(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676627
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】一体型の流体路チャネルを備えたプレート
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20200330BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
A61M5/142 522
A61M5/168 516
【請求項の数】22
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-515804(P2017-515804)
(86)(22)【出願日】2015年9月21日
(65)【公表番号】特表2017-534328(P2017-534328A)
(43)【公表日】2017年11月24日
(86)【国際出願番号】US2015051188
(87)【国際公開番号】WO2016048878
(87)【国際公開日】20160331
【審査請求日】2018年7月4日
(31)【優先権主張番号】62/053,674
(32)【優先日】2014年9月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】595117091
【氏名又は名称】ベクトン・ディキンソン・アンド・カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BECTON, DICKINSON AND COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】特許業務法人 谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アレッサンドロ エジーディオ ピッツォチェロ
(72)【発明者】
【氏名】ジェイ.リチャード ギョリー
(72)【発明者】
【氏名】ジョセフ ビーラー
【審査官】
増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許出願公開第2009/0062768(US,A1)
【文献】
特開2014−145329(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0015494(US,A1)
【文献】
特開2013−070863(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の皮膚に薬剤を送達するためのデバイスであって、
ハウジングを備え、前記ハウジングは、
前記薬剤を収容するためのリザーバと、
流体の進入に対して封止され、1つまたは複数の構成要素を含む第1の内部領域と、
流体の進入に対して封止されず、1つまたは複数の構成要素を含む第2の内部領域と、
前記第1の内部領域と前記第2の内部領域を分離する障壁と、
前記患者の前記皮膚に向けるための底部の外面を含むベースであって、前記ベースの前記底部の外面が、そこに設けられた1つまたは複数の流体チャネルを有するベースと
を備え、
前記第1の内部領域の前記1つまたは複数の構成要素、または、前記第2の内部領域の前記1つまたは複数の構成要素は、前記患者の前記皮膚に前記薬剤を送達する送達カニューレを備え、
前記流体チャネルの少なくとも1つは、前記送達カニューレと流体連通し、
記流体チャネルは、前記底部の外面と一体に形成され、
前記デバイスは、前記1つまたは複数の流体チャネルの少なくとも1つをカプセル化する流体チャネルカバーを備え、
前記流体チャネルカバーは、前記底部の外面の一部の上のみに設置され、
前記ベースの前記底部の外面は、前記デバイスの外部であることを特徴とするデバイス。
【請求項2】
前記第1の内部領域内の前記1つまたは複数の構成要素は、ポンプ、力検知抵抗器、および電子回路の1つまたは複数を含み、
前記第2の内部領域内の前記1つまたは複数の構成要素は、前記送達カニューレを含むことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記流体チャネルのサイズは、流体の流れを制限しないことを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記流体チャネルは、前記ベースの前記底部の外面から凹まされており、
前記薬剤は、前記第1の内部領域から前記第2の内部領域へと前記ベースを通過することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記流体チャネルは、前記障壁を迂回しながら前記送達カニューレと流体連通していることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
1つまたは複数の流体チャネルを含むプレートをさらに備え、
前記プレートの前記流体チャネルは、前記流体チャネルカバーによってカプセル化されていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記1つまたは複数の流体チャネルは、前記ベースに対して異なる高さで設けられていることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記プレートは、前記第1の内部領域内に完全に配設されていることを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【請求項9】
前記カバーは、前記ベースに取り付けられた箔を備えることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項10】
前記カバーは、前記ベースの前記底部の外面を封止することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項11】
前記カバーは、前記流体チャネルそれぞれをカプセル化することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項12】
個別のカバーは、前記流体チャネルそれぞれをカプセル化することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項13】
前記流体チャネルの1つは、薬剤を、メカニズムの入口に移送し、
