特許第6676661号(P6676661)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676661ブタ生殖器呼吸器症候群及びブタサーコウイルス関連疾患に対するワクチン組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676661
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】ブタ生殖器呼吸器症候群及びブタサーコウイルス関連疾患に対するワクチン組成物
(51)【国際特許分類】
   C07K 19/00 20060101AFI20200330BHJP
   C07K 14/00 20060101ALI20200330BHJP
   C07K 14/08 20060101ALI20200330BHJP
   C07K 5/10 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 39/12 20060101ALI20200330BHJP
   A61P 31/14 20060101ALI20200330BHJP
   C07K 14/21 20060101ALN20200330BHJP
   C12N 15/40 20060101ALN20200330BHJP
   C12N 15/62 20060101ALN20200330BHJP
   C12N 15/31 20060101ALN20200330BHJP
   C12N 15/63 20060101ALN20200330BHJP
【FI】
   C07K19/00ZNA
   C07K14/00
   C07K14/08
   C07K5/10
   A61K39/12
   A61P31/14
   !C07K14/21
   !C12N15/40
   !C12N15/62 Z
   !C12N15/31
   !C12N15/63 Z
【請求項の数】14
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2017-562353(P2017-562353)
(86)(22)【出願日】2016年5月27日
(65)【公表番号】特表2018-516926(P2018-516926A)
(43)【公表日】2018年6月28日
(86)【国際出願番号】US2016034858
(87)【国際公開番号】WO2016196383
(87)【国際公開日】20161208
【審査請求日】2017年12月19日
(31)【優先権主張番号】62/169,205
(32)【優先日】2015年6月1日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517396032
【氏名又は名称】リーバー ジェネティクス シーオー., エルティーディー.
【氏名又は名称原語表記】REBER GENETICS CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】チェン, ユ−シン
(72)【発明者】
【氏名】ツァイ, メン−ジュ
(72)【発明者】
【氏名】ライ, パオ−イェン
(72)【発明者】
【氏名】チョウ, ウェイ−イ
(72)【発明者】
【氏名】チャン, シゥ−カン
【審査官】 濱田 光浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−013537(JP,A)
【文献】 米国特許第07595054(US,B1)
【文献】 国際公開第2014/089036(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 19/00
C07K 14/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
融合タンパク質であって、
(a)前記融合タンパク質のN末端に位置する、抗原提示細胞(APC)結合ドメインであって、前記APC結合ドメインが、シュードモナス外毒素A(PE)結合ドメインIaである、APC結合ドメイン;
(b)前記APC結合ドメインのC末端に位置する、配列番号:4、2、3、又は6と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、34−112アミノ酸残基長のトランスロケーションペプチド;
(c)以下の(i)〜(iv)を含む融合抗原;
(i)ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)ORF7抗原;
(ii)PRRSV ORF1b抗原;
(iii)PRRSV ORF6抗原;及び
(iv)PRRSV ORF5抗原;
(d)前記融合抗原のC末端、又は前記トランスロケーションペプチドと前記融合抗原との間に位置する、配列番号:13のアミノ酸配列を含む核輸送シグナル、及び
(e)小胞体保持配列であって、前記核輸送シグナルが前記トランスロケーションペプチドと前記融合抗原との間に位置する場合は前記融合抗原のC末端に位置し、又は前記核輸送シグナルが前記融合抗原のC末端に位置する場合は前記核輸送シグナルのC末端に位置する、小胞体保持配列
を含み、
ここで、前記融合抗原が、完全長ORF7、ORF6、ORF5、及びORF1bタンパク質配列を含ま
前記融合抗原が、
(i)配列番号:22、23又は33のアミノ酸配列;
(ii)配列番号:24のアミノ酸配列;
(iii)配列番号:25のアミノ酸配列;及び
(iv)配列番号:26のアミノ酸配列;
を含む、
融合タンパク質。
【請求項2】
前記ORF7又はORF1b抗原が前記ORF6抗原のN末端に位置し、前記ORF5抗原が前記ORF6抗原のC末端に位置する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項3】
前記融合抗原が、前記ORF7抗原の2つのタンデム反復を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項4】
前記ORF5抗原が前記ORF6抗原のC末端に位置する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項5】
前記ORF6抗原が、前記PRRSV ORF6のN末端部アミノ酸配列を含み、前記ORF5抗原が、前記PRRSV ORF5のN末端部アミノ酸配列を含み、前記融合抗原が、前記ORF6及びORF5のC末端部アミノ酸配列を含まない、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項6】
前記ORF1b抗原が、ORF1b NSP 10のC末端部アミノ酸配列及びORF1b NSP 11のN末端部アミノ酸配列を含み、前記融合抗原が、前記ORF1bのN末端及びC末端部アミノ酸配列を欠いている、請求項5に記載の融合タンパク質。
【請求項7】
前記シュードモナス外毒素A(PE)結合ドメインIaが、配列番号:1又は32のアミノ酸配列を含む、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項8】
