【実施例】
【0101】
(実施例)
(実施例1-推定情報化学物質の化学的同定)
60匹のサケ科魚の魚(サケ36匹及びニジマス24匹)を、トポグラフィーによる粘液分析及び血液分析の両方のために採取した。サケ12匹の相補的集団を、全身の粘液の採取のために使用する一方で、タラ(Gadidae)科に属する非サケ科の魚12匹も、同じ目的のために採取した。タラ科の集団は、下記の属及び種により構成される:
−タイセイヨウタラ(ガドゥス・モルファ(Gadus morhua)):5匹の魚
−ポラキウス・ビレンス(Pollachius virens):10匹の魚
−ポラキウス・ポラキウス(Pollachius pollachius):2匹の魚
−メラノグラムス・アエグレフィナス(Melanogrammus aeglefinus):1匹の魚。
【0102】
血液試料及び血液塗沫を含むこれらの試料全てを、化学的に分析した。これらの血液試料を、タンパク質、コルチゾール血漿レベル及び揮発性化合物について分析する一方で、血液塗沫を、偽好酸球(heterophile)対リンパ球比(HLR)及び白血球細胞について分析した。粘液試料の半分は、免疫学的評価及びタンパク質同定のために、-18℃で保存する一方で、残りの半分は、揮発性化合物の同定に使用した。
【0103】
血液塗沫は、白血球の計数のために、メイ-グルンワルド-ギムザ法に従い染色し、及び偽好酸球対リンパ球比(HLR)の算出を行った。基本的に、この方法は、メタノール中の血液塗沫の15分間の固定、メイ-グルンワルドによる5分間の染色、ギムザによる10分間の染色、pH6.8の緩衝液中のすすぎ、アセトン中の2回の脱水、キシレン中の3回の清澄化、並びに合計60個の細胞までの白血球、偽好酸球及びリンパ球の計数を伴った。
【0104】
これらの血液試料は、Enzo(登録商標)Life Sciencesからの、ELISA試験を使用し、コルチゾール血漿レベルの評価について試験した。
【0105】
揮発性化合物は、ジクロロメタンなどの、選択的水溶性又は脂溶性の異なる溶媒を使用し、最初に抽出した。かかる抽出物は、GC-GC/MS法を用いて分析した。クロマトグラム及びそれらの改変で更に分析した。
【0106】
現時点までに、考慮されてきた唯一の指標は、コルチゾールの血漿濃度であった。測定された値は、文献において公表された値と同等であった。にもかかわらず、いくつかの異常値が、特にサケから、得られた。
【0107】
サケにおいて、寄生生物を有さない魚と比較して、海シラミを保有する魚との間に有意差は存在しなかった。これら2群は、およそ100,000pg/mlと高濃度の血漿コルチゾールを示すが、これら2群の試料は、試料採取直前に解体された(slaughtered)魚から得られた。対照的に、ニジマスにおいては、外寄生していない魚(61,408.75pg/ml)と比べ、外寄生された魚はより高い血漿コルチゾール濃度(78,490.55pg/ml)を有している。
【0108】
サケにおいて差が存在しないことは、血液採取前の魚を解体することに関連しているかもしれない。
【0109】
血液試料及び粘液試料を、ジクロロメタンにより抽出し、且つPerkin Elmer社により製造されたTurbo質量分析計を使用するガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)に供した。検出は、180℃でエネルギー70eV(EI+)を使用する衝突で実施した。長さ30m(内径=0.25mm;膜厚(film)25μm、1/20のスプリット及び45秒のスプリット/スプリットレス)を有するJWカラムDB 5型を、使用した。
【0110】
GC/MS分析から得られた特定の分子の構造を確認するために、メタン中の正化学イオン化(CI+)を行い、分子ピーク(分子量)を可視化した。この方法は、当該技術分野において周知である。
【0111】
これらの結果を、データベースを用いて分析し、最も可能性のあるスペクトルを得た。これらのデータを含むデータベースは、当該技術分野において周知である。
【0112】
5種の可能性のある興味深い情報化学物質が、同定された。これらの情報化学物質を、以下に示す。
(ポラキウス由来の推定アロモン(PASA:ポラキウス抗海シラミアロモン))
この分泌は、スケトウダラ(ポラキウス・ビレンス)から得られた。これは、揮発性化合物の会合であり、これはサケ科魚には存在しない。この分泌は興味深く思われ、その理由は、これらの魚の集団は、サケ科魚が保存される木箱の周りに豊富に存在すると思われるからである。更に、これらの野生魚(それらのほとんどは、捕獲後にサケ用ペレットの吐出を示した)により失われるサケ飼料の消費、並びに飼料中及びサケ科魚の皮膚粘液中に既に存在する揮発性化合物がこれらの野生魚の皮膚粘液中に存在しているにもかかわらず、これらの魚は、海シラミにより攻撃されなかった。
【0113】
(健康なサケ科魚由来の推定アロモン(HRSA1及び2:健康な抵抗性サケ科魚アロモン1及び2))
外寄生されていないサケ及びニジマスの皮膚粘液中に、有効な免疫系により、コペポダイトが魚でコロニー化するのを避けることを補助し得る揮発性化合物の会合が、認められた。更に、生存している外寄生されないサケ又はマスの分析に対するこの化合物の会合を、外寄生された魚と比較することにおいて、この化合物の会合を、2つの亜群HRSA1とHRSA2に更に分割することが可能であった。
【0114】
(外寄生されたサケ科魚由来の推定カイロモン(VSSK:易攻撃性のサケ科魚海シラミカイロモン))
外寄生されたサケ及びニジマスの皮膚粘液において、不全化され且つ寄生生物に対し易攻撃性の免疫系を持つ魚をコペポダイトが選択することを補助し得る揮発性化合物の会合が、認められた。この分泌は、海シラミを保持する魚において増加する別の化学物質パターンから識別されるべきである。
