(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アンモニウム、マンガン、亜鉛、鉄、または銅からなる群より選択される金属対イオンを含む塩基付加塩である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
グルコース、インスリン及び/またはトリグリセリドレベルの調節のための医薬組成物であって、請求項1〜9のいずれか1項に定義される式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を含む前記医薬組成物であり、1日当たり0.1〜5mg/kgの用量で投与するための前記医薬組成物。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は式Iの化合物、それらの薬学的に許容される塩、それらを含む組成物及びそれらの使用を開示する。本発明の種々の実施形態は以下を含む。
【0022】
A)本発明の化合物
一態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩の糖尿病の予防及び/または治療における薬学的使用に関し、
【化1】
式中、
AはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
5アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3であり;または好ましくはC
6アルキル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルであり;
R
1はH、FまたはOHであり;
R
2はC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
5アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3であり;または好ましくはC
6アルキル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;または好ましくは直鎖C
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルであり;
R
3はH、F、OHもしくはCH
2Phであり;または好ましくはH、OHもしくはCH
2Phであり;
R
4はH、FもしくはOHであり;または好ましくはHであり;
Qは
1)(CH
2)
mC(O)OH、式中mは1もしくは2、もしくはmは好ましくは1、
2)CH(CH
3)C(O)OH、
3)C(CH
3)
2C(O)OH、
4)CH(F)−C(O)OH、
5)CF
2−C(O)OH、または
6)C(O)−C(O)OH、
である。
【0023】
別の態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩の糖尿病の予防及び/または治療における薬学的使用に関し、
【化2】
式中、
AはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
5アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3であり;または好ましくはC
6アルキル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルであり;
R
1はH、FまたはOHであり;
R
2はC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
5アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3であり;または好ましくはC
6アルキル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;または好ましくは直鎖C
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルであり;
R
3はH、F、OHもしくはCH
2Phであり;または好ましくはH、OHもしくはCH
2Phであり;
R
4はH、FもしくはOHであり;または好ましくはHであり;
Qは
1)(CH
2)
mC(O)OH、式中mは1もしくは2、もしくはmは好ましくは1、
2)CH(F)−C(O)OH、
3)CF
2−C(O)OH、または
4)C(O)−C(O)OH、
である。
【0024】
別の態様によれば、本発明は、式Iで表される化合物またはその薬学的に許容される塩の糖尿病の予防及び/または治療における薬学的使用に関し、
【化3】
式中、
AはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
5アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3であり;または好ましくはC
6アルキル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルであり;
R
1はHもしくはOHであり;または好ましくはHであり;
R
2はC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
5アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3であり;または好ましくはC
6アルキル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは4であり;または好ましくはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;または好ましくは直鎖C
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニル、C(O)−(CH
2)
n−CH
3もしくはCH(OH)−(CH
2)
n−CH
3、式中nは3もしくは4であり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはR
2は好ましくはC
5アルキルであり;
R
3はH、OHもしくはCH
2Phであり;または好ましくはHもしくはOHであり;
R
4はHもしくはOHであり;または好ましくはHであり;
Qは
1)(CH
2)
mC(O)OH、式中mは1、
2)CH(F)−C(O)OH、
3)CF
2−C(O)OH、または
4)C(O)−C(O)OH、
である。
【0025】
特定の実施形態によれば、AはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニルもしくはC
6アルケニルであり;またはAは好ましくはC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはAは好ましくはC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはAは好ましくはC
5アルキルである。
【0026】
特定の実施形態によれば、R
1はHもしくはOHであり、またはR
1はHである。
【0027】
特定の実施形態によれば、R
2はC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニルもしくはC
6アルケニルであり;またはR
2はC
5アルキルもしくはC
5アルケニルであり;またはR
2はC
5アルキルもしくはC
6アルキルであり;またはR
2はC
5アルキルである。
【0028】
特定の実施形態によれば、R
3はH、OHもしくはCH
2Phであり、またはR
3はHもしくはOHであり、またはR
3はHである。
【0029】
特定の実施形態によれば、R
4はHである。
【0030】
特定の実施形態によれば、Qは(CH
2)
mC(O)OH、式中mは1または2である。
【0031】
特定の実施形態によれば、Qは(CH
2)
mC(O)OH、式中mは1である。
【0032】
特定の実施形態によれば、AはC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;R
1がHまたはOHであり;R
2はC
5アルキル、C
6アルキル、C
5アルケニル、C
6アルケニルであり;R
3はH、OHまたはCH
2Phであり;R
4はHであり;Qは(CH
2)
mC(O)OH、式中mは1である。
【0033】
特定の実施形態によれば、化合物は式Iの化合物の薬学的に許容される塩である。
【0034】
本明細書では、用語「アルキル」とは、直鎖状または分岐鎖状に配置された指定の数の炭素原子を有する、分岐鎖及び直鎖両方の飽和脂肪族炭化水素基を包含することを意図し、例えばC
1〜C
8アルキルのC
1〜C
8は、1、2、3、4、5、6、7または8個の原子を直鎖状または分岐鎖状の配置で有する基を含むとして定義する。上に定義したアルキルの例としては、メチル、エチル、n−プロピル、i−プロピル、n−ブチル、t−ブチル、i−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルが挙げられるが、これらに限定されない。好ましい実施形態において、アルキル基は直鎖アルキル基である。
【0035】
本明細書では、用語「アルケニル」とは、指定の数の炭素原子をその中に有し、少なくとも2の上記炭素原子が互いに二重結合によって結合され、EまたはZのいずれかの位置化学及びそれらの組み合わせを有する、不飽和の直鎖または分岐鎖脂肪族炭化水素基を意味することを意図する。例えば、C
2〜C
6アルケニルのC
2〜C
6は、2、3、4、5、または6炭素を直鎖状または分岐鎖状の配置で有し、炭素原子の少なくとも2個が二重結合により互いに結合している基を含むとして定義する。アルケニルの例としては、エテニル(ビニル)、1−プロペニル、2−プロペニル、及び1−ブテニルが挙げられる。好ましい実施形態において、アルケニル基は直鎖アルケニル基である。
【0036】
式Iの化合物の例としては、下記の表1に掲載される化合物が挙げられるが、これらに限定はされない。好ましい実施形態において、上記化合物は、以下の化合物のいずれか1の酸の形態または薬学的に許容される塩によって表される。特定の実施形態において、上記化合物は、以下の化合物のいずれか1の薬学的に許容される塩である。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【0037】
本出願人は、構造が本発明の化合物の構造に関連する化合物を他所に記載している。例えば、参照によりその全体が本明細書に援用される、2014年3月14日に出願された「Substituted Aromatic Compounds and Related Method for the Treatment of Fibrosis」という名称の国際PCT出願第PCT/CA2014/000236号(WO2014/138906として公開)に開示の化合物が参照される。したがって、特定の実施形態において、WO2014/138906に開示された、いずれか1のまたは全ての化合物1〜8が本発明の範囲から除外される。
【0038】
塩
本明細書では、用語「薬学的に許容される塩」とは、塩基付加塩を意味することを意図する。薬学的に許容される塩の例は、例えば、Berge et al., “Pharmaceutical Salts”, J. Pharm. Sci. 66, 1−19 (1977)にも記載される。薬学的に許容される塩は、従来の化学的方法により、酸性部分を含む親剤から合成することができる。一般に、かかる塩は、水中もしくは有機溶媒中、またはそれらの2種の混合物中で、遊離酸形態のこれらの薬剤を化学量論量の適当な塩基と反応させることによって調製される。塩は、当該薬剤の最終的な単離もしくは精製の間にイン・サイチューで、または遊離酸の形態の精製した本発明の化合物を、所望の相当する塩基と別個に反応させ、そのようにして生成した塩を単離することによって調製することができる。
【0039】
式Iの化合物の薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アンモニウム、マンガン、亜鉛、鉄または銅の塩基付加塩からなる群より選択することができる。好ましい実施形態において、本発明に係る化合物の薬学的に許容される塩は、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムまたはリチウム塩であってよい。上記薬学的に許容される塩はナトリウムであることがより好ましい。
【0040】
いくつかの実施形態において、化合物は上記の表1に記載したナトリウム塩である。好ましい実施形態では、化合物は本明細書に規定の化合物Iである。
【0041】
記載される化合物の全ての酸、塩及び他のイオン性及び非イオン性の形態が本発明の化合物として包含される。例えば、本明細書において、化合物が酸として示されている場合、当該化合物の塩の形態も包含される。同様に、化合物が塩として示されている場合、当該の酸の形態も包含される。
【0042】
プロドラッグ
特定の実施形態において、一般化された式Iによって表され、遊離カルボン酸の形態で存在する本発明の化合物はまた、それらの全ての薬学的に許容される塩、テトラゾールなどの等配電子性等価体及びプロドラッグの形態を包含することができる。後者の例としては、アルコールもしくはアミノ酸を始めとするアミンの、式Iによって定義される遊離酸との反応に際して得られる、薬学的に許容されるエステルまたはアミドが挙げられる。
【0043】
キラリティー
本発明の化合物、それらの薬学的に許容される塩、またはそれらのプロドラッグは、1または複数の不斉中心、キラル軸及びキラル面を含んでいてもよく、したがって、鏡像異性体、ジアステレオマー及び他の立体異性の形態を生じてもよく、(R)−または(S)−などの絶対立体化学の観点から規定されてもよい。本発明は、全てのかかる可能な異性体、ならびにそれらのラセミ及び光学的に純粋な形態を包含することを意図する。光学活性な(+)及び(−)、(R)−及び(S)−、異性体は、キラルな出発原料もしくはキラルな反応剤を用いて調製することができ、または逆相HPLCなどの従来の技法を用いて分割することができる。ラセミ混合物を調製し、その後に個々の光学異性体に分離してもよく、またはこれらの光学異性体をキラル合成によって調製してもよい。鏡像異性体は当業者に公知の方法によって、例えば、その後に結晶化によって分離し得るジアステレオ異性体塩の形成、気体−液体または液体クロマトグラフィー、一方の鏡像異性体の鏡像異性体特異的な反応剤との選択的反応によって分割することができる。所望のエナンチオマーが分離技術によって別の化学物質に転化される場合、その後に、所望のエナンチオマーの形態を生成させるための追加のステップが必要であることが当業者には理解されよう。あるいは、特定のエナンチオマーは、光学活性な反応剤、基質、触媒、またもしくは溶媒を用いた不斉合成によって、または一方の鏡像異性体を不斉変換によって他方の鏡像異性体に転化させることによって合成することができる。
【0044】
本発明の特定の化合物は双性イオンの形態で存在していてもよく、本発明はこれらの化合物の双性イオンの形態及びそれらの混合物を包含する。
【0045】
水和物
更に、本発明の化合物はまた、水和した形態及び無水の形態で存在してもよい。本明細書に記載のいずれの式の水和物も本発明の化合物として包含され、これらは一水和物または多水和物の形態で存在してもよい。
【0046】
B)調製方法
一般に、本発明の全ての化合物は、容易に入手可能な及び/または従来技術で調製可能な出発物質、反応剤ならびに従来の合成手法を用いた、任意の従来の方法によって調製することができる。特に興味深い手法はHundertmark, T.; Littke, A. F.; Buchwald, S. L.; Fu, G. C. Org. Lett. 2000, 12, pp. 1729−1731の研究である。
【0047】
後述する実施例においては、式Iの合成のための概括的なスキーム及び具体的な、但しこれに限定されない例を提示する。当業者であれば、その構造が本発明の化合物のいくつかの構造と関係がある化合物を開示している本出願人のPCT出願公開第WO2014/138906号(全内容を参照により本明細書に援用する)も参照し得る。
