(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらにポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル(C1)、多価アルコールアルキレンオキサイド付加物の脂肪酸エステル(C2)、1価アルコールアルキレンオキサイド付加物(C3)及びヒドロキシル基を有する動植物油のアルキレンオキサイド付加物(C4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤成分(C)を含有する請求項1に記載の合成繊維用処理剤。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の合成繊維用処理剤は、下記一般式(1)で表される化合物(A)を含有する合成繊維用処理剤であって、酸価が0.2〜10mgKOH/gであり、灰分が0.01〜0.5重量%である合成繊維用処理剤である。
R
1O−CO−(CH
2)
m−S−(CH
2)
n−CO−OR
2 (1)
上記一般式(1)中、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数1〜32のモノアルコール(B1)からヒドロキシル基を除いた残基又は(B1)のアルキレンオキサイド付加物(B2)からヒドロキシル基を除いた残基であり、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数を表す。
【0010】
一般式(1)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立に炭素数1〜32のモノアルコール(B1)からヒドロキシル基を除いた残基又は(B1)のアルキレンオキサイド付加物(B2)からヒドロキシル基を除いた残基である。
モノアルコール(B1)としては、例えば、メタノール、エタノール、炭素数3〜7の直鎖又は分岐のモノアルコール{プロパノール及びブタノール等}、炭素数8〜32の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐のモノアルコール{オクチルアルコール、2−エチルヘキシルアルコール、デシルアルコール、ラウリルアルコール、トリデシルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソステアリルアルコール、オレイルアルコール及びベヘニルアルコール等の天然アルコール並びにチーグラー法アルコール、オキソ法アルコール及びセカンダリーアルコール等の合成アルコール等}等が挙げられる。
これらのうち、断糸及び毛羽を防止する観点から、炭素数11〜32の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐のモノアルコールが好ましく、さらに好ましくは炭素数20〜32の直鎖又は分岐のモノアルコールである。
【0011】
アルキレンオキサイド付加物(B2)としては、上記(B1)のヒドロキシル基にアルキレンオキサイド(以下において、AOと略記する)が付加したものが含まれる。
(B2)における(B1)として、断糸及び毛羽を防止する観点から、炭素数1〜20のモノアルコールが好ましく、さらに好ましくは炭素数11〜20の飽和又は不飽和の直鎖又は分岐のモノアルコールである。
【0012】
AOとしては、炭素数2〜4のものが含まれ、具体的には、エチレンオキサイド、1,2−又は1,3−プロピレンオキサイド、1,2−、1,3−又は1,4−ブチレンオキサイド等が挙げられる。
これらのうち、平滑性の観点から、エチレンオキサイド(以下においてEOと略記することがある)及び1,2−プロピレンオキサイド(以下においてPOと略記することがある)が好ましく、さらに好ましくはエチレンオキサイドである。
AOの平均付加モル数は、耐熱性の観点から、1〜20が好ましく、さらに好ましくは1〜10である。
【0013】
化合物(A)の含有量は、合成繊維用処理剤の重量を基準として、断糸及び毛羽を防止する観点から、5〜70重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜60重量%である。
【0014】
化合物(A)は、公知の化合物であり、種々の方法で製造できる。例えば、炭素数2〜22の含硫黄脂肪族ジカルボン酸{チオジ酢酸、3,3’−チオジプロピオン酸、4,4’−チオジ酪酸、5,5’−チオジ吉草酸、6,6’−チオジヘキサン酸、8,8’−チオジオクタン酸及び10,10’−チオジデカン酸等}又はその低級アルキルエステルと(B1)又は(B2)とを反応させることによって得られる。(A)を製造した際、含硫黄脂肪族ジカルボン酸のカルボキシル基の一部が未反応で残存することにより酸価が生じたり、反応触媒等が残存することにより灰分が生じる。
反応条件としては、温度を165℃〜170℃、減圧度を2.7〜4kPaとすることで、(A)の酸価をより低く調整することが可能である。また、含硫黄脂肪族ジカルボン酸におけるカルボキシル基と(B1)又は(B2)におけるヒドロキシル基との比率(COOH/OH)を1より小さくすることにより酸価をより低く調整することが可能である。
また、反応後にケイ酸マグネシウム及びケイ酸アルミニウム等の吸着剤を用いて85〜105℃で処理し、ケイ酸アルミニウムや珪藻土を通して濾過することで、(A)の灰分をより低く調整することが可能である。
【0015】
一般式(1)において、m及びnはそれぞれ独立に1〜10の整数であり、断糸及び毛羽を防止する観点から、1〜5が好ましく、さらに好ましくは2である。