【0115】
(推定海シラミ誘引フェロモン(LHSP:レペオフセイルス宿主シグナル伝達フェロモン))
この分泌は、宿主でのシラミの成長を達成した後に、シラミにより放出され得るか、又は海シラミにより誘導された、魚からの分泌であり得る。
【0116】
以後のスクリーニング試験全てに関して、これらの溶液は、ブラインドとされ、且つ推定アロモンについてはA、B、D、E、Fと、及び推定カイロモンについてはM、N、P、Q、R、Sとされた。これらの溶液は、下記実施例において説明される。
【0117】
(実施例2−推定情報化学物質のスクリーニング)
スマイリーチャンバー試験(
図2及び
図3)を、推定情報化学物質の作用の評価に使用した。これは、通常の嗅覚測定器から改作された試験である。
【0118】
各新規情報化学物質について、4個の600mlビーカー及び4本の長さ2mのチューブのセットに分けた。スマイリーチャンバー及びコペポダイト(cop)シリンダーを、暖かい新鮮な流水を用い30秒間洗浄し、温かい新鮮な水を流しながら界面活性剤で30秒間洗浄し、更に30秒間温かい新鮮な水を流し、チャンバーを空にし、且つチューブホルダー及びシリコーンに集中してチャンバー内に2-プロパノールを噴霧し、再度温かい新鮮な水を30秒間流し、水ディスペンサーから冷水を流し、且つ最後に海水を添加した。必要ならば、この洗浄プロトコールを、数回繰り返した。
【0119】
その後3個のビーカーに、海水300〜500mlを充填した。残りのビーカーには、6ppmの情報化学物質を充填した。スマイリーチャンバーには、海水300ml、又はチューブを覆うのに丁度十分な量を充填した。ポンプスピードは、20RPM(1分間に5.49ml)に設定した。これらのチューブは、チャンバーの対照側と試験側及びビーカー内で等しくなるように設定した。
【0120】
本実験を開始するために、コペポダイトシリンダーを、2個の出口チューブの中間に配置し、且つ手を使ってシリンダーに圧力をかけながら、コペポダイトを、シリンダーへと注いだ。コペポダイトが、確実にシリンダーから逃げられないことを、チェックした。発泡スチレン壁を、スマイリーチャンバーの周りに配置し、このチャンバーの上に配置した2個の照明をつけた。次にポンプのスイッチを入れ、且つタイマーを始動した。30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含有する物質A、並びに50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含有する物質Bの、チャンバーへの流入を38秒後に開始した。3分30秒後に、コペポダイトの入ったシリンダーを、まっすぐにゆっくりした動きで持ち上げ、カメラを蓋に配置した。写真を、T0、T3分、T6分、T9分及びT10分に撮影した。10分後に、ポンプを止め、実験を終了した。カメラ、蓋及び発泡スチレン壁を取り除き、対照側と試験側の間の活動の差異の目視による印象を観察し、更にコペポダイトを目視によりおおまかに計数した。このデータを、反応したコペポダイトが一方向に移動したかどうかを見るために、分析した。
【0121】
着色剤による本試験の観察は、6分後に片側から他側への還流が存在し、これはこれら2つの流れの混合に繋がることを示した。その理由に関して、評価の本質的パラメータは、T6分の写真であった。
【0122】
本プロトコールに従い、推定アロモンを、馴化水と競合して、試験した。この馴化水は、サケ粘液を混合した海水からなった。魚を傷つけること、又は試料を何らかの血液で汚染することを避けるために、粘液を、500gのサケを使い捨てプラスチックバッグ内に15秒間配置することにより得た。粘液は、プラスチックバッグの壁に付着し、且つ次にこの粘液を、海水600mlと混合した。この馴化水は、本試験に使用する前に、+4℃で貯蔵した。
【0123】
3種の推定カイロモンである、30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するE;30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%パルミチン酸を含有するQ;並びに、30%ラウリン酸、30%パルミチン酸及び40%オレイン酸を含有するR;並びに、2種の推定アロモンである、30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含有するA、並びに50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含有するBを試験した。馴化水による試験を使用し、試験に必要な適切な濃度を確定した。
【0124】
3種の試験したカイロモン中で、30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するEが、最も有効な化合物であり、これはまさに目視可能な誘引作用を示し、且つコペポダイトにおいて明確な振動(agitation)を誘導した。参照誘引物質であるイソホロンを対照として使用したことを考慮すると、30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するE溶液は、まさに同等の有効性を示した。30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%パルミチン酸を含有するQは、用途は広いが、同等の作用ではなかった。
【0125】
30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するEは、易攻撃性のサケから得られた推定カイロモンであるが、これは興味深いカイロモンであるように思われ、その有効性は、更なる試験時に確認されなければならない。