【0048】
C)医薬用途
本明細書に示し且つ例示するように、本発明の化合物は有益な医薬特性を有し、これらの化合物は対象における様々な疾患及び/または疾病の予防及び/または治療に有用な医薬用途をもち得る。本発明者らが企図する医学的及び薬学的用途としては、異常な血中グルコースレベル、異常な血中インスリンレベル、異常な尿中ケトン体レベル、異常な血漿リポタンパク質レベル及び/または異常な血中トリグリセリドレベルが問題である疾患及び疾病が挙げられるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、本発明者らが企図する医学的及び薬学的用途は糖尿病に関する。
【0049】
用語「対象」は、異常な血中グルコースレベル、異常な血中インスリンレベル、異常な尿中ケトン体レベル、異常な血漿リポタンパク質レベル及び/または異常な血中トリグリセリドレベルが起こり得る、またはこのような疾病にかかりやすい生物を包含する。用語「対象」は哺乳類または鳥類などの動物を包含する。上記対象はヒト、ウマ、イヌ及びネコを含む、但しこれらに限定されない、哺乳動物であることが好ましい。いくつかの実施形態において、マウスは哺乳動物の範囲から除外される。上記対象はヒトであることがより好ましい。上記対象は治療を必要とするヒトの患者であることが最も好ましく、糖尿病患者が挙げられるがこれに限定されない。
【0050】
本明細書では、「予防」(preventing)または「予防」(prevention)とは、疾患または障害に罹患する危険性(または感受性)の可能性を少なくとも低減すること(すなわち、上記疾患にさらされているかまたは該疾患の素因がある可能性があるが、まだ該疾患の症状が起きていないまたは表われていない患者において、上記疾患の少なくとも1の臨床症状を発症させないこと)を指すことを意図する。かかる患者を識別するための生物学的及び生理学的パラメータは本明細書に提示され、医師によって周知でもある。好ましい実施形態において、「予防」(preventing)または「予防」(prevention)とは、インスリン分泌もしくはインスリン抵抗性の低下を予防すること、ならびに/または糖尿病もしくは膵臓機能喪失の危険性を低減することをいう。
【0051】
用語「対象の治療」または「対象を治療する」は、上記疾患もしくは疾病、該疾患もしくは疾病の症状、または該疾患もしくは疾病の危険性(または該疾患もしくは疾病に対する感受性)の、遅延、安定化、治療、治癒、緩和、軽減、改変、救済、悪化低減、寛解、改善、あるいは該疾患もしくは疾病に影響を与えることを目的として、対象に対して本発明の化合物を適用または投与すること(あるいは、対象由来の細胞もしくは組織に対して本発明の化合物を適用または投与すること)を包含する。用語「治療」(treating)とは、寛解;鎮静;悪化速度の減速;疾患の重篤度の低減;安定化、症状の軽減または傷害、病状もしくは疾病を対象に対してより忍容可能にすること;変性もしくは衰弱速度の減速;変性の最終点をより衰弱していないようにすること;または対象の肉体的もしくは精神的な健康状態の改善などの、任意の客観的または主観的なパラメータを含む、傷害、病状もしくは疾病の治療(treatment)または寛解における成功の任意の徴候をいう。いくつかの実施形態において、用語「治療」(treating)とは、対象の余命を増加させること及び/または更なる治療(例えば手術、透析または移植)が必要となる時期を遅延させることを包含し得る。好ましい実施形態において、「治療」(treatment)または「治療」(treating)とは、インスリン抵抗性、高インスリン血症、高血糖症及び/または高脂血症を患っている対象の医学的状態を改善することをいう。
【0052】
糖尿病
「糖尿病」及び「グルコース−脂質関連代謝障害」に対処することは、本発明が企図する医学的及び薬学的用途の1つである。真性糖尿病は、多くの場合単に糖尿病と呼ばれるが、体内で十分なインスリンが産生されないか、または細胞が産生されたインスリンに反応しないかのいずれかの理由によって、ある者の血糖値が高くなる一群の代謝性疾患を特徴とする。本明細書で用いる場合、用語「糖尿病」は様々な種類または形態の糖尿病を広く包含し、限定はしないが1型糖尿病、2型糖尿病、若年発症成人型糖尿病、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、妊娠糖尿病、肥満、高血糖症、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、高インスリン血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、代謝症候群、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症、性機能不全、代謝症候群を含めた代謝関連疾患または障害も包含する。好ましい実施形態において、本発明は、高血糖が医学的問題、例えば1型及び2型糖尿病である場合の方法、化合物及び組成物に関する。好ましい実施形態において、本発明は、インスリン抵抗性が医学的問題、例えば1型及び2型糖尿病である場合の方法、化合物及び組成物に関する。
【0053】
公知のように、様々な疾患及び疾病が糖尿病の原因となる場合があり、本発明は、こうした原因である薬物誘発性糖尿病、例えば限定はしないがストレプトゾトシン、アロキサン、殺鼠剤バコル、テオフィリン、アスピリン、ナリジクス酸、チアジド、抗高血圧血管拡張薬ジアゾキシド、コルチコステロイド、ベータ遮断薬、低エストロゲン、自己免疫性甲状腺疾患、甲状腺中毒症、殺虫剤誘発性糖尿病などの1つ以上の直接的または間接的な防止及び/または治療に有用であり得る。また、多くの疾患が糖尿病またはインスリン非感受性もしくはインスリン抵抗性から生じる直接的な原因となる場合があるが、例えばアルツハイマー(3型糖尿病)などである。
【0054】
いかなる理論にも縛られるものではないが、本発明の化合物はランゲルハンス島の再生を増加、またはそのアポトーシスを防止して真性糖尿病の症状を予防または寛解させ得る。本発明の化合物及び組成物はまた、(1)必要としている個体におけるベータ細胞の質量及び機能の回復;(2)必要としている個体における1型糖尿病の予防もしくは治療;(3)必要としている個体における2型糖尿病を予防もしくは治療;(4)必要としている個体における成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)の予防もしくは治療;(5)機能性インスリン産生細胞(例えばベータ細胞)の数を維持もしくは増加させることによる2型糖尿病の治療;及び/または(6)インスリン抵抗性の減少及び/またはインスリン感受性の増加をなし得る。本発明は、これらの及び他の可能な作用機序を包含する。
【0055】
本発明の関連する態様は、必要としているヒト対象の少なくとも1つの膵機能パラメータ、例えば(i)ランゲルハンス島の大きさ、成長及び/または分泌活性;(ii)ベータ細胞の大きさ、成長及び/または分泌活性;(iii)インスリン分泌;(iv)インスリン血中レベル及び(v)グルコース血中レベルなどに有益な影響を及ぼすための方法に関する。この方法は、本明細書に記載する式Iのいずれかで表される化合物、または薬学的に許容される塩を当該ヒト対象に投与することを含み、この投与によりヒト対象の上記膵機能パラメータのうち少なくとも1つに有益な影響を及ぼす。
【0056】
本発明による1種以上の化合物の投与はヒト対象に次の恩恵:(1)ベータ細胞の質量及び/または機能の回復;(2)1型及び2型糖尿病の予防及び/または治療;(3)潜在性自己免疫性糖尿病の予防及び/または治療;(4)機能性インスリン産生細胞の数の維持及び/または増加;及び/または(5)インスリン抵抗性の減少及び/またはインスリン感受性の増加のうち少なくとも1つをもたらすことが好ましい。
【0057】
したがって、本発明の関連する態様は、対象において、より具体的には肥満;低血糖症、高血糖症、及び/またはグルコース不耐性;インスリン抵抗性及び/または高インスリン血症;及び/または脂質異常症(例えば高脂血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、及び/または高トリグリセリド血症)を患っている対象においてグルコース、インスリン及び/または脂質レベルを調節するための本明細書に規定の化合物の使用に関する。
【0058】
その他の疾患
上述したように、糖尿病の特徴である慢性高血糖症は、複数の他の疾患及び疾患の危険性の増加につながる不健康なアウトカムと直接的及び間接的の両方で関連している。そのような疾患の例としては、代謝症候群、シンドロームX、脂質異常症、高脂血症、高リポタンパク血症、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症、及び性機能不全が挙げられる。したがって、血糖濃度を有意に低下させることのできる化合物、例えば本明細書に記載し本発明により例証する化合物などは、糖尿病に関連する疾患に対する治療効果をもたらし得ると考えられる。
【0059】
医薬組成物及び製剤
上述したように、本発明の化合物は多くの治療用途への可能性を有し得る。したがって、本発明の関連する態様は、治療上有効な量の、1種または複数種の、本明細書に記載の本発明の化合物及び薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0060】
本明細書では、用語「医薬組成物」とは、少なくとも1種の、本明細書において定義される式Iに基づく本発明の化合物及び少なくとも1種の薬学的に許容される担体、希釈剤、ビヒクルまたは賦形剤の存在をいう。
【0061】
本明細書では、用語「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される希釈剤」または「薬学的に許容される賦形剤」とは、対象、好ましくはヒトにおける使用に対して許容される任意のアジュバント、担体、賦形剤、流動促進剤、甘味料、希釈剤、防腐剤、色素/着色剤、風味増強剤、界面活性剤、湿潤剤、分散剤、懸濁剤、安定剤、等張化剤、溶媒、乳化剤、または、リポソーム、シクロデキストリン、カプセル化する高分子送達システムもしくはポリエチレングリコール・マトリクスなどのカプセル化剤を意味することを意図するが、これらに限定はされない。上記用語は、好ましくは、動物、より詳細にはヒトにおける使用に対して、連邦もしくは州政府の規制当局によって認可されたもしくは認可可能な、または米国薬局方もしくは他の一般的に認知された薬局方に掲載された化合物あるいは組成物をいう。上記薬学的に許容されるビヒクルは、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセリンル、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール)、それらの好適な混合物、ならびに植物油を含有する、溶媒または分散媒であってよい。薬学的に許容されるビヒクルの更なる例としては、注射用水USP;塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム注射液、及び乳酸加リンゲル注射液などの、但しこれらに限定されない水性ビヒクル;エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールなどの、但しこれらに限定されない水混和性ビヒクル;ならびにトウモロコシ油、綿実油、落花生油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルなどの、但しこれらに限定されない非水性ビヒクルが挙げられるが、これらに限定はされない。微生物の活動の防止は、抗菌剤及び抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどの添加によって行うことができる。多くの場合、上記組成物には等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウム、またはマンニトール及びソルビトールなどの多価アルコールが含まれる。注射用組成物の持続的吸収は、当該組成物中に吸収を遅延させる添加剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムまたはゼラチンを含有させることによって生じさせることができる。
【0062】
本明細書では、用語「治療上有効な量」とは、化合物の量であって、それが特定の障害、疾患もしくは疾病を治療または予防するために対象に投与された場合に、上記障害、疾患もしくは疾病のかかる治療または予防を達成するために十分な、上記化合物の量を意味する。投与量及び治療上有効な量は、例えば、用いる特定の薬剤の活性、対象の年齢、体重、全般的な健康状態、性別、及び食生活、投与時間、投与経路、排泄速度、及び該当する場合には任意の薬物の併用、医師が、当該化合物が有することを所望する対象に対する効果、当該化合物の特性(例えば、疎水性、溶解性、生物学的利用能、安定性、効能、毒性等)、ならびに対象が罹患している特定の障害(複数可)を含む多様な因子に応じて変化し得る。また、上記治療上有効な量は、対象の血液パラメータ(例えば、脂質プロフィール、インスリンレベル、血糖)、病状の重篤度、臓器機能、または基礎疾患もしくは合併症に依存し得る。かかる適切な用量は、本明細書に記載のアッセイを始めとする任意の利用可能なアッセイを用いて決定することができる。本発明の化合物の1種または複数種がヒトに投与されることとなる場合、医師は、例えば、最初は相対的に低い用量を処方し、その後適切な奏功が得られるまで用量を増加させてもよい。但し、一般的には、本化合物の用量は、1日当たり約0.01〜約50mg/kgの範囲とすることができることが想定される。選択された実施形態において、上記範囲は、1日当たり0.01〜20mg/kgであってもよい。選択された実施形態において、上記範囲は、1日当たり0.01〜10mg/kgであってもよい。選択された実施形態において、上記範囲は、1日当たり0.1〜10mg/kgであってもよい。選択された実施形態において、上記範囲は、1日当たり0.1〜5mg/kgであってもよい。選択された実施形態において、上記範囲は、1日当たり1〜10mg/kgであってもよい。
【0063】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、治療上有効な量の式Iの化合物を含む。好ましい化合物の一例は化合物Iである。上述したように、組成物は本明細書に記載する発明の化合物(例えば式Iの化合物)の1種以上を含む医薬組成物に関する。上述したように、本発明の医薬組成物は、糖尿病を患っている、または患う可能性のある対象に対して特に有用であり得る。
【0064】
いくつかの実施形態において、本発明は、必要としている対象においてインスリン分泌を増加させる及び/またはインスリン感受性を増加させるための、治療上有効な量の1種以上の式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0065】
いくつかの実施形態において、本発明は、必要としている対象においてインスリン抵抗性を減少させるための治療上有効な量の1種以上の式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0066】
いくつかの実施形態において、本発明は、必要としている対象において高血糖を低下させるための治療上有効な量の1種以上の式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0067】
いくつかの実施形態において、本発明は、対象において血中トリグリセリドを減少させるための治療上有効な量の1種以上の式Iの化合物を含む医薬組成物に関する。
【0068】
本発明の化合物は、利用可能な技術及び手順を用いて投与前に医薬組成物に製剤化され得る。例えば、医薬組成物は、経口、静脈内(iv)、筋肉内(im)、デポーim、皮下(sc)、デポーsc、舌下、鼻腔内、髄腔内、外用または経直腸経路による投与に適した様式で製剤化され得る。
【0069】
