(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0041】
≪実施形態1≫
<電源力率制御システム(100)の構成>
図1は、本実施形態1に係る電源力率制御システム(100)の構成を示すブロック図である。この例では、電源力率制御システム(100)は、複数の負荷器(1,2)と、調相設備(8)と、電源力率測定器(9)(電源力率測定部に相当)と、電源力率デマンド制御器(40)(制御信号生成部に相当)と、負荷器(1,2)に含まれる調整部(1c,2c)(運転状態制御部に相当)とを備える。本実施形態1では、複数の負荷器(1,2)のうち、負荷器(1)が空気調和装置である場合を例に採る。
【0042】
電源力率制御システム(100)は、マンション、工場、ビル、戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置されている。空気調和装置である負荷器(1)によって、室内の空気調和が行われる。
【0043】
上記ビル等には、交流電源(3)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(3)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、複数の負荷器(1,2)に電力を分岐して供給する。
【0044】
また、本実施形態1では、負荷器(2)が、インバータ回路等の高調波電流の発生源となり得る回路を備えている機器(高調波発生負荷器と命名する)である場合を例に採る。負荷器(2)としては、ビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明、更には、アクティブフィルタ等の高調波対策を実施していない、空気調和装置である負荷器(1)とは別の空気調和装置等を例示できる。
【0045】
各負荷器(1,2)は、電源力率デマンド制御器(40)と接続された調整部(1c,2c)を含む。調整部(1c,2c)それぞれは、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。調整部(1c,2c)は、電源力率デマンド制御器(40)から出力される負荷器指令信号Fs(制御信号に相当)に基づき、各負荷器(1,2)の運転状態を変化させる運転パラメータを調整して負荷器(1,2)の運転状態を制御するものである。運転パラメータとは、具体的には負荷器(1,2)の電力、負荷器(1,2)の電流、負荷器(1,2)に含まれる電動機の回転速度等である。
【0046】
また、この例では、電源力率制御システム(100)が備える電源力率測定器(9)及び電源力率デマンド制御器(40)は、複数の負荷器(1,2)を一括管理及び統括制御する、いわば当該システム(100)の集中管理部(7)としての機能を有する。集中管理部(7)は、ビル等の建物の内部における集中管理室に配置されている。
【0047】
<負荷器(1)>
空気調和装置である負荷器(1)は、上記調整部(1c)の他に、冷媒回路(図示せず)及び電力変換装置(1a)を有する。
【0048】
冷媒回路は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張機構、室内側熱交換器が冷媒配管によって接続されることで構成される。冷媒回路内には冷媒が充填されており、冷媒が冷媒回路内を循環することによって、室内は冷却または暖められる。
【0049】
電力変換装置(1a)は、詳細は図示していないが、交流電源(3)に接続されており、コンバータ回路及びインバータ回路を有する。電力変換装置(1a)は、交流電源(3)から交流電力を供給されると、これを所望周波数及び所望電圧に変換し、変換後の電力を圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給する。それにより、圧縮機は稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
【0050】
空気調和装置である負荷器(1)において、電力変換装置(1a)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、負荷器(1)に電力を供給する電流経路を介して、交流電源(3)に流出する可能性がある。なお、上述したように、負荷器(1)のみならず、高調波発生負荷器である負荷器(2)からも、高調波電流が、負荷器(2)に電力を供給する電流経路を介して交流電源(3)に流出する可能性がある。
【0051】
そのため、本実施形態1では、空気調和装置である負荷器(1)内に、アクティブフィルタ(1b)が組み込まれている。アクティブフィルタ(1b)は、交流電源(3)に対し負荷器(2)及び電力変換装置(1a)と並列に接続され、該負荷器(1)及び電力変換装置(1a)にて発生する高調波電流の低減を行う。
【0052】
更に、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められているところ、アクティブフィルタ(1b)は、基本波力率の改善機能も備えている。負荷器(1,2)や負荷器(1)に含まれる圧縮機の電動機が最大電力で稼働すると、負荷器(1,2)へ電力を供給する交流電源(3)の電流経路(
図1の受電経路(12))を介して高調波電流が流出し、交流電源(3)の電源力率が低下する場合がある。一般的に、電気料金には、電源力率が良い程高い割引率を受けられる仕組み、及び/または、電源力率が所定値(90%や85%など)を下回るとその分電気料金が引き上げられるペナルティが与えられる仕組みが存在する。このような電気料金の観点からしても、電源力率の低下をなるべく回避し電源力率の最適化を図ることの重要度は高い。
【0053】
そこで、本実施形態1では、空気調和装置である負荷器(1)内に、力率改善のためのアクティブフィルタ(1b)を組み込んでおり、これによって空気調和装置の力率が高くなることにより電源力率の改善を図っている。
【0054】
また、本実施形態1では、負荷器(1,2)の電源力率を改善して最適化させるための制御も行っているが、これについては後述する。
【0055】
<調相設備(8)>
調相設備(8)は、建物全体の力率を改善するために取り付けらえているものであって、負荷器(1,2)の高調波電流の位相を変更することによって基本波力率の改善を行う調相器(31)を備える。
【0056】
調相器(31)は、交流電源(3)に対し負荷器(1,2)と並列に接続されており、各負荷器(1,2)に供給される交流電力のうち無効電力を制御する。調相器(31)は、複数の進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)と複数のリアクトル(La,Lb,Lc)とを含む。各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)は、受電経路(12)のうち、調相設備(8)への各分岐配線(12c)上に、直列に接続されている。進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)は、3相の交流電源(3)の各相に対応して3つ設けられている。リアクトル(La,Lb,Lc)は、各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)に対応して3つ設けられており、各リアクトル(La,Lb,Lc)は、各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)に直列に接続されている。
【0057】
本実施形態1において、調相器(31)が進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみならずリアクトル(La,Lb,Lc)を含む理由は、仮に進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)が短絡故障した際に調相器(31)に流れる電流の大きさをリアクトル(La,Lb,Lc)によって絞ることができるためである。
【0058】
<電源力率測定器(9)>
電源力率測定器(9)は、交流電源(3)の電源力率を測定するものであって、電力計またはスマートメータで構成されている。ビルや工場等の建物には、その時々の電力のみならず電源力率θαβをも測定する電力計が予め設けられている。本実施形態1では、この電力計を電源力率測定器(9)として利用するものである。電力計によって測定された電源力率θαβは、電源力率デマンド制御器(40)に入力される。
【0059】
このように、建物に既設の電力計またはスマートメータを電源力率測定器(9)として利用することにより、電源力率を計測するセンサや検出回路を、電力計及びスマートメータとは別途設ける必要がない。
【0060】
特に、電源力率測定器(9)は、スマートメータであることが望ましい。スマートメータは、通信機能を有しているため、電源力率測定器(9)は、測定結果である電源力率θαβを、当該通信機能を用いて無線方式で電源力率デマンド制御器(40)に送信することができる。これにより、電源力率測定器(9)と電源力率デマンド制御器(40)とを繋ぐ配線は不要となり、配線を引き回す作業を行わずに済む。従って、配線を繋ぐ工事や配線のためのコストを削減できる。
【0061】
<電源力率デマンド制御器(40)>
電源力率デマンド制御器(40)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。
図1に示すように、電源力率デマンド制御器(40)は、電源力率測定器(9)及び各負荷器(1,2)(具体的には各負荷器(1,2)の調整部(1c,2c))と接続されており、電源品質としての電源力率測定器(9)の検出値と、交流電源(3)の電源力率の目標値とに基づいて、各負荷器(1,2)の運転動作を制御する。
【0062】
本実施形態1に係る電源力率デマンド制御器(40)は、実際の電源力率θαβに伴う各負荷器(1,2)の運転状態の調整制御を行う。このような制御を行うため、電源力率デマンド制御器(40)は、
図2に示すように、力率目標値設定部(41)及び負荷調整判断部(42)を有する。負荷調整判断部(42)は、減算部(43)、積分演算部(44)及び判定部(45)を有する。
【0063】
なお、以下に述べるように、電源力率デマンド制御器(40)は、電源力率測定器(9)の測定結果に基づいて生成した負荷器指令信号Fs(制御信号に相当)を、各負荷器(1,2)の調整部(1c,2c,)に送信するが、本実施形態1では、電源力率デマンド制御器(40)と各負荷器(1,2)とは配線によって接続されておらず、負荷器指令信号Fsの送信は無線方式で行われる。
【0064】
<各負荷器(1,2)の運転状態の調整制御>
図2及び
図3を用いて、上記電源力率デマンド制御器(40)が行う各負荷器(1,2)の運転状態の調整制御について詳述する。
【0065】
力率目標値設定部(41)は、電源力率の目標値θαβ_refを予め設定する。なお、本実施形態1に係る力率目標値設定部(41)は、電源力率の目標値θαβ_refを、0.995〜1.004の間の値に設定する。電源力率を評価する場合、小数第3位を四捨五入することになっている。そのため、電源力率の目標値θαβ_refが0.995〜1.004の間の値に設定されることにより、当該電源力率の目標値θαβ_refに基づいて制御される実際の電源力率は“1”と評価されるためである。
【0066】
負荷調整判断部(42)の減算部(43)には、電源品質である電源力率測定器(9)が測定した実際の電源力率θαβと、力率目標値設定部(41)が設定した電源力率の目標値θαβ_refとが入力される。減算部(43)は、電源力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算する。減算部(43)は、減算した値を、積分演算部(44)に出力する。
【0067】
積分演算部(44)は、減算部(43)による減算結果(即ち、電源力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算した結果)を、積分する。
【0068】
判定部(45)には、積分演算部(44)の積分結果が入力される。判定部(45)は、積分結果に基づき、基本波力率が電源力率の目標値θαβ_refに近づくように、負荷器(1,2)の運転状態を変化させるための負荷器指令信号Fsを生成する。具体的に、判定部(45)は、基本波力率(電源力率)を電源力率の目標値θαβ_refに近づけるべく、運転パラメータを調整して負荷器(1,2)の運転能力を下げる旨の負荷器指令信号Fsを、負荷器(1,2)の調整部(1c,2c)に出力する。この負荷器指令信号Fsによって負荷器(1,2)の運転能力が減少すると、負荷器(1,2)の出力電力が減少するため電力的に余裕が生じ、基本波力率(電源力率)は上昇して力率目標値と概ね一致するようになる。
【0069】
負荷器(1,2)の動作、電源力率、負荷調整判断部(42)の動作の経時的変化の一例を
図3に示す。
図3(a)は、負荷器(2)の動作に相関する出力電力を示しており、この例では負荷器(2)としてポンプなどの一定負荷を想定している。
図3(b)は、負荷器(1)の出力電力を示しており、この例では負荷器(1)として空気調和装置を想定している。
【0070】
時刻t0から時刻t2までの間、負荷器(2)は、出力電力が一定となるような安定した動作を行っている。これに対し、時刻t0から時刻t2までの間、負荷器(1)は、空調負荷の上昇に伴い出力電力を上昇させて続けている。この時刻t0から時刻t2までの間とは、真夏の最も暑い日の日中(14時〜15時)で外気温度が異常に高くなり、急激に空調負荷が上昇し空気調和装置である負荷器(1)の出力電力が上昇している場合を想定している。
【0071】
このような各負荷器(1,2)の出力電力により、
図3(c)に示す電源力率は、時刻t0からt1までの間は、概ね電源力率の目標値θαβ_refの値を維持した状態となっている。しかし、時刻t1から時刻t2の間では、負荷器(1)の出力電力の更なる上昇により、
図3(c)に示す電源力率は、電源力率の目標値θαβ_refから低下していく。
【0072】
そのため、
図3(d)に示すように、時刻t0から時刻t1の間は、電源力率の目標値θαβ_refと実際の電源力率θαβとの差はほぼ生じず、積分演算部(44)の出力結果(出力信号)は概ね“0”のままである。しかし、時刻t1以降は、電源力率の目標値θαβ_refと実際の電源力率θαβとの差が、負荷器(1)の出力電力の更なる上昇に伴って徐々に大きくなっていく。従って、
図3(d)に示すように、時刻t1以降は、積分演算部(44)の出力結果(出力信号)は増加する。
【0073】
時刻t2は、積分演算部(44)の出力結果(出力信号)が判定値(所定値に相当)に達した時点を表す。この時刻t2では、判定部(45)は、積分演算部(44)の出力結果(出力信号)を受けて、
図3(e)に示すように、負荷器(1,2)の運転状態を時刻t2以前とは異ならせるための負荷器指令信号Fsを(即ち、“オン”を示す負荷器指令信号Fs)、負荷器(1,2)の調整部(1c,2c)に出力する。その負荷器指令信号Fsに基づいて、負荷器(1,2)の調整部(1c,2c)それぞれは、
図3(a)(b)に示すように時刻t2から時刻t3の間、各負荷器(1,2)の出力電圧が低下する方向に運転状態を変化させるべく、負荷器(1,2)の電力、負荷器(1,2)の電流、負荷器(1,2)に含まれる電動機の回転速度等の少なくとも1つである運転パラメータを調整する。この運転パラメータの調整は、実際の電源力率θαβが電源力率の目標値θαβ_refに近づくように行われる。すると、
図3(c)に示すように、時刻t2以降、双方の負荷器(1,2)の出力電力が低下しているために、実際の電源力率θαβは、電源力率の目標値θαβ_refに一致する程度に回復し、当該目標値θαβ_refと概ね一致した状態で維持される。
【0074】
このように、本実施形態1に係る電源力率デマンド制御器(40)及び調整部(1c,2c)は、電源力率測定器(9)の測定結果である実際の電源力率θαβが電源力率の目標値θαβ_refを下回ると、負荷器(1,2)の運転パラメータを低下させるように負荷器(1,2)の運転状態を変化させる。このことにより、電源力率制御システム(100)は、実際の電源力率θαβが電源力率の目標値θαβ_refを下回っている際、負荷器(1,2)の運転能力を強制的に絞り、実際の電源力率θαβと電源力率の目標値θαβ_refとが一致する状態を作り出す“電源力率デマンドコントロール”を実施する。“電源力率デマンドコントロール”とは、基本波力率が力率の目標値θαβ_refに近づくように、実際の電源力率測定器(9)の測定結果に基づいて運転パラメータを調整する制御と言える。
【0075】
図3において、実際の電源力率θαβと電源力率の目標値θαβ_refとが一致している状態が、時刻t2からある程度の期間(
図3では時刻t2から時刻t3までの期間)経過すると、判定部(45)は、
図3(e)に示すように、出力する負荷器指令信号Fsを、時刻t0からt2までの間と同様“オフ”にする。そのことにより、負荷器(1,2)は、強制的な運転能力の低下から解放され、通常の指令に基づく制御により通常運転を行う。
【0076】
また、判定部(45)は、負荷器指令信号Fsをオフにした際、
図3(f)の時刻t3にて示すように、積分演算部(44)の積分結果をリセット(ゼロにクリアする)ためのReset信号を積分演算部(44)に出力する。このことにより、積分演算部(44)の積分結果(出力信号)はゼロになり、積分演算部(44)は、次に実際の電源力率θαβが電源力率の目標値θαβ_refより低下した場合に対応できるようになる。
【0077】
<効果>
本実施形態1の電源力率制御システム(100)は、電源品質である電源力率の目標値θαβ_refと、現在の電源力率(即ち、現在の電源品質)とに基づいて、負荷器(1,2)の運転状態を制御する。特に、本実施形態1では、負荷器指令信号Fsに基づき、実際の電源力率θαβが目標値θαβ_refに近づくように負荷器(1,2)の運転パラメータが調整されるため、負荷器(1,2)の運転能力は、運転パラメータが変更される前の状態から変化する。この負荷器(1,2)の運転能力の変化により、実際の電源力率θαβは電源力率の目標値θαβ_refに近づくため、実際の電源力率θαβは最適化される。これにより、例えば電源力率の低下の抑制及び電源力率の改善を図ることができ、電気料金に含まれる基本料金を安くしたり、電気料金にペナルティが課されることを回避したりすることができる。
【0078】
上記負荷器指令信号Fsは、電源力率測定器(9)の測定結果が電源力率の目標値θαβ_refを下回っている際に負荷器(1,2)の運転状態を変化させるための信号である。このような負荷器指令信号Fsにより、電源力率の目標値θαβ_refを下回っていた実際の電源力率θαβは、上昇して電源力率の目標値θαβ_refに近づくことができる。
【0079】
特に、上記負荷器指令信号Fsは、電源力率測定器(9)の測定結果が電源力率の目標値θαβ_refを下回っている間の、電源力率測定器(9)の測定結果と電源力率の目標値θαβ_refとの差を積分し、その積分結果が判定値に達した場合に生成される。つまり、電源力率θαβが瞬間的に電源力率の目標値θαβ_refよりも低くなったような場合ではなく、電源力率θαβの電源力率の目標値θαβ_refとの乖離が確実に生じている場合に、上記負荷器指令信号Fsが生成され、負荷器(1,2)の運転状態は変化する。従って、電源力率θαβを上昇させる必要性が確実に存在する場合にのみ、負荷器(1,2)の運転状態を変化させる制御がなされる。
【0080】
ビル等の建物には、電力計が接続されている。この電力計は、電力以外にも電源力率も計測していることが多い。そこで、本実施形態1では、当該電力計を電源力率測定器(9)として利用しているため、特別に電源力率を計測するためのセンサや検出回路を取り付ける必要がない。従って、別途センサ及び検出回路を取り付けるための工事が不要であり、センサ及び検出回路を設けずに済む分コストを削減できる。
【0081】
上記電源力率測定器(9)は、測定結果を電源力率デマンド制御器(40)に無線方式で送信する。これにより、電源力率測定器(9)と電源力率デマンド制御器(40)とを接続する配線自体が不要となり、当該配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0082】
また、上記電源力率デマンド制御器(40)は、生成した負荷器指令信号Fsを調整部(1c,2c)に無線方式で送信する。これにより、電源力率デマンド制御器(40)と調整部(1c,2c)とを接続する配線自体が不要となり、当該配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0083】
本実施形態1では、負荷器(1)が空気調和装置である。ビル等の建物を設計する場合、空気調和装置の室外機と室内機とを繋ぐ冷媒配管工事などが必要であることから、建物に設置するべき空気調和装置の仕様は自ずと決定する。そのことから、建物の建設時に電源力率デマンド制御器(40)等と空気調和装置間の通信線を接続することができ、電源力率によって空気調和装置の運転能力を変更できる環境を、簡単に作りやすくなる。
【0084】
本実施形態1では、アクティブフィルタ(1b)が空気調和装置に組み込まれている。また、電源力率制御システム(100)は、調相器(31)を更に備える。これらにより、空気調和装置の力率を高く保つことができるため、実際の電源力率θαβを電源力率の目標値θαβ_refにできる限り早く収束させることができる。
【0085】
<実施形態1の変形例>
