特許第6676619号(P6676619)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676619魚への海シラミ付着阻害における使用のためのパルミトレイン酸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676619
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】魚への海シラミ付着阻害における使用のためのパルミトレイン酸
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/201 20060101AFI20200330BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/19 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/127 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/107 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/18 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/06 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/28 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/12 20060101ALI20200330BHJP
   A61P 33/14 20060101ALI20200330BHJP
   A01P 7/04 20060101ALI20200330BHJP
   A01N 37/06 20060101ALI20200330BHJP
   A01K 61/13 20170101ALI20200330BHJP
【FI】
   A61K31/201
   A61K9/14
   A61K9/16
   A61K9/19
   A61K9/20
   A61K9/48
   A61K9/127
   A61K9/107
   A61K47/10
   A61K47/12
   A61K47/18
   A61K47/06
   A61K47/28
   A61K9/12
   A61P33/14
   A01P7/04
   A01N37/06
   A01K61/13
【請求項の数】14
【全頁数】42
(21)【出願番号】特願2017-507708(P2017-507708)
(86)(22)【出願日】2015年8月7日
(65)【公表番号】特表2017-530944(P2017-530944A)
(43)【公表日】2017年10月19日
(86)【国際出願番号】IB2015001887
(87)【国際公開番号】WO2016024168
(87)【国際公開日】20160218
【審査請求日】2018年7月30日
(31)【優先権主張番号】62/036,436
(32)【優先日】2014年8月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514328311
【氏名又は名称】インスティテュート デ レシェルシェ エン セミオチミエ エト エソロギエ アプリクエエ
(74)【代理人】
【識別番号】100097456
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 徹
(72)【発明者】
【氏名】パトリク パゲアト
【審査官】 磯部 洋一郎
(56)【参考文献】
【文献】 特表2002−504141(JP,A)
【文献】 特表2002−501019(JP,A)
【文献】 特開昭63−088123(JP,A)
【文献】 Can. J. Fish. Aquat. Sci., 2006, Vol.63, p.448-456
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/201
A01K 61/13
A01N 37/06
A01P 7/04
A61K 9/107
A61K 9/12
A61K 9/127
A61K 9/14
A61K 9/16
A61K 9/19
A61K 9/20
A61K 9/48
A61K 47/06
A61K 47/10
A61K 47/12
A61K 47/18
A61K 47/28
A61P 33/14
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成されたパルミトレイン酸その塩及び/又はtrans-9-ヘキサデセン酸、並びに許容し得るビヒクルを含有する、魚において海シラミを処理するための組成物であって、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物である、前記組成物
【請求項2】
約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸その塩、及び/又はtrans-9-ヘキサデセン酸、並びに許容し得るビヒクルを含有する、請求項1記載組成物。
【請求項3】
約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸その塩及び/又はtrans-9-ヘキサデセン酸、並びに許容し得るビヒクルを含有する、請求項1記載組成物。
【請求項4】
無毒の充填剤及び/又はエンハンサー組成物を更に含有する、請求項2記載の組成物。
【請求項5】
無毒の充填剤及び/又はエンハンサー組成物を更に含有する、請求項3記載の組成物。
【請求項6】
前記許容し得るビヒクルが、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルである、請求項1〜5のいずれか一項記載組成物。
【請求項7】
無毒の充填剤又はエンハンサー組成物を更に含有する、請求項1記載組成物。
【請求項8】
前記無毒の充填剤が、脂肪酸、アルコール、アミン、スクアレン、グリセロール及びそれらの混合物の群から選択される、請求項4〜7のいずれか一項記載組成物。
【請求項9】
前記エンハンサー組成物が、アミン及びインドール系誘導体由来の脂肪酸、これらのアミンと脂肪酸のエステル、ケトン、アセトン、アルコール又はステロールを含む、請求項4〜7のいずれか一項記載組成物。
【請求項10】
前記組成物が、粉末、錠剤、ペレット、カプセル、顆粒、粒状体、ドライフレークの形状であるか、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、微粒子内に配置されたか、マイクロカプセル化されたか又は凍結乾燥された、持続放出製剤の形状であることができる、請求項1〜9のいずれか一項記載組成物。
【請求項11】
溶液の形状である、請求項1〜10のいずれか一項記載組成物
【請求項12】
前記溶液が、スプレー、エアゾール、エマルション、懸濁液、液滴として、水中ディフューザー中又は徐放マトリクス内に製剤される、請求項11記載の組成物
【請求項13】
前記溶液が、魚が住む水に添加されるか、又は魚飼料中に配置されることができる、請求項11又は12記載の組成物
【請求項14】
経口的に又は注射を介して魚へ投与される、請求項11又は12記載の組成物
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(技術分野)
本発明は、合成されたパルミトレイン酸、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物に関する。本発明はまた、合成されたパルミトレイン酸、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミ付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物を、そのような処理を必要とする魚へ投与することを含む、海シラミを処理する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
海シラミは、魚製品の衛生的及び経済的喪失の最も重大な原因のひとつであると考えられる(Johnsonらの文献、2004)。タイセイヨウサケ(サルモ・サラル(Salmo salar))及びニジマス(オンコリンクス・ミキス(Oncorhynchus mykiss))において、レペオフセイルス・サルモニス(Lepeophtheirus salmonis)及び他のウオジラミ科のコペポディド(caligid copepodid)は、サケ科の魚の養殖の開発に対し大きい障害であると考えられ、満足のいく処理が存在しない限りは、監督官庁が新たな養魚場の創設を控えることになる(Stewartらの文献、2004)。
【0003】
レペオフセイルス・サルモニスは、現在最も一般的で重要な種のように思われるが、これは、非常に異なるライフステージを含む複雑な生活環を示す。中でも、コペポダイト期は、外寄生(infesting)期であるので、これは特に興味深い(Pike及びWadsworthの文献、1999)。第一幼生期(ノープリウスI期及びII期)のように、コペポダイトは、機能的消化管を有さず、しかしその脂肪組織の異化作用から得られるエネルギーを使用する。その寿命は2週間に限定されるように見え、その間にこれは鉤爪状触角(antennal hook)を介して宿主に付着しなければならない。たとえコペポダイトが、宿主を捕獲し且つそれに付着することを可能にするある程度の速度の移動を示す能力を有するとしても、コペポダイトは、大多数のプランクトン生物のように、水流により受動的に移動される。文献は、宿主との接触は、線形の水力加速に反応したバースト遊泳(burst swimming)により促進される(頻度3±12 Hzで、これは1±3秒間続く)ことを報告している(Heuch及びKarlsenの文献、1997)。この挙動は恐らく、自由に動きまわるコペポダイトにおいて観察される捕食者を回避する戦略に起源があるであろう(Heuch及びKarlsenの文献、1997)。最初の外寄生が高頻度で鰭上であるということは、コペポダイトはそれらの近傍において生じた小規模の水の動きにより活発化されるという仮説を裏付ける、別の論拠とみなされ得る(Tullyらの文献、1993a)。一部の著者(Anonの文献、1993)は、変態後のカリムスを、鰓室を通り、体表へ移動させる、重要な受動的外寄生が存在することを示唆している。より最近の研究は、この理論は、実験的外寄生時の人為構造から生じ得ることを示唆している。天然の大規模な外寄生に関する報告における低頻度の鰓外寄生は、この仮説に対する強力な論拠として見なされるべきである(Tullyらの文献、1993b及び2002)。
【0004】
魚への鉤把握の後、コペポダイトは、化学感覚情報を使用するように見える。触角様化学受容器が説明されており、これは、不適切な宿主(非サケ科の魚)に付着しているコペポダイトは、剥脱し、水流に回帰することを説明することができる(Bronの文献、1993)。
【0005】
様々な研究が、レペオフセイルスの外寄生挙動における情報化学物質の役割を説明している。いずれかの研究がいくつかの化学成分の同定を可能にする以前に、様々な知見が、情報化学物質の情報の関与の可能性を強調した。コペポダイトの触角は、感覚捕捉体(sensory captor)を保持し、且つ魚上への鉤爪把握も担っている(Bonの文献、1993)。先に説明されたように、コペポダイトは、それらが非サケ科魚の魚に付着した場合に、鉤爪を外す傾向があり、このような識別は、まず間違いなく化学情報に起因しているように見える。皮膚粘液は、様々な脂質性化合物を含むことが証明されており、様々な種間の化学的コミュニケーションへのそれらの関与は非常に良く知られているので、魚の皮膚により放出される化学シグナルの存在は、驚くに値しない(Lewisの文献、1970)。
【0006】
しかし最も重要な文献は、その中で魚が遊泳している水の採取により得られる、「魚用馴化水(fish conditioned water)」の誘引作用の証拠によって得られた(Ingvarsdottirらの文献、2002、Bailey及びMordueの文献、2003、Pino-Marambioらの文献、2007及び2008)。いくつかの正確な化合物が同定されており、且つそれらの中でイソフォロン及び1-オクテン-3-オールが、触角により選択的に検出されるように思われる。残念なことに、公表されたデータのほとんどは、この寄生生物の外寄生ライフステージではない成体海シラミについて得られている。
【0007】