前記トランスロケーションペプチドが34−61アミノ酸残基長を有する、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項9】
前記小胞体保持配列がアミノ酸配列KDEL(配列番号:15)を含み、前記アミノ酸KDELのタンデム反復を含まない、請求項1に記載の融合タンパク質。
【請求項10】
前記核輸送シグナル及び前記ER保持配列が、配列番号:12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と融合ペプチドを形成する、請求項9に記載の融合タンパク質。
【請求項11】
前記融合タンパク質が、配列番号27又は28のアミノ酸配列を含む、請求項1〜10のいずれか一項に記載の融合タンパク質。
【請求項12】
抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を、それを必要とする被験体において誘導するための組成物であって、
(i)請求項1に記載の融合タンパク質;及び
(ii)ブタサーコウイルスタイプ2(PCV2)融合タンパク質を含み、
(ii)ブタサーコウイルスタイプ2(PCV2)融合タンパク質が、
(a)前記融合タンパク質のN末端に位置する、抗原提示細胞(APC)結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメイン;
(b)前記APC結合ドメイン又は前記CD91レセプター結合ドメインのC末端に位置する、配列番号:4、2、3、又は6と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、34−112アミノ酸残基長のトランスロケーションペプチド;
(c)PCV2 ORF2抗原;
(d)前記PCV2 ORF2抗原のC末端、又は前記トランスロケーションペプチドと前記PCV2 ORF2抗原との間に位置する、配列番号:13のアミノ酸配列を含む核輸送シグナル;及び
(e)小胞体保持配列であって、前記核輸送シグナルが前記トランスロケーションペプチドと前記PCV2 ORF2抗原との間に位置する場合は前記PCV2融合タンパク質のC末端に位置し、又は前記核輸送シグナルが前記PCV2 ORF2抗原のC末端に位置する場合は前記核輸送シグナルのC末端に位置する、小胞体保持配列
を含み、
ここで、前記PCV2 ORF2抗原が、PCV2 ORF2タンパク質のC末端部アミノ酸配列を含み、前記PCV2融合タンパク質が、前記PCV2 ORF2タンパク質のN末端部アミノ酸配列を含まない、
組成物。
【請求項13】
抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を、それを必要とする被験体において誘導するための医薬品の製造における、治療的に有効量の、請求項1〜10のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項12に記載の組成物を含む組成物の使用。
【請求項14】
抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を、それを必要とする被験体において誘導するために使用される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の融合タンパク質又は請求項12に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野
本発明は、一般にワクチンに関し、より具体的にはサブユニットワクチンに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の背景
免疫細胞(T細胞、B細胞、樹状細胞、単球、又はマクロファージなど)に感染するウイルスとしては、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)、ブタサーコウイルスタイプII(PCV2)、及びヒト免疫不全ウイルス(HIV)が含まれる。免疫細胞は、免疫化応答を誘発することはできないが、ウイルスを運ぶことができる。これらのウイルスに感染した動物には、他の病原体が容易に感染する可能性がある。ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)は、毎年、畜産に大きな損失をもたらす。ブタだけでなく、アヒルも同様に、PRRSVに感染する可能性がある。一般に、ウイルスに感染した動物は、顕著な症状を有しないが、感染した動物の免疫性は低下する。このウイルスは、(肺胞及び脾臓中の)マクロファージ、脳ミクログリア及び単球に感染し、感染した動物の血液及び器官に存在し得る。これは、二次感染に起因する体重増加の減少及び死亡率の増加につながる。
【0003】
米国特許第7,595,054号は、サブユニットワクチンとして使用される融合抗原を開示しており、ここでは、ORF1bの領域又はORF7の領域から選択される単一の抗原部分が、細胞傷害性ドメインIIIを欠いているシュードモナス外毒素Aポリペプチド、すなわち、PE(ΔIII)と、及び小胞体保持配列との間で融合される。
【0004】
Reber Genetics Co. Ltd.によって「PRRSFREE(商標)」と命名されているワクチン組成物は、それぞれD、M、R、及びPと呼ばれる、4種類の別個のPRRS抗原を含む。これらの4種類のPRRS抗原は、米国特許第7,595,054号に開示される設計を使用する、4種類の別個のベクターによって、それぞれ発現され、動物において細胞媒介性免疫応答及び体液性免疫応答を誘導するのに有効であることが見出された。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の概要
一つの態様において、本発明は、ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)融合タンパク質に関する。このブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)融合タンパク質は、
(a)融合タンパク質のN末端に位置する、抗原提示細胞(APC)結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメイン;
(b)APC結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメインのC末端に位置する、配列番号:4、2、3、又は6と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、34−112アミノ酸残基長のトランスロケーションペプチド;
(c)以下の(i)〜(iv)を含む融合抗原;
(i)ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)ORF7抗原;
(ii)PRRSV ORF1b抗原;
(iii)PRRSV ORF6抗原;及び
(iv)PRRSV ORF5抗原;
(d)融合タンパク質のC末端に位置する、小胞体保持配列;及び
(e)任意選択的に、抗原と小胞体保持配列との間又はトランスロケーションペプチドと抗原との間に位置する、配列番号:13のアミノ酸配列を含む核輸送シグナル
を含み、
ここで、融合抗原が、完全長ORF7、ORF6、ORF5、及びORF1bタンパク質配列を含まない。