本発明の化合物(複数可)は経口投与できることが好ましい。製剤は単位剤形で簡便に提供してよく、薬学分野において公知の任意の方法により調製してよい。こうした製剤または組成物の調製方法は、本発明の化合物を薬学的に許容されるビヒクル(例えば不活性希釈剤または吸収可能な食用担体)及び任意により、1種以上の副成分と混合するステップを含む。一般に、本発明の化合物を液体担体、もしくは微細固体担体、またはこの両方と均質かつ密接に混合し、その後、必要であれば製品を成形することによって製剤を調製する。こうした治療上有用な組成物中における治療薬の量は好適な投与量が得られるような量である。
【0070】
経口投与に適した本発明の製剤は、カプセル(例えばハードもしくはソフトシェルゼラチンカプセル)、カシェ剤、丸薬、錠剤、ロゼンジ、粉末、顆粒、ペレット、ドラジェ、例えばコーティング(例えば腸溶コーティング)もしくは非コーティング、または水性もしくは非水性液体の溶液もしくは懸濁液、または水中油型もしくは油中水型乳濁液、またはエリキシルもしくはシロップ、またはパステル剤もしくはマウスウォッシュなどの形態であってよく、それぞれ有効成分として所定量の本発明の化合物を含む。本発明の化合物は、丸薬、舐剤もしくはペーストとして投与してもよく、または対象の食事に直接混入させてもよい。更に、ある実施形態において、こうしたペレットは、(a)薬物即放性もしくは速放性を付与する(すなわちコーティングしない);(b)コーティングして、例えば長時間にわたる薬物徐放性を付与する;または(c)より良好な胃腸忍容性のために腸溶性コーティングするように製剤化することができる。従来の方法、典型的にはpHまたは時間依存性コーティングにより、本発明の化合物(複数可)が所望の場所付近で、または様々な時間で放出されて所望の作用を延長するようにコーティングが行われ得る。こうした剤形は典型的に、セルロースアセテートフタレート、ポリビニルアセテートフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、エチルセルロース、ワックス、及びシェラックのうちの1種以上を含むがこれらに限定しない。経口投与用の固体剤形において、本発明の化合物は当該技術分野において公知の1種以上の薬学的に許容される担体と混合され得る。
【0071】
経口組成物としては典型的に、溶液、乳濁液、懸濁液などが挙げられる。そのような組成物の調製に適した薬学的に許容されるビヒクルは、当該技術分野において公知である。シロップ、エリキシル、乳濁液及び懸濁液の典型的な成分としては、エタノール、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、スクロース液、ソルビトール及び水が挙げられる。懸濁液について、典型的な懸濁化剤としては、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、トラガカント、及びアルギン酸ナトリウムが挙げられ;典型的な湿潤剤としては、レシチン及びポリソルベート80が挙げられ;典型的な保存剤としては、メチルパラベン及び安息香酸ナトリウムが挙げられる。経口液体組成物は上述した甘味剤、香味剤及び着色剤などの1種以上の成分も含有し得る。
【0072】
注入用途に適した医薬組成物は、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び滅菌注入用溶液または分散液の即時調製のための滅菌粉末を含み得る。すべての場合において、組成物は無菌でなければならず、シリンジ注入が容易に可能となる程度に流動性がなければならない。組成物は製造及び貯蔵条件下で安定でなければならず、微生物、例えば細菌及び真菌などの汚染作用を防ぐように保存されなければならない。滅菌注入用溶液は、必要に応じて上に列挙した成分の1種または組合せとともに、必要量の治療薬を適切な溶媒に混合し、その後、濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、ベースとなる分散媒及び上に列挙したものから必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に、治療薬を混合させることによって調製され得る。滅菌注入用溶液の調製のための滅菌粉末の場合、調製方法は真空乾燥及び凍結乾燥であり、有効成分(すなわち治療薬)及び任意の追加の望ましい成分の粉末を、先に滅菌濾過したそれらの溶液から得る。
【0073】
中には、エアゾールとして吸入により投与するのに好適であり得る医薬製剤もある。こうした製剤は、本明細書に規定する式Iの所望の化合物の溶液もしくは懸濁液、またはそのような化合物(複数可)の複数の固体粒子を含む。例えば、本発明の化合物の金属塩は、吸入による投与のための医薬品有効成分(API)の微細粒子の調製に適した物理化学的特性を有することが予想されるが、これらの化合物の遊離酸形態では異なる。所望の製剤は小型のチャンバーに入れて噴霧され得る。圧縮空気または超音波エネルギーによって噴霧が行われて薬剤または塩を含む複数の液滴または固体粒子が形成され得る。液滴または固体粒子は約0.5〜約5μmの範囲の粒径を有するであろう。固体粒子は、当該技術分野において公知の任意の適切な方法、例えば微粉化などによって、本明細書に記載する式Iの任意の化合物またはその塩の固体薬剤を処理することにより得ることができる。固体粒子または液滴のサイズは例えば約1〜約2μmとなるであろう。この点において、市販のネブライザーがこの目的を達成するために利用可能である。エアゾールとしての投与に適した医薬製剤は液体の形態であってよく、この製剤は、水を含む担体中に本明細書に記載する任意の式の水溶性薬剤、またはその塩を含むことになるであろう。噴霧した際に所望のサイズ範囲内の液滴形成が得られるのに十分なだけ製剤の表面張力を低下させる界面活性剤が存在してよい。
【0074】
本発明の組成物は、例えば組成物を対象の表皮または上皮組織上に直接置くまたは塗布することによって、または「パッチ」により経皮的に、対象へ外用投与してもよい。そのような組成物としては、例えば、ローション、クリーム、溶液、ゲル及び固体が挙げられる。こうした外用組成物は有効量の、一般に少なくとも約0.1%、更には約1%〜約5%の本発明の化合物を含み得る。外用投与に好適な担体は典型的に、連続的な被膜として皮膚上の同じ場所に留まり、発汗または水中への浸漬による除去に抵抗する。一般に、担体は有機性であり、その中に治療薬を分散または溶解させることができる。担体は薬学的に許容される皮膚軟化剤、乳化剤、粘稠剤、溶媒などを含み得る。
【0075】
本薬剤の全身送達を行うのに有用な他の組成物は舌下、経頬及び経鼻投与形態を含み得る。そのような組成物は典型的に、可溶性増量物質、例えばスクロース、ソルビトール及びマンニトール;ならびに結合剤、例えばアカシア、微結晶セルロース、カルボキシメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースのうちの1種以上を含む。上に開示した流動化剤、滑沢剤、甘味剤、着色剤、酸化防止剤及び香味剤も含まれ得る。
【0076】
本発明の化合物(複数可)は腸管外または腹腔内投与してもよい。そのような組成物では、本発明の化合物(複数可)をグリセロール、液体ポリエチレングリコール、及びこれらの混合物ならびに油中に調製することができる。通常の貯蔵及び使用条件下では、これらの調製物は微生物の生育を防止するために保存剤を含有し得る。
【0077】
共投与
単独療法として本明細書に規定の化合物を用いることは本発明の範囲内であるが、これらの化合物を他の技術(例えば食事療法)と併せて及び/または既存の薬剤(例えば抗糖尿病薬)と併せて用いることができる。
【0078】
したがって、本発明の方法及び組成物は、グルコース、インスリン、ケトン体、血漿リポタンパク質及び/またはトリグリセリドの異常なレベルに関連する障害及び疾病の予防及び/または治療のための別の治療上有効な薬剤の投与と併せた、少なくとも1種の本明細書に規定する式Iの化合物の共投与も含み得る。
【0079】
本発明の化合物と併用され得る抗糖尿病剤の例としては、インスリン(注入、吸入、短時間作用型、長時間作用型、中時間作用型、速効型、予混合)、インスリン分泌促進薬(スルホニル尿素、メグリチニド)、アルファ−グルコシダーゼ阻害剤、インクレチン剤、TZD、DDP−4阻害剤及び抗肥満剤が挙げられる。
【0080】
一実施形態において、本発明の化合物(複数可)は、血糖値を低下または調節するための少なくとも1種の第2治療薬と併用するが、この第2治療薬は糖尿病を予防及び/または治療するために現在用いられているかまたは開発中である公知の化合物である。そのような公知の化合物の例としては、抗糖尿病薬、例えばスルホニル尿素(例えばグリカジド(glicazide)、グリピジド)、メトホルミン、グリタゾン(例えばロシグリタゾン、ピオグリタゾン)、食事性グルコース放出剤(例えばレパグリニド、ナテグリニド)及びアカルボースなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の化合物(複数可)と併用することのできる有用な抗糖尿病化合物または薬剤のより詳細な非限定的リストには、インスリン、ビグアニド、例えばメトホルミン(Glucophage(登録商標)、Bristol−Myers Squibb Company,米国;Stagid(登録商標)、Lipha Sante,欧州)など;スルホニル尿素薬、例えばグリクラジド(Diamicron(登録商標))、グリベンクラミド、ギルピジド(gilpizide)(Glucotrot(登録商標)及びGlucotrol XL(登録商標), Pfizer)、グリメピリド(Amaryl(登録商標), Aventis)、クロルプロパミ(例えばDiabinese(登録商標), Pfizer)、トルブタミド、ならびにグリブリド(例えばMicronase(登録商標)、Glynase(登録商標)及びDiabeta(登録商標))など;グリニド、例えばレパグリニド(Prandin(登録商標)もしくはNovoNorm(登録商標); Novo Nordisk)、またはミチグリニド、ナテグリニド(Starlix(登録商標))、セナグリニド、及びBTS−67582など;DPP−4阻害剤、例えばビルダグリプチン及びシタグリプチンなど;インスリン増感剤、例えばグリタゾン、チアゾリジンジオン、例えばマレイン酸ロシグリタゾン(Avandia(登録商標), Glaxo SmithKline)、ピオグリタゾン(Actos(登録商標), Eli Lilly, Takeda)、トログリタゾン、シグリタゾン、イサグリタゾン、ダルグリタゾン、エングリタゾンなど;グルカゴン様ペプチドI(GLP−1)受容体アゴニスト、例えばエキセンジン−4(1−39)(Ex−4)、Byetta(商標)(Amylin Pharmaceuticals Inc.)、CJC−1131(Conjuchem Inc.)、NN−221 I (Scios Inc.)、WO98/08871に記載されているGLP−1アゴニストなど;炭水化物吸収を減速させる薬剤、例えばa−グルコシダーゼ阻害剤(例えばアカルボース、ミグリトール、ボグリボース、及びエミグルテート(emiglltate))など;胃内容物排出を阻害する薬剤、例えばグルカゴン様ペプチドI、コレシストキニン、アミリン、及びプラムリンチドなど;グルカゴンアンタゴニスト、例えばキノキサリン誘導体(例えば2−スチリル−3−[3−(ジメチルアミノ)プロピルメチルアミノ1−6,7−ジクロロキノキサリン、Collins et al., Bioorganic and Medicinal Chemistiy Letters 2(9):91 5−91 8, 1992)、スキリン及びスキリンアナログ(例えばWO 94/14426に記載されているもの)、1−フェニルピラゾール誘導体(例えば米国特許第4,359,474号に記載されているもの)、置換ジスラシクロヘキサン(disllacyclohexanes)(例えば米国特許第4,374,130号に記載されているもの)、置換ピリジン及びビフェニル(例えばWO 98/04528に記載されているもの)、置換ピリジルピロール(例えば米国特許第5,776,954号に記載されているもの)、2,4−ジアリール−5−ピリジルイミダゾール(例えばWO 98/21957、WO 98/22108、WO 98/22109、及び米国特許第5,880,139号に記載されているもの)、2,5−置換アリールピロール(例えばWO 97/1 6442及び米国特許第5,837,719号に記載されているもの)、置換ピリミジノン、ピリドン、及びピリミジン化合物(例えばWO 98/24780、WO 98/24782、WO 99/24404、及びWO 99/32448に記載されているもの)、2−(ベンザーニダゾール(benzirnidazol)−2−イルチオ)−1−(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−エタノン(Madsen et aL, J. Med. Chem. 41:5151−5157, 1998を参照)、アルキリデンヒドラジド(例えばWO 99/01423及びWO 00/39088に記載されているもの)、グルコキナーゼ活性化剤、例えばWO 00/58293、WO 01/44216、WO 01/83465、WO 01/83478、WO 01/85706、及びWO 01/85707に記載されているものなど、ならびに他の化合物、例えば選択的ADP感受性K
+チャネル活性化剤(例えばジアゾキシド)、ホルモン(例えばコレシトキニン(cholecytokinin)、GRPボンベシン、及びガストリン、更にEGF受容体リガンド;Banerjee et al. Rev Diabet Stud, 2005 2(3): 165−176)を参照)など;ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体−γ(PPAR−γ)アゴニスト(例えばピオグリタゾン;Ishida et al., Metabolism, 2004, 53(4), 488−94)を参照);酸化防止剤(例えば1−ビス−o−ヒドロキシシンナモイルメタン、クルクミノイドビスデメトキシクルクミン;Srivivasan et al., J Pharm Pharm Sci. 2003, 6(3): 327−33を参照)、WO 00/69810, WO 02/00612, WO 02/40444, WO 02/40445, WO 02140446、及びWO 97/41097 (DRF−2344), WO 97/41119, WO 97/41120, WO 98/45292, WO 99/19313 (NN622/DRF−2725), WO 00/23415, WO 00/23416, WO 00/23417, WO 00/23425, WO 00/23445, WO 00/23451, WO 00/41121, WO 00/50414, WO 00/63153, WO 00/63189, WO 00/63190, WO 00/63191, WO 00/63192, WO 00/63193, WO 00/63196, WO 00/63209, US 6,967,019, US 7,101,845, US 7,074,433, US 6,992,060, US RE39,062, WO 2006/131836; WO 2006/120574, WO 2004/1076276, WO 2004/041266, WO 2005/086661; EP 1 630 152, EP 1 559 422, U.S. No. 2004/0038126, US No. 2006/004012, WO 2010/127440 U.S. No. 2007/0066647に記載されている化合物;ならびにT−174、GI−262570、YM−440、MCC−555、JTT−501、AR−H039242、KRP−297、GW−409544、CRE−16336、AR−H049020、LY510929、MBX−102、CLX−0940、及びGW−501516と呼ばれるパブリックドメインの化合物が含まれる。
【0081】