いくつかの他のデータは、ストレスが、海シラミの外寄生に直面しているサケ科魚の脆弱性に影響を及ぼすことを示唆している(Tullyらの文献、1993 a及びb、MacKinnonの文献、1998、Mustafa及びMacKinnonの文献、1999)。このストレスは、様々な刺激に関連し、その中でも銀化(Bartonらの文献、1985)及び真に飼養化されたと見なすことができない種における社会的ストレスは、大変重要であるように思われる(Slomanらの文献、2001、Gilmourらの文献、2005)。血漿コルチゾールの上昇は、皮膚粘液中の抗体の濃度、特にIgM免疫グロブリン(immunoglobin)の濃度の低下により役割を果たすことができる(Magnadottirの文献、1998、Houらの文献、1999)。これらの抗体は、カリムス幼生により保持されるフィラメントの付着に対する蓋然的作用により、外寄生に対する免疫において役割を果たすように思われる(Tullyらの文献、2002)。
【0008】
養魚は、養殖場からの魚の逃亡及び野生のサケ集団への組み込みをきたしてきた。このことは、疾患の伝染及び食物の競合に関して野生の魚集団に影響を及ぼす。養殖された魚は、対応する野生の魚の形質と比べ、多くの変形した形質を有する。そのような形質のひとつは、養殖魚は、対応する野生の魚よりもより攻撃的であることである(Johnson及びAbrahamsの文献、1991)。別の形質は、養殖魚の子孫は、野生の魚よりもより早く成長することである(Flemingらの文献、2000)。養魚の帰結として、サケジラミの数多くの宿主が増殖されてきている。
【0009】
2種の海シラミ、すなわちレペオフセイルス(レペオフセイルス・サルモニス)及びカリグス(カリグス・エロンガツス(Caligus elongatus))が存在する。これらは、それらの茶色の馬蹄型の殻により認められる。これらは、魚へ強固に付着し、うろこ、細胞組織、血液及び粘膜を食することにより、それらを傷つける。この魚の免疫系は弱体化され、二次感染及び魚の大量死の可能性へつながる。10〜15以上のサケシラミを有するサケスモルトは、弱体化され、産卵のために河に戻る前の海での一時的な滞在を恐らく生き抜くことができない。海シラミの低い非致死性の外寄生は、魚にストレス反応を誘導し、塩不均衡、免疫低下及びより多くの感染に繋がり得る(Tullyらの文献、2002)。一般に、12〜15の海シラミが、野生のサケを殺傷することができる。
【0010】
基本的にはサケジラミに対する処理が存在し、そのひとつは生物学的であり、他方は化学的である。サケジラミの外部寄生生物を摘み取り且つ食することができるベラ科(ラブリダエ(Labridae))スズキ目(ペルシフォルメス(Perciformes))の海洋魚であるベラの使用は、生物学的解決である。従ってゴールドスキニーベラであるクテノラブルス(Ctenolabrus)、バラム(ballam)ベラであるラブラスベルギルタアスカニウス(Labrus bergylta Ascanius)、コーキング(corking)ベラであるシンフォダスメリオプ(Symphodus meliops)(L.)、ロッククック(rock cook)であるセントロラブラスエクソレウス(Centrolabrus exoleus)(L.)、カッコウベラであるラブラスビマクラツス(Labrus bimaculatus) L、及び鱗発光ベラであるアカントラブラス・パローニ(Acantholabrus palloni)が、水産養殖業においてこの目的のために使用される。
【0011】
化学的解決は、シラミ駆除浴又は魚飼料中で使用される薬用ペレットのいずれかの使用に関与している。サケジラミに対して使用される薬浴処理は、ジクロルボス、トリクロルホン及びアザメチホスなどの有機リン酸エステル;シペルメトリン及びデルタメトリンなどのピレスロイド、ジョチュウギク抽出物並びに過酸化水素を含む。飼料処理は、エマメクチン安息香酸塩のようなアベルメクチン、ジフルベンズロン、テフルベンズロン、シペルメトリン、cis-シペルメトリン及びイベルメクチンを含む。一般にSLICE(エマメクチン安息香酸塩)の添加は、8週間持続する。
【0012】
しかし、薬浴処理及び魚飼料処理に対する耐性が時間がたつにつれて明らかになり始め、無効な処理、非標的生物に対する毒性をもたらし、今や魚にストレスをもたらし且つ経費がかかるものとなっている。多くの場合において、この処理の中止期間が必要とされ、特に定期の寄生生物処理が耐性の発生に対し絶えず圧力をもたらしている養殖されたサケから、非常に頻繁に再度の外寄生が発生する。
【0013】
米国特許第7,879,809号は、水産養殖で飼育された魚における外部寄生生物の外寄生の制御のための、スピノシン又は生理学的に許容し得る誘導体もしくは塩の使用を説明している。スピノシンは、範囲の広い有機殺虫剤であることが知られている。
【0014】
米国特許第6,982,285号は、魚の寄生生物を制御するための有効な成分として、1-[4-クロロ-3-(3-クロロ-5-トリフルオロメチル-2-ピリジルオキシ)フェニル]-3-(2,6-ジフルオロ-ベンゾイル(benzoly)尿素)を有する注射溶液を説明している。
【0015】
海シラミなどの魚の寄生生物を処理するための医薬品及び化学物質は、当該技術分野において公知であるが、これらは、環境に優しくないことが多い。多くの場合に耐性が生じ、これは、サケ及び他の養殖魚におけるこの処理の有効性の欠如及び高い死亡率に繋がる。従って、海シラミの外寄生を解決するための他の解決が、必要とされている。
【0016】
情報化学物質は、別の生物において行動学的又は生理学的反応を惹起する、植物又は動物により放出される化学物質である。情報化学物質が同じ種の個体に影響を及ぼす場合、これはフェロモンと称される。情報化学物質が、異なる種の個体に影響を及ぼす場合、これはアレロケミカルと称される。
【0017】
種間コミュニケーションに関与するそれらの化学シグナルは、アレロケミカルシグナルの全般的カテゴリー下で群別される。アレロケミカルシグナルは一般に、2つの亜群に分類され、且つそれらの機能は、シグナルの放出者とメッセージの受容者の間の関係に影響を及ぼす。好ましい放出者との関係において、放出される化学シグナルが存在する場合、この亜群は、アロモンとして公知である。定義により、アロモンは、特に放出する種に有益であるように、別の種に対し作用を有する1つの種により生成されるホルモン又は物質である。例えば、ある種の花により放出される誘引性のアロモンは、これらの花を受粉することができる様々な昆虫を引き付けることができる。
【0018】
対照的に、放出された化学シグナルが、受容者に対し好ましい関係である場合、この亜群は、カイロモンとして公知である。定義により、カイロモンは、他の種を、時には天然の外敵さえも引き付けることができる、フェロモン又は物質である。カイロモンは、時には、寄生生物による特定の宿主の捜し出しに関与している。例えば、ヒト皮膚により放出される乳酸は、数多くのカ科(Culicidae)についてわかっているカイロモンである。アロモン及びカイロモンは、最終利用者に危害を引き起こさないよう分解する、天然の物質である。これらの化学物質はまた、免疫を引き起こさず、且つ安全である。
【0019】
従って、環境に優しく、容易に投与することができ、且つ魚への危害もしくはストレスを伴わず、又は水環境へ影響を及ぼすことなく有効である、海シラミが魚へ付着することを阻害するための、組成物及び方法を提供することが、当該技術分野において必要とされている。
【0020】
この必要性及び他の目的は、発明の概要、好ましい実施態様の説明及び請求項により証明されるように、本発明により達成される。
【発明の概要】
【0021】
(発明の概要)
本発明は、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又は海シラミを魚から剥脱するそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物に関する。
【0022】
別の態様において、約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに無毒の充填剤及び/又はエンハンサー組成物及び許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物である。
【0023】
別の態様において、約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物である。
【0024】
本明細書記載の許容し得るビヒクルは、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルである。
【0025】
本明細書記載の合成されたパルミトレイン酸を含有する海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物は、無毒の充填剤又はエンハンサー組成物を更に含有することができる。無毒の充填剤は、脂肪酸、アルコール、アミン、スクアレン、グリセロール及びそれらの混合物の群から選択される一方で、エンハンサー組成物は、アミン及びインドール系誘導体由来の脂肪酸、これらのアミン及び脂肪酸のエステル、ケトン、アセトン、アルコール又はステロールを含む。
【0026】
更に別の態様において、本明細書記載の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物は、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体のエステル、アルコール、ケトン、アミド、エーテル、アルデヒド又はステロール誘導体、及び/又は混合物、並びに許容し得るビヒクルである。
【0027】
この情報化学物質組成物は、粉末、錠剤、ペレット、カプセル、顆粒、粒状体、ドライフレークの形状、又は用途に適した他の形状であることができる。これはまた、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、微粒子内に配置されるか、又はマイクロカプセル化される持続放出製剤の形状であることができる。この情報化学物質組成物はまた、凍結乾燥されることもできる。
【0028】
合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の能力を維持する、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又は混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質を含有する組成物を含む1又は複数の溶液は、本発明の別の態様である。これらの溶液は、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルなどの許容し得るビヒクルと共に製剤されることができる。これらの溶液はまた、本明細書記載の無毒の充填剤、又は本明細書記載のエンハンサー組成物も含むことができる。
【0029】
この溶液は、約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又は混合物の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物を含み、本発明の更に別の態様である。この溶液は、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルなどの許容し得るビヒクルと共に製剤されることができる。これらの溶液はまた、本明細書記載の無毒の充填剤、又は本明細書記載のエンハンサー組成物も含むことができる。
【0030】
この溶液は、約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の能力を維持する、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又は混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物を含み、本発明の更に別の態様である。この溶液は、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルなどの許容し得るビヒクルと共に製剤されることができる。これらの溶液はまた、本明細書記載の無毒の充填剤、又は本明細書記載のエンハンサー組成物も含むことができる。
【0031】
この溶液は、スプレー、エアゾール、エマルション、懸濁液の形状、又は液滴の形状であることができ、水中ディフューザー中又は徐放マトリクス内に配置されることができる。これは、魚が住む水に添加されるか、又は魚飼料中に配置されることができる。これはまた、経口的に又は注射を介して魚へ投与されることもできる。
【0032】
魚から海シラミを剥脱する方法であって、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する情報化学物質組成物を、魚へ投与することを含む該方法は、本発明の更に別の態様である。
【0033】
魚から海シラミを剥脱する方法であって、0.1ppm〜10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及びそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物を魚へ投与することを含む該方法は、本発明の更に別の態様である。
