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特許6676611マイクロ流体チップ、その製造方法及びそれを用いた分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676611
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】マイクロ流体チップ、その製造方法及びそれを用いた分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/08 20060101AFI20200330BHJP
   G01N 37/00 20060101ALI20200330BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALI20200330BHJP
   G01N 21/03 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
   G01N35/08 A
   G01N37/00 101
   C12Q1/68
   !G01N21/03 Z
【請求項の数】11
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-500901(P2017-500901)
(86)(22)【出願日】2015年6月22日
(65)【公表番号】特表2017-519996(P2017-519996A)
(43)【公表日】2017年7月20日
(86)【国際出願番号】KR2015006320
(87)【国際公開番号】WO2016006842
(87)【国際公開日】20160114
【審査請求日】2017年1月6日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0086758
(32)【優先日】2014年7月10日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514198622
【氏名又は名称】ナノバイオシス インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】NANOBIOSYS INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】キム、ソン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ビョン、ジェ ヨン
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−255584(JP,A)
【文献】 特開2007−064742(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/038897(WO,A1)
【文献】 特開2009−236555(JP,A)
【文献】 特開2007−136379(JP,A)
【文献】 特開2009−109249(JP,A)
【文献】 特開2013−007592(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/125642(WO,A1)
【文献】 特開2004−202613(JP,A)
【文献】 特開2008−232939(JP,A)
【文献】 特開2008−008880(JP,A)
【文献】 特開2009−047626(JP,A)
【文献】 国際公開第03/052428(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0219078(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 35/00 − 37/00
C12Q 1/00 − 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCR反応(ポリメラーゼ連鎖反応)のためのマイクロ流体チップであり、
流体が流入される流入部と、前記流体が移動する流体チャネルと、前記流体が排出される流出部と、を有する基板と;
前記基板に貼り付けられるフィルムと;を含み、
前記流入部及び前記流出部は、基板の表面を貫通して形成され、前記流体チャネルは、前記基板の表面から陥没して形成され、
前記流体チャネルは、前記基板の上面に形成される上部流体チャネルと、前記基板の下面に形成されると共に前記流入部および前記流出部を連通する下部流体チャネルと、前記上部流体チャネルと前記下部流体チャネルを接続する複数のビアホール(via-hole)と、を含み、
前記複数のビアホールの一部は前記PCR反応が行われるチャンバー(chamber)として機能し、
前記フィルムは、前記上部流体チャネルを閉鎖する一方、前記流入部および前記流
出部と離隔する上部フィルムおよび前記下部流体チャネルを閉鎖する下部フィルムを含む構成において、
前記流体チャネルは、前記流体に含まれている気泡が流体チャネル内の所定の領域に位置することを防止するために、前記基板の光測定領域の上部内面から下方に向けて突設される光透過性材質の気泡除去部を含み、