前記流体チャネルの1つは、薬剤を、前記メカニズムの出口から前記送達カニューレに移送することを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項14】
前記メカニズムは力検知抵抗器を備えることを特徴とする請求項13に記載のデバイス。
【請求項15】
内部空間および流体チャネルを包囲するハウジングおよびベースを備える薬剤送達デバイスであって、
前記薬剤送達デバイスは、前記流体チャネルをカプセル化する流体チャネルカバーを備え、前記流体チャネルカバーは、前記ベースの底部の外面の一部の上のみに設置され、
前記流体チャネルは、前記内部空間内の第1の位置から、前記内部空間の外の第2の位置に延び、さらに前記内部空間内の第3の位置に延び、
前記ベースの前記底部の外面は、前記デバイスの外部であることを特徴とする薬剤送達デバイス。
【請求項16】
前記流体チャネルは、前記ハウジング内に凹まされていることを特徴とする請求項15に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項17】
薬剤をハウジングおよびベースの内部空間に入れるステップと、
前記薬剤を、前記ハウジングの前記内部空間から前記内部空間の外に進み、前記ハウジングの前記内部空間に戻るように流体チャネル内で輸送するステップと、
流体チャネルカバーにより前記流体チャネルをカプセル化するステップと、
を含み、前記流体チャネルカバーは、前記ベースの底部の外面の一部の上のみに設置され、前記ベースの前記底部の外面は、前記ベースの外部であることを特徴とする薬剤送達方法。
【請求項18】
前記流体チャネルは、前記ハウジング内に凹まされていることを特徴とする請求項17に記載の方法。
【請求項19】
内部空間を有するハウジングを備える薬剤送達デバイスであって、前記ハウジングは、
薬剤を収容するためのリザーバと、
前記リザーバと流体連通する充填ポートと、
患者の皮膚に前記薬剤を送達する送達メカニズムと、
前記送達メカニズムへの前記薬剤の流れを制御するポンプと、
前記患者の前記皮膚に向けるための底部の外面を含むベースとを含み、
前記底部の外面は、第1の流体チャネルおよび第2の流体チャネルを有し、
前記第1の流体チャネルおよび第2の流体チャネルは、前記底部の外面に設けられおり、前記底部の外面と一体に形成され、
前記ポンプは、前記第1の流体チャネルを介して前記送達メカニズムと流体連通し、
前記流体チャネルの1つは、少なくとも一部、前記ハウジングの前記内部空間の外に設けられ、
前記薬剤送達デバイスは、前記第1の流体チャネルおよび前記第2の流体チャネルの少なくとも1つをカプセル化する流体チャネルカバーを備え、
前記流体チャネルカバーは、前記ベースの前記底部の外面の一部の上のみに設置され、
前記ベースの前記底部の外面は、前記デバイスの外部であることを特徴とする薬剤送達デバイス。
【請求項20】
前記充填ポートは、前記第2の流体チャネルを介して前記ポンプと流体連通することを特徴とする請求項19に記載の薬剤送達デバイス。
【請求項21】
前記カバーは、透明カバーであることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【請求項22】
前記カバーは、前記ベースの前記底部の外面にヒートステークされることを特徴とする請求項1に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関し、より詳細には、患者に薬剤を送達するために流体チャネルを有する医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
関連出願
本出願は、2014年9月22日に出願された米国仮特許出願第62/053,674号の米国特許法119(e)条の下での利益を主張するものである。上記の出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
糖尿病は、糖尿病患者が必要なときに適切なレベルのインスリン産生を維持することができないことに起因する高い血糖値を特色とする疾患群である。糖尿病は、それが治療されない場合、罹患した患者にとって危険であり得て、重大な健康上の合併症および早期の死亡につながる可能性もある。しかし、1つまたは複数の治療オプションを利用して、糖尿病の制御を助け、合併症のリスクを低減することによって、そのような合併症を最小限に抑えることができる。
【0004】
糖尿病患者のための治療オプションには、特別な食餌療法、経口薬剤、および/またはインスリン療法が含まれる。糖尿病治療の主な目標は、糖尿病患者の血糖値を制御することである。しかし、適切な糖尿病管理の持続は、糖尿病患者の活動とのバランスを取らなければならないので複雑になり得る。1型糖尿病(T1D)患者は、一般に患者の体内でインスリンを産生することができないので、(例えば注射または輸液によって)インスリンを摂取して血流からグルコースを移動させる必要がある。2型糖尿病(T2D)患者は、一般にインスリンを産生することができるが、そのような患者の身体は、インスリンを適切に使用して、血糖値を医学的に許容される範囲内で維持することができない。T1Dを患う人々とは対照的に、T2Dを患う人々の大半は、通常、生存のためにインスリンを毎日投与する必要はない。多くの人々は、健康的な食事、より多くの運動、または経口薬によって自分の体調を管理することができる。しかし、彼らは、血糖値を調整することができない場合には、インスリンを処方される。例えば、(例えば米国、西ヨーロッパ、およびカナダなどで)推定620万人の2型糖尿病患者が、24時間の基礎インスリンと、血糖管理制御のために食事時に摂取される短時間作用する速効型インスリンとからなる頻回注射(MDI)を行っている。
【0005】
1型糖尿病(T1D)および時として2型糖尿病(T2D)の治療のために、日々のインスリン療法の2つの主要な方法がある。第1の方法では、糖尿病患者が、必要なときに注射器またはインスリンペンを使用してインスリンを自己注射する。この方法は、注射のたびに針穿刺を必要とし、糖尿病患者は毎日3回から4回の注射を必要とすることがある。インスリンを注射するために使用される注射器およびインスリンペンは、比較的使用が簡単であり、費用対効果が高い。
【0006】
