(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676618
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】複数弾発射型電動ガン
(51)【国際特許分類】
F41B 11/71 20130101AFI20200330BHJP
F41B 11/55 20130101ALI20200330BHJP
F41B 11/642 20130101ALI20200330BHJP
F41B 11/646 20130101ALI20200330BHJP
F41B 11/723 20130101ALI20200330BHJP
A63H 33/18 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
F41B11/71
F41B11/55
F41B11/642
F41B11/646
F41B11/723
A63H33/18 D
【請求項の数】5
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-507219(P2017-507219)
(86)(22)【出願日】2015年3月24日
(86)【国際出願番号】JP2015058934
(87)【国際公開番号】WO2016151763
(87)【国際公開日】20160929
【審査請求日】2018年3月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】592153584
【氏名又は名称】株式会社東京マルイ
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】岩澤 巌
【審査官】
志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】
特開平11−094495(JP,A)
【文献】
特開平03−221793(JP,A)
【文献】
特開2013−083403(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2010/0065032(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F41B 11/00 − 11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個のバレルを有し、各バレルの装弾部に配置された弾丸を発射するために各弾丸にエアを噴射する電動式の圧縮エア生成部を備えた電動ガンであって、 圧縮エア生成部として、複数個のバレルの後部に位置し、エア噴射ノズルを先端に有し、内部をピストンが往復運動する複数個のシリンダーを有するシリンダーアセンブリーと、 各シリンダー内にて往復運動し圧縮エアを生成する複数個の上記ピストンを有し、複数個のピストンを後方の結合部にて一か所にまとめ、また、往復運動方向に沿ったラックを有する1個のピストン軸を結合部と一体に設けたピストンアセンブリーと、 上記ピストンアセンブリーを後退させるとともに弾性部材を蓄圧し、蓄圧の解放によりエアを圧縮するために、ラックと噛合う出力ギヤを駆動する電動機構とを備え、
前記複数個のピストンは、結合部に融通性をもって結合され、それによりピストンとシリンダー内壁面との間のシール性能が維持されるように構成されている複数弾発射型電動ガン。
【請求項2】
複数個のバレルを有し、各バレルの装弾部に配置された弾丸を発射するために各弾丸にエアを噴射する電動式の圧縮エア生成部を備えた電動ガンであって、 圧縮エア生成部として、複数個のバレルの後部に位置し、エア噴射ノズルを先端に有し、内部をピストンが往復運動する複数個のシリンダーを有するシリンダーアセンブリーと、 各シリンダー内にて往復運動し圧縮エアを生成する複数個の上記ピストンを有し、複数個のピストンを後方の結合部にて一か所にまとめ、また、往復運動方向に沿ったラックを有する1個のピストン軸を結合部と一体に設けたピストンアセンブリーと、 上記ピストンアセンブリーを後退させるとともに弾性部材を蓄圧し、蓄圧の解放によりエアを圧縮するために、ラックと噛合う出力ギヤを駆動する電動機構とを備え、
