(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676616
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】二焦点懐中電灯
(51)【国際特許分類】
F21L 4/00 20060101AFI20200330BHJP
F21V 5/04 20060101ALI20200330BHJP
F21V 5/00 20180101ALI20200330BHJP
F21V 23/04 20060101ALI20200330BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20200330BHJP
【FI】
F21L4/00 411
F21V5/04 100
F21V5/00 510
F21V5/00 320
F21V23/04 130
F21Y115:10
【請求項の数】23
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-505543(P2017-505543)
(86)(22)【出願日】2015年7月30日
(65)【公表番号】特表2017-523578(P2017-523578A)
(43)【公表日】2017年8月17日
(86)【国際出願番号】US2015042946
(87)【国際公開番号】WO2016019162
(87)【国際公開日】20160204
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】62/032,470
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】62/078,910
(32)【優先日】2014年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512021922
【氏名又は名称】コースト カトラリー カンパニー
【氏名又は名称原語表記】Coast Cutlery Company
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100091214
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 進介
(72)【発明者】
【氏名】ウィンダム,グレゴリー,デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】チュー,カム,フー
(72)【発明者】
【氏名】シ,ハイ,ロン
(72)【発明者】
【氏名】ディン,チャオ,ジュン
(72)【発明者】
【氏名】フェン,シャオ,ジエン
(72)【発明者】
【氏名】レオン,キン,パク
【審査官】
當間 庸裕
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2004/0130891(US,A1)
【文献】
特開2005−108555(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3101074(JP,U)
【文献】
特表2013−544431(JP,A)
【文献】
特開2007−052957(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0073783(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21L 4/00
F21V 5/00
F21V 5/04
F21V 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二焦点懐中電灯であって、
筐体部材と、
幾何学的中心点を有するレンズであって、該レンズは、
光ビームをスポットビームに整形するように適合されるとともに、該レンズの幾何学的中心点から第1の距離離れた第1のフォーカス素子、及び
光ビームをフラッドビームに整形するように適合されるとともに、該レンズの幾何学的中心点から第2の距離離れた第2のフォーカス素子、
を含むレンズと、
光を前記第1のフォーカス素子に通すように配置された第1のLEDと、
光を前記第2のフォーカス素子に通すように配置された第2のLEDと、
