捉し、これらの癌細胞を破壊および除去することができた。2.逃れた癌細胞は移植のために新しい器官に到達することができると考えられ;従って、抗体の循環への一定した送達はこれらの初期の腫瘍のプラグを抜き(unplug)、それらがさらに発達するのを妨げ、それらを破壊して宿主免疫系から一掃するために重要である。3.‘処置されたマウス’における初期の腫瘍は腫瘍を完全に発達させる機会を有さず、従ってオープンステージ(open−stages)で免疫系に晒された。加えて、我々は小さい腫瘍(H&E肺切片)中で大きい腫瘍中よりも高い血管密度を見出した。従って、蛍光標識された抗体は‘処置されたマウス’において血液循環を経由して転移性肺腫瘍に容易に接近することができた。従って、我々は強い蛍光で標識された‘処置された’転移性肺を観察した。b.未処置のマウス。上記で言及された早期の段階は見付からずにいた(missing);野放しの癌細胞が宿主中で急速に増殖した。その大量の癌細胞は制御されずに移植され、そして微小〜大きな転移を発達させ、免疫系から離れたクローズステージ(close−stages)を有する防御システムとしての腫瘍境界‘柵’を有するそれらの領域を築き上げるための十分な時間を有していた。さらに、我々は、大きい腫瘍の領域中により低い血管密度を見出し、不十分な血液供給は結果として壊死をもたらす(示していない)。結果として、蛍光標識された抗体は‘未処置のマウス’において血液供給を介して接近して転移性肺腫瘍に到達する可能性がより低かった。従って我々は弱く蛍光標識された‘未処置の’転移性肺を見出した。
【0356】
実施例30.論考(節2)
PRL−3は数多くのタイプのヒトの癌において上方制御されている。PRL−3キメラ抗体は多様なPRL−3と関係する癌転移の阻止における有望な療法剤であろうことが予測可能である。我々は、しばしば短い時間フレーム内で再発する少数の致死的な悪性腫瘍(例えば肺癌およびAML)における我々の試みから始めることを望んでいる。これらの癌は侵攻性であるため、療法的作用が容易に観察され、処置された患者および未処置の患者の間の結果を明確に定めることができる。特に、白血病細胞は容易に接近可能であり、循環系中で抗体と直接接触している。これらの侵攻性の癌を患う末期の患者は臨床試験に募集される可能性がより高い。願わくば、これらの例における成功は抗体療法による他の細胞内腫瘍性タンパク質の標的化に影響を及ぼすことができ、それは橋渡し研究の重要な領域であり、癌患者に実行可能な代替処置を提供するであろう。
【0357】
本明細書で示されたこれらの常識にとらわれない発見の裏にある分子機序(単数または複数)は分かりにくいままであり、活発に研究されている。現在、どのように抗体が生体内で腫瘍を破壊するのかの理解はまだ我々にとって‘ブラックボックス’である。同様に、周知の抗HER2/neu抗体療法の機序(単数または複数)を理解することが20年より長く目標とされてきたが、抗HER2/neu抗体は乳癌の処置において幾年も臨床使用されてきた23。その‘ブラックボックス’がインビトロ系を用いて解明されると予
想することは、伝統的なインビトロ細胞培養系は、単一の細胞型を典型的には10%ウシ胎児血清を補った培地を用いて培養器中で増殖させ、免疫系の関与を欠いており、それは多数のタイプの細胞および器官が100%天然の血液循環およびリンパ系中にある生体内の複雑さを実際に真似ることがおそらくできないという限界のためにはるかに単純化されているという主な考慮すべき事柄のため、非現実的である可能性がある。機序がどうであれ、この研究の中心的な部分は、細胞内タンパク質に対する抗体が療法的作用を及ぼすことができ、より重要なことには、その作用が再現可能であるということである。我々がヒトにおいて同じ療法的作用を見ることができるならば、抗体療法は細胞内抗原を標的とするために用いることができるという認識されていない考えを支持することは癌療法において莫大な価値を有し得る。
【0358】
それでもなお、‘ブラックボックス’内の可能性のある事象の理解における我々の困難な試みは、我々がこの研究からいくつかの結論を得ることを可能にする:
1.PRL−3抗体処置は癌細胞のPRL−3発現状態と密接に相関している。我々は、そのキメラ抗体が実際に内因性の細胞内PRL−3ホスファターゼを発現するいくつかの癌細胞株(B16F0、HCT−116、およびA2780)に由来する転移性腫瘍の形成をうまく阻止することができたことを実証している。その抗体はPRL−3を発現していない他の癌細胞株(B16F10、H460)に由来する転移性腫瘍の形成の阻止において作用を有しなかったため、その阻害は特異的である。以前に、我々はマウスPRL−3抗体は別のPRL−3陰性癌細胞株であるCT26マウス結腸細胞により形成される転移性肺腫瘍の阻害において作用を有しないことを実証した16。まとめると、そのデータはマウスまたはキメラPRL−3抗体処置のどちらの有効性もその癌細胞のPRL−3発現状態と密接に相関しているという考えを支持する。