前記気泡除去部の周囲に沿って基板の上部内面が陥没して形成される気泡捕集部を含む
ことを特徴とするマイクロ流体チップ。
【請求項2】
前記流体チャネルは、前記流体チャネルの前記上部流体チャネル及び前記下部流体チャネルのうち少なくとも1つによって具現される分岐チャネル及び結合チャネルのうち少なくとも1つを含む、請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項3】
前記流体チャネルは、前記分岐チャネル及び前記結合チャネルによって具現される濃度勾配チャネルを含む、請求項2に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項4】
前記気泡除去部は、前記気泡除去部の中央に形成される平坦面と、前記平坦面の周囲から延長されて前記マイクロ流体チップの上部の内面と接続される傾斜面と、からなる、請求項3に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項5】
前記フィルムの少なくとも一部は、気体透過性フィルムである、請求項1に記載のマイクロ流体チップ。
【請求項6】
請求項1に係るマイクロ流体チップと;
前記マイクロ流体チップ内の反応産物を測定するために、前記マイクロ流体チップに光を照射し、前記マイクロ流体チップの光測定領域から放出される光信号を検出するように設けられた光検出モジュールと;を含む分析装置。
【請求項7】
PCR反応(ポリメラーゼ連鎖反応)のためのマイクロ流体チップの製造方法であり、
流体が流入される流入部と、前記流体が移動する流体チャネルと、前記流体が排出される流出部と、を有する基板を形成するステップと;
前記基板にフィルムを貼り付けるステップと;を含み、
前記基板を形成するステップは、前記基板の上面及び/又は下面のうち一部領域が前記基板の表面から陥没して前記流体チャネルを形成し、前記基板の表面を貫通して前記流入部及び前記流出部を形成することにより行われ、
前記流体チャネルは、前記基板の上面に形成される上部流体チャネルと、前記基板の下面に形成されると共に前記流入部および前記流出部を連通する下部流体チャネルと、前記上部流体チャネルと前記下部流体チャネルを接続する複数のビアホール(via-hole)と、を含み、
前記フィルムは、前記上部流体チャネルを閉鎖する一方、前記流入部および前記流出部と離隔する上部フィルムおよび前記下部流体チャネルを閉鎖する下部フィルムを含む構成において、
前記流体チャネルは、前記流体に含まれている気泡が流体チャネル内の所定の領域に位置することを防止するために、前記基板の光測定領域の上部内面から下方に向けて突設される光透過性材質の気泡除去部を含み、
前記気泡除去部の周囲に沿って基板の上部内面が陥没して形成される気泡捕集部を含む
ことを特徴とする製造方法。
【請求項8】
前記気泡除去部は、前記気泡除去部の中央に形成される平坦面と、前記平坦面の周囲から延長されて前記マイクロ流体チップの上部の内面と接続される傾斜面と、からなる、請求項7に記載の製造方法。
【請求項9】
前記フィルムの少なくとも一部は、気体透過性フィルムである、請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
前記流体チャネルは、前記流体チャネルの前記上部流体チャネル及び前記下部流体チャネルのうち少なくとも1つによって具現される分岐チャネル及び結合チャネルのうち少なくとも1つを含む、請求項7に記載の製造方法。
【請求項11】
前記流体チャネルは、前記分岐チャネル及び前記結合チャネルによって具現される濃度勾配チャネルを含む、請求項10に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロ流体チップ、その製造方法及びそれを用いた分析装置に係り、さらに詳しくは、基板の表面に形成された流体チャネルを有するマイクロ流体チップ、その製造方法及びそれを用いた分析装置に関する。
【0002】
本発明は、産業通商資源部の産業融合源泉技術開発事業の支援を受けて行われた研究から導き出されたものである[課題固有番号:10042924、研究課題名:複合勾配(ナノ構造勾配− 濃度勾配)技術を利用した幹細胞最適培養条件の高速自動スクリーニングシステムの試作品を開発]。
【背景技術】
【0003】
マイクロ流体チップは、マイクロ流体チャネルを介して流体を流すことにより、複数の実験条件を同時に行うことができる機能を有する。具体的には、プラスチック、ガラス、シリコン等の基板(またはチップ材質)を用いてマイクロチャネルを作成し、このようなチャネルを介して流体(例えば、液体試料)を移動させた後、マイクロ流体チップ内のチャンバーにおいて、例えば、試料分離、細胞の混合、合成、定量分析、細胞増殖の観察などを行うことができる。このように、従来の実験室で行われた実験を小さなチップ内で行うという点で、マイクロ流体チップは、「ラボオンチップ」(lab-on-a-chip)とも呼ばれている。
【0004】
