特許第6676637号(P6676637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676637金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズル及びエッチング装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676637
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズル及びエッチング装置
(51)【国際特許分類】
   C23F 1/08 20060101AFI20200330BHJP
   H01L 21/306 20060101ALI20200330BHJP
   H05K 3/06 20060101ALI20200330BHJP
   H01L 21/308 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
   C23F1/08 101
   H01L21/306 R
   H05K3/06 Q
   !H01L21/308 F
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-530515(P2017-530515)
(86)(22)【出願日】2015年7月28日
(86)【国際出願番号】JP2015071363
(87)【国際公開番号】WO2017017782
(87)【国際公開日】20170202
【審査請求日】2018年1月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】515137439
【氏名又は名称】株式会社トーア電子
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】特許業務法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】木内 丈司
(72)【発明者】
【氏名】大澤 健
【審査官】 河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2010−0096524(KR,A)
【文献】 特開2000−237649(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3002883(JP,U)
【文献】 特開平10−162728(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/091561(WO,A1)
【文献】 特開2006−019525(JP,A)
【文献】 特開2003−142453(JP,A)
【文献】 特開2001−123282(JP,A)
【文献】 特開2008−294251(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23F 1/08
H01L 21/306,21/3063
H05K 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エッチング液槽、薬液更新用ノズル、エッチングの対象である金属導体基板を搬送するコンベアを備え、
上記薬液更新用ノズルはスリット状開口部を備えており、
上記スリット状開口部の、上記コンベアの搬送方向に対して垂直方向の長さM(上記スリット状開口部の、上記コンベアで移動する金属導体基板の搬送幅方向長さM)は、上記コンベアで移動する金属導体基板の、上記コンベアの搬送方向に対して垂直方向の長さN(上記金属導体基板の搬送幅方向長さN)以上であり、
上記薬液更新用ノズルは、上記エッチング液槽内に、対向する吐出側ノズルと対向する吸引側ノズルとして配置され、
上記対向する吐出側ノズルは、上記エッチング液槽の薬液中でそれぞれのスリット状開口部が上記コンベアによって移動する金属導体基板に面するように、上記コンベアの搬送面を挟んで上下に配置され、
上記対向する吸引側ノズルは、上記エッチング液槽の薬液中でそれぞれのスリット状開口部が上記コンベアによって移動する金属導体基板に面するように、上記コンベアの搬送面を挟んで上下に配置されており、
上記吐出側ノズルのスリット状開口部がただ1個のスリット状開口部であり、
上記吸引側ノズルのスリット状開口部が数個に分かれている、
エッチングの対象が金属導体基板である、
浸漬型エッチング装置。
【請求項2】
吐出側ノズルのスリット状開口部が幅0.5〜3mmのただ1個のスリット状開口部であり、
吸引側ノズルのスリット状開口部が幅0.6〜8mmに加工した吸引板で封止され、上記吸引板に開口した円形状の孔径が0.5〜3mmである、