癌細胞の転移特性がPRL−3の過剰発現によるものではない場合(例えばB16F10、H460、CT26細胞)、PRL−3 mAbの投与はこれらのPRL−3陰性細胞により形成される腫瘍の阻止において作用を有しない。さらに、我々は以前に16、PRL−1およびPRL−3はタンパク質配列において非常に高い相同性を共有しているが、PRL−1 mAbはPRL−1転移性腫瘍を特異的に阻止する(がPRL−3転移性腫瘍は阻止せず);一方でPRL−3 mAbはPRL−3転移性腫瘍を特異的に阻止する(がPRL−1転移性腫瘍は阻止しない)ことを示していた。これらの結果は、PRL抗体療法はその抗原に高度に特異的であり、他の非特異的細胞表面タンパク質との交差反応性を含まないことを暗示している。
【0359】
2.‘自然免疫系’におけるNK細胞はその療法に関わっている。自然免疫系がその抗体療法に関わっているかどうかを理解するため、我々はGM1抗体を尾静脈経由でヌードマウス中に静脈内注射して、自然免疫系の主な構成要素を構成する細胞傷害性リンパ球の1タイプであるNK細胞を枯渇させた。我々は、NK細胞の非存在下では抗PRL−3抗体は療法的作用を示さないことを見出した。さらに、腫瘍生着が劇的に増進され(図13)、これはNK細胞は通常外来細胞の移植に関する移植片拒絶において重要な役割を果たしていることを示している。以前に、増えつつある証拠がNK細胞は初期の腫瘍の破壊において重要な役割を果たしていることを示唆している24
【0360】
3.ADCCもその療法に関わっている可能性がある。抗体療法の最も特性付けられた機序は抗体依存性細胞性細胞傷害(ADCC)である。ADCCにおいて、抗体は特異的な細胞表面抗原に結合して、細胞傷害性CD8 T細胞、補体活性化、および/またはNK細胞活性が含まれるFcに媒介される免疫応答を誘発する。我々は我々のPRL−3細胞表面抗原のFACS分析においてPRL−3陽性F0細胞およびPRL−3陰性Fl 0細胞の両方においてピークシフトを一切観察しなかったが、我々はこれらの癌細胞が異常な炎症圧力下にあり、それが癌細胞の破壊を引き起こして抗体により攻撃されるべきそれらの細胞内タンパク質を放出および露出させ、どうにかして特異的な免疫応答を誘発し
、リンパ球をこれらの癌細胞を除去するように導き得るという可能性を除外することができなかった。あるいは、生体内で癌細胞は低酸素ストレスおよび血清欠乏下にあり、それは細胞をG1およびG0期で停止させる条件である25。これらの条件は抗体が認識するための細胞内抗原の放出を引き起こし得る可能性がある。もしそうであれば、他の細胞内腫瘍性タンパク質も類似の状況に直面する可能性があり、従ってそれらは同様に抗体療法により標的とされ得る。
【0361】
4.‘適応免疫系’(IgMおよび/またはB細胞)はmAb療法作用において重要である。我々は無胸腺のヌードマウスおよび免疫不全のscidマウスを腫瘍低減実験のために用いて、ヌードマウスにおいてのみ療法的作用を達成し、scidマウスでは達成しなかった。ヌードマウスおよびscidマウスの間の主な違いは、ヌードマウスはT細胞欠損であるが機能するIgM抗体およびB細胞を有し、一方でscidマウスは、B、T細胞、ならびにTgMおよび他の抗体を含め、機能する適応免疫系を有しないことである。ヌードマウスおよびscidマウスは両方ともNK細胞および補体活性を含む完全な自然免疫系を有するが、陽性応答はヌードマウスにおいてのみ見られ(scidマウスでは見られない)、これは成熟B細胞およびおそらくIgM/血清抗体が重要である(がT細胞は重要ではない)ことを示している。抗体が外因性にマウス中に導入された際、抗転移性PRL−3抗体活性にB細胞が必要であることは、B細胞に関してその抗体応答における、おそらく宿主応答に関してあらゆる所与の抗体を調節する未同定の因子(単数または複数)の分泌を介した代わりの役割があるものと仮定される。まとめると、我々は自然および獲得免疫系の複雑な相互作用が細胞内PRL−3腫瘍性タンパク質を標的化するキメラ抗体の抗癌有効性に重要であることを強調する。
【0362】
5.全ての細胞内腫瘍性タンパク質を抗体療法により標的とすることができるわけではない。望ましい抗癌療法剤は、癌細胞を特異的に標的とする一方で正常な組織を無事なままにするべきである。PRL−3キメラ抗体療法は、正常な組織におけるPRL−3の発現は遍在性でないため、ヌードマウスにおいて検出可能な副作用をほとんど有しないことは強調されるべきである。我々は、PRL−3タンパク質は脾臓、脳、および膵臓のような少数の器官のみにおいて検出されることを示した(図14A)。対照的に、PRL−2はマウスの組織のほとんどにおいて遍在性に発現している(図14B)。予想されたように、PRL−2を発現している癌に対するPRL−2抗体療法はうまくいかなかった(図14C)。PRL−2抗体で処置されたマウスは未処置のマウスよりも1週間早く死に、またはより悪い結果を示し、それはPRL−2のマウスの組織のほとんどにおける遍在性の発現によるものである可能性があり、PRL−2抗体が正常な組織を攻撃してこの望まれない副作用を引き起こし得る可能性を含意している。その結果は、良好な療法標的は宿主の正常な組織を害することなく腫瘍抗原に対してより特異的であるべきであることを示唆している。