前記筐体部材内に配置されるとともに、前記第1のLED及び前記第2のLEDに電力を提供するように適合された電源と、
前記第1のLED、前記第2のLED又は前記第1のLED及び前記第2のLEDの双方に電力を選択的に提供するように構成された制御要素と、
を含み、
前記第1のLEDは前記第2のLEDよりもダイが小さく、前記第1のLEDと前記第1のフォーカス素子との間の距離は前記第2のLEDと前記第2のフォーカス素子との間の距離よりも大きい、懐中電灯。
【請求項2】
前記第1のフォーカス素子は中央フォーカス素子と、該中央フォーカス素子から延びるとともに、該中央フォーカス素子を取り囲む環状リング部とを含む、請求項1に記載の懐中電灯。
【請求項3】
前記中央フォーカス素子は平凸レンズ、凹凸レンズ又はメニスカスレンズを含む、請求項2に記載の懐中電灯。
【請求項4】
前記第2のフォーカス素子は平凸レンズ、凹凸レンズ又はメニスカスレンズを含む、請求項1に記載の懐中電灯。
【請求項5】
前記第1のフォーカス素子は、前記中央フォーカス素子から延びるとともに、前記第1のLEDの少なくとも一部を受容するための後方空隙を形成するように構成された側壁をさらに含む、請求項2に記載の懐中電灯。
【請求項6】
前記第2のフォーカス素子は、前記第2のフォーカス素子から延びるとともに、前記第2のLEDの少なくとも一部を受容するための後方空隙を形成するように構成された側壁をさらに含む、請求項2乃至5のいずれか一項に記載の懐中電灯。
【請求項7】
前記懐中電灯は、前記第1のLED及び前記第2のLEDが取り付けられるベース部材をさらに含む、請求項1に記載の懐中電灯。
【請求項8】
前記ベース部材は、前記第1のLEDを前記第1のフォーカス素子に対する位置に配置するように構成された第1の台座を含み、前記第1のLEDの位置は最適なスポットビームを生成するために選択される、請求項7に記載の懐中電灯。
【請求項9】
前記ベース部材は、前記第2のLEDを前記第2のフォーカス素子に対する位置に配置するように構成された第2の台座を含み、前記第2のLEDの位置は最適なフラッドビームを生成するために選択される、請求項7又は8に記載の懐中電灯。
【請求項10】
前記レンズの幾何学的中心点からの前記第1の距離と前記第2の距離とは実質的に同じであるか又は異なる、請求項1に記載の懐中電灯。
【請求項11】
前記制御要素はスイッチである、請求項1に記載の懐中電灯。
【請求項12】
前記スイッチを繰り返し作動させることで前記懐中電灯のモードが変更され、第1のモードは前記第1のLEDのみを作動させ、第2のモードは前記第2のLEDのみを作動させ、第3のモードは前記第1のLED及び前記第2のLEDの双方を作動させ、第4のモードは前記懐中電灯の電源をオフにする、請求項11に記載の懐中電灯。
【請求項13】
第1のLED及び第2のLEDを含む懐中電灯のための二焦点レンズであって、
幾何学的中心点と、
光ビームをスポットビームに整形するように適合されるとともに、当該レンズの幾何学的中心点から第1の距離離れた第1のフォーカス素子と、
光ビームをフラッドビームに整形するように適合されるとともに、当該レンズの幾何学的中心点から第2の距離離れた第2のフォーカス素子と、
を含み、
前記懐中電灯は前端と後端とを含み、前記第2のLEDは前記第1のLEDの前に配置されるか又は前記第2のフォーカス素子は前記第1のフォーカス素子の前に配置される、レンズ。
【請求項14】
前記第1のフォーカス素子は中央フォーカス素子と、該中央フォーカス素子から延びるとともに、該中央フォーカス素子を取り囲む環状リング部とを含む、請求項13に記載のレンズ。
【請求項15】
前記第2のフォーカス素子は平凸レンズ、凹凸レンズ又はメニスカスレンズを含む、請求項14に記載のレンズ。
【請求項16】
前記第1のフォーカス素子は、前記中央フォーカス素子から延びるとともに、第1のLEDの少なくとも一部を受容するための後方空隙を形成するように構成された側壁をさらに含む、請求項14に記載のレンズ。
【請求項17】
前記第2のフォーカス素子は、前記第2のフォーカス素子から延びるとともに、第2のLEDの少なくとも一部を受容するための後方空隙を形成するように構成された側壁をさらに含む、請求項16に記載のレンズ。
【請求項18】
前記第2のLED及び前記第2のフォーカス素子はそれぞれ前記第1のLED及び前記第1のフォーカス素子の前に配置されている、請求項13に記載のレンズ。