図4に示すように、電源力率制御システム(100)は、調相器(31)に代えて、アクティブフィルタ(30)を備えていても良い。アクティブフィルタ(30)は、交流電源(3)に対し負荷器(1,2)と並列に接続され、該負荷器(1,2)にて発生する高調波電流の低減を行うものである。アクティブフィルタ(30)は、電源力率デマンド制御器(40)により制御される。これにより、負荷器(1,2)の力率を高く保つことができるため、電源力率を目標値にできる限り早く収束させることができる。なお、この場合、負荷器(1)に別途アクティブフィルタが組み込まれていなくても良い。
【0086】
負荷器(1)は、空気調和装置以外であってもよい。負荷器(1)は、例えばビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明等であってもよい。
【0087】
電源力率測定器(9)は、建物内の電力計(スマートメータ等)である必要はない。
【0088】
電源力率測定器(9)は、無線方式のタイプでなくてもよい。
【0089】
電源力率デマンド制御器(40)は、無線方式のタイプでなくてもよい。
【0090】
上記実施形態1において、負荷器(1)に、アクティブフィルタ(1b)が組み込まれていなくても良い。
【0091】
1台の負荷器(1)に対し複数台の調相器(31)またはアクティブフィルタ(30)が設けられていてもよい。
【0092】
また、電源力率制御システム(100)において、調相器(31)及びアクティブフィルタ(30)は必須ではない。
【0093】
調相器(31)は、進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみの構成であってもよい。
【0094】
負荷器指令信号Fsは、電源力率測定器(9)の測定結果が電源力率の目標値θαβを下回っている際ではなく、電源力率θαβが所望の目標値θαβ_refと一致しない際(例えば、電源力率θαβが電源力率の目標値θαβ_refを上回る際)に、負荷器(1,2)の運転状態を変化させるための信号として生成されてもよい。
【0095】
電源力率デマンド制御器(40)は、実際の電源力率θαβと電源力率の目標値θαβ_refとの差の積分値に基づく方法以外の方法で、負荷器指令信号Fsを生成してもよい。
【0096】
負荷器(1,2)が空気調和装置である場合、空気調和装置は、冷房及び暖房のみを行う装置に限定されない。空気調和装置には、冷凍、換気、調湿が可能なものも含まれる。
【0097】
≪実施形態2≫
<電源力率制御システム(200)の構成>
図5は、本実施形態2に係る電源力率制御システム(200)の構成を示すブロック図である。この例では、電源力率制御システム(200)は、複数の負荷器(101,102)と、調相設備(106)と、電源力率測定器(104)(電源力率測定部に相当)と、電源力率デマンド制御器(105)とを備える。
【0098】
ここでは、複数の負荷器(101,102)のうち、負荷器(101)が空気調和装置である場合を例に採る。
【0099】
電源力率制御システム(200)は、マンション、工場、ビル、戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置されている。空気調和装置である負荷器(101)によって、室内の空気調和が行われる。
【0100】
上記ビル等には、交流電源(103)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(103)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、複数の負荷器(101,102)に電力を分岐して供給する。
【0101】
また、本実施形態2では、負荷器(102)が、インバータ回路等の高調波電流の発生源となり得る回路を備えている機器(高調波発生負荷器と命名する)である場合を例に採る。負荷器(102)としては、ビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明、更には、アクティブフィルタ等の高調波対策を実施していない、空気調和装置である負荷器(101)とは別の空気調和装置等を例示できる。
【0102】
各負荷器(101,102)は、電源力率デマンド制御器(105)と接続された調整部(101c,102c)(運転状態制御部に相当)を含む。調整部(101c,102c)それぞれは、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。調整部(101c,102c)は、電源力率デマンド制御器(105)から出力される負荷器指令信号Fsに基づき、各負荷器(101,102)の運転状態を変化させる運転パラメータを調整して負荷器(101,102)の運転状態を制御するものである。運転パラメータとは、具体的には負荷器(101,102)の電力、負荷器(101,102)の電流、負荷器(101,102)に含まれる電動機の回転速度等である。
【0103】
また、この例では、電源力率制御システム(200)が備える電源力率測定器(104)及び電源力率デマンド制御器(105)は、複数の負荷器(101,102)を一括管理及び統括制御する、いわば当該システム(200)の集中管理部(107)としての機能を有する。集中管理部(107)は、ビル等の建物の内部における集中管理室に配置されている。
【0104】
<負荷器(101)>
空気調和装置である負荷器(101)は、上記調整部(101c)の他に、冷媒回路(図示せず)及び電力変換装置(101a)を有する。
【0105】
冷媒回路は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張機構、室内側熱交換器が冷媒配管によって接続されることで構成される。冷媒回路内には冷媒が充填されており、冷媒が冷媒回路内を循環することによって、室内は冷却または暖められる。
【0106】
電力変換装置(101a)は、詳細は図示していないが、交流電源(103)に接続されており、コンバータ回路及びインバータ回路を有する。電力変換装置(101a)は、交流電源(103)から交流電力を供給されると、これを所望周波数及び所望電圧に変換し、変換後の電力を圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給する。それにより、圧縮機は稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
【0107】
空気調和装置である負荷器(101)において、電力変換装置(101a)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、負荷器(101)に電力を供給する電流経路を介して、交流電源(103)に流出する可能性がある。なお、上述したように、負荷器(101)のみならず、高調波発生負荷器である負荷器(102)からも、高調波電流が、負荷器(102)に電力を供給する電流経路を介して交流電源(103)に流出する可能性がある。
【0108】
そのため、本実施形態2では、空気調和装置である負荷器(101)内に、アクティブフィルタ(101b)が組み込まれている。アクティブフィルタ(101b)は、交流電源(103)に対し負荷器(102)及び電力変換装置(101a)と並列に接続され、該負荷器(102)及び電力変換装置(101a)にて発生する高調波電流の低減を行う。
【0109】
更に、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められているところ、アクティブフィルタ(101b)は、基本波力率の改善機能も備えている。負荷器(101,102)や負荷器(101)に含まれる圧縮機の電動機が最大電力で稼働すると、負荷器(101,102)へ電力を供給する交流電源(103)の電流経路(
図1の受電経路(112))を介して高調波電流が流出し、交流電源(103)の電源力率が低下する場合がある。一般的に、電気料金には、電源力率が良い程高い割引率を受けられる仕組み、及び/または、電源力率が所定値(90%や85%など)を下回るとその分電気料金が引き上げられるペナルティが与えられる仕組みが存在する。このような電気料金の観点からしても、電源力率の低下をなるべく回避し電源力率の最適化を図ることの重要度は高い。
【0110】
そこで、本実施形態2では、空気調和装置である負荷器(101)内に、力率改善のためのアクティブフィルタ(101b)を組み込んでおり、これによって空気調和装置の力率が高くなることにより電源力率の改善を図っている。
【0111】
また、本実施形態2では、負荷器(101,102)の電源力率を改善して最適化させるための制御も行っているが、これについては後述する。
【0112】
<調相設備(106)>
調相設備(106)は、建物全体の力率を改善するために取り付けらえているものであって、負荷器(101,102)の高調波電流の位相を変更することによって基本波力率の改善を行う調相器(131)を備える。
【0113】
調相器(131)は、交流電源(103)に対し負荷器(101,102)と並列に接続されており、各負荷器(101,102)に供給される交流電力のうち無効電力を制御する。調相器(131)は、複数の進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)と複数のリアクトル(La,Lb,Lc)とを含む。各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)は、受電経路(112)のうち、調相設備(106)への各分岐配線(112c)上に、直列に接続されている。進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)は、3相の交流電源(103)の各相に対応して3つ設けられている。リアクトル(La,Lb,Lc)は、各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)に対応して3つ設けられており、各リアクトル(La,Lb,Lc)は、各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)に直列に接続されている。
【0114】
本実施形態2において、調相器(131)が進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみならずリアクトル(La,Lb,Lc)を含む理由は、仮に進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)が短絡故障した際に調相器(131)に流れる電流の大きさをリアクトル(La,Lb,Lc)によって絞ることができるためである。
【0115】
<電源力率測定器(104)>
電源力率測定器(104)は、交流電源(103)の電源力率を測定するものであって、電力計またはスマートメータで構成されている。ビルや工場等の建物には、その時々の電力のみならず電源力率θαβをも測定する電力計が予め設けられている。本実施形態2では、この電力計を電源力率測定器(104)として利用するものである。電力計によって測定された電源力率θαβは、電源力率デマンド制御器(105)に入力される。
【0116】
このように、建物に既設の電力計またはスマートメータを電源力率測定器(104)として利用することにより、電源力率を計測するセンサや検出回路を、電力計及びスマートメータとは別途設ける必要がない。
【0117】
特に、電源力率測定器(104)は、スマートメータであることが望ましい。スマートメータは、通信機能を有しているため、電源力率測定器(104)は、測定結果である電源力率θαβを、当該通信機能を用いて無線方式で電源力率デマンド制御器(105)に送信することができる。これにより、電源力率測定器(104)と電源力率デマンド制御器(105)とを繋ぐ配線は不要となり、配線を引き回す作業を行わずに済む。従って、配線を繋ぐ工事や配線のためのコストを削減できる。
【0118】
具体的に、本実施形態2に係る電源力率測定器(104)は、電流検出部(141a,141b)、電圧検出部(142)及び電源力率演算部(143)を有する。
【0119】
電流検出部(141a,141b)は、交流電源(103)の受電経路(112)における電流値を検出する。詳しくは、電流検出部(141a,141b)は、高調波発生源である各負荷器(101,102)に分岐して流れる前の交流電源(103)の出力電流の値を検出する。この例では、電流検出部(141a,141b)は2つ設けられている。具体的に、電流検出部(141a)は、交流電源(103)におけるR相の電流値(Irs)を検出する。電流検出部(141b)は、交流電源(103)におけるT相の電流値(Its)を検出する。
【0120】
電圧検出部(142)は、交流電源(103)の各相の出力端子に接続され、交流電源(103)の線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)を検出する。
【0121】
電源力率演算部(143)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。電源力率演算部(143)は、入力された電流検出部(141a,141b)の検出結果(Irs,Its)及び電圧検出部(142)の検出結果(Vrs,Vst,Vtr)を、下式(1)及び下式(2)に当てはめて、回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを演算する。
【0124】
次いで、電源力率演算部(143)は、上式(1)及び上式(2)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(3)に当てはめて、有効電力Pαを演算する。また、電源力率演算部(143)は、上式(1)及び上式(2)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(4)に当てはめて、無効電力Pβを演算する。
【0127】
電源力率演算部(143)は、上記有効電力Pα及び上記無効電力Pβそれぞれを下式(5)に当てはめて、交流電源(103)の電源力率θαβを演算する。即ち、電源力率演算部(143)によって求められる電源力率θαβは、実際の電源力率θαβを意味する。
【0129】
このようにして得られた実際の電源力率θαβは、電源力率デマンド制御器(105)に入力される。
【0130】
<電源力率デマンド制御器(105)>
電源力率デマンド制御器(105)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。この例では、電源力率デマンド制御器(105)は、電源力率演算部(143)とは別のマイクロコンピュータ及びメモリ
デバイスで構成されている。
【0131】
図5に示すように、電源力率デマンド制御器(105)は、電源力率測定器(104)及び各負荷器(101,102)と接続されており、電源品質としての電源力率測定器(104)の測定結果と、交流電源(103)の電源力率の目標値とに基づいて、各負荷器(101,102)の動作を制御する。
【0132】
本実施形態2に係る電源力率デマンド制御器(105)は、実際の電源力率θαβに伴う各負荷器(101,102)の運転状態の調整制御、ならびに、電源力率の目標値θαβ_refの調整制御を行う。このような制御を行うため、電源力率デマンド制御器(105)は、
図6に示すように、負荷調整判断部(152)(制御信号生成部に相当)、第1平均力率算出部(153)、第2平均力率算出部(154)、及び力率目標値設定部(151)(目標値調整部に相当)を有する。負荷調整判断部(152)は、電源力率測定器(104)の測定結果及び電源力率の目標値θαβ_refに基づいて、負荷器(101,102)の運転状態を変化させるための制御信号である負荷器指令信号Fsを生成するものであって、減算部(161)、積分演算部(162)及び判定部(163)を有する。
【0133】
なお、各負荷器(101,102)の運転状態の調整制御は、負荷調整判断部(152)にて行われ、電源力率の目標値θαβ_refの調整制御は、第1平均力率算出部(153)、第2平均力率算出部(154)及び力率目標値設定部(151)にて行われる。
【0134】
なお、電源力率デマンド制御器(105)は、生成した負荷器指令信号Fsを、各負荷器(101,102)の調整部(101c,102c,)に送信するが、本実施形態2では、電源力率デマンド制御器(105)と各負荷器(101,102)とは配線によって接続されておらず、負荷器指令信号Fsの送信は無線方式で行われる。
【0135】
<各負荷器(101,102)の運転状態の調整制御>
負荷調整判断部(152)の減算部(161)には、電源力率測定器(104)が測定した実際の電源力率θαβ(電源品質に相当)と、力率目標値設定部(151)が設定した電源力率の目標値θαβ_refとが入力される。減算部(161)は、電源力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算する。減算部(161)は、減算した値を、積分演算部(162)に出力する。
【0136】
なお、上記減算した値は、例えば、真夏の最も暑い日の日中(14時〜15時)において急激に空調負荷が上昇し空気調和装置である負荷器(101)の出力電力が上昇したことにより、負荷器(101)の出力電力が上昇し、実際の電源力率θαβが目標値θαβ_refから低下した場合等に、特に大きくなる。
【0137】
積分演算部(162)は、減算部(161)による減算結果(即ち、電源力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算した結果)を、積分する。
【0138】
判定部(163)には、積分演算部(162)の積分結果が入力される。判定部(163)は、積分結果に基づき、基本波力率が電源力率の目標値θαβ_refに近づくように、負荷器(101,102)の運転状態を変化させる運転パラメータを制御する。具体的に、判定部(163)は、基本波力率(電源力率)を目標値θαβ_refに近づけるべく、運転パラメータを調整して負荷器(101,102)の運転能力を下げるための負荷器指令信号Fsを負荷器(101,102)に出力する。この負荷器指令信号Fsによって負荷器(101,102)の運転能力が減少すると、負荷器(101,102)の出力電力は低下して出力電力には余裕が生じ、基本波力率(電源力率)は上昇して目標値θαβ_refと概ね一致するようになる。
【0139】
ここで、上記運転パラメータとは、既に述べたように、負荷器(101,102)の電力、負荷器(101,102)の電流、負荷器(101,102)に含まれる電動機の回転速度等の少なくとも1つを云う。負荷調整判断部(152)は、実際の電源力率θαβが目標値θαβ_refに近づくように運転パラメータを調整することで、負荷器(101,102)の運転能力を強制的に絞り、実際の電源力率θαβと力率の目標値θαβ_refとが一致する状態を作り出す“電源力率デマンドコントロール”を実施する。
【0140】
また、基本波力率(電源力率)が目標値θαβ_refと一致している状態がある期間継続すると、判定部(163)は、負荷器指令信号Fsをオフにする。そのことにより、負荷器(101,102)は、強制的な運転能力の低下から解放され、通常の指令に基づく制御により通常運転を行う。また、判定部(163)は、負荷器指令信号Fsをオフにした際、積分演算部(162)に対し、積分演算部(162)の積分結果をリセット(ゼロにクリアする)ためのReset信号を出力する。これにより、積分演算部(162)の積算結果(出力信号)はゼロになり、積分演算部(162)は、次に実際の電源力率θαβが力率の目標値θαβ_refより低下した場合に対応できるようになる。
【0141】
<電源力率の目標値θαβ_refの調整制御>
電源力率デマンド制御器(105)の第1平均力率算出部(153)は、
図7に示すように、24個の記憶素子(171a〜171x)と、24個の加算部(173a〜173x)と、1個の1日平均力率算出部(175)とで構成される。
【0142】
記憶素子(171a〜171x)は、1日(24時間)を1時間毎に区切った際の各時間帯に対応して24個設けられており、各記憶素子(171a〜171x)は、各時間帯(1時間毎)の電源力率θαβを記憶する。
【0143】
各加算部(173a〜173x)は、各記憶素子(171a〜171x)の電源力率θαβを順次足し合わせる。例えば、加算部(173a)は、現在の電源力率θαβに1時間前の時間帯の電源力率θαβを足し合わせる。加算部(173b)は、加算部(173a)の加算結果に記憶素子(171b)が記憶する2時間前の時間帯の電源力率θαβを足し合わせる。加算部(173x)は、加算部(173w)の加算結果に記憶素子(171x)が記憶する24時間前の時間帯の電源力率θαβを足し合わせる。この加算部(173x)の加算結果は、1日(即ち24時間)の電源力率θαβの合計値に等しい。
【0144】
1日平均力率算出部(175)は、1日の電源力率θαβの合計値を25で除算して、24時間の平均である平均電源力率θαβav24hを算出する。
図6に示すように、平均電源力率θαβav24hは、第2平均力率算出部(154)に入力される。
【0145】
第2平均力率算出部(154)は、
図8に示すように、14個の記憶素子(183a〜183n)と、1個の加算部(182)と、1個の15日平均力率算出部(181)とで構成される。
【0146】
記憶素子(183a〜183n)は、1日毎に対応して合計14日分設けられている。各記憶素子(183a〜183n)は、1日毎の平均電源力率θαβav24hを記憶する。つまり、この例では、1日毎の平均電源力率θαβav24hを、1日前から14日前まで、日毎に記憶できるようになっている。
【0147】
加算部(182)は、全ての記憶素子(183a〜183n)が記憶する1日前から14日前までの日毎の平均電源力率θαβav24hと、本日の平均電源力率θαβav24hとを加算する。従って、加算部(182)の加算結果は、本日から14日前まで、即ち15日分の平均電源力率θαβav24hの合計値である。