本発明による化合物(複数可)とともに共投与され得る薬剤の別の例は、膵ベータ細胞新生及び/または膵島の再生を刺激するための化合物である。現在用いられているまたは開発中である膵島の数(すなわちベータ細胞)に有益な効果を及ぼす化合物の例としては、Byetta(商標)(エキセンジン−4阻害剤)、ビルダグリプチン(Galvus(商標)、ジペプチジルペプチダーゼ阻害剤)、Januvia(商標)(シタグリプチンリン酸塩)及びGymnema sylvestrae葉からの抽出物(Pharma Terra)が挙げられる。本発明による化合物(複数可)は細胞再生に関係する生体分子、例えばβ−セルリン、Beta vulgarisまたはEphedra herbaからの植物抽出物、及びニコチンアミド(Banerjee et al. Rev Diabet Stud, 2005 2(3): 165−176を参照)などとともに投与してもよい。
【0082】
本発明の原理に従って用いられ得る更なる化合物または薬剤は、膵ベータ細胞成長もしくはインスリン産生細胞成長及び/またはインスリン産生を誘発することのできるものである。そのような化合物としては、グルカゴン様ペプチド1(GLP−1)及びその長時間作用型DPP−IV抵抗性GLP−1アナログ、GLP−1受容体アゴニスト、胃抑制ポリペプチド(GIP)及びそのアナログ(例えば米国特許公開第2005/0233969号に開示されているもの)、ジペプチジルペプチダーゼIV(DPP−IV)阻害剤、インスリン調製物、インスリン誘導体、インスリン様アゴニスト、インスリン分泌促進薬、インスリン増感剤、ビグアニド、糖新生阻害剤、糖吸収阻害剤、腎グルコース再吸収阻害剤、β3アドレナリン受容体アゴニスト、アルドースレダクターゼ阻害剤、終末糖化産物産生阻害剤、グリコーゲンシンターゼキナーゼ−3阻害剤、グリコーゲンホスホリラーゼ阻害剤、抗脂血剤、食欲抑制剤、リパーゼ阻害剤、抗高血圧剤、末梢循環改善剤、酸化防止剤、糖尿病性神経障害治療薬などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0083】
本発明による化合物(複数可)とともに共投与され得る薬剤の別の例は、抗肥満剤、及び食欲低減剤である。本発明による化合物とともに用いることのできる抗肥満剤の例としては、Xenical(商標)(Roche)、Meridia(商標)(Abbott)、Acomplia(商標)(Sanofi−Aventis)、交感神経様作用性フェンテルミンが挙げられる。有用である可能性のある公知及び新規の抗肥満剤の非限定的リストがWO 2006/131836の表2に記載されており、この表を参照により本明細書に援用する。
【0084】
加えて、本発明の方法は、限定はしないが脂質異常症、高血圧、肥満、神経障害、炎症、及び/または網膜症などをはじめとする、糖尿病及び/または腎障害合併症に直接的または間接的に関係する別の疾患の治療のための少なくとも1種の他の治療薬の共投与も含み得る。本発明による化合物(複数可)とともに共投与することのできる薬剤の別の例は、コルチコステロイド;免疫抑制薬;抗生物質;抗高血圧薬(例えばACE阻害剤など);利尿薬;脂質降下剤、例えば胆汁酸封鎖樹脂、コレスチラミン、コレスチポール、ニコチン酸など、ならびにより具体的にはコレステロール及びトリグリセリドを減少させるために用いられる薬物及び医薬品(例えばフィブラート(例えばGemfibrozil(登録商標))及びHMG−CoA阻害剤、例えばLovastatin(登録商標)、Atorvastatin(登録商標)、Fluvastatin(登録商標)、Lescol(登録商標)、Lipitor(登録商標)、Mevacor(登録商標)、Pravachol(登録商標)、Pravastatin(登録商標)、Simvastatin(登録商標)、Zocor(登録商標)、Cerivastatin(登録商標)など);脂質の腸管吸収を阻害する化合物(例えばエゼチミンデ(ezetiminde));ニコチン酸;ならびにビタミンDである。
【0085】
本発明による化合物(複数可)とともに共投与することのできる薬剤の別の例は、免疫調節剤または免疫抑制剤、例えば臓器移植を受けた1型糖尿病患者によって用いられるものなどである。
【0086】
それ故に、本発明の更なる態様は、対象の併用治療方法であって、該方法を必要とする対象に対して、有効量の第1の薬剤及び第2の薬剤を投与することを含み、第1の薬剤は式Iにおいて定義されるものであり、第2の薬剤は、上記に示した障害もしくは疾患のいずれか1の予防または治療のためのものである、上記方法に関する。本明細書では、「併用治療」または「〜との併用で」との語句におけるような用語「併用の」または「併用で」は、第2の薬剤の存在下で第1の薬剤を投与することを包含する。併用治療方法は、第1、第2、第3または更なる薬剤が同時投与される方法を包含する。併用治療方法はまた、第1または更なる薬剤が、第2または更なる薬剤(複数可)の存在下で投与され、当該第2のまたは更なる薬剤(複数可)が、例えば、前もって投与されていてもよい方法も包含する。併用治療方法は、異なる実施者によって段階的に実行されてもよい。例えば、一人の実施者が対象に第1の薬剤を投与し、第2の実施者が当該の対象に第2の薬剤を投与してもよく、第1の薬剤(及び/または更なる薬剤)が、第2の薬剤(及び/または更なる薬剤)の存在下での後の投与である限り、投与ステップは同時に、またはほぼ同時に、または離れた時間に実施されてもよい。上記実施者及び対象は同一の存在(例えば、ヒト)であってもよい。
【0087】
したがって、本発明はまた、上述の疾患もしくは疾病(例えば糖尿病等)のいずれか1つの症状または合併症の予防、低減あるいは排除方法に関する。この方法は、該方法を必要とする対象に対して、少なくとも1種の本発明の化合物を含む第1の医薬組成物、及び1種または複数種の更なる活性成分を含む第2の医薬組成物を投与することを含み、全ての活性成分が、治療を受ける疾患もしくは疾病の1または複数の症状または合併症を抑制、低減あるいは排除するために十分な量で投与される。一態様において、第1及び第2の医薬組成物の投与は、時間的に少なくとも約2分の間隔が空けられる。第1の薬剤は本明細書で定義される式Iの化合物、またはその薬学的に許容される塩、例えば、ナトリウム塩であることが好ましい。第2の薬剤は上述される一連の化合物から選択することができる。
【0088】
キット
本発明の化合物(複数可)は、任意選択で容器(例えば、包材、箱、バイアル等)を含むキットの一部として包装されてもよい。上記キットは本明細書に記載の方法に従って市販品として使用することができ、本発明の方法に用いるための説明書を含んでいてもよい。更なるキットの成分としては、酸、塩基、緩衝剤、無機塩、溶媒、抗酸化剤、防腐剤、または金属キレート剤を挙げることができる。上記更なるキットの成分は、純粋な組成物、または1種または複数種の更なるキットの成分を組み込んだ水溶液もしくは有機溶液として存在する。いずれかのまたは全ての上記キットの成分は任意選択で緩衝剤を更に含む。
【0089】
本発明の化合物(複数可)は、対象に、同時にもしくは同一の投与経路によって投与されても、またはそのように投与されなくてもよい。したがって、本発明の方法は、医師によって用いられる場合に、適切な量の2種以上の活性成分の患者に対する投与を単純化できるキットを包含する。
【0090】
本発明の一般的なキットは、本発明に係る少なくとも1種の化合物、例えば本明細書で定義される化合物式Iの単位剤形、及び少なくとも1種の更なる活性成分の単位剤形を含む。本発明の化合物と併用で用いることができる更なる活性成分の例としては、上記の「共投与」の節で示した本発明の化合物(複数可)と併用で用いることができる化合物のいずれかが挙げられるが、これらに限定はされない。
【0091】
本発明のキットは、1種または複数種の活性成分を投与するために用いることができる薬学的に許容されるビヒクルを更に含むことができる。例えば、活性成分が非経口投与のために再構成されなければならない固体形態で提供される場合、上記キットは、当該活性成分を溶解させて、非経口投与に好適な微粒子を含まない無菌溶液を形成することができる好適なビヒクルの密封された容器を含むことができる。薬学的に許容されるビヒクルの例は上述される。
【0092】
膵機能及び脂質プロファイルの評価
膵機能及び膵疾患、膵機能障害または膵機能不全のパラメータの定量的評価は、当該技術分野において公知である。膵機能/機能障害を判定するアッセイの例としては、生物学的及び/または生理学的パラメータ、例えばランゲルハンス島のサイズ、成長及び/または活性、ベータ細胞のサイズ、成長及び/または活性;インスリン分泌及び循環血中レベル、グルコース血中レベルなど、膵臓の画像診断、ならびに膵臓生検を用いて、少なくとも1つの評価する膵機能を検査することが挙げられる。例えば、米国特許第5,424,286号の実施例に、化合物による膵インスリン分泌の刺激、化合物によるインシュリン分泌性活性、または糖血症に対する化合物活性を試験するための方法が記載されている。Briscoe et al. (British Journal of Pharmacology, 2006, 148:619−628)はMIN6細胞を用いたインスリン分泌アッセイを開示している。
【0093】
ヒト対象におけるグルコース、インスリン、血漿リポタンパク質及び/またはトリグリセリドの正常レベルは当該技術分野において公知であり、これらの生物学的パラメータの定量的評価も治療を必要とする対象を特定するために有用であり得る。医師により一般に用いられる公知技術としては、絶食血漿グルコースレベル及びグルコース耐性試験における血漿グルコースレベルの測定、「高インスリン正常血糖クランプ」を用いたインスリン抵抗性の定量化、8〜12時間絶食後の血流トリグリセリドレベルの検査などが挙げられる。
【0094】
糖尿病患者の選別及び監視
一般に、ヒトにおける正常な糸球体濾過量(GFR)は約100〜約140ml/分である。いくつかの実施形態において、対象は進行腎障害(すなわち75ml/分未満のGFR)を有するヒト患者である。いくつかの実施形態において、対象は末期腎疾患(ESRD)(すなわち10ml/分未満のGFR)を有するヒト患者である。いくつかの実施形態において、本発明の方法、化合物または組成物は、患者のGFR値を少なくとも1、5、10、15、20または25ml/分以上増加させるのに有効である。
【0095】
いくつかの実施形態において、対象は糖尿病(例えば1型、2型、若年発症成人型糖尿病、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、または妊娠糖尿病)の危険性にあるか、または糖尿病と診断されている。いくつかの実施形態において、糖尿病の臨床症状発症の初期段階で本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)を投与する。
【0096】
いくつかの実施形態において、対象は高血糖症である。いくつかの実施形態において、対象の血糖値が高く、本発明の化合物(複数可)及び/または組成物(複数可)を患者に投与して正常レベルに回復させる。グルコースの正常レベルは、当業者にとって公知の医学論文に報告されている。一般に、血糖値はグルコースメーターによって測定され、結果は血液中のmg/dL(米国ではミリグラム/デシリットル)またはmmol/L(カナダ及び欧州ではミリモル/リットル)のいずれかの単位である。例えば、平均的な健常者は約4.5〜7.0mmol/L(80〜125mg/dL)のグルコースレベルを有する。糖尿病患者では、<6.1mmol/L(<110mg/dL)の食前レベル及び<7.8mmol/L(<140mg/dL)の食事開始2時間後レベルが許容範囲である。本発明によるいくつかの実施形態において、対象の血糖値は150mg/dl、または175mg/dl、または200mg/dl、または225mg/dlより高い、または250mg/dlより高い、または300mg/dlを超える。
【0097】
いくつかの実施形態において、対象は2型糖尿病のヒト患者である。公知のように、2型糖尿病はインスリン抵抗性及びインスリン分泌障害の組合せに起因するが、最終的に2型糖尿病の多くの人々が膵ベータ細胞の質量及び機能の顕著な低下を示し、ひいては2型糖尿病患者のインスリンが「相対的に」欠乏する原因となる。これは、膵ベータ細胞からインスリンが十分に産生されず、グルコースが十分に細胞内に取り込まれてエネルギーを産生することができないためである。非管理の2型糖尿病は血中グルコースの過剰につながり、結果として高血糖症、または高い血糖値となる。2型糖尿病患者は疲労、口渇の増加、頻尿、乾燥、皮膚の痒み、視朦、切り傷または潰瘍の治癒遅延、通常よりも多くの感染症、足の麻痺及び刺痛を経験する。いくつかの実施形態において、本発明の方法、化合物または組成物は、こうした症状の1つ以上の改善、治癒及び/または緩和に有効である。
【0098】
いくつかの実施形態において、対象がグルコースレベルの上昇またはベータ細胞機能障害の増加を示し始めるが、完全なベータ細胞不全の前である初期段階で、本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)を投与する。本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)は、ベータ細胞質量の低下が可逆的であると思われる場合にも投与され得る。
【0099】
いくつかの実施形態において、対象は1型糖尿病のヒト患者である。公知のように、ある者の免疫系が膵臓のインスリン産生ベータ細胞を攻撃して破壊し、その結果、膵臓がその後インスリンをほとんどまたは全く産生しなくなる場合に1型糖尿病が生じる。最も一般的な1型糖尿病症状としては、過度の口渇(多渇症)、頻尿(多尿症)、極度の空腹(多食症)、極度の疲労、及び体重減少が挙げられる。いくつかの実施形態において、本発明の方法、化合物または組成物は、こうした症状の1つ以上の改善、治癒及び/または緩和に有効である。いくつかの実施形態において、対象はベータ細胞の破壊及び/またはアポトーシスにつながる自己免疫反応を起こす。いくつかの実施形態において、対象の尿中にはケトンが存在する。本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)は、炎症(例えばサイトカイン(例えばTNF−アルファ、IFN−ガンマ、IL−1、IL−2及びIL−8)の産生に対する細胞免疫反応)の早期徴候がある場合に投与され得る。いくつかの実施形態において、(a)インスリン関連障害の危険性にある対象がインスリン関連障害の臨床症状を示す前;(b)対象がインスリン関連障害の徴候、例えばグルコースレベルの上昇またはベータ細胞不全を示し始めた後(参照値、例えば対照、例えば非疾患状態対照と比較して、例えばグルコースレベルまたはベータ細胞不全における5、10、20、または30%を超える増加または減少が根拠となる);(c)インスリン関連障害、例えば糖尿病または本明細書に記載の別のインスリン関連障害と診断されたとき;(d)インスリン関連障害、例えば糖尿病に対する治療が開始される、またはその効果を発揮し始める前、その間またはその後に、本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)の投与を開始することができる。薬剤を投与する期間(または対象において臨床的に有効レベルが維持される期間)は、長期、例えば6か月以上もしくは1年以上、または短期、例えば1年未満、6か月、1か月、2週間、もしくはそれ未満とすることができる。
【0100】
いくつかの実施形態において、対象が膵障害の臨床症状を示す前であって、対照が膵障害の危険性にある、例えば対象が肥満である、または対象が膵障害の家族歴を有する(例えば対象の親、兄弟姉妹もしくは祖父母が糖尿病などの膵障害を有する)ことが確認された後に、本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)を投与する。
【0101】
いくつかの実施形態において、膵障害に対する補助療法として本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)を投与する、例えばインスリンの投与に加えて薬剤を投与する。
【0102】
いくつかの実施形態において、対象は異常な膵機能を示す(例えば対象は異常なインスリン分泌を示す、対象はインスリン抵抗性の徴候を示す、対象は高インスリン血症または高血糖症を有するなど)。