【0363】
6.細胞内腫瘍性タンパク質に対する抗体療法は臨床的に意義がある。処置のために非常に侵攻性の癌モデルを作製するため、我々は100万個の癌細胞をヌードマウスの循環中に直接注射した;ヌードマウス中の総血液量はその体重の8%である(約19gの8%=1.5ml)。男性(50kg)の総血液量は約4.7リットルである。100万個の癌細胞がヌードマウスの〜1.5mlの血液循環中に注射された場合、それは男性における約4.7リットルの血液中の31億3300万個(4.7リットル/1.5ml)の癌細胞に匹敵する。癌細胞注射の3日も後に(尾静脈中に静脈内注射された)抗体処置を開始することによる顕著な療法的作用は、その処置が興味深いことに有効であることを示している。我々が処置された患者においてマウス系の寿命延長と類似の寿命延長を達成することができるならば、それは総寿命および延長された余命の点でヒトにおける数年に匹敵するであろう。これらの前臨床研究から現実まで、我々は、目に見えるPRL−3と関係する固形腫瘍の外科的除去の後にPRL−3抗体は循環している癌細胞を一掃する26
または見えない初期の腫瘍のプラグを抜くと考えられるため、キメラ抗体の数回の注射は再発率を低減するために非常に重要であると予想している。
【0364】
この目的において、ヌードマウスにおけるPRL−3抗体療法の際の一切の観察可能な副作用の欠如は、その臨床的利益の可能性をさらに暗示している。我々のデータは、広い範囲の腫瘍特異的細胞内腫瘍性タンパク質を抗癌mAb療法のための可能性のある標的として再評価し、そうしてこれらの‘魔法の弾丸’の完全な可能性を実現することを促している。
【0365】
実施例38.参考文献(節E2)
【0366】
【化4】
【0367】
【化5】
【0368】
【化6】
【0369】
【化7】
【0370】
実施例節E3(実施例39)。C57BL6マウスのVHZによる免疫処置および腫瘍発生の監視
実施例39:節E3:C57BL6マウスのVHZによる免疫処置および腫瘍発生の監視
8週齢のC57BL6マウスを、総量200mlのフロイントアジュバント:100mlの生理食塩水中の20mgのVHZ抗原を100mlの完全アジュバント(カタログ番号77140、Pierce)と混合したものを腹腔内注射することにより免疫した。
【0371】
次の2回の免疫処置は、総量200mlのアジュバント:100mlの生理食塩水中の20mgのVHZ抗原を100mlの不完全アジュバント(カタログ番号77145、Pierce)と混合したものを注射した。
【0372】
2回目および3回目の注射は2週間ごとに投与され、100〜200mlの尾の血液をヘパリンでコートされた毛細管中に採取した。
【0373】
血漿を血液試料から調製し、抗体価をELISAにより測定した。
【0374】
ELISAの詳細な工程は前に記述された。
【0375】
高力価のVHZ抗体をそれらの血清中に有するマウスを選択し、側部尾静脈に1×10個のVHZを発現する癌細胞を注射した。
【0376】
その結果を図15において示す。図15は、VHZ抗原でワクチン接種したマウスはVHZを発現する腫瘍を予防することができることを示している。ワクチン接種しなかったマウスはこの研究において陰性対照の役目を果たす。
【0377】
実施例節E4(実施例40、41、42)
実施例40:節4:Her2/neuペプチド断片による免疫処置
一般に、ワクチンは感染症と関係してきたが、我々の免疫系は癌性細胞と戦うこともできる。従って、宿主の免疫を腫瘍性タンパク質に対して誘導することは、我々の免疫系を療法的結果のために癌細胞に対して戦うように最大化するためのパラダイムシフトであろう。多数のタンパク質/因子が正常な細胞が癌性になる原因であり得る。しかし、我々がそれらの少なくとも1つ(それらの全部である必要はない)を同定することができれば、我々はそのタンパク質をその特異的な抗体を用いて標的としてその特異的なタンパク質を発現する癌性細胞を殺すことができる。‘腫瘍性タンパク質’をワクチン接種のために用いるアイデアを受け入れることを不快に感じるかもしれないが、この研究において抗原として用いられる精製された腫瘍性タンパク質は、それらはそれらの天然の細胞内位置に納まっていないため、それら自体は発癌性ではなさそうであることは特筆する価値がある。従って、それらはそれらの天然の近隣のパートナーと相互作用して経路特異的応答を引き出して腫瘍発生を駆動することはできない。これらの“腫瘍性タンパク質”の精製された形態はそれらの特異的な細胞内の空間時間的局在を失っており、従ってそれらは単にタン