【0148】
15日平均力率算出部(181)は、15日分の平均電源力率θαβav24hの合計値を15で除算して、15日間の平均電源力率θαβav15dayを算出する。
図6に示すように、15日間の平均電源力率θαβav15dayは、力率目標値設定部(151)に入力される。
【0149】
力率目標値設定部(151)は、
図9に示すように、1個の減算部(191)と、1個の加算部(192)とで構成され、電源力率測定器(104)の測定結果に基づいて電源力率の目標値θαβ_refを算出により調整及び設定する。
【0150】
減算部(191)は、力率目標値の基準値θαβ_reffrから、電源力率測定器(104)の測定結果を用いて演算された値である15日間の平均電源力率θαβav15dayを減算する。
【0151】
ここで、上記力率目標値の基準値θαβ_reffrは、0.995〜1.004の間の値に設定されていることを特徴とする。電源力率を評価する場合、小数第3位を四捨五入することになっている。そのため、力率目標値の基準値θαβ_reffrを0.995〜1.004の間の値とすることにより、力率目標値設定部(151)が調整及び設定する電源力率の目標値θαβ_refも、自ずと0.995〜1.004の間の値となる。すると、当該電源力率の目標値θαβ_refに基づいて制御される実際の電源力率は“1”と評価されるためである。
【0152】
加算部(192)は、減算部(191)の減算結果と力率目標値の基準値θαβ_reffrとを加算する。この加算結果が電源力率の目標値θαβ_refであり、
図6に示すように負荷調整判断部(152)に入力される。
【0153】
そのことにより、単位時間を30日間(1ヶ月)とした場合、先の15日間(第1時間に相当)の平均電源力率θαβav15dayが力率目標値の基準値θαβ_reffrより高い値になっていると、その後の15日間(第2時間に相当)の電源力率の目標値θαβ_refを力率目標値の基準値θαβ_reffrより低い値にして、単位時間である30日間(1ヶ月間)の平均力率を力率目標値の基準値θαβ_reffrで設定された0.995〜1.004にすることができる。つまり、先の15日間の平均電源力率θαβav15dayが力率目標値の基準値θαβ_reffrより高い結果であったならば、次の15日間は電源力率の目標値θαβ_refを先の15日間よりも下げることにより、各負荷器(101,102)には、電力、電流、速度などの運転能力を積極的に下げるための負荷器指令信号Fsを極力出力させないようにすることができる。逆に、先の15日間の平均電源力率θαβav15dayが力率目標値の基準値θαβ_reffrより低い結果であったならば、次の15日間は電源力率の目標値θαβ_refを先の15日間よりも上げることにより、単位時間である30日間の実際の電源力率の平均値は、力率目標値の基準値θαβ_reffrに確実に近づくことができる。これらにより、電気料金について所望の力率割引の適用を受けたり、電気料金における基本料金にペナルティが課されることを回避したりすることができる。
【0154】
図10(a)は、電源力率の経時的変化を示し、
図10(b)は、1日平均力率算出部(175)で算出された24時間の平均である平均電源力率θαβav24hの経時的変化を示す。
図10にて縦に延びる破線同士の間隔は1時間を示し、
図10(a)の太い実線は、電源力率の1時間毎の変化の様子を示す。また、
図10(b)の太い実線で示された平均電源力率θαβav24hは、直近の24時間の電源力率の平均値であるため、24時間毎に更新される。つまり、
図10(b)に示す時刻t1では、時刻t0〜時刻t1までの24時間の平均である平均電源力率θαβav24hが算出され更新されたことが表されている。
【0155】
次に、
図11(a)は、24時間の平均である平均電源力率θαβav24h、
図11(b)は、15日間の平均電源力率θαβav15day、
図11(c)は、力率目標値設定部(151)の減算部(191)の出力信号、
図11(d)は、力率目標値設定部(151)の出力信号である電源力率の目標値θαβ_refの、経時的変化を示す。
図11にて縦に延びる破線同士の間隔は1日(24時間)を示し、日時d1から日時d2までの間、日時d2から日時d3までの間、日時d3から日時d4までの間は、それぞれ15日間を示す。単位時間を1ヶ月であり1ヶ月が30日であるとした際、30日のうち、日時d2から日時d3までの15日間は「第1時間」に相当し、第1時間の後の日時d3から日時d4までの15日間は「第2時間」に相当する。
【0156】
即ち、本実施形態2では、第1時間と第2時間との合計が単位時間と等しく、第1時間と第2時間とが等しく、且つ、第1時間及び第2時間が単位時間の半分の時間である場合を例示している。
【0157】
図11(b)では、日時d2において、日時d1から日時d2までの各日毎の平均電源力率θαβav24hを用いて得られた15日間の実際の電源力率の平均値が、15日間の平均電源力率θαβav15dayとして更新される。その15日間の平均電源力率θαβav15dayを力率目標値の基準値θαβ_reffrから減算した結果が
図11(c)となり、
図11(c)に示す減算部(191)の出力信号を力率目標値の基準値θαβ_reffrに加算した値が
図11(d)の電源力率の目標値θαβ_refとなる。
【0158】
図11より、第1時間における15日間の平均電源力率θαβav15dayが力率目標値の基準値θαβ_reffrより大きい場合は、第1時間の次の第2時間である15日間では、電源力率の目標値θαβ_refを第1時間の間よりも下げる。これにより、実際の電源力率が目標値θαβ_refよりも高い状態での負荷器(101,102)の運転能力を積極的に絞ることで電源力率を改善させるような制御を行わずに、電源力率の平均値の変動をできる限り抑えることができる。従って、例えば真夏の最も暑い日の日中(14時〜15時)であるにも関わらず、負荷器(101)である空気調和装置の運転能力を下げたり運転を停止したりするようなことを、回避もしくは最小限に留めることができる。そのため、建物内の環境の快適性を保つとともに、できるだけ高い電源力率による所望の力率割引の提供を受けることを両立することができる。
【0159】
<効果>
本実施形態2では、電源品質である電源力率の目標値θαβ_refと実際の電源力率θαβ(即ち、実際の電源品質)とに基づいて負荷器(101,102)の運転状態は変化するが、当該目標値θαβ_refは、固定された値ではなく、実際の電源力率θαβに基づいて調整される値となっている。このように、目標値θαβ_refを可変値とすることにより、負荷器(101,102)の運転能力を変更することを最小限にしつつ、電源力率制御システム(200)が構築された場所における電源力率の最適化が図られる。即ち、負荷器(101,102)の運転能力を積極的に変更させた結果電源力率が最適となる制御ではなく、電源力率の目標値θαβ_ref自体を変更して電源力率を最適にする制御を行う。これにより、例えば、電源力率の低下の抑制及び電源力率の改善を図ることができ、電気料金に含まれる基本料金を安くしたり、電気料金にペナルティが課されることを回避したりすることができる。
【0160】
本実施形態2では、電源力率の目標値θαβ_refを調整する単位時間における電源力率θαβ、特に電源力率θαβの平均値を用いて、電源力率の目標値θαβ_refが調整される。
【0161】
具体的に、本実施形態2では、単位時間のうち、第1時間における平均電源力率θαβav15dayが力率目標値の基準値θαβ_reffrを超えている場合、単位時間のうち第1時間の後の第2時間における電源力率の目標値θαβ_refを、第1時間における電源力率の目標値θαβ_refよりも低くする。第1時間における平均電源力率θαβav15dayが力率目標値の基準値θαβ_reffrを下回る場合、第2時間における電源力率の目標値θαβ_refを、第1時間における電源力率の目標値θαβ_refよりも高くする。これにより、単位時間における電源力率の目標値θαβ_refの平均値の変動はできる限り抑えられるため、結果的に、単位時間における電源力率θαβの最適化がより確実に図られる。
【0162】
ここで、本実施形態2では、第1時間及び第2時間の合計時間は、単位時間と等しい。特に、第1時間及び第2時間は、単位時間の半分の時間となっている。これにより、第2時間における目標値θαβ_refの調整がし易くなるため、単位時間の間の目標値θαβ_refの平均値が変動しないようにすることが比較的容易に実現できる。
【0163】
電源力率の値が電気料金に影響を与える期間は「1ヶ月」である場合がある。これに対し、本実施形態2では、単位時間である「1ヶ月」間における電源力率の目標値θαβ_refの平均値の変動が抑えられる。従って、電源力率の平均値θαβav15dayに基づく電気料金の割引の適用を確実に受けたり、電源力率の低下度合いに基づく基本料金のペナルティが課されることを確実に抑制したりすることができる。
【0164】
ビル等の建物には、電力計が接続されている。この電力計は、電力以外にも電源力率も計測していることが多い。そこで、本実施形態2では、当該電力計を電源力率測定器(104)として利用しているため、特別に電源力率を計測するためのセンサや検出回路を取り付ける必要がない。従って、別途センサ及び検出回路を取り付けるための工事が不要であり、センサ及び検出回路を設けずに済む分コストを削減できる。
【0165】
本実施形態2では、電源力率測定器(104)は、測定結果を、負荷調整判断部(152)を含む電源力率デマンド制御器(105)に無線方式で送信する。これにより、電源力率測定器(104)と電源力率デマンド制御器(105)とを接続する配線自体が不要となり、当該配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0166】
本実施形態2では、負荷調整判断部(152)を含む電源力率デマンド制御器(105)は、生成した負荷器指令信号Fsを負荷器(101,102)の調整部(101c,102c)に無線方式で送信する。これにより、電源力率デマンド制御器(105)と負荷器(101,102)とを接続する配線自体が不要となり、当該配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0167】
本実施形態2では、負荷器(101)が空気調和装置である。ビル等の建物を設計する場合、空気調和装置の室外機と室内機とを繋ぐ冷媒配管工事などが必要であることから、建物に設置するべき空気調和装置の仕様は自ずと決定する。そのことから、建物の建設時に電源力率デマンド制御器(105)等と空気調和装置間の通信線を接続することができ、電源力率によって空気調和装置の運転能力を変更できる環境を、簡単に作りやすくなる。
【0168】
本実施形態2では、アクティブフィルタ(101b)が空気調和装置に組み込まれている。また、電源力率制御システム(200)は、調相器(131)を更に備える。これらにより、空気調和装置の力率を高く保つことができるため、実際の電源力率θαβを電源力率の目標値θαβ_refにできる限り早く収束させることができる。
【0169】
<実施形態2の変形例>
図12に示すように、電源力率制御システム(200)は、調相器(131)に代えて、アクティブフィルタ(130)を備えていても良い。アクティブフィルタ(130)は、交流電源(103)に対し負荷器(101,102)と並列に接続され、該負荷器(101,102)にて発生する高調波電流の低減を行うものである。アクティブフィルタ(130)は、電源力率デマンド制御器(105)により制御される。これにより、負荷器(101,102)の力率を高く保つことができるため、電源力率を目標値にできる限り早く収束させることができる。なお、この場合、負荷器(101)に別途アクティブフィルタが組み込まれていなくても良い。
【0170】
負荷器(101)は、空気調和装置以外であってもよい。負荷器(101)は、例えばビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明等であってもよい。
【0171】
電源力率測定器(104)は、建物内の電力計(スマートメータ等)である必要はない。
【0172】
電源力率測定器(104)は、無線方式のタイプでなくてもよい。
【0173】
電源力率デマンド制御器(105)は、無線方式のタイプでなくてもよい。
【0174】
負荷器(101)に、アクティブフィルタ(101b)が組み込まれていなくても良い。
【0175】
電源力率の目標値θαβ_refの調整において、単位時間の電源力率の"平均値”が使用されるのではなく、その時々の実際の電源力率θαβそのものが使用されてもよい。
【0176】
単位時間のうち、前半の第1時間における電源力率の平均値θαβav15dayが力率目標値の基準値θαβ_reffrを超える場合、後半の第2時間では電源力率の目標値θαβ_refを低くすると説明した。しかし、電源力率の目標値θαβ_refを低下させるタイミングはこれに限定されることない。例えば、電源力率の平均値が力率目標値の基準値θαβ_reffrを超過していると判断した場合、直ちに電源力率の目標値θαβ_refを低くしても良い。電源力率の平均値が力率目標値の基準値θαβ_reffrを下回っている場合も同様である。
【0177】
上記単位時間は、1ヶ月に限定されない。また、単位時間が1ヶ月の場合であっても、1ヶ月の日数は、30日に限定されない。
【0178】
第1時間及び第2時間は、単位時間の半分でなくてもよい。
【0179】
第1時間及び第2時間の合計時間は、単位時間よりも短くても良い。例えば、短時間を28日とした場合、第1時間及び第2時間の双方は、5日間や10日間であることができる。このように、第1時間及び第2時間の合計時間が単位時間よりも短いことにより、合計時間と単位時間との関係によっては、単位時間の間に電源力率の目標値θαβ_refを複数回変更することも可能である。これにより、単位時間における電源力率の目標値θαβ_refの平均値の変動を、きめ細かく抑えることができる。
【0180】
また、第1時間が5日間であって第2時間が10日間のように、第1時間と第2時間とは、等しくなくても良い。
【0181】
1台の負荷器(101)に対し複数台の調相器(131)またはアクティブフィルタ(130)が設けられていてもよい。
【0182】
調相器(131)は、進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみの構成であってもよい。
【0183】
負荷器(101,102)が空気調和装置である場合、空気調和装置は、冷房及び暖房のみを行う装置に限定されない。空気調和装置には、冷凍、換気、調湿が可能なものも含まれる。
【0184】
≪実施形態3〜実施形態10に関して≫
工場及びビル等においては、電動機等に電力を供給する動力源として、大型のインバータ装置が多数設置されている。インバータ装置は、他装置に悪影響を及ぼす高調波を発生する高調波発生源となる場合がある。
【0185】
そのため、商用電源(交流電源)からの電力が送られる電力系統にアクティブフィルタ装置が設けられる。アクティブフィルタ装置は、インバータ装置が接続された上記電力系統の高調波電流を検出し、検出した高調波電流とは逆位相の電流を生成して当該電力系統に供給することにより、当該電力系統における高調波を低減させている。これにより、当該電力系統の電圧歪み及び電流歪みなどが軽減され、他装置への高調波による悪影響が抑制される。高調波による悪影響を抑制することにより、力率が改善される。
【0186】
アクティブフィルタ装置の設計時、インバータ装置等の、高調波発生源となる負荷器の仕様が不明確であると、アクティブフィルタ装置の容量を適切な値に決定することは困難となる。そのため、この場合には、どのような大きさの高調波にも対応して負荷器の基本波力率を改善できるように、比較的大きな容量のアクティブフィルタが設置されることが多い。例えば、変圧器が設置される建物では、容量がこの変圧器の容量の約3分の1程度であるアクティブフィルタ装置が設置される。しかしこれでは、アクティブフィルタ装置の容量は実際の負荷に対して非常に大きく、オーバースペックな容量を有するアクティブフィルタ装置が設置されることとなる。アクティブフィルタ装置は、容量が大きい程高額となる。
【0187】
また、建物には、高調波発生源となるインバータ装置等を備える負荷器として、空気調和装置、エレベータ装置、照明装置、ポンプ装置等が設置される。しかし、これらの装置が最大負荷電力で動作している時間帯は限りなく少ない。例えば、負荷器である空気調和装置が最大負荷電力で動作する時間帯は、真夏の時期であって且つ最も気温が上昇する時間帯(例えば、日本においては8月初旬から中旬の14時頃)のみの場合が殆どである。また、一部の負荷器(例えば空気調和装置)が最大負荷電力で動作している時に、他の負荷器(例えばエレベータ装置及び照明装置等)が最大負荷電力で動作している可能性は限りなく少ない。
【0188】
すると、比較的大きな容量のアクティブフィルタ装置が設置されても、アクティブフィルタ装置が自身の能力(具体的には基本波力率を改善させる能力)を最大限発揮することはなく、高額なアクティブフィルタ装置を有効に利用できているとは言えない状況となる。
【0189】
また、建物には、調相装置として、アクティブフィルタ装置に代えて無効電力の位相を調整する調相器が設置されている場合がある。調相器に対しても、上述したアクティブフィルタ装置同様のことが言える。
【0190】
上記点に鑑み、以下の実施形態3〜実施形態10は、容量の比較的小さい調相装置やアクティブフィルタ装置を用いても、負荷器の基本波力率の改善を問題なく実行することにより、電源力率を改善して最適にするための技術について説明する。
【0191】
なお、以下では、実施形態3〜実施形態6を、調相装置に関する実施形態として記載している。このうち、実施形態4〜実施形態6は、実施形態3を基本とした、いわば実施形態3の変形例に相当する。また、実施形態7〜実施形態10を、アクティブフィルタ装置に関する実施形態として記載している。このうち、実施形態8〜実施形態10は、実施形態7を基本とした、いわば実施形態7の変形例である。
【0192】
≪実施形態3≫
<空調システムの概要>
図13は、本実施形態3に係る空調システム(300)の構成を示すブロック図である。この例では、空調システム(300)は、複数の負荷器(201,202)と、調相装置に相当するアクティブフィルタ装置(204)とを備える。本実施形態3では、複数の負荷器(201,202)のうち、負荷器(201)が空気調和装置である場合を例に採る。
【0193】
空調システム(300)は、マンション、工場、ビル、戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置され、空気調和装置である負荷器(201)によって室内の空気調和が行われる。
【0194】
上記ビル等には、交流電源(203)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(203)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、複数の負荷器(201,202)に電力を分岐して供給する。
【0195】
また、本実施形態3では、負荷器(202)が、インバータ回路等の高調波電流の発生源となり得る回路を備えている機器(高調波発生負荷器と命名する)である場合を例に採る。負荷器(202)としては、ビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明、更には、アクティブフィルタ等の高調波対策を実施していない、空気調和装置である負荷器(201)とは別の空気調和装置等を例示できる。
【0196】
各負荷器(201,202)は、制御器(240)(運転状態制御部に相当)と接続された調整部(201c,202c)を含む。調整部(201c,202c)それぞれは、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。調整部(201c,202c)は、制御器(240)から出力される負荷器指令信号Fs(後述)に基づき、各負荷器(201,202)の運転状態を変化させる運転パラメータを調整するものである。運転パラメータとは、具体的には負荷器(201,202)の電力、負荷器(201,202)の電流、負荷器(201,202)に含まれる電動機の回転速度等である。
【0197】
<負荷器(201)の構成>
空気調和装置である負荷器(201)は、上記調整部(201c)の他に、冷媒回路(図示せず)及び電力変換装置(201a)を有する。
【0198】
冷媒回路は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張機構、室内側熱交換器が冷媒配管によって接続されることで構成される。冷媒回路内には冷媒が充填されており、冷媒が冷媒回路内を循環することによって、室内は冷却または暖められる。
【0199】
電力変換装置(201a)は、詳細は図示していないが、交流電源(203)に接続されており、コンバータ回路及びインバータ回路を有する。電力変換装置(201a)は、交流電源(203)から交流電力を供給されると、これを所望周波数及び所望電圧に変換し、変換後の電力を圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給する。それにより、圧縮機は稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
【0200】