【請求項19】
前記第1の距離と前記第2の距離とは互いに異なる、請求項13に記載のレンズ。
【請求項20】
前記第1の距離及び前記第2の距離は同じである、請求項13に記載のレンズ。
【請求項21】
前記懐中電灯は前端と後端とを含み、前記第2のLEDは前記第1のLEDの前に配置されるか又は前記第2のフォーカス素子は前記第1のフォーカス素子の前に配置される、請求項1に記載の懐中電灯。
【請求項22】
前記第2のLED及び前記第2のフォーカス素子はそれぞれ前記第1のLED及び前記第1のフォーカス素子の前に配置されている、請求項21に記載の懐中電灯。
【請求項23】
第1のLED及び第2のLEDを含む懐中電灯のための二焦点レンズであって、
幾何学的中心点と、
光ビームをスポットビームに整形するように適合されるとともに、当該レンズの幾何学的中心点から第1の距離離れた第1のフォーカス素子と、
光ビームをフラッドビームに整形するように適合されるとともに、当該レンズの幾何学的中心点から第2の距離離れた第2のフォーカス素子と、
を含み、
当該レンズが前記懐中電灯で用いられた場合、前記第1のフォーカス素子及び前記第2のフォーカス素子は前記第1のLED及び前記第2のLEDにそれぞれ対応し、前記第1のLEDと前記第1のフォーカス素子との間の距離は、前記第2のLEDと前記第2のフォーカス素子との間の距離よりも大きい、レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、「フラッド/スポット懐中電灯」と題する2014年8月1日出願の米国仮特許出願第62/032470号の優先権を主張する。係る出願の開示は参照により本願に全体的に組み込まれる。
【0002】
本開示は、異なる焦点距離及び/又はビーム幅を有するビームを出射する、懐中電灯等の二焦点(dual-focus)携帯型照明装置に関する。
【背景技術】
【0003】
フラッドビーム(flood beam)からナロービームまで又はナロービームからフラッドビームまでの連続した範囲のビーム幅及び/又は焦点距離で光ビームの調整が可能な懐中電灯が製造されてきた。しかしながら、そのようなシステムではフラッドビームの光出力又はスポットビームの狭い集光(例えばビーム距離)のいずれかが犠牲になるのが一般的である。例えば、スポットビームで長いビーム距離を実現するためにはフラッドの明るさが犠牲になり得るか又はフラッドモードでより多くの光出力を実現するためにはスポットビームのビーム距離が犠牲になるか又はその両方である。
【図面の簡単な説明】
【0004】
添付の図面と併せて下記の詳細な説明により実施形態を容易に理解できる。実施形態は例示に過ぎず、添付の図面の図に何ら限定されるものではない。
【
図1】
図1は、二焦点懐中電灯の正面斜視図を示し、懐中電灯は2つの別個のフォーカス素子が配置された単一のレンズを有し、各フォーカス素子はレンズの中心から僅かに離れている。
【
図2】
図2は、
図1の二焦点懐中電灯の部分断面図を示し、2つのフォーカス素子を通る部分断面図を示すとともに、2つの異なる強度を有する2つのLED光源を示し、2つのLEDのうちの一方は各フォーカス素子の後ろに配置され、各LEDはそれぞれのフォーカス素子から異なる距離のところに取り付けられている。
【
図3】
図3A及び
図3Bは、
図1の二焦点懐中電灯の斜視図(
図3A)及び断面図(
図3B)を示し、それぞれがレンズの中心から僅かに離れた2つのフォーカス素子を示す。
【
図4】
図4A及び
図4Bは、
図1の二焦点懐中電灯のレンズ及びベース部材の分解図(
図4A)及び斜視図(
図4B)であり、2つのフォーカス素子と、2つのLED光源が取り付けられたベース部材とを示す。
【
図5】
図5A及び
図5Bは、
図4のレンズ、ベース部材及びLEDの2つの断面図であり、フラッドフォーカス素子/LED(
図5A)及びスポットフォーカス素子/LED(
図5B)からの配光を示す。
【
図6】
図6A及び
図6Bは、全て様々な実施形態に係る3つのフォーカス素子を備えるレンズ及び4つのフォーカス素子を備えるレンズを有する懐中電灯の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明では、本願の一部を成すとともに、実施され得る実施形態を一例として示す添付の図面が参照される。なお、他の実施形態が利用されることがあり、実施形態の範囲から逸脱することなく構造的又は論理的な変更が加えられ得る。したがって、下記の詳細な説明を限定的に解釈するのではなく、実施形態の範囲は添付の特許請求の範囲及びその同等物によって定義される。
