特許第6676656号(P6676656)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676656
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】切削工具
(51)【国際特許分類】
   B23B 51/00 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   B23B51/00 S
【請求項の数】7
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-557087(P2017-557087)
(86)(22)【出願日】2016年3月23日
(65)【公表番号】特表2018-518376(P2018-518376A)
(43)【公表日】2018年7月12日
(86)【国際出願番号】KR2016002901
(87)【国際公開番号】WO2016182188
(87)【国際公開日】20161117
【審査請求日】2019年2月18日
(31)【優先権主張番号】10-2015-0064288
(32)【優先日】2015年5月8日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】515056118
【氏名又は名称】テグテック リミテッド
【氏名又は名称原語表記】TaeguTec Ltd.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,チュン フン
【審査官】 村上 哲
(56)【参考文献】
【文献】 中国実用新案第203401119(CN,U)
【文献】 実開昭56−171113(JP,U)
【文献】 特開平09−070706(JP,A)
【文献】 実開昭60−097217(JP,U)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0268518(US,A1)
【文献】 実開平05−005320(JP,U)
【文献】 特開2009−248233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23B 51/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮想の回転軸を中心に回転するドリル本体と、前記ドリル本体の先端側に位置する切削部とを含んでなり、
前記切削部は、
前記回転軸から半径方向に向かって延びる第1チズルエッジ(chisel edge)と、前記回転軸から半径方向に向かって延び、前記第1チズルエッジと一定の角度を形成する第2チズルエッジとを含む第1研削面;
前記回転軸を基準に前記第1チズルエッジと点対称な第3チズルエッジと、前記回転軸を基準に前記第2チズルエッジと点対称な第4チズルエッジとを含む第2研削面;
前記第1チズルエッジと前記第4チズルエッジから半径方向に延び、前記ドリル本体の回転方向の前方に第1切削エッジを有する第1リリーフ面;
前記第1リリーフ面の前記回転方向の後方と出会う第2リリーフ面;
前記第2チズルエッジと前記第3チズルエッジから半径方向に延び、前記ドリル本体の回転方向の前方に第2切削エッジを有し、前記回転軸を基準に前記第1リリーフ面と点対称な第3リリーフ面;
前記第3リリーフ面の前記回転方向の後方と出会う第4リリーフ面;
前記第1リリーフ面と前記第2リリーフ面とが出会う境界に沿って形成される第1交線;及び
前記第3リリーフ面と前記第4リリーフ面とが出会う境界に沿って形成される第2交線を含み、
前記第1交線と前記第2交線は、前記回転軸、前記第1リリーフ面及び前記第3リリーフ面を通る仮想の中心線と離隔して配置される、切削工具。
【請求項2】
前記ドリル本体は、
前記第1リリーフ面と前記第4リリーフ面との間に前記回転軸の方向に沿って形成される第1チップ排出溝と、前記第3リリーフ面と前記第2リリーフ面との間に前記回転軸の方向に沿って形成される第2チップ排出溝とを含み、
前記切削部は、前記第1研削面から前記第1チップ排出溝に向かって延びる第1シンニング面と、前記第2研削面から前記第2チップ排出溝に向かって延びる第2シンニング面とを含み、
前記第1切削エッジは、前記第1シンニング面と前記第1リリーフ面との間に形成される第1シンニング切削エッジと、前記第1チップ排出溝と前記第1リリーフ面との間に形成される第1チップ切削エッジとを含み、
前記第2切削エッジは、前記第2シンニング面と前記第3リリーフ面との間に形成される第2シンニング切削エッジと、前記第2チップ排出溝と前記第3リリーフ面との間に形成される第2チップ切削エッジとを含み、