空気調和装置である負荷器(201)において、電力変換装置(201a)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、負荷器(201)に電力を供給する電流経路を介して、交流電源(203)に流出する可能性がある。なお、上述したように、負荷器(201)のみならず、高調波発生負荷器である負荷器(202)からも、高調波電流が、負荷器(202)に電力を供給する電流経路を介して交流電源(203)に流出する可能性がある。
【0201】
このような高調波電流は、一般的には、交流電源(203)側への流出レベルが規制されている。そのため、本実施形態3に係る空調システム(300)は、アクティブフィルタ装置(204)によって、上記高調波電流の低減を図っている。また、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められているところ、本実施形態3のアクティブフィルタ装置(204)は、基本波力率の改善機能も備えている。
【0202】
以下では、上記アクティブフィルタ装置(204)の構成について説明する。
【0203】
<アクティブフィルタ装置(204)>
アクティブフィルタ装置(204)は、交流電源(203)に接続されており、高調波発生負荷器である上記負荷器(201,202)から流出する高調波電流を打ち消す機能を有する。即ち、アクティブフィルタ装置(204)は、交流電源(203)の電流経路(以下、受電経路(212))における電流が正弦波に近づくように補償電流を流す。より具体的には、アクティブフィルタ装置(204)は、受電経路(212)に現れている高調波電流とは逆位相の補償電流を生成し、受電経路(212)に供給する。
【0204】
そして、アクティブフィルタ装置(204)は、上述した補償電流を流すことにより、基本波力率を改善する。この例では、基本波の無効成分も補償する補償電流を流すようにアクティブフィルタ装置(204)を構成して、基本波力率の改善を行う。
【0205】
空気調和装置である負荷器(201)において発生する高調波電流が最も大きくなるのは、空気調和装置の負荷が最も大きな場合(例えば冷房の最大出力時)と考えられる。負荷器(202)が空気調和装置であると仮定した場合も、該負荷器(202)において発生する高調波電流についても同様である。
【0206】
そのため、一般的には、アクティブフィルタ装置(204)は、負荷器(201,202)全てが一斉に最大負荷となった時の高調波電流を想定して、能力(生成可能な電力の大きさ)、即ち容量が設定される。ところが、負荷器(201,202)は、最大負荷の状態で使用されるよりも、最大負荷よりも小さい負荷で使用される場合の方が多い。すると、上記のように能力が設定されたアクティブフィルタ装置(204)は、負荷器(201,202)の高調波電流対策による力率改善のみに能力を使用したとすれば、能力が余剰となる期間が多いと考えられる。
【0207】
それ故、本実施形態3では、アクティブフィルタ装置(204)の能力(即ち容量)を、上述したような一般的な設定方法よりも小さく設定する。一例として、アクティブフィルタ装置(204)の能力(即ち容量)は、負荷器(201,202)全てが一斉に最大負荷となった時の高調波電流に対応する能力を100%とした場合の、約80%程度に設定される。能力(即ち容量)が大きい程アクティブフィルタ装置(204)は高額となるが、本実施形態3では、能力を比較的小さく設定するため、アクティブフィルタ装置(204)のコストダウンを図ることができる。
【0208】
本実施形態3に係るアクティブフィルタ装置(204)は、能力が比較的小さいながらも、上述した高調波電流対策による力率改善の機能を問題なく発揮して電源力率を改善させるための制御を行うが、これについては後述する。
【0209】
上記機能を実現するため、本実施形態3に係るアクティブフィルタ装置(204)は、
図13に示すように、電流源(230)(力率改善部に相当)、第1電流検出器(205a,205b)(電流検出部に相当)、第2電流検出器(225a,225b)、電圧検出器(260)、及び運転状態制御部に相当する制御器(240)を備える。
【0210】
―電流源―
電流源(230)は、高調波電流の低減及び基本波力率改善を行うための電流(すなわち補償電流)を生成することにより基本波力率を改善する、いわばアクティブフィルタである。
【0211】
電流源(230)の出力端子は、負荷器(201,202)の受電経路(212)に接続されており、生成された補償電流は受電経路(212)に出力される。具体的に、電流源(230)は、交流電源(203)に対し負荷器(201,202)と並列に接続されている。
【0212】
図示していないが、本実施形態3の電流源(230)は、いわゆるインバータ回路を用いて構成されている。電流源(230)には、制御器(240)より、後述するスイッチング指令値(G)が入力される。電流源(230)は、スイッチング指令値(G)に応じてスイッチングすることによって、補償電流を生成する。
【0213】
−第1電流検出器−
第1電流検出器(205a,205b)は、交流電源(203)の受電経路(212)における電流値を検出する。詳しくは、第1電流検出器(205a,205b)は、交流電源(203)から出力される出力電流が、電流源(230)及び各負荷器(201,202)に分岐して流れる前の交流電源(203)の出力電流の値を検出する。
【0214】
この例では、第1電流検出器(205a,205b)は、2つ設けられている。具体的に、第1電流検出器(205a)は、交流電源(203)におけるR相の電流値(Irs)を検出する。第1電流検出器(205b)は、交流電源(203)におけるT相の電流値(Its)を検出する。それぞれの第1電流検出器(205a,205b)の検出結果は、制御器(240)に送信される。
【0215】
それぞれの第1電流検出器(205a,205b)の構成には、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。
【0216】
また、それぞれの第1電流検出器(205a, 205b)は、検出結果を制御器(240)に無線方式で送信する構成となっている。交流電源(203)とアクティブフィルタ装置(204)との距離は、20〜30メートル離れることがある。そのため、第1電流検出器(205a,205b)からアクティブフィルタ装置(204)までを配線で接続すると、この配線を長く引き回すこととなり、また、第1電流検出器(205a,205b)とアクティブフィルタ装置(204)との接続作業自体にかなりの手間がかかってしまう。これに対し、本実施形態3では、第1電流検出器(205a,205b)の検出結果が制御器(240)に無線方式で送信されるため、上記配線自体が不要となり、配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0217】
また、第1電流検出器(205a,205b)に流れる電流により第1電流検出器(205a,205b)を貫く磁束が時間に対して変化する現象を電磁誘導というが、その電磁誘導によって生じる起電力である誘導起電力を、第1電流検出器(205a,205b)を駆動させる電源(例えば通信のための電源)として利用してもよい。そのことにより、第1電流検出器(205a,205b)は、無電源方式で動作(すなわち第1電流検出器(205a,205b)の外部から電源を接続せずに動作)でき、第1電流検出器(205a,205b)を外部の電源と接続する作業が不要となる。
【0218】
−第2電流検出器−
第2電流検出器(225a,225b)は、アクティブフィルタ装置(204)に入力される電流値(以下、電流値(Ir2a,It2a)と命名する)を検出する。
【0219】
この例では、第2電流検出器(225a,225b)は、2つ設けられている。第2電流検出器(225a)は、交流電源(203)から電流源(230)に入力されるR相の電流値(Ir2a)を検出し、第2電流検出器(225b)は、交流電源(203)から電流源(230)に入力されるT相の電流値(It2a)を検出する。それぞれの第2電流検出器(225a,225b)によって検出された電流値(Ir2a,It2a)は、制御器(240)に送信される。
【0220】
それぞれの第2電流検出器(225a,225b)の構成は、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。
【0221】
また、それぞれの第2電流検出器(225a,225b)が電流値(Ir2a,It2a)を送信する態様は、有線方式及び無線方式のいずれであってもよい。
【0222】
また、第2電流検出器(225a,225b)は、上記第1電流検出器(205a,205b)と同様、無電源方式で動作できる構成であってもよい。
【0223】
なお、
図1では、第2電流検出器(225a,225b)が、アクティブフィルタ装置(204)に入力される3相分の電流(Ir2a,Is2a,It2a)のうち、2相分の電流(Ir2a,It2a)に対応して2つ設けられた例を示している。しかし、第2電流検出器は、3相分の電流(Ir2a,Is2a,It2a)に対応して3つ設けられても良い。
【0224】
−電圧検出器−
電圧検出器(260)は、交流電源(203)の各相の出力端子に接続されている。電圧検出器(260)は、交流電源(203)の線間電圧(Vrs,Vtr,Vst)を検出するセンサである。
【0225】
−制御器−
制御器(240)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。
図13に示すように、制御器(240)は、電流源(230)、第1電流検出器(205a,205b)、第2電流検出器(225a,225b)、電圧検出器(260)及び各負荷器(201,202)に接続されており、各検出器(205a,205b,225a,22b,260)の検出結果に基づいて、電流源(230)及び各負荷器(201, 202)の動作を制御する。
【0226】
本実施形態3に係る制御器(240)は、電流源(230)の出力電流の調整制御、及び、実際の交流電源(203)の電源力率に基づく各負荷器(201,202)の運転状態の調整制御を行う。このような制御を行うため、制御器(240)は、
図14のブロック図として例示するように、位相検出部(246)、第1電流演算部(245)、第2電流演算部(244)、負荷電流演算部(243)、電流指令演算部(242)、ゲートパルス発生器(241)、電力演算部(247)、力率演算部(248)、力率目標値設定部(249)、及び負荷調整判断部(250)を有する。負荷調整判断部(250)は、減算部(251)、積分演算部(252)及び判定部(253)を有する。
【0227】
このうち、電流源(230)の出力電流の調整制御は、主に、位相検出部(246)、第1電流演算部(245)、第2電流演算部(244)、負荷電流演算部(243)、電流指令演算部(242)及びゲートパルス発生器(241)にて行われる。実際の交流電源(203)の電源力率に基づく各負荷器(201,202)の運転状態の調整制御は、電力演算部(247)、力率演算部(248)、力率目標値設定部(249)及び負荷調整判断部(250)にて行われる。
【0228】
<電流源(230)の出力電流の調整制御>
位相検出部(246)には、電圧検出器(260)が検出した交流電源(203)の線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)のうち、1相分の線間電圧(Vrs)が入力される。位相検出部(246)は、入力された線間電圧(Vrs)を用いて受電経路(212)における電源電圧の位相を検出し、検出した位相を第1電流演算部(245)及び第2電流演算部(244)に出力する。
【0229】
第1電流演算部(245)には、位相検出部(246)によって検出された電源電圧の位相、及び、第1電流検出器(205a,205b)によって検出された交流電源(203)の出力電流(Irs,Its)が入力される。第1電流演算部(245)は、入力された電源電圧の位相及び交流電源(203)の出力電流(Irs,Its)に基づいて、高調波電流の補償(高調波電流の低減)と、基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行うために必要な電流(第1電流値(i1)とする)を求め、当該第1電流値(i1)を負荷電流演算部(243)に出力する。より具体的には、第1電流演算部(245)は、第1電流検出器(205a,205b)の検出結果(電流値(Irs,Its))から、高調波電流成分及び基本波の無効成分を抽出して、第1電流値(i1)として出力する。
【0230】
第2電流演算部(244)には、位相検出部(246)によって検出された電源電圧の位相、及び、第2電流検出器(225a,225b)によって検出された電流源(230)に入力される電流値(Ir2a,It2a)が入力される。第2電流演算部(244)は、入力された電源電圧の位相及び電流値(Ir2a,It2a)に基づいて、現時点での高調波電流の補償(高調波電流の低減)及び基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行っているアクティブフィルタ装置(204)に流れ込む電流(第2電流値(i2)とする)を求め、当該第2電流値(i2)を負荷電流演算部(243)に出力する。より具体的には、第2電流検出器(225a,225b)の検出結果(電流値(Ir2a,It2a))から、高調波電流成分及び基本波の無効成分を抽出して、第2電流値(i2)として出力する。
【0231】
負荷電流演算部(243)は、高調波発生負荷器である各負荷器(201,202)に流れる電流を算出する。交流電源(203)の各相の出力電流値(Irs,Itr,Its)からアクティブフィルタ装置(204)の電流源(230)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)の減算により、各負荷器(201,202)に流れる電流の合計値が求められる。これを利用して、本実施形態3では、各負荷器(201,202)にて発生する高調波を抑制し、交流電源(203)付近の配電・受電端の基本波力率の改善、及び高調波電流の低減を実現している。具体的に、本実施形態3では、負荷電流演算部(243)は、各負荷器(201,202)に流れる電流の合計値を、第1電流演算部(245)の第1電流値(i1)から第2電流演算部(244)の第2電流値(i2)を減算することによって求め、求めた演算結果を電流指令演算部(242)に出力する。
【0232】
電流指令演算部(242)は、負荷電流演算部(243)の演算結果の逆位相の電流値を演算して、その値を電流指令値(Iref)としてゲートパルス発生器(241)に出力する。
【0233】
ゲートパルス発生器(241)は、電流源(230)を構成するインバータ回路におけるスイッチングを指示するためのスイッチング指令値(G)、を生成する。詳しくは、ゲートパルス発生器(241)は、電流源(230)が出力する電流値と上記電流指令値(Iref)との偏差に基づいてスイッチング指令値(G)を生成する動作を繰り返す、いわゆるフィードバック制御を行う。これにより、電流源(230)からは、電流指令値(Iref)に相当する電流(補償電流)が受電経路(212)に供給される。より詳しくは、ゲートパルス発生器(241)では、第2電流演算部(244)で求めた第2電流値(i2)が電流指令値(Iref)に一致するようなスイッチング指令値(G)を生成して電流源(230)に出力する。そのことにより、負荷器(201,202)に流れる電流に含まれている高調波成分とアクティブフィルタ装置(204)が出力する電流とは相殺され、交流電源(203)の出力電流(Irs,Itr,Its)は、高調波電流が除去された正弦波となり、力率が改善される。
【0234】
<各負荷器(201,202)の運転状態の調整制御>
電力演算部(247)には、電圧検出器(260)が検出した交流電源(203)の3相分の線間電圧(Vrs,Vtr,Vst)、及び、第1電流検出器(205a,205b)が検出した交流電源(203)の出力電流(Irs,Its)が入力される。電力演算部(247)は、入力されたこれらの値を下式(6)及び下式(7)に当てはめて、回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを演算する。
【0237】
次いで、電力演算部(247)は、上式(6)及び上式(7)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(8)に当てはめて、有効電力Pαを演算する。また、電力演算部(247)は、上式(6)及び上式(7)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(9)に当てはめて、無効電力Pβを演算する。
【0240】
力率演算部(248)は、電力演算部(247)で求められた有効電力Pα及び無効電力Pβそれぞれを下式(10)に当てはめて、交流電源(203)の電源力率θαβを演算する。即ち、力率演算部(248)によって求められる電源力率θαβは、実際の電源力率θαβを意味する。
【0242】
力率目標値設定部(249)は、力率の目標値θαβ_refを予め設定する。なお、本実施形態3に係る力率目標値設定部(249)は、力率の目標値θαβ_refを、0.995〜1.004の間の値に設定する。電源力率を評価する場合、小数第3位を四捨五入することになっている。そのため、力率の目標値θαβ_refが0.995〜1.004の間の値に設定されることにより、当該力率の目標値θαβ_refに基づいて制御される実際の電源力率は、“1”と評価されるためである。
【0243】
負荷調整判断部(250)の減算部(251)には、力率演算部(248)が求めた実際の電源力率θαβと、力率目標値設定部(249)が設定した力率の目標値θαβ_refとが入力される。減算部(251)は、力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算する。減算部(251)は、減算した値を、積分演算部(252)に出力する。
【0244】
積分演算部(252)は、減算部(251)による減算結果(即ち、力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算した結果)を、積分する。
【0245】
判定部(253)には、積分演算部(252)の積分結果が入力される。判定部(253)は、積分結果に基づき、基本波力率が力率の目標値θαβ_refに近づくように、負荷器(201,202)の運転状態を変化させる運転パラメータを制御する。具体的に、判定部(253)は、基本波力率(電源力率)を力率の目標値θαβ_refに近づけるべく、運転パラメータを調整して負荷器(201,202)の運転能力を下げるための制御信号である負荷器指令信号Fsを、各負荷器(201,202)に出力する。この負荷器指令信号Fsによって負荷器(201,202)の運転能力が減少すると、アクティブフィルタ装置(204)の補償能力には余裕が生じるようになり、やがて基本波力率は上昇して力率の目標値θαβ_refと概ね一致するようになる。
【0246】
ここで、上記運転パラメータとは、各負荷器(201,202)の電力、各負荷器(201,202)の電流、電動機の回転速度等の少なくとも1つを云う。
【0247】
負荷器(201,202)の動作、アクティブフィルタ装置(204)の補償量、電源力率、負荷調整判断部(250)の動作の経時的変化の一例を
図15に示す。
図15(a)は、負荷器(202)の動作に相関する出力電力を示しており、この例では負荷器(202)としてポンプなどの一定負荷を想定している。
図15(b)は、負荷器(201)の動作に相関する出力電力を示しており、この例では負荷器(201)として空気調和装置を想定している。時刻t0から時刻t2までの間、負荷器(202)は、時刻に関係なく、出力電力が一定となるような安定した動作を行っている。これに対し、時刻t0から時刻t2までの間、負荷器(201)は、空調負荷の上昇に伴い出力電力を上昇させて続けている。なお、この時刻t0から時刻t2までの間とは、真夏の最も暑い日の日中(14時〜15時)で外気温度が異常に高くなり、急激に空調負荷が上昇していることを想定している。
【0248】
図15(c)は、アクティブフィルタ装置(204)の補償量を電力にて示している。時刻t0から時刻t1の間、アクティブフィルタ装置(204)の補償量は、上記負荷器(201)の出力電力の上昇に伴って上昇している。つまり、時刻t0から時刻t1までの間、負荷器(201)の出力電力の上昇分をアクティブフィルタ装置(204)が補償している。そのため、時刻t0から時刻t1までの間、
図15(d)に示す電源力率は、概ね目標値の状態が維持されている。
【0249】
しかし、時刻t1以降、負荷器(201)の出力電力はなおも上昇し続けているが、アクティブフィルタ装置(204)の補償量は時刻t1の時点で限度値に達し、その後は限度値で一定である状態が続いている。そのため、時刻t1以降、電源力率は、負荷器(201)の出力電力の上昇とは対照的に、目標値から低下していく。これは、負荷器(201)の出力電力が上がっているものの、アクティブフィルタ装置(204)の補償能力は既に限度値に達しているため不足していることに起因する。
【0250】
そのため、時刻t0から時刻t1の間は、力率の目標値θαβ_refと実際の電源力率θαβとの間は差が生じておらず、
図15(e)に示すように、負荷調整判断部(250)の積分演算部(252)の出力結果(出力信号)は概ね“0”のままである。しかし、時刻t1以降は、力率の目標値θαβ_refと実際の電源力率θαβとの間に差が生じ、積分演算部(252)の出力結果(出力信号)は増加する。
【0251】
時刻t2は、積分演算部(252)の出力結果(出力信号)が判定値に達した時点を表す。この時刻t2では、判定部(253)は、積分演算部(252)の出力結果(出力信号)を受けて、