【0103】
いくつかの実施形態において、本発明による糖尿病の予防及び/または治療のための方法は、望ましい患者または患者集団を特定する、例えば、免疫マーカー、遺伝子マーカー、代謝マーカーまたはこれらの組合せを用いて糖尿病の危険性を有する患者を特定するステップを含み得る。患者は、治療の開始前、その間またはその後に特定され得る。
【0104】
併用療法及び投与量
本発明の方法は、哺乳類、例えば必要としているヒト患者または動物に、予防的または治療的に有効な量の本明細書に規定する化合物または医薬組成物を投与することを含む。
【0105】
ほとんどのインスリン依存性糖尿病患者は少なくとも毎日インスリン注入を必要とする。疾患の十分な管理を達成するために1日に複数回のインスリン投与が現在推奨されており、インスリン投与は頻繁なグルコース監視の結果によって指示されるが、このグルコース監視は疾患の最適管理のために糖尿病患者に必要とされるもう1つの行為であり、例えば毎日5回の頻度で行われる。更なる別の態様では、本発明は、インスリン欠乏性糖尿病患者におけるインスリン使用量の減少方法に関し、この方法は本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)の投与を含む。その実施形態によれば、この投与の結果として糖尿病が寛解し始め、そのため、治療中及び治療後の監視、例えば患者による自己監視によって得られる血糖値によって決定される、治療の前に糖尿病患者に提供されるインスリンの標準的な投与量が減少する。本発明による治療の成功に起因する糖尿病からの寛解は、グルコースの絶食血中レベルの減少、ならびに糖摂取の食事負荷試験に反応する血中グルコース上昇のレベル及び持続時間の減少によって示され得る。更なる別の関連する態様では、本発明は、インスリンを必要とする対象におけるインスリン感受性を改善する及び/またはインスリン抵抗性を減少させる方法に関し、この方法は本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)の投与を含む。したがって、好ましい実施形態において、本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)を投与した後のインスリン送達は、その糖尿病患者における本発明の化合物(複数可)または組成物(複数可)の投与前の使用量と比較して、75%未満、または50%未満、または10%未満、または1%未満に減少する。他の好ましい実施形態では、インスリン投与は例えば、1日あたり5回の注入から2回の注入に;1日あたり2回の注入から1回の注入に;及び1回から無しに減少するが、これは血糖値の監視から得られるデータによって指示される。
【0106】
いくつかの実施形態において、本発明の方法は、次のパラメータ:(1)インスリン血中レベル;(2)グルコース血中レベル;(3)体重の1つ以上について対象を評価するステップを更に含む。例えば、一実施形態において、この方法は、1日約1回または1日約1回未満の間隔で血糖値を監視すること;及び患者の血糖値に応じて調節した投与量で患者への組成物の投与を繰り返すことを含む。薬理学分野の当業者は、糖尿病患者を治療している場合、絶食後及び他の生理的条件下での血糖値に対してインスリン投与量を調節することに精通している。
【0107】
当業者であれば、本明細書に記載する特定の手順、実施形態、請求項、及び実施例に対する多くの均等物を認識するか、または通常の実験を用いるだけで確かめることができるであろう。そのような均等物は本発明の範囲内であるとみなされ、添付の特許請求の範囲で網羅される。本発明を以下の実施例により更に説明するが、更なる限定であると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0108】
以下に記載する実施例により、式Iに包含される特定の代表的な化合物の調製のための例示的な方法を提供する。いくつかの実施例では本発明の特定の代表的な化合物の例示的使用を提供する。本発明の化合物をインビトロ及び/またはインビボ有効性についてアッセイするための例示的方法も提供する。
【0109】
計測:
全てのHPLCクロマトグラム及び質量スペクトルは、0.01%のTFAを含むCH3CN−H2Oを溶離液として3分間にわたる50〜99%のグラジエント、その後アイソクラティックで3分間にわたって2mL/分の流速で、分析用C18カラム(250×4.6mm、5ミクロン)を使用したHP 1100 LC−MS アジレント装置上で記録した。
【0110】
実施例1:特定の代表的な化合物の調製のための実験手順
化合物I:2−[3,5−ジペンチルフェニル]酢酸ナトリウム
【化4】
ステップ1:
窒素下、0℃の2−[3,5−ジヒドロキシフェニル]酢酸メチル(1.00g、5.49mmol)及びN−フェニル−ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(4.31g、12.1mmol)のジクロロメタン(20ml)懸濁液をトリエチルアミン(1.68ml、12.1mmol)で処理した。透明な溶液が生成した。次いでこの反応混合物を窒素下、0℃で2時間、及び室温で21時間撹拌した。この反応混合物を酢酸エチル(100ml)で希釈し、この溶液を0.5Mの水酸化ナトリウム水溶液(2×100ml)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(75ml)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iMカラム(シリカ)上、酢酸エチル/ヘキサン 0:1〜1:9で溶離させて精製し、2−[3,5−ビス(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フェニル]酢酸メチルを淡色の油状物として得た(2.23g、91%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.32 (d, J = 2.2 Hz, 2H), 7.18 (dd, J = 2.2, 2.2 Hz, 1H), 3.72 (s, 5H); 19F NMR (377 MHz, CDCl3): δ −73.20 (s, 3F); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 170.05, 149.48, 139.01, 122.95, 118.87 (q, JCF = 320.5 Hz), 114.42, 52.62, 40.29.
【0111】
ステップ2:
上記アリールビス(トリフレート)(2.23g、4.99mmol)及び(E)−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステル(2.45g、12.5mmol)の1,2−ジメトキシエタン(25ml)溶液を、炭酸ナトリウム(1.59g、15.0mmol)の水(8ml)溶液で処理した。この溶液を窒素で脱酸素し、次いでテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0.58g、0.50mmol)で処理した。この混合物を封管中、90℃で17時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、酢酸エチル(200ml)と1Mの塩酸水溶液(150ml)との間で分配させた。有機相を5%の炭酸水素ナトリウム水溶液(150ml)、及び飽和塩化ナトリウム水溶液(150ml)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)40iLカラム(シリカ)上、酢酸エチル/ヘキサン 0:1〜3:97で溶離させて精製し、2−[3,5−ジ[(E)−1−ペンタ−1−エニル]フェニル]酢酸メチルを、分離不能な過剰の(E)−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステルとの10:4の混合物として得た(1.12g、61%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.21 (s, 1H), 7.10 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 6.34 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.22 (dd, J = 15.8, 6.7 Hz, 1H), 3.65 (s, 3H), 3.55 (s, 2H), 2.18 (tdd, J = 6.8, 6.8, 1.0 Hz, 2H), 1.49 (qt, J = 7.4, 7.2 Hz, 2H), 0.96 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 172.04, 138.59, 134.47, 131.34, 129.97, 125.57, 122.75, 52.07, 41.32, 35.39, 22.77, 13.97.
【0112】
ステップ3:
上記不飽和化合物(1.12g、78.5%w/w、3.07mmol)の酢酸エチル(1ml)及びメタノール(1ml)の溶液を、炭素担持パラジウム(10%w/wのPd;0.12g)で処理した。この混合物を水素で脱気し、1気圧の水素下、室温で22時間撹拌した。この反応混合物を濾過し、減圧下で留去して2−[3,5−ジペンチルフェニル]酢酸メチルを、分離不能なペンチルボロン酸ピナコールエステルとの10:4の混合物として得た(0.86g、76%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.93 (s, 3H), 3.70 (s, 3H), 3.59 (s, 2H), 2.58 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 1.58−1.66 (m, 2H), 1.32−1.38 (m, 4H), 0.91 (t, J = 6.8 Hz, 3H).
【0113】
ステップ4:
上記メチルエステル(0.86g、79%w/w、2.34mmol)のアセトニトリル(24ml)溶液を水酸化リチウム(0.28g、11.7mmol)の水(6ml)溶液で処理し、この反応混合物を室温で22時間撹拌した。この反応混合物を1Mの塩酸水溶液(55ml)でクエンチし、次いで酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄し、次いで硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。SiliaSep(商標)酸化ケイ素カラム上、酢酸エチル/ヘキサン 0:1〜1:4で溶離させて精製し、2−[3,5−ジペンチル]フェニル]酢酸を無色の油状物として得た(0.55g、84%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.99 (s, 3H), 3.65 (s, 2H), 2.63 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.64−71 (m, 2H), 1.36−1.44 (m, 4H), 0.97 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 178.96, 143.55, 133.21, 127.93, 127.06, 41.47, 36.13, 31.94, 31.47, 22.86, 14.34.
【0114】
ステップ5:
上記の酸(0.48g、1.75mmol)のエタノール(12ml)溶液を炭酸水素ナトリウム(0.15g、1.75mmol)の水(3ml)溶液で処理し、この反応混合物を室温で3日間撹拌した。エタノールを減圧下で留去し、残留した水性シロップ状液を水(50ml)で希釈し、濾過し(PES、0.2μm)、凍結乾燥して、2−[3,5−ジペンチルフェニル]酢酸ナトリウムを白色固体として得た(0.52g、定量的)。mp 225−230℃; 1H NMR (400 MHz, CD3OD + D2O): δ 6.92 (s, 2H), 6.76 (s, 1H), 3.41 (s, 2H), 2.50 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.52−1.59 (m, 2H), 1.23−1.33 (m, 4H), 0.85 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CD3OD + D2O): δ 179.99, 142.66, 137.63, 126.66, 126.16, 45.11, 35.61, 31.36, 31.19, 22.41, 13.47; LRMS (ESI): m/z 277.5 (w, [M − Na+ + 2H+]), 231.1 (100%, カルボキシ基の脱離に由来するトロピリウムイオン); HPLC: 3.0 min.
【0115】
化合物II:2−(3,5−ジヘキシルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルから、化合物Iの場合と同様に調製した。白色固体;1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.96 (s, 2H), 6.79 (s, 1H), 3.43 (s, 2H), 2.54 (d, J = 7.7 Hz, 4H), 1.55−1.63 (m, 4H), 1.28−1.36 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.8 Hz, 6H); 13C NMR (101 MHz, CD3OD): δ 179.68, 142.38, 137.82, 126.55, 126.07, 45.30, 35.87, 31.83, 31.67, 29.02, 22.61, 13.42; LRMS (ESI): m/z 322.0 (100%, M − Na+ + H+ + NH4+) 及び 259.0 (35%, M − CO2Na); UPLC (システム A): 8.9 min. UPLC システムA:移動相A=10mMの炭酸水素アンモニウム水溶液;移動相B=アセトニトリル;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0116】
化合物III:2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化5】
ステップ1:
2,4−ジブロモ−6−(ブロモメチル)フェノール(3.5g、10.0mmol)のアセトニトリル(17ml)溶液をシアン化ナトリウム(2.5g、50.0mmol)の溶液で処理し、この反応混合物を還流下、100℃で1時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、水(100ml)に注ぎ込んだ。1Mの塩酸水溶液でpHを10〜8に調節し、この混合物を酢酸エチル(3×250ml)で抽出した。一つにまとめた抽出液を1Mの塩酸水溶液(250ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(250ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。アセトンで抽出し、濾過し、減圧下で留去して2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)アセトニトリルを得た(2.6g、90%)。1H NMR (400 MHz, d6−アセトン): δ 8.75 (br s, 1H), 7.69 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 7.54 (d, J = 2.3 Hz, 1H), 3.92 (s, 2H); 13C NMR (101MHz, d6−acetone): δ 151.31, 134.51, 131.92, 122.80, 117.43, 111.89, 111.53, 18.70.