前記第1シンニング切削エッジと前記第2シンニング切削エッジが形成する第1先端角は、前記第1チップ切削エッジと前記第2チップ切削エッジが形成する第2先端角よりも小さい、請求項1に記載の切削工具。
【請求項3】
前記第1先端角は90度以上130度以下である、請求項2に記載の切削工具。
【請求項4】
前記第1研削面と前記第2研削面が形成する第3先端角は第1先端角よりも大きい、請求項2に記載の切削工具。
【請求項5】
前記第3先端角は120度以上160度以下である、請求項4に記載の切削工具。
【請求項6】
前記第1チズルエッジ及び前記第3チズルエッジは、前記回転軸に対して前記ドリル本体の後方に第1角度で傾き、
前記第2チズルエッジ及び前記第4チズルエッジは、前記回転軸に対して前記ドリル本体の後方に前記第1角度よりも小さい第2角度で傾く、請求項1に記載の切削工具。
【請求項7】
前記第1交線と前記第2交線は前記中心線と平行に形成される、請求項1に記載の切削工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切削工具に係り、より詳細には、求心性と剛性を向上させた切削工具に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、切削加工分野では、精密加工に対する需要が増えつつ、穴加工においても精削作業などの後工程なしで高精度の穴を得ることができる高性能切削工具の開発が求められている。
【0003】
切削加工において、穴の精度は切削工具の求心性を向上させることにより、穴の寸法及び形状精度を向上させることができる。切削工具の求心性は、形状的に切削工具の先端角を小さくすることにより向上させることができる。
【0004】
しかし、切削工具の先端角を小さくする場合、切削工具の切削部分の剛性が低下する。これにより、切削工具は、切削加工の際にトルクが増加するという問題点があった。
【0005】
また、切削工具の先端角を小さくして切削工具が被切削材を貫通する場合には、穴加工の際に発生するバリ(burr)の大きさが増加するという問題点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国特許登録公報第1,406,612号(2014年6月3日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、切削工具の求心性を向上させながら、切削工具の切削部分の剛性を向上させた切削工具を提供することである。
【0008】
本発明の課題は上述した課題に限定されず、上述していない別の課題は以降の記載から当業者に明確に理解できるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態に係る切削工具は、仮想の回転軸を中心に回転するドリル本体と、前記ドリル本体の先端側に位置する切削部とを含んでなり、前記切削部は、前記回転軸から半径方向に向かって延びる第1チズルエッジ(chisel edge)と、前記回転軸から半径方向に向かって延び、前記第1チズルエッジと一定の角度を形成する第2チズルエッジとを含む第1研削面;前記回転軸を基準に前記第1チズルエッジと点対称な第3チズルエッジと、前記回転軸を基準に前記第2チズルエッジと点対称な第4チズルエッジとを含む第2研削面;前記第1チズルエッジと前記第4チズルエッジから半径方向に延び、前記ドリル本体の回転方向の前方に第1切削エッジを有する第1リリーフ面;前記第1リリーフ面の前記回転方向の後方と出会う第2リリーフ面;前記第2チズルエッジと前記第3チズルエッジから半径方向に延び、前記ドリル本体の回転方向の前方に第2切削エッジを有し、前記回転軸を基準に前記第1リリーフ面と点対称な第3リリーフ面;前記第3リリーフ面の前記回転方向の後方と出会う第4リリーフ面;前記第1リリーフ面と前記第2リリーフ面とが出会う境界に沿って形成される第1交線;及び前記第3リリーフ面と前記第4リリーフ面とが出会う境界に沿って形成される第2交線を含み、前記第1交線と前記第2交線は、前記回転軸、前記第1リリーフ面及び前記第3リリーフ面を通る仮想の中心線と離隔して配置される。
【0010】
幾つかの実施形態において、前記ドリル本体は、前記第1リリーフ面と前記第4リリーフ面との間に前記回転軸の方向に沿って形成される第1チップ排出溝と、前記第3リリーフ面と前記第2リリーフ面との間に前記回転軸の方向に沿って形成される第2チップ排出溝とを含み、前記切削部は、前記第1研削面から前記第1チップ排出溝に向かって延びる第1シンニング(thinning)面と、前記第2研削面から前記第2チップ排出溝に向かって延びる第2シンニング面とを含み、前記第1切削エッジは、前記第1シンニング面と前記第1リリーフ面との間に形成される第1シンニング切削エッジと、前記第1チップ排出溝と前記第1リリーフ面との間に形成される第1チップ切削エッジとを含み、前記第2切削エッジは、前記第2シンニング面と前記第3リリーフ面との間に形成される第2シンニング切削エッジと、前記第2チップ排出溝と前記第3リリーフ面との間に形成される第2チップ切削エッジとを含み、前記第1シンニング切削エッジと前記第2シンニング切削エッジが形成する第1先端角は、前記第1チップ切削エッジと前記第2チップ切削エッジが形成する第2先端角よりも小さいことが好ましい。