パク質であるにすぎない。それでもなお、より保守的なアプローチは、類似の療法的結果を達成するための特異的なペプチド抗原(部分的な腫瘍性タンパク質)の使用であろう。エピトープに基づくペプチド(または断片)でのワクチン接種は、より特異的であり、相同タンパク質との交差反応がより少なく、副作用を低減するであろう。
【0378】
この研究において、我々は4種類のHer2断片を用いた(図16参照):
1.Her2細胞外断片(Her2外部)
2.Her2細胞内断片(Her2内部)
3.Her2 C末端断片(Her2 C末端)
4.Her2a短鎖ペプチド(Her2ペプチド)
図17において示したように、Her2断片を用いて免疫したマウスはB16F0メラノーマ癌細胞により形成されるHer2を発現する腫瘍の形成を阻害することができた。16週目において、未免疫のマウス、Her2内部で免疫したマウス、またはHer2外部で免疫したマウス、およびHer2 C末端で免疫したマウスに、次いで100万個のB16F0癌細胞により尾静脈経由で負荷をかけた。全ての器官を癌細胞注射の約17日後に調べ、転移腫瘍の形態を示すために写真を撮った。図17(c、上)において示されるように、ELISA分析はHer2断片で免疫したマウスが高レベルのHer2抗体をそれらの血清中に有することを確証した。図17(c、下)において示されるように、それぞれのマウスからの肺腫瘍(パネルBにおける黒い腫瘍はB16F0メラノーマ細胞を表す)の総数を計数した。
【0379】
図18において示されるように、Her2a短鎖ペプチドで免疫したマウスはB16F0メラノーマ癌細胞により形成されるHer2を発現する腫瘍の形成を阻害することができた。16週目において、Her2短鎖ペプチドで免疫したマウス、Her2外部で免疫した(Her2細胞外断片で免疫した)マウス、および未免疫のマウスに、次いで100万個のB16F0癌細胞により尾静脈経由で負荷をかけた。全ての器官を癌細胞注射の約17日後に調べ、転移腫瘍の形態を示すために写真を撮った。ELISA分析は、Her2短鎖ペプチドで免疫したマウス、Her2外部断片で免疫したマウスが高レベルのHer2抗体をそれらの血清中に有する(が未免疫のマウスは有しない)ことを示すことが確証された(パネルC、上を参照)。それぞれのマウスからの肺腫瘍の総数をパネルC、下に示した。
【0380】
実施例41:節4:MMTV−PymTトランスジェニックマウスのmT腫瘍性タンパク質の断片による免疫処置
標的ペプチドワクチン接種の使用の一般的な概念を適用するため、再度、我々は第2の腫瘍モデルであるMMTV−PymTトランスジェニック(TG)マウスの自然発生腫瘍モデルを調べ、それは腫瘍遺伝子に誘導される乳腺腫瘍発生のモデルとしてマウス乳腺腫瘍ウイルスプロモーター/エンハンサーの転写制御下のmT細胞内DNAウイルスタンパク質を有する(9)。全ての雌の保因者(遺伝子型+/−)は3ヶ月の月齢において触知可能な乳腺腫瘍(腺癌)を発症する。mT発現は乳腺において高レベルで検出され、mT腫瘍性タンパク質の発現は乳腺上皮細胞の形質転換に十分である(10)。これらのTGマウスは、癌研究学界ににより数十年間優秀な自然発生腫瘍モデルとして広く用いられてきた(10、18)。
【0381】
mTペプチド(図16参照)を用いてワクチン接種したMMTV−PymT TGの若い雌は、乳腺腫瘍の形成を低減する。mTペプチドで免疫したマウスはGSTで免疫したマウス(陰性対照としての無関係な免疫したマウス)と比較して顕著な腫瘍の抑制を示し、図19において示されるように、mT腫瘍性タンパク質の小さいペプチドはMMTV−PymTトランスジェニックマウスのモデルにおいて有効な乳房腫瘍進行の予防を達成した。
【0382】
実施例42:節E4:MMTV−PymTトランスジェニックマウスのエストロゲン受容体の断片による免疫処置
我々は上記で記述したMMTV−PymTトランスジェニック(TG)マウスの自然発生腫瘍モデルをさらに調べた。エストロゲン受容体はmTマウスにおいて、特に乳房組織において高レベルで発現していた。
【0383】
MMTV−PymT TGの若い雌を、エストロゲン受容体の断片であるER−赤およびER−紫ペプチド(図20参照)を用いてワクチン接種した。ER−赤およびER−紫で免疫したマウスは両方とも、図21で示されるように、GSTで免疫したマウス(陰性対照としての無関係な免疫マウス)と比較して顕著な腫瘍の抑制を示した。ERの小さいペプチドはMMTV−PymTトランスジェニックマウスのモデルにおいて有効な乳房腫瘍進行の予防を達成した。
【0384】
MMTV−PymTマウスにERa−mAbを13週間毎週注射した。処置されたマウスは、未処置のマウスと比較して乳房腫瘍の重量における統計的に有意な低減を示した(図22参照)。
【0385】
実施例43:節E4:HBV−Xタンパク質断片によるマウスの免疫処置