インスリン療法および糖尿病の管理のための別の有効な方法は、インスリンポンプが使用される輸液療法または輸液ポンプ療法である。インスリンポンプは、必要なインスリンを産生する、糖尿病でない人の正常に働く膵臓の機能および挙動とより密接に合致するように、糖尿病患者へのインスリンの連続輸液を様々な速度で提供することができ、インスリンポンプは、糖尿病患者が、糖尿病患者各々のニーズに基づいて血糖値を目標範囲内で維持するのを助けることができる。輸液ポンプ療法は、典型的には輸液針または可撓性カテーテルの形態での輸液カニューレを必要とし、この輸液カニューレが糖尿病患者の皮膚を穿刺し、そこを通してインスリンの注入が行われる。輸液ポンプ療法は、インスリンの連続輸液、厳密な投与、およびプログラム可能な送達スケジュールといった利点を提供する。
【0007】
輸液療法では、インスリン用量は、典型的には、基礎速度およびボーラス用量で投与される。インスリンが基礎レートで投与されるとき、インスリンは24時間にわたって連続的に送達されて、食事時と、典型的には夜間の休息時との間で、糖尿病患者の血糖値を安定した範囲内で維持する。また、インスリンポンプは、昼夜の様々な時間に従ってインスリンの基礎レートを変えるようにプログラムすることも可能であり得る。対照的に、糖尿病患者が食事を摂り、一般に、摂取された炭水化物のバランスを取るために1回のさらなるインスリン注射を行うときには、典型的にはボーラス用量が投与される。インスリンポンプは、糖尿病患者によって摂取された食事の量または種類に従って、糖尿病患者がボーラス用量の体積をプログラムすることを可能にするように構成されることもある。さらに、インスリンポンプは、摂取しようとしている特定の食事に関するボーラス用量を糖尿病患者が計算している時点での低い血糖値を補償するために、糖尿病患者がインスリンの補正または補完ボーラス用量を注入することを可能にするように構成されることもある。
【0008】
インスリンポンプは、有利には、単回注射ではなく経時的にインスリンを送達し、典型的には、推奨される血糖範囲内で変動が少なくなる。さらに、インスリンポンプは、糖尿病患者が耐えなければならない針穿刺の回数を減少し、糖尿病管理を改良して、糖尿病患者の生活の質を向上させることができる。例えば、インスリン療法を処方されているT2D患者の多くは、制御を改善するための臨床的要件が満たされないため、注射から輸液療法に変えることを予想され得る。すなわち、頻回注射(MDI)を行うT2D患者のかなりの数が、目標グルコース制御を実現していないか、または彼らが処方されたインスリン療法を十分には遵守していない。
【0009】
通常、糖尿病患者が頻回注射(MDI)を使用するかポンプを使用するかに関らず、糖尿病患者は、睡眠からの覚醒時に空腹時血糖薬剤(FBGM)を摂取し、また、補正用量が必要とされているかどうかを決定するために毎食中または毎食後に血糖を調べる。さらに、糖尿病患者は、例えば睡眠前に軽食を食べた後に補正用量が必要かどうかを決定するために、睡眠前に血糖を調べることもある。
【0010】
輸液療法を容易にするために、一般的に2種類のインスリンポンプ、すなわち従来型のポンプとパッチポンプ(patch pump)とがある。従来型のポンプは、ポンプ内のリザーバから使用者の皮膚にインスリンを運ぶ、典型的には輸液セット、配管セット、またはポンプセットと呼ばれる使い捨て構成要素を使用する。輸液セットは、ポンプコネクタ、ある長さの配管、およびハブまたはベースを含み、ハブまたはベースから、中空の金属輸液針または可撓性プラスチックカテーテルの形態でのカニューレが延びる。ベースは、典型的には、使用中にベースを皮膚表面に保定する接着剤を有する。カニューレは、手動で、または手動もしくは自動挿入デバイスによって皮膚に挿入することができる。挿入デバイスは、使用者によって採用される別個のユニットでもよい。
【0011】
別のタイプのインスリンポンプは、パッチポンプである。従来の輸液ポンプと輸液セットの組合せとは異なり、パッチポンプは、流体構成要素の大部分または全てを単一のハウジング内に組み合わせた一体型デバイスである。一般に、ハウジングは、患者の皮膚上の輸液部位に接着式に取り付けられ、別個の輸液または配管セットの使用を必要としない。インスリンを含むパッチポンプが、皮膚に接着し、一体型の皮下カニューレを通してある期間にわたってインスリンを送達する。パッチポンプの中には、(Insulet Corporationによって商標名OmniPod(登録商標)として販売されているデバイスのような)別の制御装置デバイスと無線で通信するものもあれば、完全に自立型のものもある。そのようなパッチポンプは、頻繁に、例えば3日ごとに、またはインスリンリザーバが使い尽くされたときに交換される。そうしないと、カニューレまたは輸液部位の制限などの問題が起こり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
パッチポンプは、患者が装着する自立型ユニットとなるように設計されるので、好ましくは、パッチポンプは小型であり、その結果、使用者の活動に干渉しない。したがって、使用者の不快感を最小限にするために、パッチポンプの全体の厚さを最小にすることが好ましい。しかし、パッチポンプの厚さを最小にするためには、その構成部品のサイズをできるだけ小さくする必要がある。
【0013】
現在のパッチポンプ設計では、プラスチックチューブなどのチューブが、流体の流れを1つの内部構成要素から別の内部構成要素に送るための流体経路として採用されている。例えば、チューブは、薬剤リザーバを送達針と接続することができるが、そのようなチューブを内部に収容するのに必要な空間は、パッチポンプの全体サイズを増す。チューブの使用はコストを増加させることがあり、自動デバイス組立てプロセス中にさらなる複雑さをもたらすことがある。例えば、そのようなデバイス組立ては、チューブを接続することを含み、これは、組立てプロセスにステップを追加する。さらに、そのような接続からの漏れを防止することが、さらなる課題を生じることがある。
【0014】
したがって、デバイスの全体のサイズおよび複雑さを最小化または減少しながら高い費用対効果で薬剤を輸送することができる、パッチポンプデバイスにおけるような限られた空間環境で使用するための改良された流体路設計が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の一態様は、1つまたは複数の流体チャネルが流体進入障壁を迂回して、薬剤を患者に効果的かつ効率的に投与するパッチポンプを提供することである。センサおよび流体チャネルは、特定のインターフェースを通らないように流れを送ることによって、最小限の複雑さで、ウェットインターフェース(wet interface)からドライインターフェース(dry interface)への迂回を提供する。
【0016】