【0034】
魚から海シラミを剥脱する方法であって、0.6ppm〜6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及びそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物を魚へ投与することを含む該方法は、本発明の更に別の態様である。
【0035】
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及びそれらの混合物、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物は、本発明の別の態様である。
【0036】
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及びそれらの混合物、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物は、本発明の別の態様である。
【0037】
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及びそれらの混合物、並びに許容し得るビヒクルを含む、情報化学物質組成物は、本発明の別の態様である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
(図面の簡単な説明)
図1図1は、幼若サケ上の海シラミの写真である。
図2図2は、通常の嗅覚測定器(olfactometer)から適合された試験である、スマイリー(Smiley)チャンバー試験の設定を示す概略図である。
図3図3は、本来のスマイリーチャンバー試験の写真である。
図4図4は、本実験で使用した嗅覚器(olfactory)の写真である。
図5図5は、嗅覚測定器の流出物を濾過した後に計数されたコペポダイトの写真である。
図6図6は、外寄生試験の開始の写真である。スモルトは、合成されたパルミトレイン酸を含有する情報化学物質製品又はプラセボのいずれかが3ppmで維持されているタンク内に配置されている。
図7図7は、魚に付着した可能性のあるコペポダイトを全て除去するために、金属製スプーンにより魚をこすることによるコペポダイトの収集を示す写真である。
図8図8は、対照サケ及び対照タラ、対、処理サケの実施例6の結果を示す、ボックスプロットグラフである。
図9図9は、実施例6の対照群のコペポダイトの数を示すグラフである。
図10図10は、実施例6の被験サケ群のコペポダイトの数を示すグラフである。
図11図11は、実施例6の対照タラ群のコペポダイトの数を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
(好ましい実施態様の説明)
本明細書において使用される「魚」は、脊索動物門(Phylum Chordata)脊椎動物亜門(Sub Phylum Vertebrate)及び上綱無顎魚(Superclasses Agnatha)、軟骨魚(Chrondrichthyes)及び硬骨魚(Osteichthyes)、条鰭(Actinopterygii)綱:サケ目(Salmoniformes)又はスズキ目(Perciformes)又はナマズ目(Siluriformes)のあらゆるメンバーを含む。限定するものではないが例として、以下の魚種が、本発明により包含されるものとして言及され得る:ナマズ、コイ、マス、サケ、シーバス、タイ、ホワイトフィッシュ、イワナ、カワヒメマス、及びパーチ。
【0040】
中でも本発明により包含されるナマズは、チャネルキャットフィッシュ、ブルーキャットフィッシュ、フラットヘッドキャットフィッシュ、黄色ナマズなどを含む。コイは、コモンカープ、シルバーカープ、ソウギョなどを含む。マスは、グリーンバックカットスロートマス(Green Back Cutthroat trout)、リオグランドカットスロートトラウト(Rio Grand Cutthroat trout)、スネークリバーカットスロートトラウト(Snake River Cutthroat trout)、ブラウントラウト、カワマス、ハイブリッドカットボウトラウト(Hybrid Cut-Bow trout)、ニジマス、パルミノニジマスなどを含む。サケは、チヌーク(Chinook)、ギンザケ、ベニザケ(Sockeye)、チャム(Chum)、ピンクサーモン、タイセイヨウサケ、スチールヘッドサケなどを含む。シーバスは、バンクシーバス、チリシーバス、ブラックシーバス、ロックシーバス、スポッティッドシーバスなどを含む。タイは、クロダイ、ゴウシュウマダイ及びマダイを含む。ホワイトフィッシュは、コモンホワイトフィッシュ、レイクホワイトフィッシュ、大西洋ホワイトフィッシュ、ラウンドホワイトフィッシュ、マウンテンホワイトフィッシュ、インクヌー、ウグイスアマダイ(Ocean whitefish)、ベルーガスタルギオン(Beluga sturgeon)、カスピ海ホワイトフィッシュ、ホワイトスティーンブラスなどを含む。イワナは、ドリーバーデンチャー、北極イワナ、ウイスコンシンアイボリーイワナなどを含む。カワヒメマスは、ヨーロッパカワヒメマス、北極カワヒメマスなどを含む。パーチは、キノボリウオ、ヨーロピアンパーチ、バルハシパーチ、イエローパーチ、ゴールデンパーチ、シルバーパーチ、スパングルパーチ(Spangled perch)、ホワイトパーチなどを含む。
【0041】
「魚のストレス」は、ストレス-関連ホルモンの放出又は特定の生理的反応を生じる、何らかの物理的、化学的又は精神的不快を意味する。ストレスは、心拍数、血圧の増大、血糖値の上昇、及びコルチゾールレベルの放出などの身体の反応を引き起こす。これは、100ng/mlを超えるコルチゾールレベルの上昇を包含している。増強されたコルチゾールレベルは、サケ科魚の魚における心筋リモデリングを生じることができる(Johansenらの文献、The Journal of Experimental Biology (2011) 214,1313-1321)。魚には様々な種類のストレスが存在し、これは拘束ストレス、取り扱いストレス、選別ストレス、等級化ストレス及び輸送ストレスを含む。ストレスは、魚における抵抗力の減少の一因であり、これは疾患及び寄生生物感染の広がりに繋がり得る。これはまた、魚の摂食行動、成長及び競争能力に対しても作用を有する(Gregoryらの文献、Physiological and Biochemical Zoology (1999) 72(3) 286-295)。
【0042】
本明細書において規定される「水産養殖」とは、管理された条件下で魚を養殖する科学、技術及びビジネスを意味する。
【0043】
「有効成分(active principle)」とは、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質能を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及びそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質としてその治療的特性を付与する分子を意味する。
【0044】
本明細書において使用される用語「海シラミ」は、レペオフセイルス属及びカリグス属を含むウオジラミ目(Siphonostomatoida)ウオジラミ科(Caligidae)内のあらゆるカイアシ類を包含している。例としては、レペオフセイルス・サルモニス、レペオフセイルス・ペクトラリス(Lepeophtheirus pectoralis)、レペオフセイルス・トンプソニ(Lepeophtheirus thompsoni)、レペオフセイルス・ユーロパエシス(Lepeophtheirus europaensis)、カリグス・エロンガツス、カリグス・オリエンタリス(Caligus orientalis)、カリグス・テレス(Caligus teres)、カリグス・ロゲルクレッセイ(Caligus rogercresseyi)、カリグス・パンクタツス(Caligus punctatus)、カリグス・エピデミカス(Caligus epidemicus)、カリグス・クレメンシ(Caligus clemensi)などが挙げられる。海シラミは、様々な水中に認められる。従って、例えば、レペオフセイルス・サルモニスは、北半球の比較的冷たい水中でタイセイヨウサケに影響を及ぼす。これはまた、日本においてサケ科に感染する。カリグス・オリエンタリスもまた、日本においてニジマスに認められる。カリグス・エロンガツスは、英国の水中において最も一般的な種であり、カリグス・テレス及びカリグス・ロゲルクレッセイは、チリにおいて、カリグス・エピデミカス、カリグス・パンクタツス及びカリグス・オリエンタリスは、アジアにおいて、最も一般的な種であり、且つレペオフセイルス・ペクトラリスは、大西洋の北東部、バルト海及び白海において発生し、並びにカリグス・エロンガツスは、南半球、特にオーストラリアにおいて発生する。
【0045】
本明細書において使用される「コペポダイト」とは、細長い体及びフォーク状の尾を有する、カイアシ亜綱(Copepoda)の様々な非常に小さい甲殻類の全てを意味する。ほとんどの甲殻類とは異なり、カイアシ類は、背中を覆う甲羅を欠いており、且つ複眼を持たない。これらは、塩水及び淡水の両方において豊富であり、且つ多くの水生動物の重要な食料源である。カイアシ類は、ミジンコを含む。
【0046】
本明細書において使用される用語「cop」は、「コペポダイト」の略号である。
【0047】
本明細書において使用される「情報化学物質」は、別の生物において行動的又は生理的反応を誘起する、植物又は動物により放出される化学物質を意味する。情報化学物質が同じ種の個体に影響を及ぼす場合、これはフェロモンと称される。情報化学物質が異なる種の個体に影響を及ぼす場合、これはアレロケミカルと称される。
【0048】
「アロモン」は、別の種の生物において反応を誘導するために一つの生物により生成される情報化学物質を意味する。これは、放出者にとって好ましい反応を生じさせる。例えば、いくつかの植物は、昆虫を寄せ付けず、且つ昆虫に食されることを避けるアロモンを生成する。
【0049】
本明細書において使用されるように、別の種の生物に恩恵又は影響を及ぼす、一つの種の生物により放出される化学メッセンジャーは、「カイロモン」である。カイロモンの例には、動物種を引き付けるか又は寄せ付けない花の香りがある。
【0050】
本明細書において使用される「パルミトレイン酸」は、cis-9-ヘキサデセン酸又はtrans-9-ヘキサデセン酸を含み、且つ分子式C16H30O2を有する。パルミトレイン酸はまた、ゾーマリン酸、パルミトリノール酸、(9Z)-ヘキサデセン酸、(Z)-ヘキサデセ-9-エン酸、(9Z)-ヘキサデセ-9-エン酸、cis-デルタ(9)-ヘキサデセン酸、16:1n-7又は16:1Δ9としても知られている。
【0051】
「合成された」とは、パルミトレイン酸が、化学的又は酵素的に生成され、天然から単離されないことを意味する。
【0052】
本明細書において使用される「誘導体」は、合成されたパルミトレイン酸、その誘導体、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体のエステル、アルコール、ケトン、アミド、エーテル、アルデヒド及びステロール、並びに/又はそれらの混合物を含む。これらの合成されたパルミトレイン酸誘導体は、本明細書記載の組成物中の1種以上の情報化学物質と置き換えることができ、且つ同じ作用を有する。
【0053】
これらの脂肪酸の誘導体は、当該技術分野において公知の方法により合成されることができる。例えば、酸触媒により触媒された脂肪酸とアルコールの直接エステル化は、脂肪酸エステルと水を生じる。脂肪酸アルデヒドは、水素化により脂肪族アルコールへ転換され得る。脂肪酸アミドは、無水条件下での脂肪酸と低級アルコールのエステルの、アンモニア又はモノもしくはジアルキルメチルもしくはエチルアミンとの反応、並びにこの反応からの低級アルコールの除去により、調製され得る。
【0054】
「異性体」は、構造異性及び立体異性を含む。構造異性体は、同じ構成原子を有するが、互いに異なる様に配置されている、異性体である。構造異性体の例は、プロピルアルコールとイソプロピルアルコールである。立体異性体は、分子内で同じ様式で連結されているが、原子又は原子群の空間配置のみが互いに異なる、同じ原子を含む。立体異性体の例は、グルコースとデキストロースである。パルミトレイン酸異性体の例は、11-cis-ヘキサデセン酸及び9-cis,12-cisヘキサデカン酸、及びtrans-9-ヘキサデセン酸である。
【0055】
「構造類似体」は、別のものに構造が類似しているが、特定の構成要素に関してこれとは異なる、化学化合物の群を意味する。構造類似体は、1個以上の原子、官能基又は部分構造が異なることができ、これらは別の原子、官能基又は部分構造により置き換えられる。例には、2-メトキシ-5-ヘキサデセン酸、ω-フルオロパルミトレイン酸などのハロゲン化パルミトレイン酸、ニトロ化パルミトレイン酸、塩素化パルミトレイン酸、ω-ヒドロキシデセン酸などがある。
【0056】