図15(f)に示すように、各負荷器(201,202)の運転状態を時刻t2以前とは異ならせるための負荷器指令信号Fsを(即ち、“オン”を示す負荷器指令信号Fs)、各負荷器(201,202)に出力する。その負荷器指令信号Fsにより、
図15(a)(b)に示すように時刻t2から時刻t3の間、両負荷器(201,202)の運転状態は、出力電力が低下する方向に変化する。すると、
図15(c)に示すように、時刻t2以降、両負荷器(201,202)の出力電力が低下しているためにアクティブフィルタ装置(204)の補償量は限度値から低下する。このことは、アクティブフィルタ装置(204)の補償量に余裕が生じていることを意味する。従って、
図15(d)に示すように、実際の電源力率(即ち、実際の電源品質)は力率の目標値θαβ_ref(即ち、電源品質の目標値)と概ね一致する程度に回復することができる。
【0252】
このように、本実施形態3に係る制御器(240)は、実際の電源力率θαβが力率の目標値θαβ_refから低下すると、負荷器(201,202)の電力及び電流、電動機の回転速度等の少なくとも1つである運転パラメータを低下させるよう調整する。そのことにより、制御器(240)は、各負荷器(201,202)の運転能力を強制的に絞り、実際の電源力率θαβと力率の目標値θαβ_refとが一致する状態を作り出す“電源力率デマンドコントロール”を実施する。“電源力率デマンドコントロール”とは、基本波力率が力率の目標値θαβ_refに近づくように、本実施形態1に係る制御器(240)が、第1電流検出器(205a,205b)の検出結果に基づいて上記運転パラメータを調整する制御と言える。
【0253】
実際の電源力率θαβと力率の目標値θαβ_refとが一致している状態が、時刻t2からある期間(
図15では時刻t2から時刻t3までの期間)経過すると、判定部(253)は、
図15(f)に示すように、出力する負荷器指令信号Fsを時刻t0からt2までの間と同様、“オフ”にする。そのことにより、両負荷器(201,202)は、強制的な運転能力の低下から解放され、通常の指令に基づく制御により通常運転を行う。
【0254】
また、時刻t3では、判定部(253)は、
図15(g)に示すように、積分演算部(252)の積分結果をリセット(ゼロにクリアする)ためのReset信号を出力する。このことにより、積分演算部(252)の積分結果(出力信号)はゼロになり、積分演算部(252)は、次に実際の電源力率θαβが力率の目標値θαβ_refより低下した場合に対応できるようになる。
【0255】
<効果>
電源品質である電源力率は、基本波力率に高調波成分による力率を加えることによって得られる。本実施形態3では、上記基本波力率が電源力率の目標値θαβ_refに近づくように、負荷器(201,202)の運転状態が変更される。これにより、実際の電源品質である実際の電源力率θαβは、電源品質の目標値である電源力率の目標値θαβ_refに近づく。このように、ここでは、仮にアクティブフィルタ装置(204)の容量が小さくても、負荷器(201,202)の運転状態の制御によって負荷器(201,202)の運転能力が例えば減らす方向に調整されるため、アクティブフィルタ装置(204)の基本波力率を改善させる能力は回復する。これにより、アクティブフィルタ装置(204)の容量が比較的小さくとも、基本波力率の改善は問題なくなされる。従って、アクティブフィルタ装置(204)の容量を積極的に下げることができ、その分のコストダウンを図ることができる。
【0256】
具体的に、制御器(240)は、基本波力率が目標値に近づくように、第1電流検出器(205a,205b)の検出結果に基づいて運転パラメータを調整する。このように、運転パラメータの調整時に、実際に検出された交流電源(203)の出力電流を用いることにより、実際の電源力率θαβを把握することができる。従って、基本波力率をより確実に目標値θαβ_refに近づけるように運転パラメータを調整し易くなる。
【0257】
また、本実施形態3では、第1電流検出器(205a,205b)は、検出結果を制御部(240)に無線方式で送信する構成となっている。これにより、第1電流検出器(205a,205b)と制御部(240)とを接続する配線自体が不要となり、当該配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0258】
また、本実施形態3では、第1電流検出器(205a,205b)は、無電源方式で動作する構成となっている。これにより、第1電流検出器(205a,205b)を外部の電源と接続する作業が不要となる。
【0259】
また、本実施形態3では、調相装置がアクティブフィルタ装置(204)である場合を例示している。これにより、負荷器(201,202)の力率を高く保つことができるため、基本波力率をできる限り早く改善することができる。
【0260】
また、本実施形態3では、負荷器(201)が空気調和装置である。ビルや工場等の建物を設計する場合、空気調和装置の室外機と室内機とを繋ぐ冷媒配管工事などが必要であることから、建物に設置するべき空気調和装置の仕様は自ずと決定する。そのことから、建物の建設時に制御器(240)等と空気調和装置間の通信線を接続することができ、電源力率によって空気調和装置の運転能力を変更できる環境を、簡単に作りやすくなる。
【0261】
≪実施形態4≫
図16は、実施形態3の変形例としての、実施形態4に係るアクティブフィルタ装置(304)を含む空調システム(400)の構成を示すブロック図である。実施形態4が実施形態3と異なる点は、高調波発生負荷器である他の負荷器(302)が単相電圧で駆動する機器であることと、他の負荷器(302)は、LEDなどの照明機器及び単相のファン・ポンプなどを想定していることである。特に、本実施形態4では、他の負荷器(302)(すなわち単相電圧で駆動する機器)の接続相が判明しない場合を想定して、3つの第1電流検出器(305a,305b,305c)が設けられている。
【0262】
なお、
図16では、
図13と対応する構成要素に、“330”等の番号を付しているが、その詳細は
図13に係る実施形態3と同様である。従って、以下では、実施形態3と異なる点についてのみ説明する。
【0263】
3つの第1電流検出器(305a,305b,305c)それぞれは、交流電源(303)の各相(R,S,T)に対応して設けられており、対応する各相(R,S,T)の電流値を検出する。すなわち、本実施形態4では、負荷器(302)が単相交流で動作する機器であっても、3相すべての電流値を検出するため、電流値を確実に検出することができる。
【0264】
また、電圧検出器(360)は、交流電源(303)のR相及びS相に接続され、T相には接続されていない。従って、電圧検出器(360)は、交流電源(303)の線間電圧(Vrs)のみを検出して制御器(340)に入力する。これは、実施形態3にて述べたように、制御器(340)は、線間電圧(Vrs)のみを用いて受電経路(312)における電源電圧の位相を演算により検出するためである。他の線間電圧(Vst,Vtr)それぞれは、線間電圧(Vrs)から120度位相が変化している(具体的には、位相が120進むか遅れている)。このことから、本実施形態4に係る制御器(340)は、線間電圧(Vrs)から電源電圧の振幅も演算し、演算した電源電圧の振幅及び位相から他の線間電圧(Vst,Vtr)の電源電圧の位相及び振幅を求めることができる。このようにして求めた結果は、上式(6)に代入することができる。それ故、実際の線間電圧(Vst,Vtr)の検出を省略することが可能である。
【0265】
なお,線間電圧(Vst,Vtr)の検出の省略及び線間電圧(Vrs)に基づく他の線間電圧(Vst,Vtr)の演算は、上記実施形態3にて採用されてもよい。
【0266】
<効果>
本実施形態4によれば、単相電圧で駆動する他の負荷器(302)が接続された場合において、交流電源(303)の各相(R,S,T)に対応して第1電流検出器(305a,305b,305c)が複数設けられている。そのため、他の負荷器(302)の接続相が不明であっても、3相すべての電流値を確実に把握することが可能となる。
【0267】
また、本実施形態4によれば、単相電圧で駆動する他の負荷器(302)が接続された場合において、実際の線間電圧(Vst,Vtr)の検出を省略している。これにより、アクティブフィルタ装置(304)のコストを不必要に上げることなく、高調波電流の低減及び基本波力率の改善を図ることが可能となる。
【0268】
また、本実施形態4は、上記実施形態3にて述べた効果も奏する。
【0269】
なお、本実施形態4において、単相電圧で駆動する負荷器(302)が、交流電源(303)のどの相に接続されるかが予め判明している場合、負荷器(302)が接続される相に第1電流検出器が設けられていてもよい。
【0270】
≪実施形態5≫
図17は、実施形態3の変形例としての、実施形態5に係るアクティブフィルタ装置(404)を含む空調システム(500)を示すブロック図である。実施形態5が実施形態3と異なる点は、
図17に示すように、受電経路(412)のうち交流電源(403)の出力電流(Irs,Itr,Its)が各負荷器(401,402)に分岐するポイントから各負荷器(401,402)までを結ぶ配線(412a,412b)に、第1電流検出器(406a,406b,407a,407b)が接続されていることである。このことにより、各負荷器(401,402)が、最大負荷状態または軽負荷状態であるか等といった、各負荷器(401,402)の動作状態を判断することができる。
【0271】
なお、
図17では、
図13と対応する構成要素に、“430”等の番号を付しているが、その詳細は
図13に係る実施形態3と同様である。従って、以下では、実施形態3と異なる点についてのみ説明する。
【0272】
具体的に、第1電流検出器(406a,406b)は、負荷器(402)の入力側において、交流電源(403)のT相及びR相それぞれに対応して設けられている。第1電流検出器(406a)は、負荷器(402)に入力される交流電源(403)の出力電流(Its2)を検出し、電流検出器(406b)は、負荷器(402)に入力される交流電源(403)の出力電流(Irs2)を検出する。第1電流検出器(407a,407b)は、負荷器(401)の入力側において、交流電源(403)のR相及びT相それぞれに対応して設けられている。第1電流検出器(407a)は、負荷器(401)に入力される交流電源(403)の出力電流(Irs1)を検出し、電流検出器(407b)は、負荷器(401)に入力される交流電源(403)の出力電流(Its1)を検出する。
【0273】
即ち、第1電流検出器(406a,406b)は、負荷器(402)に対応して設けられ、第1電流検出器(407a,407b)は、負荷器(401)に対応して設けられている。
【0274】
また、実施形態5が実施形態3と異なる点は、上記実施形態4と同様、電圧検出器(460)は、交流電源(403)の線間電圧(Vrs)のみを検出して制御器(440)に入力することである。制御器(440)は、線間電圧(Vrs)から他の線間電圧(Vst,Vtr)の電源電圧の位相及び振幅を求める。
【0275】
更に、実施形態5が実施形態3と異なる点は、制御器(440)が、各負荷器(401,402)用の負荷器指令信号(Fs1,Fs2)を出力することである。このような制御器(440)の一例を、
図18にてブロック図で示す。
図18に係る制御器(440)は、実施形態3に係る
図14において、加算部(457a,457b)を更に有する。負荷調整判断部(450)には、負荷器電流実効値演算部(454)が更に追加されている。
【0276】
即ち、制御部(440)は、位相検出部(446)、第1電流演算部(445)、第2電流演算部(444)、負荷電流演算部(443)、電流指令演算部(442)、ゲートパルス発生器(441)、電力演算部(447)、力率演算部(448)、力率目標値設定部(449)、負荷調整判断部(450)に加え、加算部(457a,457b)を更に有する。負荷調整判断部(450)は、減算部(451)、積分演算部(452)判定部(453)に加え、負荷器電流実効値演算部(454)を更に有する。
【0277】
以下では、本実施形態5に係る制御器(440)の構成のうち、実施形態3に係る制御器(240)と異なる点のみを説明する。
【0278】
加算部(457a)は、各第1電流検出器(406b,407a)の検出結果(Irs2,Irs1)を加算し、加算結果を交流電源(403)の出力電流(Irs)として電力演算部(447)及び第1電流演算部(445)に出力する。加算部(457b)は、各第1電流検出器(406a,407b)の検出結果(Its2,Its1)を加算し、加算結果を交流電源(403)の出力電流(Its)として電力演算部(447)及び第1電流演算部(445)に出力する。
【0279】
第1電流演算部(445)は、各加算部(457a,457b)の加算結果である交流電源(403)の出力電流(Irs,Its)から、高調波電流成分及び基本波の無効成分を抽出して、第1電流値(i1)として出力する。
【0280】
電力演算部(447)は、電圧検出器(460)が検出した交流電源(403)の1相分の線間電圧(Vrs)から残りの相の線間電圧(Vst,Vtr)を求め、3相の線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)と各加算部(457a,457b)の加算結果である交流電源(403)の出力電流(Irs,Its)とを、上式(6)及び上式(7)にて用いる。
【0281】
負荷器電流実効値演算部(454)は、入力された各第1電流検出器(406a,407b)の検出結果(Its2,Its1)を用いて、負荷器(401)に流れる電流の実効値(I1)と負荷器(402)に流れる電流の実効値(I2)とを演算し、これを判定部(453)に出力する。
【0282】
判定部(453)の動作について、
図19を用いて説明する。
図19では、負荷器(401,402)の動作、アクティブフィルタ装置(404)の補償量、電源力率、負荷調整判断部(450)の動作の経時的変化の一例を示している。
図19(b)〜
図19(e)は、実施形態3の
図15(b)〜
図15(e)と同様である。
【0283】
図19(a)及び
図19(b)で示すように各負荷器(401,402)の出力電力が変化する際、各負荷器(401,402)の電流実効値(I1,I2)は、
図19(f)に示すように変化する。具体的に、負荷器(402)の電流実効値(I2)は、一定であるが、負荷器(401)の電流実効値(I1)は、時刻t0から時刻t2の直前まで増加している。時刻t0から時刻t2の間、負荷器(401)の電流実効値(I1)は負荷器(402)の電流実効値(I2)よりも多い。そのため、交流電源(403)からみると負荷器(401)は負荷器(402)よりも多くの電力を使用していることが判り、また負荷器(402)よりも負荷器(401)の方が、
図19(d)の電源力率の低下に寄与する度合が大きいと推測できる。
【0284】
そのことを利用して、判定部(453)は、積分演算部(452)の出力信号が判定値に至った時刻t2以降、
図19(g)及び
図19(h)に示す負荷器指令信号(Fs1,Fs2)の出力を行う。具体的に、判定部(453)は、
図19(g)に示すように、負荷器(402)に指令する負荷器指令信号(Fs2)については出力停止の状態を保つが(オフのまま)、
図19(h)に示すように、負荷器(401)に指令する負荷器指令信号(Fs1)を時刻t2から時刻t3間出力して(オン)、負荷器(401)のみの運転状態を変化させるための運転パラメータを小さくするようにする。
【0285】
これにより、時刻t2から時刻t3の間、負荷器(402)の運転状態は時刻t2以前の状態から変化しないため、負荷器(402)の出力電力及び電流実効値(I2)も変化していない。一方で、電源力率の低下に寄与する度合が大きい負荷器(401)の、時刻t2から時刻t3の間の運転状態は、負荷器(401)の運転能力が低下するように変化する。これに伴い、負荷器(401)の出力電力及び電流実効値(I1)は、負荷器指令信号(Fs1)が出力される直前の状態よりも低くなる。これにより、アクティブフィルタ装置(404)の補償量も、時刻t2から時刻t3の間、負荷器指令信号(Fs1)が出力される直前の状態(即ち限度値)よりも低下し、補償に余裕がある状態となる。
【0286】
このように、本実施形態5に係る制御器(440)は、第1電流検出器(406a,406b,407a,407b)の検出結果等に基づいて、各負荷器(401,402)のうち運転能力を低下させるべき対象を決定する。
図19では、当該対象が負荷器(401)と決定されている。そして、決定した対象の運転能力を低下させるように、決定した対象の運転パラメータが調整され、基本波力率が力率の目標値θαβ_refに近づいている。これにより、運転能力を低下させる対象となる負荷器の数を必要最低限にすることができ、運転能力を低下させない負荷器については、運転状態を維持させることができる。
【0287】
なお、上記で説明した以外の動作については、実施形態3と同様である。
【0288】
<効果>
本実施形態5によれば、複数の負荷器(401,402)が接続された電力系統において、負荷器(401,402)の運転能力を個別に小さくすることができる。そのため、不必要な負荷器(401,402)の運転能力を低下させてしまうことを、できるだけ抑制することができる。
【0289】
また、本実施形態5は、実施形態3と同様の効果を奏し、アクティブフィルタ装置(404)のコストを不必要に上げることなく、高調波電流の低減及び基本波力率の改善を図ることができる。
【0290】
≪実施形態6≫
図20は、実施形態3の変形例としての、実施形態6に係る調相設備(508)を示す空調システム(600)のブロック図である。実施形態6が実施形態3と異なる点は、調相装置として、アクティブフィルタ装置(204)に代えて調相設備(508)が設けられていることである。
【0291】
調相設備(508)は、実施形態3と同様の第1電流検出器(505a,505b)及び電圧検出器(560)の他に、負荷器(501,502)の高調波電流の位相を変更することによって基本波力率の改善を行う調相器(531)(力率改善部に相当)を備える。
【0292】
調相器(531)は、建物全体の力率を改善するために取り付けらえているものであって、交流電源(503)に対し負荷器(501,502)と並列に接続されており、各負荷器(501,502)に供給される交流電力のうち無効電力を制御する。調相器(531)は、複数の進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)と複数のリアクトル(La,Lb,Lc)とを含む。各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)は、受電経路(512)のうち、調相設備(508)への各分岐配線(512c)上に、直列に接続されている。進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)は、3相の交流電源(3)の各相に対応して3つ設けられている。リアクトル(La,Lb,Lc)は、各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)に対応して3つ設けられており、各リアクトル(La,Lb,Lc)は、各進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)に直列に接続されている。
【0293】
本実施形態6において、調相器(531)が進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみならずリアクトル(La,Lb,Lc)を含む理由は、仮に進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)が短絡故障した際に調相器(531)には流れる電流の大きさをリアクトル(La,Lb,Lc)によって絞ることができるためである。
【0294】
そして、本実施形態6の調相設備(508)は、
図21に示す構成の制御器(540)を更に備える。
図21に示すように、制御器(540)は、実施形態3に係る
図14から、電流源(230)の出力電流の調整制御を行う機能部(
図14のゲートパルス発生器(241)、電流指令演算部(242)、負荷電流演算部(243)、第2電流演算部(244)、第1電流演算部(245)、位相検出部(246))を省略し、各負荷器(501,502)の運転状態の調整制御を行う機能部(
図21の電力演算部(547)、力率演算部(548)、力率目標値設定部(549)、負荷調整判断部(550))のみで構成される。負荷調整判断部(550)は、
図14と同様、減算部(551)、積分演算部(552)及び判定部(553)を有する。制御器(540)の、各負荷器(501,502)の運転状態の調整制御の動作は実施形態3と同様であるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0295】
なお、制御器(540)は、調相設備(508)とは別に設けられていても良い。この場合、負荷器(501,502)の運転能力の調整機能及び電源力率の演算機能を制御器(540)が有することに鑑みると、ビル全体電力などの管理している管理室や集中管理室に制御器(540)が設置されていることが好ましい。
【0296】
<効果>
本実施形態6の空調システム(600)には、負荷器(501,502)の位相を変更することによって基本波力率を改善する調相器(531)を含んだ調相設備(508)が備えられている。このような調相設備(508)において、進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)の電流容量を低減しながらも、制御器(540)は、実施形態3と同様の各負荷器(501,502)の運転状態の調整制御を行う。これにより、負荷器(501,502)の力率を高く保つことができるため、基本波力率をできる限り早く改善することができる。また、調相設備(508)を小型にしてコストを抑えつつも、高調波対策は問題なく行われる。