本発明の上記および/または他の態様は、患者の皮膚に薬剤を送達するためのデバイスであって、ハウジングを有し、ハウジングが、薬剤を収容するためのリザーバと、流体の進入に対して封止され、1つまたは複数の構成要素を含む第1の内部領域と、流体の進入に対して封止されず、1つまたは複数の構成要素を含む第2の内部領域とを含むデバイスを提供することによって実現することができる。ハウジングはまた、第1の内部領域と第2の内部領域を分離する障壁と、患者の皮膚に薬剤を送達する送達カニューレと、患者の皮膚に向けるための底面を含むベースとを有する。ベースの底面は、そこに設けられた1つまたは複数の流体チャネルを有し、流体チャネルの少なくとも1つが、送達カニューレと流体連通する。
【0017】
本発明の上記および/または他の態様は、内部空間を有するハウジングを備える薬剤送達デバイスであって、ハウジングが、そこに設けられた流体チャネルを有する薬剤送達デバイスを提供することによっても実現することができる。流体チャネルは、内部空間内の第1の位置から、ハウジングの外の第2の位置に延び、さらに内部空間内の第3の位置に延びる。
【0018】
本発明の上記および/または他の態様は、薬剤をハウジングの内部空間に入れるステップと、薬剤を、ハウジングの内部空間からハウジングの外に進み、ハウジングの内部空間に戻るように流体チャネル内で輸送するステップとを含む薬剤送達方法を提供することによってさらに実現され得る。
【0019】
さらに、本発明の上記および/または他の態様は、内部空間を有するハウジングを含む薬剤送達デバイスであって、ハウジングが、薬剤を収容するためのリザーバと、リザーバと流体連通する充填ポートと、患者の皮膚に薬剤を送達する送達メカニズムと、送達メカニズムへの薬剤の流れを制御するポンプと、第1の流体チャネルおよび第2の流体チャネルがそこに設けられているベースとを含む薬剤送達デバイスを提供するによって実現することができる。ポンプが、第1の流体チャネルを介して送達メカニズムと流体連通し、流体チャネルの1つが、少なくとも一部、ハウジングの内部空間の外に設けられる。
【0020】
本発明の追加のおよび/または他の態様および利点は、本明細書で以下に述べられ、または明細書から明らかになり、または本発明の実施によって知ることができる。本発明は、上記態様の1つまたは複数、および/またはそれらの特徴および組合せの1つまたは複数を有する送達デバイス、ならびにそれを形成および操作するための方法を含むことができる。本発明は、例えば添付の特許請求の範囲に記載された上記の態様の特徴および/または組合せの1つまたは複数を含むことができる。
【0021】
本発明の実施形態の上記および/または他の態様および利点は、以下の添付図面に関連付けて読めば、以下の詳細な説明からより容易に理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の例示的実施形態に従って構成されたパッチポンプの斜視図である。
【
図2】カバーと共に示された、
図1のパッチポンプの様々な構成要素の分解図である。
【
図3】本発明の例示的実施形態による、カバーなしで示された可撓性リザーバを有するパッチポンプの代替設計の斜視図である。
【
図4】
図3のパッチポンプのパッチポンプ流体アーキテクチャおよび計量サブシステムの線図の斜視図である。
【
図5】本発明の例示的実施形態による、例えばパッチポンプなどの薬剤送達デバイスの動作を制御するための例示的な無線遠隔制御装置を示す図である。
【
図6】本発明の例示的実施形態によるパッチポンプの斜視図である。
【
図8】カバーおよびリザーバを省いた、
図6のパッチポンプの斜視図である。
【
図10】
図9の10−10線に沿って取られた
図6のパッチポンプの部分断面図である。
【
図11】本発明の一実施形態によるプレートの斜視図である。
【
図12】
図11のプレートを組み込むパッチポンプの斜視図である。
【
図13】本発明の一実施形態によるフローチャネル部材の斜視図である。
【
図14】本発明の一実施形態によるフローチャネル部材の斜視図である。
【
図15】本発明の一実施形態によるフローチャネル部材の斜視図である。
【
図16】本発明の一実施形態によるパッチポンプの薬剤流路の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面に示された本発明の実施形態を詳細に参照する。添付図面において、全体を通して、同様の参照符号は同様の要素を示す。本明細書で述べる実施形態は、図面を参照して本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【0024】
本開示が、その適用において、以下の説明で述べる、または図面に示す構成の詳細および構成要素の配置に限定されないことが当業者には理解されよう。本明細書における実施形態は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践または実施することが可能である。また、本明細書で使用される語句および用語は、説明の目的のものであり、限定を加えるものとみなされるべきではないことを理解されたい。本明細書における「含む」、「備える」、または「有する」、およびその活用変化形の使用は、その後に列挙される要素およびそれらの均等物、ならびにさらなる要素を含むことを意味する。別段の限定がない限り、本明細書における用語「接続され」、「結合され」、および「取り付けられ」、ならびにそれらの活用変化形は、広い意味で使用され、直接的および間接的な接続、結合、および取付けを含む。さらに、用語「接続され」および「結合され」、ならびにそれらの活用変化形は、物理的または機械的な接続または結合に限定されない。さらに、上、下、底部、および上部などの用語は、相対的なものであり、例示を助けとなるように採用されるが、限定を加えるものではない。
【0025】
インスリン療法を使用する糖尿病管理について、例示的実施形態を述べる。これらの例示的実施形態は、インスリンとは異なる薬剤を使用する糖尿病以外の生理学的状態を治療するために、異なる薬物療法および養生法と共に使用することもできることを理解されたい。
【0026】
図1は、本発明の例示的な実施形態によるパッチポンプ1を備える薬剤送達デバイスの例示的実施形態の斜視図である。パッチポンプ1は、分かりやすくするためにシースルーカバーを有するものとして示されており、パッチポンプ1を形成するために組み立てられた様々な構成要素を示している。
図2は、主カバー2と共に示された、