我々は、B型肝炎Xタンパク質を肝臓癌を処置するために用いることができるかどうかを調べている。HBV Xタンパク質は感染した細胞の核の中に位置している。
【0386】
Xタンパク質を発現する肝臓癌細胞株の一団(Panels)を、生体内で腫瘍を形成するそれらの能力に関して調べる。最も高い腫瘍形成能力を有する株が用いられる。
【0387】
抗Xタンパク質抗体のXタンパク質を発現する肝臓癌細胞からの腫瘍形成を阻止する能力を調べるため、マウスに抗Xタンパク質抗体を注射する。抗Xタンパク質抗体は上記で概説したプロトコルに従ってマウスに投与される。
【0388】
マウスにXタンパク質およびXタンパク質断片(図20参照)を注射して、宿主免疫系をXタンパク質を発現する腫瘍の形成を予防するためにXタンパク質に対する抗体を産生するように誘導する。上記で記述したようなワクチン接種のプロトコルを用いる。
【0389】
ヒトの肝臓癌の発生を模倣する自然発生肝細胞癌(HCC)マウスモデルを用いて、抗Xタンパク質抗体、Xタンパク質およびXタンパク質断片ワクチン接種の肝細胞癌への作用を調べることもできる。HCCの発生に関わるシグナル伝達経路は、肝細胞癌のシグナル伝達経路および処置は、Whittaker S, Marais R, Zhu AX. The role of signaling pathways in the development and treatment of hepatocellular carcinoma. Oncogene. 2010;29:4989-5005において論じられている。
【0390】
実施例44:節E4:論考
腫瘍形成の間に特異的に上方制御されるが宿主組織では発現が乏しい、または発現していない遺伝子は、腫瘍特異的標的として特に有望である。遺伝的連鎖を示す癌に関して、その家族性癌と関係のある抗原(エピトープに基づくペプチドワクチン)による免疫適格性の若い感受性の家族のメンバーの免疫処置は、その腫瘍性タンパク質に対して免疫系を予備刺激することができるであろう。次いで、これらの内因性の刺激された抗体は、その特定の腫瘍性タンパク質を発現する癌細胞と潜在的に戦うことができるであろう。
【0391】
この研究は、癌に対する抗体に基づく療法およびワクチン接種を療法標的としてのより広い多様な細胞内腫瘍性タンパク質に拡張することができることを示唆している。以前は
療法用抗体またはワクチン接種により標的とすることができないと考えられていた細胞内腫瘍性タンパク質の全部のクラスが、今やテーラーメイド癌療法ならびに癌ワクチンの新時代における先導役へとその範囲を拡張することができる。我々は、細胞内自己抗原を用いることの1つの可能性のある利点は、細胞外の自己抗原を標的とする免疫細胞は一般に発生の間に排除されるため、それらが細胞外自己抗原よりも免疫応答を誘発するよりよい機会を有する可能性があることであると予想している。我々は、外因性に送達された抗体と比較して、抗原に誘導される抗体療法は類似の抗腫瘍療法的有効性を達成することができることを発見した。既存の従来型の臨床抗体療法は費用がかかるため、ワクチン接種は高力価の抗原に誘導される抗体を誘導する手段としてより有用かつ経済的であり得る。この“癌ワクチン接種”の概念は有望かつ挑戦的である。
【0392】
この研究は、B型肝炎ウイルス(HBV)タンパク質(例えば感染した細胞の核の中に局在するHBV Xタンパク質)(Whittaker et al; Oncogene 29;4989-5005 (2010))を
肝細胞癌(HCC)に関する療法的細胞内標的として用いることができる可能性があることを示しており、これはほとんどのHCCはHBV感染と関係しており、ウイルスタンパク質を標的とする抗体はウイルスに感染した細胞を特異的に破壊するが正常な細胞は無傷なままにすると考えられるためである。同様に、エストロゲン受容体の過剰発現により引き起こされる乳癌に関して、ERに対する抗体またはER断片を用いたワクチン接種を用いて拡散を予防することができるであろう。これは、Her2または他のタンパク質の発現に関わらず、ER陽性乳癌患者を標的とするために特に有用である。
【0393】
将来の癌処置における可能性のあるスキームは、原発腫瘍の除去/生検を行い、免疫組織化学を用いて少なくとも1種類の腫瘍が発現している抗原を同定し、そしてその特異的な腫瘍マーカーに対する抗体またはそれに対する抗体を刺激する療法ワクチンのどちらかを投与することであり得る。癌の強い家族歴を有する患者に関しては、その家族性癌と関係のある抗原による若い感受性の家族のメンバーの免疫処置も、その抗原を発現する腫瘍細胞に対して免疫系を予備刺激することができるであろう。以前に探索されていない無数の候補標的タンパク質を調べれば、テーラーメイドの個人に合わせた癌療法の新時代がすぐに現実になるであろう。
【0394】