【0126】
前述のように、コードEは、推定カイロモン群VCCMIS(外寄生されたサケ科魚の皮膚粘液由来の揮発性化合物)に対応していた。
【0127】
アロモンである、30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含有するA並びに50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含有するBは、外寄生されたケージ内で生存している外寄生されないサケ及びマスの分泌液において同定され、馴化水と競って試験した。Bは、4回の反復実験において、いかなる目視可能な作用も示さなかった。対照的に、先に説明したように、Aは、若干の興味深い作用を示した。10回の2つ組実験を行い、そのうちの5回のみが有用なデータをもたらした。Aは、馴化水の誘引作用を阻害するように見えた。先に説明したように、Aは、推定アロモンHRSR(健康な抵抗性サケ科魚放出)群に属した。
【0128】
(実施例3−直線状嗅覚測定器によるスクリーニング)
この試験の目的は、コペポダイトの計数においてより優れた精度を伴う、より正確な結果を得ることであった。コペポダイトは制限された移動性を有するように見えるので、嗅覚測定器は、3つのコンパートメントに分割された小型装置を用い、単純化した(
図4)。このシステムは、情報化学物質を運搬する流れの対称性について最初に検証した(一つの流れは、溶媒としてエチルアルコールを使用する参照を伴い、及び一つの流れは、被験混合物を伴った)。このプロトコールの別の改善点は、嗅覚測定器に導入されたコペポダイトの数及び各コンパートメントで計数されたコペポダイトの数が、正確に計数されることが確かである計数方法の開発であった。
【0129】
コペポダイトを計数するために、最初に、飼育タンクからコペポダイトを採取して、ドロップへ分割し、ELISA型プラスチックプレートのウェル内に配置した。実体顕微鏡を使用し、コペポダイトを計数し、これによりコペポダイトの正確な数を把握し、これを嗅覚測定器へ注入した。直線状嗅覚測定器は、3つの内部コンパートメント、すなわち、右及び左のブランチ、並びに中央領域に加え、コペポダイトをペトリ皿に収集し、濾過して、コペポダイトを計数する外部流出領域に分かれていた。
【0130】
30匹のコペポダイト幼生を、嗅覚測定器のメインブランチに導入し、そこでこれらを、定常流(0.84ml/秒)に、温度8℃〜12℃で遭遇させた。この流れは、各々250mlのボトルから流れる、2つの部分流に分けられた。一つの部分流からは、コペポダイトは、被験製品の溶媒(エチルアルコール)のみを受け取り、他方の部分流からは、コペポダイトは推定情報化学物質の混合物を10ppmの濃度で受け取った。本試験は、10分間試行した。その後、流れを停止し、手術用クランプを嗅覚測定器へのチューブにはめ、4領域に含まれた水を遮断した。この水を実体顕微鏡により検査し、コペポダイトを計数した(
図5)。
【0131】
3種の推定アロモン混合物(A、B、D)及び4種の推定カイロモン(E、Q、R、S)を試験した。アロモン混合物は、下記の組成物を含んだ:
A:30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含む。
B:50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含む。
D:60%オレイルアルコール及び40%スクアレンを含む。
【0132】
カイロモン混合物は、下記の組成物を含んだ:
E:30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含む。
Q:30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%パルミチン酸を含む。
R:30%ラウリン酸、30%パルミチン酸及び40%オレイン酸を含む。
S:40%ラウリン酸、40%ミリスチン酸及び20%オレイン酸を含む。
【0133】
結果は、下記表1〜6に示している。統計解析は、ウィルコクソン符合付き順位和検定により計算した。
【0134】
表1−アロモンA
【表1】
【0135】
このデータは、番号6由来のデータを除き再計算し、下記表2に示している:
【0136】
表2−#6以外のアロモンA
【表2】
【0137】
以下のグラフは、平均のコペポダイト数は、アロモンAに関して、処理ブランチにおいてよりも、プラセボブランチにおいて、有意に高いことを示している。
【0138】
【化1】
【0139】
表3−カイロモンE
【表3】
【0140】
表4−カイロモンQ
【表4】
【0141】
表5−カイロモンR
【表5】
【0142】
表6−カイロモンS
【表6】
【0143】
本試験において使用した全ての混合物の間で、真に興味深い結果を提供した唯一のものは、Aであった。この溶液は、推定アロモン混合物とみなすことができる。対照的に、Eによる試験は、いくつかの矛盾する結果につながり、この製品は、有意な誘引作用を生じなかった。先の試験との矛盾は、スマイリーチャンバーシステムにおける正確さの欠如の結果であるかもしれない。
【0144】
(実施例4:外寄生試験における推定情報化学物質の評価)
先の試験の結果を考慮し、実施例1から3において示した先の試験時に、積極的に選択されるか又は試験されなかった、推定情報化学物質A、B、E、F及びPに焦点を当てた。これらの結果を基に、コペポダイトの剥脱に繋がる特異的シグナルの同定は、識別されるべく試行されるであろう。
【0145】
以下は、情報化学物質A、B、E、F及びPにおいて示した化合物である:
A:30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含む。
B:50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含む。
E:30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含む。
F:50%スクアレン、30%アルデヒドC13トリデカナール及び30%オレイン酸を含む。
P:17%ミリスチン酸、17%パルミチン酸、56%パルミトレイン酸及び10%オレイン酸を含む。
【0146】
この試験は、若いサケ(体重ほぼ70gのスモルト)を、流出により、4個の直径23cmのタンクからなる試験装置内で、コペポダイトの高密度群に45分間曝した。本試験装置は、魚の周りに影又は制御されない光をもたらさないテントにより保護した。光は、向光性を持つコペポダイトの行動を変更し得る。各タンクは、45分間、スモルトを収容した(
図6)。
【0147】
コペポダイトを、最初にそれらの飼育タンクの魚から採取し、実体顕微鏡で計数した。各60匹のコペポダイトを含む、コペポダイトの4つの外寄生用量を、本試験の各試行のために調製した。スモルトを、処理液(又はプラセボ)を含有するタンクに配置し、その活性物質の濃度は6ppmであった。この薬浴は、10分間維持した。
【0148】
次にスモルトを、先の薬浴で使用した同じ処理(製品又はプラセボ)の3ppmで維持したタンク内に配置し、試験を開始した。このプロセスの目的は、スモルトの皮膚上の活性製品の濃度の劇的な減少を防止することであった。
【0149】
最初の10分間に、流出を開放し、テントを閉鎖した。その時点で、各タンクを、酸素添加した液体の最初の容積に達するまで、補充した(同じ溶液、製品又はプラセボで補充した)。次に流出を5分間閉鎖し、外寄生用量を、タンクに導入した。次に流出を開放し、且つ10分毎に補充しながら、30分間開放したままにした(テントは開放せず)。
【0150】
コペポダイトへの45分曝露後、スモルトを、麻酔薬Benzoak(登録商標)を、通常の投与量30〜40mg/lの10倍の濃度である中毒量で投与することにより安楽死させた。
【0151】
死亡した魚をプラスチックバッグ内に配置し、その中で魚をこすり且つ海水によりすすいだ。
図7に示したように、魚の皮膚を金属製スプーンでこすり、その上に付着した可能性のあるコペポダイトを全て除去した。
【0152】
各魚を洗浄し、こうして魚の皮膚から、コペポダイト及びシェル(shell)の全てを剥脱した。この洗浄から収集した液体を、濾過し、寄生生物を計数した。コペポダイトは、フィルター上で計数し、魚の体の外側上のコペポダイトの数を得た。次に鰓を切開し、鰓上のコペポダイトの数を計数した。
【0153】
この試験の第一相は、本試験のレプリカ間で、体上及び鰓上のコペポダイトの数を比較した。この相の目的は、本試験を検証し、且つその標準偏差を測定することであった。
【0154】
この試験の第二相は、5種の溶液について、処理したスモルトと、エチルアルコールを加えた海水中に浴しただけの対照としての参照スモルトの間で、体上及び鰓上のコペポダイトの数(下記表においてCopと略した)を比較した。結果を下記表に示している。
【0155】
表7−参照/対照
【表7】
【0156】
表8−情報化学物質A
【表8】
【0157】
表9−情報化学物質B
【表9】
【0158】
表10−情報化学物質E
【表10】
【0159】
表11−情報化学物質F
【表11】
【0160】
表12−情報化学物質P
【表12】
【0161】
この試験の再現性は、魚体上のコペポダイトの数はなぜか一定のようで、非常に興味深いように思われた。文献(Tullyらの文献、2002)によると、この種の外寄生は低く、且つこの試験における非常に高濃度のコペポダイトにきっと関連しているであろう。
【0162】
これらのデータは、試験した溶液のいずれについてもいかなる有意な作用も提供しない。先に説明したように、Aで得られた結果に注目すると、この溶液は、先行する試験と比べて、この試験において同じ作用を示さないように見える。先に説明したように、Aは、スモルト上のコペポダイトの付着を阻害することは可能ではない。有意性を欠くにもかかわらず、先に説明したようにAで処理したスモルトにおける体のコペポダイトの数は、参照又は他の推定アロモンと比べ、若干低いように見える。興味深いことに、それらの推定混合物は全て、1種の共通化合物であるパルミトレイン酸を含む。
【0163】
(実施例5−パルミトレイン酸による実施例4の繰り返し)
実施例4と同じ試験を、パルミトレイン酸を用いて繰り返した。結果は、下記表13に示している。
【0164】
表13−パルミトレイン酸
【表13】
【0165】
パルミトレイン酸は、外寄生の顕著な減少をもたらした。
この試験は、Bronらの文献(1993)及びTullyらの文献(2002)のデータと比べ、このような実験的外寄生により露呈した「体寄生」の可能性の疑問を呈した。コペポダイトは、突然の加速(accelerations)により影響を受けた移動している体に付着する傾向がある(Heuch及びKarlsenの文献、1997)。この実験において、コペポダイトの高密度集団は、魚の周りに継続して存在した。このことは、有効なアロモンの存在下であっても、コペポダイトの付着-剥脱の複数回の連続に繋がることは、当然疑わしい。従って、本試験の終了時には、常に体上に近時に付着したいくつかのコペポダイトが存在し、これらは死んだ魚上で採集した場合に、剥脱する時間が無かった。このような仮定は、偽陰性の結果のリスクに対し、可能性のあるアロモン性製品を検証する何らかの試みを露呈させる。