【0006】
本発明の一つの実施形態において、ORF7又はORF1b抗原がORF6抗原のN末端に位置し、ORF5抗原がORF6抗原のC末端に位置する。
【0007】
本発明の別の実施形態において、ORF6抗原がORF5抗原のN末端に位置し、ORF6抗原とORF5抗原との間に架橋又はリンカーがない。
【0008】
本発明の別の実施形態において、融合抗原が、ORF7抗原の2つのタンデム反復を含む。
【0009】
本発明の別の実施形態において、ORF5抗原がORF6抗原のC末端に位置する。
【0010】
本発明の別の実施形態において、ORF6抗原が、PRRSV ORF6のN末端部アミノ酸配列を含み、ORF5抗原が、PRRSV ORF5のN末端部アミノ酸配列を含み、融合抗原が、ORF6及びORF5のC末端部アミノ酸配列を含まない。
【0011】
本発明の別の実施形態において、ORF1b抗原が、ORF1b NSP 10のC末端部アミノ酸配列及びORF1b NSP 11のN末端部アミノ酸配列を含み、融合抗原が、ORF1bのN末端及びC末端部アミノ酸配列を欠いている。
【0012】
本発明の別の実施形態において、APC結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメインが、配列番号:1、8、9、10、11、又は32と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0013】
本発明の別の実施形態において、小胞体保持配列がアミノ酸配列KDEL(配列番号:15)を含み、アミノ酸KDELのタンデム反復を含まず、但し、核輸送シグナルが存在する。
【0014】
本発明の別の実施形態において、APC結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメインが、配列番号:1又は32と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0015】
本発明の別の実施形態において、核輸送シグナル及びER保持配列が、配列番号:12と少なくとも90%同一のアミノ酸配列と融合ペプチドを形成する。
【0016】
本発明の別の実施形態において、小胞体保持配列が配列番号:16、17、18、又は19のアミノ酸配列を有し、但し、核輸送シグナルが存在しない。
【0017】
本発明の別の実施形態において、APC結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメインが、配列番号:8と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドである。
【0018】
別の態様において、本発明は、組成物に関するものであり、この組成物が、
(i)本発明のPRRSV融合タンパク質;及び
(ii)ブタサーコウイルスタイプ2(PCV2)融合タンパク質
を含み、
(ii)ブタサーコウイルスタイプ2(PCV2)融合タンパク質が、
(a)融合タンパク質のN末端に位置する、抗原提示細胞(APC)結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメイン;
(b)APC結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメインのC末端に位置する、配列番号:4、2、3、又は6と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含む、34−112アミノ酸残基長のトランスロケーションペプチド;及び
(c)PCV2 ORF2抗原;
(d)融合タンパク質のC末端に位置する、小胞体保持配列;及び
(e)抗原と小胞体保持配列との間又はトランスロケーションペプチドと抗原との間に位置する、配列番号:13のアミノ酸配列を含む核輸送シグナル
を含み、
ここで、PCV2 ORF2抗原が、PCV2 ORF2タンパク質のC末端部アミノ酸配列を含み、PCV2融合タンパク質が、PCV2 ORF2タンパク質のN末端部アミノ酸配列を含まない。
【0019】
本発明の別の実施形態において、APC結合ドメイン又はCD91レセプター結合ドメインが、シュードモナス外毒素A(PE)結合ドメインIのアミノ酸配列を含まない。
【0020】
本発明の別の実施形態において、トランスロケーションペプチドが34−46アミノ酸残基長を有する。
【0021】
本発明の別の実施形態において、トランスロケーションペプチドが34−61アミノ酸残基長を有する。
【0022】
さらに別の態様において、本発明は、抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を誘導するための方法に関し、この方法が、治療的に有効量の本発明の融合タンパク質を含む組成物を、それを必要とする被験体に投与するステップ、及びこれにより抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を誘導するステップを含む。
【0023】
さらに別の態様において、本発明は、抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を、それを必要とする被験体において誘導するための医薬品の製造における、治療的に有効量の、本発明の融合タンパク質又は本発明の組成物を含む組成物の使用に関する。本発明はまた、抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を、それを必要とする被験体において誘導する際に使用するための、治療的に有効量の本発明の融合タンパク質又は本発明の組成物を含む組成物に関する。
【0024】
代替的に、本発明は、抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を誘導する方法に関し、この方法は、本発明の組成物をそれを必要とする被験体に投与するステップ、及びこれにより抗原特異的細胞媒介性応答及び体液性応答を誘導するステップを含む。
【0025】
本発明の融合抗原は、ORF7、ORF6、ORF5、及びORF1b上に中和エピトープ及び保護エピトープを含み、完全長ORF7、ORF6、ORF5、及びORF1bタンパク質配列を含まない。
【0026】
ORF7抗原は、配列番号:33、22、又は23のアミノ酸配列を含む。
【0027】
ORF1b抗原は、ORF1b NSP 10のC末端部及びORF1b NSP 11のN末端部のアミノ酸配列を含み、ORF1bのN末端部及びC末端部を欠いている。すなわち、この融合抗原は、ORF1b NSP 10のC末端部及びORF1b NSP 11のN末端部のアミノ酸配列を含み、ORF1bのN末端部及びC末端部のアミノ酸配列を含まない。
【0028】
ORF6抗原が、PRRSV ORF6のN末端部アミノ酸配列を含み、ORF5抗原が、PRRSV ORF5のN末端部アミノ酸配列を含み、融合抗原が、ORF6及びORF5のC末端部アミノ酸配列を含まない。言い換えれば、ORF6抗原がPRRSV ORF6のN末端部アミノ酸配列から選択され、ORF5抗原がPRRSV ORF5のN末端部アミノ酸配列から選択される。
【0029】