本明細書において使用される用語「混合物」は、合成されたパルミトレイン酸に加え、魚への海シラミの付着を阻害する活性を維持している、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体を包含している。例えば、これらの混合物は、合成されたパルミトレイン酸及び合成されたパルミトレイン酸の異性体を含むことができるか、或いはこれらは、合成されたパルミトレイン酸の構造類似体及び合成されたパルミトレイン酸の誘導体を含むことができる。
【0057】
用語「溶液」は、溶解されることにより、又は懸濁液中のいずれかで、液体中に分散された固形物又は油状物を意味する。
【0058】
「許容し得るビヒクル」は、合成されたパルミトレイン酸、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体、並びに/又は混合物を含有する、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物の活性を妨害せず、且つそれが投与される魚にとって毒性でない、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学のビヒクルのいずれかを意味する。
【0059】
「エンハンサー組成物」は、魚において種特異的であり、且つ本明細書記載の基本的情報化学物質組成物の魚における有効性を増大するために、本明細書記載の基本的情報化学物質組成物を増強するかもしくはこれと相乗作用するために使用することができる、活性組成物を意味する。
【0060】
「投与する」は、本明細書記載の合成されたパルミトレイン酸を含有する海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物を、魚の水環境へ適用すること、或いは本明細書記載の合成されたパルミトレイン酸を含有する海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物を摂取のために魚飼料に適用すること、又は本明細書記載の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物を、魚の上もしくは中へ直接適用することを意味する。従って、魚への経口、注射、局所性投与に加え、魚の環境中への該情報化学物質組成物の配置は、本発明により意図されている。
【0061】
「環境」は、魚の周囲環境を意味する。
【0062】
「から本質的になる」は、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物は、合成されたパルミトレイン酸の有効成分を有するが、この有効成分の情報化学物質特性に影響を及ぼさない他の化合物を含むことができることを意味する。
【0063】
本発明は、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又は混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物に関する。
【0064】
海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質を含有する本明細書記載の情報化学物質組成物は、約0.1ppm〜約10ppm又は約0.6ppm〜約6ppm又は約1ppm〜約5ppm又は約0.05ppm〜約20ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物、並びに許容し得るビヒクルを含む。
【0065】
別の態様において、情報化学物質組成物は、約0.1ppm〜約10ppm又は約0.6ppm〜約6ppm又は約1ppm〜約5ppm又は約0.05ppm〜約20ppmの、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、合成されたパルミトレイン酸の塩、合成されたパルミトレイン酸の誘導体、合成されたパルミトレイン酸の異性体及び/又は合成されたパルミトレイン酸の構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに無毒の充填剤又はエンハンサー組成物、並びに許容し得るビヒクルを含有する。
【0066】
別の態様において、1又は複数の組成物は、約0.6ppm〜約6ppmの、合成されたパルミトレイン酸、又はそれらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する。
【0067】
許容し得るビヒクルは、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルである。これは、溶媒、分散媒、吸収遅延剤などを含む。これらの医薬として許容し得るビヒクルは、「レミントン薬科学(Reminton’s Pharmaceutical Sciences)」、2005年第21版に記載されている。許容し得るビヒクルは、例えば、グリコールエーテル又は生理食塩水であることができる。許容し得るビヒクルは、情報化学物質組成物が製剤化される方法により変動するであろう。これは、製剤化時に、合成されたパルミトレイン酸、又はそれらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物へ、添加することができる。
【0068】
本明細書記載の情報化学物質組成物の医薬として許容し得る塩は、合成されたパルミトレイン酸の有機塩又は無機塩であるものを含む。これらは周知であり、且つ「米医師用医薬品便覧」、「メルクインデックス」及び「グッドマンギルマンの治療薬の薬理学的基礎(Goodman and Gilman’s The Pharmacological Basis of Therapeutics)」に記載されている。医薬として許容し得る塩は、例えば、ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム及びマグネシウム、並びに塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸などの無機酸により形成された塩、又はシュウ酸、フマル酸、酒石酸、マロン酸、酢酸、クエン酸、安息香酸などの有機酸により形成された塩である。
【0069】
本明細書記載の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物は、無毒の充填剤又はエンハンサー組成物を更に含むことができる。無毒の充填剤は、脂肪酸、アルコール、アミン、スクアレン、グリセロール及びそれらの混合物の群から選択され、エンハンサー組成物は、アミン及びインドール系誘導体由来の脂肪酸、これらのアミンと脂肪酸のエステル、ケトン、アセトン、アルコール又はステロールを含む。
【0070】
更に別の態様において、本明細書記載の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物は、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体のエステル、アルコール、ケトン、アミド、エーテル、アルデヒド又はステロール誘導体、及び/又はそれらの混合物である。
【0071】
本明細書記載の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物は、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物の生体活性構造が保存されるならば、化学担体中に製剤されることができる。かかる担体分子は、クラウンエーテルなどのクラウン化合物、リポソーム、ナノ粒子、微粒子及び担体タンパク質を含む。
【0072】
任意の型のリポソームを、本明細書で開示した情報化学物質組成物を捕捉するために使用することができる。ホスホグリセリド及びスフィンゴ脂質などの任意の天然又は合成のリン脂質を使用し、リポソームを製作することができる。ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)及びホスファチジルセリンなどの天然のリン脂質を、使用することができる。使用することができる合成リン脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン、ジステアロイルホスファチジルコリン及びジステアロイルホスファチジルエタノールアミンを含む。コレステロールは、適用に応じて、リポソームへ混入することができる。コレステロールは、コレステロールのPCに対するモル比1:1から又は2:1さえまでも変動する濃度で混入することができる。
【0073】
リポソームは、単層状小胞又は多層状小胞であることができる。リポソームはまた架橋されることもできる。
【0074】
本発明のリポソームは、パッシブローディング技術又はアクティブローディング技術を使用する、当該技術分野において公知の方法により製造することができる。機械的分散法の例は、脂質フィルム水和法、マイクロエマルション法、超音波処理、フレンチプレス法、メンブレン押出法、乾燥され再構成された小胞法、及び凍結解凍リポソーム法を含む。溶媒分散法は、エタノール注入、エーテル注入、二重エマルション小胞、逆相蒸発小胞及び安定した多層小胞を含む。コール酸塩及びTriton X(登録商標)100などの界面活性剤の使用、並びに透析、希釈又はカラムクロマトグラフィーによる界面活性剤の除去も、リポソーム調製に使用することができる。
【0075】
ナノ粒子もまた、本明細書記載の情報化学物質組成物の送達に使用することができる。これらの粒子は、100nm未満又はこれと等しいサイズを有する。これらは、天然の物質又は誘導体、デンドリマー、フラーレン、ポリマー、シリカ、アルブミン、金、ヒドロゲル及び当該技術分野において公知の他の物質から製作されることができる。ナノ粒子を製作するための天然の物質の例は、キトサン、デキストラン、ゼラチン、アルギネート、及びデンプンを含む。本発明のナノ粒子において使用することができる様々なポリマーは、ポリ乳酸、ポリ(シアノ)アクリレート、ポリエチレンアミン、ブロック共重合体、ポリカプロラクトン及びポリ(乳酸-グリコール酸)共重合体(PLGA)を含む。
【0076】
ナノ粒子は、デキストランコーティング、腸溶性コーティング、ポリマーコーティング、金コーティング、ポリエチレングリコール(PEG)コーティング及び炭水化物コーティングなど、様々な物質によりコーティングされることができる。
【0077】
ナノ粒子は、摩滅、熱分解、熱プラズマ法の使用、気相技術、マルチエマルション−溶媒蒸発法、ガスフローフォーカシング法、エレクトロスプレー、ナノ流体沈殿法、エマルション拡散-蒸発法、改変された位相反転/溶媒拡散法、又はゾル−ゲル法などの、様々な方法を用いて製造することができる。これらの方法は、文献において説明されており、且つ当業者に公知である。
【0078】
微粒子は、0.1〜100μMのサイズを有する粒子である。これらは、ナノ粒子の物質に類似した物質を用い、天然又は合成のポリマーで製作することができる。従って、セルロース、デンプン、リゾホスファチジルコリン、ポリ(乳酸)、ホスホリルコリン、ポリ(DL-ラクチド-コ-グリコリド)、アルギネート-スペルミン、ポリアミノ酸、ポリホスファゼン、アルブミン、デキストラン、オイドラギット(Eudragit)S 100、オイドラギットL 100、ゼラチン及び3-(トリエトキシシリル)プロピル-末端ポリジメチルシロキサンは、微粒子を製造するために使用される物質の一部である。本発明の微粒子はまた、他の物質とグラフト化することができる。例として、ポリメチルメタクリレート又はポリアクリレートでグラフト化されたデンプン微粒子、又はシリコーン-グラフト化されたデンプン微粒子である。
【0079】
微粒子はまた、ナノ粒子に関して先に説明したものと同じコーティングを用いて、コーティングされることもできる;すなわち、デキストランコーティング、腸溶性コーティング、ポリマーコーティング、金コーティング、オイドラギットS 100コーティング、PEGコーティング及び炭水化物コーティングである。
【0080】
微粒子の製剤において、噴霧乾燥、エマルション/蒸発、ダブルエマルション/蒸発、塩析、溶媒交換/沈殿、寒冷調製、及び油中油型エマルション/溶媒蒸発などの、いくつかの方法を、使用することができる。これら及び他の方法は、文献において説明されており(例えば、Kendallらの文献、Eur. J. Pharm, Sci 37, 284-290 (2009)を参照されたい)、且つ当該技術分野において公知である。
【0081】
本明細書記載の情報化学物質組成物はまた、粉末、錠剤、ペレット、カプセル、顆粒、粒状体、ドライフレークの形状又は用途に適した他の形状であることもできる。これはまた、ミセル中に配置された又はマイクロカプセル化された、持続放出製剤の形状であることもできる。情報化学物質組成物はまた、凍結乾燥されることもできる。
【0082】