【0166】
(実施例6−アロモンパルミトレイン酸の検証)
コペポダイトは死んだ魚上で採集される前に剥脱する時間が無かったという仮説を確認する最良の方法は、3つのブランチプロトコール、すなわち、先のプロトコールと同じ2つのブランチ(参照ブランチ及び処理ブランチ)に加え、その種がレペオフセイルスに対する天然の宿主ではない魚を使用する、陰性参照を含む新たなブランチにおいて同じ試験を試行することであった。
【0167】
この実験において、合成されたパルミトレイン酸は、3つの魚群、すなわち、(1)陽性参照:処理しないスモルト;(2)陰性参照:サイズが同等の幼若タラ(タイセイヨウタラ(ガドゥス・モルファ);並びに、(3)処理群:パルミトレイン酸を受け取るスモルトであること以外は、ほぼ同じプロトコールに従い、試験した。
【0168】
実施例4に説明したものと同じ実験を行った。結果は、下記表14及び15に示している。
【0169】
表14
【表14】
【0170】
表15
【表15】
【0171】
ボックスプロットの結果を、
図8に示している。これらの結果の統計解析を行い、
図9から11に示した。2群以上について計算された変数の分散の等質性を評価するための推測統計である、ルビーン検定を行った。結果は、下記表16に示している。
【0172】
表16
【表16】
【0173】
分布は、これら3群について正規であった。
テューキーのHSD検定を行った。結果を下記表17に示す。
【0174】
表17
【表17】
【0175】
これらの結果は、対照サケと対照タラの間、及び対照サケと処理サケの間で高い有意差を示したが、処理サケと対照タラの間で有意差を示さなかった。
【0176】
(考察及び結論)
実施例4から6の「受動的体への外寄生」の仮説が確認された。タラは、レペオフセイルス・サルモニスの天然の宿主ではない魚であるが、タラ上に付着しているコペポダイトが存在する。鰓上の外寄生もまた、実験的外寄生における高密度のコペポダイトに大部分は関連した受動的外寄生であった。
【0177】
アロモンであるパルミトレイン酸は、サケの体上に付着したコペポダイト数の高度に有意な減少を誘導する。合成されたパルミトレイン酸で処理されたサケは、レペオフセイルス・サルモニスについて天然には外寄生されない種であるタラと同等な様式で外寄生される。
【0178】
(実施例7−タイセイヨウサケ(サルモ・サラル)におけるレペオフセイルス・サルモニスコペポダイトの外寄生挙動の阻害剤としての海ジラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質の異性体の有効性)
この実施例の目的は、タイセイヨウサケ(サルモ・サラル)におけるレペオフセイルス・サルモニスコペポダイトの外寄生挙動の阻害剤としての海ジラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)の異性体の有効性を試験することであった。
【0179】
この実施例において使用した海ジラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)の異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸であった。
【0180】
本試験は、4匹の魚の4ラウンドを用い、そのうちの8匹は、trans-9-ヘキサデセン酸により処理し、且つ他の8匹は、対照として使用して実行された。各ラウンドに関して、4匹の魚、すなわち、2匹の処理した魚及び2匹の対照を試験した。
【0181】
本試験に組み入れるために、スモルトは、体重70g〜150gを有し、且つコペポダイトは、活発に遊泳することが必要とされた。スモルトが疾患、鱗の喪失、鰭の損傷、白内障及び/又は遊泳異常を有する場合、これらは、本試験においては使用しなかった。コペポダイトが刺激後動けない場合、これらは本試験から除外された。
【0182】
各ラウンドに関して、4匹の魚を捕獲し、海水1.75リットルを供給した4個の2リットルの平底ビーカーに導入する。処理する魚には、trans-9-ヘキサデセン酸6ppmを有する海水を使用する一方で、対照においては海水のみを使用した。処理又は対照の0.52mlを、海水1.75リットルに直接注入した。4匹の魚は、この溶液中で10分間浸した。
【0183】
次に前記魚を、trans-9-ヘキサデセン酸3ppm又は単純に海水の対照のいずれかで処理した海水3.5リットルを供給した別の3.5リットルのビーカーに移した。この処理又は対照の0.52mlを、海水3.5リットルに直接注入した。平底ビーカーから0.875リットルが出るように、平底ビーカーにはバルブを装着した。魚をこれらのビーカーに導入した時、バルブを開けた。バルブを開けて10分後、ビーカーには、処理のtrans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。その10分後(ビーカーへの魚の導入後20分)で、バルブを閉じ、且つ1匹の魚につき60匹のコペポダイトを、各平底ビーカーに注入した。5分後(ビーカーへの魚の導入後25分)、バルブを開けた。10分後(ビーカーへの魚の導入後35分)、各ビーカーに、trans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。10分後(ビーカーへの魚の導入後45分)、各ビーカーに、trans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。10分後(ビーカーへの魚の導入後55分)、各ビーカーに、trans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。