【0016】
本発明の合成繊維用処理剤は、酸価が0.2〜10mgKOH/gであり、油膜強度、発煙低減並びに断糸及び毛羽を防止する観点から、0.2〜8mgKOH/gが好ましく、さらに好ましくは0.2〜5mgKOH/gであり、最も好ましくは1.1〜1.4mgKOH/gである。
酸価が0.2mgKOH/g未満であると、処理剤の油膜強度が低下し、延伸ローラー上での断糸及び毛羽が多くなる。酸価が10mgKOH/gより大きいと、紡糸工程での発煙量が多くなる。
酸価は化合物(A)及び乳化剤成分(C)製造時の反応時間、仕込み比及び温度等を調整することで好ましい範囲に調整が可能である。例えば、化合物(A)を製造(エステル化反応)する際のカルボン酸化合物に対するアルコール化合物の比率を大きくすれば、カルボン酸化合物中のカルボン酸がエステル化される割合が高くなり、酸価は小さくなる。
なお、本発明において酸価は、JIS K 0070に準じて測定される値である。
【0017】
本発明の合成繊維用処理剤は、灰分が0.01〜0.5重量%であり、タールの硬さ並びに長時間紡糸した場合における断糸及び毛羽を防止する観点から、0.01〜0.4重量%が好ましく、さらに好ましくは0.01〜0.3重量%である。
灰分が0.01重量%未満であると、延伸ローラー上で発生するタールが固くなり断糸及び毛羽が増加する。また、灰分が0.5重量%より大きいと、延伸ローラー上に堆積するスカムが多くなり、張力変動が大きくなるため長時間紡糸した場合における断糸及び毛羽が増加する。
灰分は合成繊維用処理剤中の無機物の含有量を増加することで大きくすることができる。また、灰分は合成繊維用処理剤中の無機物の含有量を低減することで小さくすることができる。また、合成繊維用処理剤を構成する各成分(化合物(A)、必要により乳化剤成分(C)等)の触媒残渣を濾過処理及び水洗等で取り除くことで低減することができる。
なお、本発明において灰分は、JIS K 0067に準じて測定される値である。
【0018】
本発明の合成繊維用処理剤には、ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル(C1)、多価アルコールAO付加物の脂肪酸エステル(C2)、1価アルコールAO付加物(C3)及びヒドロキシル基を有する動植物油のAO付加物(C4)からなる群より選ばれる少なくとも1種の乳化剤成分(C)を含有してもよい。
乳化剤成分(C)は繊維製造工程後に繊維から合成繊維用処理剤を水で洗い落しやすくするために用いられる。
【0019】
ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル(C1)としては、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した重量平均分子量(以下、Mwと略記する)が200〜1,000のポリアルキレングリコール(アルキレングリコールとしては炭素数2〜3のものが含まれ、具体的にはポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコール等)と、炭素数8〜18の脂肪族カルボン酸[脂肪族飽和カルボン酸(カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)並びに動植物油脂肪酸(ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸等)等]とのエステル化物等が挙げられる。
具体的には、ポリエチレングリコール(Mw:200)のヤシ油脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール(Mw:400)のラウリン酸エステル、ポリエチレングリコール(Mw:600)のカプリン酸エステル、ポリエチレングリコール(Mw:1000)の2−エチルヘキサン酸エステル及びポリプロピレングリコール(Mw:400)のヤシ油脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0020】
ポリアルキレングリコールの脂肪酸エステル(C1)のMwは、GPCを用いて以下の条件で測定することができる。
<Mwの測定条件>
機種:HLC−8120[東ソー(株)製]
カラム:TSK gel SuperH4000
TSK gel SuperH3000
TSK gel SuperH2000
[いずれも東ソー(株)製]
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.6ml/分
試料濃度:0.25重量%
注入量:10μl
標準:ポリオキシエチレングリコール
[東ソー(株)製;TSK STANDARDPOLYETHYLENE OXIDE]データ処理装置:SC−8020[東ソー(株)製]
【0021】
多価アルコールAO付加物の脂肪酸エステル(C2)としては、炭素数3〜6の脂肪族多価(2〜6価)アルコール[炭素数4〜6の脂肪族2価アルコール(1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等)、炭素数3〜6の脂肪族3〜6価アルコール(グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール及びソルビタン等)]の炭素数2〜12のAO(好ましくは前記(B2)と同様のものが挙げられる)付加物と、炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸[脂肪族飽和モノカルボン酸(カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、動植物油脂肪酸(ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸及び硬化牛脂脂肪酸等)]とのエステル化物等が挙げられる。