本発明の別の実施形態において、PRRSV ORF6のN末端部アミノ酸配列が配列番号:34であり、PRRSV ORF5のN末端部アミノ酸配列が35である。
【0030】
さらに本発明の別の実施形態において、PRRSV ORF6のN末端部アミノ酸配列が配列番号:36であり、PRRSV ORF5のN末端部アミノ酸配列が37である。ORF1b抗原が、ORF1b NSP 10のC末端部アミノ酸配列及びORF1b NSP 11のN末端部アミノ酸配列を含み、融合抗原が、ORF1bのN末端及びC末端部アミノ酸配列を欠いている。本発明の一つの実施形態において、ORF1b抗原が200未満のアミノ酸残基長を有し、配列番号:25のアミノ酸配列を含む。本発明の別の実施形態において、ORF1b抗原が、PRRSV ORF1bのアミノ酸残基1046〜アミノ酸残基1210のアミノ酸配列を含む。本発明の一つの実施形態において、配列番号:13のC末端アミノ酸がアラニンである。
【0031】
これらの態様及び他の態様は、以下の図面と併せて、以下の好ましい実施形態の説明から明らかとなるであろう。添付の図面は、本発明の1又は複数の実施形態を、本発明の原理を説明するのに役立つ説明の記載とともに示している。可能な限り、一実施形態の同じ又は類似の要素を指すために、図面全体で同じ参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1A図1Aは、完全長緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)外毒素A(PE)、及びPEの部分断片を示す略図である。
【0033】
図1B図1Bはベクターマップを示す。
図1C図1Cはベクターマップを示す。
【0034】
図1D図1Dは、PRRSFREEと命名されているワクチン組成物の調製に使用される4種類の別個のプラスミドを示す略図である。ワクチン組成物PRRSFEEは、4種類の別個の、個別のPE融合タンパク質を含む。PRRSFREEワクチン組成物中のそれぞれの個別のPE融合タンパク質は、PE(ΔIII)断片(PE407)、単一の抗原部分(M、P、R、又はDと呼ばれる)、及び小胞体保持配列(K3)を含む。用語「D」又は「DGD」は、PRRSV核タンパク質ORF7からの抗原を表す。用語「R」又は「RSAB」は、架橋/リンカー配列を間に有しない、PRRSV ORF6/膜タンパク質及びORF5/主要なエンベロープタンパク質の融合抗原を表す。用語「M」又は「M12」は、PRRSV ORF1bからの抗原を表し、PRRSV非構造タンパク質NSP 10及びNSP 11の人工融合抗原である。用語「P」又は「PQAB」は、架橋/リンカー配列を間に有しない、PRRSV ORF6/膜タンパク質及びORF5/主要なエンベロープタンパク質の融合抗原を表す。用語「PE(ΔIII)」は、細胞傷害性ドメインIIIを持たないPE断片を表す。用語「PE407」は、アミノ酸1〜アミノ酸407のシュードモナス外毒素A(PE)ポリペプチドを表す。
【0035】
図1E図1Eは、PE−DRMP−NESK又はPRRSFREE 4−in−oneと呼ばれるPE融合タンパク質の調製のために使用されるプラスミドを示す略図である。PE−DRMP−NESK融合タンパク質は、PE(ΔIII)断片(PE313)、4種類の抗原部分(DRMPと呼ばれる)を含む単一の融合ポリペプチド、核輸送シグナル(NES)、及び小胞体保持配列(K)を含む。
【0036】
図1F図1Fは、PE(ΔIII)断片(PE313)、単一の抗原部分(PCV2と呼ばれる)、核輸送シグナル(NES)、及び小胞体保持配列(K)を含む融合タンパク質をコードするプラスミドを示す略図である。
【0037】
図2A図2Aは、PBS、又はワクチン組成物PRRSFREE 4−in−1又はPRRSFREEで免疫化されたマウスにおける抗原特異的細胞媒介性免疫(CMI)応答を示すグラフである。
【0038】
図2B図2Bは、PBS、又はワクチン組成物PRRSFREE 4−in−1又はPRRSFREEで免疫化されたマウスについての抗原特異的抗体(IgG)応答を示すグラフである。
【0039】
図3A図3Aは、PBS又は異なるPRRS/PCV2コンボワクチンで免疫化されたマウスについてのPRRSFREE抗原特異的CMI応答を示すグラフである。
【0040】
図3B図3Bは、PBS又は異なるPRRS/PCV2 ORF2コンボワクチンで免疫化されたマウスについてのPCV2 ORF2抗原特異的CMI応答を示すグラフである。
【0041】
図4A図4Aは、PBS又は異なるPRRS/PCV2コンボワクチンで免疫化されたマウスについてのPRRSFREE抗原特異的抗体(IgG)応答を示すグラフである。
【0042】
図4B図4Bは、PBS又は異なるPRRS/PCV2コンボワクチンで免疫化されたマウスについてのPCV2 ORF2抗原特異的抗体(IgG)応答を示すグラフである。
【0043】
図5図5は、以下の(1)〜(3)のいずれかで免疫化されたマウスにおけるPRRSFREE抗原特異的CMI応答を示すグラフである:(1)2種類の抗原の融合物(PE313−DR−NESK中の抗原D及び抗原Rの融合物)を含む融合タンパク質、又は(2)2種類の別個の融合タンパク質の組み合わせ(それぞれの融合タンパク質が、2種類の抗原の融合物(PE313−DR−NESK中のD及びRの融合物、又はPE313−MP−NESK中のM及びPの融合物)を含む)、又は(3)4種類の抗原の融合物(PE313−DRMP−NESK中のD、R、M、及びPの融合物)を含む融合タンパク質。
【0044】
図6図6は、PRRSV感染に対するブタの免疫化のために使用される、様々な融合タンパク質を示す略図である。
【0045】
図7図7は、それぞれのPRRSV抗原での刺激後に、ワクチン接種したブタのPBMCによって分泌されたIFN−γを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0046】
発明の詳細な説明
本発明は、以下の実施例においてより具体的に説明されている。これらの実施例は、単なる例示であることが意図される。なぜなら、実施例における多数の改変及び変更が当業者には明らかであるためである。本発明の様々な実施形態をここで詳細に説明する。図面を参照すると、図面全体において、類似の番号は類似の構成要素を示す。この詳細な説明において、及び以下に続く特許請求の範囲全体において使用されるように、「a」、「an」、及び「the」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、複数の参照を含む。また、この詳細な説明において、及び以下に続く特許請求の範囲全体において使用されるように、「in」の意味は、文脈上他に明確に指示されない限り、「in」及び「on」を含む。さらに、読者の便宜のために、タイトル又はサブタイトルが明細書中で使用され得る。このことは、本発明の範囲に影響を与えるものではない。加えて、この明細書において使用されるいくつかの用語が、以下により具体的に定義される。
【0047】
<定義>
【0048】
