(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676596
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】内燃機関の排気流内に反応剤を投入するための反応剤投入ユニット
(51)【国際特許分類】
F01N 3/08 20060101AFI20200330BHJP
F01N 3/24 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
F01N3/08 B
F01N3/24 N
【請求項の数】17
【外国語出願】
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-181275(P2017-181275)
(22)【出願日】2017年9月21日
(65)【公開番号】特開2018-48636(P2018-48636A)
(43)【公開日】2018年3月29日
【審査請求日】2017年9月21日
(31)【優先権主張番号】10 2016 117 746.6
(32)【優先日】2016年9月21日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513212291
【氏名又は名称】エーバーシュペッヒャー・エグゾースト・テクノロジー・ゲーエムベーハー・ウント・コンパニー・カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】エンヴェル クルペヨヴィチ
(72)【発明者】
【氏名】オレクサンドル セメノフ
(72)【発明者】
【氏名】シュテフェン グラーザー
【審査官】
村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】
特開平08−126821(JP,A)
【文献】
独国特許出願公開第102014108877(DE,A1)
【文献】
特表2012−528974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00−11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の排気流内に反応剤を投入するための反応剤投入ユニットであって、
ケーシング長手方向軸線(L)の方向に長く延び、排気流が周りを流れるケーシング壁(18)により包囲された反応剤投入室(20)を備える反応剤投入ケーシング(16)であって、前記ケーシング壁(18)は、排気流れ方向(A)に関して上流側に配置される流入壁領域(30)と、前記排気流れ方向(A)に関して下流側に配置される流出壁領域(32)と、前記流入壁領域(30)と前記流出壁領域(32)との間の2つの側壁領域(34,36)とを有している、反応剤投入ケーシング(16)と、
反応剤を前記反応剤投入室(20)内へ噴射するように前記ケーシング長手方向軸線(L)の方向に配置された、加熱可能な反応剤放散部材(48)に向かって反応剤を反応剤投入方向(E)で前記反応剤投入室(20)内に噴射するための反応剤噴射ユニット(28)と、を備える、反応剤投入ユニットにおいて、
前記ケーシング長手方向軸線(L)の方向に長く延びる前記ケーシング壁(18)の少なくとも一方の側壁領域(34,36)または/および前記流出壁領域(32)に、少なくとも1つの通流開口(72,74,76)が設けられており、
前記反応剤噴射ユニット(28)に対応して反応剤ガイド部材(24)が配置されており、該反応剤ガイド部材(24)は、前記反応剤噴射ユニット(28)から噴射された反応剤が前記反応剤投入室(20)から直接流出しないように、少なくとも1つの通流開口(72,74,76)を遮蔽していることを特徴とする、反応剤投入ユニット。
【請求項2】
前記反応剤ガイド部材(24)は管状である、請求項1記載の反応剤投入ユニット。
【請求項3】
前記反応剤ガイド部材(24)は、前記反応剤噴射ユニット(28)から噴射された反応剤が前記反応剤投入室(20)から直接流出しないように、全ての通流開口(72,74,76)を遮蔽している、請求項1または2記載の反応剤投入ユニット。
【請求項4】