請求項1に記載の浸漬型エッチング装置。
【請求項3】
エッチング液槽が、金属導体がエッチングされる上部槽と、エッチング液を貯溜する下部槽とからなり、上記上部槽と上記下部槽とが上記上部槽からの戻り配管によって接続されており、上記戻り配管の末端に薬液更新用ノズルが取り付けられている、
請求項1または2に記載の浸漬型エッチング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズル及びエッチング装置に関するものである。
【0002】
金属導体は処理基板上に設けられており化学処理によりエッチングされるが、その際、エッチャント即ち、エッチングに使用する液体(或いは単に薬液)を金属導体に供給するために、スプレーを用いて噴射する方法が一般的に行なわれている。例えば、特開2003−243811号は、プリント回路板の上側の面に液体の処理媒体を吹き付けるためのノズル装置を搬送面の上部に設け、スプレー処理装置には吸引装置を備え付け、吸引装置はスプレー噴射中にプリント回路板の上側の面から吹き付けられた処理媒体を吸引するという発明を開示している。それによって、上記発明は処理媒体の洗浄の不要化を図っている。
【0003】
一方、エッチングに使用する薬液を処理基板に吐出する際のノズルには、諸般の事情から、エッチング装置に対して相対的に小型のノズルが用いられている。小型ノズルを使用するということは、1個の処理基板に対して多数の小型ノズルが必要ということであり、必然的に多数のノズルにおけるエッチング液吐出条件の均一化という問題を提起する。処理基板に設けられている金属導体の内部にエッチングのばらつきを生じると、それは製品規格にも影響することであるから、小型ノズルを組み合わせて使用することになる。しかし、多数の小型ノズルを組み合わせる場合、金属導体内部の均一化を図ることには困難が伴い、抜本的な対策が必要である。近年、金属導体幅及び金属導体間隔の高密度、高精細化が進んでいるが、多数の小型ノズルを組み合わせるスプレー噴射方法では対応の限界に達することが予測される。
【0004】
先行技術に特開2002−251794号のフォトレジスト除去装置があり、これは複数個のスプレーノズルから噴出する置換・洗浄液により薬品を置換・除去し、かつ、ガラス原板保持具を回転させて置換・洗浄液を振り切るという目的を有しているが、これも小型ノズル使用の一例である。また、特開2003−91885号はフォトレジスト層を除去する手段として、ガラス基板を回転させつつ、超音波振動させた上で、フォトレジスト除去薬液をガラス基板表面に滴下させる液吐出ノズルを備えており、これに用いられているノズルもまた小型のものである。なお、前記特開2003−243811号に用いられているのも小型ノズルである。従って、上記のどの発明も、多数の小型ノズルを組み合わせることに伴う困難から免れるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−243811号
【特許文献2】特開2002−251794号
【特許文献3】特開2003−91885号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は前記の実情に鑑みてなされたもので、その課題は、処理基板(以下、「金属導体基板」という。)に設けた金属導体に対するエッチングを最適の環境を維持して行なうために、金属導体のエッチングに用いる薬液の更新が促進されるようにし、それによって、高品質の金属導体が得られるようにすることである。また、本発明の他の課題は、エッチングに用いる薬液を金属導体基板に設けた金属導体全体に同時に吐出する応力(圧力)を加えるとともに、上記エッチング薬液を同薬液中において吸引することにより、高精度の金属導体に対するエッチングを可能にする装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記の課題を解決するため、本発明は、金属導体に対するエッチングを最適の環境を維持するために、金属導体のエッチングに用いる薬液の更新を促進し、それによって、高品質の金属導体が得られるようにする。そのため、薬液を満たすエッチング液槽に、吐出側ノズル吸引側ノズルを配置し、薬液中に上記のノズルを浸漬した状態で薬液の吐出、吸引を同時に行ない、均一な応力を薬液に加えることにより薬液の更新が促進されるように構成された薬液更新用ノズルを用いるもので、エッチングの対象が金属導体であり、薬液の吐出及び吸引に使用するノズルが、金属導体が配置された金属導体基板の長さと同等の長さにわたって設けられた、単一または複数個の開口部から成るものとするという手段を講じたものである。本発明は、金属導体のエッチングに関するものであり、使用される薬液は、主として、エッチング処理のためのエッチング液即ちエッチャントである。また、洗浄液、特に、凹凸に富んだ形状の底部を洗浄する洗浄液なども本発明に使用される薬液として扱う対象となる。