AOの平均付加モル数は、合成繊維用処理剤の乳化性の観点から、1〜80が好ましく、さらに好ましくは5〜50である。
具体的には、1,4−ブタンジオールEO20モル付加物のステアリン酸モノ又はジエステル、ネオペンチルグリコールEO25モル付加物の硬化牛脂脂肪酸モノ又はジエステル、トリメチロールプロパンEO24モル付加物のラウリン酸モノ、ジ又はトリエステル、トリメチロールプロパンEO24モル付加物のステアリン酸モノ、ジ又はトリエステル、ペンタエリスリトールEO20モル付加物のヤシ油脂肪酸モノ、ジ、トリ又はテトラエステル及びソルビタンEO20モル付加物のパーム油脂肪酸モノ、ジ、トリ又はテトラエステル等が挙げられる。
(C2)としては、合成繊維用処理剤の乳化性の観点から、トリメチロールプロパンEO付加物の脂肪酸エステル及びソルビタンEO付加物の脂肪酸エステルが好ましい。
【0022】
多価アルコールAO付加物の脂肪酸エステル(C2)は公知の化合物であり、種々の方法で製造できる。例えば、上記多価アルコールAO付加物と上記脂肪酸とを触媒の存在下でエステル化反応させることにより製造することができる。(C2)を製造した際、脂肪酸のカルボキシル基の一部が未反応で残存することにより酸価が生じたり、反応触媒等が残存することにより灰分が生じる。(C2)を用いる場合は、合成繊維用処理剤の酸価及び灰分を上記範囲とするために、下記の方法により酸価及び灰分を調整することが好ましい。
酸価の調整方法として、反応条件としては、温度を165℃〜170℃、減圧度を2.7〜4kPaとすることで、(C2)の酸価をより低く調整することが可能である。また、脂肪酸におけるカルボキシル基と多価アルコールAO付加物におけるヒドロキシル基との比率(COOH/OH)を1より小さくすることにより酸価をより低く調整することが可能である。
また、灰分の調整方法として、エステル化反応後にケイ酸マグネシウム及びケイ酸アルミニウム等の吸着剤を用いて85〜105℃で処理し、ケイ酸アルミニウムや珪藻土を通して濾過することで、(C2)の灰分をより低く調整することが可能である。
【0023】
1価アルコールAO付加物(C3)としては、例えば、炭素数4〜26の直鎖又は分岐アルキルの1価アルコール(ブタノール、ヘキサノール、オクタノール、2−エチルヘキサノール、デカノール、イソデカノール、分岐デカノール、ウンデカノール、イソウンデカノール、分岐ウンデカノール、ドデカノール、イソドデカノール、分岐ドデカノール、トリデカノール、イソトリデカノール、分岐トリデカノール、テトラデカノール、分岐テトラデカノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール、イソオクタデカノール、分岐オクタデカノール、2−オクチルデカノール、2−デシルドデカノール、2−デシルテトラデカノール、2−デシルペンタデカノール、2−ウンデシルテトラデカノール及び2−ウンデシルペンタデカノール等)の炭素数2〜12のAO(好ましくは前記(B2)と同様のものが挙げられる)付加物が挙げられる。
AOの平均付加モル数は、合成繊維用処理剤の乳化性の観点から、1〜80が好ましく、さらに好ましくは5〜50である。
具体的には、n−ブタノールのEO11モル付加物、n−ヘキサノールのEO9モル付加物、n−オクタノールのEO11モル付加物、2−エチルヘキサノールのEO12モル付加物、イソデシルアルコールのEO8モル付加物、n−ブタノールのEO42モル付加物、2−エチルヘキサノールのEO40モル付加物、イソデシルアルコールのEO38モル付加物、ドデカノールのEO12モル付加物、分岐ドデカノールのEO5モル付加物、
トリデカノールのEO13モル付加物、分岐トリデカノールのEO5モル付加物、テトラデカノールのEO12モル付加物、分岐テトラデカノールのEO5モル付加物、オクタデカノールのEO13モル付加物、分岐オクタデカノールのEO12モル付加物、2−オクチルデカノールのEO15モル付加物、2−デシルテトラデカノールのEO13モル付加物、2−デシルペンタデカノールのEO13モル付加物、2−ウンデシルテトラデカノールのEO13モル付加物、2−ウンデシルペンタデカノールのEO13モル付加物、n−ブタノールのEO11モル・PO8モルランダム付加物、n−ヘキサノールのEO9モル・PO7モルランダム付加物、n−オクタノールのEO11モル・PO9モルランダム付加物、2−エチルヘキサノールのEO12モル・BO9モルランダム付加物、イソデシルアルコールのEO8モル・THF6モルランダム付加物、n−ブタノールのEO42モル・PO32モルランダム付加物、2−エチルヘキサノールのEO40モル・PO30モルランダム付加物、イソデシルアルコールのEO38モル・PO28モルランダム付加物、ドデカノールのEO12モル・PO8モルランダム付加物、トリデカノールのEO13モル・PO7モルランダム付加物、分岐トリデカノールのEO12モル・PO9モルランダム付加物、オクタデカノールのEO13モル・PO9モルランダム付加物、分岐オクタデカノールのEO12モル・PO7モルランダム付加物、2−オクチルデカノールのEO15モル・PO10モルランダム