前記反応剤ガイド部材(24)は、少なくとも1つの通流開口(72,74,76)に、前記反応剤投入方向(E)で少なくとも部分的に重なっている、請求項1から3までのいずれか1項記載の反応剤投入ユニット。
【請求項5】
前記反応剤ガイド部材(24)は、全ての通流開口(72,74,76)に、前記反応剤投入方向(E)で完全に重なっている、請求項4記載の反応剤投入ユニット。
【請求項6】
前記反応剤ガイド部材(24)は、前記ケーシング長手方向軸線(L)の方向で前記反応剤投入室(20)内へ延びている、請求項1から5までのいずれか1項記載の反応剤投入ユニット。
【請求項7】
前記反応剤放散部材(48)は、電気的な励起により加熱可能な反応剤放散板(50)を有している、請求項1から6までのいずれか1項記載の反応剤投入ユニット。
【請求項8】
前記反応剤放散板(50)は、前記反応剤投入方向(E)に対して直交するように向けられた反応剤放散表面(52)を有している、請求項7記載の反応剤投入ユニット。
【請求項9】
少なくとも1つの通流開口(72,74,76)が、前記反応剤投入方向(E)で見て前記反応剤噴射ユニット(28)と前記反応剤放散板(50)との間に配置されている、請求項7または8記載の反応剤投入ユニット。
【請求項10】
全ての通流開口(72,74,76)が、前記反応剤投入方向(E)で見て前記反応剤噴射ユニット(28)と前記反応剤放散板(50)との間に配置されている、請求項9記載の反応剤投入ユニット。
【請求項11】
前記ケーシング壁(18)に、前記反応剤放散部材(48)を前記ケーシング壁(18)のケーシング長手方向軸線(L)の方向で支持する支持ユニット(56)が設けられており、および/または、前記反応剤放散部材(48)は、前記ケーシング壁(18)の内側に対して、絶縁ユニット(54)により絶縁状態に保たれており、および/または、前記反応剤放散部材(48)は、前記反応剤噴射ユニット(28)とは反対の側において、絶縁材料(62)により覆われている、請求項1から10までのいずれか1項記載の反応剤投入ユニット。
【請求項12】
前記支持ユニット(56)は、前記反応剤放散部材(48)を前記ケーシング壁(18)全体に沿った周方向で中断無く支持しており、および/または、前記反応剤放散部材(48)は、前記ケーシング壁(18)の内側に対して、絶縁ユニット(54)により、前記ケーシング壁(18)全体に沿った周方向で中断無く絶縁状態に保たれており、および/または、前記反応剤放散部材(48)は、前記反応剤噴射ユニット(28)とは反対の側において、絶縁材料(62)により完全に覆われている、請求項11記載の反応剤投入ユニット。
【請求項13】
前記反応剤投入ケーシング(16)は扁平化されており、これにより、前記流入壁領域(30)と前記流出壁領域(32)との間の間隔は、各前記側壁領域(34,36)間の間隔よりも大きくなっている、請求項1から12までのいずれか1項記載の反応剤投入ユニット。
【請求項14】
前記反応剤投入ケーシング(16)は、ケーシング長手方向軸線(L)に対して楕円形、卵形または液滴形の横断面輪郭を備えて形成されている、請求項13記載の反応剤投入ユニット。
【請求項15】
排気流れ方向(A)に排気が通流する排気管(12)と、該排気管(12)内に設けられ該排気管(12)内を流れる排気が周りを流れる、請求項1から14までのいずれか1項記載の反応剤投入ユニット(10)と、を備える、内燃機関用の排気装置。
【請求項16】
前記反応剤投入ユニット(10)は、前記排気流れ方向(A)に対して直交するように向けられた前記反応剤投入ケーシング(16)のケーシング長手方向軸線(L)をもって前記排気管(12)内に配置されており、これにより、前記流入壁領域(30)は、前記ケーシング壁(18)の上流側の端部領域を形成しており、前記流出壁領域(32)は、前記ケーシング壁(18)の下流側の端部領域を形成しており、前記各側壁領域(34,36)は、前記排気流れ方向(A)で見て前記流入壁領域(30)と前記流出壁領域(32)との間に延在している、請求項15記載の排気装置。
【請求項17】