【0011】
幾つかの実施形態において、前記第1先端角は90度以上130度以下であることが好ましい。
【0012】
幾つかの実施形態において、前記第1研削面と前記第2研削面とが形成する第3先端角は、第1先端角よりも大きいことが好ましい。
【0013】
幾つかの実施形態において、前記第3先端角は120度以上160度以下であることが好ましい。
【0014】
幾つかの実施形態において、前記第1チズルエッジと前記第3チズルエッジは、前記回転軸に対して前記ドリル本体の後方に第1角度で傾き、前記第2チズルエッジ及び前記第4チズルエッジは、前記回転軸に対して前記ドリル本体の後方に前記第1角度よりも小さい第2角度で傾くことができる。
【0015】
幾つかの実施形態において、前記第1交線と前記第2交線は、前記中心線と平行に形成できる。
【0016】
その他の実施形態の具体的な事項は、詳細な説明及び図面に含まれている。
【発明の効果】
【0017】
本発明の切削工具によれば、次の一つ或いはそれ以上の効果がある。
【0018】
切削工具の求心性を向上させるとともに、切削工具の切削部分の剛性を向上させる。
【0019】
本発明の効果は上述した効果に限定されず、上述していない別の効果は請求の範囲の記載から当業者に明確に理解できるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る切削工具を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る切削工具の一部を示す平面図である。
図3図2のA部分を拡大して示す拡大図である。
図4図3のB部分を拡大して示す拡大図である。
図5】本発明の一実施形態に係る切削工具の一部を示す側面図である。
図6図5のC部分を拡大して示す図である。
図7図6のD−D線に沿って切り取った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の利点、特徴、及びそれらの達成方法は、添付図面と一緒に詳細に後述されている実施形態を参照すると明確になるだろう。しかし、本発明は、以下で開示される実施形態に限定されるものではなく、互いに異なる多様な形態に実現できる。但し、本実施形態は、本発明の開示を完全たるものとし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものである。本発明は請求項の範疇のみによって定義される。明細書全体にわたって、同じ参照符号は同じ構成要素を示す。
【0022】
本明細書で使用された用語は、実施形態を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。本明細書において、単数形は、特別に言及しない限り、複数形も含む。明細書に使用される「含む(comprises)」及び/または「含む(comprising)」は、言及された構成要素、段階、動作及び/または素子に一つ以上の他の構成要素、段階、動作及び/または素子の存在または追加を排除しない。
【0023】
他の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術及び科学的用語を含む)は、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解できる意味で使用できる。また、一般に使用される辞典に定義されている用語は、明白に特に定義されていない限り、理想的または過度に解釈されない。
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る切削工具を説明するための図を参照して、本発明について説明する。
【0025】
図1は本発明の一実施形態に係る切削工具を示す側面図である。
【0026】
図1を参照すると、本発明の一実施形態に係る切削工具10は、ドリル本体200及び切削部100を含む。
【0027】
ドリル本体200は、回転動力によって仮想の回転軸(以下「回転軸」という)Rを中心に回転する。ドリル本体200の外形は、回転軸Rを中心とした略円柱状を有する。また、ドリル本体200は、リブ220、チップ排出溝210及びシャンク230を含む。