この明細書で使用される用語は、一般に、本発明の文脈内で、及び各用語が使用される特定の文脈において、本技術分野におけるそれらの通常の意味を有する。本発明を説明するために使用されるある特定の用語が、以下で、又は本明細書の他の場所で論じられて、本発明の詳細な説明に関して実務者に追加のガイダンスを提供する。便宜上、ある特定の用語が、例えばイタリック及び/又は引用符を使用してハイライトされ得る。ハイライトの使用は、用語の範囲及び意味に影響を与えない。用語の範囲及び意味は、それがハイライトされているか否かにかかわらず、同じ文脈において同じである。同じものを複数の方法で言うことができることが理解されるだろう。従って、本明細書で論じられる用語のうち任意の1又は複数について、別の言葉及び同義語を使用してよく、また、用語が本明細書において詳細に述べられている又は論じられているかどうかに特別な意味はない。ある特定の用語についての同義語が提供される。1又は複数の同義語の使用は、他の同義語の使用を除外するものではない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む、この明細書のどこかでの例の使用は、例示的なものに過ぎず、本発明の範囲及び意味又は任意の例示される用語の範囲及び意味を決して限定するものではない。同様に、本発明は、この明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0049】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明の属する分野の当業者によって共通して理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本文書が統制する。
【0050】
用語「抗原提示細胞(APC)又はアクセサリー細胞」は、主要組織適合性複合体(MHC)と複合体化された外来抗原を、それらの表面上に示す細胞を指す。T細胞は、それらのT細胞レセプター(TCR)を使用して、これらの複合体を認識することができる。これらの細胞は、抗原を処理し、それらをT細胞に提示する。プロフェッショナル抗原提示細胞の主なタイプは、樹状細胞(DC)、マクロファージ(これらは、CD4+でもあり、それ故にHIVに易感染性でもある)、単球、及びある特定のB細胞である。
【0051】
用語「抗原提示細胞(APC)結合ドメイン」は、抗原提示細胞(APC)に結合することができるドメイン(これはポリペプチドである)を指す。APC結合ドメインは、配列番号:1及び8−11からなる群より選択される配列と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含むポリペプチドであり得る。APC結合ドメインは、APC上のレセプターを認識して結合するリガンドである。
【0052】
表面抗原分類91(CD91)は、細胞の膜においてレセプターを形成するタンパク質であり、レセプター媒介性エンドサイトーシスに関与する。
【0053】
用語「PE」は、34−112アミノ酸残基長のトランスロケーションペプチド(又はトランスロケーションドメイン)を指す。PEは、配列番号:2−4及び6と少なくとも90%同一のアミノ酸配列を含み得る。例えば、PEのアミノ酸配列は、PEのa.a.280−a.a.313(配列番号:4)、a.a.268−a.a.313(配列番号:3)、a.a.253−a.a.313(配列番号:2)、又はa.a.253−a.a.364(配列番号:6)の断片であり得る。すなわち、PEのアミノ酸配列は、それがa.a.280−a.a.313(配列番号:4)必須配列(すなわち、必須断片)を含む限り、PEドメインII(a.a.253−a.a.364;配列番号:6)の任意の領域を含み得る。
【0054】
PE407(配列番号7)は、先行特許(US 7,335,361 B2)において、PE(ΔIII)として説明される。
【0055】
用語「トランスロケーションペプチド」は、抗原を標的細胞の細胞質内に移行させることができる。
【0056】
用語「小胞体(ER)保持配列」は、細胞質からER内への抗原のトランスロケーションを補助する機能を有するペプチドを指し、ERの内腔に抗原を保持する。ER保持配列は、Lys Asp Glu Leu(KDEL;配列番号:15)又はRDELの配列を含む。ER保持配列は、KDEL、RDEL、KDELKDELKDEL(K3;配列番号:16)、KKDLRDELKDEL(K3;配列番号:17)、KKDELRDELKDEL(K3;配列番号:18)、又はKKDELRVELKDEL(K3;配列番号:19)の配列を含み得る。
【0057】
核輸送シグナル(NES)は、タンパク質を、核輸送を使用する、核孔複合体を介した細胞核から細胞質への輸送の標的とする、タンパク質中の4つの疎水性残基の短いアミノ酸配列を指す。NESは、エクスポーチンによって認識及び結合される。疎水性残基の最も一般的な間隔は、LxxKLxxLxLx(配列番号13)であり、式中、「L」はロイシンであり、「K」はリシンであり、「x」は任意の天然アミノ酸である。例えば、人工NESは、配列Leu Gln Lys Lys Leu Glu Glu Leu Glu Leu Ala(LQKKLEELELA;配列番号:14)を含み得る。
【0058】
用語「NESK」は、NES及びER保持シグナルの融合ペプチド(すなわち、ER保持シグナルに融合したNES)を指す。これは、核輸送シグナル(NES)とER保持配列の機能を有する人工ペプチドである。したがって、これは、核孔複合体を介して細胞核から細胞質に抗原を輸送し、細胞質からERへの抗原のトランスロケーションを補助し、抗原をERの内腔に保持することができる。例えば、NESKのアミノ酸配列はLQKKLEELELAKDEL(配列番号:12)であり得る。
【0059】
サブユニットワクチンは、疾患を引き起こすウイルスの一部分のみを使用するワクチンである。この戦略は、ウイルスの一部分が疾患を引き起こす原因となる場合に、最も頻繁に使用される。疾患を引き起こす原因となる部分は、我々が抗原と呼ぶタンパク質である。
【0060】
抗原は、病原体によって引き起こされる疾患の原因となる、又は病原体に感染した宿主において免疫学的応答を誘導することができる、病原性タンパク質、ポリペプチド又はペプチドであり得る。抗原は、1又は複数の病原性タンパク質から選択される2以上の抗原の融合物に由来する融合抗原であり得る。例えば、PRRSV ORF6断片及びORF5断片の融合抗原、又はPRRSV病原体及びPCV2病原体由来の抗原性タンパク質の融合物。
【0061】
エピトープは抗原の一部分である。保護エピトープは、このエピトープが、抗体と結合するときに、抗体の機能に悪影響を及ぼすことなく抗体の機能を助けることを意味する。
【0062】
中和エピトープ(neutralizing or neutralization epitopes)の存在は、予防ワクチンの構造的基礎である。中和エピトープは、ウイルスの細胞付着/侵入に重要である。
【0063】
本明細書で使用されるように、「ブタ生殖器呼吸器症候群ウイルス(PRRSV)ORF7抗原」は、PRRSV ORF7の一部から選択されるペプチドであり、保護エピトープを含む。
【0064】
本明細書で使用されるように、「PRRSV ORF1b抗原」は、PRRSV ORF1bの一部から選択されるペプチドであり、保護エピトープを含む。
【0065】