マイクロ流体チップは、製薬、バイオテクノロジー、医療、生命医療、食品、環境、精密化学などの分野でのコスト削減及び時間短縮の効果を奏することはもとより、精度と効率性、信頼性を高めることができる。例えば、マイクロ流体チップを使用することにより、細胞培養と増殖及び分化などに使用される高価な試薬の使用量を、従来の方法による使用量よりも大幅に減らすことができるので、大幅なコスト削減を図ることができる。のみならず、タンパク質(protein)、遺伝子(DNA)、細胞(cell)、ニューロン(neuron)、酵素、抗体などの生体試料の分析を行うにあたり、従来の方法による使用量よりもはるかに少ない量が使用されるとともに、これを利用して映像分析が可能であるので、サンプルの使用量や消費量及び分析時間を短縮することができる。
【0005】
これに関連して、図1は、従来の例示的なマイクロ流体チップの一部の分解図である。
【0006】
同図に示すように、従来の例示的なマイクロ流体チップ100は、流体が流れる複数の第1チャネル110と複数の第2チャネル120とを含むことができる。マイクロ流体チップ100において、複数の第1チャネル110に流れるそれぞれの流体は、複数の第2チャネル120に流れるそれぞれの流体と混合され、このような流体の流れ及び混合を容易にするために、前記チャネルは層(layer)を異にして形成することができる。
【0007】
このために、従来のマイクロ流体チップは、それぞれのチャネルが形成される少なくとも2つの基板(または層)を接合してマイクロ流体チップを製造した。しかし、このような製造方法によれば、複数の基板上にチャネルを形成した後、これらを互いに接合しなければならないという点で、基板間のアライメントの問題が発生した。つまり、チップ製造時の基板間の接合工程に相当な時間と費用が発生した。のみならず、2層の基板(すなわち、2つの基板)自体の(例えば、射出成形工程などを通じた)製造による時間と費用も発生した。つまり、従来のマイクロ流体チップは、時間と費用の側面から製造工程上の問題点があり、チップの精度も低下するという問題点があった。
【0008】
したがって、このような問題点を解決するためのマイクロ流体チップ、その製造方法及びそれを用いた画像解析装置が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、基板の表面に流体チャネルを形成することにより、基板間の接合及びアライメント問題を解決することができるマイクロ流体チップ、その製造方法及びそれを用いた分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップが提供される。前記マイクロ流体チップは、流体が流入される流入部と、前記流体が移動する流体チャネルと、前記流体が排出される流出部と、を有する基板と; 前記基板に貼り付けられ、前記流入部、前記流出部及び前記流体チャネルのうち少なくとも1つを外部から保護するフィルムと;を含み、前記流入部及び前記流出部は、基板の表面を貫通して形成され、前記流体チャネルは、前記基板の表面から陥没して形成されることができる。
【0011】
本発明の一実施例に係る分析装置が提供される。前記分析装置は、前記マイクロ流体チップと; 前記マイクロ流体チップ内の反応産物を測定するために、前記マイクロ流体チップに光を照射し、前記マイクロ流体チップの光測定領域から放出される光信号を検出するように設けられた光検出モジュールと;を含むことができる。
【0012】
本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップの製造方法が提供される。前記方法は、流体が流入される流入部と、前記流体が移動する流体チャネルと、前記流体が排出される流出部と、を有する基板を形成するステップと; 前記流入部、前記流出部及び前記流体チャネルのうち少なくとも1つを外部から保護するために、前記基板の表面にフィルムを貼り付けるステップと;を含み、前記基板を形成するステップは、前記基板の上面及び/又は下面のうち一部領域が前記基板の表面から陥没して前記流体チャネルを形成し、前記基板の表面を貫通して前記流入部及び前記流出部を形成することにより行われる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、複数の基板を接合する従来の技術とは異なり、アライメントなどに関する工程上の誤差を防止することにより、マイクロ流体チップの精度を向上させ、不良率を減少させることができる。
【0014】
また、本発明によれば、基板とフィルムの接合だけでマイクロ流体チップを製造することができるので、製造工程が簡単で、費用面で経済的である。
【0015】
また、本発明によれば、マイクロ流体チップの全体的なサイズ及び重量を減少させることができ、これにより、ユーザー利便性及び経済性を向上することができる。
【0016】
また、本発明によれば、追加の化学的処理や、ポンプ駆動装置、超音波装置、膜(membrane)などの付加的な装置がなくても、マイクロ流体チップ内に形成された構造物だけで流体内の気泡を光測定領域の外に効果的に除去することができる。
【0017】
また、本発明によれば、マイクロ流体チップの極小型化にもかかわらず、光信号の感度の低下及び不均一に起因する問題もなく、多数の少量の反応産物を同時に迅速で正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本発明の詳細な説明で引用される図面をより十分に理解するために、各図面の簡単な説明が提供される。