前記各側壁領域(34,36)に、前記排気流れ方向に対して直交するように互いに向かい合う複数の通流開口(72,74)が設けられており、および/または、前記各側壁領域(34,36)の少なくとも1つの頂点領域に、少なくとも1つの通流開口(72,74)が設けられている、請求項16記載の排気装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の排気流内に反応剤を投入するための反応剤投入ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車に使用される内燃機関、特にディーゼル内燃機関において、排気中の窒素酸化物量を減少させるために、選択触媒還元(SCR)を実施する触媒ユニットを設けることが知られている。この反応の実施にはアンモニアが必要とされるため、内燃機関の排気装置内を流れる排気に、いわゆるインジェクタを介して例えば尿素/水溶液が反応剤として混加される。効率的な触媒反応のためには、排気と、排気中に噴射された反応剤との均一な混合が必要とされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の課題は、簡単な構成において、反応剤が混ぜられる排気の流体動力学を利用して、排気と反応剤との効率的な混合を達成する、内燃機関の排気流内に反応剤を投入するための反応剤投入ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題を本発明に基づき解決する、内燃機関の排気流内に反応剤を投入するための反応剤投入ユニットは、
ケーシング壁により包囲された反応剤投入室を備える反応剤投入ケーシングであって、ケーシング壁は、排気流れ方向に関して上流側に配置される流入壁領域と、排気流れ方向に関して下流側に配置される流出壁領域と、流入壁領域と流出壁領域との間の2つの側壁領域とを有しており、少なくとも一方の側壁領域または/および流出壁領域に、少なくとも1つの通流開口が設けられている、反応剤投入ケーシングと、
加熱可能な反応剤放散部材に向かって反応剤を反応剤投入方向で反応剤投入室内に噴射するための反応剤噴射ユニットと、
を備えている。
【0005】
本発明に基づき構成された反応剤投入ユニットは、反応剤投入ケーシングまたは反応剤投入ケーシングのケーシング壁の周りを流れる際に、1つまたは複数の通流開口を介して生じる接続に基づいて、ケーシング壁の外側の負圧が、反応剤投入室内に噴射され、加熱された反応剤放散部材により蒸気形態で再び放散された反応剤、または反応剤放散部材により反射された反応剤を、反応剤投入ケーシングから吸引ポンプ作用の形式で吸い出し、このときケーシング壁の周りを流れる排気と効率的に混合させるように機能するという作用を利用している。この場合、特に流出壁領域にも少なくとも1つの通流開口が設けられていると、既に部分的に反応剤を混ぜられた排気の、反応剤投入室内への再循環、ひいては排気と反応剤とのさらに改善された混合が達成されることになる。
【0006】
反応剤投入ケーシング内での反応剤の均一な分布を保証する1つの構成では、反応剤投入ケーシングがケーシング長手方向軸線の方向に長く延びており、反応剤を反応剤投入室内へ噴射するための反応剤噴射ユニットが、実質的にケーシング長手方向軸線の方向に配置されることが想定されてよい。
【0007】
反応剤噴射ユニットから供給された反応剤を、反応剤放散部材に向かって確実に案内することができるようにするために、反応剤噴射ユニットに、好適には管状の反応剤ガイド部材を対応配置することを提案する。
【0008】
このような反応剤ガイド部材により、反応剤噴射ユニットから噴射された反応剤が反応剤投入室から直接流出しないように、少なくとも1つの、好適には全ての通流開口を遮蔽することができる。このために、好適には、反応剤ガイド部材は、少なくとも1つの、好適には全ての通流開口に、反応剤投入方向で少なくとも部分的に、好適には完全に重なっていることが想定される。
【0009】
特に、反応剤導入方向が、ケーシング壁のケーシング長手方向軸線の延在方向に実質的に相当している場合には、反応剤ガイド部材がケーシング長手方向軸線の方向で反応剤投入室内へ延びていることに基づき、反応剤放散部材に対する反応剤の効率的な案内を支援することができる。
【0010】
構造的に簡単に実現される1つの構成では、反応剤放散部材は、電気的な励起により加熱可能な反応剤放散板を有していることが想定されてよい。