【0184】
次に、麻酔薬製品の過剰量により魚を殺傷するために、Benzoak(登録商標)の2mlを、各平底ビーカーに注入した。次に魚を、プラスチックバッグに導入し、これをコード化した。魚を、鰓室内に手術用プライアーを用いて保持し、魚上の異なる部位を3回こすった。魚の頭部を最初にこすってから、プラスチックバッグの中ですすぎ、次に魚の下側をこすり、プラスチックバッグの中ですすぎ、その後魚全体をこすり、プラスチックバッグの中ですすいだ。次に魚を、プラスチックバッグから取り出し、秤量した。次にプラスチックバッグの内容物を、フィルター上へとあけ、その後コペポダイトの数を、拡大鏡を用い、各フィルター上で計数した。このプロセスを、他の魚及び他の魚のラウンドについて繰り返した。
【0185】
表18は、試験した魚のラウンド、及びそれらがtrans-9-ヘキサデセン酸と対照の海水のどちらにより処理されたかを、例示している。
【0186】
表18
【表18】
ここで、表18のSCAIS
異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸を意味する。
【0187】
表19は、この実施例から得られた結果である。
【0188】
表19
【表19】
ここで、表19のSCAIS
異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸を意味する。
【0189】
除外基準又は欠損試験の場合においては、処理した8匹及び対照8匹が得られるまで魚を留保し(reserve)、この実験を繰り返した。外れ値(非定型値)は、不合理な結果とみなされた場合、データから除外した。データのセンタリング及び減数(reduction)が、絶対値で3を上回る場合、これは外れ値と見なした。非定型値は、この試験においては認められなかった。
【0190】
データは、9.4 SASソフトウェア(2002-2012、SAS Institute社(Cary, North Carolina, 米国)による)を用いて、解析した。全てのデータは、SAS 9.4 ソフトウェアの単変量プロシジャを使用する残差診断プロットを用いて、正規性の仮定からの逸脱の証拠について検定した。ボディマス及び付着したコペポダイトの数に準じた対照群と処理群の間の比較は、正規性及び分散に応じて、t検定プロシジャを使用するスチューデントt検定、又はSAS 9.4ソフトウェアにおけるnpar1wayプロシジャを使用するウィルコクソン二標本検定を用いて行った。分散の均質性は、t検定プロシジャを使用するフィッシャー検定を用いて実証した。有意性閾値は、通常通り5%に設定した。
【0191】
表20
【表20】
ここで、表20のSCAIS
異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸を意味し、Nbは、数を意味する。
【0192】
正規性に関する検定を行った。trans-9-ヘキサデセン酸に関する結果を、下記表21に示す。
【0193】
表21
【表21】
【0194】
正規性に関する検定を行った。対照に関して結果を下記表22に示す。
【0195】
表22
【表22】
【0196】
使用した全ての検定は、trans-9-ヘキサデセン酸及び対照について試験した魚に関するボディマスの正規性を結論付けた。
【0197】
分散の均質性に関するフィッシャー検定からの結果を、下記表23に示す。
表23
【表23】
処理群間の分散は、「ボディマス」に関して均質であった。
【0198】
スチューデントt-検定を使用し、結果を下記表24に示す。
【0199】
表24
【表24】
【0200】
サケは、「ボディマス」別の処理群間で均質であった(p=0.4027)。
【0201】
(結論)
タイセイヨウサケは、「ボディマス」に関して処理群間で均質である。trans-9-ヘキサデセン酸(SCAIS
異性体)処理したサケにおいて付着したコペポダイトはより少ない数であり、trans-9-ヘキサデセン酸(SCAIS
異性体)は、タイセイヨウサケに付着したコペポダイト数に対し、有意な作用を有している。
【0202】
(実施例8−海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質の錠剤の製作)
海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質を含有する水分散性錠剤を、下記のように製作する。海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質13.2gを、オイドラギットRLの150g、酢酸エチル200g及び微晶質セルロース110gと配合する。2.5%ステアリン酸マグネシウム及び5%タルクを一緒に配合し、この情報化学物質を含有する最初の製剤に添加する。この混合物を、直径8mmの平板パンチを備えたステーションロータリー打錠機を使用し圧縮する。
【0203】
(実施例9−海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質の有効性)
この実施例の目的は、水分散性錠剤により連続して放出される、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)の、タイセイヨウサケ(サルモ・サラル)スモルトにおけるレペオフセイルス・サルモニスコペポダイトの外寄生挙動に対する有効性を評価することであった。
【0204】
この実施例において使用した海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)は、cis-9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)であった。