図1】従来の例示的なマイクロ流体チップの一部の分解図である。
図2】本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップを示す図である。
図3】本発明の他の実施形態に係るマイクロ流体チップを示す図である。
図4】本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップを示す図である。
図5】本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップの製造方法を示す図である。
図6本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップの製造方法を工程別に示す図である。
図7本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップの製造方法を工程別に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明に係る実施例は、添付図面を参照して説明する。各図面の構成要素に参照符号を付加するにあたり、同一の構成要素に対しては、たとえ他の図面上に表示されていても可能な限り同一の符号を有するようにしていることに留意しなければならない。また、本発明の実施例を説明するにあたり、関連した公知の構成または機能に対する具体的な説明が本発明の実施例の理解を妨げると判断される場合には、その詳細な説明は省略する。また、以下で本発明の実施例を説明するが、本発明の技術的思想はこれに限定されたり制限されず、当業者により変形されて多様に実施することができる。
【0020】
本明細書全体にわたって、ある部分が他の部分と「接続」されているとすると、これは「直接的に接続」されている場合だけではなく、その中間に他の素子を間に置いて「間接的に接続」されている場合をも含む。本明細書全体にわたって、ある部分がある構成要素を「含む」とするとき、これは特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素を含むことができるということを意味する。
【0021】
図2は、本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップを示す。具体的には、図2の上部では、マイクロ流体チップ200の平面図を示し、図2の下部では、マイクロ流体チップ200のA−A’線における断面図を示す。
【0022】
図2を参照すると、マイクロ流体チップ200は、基板210と、基板210に接合するフィルム220と、を含むことができる。
【0023】
基板210は、マイクロ流体チップ200のベースであり、流体が流入される流入部230と、流体が移動する流体チャネル240と、流体が排出される流出部250と、を含むことができる。基板210の流入部230、流体チャネル240及び流出部250は、基板210の表面(すなわち、上面及び/又は下面)から陥没して形成されるか、基板210を貫通して形成されることができる。
【0024】
基板210は、ポリジメチルシロキサン(polydimethylsiloxane、PDMS)、シクロオレフィンコポリマー(cycle olefin copolymer、COC)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmetharcylate、PMMA) 、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリプロピレンカーボネート(polypropylene carbonate、PPC)、ポリエーテルスルホン(polyether sulfone、PES)、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、ポリアミド(polyamide、PA)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリプロピレン(polypropylene、PP)、ポリフェニレンエーテル(polyphenylene ether、PPE)、ポリスチレン(polystyrene、PS)、ポリオキシメチレン(polyoxymethylene、POM)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketone、PEEK)、ポリテトラフルオロエチレン(polytetrafluoroethylene、PTFE)、ポリ塩化ビニル(polyvinylchloride、PVC)、ポリフッ化ビニリデン(polyvinylidene fluoride、PVDF)、ポリブチレンテレフタレート(polybutyleneterephthalate、PBT) 、フッ素化エチレンプロピレン(fluorinated ethylenepropylene、FEP)、及びその組み合わせからなる群から選択される材質からなリ得る。
【0025】