【0008】
金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズルは吐出側ノズルが単一の開口部を有するスリット形状から成るものであり、吸引側ノズルはスリット形状又は所要の吸引能力を得るためにスリットに沿って開口した複数個の開口部から成るという構成は本発明にとって好ましいものである。
また、本発明は、請求項1記載の金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズルを用いたエッチング装置であって、吐出及び吸引に使用する薬液更新用ノズルは、それらが金属導体基板を挟んで、かつ、それぞれの開口部が金属導体基板に面するように上下に配置し、エッチング液を扱うエッチング液槽が、金属導体がエッチングされる上部槽と、エッチング液を貯溜する下部槽とから構成され、上部槽と下部槽が、上部槽からの戻り配管によって接続され、上記配管の末端に薬液更新用ノズルが取り付けられているという構成を有するエッチング装置を含むものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズルは上記のように構成され、かつ、作用するものであり、金属導体基板に設けた金属導体に対するエッチングにおいて薬液の更新が促進され、それによって高品質の金属導体を得ることができるという効果を奏する。また、本発明によれば、金属導体基板の全体に同時に薬液を吐出するとともに、上記薬液を吸引するように作用するので、金属導体が気体に接触せず、従って、気体・液体界面の応力を受けることなく均一な流体応力の下にあり、気体・液体界面応力がないことで、効率的な吸引ノズルにより深さ方向の薬液更新が可能になり、高精度の金属導体に対するエッチングを可能にするエッチング装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係る金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズルの一例とエッチング反応の進行との関係を示す断面説明図である。
図2】同じく反応がより進行した状態を示す断面説明図である。
図3】金属導体基板とその長さ以上の長さを有する、スリット状開口部を備えている本発明のノズルの一例を示す平面図である。
図4】本発明に係る金属導体のエッチングに用いるエッチング装置の一例を示す断面説明図である。
図5】本発明に係る金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズル二種A、Bを示す平面説明図である。
図6】本発明に係る金属導体のエッチングにおけるエッチ(エッチング)ファクターを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図示の実施形態を参照して本発明をより詳細に説明する。
【0012】
本発明に係る金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズルは、エッチングの処理対象である金属導体基板に対して、薬液を垂直方向から直線的に同時に均一に吐出、吸引するものである。そのために、薬液更新用ノズルはコンベア搬送される金属導体基板に対して、垂線間の長さN以上の長さMを有している(図3参照)。ここで、本発明に係る薬液更新用ノズルについて具体的に説明する。図1において、11は本発明のノズル、12はエッチング液の液面、13は感光性材料により画像形成されたレジスト、14はそこに開けられた開口部、15は金属導体、16は基材をそれぞれ示す。薬液更新用ノズル11は、後述するようにスリット状開口部を備えている。
【0013】
エッチングの開始時には、図1に示すように、開口部14の幅Kに対して深さJ1が浅く、薬液更新用ノズル11からの吐出応力により開口部内のエッチング液を排出するために十分な作用が得られるので、エッチング液排出の支障は事実上ないと考えて良い。吐出応力は、実際はノズル内圧をパラメーターとして使用されるが、さらに、変数因子としてレイノルズ数:Re=ρv/(μv/L)の干渉する領域であって、ρ=流体密度(kg/m)、v=流れの相対速度m/s、μ=流体の粘性係数(kg/(m・s))、L=特性長さ(流体の流れた距離:m)を正のパラメーターとする領域における値である。
【0014】