付加物、2−デシルテトラデカノールのEO13モル・PO9モルランダム付加物、2−デシルペンタデカノールのEO13モル・PO9モルランダム付加物、2−ウンデシルテトラデカノールのEO13モル・PO9モルランダム付加物、2−ウンデシルペンタデカノールのEO13モル・PO9モルランダム付加物、n−ブタノールのPO17モル・EO15モルブロック付加物、n−ヘキサノールのPO16モル・EO14モルブロック付加物、n−オクタノールのPO15モル・EO13モルブロック付加物、2−エチルヘキサノールのPO15モル・EO13モルブロック付加物、2−エチルヘキサノールのPO20モル・EO9モルブロック付加物、デシルアルコールのPO15モル・EO12モルブロック付加物、イソデシルアルコールのPO18モル・EO7モルブロック付加物、ドデカノールのEO12モル・PO8モルブロック付加物、トリデカノールのEO13モル・PO7モルブロック付加物、分岐トリデカノールのEO12モル・PO9モルブロック付加物、オクタデカノールのEO13モル・PO9モルブロック付加物、分岐オクタデカノールのEO12モル・PO7モルブロック付加物、2−オクチルデカノールのEO15モル・PO10モルブロック付加物、2−デシルテトラデカノールのEO13モル・PO9モルブロック付加物、2−デシルペンタデカノールのEO13モル・PO9モルブロック付加物、2−ウンデシルテトラデカノールのEO13モル・PO9モルブロック付加物及び2−ウンデシルペンタデカノールのEO13モル・PO9モルブロック付加物等が挙げられる。
(C3)としては、合成繊維用処理剤の乳化性の観点から、炭素数6〜20の1価アルコールAO付加物が好ましく、さらに好ましくは付加するAOの内、少なくとも1モル以上がEOである炭素数6〜20の1価アルコールAO付加物である。
【0024】
ヒドロキシル基を有する動植物油のAO付加物(C4)としては、水酸基を有する動植物油(硬化ヒマシ油等)の炭素数2〜12のAOの付加物等が挙げられる。
具体的には、硬化ヒマシ油のEO10モル付加物及び硬化ヒマシ油のEO25モル付加物等が挙げられる。
(C4)としては、合成繊維用処理剤の乳化性の観点から、硬化ヒマシ油のEO付加物が好ましく、さらに好ましくは硬化ヒマシ油のEO10〜50モル付加物である。
【0025】
乳化剤成分(C)としては、1種を用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
乳化剤成分(C)のうち、合成繊維用処理剤の乳化性の観点から、多価アルコールAO付加物の脂肪酸エステル(C2)、1価アルコールAO付加物(C3)及び水酸基を有する動植物油のAO付加物(C4)からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましく、さらに好ましくは1価アルコールAO付加物(C3)及び水酸基を有する動植物油のAO付加物(C4)からなる群より選ばれる少なくとも1種である。
【0026】
乳化剤成分(C)の含有量は、合成繊維用処理剤の重量を基準として、合成繊維用処理剤の乳化性を向上させる観点から、5〜50重量%が好ましく、さらに好ましくは18〜48重量%である。
【0027】
乳化剤成分(C)は公知の化合物であり、種々の方法で製造できる。例えば、1価アルコールにアルキレンオキサイドを付加させることによって(C3)を得ることができる。
また、乳化剤成分(C)を用いる場合は、合成繊維用処理剤の灰分を上記範囲とするために、公知の製造方法で製造し、反応後にケイ酸マグネシウムを用いて85〜105℃で処理し、ケイ酸アルミニウムを通して濾過することで、(C)の灰分を低く調整することが好ましい。
【0028】
本発明の合成繊維用処理剤には、さらに(A)及び(C)以外の脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル化物(D)を含有してもよい。(D)を含有すると、繊維に平滑性を付与し、紡糸時に繊維にかかる摩擦をより低減することができ、断糸及び毛羽を低減することができる。
【0029】
脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル化物(D)を構成する脂肪酸としては、炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数4〜24の脂肪族ジカルボン酸が含まれる。
炭素数8〜24の脂肪族モノカルボン酸として、具体的には、脂肪族飽和モノカルボン酸(カプリル酸、2−エチルヘキサン酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、トリデカン酸、イソトリデカン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸及びイソステアリン酸等)、脂肪族不飽和モノカルボン酸(オレイン酸、エライジン酸、リノール酸及びリノレン酸等)、動植物油脂肪酸(ヤシ油脂肪酸、パーム油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、硬化ヒマシ油脂肪酸、牛脂脂肪酸、硬化牛脂脂肪酸及び豚脂脂肪酸等)]が挙げられる。
炭素数4〜24の脂肪族ジカルボン酸としては、脂肪族飽和ジカルボン酸(コハク酸及びアジピン酸等)等が挙げられる。
【0030】
脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル化物(D)を構成する脂肪族アルコールとしては、以下のものが挙げられる。例えば、(x1)炭素数8〜32の脂肪族1価アルコール[脂肪族飽和1価アルコール(ラウリルアルコール、パルミチルアルコール、イソステアリルアルコール及び2−デシルテトラデカノール等)、脂肪族不飽和1価アルコール(オレイルアルコール等)];(x2)炭素数4〜24の脂肪族多価(好ましくは2〜6価)アルコール[脂肪族飽和2価アルコール(1,6−ヘキサンジオール及びネオペンチルグリコール等)及び脂肪族飽和3〜6価アルコール(トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール及びソルビトール等)等]等が挙げられる。
(D)としては、平滑性の観点から、脂肪族カルボン酸と脂肪族1〜4価アルコールとのエステル化物が好ましく、さらに好ましくは脂肪族カルボン酸と脂肪族1〜3価アルコールとのエステル化物である。
【0031】
脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル化物(D)は公知の化合物であり、種々の方法で製造できる。例えば、上記脂肪族アルコール{(x1)及び/又は(x2)}と上記脂肪酸とをエステル化反応させることにより製造することができる。(D)を製造した際、脂肪酸のカルボキシル基の一部が未反応で残存することにより酸価が生じたり、反応触媒等が残存することにより灰分が生じる。(D)を用いる場合は、合成繊維用処理剤の酸価及び灰分を上記範囲とするために、下記の方法により酸価及び灰分を調整することが好ましい。
酸価の調整方法として、反応条件としては、温度を165℃〜170℃、減圧度を2.7〜4kPaとすることで、(D)の酸価をより低く調整することが可能である。また、脂肪族カルボン酸におけるカルボキシル基と脂肪族アルコールにおけるヒドロキシル基との比率(COOH/OH)を1より小さくすることにより酸価をより低く調整することが可能である。
また、灰分の調整方法として、エステル化反応後にケイ酸マグネシウム及びケイ酸アルミニウム等の吸着剤を用いて85〜105℃で処理し、ケイ酸アルミニウムや珪藻土を通して濾過することで、(D)の灰分をより低く調整することが可能である。
【0032】
脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル化物(D)と化合物(A)との合計含有量は、合成繊維用処理剤の重量を基準として、断糸及び毛羽を防止する観点から、40〜85重量%が好ましく、さらに好ましくは50〜80重量%である。
【0033】
本発明の合成繊維用処理剤には、さらにシリコーンオイル(E)を含有してもよい。(E)を含有すると、より断糸及び毛羽を低減することができる。
(E)としては、置換基がメチル基やフェニル基のみであるストレートシリコンやその他置換基が導入された変性シリコーン等が含まれ、具体的には、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルオクチルシロキサン及びアルキル変性シリコーン等が挙げられる。
【0034】
シリコーンオイル(E)の含有量は、合成繊維用処理剤の重量を基準として、断糸及び毛羽を防止する観点から、0.01〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは0.05〜2重量%である。
【0035】
本発明の合成繊維用処理剤には、その性能を損なわない範囲でその他の公知成分(G)を含有することができる。
(G)としては、pH調整剤(水酸化ナトリウム及び水酸化カリウム等の金属アルカリ、アルキルアミン及びアルキルアミンのAO付加物等の有機アミン、オレイン酸等の有機酸等)、制電剤(脂肪酸石鹸等)、表面調整剤(ジメチルポリシロキサン及びアルキル変性シリコーン等)、紫外線吸収剤、酸化防止剤(イルガノックス245及びイルガノックス565等のヒンダードフェノール系酸化防止剤等)、粘度調整剤及び外観調整剤等が挙げられる。
その他の公知成分(G)の合計含有量は、合成繊維用処理剤の重量に基づいて、好ましくは10重量%以下である。
【0036】
本発明の合成繊維用処理剤の1重量%水希釈液のpHは、紡糸設備及び繊維加工設備の腐食防止の観点から、5〜9が好ましく、さらに好ましくは6〜8である。
なお、本発明においてpHは、JIS Z 8802に準拠して25℃で測定した値である。
【0037】
本発明の合成繊維用処理剤の粘度は、処理剤を繊維に均一に付着させる観点並びに断糸及び毛羽を防止する観点から、2〜60mPa・sが好ましく、さらに好ましくは5〜40mPa・sである。
粘度は、ウベローデ粘度計により測定した値である。
【0038】
本発明の合成繊維用処理剤の製造方法については特に制限がなく、種々の方法を用いることができる。例えば、化合物(A)と、必要により乳化剤成分(C)、脂肪族カルボン酸と脂肪族アルコールとのエステル化物(D)、シリコーンオイル(E)及びその他の公知成分(G)を常温(例えば25℃)又は必要により加熱(例えば30〜90℃)して均一に混合することにより得ることができる。各成分の配合順序、配合方法は特に限定されない。
【0039】
本発明の合成繊維用処理剤は、紡糸及び延伸時の発煙を低減し作業環境を向上させ、延伸ローラー上にできるタールが軟らかく、ローラーの汚染を抑制し、断糸及び毛羽の発生を低減することができるので、産業資材に用いられる合成繊維用処理剤として用いることができる。
【0040】
本発明の合成繊維の製造方法は、合成繊維の重量に基づいて、本発明の合成繊維用処理剤を、0.1〜3重量%となるよう合成繊維に付着させる工程を含む製造方法である。