我々の非伝統的な発見の裏にある分子機序(単数または複数)は分かりにくいままであり、解読する必要があるが、いくつかの可能性のある抗体作用の機序を予想することができる(図22)。第1に(モデルA)、その抗体はPRL−3を発現している細胞に入って細胞内のPRL−3を標的とし、その機能を中和することができる可能性がある。我々は、PRL−3を発現している癌細胞の約10%は培養状態で抗体を取り込むことができ、この取り込みは血清飢餓の際に6倍増進されることを観察した(Guo et al., Cancer Therapy 2008)。血清飢餓は細胞をG1およびG0期で停止させるために用いられる(Cooper
et al., FASEB J. 2003;17:333-340)。細胞周期の特定の期(おそらくG1〜G0)が細胞の抗体を取り込む能力に寄与し得る可能性がある。生体内では、癌細胞は低酸素ストレスおよび血清欠乏下にあり、それは癌細胞の抗体を取り込む能力を増進し得る条件である。抗体は生きたヒトの単核細胞中に表面のFc受容体を通して取り込まれ得ることが報告された(Alarcon-Segovia Nature 1978: 271;67-69)。我々は、抗体取り込みの現象は、エンドサイトーシスがNH4Clにより阻止された場合、または細胞が培養されたマウスである場合に消滅することを見出しており(未公開データ)、これは、これらの抗体が細胞表面のタンパク質に結合し、続いてエンドサイトーシスまたはピノサイトーシスが起こる可能性が最も高いことを示唆している。一度エンドサイトーシス区画に入ると、その抗体は細胞質ゾル中に放出されることができるであろう。
【0395】
第2に(モデルB)、細胞内抗原の一部が非定型の分泌により外在化されて癌細胞の表面上に提示され(24)、抗体が結合して免疫応答、例えば抗体依存性細胞性細胞傷害(
ADCC)を誘発することを可能にする可能性がある。
【0396】
第3に(モデルC)、細胞内標的のタンパク質分解による断片が主要組織適合(MHC)クラスI分子により提示されて細胞傷害性T細胞(CTL)を誘引して細胞に媒介される癌細胞の溶解を媒介する可能性がある。加えて、細胞内抗原の小さい破片が壊死または癌細胞溶解により放出され、結果として腫瘍内の抗原−抗体複合体をもたらし、局所性炎症応答を刺激して腫瘍内の近隣の生存可能な癌細胞の標的化において免疫細胞を誘引する。最も可能性の高い機序は、おそらく細胞内腫瘍性タンパク質に対する抗体の最終的な療法的結果の達成に実際に関わっている補体に媒介される事象が含まれるいくつかの方式の組み合わせであり得る。現在、どのように抗体が生体内で腫瘍を破壊するかの理解はまだ“ブラックボックス”である。これは抗HER2/neu抗体の療法的機序に類似しており;それは20年より長く経過しており、その抗体は乳癌を処置するために幾年も臨床使用されてきたにも関わらず、我々はまだその機序(単数または複数)を完全には理解していない(Huesemann et al., Cancer Cell 2008; 13:58-68)。
【0397】
インビボの“ブラックボックス”を解明または再構成するためにインビトロ細胞培養系を用いることは、伝統的なインビトロ細胞培養系は単純化されすぎているため、非現実的である可能性がある。典型的には10%(従って90%を欠いている)ウシ胎児血清を補った培地を用いて単一の細胞型を培養器中で増殖させ、かつ免疫系が関与しない限界が存在する。そのインビトロ系は、多数のタイプの細胞および器官が100%天然の血液循環およびリンパ系中で協調している生体内の複雑さを実際に真似ることもなさそうである。どのような機序が用いられていようと、この研究の中心的な発見は、細胞内タンパク質に対する抗体が療法的作用を及ぼすことができることである。抗体の細胞内タンパク質に対する療法的作用は実質的かつ再現性があるため、基礎をなす機序の不完全な理解はこの新しいクラスの療法における将来の研究を妨げないはずである。
【0398】
実施例45:発癌性変異の周囲で設計された腫瘍性ペプチド(oncopeptides)を用いた免疫処置
C57BL/6マウスを、図24Bにおいて示したワクチン接種プロトコルを用いて、PRL−3合成ペプチドにより免疫した。その合成ペプチドは2つの異なるペプチド(両方とも完全なPRL−3タンパク質の断片)を含み、GGSGリンカー(太字のテキストで示した)で連結されており、配列EVTYDKTPLEKDGITVGGSGDPHTHKTRC−KLHを有していた。図24Cにおいて示されるように、免疫処置は結果として変異体ペプチドに特異的な抗体の産生をもたらした。
【0399】
免疫処置後、マウスにPRL−3標的タンパク質を発現するB16F0細胞で負荷をかけた(図24A参照)。免疫したマウスは免疫しなかった対照マウスまたはGSTで免疫した対照マウスと比較して腫瘍形成を阻止することができた(図24D参照)。
【0400】
別の実験において、C57BL6マウスにB16F10細胞を用いて負荷をかけた。B16F0細胞とは異なり、B16F10細胞はPRL−3を発現していない。B16F10細胞を用いて負荷をかけたマウスは腫瘍形成を阻止することができず、これは免疫処置が特異的な免疫応答を誘導することを実証している。