【0011】
反応剤放散板を、この反応剤放散板に向かって流れる反応剤で可能な限り均一に濡らすことができるようにするために、反応剤放散板が、反応剤投入方向に対して実質的に直交するように向けられた反応剤放散表面を有していることを提案する。
【0012】
反応剤放散板は、実質的に反応剤投入室を画定しているため、少なくとも1つ、好適には全ての通流開口が、反応剤投入方向で見て反応剤噴射ユニットと反応剤放散板との間に配置されることを提案する。
【0013】
ケーシング壁に対する反応剤放散部材の接続部において、反応剤または排気が通流しないように実質的に閉鎖された結合部を達成するために、ケーシング壁に、反応剤放散部材をケーシング壁のケーシング長手方向軸線の方向で、好適にはケーシング壁全体に沿った周方向で中断無く支持する支持ユニットが設けられているか、および/または、反応剤放散部材がケーシング壁の内側に対して、絶縁ユニットにより、好適にはケーシング壁全体に沿った周方向で中断無く絶縁状態に保たれることを提案する。さらに、外部に対する熱損失を回避するために、反応剤放散部材が、反応剤噴射ユニットとは反対の側において、好適には絶縁材料により実質的に完全に覆われていることが想定されてよい。
【0014】
排気流の最小限の妨害において、上述した、ケーシング壁の外側における負圧の形成に基づき生じる吸引ポンプ作用を可能な限り効率的に利用することができるようにするために、反応剤投入ケーシングが扁平化されており、これにより、流入壁領域と流出壁領域との間の間隔が、各側壁領域間の間隔よりも大きくなっていることが想定されてよい。例えば反応剤投入ケーシングは、ケーシング長手方向軸線に対して楕円形、卵形、または液滴形の横断面輪郭を備えて形成されていてよい。
【0015】
本発明はさらに、内燃機関用の排気装置であって、排気流れ方向に排気が通流する排気管と、排気管内に設けられていて排気管内を流れる排気が周りを流れる、本発明の原理に基づき構成された反応剤投入ユニットと、を備えるものに関する。
【0016】
反応剤投入ユニットは、排気流れ方向に対して実質的に直交するように向けられた反応剤投入ケーシングのケーシング長手方向軸線をもって排気管内に配置されていてよく、これにより、流入壁領域は、ケーシング壁の上流側の端部領域を形成しており、流出壁領域は、ケーシング壁の下流側の端部領域を形成しており、側壁領域は、排気流れ方向で見て実質的に流入壁領域と流出壁領域との間に延在することになる。
【0017】
ケーシング壁の周りを流れる際に、ケーシング壁の両サイドで本発明による混合作用を提供することができるようにするために、各側壁領域に、排気流れ方向に対して実質的に直交するように互いに向かい合う複数の通流開口が設けられており、および/または、各側壁領域の少なくとも1つの頂点領域に、少なくとも1つの通流開口が設けられていることを提案する。
【0018】
以下に、本発明を添付図面に関して詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】反応剤投入ユニットを備えて形成された、内燃機関の排気装置の部分縦断面図である。
【
図2】排気管内の排気投入ユニットの、
図1に示した線II−IIに沿った断面に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1および
図2には、反応剤投入ユニットが全体的に符号10で示されている。反応剤投入ユニットは、液体反応剤、例えば尿素/水溶液を、例えば自動車に設けられた内燃機関から放出された排気流内へ導入するために用いられる。この目的のために、反応剤投入ユニット10は、内燃機関の排気装置14の、全体的に符号12で示された排気管内に配置されている。
【0021】
反応剤投入ユニット10は、反応剤投入ケーシング16を有しており、反応剤投入ケーシング16は、ケーシング長手方向軸線Lの方向で例えば実質的に円筒状に長く延びたケーシング壁18を備えている。
図1と
図2とを比較すると、ケーシング壁18は種々様々な横断面輪郭を有していてよい、ということが判る。
図1には、ケーシング長手方向軸線Lに対して実質的に対称的な横断面輪郭、例えば楕円輪郭を有する構成が示されているのに対して、