一実施態様において、本明細書記載の情報化学物質組成物は、オイドラギット、エチルセルロース、微晶質セルロース、タルク及びステアリン酸マグネシウムなどの当該技術分野において公知のポリマーの化学製剤を使用し、無毒の水分散可能な錠剤中に製剤される。これらのポリマーは、情報化学物質組成物と混合され、次に打錠機を使用し、圧縮される。錠剤のサイズは、処理される面積のサイズ及び魚の数に応じて、変動してよい。
【0083】
前記製剤に添加することができる追加の担体は、グルコース、ラクトース、マンノース、アカシアゴム、ゼラチン、マンニトール、デンプンペースト、三ケイ酸マグネシウム、タルク、トウモロコシデンプン、ケラチン、コロイド状シリカ、ジャガイモデンプン、尿素、短鎖脂肪酸、中鎖トリグリセリド、デキストラン、オリゴフルクタン、及び固形、半固形、又は液体の形状の調製品の製造における使用に適している他の担体を含む。加えて、例えば、トリウロースなどの安定化剤及び乾燥剤として、補助の安定化剤、増粘剤又は着色剤を使用することができる。
【0084】
本明細書記載の情報化学物質組成物は、以下に示すように様々な溶液中に希釈されることができ、且つ様々な液体形状で使用することができる。
【0085】
合成されたパルミトレイン酸、又はそれらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物を含む溶液は、本発明の更に別の態様である。
【0086】
別の態様において、合成されたパルミトレイン酸、又はそれらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物、並びに無毒の充填剤又はエンハンサー組成物を含む溶液は、本発明の一部を形成している。
【0087】
この溶液は、約0.1ppm〜約10ppm又は約0.6ppm〜約6ppm又は約1ppm〜約5ppm又は約0.05ppm〜約20ppmの合成されたパルミトレイン酸、又はそれらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有することができる。無毒の充填剤又はエンハンサー組成物は、この溶液に添加することができる。
【0088】
別の態様において、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質を含有する溶液は、約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、又はそれらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する。
【0089】
この溶液は、溶媒を、合成されたパルミトレイン酸、又はそれらの情報化学物質の能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物へ添加することにより、製作され得る。溶媒の例は、アルカリ溶液、エチルアルコール、エタノール、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、生理食塩水などを含む。
【0090】
この溶液は、スプレー、エアゾール、水中ディフューザー、徐放マトリクスの形状中であることができ、注射可能であり且つ液滴の形状であることができる。これは、薬浴としての水へ添加されるか、又は魚飼料中に配置されるか、又は魚へ適用もしくは魚へ注射されることができる。従って、経口、局所的及び注射可能な処理は、本発明により包含される。本明細書記載の情報化学物質組成物の魚の環境への配置もまた、本発明により包含される。
【0091】
チーズ、トウモロコシ穀粒、塩エビ、ザリガニなどの魚誘引物質を、本明細書記載の組成物又は溶液へ添加することができる。
【0092】
海シラミを魚から剥脱する方法は、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物又は情報化学物質溶液を、魚へ投与することを含み、該方法は、本発明の更に別の態様である。
【0093】
海シラミを魚から剥脱する方法は、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに無毒の充填剤又はエンハンサー組成物及び許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物又は情報化学物質溶液を、魚へ投与することを含み、該方法は、本発明の更に別の態様である。
【0094】
海シラミを魚から剥脱する方法は、約0.1ppm〜約10ppm又は約0.6ppm〜約6ppm又は約1ppm〜約5ppm又は約0.05ppm〜約20ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する情報化学物質組成物又は情報化学物質溶液を、魚へ投与することを含み、該方法は、本発明の更に別の態様である。無毒の充填剤又はエンハンサー組成物もまた、この組成物へ添加することができる。
【0095】
この方法において、情報化学物質組成物又は情報化学物質溶液は、45分間〜2時間又は10分間〜5時間又は20分間〜3時間の期間投与される。この時間は、どのように本明細書記載の情報化学物質組成物又は本明細書記載の情報化学物質溶液が製剤されたかにより、左右される。
【0096】
海シラミの魚への付着を阻害するために使用する本明細書記載の情報化学物質組成物又は本明細書記載の情報化学物質溶液は、本発明の別の態様である。
【0097】
海シラミの魚への付着を阻害するために使用するこの情報化学物質組成物又は情報化学物質溶液は、約0.1ppm〜約10ppm又は約0.6ppm〜約6ppm又は約1ppm〜約5ppm又は約0.05ppm〜約20ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する。
【0098】
本明細書記載の情報化学物質組成物及び溶液は、脂肪酸を含む。脂肪酸は、固体形状で様々な企業から商業的に入手可能である。これらはまた、当該技術分野において公知の方法により、化学的又は酵素的に合成することもできる。しかし、脂肪酸を可溶化することは困難であるので、脂肪酸は一般に、一定に攪拌しながら、且つ約37℃〜約38℃、より好ましくは約38℃の温度で、溶媒へ添加される。
【0099】
本発明の組成物は、一旦入手されると、海シラミを阻害する効力について試験することができる。
【0100】
本発明は、ここで、以下の実施例の説明により例証されるが、これらは当然、事実上限定するものではない。更に、本発明の特徴は、以下の知見から明らかになるが、これらは当然、例証としてのみ提供され、本発明の範囲をいかなる意味においても限定するものではない。
【実施例】
【0101】
(実施例)
(実施例1-推定情報化学物質の化学的同定)
60匹のサケ科魚の魚(サケ36匹及びニジマス24匹)を、トポグラフィーによる粘液分析及び血液分析の両方のために採取した。サケ12匹の相補的集団を、全身の粘液の採取のために使用する一方で、タラ(Gadidae)科に属する非サケ科の魚12匹も、同じ目的のために採取した。タラ科の集団は、下記の属及び種により構成される:
−タイセイヨウタラ(ガドゥス・モルファ(Gadus morhua)):5匹の魚
−ポラキウス・ビレンス(Pollachius virens):10匹の魚
−ポラキウス・ポラキウス(Pollachius pollachius):2匹の魚
−メラノグラムス・アエグレフィナス(Melanogrammus aeglefinus):1匹の魚。
【0102】
血液試料及び血液塗沫を含むこれらの試料全てを、化学的に分析した。これらの血液試料を、タンパク質、コルチゾール血漿レベル及び揮発性化合物について分析する一方で、血液塗沫を、偽好酸球(heterophile)対リンパ球比(HLR)及び白血球細胞について分析した。粘液試料の半分は、免疫学的評価及びタンパク質同定のために、-18℃で保存する一方で、残りの半分は、揮発性化合物の同定に使用した。
【0103】
血液塗沫は、白血球の計数のために、メイ-グルンワルド-ギムザ法に従い染色し、及び偽好酸球対リンパ球比(HLR)の算出を行った。基本的に、この方法は、メタノール中の血液塗沫の15分間の固定、メイ-グルンワルドによる5分間の染色、ギムザによる10分間の染色、pH6.8の緩衝液中のすすぎ、アセトン中の2回の脱水、キシレン中の3回の清澄化、並びに合計60個の細胞までの白血球、偽好酸球及びリンパ球の計数を伴った。
【0104】
これらの血液試料は、Enzo(登録商標)Life Sciencesからの、ELISA試験を使用し、コルチゾール血漿レベルの評価について試験した。
【0105】
揮発性化合物は、ジクロロメタンなどの、選択的水溶性又は脂溶性の異なる溶媒を使用し、最初に抽出した。かかる抽出物は、GC-GC/MS法を用いて分析した。クロマトグラム及びそれらの改変で更に分析した。
【0106】
現時点までに、考慮されてきた唯一の指標は、コルチゾールの血漿濃度であった。測定された値は、文献において公表された値と同等であった。にもかかわらず、いくつかの異常値が、特にサケから、得られた。
【0107】
サケにおいて、寄生生物を有さない魚と比較して、海シラミを保有する魚との間に有意差は存在しなかった。これら2群は、およそ100,000pg/mlと高濃度の血漿コルチゾールを示すが、これら2群の試料は、試料採取直前に解体された(slaughtered)魚から得られた。対照的に、ニジマスにおいては、外寄生していない魚(61,408.75pg/ml)と比べ、外寄生された魚はより高い血漿コルチゾール濃度(78,490.55pg/ml)を有している。
【0108】
サケにおいて差が存在しないことは、血液採取前の魚を解体することに関連しているかもしれない。
【0109】
血液試料及び粘液試料を、ジクロロメタンにより抽出し、且つPerkin Elmer社により製造されたTurbo質量分析計を使用するガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)に供した。検出は、180℃でエネルギー70eV(EI+)を使用する衝突で実施した。長さ30m(内径=0.25mm;膜厚(film)25μm、1/20のスプリット及び45秒のスプリット/スプリットレス)を有するJWカラムDB 5型を、使用した。
【0110】
GC/MS分析から得られた特定の分子の構造を確認するために、メタン中の正化学イオン化(CI+)を行い、分子ピーク(分子量)を可視化した。この方法は、当該技術分野において周知である。
【0111】
これらの結果を、データベースを用いて分析し、最も可能性のあるスペクトルを得た。これらのデータを含むデータベースは、当該技術分野において周知である。
【0112】
5種の可能性のある興味深い情報化学物質が、同定された。これらの情報化学物質を、以下に示す。
(ポラキウス由来の推定アロモン(PASA:ポラキウス抗海シラミアロモン))
この分泌は、スケトウダラ(ポラキウス・ビレンス)から得られた。これは、揮発性化合物の会合であり、これはサケ科魚には存在しない。この分泌は興味深く思われ、その理由は、これらの魚の集団は、サケ科魚が保存される木箱の周りに豊富に存在すると思われるからである。更に、これらの野生魚(それらのほとんどは、捕獲後にサケ用ペレットの吐出を示した)により失われるサケ飼料の消費、並びに飼料中及びサケ科魚の皮膚粘液中に既に存在する揮発性化合物がこれらの野生魚の皮膚粘液中に存在しているにもかかわらず、これらの魚は、海シラミにより攻撃されなかった。
【0113】
(健康なサケ科魚由来の推定アロモン(HRSA1及び2:健康な抵抗性サケ科魚アロモン1及び2))
外寄生されていないサケ及びニジマスの皮膚粘液中に、有効な免疫系により、コペポダイトが魚でコロニー化するのを避けることを補助し得る揮発性化合物の会合が、認められた。更に、生存している外寄生されないサケ又はマスの分析に対するこの化合物の会合を、外寄生された魚と比較することにおいて、この化合物の会合を、2つの亜群HRSA1とHRSA2に更に分割することが可能であった。
【0114】
(外寄生されたサケ科魚由来の推定カイロモン(VSSK:易攻撃性のサケ科魚海シラミカイロモン))
外寄生されたサケ及びニジマスの皮膚粘液において、不全化され且つ寄生生物に対し易攻撃性の免疫系を持つ魚をコペポダイトが選択することを補助し得る揮発性化合物の会合が、認められた。この分泌は、海シラミを保持する魚において増加する別の化学物質パターンから識別されるべきである。
【0115】
(推定海シラミ誘引フェロモン(LHSP:レペオフセイルス宿主シグナル伝達フェロモン))
この分泌は、宿主でのシラミの成長を達成した後に、シラミにより放出され得るか、又は海シラミにより誘導された、魚からの分泌であり得る。
【0116】
以後のスクリーニング試験全てに関して、これらの溶液は、ブラインドとされ、且つ推定アロモンについてはA、B、D、E、Fと、及び推定カイロモンについてはM、N、P、Q、R、Sとされた。これらの溶液は、下記実施例において説明される。
【0117】
(実施例2−推定情報化学物質のスクリーニング)
スマイリーチャンバー試験(図2及び図3)を、推定情報化学物質の作用の評価に使用した。これは、通常の嗅覚測定器から改作された試験である。
【0118】