前記シリンダーアセンブリーは、複数個のパイプ部材と、各パイプ部材を先端部にて固定する前部固定部材と、各パイプ部材後端部にて固定する後部固定部材を有して構成されており、前部固定部材にはエア噴射ノズルが設けられ、また、後部固定部材にはピストンの挿入口が開口している 複数弾発射型電動ガン。
【請求項3】
複数個のバレルを有し、各バレルの装弾部に配置された弾丸を発射するために各弾丸にエアを噴射する電動式の圧縮エア生成部を備えた電動ガンであって、 圧縮エア生成部として、複数個のバレルの後部に位置し、エア噴射ノズルを先端に有し、内部をピストンが往復運動する複数個のシリンダーを有するシリンダーアセンブリーと、 各シリンダー内にて往復運動し圧縮エアを生成する複数個の上記ピストンを有し、複数個のピストンを後方の結合部にて一か所にまとめ、また、往復運動方向に沿ったラックを有する1個のピストン軸を結合部と一体に設けたピストンアセンブリーと、 上記ピストンアセンブリーを後退させるとともに弾性部材を蓄圧し、蓄圧の解放によりエアを圧縮するために、ラックと噛合う出力ギヤを駆動する電動機構とを備え、
前記複数個のピストンは、3個のピストンを有し、前記複数個のシリンダーは、3個のシリンダーを有し、
前記ピストンアセンブリーは、前記3個のピストンから成り、前記シリンダーアセンブリーは、前記3個のシリンダーから成り、
前記ピストンアセンブリーは正面から見て三組が最密的に配置されることで三角形状に組み合わされ、その三組の中心部よりも下方にずれた位置関係を取る結合部を介してピストン軸が配置されており、下方にずれた部分の上部にラックが位置するように構成されている複数弾発射型電動ガン。
【請求項4】
前記複数個のピストンは、3個のピストンを有し、前記複数個のシリンダーは、3個のシリンダーを有し、
前記ピストンアセンブリーは、前記3個のピストンから成り、前記シリンダーアセンブリーは、前記3個のシリンダーから成り、
前記ピストンアセンブリーは正面から見て三組が最密的に配置されることで三角形状に組み合わされ、その三組の中心部よりも下方にずれた位置関係を取る結合部を介してピストン軸が配置されており、下方にずれた部分の上部にラックが位置するように構成されている 請求項1または2記載の複数弾発射型電動ガン。
【請求項5】
複数個のバレルを有し、各バレルの装弾部に配置された弾丸を発射するために各弾丸にエアを噴射する電動式の圧縮エア生成部を備えた電動ガンであって、 圧縮エア生成部として、複数個のバレルの後部に位置し、エア噴射ノズルを先端に有し、内部をピストンが往復運動する複数個のシリンダーを有するシリンダーアセンブリーと、 各シリンダー内にて往復運動し圧縮エアを生成する複数個の上記ピストンを有し、複数個のピストンを後方の結合部にて一か所にまとめ、また、往復運動方向に沿ったラックを有する1個のピストン軸を結合部と一体に設けたピストンアセンブリーと、 上記ピストンアセンブリーを後退させるとともに弾性部材を蓄圧し、蓄圧の解放によりエアを圧縮するために、ラックと噛合う出力ギヤを駆動する電動機構とを備え、
前記装弾部とエア噴射ノズルに接続されるインターノズルを有し、インターノズルはエア噴射ノズルに対して気密的に摺動可能であり、かつ、ピストン軸と係合して後退するノズルベースと一体的に設けられ、ノズルベースは上記後退に伴い弾丸供給路を開口して弾丸移動を許容したのち係合解除される係合部を有し、係合解除に伴って付勢手段により前進し、インターノズルの先端部にて装弾部に弾丸を押し込むように構成されている複数弾発射型電動ガン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数個のバレルを有し、各バレルから弾丸を発射するために各弾丸にエアを噴射する電動式の圧縮エア生成部を備えた電動ガンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
模擬銃と称される種類の銃には様々なタイプのものがあり、かつての趣味的な存在から変貌を遂げつつある。それは、模擬銃が火薬を用いず高い安全性を有すること、また、高品質、高精度に発達していることなどが評価された結果であると考えられる。模擬銃は、今や実銃を補完するものとして、警察、自衛隊における訓練用途等にも広く用いられている。この用途に適する模擬銃には、圧縮ガスを使用するガス銃、ピストンシリンダー機構により生成される圧縮エアを使用するエアガンなどがあり、エアガンには手動操作によるものの他、電動機構による電動ガンがある。