【0006】
実施形態の理解を助けるような形で様々な動作を複数の別個の動作として順番に説明し得る。しかしながら、説明する順番は、これらの動作が順番に依存することを含意すると解釈すべきでない。
【0007】
係る説明は、上/下、後ろ/前及び上面/底面等の斜視的な説明(perspective-based description)を使用することがある。そのような説明は解説を促進するために用いているに過ぎず、開示される実施形態の用途を制限すること意図するものではない。
【0008】
「連結された(coupled)」及び「接続された(connected)」という用語と共にそれらの派生語を用いることがある。なお、これらの用語はお互いの同意語であることを意図したものではない。むしろ、特定の実施形態では、「接続された」は2つ以上の要素が直接物理的又は電気的に接触し合うことを示すために用いられ得る。「連結された」は2つ以上の要素が直接物理的又は電気的に接触することを意味し得る。しかしながら、「連結された」は2つ以上の要素が互いに直接接触していないものの互いに協働又は相互作用することも意味し得る。
【0009】
説明を目的として、「A/B」の形を取るか又は「A及び/又はB」の形を取る語句は(A)、(B)又は(A及びB)を意味する。説明を目的として、「A、B及びCのうちの少なくとも1つ」という形を取る語句は(A)、(B)、(C)、(A及びB)、(A及びC)、(B及びC)又は(A、B及びC)を意味する。説明を目的として、「(A)B」という形を取る語句は(B)又は(AB)を意味する。即ち、Aは選択的要素である。
【0010】
説明では、「実施形態」又は「複数の実施形態」という用語を用いることがあり、それらはそれぞれ同じか又は異なる実施形態のうちの1つ以上を意味し得る。さらに、実施形態に関連して用いられる「含む(comprising)」、「含有する(including)」及び「有する(having)」等の用語は同意語である。
【0011】
本明細書の実施形態は、フラッドビーム及びスポットビームの双方の光出力及びビームフォーカスを最適化する、懐中電灯等の携帯型照明装置を可能にする光学システムを提供する。フラッドビームからスポットビームに又はその逆にビームのフォーカスを変更するために光学系と光源との間の距離を調整できる数多くの懐中電灯が市場に存在する。しかしながら、これらの照明システムには様々な限界がある。一部の懐中電灯は、スポットビーム構成におけるビーム距離を犠牲にしてフラッドビームの光出力(例えばルーメン)の最適化を求める。他の懐中電灯はスポット位置におけるビーム距離の最適化を求めるが、フラッド位置での光出力が犠牲になる。さらに他のものは、最適なフラッド及び最適なスポット光をつくることの違いを分離するためにビーム距離及び光出力の双方を犠牲にする。
【0012】
これとは対照的に、本明細書で開示する照明システムの様々な実施形態は、1つがフラッドビーム用で1つがスポットビーム用である2つの別個のフォーカス素子(focusing elements)が配置された単一のレンズを含む。様々な実施形態では、2つのフォーカス素子のそれぞれはレンズの中心から僅かな距離離れており、それぞれはLED等の2つの光源のうちの1つの前に位置している。様々な実施形態では、フラッドビームフォーカス素子及びスポットビームフォーカス素子のそれぞれは単一の機能を行うように設計されている(例えば、スポット又はフラッドビームのフォーカスのいずれか)。例えば、様々な実施形態では、フラッドビームフォーカス素子は光ビームを広く一貫したフラッドビームに整形するように最適化され得る。様々な実施形態では、フラッドビームは広い領域に亘って明るい照明を提供し得る。様々な実施形態では、スポットビームフォーカス素子は光ビームをフォーカスさせて狭く明るいビームにするのに最適化され得る。様々な実施形態では、スポットビームは長距離移動し得る。
【0013】