図1のパッチポンプの様々な構成要素の分解図である。パッチポンプ1の様々な構成要素は、インスリンを貯蔵するためのリザーバ4と;リザーバ4からインスリンをポンピングするためのポンプ3と;1つまたは複数のバッテリの形態での電源5と;カテーテルを有する挿入器針を使用者の皮膚に挿入するための挿入メカニズム7と;スマートフォンを含めた遠隔制御装置およびコンピュータなど外部デバイスへの任意選択の通信機能を備える回路基板の形態での制御電子回路8と;ボーラス用量を含めたインスリン用量を作動させるためのカバー2にある一対の用量ボタン6と;固定具91によって上記の様々な構成要素を取り付けることができるベース9とを含む。パッチポンプ1は、リザーバ4からポンピングされたインスリンを輸液部位に移送する様々な流体コネクタラインも含む。
【0027】
図3は、可撓性リザーバ4Aを有するパッチポンプ1Aに関する代替設計の斜視図であり、カバーなしで図示されている。そのような構成は、パッチポンプ1Aの外寸をさらに小さくすることができ、可撓性リザーバ4Aがパッチポンプ1A内の空隙を埋める。パッチポンプ1Aは、典型的には90度未満の鋭角でカニューレを使用者の皮膚の表面に挿入する従来のカニューレ挿入デバイス7Aと共に示されている。パッチポンプ1Aは、バッテリの形態での電源5Aと;インスリンの体積を監視し、低体積検出機能を含む計量サブシステム41と;デバイスの構成要素を制御するための制御電子回路8Aと;リザーバ4Aを充填するために補充シリンジ45を受け取るためのリザーバ充填ポート43とをさらに備える。
【0028】
図4は、
図3のパッチポンプ1Aのパッチポンプ流体アーキテクチャおよび計量サブシステムの線図である。パッチポンプ1A用の蓄電サブシステムは、電池5Aを含む。パッチポンプ1Aの制御電子回路8Aは、マイクロコントローラ81と、検知電子回路82と、ポンプおよびバルブ制御装置83と、検知電子回路85と、展開電子回路87とを含むことがあり、それらがパッチポンプ1Aの作動を制御する。パッチポンプ1Aは、流体工学サブシステムを含み、この流体工学サブシステムは、リザーバ4Aと、リザーバ4A用の体積センサ48と、リザーバ4Aを補充するための補充シリンジ45を受け取るためのリザーバ充填ポート43とを含むことがある。流体工学サブシステムは、ポンプおよびバルブアクチュエータ411と、一体型ポンプおよびバルブメカニズム413とを備える計量システムを含むことがある。流体工学サブシステムは、閉塞センサと、展開アクチュエータと、使用者の皮膚の輸液部位に挿入するためのカニューレ47とをさらに含むことがある。
図1および
図2のパッチポンプに関するアーキテクチャは、
図4に示されているものと同一または同様である。
【0029】
図5を参照すると、パッチポンプ1などのウェアラブル医療送達デバイス(例えば、インスリン送達装置(IDD))は、遠隔制御装置と連動して動作可能であり、遠隔制御装置は、好ましくはポンプ1と無線通信し、本明細書では以後、無線制御装置(WC)500と呼ぶ。WCは、様々な表示操作の中でもとりわけ、例えば、構成設定、パッチポンプへの無線接続が成功したときの標示、用量が送達されているときの視覚標示など、パッチポンプ1の動作に関する視覚情報を使用者に提供するグラフィカルユーザインターフェース(GUI)ディスプレイ502を備えることができる。GUIディスプレイ502は、様々なユーザインターフェース操作の中でもとりわけ、ロック解除するためのスワイプ、要求を確認してボーラスを送達するためのスワイプ、確認または設定ボタンの選択などのタッチ入力を使用者が提供できるようにするようにプログラムされたタッチスクリーンディスプレイを含むことができる。
【0030】
WC500は、いくつかの通信インターフェース504の任意の1つまたは複数を使用して、送達デバイス(例えばパッチポンプ1)と通信することができる。例えば、WCとパッチポンプ1とのタイミングを同期させて始動時にペアリングを容易にするために、近接場放射インターフェースが設けられる。WCとパッチポンプ1との無線通信のために、標準のBlueTooth Low Energy(BLE)層と、トランスポートおよびアプリケーション層とを採用する別のインターフェースを提供することもできる。アプリケーション層コマンドの非限定的な例には、プライミング、基礎用量の送達、ボーラス用量の送達、インスリン送達のキャンセル、パッチポンプ1のステータスのチェック、パッチポンプ1の作動停止、およびパッチポンプ1のステータスまたは情報の返答が含まれる。
【0031】
図6は、本発明の実施形態によるパッチポンプ1の斜視図である。パッチポンプ1はハウジング10を有し、このハウジング10は、ベース9に対して液密封止された、または好ましくは気密封止された主カバー2を含む。ベース9は、以下に詳細に説明するように、様々な構成要素を支持する。ハーメチックシールは、流体の進入を防止し、かつ他の粒子がシールを通過するのを防止する。パッチポンプ1のいくつかの実施形態は、均圧化を提供するために、本明細書で述べる封止法と共にベント(vent)またはベント膜(vent membrane)も含む。
【0032】
シールの実施形態は、例えば、液密シール、Oリングシール、もしくは別の機械的なシール、ガスケット、エラストマー、熱シール、超音波溶接シール、レーザ溶接、化学的な接合、接着剤、溶剤溶接、または接着溶接を含む。レーザ溶接が適切に行われるときには、継ぎ目のない完全封止のシールが形成されるので、レーザ溶接は好ましい封止法である。ベントまたはベント膜は、内圧を均圧化し、無菌環境を提供するという機能的な目的を引き続き有する。本発明の範囲から逸脱することなく他のシールを使用することもできることを当業者は理解されよう。
【0033】
図7は、様々な構成要素を示すパッチポンプ1の断面図である。主カバー2およびベース9は、障壁20によって第1の内部領域14と第2の内部領域16に分割された内部空間12を画定する。一実施形態によれば、パッチポンプ1は、好ましくは、薬剤(インスリンなど)を貯蔵するためのリザーバ4と、リザーバ4から出るように薬剤をポンピングするポンプ3と、薬剤流路内の圧力の量を検出するための力検知抵抗器30とを含む。また、パッチポンプ1は、好ましくは、パッチポンプ1をプログラムして動作させるための電子回路8と、患者の皮膚にカニューレ47を挿入して薬剤を送達するための挿入メカニズム7とを含む。
【0034】