これに対してエッチング反応が進行し、図2に示したように、開口部14の深さがJ2に増大すると、エッチング液が薬液更新用ノズル11から開口底部に到達するまでの距離が増加するため、エッチング液から受ける排出方向の抵抗Rは増加する傾向になる。抵抗RはR=J/K(Jは、深さJ1又はJ2。)で表される。よって、反応が進行するに伴い抵抗Rが増大するために、開口部14の内部では薬液(この場合、エッチング液)の更新効率が低下し、垂直方向のエッチング特性が低下する事態となる。
【0015】
そこで、図2において、薬液更新用ノズル11から吸引の応力をレジスト13に開けられた開口部14に作用させると、応力はJ2方向に作用するので、薬液更新用ノズル11と対応する上記開口部14との接触距離(長さ)をLとして、作用水平断面M(水平距離)×K(幅)を乗じた積:L×M×Kの体積に相当する薬液が更新されることが分かる。薬液の更新により、同一系の液体中であれば、薬液更新用ノズル11に吸引された総体積分の薬液を同一時間内に、液槽の例えば底部に供給することができ、これによって、薬液更新が促進され、特に、垂直方向のエッチング特性が最適に維持される。
【0016】
本発明の薬液更新用ノズル11は上記のようにして、エッチング処理に関連して生じる、好ましくない事態を改善するものであって、そのために、図3に示したように、金属導体基板22の全体に同時に薬液を吐出するために、金属導体基板22の長さN以上の長さMを有する、スリット状開口部21を備えているものである。図3は金属導体配線がエッチングによって形成された製品23を多数個取りする金属導体基板22を示しており、隣接した製品23の間はスペース(余白)であって、前記の金属導体15は製品23の表面に形成されている。「製品」とは本発明によってエッチング処理された結果得られるものを指し、最終的な商品という意味ではない。また、各図は飽くまで概念を示しており、写実的にとらえるべきではない。
【0017】
ここで、金属導体基板22の全体に同時に薬液を吐出することができるとすれば、金属導体基板22の長さN以上の長さを有しなくても、例えば、上記長さよりは短いスリット状開口部を複数個繋ぐことで薬液更新用ノズルを構成することも可能である。つまり、薬液更新用ノズルを複数個の部分に分割し、それらの合計で同時に薬液を吐出することも可能な範囲の事項である。しかし、複数個の薬液更新用ノズルを組み合わせる場合、複数の液流の境界部分において渦が発生し、その影響が金属導体基板22に及ぶことは、多少の差はあるにしても避けられない。このため、複数個の薬液更新用ノズルを組み合わせなければならない事情があるか、又はそうすることにより大きな利点が得られる場合を除き、複数個の薬液更新用ノズルを組み合わせることによる利益は少ないと考えられる。このような事情ではあるが、ただ1個のスリット状開口部ではなく、数個に分けたとしても本発明の要件を満たし得ることは、上記の説明から明らかであろう。
【0018】
図4は、本発明を適用する浸漬型エッチング装置の略図である(上記の図1図2及び図3図4の一部分と考えて良い)。同図中、金属導体基板22はコンベア24によって移動しながら、エッチング液槽25の中にて、エッチング液の吐出作用を受け、また、吸引作用を受ける。26は薬液のエジェクター、27は吐出回路、28は吸引回路であり、それぞれ流量調整可能なバルブを有する。また、吐出回路27、吸引回路28の管端には、吐出及び吸引に使用する薬液更新用ノズル27a、27b、28a、28bがあり、それらは金属導体基板22を挟んで、かつ、それぞれの開口部が金属導体基板22に面するように上下に配置されている。
【0019】
また、吸引流体は均一な応力となるように、エッチング液を扱うエッチング液槽25は、金属導体がエッチングされる上部槽25Aと、エッチング液を貯溜する下部槽25Bとから構成されている。上部槽25Aと下部槽25Bは戻り配管29によって接続され、エッチングを行なっていないとき薬液は下部槽25Bに貯溜されており、エッチングに際してポンプP1、P2により還流回路(27、28)を通じて上部液槽内に還流され、薬液の更新がなされる。図4において破線で示したのは、薬液を上部槽25Aに満たしたときの下部槽25Bの液面である。
【0020】
吐出側ノズル27a、27bには、図5に示すように、スリット形状のノズル31が用いられる。そのスリット状開口部の幅は、内径40〜50mmの大きさの主管部よりテーパー状に管内が狭められ、50〜150mmの距離で端末吐出部に至る。その開口部の寸法は、0.5〜3mmの範囲とするのが好ましいという実験結果を得ている。図1を参照すると大径の部分が主管部、先端が端末吐出部、それらの間がテーパー状の管部分である。他方の吸引側ノズル28a、28bも同じ条件において、同様に0.5〜3mmの範囲が適切であるが、スリット状開口部を幅0.6〜8mmに加工した吸引板32で封止し、その吸引板32にφ0.5〜3mmの円形状の孔33を開口し、吸引部ノズルを形成することもできる。なお、吸引側ノズルも上記と同様の主管部、端末吐出部、テーパー状の管部分を有している。
