特許第6676710号(P6676710)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676710
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】燃料噴射システム用の燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   F02M59/44 E
   F02M59/44 P
【請求項の数】10
【外国語出願】
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-146504(P2018-146504)
(22)【出願日】2018年8月3日
(65)【公開番号】特開2019-31975(P2019-31975A)
(43)【公開日】2019年2月28日
【審査請求日】2018年8月3日
(31)【優先権主張番号】10 2017 213 891.2
(32)【優先日】2017年8月9日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ユリィ ミハイロフ
(72)【発明者】
【氏名】ヤヴズ クアト
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 独国特許出願公開第102016201082(DE,A1)
【文献】 特開2016−205218(JP,A)
【文献】 特開2009−108784(JP,A)
【文献】 特開2001−082290(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/042472(WO,A1)
【文献】 特開2010−223214(JP,A)
【文献】 特開2016−017497(JP,A)
【文献】 特開2015−098806(JP,A)
【文献】 特表2006−521487(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射システムにおいて燃料に高圧を加える燃料高圧ポンプ(10)であって、
ポンプケーシング(12)であって、作動時に運動軸線(24)に沿って並進運動するポンプピストン(22)が内部に案内される、前記ポンプケーシング(12)の第1の端部領域(14)と前記ポンプケーシング(12)の第2の端部領域(16)との間に配置されたケーシング孔(20)と、前記第1の端部領域(14)と前記第2の端部領域(16)との間で前記ケーシング孔(20)に対して平行に延びる外壁領域(32)と、を備えるポンプケーシング(12)と、
前記ポンプケーシング(12)の前記外壁領域(32)と共に減衰総容積(54)を画成するダンパケーシング(36)を備えるダンパ装置(34)と、
を備え、
前記ダンパケーシング(36)は、前記外壁領域(32)に対して接線方向で深さ軸線(40)に沿って延びるケーシング深さ(38)を有しており、
前記ダンパケーシング(36)は、前記運動軸線(24)に対して半径方向で前記外壁領域(32)から離れるように長手方向軸線(44)に沿って延びるケーシング長さ(42)を有しており、該ケーシング長さ(42)は前記ケーシング深さ(38)よりも大きく形成されている、
燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項2】
前記ケーシング長さ(42)は、前記ケーシング深さ(38)の少なくとも2倍の大きさに形成されている、請求項1記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項3】
前記ダンパケーシング(36)の、前記外壁領域(32)から離れるように延びる前記ケーシング長さ(42)は、前記運動軸線(24)に対して垂直方向に延びる前記ポンプケーシング(12)の直径dと少なくとも同じ大きさに形成されており、前記ポンプケーシング(12)は、特にd<4cmの直径を有するロッド材料(46)から形成されている、請求項1または2記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項4】
前記ポンプケーシング(12)は、前記外壁領域(32)に切欠き(48)を有しており、前記ダンパケーシング(36)は、前記切欠き(48)に整合して該切欠き(48)を閉じるように前記外壁領域(32)に配置されており、前記切欠き(48)により規定された切欠き容積(50)と、前記ダンパケーシング(36)により規定されたダンパケーシング容積(52)とが共に前記減衰総容積(54)を規定し、前記切欠き容積(50)は、前記減衰総容積(54)の特に最大で1/3である、請求項1から3までのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項5】
前記ダンパケーシング(36)内にダンパカプセル(56)が配置されており、該ダンパカプセル(56)は、前記外壁領域(32)に対して接線方向に延びるカプセル高さ(58)と、前記運動軸線(24)に対して半径方向に延びるカプセル長さ(60)とを有しており、該カプセル長さ(60)は前記カプセル高さ(58)よりも大きく形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項6】