前述したように、パッチポンプ1の内部空間12は、障壁20によって第1の内部領域14と第2の内部領域16とに分割されている。一実施形態によれば、障壁20は主カバー2の一部である。好ましくは、障壁20は、主カバー2と一体構造として一体に形成される。障壁20は、好ましくは、ベース9にある突出部18に対して封止され、その結果、障壁20と突出部18との界面は、上述した処理法のいずれかまたは任意の他の適切な従来の封止法を使用して気密に接合される。あるいは、障壁20と突出部18との界面を液密封止することができる。障壁20は、第1の内部領域14を第2の内部領域16から分離し、流体の進入から第1の内部領域14を保護する。一実施形態によれば、第2の内部領域16は、流体の進入に対して封止されていない。
【0035】
第1の内部領域14は、ポンプ3、力検知抵抗器30、および電子機器8などの構成要素を含む。電子機器8の例には、半導体チップと、制御装置と、ダイオードと、アンテナと、コイルと、バッテリと、ディスクリート構成要素(例えば抵抗器およびコンデンサ)と、パッチポンプ1を操作および制御するため、ならびにWC500と協働してポンプ1を操作するために使用される回路基板とが含まれる。当業者には容易に理解されるように、これらの構成要素、特に電子機器8の適切な動作のために乾燥環境を提供することが望ましい。第2の内部領域16は、挿入メカニズム7およびカニューレ47を含む。一実施形態によれば、挿入メカニズム7が患者の皮膚と連結するので、第2の内部領域16は、気密封止環境でも液密環境でもない。
【0036】
一実施形態によれば、第1の内部領域14の構成要素は、第2の内部領域16の構成要素とは異なる。あるいは、第1の内部領域14と第2の内部領域16は、同じ構成要素のいくつかを共有する。例えば、いくつかの実施形態では、リザーバ4の一部が、第1の内部領域14と第2の内部領域16の両方に配設される。しかし、リザーバと挿入メカニズム7が障壁20によって分離されるとき、2つの内部領域14、16は、パッチポンプ1の効果的な動作のために流体連通する。
【0037】
図8は、見やすくするために主カバー2およびリザーバ4を取り外した状態で、パッチポンプ1の主要構成要素のいくつかを斜視図で示す。一実施形態によれば、充填ポート43は、薬剤をリザーバ4に供給するための管路である。充填ポート43は、第1の内部領域14または第2の内部領域16に設けることができるが、好ましくは第1の内部領域14に位置される。いくつかの実施形態では、充填ポート43は、リザーバ4から出る薬剤のための流路の一部となる部分を含む。
【0038】
好ましくは、レセプタクル32は、例えば患者の皮膚に注射する前に薬剤を挿入メカニズム7に移送するために、配管によって挿入メカニズム7に接続される。一実施形態によれば、レセプタクル32は、第2の内部領域16に配設される。
【0039】
図9は、パッチポンプ1のベース9の底面22を示す。使用中、底面22は、患者の皮膚に向いている。いくつかの実施形態では、底面22は、ベース9を患者の皮膚に着脱可能に取り付ける接着剤を含むことができる。あるいは、
図6に示されるように、接着パッド70が、底面22と患者の皮膚との両方に接着する。好ましくは、3M(商標)医療用テープ(例えば製品番号1776)が、使用される接着剤であるが、様々なタイプの既知の産業用接着剤を使用することができる。しかし、望ましくない反応を防止するために、ヒトの皮膚との適合性を保証するように接着剤が注意深く選択される。また、接着剤とインスリンとが誤って混ざった場合の接着剤とインスリンとの親和性が考慮される。接着剤または接着パッドは、以下で詳細に述べる第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26を覆う流体チャネルカバー28の上にも配置される。
【0040】
図9に示されるように、ベース9の底面22は、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26を含む。第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26は、パッチポンプ1での様々な構成要素間の流体経路を提供する。一実施形態によれば、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26は、有利には、リザーバ4、充填ポート43、力検知抵抗器30、ポンプ3、および挿入メカニズム7など、様々な構成要素間の流体連通を確立する。
【0041】
好ましくは、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26は、底面22から凹まされ(または底面22に刻設され)、射出成形などの成形プロセスによって、またはフライス加工などの切断プロセスによって形成される。他の実施形態では、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26は、主ポンプ2に、またはパッチポンプ1の内部空間12内でベース9に設けられる。デバイスのいくつかの実施形態では、同様の流体チャネルを複数の位置に位置決めすることができる。
【0042】
第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26の断面形状は、所望の流れ特性に基づいて画定される。第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26の幾何形状は、コスト、製造能力、および所望の用途などの要因に基づいて選択される。第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26の例示的な断面プロファイルは、正方形、長方形、および半円形を含む。本発明の範囲から逸脱することなく他の断面プロファイルを採用することができることを、当業者は理解されよう。
【0043】
好ましくは、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26は、制限されない薬剤流体の流れを可能にするようにサイズ設定される。すなわち、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26のサイズではなく、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26に接続されたポンプ3が薬剤流体の流量を制御して決定する。具体的には、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26が小さすぎる場合、毛細管現象が起こる可能性があり、場合によっては薬物流体の流れの妨害が引き起こされる。好ましくは、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26の断面積は、カニューレ47の太さよりも大きい。