【0117】
ステップ2:
2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)アセトニトリル(2.6g、9.0mmol)を、硫酸(2.5ml)、酢酸(2.5ml)及び水(2.5ml)の混合物で処理し、この反応混合物を還流下、125℃で2時間加熱した。この反応混合物を室温まで冷却し、氷(50ml)と水(50ml)の混合物中に注ぎ込み、次いで氷が融解するまで撹拌した。この混合物を酢酸エチル(250ml)で抽出し、次いで抽出液を水(100ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、減圧下で留去して粗製の2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸を得た(3.1g)。この物質を更に精製またはキャラクタライズすることなく、次のステップに直接用いた。
【0118】
ステップ3:
粗製の2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸(3.1g、9.0mmol)のメタノール(17ml)溶液を硫酸(0.43ml、8.1mmol)で処理し、この反応混合物を周囲温度で16時間撹拌した。減圧下でメタノールを留去し、残渣を酢酸エチル(270ml)に溶解させた。この溶液を水(2×200ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(130ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)SP1システム(120gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜20%の酢酸エチルで溶離させて精製し、2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸メチルを得た(1.4g、49%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.52 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.23 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.42 (br s, 1H), 3.72 (s, 3H), 3.65 (s, 2H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 172.06, 150.60, 133.74, 133.50, 123.94, 112.62, 111.77, 52.78, 36.61.
【0119】
ステップ4:
2−(3,5−ジブロモ−2−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル(0.5g、1.54mmol)のアセトン(5ml)溶液を、炭酸カリウム(0.26g、1.86mmol)、ヨウ化カリウム(0.05g、0.32mmol)及びベンジルブロミド(0.20ml、1.7mmol)で処理し、この反応混合物を室温で1時間撹拌した。減圧下でアセトンを留去し、残渣を酢酸エチル(50ml)と1Mの塩酸水溶液(50ml)との間で分配させた。有機相を飽和塩化ナトリウム水溶液(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で脱水し、濾過し、減圧下で留去して粗生成物を得た。バイオタージ(商標)SP1システム(40gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜10%の酢酸エチルで溶離させて精製し、2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)酢酸メチルを得た(0.6g、95%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.67 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.48−7.51 (m, 2H), 7.37 (d, J = 2.4 Hz, 1H), 7.34−7.43 (m, 3H), 4.99 (s, 2H), 3.66 (s, 3H), 3.60 (s, 2H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 171.26, 153.79, 136.56, 135.38, 133.57, 132.04, 128.82, 128.64, 128.52, 118.69, 117.56, 75.53, 52.50, 35.86.
【0120】
ステップ5:
2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジブロモフェニル)酢酸メチル(0.3g、0.73mmol)及び(E)−ペンタ−1−エニルボロン酸ピナコールエステル(0.4g、1.79mmol)を、化合物Iの場合のステップ2と同様にカップリングして、2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジ((E)−ペンタ−1−エニル)フェニル)酢酸メチルを得た(0.21mg、72%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.50 (d, J = 7.2 Hz, 2H), 7.44 (dd, J = 7.2, 7.2 Hz, 2H), 7.43 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 7.38 (dd, J = 7.2, 7.2 Hz, 1H), 7.18 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 6.72 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.39 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.32 (dt, J = 15.8, 7.0 Hz, 1H), 6.22 (dt, J = 15.8, 6.8 Hz, 1H), 4.87 (s, 2H), 3.69 (s, 3H), 3.67 (s, 2H), 2.20−2.29 (m, 4H), 1.50−1.60 (m, 4H), 1.01 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 1.00 (t, J = 7.4 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 172.49, 153.59, 137.58, 134.35, 132.91, 131.91, 130.84, 129.53, 128.78, 128.32, 128.30, 128.24, 127.26, 125.21, 123.89, 75.89, 52.21, 35.94, 35.74, 35.42, 22.87, 22.77, 14.07, 14.06.
【0121】
ステップ6:
2−(2−(ベンジルオキシ)−3,5−ジ((E)−ペンタ−1−エニル)フェニル)酢酸メチル(0.2g、0.53mmol)を、化合物Iの場合のステップ3と同様に水素化して、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸メチルを得た(0.12g、73%)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.37 (s, 1H), 6.92 (d, J = 2.1 Hz, 2H), 6.77 (d, J = 2.1 Hz, 1H), 3.76 (s, 3H), 3.67 (s, 2H), 2.65 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 2.51 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.58−1.66 (m, 4H), 1.31−1.41 (m, 8H), 0.93 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.92 (t, J = 6.9 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 175.01, 151.27, 135.14, 131.48, 129.92, 128.52, 120.30, 52.95, 38.35, 35.34, 32.15, 31.86, 31.74, 30.61, 30.03, 22.87, 22.83, 14.34, 14.31.
【0122】
ステップ7:
2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジフェニルペンチル)酢酸メチル(0.2g、0.53mmol)を、化合物Iの場合のステップ4と同様に加水分解して、ラクトン化した物質が混入した粗生成物を得た。少量を、バイオタージ(商標)SP1システム(120gのシリカ・カートリッジ)上、ヘキサン中0〜100%の酢酸エチルで溶離させて精製し、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸を得た(13.5mg)。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 10.5 (br s, 1H), 6.89 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.78 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.32 (br s, 1H), 3.66 (s, 2H), 2.58 (t, J = 7.9 Hz, 2H), 2.48 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.52−1.63 (m, 4H), 1.26−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H).
【0123】
ステップ8:
2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸(13.5mg、0.046mmol)を、化合物Iの場合のステップ5と同様にナトリウム塩へと転化させて、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸ナトリウムを得た(11mg、77%)。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.72 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.46 (s, 2H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.50−1.61 (m, 4H), 1.25−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 6.8 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 13C NMR (101 MHz, CD3OD): δ 180.33, 151.94, 133.47, 130.37, 128.21, 127.81, 123.99, 42.90, 34.97, 31.81, 31.60, 31.40, 30.25, 29.88, 22.51, 22.45, 13.29, 13.24; LRMS (ESI ネガティブ): m/z 291.2 (100%, M −Na+); UPLC (システムB): 7.7 min. UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0124】
化合物IV:2−(3,5−ジヘキシル−2−ヒドロキシフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルを用いて、化合物IIIの場合と同様に調製した。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.72 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.46 (s, 2H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.50−1.60 (m, 4H), 1.27−1.37 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.80 Hz, 3H); LRMS (ESI ネガティブ): m/z 319 (100%, M − Na+); UPLC (システムB): 8.7 min. ULC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0125】
化合物V:2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、2−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)酢酸から、化合物IIIの場合と同様に調製した。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.87 (s, 2H), 3.33 (s, 2H), 2.55 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.53−1.61 (m, 4H), 1.31−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H); LRMS (ESI ネガティブ): m/z 291.1 (100%, M − Na+); UPLC (システムB): 6.8 min. UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0126】
化合物VI:2−(3,5−ジヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、2−(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、及び(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルから、化合物IIIの場合と同様に調製した。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.72 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 6.69 (d, J = 2.0 Hz, 1H), 3.46 (s, 2H), 2.56 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.44 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 1.50−1.60 (m, 4H), 1.27−1.37 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.6 Hz, 3H), 0.88 (t, J = 6.8 Hz, 3H); LRMS (ESI ネガティブ): m/z 319.1 (100%, M − Na+); UPLC (システム B): 7.6 min. UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0127】
化合物VII:2−(4−フルオロ−3,5−ジヘキシルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、3,5−ジブロモ−4−フルオロベンジルブロミド及び(E)−ヘキサ−1−エニルボロン酸ピナコールエステルから出発して、化合物IIIの場合と同様に調製した。3,5−ジブロモ−4−フルオロベンジルブロミドは、アセトニトリル中80℃での、N−ブロモスクシンイミド及びアゾビスイソブチルニトリルを用いた3,5−ジブロモ−4−フルオロトルエンの臭素化によって調製した。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.98 (d, JHF = 7.0 Hz, 2H), 3.38 (s, 2H), 2.57 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.54−1.61 (m, 4H), 1.28−1.37 (m, 12H), 0.89 (t, J = 6.7 Hz, 6H); 19F NMR (377 MHz, CD3OD): δ −132.17 (d, JHF = 6.6 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CD3OD): δ 179.44, 158.11 (d, JCF = 239.8 Hz), 133.26 (d, JCF = 3.8 Hz), 128.73 (d, JCF = 5.4 Hz), 128.56 (d, JCF = 16.9 Hz), 44.52, 31.69, 30.35 (d, JCF = 1.5 Hz), 28.98, 28.97 (d, JCF = 3.1 Hz), 22.51, 13.29; LRMS (ESI ネガティブ): m/z 321.0 (100%, M − Na+); UPLC (システムB): 9.2 min. UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0128】
化合物VIII:2−(4−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
上記化合物を、3,5−ジブロモ−4−フルオロベンジルブロミドから出発して、化合物IIIの場合と同様に調製した。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.98 (d, JHF = 6.8 Hz, 2H), 3.37 (s, 2H), 2.57 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 1.54−1.62 (m, 4H), 1.28−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H); 19F NMR (377 MHz, CD3OD): δ −132.34 (d, JHF = 6.6 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CD3OD): δ 179.41, 158.10 (d, JCF = 239.8 Hz), 133.26 (d, JCF = 3.8 Hz), 128.72 (d, JCF = 4.6 Hz), 128.56 (d, JCF = 16.9 Hz), 44.51, 31.54, 30.07, 28.92 (d, JCF = 3.1 Hz), 22.38, 13.22; LRMS (ESI ネガティブ): m/z 293.0 (100%, M − Na+); UPLC (システム B): 8.4 min. UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3カラム;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0129】
化合物IX:2−(2−ベンジル−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
標記化合物を、2−(2−ベンジル−3,5−ジ((E)−ペンタ−1−エニル)フェニル)酢酸メチルから、化合物Iの場合と同様に調製した。後者は、化合物Iの規模拡大実験由来の副生成物(収率1.1%)として単離した。
1H NMR (400 MHz, CD
3OD): δ 7.17 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 2H), 7.09 (dd, J = 7.3, 7.3 Hz, 1H), 6.97−6.99 (m, 3H), 6.86 (d, J = 1.8 Hz, 1H), 4.13 (s, 2H), 3.40 (s, 2H), 2.55 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 2.49 (t, J = 7.8Hz, 2H), 1.59−1.67 (m, 2H), 1.31−1.45 (m, 6H), 1.21−1.26 (m, 4H), 0.91 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.82 (t, J = 7.0 Hz, 3H);
13C NMR (101 MHz, CD
3OD): δ 179.48, 141.46, 141.24, 140.47, 137.46, 133.70, 128.36, 128.05, 127.86, 127.75, 125.42, 43.25, 35.54, 33.90, 33.61, 31.86, 31.65, 31.25, 30.96, 22.49, 22.40, 13.31, 13.23; LRMS (ESI ネガティブ): m/z 365.0 (20%, M − Na
+), 321.1 (100%, M − CO
2Na); UPLC (システム B): 9 min. (UPLC システムB:移動相A=0.1%のギ酸水溶液;移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3;勾配=10分間にわたるA中5〜100%のB。
【0130】
化合物X:2−[3,5−ジ[(E)−ペンタ−1−エニル]フェニル]酢酸ナトリウム
標記化合物を、化合物Iの場合と同様の手順を用い、但し水素化のステップを割愛して調製した。Mp 226−30℃;
1H NMR (400 MHz, CD
3OD): δ 7.18 (d, J = 1.2 Hz, 2H), 7.11 (d, J = 1.2 Hz, 1H), 6.34 (d, J = 15.9 Hz, 2H), 2.23 (dt, J = 15.9, 6.7 Hz, 2H), 3.44 (s, 2H), 2.14−2.19 (m, 4H), 1.49 (tq, J = 7.4, 7.4 Hz, 4H), 0.95 (t, J = 7.3 Hz, 6H);
13C NMR (101MHz, CD
3OD): δ 179.41, 138.34, 138.06, 130.30, 130.16, 125.26, 121.60, 45.24, 35.10, 22.55 & 12.98; LRMS (ネガティブモード): m/z 271 (w, [M − Na
+]), 227.2 (100%, [M − Na
+− CO
2]); UPLC: 8 min. (UPLC;条件 溶媒A=0.1%のギ酸水溶液;溶媒B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;勾配:0.7ml/分における10分間にわたるA中5〜100%のB)。
【0131】
化合物XI:3−[3,5−ジペンチルフェニル]プロパン酸ナトリウム
標記化合物を、3−[3,5−ジブロモフェニル]プロパン酸から出発して、化合物Iの場合と同様の手順を用いて調製した。mp 211−217℃;
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 6.73 (s, 1H), 6.68 (s, 2H), 2.73−2.77 (m, 2H), 2.42−2.46 (m, 2H), 2.38 (t, J = 7.8 Hz, 4H), 1.43−1.51 (m, 4H), 1.19−1.28 (m, 8H), 0.83 (t, J = 6.9 Hz, 6H);
13C NMR (101 MHz, CDCl
3): δ 182.55, 142.93, 141.85, 125.96, 125.77, 39.80, 36.13, 32.77, 31.99, 31.47, 22.79 & 14.27; LRMS (ネガティブモード): m/z 289.4 (100%, [M − Na
+]); UPLC: 9 min. (UPLC:条件 溶媒A=0.1%のギ酸水溶液,溶媒B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;勾配:0.7ml/分における10分間にわたるA中5〜100%のB。)
【0132】
化合物XII:2−(3,5−ジ((E)−ヘキサ−1−エニル)フェニル)酢酸のナトリウム塩
標記化合物を、化合物IIの場合と同様に、但し水素化のステップを割愛して調製した。オフホワイト固体:
1H NMR (400 MHz, CD
3OD): δ 7.17 (d, J = 1.1 Hz, 2H), 7.10 (s, 1H), 6.33 (d, J = 15.8 Hz, 2H), 6.22 (dt, J = 15.8, 6.7 Hz, 2H), 3.44 (s, 2H), 2.16−2.21 (m, 4H), 1.34−1.46 (m, 8H), 0.93 (t, J = 7.3 Hz, 6H);
13C NMR (101MHz, CD
3OD): δ 179.44, 138.34, 138.07, 130.37, 130.13, 125.27, 121.60, 45.26, 32.70, 31.67, 22.19, 13.27; LRMS (ESI ネガティブモード): m/z 299.2 (m, M − Na
+)及び255.2 (100%, M − Na
+ − CO
2); UPLC: 8.7 min. (UPLC条件 溶媒A=0.1%のギ酸水溶液,移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3;勾配:10分間にわたるA中5〜100%のB)
【0133】
化合物XIII:2−(2−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル)酢酸のナトリウム塩
【化6】
ステップ1:
化合物Iについて記載した方法を用いて、2−アミノ−3,5−ジブロモ安息香酸メチル(10.0g、32.4mmol)を(E)−1−ペンテン−1−イルボロン酸ピナコールエステル(15.2g、77.7)と結合させ、2−アミノ−3,5−ジ[(E)−ペンタ−1−エニル]安息香酸メチル(6.00g、64%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.76 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 7.37 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.35 (d, J = 15.4 Hz, 1H), 6.26 (d, J = 15.8 Hz, 1H), 6.08 (dt, J = 15.6, 7.0 Hz, 1H), 6.06 (dt, J = 15.8, 7.0 Hz, 1H), 5.5−6.5 (br s, 2H), 3.87 (s. 3H), 2.19−2.25 (m, 2H), 2.13−2.18 (m, 2H), 1.43−1.56 (m, 8H), 0.97 (t, J = 7.3 Hz, 3H), 0.94 (t, J = 7.3 Hz, 3H).