本明細書で使用されるように、「PRRSV ORF6抗原」は、PRRSV ORF6の一部から選択されるペプチドであり、保護エピトープを含む。
【0066】
本明細書で使用されるように、「PRRSV ORF5抗原」は、PRRSV ORF5の一部から選択されるペプチドであり、保護エピトープを含む。
【0067】
用語「PRRSFREE」は、4種類の融合タンパク質である、PE407−M−K3、PE407−P−K3、PE407−R−K3、及びPE407−D−K3を含むワクチン組成物を指す。
【0068】
用語「M12」及び「M」は交換可能である。本明細書で使用される用語「M12」は、PRRSV NSP 10(C末端ドメイン配列)及びNSP 11(N末端ドメイン配列)を融合して得られる融合抗原を指す。
【0069】
用語「PQAB」及び「P」は交換可能である。本明細書で使用される用語「P」は、ORF6配列とORF5配列との間に架橋/リンカー配列を有しない、PRRSV ORF6のN末端部及びORF5のN末端部を融合して得られる融合抗原を指す。
【0070】
用語「RSAB」及び「R」は交換可能である。本明細書で使用される用語「R」は、ORF6配列とORF5配列との間に架橋/リンカー配列を有しない、PRRSV ORF6のN末端部及びORF5のN末端部を融合して得られる融合抗原を指す。
【0071】
用語「DGD」及び「D」は交換可能である。本明細書で使用される用語「D」は、PRRSV ORF7のC末端部の2回の反復を含む抗原を指す。
【0072】
用語「治療する(treating)」又は「治療(treatment)」は、有効量の融合タンパク質を、それを必要とする被験体(この被験体は、がん又は感染を有するか、又はそのような疾患の症状又は素因を有する)に、疾患、その症状、又はその素因を治癒、軽減、緩和、矯正、改善、又は防止する目的で、投与することを指す。このような被験体は、任意の適切な診断方法の結果に基づいて、医療従事者によって同定されることができる。
【0073】
用語「有効量」は、治療される被験体に治療的効果を与えるために必要とされる活性化合物の量を指す。当業者によって認識されるように、投与の経路、添加剤の使用、及び他の治療との併用の可能性に応じて、有効投与量は変化するだろう。
【実施例】
【0074】
本発明の範囲を限定しようとするものではないが、本発明の実施形態に係る例示的な器具、装置、方法及びそれらに関連する結果を以下に示す。実施例において、タイトル又はサブタイトルが、読者の便宜のために使用される可能性があり、これは、決して本発明の範囲を限定するものではないことに留意されたい。さらに、ある特定の理論が、本明細書において提案及び開示される。しかしながら、それらの理論が正しくても間違っていても、いかなる特定の理論又は行動のスキームにも関係なく、本発明が本発明にしたがって実施される限り、それらの理論は決して、本発明の範囲を限定するものではない。
【0075】
<方法>
【0076】
<融合抗原DRMP及びMDPRの合成>
【0077】
融合抗原DRMP(配列番号:52)、MDPR(配列番号:53)及びPCV2 ORF2抗原(配列番号:20)をコードするDNA配列をそれぞれ合成し、さらにプラスミドpTAC−2−PE313−NESK又はpTAC−2−RAP1−PEt268−313−K3にクローニングした。合成された全ての配列を、E.coli培養に最適化した。それぞれのフォワードプライマー及びリバースプライマーを、DRMP又はMDPRのDNA増幅のためのPCRにおいて使用した。増幅したDNA断片をEcoRI及びXhoIによって消化し、次いで示されるベクターにライゲーションした。融合タンパク質PE313−PCV2−NESKも同様の方法でクローニングした。
【0078】
表1は、プラスミドへのクローニングのために使用されるフォワードプライマー及びリバースプライマーの配列を示す。ボールド体の文字はEcoRI切断部位を示す;イタリック文字はSalI切断部位を示す;イタリック且つボールド体の文字はXhoI切断部位を示す;下線の付された文字は抗原配列を示す。
【0079】
【表1】
【0080】
<例1 発現ベクターの構築>
【0081】
図1Aは、PEが3つのドメイン(I、II、及びIII)を含むことを示す。PE407は、PEのa.a.1〜a.a407の領域である。PE407は、細胞傷害性ドメインIIIを含まず、したがって、ドメインI及びIIを含む。PE313は、PEのa.a.1〜a.a.313の領域である。したがって、PE313は、PEのドメインIa及びドメインIIの部分N末端領域のみを含む。
【0082】
図1B−Cは発現ベクターの構築を示し、これらのそれぞれは、抗原提示細胞(APC)結合ドメイン、トランスロケーションペプチド、抗原、核輸送シグナル(NES)(これは、下のパネルでは存在し、上のパネルでは存在しない)、及び小胞体(ER)保持配列(上のパネルではK3、下のパネルではK)を含み、ER保持配列が融合タンパク質のC末端に位置している。プラスミドであるpTac−2−PE313−NESK、pTac−2−PE407−K3、pTac−2−RAP1−PE268−313−NESK及びpTac−2−RAP1−PE268−313−K3は、以下のように生成した:NdeIPE313(EcoRI、XhoI)−NESKXhoINdeIPE407(EcoRI、XhoI)−K3XhoINdeIRAP1−(EcoRI)−PE268−313(EcoRI、XhoI)−NESKXhoI及びNdeIRAP1−(EcoRI)−PE268−313(EcoRI、XhoI)−K3XhoI断片を、PCR法によって合成し、次いでカナマイシン抵抗性遺伝子を有するpUC18主鎖にライゲーションして、それぞれのプラスミドを得た。
【0083】
次いで、関心の対象となる病原体の抗原又は融合抗原をコードする標的DNAを上述のプラスミドに挿入すると、融合タンパク質の発現のための発現ベクターを生成することができる。例えば、ブタサーコウイルスタイプ2(PCV2)ORF2(配列番号:20)の抗原をコードするDNA断片を合成し、プラスミドpTac−2−PE313−NESKに挿入して、発現ベクターPE313−PCV2−NESK(図1F)を生成した。
【0084】
以下の標的DNA断片を合成した。
(i)PRRSV ORF7のC末端部の2回の反復を含む抗原をコードする標的DNA。この抗原は、「DGD」又は「D」と呼ばれる。
(ii)PRRSV NSP 10(C末端ドメイン配列)及びNSP 11(N末端ドメイン配列)を融合して得られる融合抗原をコードする標的DNA。この抗原は、「M12」又は「M」と呼ばれる。
(iii)ORF6配列とORF5配列との間に架橋/リンカー配列を有しない、PRRSV ORF6のN末端部及びORF5のN末端部を融合して得られる融合抗原をコードする標的DNA。この抗原は、「RSAB」又は「R」と呼ばれる。
(iv)ORF6配列とORF5配列との間に架橋/リンカー配列を有しない、PRRSV ORF6のN末端部及びORF5のN末端部を融合して得られる融合抗原をコードする標的DNA。この抗原は、「PQAB」又は「P」と呼ばれる。
【0085】
上記の標的DNA断片を、図1Bの上のパネルに示されるプラスミドに挿入して、融合タンパク質PE407−M−K3、PE407−P−K3、PE407−R−K3、及びPE407−D−K3をそれぞれ生成した(図1D)。