【0401】
実施例44:腫瘍性タンパク質に対する変異ペプチドワクチン接種
多くのヒト腫瘍細胞株が変異した腫瘍性タンパク質を有するが、マウスはヒトの癌細胞を許容することができず、生成される強い免疫応答により死ぬため、これらを野生型のマウス中に導入することはできない。
【0402】
逆に、ごく限られた数のマウスの癌細胞株はマウスワクチンモデルにおける使用に利用
可能な変異した腫瘍性タンパク質を有する。我々は、Ras(G12D)変異を有する1種類のマウス結腸癌細胞株CT26のみを同定した。この細胞株はBalb/cマウスにおいて腫瘍を誘導することができる。
【0403】
この実験において用いられた免疫処置および負荷のプロトコルを図26Aにおいて示す。
【0404】
G12D変異を含有するRas腫瘍性タンパク質の領域(CMTEYKLVVVGADGVGKSALT)に対応するペプチドを用いたBalb/cマウスの免疫処置は、宿主の標的タンパク質中のその特異的な点変異を発現する腫瘍に対する抗体の産生を誘発することができた(図26B参照)。
【0405】
次いで免疫したマウスに腫瘍発生試験においてCT26マウス細胞株を注射した。免疫処置はBalbcマウスにおいてCT−26の腫瘍形成を予防することができた(図26C)。
【0406】
抗体療法は費用がかかり;ワクチン接種は高力価の抗原に誘導される抗体を誘導する手段としてより有用かつ経済的であり得る。この“癌ワクチン接種”の概念は有望かつ挑戦的である。
【0407】
この文書において言及された出願および特許のそれぞれ、ならびに出願および特許のそれぞれの手続処理の間を含む、上記の出願および特許のそれぞれにおいて引用または参照されたそれぞれの文書(“出願で引用された文書”)、ならびにその出願および特許のそれぞれにおいて、ならびに出願で引用された文書のいずれかにおいて引用または言及されたあらゆる製品に関するあらゆる製造業者の説明書またはカタログは、本明細書により参照により本明細書に援用される。さらに、この文章において引用された全ての文書、およびこの文章において引用された文書において引用または参照された全ての文書、およびこの文章において引用または言及されたあらゆる製品に関するあらゆる製造業者の説明書またはカタログは、本明細書により参照により本明細書に援用される。
【0408】
本発明の範囲および精神から逸脱することのない、記述された本発明の方法および系の様々な修正および変更は、当業者には明らかであろう。本発明は特定の好ましい態様に関連して記述されてきたが、特許請求される通りの本発明はそのような特定の態様に過度に限定されるべきではないことは理解されるべきである。実際、分子生物学または関連分野の当業者に明らかである本発明を実施するための記述された方式の様々な修正は、特許請求の範囲内であることが意図されている。
ある態様において、本発明は以下であってもよい。
[態様1]癌の処置または予防の方法における使用のためのポリペプチドであって、10〜150アミノ酸、好ましくは10〜100アミノ酸を有する細胞内腫瘍性タンパク質の断片である、前記ポリペプチド。
[態様2]それを必要とする対象において抗細胞内腫瘍性タンパク質抗体の産生を刺激する方法における使用のためのポリペプチドであって、10〜150アミノ酸、好ましくは10〜100アミノ酸を有する細胞内腫瘍性タンパク質の断片である、前記ポリペプチド。
[態様3]ポリペプチドが発癌性変異を含む断片である、態様1または態様2に記載の使用のためのポリペプチド。
[態様4]ポリペプチドが複数の断片を含む、態様1〜3のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチド。
[態様5]ポリペプチドが同じ腫瘍性タンパク質からの複数の断片を含む、態様4に記載の使用のためのポリペプチド。
[態様6]ポリペプチドが2以上の腫瘍性タンパク質からの複数の断片を含む、態様5に記載の使用のためのポリペプチド。
[態様7]方法が癌転移を予防または低減するための方法である、前記の態様のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチド。
[態様8]患者が細胞内腫瘍性タンパク質を発現する原発癌を有する、前記の態様のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチド。
[態様9]ポリペプチドがエストロゲン受容体(ER)、HBVタンパク質、HBV Xタンパク質、PRL3、PRL−1、VHZ、およびHer2の群から選択される、前記の態様のいずれか1項に記載の使用のためのポリペプチド。
[態様10]癌を有する患者において癌転移を予防するための方法であって、以下の工程:
a)該患者の癌に特異的な細胞内腫瘍性タンパク質を同定し;
b)腫瘍性タンパク質の10〜150アミノ酸の断片を該患者に投与する;