【0003】
本発明の目的の一つはこうした模擬銃の機能をより充実させることにあり、具体的には複数個のバレルから弾丸を連続発射することができる模擬銃を提供することにある。複数個のバレルから弾丸を発射する模擬銃それ自体はすでに公知である。しかし、複数個のバレルから弾丸を発射する従来の模擬銃は手動操作によるもののみであった。例えば、複数弾発射装置に関する特開2013−83403号、特開2013−76526号の発明はその例である。これらの模擬銃は発射の都度、撃発動作のために準備動作(コッキング)を行わなければならず、従って、連続発射には向いていない。
【0004】
これに対して、電動ガンはピストンシリンダー装置を用いてエアを圧縮し、圧縮エアを複数個のバレルから弾丸を発射するという方式である。しかし、この方式の場合、発射威力を比較的容易に変えることができるという問題があった。例えば、複数個のバレルの内のいずれかを塞ぐ改造が行なわれた場合、残されたバレルに全ての圧縮エアが集中することになる。模擬銃では、BB弾と呼ばれる6mmの弾丸を使用した場合、特定された測定点における運動エネルギーが3.5J/cm
2を超えないことと銃砲刀剣類所持等取締法第1条の2等の規定されている。しかし、上記改造がなされた場合、残りのバレルから発射された弾丸のエネルギーが上記規定値を超えないとは断言できない。
【0005】
電動機構を採用した模擬銃である電動ガンは、本願の出願人によって開発された特開平3−221793(特公平7−43238)号のオートマチック式エアガンに係る発明を嚆矢として発展したものである。この種の電動ガンは、本来は弾丸の連続発射を可能にするために開発されたもので、そもそもが、弾丸を順次発射する連発という発想に基づいており、従って、いわゆる電動ガンは常に1個の弾丸を連続発射するものであった。電動ガンは飽くまで1個の弾丸を連発するものであるという通念がメーカー側にもユーザー側にも存在し、これを複数弾発射装置に適用することは考えられたことがなかったのである。
【0006】
【特許文献1】特開2013−83403号
【特許文献2】特開2013−76526号
【特許文献3】特開平3−221793号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の実情に鑑みてなされたもので、その課題は、コッキング操作を必要とせずに、複数個の弾丸の連続発射を可能にした複数弾連続発射機能を備えた電動ガンを提供することである。また、本発明の他の課題は、いわゆる銃刀法の規定が順守されるように弾丸を複数個のバレルから常に同じ圧力で発射できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するため、本発明は、複数個のバレルを有し、各バレルから弾丸を発射するために各弾丸にエアを噴射する電動式の圧縮エア生成部を備えた電動ガンとして、圧縮エア生成部として、複数個のバレルの後部に位置し、内部をピストンが往復運動し、エア噴射ノズルを先端に有する複数個のシリンダーを有するシリンダーアセンブリーと、各シリンダー内にて往復運動し圧縮エアを生成する複数個の上記ピストンを有し、複数個のピストンを後方の結合部にて一か所にまとめ、また、往復運動方向に沿ったラックを有する1個のピストン軸を結合部と一体に設けたピストンアセンブリーと、上記ピストンアセンブリーを後退させるとともに弾性部材を蓄圧し、蓄圧の解放によりエアを圧縮するために、ラックと噛合う出力ギヤを駆動する電動機構とを備えて構成するという手段を講じたものである。
【0009】
本発明に係る電動ガンは、複数個のバレルから弾丸を発射するものであり、各1個のバレルから一回ごとに発射される弾丸の数は1個が基本である。つまり、1個のバレルから1個の弾丸を発射することが基本である点は従来の電動ガンの場合に共通する。しかし、バレルに装填する弾丸の数を切り替えられることは、前記特開2013−83403号の発明に記載されているとおりであるから、その構成を本発明に適用し1個のバレルから複数個の弾丸を発射することも技術的に可能な事柄である。
【0010】
本発明に係る電動ガンは、各弾丸にエアを噴射するために電動式の圧縮エア生成部を備えている。圧縮エア生成部として、本発明ではシリンダーアセンブリーと、ピストンアセンブリー及び電動機構を備えている。シリンダーアセンブリーとピストンアセンブリーは組合わさってピストンシリンダー機構を構成し、電動機構はピストンアセンブリーを駆動する。