【0086】
4種類の上述の抗原D、R、M、及びPのすべてを含む融合抗原(DRMP、MDPR、など)をコードする標的DNA断片を合成し、プラスミドpTac−2−PE313−NESKに挿入して、融合タンパク質PE−DRMP−NESK(図1E)(これは「PRRSFREE 4−in−1」とも呼ばれる)を発現する発現ベクターを生成した。
【0087】
<例2 タンパク質発現>
【0088】
融合タンパク質の発現のためのプラスミドを内部に持つE. coli BL21細胞を、25ppmのカナマイシンを含有するルリアベルターニ培地中で、37℃でそれぞれ培養した。培養が初期対数期(A600=0.1〜0.4)に達すると、誘導のために、イソプロピル−1−チオ−β−D−ガラクトピラノシド(IPTG)を0.5〜2mMの最終濃度で添加した。細胞を誘導4時間後に採取し、−70℃で直ちに保存した。融合タンパク質を、既述の(Liao et al., 1995. Appl. Microbiol. Biotechnol. 43: 498-507)尿素抽出によって精製し、次いで、4℃で一晩の、50X体積のTNEバッファー(50mM トリス、50mM NaCl及び1mM EDTA)に対する透析法によって、リフォールディングした。リフォールディングされたタンパク質をSDS−PAGE分析に供し、Bradfordタンパク質アッセイキット(Pierce)を使用して定量分析を実施した。この結果は、リフォールディングされたタンパク質のほとんどが、非還元条件下ではモノマーであることを示した。これは、融合タンパク質が容易にリフォールディングされ、凝集されなかったことを示す。
【0089】
<例3 PRRSVサブユニットワクチン免疫原性アッセイ>
【0090】
マウスに、30μg/ショットのPRRSFREE 4−in−1又はPRRSFREE及びISA206アジュバントを含む、200μlのPRRSVサブユニットワクチンを、皮下注射により、1週間に1回を2週間、ワクチン接種した。コントロール群(プラセボ)にはPBSを注射した。
【0091】
最後の免疫化の14日後に全てのマウスを屠殺し、脾臓を採取した。脾細胞を単離し、刺激剤組換え抗原タンパク質の有り無しで、37℃で72時間、96穴プレート(10細胞/100μl/ウェル)で培養した。免疫化で使用したワクチンに応じて、抗原特異的細胞媒介性免疫応答を検出するために使用した刺激剤組換え抗原タンパク質は、PRRSFREE抗原、PRRSFREE−4−in−oneキメラ融合抗原、又はPCV2 ORF2抗原であった。細胞培養上清を回収し、上清中のインターフェロン−ガンマ(IFN−γ)を、IFN−γマウス抗体ペア(Invitrogen)によって測定した。
【0092】
免疫化に使用したワクチンに応じて、体液性免疫応答を検出するために、PRRSFREE抗原、又はPRRSFREE 4−in−one融合抗原、又はPCV2 ORF2抗原をELISAプレートにコーティングした。コーティングの後、プレートを洗浄し、ブロッキングした後で、希釈されたマウス血清を添加した。次いでプレートを洗浄し、HRPコンジュゲート二次抗体でハイブリダイズし、その後TMB基質を添加した。反応を止めた後、結果をELISAリーダーによって検出した。
【0093】
<例4 細胞媒介性免疫応答(CMI)及び体液性免疫応答>
【0094】
図2Aは、ワクチン接種群のIFN−γ濃度が、コントロール群のものより高かったことを示している。このことは、ワクチン接種下でCMI応答が誘導されたことを示す。さらに、PRRSFREE 4−in−1ワクチンを投与された群のIFN−γ濃度は、PRRSFREE治療群より劇的に高かった。この結果は、1種類の単一の融合抗原で構成されたPRRSFREE 4−in−1ワクチンが、驚くべきことに、4種類の別個の抗原で構成されたPRRSFREEワクチンよりも強いCMI応答を誘導することができることを示す。
【0095】
図2Bは、ワクチン免疫化群がコントロール群よりも高い抗原特異的抗体価を有したことを示す。PRRSFREE 4−in−1ワクチンを接種したマウスは、PRRSFREEワクチンで免疫化した群よりも高い抗体価を有した。この結果は、PRRSFREE 4−in−1が、PRRSFREEワクチンよりも強い体液性免疫応答を誘導することができることを示す。
【0096】
図2A−Bのデータは、PRRSFREE 4−in−1(これは、D、M、P、及びR抗原の融合物を備える1種類の単一の融合抗原を含む融合タンパク質を含む)が、PRRSFREEワクチン(これは、4種類の個別の、別個の抗原を含み(すなわち、4種類の抗原M、M、P、Rが融合されていない)、各抗原はそれぞれの融合タンパク質にある)よりも強い細胞性及び体液性免疫応答を誘発することができることを示す。
【0097】
<例5 ブタサーコウイルスタイプ2(PCV2)ORF2サブユニットワクチンとの組み合わせワクチン>
【0098】
上述の免疫化スケジュールにしたがって、マウスに、PBS、PRRSFREE 4−in−oneプラスPE−PCV2−NESK、又はPRRSFREEプラスPE−PCV2−NESKコンボワクチンをワクチン接種した。PRRSFREE 4−in−oneプラスPE−PCV2−NESKコンボワクチンは、PE−DRMP−NESK(図1D)及びPE−PCV2−NESK(図1F)融合タンパク質を含む。PRRSFREEプラスPE−PCV2−NESKコンボワクチンは、5種類の別個の融合タンパク質:(1)PE−DGD−K3、PE−M12−K3、PE−PQAB−K3、PE−RSAB−K3(図1D)、及びPE−PCV2−NESK(図1F)を含む。
【0099】
<例6 PCV2 ORF2サブユニットワクチンとの組み合わせワクチン>
【0100】
図3Aは、PRRSV抗原特異的(PRRSFREE 4−in−1融合抗原、及びPRRSFREE抗原)CMI応答を示し、図3Bは、PCV2−ORF2特異的CMI応答を示す。このデータは、PRRSFREE 4−in−1融合抗原及びPCV2 ORF2サブユニットワクチンの組み合わせで免疫化したマウス群が、PRRSFREE(4種類の別個の抗原)及びPCV2 ORF2サブユニットワクチンの組み合わせで免疫化したマウス群よりも強いCMI応答を示したことを示す。
【0101】
図4Aは、PRRSV抗原特異的抗体応答を示す。ELISA法を使用して抗原特異的抗体価を測定した。PE−DRMP−NESK及びPE−PCV2−NESKの組み合わせ(すなわち、2種類の融合タンパク質)で治療した群については、融合抗原DRMPを使用して抗原特異的抗体価を測定した。PRRSFREE及びPE−PCV2−NESKの組み合わせ(すなわち、5種類の融合タンパク質)で治療した群については、4種類の抗原D、R、M、及びPを使用して抗原特異的抗体価を測定した。このデータは、PRRSFREE 4−in−1融合抗原及びPCV2 ORF2サブユニットワクチンの組み合わせで免疫化したマウス群が、PRRSFREE(4種類の別個の抗原)及びPCV2 ORF2サブユニットワクチンの組み合わせで免疫化したマウス群よりも強いPRRSFREE 4−in−1融合抗原特異的体液性応答を示したことを示す(図4A)。
【0102】