を含む、前記方法。
[態様11]人において癌を処置または予防するための方法であって、以下の工程:
a)人が細胞内腫瘍性タンパク質と関係する癌を患っている、または発症しそうであるかどうかを決定し;
b)細胞内腫瘍性タンパク質の断片または細胞内腫瘍性タンパク質の断片に基づくペプチドを人に投与し、該断片またはペプチドは10〜150アミノ酸長である;
を含む、前記方法。
[態様12]断片が発癌性変異を含む、態様10または態様11に記載の方法。
[態様13]患者が複数の腫瘍性タンパク質断片を投与される、態様10〜12のいずれか1項に記載の方法。
[態様14]複数の腫瘍性タンパク質断片が組み合わせられて1以上のペプチドになり、そのそれぞれが複数の異なるペプチドを含み、それぞれが場合によりペプチドリンカーにより連結されている、態様13に記載の方法。
[態様15]患者がペプチドに対する抗体を産生するように誘導される、態様10〜14のいずれか1項に記載の方法。
[態様16]人が、癌を発症する前に細胞内腫瘍性タンパク質断片またはペプチドを投与される、態様11〜15のいずれか1項に記載の方法。
[態様17]人が細胞内腫瘍性タンパク質断片またはペプチドのさらなる用量を投与される、態様10〜16のいずれか1項に記載の方法。
[態様18]人が細胞内腫瘍性タンパク質と関係する癌を患っていそうであると、家族のメンバーにおける該癌の有病率を評価することにより同定される、態様11〜17のいずれか1項に記載の方法。
[態様19]細胞内腫瘍性タンパク質が細胞外ドメインまたは膜貫通ドメインを含まない、態様1〜9のいずれか1項に記載のポリペプチド、または態様10〜18のいずれか1項に記載の方法。
[態様20]細胞内腫瘍性タンパク質が細胞質または核の腫瘍性タンパク質を含む、前記の態様のいずれか1項に記載のポリペプチドまたは方法。
[態様21]癌が細胞内腫瘍性タンパク質の過剰発現と関係する、または細胞内腫瘍性タンパク質の過剰発現により引き起こされる、いずれかの前記の態様に記載のポリペプチドまたは方法。
[態様22]癌が以下:乳癌、肝細胞癌、急性リンパ性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、副腎皮質癌、肛門癌、膀胱癌、血液癌、骨癌、脳腫瘍、女性生殖器系の癌、男性生殖器系の癌、中枢神経系リンパ腫、子宮頸癌、小児横紋筋肉腫、小児期肉腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、慢性骨髄性白血病(CML)、結腸直腸癌、結腸癌、子宮内膜癌、子宮内膜肉腫、食道癌、眼癌、胆嚢癌、胃癌、胃腸管癌、有毛細胞白血病、頭頸部癌、ホジキン病、下咽頭癌、カポジ肉腫、腎臓癌、喉頭癌、白血病、白血病、肝臓癌、肺癌、悪性繊維性組織球腫、悪性胸腺腫、メラノーマ、中皮腫、多発性骨髄腫、骨髄腫、鼻腔および副鼻腔癌、鼻咽腔癌、神経系癌、神経芽細胞腫、非ホジキンリンパ腫、口腔癌、中咽頭癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、副甲状腺癌、陰茎癌、咽頭癌、下垂体腫瘍、形質細胞新生物、原発性CNSリンパ腫、前立腺癌、直腸癌、呼吸器系、網膜芽細胞腫、唾液腺癌、皮膚癌、小腸癌、軟部組織肉腫、胃癌、胃癌、精巣癌、甲状腺癌、泌尿器系癌、子宮肉腫、腟癌、血管系、ワルデンストレームマクログロブリン血症およびウィルムス腫瘍からなる群から選択される、いずれかの前記の態様に記載のポリペプチドまたは方法。
[態様23]細胞内腫瘍性タンパク質断片、またはその変異体、相同体または誘導体を薬学的に許容可能な賦形剤、希釈剤またはキャリヤーと一緒に含む医薬組成物。
[態様24]腫瘍性タンパク質がエストロゲン受容体、HBVタンパク質、PRL3、VHZおよびHer2、Kras、EGFR、Braf、PI3KCA、ベータカテニン、GNAS、Ret、EZH2またはGNAQの群から選択される、態様10〜23のいずれか1項に記載の方法または医薬組成物。
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図1-4】
図1-5】
図2-1】
図2-2】
図3-1】
図3-2】
図4-1】
図4-2】
図4-3】
図5-1】
図5-2】
図6-1】
図6-2】
図7
図8-1】
図8-2】
図9
図10-1】
図10-2】
図10-3】
図11-1】
図11-2】
図12-1】
図12-2】
図13
図14
図15
図16
図17-1】
図17-2】
図18-1】
図18-2】
図19-1】
図19-2】
図20
図21-1】
図21-2】
図22-1】
図22-2】
図23
図24-1】
図24-2】
図25-1】
図25-2】
図26-1】
図26-2】
図27-1】
図27-2】
図28-1】
図28-2】
図28-3】
図28-4】
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]