【0011】
上記シリンダーアセンブリーは、複数個のバレルの後部に位置し、内部をピストンが往復運動し、エア噴射ノズルを先端に有する複数個のシリンダーから成る。本発明の装置として、シリンダーアセンブリーが複数個のシリンダーと、各シリンダーを先端部にて固定する前部固定部材と、各シリンダーを後端部にて固定する後部固定部材を有して構成されており、前部固定部材にはエア噴射ノズルが設けられ、また、後部固定部材にはピストンの挿入口が開口している構成は、好ましいものである。
【0012】
ピストンアセンブリーは、各シリンダー内にて往復運動し圧縮エアを生成する複数個の上記ピストンを有し、複数個のピストンを後方の結合部にて一か所にまとめ、また、往復運動方向に沿ったラックを有する1個のピストン軸を結合部と一体に設けた構成を有している。これにより、複数個のピストンが1個のピストン軸で往復運動するので、複数個のシリンダー内部で発生する圧力はそれぞれ独立しており、かつ、常にほぼ一定しているからバレルのいずれかが塞がれても残されたバレルの圧力が変化することはない。
【0013】
シリンダーアセンブリーは、複数個のパイプ部材と、各パイプ部材を先端部にて固定する前部固定部材と、各パイプ部材を後端部にて固定する後部固定部材を有して構成されており、前部固定部材にはエア噴射ノズルが設けられ、また、後部固定部材にはピストンの挿入口が開口しているという構成が取られる。これにより、パイプ部材と前部固定部材及び後部固定部材によりシリンダーアセンブリーを容易に形成することができる。
【0014】
ピストンシリンダー機構は三組から成り、ピストンアセンブリーは正面から見て三組が最密的に配置されることで三角形状に組み合わされ、その三組の中心部よりも下方にずれた位置関係を取る結合部を介してピストン軸が配置されており、下方にずれた部分の上部にラックが位置するようにした配置は好ましい構成である。正面から見て三角形に配置された範囲内にて下方にずれることによって、下方にずれた部分の上部に、ラックと噛合う構成を設けることができる。
また、装弾部とエア噴射ノズルに接続されるインターノズルを有し、インターノズルはエア噴射ノズルに対して気密的に摺動可能であり、かつ、ピストン軸と係合して後退するノズルベースと一体的に設けられ、ノズルベースは上記後退に伴い弾丸供給路を開口して弾丸移動を許容したのち係合解除される係合部を有し、係合解除に伴って付勢手段により前進し、インターノズルの先端部にて装弾部に弾丸を押し込むように構成されることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明は以上のように構成され、かつ、作用するものであるからコッキング操作を必要とせずに、複数個の弾丸の連続発射を可能にした複数弾連続発射機能を備えた電動ガンを提供することができる。また、本発明によれば、弾丸は複数個のバレルから常に同じ圧力で発射されるのでいわゆる銃刀法の規定が順守され、安全性の高い電動ガンを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
図1は本発明に係る複数弾発射型電動ガンGを示すもので、複数個の例として3個のバレル11、12、13を有しており、従って、圧縮エア生成部10は3個のシリンダー21、22、23から成るシリンダーアセンブリー20と、3個のピストン31、32、33から成るピストンアセンブリー30及びピストンアセンブリー30を駆動する電動機構40を有して構成されている(
図3以下参照)。
【0017】
バレル後部には装弾アセンブリー50が設けられ、その下部には着脱式のマガジン51が装着されている。装弾アセンブリー50において、3個のバレル11、12、13の後端内部にそれぞれ弾丸Bを配置する装弾部14が設定されており、装弾部14には弾道調節用のホップアップ機構15が設けられている。また、3個のバレル11、12、13の後端外部は接続パッキング16が覆っており、接続パッキング16はゴム等柔軟性素材を用いて形成されたシール性能を有するものから成る(
図2、
図6参照)。
【0018】