【0205】
体重およそ90gを有するSALMAR(登録商標)(Daugstad 6392 Vikebukt, ノルウェー)社のスモルト期の72匹のタイセイヨウサケ(サルモ・サラル)を、この試験において使用した。使用した2,400匹のコペポダイトは、レペオフセイルス・サルモニス種起源のIlab(登録商標)(Bergen, ノルウェー)由来であった。
【0206】
この試験に組み入れるために、スモルトは体重70g〜150gを有し、且つコペポダイトは、活発に遊泳することが必要とされた。スモルトが疾患、鱗の喪失、鰭の損傷、白内障及び/又は遊泳異常を有する場合、これらは、本試験においては使用しなかった。コペポダイトが刺激後動けない場合、これらは本試験から除外された。
【0207】
実験時に、スモルトが背を下にして泳いだ場合、これらは本試験のデータから除外した。
【0208】
外寄生試験は、処理の適用後、1時間、24時間、72時間及び120時間で測定した。血液試験は、処理後0時間、1時間、24時間、72時間及び120時間で行った。
【0209】
1個のタンクにつき魚40匹を使用し、本試験は、タイセイヨウサケスモルトの2つの平行群で行い、一群は、飼育タンク内に存在する水の半分の位置に配置したストリングバッグ中のcis-9-ヘキサデセン酸の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質錠剤で処理し、並びに他の群は、エチルアルコールのみを使用する対照であった。
【0210】
血液試料を得るために、4匹の魚を、2個のタンクの各々中に捕獲し、Benzoak(登録商標)0.7ml/lの麻酔薬槽中に導入した。1分後、血液試料を、0.6mm針のついた2.5ml注射器を使用し、魚の尾静脈から採集した。血液液滴を、スライドガラス上に配置し、血液塗沫を、プラスチック製ストリップを使用し行った。偽好酸球とリンパ球の比(H/L)を、ライト-ギムザ染色の改変された染色であるディフ−クイック染色を用い、これらの血液塗沫から測定した。残りの血液は、4mlのヘパリン処理チューブに注入し、後続の血漿コルチゾールの分析まで、-18℃で冷凍庫内で貯蔵した。総血漿コルチゾール試験は、1:25希釈(ng.ml
-1)した血液試料から、ELISA試験キットにより分析した。
【0211】
この処理の適用後1時間、24時間、72時間及び120時間で実行した外寄生試験は、下記の方式で実行した。2匹の魚を、2個のタンク(対照及び被験)の各々中に捕獲し、各魚の当初のタンクから採取した水3.5リットルを供給した4個の3.5リットル平底ビーカーへ導入した。平底ビーカーには、溶液0.875リットルがビーカーに導入された時点で、等量の溶液が平底ビーカーから出るように、バルブを装着した。魚をこれらのビーカーに導入した時、バルブを開けた。魚の導入の10分後、平底ビーカーには、それらの各溶液(被験又は対照)0.875リットルを供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後20分)で、バルブを閉じた。1匹の魚につき60匹のコペポダイトを、各平底ビーカーに注入した。コペポダイト注入の5分後(平底ビーカーへの魚の導入後25分)、バルブを開けた。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後35分)、各平底ビーカーに、cis-9-ヘキサデセン酸又は対照のその各々の処理を供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後45分)、各平底ビーカーに、cis-9-ヘキサデセン酸又は対照のその各々の処理を供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後55分)、各平底ビーカーに、cis-9-ヘキサデセン酸又は対照のその各々の処理を供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後65分)、麻酔薬製品の過剰量により魚を殺傷するために、Benzoak(登録商標)の2mlを、各平底ビーカーに注入した。魚が死んだ時点で、これらをプラスチックバッグに個別に導入した。
【0212】
各魚を、魚の鰓室へと導入した手術用プライアーを用い、プラスチックバッグ内に保持した。次に魚をプラスチックバッグ内で3回こすり落とした;すなわち、魚の頭部をこすり、水ですすぎ、魚の下側をこすり、水ですすぎ、並びに魚全体をこすり、水ですすいだ。次に魚を、バッグから取り出し、秤量した。次にプラスチックバッグの水内容物を、フィルター上へあけ、コペポダイトを収集した。各フィルター上のコペポダイトの数を、拡大鏡を用い計数した。
このプロセスを、魚の他の7ラウンドについて繰り返した。
【0213】
除外基準又は欠損試験の場合において、この実験は、魚を留保し繰り返した。喪失データ及び外れ値を管理するために、この種のデータは、全般的結果に含まなかった。
【0214】
この予備分析は、処理群において好ましい陽性の傾向を示した。対照スモルトに付着したコペポダイトの平均数は、15.4であったのに対し、処理群に付着した平均数は、10.6であった。これらの結果は、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質であるcis-9-ヘキサデセン酸は、迅速且つ効果的に魚の粘液に結合し、閉鎖された3.5リットルタンク内で1匹の魚につき60匹のコペポダイトという高度に過酷な外寄生試験において有意な防御を提供することを示している。
【0215】