【0028】
ドリル本体200は、先端側に切削部100が位置し、後端側に略円柱状のシャンク230が位置する。また、ドリル本体200はリブ220及びチップ排出溝210を含む。
【0029】
リブ220及びチップ排出溝210は、ドリル本体200の回転軸Rに沿って螺旋状に形成されるが、これに限定されない。リブ220及びチップ排出溝210は直線状に形成されてもよい。ここで、チップ排出溝210は、リブ220の間で加工中に発生するチップの排出通路となる。
【0030】
本発明の一実施形態において、リブ220及びチップ排出溝210は、一対が形成される。チップ排出溝210は、回転軸Rを基準に互いに略点対称となる。また、リブ220とチップ排出溝210は、ドリル本体200の後端方向に向かって回転軸Rの周囲に一定角度のねじれ角でねじれながら延長形成される。
【0031】
シャンク230は、ドリル本体200の後方に位置して工作機械に結合する。これにより、シャンク230は、工作機械の動力を切削工具10へ伝達する役割を果たす。
【0032】
切削部100は、穴加工に直接使用される部分であって、ドリル本体200の先端側に位置する。本発明の一実施形態において、切削部100は、ドリル本体200の先端側に一体に形成されるが、これに限定されず、ドリル本体200の先端側に形成された装着部(図示せず)に螺合などによって着脱可能に結合できる。切削部100についての詳細な事項は後述する。
【0033】
図2は本発明の一実施形態に係る切削工具の一部を示す平面図である。図3図2のA部分を拡大して示す拡大図である。図4図3のB部分を拡大して示す拡大図である。
【0034】
図2乃至図4を参照すると、本発明の一実施形態に係る切削部100は、チズル部110、リリーフ部120及びシンニング(thinning)部130を含む。
【0035】
チズル部110は、回転軸R、及び回転軸Rと隣接する部分に形成され、被切削材に対する切込み位置が誘導されるようにする。また、チズル部110は第1研削面111と第2研削面112を含む。
【0036】
図4に示すように、第1研削面111と第2研削面112が回転軸Rから半径方向に向かって延び、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。これにより、第1研削面111と第2研削面112は、チズル部110に2つの研削面がない場合と比較してドリルの求心性を増加させる。このような効果は実験によって確認することができた。
【0037】
第1研削面111は被切削材を研削する面であって、第1研削面111のコーナーには第1チズルエッジ111aと第2チズルエッジ111bを含む。
【0038】
第1チズルエッジ111aは、回転軸Rから半径方向の外側に向かって延びる。また、第1チズルエッジ111aは、半径方向の外側に向かって延び、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。
【0039】
第2チズルエッジ111bは、回転軸Rから半径方向の外側に向かって延びる。また、第2チズルエッジ111bは、半径方向の外側に向かって延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。
【0040】
第2チズルエッジ111bは、第1チズルエッジ111aと回転軸Rを基準に一定の角度を形成する。第2チズルエッジ111bは、第1チズルエッジ111aと回転軸Rを基準に0度超過180度未満の角度を形成する。
【0041】
例えば、本発明の一実施形態において、第2チズルエッジ111bは、第1チズルエッジ111aと回転軸Rを基準に鋭角を形成するが、これに限定されず、直角、鈍角を形成することもできる。
【0042】
第2研削面112は、回転軸Rを基準に第1研削面111と略点対称になる。また、第2研削面112は、第1研削面111と一緒に被切削材を研削する面であって、第2研削面112のコーナーには第3チズルエッジ112aと第4チズルエッジ112bを含む。
【0043】
第3チズルエッジ112aは、回転軸Rから半径方向の外側に向かって延びる。第3チズルエッジ112aは、半径方向の外側に向かって延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。また、第3チズルエッジ112aは、回転軸Rを基準に第1チズルエッジ111aと略点対称になる。これにより、第3チズルエッジ112aは、第1チズルエッジ111aの延長方向とは反対の方向に向かって延長形成される。
【0044】