様々な実施形態では、各光源のサイズも、選択された条件下(例えばフラッドビーム又はスポットビーム)で最適に実施されるように最適化され得る。様々な実施形態では、フラッドビームフォーカス素子と対を成すLED(例えば、フラッドビームLED)はスポットビームLEDに比べて「ダイ」又は光出射面のサイズが大きく、いくつかの実施形態では、スポットビームLEDよりも光出力の視角が広い及び/又は出射するルーメンが多い。様々な実施形態では、ダイが大きいLEDを用いることは広くて明るいビームへとより容易に分散されるより広くて明るい光を生成するのに役立つ。
【0014】
反対に、様々な実施形態では、スポットビームフォーカス素子と対を成すLED(例えばスポットビームLED)は(フラッドビームLEDに比べて)「ダイ」又は光出射面のサイズが小さく、フラッドビームLEDよりも光出力の視角が狭い及び/又は出射するルーメンが少ない。様々な実施形態では、スポットビームのために視角が小さいLEDを用いることは有用であり得る。何故なら光はよりタイトなビーム(tighter beam)でLEDを離れ、それによりそれがフォーカス素子を通過することでさらにタイトなビームに容易に整形できるからである。様々な実施形態では、より小さな「スポットビーム」LEDはより大きな「フラッドビーム」LEDよりも出射する光が少ないが、よりタイトな視角は光の強度がより強くより小さなビームに「詰め込まれている(packed)」ことを意味する。様々な実施形態では、より小さなLEDを用いても、「タイト」なスポットビームは、より明るくより大きいな「フラッド」LEDからの大きく広がったフラッドビームよりも長距離移動し得る。
【0015】
それに加えて、様々な実施形態では、より大きなレンズ内での各LEDとそれに対応するフォーカス素子との間の距離は最適なフラッドビーム又は最適なスポットビームを生成するため固定及び最適化され得る。例えば、各LEDは、懐中電灯内に設置された場合により大きな「フラッド」LEDを「フラッドビーム」フォーカス素子から僅かに離れた所に配置し、より小さい「スポットビーム」LEDを「スポットビーム」フォーカス素子から離れた所に配置するベース部材に配置され得る。様々な実施形態では、「スポットビーム」LEDをフォーカス素子からさらに後方に配置することは、「スポットビーム」フォーカス素子がスポットビームをタイトなビームに整形するようにできる。反対に、「フラッド」フォーカス素子をフォーカス素子から僅かに離れた所に配置することで、「フラッドビーム」フォーカス素子は広い範囲に亘ってフラッドビームを分散させることができる。
【0016】
そのため、様々な実施形態では、先行技術の装置の欠点を解消する二焦点懐中電灯を開示する。従来の単一焦点のLED懐中電灯では、1つのLEDがスポットビーム及びフラッドビームの双方のための光源としての役割を果たさなければならない。ダイが小さいLEDを有し、視角がタイトで光出力の合計が少ない懐中電灯において、結果として得られるスポットビームは明るくタイトで長距離移動し得るが、フラッドビームの幅及び光出力の合計が犠牲になり得る。反対に、ダイが大きいLEDを有し、視角が広く光出力の合計が高い懐中電灯では、フラッドビームは大きくルーメンレーティングの合計(total lumen rating)は大きいが、スポットビームの移動距離は小さく、サイズが大きく長距離の使用に適していない。本明細書で開示する二焦点懐中電灯はこれらの問題を解消し、最適なスポットビーム及び最適なフラッドビームの双方を生成し得る。
【0017】
本明細書で説明する二焦点懐中電灯の別の利点は、各光源とそのフォーカス素子との間の距離が固定されているため、それらはフォーカス調整機構を何ら含まない点である。したがって、様々な実施形態では、開示する懐中電灯には可動部がほとんどなく、その結果、それは既存のフォーカス懐中電灯よりも軽量及び/又は耐久性があり得る。それに加えて、様々な実施形態では、ユーザーはフラッド設定、スポット設定及び/又はデュアル設定(例えば懐中電灯の端部又は側部等の筐体の任意の便利な位置に位置し得る単一のボタン又はスイッチを押すことで両方のLEDが点灯し得る)の間で設定を切り替え得る。例えば、いくつかの実施形態では、ユーザーは懐中電灯をオンにして、単一の押しボタンを繰り返し作動させることで「スポット」及び「フラッド」モード(又は「スポット」、「フラッド」及び「デュアルソース」モード)を循環させる。他の実施形態では、「電源」、「スポット」、「フラッド」及び任意で「デュアルソース」(例えば、スポットLED及びフラッドLEDの双方を同時にオンする)のために別個のボタン又は他の制御要素が設けられ得る。