【0021】
本発明におけるエッチング対象である金属導体15を設けた基板は、一般的には、薄膜トランジスター(TFT)に用いられる白板ガラス基板、タッチパネルに用いられる青板ガラス(白板ガラスも用いられる。)、プリント配線板などが該当する。しかし、本発明は上記硝材以外の各種硝材或いは樹脂材料製の基板にも適用し得る。
【0022】
上記のような各種材料から成る金属導体基板22に金属導体15が設けられている。金属導体15に対するエッチャント即ち薬剤として、塩酸、硫酸、硝酸、フッ酸等の無機酸、酢酸、シュウ酸等の有機酸塩化第二鉄、塩化第二銅等の酸化性金属溶液などが一般的に用いられる。何れも水溶液の構成であり、図1図2に符号13として記載した、レジスト13は疎水性皮膜であるのが一般的なために、気体中に噴射するスプレーエッチングの場合、前述の抵抗Rは、R=J/K(Jは、深さJ1又はJ2)で表わされ、加えてレジスト界面の撥水応力が干渉して大きなものとなる。しかし、本発明によれば薬液を薬液中にて噴射若しくは吸引して作用させるため、気体界面応力が干渉せず、上記抵抗値も小さく抑制することができる。
【0023】
本発明は金属導体15のエッチングにおいて、薬液の吐出及び吸引に使用する薬液更新用ノズルを装備したエッチング装置提供するものである。薬液更新用ノズルは、エッチング処理対象である金属導体15のコンベア搬送方向に対して垂直方向から直線的に同時に薬液を均一に吐出、吸引するために、金属導体基板22のコンベア搬送方向に対して垂直方向の長さ以上の長さを有するスリット状開口部を備えており、かつ、上記薬液更新の促進のために、薬液を液中において吸引する吸引口を備えていることは前記のとおりである。その理由は、同時に薬液の吐出、吸引を行うことで、複数の薬液の流れによる相互干渉を回避できること、吐出のみを行なって吸引を行わない場合には開口部14の壁面に過流を生じ薬液の円滑な流れが得られないが、吸引を行なうことによって、初めて、前記図1図2の開口部14の長さ方向に沿う整流化した流れが得られ、エッチングによって形成された開口部側面の微細な凹凸を整形する作用が得られるからである。
【0024】
上記において均一な吐出能力の得られる吐出側ノズル27a、27bの開口部の寸法は、0.5〜3mmの範囲であり、同様に、均一な吸引能力の得られる、吸引側ノズル28a、28bの開口部幅が、前記した条件において0.5〜3mmであることは既に説明した。また、吸引側ノズル28a、28bのスリット状開口部を幅0.6〜8mmに加工した吸引板で封止した形態では、その吸引板に開口した円形状の孔径としてφ0.5〜3mmが適切であることも記述のとおりである。上記数値を取る理由として、金属導体エッチングは高精細高密度の加工技術が要求され、細線の接合面積の小さいレジスト介在下においてのエッチング技術が要求されるという事情を挙げることができる。この場合に要求される寸法精度はμmレベルであり、薬液更新用ノズルに低圧、かつ、均一な応力に対応できる性能が求められる。この求めに応じるために、上記吐出側の開口部寸法、吸引側の孔径設定が必要となるのであるが、これは接合面積の大きいガラスエッチングのmmレベルに対して非常に小さく、高度のエッチング技術が要求される所以である。
【0025】
本発明では、金属導体基板22の移動するコンベア24とエッチング薬液中に吐出側ノズル及び吸引側ノズルが設置されるので、薬液の気体接触が極力回避される。即ち、エッチャントに対する空気中の窒素、酸素、二酸化炭素の干渉が回避され、従って、空気中の成分によるエッチャント成分の分解、酸化、還元を回避することができる。スプレー方式による場合には、空気中の成分とエッチャント成分との酸化、還元反応は随時進行しており、エッチャント成分の安定管理上、高精細導体エッチングの場合、その構成成分の変動が金属導体15に対してマイナスに作用する場合もあるが、本発明によれば、液中においてノズルを運用すること及び、上部槽25Aと下部槽25Bが戻り配管29で接続されていることによって、そのようなマイナス要素はほぼ排除される。
【0026】
本発明に係る金属導体のエッチング装置では、エッチャント中において、コンベア搬送方向に対して垂直方向から直線的に同時に薬液を均一に吐出、吸引するために、エッチャントの流れが金属導体基板22のコンベア搬送方向に対して平行、かつ、均一に制御される。また、吸引側ノズル28a、28bのスリット状開口部を幅0.6〜8mmに加工した吸引板で封止した形態では、その吸引板に開口した円形状の孔径としてφ0.5〜3mmとすることで、深さ方向Jに対して効率的、かつ、コンベア搬送方向に対して垂直方向に均一な薬液更新を実現することで、金属導体基板22内部の安定した精細な加工が可能になる。