合成繊維用処理剤の合成繊維への付着方法としては、公知の方法等が使用でき、ローラー又はガイド給油装置等を用いて、紡糸工程、延伸工程又は巻取り前に付与することができる。
本発明の合成繊維用処理剤の合成繊維に対する付着率は、製糸性及び後加工性の観点から、処理前の合成繊維の重量に基づいて、好ましくは0.5〜1重量%である。
【0041】
本発明の合成繊維の製造方法としては、本発明の合成繊維用処理剤を鉱物油(F)中に20〜90重量%の濃度で含有させた鉱物油溶液とし、該溶液を合成繊維に対し合成繊維用処理剤として0.1〜3重量%となるよう付着させることが好ましい。
【0042】
鉱物油(F)としては、25℃における動粘度が10〜3,000mm
2/sである鉱物油(例えば、25℃における動粘度が200cStである精製スピンドル油、25℃における動粘度が100cStである流動パラフィン等)等が挙げられる。
鉱物油溶液中の合成繊維用処理剤の含有量は、紡糸時の操業性の観点から、鉱物油溶液の重量を基準として、20〜90重量%が好ましい。
【0043】
本発明の合成繊維の製造方法においては、さらに熱延伸する工程を含むことができる。熱延伸する際の温度としては、繊維に熱を充分に伝達する観点並びに糸物性(強度、伸度及び熱収縮率等)を適正化する観点から、210〜260℃が好ましい。
【0044】
本発明において、合成繊維としては、産業資材に用いられる合成繊維が好ましく、さらに好ましくはエアバッグ用ナイロン繊維、シートベルト用繊維及びタイヤコード用繊維である。
【0045】
本発明の合成繊維用処理剤で処理された合成繊維(産業資材)は、シートベルト、タイヤコード及びエアバッグ等の用途に使用することができる。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されない。以下、部は重量部を意味する。
【0047】
<製造例1:(A1−1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、チオジプロピオン酸89g(0.5モル)、2−デシル−1−テトラデカノール367g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸アルミニウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード700SL」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル(A1−1)を得た。(A1−1)の酸価は1.5mgKOH/gであった。
【0048】
<製造例2:(A’1−1)の製造>
製造例1において、「ケイ酸アルミニウム1.5g」を加えず、さらに濾過を行わない以外は同様にして、2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル(A’1−1)を得た。(A’1−1)の酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0049】
<製造例3:(A’’1−1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、チオジプロピオン酸60g(0.33モル)、2−デシル−1−テトラデカノール367g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸アルミニウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード700SL」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル(A’’1−1)を得た。(A’’1−1)の酸価は0.1mgKOH/gであった。
【0050】
<製造例4:(A’’’1−1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、チオジプロピオン酸107g(0.60モル)、2−デシル−1−テトラデカノール367g(1.0モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、8時間、常圧で、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸アルミニウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード700SL」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル(A’’’1−1)を得た。(A’’’1−1)の酸価は19.5mgKOH/gであった。
【0051】
<製造例5:(A2−1)の製造>
製造例1において、「2−デシルテトラデカノール367g(1.0モル)」に代えて「ラウリルアルコールEO3モル付加物318g(1.0モル)」を用いる以外は同様にしてラウリルアルコールEO3モル付加物のチオジプロピオン酸ジエステル(A2−1)を得た。(A2−1)の酸価は1.5mgKOH/gであった。
【0052】
<製造例6:(A’2−1)の製造>
製造例5において、「ケイ酸アルミニウム1.5g」を加えず、さらに濾過を行わない以外は同様にして、ラウリルアルコールEO3モル付加物のチオジプロピオン酸ジエステル(A’2−1)を得た。(A’2−1)の酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0053】