【0134】
ステップ2:
2−アミノ−3,5−ジ[(E)−ペンタ−1−エニル]安息香酸メチル(5.7g、19.9mmol)を化合物Iについて記載したように水素化し、2−アミノ−3,5−ジペンチル安息香酸メチル(5.50g、95%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.50 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 6.95 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 5.5−6.1 (br s, 2H), 3.79 (s. 3H), 2.40 (t, J = 7.2 Hz, 4H), 1.45−1.58 (m, 4H), 1.20−1.32 (m, 8H), 0.84 (t, J = 7.2 Hz, 3H), 0.82 (t, J = 7.1 Hz, 3H).
【0135】
ステップ3:
2−アミノ−3,5−ジペンチル安息香酸メチル(4.5g、15.4mmol)をテトラフルオロホウ酸水溶液(5.5M、3.7ml、20mmol)及び塩酸水溶液(8.5M、3.3ml、28mmol)で処理した。混合物を0℃まで冷却し、その後、亜硝酸ナトリウム水溶液(2.1M、8.8ml、18.5mmol)を2分間にわたって滴下処理した。0℃で60分後、反応混合物をキシレン(30ml)で抽出した。キシレン抽出液を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、その後、55分かけて60℃から120℃まで加熱した。濾過及び減圧下でのキシレンの蒸発により粗化合物を得て、SiliaSep SiO2カラムでヘキサン中の酢酸エチル(0〜5%)により溶出して精製し、2−フルオロ−3,5−ジペンチル安息香酸メチル(3.1g、69%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.50 (dd, JHF = 6.5 Hz, JHH = 2.4 Hz, 1H), 7.15 (dd, JHF = 6.5 Hz, JHH = 2.4 Hz, 1H), 3.91 (s. 3H), 2.62 (td, JHH = 7.7 Hz, JHF = 1.2 Hz, 2H), 2.56 (t, J = 7.7 Hz, 2H), 1.55−1.63 (m, 4H), 1.26−1.37 (m, 8H), 0.89 (t, J = 7.0 Hz, 6H); 19F NMR (377 MHz, CDCl3): δ −121.31 (dd, JHF = 6.6, 6.6 Hz, 1F).
【0136】
ステップ4:
2−フルオロ−3,5−ジペンチル安息香酸メチル(3.1g、10.6mmol)の無水テトラヒドロフラン(60ml)溶液を−78℃まで冷却し、水素化リチウムアルミニウム(0.5g、13.8mmol)でゆっくりと処理した。反応混合物を−78℃で25分間、その後0℃で30分間攪拌した。反応を酢酸エチルの添加によってクエンチした。混合物を酒石酸カリウムナトリウム(1M、100ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100mL)で洗浄し、その後、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して減圧下で蒸発させ、粗化合物を得た。SiliaSep SiO2カラムでヘキサン中の酢酸エチル(3〜20%)により溶出して精製し、2−フルオロ−3,5−ジペンチルベンジルアルコール(1.8g、65%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.02 (dd, JHF = 6.8 Hz, JHH = 2.3 Hz, 1H), 6.92 (dd, JHF = 7.1 Hz, JHH = 2.4 Hz, 1H), 4.71 (s. 2H), 2.59 (td, JHH = 7.6 Hz, JHF = 1.2 Hz, 2H), 2.54 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.73 (s, 1H), 1.54−1.62 (m, 4H), 1.25−1.36 (m, 8H) , 0.894 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.890 (t, J = 7.1 Hz, 3H); 19F NMR (377MHz, CDCl3): δ −131.25 (dd, JHF = 6.7, 6.6 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 157.41 (d, JCF = 242.9 Hz), 138.48 (d, JCF = 4.3 Hz), 130.07 (d, JCF = 5.4 Hz), 129.33 (d, JCF = 16.2 Hz), 127.33 (d, JCF = 15.6 Hz), 126.67 (d, JCF = 4.6 Hz), 59.84 (d, JCF = 5.4 Hz), 35.50, 31.86, 31.77, 31.62, 30.21, 29.21 (d, JCF = 2.4 Hz), 22.80, 22.74, 14.28 (2C).
【0137】
ステップ5:
2−フルオロ−3,5−ジペンチルベンジルアルコール(1.4g、5.3mmol)の無水ジクロロメタン(35ml)溶液を0℃まで冷却し、塩化メタンスルホニル(0.5ml、5.8mmol)を10分かけて滴下処理した。反応物を0℃で20分間攪拌し、その後、氷水(35ml)の添加によってクエンチした。有機相を塩酸水溶液(1M、35ml)、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液(35ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(35ml)で洗浄し、その後、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して減圧下で蒸発させ、粗2−フルオロ−3,5−ジペンチルベンジルメタンスルホネート(1.7g、93%)を得た。この材料を精製せずに次のステップに用いた。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.02−7.05 (m, 2H), 5.26 (d, JHF = 1.0 Hz, 2H), 2.98 (s. 3H), 2.52−2.63 (m, 2H), 2.54 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.54−1.62 (m, 4H), 1.27−1.37 (m, 8H) , 0.892 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.888 (t, J = 7.0 Hz, 3H).
【0138】
ステップ6:
シアン化ナトリウム(0.4g、7.4mmol)の水(5ml)溶液のpHを6M塩酸水溶液でpH10に調整した。その後、2−フルオロ−3,5−ジペンチルベンジルメタンスルホネート(1.7g、4.9mmol)のアセトニトリル(25ml)溶液を加え、反応物を60℃で2時間加熱した。反応混合物を減圧下で15mlまで濃縮し、酢酸エチル(100ml)で抽出した。有機抽出液を水(100ml)及び飽和塩化ナトリウム水溶液(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して減圧下で蒸発させ、粗化合物を得た。SiliaSep SiO2カラムでヘキサン中の酢酸エチル(1〜10%)により溶出して精製し、2−[2−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル]アセトニトリル(0.7g、55%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 7.04 (dd, JHF = 6.9 Hz, JHH = 2.2 Hz, 1H), 6.96 (dd, JHF = 7.1 Hz, JHH = 2.2 Hz, 1H), 3.72 (s. 2H), 2.59 (td, JHH = 7.7 Hz, JHF = 0.9 Hz, 2H), 2.55 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.54−1.62 (m, 4H), 1.27−1.37 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H); 19F NMR (377MHz, CDCl3): δ −131.25 (ddd, JHF = 7.0, 7.0, 0.8 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CDCl3): δ 157.02 (d, JCF = 244.5 Hz), 139.16 (d, JCF = 4.7 Hz), 130.84 (d, JCF = 4.6 Hz), 129.93 (d, JCF = 16.1 Hz), 126.97 (d, JCF = 3.1 Hz), 117.52, 116.79 (d, JCF = 16.2 Hz), 35.38, 31.74, 31.66, 31.54, 30.06, 29.16 (d, JCF = 2.4 Hz), 22.74, 22.68, 17.90 (d, JCF = 6.1 Hz), 14.26, 14.23.
【0139】
ステップ7:
2−[2−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル]アセトニトリル(0.7g、2.7mmol)、酢酸(4ml)及び水(4ml)の混合物に濃硫酸(4ml)を滴下処理し、その後、混合物を125℃で3.5時間加熱した。反応物を室温まで冷却し、その後、氷(40ml)の添加によってクエンチした。混合物を酢酸エチル(40ml)で抽出し、その後、有機抽出液を飽和塩化ナトリウム水溶液(40ml)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過して減圧下で蒸発させ、2−[2−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル]酢酸(537mg、67%)を得た。1H NMR (400 MHz, CDCl3): δ 6.84 (dd, JHF = 7.0 Hz, JHH = 2.3 Hz, 1H), 6.80 (dd, JHF = 6.8 Hz, JHH = 2.2 Hz, 1H), 3.59 (d, JHF = 1.2 Hz, 2H), 2.52 (t, J = 7.5 Hz, 2H), 2.45 (t, J = 7.8 Hz, 2H), 1.46−1.55 (m, 4H), 1.20−1.30 (m, 8H) , 0.80−0.84 (m, 6H).