各新規情報化学物質について、4個の600mlビーカー及び4本の長さ2mのチューブのセットに分けた。スマイリーチャンバー及びコペポダイト(cop)シリンダーを、暖かい新鮮な流水を用い30秒間洗浄し、温かい新鮮な水を流しながら界面活性剤で30秒間洗浄し、更に30秒間温かい新鮮な水を流し、チャンバーを空にし、且つチューブホルダー及びシリコーンに集中してチャンバー内に2-プロパノールを噴霧し、再度温かい新鮮な水を30秒間流し、水ディスペンサーから冷水を流し、且つ最後に海水を添加した。必要ならば、この洗浄プロトコールを、数回繰り返した。
【0119】
その後3個のビーカーに、海水300〜500mlを充填した。残りのビーカーには、6ppmの情報化学物質を充填した。スマイリーチャンバーには、海水300ml、又はチューブを覆うのに丁度十分な量を充填した。ポンプスピードは、20RPM(1分間に5.49ml)に設定した。これらのチューブは、チャンバーの対照側と試験側及びビーカー内で等しくなるように設定した。
【0120】
本実験を開始するために、コペポダイトシリンダーを、2個の出口チューブの中間に配置し、且つ手を使ってシリンダーに圧力をかけながら、コペポダイトを、シリンダーへと注いだ。コペポダイトが、確実にシリンダーから逃げられないことを、チェックした。発泡スチレン壁を、スマイリーチャンバーの周りに配置し、このチャンバーの上に配置した2個の照明をつけた。次にポンプのスイッチを入れ、且つタイマーを始動した。30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含有する物質A、並びに50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含有する物質Bの、チャンバーへの流入を38秒後に開始した。3分30秒後に、コペポダイトの入ったシリンダーを、まっすぐにゆっくりした動きで持ち上げ、カメラを蓋に配置した。写真を、T0、T3分、T6分、T9分及びT10分に撮影した。10分後に、ポンプを止め、実験を終了した。カメラ、蓋及び発泡スチレン壁を取り除き、対照側と試験側の間の活動の差異の目視による印象を観察し、更にコペポダイトを目視によりおおまかに計数した。このデータを、反応したコペポダイトが一方向に移動したかどうかを見るために、分析した。
【0121】
着色剤による本試験の観察は、6分後に片側から他側への還流が存在し、これはこれら2つの流れの混合に繋がることを示した。その理由に関して、評価の本質的パラメータは、T6分の写真であった。
【0122】
本プロトコールに従い、推定アロモンを、馴化水と競合して、試験した。この馴化水は、サケ粘液を混合した海水からなった。魚を傷つけること、又は試料を何らかの血液で汚染することを避けるために、粘液を、500gのサケを使い捨てプラスチックバッグ内に15秒間配置することにより得た。粘液は、プラスチックバッグの壁に付着し、且つ次にこの粘液を、海水600mlと混合した。この馴化水は、本試験に使用する前に、+4℃で貯蔵した。
【0123】
3種の推定カイロモンである、30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するE;30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%パルミチン酸を含有するQ;並びに、30%ラウリン酸、30%パルミチン酸及び40%オレイン酸を含有するR;並びに、2種の推定アロモンである、30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含有するA、並びに50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含有するBを試験した。馴化水による試験を使用し、試験に必要な適切な濃度を確定した。
【0124】
3種の試験したカイロモン中で、30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するEが、最も有効な化合物であり、これはまさに目視可能な誘引作用を示し、且つコペポダイトにおいて明確な振動(agitation)を誘導した。参照誘引物質であるイソホロンを対照として使用したことを考慮すると、30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するE溶液は、まさに同等の有効性を示した。30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%パルミチン酸を含有するQは、用途は広いが、同等の作用ではなかった。
【0125】
30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含有するEは、易攻撃性のサケから得られた推定カイロモンであるが、これは興味深いカイロモンであるように思われ、その有効性は、更なる試験時に確認されなければならない。
【0126】
前述のように、コードEは、推定カイロモン群VCCMIS(外寄生されたサケ科魚の皮膚粘液由来の揮発性化合物)に対応していた。
【0127】
アロモンである、30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含有するA並びに50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含有するBは、外寄生されたケージ内で生存している外寄生されないサケ及びマスの分泌液において同定され、馴化水と競って試験した。Bは、4回の反復実験において、いかなる目視可能な作用も示さなかった。対照的に、先に説明したように、Aは、若干の興味深い作用を示した。10回の2つ組実験を行い、そのうちの5回のみが有用なデータをもたらした。Aは、馴化水の誘引作用を阻害するように見えた。先に説明したように、Aは、推定アロモンHRSR(健康な抵抗性サケ科魚放出)群に属した。
【0128】
(実施例3−直線状嗅覚測定器によるスクリーニング)
この試験の目的は、コペポダイトの計数においてより優れた精度を伴う、より正確な結果を得ることであった。コペポダイトは制限された移動性を有するように見えるので、嗅覚測定器は、3つのコンパートメントに分割された小型装置を用い、単純化した(図4)。このシステムは、情報化学物質を運搬する流れの対称性について最初に検証した(一つの流れは、溶媒としてエチルアルコールを使用する参照を伴い、及び一つの流れは、被験混合物を伴った)。このプロトコールの別の改善点は、嗅覚測定器に導入されたコペポダイトの数及び各コンパートメントで計数されたコペポダイトの数が、正確に計数されることが確かである計数方法の開発であった。
【0129】
コペポダイトを計数するために、最初に、飼育タンクからコペポダイトを採取して、ドロップへ分割し、ELISA型プラスチックプレートのウェル内に配置した。実体顕微鏡を使用し、コペポダイトを計数し、これによりコペポダイトの正確な数を把握し、これを嗅覚測定器へ注入した。直線状嗅覚測定器は、3つの内部コンパートメント、すなわち、右及び左のブランチ、並びに中央領域に加え、コペポダイトをペトリ皿に収集し、濾過して、コペポダイトを計数する外部流出領域に分かれていた。
【0130】
30匹のコペポダイト幼生を、嗅覚測定器のメインブランチに導入し、そこでこれらを、定常流(0.84ml/秒)に、温度8℃〜12℃で遭遇させた。この流れは、各々250mlのボトルから流れる、2つの部分流に分けられた。一つの部分流からは、コペポダイトは、被験製品の溶媒(エチルアルコール)のみを受け取り、他方の部分流からは、コペポダイトは推定情報化学物質の混合物を10ppmの濃度で受け取った。本試験は、10分間試行した。その後、流れを停止し、手術用クランプを嗅覚測定器へのチューブにはめ、4領域に含まれた水を遮断した。この水を実体顕微鏡により検査し、コペポダイトを計数した(図5)。
【0131】
3種の推定アロモン混合物(A、B、D)及び4種の推定カイロモン(E、Q、R、S)を試験した。アロモン混合物は、下記の組成物を含んだ:
A:30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含む。
B:50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含む。
D:60%オレイルアルコール及び40%スクアレンを含む。
【0132】
カイロモン混合物は、下記の組成物を含んだ:
E:30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含む。
Q:30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%パルミチン酸を含む。
R:30%ラウリン酸、30%パルミチン酸及び40%オレイン酸を含む。
S:40%ラウリン酸、40%ミリスチン酸及び20%オレイン酸を含む。
【0133】
結果は、下記表1〜6に示している。統計解析は、ウィルコクソン符合付き順位和検定により計算した。
【0134】
表1−アロモンA
【表1】
【0135】
このデータは、番号6由来のデータを除き再計算し、下記表2に示している:
【0136】
表2−#6以外のアロモンA
【表2】
【0137】
以下のグラフは、平均のコペポダイト数は、アロモンAに関して、処理ブランチにおいてよりも、プラセボブランチにおいて、有意に高いことを示している。
【0138】
【化1】
【0139】
表3−カイロモンE
【表3】
【0140】
表4−カイロモンQ
【表4】
【0141】
表5−カイロモンR
【表5】
【0142】
表6−カイロモンS
【表6】
【0143】
本試験において使用した全ての混合物の間で、真に興味深い結果を提供した唯一のものは、Aであった。この溶液は、推定アロモン混合物とみなすことができる。対照的に、Eによる試験は、いくつかの矛盾する結果につながり、この製品は、有意な誘引作用を生じなかった。先の試験との矛盾は、スマイリーチャンバーシステムにおける正確さの欠如の結果であるかもしれない。
【0144】
(実施例4:外寄生試験における推定情報化学物質の評価)
先の試験の結果を考慮し、実施例1から3において示した先の試験時に、積極的に選択されるか又は試験されなかった、推定情報化学物質A、B、E、F及びPに焦点を当てた。これらの結果を基に、コペポダイトの剥脱に繋がる特異的シグナルの同定は、識別されるべく試行されるであろう。
【0145】
以下は、情報化学物質A、B、E、F及びPにおいて示した化合物である:
A:30%パルミトレイン酸、20%アルデヒドC13トリデカナール及び50%オレイルアルコールを含む。
B:50%パルミトレイン酸及び50%スクアレンを含む。
E:30%パルミトレイン酸、30%オレイン酸及び40%スクアレンを含む。
F:50%スクアレン、30%アルデヒドC13トリデカナール及び30%オレイン酸を含む。
P:17%ミリスチン酸、17%パルミチン酸、56%パルミトレイン酸及び10%オレイン酸を含む。
【0146】
この試験は、若いサケ(体重ほぼ70gのスモルト)を、流出により、4個の直径23cmのタンクからなる試験装置内で、コペポダイトの高密度群に45分間曝した。本試験装置は、魚の周りに影又は制御されない光をもたらさないテントにより保護した。光は、向光性を持つコペポダイトの行動を変更し得る。各タンクは、45分間、スモルトを収容した(図6)。
【0147】
コペポダイトを、最初にそれらの飼育タンクの魚から採取し、実体顕微鏡で計数した。各60匹のコペポダイトを含む、コペポダイトの4つの外寄生用量を、本試験の各試行のために調製した。スモルトを、処理液(又はプラセボ)を含有するタンクに配置し、その活性物質の濃度は6ppmであった。この薬浴は、10分間維持した。
【0148】
次にスモルトを、先の薬浴で使用した同じ処理(製品又はプラセボ)の3ppmで維持したタンク内に配置し、試験を開始した。このプロセスの目的は、スモルトの皮膚上の活性製品の濃度の劇的な減少を防止することであった。
【0149】
最初の10分間に、流出を開放し、テントを閉鎖した。その時点で、各タンクを、酸素添加した液体の最初の容積に達するまで、補充した(同じ溶液、製品又はプラセボで補充した)。次に流出を5分間閉鎖し、外寄生用量を、タンクに導入した。次に流出を開放し、且つ10分毎に補充しながら、30分間開放したままにした(テントは開放せず)。
【0150】
コペポダイトへの45分曝露後、スモルトを、麻酔薬Benzoak(登録商標)を、通常の投与量30〜40mg/lの10倍の濃度である中毒量で投与することにより安楽死させた。
【0151】
死亡した魚をプラスチックバッグ内に配置し、その中で魚をこすり且つ海水によりすすいだ。図7に示したように、魚の皮膚を金属製スプーンでこすり、その上に付着した可能性のあるコペポダイトを全て除去した。
【0152】
各魚を洗浄し、こうして魚の皮膚から、コペポダイト及びシェル(shell)の全てを剥脱した。この洗浄から収集した液体を、濾過し、寄生生物を計数した。コペポダイトは、フィルター上で計数し、魚の体の外側上のコペポダイトの数を得た。次に鰓を切開し、鰓上のコペポダイトの数を計数した。