<製造例7:(C2−1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ステアリン酸183g(0.64モル)、トリメチロールプロパンEO24モル付加物347g(0.29モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)1.5gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行いトリメチロールプロパンEO24モル付加物のステアリン酸ジエステル(C2−1)を得た。(C2−1)の酸価は1.5mgKOH/gであった。
【0054】
<製造例8:(C’2−1)の製造>
製造例7において、「ケイ酸マグネシウム1.5g」を加えず、さらに濾過を行わない以外は同様にして、トリメチロールプロパンEO24モル付加物のステアリン酸ジエステル(C’2−1)を得た。(C’2−1)の酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0055】
<製造例9:(C3−1)の製造>
乾燥したAOA反応槽に2−エチルヘキシルアルコール46g(0.35モル)、触媒である水酸化カリウム1.6gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後160℃まで昇温し、プロピレンオキサイド284g(4.9モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行った後、エチレンオキサイド194g(4.4モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)0.8gを加え80℃で30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い2−エチルヘキシルアルコールPO14モルEO12.5モル付加物(C3−1)を得た。
【0056】
<製造例10:(C3−2)の製造>
乾燥したAOA反応槽にステアリルアルコール306g(1.1モル)、触媒である水酸化カリウム5.3gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後160℃まで昇温し、混合したプロピレンオキサイド565g(9.7)/エチレンオキサイド565g(12.8モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行った後、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)1.6gを加え80℃で30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行いステアリルアルコールEO13モルPO10モル付加物(C3−2)を得た。
【0057】
<製造例11:(C4−1)の製造>
乾燥したAOA反応槽に硬化ひまし油280g(0.3モル)、触媒である水酸化カリウム3.4gを仕込み、減圧窒素置換を行った後、100℃まで昇温し、減圧度2.7kPaで90分間脱水を行った。脱水後160℃まで昇温し、エチレンオキサイド335g(7.6モル)を徐々に仕込み圧力0.5MPa(G)で反応を行った。圧力平衡となるまで熟成を行った後、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)1.6gを加え80℃で30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い硬化ヒマシ油EO25モル付加物(C4−1)を得た。
【0058】
<製造例12:(D1−1)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ステアリン酸193g(0.68モル)、2−オクチルドデカノール220g(0.74モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)1.0gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行い2−オクチルドデカノールのステアリン酸エステル(D1−1)を得た。(D1−1)の酸価は1.5mgKOH/gであった。
【0059】
<製造例13:(D’1−1)の製造>
製造例12において、「ケイ酸マグネシウム1.0g」を加えず、さらに濾過を行わない以外は同様にして、2−オクチルドデカノールのステアリン酸エステル(D’1−1)を得た。(D’1−1)の酸価は2.0mgKOH/gであった。
【0060】
<製造例14:(D1−2)の製造>
撹拌機、熱電対を備えた1リットルの四ツ口フラスコに、ラウリン酸422g(2.11モル)、トリメチロールプロパン100g(0.75モル)、エステル化触媒であるパラトルエンスルホン酸を0.5g、着色防止剤として50重量%次亜リン酸水溶液0.4gを仕込み、窒素雰囲気下、徐々に165℃まで昇温し、10時間、減圧度2.7kPaで、エステル化反応を行った。95℃まで冷却し、ケイ酸マグネシウム(協和化学工業(株)製、「キョーワード600S」)2.0gを加え、30分間撹拌した。その後、ろ紙(ろ紙NO.1、アドバンテック製)上に珪藻土を厚さ5mmで敷き、濾過を行いトリメチロールプロパンのラウリン酸トリエステル(D1−2)を得た。(D1−2)の酸価は1.5mgKOH/gであった。
【0061】
<実施例1〜13及び比較例1〜4>