圧縮エア生成部10は、複数弾発射型電動ガンGにおいて各バレル11、12、13から弾丸Bを発射するために各弾丸Bに噴射するエアを生成する部分である。バレル自体は3個が正面から見て三角形状となるように組み合わされ、電動ガンGの内部にあってその後方には圧縮エア生成部10が配置されている。圧縮エア生成部10を構成する前記のシリンダーアセンブリー20、ピストンアセンブリー30及び電動機構40は、この順にてほぼ一直線状に配置されている。
【0019】
シリンダーアセンブリー20は、3個のバレル11、12、13の後部に位置し、エア噴射ノズル24を先端に有し、内部をピストン31、32、33が往復運動する3個のシリンダー21、22、23を有している。図示のシリンダーアセンブリー20は、3個のパイプ部材25と、各パイプ部材25を先端部にて固定する前部固定部材26と、各パイプ部材25を後端部にて固定する後部固定部材27を有して構成されている(
図3〜
図5参照)。
【0020】
上記エア噴射ノズル24は前部固定部材26に設けられており、後部固定部材27にはピストンの挿入口25aが開口している。噴射ノズル24は、パイプ取り付け部材25bの正面に設けられており、パイプ取り付け部材25bは前部固定部材26の後面に止め具25cにて取り付けられている。上記パイプ取り付け部材25bは、パイプ部材25の内部に嵌め合わされる位置関係にて、シール手段26aを用いて気密に組み立てられている(
図6)。
【0021】
図示の実施形態に示されているように、装弾部14とエア噴射ノズル24にはインターノズル28が接続され、ノズルベース29により前後方向へ移動可能に設けられている。インターノズル28は噴射ノズル24に対して気密的に摺動し、圧縮エア生成部10にて生成された圧縮エアを弾丸に噴射する位置にある。インターノズル28は、ノズルベース29の立ち上がり部29aに取り付けられ、模擬銃Gの本体に前進後退可能に組みこまれている。
【0022】
従って、インターノズル28は、後述するピストン31、32、33の後退動作に伴って、後述するラッチ部材49との係合により後退し、ノズルベース29に作用する付勢手段29bのバネにより前進する(
図2参照)。そして、その先端は接続パッキング16に対しても気密的に摺動し、接続パッキング16から離れて、弾丸Bがバレル後端部に押し上げられる隙間を開けるために後退し、その後、弾丸Bを装弾部14に押し込むために前進するように構成されている。
【0023】
上記エア噴射ノズル24は、3個のシリンダー21、22、23の各パイプ部材25、25、25の中心に寄った位置に設けられている。これは図示の例における複数個のバレル11、12、13が3個であるために、バレルよりも大径となるシリンダーパイプの中心と合わせることができないために取られた対策である。よって、エア噴射ノズル24の位置は、バレルとシリンダーパイプの中心の位置との関係から決められる。
【0024】
上記ピストンアセンブリー30は、各シリンダー21、22、23の内部を往復運動して圧縮エアを生成する3個のピストン31、32、33を有している。また、これら3個のピストン31、32、33は、後方の結合部34にて一か所にまとめられ、また、往復運動方向に沿ったラック36を有する1個のピストン軸35を結合部と一体に設けて構成されている。
【0025】
3個のピストン31、32、33は、結合部34に融通性をもって結合され、それによりピストン31、32、33とシリンダー内壁面との間のシール性能が維持されるように構成されている。つまり、ピストンシリンダー機構を構成するピストンとシリンダーは、それらの位置関係又は嵌合の精度の高い方が高圧縮率を得易く、それにはそれぞれの軸芯も高精度で一致していなければならない。しかし、或る程度の融通性を持たせることによって、過度の精度を必要とせずに、高い圧縮率を得ることができる。
【0026】
上記の融通性を与えるため、本発明ではピストン31、32、33を細長いロッド37の先端に設けるとともに、ロッド37の後方の結合部34にて可動的に軸止するという構成を取っている。図示の実施形態では、ピストン往復運動方向に対してロッド37を左右方向の支軸37aを用いて軸止し、ロッド37が上下方向へ可動であるように構成されている。なお、ピストン31、32、33には図示されたO−リングをシール部材38として用いて気密を維持している。
【0027】