【0153】
この試験の第一相は、本試験のレプリカ間で、体上及び鰓上のコペポダイトの数を比較した。この相の目的は、本試験を検証し、且つその標準偏差を測定することであった。
【0154】
この試験の第二相は、5種の溶液について、処理したスモルトと、エチルアルコールを加えた海水中に浴しただけの対照としての参照スモルトの間で、体上及び鰓上のコペポダイトの数(下記表においてCopと略した)を比較した。結果を下記表に示している。
【0155】
表7−参照/対照
【表7】
【0156】
表8−情報化学物質A
【表8】
【0157】
表9−情報化学物質B
【表9】
【0158】
表10−情報化学物質E
【表10】
【0159】
表11−情報化学物質F
【表11】
【0160】
表12−情報化学物質P
【表12】
【0161】
この試験の再現性は、魚体上のコペポダイトの数はなぜか一定のようで、非常に興味深いように思われた。文献(Tullyらの文献、2002)によると、この種の外寄生は低く、且つこの試験における非常に高濃度のコペポダイトにきっと関連しているであろう。
【0162】
これらのデータは、試験した溶液のいずれについてもいかなる有意な作用も提供しない。先に説明したように、Aで得られた結果に注目すると、この溶液は、先行する試験と比べて、この試験において同じ作用を示さないように見える。先に説明したように、Aは、スモルト上のコペポダイトの付着を阻害することは可能ではない。有意性を欠くにもかかわらず、先に説明したようにAで処理したスモルトにおける体のコペポダイトの数は、参照又は他の推定アロモンと比べ、若干低いように見える。興味深いことに、それらの推定混合物は全て、1種の共通化合物であるパルミトレイン酸を含む。
【0163】
(実施例5−パルミトレイン酸による実施例4の繰り返し)
実施例4と同じ試験を、パルミトレイン酸を用いて繰り返した。結果は、下記表13に示している。
【0164】
表13−パルミトレイン酸
【表13】
【0165】
パルミトレイン酸は、外寄生の顕著な減少をもたらした。
この試験は、Bronらの文献(1993)及びTullyらの文献(2002)のデータと比べ、このような実験的外寄生により露呈した「体寄生」の可能性の疑問を呈した。コペポダイトは、突然の加速(accelerations)により影響を受けた移動している体に付着する傾向がある(Heuch及びKarlsenの文献、1997)。この実験において、コペポダイトの高密度集団は、魚の周りに継続して存在した。このことは、有効なアロモンの存在下であっても、コペポダイトの付着-剥脱の複数回の連続に繋がることは、当然疑わしい。従って、本試験の終了時には、常に体上に近時に付着したいくつかのコペポダイトが存在し、これらは死んだ魚上で採集した場合に、剥脱する時間が無かった。このような仮定は、偽陰性の結果のリスクに対し、可能性のあるアロモン性製品を検証する何らかの試みを露呈させる。
【0166】
(実施例6−アロモンパルミトレイン酸の検証)
コペポダイトは死んだ魚上で採集される前に剥脱する時間が無かったという仮説を確認する最良の方法は、3つのブランチプロトコール、すなわち、先のプロトコールと同じ2つのブランチ(参照ブランチ及び処理ブランチ)に加え、その種がレペオフセイルスに対する天然の宿主ではない魚を使用する、陰性参照を含む新たなブランチにおいて同じ試験を試行することであった。
【0167】
この実験において、合成されたパルミトレイン酸は、3つの魚群、すなわち、(1)陽性参照:処理しないスモルト;(2)陰性参照:サイズが同等の幼若タラ(タイセイヨウタラ(ガドゥス・モルファ);並びに、(3)処理群:パルミトレイン酸を受け取るスモルトであること以外は、ほぼ同じプロトコールに従い、試験した。
【0168】
実施例4に説明したものと同じ実験を行った。結果は、下記表14及び15に示している。
【0169】
表14
【表14】
【0170】
表15
【表15】
【0171】
ボックスプロットの結果を、図8に示している。これらの結果の統計解析を行い、図9から11に示した。2群以上について計算された変数の分散の等質性を評価するための推測統計である、ルビーン検定を行った。結果は、下記表16に示している。
【0172】
表16
【表16】
【0173】
分布は、これら3群について正規であった。
テューキーのHSD検定を行った。結果を下記表17に示す。
【0174】
表17
【表17】
【0175】
これらの結果は、対照サケと対照タラの間、及び対照サケと処理サケの間で高い有意差を示したが、処理サケと対照タラの間で有意差を示さなかった。
【0176】
(考察及び結論)
実施例4から6の「受動的体への外寄生」の仮説が確認された。タラは、レペオフセイルス・サルモニスの天然の宿主ではない魚であるが、タラ上に付着しているコペポダイトが存在する。鰓上の外寄生もまた、実験的外寄生における高密度のコペポダイトに大部分は関連した受動的外寄生であった。
【0177】
アロモンであるパルミトレイン酸は、サケの体上に付着したコペポダイト数の高度に有意な減少を誘導する。合成されたパルミトレイン酸で処理されたサケは、レペオフセイルス・サルモニスについて天然には外寄生されない種であるタラと同等な様式で外寄生される。
【0178】
(実施例7−タイセイヨウサケ(サルモ・サラル)におけるレペオフセイルス・サルモニスコペポダイトの外寄生挙動の阻害剤としての海ジラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質の異性体の有効性)
この実施例の目的は、タイセイヨウサケ(サルモ・サラル)におけるレペオフセイルス・サルモニスコペポダイトの外寄生挙動の阻害剤としての海ジラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)の異性体の有効性を試験することであった。
【0179】
この実施例において使用した海ジラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)の異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸であった。
【0180】
本試験は、4匹の魚の4ラウンドを用い、そのうちの8匹は、trans-9-ヘキサデセン酸により処理し、且つ他の8匹は、対照として使用して実行された。各ラウンドに関して、4匹の魚、すなわち、2匹の処理した魚及び2匹の対照を試験した。
【0181】
本試験に組み入れるために、スモルトは、体重70g〜150gを有し、且つコペポダイトは、活発に遊泳することが必要とされた。スモルトが疾患、鱗の喪失、鰭の損傷、白内障及び/又は遊泳異常を有する場合、これらは、本試験においては使用しなかった。コペポダイトが刺激後動けない場合、これらは本試験から除外された。
【0182】
各ラウンドに関して、4匹の魚を捕獲し、海水1.75リットルを供給した4個の2リットルの平底ビーカーに導入する。処理する魚には、trans-9-ヘキサデセン酸6ppmを有する海水を使用する一方で、対照においては海水のみを使用した。処理又は対照の0.52mlを、海水1.75リットルに直接注入した。4匹の魚は、この溶液中で10分間浸した。
【0183】
次に前記魚を、trans-9-ヘキサデセン酸3ppm又は単純に海水の対照のいずれかで処理した海水3.5リットルを供給した別の3.5リットルのビーカーに移した。この処理又は対照の0.52mlを、海水3.5リットルに直接注入した。平底ビーカーから0.875リットルが出るように、平底ビーカーにはバルブを装着した。魚をこれらのビーカーに導入した時、バルブを開けた。バルブを開けて10分後、ビーカーには、処理のtrans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。その10分後(ビーカーへの魚の導入後20分)で、バルブを閉じ、且つ1匹の魚につき60匹のコペポダイトを、各平底ビーカーに注入した。5分後(ビーカーへの魚の導入後25分)、バルブを開けた。10分後(ビーカーへの魚の導入後35分)、各ビーカーに、trans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。10分後(ビーカーへの魚の導入後45分)、各ビーカーに、trans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。10分後(ビーカーへの魚の導入後55分)、各ビーカーに、trans-9-ヘキサデセン酸0.875リットル又は対照の海水0.875リットルのいずれかを供給した。
【0184】
次に、麻酔薬製品の過剰量により魚を殺傷するために、Benzoak(登録商標)の2mlを、各平底ビーカーに注入した。次に魚を、プラスチックバッグに導入し、これをコード化した。魚を、鰓室内に手術用プライアーを用いて保持し、魚上の異なる部位を3回こすった。魚の頭部を最初にこすってから、プラスチックバッグの中ですすぎ、次に魚の下側をこすり、プラスチックバッグの中ですすぎ、その後魚全体をこすり、プラスチックバッグの中ですすいだ。次に魚を、プラスチックバッグから取り出し、秤量した。次にプラスチックバッグの内容物を、フィルター上へとあけ、その後コペポダイトの数を、拡大鏡を用い、各フィルター上で計数した。このプロセスを、他の魚及び他の魚のラウンドについて繰り返した。
【0185】
表18は、試験した魚のラウンド、及びそれらがtrans-9-ヘキサデセン酸と対照の海水のどちらにより処理されたかを、例示している。
【0186】
表18
【表18】
ここで、表18のSCAIS異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸を意味する。
【0187】
表19は、この実施例から得られた結果である。
【0188】
表19
【表19】
ここで、表19のSCAIS異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸を意味する。
【0189】
除外基準又は欠損試験の場合においては、処理した8匹及び対照8匹が得られるまで魚を留保し(reserve)、この実験を繰り返した。外れ値(非定型値)は、不合理な結果とみなされた場合、データから除外した。データのセンタリング及び減数(reduction)が、絶対値で3を上回る場合、これは外れ値と見なした。非定型値は、この試験においては認められなかった。
【0190】
データは、9.4 SASソフトウェア(2002-2012、SAS Institute社(Cary, North Carolina, 米国)による)を用いて、解析した。全てのデータは、SAS 9.4 ソフトウェアの単変量プロシジャを使用する残差診断プロットを用いて、正規性の仮定からの逸脱の証拠について検定した。ボディマス及び付着したコペポダイトの数に準じた対照群と処理群の間の比較は、正規性及び分散に応じて、t検定プロシジャを使用するスチューデントt検定、又はSAS 9.4ソフトウェアにおけるnpar1wayプロシジャを使用するウィルコクソン二標本検定を用いて行った。分散の均質性は、t検定プロシジャを使用するフィッシャー検定を用いて実証した。有意性閾値は、通常通り5%に設定した。
【0191】
表20
【表20】
ここで、表20のSCAIS異性体は、trans-9-ヘキサデセン酸を意味し、Nbは、数を意味する。
【0192】
正規性に関する検定を行った。trans-9-ヘキサデセン酸に関する結果を、下記表21に示す。
【0193】
表21
【表21】
【0194】
正規性に関する検定を行った。対照に関して結果を下記表22に示す。
【0195】
表22
【表22】
【0196】
使用した全ての検定は、trans-9-ヘキサデセン酸及び対照について試験した魚に関するボディマスの正規性を結論付けた。
【0197】
分散の均質性に関するフィッシャー検定からの結果を、下記表23に示す。
表23
【表23】
処理群間の分散は、「ボディマス」に関して均質であった。
【0198】
スチューデントt-検定を使用し、結果を下記表24に示す。
【0199】
表24
【表24】
【0200】
サケは、「ボディマス」別の処理群間で均質であった(p=0.4027)。
【0201】
(結論)
タイセイヨウサケは、「ボディマス」に関して処理群間で均質である。trans-9-ヘキサデセン酸(SCAIS異性体)処理したサケにおいて付着したコペポダイトはより少ない数であり、trans-9-ヘキサデセン酸(SCAIS異性体)は、タイセイヨウサケに付着したコペポダイト数に対し、有意な作用を有している。
【0202】
(実施例8−海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質の錠剤の製作)
海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質を含有する水分散性錠剤を、下記のように製作する。海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質13.2gを、オイドラギットRLの150g、酢酸エチル200g及び微晶質セルロース110gと配合する。2.5%ステアリン酸マグネシウム及び5%タルクを一緒に配合し、この情報化学物質を含有する最初の製剤に添加する。この混合物を、直径8mmの平板パンチを備えたステーションロータリー打錠機を使用し圧縮する。