【0140】
ステップ8:
2−[2−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル]酢酸(537mg、1.8mmol)を化合物Iについて記載したようにナトリウム塩に転化させ、薄褐色粘着性固体として2−[2−フルオロ−3,5−ジペンチルフェニル]酢酸ナトリウム(465mg、81%)を得た。1H NMR (400 MHz, CD3OD): δ 6.94 (dd, JHF = 6.9 Hz, JHH = 2.2 Hz, 1H), 6.83 (dd, JHF = 7.0 Hz, JHH = 2.3 Hz, 1H), 3.48 (d, JHF = 1.1 Hz, 2H), 2.58 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 2.51 (t, J = 7.6 Hz, 2H), 1.54−1.62 (m, 4H), 1.28−1.38 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 3H), 0.89 (t, J = 7.0 Hz, 3H); 19F NMR (377 MHz, CD3OD): δ −130.71 (dd, JHF = 6.6, 6.6 Hz, 1F); 13C NMR (101 MHz, CD3OD): δ 178.31, 157.95 (d, JCF = 240.6 Hz), 137.64 (d, JCF = 3.8 Hz), 128.72 (d, JCF = 4.6 Hz), 128.42 (d, JCF = 17.7 Hz), 128.21 (d, JCF = 5.4 Hz), 124. 50 (d, JCF = 17.7 Hz), 37.94 (d, JCF = 3.1 Hz), 35.05, 31.52, 31.45, 31.37, 30.00, 28.96 (d, JCF = 2.3 Hz), 22.43, 22.38, 13.23, 13.21; LRMS (ESI ネガティブモード): m/z 293 (w, M − Na+)及び249.1 (100%, M − Na+ − CO2); UPLC: 8.4 min (UPLC条件 移動相A=0.1%のギ酸水溶液,移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3;勾配:10分間にわたるA中5〜100%のB
【0141】
化合物XIV:2−(3,5−ジペンチルフェニル)−2−メチルプロパン酸のナトリウム塩
化合物Iと同様にして、水素化ナトリウム及びヨウ化メチルによる2−[3,5−ジペンチルフェニル]酢酸メチル中間体のアルキル化のステップを追加し、エステル加水分解ステップの温度を100℃に上昇させて上記の化合物を調製した。オフホワイト固体:1H NMR (400MHz, CD3OD): δ 7.04 (d, J = 1.3 Hz, 2H), 6.76 (s, 1H), 2.54 (t, J = 7.7 Hz, 4H), 1.55−1.63 (m, 4H), 1.46 (s, 6H), 1.27−1.38 (m, 8H), 0.90 (t, J = 7.0 Hz, 6H); 13C NMR (101MHz, CD3OD): δ 184.58, 148.51, 141.98, 125.57, 123.46, 36.02, 48.26, 31.59, 31.42, 27.57, 22.47, 13.29; LRMS (ESI ネガティブモード): m/z 303.1 (100%, M − Na+); UPLC: 8.9 min (UPLC条件 移動相A=0.1%のギ酸水溶液,移動相B=0.1%ギ酸のアセトニトリル溶液;固相=HSS T3;勾配:10分間にわたるA中5〜100%のB)
【0142】
実施例2:ベータ細胞(β−TC−6細胞)におけるインスリン産生に対する化合物のインビトロ効果
β−TC−6細胞を用いて、グルコースによる刺激の有りまたは無しで本発明による化合物がインスリン産生を誘発可能かどうか確認した。簡潔に述べると、β−TC−6細胞(200,000細胞/ml)をDMEM培地及び15%熱不活性化血清中でグルコース(0.8M)の存在下または非存在下、化合物I有り/無しで30分間インキュベートし、2.5、11及び25mMのグルコースを含有するクレブス溶液で更に2時間インキュベートした。上清を収集してインスリンの検出(ELISA)に用い、検出は製造業者により推奨されるように実施した。
【0143】
表1に示すように、β−TC−6細胞におけるグルコース誘発インスリン産生は、グルコースが存在する場合のみ化合物Iによって増加する。
【0144】
表2に示すように、本発明の化合物は対照と比較して、11mMグルコースの刺激下でβ−TC−6細胞におけるグルコース誘発インスリン産生を増加させる。
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【0145】
実施例3:糖尿病db/dbマウスにおけるグルコース濃度に対する化合物Iのインビボ効果
以下の手順を用いて、化合物Iのインビボ効果の実証値を糖尿病マウス(db/db)モデルにおいて測定した。雄Lepr db(db/db)マウス及び同じ遺伝的背景の同齢同性別対照マウス(C57BL/6)を用いた。6週目に血糖値測定(5時間絶食)を用いて動物をランダム化し、一側性腎摘出(右腎の切除)を行った。偽動物(C57BL/6)には右腎の露出を行った。偽手術を行った動物に溶媒(生理食塩水)を投与して陰性対照として用いた。一側性腎摘出したC57BL/6マウスに溶媒を投与して陽性対照として用いた。db/dbマウスは1日10及び50mg/kgの化合物Iを105日間経口投与して治療した。2〜4週間毎に血清グルコースを測定した。
【0146】
図1は、一側性腎摘出(NX)したC57BL/6、db/dbマウス及び化合物Iでの治療有りのものの、C57BL/6偽マウス(陰性対照、100%)と比較した血糖値の増加率を表している。db/dbマウスは、C57BL/6一側性腎摘出または偽と比較して血糖値の増加が大きかった。10mg/kgの濃度の化合物Iによる治療によりNX db/dbと比較して血糖値が減少し、長期間にわたって安定するが、50mg/kgの化合物Iでは正常レベルまでの血糖値の著しい減少が誘発される。
【0147】
図2は、C57BL/6マウスの正常なインスリンレベルと比較したdb/db一側性腎摘出(NX)マウスの高インシュリン血症を表している。実際のところ、若齢db/dbマウスのインスリンレベルは高く、時間の経過とともに高い血糖値(
図1)を伴ってインスリンのレベルが減少し、その後死亡した。NX db/dbと比較して、10mg/kgの化合物Iでの治療により高インスリンレベル(0日目と比較して安定)及び血糖値の減少(
図1)が維持される。更に、より高濃度(50mg/kg)では、化合物Iによりインスリンレベルが正常レベル付近まで減少する。その上、これらの50mg/kgの化合物Iで治療した動物において血糖値は正常レベルである(
図1)。
【0148】
グルコース/インスリン比を用いてインスリン抵抗性を実証する。
図3及び4は、インスリン抵抗性に対する化合物1の効果(早期及び後期持続的効果、それぞれ33及び55日目)を表している。db/dbマウスは高いグルコース/インスリン比によって実証されるように高いインスリン抵抗性を有することがはっきりと認識される。化合物1での治療により33日目及び105日目の両方においてグルコース/インスリン比が減少し、インスリン抵抗性の低下を示している。
【0149】
図5A〜5Dの写真は膵島におけるインスリンの組織免疫染色(暗褐色)を示す。実証されるように、C57BL/6マウス(
図5A;正常な非糖尿病マウス)の正常な膵島と比較して、糖尿病db/dbマウス(
図5B)の膵島においてインスリン検出の顕著な減少が観察される。両方の濃度の化合物1での治療によりインスリン検出の減少が逆転し、化合物1が膵島を保護及び/または再生することを示している(
図5C及び
図5D)。
【0150】
実施例4:血中トリグリセリドレベルに対する化合物Iのインビボ効果
血中トリグリセリドは多くの場合糖尿病に関連があることが知られている。血中の高トリグリセリドレベルは低レベルのHDL(「善玉」コレステロール)とともに存在する傾向にあり、糖尿病性脂質異常症と呼ばれる疾病の一因となっている。高トリグリセリド、低HDL及び中心性肥満の組合せが代謝症候群の特徴であり、2型糖尿病の大多数の人々に生じることも公知である。
図6は、化合物Iにより一側性腎摘出db/dbマウスの血清における血中トリグリセリドレベルが減少することを示す。これらの結果は、インビボでの血中トリグリセリドレベルの減少に対する本発明による化合物の有益な役割を示し、トリグリセリド関連疾患または疾病、例えば糖尿病性脂質異常症及び代謝症候群などの予防及び/または治療における有益な役割を示している。
【0151】
見出しは、参照として及び特定の節の位置を示すために本明細書に加えてある。これらの見出しはそこに記載される概念の範囲を限定することを意図するものではなく、これらの概念は、明細書全体を通じて他の節にも適用可能である。したがって、本発明は、本明細書に示す実施形態に限定されることを意図するものではなく、本明細書に開示される原理及び新規な特徴と一致する最も広い範囲が付与されることを意図する。
【0152】
単数形「a」、「an」及び「the」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、相当する複数形での言及を包含する。
【0153】
別段の表示がない限り、明細書及び特許請求の範囲において用いられる、成分、反応条件、濃度、特性等の量を表わす数値は、全ての場合において、用語「約」によって修飾されると解釈されるべきである。少なくとも、各数値パラメータは少なくとも記載された有効桁の数に照らして、且つ通常の端数処理技法を適用することによって解釈する必要がある。したがって、それに反する表示がない限り、本明細書及び添付の特許請求の範囲に示される数値パラメータは、得ようとする特性に応じて変化し得る近似値である。実施形態の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにもかかわらず、具体的な実施例で示される数値は可能な限り正確に記載される。但し、いずれの数値も、実験における変動、試験測定、統計的解析等に由来する特定の誤差を本質的に含む。
【0154】
本発明は、下記の発明を包含する。
[発明1]
糖尿病の予防及び/または治療方法であって、該方法を必要とする対象に、式I:
【化7】
[式中、
AはC5アルキル、C6アルキル、C5アルケニル、C6アルケニル、C(O)−(CH2)n−CH3またはCH(OH)−(CH2)n−CH3であり、ここで、nは3または4であり;
R1はH、FまたはOHであり;
R2はC5アルキル、C6アルキル、C5アルケニル、C6アルケニル、C(O)−(CH2)n−CH3またはCH(OH)−(CH2)n−CH3であり、ここで、nは3または4であり;
R3はH、F、OHまたはCH2Phであり;
R4はH、FまたはOHであり;
Qは
1)(CH2)mC(O)OH、ここで、mは1または2、
2)CH(CH3)C(O)OH、
3)C(CH3)2C(O)OH、
4)CH(F)−C(O)OH、
5)CF2−C(O)OH、または
6)C(O)−C(O)OH、
である]
によって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を投与するステップを含む、前記方法。
[発明2]
AがC5アルキル、C6アルキル、C5アルケニルまたはC6アルケニルである、発明1に記載の方法。
[発明3]
R2がC5アルキル、C6アルキル、C5アルケニルまたはC6アルケニルである、発明1または2に記載の方法。
[発明4]
R3がH、OHまたはCH2Phである、発明1〜3のいずれか1項に記載の方法。
[発明5]
R4がHである、発明1〜4のいずれか1項に記載の方法。
[発明6]
Qが(CH2)mC(O)OHであり、式中mが1または2である、発明1〜5のいずれか1項に記載の方法。
[発明7]
AがC5アルキル、C6アルキル、C5アルケニルまたはC6アルケニルであり;
R1がHまたはOHであり;
R2がC5アルキル、C6アルキル、C5アルケニルまたはC6アルケニルであり;
R3がH、OHまたはCH2Phであり;
R4がHであり;
Qが(CH2)mC(O)OHであり、ここで、mが1または2である;
発明1〜6のいずれか1項に記載の方法。
[発明8]
前記化合物が以下の構造:
【化8】
の1つによって表される化合物またはその薬学的に許容される塩である、発明1〜7のいずれか1項に記載の方法。
[発明9]
前記化合物が以下の構造:
【化9】
によって表される化合物またはその薬学的に許容される塩である、発明1〜8のいずれか1項に記載の方法。
[発明10]
前記薬学的に許容される塩が、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、リチウム、アンモニウム、マンガン、亜鉛、鉄、または銅からなる群より選択される金属対イオンを含む塩基付加塩である、発明1〜9のいずれか1項に記載の方法。
[発明11]
前記薬学的に許容される塩がナトリウムである、発明1〜10のいずれか1項に記載の方法。
[発明12]
前記糖尿病が1型糖尿病、2型糖尿病、3型糖尿病(アルツハイマー)、若年発症成人型糖尿病、成人潜在性自己免疫性糖尿病(LADA)、妊娠糖尿病、肥満、高血糖症、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、高インスリン血症、高コレステロール血症、高リポタンパク血症、高脂血症、高トリグリセリド血症、脂質異常症、シンドロームX、糖尿病性神経障害、糖尿病性網膜症、アテローム性動脈硬化症、性機能不全、及び代謝症候群である、発明1〜11のいずれか1項に記載の方法。
[発明13]
前記糖尿病が2型糖尿病である、発明1〜12のいずれか1項に記載の方法。
[発明14]
前記糖尿病が1型糖尿病である、発明1〜12のいずれか1項に記載の方法。
[発明15]
前記化合物の投与が前記対象において以下の生物活性
・インスリン分泌の増加;
・インスリン感受性の増加;
・インスリン抵抗性の減少;
・血糖値の減少;及び
・血中トリグリセリドレベルの減少;
のうちの1つ以上をもたらす、発明1〜14のいずれか1項に記載の方法。
[発明16]
必要とする対象におけるグルコース、インスリン及び/またはトリグリセリドレベルの調節方法であって、発明1〜11のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む前記方法。
[発明17]
前記化合物の投与が血糖値を減少させる、血糖値を減少させる発明16に記載の方法。
[発明18]
前記化合物の投与が、膵島の保護及び/または再生を必要とする対象においてインスリンレベルを維持または増加させる、インスリンレベルを維持または増加させる発明16に記載の方法。
[発明19]
必要とする対象においてインスリン分泌を増加させる、及び/またはインスリン感受性を増加させる、及び/またはインスリン抵抗性を減少させる方法であって、発明1〜11のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与するステップを含む前記方法。
[発明20]
前記対象が高血糖症、グルコース不耐性、インスリン抵抗性、高インスリン血症、脂質異常症及び/または膵臓機能喪失を患っている、発明1〜19のいずれか1項に記載の方法。
[発明21]
前記化合物を第2治療薬と併せて投与する、発明1〜20のいずれか1項に記載の方法。
[発明22]
前記第2治療薬が血糖値を低下または調節する化合物である、発明21に記載の方法。
[発明23]
前記第2治療薬がメトホルミンであるか、またはチアゾリジンジオンである、発明22に記載の方法。
[発明24]
前記化合物を経口投与する、発明1〜23のいずれか1項に記載の方法。
[発明25]
必要とする対象における血中トリグリセリドの減少方法であって、発明1〜11のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物から選択される化合物、またはその薬学的に許容される塩を前記対象に投与することを含み、前記化合物が血中トリグリセリドレベルを減少させる前記方法。
[発明26]
前記対象が糖尿病性脂質異常症及び/または代謝症候群を患っている、発明25に記載の方法。
[発明27]
発明1〜11のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる前記化合物及びその薬学的に許容される塩から選択される化合物の、糖尿病の予防及び/または治療における使用。
[発明28]
発明1〜11のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩の、糖尿病の予防及び/または治療のための薬剤の製造への使用。
[発明29]
必要とする対象において糖尿病の予防または治療に用いるための、発明1〜11のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩。
[発明30]
(i)発明1〜11のいずれか1項に定義される、式Iによって表わされる化合物またはその薬学的に許容される塩;及び(ii)血糖値を低下または調節する第2治療薬を含む医薬組成物。
[発明31]
前記第2治療薬がメトホルミンまたはチアゾリジンジオンである、発明31に記載の組成物。
[発明32]
前記組成物が経口投与に適応した、発明31及び32のいずれか1項に記載の医薬組成物。
また、本明細書に記載の実施例及び実施形態は説明することのみを目的とし、それらに照らした多様な改変または変更が当業者に示唆されることとなり、これらは本発明及び添付の特許請求の範囲の範囲内に包含されるべきものである。