【0297】
本実施形態6では、調相器(531)は、進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)及びリアクトル(La,Lb,Lc)を含む構成となっている。これにより、仮に進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)において短絡故障が発生したとしても、調相器(531)に流れる電流の大きさをリアクトル(La,Lb,Lc)によって絞ることができる。従って、例えば短絡故障の発生時、調相器(531)に大きな電流が過渡的に流れ、その電流が調相器(531)以外にも影響を及ぼし、重度の不具合が引き起こされるおそれを防ぐことができる。
【0298】
また、本実施形態6は、上記実施形態3にて述べた効果も奏する。
【0299】
≪実施形態3〜実施形態6の変形例≫
上記実施形態6の調相装置(508)において、上記実施形態1と同様に、第1電流検出器(505a,505b)に代えて電力計(9)が設けられる構成が採用されてもよい。この場合、制御器(540)は、実施形態1の
図2と同様、
図21から、電源力率θαβの演算に用いる機能部(電力演算部(547)及び力率演算部(548))を省略した構成となる。
【0300】
上記実施形態3〜6において、1台の負荷器に対し複数台の調相装置(アクティブフィルタ装置または調相設備)が設けられていてもよい。この場合、調相装置は、各調相装置の電流容量に合わせて、補償電流を分担するとよい。
【0301】
電力の使用量等の情報を電力会社などに送信する、いわゆるスマートメータがビルや工場等の建物に予め設置されている場合は、上記実施形態3〜6の第1電流検出器として、スマートメータを利用してもよい。
【0302】
上記実施形態6において、調相器(531)は、進相コンデンサ(Ca,Cb,Cc)のみの構成であってもよい。
【0303】
上記実施形態3〜6において、負荷器は、空気調和装置に限定されず、例えばビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明等であってもよい。
【0304】
上記実施形態3〜6において、第1電流検出器及び第2電流検出器は、検出結果を無線方式で送信するタイプでなくてもよい。また、第1電流検出器及び第2電流検出器は、無電源方式で動作するタイプでなくてもよい。
【0305】
上記実施形態3〜5において、アクティブフィルタ装置は、負荷器に組み込まれていてもよい。
【0306】
負荷器が空気調和装置である場合、空気調和装置は、冷房及び暖房のみを行う装置に限定されない。空気調和装置には、冷凍、換気、調湿が可能なものも含まれる。
【0307】
≪実施形態7≫
<空調システム(700)の構成>
図22は、本実施形態7に係る空調システム(700)の構成を示すブロック図である。空調システム(700)は、マンション、工場、ビル、戸建て住宅等(以下、ビル等)に設置されている。この例では、空調システム(700)は、複数の負荷器(601,602)と、アクティブフィルタ装置(604)とを備える。特に、アクティブフィルタ装置(604)の構成要素の大部分、具体的に第1電流検出器(605a,605b)を除く構成要素は、負荷器である電力変換装置(601)と共に空気調和装置(620)内に設けられている。空気調和装置(620)は、室内の空気調和(冷房や暖房)を行う。
【0308】
上記ビル等には、交流電源(603)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(603)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、複数の負荷器(601,602)に電力を分岐して供給する。そして、このビル等には、交流電源(603)に接続され、交流電源(603)からの交流電力を受電する分電盤(606)が設けられている。分電盤(606)は、複数のブレーカを備えており、各ブレーカを介して、交流電源(603)からの交流電力を複数の機器に分岐させている。この例では、それらのブレーカの1つに、空気調和装置(620)が接続されている。空気調和装置(620)は、分電盤(606)を介して供給された交流電力によって稼働する。
【0309】
また、分電盤(606)の複数のブレーカのうち1つには、負荷器(602)が接続されている。この例では、負荷器(602)が、インバータ回路などの高調波電流の発生源となり得る回路を備えている機器(高調波発生負荷器と命名する)である場合を例に採る。負荷器(602)としては、ビルに設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明、更には、アクティブフィルタなどの高調波対策を実施していない、空気調和装置(620)とは別の空気調和装置などを例示できる。
【0310】
各負荷器(601,602)は、制御器(640)(運転状態制御部に相当)と接続された調整部(601c,602c)を含む。調整部(601c,602c)それぞれは、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。調整部(601c,602c)は、制御器(640)から出力される負荷器指令信号Fs(後述)に基づき、各負荷器(601,602)の制御を行うものである。
【0311】
<空気調和装置(620)>
空気調和装置(620)は、圧縮機を有した冷媒回路(図示せず)、及び電力変換装置(601)を備え、アクティブフィルタ装置(604)の主な構成要素(具体的には、第1電流検出器(605a,605b)を除く他の構成要素)が組み込まれている。
【0312】
上記冷媒回路は、圧縮機、室外側熱交換器、膨張機構、室内側熱交換器が冷媒配管によって接続されることで構成される。冷媒回路内には冷媒が充填されており、冷媒が冷媒回路内を循環することによって、室内は冷却または暖められる。
【0313】
電力変換装置(601)は、交流電源(603)に接続された負荷器であって、高調波発生負荷器に該当する。電力変換装置(601)は、分電盤(606)を介して交流電源(603)に接続されている。この電力変換装置(601)は、図示していないが、コンバータ回路及びインバータ回路を有する。電力変換装置(601)は、交流電源(603)から交流電力を供給されると、これを所望周波数及び所望電圧に変換し、変換後の電力を圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給する。それにより、圧縮機は稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
【0314】
空気調和装置(620)において、電力変換装置(601)や圧縮機の電動機が稼働すると、高調波電流が発生する場合がある。この高調波電流は、分電盤(606)から空気調和装置(620)へ電力を供給する電流経路を介して、交流電源(603)に流出する可能性がある。なお、上述したように、電力変換装置(601)のみならず、高調波発生負荷器である負荷器(602)からも、高調波電流が、負荷器(602)に電力を供給する電流経路を介して交流電源(603)に流出する可能性がある。
【0315】
このような高調波電流は、一般的には、交流電源(603)側への流出レベルが規制されている。そのため、本実施形態1に係る空調システム(700)は、アクティブフィルタ装置(604)によって、上記高調波電流の低減を図っている。また、設備容量や省エネルギーの観点などから、配電・受電端の基本波力率の改善が求められているところ、本実施形態7のアクティブフィルタ装置(604)は、基本波力率の改善機能も備えている。
【0316】
以下では、上記アクティブフィルタ装置(604)の構成について説明する。
【0317】
<アクティブフィルタ装置(604)>
アクティブフィルタ装置(604)は、交流電源(603)に接続されており、高調波発生負荷器である上記負荷器(601,602)から流出する高調波電流を打ち消す機能を有する。即ち、アクティブフィルタ装置(604)は、交流電源(603)の電流経路(以下、受電経路(612))における電流が正弦波に近づくように補償電流を流す。より具体的には、アクティブフィルタ装置(604)は、受電経路(612)に現れている高調波電流とは逆位相の補償電流を生成し、受電経路(612)に供給する。
【0318】
そして、アクティブフィルタ装置(604)は、上述した補償電流を流すことにより、基本波力率を改善する。この例では、基本波の無効成分も補償する補償電流を流すようにアクティブフィルタ装置(604)を構成して、基本波力率の改善を行う。
【0319】
負荷器である電力変換装置(601)において発生する高調波電流が最も大きくなるのは、空気調和装置(620)の負荷が最も大きな場合(例えば冷房の最大出力時)と考えられる。負荷器(602)が空気調和装置であると仮定した場合も、該負荷器(602)において発生する高調波電流についても同様である。
【0320】
そのため、一般的には、アクティブフィルタ装置(604)は、負荷器(601,602)全てが一斉に最大負荷となった時の高調波電流を想定して、能力(生成可能な電力の大きさ)即ち容量が設定される。ところが、負荷器(601,602)は、最大負荷の状態で使用されるよりも、最大負荷よりも小さい負荷で使用される場合の方が多い。すると、上記のように能力が設定されたアクティブフィルタ装置(604)は、負荷器(601,602)の高調波電流対策による力率改善のみに能力を使用したとすれば、能力が余剰となる期間が多いと考えられる。
【0321】
それ故、本実施形態7では、アクティブフィルタ装置(604)の能力(即ち容量)を、上述したような一般的な設定方法よりも小さく設定する。一例として、アクティブフィルタ装置(604)の能力(即ち容量)は、負荷器(601,602)全てが一斉に最大負荷となった時の高調波電流に対応する能力を100%とした場合の、約80%程度に設定される。能力(即ち容量)が大きい程アクティブフィルタ装置(604)は高額となるが、本実施形態7では、能力を比較的小さく設定するため、アクティブフィルタ装置(604)のコストダウンを図ることができる。
【0322】
本実施形態7に係るアクティブフィルタ装置(604)は、能力が比較的小さいながらも、上述した高調波電流対策による力率改善の機能を問題なく発揮するための制御を行うが、これについては後述する。
【0323】
上述機能を実現するため、本実施形態7に係るアクティブフィルタ装置(604)は、
図22に示すように、電流源(630)、第1電流検出器(605a,605b)(電流検出部に相当)、第2電流検出器(625a,625b)、電圧検出器(660)、及び制御器(640)を備える。
【0324】
−電流源−
電流源(630)は、高調波電流の低減及び基本波力率改善を行うための電流(すなわち補償電流)を生成することにより基本波力率を改善する、いわばアクティブフィルタである。
【0325】
電流源(630)の出力端子は、負荷器(601,602)の受電経路(612)に接続されており、生成された補償電流は受電経路(612)に出力される。具体的に、電流源(630)は、交流電源(603)に対し負荷器(601,602)と並列に接続されている。
【0326】
図示していないが、本実施形態7の電流源(630)は、いわゆるインバータ回路を用いて構成されている。電流源(630)には、制御器(640)より、後述するスイッチング指令値(G)が入力される。電流源(630)は、スイッチング指令値(G)に応じてスイッチングすることによって、補償電流を生成する。
【0327】
−第1電流検出器−
第1電流検出器(605a,605b)は、交流電源(603)の受電経路(612)における電流値を検出する。詳しくは、第1電流検出器(605a,605b)は、交流電源(603)から出力される出力電流が、電流源(630)及び各負荷器(601,602)に分岐して流れる前の交流電源(603)の出力電流の値を検出する。
【0328】
この例では、第1電流検出器(605a,605b)は、2つ設けられている。具体的に、第1電流検出器(605a)は、交流電源(603)におけるR相の電流値(Irs)を検出する。第1電流検出器(605b)は、交流電源(603)におけるT相の電流値(Its)を検出する。それぞれの第1電流検出器(605a,605b)の検出結果は、制御器(640)に送信される。
【0329】
それぞれの第1電流検出器(605a,605b)の構成には、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。
【0330】
また、それぞれの第1電流検出器(605a,605b)は、検出結果を制御器(640)に無線方式で送信する構成となっている。交流電源(603)とアクティブフィルタ装置(604)との距離は、20〜30メートル離れることがある。そのため、第1電流検出器(605a,605b)からアクティブフィルタ装置(604)までを配線で接続すると、この配線を長く引き回すこととなり、また、第1電流検出器(605a,605b)とアクティブフィルタ装置(604)との接続作業自体にかなりの手間がかかってしまう。これに対し、本実施形態7では、第1電流検出器(605a,605b)の検出結果が制御器(640)に無線方式で送信されるため、上記配線自体が不要となり、配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0331】
また、第1電流検出器(605a,605b)に流れる電流により第1電流検出器(605a,605b)を貫く磁束が時間に対して変化する現象を電磁誘導というが、その電磁誘導によって生じる起電力である誘導起電力を、第1電流検出器(605a,605b)を駆動させる電源(例えば通信のための電源)として利用してもよい。そのことにより、第1電流検出器(605a,605b)は、無電源方式で動作(すなわち第1電流検出器(605a,605b)の外部から電源を接続せずに動作)でき、第1電流検出器(605a,605b)を外部の電源と接続する作業が不要となる。
【0332】
特に、
図22に示すように、第1電流検出器(605a,605b)は、分電盤(606)の内部に設置されている。そのことにより、第1電流検出器(605a,605b)が雨風にさらされるのを防止でき、第1電流検出器(605a,605b)の劣化を抑制できる。従って、第1電流検出器(605a,605b)の寿命を短くしない環境を構築できる。
【0333】
−第2電流検出器−
第2電流検出器(625a,625b)は、アクティブフィルタ装置(604)に入力される電流値(以下、電流値(Ir2a,It2a)と命名する)を検出する。
【0334】
この例では、第2電流検出器(625a,625b)は、2つ設けられている。第2電流検出器(625a)は、交流電源(603)から電流源(630)に入力されるR相の電流値(Ir2a)を検出し、第2電流検出器(625b)は、交流電源(603)から電流源(630)に入力されるT相の電流値(It2a)を検出する。それぞれの第2電流検出器(625a,625b)によって検出された電流値(Ir2a,It2a)は、制御器(640)に送信される。
【0335】
それぞれの第2電流検出器(625a,625b)の構成は、特に限定はないが、例えばカレントトランスを採用することなどが考えられる。
【0336】
また、それぞれの第2電流検出器(625a,625b)が電流値(Ir2a,It2a)を送信する態様は、有線方式及び無線方式のいずれであってもよい。
【0337】
また、第2電流検出器(625a,625b)は、上記第1電流検出器(605a,605b)と同様、無電源方式で動作できる構成であってもよい。
【0338】
なお、
図22では、第2電流検出器(625a,625b)が、アクティブフィルタ装置(604)に入力される3相分の電流(Ir2a,Is2a,It2a)のうち、2相分の電流(Ir2a,It2a)に対応して2つ設けられた例を示している。しかし、第2電流検出器は、3相分の電流(Ir2a,Is2a,It2a)に対応して3つ設けられても良い。
【0339】
−電圧検出器−
電圧検出器(660)は、交流電源(603)の出力端子に接続されている。電圧検出器(660)は、交流電源(603)の線間電圧(Vrs,Vtr,Vst)を検出するセンサである。
【0340】
−制御器−
制御器(640)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。
図22に示すように、制御器(640)は、電流源(630)、第1電流検出器(605a,605b)、第2電流検出器(625a,625b)、電圧検出器(660)及び負荷器である電力変換装置(601)に接続されており、各検出器(605a,605b,625a,625b,660)の検出結果に基づいて、電流源(630)及び電力変換装置(601)の各動作を制御する。
【0341】
本実施形態7に係る制御器(640)は、電流源(630)の出力電流の調整制御、及び、実際の交流電源(603)の電源力率に基づく電力変換装置(601)の運転状態の調整制御(具体的には、運転状態を変化させる運転パラメータの調整制御)を行う。このような制御を行うため、制御器(640)は、
図23のブロック図として例示するように、位相検出部(646)、第1電流演算部(645)、第2電流演算部(644)、負荷電流演算部(643)、電流指令演算部(642)、ゲートパルス発生器(641)、電力演算部(647)、力率演算部(648)、力率目標値設定部(649)、及び負荷調整判断部(650)を有する。負荷調整判断部(650)は、減算部(651)、積分演算部(652)及び判定部(653)を有する。
【0342】
このうち、電流源(630)の出力電流の調整制御は、主に、位相検出部(646)、第1電流演算部(645)、第2電流演算部(644)、負荷電流演算部(643)、電流指令演算部(642)及びゲートパルス発生器(641)にて行われる。実際の交流電源(603)の電源力率に基づく電力変換装置(601)の運転状態の調整制御は、電力演算部(647)、力率演算部(648)、力率目標値設定部(649)及び負荷調整判断部(650)にて行われる。
【0343】
<電流源(630)の出力電流の調整制御>
位相検出部(646)には、電圧検出器(660)が検出した交流電源(603)の線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)のうち、1相分の線間電圧(Vrs)が入力される。位相検出部(646)は、入力された線間電圧(Vrs)を用いて受電経路(612)における電源電圧の位相を検出し、検出した位相を第1電流演算部(645)及び第2電流演算部(644)に出力する。
【0344】
第1電流演算部(645)には、位相検出部(646)によって検出された電源電圧の位相、及び、第1電流検出器(605a,605b)によって検出された交流電源(603)の出力電流(Irs,Its)が入力される。第1電流演算部(645)は、入力された電源電圧の位相及び交流電源(603)の出力電流(Irs,Its)に基づいて、高調波電流の補償(高調波電流の低減)と、基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行うために必要な電流(第1電流値(i1)とする)を求め、当該第1電流値(i1)を負荷電流演算部(643)に出力する。より具体的には、第1電流演算部(645)は、第1電流検出器(605a,605b)の検出結果(電流値(Irs,Its))から、高調波電流成分及び基本波の無効成分を抽出して、第1電流値(i1)として出力する。
【0345】
第2電流演算部(644)には、位相検出部(646)によって検出された電源電圧の位相、及び、第2電流検出器(625a,625b)によって検出された電流源(630)に入力される電流値(Ir2a,It2a)が入力される。第2電流演算部(644)は、入力された電源電圧の位相及び電流値(Ir2a,It2a)に基づいて、現時点での高調波電流の補償(高調波電流の低減)及び基本波の無効成分の補償(基本波の力率改善)の双方を行っているアクティブフィルタ装置(604)に流れ込む電流(第2電流値(i2)とする)を求め、当該第2電流値(i2)を負荷電流演算部(643)に出力する。より具体的には、第2電流演算部(644)は、第2電流検出器(625a,625b)の検出結果(電流値(Ir2a,It2a))から、高調波電流成分及び基本波の無効成分を抽出して、第2電流値(i2)として出力する。
【0346】
負荷電流演算部(643)は、高調波発生負荷器である電力変換装置(601)及び負荷器(602)に流れる電流を算出する。交流電源(603)の各相の出力電流値(Irs,Itr,Its)からアクティブフィルタ装置(604)の電流源(630)に入力される各相の電流値(Ir2a,Is2a,It2a)の減算により、各負荷器(601,602)に流れる電流の合計値が求められる。これを利用して、本実施形態7では、各負荷器(601,602)にて発生する高調波を抑制し、交流電源(603)付近の配電・受電端の基本波力率の改善、及び高調波電流の低減を実現している。具体的に、本実施形態7では、負荷電流演算部(643)は、各負荷器(601,602)に流れる電流の合計値を、第1電流演算部(645)の第1電流値(i1)から第2電流演算部(644)の第2電流値(i2)を減算することによって求め、求めた演算結果を電流指令演算部(642)に出力する。
【0347】
電流指令演算部(642)は、負荷電流演算部(643)の演算結果の逆位相の電流値を演算して、その値を電流指令値(Iref)としてゲートパルス発生器(641)に出力する。