また、実施例に応じて、基板210は、少なくとも一部が光透過性材質、例えば、パーフルオロアルコキシアルカン(perfluoralkoxyalkane、PFA)などからなり得る。しかし、このような基板210の材質は例示的なものであり、本発明が適用される実施例に応じて様々な材質を用いることができる。
【0026】
フィルム220は、基板210の表面に接合することができる。具体的にはフィルム220は、基板210の上部表面に接合する第1のフィルム222と、基板210の下部表に接合する第2のフィルム224と、からなり、このような第1フィルム222及び第2のフィルム224が基板210の上部表面及び下部表面に接合することにより、基板210の流入部230、流出部250及び流体チャネル240のうちの少なくとも一部を外部から閉鎖することにより、外部物質による汚染、損傷等からマイクロ流体チップ200を保護し、同時にマイクロ流体チップ200が流体の流れ、維持などの機能を行うことができる。
【0027】
基板210と同一または類似の材質の他の基板ではなく、比較的薄いフィルム220が基板210の表面に貼り付けることにより、接着作業(bonding)を簡素化し、マイクロ流体チップ200の小型化及び軽量化に役立つことができる。フィルム220は、少なくとも一部が透明または不透明な材質であり得る。また、フィルム220は、酸素、二酸化炭素などの気体に対する気体透過性フィルムであり得る。このようなフィルム220の構成は、例示的なものであり、本発明が適用される実施例、すなわち、マイクロ流体チップ200に使用される試料の内容物や研究目的等に応じてフィルム220の構成を多様化することができる。
【0028】
このようなマイクロ流体チップ200によれば、サンプル試薬、試料などの流体が流入部230を介して注入され、流体チャネル240を流れるようになる。ここで、流体チャネル240は、基板210の下面に形成される下部流体チャネル242、242 'と、基板210の上面に形成される上部流体チャネル246と、下部流体チャネル242と上部流体チャネル246を接続するビアホール244、244 'と、を含むことができる。より具体的には、流入部230を介して注入された流体が下部流体チャネル242、ビアホール244、上部流体チャネル246、ビアホール244 '、下部流体チャネル242'を順次流れるようになる。流体チャネル240では、流体の移動と維持だけでなく、流体の様々な動作が行われることができる。例えば、ビアホール244は、下部流体チャネル242及び上部流体チャネル246を接続するだけでなく、所定の反応チャネルまたは反応チャンバーとして機能することができる。つまり、流体の流れのためのビアホール244 'とは異なり、ビアホール244は、反応チャネルまたは反応チャンバーとして機能するのに十分なスペースが確保されるという点で、ビアホール244を介して具現される反応チャネルまたは反応チャンバーにより、試料分離、混合、合成、定量分析、細胞増殖観察などの所定の反応や反応の分析、観察が行われることができる。ただし、このようなビアホール244の活用は、例示的なものであり、本発明が適用される実施例に応じて、流体チャネル240は、反応チャネルまたは反応チャンバーとして機能するビアホールを含まない場合もある。流体チャネル240を通過した流体は、流出部250を介してマイクロ流体チップ200の外部に排出されることができる。
【0029】
このように、複雑な流体の流れ経路及び相対的に広い面積が必要となる流体チャネル240を、基板210の表面を加工して基板210に形成することにより、マイクロ流体チップ200の小型化及び工程の簡素化を達成することができる。特に、複数の基板を接合することによって発生する基板間の接合及びアライメント問題を解決することができる。
【0030】
一実施例において、流体チャネル240は、分岐チャネル及び/又は結合チャネルを含むことができる。分岐チャネルは、任意のチャネルが複数の他のチャネルに分離されるものであり、任意のチャネルに流れる流体が同じ性質を有する複数の流体に分離することができる。結合チャネルは、複数のチャネルが1つのチャネルに合流するものであり、複数のチャネルにそれぞれ流れる複数の流体が1つの流体に合流することができる。分岐チャネル及び/又は結合チャネルは、流体チャネル240のうち上部流体チャネル及び/又は下部流体チャネルによって具現することができる。特に、流体チャネル240は、下記で詳細に説明するように、分岐チャネルと結合チャネルの組み合わせによって具現される濃度勾配チャネルを含むことができる。ここで、濃度勾配チャネルは、一つ以上のチャネルがさらに一つ以上のチャネルに分岐され、分岐されたチャネルの一部が互いに結合して新しいチャネルを形成する過程を繰り返しながら、チャネルを通過する流体が結合及び分岐することができる様々な経路を形成することで、流体の濃度勾配を提供することができる。
【0031】
また、実施例に応じて、流体チャネル240は、下記で詳細に説明するように、流体に含まれている気泡が所定の領域内に位置することを防止するための気泡除去部(図3の310及び図4の410参照)をさらに含むことができる。気泡除去部は、流体チャネル240内のさまざまな位置で様々な用途に利用することができる。例えば、流体チャネル240は、流体チャネル240内に行われる各種の反応(例えば、PCR反応など)の産物を測定するための光測定領域を含むことができ、この場合、気泡除去部は、流体に含まれている気泡が光測定領域内に位置することを防止できるように形成することができる。