パルミトレイン酸(cis-9-ヘキサデセン酸)及びtrans-9-ヘキサデセン酸の異性体は、サケジラミの許容し得る宿主の選択を担い得る、SCAIS(海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質)と見なすことができる。パルミトレイン酸は、低分子量化合物であるが、多くの種において代謝産物として認められ、且つその非毒性がわかっており、サケ科の養魚における海シラミの外寄生の防止にとって有望な選択肢である。
【0216】
本発明は、様々な好ましい実施態様に関して説明されているが、当業者は、それらの範囲から逸脱することなく、様々な改変、置換、省略及び変更を、行うことができることを理解するであろう。従って、本発明の範囲は、それらの同等物を含む、下記の請求の範囲によって限定されることが意図されている。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成2)
約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱するその能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、構成1記載の情報化学物質組成物。
(構成3)
約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、構成1記載の情報化学物質組成物。
(構成4)
約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに無毒の充填剤及び/又はエンハンサー組成物並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成5)
約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに無毒の充填剤及び/又はエンハンサー組成物並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成6)
前記許容し得るビヒクルが、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルである、構成1〜5のいずれか一項記載の情報化学物質組成物。
(構成7)
無毒の充填剤又はエンハンサー組成物を更に含有する、構成1記載の情報化学物質組成物。
(構成8)
前記無毒の充填剤が、脂肪酸、アルコール、アミン、スクアレン、グリセロール及びそれらの混合物の群から選択される、構成4〜7のいずれか一項記載の1又は複数の情報化学物質組成物。
(構成9)
前記エンハンサー組成物が、アミン及びインドール系誘導体由来の脂肪酸、これらのアミンと脂肪酸のエステル、ケトン、アセトン、アルコール又はステロールを含む、構成4〜7のいずれか一項記載の1又は複数の組成物。
(構成10)
前記合成されたパルミトレイン酸の誘導体が、合成されたパルミトレイン酸のエステル、合成されたパルミトレイン酸アルコール、合成されたパルミトレイン酸のケトン、合成されたパルミトレイン酸アミド、合成されたパルミトレイン酸エーテル、合成されたパルミトレイン酸アルデヒド又は合成されたパルミトレイン酸ステロールである、構成1〜9のいずれか一項記載の1又は複数の組成物。
(構成11)
前記1又は複数の組成物が、粉末、錠剤、ペレット、カプセル、顆粒、粒状体、ドライフレークの形状であるか、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、微粒子内に配置されたか、マイクロカプセル化されたか又は凍結乾燥された、持続放出製剤の形状であることができる、構成1〜10のいずれか一項記載の1又は複数の組成物。
(構成12)
構成1〜10のいずれか一項記載の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質を含有する1又は複数の組成物を含む、1又は複数の溶液。
(構成13)
合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物の約0.1ppm〜約10ppmを含む、構成12記載の溶液。
(構成14)
合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物の約0.6ppm〜約6ppmを含む、構成12記載の溶液。
(構成15)
スプレー、エアゾール、エマルション、懸濁液、液滴として、水中ディフューザー中又は徐放マトリクス内に製剤される、構成12〜14のいずれか一項記載の溶液。
(構成16)
前記溶液が、魚が住む水に添加されるか、又は魚飼料中に配置されることができる、構成12〜15のいずれか一項記載の溶液。
(構成17)
経口的に又は注射を介して魚へ投与される、構成12〜16のいずれか一項記載の溶液。
(構成18)
海シラミを魚から剥脱する方法であって、該方法が、海シラミを魚から剥脱するための、合成されたパルミトレイン酸、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する組成物を魚へ投与することを含む、前記方法。
(構成19)
前記情報化学物質組成物が、約0.1ppm〜約10ppmの濃度で投与される、構成18記載の方法。
(構成20)
前記情報化学物質組成物が、約0.6ppm〜約6ppmの濃度で投与される、構成18記載の方法。
(構成21)
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成22)
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成23)
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、1又は複数の情報化学物質組成物。