【0018】
図1は二焦点懐中電灯の正面斜視図を示す。様々な実施形態によれば、懐中電灯は2つの別個のフォーカス素子が配置された単一のレンズを有し、各フォーカス素子はレンズの中央から僅かにオフセットされている。図示の実施形態では、懐中電灯100は、一端に単一のレンズ104を備える従来の又は伝統的な細長い筐体102を有し得る。様々な実施形態では、レンズ104は2つの別個のフォーカス素子106a、106bを含み、スポットビームフォーカス素子106aで光ビームをスポットビームに整形するか又はフラッドビームフォーカス素子106bで光ビームをフラッドビームに整形する。レンズ104を円形のものとして図示しているが、当業者であれば四角形、楕円形又は三日月形等の他の形態を取り得ることが分かる。
【0019】
様々な実施形態では、スポットフォーカス素子106a及びフラッドフォーカス素子106bの双方はレンズ104の中心点から僅かに離れていてもよい。図示の実施形態は、2つのフォーカス素子106a、106bがレンズ104の幾何学的中心点から離れている距離が僅かに異なっていることを示すが、他の実施形態では、それらはレンズ104の幾何学的中心点から離れている距離は略同じである。それに加えて、2つのフォーカス素子106a、106bをサイズが異なるものとして図示しているが、他の実施形態では、それらは実質的に同様の直径を有し得る。
【0020】
図2は、様々な実施形態に係る、
図1の二焦点懐中電灯の部分断面図を示す。図示の実施形態では、2つのフォーカス素子106a、106bのそれぞれを通じて部分断面図を見ることができ、それぞれが異なる強度を有する2つのLED光源110a、110bがレンズ104の直ぐ後ろに位置している。様々な実施形態では、スポットビームLED110aはスポットビームフォーカス素子106aの後ろに置かれ、フラッドビームLED110bはフラッドビームフォーカス素子106bの後ろに置かれ得る。様々な実施形態では、スポットビームLED110aはフラッドビームLED110bに比べてダイが小さく視角が狭い。フラッドビームLED110bはダイがより大きく視角が広い。様々な実施形態では、これらのサイズ、視角及び明るさ(例えばルーメン)における違いは異なるフォーカス素子106a、106bと協力してビーム距離が長いタイトなスポットビーム及び明るく広いフラッドビームを生成する。
【0021】
様々な実施形態では、2つのLED110a、110bは、2つのLED110a、110bのそれぞれを各フォーカス素子106a、106bの後ろの最適なフォーカス距離に配置するように構成された2つの台座112a、112bを含み得るベース部材108に取り付けられて、最適なスポットビーム及び最適なフラッドビームを生成する。図示の実施形態では、スポットビームフォーカス素子106aとスポットビームLED110aとの間の距離はフラッドビームフォーカス素子106bとフラッドビームLED110bとの間の距離よりも大きい。様々な実施形態では、この間隔の違いは少なくとも部分的にスポットビームフォーカス素子106aとフラッドビームフォーカス素子106bとの光学系の違いに起因し得る。
【0022】
図3A及び
図3Bは、様々な実施形態に係る、
図1の二焦点懐中電灯のレンズの斜視図(
図3A)及び断面図(
図3B)を示し、それぞれがレンズの中央から僅かに離れた2つのフォーカス素子を示す。図示の実施形態では、レンズ104は2つのフォーカス素子106a、106bを含み、様々な実施形態では、フラッドビームフォーカス素子106bは光を広いビーム内に分散するように適合された平凸レンズ、両凸レンズ、凹凸レンズ又はメニスカスレンズを含み得る。フラッドビームフォーカス素子106bを概して円形のものとして図示しているが、いくつかの実施形態ではフラッドビームフォーカス素子106bは楕円又は細長い形状を有し得る。例えば、自動車、オートバイ又は自転車のヘッドライト等のいくつかの用途では、照明を必要としない上方に光を送って光を無駄にするよりも、ユーザーの周辺視野の側の外に広がるように光ビームを整形することが有利であり得る。いくつかの用途では、楕円形ビームは従来の円形ビームよりも人間の通常の視界に形状が近い場合がある。