図4Bは、PCV2−ORF2抗原特異的抗体応答を示す。驚くべきことに、PRRSFREE(4種類の別個の抗原)及びPCV2 ORF2サブユニットワクチン(PE−PCV2−NESK)の組み合わせで免疫化されたマウスは、PRRSFREE 4−in−1融合抗原(PE−DRMP−NESK)及びPCV2 ORF2サブユニットワクチン(PE−PCV2−NESK)の組み合わせで免疫化された群よりも高いPCV2特異的抗体価を有した。この結果は、これら2種類のPRRSV/PCV2コンボワクチンの間で、PRRSV抗原特異的体液性免疫応答及びPCV2特異的体液性免疫応答に差異があったことを示す。
【0103】
CMI応答及び体液性免疫応答の誘導において、両方のアプローチが有効であることは明らかである。2種類の融合タンパク質(PE−DRMP−NESK及びPE−PCV2−NESK)を含むPRRSV/PCV2コンボワクチンは、試験した4つの免疫応答のうち3つにおいて、より良好な効能を示す。この研究は、PRRSVキメラ融合抗原及びPCV2 ORF2抗原で構成されたPRRSV/PCV2コンボワクチンが、5種類の個別の抗原で構成されたものよりも良い選択であることを示す。それでもなお、両方のアプローチが、動物において免疫応答を誘導するのに有用である。
【0104】
<例7 2種類の抗原の融合物対4種類の抗原の融合物>
【0105】
3群の6週齢メスC57BL/6マウス(1群あたり3匹のマウス)に、毎週の間隔で3回、(1)15μgのPE−DR−NESKタンパク質、(2)15μgのPE−DR−NESKタンパク質及び15μgのPE−MP−NESKタンパク質の組み合わせ、又は(3)30μgのPE−DRMP−NESK(200μlの50%ISA206中)を、皮下注射した。最後の免疫化の1週間後にマウスを殺し、脾細胞を採取した。脾細胞を4種類のPRRSV抗原(M12、DgD、PQAB及びRSAB、それぞれ2.5μg/ml)で72時間刺激し、ELISAキットを使用して各群の無細胞上清中のIFN−γを検出した。図5は、PE−DRMP−NESKで免疫化されたマウスが、3群の中で最も大きいCMI応答を示したことを示す。
【0106】
<例8 ブタにおける細胞媒介性免疫性>
【0107】
5週齢のSPFブタ(1群あたり2−4匹のブタ)に、毎週の間隔で2回、以下のワクチンのうちの1つを筋肉内注射した:(1)PRRSFREE、(2)PE−DRMP−NESK、(3)PE−MDPR−NESK、(4)RAP1−PE268−313−DRMP−K3、(5)RAP1−PE268−313−MDPR−K3(2mlの50%ISA206中)、又は(6)プラセボとしてPBS。図6は、これらのワクチンの設計を示す。各注射中の抗原は、2mlの50%ISA206中に300μgであった。ワクチン接種したブタの末梢血単核細胞(PBMC)を、最後の免疫化の3週間後に採取した。免疫化において使用したワクチンに応じて、PBMCを、PRRSFREE抗原(M12、DgD、PQAB及びRSAB、それぞれ2.5ug/ml)、PE−DRMP−NESK、PE−MDPR−NESK、RAP1−PE268−313−DRMP−K3、又はRAP1−PE268−313−MDPR−K3で72時間刺激し、次いでELISAキットを使用して、各群の無細胞上清中のIFN−γを検出した。図7は、刺激の後に、ワクチン接種したブタのPBMCによって分泌されたIFN−γを示す。融合抗原を含むワクチンが、プラセボ群よりも高いIFN−γ分泌を誘導することができたことが観察された。
【0108】
<例9 ブタにおけるウイルス血症研究>
【0109】
5週齢のSPFブタ(1群あたり2−4匹のブタ)に、毎週の間隔で2回、以下のワクチンのうちの1つを筋肉内注射した:(1)PRRSFREE、(2)PE−DRMP−NESK、(3)PE−MDPR−NESK、(4)RAP1−PE268−313−DRMP−K3、(5)RAP1−PE268−313−MDPR−K3(2mlの50%ISA206中)、又は(6)プラセボとしてPBS。各注射中の抗原は、2mlの50%ISA206中に300μgであった。ワクチン接種したブタに、最後の免疫化の3週間後に、2 x 10 TCID50のPRRSVを鼻腔内投与した。血液サンプルを毎週回収した。ウイルスRNAを血清から抽出し、ワンステップSyBR GreenリアルタイムPCRを使用して定量化して、ウイルス血症のレベルを測定した。この実験結果は、融合抗原を含むワクチンがウイルス量を低減することができたことを示した。
【0110】
表2は、様々な融合タンパク質を作製するために使用されるペプチドの配列番号を示す。
【0111】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【0112】
*:PE268−313は、完全長PEのa.a.268−a.a.313である;PE313は、完全長PEのa.a.1−a.a.313である;PE407は、完全長PEのa.a.1−a.a.407である。
**:ボールド体の文字は、人工核輸送シグナルのアミノ酸配列を表す;下線の付された文字は、小胞体保持シグナルのアミノ酸配列を表す。
***:M(M12)は、PRRSV NSP 10(C末端ドメイン配列)及びNSP 11(N末端ドメイン配列)の融合によって調製された融合ポリペプチドである。すなわち、このポリペプチドは、非構造タンパク質であるORF1b NSP 10 C末端部及びNSP 11 N末端部に由来する。
****:P(PQAB)は、PRRSV ORF6 a.a.2−a.a.26及びORF5 aa31−aa63の融合によって調製されたポリペプチドである。米国特許第7465455号を参照。普通の文字で示される配列はPRRSV ORF6/マトリクスタンパク質配列に由来し、ボールド体の文字で示される配列はPRRSV ORF5配列に由来する。PRRSVのORF5によってコードされる主要なエンベロープタンパク質(GP5)は、ウイルス中和(VN)抗体及びPRRSVの異なる株間の交差防御の誘導において、決定的役割を有する。異なる株間には配列変異があるため、本明細書中の配列は、例示の目的で開示される。
【0113】
本発明は、図示された特定の形態に限定されず、本発明の精神及び範囲から逸脱しない全ての改変が、添付の特許請求の範囲に規定される範囲内にある。企図される特定の用途に適するように様々な改変をして、本発明及び様々な実施形態を当業者が利用することができるように、本発明の原理及びその実際の適用を説明する目的で、実施形態及び実施例は選択及び記載された。本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、別の実施形態が、本発明に関する分野の当業者には明らかになるであろう。特許、特許出願及び様々な刊行物を含み得る、いくつかの参考文献が、本発明の説明において引用され、論じられている。そのような参考文献の引用及び/又は議論は、単に本発明の説明を明確にするために提供されるものであり、そのような参照が本明細書に記載された発明の「先行技術」であることを認めるものではない。本明細書で引用され論じられたすべての参考文献は、各参考文献が参照により個別に組み込まれた場合と同じ程度に、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]