第4チズルエッジ112bは半径方向の外側に向かって延びる。第4チズルエッジ112bは、半径方向の外側に向かって延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。また、第4チズルエッジ112bは、回転軸Rを基準に第2チズルエッジ111bと略点対称になる。これにより、第4チズルエッジ112bは、第2チズルエッジ111bの延長方向とは反対の方向に向かって延長形成される。
【0045】
リリーフ部120は、チズル部110から半径方向の外側に向かって延びる。リリーフ部120は、第1リリーフ面121、第2リリーフ面122、第3リリーフ面123及び第4リリーフ面124を含む。これについての詳細は後述する。
【0046】
シンニング部130は、チズル部110からチップ排出溝210に向かって延びる。シンニング部130は、穴加工作業の際に切削抵抗の推力を小さくする役割を果たす。また、シンニング部130は第1シンニング面131と第2シンニング面132を含む。これについての詳細は後述する。
【0047】
前述したように、ドリル本体200は、少なくとも2つのチップ排出溝211、212を含む。また、図2に示すように、チップ排出溝210は第1チップ排出溝211と第2チップ排出溝212を含む。
【0048】
第1チップ排出溝211は、第1リリーフ面121と第4リリーフ面124との間に回転軸Rの方向に沿って螺旋状に形成される。第4リリーフ面124は第1チップ排出溝211の回転方向の前方に配置され、第1リリーフ面121は第1チップ排出溝211の回転方向の後方に配置される。
【0049】
第2チップ排出溝212は、第3リリーフ面123と第2リリーフ面122との間に回転軸Rの方向に沿って螺旋状に形成される。第2リリーフ面122は第2チップ排出溝212の回転方向の前方に配置され、第3リリーフ面123は第2チップ排出溝212の回転方向の後方に配置される。
【0050】
前述したように、リリーフ部120は、第1リリーフ面121、第2リリーフ面122、第3リリーフ面123及び第4リリーフ面124を含む。
【0051】
第1リリーフ面121は、第1チズルエッジ111aと第4チズルエッジ112bから半径方向の外側に向かって延びる。第1リリーフ面121は、半径方向の外側に向かって延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。
【0052】
これにより、第1リリーフ面121と第1研削面111との間には第1チズルエッジ111aが形成され、第1リリーフ面121と第2研削面112との間には第4チズルエッジ112bが形成される。
【0053】
第1リリーフ面121は、ドリル本体200の回転方向の前方側に第1チップ排出溝211が位置する。また、第1リリーフ面121と第1チップ排出溝211との間には第1切削エッジ125が形成される。つまり、第1リリーフ面121は、回転方向の前方に第1切削エッジ125を有する。第1切削エッジ125についての詳細は後述する。また、第1リリーフ面121は、回転方向の後方が第2リリーフ面122と出会う。
【0054】
第2リリーフ面122は、第1リリーフ面121の回転方向の後方と出会う。これにより、第1リリーフ面121と第2リリーフ面122とが出会う境界には第1交線122aが形成される。つまり、第1交線122aは、第1リリーフ面121と第2リリーフ面122との境界に沿って形成される。また、第2リリーフ面122は、回転方向の後方に第2チップ排出溝212が位置する。第2リリーフ面122は、第2チップ排出溝212と出会う交線が略円弧状の曲線からなる。
【0055】
第3リリーフ面123は、第2チズルエッジ111bと第3チズルエッジ112aから半径方向の外側に向かって延びる。第3リリーフ面123は、半径方向の外側に向かって延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。
【0056】
これにより、第3リリーフ面123と第1研削面111との間には第2チズルエッジ111bが形成され、第3リリーフ面123と第2研削面112との間には第3チズルエッジ112aが形成される。
【0057】
第3リリーフ面123は、ドリル本体200の回転方向の前方側に第2チップ排出溝212が位置する。また、第3リリーフ面123と第2チップ排出溝212との間には第2切削エッジ126が形成される。つまり、第3リリーフ面123は回転方向の前方に第2切削エッジ126を有する。第2切削エッジ126についての詳細は後述する。また、第3リリーフ面123は、回転方向の後方が第4リリーフ面124と出会う。
【0058】
第4リリーフ面124は第3リリーフ面123の回転方向の後方と出会う。これにより、第3リリーフ面123と第4リリーフ面124とが出会う境界には第2交線124aが形成される。つまり、第2交線124aは、第3リリーフ面123と第4リリーフ面124との境界に沿って形成される。第4リリーフ面124は、回転方向の後方に第1チップ排出溝211が位置する。第4リリーフ面124は、第4リリーフ面124と第2チップ排出溝212とが出会う交線が略円弧状の曲線からなる。