【0348】
ゲートパルス発生器(641)は、電流源(630)を構成するインバータ回路におけるスイッチングを指示するためのスイッチング指令値(G)、を生成する。詳しくは、ゲートパルス発生器(641)は、電流源(630)が出力する電流値と上記電流指令値(Iref)との偏差に基づいてスイッチング指令値(G)を生成する動作を繰り返す、いわゆるフィードバック制御を行う。これにより、電流源(630)からは、電流指令値(Iref)に相当する電流(補償電流)が受電経路(612)に供給される。より詳しくは、ゲートパルス発生器(641)では、第2電流演算部(644)で求めた第2電流値(i2)が電流指令値(Iref)に一致するようなスイッチング指令値(G)を生成して電流源(630)に出力する。そのことにより、負荷器(601,602)に流れる電流に含まれている高調波成分とアクティブフィルタ装置(604)が出力する電流とは相殺され、交流電源(603)の出力電流(Irs,Itr,Its)は、高調波電流が除去された正弦波となり、力率が改善される。
【0349】
<電力変換装置(601)の運転状態の調整制御>
電力演算部(647)には、電圧検出器(660)が検出した交流電源(603)の3相分の線間電圧(Vrs,Vtr,Vst)、及び、第1電流検出器(605a,605b)が検出した交流電源(603)の出力電流(Irs,Its)が入力される。電力演算部(647)は、入力されたこれらの値を下式(11)及び下式(12)に当てはめて、回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを演算する。
【0352】
次いで、電力演算部(647)は、上式(11)及び上式(12)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(13)に当てはめて、有効電力Pαを演算する。また、電力演算部(647)は、上式(11)及び上式(12)で求めた回転2軸(αβ軸)の電圧Vα,Vβ及び電流iα,iβを、下式(14)に当てはめて、無効電力Pβを演算する。
【0355】
力率演算部(648)は、電力演算部(647)で求められた有効電力Pα及び無効電力Pβそれぞれを下式(15)に当てはめて、交流電源(603)の電源力率θαβを演算する。即ち、力率演算部(648)によって求められる電源力率θαβは、実際の電源力率θαβを意味する。
【0357】
力率目標値設定部(649)は、力率の目標値θαβ_refを予め設定する。なお、本実施形態7に係る力率目標値設定部(649)は、力率の目標値θαβ_refを、0.995〜1.004の間の値に設定する。電源力率を評価する場合、小数第3位を四捨五入することになっている。そのため、力率の目標値θαβ_refが0.995〜1.004の間の値に設定されることにより、当該力率の目標値θαβ_refに基づいて制御される実際の電源力率は、“1”と評価されるためである。
【0358】
負荷調整判断部(650)の減算部(651)には、力率演算部(648)が求めた実際の電源力率θαβと、力率目標値設定部(649)が設定した力率の目標値θαβ_refとが入力される。減算部(651)は、力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算する。減算部(651)は、減算した値を、積分演算部(652)に出力する。
【0359】
積分演算部(652)は、減算部(651)による減算結果(即ち、力率の目標値θαβ_refから実際の電源力率θαβを減算した結果)を、積分する。
【0360】
判定部(653)には、積分演算部(652)の積分結果が入力される。判定部(653)は、積分結果に基づき、基本波力率が力率の目標値θαβ_refに近づくように、負荷器(601,602)の運転状態を変化させる運転パラメータを制御する。具体的に、判定部(653)は、基本波力率(電源力率)を力率の目標値θαβ_refに近づけるべく、運転パラメータを調整して負荷器(601,602)の運転能力を下げるための負荷器指令信号Fsを、負荷器である電力変換装置(601)に出力する。この負荷器指令信号Fsによって電力変換装置(601)の運転能力が減少すると、アクティブフィルタ装置(604)の補償能力には余裕が生じるようになり、やがて基本波力率は上昇して力率の目標値θαβ_refと概ねと一致するようになる。
【0361】
ここで、上記運転パラメータとは、負荷器である電力変換装置(601)の電力、電力変換装置(601)の電流、電動機の回転速度等の少なくとも1つを云う。
【0362】
負荷器(602)及び電力変換装置(601)の各動作、アクティブフィルタ装置(604)の補償量、電源力率、負荷調整判断部(650)の動作の経時的変化の一例を
図24に示す。
図24(a)は、負荷器(602)の動作に相関する出力電力を示しており、この例では負荷器(602)としてポンプなどの一定負荷を想定している。
図24(b)は、電力変換装置(601)の動作に相関する出力電力を示す。制御対象外である負荷器(602)は、時刻に関係なく、出力電力が一定となるような安定した動作を行っているとする。これに対し、時刻t0から時刻t2までの間、電力変換装置(601)は、空調負荷の上昇に伴い出力電力を上昇させて続けている。なお、この時刻t0から時刻t2までの間とは、真夏の最も暑い日の日中(14時〜15時)で外気温度が異常に高くなり、急激に空調負荷が上昇していることを想定している。
【0363】
図24(c)は、アクティブフィルタ装置(604)の補償量を電力にて示している。時刻t0から時刻t1の間、アクティブフィルタ装置(604)の補償量は、上記電力変換装置(601)の出力電力の上昇に伴って上昇している。つまり、時刻t0から時刻t1までの間、電力変換装置(601)の出力電力の上昇分をアクティブフィルタ装置(604)が補償している。そのため、時刻t0から時刻t1までの間、
図24(d)に示す電源力率は、概ね目標値の状態が維持されている。
【0364】
しかし、時刻t1以降、電力変換装置(601)の出力電力はなおも上昇し続けているが、アクティブフィルタ装置(604)の補償量は時刻t1の時点で限度値に達し、その後は限度値で一定である状態が続いている。そのため、時刻t1以降、電源力率は、電力変換装置(601)の出力電力の上昇とは対照的に、目標値から低下していく。これは、電力変換装置(601)の出力電力が上がっているものの、アクティブフィルタ装置(604)の補償能力は既に限度値に達しているため不足していることに起因する。
【0365】
そのため、時刻t0から時刻t1の間は、力率の目標値θαβ_refと実際の電源力率θαβとの間は差が生じておらず、
図24(e)に示すように、負荷調整判断部(650)の積分演算部(652)の出力結果(出力信号)は概ね“0”のままである。しかし、時刻t1以降は、力率の目標値θαβ_refと実際の電源力率θαβとの間に差が生じ、積分演算部(652)の出力結果(出力信号)は増加する。
【0366】
時刻t2は、積分演算部(652)の出力結果(出力信号)が判定値に達した時点を表す。この時刻t2では、判定部(653)は、積分演算部(652)の出力結果(出力信号)を受けて、
図24(f)に示すように、電力変換装置(601)の運転状態を時刻t2以前とは異ならせるための負荷器指令信号Fsを(即ち、“オン”を示す負荷器指令信号Fs)、電力変換装置(601)に出力する。その負荷器指令信号Fsにより、
図24(b)に示すように時刻t2から時刻t3の間、電力変換装置(601)の運転状態は、出力電力が低下する方向に変化する。すると、
図24(c)に示すように、時刻t2以降、電力変換装置(601)の出力電力が低下しているためにアクティブフィルタ装置(604)の補償量は限度値から低下する。このことは、アクティブフィルタ装置(604)の補償量に余裕が生じていることを意味する。従って、
図24(d)に示すように、実際の電源力率は力率の目標値θαβ_refと概ね一致する程度に回復することができる。
【0367】
このように、本実施形態7に係る制御器(640)は、実際の電源力率θαβが力率の目標値θαβ_refから低下すると、電力変換装置(601)の電力、電力変換装置(601)の電流及び電動機の回転速度等の少なくとも1つである運転パラメータを低下させるよう調整する。そのことにより、制御器(640)は、電力変換装置(601)の運転能力を強制的に絞り、実際の電源力率θαβと力率の目標値θαβ_refとが一致する状態を作り出す“電源力率デマンドコントロール”を実施する。“電源力率デマンドコントロール”とは、基本波力率が力率の目標値θαβ_refに近づくように、本実施形態7に係る制御器(640)が、第1電流検出器(605a,605b)の検出結果に基づいて上記運転パラメータを調整する制御と言える。
【0368】
実際の電源力率θαβと力率の目標値θαβ_refとが一致している状態が、時刻t2からある期間(
図24では時刻t2から時刻t3までの期間)経過すると、判定部(653)は、
図24(f)に示すように、出力する負荷器指令信号Fsを時刻t0から時刻t2までの間と同様、“オフ”にする。そのことにより、電力変換装置(601)は、強制的な運転能力の低下から解放され、通常の指令に基づく制御により通常運転を行う。
【0369】
また、時刻t3では、判定部(653)は、
図24(g)に示すように、積分演算部(652)の積分結果をリセット(ゼロにクリアする)ためのReset信号を出力する。このことにより、積分演算部(652)の積分結果(出力信号)はゼロになり、積分演算部(652)は、次に実際の電源力率θαβが力率の目標値θαβ_refより低下した場合に対応できるようになる。
【0370】
<効果>
本実施形態7では、現在の電源品質である基本波力率が、電源品質の目標値である力率の目標値θαβ_refに近づくように、アクティブフィルタ装置(604)の動作を制御するのではなく、実際の交流電源(603)の出力電流に基づいて負荷器である電力変換装置(601)の運転状態が制御される。これにより、実際の電源力率θαβは目標値θαβ_refに近づく。このように、ここでは、仮にアクティブフィルタ装置(604)の容量が小さくても、負荷器である電力変換装置(601)の運転状態の制御によって電力変換装置(601)の運転能力が例えば減らす方向に調整されるため、アクティブフィルタ装置(604)の基本波力率を改善させる能力は回復する。これにより、アクティブフィルタ装置(604)の容量が比較的小さくとも、基本波力率の改善は問題なくなされる。従って、アクティブフィルタ装置(604)の容量を積極的に下げることができ、その分のコストダウンを図ることができる。
【0371】
本実施形態7では、電流源(630)は、電力変換装置(601)及び負荷器(602)それぞれの高調波電流の低減を更に行う。即ち、電流源(630)は、高調波電流の低減と基本波力率の改善とを行う。
【0372】
本実施形態7では、第1電流検出器(605a,605b)は、分電盤(606)に設置されている。
【0373】
本実施形態7の第1電流検出器(605a,605b)は、検出結果を制御器(640)に無線方式で送信する構成となっている。これにより、第1電流検出器(605a,605b)と制御器(640)とを接続する配線自体が不要となり、当該配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0374】
本実施形態7では、第1電流検出器(605a,605b)は、無電源方式で動作する構成となっている。これにより、第1電流検出器(605a,605b)を外部の電源と接続する作業が不要となる。
【0375】
本実施形態7の空調システム(700)は、アクティブフィルタ装置(604)と空気調和装置(620)とを備える。特に、アクティブフィルタ装置(604)は、空気調和装置(620)に組み込まれている。ビル等の建物を設計する場合、空気調和装置(620)の室外機と室内機とを繋ぐ冷媒配管工事などが必要であることから、建物に設置するべき空気調和装置(620)の仕様は自ずと決定する。そのことから、建物の建設時にアクティブフィルタ装置(604)と空気調和装置(620)間の通信線を接続することができ、交流電源(603)から出力される出力電流に基づき空気調和装置(620)に含まれる電力変換装置(601)の運転能力を変更できる環境を、簡単に作りやすくなる。
【0376】
≪実施形態8≫
図25は、実施形態7の変形例としての、実施形態8に係るアクティブフィルタ装置(704)を含む空調システム(800)の構成を示すブロック図である。実施形態8が実施形態7と異なる点は、実際の電源力率θαβが力率の目標値θαβ_refから低下した際に、電力変換装置(701)に加えて負荷器(702)の運転パラメータ(具体的には、負荷器(702)の電力、電流及び電動機の回転速度等の少なくとも1つ)を低下させるようにしていることである。即ち、本実施形態8では、能力を低下させる対象が、空調システム(800)における複数の(全ての)負荷器(701,702)となっている。そのことにより、基本波力率を力率の目標値θαβ_refに近づけさせて素早くビル全体(電力系統全体)の能力を低下させることができるため、電源力率の低下を最小限に抑制して、目標とする電源力率を確保することができる。
【0377】
従って、
図25では、
図22とは異なり、制御器(740)が出力する負荷器指令信号Fsが、電力変換装置(701)のみならず負荷器(702)に入力される構成となっている。
【0378】
なお、
図25で示した空調システム(800)において、当該構成以外は、実施形態7と同様である。
図25では、
図22と対応する構成要素に、“730”等の番号を付しているが、その詳細は
図22に係る実施形態7と同様である。
【0379】
図26は、本実施形態8に係る負荷器(702)及び電力変換装置(701)の各動作、アクティブフィルタ装置(704)の補償量、電源力率、制御器(740)の動作の経時的変化の一例を示す。
図26は、
図24に対し、
図26(a)で示す負荷器(702)の出力電力が一定ではないことが異なっている。
【0380】
具体的に、負荷器(702)の出力電力は、時刻t0から時刻t2までは一定である。一方で、時刻t0から時刻t2までの間に電力変換装置(701)の出力電力が連続的に上昇したことにより、アクティブフィルタ装置(704)の補償量が時刻t1以降に限度値に達し、その結果、時刻t1以降には電源力率が目標値から乖離している。それ故、積分演算部(752)の積分結果は時刻t2に判定値に達し、時刻t2から時刻t3の間、負荷器指令信号Fsはオン状態となっている。この時刻t2から時刻t3の間、当該負荷器指令信号Fsは、電力変換装置(701)のみならず負荷器(702)にも出力されるため、能力低下により出力電力が低下している対象は、電力変換装置(701)及び負荷器(702)となっている。そのことにより、電源力率を上昇させて目標の電源力率を達成することができる。
【0381】
<効果>
本実施形態8では、空調システム(800)における複数の負荷器(701,702)の運転状態が運転能力を低下する方向に変化する。これより、空調システム(800)全体での負荷器(701,702)の運転能力は、1つの負荷器の運転状態のみを変化させる場合よりも低下するため、基本波力率の改善能力が素早く回復する。従って、電源力率の低下を最小限に抑制して、電源力率を素早く目標値にすることができる。
【0382】
また、本実施形態8は、上記実施形態7にて述べた効果も奏する。
【0383】
≪実施形態9≫
図27は、実施形態7の変形例としての、実施形態9に係るアクティブフィルタ装置(804)を含む空調システム(900)の構成を示すブロック図である。実施形態9が実施形態7と異なる点は、高調波発生負荷器である他の負荷器(802)が単相電圧で駆動する機器であることと、他の負荷器(802)は、LEDなどの照明機器及び単相のファン・ポンプなどを想定していることである。特に、本実施形態9では、他の負荷器(802)(すなわち単相電圧で駆動する機器)の接続相が判明しない場合を想定して、3つの第1電流検出器(805a,805b,805c)が設けられている。
【0384】
なお、
図27では、
図22と対応する構成要素に、“830”等の番号を付しているが、その詳細は
図22に係る実施形態7と同様である。従って、以下では、実施形態7と異なる点についてのみ説明する。
【0385】
3つの第1電流検出器(805a,805b,805c)それぞれは、交流電源(803)の各相(R,S,T)に対応して設けられており、対応する各相(R,S,T)の電流値を検出する。すなわち、本実施形態9では、負荷器(802)が単相交流で動作する機器であっても、3相すべての電流値を検出するため、電流値を確実に検出することができる。
【0386】
また、電圧検出器(860)は、交流電源(803)のR相及びS相に接続され、T相には接続されていない。従って、電圧検出器(860)は、交流電源(803)の線間電圧(Vrs)のみを検出して制御器(840)に入力する。これは、実施形態7にて述べたように、制御器(840)は、線間電圧(Vrs)のみを用いて受電経路(812)における電源電圧の位相を演算により検出するためである。他の線間電圧(Vst,Vtr)それぞれは、線間電圧(Vrs)から120度位相が変化している(具体的には、位相が120進むか遅れている)。このことから、本実施形態9に係る制御器(840)は、線間電圧(Vrs)から電源電圧の振幅も演算し、演算した電源電圧の振幅及び位相から他の線間電圧(Vst,Vtr)の位相及び振幅を求めることができる。このようにして求めた結果は、上式(11)に代入することができる。それ故、実際の線間電圧(Vst,Vtr)の検出を省略することが可能である。
【0387】
なお,線間電圧(Vst,Vtr)の検出の省略及び線間電圧(Vrs)に基づく他の線間電圧(Vst,Vtr)の演算は、上記実施形態7,8にて採用されてもよい。
【0388】
<効果>
本実施形態9によれば、単相電圧で駆動する他の負荷器(802)が接続された場合において、交流電源(803)の各相(R,S,T)に対応して第1電流検出器(805a,805b,805c)が複数設けられている。そのため、他の負荷器(802)の接続相が不明であっても、3相すべての電流値を確実に把握することが可能となる。
【0389】
また、本実施形態9によれば、単相電圧で駆動する他の負荷器(802)が接続された場合において、実際の線間電圧(Vst,Vtr)の検出を省略している。これにより、アクティブフィルタ装置(804)のコストを不必要に上げることなく、高調波電流の低減及び基本波力率の改善を図ることが可能となる。
【0390】
また、本実施形態9は、上記実施形態7にて述べた効果も奏する。
【0391】
なお、本実施形態9において、単相電圧で駆動する負荷器(802)が、交流電源(803)のどの相に接続されるかが予め判明している場合、負荷器(802)が接続される相に第1電流検出器が設けられていても良い。
【0392】
≪実施形態10≫
図28は、実施形態7の変形例としての、実施形態10に係るアクティブフィルタ装置(904)を含む空調システム(1000)の構成を示すブロック図である。実施形態10が実施形態7と異なる点は、
図28に示すように、受電経路(912)のうち交流電源(903)の出力電流(Irs,Itr,Its)が電力変換装置(901)及び負荷器(902)に分岐するポイントから各負荷器(901,902)までを結ぶ配線(912a,912b)に、第1電流検出器(906a,906b,907a,907b)が接続されていることである。このことにより、電力変換装置(901)及び負荷器(902)が、最大負荷状態または軽負荷状態であるか等といった、電力変換装置(901)及び負荷器(902)の動作状態を判断することができる。
【0393】
なお、
図28では、
図22と対応する構成要素に、“930”等の番号を付しているが、その詳細は
図22に係る実施形態7と同様である。従って、以下では、実施形態7と異なる点についてのみ説明する。
【0394】
具体的に、第1電流検出器(906a,906b)は、負荷器(902)の入力側において、交流電源(903)のT相及びR相それぞれに対応して設けられている。第1電流検出器(906a)は、負荷器(902)に入力される交流電源(903)の出力電流(Its2)を検出し、電流検出器(906b)は、負荷器(902)に入力される交流電源(903)の出力電流(Irs2)を検出する。第1電流検出器(907a,907b)は、電力変換装置(901)の入力側において、交流電源(903)のR相及びT相それぞれに対応して設けられている。第1電流検出器(907a)は、電力変換装置(901)に入力される交流電源(903)の出力電流(Irs1)を検出し、電流検出器(907b)は、電力変換装置(901)に入力される交流電源(903)の出力電流(Its1)を検出する。
【0395】
即ち、第1電流検出器(906a,906b)は、負荷器(902)に対応して設けられ、第1電流検出器(907a,907b)は、電力変換装置(901)に対応して設けられている。
【0396】
なお、
図28では、第1電流検出器(906a,906b)は分電盤(906)内部に設けられ、第1電流検出器(907a,907b)は分電盤(906)内部に設けられていない場合を例示しているが、全ての第1電流検出器(906a,906b,907a,907b)が分電盤(906)内部に設けられていてもよい。
【0397】
また、実施形態10が実施形態7と異なる点は、上記実施形態8と同様、電圧検出器(960)は、交流電源(903)の線間電圧(Vrs)のみを検出して制御器(940)に入力することである。
【0398】
更に、実施形態10が実施形態7と異なる点は、制御器(940)が、電力変換装置(901)用の負荷器指令信号(Fs1)及び負荷器(902)用の負荷器指令信号(Fs2)を出力することである。