ピストンシリンダー機構が三組から成る実施形態では、前記したようにピストンアセンブリー30は正面から見て三組が三角形状に組み合わされ、その三組の中心部よりも下方にずれた位置関係をもって結合部34にピストン軸35が配置されており、下方にずれた部分の上部にラック36が位置するように構成されている。このため、ラック36の位置が三組の中心部に近くなり、電動機構40の出力ギヤ41の配置空間39を稼ぐことができるとともに、出力ギヤ41による駆動力も、中心線上に近い位置から、より効率的に伝達されるようになる。
【0028】
上記電動機構40はピストンアセンブリー30を後退させるとともに弾性部材42を蓄圧し、蓄圧の解放によりエアを圧縮するために、ラック36と噛合う出力ギヤ41を駆動するように構成されている。詳細な
図9を参照して説明すると、43は電動機即ちモーター、44はその回転軸に取り付けたピニオン、45はそれと噛合う数段のギヤから成る減速歯車組を示しており出力ギヤ41はセクターギヤから成る。セクターギヤ41はラック36と噛み合ってピストンアセンブリー30を後退させる有歯部41aと、噛み合わずにピストンアセンブリー30を前進可能にする無歯部41bとを有している。
【0029】
ピストン軸35は中空構造を有し、中空内部のコイルばねとして示された弾性部材42によって前進方向へ付勢されている。上記コイルばねから成る弾性部材42は一端がピストン軸中空内部の前端に接し、他端は電動機構40内部に設けられているピストンの移動部46である空所の後端にて支えられる。47は凹凸構造から成るガイド部であり、ピストン軸35の側面長手方向に設けられ、銃本体側に設けられた凹凸構造から成る係合相手の突部47aと係合し、直進のガイドとして機能する(
図9参照)。
【0030】
本発明に係る複数弾発射型電動ガンGには、上記の他、図示しない電源電池や電源電池と電動機43を結ぶ回路、電源のオン・オフのためのスイッチ等、電動ガンとして作動上必要な機構が備わっているものとする。なお、符号18はスイッチ、19は3個のバレルを収めたアウターバレル、48は発射モード選択のためのセレクター、49は前に触れたラッチ部材を示す。ラッチ部材49はノズルベース29の後端に上下可能な係合手段として支軸29aにより軸止されており、ピストン軸35に設けられている係合相手部49aとの係合により後退可能であり、かつ、銃本体側に設けられている、解除部49bとの接触により上記係合を解除可能に構成されている。49cはバネを示しており、ラッチ部材49を係合相手部49aとの係合方向へ付勢する手段である(
図2参照)。なお、ノズルベース29には前方への付勢手段としてバネ29bが作用しており、供給された弾丸Bを装弾部14へ押し出すように構成されている。
【0031】
このように構成された本発明に係る複数弾発射型電動ガンGにおける作動を
図10、
図11を参照して説明する。
図10Aは、弾丸Bが装弾部14に装填されており、電源の入ったスタンバイ状態すなわち発射準備完了した状態を示している。この状態において、3個のピストン31、32、33は各シリンダー21、22、23の内部の前進位置にあり静止している。トリガー17を引けば作動させることができる(
図10Aでは1個のピストン31とシリンダー21の符号のみを示すが後の二つのピストン32、33、シリンダー22、23も一体的であり全く同様に作動する。)。
【0032】
トリガー17を引くとスイッチ18がオンになり、図示していない電気回路により電動機構40が作動状態になる。そこで、電動機43が作動しその回転軸が回転すると、減速歯車組45を介して末端の出力ギヤ41が回転を始め、出力ギヤ41と噛み合っているラック36が後退を開始する(
図10B参照)。3個のピストン31、32、33が各シリンダー21、22、23の内部にて後退することにより、それに伴って、弾性部材42の圧縮が開始される。
【0033】
出力ギヤ41の回転が進行すると、有歯部41aとラック36との噛み合いが外れることになるが、その直前が3個のピストン31、32、33の最大後退限界である。
図11Aはまさにその有歯部41aとラック36との噛み合いが外れかかっている状態を示している。また、この状態で弾性部材42は最大限度に圧縮された蓄圧状態にある。
【0034】
出力ギヤ41がさらに回転し無歯部41bに移ると、有歯部41aとラック36との噛み合いが外れ、弾性部材42の蓄圧が一挙に解放される(