【0059】
第1交線122aと第2交線124aは、回転軸R、第1リリーフ面121及び第3リリーフ面123を通る仮想の中心線Cと離隔して配置される。これにより、第1交線122aと第2交線124aが前記仮想の中心線C上に配置される場合と比較して、チズル部110は剛性が向上できる。このような効果は実験によって確認することができた。
【0060】
シンニング部130は、チズル部110からチップ排出溝210に向かって延びる。シンニング部130は、穴加工作業の際に切削抵抗の推力を小さくする役割を果たす。また、シンニング部130は第1シンニング面131と第2シンニング面132を含む。
【0061】
第1シンニング面131は、第1研削面111から第1チップ排出溝211に向かって延びる。第1シンニング面131は、第1チップ排出溝211に向かって延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。また、第1シンニング面131は第1リリーフ面121の回転方向の前方の一部と出会う。
【0062】
第2シンニング面132は第2研削面112から第2チップ排出溝212に向かって延びる。第2シンニング面132は、第2チップ排出溝212に向かって延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。また、第2シンニング面132は第3リリーフ面123の回転方向の前方の一部と出会う。
【0063】
前述したように、第1切削エッジ125は第1リリーフ面121の回転方向の前方に形成される。第1切削エッジ125は第2切削エッジ126と一緒に被切削材を切削する。
【0064】
第1切削エッジ125は、第1シンニング面131と第1リリーフ面121との間に形成される第1シンニング切削エッジ125a、及び第1チップ排出溝211と第1リリーフ面121との間に形成される第1チップ切削エッジ125bを含む。
【0065】
図2に示すように、第1シンニング切削エッジ125aは、第1チップ切削エッジ125bよりも回転軸Rに近く位置する。また、第1チップ切削エッジ125bは、第1シンニング切削エッジ125aから半径方向の外側に延長形成される。
【0066】
第2切削エッジ126は第3リリーフ面123の回転方向の前方に形成される。また、第2切削エッジ126は、第2シンニング面132と第3リリーフ面123との間に形成される第2シンニング切削エッジ126a、及び第2チップ排出溝212と第3リリーフ面123との間に形成される第2チップ切削エッジ126bを含む。
【0067】
図2に示すように、第2シンニング切削エッジ126aは、第2チップ切削エッジ126bよりも回転軸Rに近く位置する。また、第2チップ切削エッジ126bは、第2シンニング切削エッジ126aから半径方向の外側に延長形成される。
【0068】
図5は本発明の一実施形態に係る切削工具の一部を示す側面図である。図6図5のC部分を拡大して示す図である。
【0069】
図5及び図6を参照すると、本発明の一実施形態に係る切削部100の先端角は3段角に形成される。
【0070】
前述したように、第1リリーフ面121と第3リリーフ面123は、半径方向の外側に延びながら、ドリル本体200の後方に傾斜を持つように形成される。つまり、第1リリーフ面121と第3リリーフ面123は、回転軸Rに垂直な仮想の平面に対してドリル本体200の後方に傾いている。
【0071】
図5に示すように、第1リリーフ面121の第1切削エッジ125と第3リリーフ面123の第2切削エッジ126も、回転軸Rと垂直な仮想の平面に対してドリル本体200の後方に傾いている。これにより、第1切削エッジ125と第2切削エッジ126は所定の先端角を形成する。また、第1切削エッジ125と第2切削エッジ126が形成する先端角は2段角に形成され、これについての詳細は後述する。
【0072】
前述したように、第1切削エッジ125は第1シンニング切削エッジ125aと第1チップ切削エッジ125bを含む。第2切削エッジ126は第2シンニング切削エッジ126aと第2チップ切削エッジ126bを含む。
【0073】
第1シンニング切削エッジ125aと第2シンニング切削エッジ126aは、回転軸Rを基準に点対称となる。また、第1シンニング切削エッジ125aと第2シンニング切削エッジ126aは第1先端角αを形成する。ここで、第1先端角αは約90度以上130度以下であり得る。
【0074】