【0044】
図9に示される一実施形態によれば、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26は、流体チャネルカバー28によってカプセル化される。この流体チャネルカバー28は、分かりやすくするために透明なものとして図示されている。しかし、本発明の範囲から逸脱することなく、流体チャネルカバー28またはデバイスの他の部分の不透明度を変えることができることを当業者は理解されよう。流体チャネルカバー28は、例えば、任意の適切な材料から形成された透明フィルム、箔、可撓性シート/フィルム、または半剛性/剛性部品である。
【0045】
一実施形態によれば、フィルムチャネルカバー28は、Oliver−Tolas Healthcare Packagingから入手可能な箔(例えば、TPC−0777A箔)から形成される。好ましくは、フィルムチャネルカバー28は、Oliver−Tolas Healthcare Packaging IDT−6187透明フィルムから形成され、ベース9の底面22に熱封止またはヒートステークされて(heat staked)、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26を埋め込む。レーザ溶接は、例えば、透明フィルムを通してレーザ光を当てて、フィルムチャネルカバー28をベース9の底面22に固定する。レーザ溶接は、レーザが溶接プロセス中に流体チャネル24、26のチャネル縁部をまたぎ、他の方法よりもチャネル縁部に近い領域でフィルムをベース9に接着することができるので有利である。
【0046】
流体チャネルカバー28は、上述した処理方法の任意のものによってベース9に封止される。したがって、流体チャネルカバー28の材料は、効果的な加工、接合、液密封止、および気密封止のためにベース9の材料と適合性があることが望ましい。さらに、薬剤が流体チャネルカバー28と接触するので、薬剤との適合性を保証するために流体チャネルカバー28の選択に注意が払われる。
【0047】
封止された流体チャネルカバー28は、薬剤を閉じ込めて、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26を通って移動している間に汚染から保護する。一実施形態によれば、単一の流体チャネルカバー28が、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26のそれぞれをカプセル化する。あるいは、個別の流体チャネルカバー28が、第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26のそれぞれをカプセル化することもできる。上述したように流体チャネルをパッチポンプ1の内部空間12に設けることもできるので、1つまたは複数の流体チャネルカバー28をパッチポンプ1の内部空間12に適切に配設することもできる。
【0048】
図10は、
図6のパッチポンプ1の部分断面図である。一実施形態によれば、ベース9は、貫通穴27などの流体チャネル通路27を含み、流体チャネル通路27はベース9を通って延びる。
図10に示されるように、流体チャネル通路27は、有利には、レセプタクル32を第1の流体チャネル24の第1の端部に接続する。一実施形態によれば、流体チャネル通路27は、第1の流体チャネル24と第2の流体チャネル26の各端部に同様に存在する(
図9参照)。好ましくは、第1の流体チャネル24の第2の端部のベース9に設けられた流体チャネル通路27は、第1の内部領域14に配設されたポンプ3に直接接続する。同様に、好ましい実施形態では、第2の流体チャネル26の両端は、流体チャネル通路27を介してリザーバ充填ポート43とポンプ3とを接続する。
【0049】
一実施形態によれば、薬剤は、パッチポンプ1の第1の内部領域14から出て、ベース9の通路27を通って、パッチポンプ1の内部空間12の外で底面22にある第1の流体チャネル24に入る。その後、薬剤は、第1の流体チャネル24の第1の端部に設けられた流体チャネル通路27を通って第2の内部領域16内へと、パッチポンプ1の内部空間12に再び入る。パッチポンプ1の内部空間12の外にある第1の流体チャネル24を通して薬剤を送ることによって、第1の流体チャネル24は、有利にかつ効果的に障壁20を迂回する。したがって、第1の流体チャネルは、障壁20を迂回しながらポンプ3とカニューレ47との間の流体連通を確立し、それによって障壁20の完全性を維持する。したがって、第1の流体チャネル24は、有利には、障壁20の完全性を損なわずに、流体の進入に対して封止された第1の内部領域14と、流体の進入に対して封止されていない第2の内部領域16との間の流体連通を提供する。
【0050】
パッチポンプ1での第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26の構成は、複数の例示的な利益を提供する。第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26はベース9と一体であるので、それらは成形および/またはフライス加工によって好適に製造され、それにより、場合によっては製造コストを低減する。さらに、障壁20を貫通するのではなく第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26が障壁20を迂回するので、障壁20は、第1の内部領域14と第2の内部領域16との効果的な封止を提供する。そのような封止構成は、有利には、第1の内部領域14内の重要な構成要素が流体の進入により故障しないことを保証する。重要な構成要素は、最適な構成要素配置を提供する好ましい位置に配設される。したがって、パッチポンプ1の内部空間12の外での第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26の使用は、設計者に構成上の自由を提供し、内部空間の最適化の助けとなり、またパッチポンプ1の全体サイズの縮小の助けとなる。
【0051】
代替的実施形態では、
図11および
図12に示されるように、フローチャネルプレート(flow channel plate)34がパッチポンプ1の内部空間12に配設されて薬剤流体経路を提供する。フローチャネルプレート34は、流体チャネルカバー28によってカプセル化された第1のプレート流体チャネル36および第2のプレート流体チャネル38を含む。流体チャネルカバー28は、見やすくするために省かれている。プレート流体チャネル36、38は、薬剤流体を、パッチポンプ1の内部空間12を通して様々な構成要素に送る。