【0399】
このような制御器(940)の一例を、
図29にてブロック図で示す。
図29に係る制御器(940)は、実施形態7に係る
図23において、加算部(957a,957b)を更に有する。負荷調整判断部(950)には、負荷器電流実効値演算部(954)が更に追加されている。
【0400】
なお、
図29では、
図23と対応する構成要素に、“946”等の番号を付しているが、下記の説明を除き、その詳細は
図23に係る実施形態7と同様である。以下では、本実施形態10に係る制御器(940)の構成のうち、実施形態7に係る制御器(640)と異なる点のみを説明する。
【0401】
加算部(957a)は、各電流検出器(906b,907a,925a)の検出結果(Irs2,Irs1,Ir2a)を加算し、加算結果を交流電源(903)の出力電流(Irs)として電力演算部(947)及び第1電流演算部(945)に出力する。加算部(957b)は、各電流検出器(906a,907b,925b)の検出結果(Its2,Its1,It2a)を加算し、加算結果を交流電源(903)の出力電流(Its)として電力演算部(947)及び第1電流演算部(945)に出力する。
【0402】
第1電流演算部(945)は、各加算部(957a,957b)の加算結果である交流電源(903)の出力電流(Irs,Its)から、高調波電流成分及び基本波の無効成分を抽出して、第1電流値(i1)として出力する。
【0403】
電力演算部(947)は、電圧検出器(960)が検出した交流電源(903)の1相分の線間電圧(Vrs)から残りの相の線間電圧(Vst,Vtr)を求め、3相の線間電圧(Vrs,Vst,Vtr)と各加算部(957a,957b)の加算結果である交流電源(903)の出力電流(Irs,Its)とを、上式(11)及び上式(12)にて用いる。
【0404】
負荷器電流実効値演算部(954)は、入力された各第1電流検出器(906a,907b)の検出結果(Its2,Its1)を用いて、電力変換装置(901)に流れる電流の実効値(I1)と負荷器(902)に流れる電流の実効値(I2)とを演算し、これを判定部(953)に出力する。
【0405】
判定部(953)の動作について、
図30を用いて説明する。
図30では、電力変換装置(901)及び負荷器(902)の動作、アクティブフィルタ装置(904)の補償量、電源力率、負荷調整判断部(950)の動作の経時的変化の一例を示している。
図30(a)〜
図30(e)は、実施形態7の
図24(a)〜
図24(e)と同様である。
【0406】
図30(a)及び
図30(b)で示すように電力変換装置(901)及び負荷器(902)の出力電力が変化する際、電力変換装置(901)及び負荷器(902)それぞれの電流実効値(I1,I2)は、
図30(f)に示すように変化する。具体的に、負荷器(902)の電流実効値(I2)は、一定であるが、電力変換装置(901)の電流実効値(I1)は、時刻t0から時刻t2の直前まで増加している。時刻t0から時刻t2の間、電力変換装置(901)の電流実効値(I1)は負荷器(902)の電流実効値(I2)よりも多い。そのため、交流電源(903)からみると電力変換装置(901)は負荷器(902)よりも多くの電力を使用していることが判り、また負荷器(902)よりも電力変換装置(901)の方が、
図30(d)の電源力率の低下に寄与する度合が大きいと推測できる。
【0407】
そのことを利用して、判定部(953)は、積分演算部(952)の出力信号が判定値に至った時刻t2以降、
図30(g)及び
図30(h)に示す負荷器指令信号(Fs1,Fs2)の出力を行う。具体的に、判定部(953)は、
図30(g)に示すように、負荷器(902)に指令する負荷器指令信号(Fs2)については出力停止の状態を保つが(オフのまま)、
図30(h)に示すように、電力変換装置(901)に指令する負荷器指令信号(Fs1)を時刻t2から時刻t3間出力して(オン)、電力変換装置(901)のみの運転状態を変化させるための運転パラメータを小さくするようにする。
【0408】
これにより、時刻t2から時刻t3の間、負荷器(902)の運転状態は時刻t2以前の状態から変化しないため、負荷器(902)の出力電力及び電流実効値(I2)も変化していない。一方で、電源力率の低下に寄与する度合が大きい電力変換装置(901)の、時刻t2から時刻t3の間の運転状態は、電力変換装置(901)の運転能力が低下するように変化する。これに伴い、電力変換装置(901)の出力電力及び電流実効値(I1)は、負荷器指令信号(Fs1)が出力される直前の状態よりも低くなる。これにより、アクティブフィルタ装置(904)の補償量も、時刻t2から時刻t3の間、負荷器指令信号(Fs1)が出力される直前の状態(即ち限度値)よりも低下し、補償に余裕がある状態となる。
【0409】
このように、本実施形態10に係る制御器(940)は、第1電流検出器(906a,906b,907a,907b)の検出結果等に基づいて、該制御器(940)に接続された電力変換装置(901)及び負荷器(902)のうち運転能力を低下させるべき対象を決定する。
図30では、当該対象が電力変換装置(901)と決定されている。そして、決定した対象の運転能力を低下させるように、決定した対象の運転パラメータが調整され、基本波力率が力率の目標値θαβ_refに近づいている。これにより、本実施形態10では、運転能力を低下させる対象となる負荷器の数を必要最低限にすることができ、運転能力を低下させない負荷器については、運転状態を維持させることができる。
【0410】
なお、上記で説明した以外の動作については、実施形態7と同様である。
【0411】
<効果>
本実施形態10によれば、上記実施形態7と同様、現在の電源品質である基本波力率が、電源品質の目標値である力率の目標値θαβ_refに近づくように、実際の交流電源(903)の出力電流に基づいて電力変換装置(901)の運転状態が変更される。これにより、実際の力率θαβは力率の目標値θαβ_refに近づく。このように、ここでは、仮にアクティブフィルタ装置(904)の容量が小さくても、負荷器である電力変換装置(901)の運転能力が減らされるため、アクティブフィルタ装置(904)の補償能力は回復する。これにより、アクティブフィルタ装置(904)の容量が比較的小さくとも、本波力率の改善は問題なくなされる。従って、アクティブフィルタ装置(904)の容量を積極的に下げることができ、その分のコストダウンを図ることができる。
【0412】
本実施形態10では、電流源(930)は、電力変換装置(901)及び負荷器(902)それぞれの高調波電流の低減を更に行う。即ち、電流源(930)は、高調波電流の低減と基本波力率の改善とを行う。
【0413】
本実施形態10では、複数の負荷器(901,902)のうち、電力を絞る(即ち運転能力を低下する方向に運転状態を変更する)負荷器(901)が選択される。これにより、運転能力を低下させる負荷器(901)を例えば必要最低限にすることができ、運転能力を低下させない負荷器(902)については、運転状態を維持させることができる。
【0414】
本実施形態10では、実際に各負荷器(901,902)に流れる電流値から、運転能力を低下する方向に運転状態を変更するべき負荷器(901)が決定する。これにより、運転能力を低下させるべき対象となる負荷器(901)を、実際の状況に即して正確に決定することができる。
【0415】
本実施形態10では、第1電流検出器(906a,906b)は、分電盤(906)に設置されている。
【0416】
本実施形態10の第1電流検出器(906a,906b,907a,907b)は、検出結果を制御器(940)に無線方式で送信する構成となっている。これにより、第1電流検出器(906a,906b,907a,907b)と制御器(940)とを接続する配線自体が不要となり、当該配線を引き回す作業を行わずに済む。
【0417】
本実施形態10では、第1電流検出器(906a,906b,907a,907b)は、無電源方式で動作する構成となっている。これにより、第1電流検出器(906a,906b,907a,907b)を外部の電源と接続する作業が不要となる。
【0418】
本実施形態10の空調システム(1000)は、アクティブフィルタ装置(904)と空気調和装置(920)とを備える。特に、アクティブフィルタ装置(904)は、空気調和装置(920)に組み込まれている。ビル等の建物を設計する場合、空気調和装置(920)の室外機と室内機とを繋ぐ冷媒配管工事などが必要であることから、建物に設置するべき空気調和装置(920)の仕様は自ずと決定する。そのことから、建物の建設時にアクティブフィルタ装置(904)と空気調和装置(920)間の通信線を接続することができ、交流電源(903)から出力される出力電流に基づき空気調和装置に含まれる電力変換装置(901)の運転能力を変更できる環境を、簡単に作りやすくなる。
【0419】
≪実施形態7〜実施形態10の変形例≫
1台の電力変換装置(601,701,801,901)に対し複数台のアクティブフィルタ装置が設けられていてもよい。この場合、調相装置は、各調相装置の電流容量に合わせて、補償電流を分担するとよい。
【0420】
建物内にスマートメータが予め設置されている場合、第1電流検出器の代わりに1つのスマートメータで代用することができる。
【0421】
負荷器(601,701,801,901)は、空気調和装置における圧縮機等の電力変換装置に限定されず、例えばビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明等であってもよい。
【0422】
第1電流検出器及び第2電流検出器は、無線方式のタイプでなくてもよい。
【0423】
第1電流検出器及び第2電流検出器は、無電源方式のタイプでなくてもよい。
【0424】
第1電流検出器は、分電盤に設置されていなくてもよい。
【0425】
アクティブフィルタ装置は、空気調和装置に組み込まれていなくても良い。また、アクティブフィルタ装置は、空気調和装置以外の用途に利用されてもよい。
【0426】
アクティブフィルタ装置は、負荷器の基本波力率の改善を行うための電流を生成する機能は必須として有するが、負荷器の高調波電流の低減を行う機能は、必ずしも有さずともよい。
【0427】
負荷器が空気調和装置である場合、空気調和装置は、冷房及び暖房のみを行う装置に限定されない。空気調和装置には、冷凍、換気、調湿が可能なものも含まれる。
【0428】
≪実施形態11≫
上記実施形態1〜10では、制御信号生成部に相当する電源力率デマンド制御器(40,105)及び制御器(240,340,440,540,640,740,840,940)が、現在の電源力率を検出または演算により求め、これを電源品質として負荷器指令信号Fs(制御信号)を生成する場合について説明した。本実施形態11では、交流電源(1003)の電源高調波を電源品質として負荷器指令信号(制御信号)Fsが生成される場合について説明する。
【0429】
電源力率とは、基本波力率と、電源高調波成分による力率とを加算したものに相当する。本実施形態11では、このことに着目して、電源高調波を電源品質として、負荷器指令信号(制御信号)Fsの生成を行っている。
【0430】
図31は、本実施形態11に係る負荷器(1001,1002)の電源力率制御システム(1100)を示すブロック図である。この例では、電源力率制御システム(1100)は、複数の負荷器(1001,1002)と、電流測定器(1005a)と、電源力率デマンド制御器(1040)と、負荷器(1001,1002)に含まれる調整部(1001c,1002c)(運転状態制御部に相当)と、を備える。
【0431】
負荷器(1001,1002)は空気調和装置であり、ビル等に設置されている。空気調和装置である負荷器(1001,1002)によって、室内の空気調和(冷房や暖房)が行われる。
【0432】
上記ビル等には、交流電源(1003)を含む電力系統から電力が供給されている。この例では、交流電源(1003)は、三相の交流電源(例えば三相の商用電源)であり、複数の負荷器(1001,1002)に電力を分岐して供給する。
【0433】
また、本実施形態11では、負荷器(1002)が、インバータ回路等の高調波電流の発生源となり得る回路を備えている機器(高調波発生負荷器と命名する)である場合を例に採る。負荷器(1002)としては、ビル等に設けられたエレベータ、ファン、ポンプ、エスカレータ、三相電源で駆動する照明、更には、アクティブフィルタなどの高調波対策を実施していない、空気調和装置である負荷器(1001)とは別の空気調和装置等を例示できる。
【0434】
<負荷器(1001,1002)>
空気調和装置である負荷器(1001,1002)は、上記調整部(1001c)の他に、圧縮機を有した冷媒回路(図示を省略)、及び電力変換装置(1001a)を含む。電力変換装置(1001a)は、交流電源(1003)に接続されており、高調波発生負荷器の一例である。電力変換装置(1001a)は、コンバータ回路とインバータ回路とを有する(何れも図示を省略)。負荷器(1001)に供給された交流電力は、電力変換装置(1001a)によって、所望周波数及び所望電圧を有した交流電力に変換され、圧縮機(より詳しくは圧縮機が備える電動機)に供給される。それにより、圧縮機は稼働して冷媒回路が機能し、その結果、室内の空気調和が行われる。
【0435】
なお、空気調和装置である負荷器(1001)には、力率改善用のアクティブフィルタが内蔵されている。これにより、負荷器(1001)の力率は高くなり、その結果、電源力率を改善することが容易となる。
【0436】
負荷器(1001,1002)や負荷器(1001)に含まれる圧縮機の電動機が最大電力で稼働すると、負荷器(1001,1002)へ電力を供給する交流電源(1003)の電流経路(1012)を介して高調波電流が流出し、交流電源(1003)の電源力率が低下する場合がある。一般的に、電気料金には、電源力率が良い程高い割引率を受けられる仕組み、及び/または、電源力率が所定値(90%や85%など)を下回るとその分電気料金が引き上げられるペナルティが与えられる仕組みが存在する。そのため、本実施形態11では、負荷器(1001,1002)による電源力率の低下の改善を図っている。
【0437】
<電流測定器(1005a)>
電流測定器(1005a)は、交流電源(1003)の1相に対応して設けられている。電流測定器(1005a)は、当該相
の電流値を検出する。
【0438】
<電源力率デマンド制御器(1040)>
電源力率デマンド制御器(1040)は、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリデバイスとを用いて構成され、電流測定器(1005a)及び各負荷器(1001,1002)の調整部(1001c,1002c)と接続されている。電源力率デマンド制御器(1040)は、現在の交流電源(1003)の電源高調波を電源品質とし、当該電源品質と交流電源(1003)の電源力率に関する目標値とに基づいて、負荷器(1001,1002)の運転状態を変化させるための負荷器指令信号Fs(制御信号)を生成すると、これを調整部(1001c,1002c)に出力する。
【0439】
図32に示すように、電源力率デマンド制
御器(1040)は、5次高調波目標値設定部(1051)、負荷調整判断部(1052)及び5次高調波抽出部(1053)を有する。
【0440】
5次高調波目標値設定部(1051)は、交流電源(1003)の電源電流等に基づいて、力率の目標値(THD5_ref)を予め設定する。5次高調波抽出部(1053)は、電流検出器(1005a)によって検出された電流(Irs)から、当該電流(Irs)に含まれる5次高調波成分(THD5)(交流電源の周波数が50Hzの場合、250Hzの周波数成分)を抽出する。
【0441】
負荷調整判断部(1052)は、減算部(1061)、積分演算部(1062)及び判定部(1063)を有する。
【0442】
減算部(1061)は、目標値(THD5_ref)と5次高調波成分(THD5)とが入力されると、目標値(THD5_ref)から5次高調波成分(THD5)を減算する。積分演算部(1062)は、減算部(1061)の減算結果を積分する。判定部(1063)は、積分結果に基づいて負荷器(1001,1002)それぞれに各負荷器(1001,1002)の能力(電力,電流,速度等)を低下させる負荷器指令信号Fsを生成する。この負荷器指令信号Fsは、負荷器(1001,1002)の各調整部(1001c,1002c)に出力される。
【0443】
上記負荷器指令信号Fsにより、負荷器(1001,1002)の能力が低下して電力的に余裕ができる。5次高調波成分を5次高調波目標値と一致させることにより高い力率を確保することができる。
【0444】
<調整部(1001c,1002c)>
各負荷器(1001,1002)は、電源力率デマンド制御器(1040)に接続された調整部(1001c,1002c)を含む。調整部(1001c,1002c)それぞれは、マイクロコンピュータと、当該マイクロコンピュータを動作させるためのプログラムを格納したメモリ
デバイスとを用いて構成される。調整部(1001c,1002c)は、電源力率デマンド制御器(1040)から出力される負荷器指令信号Fsに基づき、各負荷器(1001,1002)の運転状態を変化させる運転パラメータを調整して負荷器(1001,1002)の運転状態を制御する。運転パラメータとは、具体的には負荷器(1001,1002)の電力、負荷器(1001,1002)の電流、負荷器(1001,1002)に含まれる電動機の回転速度等である。
【0445】
<効果>
本実施形態11によれば、電源力率に代えて電源高調波を電源品質としても、複数の負荷器(1001、1002)が接続された電力系統において、電源力率を改善することができる。
【0446】
<実施形態11の変形例>
運転状態の制御対象は、負荷器(1001,1002)のうちのいずれか一方であってもよい。
【0447】
≪実施形態1〜10に係る電源力率の定義、ならびに、実施形態11の高調波成分と力率との関係について≫
ここでは、上記実施形態1〜10で電源品質とした「電源力率」の定義、ならびに、上記実施形態11で抽出した電源高調波に基づく力率制御によっても電源力率の改善が図れること、について説明する。
【0448】
上記実施形態1〜11に云う「電源力率」とは、総合力率と基本波力率のどちらも意味するものとする。
【0449】
交流電源の電圧v(t)および電流i(t)は、周波数をfとして、以下のように示される。
【0452】
有効電力Pは、周期をT(=1/f)とすると、以下に示すように、瞬時電力“v(t)×i(t)”の1周期における平均値で与えられる。
【0454】
上式(18)において、異なる周波数成分の積の項を1周期にわたって積分すると有効電力Pは0となり、周波数の同じ成分の二乗の項のみが残る。そのため、上式(18)の計算結果は、下式(19)となる。
【0456】
上式(19)の演算結果は、歪み波交流の有効電力が、その歪み波に含まれる直流成分、基本波成分および各高調波成分がそれぞれ単独で回路に存在する場合の各有効電力の総和に等しいことを示している。
【0457】
一方、電圧の実効値V及び電流の実効値Iは、それぞれ以下のように示される。
【0460】
このとき皮相電力Sは、下式(22)で与えられる。
【0462】
このときの力率PFは、有効電力と皮相電力の比で定義され、上式(19)(20)に基づき下式(23)で表される。
【0464】
上式(23)で与えられる電源力率PFは、電圧波形及び電流波形がともに歪み波の場合についてのものである。
【0465】
なお、高調波成分の影響を加味した式(23)で定義される力率は、次に説明する基本波力率と区別して総合力率と呼称する。
【0466】
基本波力率は、電圧及び電流が直流成分を含まず電圧波形の歪みが無視できる場合(つまり、正弦波電圧の電源に接続された回路に相当する)の力率である。電圧及び電流が直流成分を含まず電圧波形の歪みが無視できる場合の電圧v(t)及び電流i(t)は、下式(24)(25)にて表すことができる。
【0469】
このとき有効電力は、上式(18)に従って求められるが、異なる周波数成分の積の項は0となり、電圧の基本波成分と電流の基本波成分の積の項のみが残る。その結果、有効電力Pは,下式(26)のように表すことができる。
【0471】
式(26)における“cosφ1”は、基本波電圧と基本波電流の位相差の余弦、すなわち基本波成分についての力率であり、これを基本波力率という。一方、上式(24)により電圧の実効値をV1とすると、皮相電力Sは、下式(27)のように表すことができる。
【0473】
従って、総合力率PFは、上式(23)及び上式(27)により、以下のように表すことができる。
【0475】
波形の歪み度合いを表す指標として、全高調波歪み率(Total Harmonic Distortion 略してTHD)は、基本波実効値A1に対する基本波を除く全高調波実効値Anの比として、下式(29)にて定義することができる。
【0477】
上式(29)を用いて、電流の全高調波歪み率THDiの下式(30)に、上式(28)を代入すると、総合力率PFは、下式(31)のように表すことができる。
【0480】
上式(31)は、電流に高調波成分が含まれる場合の総合力率が、基本波力率の所定倍B(下式(32)参照)となることを示している。
【0482】
また、このことは、基本波力率と高調波成分THDiとを制御することにより、総合力率を変化させることができることを示している。特に、高調波成分THDiを小さくすると、総合力率PFは向上する。そのため、上式(31)は、電流の高調波成分THDiを検出値として総合力率PFを制御できることを示している。
【0483】
≪その他の実施形態≫
負荷器指令信号Fs(制御信号)の生成に用いられる電源品質は、現在の電源力率または電源高調波ではなく、現在の電源力率及び電源高調波の組合せであってもよい。