【0032】
また、実施例に応じて、基板210の表面の一部(好ましくは、流入部230、流体チャネル240及び流出部250のうち少なくとも1つ)に表面処理が行われることができる。例えば、表面上にDNA、タンパク質(protein)吸着を防止するためにシラン(silane)系、ウシ血清アルブミン(Bovine Serum Albumin、BSA)などの物質でコーティングすることができ、このような表面処理は、当該技術分野における公知の様々な技術に基づいて行うことができる。
【0033】
また、実施例に応じて、流入部230及び流出部250には、別途のカバー手段(図示せず)が備えられることで、流入部230及び流出部250に因るマイクロ流体チップ 200の内部の汚染を防止したり、マイクロ流体チップ200に注入された流体の漏れなどを防止することができる。このようなカバー手段は、様々な形状、サイズまたは材質で具現することができる。
【0034】
図2に示すマイクロ流体チップ200の形状や構造は、例示的なものであり、本発明が適用される実施例に応じて様々な形状や構造のマイクロ流体チップが用いられる。
【0035】
図3は、本発明の他の実施形態に係るマイクロ流体チップを示す。
【0036】
具体的には、図3の上部では、マイクロ流体チップ300の平面図を示し、図3の下部では、マイクロ流体チップ300のA−A’線における断面図を示す。
【0037】
図3を参照すると、マイクロ流体チップ300の流体チャネル240は、気泡除去部310を含むことができる。気泡除去部310は、流体に含まれている気泡が流体チャネル240内の所定の領域内に位置することを防止するためのもので、同図に示すように、基板210の上部内面から下方に向けて突設されることができる。
【0038】
流体チャネル240は、流体チャネル240内に行われる任意の反応の産物を測定するための光測定領域(すなわち、反応産物から放出される光信号が検出される流体チャネル240上の領域)を含むことができ、この時、気泡除去部310は、流体に含まれている気泡が光測定領域内に位置することを防止するように形成することができる。これにより、気泡除去部310は、光測定領域で感知される光信号に対する感知妨害要素を除去することができる。具体的には、気泡除去部310が基板210の上部内面から流体チャネル240の内側に突出するので、流体内に含まれている気泡は、浮力により気泡除去部310における光測定領域(すなわち、気泡除去部310の突出部のうちの平坦領域)の周辺領域へ押し出されて周囲空間に配置されることになる。つまり、気泡は、光測定領域から外部に離脱するようになり、このため、光測定領域に存在する反応産物から放出される光信号の感度に影響を及ぼさないようになる。特に、基板210の少なくとも一部、すなわち気泡除去部310は、光透過性材質からなり、気泡除去部310が光測定領域内に含まれるように構成することができ、これにより、光測定領域内の反応産物から発生する光信号は、気泡除去部310を通過して、感度低下なくマイクロ流体チップの外部に放出されることができる。このように、マイクロ流体チップを用いて流体チャネル240内の反応産物を測定する場合、マイクロ流体チップの極小型化にもかかわらず、流体チャネル240内に発生した気泡の影響を受けないようにされて光信号感度が非常に上がり、その結果、多数の少量の反応産物を同時に迅速で正確に測定できるようになる。このような気泡除去部310の使用は、例示的なものであり、本発明が適用される実施例に応じて気泡除去部310を様々な用途に活用することができる。例えば、気泡除去部310は、流体チャネル240を介した流体の移動中に流体に含まれている気泡を流体の流れから除去するために用いられる。
【0039】
図3に示す気泡除去部310の形状は、例示的なものであり、これに限定されるものではなく、本発明の実施例に応じて多様に変形して適用することができる。例えば、図3には円柱状の気泡除去部310が示されているが、四角柱などの他の形状の気泡除去部を使用することができる。
【0040】
図4は、本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップを示す。
【0041】
具体的には、図4の上部では、マイクロ流体チップ400の平面図を示し、図4の下部では、マイクロ流体チップ300のA−A’線における断面図を示す。
【0042】
図4を参照すると、気泡除去部410は、気泡除去部410の中央に形成される平坦面412と、平坦面412の周囲から延長されてマイクロ流体チップ400の上部の内面と接続される傾斜面414と、からなり得る。このように、気泡除去部410の側面が傾斜面414からなる場合、気泡が傾斜面414に沿って流体チャネル240の上側に移動可能であるため、気泡が気泡除去部410の周辺空間へより容易に移動配置されることができる。
【0043】