【0203】
(実施例9−海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質の有効性)
この実施例の目的は、水分散性錠剤により連続して放出される、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)の、タイセイヨウサケ(サルモ・サラル)スモルトにおけるレペオフセイルス・サルモニスコペポダイトの外寄生挙動に対する有効性を評価することであった。
【0204】
この実施例において使用した海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質(SCAIS)は、cis-9-ヘキサデセン酸(パルミトレイン酸)であった。
【0205】
体重およそ90gを有するSALMAR(登録商標)(Daugstad 6392 Vikebukt, ノルウェー)社のスモルト期の72匹のタイセイヨウサケ(サルモ・サラル)を、この試験において使用した。使用した2,400匹のコペポダイトは、レペオフセイルス・サルモニス種起源のIlab(登録商標)(Bergen, ノルウェー)由来であった。
【0206】
この試験に組み入れるために、スモルトは体重70g〜150gを有し、且つコペポダイトは、活発に遊泳することが必要とされた。スモルトが疾患、鱗の喪失、鰭の損傷、白内障及び/又は遊泳異常を有する場合、これらは、本試験においては使用しなかった。コペポダイトが刺激後動けない場合、これらは本試験から除外された。
【0207】
実験時に、スモルトが背を下にして泳いだ場合、これらは本試験のデータから除外した。
【0208】
外寄生試験は、処理の適用後、1時間、24時間、72時間及び120時間で測定した。血液試験は、処理後0時間、1時間、24時間、72時間及び120時間で行った。
【0209】
1個のタンクにつき魚40匹を使用し、本試験は、タイセイヨウサケスモルトの2つの平行群で行い、一群は、飼育タンク内に存在する水の半分の位置に配置したストリングバッグ中のcis-9-ヘキサデセン酸の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質錠剤で処理し、並びに他の群は、エチルアルコールのみを使用する対照であった。
【0210】
血液試料を得るために、4匹の魚を、2個のタンクの各々中に捕獲し、Benzoak(登録商標)0.7ml/lの麻酔薬槽中に導入した。1分後、血液試料を、0.6mm針のついた2.5ml注射器を使用し、魚の尾静脈から採集した。血液液滴を、スライドガラス上に配置し、血液塗沫を、プラスチック製ストリップを使用し行った。偽好酸球とリンパ球の比(H/L)を、ライト-ギムザ染色の改変された染色であるディフ−クイック染色を用い、これらの血液塗沫から測定した。残りの血液は、4mlのヘパリン処理チューブに注入し、後続の血漿コルチゾールの分析まで、-18℃で冷凍庫内で貯蔵した。総血漿コルチゾール試験は、1:25希釈(ng.ml-1)した血液試料から、ELISA試験キットにより分析した。
【0211】
この処理の適用後1時間、24時間、72時間及び120時間で実行した外寄生試験は、下記の方式で実行した。2匹の魚を、2個のタンク(対照及び被験)の各々中に捕獲し、各魚の当初のタンクから採取した水3.5リットルを供給した4個の3.5リットル平底ビーカーへ導入した。平底ビーカーには、溶液0.875リットルがビーカーに導入された時点で、等量の溶液が平底ビーカーから出るように、バルブを装着した。魚をこれらのビーカーに導入した時、バルブを開けた。魚の導入の10分後、平底ビーカーには、それらの各溶液(被験又は対照)0.875リットルを供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後20分)で、バルブを閉じた。1匹の魚につき60匹のコペポダイトを、各平底ビーカーに注入した。コペポダイト注入の5分後(平底ビーカーへの魚の導入後25分)、バルブを開けた。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後35分)、各平底ビーカーに、cis-9-ヘキサデセン酸又は対照のその各々の処理を供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後45分)、各平底ビーカーに、cis-9-ヘキサデセン酸又は対照のその各々の処理を供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後55分)、各平底ビーカーに、cis-9-ヘキサデセン酸又は対照のその各々の処理を供給した。10分後(平底ビーカーへの魚の導入後65分)、麻酔薬製品の過剰量により魚を殺傷するために、Benzoak(登録商標)の2mlを、各平底ビーカーに注入した。魚が死んだ時点で、これらをプラスチックバッグに個別に導入した。
【0212】
各魚を、魚の鰓室へと導入した手術用プライアーを用い、プラスチックバッグ内に保持した。次に魚をプラスチックバッグ内で3回こすり落とした;すなわち、魚の頭部をこすり、水ですすぎ、魚の下側をこすり、水ですすぎ、並びに魚全体をこすり、水ですすいだ。次に魚を、バッグから取り出し、秤量した。次にプラスチックバッグの水内容物を、フィルター上へあけ、コペポダイトを収集した。各フィルター上のコペポダイトの数を、拡大鏡を用い計数した。
このプロセスを、魚の他の7ラウンドについて繰り返した。
【0213】
除外基準又は欠損試験の場合において、この実験は、魚を留保し繰り返した。喪失データ及び外れ値を管理するために、この種のデータは、全般的結果に含まなかった。
【0214】
この予備分析は、処理群において好ましい陽性の傾向を示した。対照スモルトに付着したコペポダイトの平均数は、15.4であったのに対し、処理群に付着した平均数は、10.6であった。これらの結果は、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質であるcis-9-ヘキサデセン酸は、迅速且つ効果的に魚の粘液に結合し、閉鎖された3.5リットルタンク内で1匹の魚につき60匹のコペポダイトという高度に過酷な外寄生試験において有意な防御を提供することを示している。
【0215】
パルミトレイン酸(cis-9-ヘキサデセン酸)及びtrans-9-ヘキサデセン酸の異性体は、サケジラミの許容し得る宿主の選択を担い得る、SCAIS(海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質)と見なすことができる。パルミトレイン酸は、低分子量化合物であるが、多くの種において代謝産物として認められ、且つその非毒性がわかっており、サケ科の養魚における海シラミの外寄生の防止にとって有望な選択肢である。
【0216】
本発明は、様々な好ましい実施態様に関して説明されているが、当業者は、それらの範囲から逸脱することなく、様々な改変、置換、省略及び変更を、行うことができることを理解するであろう。従って、本発明の範囲は、それらの同等物を含む、下記の請求の範囲によって限定されることが意図されている。
本件出願は、以下の構成の発明を提供する。
(構成1)
合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成2)
約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱するその能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、構成1記載の情報化学物質組成物。
(構成3)
約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、構成1記載の情報化学物質組成物。
(構成4)
約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに無毒の充填剤及び/又はエンハンサー組成物並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成5)
約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに無毒の充填剤及び/又はエンハンサー組成物並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成6)
前記許容し得るビヒクルが、医薬として許容し得るビヒクル又は獣医学的に許容し得るビヒクルである、構成1〜5のいずれか一項記載の情報化学物質組成物。
(構成7)
無毒の充填剤又はエンハンサー組成物を更に含有する、構成1記載の情報化学物質組成物。
(構成8)
前記無毒の充填剤が、脂肪酸、アルコール、アミン、スクアレン、グリセロール及びそれらの混合物の群から選択される、構成4〜7のいずれか一項記載の1又は複数の情報化学物質組成物。
(構成9)
前記エンハンサー組成物が、アミン及びインドール系誘導体由来の脂肪酸、これらのアミンと脂肪酸のエステル、ケトン、アセトン、アルコール又はステロールを含む、構成4〜7のいずれか一項記載の1又は複数の組成物。
(構成10)
前記合成されたパルミトレイン酸の誘導体が、合成されたパルミトレイン酸のエステル、合成されたパルミトレイン酸アルコール、合成されたパルミトレイン酸のケトン、合成されたパルミトレイン酸アミド、合成されたパルミトレイン酸エーテル、合成されたパルミトレイン酸アルデヒド又は合成されたパルミトレイン酸ステロールである、構成1〜9のいずれか一項記載の1又は複数の組成物。
(構成11)
前記1又は複数の組成物が、粉末、錠剤、ペレット、カプセル、顆粒、粒状体、ドライフレークの形状であるか、ミセル、リポソーム、ナノ粒子、微粒子内に配置されたか、マイクロカプセル化されたか又は凍結乾燥された、持続放出製剤の形状であることができる、構成1〜10のいずれか一項記載の1又は複数の組成物。
(構成12)
構成1〜10のいずれか一項記載の海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質を含有する1又は複数の組成物を含む、1又は複数の溶液。
(構成13)
合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物の約0.1ppm〜約10ppmを含む、構成12記載の溶液。
(構成14)
合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくは構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含有する、海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質組成物の約0.6ppm〜約6ppmを含む、構成12記載の溶液。
(構成15)
スプレー、エアゾール、エマルション、懸濁液、液滴として、水中ディフューザー中又は徐放マトリクス内に製剤される、構成12〜14のいずれか一項記載の溶液。
(構成16)
前記溶液が、魚が住む水に添加されるか、又は魚飼料中に配置されることができる、構成12〜15のいずれか一項記載の溶液。
(構成17)
経口的に又は注射を介して魚へ投与される、構成12〜16のいずれか一項記載の溶液。
(構成18)
海シラミを魚から剥脱する方法であって、該方法が、海シラミを魚から剥脱するための、合成されたパルミトレイン酸、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する組成物を魚へ投与することを含む、前記方法。
(構成19)
前記情報化学物質組成物が、約0.1ppm〜約10ppmの濃度で投与される、構成18記載の方法。
(構成20)
前記情報化学物質組成物が、約0.6ppm〜約6ppmの濃度で投与される、構成18記載の方法。
(構成21)
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成22)
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、約0.1ppm〜約10ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、情報化学物質組成物。
(構成23)
海シラミの魚への付着の阻害において使用するための、約0.6ppm〜約6ppmの合成されたパルミトレイン酸、それらの情報化学物質の海シラミを魚から剥脱する能力を維持する、その塩、その誘導体、その異性体及び/もしくはその構造類似体、及び/又はそれらの混合物を含む海シラミコペポダイト付着阻害性情報化学物質、並びに許容し得るビヒクルを含有する、1又は複数の情報化学物質組成物。


図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11