【0052】
一実施形態によれば、力検知抵抗器30は、薬剤液体流路のインライン圧力検知のために、フローチャネルプレート34に一体形成される。フローチャネルプレート34の一実施形態は、充填ポート43の代わりとなるようにレセプタクルを組み込む。有利には、フローチャネルプレート34にポート、レセプタクル、または継手を含んで、流体路を介して様々な構成要素を対合することができる。一実施形態によれば、フローチャネルプレート34は、全体が第1の内部領域14に配設される。
【0053】
フローチャネルプレート34の薬剤流路は、パッチポンプ1内の様々な構成要素の配置のためのさらなる融通性および空間最適化オプションを提供する。
図12は、パッチポンプ1において様々な位置にある構成要素が、フローチャネルプレート34の第1のプレート流体チャネル36および第2のプレート流体チャネル38を介して流体連通を確立する例示的実施形態を示す。一実施形態によれば、フローチャネルプレート34の第1のプレート流体チャネル36および第2のプレート流体チャネル38は、ベース9の第1の流体チャネル24および第2の流体チャネル26と協働して、リザーバ4から挿入メカニズム7への流体連通を提供する。
【0054】
別の代替的実施形態では、
図13〜
図15に示されるように、フローチャネル部材50は、充填ポート43に対して異なる高さにある第1の流体チャネル部分52、第2の流体チャネル部分54、および第3の流体チャネル部分56を含む。埋め込まれた第1、第2、および第3の流体チャネル部分52、54、56は、以下でさらに説明するように、異なる平面位置で薬剤流体の流れを送る。
【0055】
特に、セプタム(図示せず)が穿孔されて、薬剤が充填ポート43から流れることができるようにする。例えば、使用者はシリンジ(図示せず)を挿入して、充填ポート43にあるセプタムを穿孔して、フローチャネル部材50内の薬剤を第1のポート58に注入する。第1のポート58は、第1の通路および第2の通路を含む。第1の通路は、充填ポート43をリザーバ(図示せず)に接続してリザーバ4を充填する。第2の通路は、リザーバを第1の流体チャネル部分52に接続する。
【0056】
ポンピング操作の前には、フローチャネル部材50は閉じた系内にあり、ポンプ3(図示せず)は、閉じられたチャンバ内にあり、第2のポート60に接続されている。流体は、フローチャネル部材50に入り、ポンプ3およびリザーバ4に進み、それによって、第1、第2および第3の流体チャネル部分52、54、56のそれぞれを充填する。その後、流体は、リザーバ4に入り、リザーバ4を充填することができる。リザーバ4が充填されているとき、フローチャネル部材50は、ポンプ3によって、数サイクルにわたってフローチャネル部材50を通して流体を圧送することによってプライミングされて、存在する空気を除去する。
【0057】
ポンピング操作中、薬剤は、フローチャネル部材50の他端に設けられた第2のポート60に接続されたポンプ3(図示せず)によってリザーバから引き出される。ポンプ3が吸引圧を発生するとき、薬剤は、リザーバから、フローチャネル部材50の上面の第1の流体チャネル部分52に引き込まれる。薬剤は、その後、フローチャネル部材50の接合部62(例えば貫通穴)を流れ落ち、フローチャネル部材50の底面に設けられた第2の流体チャネル部分54に入る。第2の流体チャネル部分54は、第3の流体チャネル部分56と流体連通している。
【0058】
一実施形態によれば、貫通穴は、第2の流体チャネル部分54と第3の流体チャネル部分56とを接続する。別の実施形態によれば、第2の流体チャネル部分54と第3の流体チャネル部分56とはそれぞれ、フローチャネル部材50の厚さの半分よりも深く、第2の流体チャネル部分54と第3の流体チャネル部分56との隣接する端部は重なり合って、それらの間の流体連通を確立する。したがって、薬剤は、第2の流体チャネル部分54から第3の流体チャネル部分56の端部に流れ、そこで第2のポート60がポンプ3に接続する。
【0059】
上述したように、
図13および
図14は、フローチャネル部材50の上面に設けられた第1の流体チャネル部分52および第3の流体チャネル部分56を示し、
図15は、フローチャネル部材50の底面に設けられた第2の流体チャネル部分54を示す。この例示的実施形態では、フローチャネル部材50は、第1、第2、および第3の流体チャネル部分52、54、56のそれぞれをカプセル化する3つの別個の流体チャネルカバー28(見やすくするために図示せず)を有する。
【0060】
フローチャネル部材50などは、有利には、パッチポンプ1内での様々な異なる構成要素の配置を提供して、パッチポンプ1の内部を通る流体連通を確立する。特に、フローチャネル部材50は、異なる流体チャネル部分52、54、56を異なる高さまたは異なる平面位置に提供して、薬剤流路をパッチポンプ1内の様々な構成要素と連結させるときの融通性を提供する。また、異なる高さにある流体路を有するフローチャネル部材50などの使用は、有利には、ポンプ内部空間12内での空間最適化のための代替の経路設定の可能性を提供する。
【0061】
図16は、本発明の例示的実施形態によるパッチポンプ1内の例示的な流体路の概略図である。薬剤は、充填ポート43を通ってパッチポンプ1に入り、リザーバ4を充填する。パッチポンプ1の動作中、ポンプ3が薬剤を吸引し、薬剤は、リザーバ4から出て補助ポートを通って充填ポート43に流入し、その後、第2の流体チャネル26を通ってポンプ3の入口に流れる。次に、ポンプ3は薬剤を圧送し、薬剤は、ポンプ3から出て、第1の流体チャネル24に入り、挿入メカニズム7のレセプタクル32に流れる。最後に、挿入メカニズム7は、例えばレセプタクル32から配管を通して薬剤を受け取り、カニューレ47を通して患者の皮膚に薬剤を送達する。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態のみを図示して述べてきたが、本発明は、上述した実施形態に限定されない。本発明の原理および精神から逸脱することなく、これらの実施形態に変更を加えることができることが、当業者には理解されよう。当業者が、上述した様々な例示的実施形態の様々な要素の様々な技術的側面を多くの他の方法で容易に組み合わせることができ、そのような方法は全て、本発明の範囲内にあると考えられ、本発明は、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義されることに特に留意されたい。