図11B)。そのため、ピストンアセンブリー30が瞬時に前進に切り換わり、シリンダー21、22、23の内部の空気が圧縮され、3個の噴射ノズル24、24、24から3個の弾丸B、B、Bに向けて噴射される。その結果、全ての弾丸Bは各装弾部14に保持された状態を脱してバレル内部を移動し銃口から発射されることになる。
【0035】
3個のピストン31、32、33の前進状態では、シリンダー21、22、23に対して軸芯が傾斜しないことが重要である。本発明におけるピストンシリンダー機構の場合、3個のピストン31、32、33は、各ロッド37が支軸37aにより結合部34に融通性をもって結合されている。そのため、各ピストン31、32、33は全てのシリンダー内壁面との間にてシール性能が維持され、シール部材38、38、38により漏れが防止され完全な圧縮がなされる。
【0036】
図12は弾丸Bが装弾部14に装填される状態を示している。同図において、出力ギヤ41の回転に伴って後退するラック36とともにピストン軸35が後退し、ノズルベース29の後端に軸支されている、ラッチ部材49は係合相手部49aとの係合により後方へ連動されるようになる。ノズルベース29の後退と共にインターノズル28が後退することで、供給路51aが開口してマガジン51から装弾部14に通じるようになり(
図12A)、各1発の弾丸Bがマガジン51からの供給圧力により押し出される(
図6参照)。インターノズル28は所定距離後退すると後方にある解除部49bと接触し、上記係合相手部49aとの係合が外れて後退が止み、ノズルベース29に作用している付勢手段29bであるバネの反発力により前進に転じ、その結果、各1発ずつ弾丸Bが装填部14に送り込まれる(
図12B)。
【0037】
本発明はこのように構成されており、複数個のバレルの内のいずれかを塞ぐ改造が行なわれても、残されたバレルに全ての圧縮エアが集中することはなく、模擬銃について規定された6mmの弾丸を使用した場合、特定された測定点における運動エネルギーが3.5J/cm
2を超えないという銃砲刀剣類所持等取締法第1条の2等の規定が順守される。そして、いわゆる電動ガンは常に1個の弾丸を連続発射するものという通念を覆し、複数個の弾丸を連発することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】本発明に係る複数弾発射型電動ガンの一例を示す側面説明図である。
【
図2】同じく複数弾発射型電動ガンの要部を拡大して示す断面説明図である。
【
図3】同じくシリンダーアセンブリーとピストンアセンブリーを分解して示す斜視図である。
【
図4】同じくシリンダーアセンブリーを示すもので、Aは斜視図、Bは正面図、Cは背面図である。
【
図5】同じくシリンダーアセンブリーを示すもので、Aは側面図、Bは中央縦断面図である。
【
図6】同じくシリンダーアセンブリーから装弾アセンブリーへかけての部分を示す断面説明図である。
【
図7】同じくピストンアセンブリーを示すもので、Aは全体の斜視図、Bは正面図である。
【
図8】同じくピストンアセンブリーを示す側面図である。
【
図10】本発明に係る複数弾発射型電動ガンの作動を示すもので、Aは発射準備完了状態、Bはトリガーを引いた状態をそれぞれ示す断面説明図である。
【
図11】同じく複数弾発射型電動ガンの作動を示すもので、Aはピストンが開放される直前状態、Bは弾丸が発射された状態をそれぞれ示す断面説明図である。
【
図12】同じく複数弾発射型電動ガンの作動を示すもので、Aは弾丸が装弾部へ装填される際にインターノズルが後退する状態、Bは弾丸が装弾部へ押し込まれる状態をそれぞれ示す断面説明図である。
【符号の説明】
【0039】
10 圧縮エア生成部
11、12、13 バレル
14 装弾部
15 ホップ機構
16 接続パッキング
17 トリガー
18 スイッチ
19 アウターバレル
20 シリンダーアセンブリー
21、22、23 シリンダー
24 噴射ノズル
25 パイプ部材
26 前部固定部材
27 後部固定部材
28 インターノズル
29 ノズルベース
30 ピストンアセンブリー
31、32、33 ピストン
34 結合部
35 ピストン軸
36 ラック
37 ロッド
38 シール部材
39 ギヤ配置空間
40 電動機構
41 出力ギヤ
42 弾性部材
43 電動機
44 ピニオン
45 減速歯車組
46 ピストン移動部
47 ガイド溝
48 セレクター
49 ラッチ部材
50 装弾アセンブリー
51 マガジン