図2に示すケーシング壁18は、ケーシング長手方向軸線に対して横方向に長く延びた卵形輪郭を有している。例えば、液滴形等の別の横断面輪郭も選択可能である。
【0022】
反応剤投入ケーシング16内に形成された、またはケーシング壁18により取り囲まれた反応剤投入室20は、ケーシング長手方向軸線Lに対して軸方向の、一方の軸方向において、板状またはカバー状の閉鎖部材22により閉鎖されている。この閉鎖部材22には、例えば管状の反応剤ガイド部材24が支持されていると共に、付加部26を介して反応剤噴射ユニット28、例えばインジェクタが支持されている。反応剤噴射ユニット28と管状の反応剤ガイド部材24とは、互いに実質的に同心的に配置されていてよく、このことは
図2において認められる。反応剤噴射ユニット28は、この反応剤噴射ユニット28により供給される反応剤が、実質的にケーシング長手方向軸線Lの方向に向けられた反応剤投入方向Eを有するように、配置されている。反応剤は一般にスプレー状に噴射されるので、円錐形の噴流が生じることになるが、それでも本発明の原理に基づいて、上記のように供給された反応剤液滴は、反応剤投入方向Eに主流れ方向成分を有するものと仮定する。
【0023】
反応剤投入ケーシング16のケーシング壁18は、その扁平化された横断面輪郭でもって排気管12内に配置されており、これにより、流入壁領域30が排気管12内を流れる排気の排気流れ方向Aに関して上流側に配置される一方で、流出壁領域32は下流側に配置されることになる。つまり、流入壁領域30は、ケーシング壁18の上流側の端部領域を形成しており、流出壁領域32は、ケーシング壁18の下流側の端部領域を形成している。それぞれ比較的小さな曲率半径を有する壁領域を含む流入壁領域30と流出壁領域32との間には、互いに向かい合う側壁領域34,36が延在している。側壁領域34,36は、ほぼ排気流れ方向Aに延在していて、基本的には流入壁領域30と流出壁領域32とに対する接続部でやはり湾曲されて形成されている。流れ矢印P
1で示すように、排気流れ方向Aでケーシング壁18に向かって流れる排気は、流入壁領域30において変向される。当然、変向は両サイドに向かって行われる。次いで、排気は、流れ矢印P
2で示すように、それぞれ両側壁34,36に沿って、側壁34,36と排気管12の管壁38との間にそれぞれ形成された流動空間40,42内を流れる。
【0024】
反応剤投入ケーシング16に対応するように、排気管12の管壁38の、互いに向かい合った2つの側には、好適にはケーシング壁18の周輪郭に合わされた開口44,46が形成されている。開口44は例えば、この開口44を通してケーシング壁18を排気管12に挿入し、きつく嵌め合わせることができるように寸法設定されている。開口46は、ケーシング壁18により画定された反応剤投入室20の横断面輪郭に実質的に相当するように寸法設定されているので、反応剤投入ケーシング16が排気管12に完全に挿入されると、ケーシング壁18は、管壁38の、開口46を包囲している領域に接触することになる。両開口44,46の領域において、ケーシング壁18は、排気管12の管壁38と材料接合式に、例えば溶接、ろう接または接着により、気密かつ耐熱式に結合されていてよい。同様に、閉鎖部材22もケーシング壁18と結合されていてよく、これにより、この領域でも反応剤投入室20を外部に対して気密かつ耐熱式に閉鎖することができるようになっている。
【0025】
反応剤投入ケーシング16内には、反応剤投入方向Eで見て反応剤噴射ユニット28または反応剤ガイド部材24とは反対の側に、反応剤放散部材48が例えば反応剤放散板50の形態で配置されている。反応剤放散板50は、反応剤噴射ユニット28から供給された反応剤で濡らすことができかつ反応剤投入方向に対して実質的に直交するように向けられた、反応剤放散表面52を有している。反応剤放散板50は、その周縁領域において、この反応剤放散板50を好適には完全に環状に包囲する絶縁ユニット54により、一方では半径方向外側のケーシング壁18に対して支持されており、かつ他方ではケーシング壁18に対して絶縁されている。ケーシング壁18には、環状に形成された支持ユニット56が支持されており、支持ユニット56において反応剤放散板50を、反応剤噴射ユニット28に向けて支持することができるようになっている。