<エッチング装置と方法>
本発明において金属導体のエッチングを実施するには、図4に示したエッチング装置を使用する。具体的には、薬液を満たすエッチング液槽25に、吐出側ノズル27a、27bと吸引側ノズル28a、28bを、金属導体基板22を挟んで、かつ、それぞれの開口部が金属導体基板22に面するように上下に配置する。よって、薬液中に上記の薬液更新用ノズル27a、27b、28a、28bが浸漬した状態にて、薬液の吐出、吸引を行ない、上記の薬液更新用ノズル27a、27b、28a、28bを用いた吐出、吸引を同時に行なって、均一な応力を薬液に加えることにより薬液の更新が促進されるように構成されている。
【0027】
金属導体基板22は、エッチング液槽25の中にてコンベア24によって移動しつつ、エッチング液の吐出作用を受け、かつ、吸引作用を受ける。また、図4を参照した前述のノズルの説明は全て実施例のものである。また、エッチング装置が、そのままで洗浄装置を構成することも勿論のことである。
【0028】
<実施例>
以下、実施例を記載して本発明をより詳細に説明する。
金属導体15には9μmの電解銅箔を用いる。
これにレジストパターンを、間隔:4.0 4.5 5.0 5.5 6.5 7.0 7.5 8.0 8.5 9.0(単位:μm)、レジスト幅:20.0μm、に統一した銅導体を金属導体15として、CuCl・2HO 35.0wt%、35.0%塩酸 8%、比重1.31(25℃、塩酸濃度36.7g/l、銅濃度170g/l)の塩化第二銅塩酸水溶液にて、30℃の温度条件下にてエッチングを行なった(各装置条件は表1のとおりである。)。
【0029】
【表1】
【0030】
表1の通り、本発明によれば0.002MPaの吐出圧力及び吸引圧力が得られており、それによって最少エッチング可能導体間隔は4.0μmを実現することができた。
【0031】
次に、スプレー法の比較例としていけうち040フルコーンノズルを使用し、照射距離100mm、温度30℃、スプレー内圧0.15MPaの条件にてエッチングを行なった結果を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
表2の通り、スプレー法による場合0.15MPaの吐出圧力が得られるのみであり、その結果、最少エッチング可能導体間隔は6.5μmに止まることが確認された。
【0034】
次に、スプレー法との比較考察でエッチバック(エッチングバックに同じ)とエッチファクター(エッチングファクターに同じ)について考察する。
まず、エッチバックは、図6に図示したように、レジスト導体幅w、仕上がりトップ導体幅tとして、m≒(w−t)/2で表される。エッチバックmは、数値が小さい程良好である。
また、エッチファクターFaは、Fa=h/l(但し、l=(n−t)/2) で表され、数値が大きい程良好である。
【0035】
前記の通り金属導体15に9μmの電解銅箔を用いているのでh=9、レジスト幅20μmであるからw=20である。本発明に係る浸漬法と比較例の照射法の仕上がりトップ導体幅t及び裾幅nの平均値は表3、表4のとおりである。
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
表3、表4の平均値t、nを上記数式に代入し、エッチファクター、エッチバックを算出した。結果を表5、表6に示す。計測は上記実施例に使用した金属導体15にて9μmスペースの箇所を計測する(使用薬液、試験条件は、上記実施例と同様である。)。
【0039】
【表5】
【0040】
【表6】
【0041】
上記表5及び6の比較から把握されるように、本発明に係る金属導体のエッチングに用いる薬液更新用ノズル及びエッチング装置によって、エッチファクターは照射法による場合に対して25%増、エッチバックは同様に11%減という結果を得られたことが分かる。従って、本発明によれば薬液の更新が促進され、それによって高品質の金属導体15を有する製品23を得ることができる。
【符号の説明】
【0042】
11 薬液更新用ノズル
12 液面
13 レジスト
14 開口部
15 金属導体
16 基材
17 金属蒸着膜
20 薬液更新用ノズル
21 スリット状開口部の例
22 金属導体基板
23 製品
24 コンベア
25 エッチング液槽
26 エジェクター
27 吐出側配管
28 吸引側配管
29 戻り配管
31 吸引板
32 円形状の孔
P1 吐出側ポンプ
P2 吸引側ポンプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6