各成分を表1に記載の配合重量部で配合し、実施例1〜13及び比較例1〜4の合成繊維用処理剤を調整した。
【0062】
【表1】
【0063】
なお、表1における各成分は以下の通りである。
(A1−1):製造例1で得た2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル
(A’1−1):製造例2で得た2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル
(A’’1−1):製造例3で得た2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル
(A’’’1−1):製造例4で得た2−デシル−1−テトラデカノールのチオジプロピオン酸ジエステル
(A2−1):製造例5で得たラウリルアルコールEO3モル付加物のチオジプロピオン酸ジエステル
(A’2−1):製造例6で得たラウリルアルコールEO3モル付加物のチオジプロピオン酸ジエステル
(C2−1):製造例7で得たトリメチロールプロパンEO24モル付加物のステアリン酸ジエステル
(C’2−1):製造例8で得たトリメチロールプロパンEO24モル付加物のステ
(C3−1):製造例9で得た2−エチルヘキシルアルコールPO14モルEO12.5モル付加物
(C3−2):製造例10で得たステアリルアルコールEO13モルPO10モル付加物
(C4−1):製造例11で得た硬化ヒマシ油EO25モル付加物
アリン酸ジエステル
(D1−1):製造例12で得た2−オクチルドデカノールのステアリン酸エステル
(D’1−1):製造例13で得た2−オクチルドデカノールのステアリン酸エステル
(D1−2):製造例14で得たトリメチロールプロパンのラウリン酸トリエステル
(E1−2):ジメチルポリシロキサン(信越化学工業(株)製「KF−4917」)
(G1−1):イルガノックス245
(G1−2):イルガノックス565
(G2−1):牛脂アルキルアミンEO15モル付加物
【0064】
表1に記載の実施例1〜13及び比較例1〜4の合成繊維用処理剤を用い、合成繊維用処理剤の発煙性、油膜強度、タール硬度及び加熱張力変動の評価を行った。結果を表1に示す。
【0065】
<発煙性評価方法>
アルミ製キャップ(直径40mm、深さ7mm)に合成繊維用処理剤0.2gを量り取り、柴田科学(株)製の粉塵試験機で250℃で一分間加熱後の粉塵量を柴田科学(株)製デジタル粉塵計AP−632T型にてカウント数(CPM)として記録した。なお、値が低いほど、発煙性が良好であることを示す。また、5000CPM未満であれば、発煙がほとんどないと判断できるレベルである。
【0066】
<油膜強度評価方法>
調整した合成繊維用処理剤を市販のナイロンエアバッグ糸(470dtx)に合成繊維用処理剤(純分)として1.0重量%となるように付着させた試験糸を、温度250℃の条件下で摩擦体(表面梨地クロムメッキ、直径5cm)に初期荷重500g、糸速度0.5m/min、接触角180°で接触させ、接触後の荷重(g)を東レ式高荷重摩擦測定器により測定した。なお、値が低い程、摩擦が少なく、油膜強度が良好であることを意味し、荷重が650g未満であれば断糸及び毛羽がほとんど発生しないことを示す。
【0067】
<タール硬度評価方法>
・サンプル作成
SUS製シャーレ(直径50mm、深さ10mm)に合成繊維用処理剤0.5gを量り取り、エスペック(株)製の防爆型循風乾燥機SAFETY OVEN SPHH−101で260℃、ダンパ25%で5時間焼成した。
・硬度測定
合成繊維用処理剤の加熱劣化物の硬度はJIS K 5600−5−4:1999「塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第4節:引っかき硬度(鉛筆法)」に準拠し手かき法によって測定した。
作成した合成繊維用処理剤の加熱劣化物の硬度を測定した。なお、硬度が低い程、処理剤の加熱劣化物の除去性が良好であることを示す。
【0068】
<加熱張力変動評価方法>
調整した合成繊維用処理剤を市販のナイロンエアバッグ糸(470dtx)に合成繊維用処理剤(純分)として1.0重量%となるように付着させた試験糸を、温度250℃の条件下で摩擦体(表面梨地クロムメッキ、直径5cm)に初期荷重500g、糸速度0.5m/min、接触角180°で接触させ、接触後の荷重T1(g)及び、24時間走行させた後の荷重T2(g)を東レ式高荷重摩擦測定器により測定し、加熱張力変動(T2−T1)(g)を算出し次の基準で判定した。なお、油膜強度が良好であり、加熱張力変動が小さいほど、長時間使用における断糸及び毛羽が少なくなることを意味し、加熱張力変動が20g未満であれば、断糸及び毛羽がほとんど発生しないことを意味する。
【0069】
表1から明らかなように、酸価又は灰分が本発明の範囲外である比較例1〜4の合成繊維用処理剤は、発煙性(比較例2)、油膜強度(比較例1)、タール硬度(比較例4)又は加熱張力変動(比較例3)のいずれかの評価結果が悪く、250℃の高温での処理において満足のいくものではないことがわかる。一方、本発明の合成繊維用処理剤(実施例1〜13)を用いれば、250℃の高温での処理において、合成繊維用処理剤の発煙性、油膜強度、タール硬度及び加熱張力変動のすべての評価において問題ない値であることがわかる。したがって、本発明の合成繊維用処理剤は、高温での処理においても、発煙が少なく、延伸ローラー上に蓄積するタールが軟らかいためタールを除去しやすく、長時間紡糸した場合における断糸及び毛羽が少ない合成繊維用処理剤であることがわかる。