【0023】
図3Bで最も良く示すように、様々な実施形態では、スポットビームフォーカス素子106aは、光をフォーカスさせて狭くタイトなビームにするために協働する中央フォーカス素子114と環状リング部116とを有するより複雑なレンズであり得る。様々な実施形態では、中央フォーカス素子114は平凸レンズ、両凸レンズ、凹凸レンズ又はメニスカスレンズであり得る。
【0024】
いくつかの実施形態では、スポットビームフォーカス素子106a及びフラッドビームフォーカス素子106bのうちのいずれか又は双方はLED及び/又は台座のうちの少なくとも一部を受容するように適合され得る後方空隙118a、118bを含み得る。様々な実施形態では、スポットビームは内反射を用いて光を「集めて」、それを前方に反射させ得る。例えば、光線は中央フォーカス素子を通過し、その後レンズの環状部の内側壁又は外側壁により狭くフォーカスされたビームにおいて前方に反射され得る。この特徴は
図5Bで最良の形で図示され、下記でより詳細に説明する。
【0025】
図4A及び
図4Bは、様々な実施形態に係る、
図1の二焦点懐中電灯の分解図(
図4A)及び斜視図(
図4B)を示し、2つのフォーカス素子と、2つのLED光源が取り付けられたベース部材とを示す。いくつかの実施形態では、レンズ104は、LED110a、110b及び/又は台座112a、112bの少なくとも一部を受容するために適合され得る後方空隙118a、118bを含み得る。
【0026】
図5A及び
図5Bは、様々な実施形態に係る、
図4のレンズ、ベース部材及びLEDの2つの断面図であり、フラッドフォーカス素子/LED(
図5A)及びスポットフォーカス素子/LED(
図5B)からの配光を示す。
図5Aに示すように、フラッドビームLED110bからの光がレンズ104のフラッドビームフォーカス素子106bを通過すると、フラッドビームフォーカス素子106bは係る光を幅広で明るいフラッドビーム120bに向ける。
図5Bに示すように、スポットビームLED110aからの光がレンズ104のスポットビームフォーカス素子106aを通過すると、スポットビームフォーカス素子106aの中央フォーカス素子114と環状リング部116とが協働して光をタイトで狭いスポットビーム120aに向ける。いくつかの実施形態では、環状リング部は環状リング部116の内側壁116aから前方方向に光を反射し得るのに対して、他の実施形態では、環状リング部は外側壁116b又は両方から前方方向に光を反射し得る。
【0027】
当業者であれば、いくつかの状況では、例えば長距離ビームが必要な場合にスポットビームLED及びフラッドビームLEDの双方を同時に点灯させることが望ましい場合があるが近接場の一般的な照明も望ましいことが分かる。これらの場合、スポットビームLED及びフラッドビームLEDの双方が同時に点灯され得る。それに加えて、
図6A及び
図6Bに示すように、様々な実施形態では、レンズ104は3つ(
図6A)又は4つの別個のフォーカス素子106a、106b、106c及び106d(光ビームをスポットビームに整形するためのスポットビームフォーカス素子106a、光ビームをフラッドビームに整形するためのフラッドビームフォーカス素子106b)及び第3(及び任意で第4又はそれ以上)の光源からの光ビームを整形するための追加のフォーカス素子を含み得る。フォーカス素子106c及び106dをフラッドビームフォーカス素子として図示しているが、当業者であれば追加のスポットビームフォーカス素子又はよりシンプルな反射体で置換してもよいことが分かる。様々な実施形態では、追加の光源は赤、青、緑又は紫外線LED等のカラーLEDであり得るか又はそれらは赤外線LEDであり得る。例えば、様々な実施形態では、赤外線LEDは暗視ゴーグルと共に使用され得る。
【0028】
本明細書で特定の実施形態を説明及び記載してきたが、図示説明した実施形態は、その範囲から逸脱することなく同じ目的を実現するために計算された多種多様な代替的な及び/又は同等の実施形態若しくは実施で置換され得ることが当業者には分かる。当業者であれば、実施形態は多種多様な方法で容易に実施され得ることが分かる。本願は、本明細書で解説した実施形態の任意の改作又は変更を含むことを意図する。したがって、実施形態は特許請求の範囲及びその同等物によってのみ限定されることは明らかである。