好適には、支持ユニット56はケーシング壁18の全周にわたって中断されずに延在しているので、これに相応する支持接触部を、反応剤放散板50と支持ユニット56との間に全周にわたって実質的に中断無く設けることができ、ひいては反応剤放散表面52の外縁領域において、この反応剤放散表面52を濡らす反応剤の絶縁ユニット54に向かう方向での漏れが、実質的に阻止される。支持ユニット56は、例えば複数の断続的な周領域において、例えば溶接またはろう接によりケーシング壁18に結合されていてよく、これにより、この領域では反応剤放散板50からケーシング壁18への熱損失が、可能な限り回避されるようになっている。
【0026】
反応剤放散板50を有する反応剤放散部材48は、電気的な励起により加熱可能である。このために、例えば反応剤放散板50の構成材料に、電気的に励起可能な加熱素子が埋め込まれていてよい。代替的または付加的に、このような電気的に励起可能な加熱素子は、反応剤放散板50の、反応剤噴射ユニット28とは反対の側に位置する裏面に設けられていてよく、しかしまた、場合によっては、反応剤放散表面52の領域に設けられていてもよい。反応剤放散板50に対応配置された、電気的に励起可能な加熱素子は、電気的な導線58,60を介してエネルギ源に接続可能であり、これにより、運転中に反応剤放散板50を加熱することができるようになっている。液滴形態で反応剤噴射ユニット28から反応剤放散表面52に向かって噴射された反応剤は、反応剤放散表面52にぶつかる。この反応剤放散表面52に液滴形態でぶつかる反応剤の一部は、反応剤放散表面52により反射されることがあるので、反応剤投入室20内でも液滴形態で存在することになる。反応剤放散表面52にぶつかる反応剤の大部分は、反応剤放散表面52を濡らし、反応剤放散板50の加熱に基づき蒸気形態で、反応剤放散表面52から再び反応剤投入室20内へ放散される。反応剤放散板50の裏面における熱損失も回避するために、反応剤放散板50の裏面は、好適には実質的に完全に、絶縁材料62で覆われていてよい。絶縁材料62の裏側には、別の板状またはカバー状の閉鎖部材64が設けられていてよく、この閉鎖部材64は、複数の支持部材66,68を介して反応剤放散板50を支持ユニット56に押し当てていると共に、ケーシング壁18において例えば溶接、ろう接または接着等の材料接合により、気密かつ耐熱式に固定されている。導線58,60は、閉鎖部材64に設けられた開口70と、管壁38に設けられた開口46とを介して、反応剤投入ユニット10の領域または排気管12から導出することができる。
【0027】
反応剤投入ケーシング16のケーシング壁18には、複数の通流開口が設けられている。例えば2つの側壁34,36には、好適にはケーシング長手方向軸線Lに対して互いに向かい合った領域に、それぞれ通流開口72,74が設けられている。
図1に示すように、各側壁34,36にはそれぞれ複数の通流開口72または74が設けられていてよく、これらの通流開口72または74は、例えば反応剤噴射方向Eの方向に連続しておりかつ排気流れ方向Aの方向では実質的に同じ高さに位置している。図示の実施例では、流出壁領域32に通流開口76が設けられている。通流開口72,74,76は、反応剤噴射ユニット28の領域を起点として反応剤投入室20内へ延びる管状の反応剤ガイド部材24が、全ての通流開口72,74,76と実質的に完全に重なるように、または反応剤噴射ユニット28から供給された反応剤が通流開口72,74,76のうちの1つを通って直接流出することを防ぐように位置決めされている。つまり、反応剤ガイド部材24によって、反応剤噴射ユニット28から供給された反応剤の実質的に全てが反応剤放散板50にぶつかり、かつ上述したように反応剤放散板50から反応剤投入室20に向かって再び放散されることが保証されている。
【0028】