図3及び図4に示されていないが、実施例に応じて、気泡除去部310、410は、気泡除去部310、410の周囲に沿って基板210の上部内面が上側に陥没して形成される気泡捕集部をさらに含むことができる。気泡捕集部は、気泡捕集部以外の領域に比べて、相対的に流体チャネル240の上側に位置するので、気泡除去部310、410から押し出された気泡は、気泡捕集部に捕集することができる。
【0044】
本発明の一実施例に応じて、分析装置が提供できる。分析装置は、図2乃至図5を参照して、上述した本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップ200、300、400、500と、光測定モジュールと、を含むことができる。光測定モジュールは、マイクロ流体チップ200、300、400、500内の反応産物を(例えば、リアルタイムで)測定するために、マイクロ流体チップ200、300、400、500に光を照射し、光測定領域から放出される光信号を検出する装置であり、本発明が属する技術分野で適用可能な様々な光測定モジュールが使用できる。例えば、光測定モジュールは、マイクロ流体チップ200、300、400、500の流体チャネルに光を提供するように配置された光源と、流体チャネルから放出される光を受け入れるように配置された光検出部と、を含むことができ、光源と光検出部は、流体チャネルを挟んで配置されるか(透過型方式)、または流体チャネル240の一方向に両方配置することができる(反射型方式)。
【0045】
図5は、本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップの製造方法を示し、図6及び図7は、本発明の一実施例に係るマイクロ流体チップの製造方法を工程別に示す。
【0046】
図5に係る方法は、図2乃至図4に示すマイクロ流体チップ200、300、400を製造するためのものであり、図5の方法に基づいて図6及び図7の製造工程を説明すると、以下の通りである。
【0047】
まず、図5を参照すると、流入部230、流体チャネル240及び流出部250を含む基板210を形成することができる(S510ステップ)。これに関連して、図6の(a)は、流入部230、流体チャネル240及び流出部250を含む基板210の斜視図を示し、図6の(b)は、図6の(a)に示す基板210のA−A’線における断面図を示す。同図に示すように、基板210の流入部230、流体チャネル240及び流出部250は、基板210の表面(すなわち、上面及び/又は下面)から陥没して形成されるか、基板210を貫通して形成されることができる。
【0048】
S510のステップは、当該技術分野で適用可能な様々な製造技法を用いて行うことができる。例えば、S510のステップは、基板210の表面をエッチングすることにより行うことができ、このようなエッチングには、機械的、化学的方式などの様々なエッチング技術が用いられる。例えば、S510のステップは、射出成形、圧縮成形などの様々な成形技術によって行うことができる。
【0049】
続いて、基板210の表面にフィルム220を貼り付けることができる(S520ステップ)。これに関連して、図7の(a)では、基板210及び基板210に貼り付けられたフィルム220の斜視図を示し、図7の(b)では、図7の(a)に示す基板210及びフィルム220のA−A’線における断面図を示す。図7の(a)及び(b)を参照すると、S520のステップは、基板210の上部表面にフィルム222を貼り付け、基板210の下部表面にフィルム224を貼り付けることにより行うことができ、これにより、S510ステップにおいて基板210上に形成された流入部230、流体チャネル240及び流出部250のうちの少なくとも一部が外部から閉鎖できる。S520のステップは、例えば、熱接合、超音波接合、紫外線接合、溶媒接合、テープ接合などの当該分野で適用可能な様々な接合方法によって行うことができる。
【0050】
図6及び図7に示すマイクロ流体チップの形状と構造は、例示的なものであり、本発明が適用される実施例に応じて様々な形状や構造のマイクロ流体チップが用いられる。
【0051】
以上のように図面及び明細書で最適の実施形態が開示された。ここで特定の用語が使われたが、これは単に本発明を説明するための目的で使われたものであり、意味限定や特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限するために使われたものではない。したがって、 本技術分野の通常の知識を有する者であれば、これより多様な変形及び均等な他の実施例が可能であるという点を理解できるであろう。したがって、本発明の真の技術的保護範囲は、添付された特許請求の範囲の技術的思想により定められねばならない。
【符号の説明】
【0052】
200 マイクロ流体チップ
210 基板
220 フィルム
222 第1のフィルム
224 第2のフィルム
230 流入部
240 流体チャネル
242 下部流体チャネル
244 ビアホール
246 上部流体チャネル
250 流出部
300 マイクロ流体チップ
310 気泡除去部
400 マイクロ流体チップ
410 気泡除去部
412 平坦面
414 傾斜面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7