第1チップ切削エッジ125bと第2チップ切削エッジ126bは、回転軸Rを基準に点対称となる。また、第1チップ切削エッジ125bと第2チップ切削エッジ126bは第2先端角βを形成する。
【0075】
図5に示すように、第1リリーフ面121は、第1シンニング面131と出会う内側部分が、第1チップ排出溝211と出会う外側部分よりもドリル本体200の後方にさらに傾くように形成される。例えば、第1リリーフ面121は、第1シンニング面131と出会う内側部分が回転軸Rと垂直な仮想の平面に対してドリル本体200の後方にA角度で傾く。また、第1リリーフ面121は、第1チップ排出溝211と出会う外側部分が前記仮想の平面に対してドリル本体200の後方にA角度よりも小さいB角度で傾く。
【0076】
図5に示すように、第3リリーフ面123は、第2シンニング面132と出会う内側部分が、第2チップ排出溝212と出会う外側部分よりもドリル本体200の後方にさらに傾くように形成される。例えば、第3リリーフ面123は、第2シンニング面132と出会う内側部分が、回転軸Rと垂直な仮想の平面に対してドリル本体200の後方にA角度で傾く。また、第3リリーフ面123は、第2チップ排出溝212と出会う外側部分が、前記仮想の平面に対してドリル本体200の後方にA角度よりも小さいB角度で傾く。
【0077】
これにより、第1シンニング切削エッジ125aと第2シンニング切削エッジ126aが形成する第1先端角は、第1チップ切削エッジ125bと第2チップ切削エッジ126bが形成する第2先端角βよりも小さくなる。例えば、第2先端角βは略140度になり、第1先端角αは略110度になる。これにより、切削工具10(図1参照)の求心性は向上する。このような効果は実験によって確認することができた。
【0078】
図6に示すように、第1研削面111と第2研削面112は、回転軸Rから半径方向の外側に延び、ドリル本体200の後方に傾くように形成される。つまり、第1研削面111と第2研削面112は、回転軸Rと垂直な仮想の平面に対してドリル本体200の後方に傾いている。
【0079】
これにより、第1研削面111と第2研削面112は第3先端角γを形成する。第1研削面111と第2研削面112が形成する第3先端角γは第1先端角αよりも大きくなれる。また、第3先端角γは120度以上160度以下になれる。例えば、第1先端角αが略140度であり、第2先端角βが略110度である場合、第3先端角γは略150度である。
【0080】
図7図6のD−D線に沿って切り取った断面図である。
【0081】
図6及び図7を参照すると、本発明の一実施形態に係る第1研削面111は第1チズルエッジ111aと第2チズルエッジ111bを含む。また、第2研削面112は第3チズルエッジ112aと第4チズルエッジ112bを含む。
【0082】
前述したように、第1チズルエッジ111aと第3チズルエッジ112aは、回転軸Rを基準に点対称となる。また、第2チズルエッジ111bと第4チズルエッジ112bは、回転軸Rを基準に点対称となる。
【0083】
図6及び図7に示すように、第1チズルエッジ111aと第3チズルエッジ112aは、回転軸Rに対してドリル本体200の後方に第1角度の傾斜を持つ。第2チズルエッジ111bと第3チズルエッジ112aは、回転軸Rに対してドリル本体200の後方に第2角度の傾斜を持つ。また、第1角度と第2角度とは異なるように形成される。本発明の一実施形態において、第2角度は第1角度よりも小さく形成される。
【0084】
第2角度が第1角度よりも小さく形成されることにより、互いに隣接するそれぞれのチズルエッジは、回転軸Rと垂直な断面上で互いに異なる位相差aを形成する。言い換えれば、第1研削面111と第2研削面112のコーナーのうち、互いに隣接するコーナーは、回転軸Rと垂直な断面上で互いに異なる位相差aを形成する。
【0085】
第2角度が第1角度よりも小さく形成されることにより、第1チズルエッジ111aと第3チズルエッジ112aが主導的な切削機能を行う。また、切削加工の際に、第1チズルエッジ111aと第3チズルエッジ112aにより発生するチップ(chip)は、隣接するそれぞれのシンニング面に向かって排出される。これにより、チズル部110におけるチップ排出性能が向上することを実験によって確認することができた。
【0086】
以上、本発明の好適な実施形態について図示及び説明したが、本発明は、上述した特定の実施形態に限定されず、特許請求の範囲で請求する本発明の要旨を逸脱することなく、当該発明の属する技術分野における通常の知識を有する者によって様々な変形実施が可能なのはもとより、それらの変形実施は本発明の技術的思想や展望から個別的に理解されてはならないだろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7