内燃機関の運転中に排気がケーシング壁18の周りを流れると、流入壁領域30および側壁領域34,36の上流側の領域における排気の変向に基づき、排気は流動空間40,42内へ案内される。このとき、通流に供与される流れ横断面は、好適には側壁34,36の通流開口72,74が設けられている側壁34,36の頂点領域に達するまで、減少する。流れ横断面の減少に基づき、上記領域では流動中間空間40,42を通流する排気の流速が増大する。流速の増大は、動圧を増大させると共に、これに相応して排気の静圧を減少させる。つまり、流動中間空間40,42内の通流開口72,74の領域には、反応剤投入室20内に存在する圧力に対して負圧が生じることになる。これにより、反応剤投入室20内に存在する、反応剤を含むガスが、流れ矢印P
3で示すように、反応剤投入室20から吸い出され、反応剤投入ケーシング16の外で、反応剤投入ケーシング16の周りを流れる排気に混加される。反応剤投入室20から通流開口72,74を介して流出する材料の一部しか反応剤ではないため、この吸引ポンプ作用に基づき反応剤投入室20に負圧が生じると考えられる。しかしながら、流出壁領域32の通流開口76の領域でも反応剤投入室20は開いているので、流れ矢印P
4が示すように、ここでは反応剤を混加された排気が、排気管12から反応剤投入室20内へ再循環することができるようになっている。つまり、反応剤噴射ユニット28によって供給された反応剤または反応剤放散板50により放散された反応剤に、反応剤投入室20に流入する、排気と反応剤とから成る混合物が、反応剤投入室20内で混加され、流れ矢印P
3で示すように反応剤投入室20から吸い出されて、排気流に混加されるようになっている。このことは、排気と反応剤との効率的で均一な混合に寄与し、その結果、反応剤投入ユニット10の下流側で排気流中に配置された触媒ユニットにおいて、選択触媒還元を効率的に進めることができるようになっている。
【0029】
上述した図示の反応剤投入ユニット10により、運転中に様々な利点が得られる。一方では、反応剤放散板50を熱的に絶縁することにより、この領域での熱損失を概ね回避することができるので、既に比較的低い温度においても効率的な反応剤蒸発が達成可能であり、この場合には、既に低い200℃未満の排気温度においても、効率的な反応剤混合を保証することができる。他方では、反応剤投入ケーシング16がケーシング壁18を介して、反応剤投入ケーシング16の周りを流れる排気からの熱を吸収することができるので、連続運転における確実な加熱に役立つ。通流開口72,74,76の配置または管状の反応剤ガイド部材24の寸法設定および配置に基づき、反応剤が反応剤投入室20から直接流出することは基本的にないことが保証される。反応剤は、最初に反応剤放散板50にぶつかってから、まず反応剤投入室20内で、そこに存在しているガス、例えば通流開口76を介して流入した、既に反応剤成分を含有している排気と混合され、次いで、初めて通流開口72,74を介して排気流中に供給される。
【0030】
指摘しておくと、本発明の原理は当然、図示して説明した上記の構成形態に対して変形された反応剤投入ユニットの構成においても実現することができる。つまり、既に上述したように、ケーシング壁の横断面輪郭は、特に流体動力学的な観点を考慮して、別様に選択されていてもよい。また、通流開口の数や配置も、別様に選択されてよい。ケーシング壁の周りを流れる排気が最大流速を有する側壁の場所に通流開口を配置すると、効率的な吸引ポンプ作用に基づいて特に有利であるのに対し、代替的にまたは付加的に、さらに下流側または/および上流側で各側壁に、または少なくとも一方の側壁に、通流開口が設けられていてもよい。また、流出壁領域の範囲にも、複数の通流開口が設けられていてよい。代替的に、流出壁領域に通流開口を設けることは、省かれてもよい。流入壁領域を通流開口無しで構成することは、流れ状態に関して特に有利であるにもかかわらず、流入壁領域または側壁領域の、さらに上流側に位置する領域にも、代替的にまたは付加的に、少なくとも1つの通流開口が配置されていてよい。
【0031】
ケーシング長手方向軸線の方向での、反応剤放散板用の支持ユニットの位置を選択することにより、反応剤投入ケーシング内での反応剤放散板の位置を、その時々の排気案内システムの構成に合わせて選択することができる。また、反応剤放散板の形態も、図示の形態とは異なっていてよい。例えばこの場合、反応剤の受止めまたは放散にも供与される表面を拡大するために、板に関して格子状構造または多孔質構造を選択することもできる。また、波形または複数の隆起部を有する反応剤放散板の構造も可能である。