前記ダンパカプセル(56)は、前記切欠き容積(50)内に突入して延びるように、前記ダンパケーシング(36)内に配置されている、請求項4を引用する請求項5記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項7】
前記ダンパケーシング(36)内に、前記ダンパカプセル(56)をダンパケーシング壁(70)から離間させるための少なくとも1つのスペーサスリーブ(68)が配置されており、該スペーサスリーブ(68)は、前記切欠き容積(50)内に突入するように延びている、請求項4を引用する請求項5記載の、または請求項6記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項8】
前記ダンパカプセル(56)および/または前記スペーサスリーブ(68)は、専ら前記ダンパケーシング(36)に、特に力接続によって取り付けられている、請求項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項9】
前記ダンパケーシング(36)は、流体接続部(76)を取り付けるための少なくとも1つの幾何学的な接続部(74)を形成しており、該幾何学的な接続部(74)は、前記ダンパケーシング(36)の前記長手方向軸線(44)に対して特に平行に延びている、請求項1から8までのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項10】
前記ダンパケーシング(36)は、一体形の深絞り部材(72)として形成されている、請求項1から9までのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料噴射システムにおいて燃料に高圧を加えるための燃料高圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料高圧ポンプは、燃料を内燃機関の燃焼室内に噴射する燃料噴射システムにおいて、燃料に高圧を加えるために使用される。この場合、圧力は、例えばガソリン内燃機関では150バール〜400バールの範囲にあり、ディーゼル内燃機関では1500バール〜2500バールの範囲にある。それぞれの燃料において形成され得る圧力が高ければ高いほど、燃焼室内における燃料の燃焼中に発生するエミッションは少なくなる。このことは、特に、エミッションの低減がますます強く望まれる背景においては有利である。
【0003】
それぞれの燃料において高い圧力を達成することができるように、燃料高圧ポンプは典型的にはピストンポンプとして構成されている。ポンプピストンは並進運動を実施し、このときに燃料は周期的に圧縮されかつ膨脹する。したがって、このようなピストンポンプの不均一な圧送により、燃料高圧ポンプの低圧領域内の容積流に変動が生じる。この変動は、燃料噴射システム全体における圧力変動に結び付けられる。この変動は、燃料高圧ポンプ内において充填損失をもたらす。したがって、燃焼室内で要求される燃料量の正確な調量を保証することができない。さらに、発生する圧力脈動は、ポンプ構成要素および例えば燃料高圧ポンプへの流入管路の振動を引き起こす。この振動は不都合な異音を招き、最悪の場合には種々異なる構成部材の損傷をも招いてしまう。
【0004】
したがって、通常、燃料高圧ポンプの低圧領域内には、ダンパ装置が設けられている。このダンパ装置は、液圧アキュムレータとして作動し、容積流における変動を補償し、ひいては発生する圧力脈動を減少させる。この目的のために、例えば、ガス容積を燃料から分離する変形可能な要素が使用される。今、燃料高圧ポンプの低圧領域内の圧力が上昇すると、この要素は変形し、このとき、例えばガス容積が圧縮され、燃料の余剰な液体のためのスペースが形成される。圧力が後続の時点で再び降下すると、ガスは再び膨脹し、これにより燃料の蓄えられた液体が再び放出される。
【0005】
これまでに、このようなダンパ装置を燃料高圧ポンプのポンプケーシングの端部領域に取り付けることが知られていた。しかし、このためには、端部領域、例えばヘッド領域において、このようなダンパ装置のために十分な構造空間を使用することができるポンプケーシングを提供することが必要であった。この要件は、ポンプケーシングの提供時、例えば小さな直径を有する特殊綱ロッドの使用時に、フレキシビリティを不都合に制限してしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の課題は、この観点において改善された燃料高圧ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴の組み合わせを有する燃料高圧ポンプによって解決される。
【0008】
本発明の有利な形態は従属請求項の対象である。
【0009】
燃料噴射システムにおいて燃料に高圧を加える燃料高圧ポンプは、ポンプケーシングであって、作動時に運動軸線に沿って並進運動するポンプピストンが内部に案内される、ポンプケーシングの第1の端部領域とポンプケーシングの第2の端部領域との間に配置されたケーシング孔と、第1の端部領域と第2の端部領域との間でケーシング孔に対して平行に延びる外壁領域と、を備えるポンプケーシングを有している。さらに、燃料高圧ポンプは、ポンプケーシングの外壁領域と共に減衰総容積を画成するダンパケーシングを備えるダンパ装置を有している。ダンパケーシングは、外壁領域に対して接線方向で、深さ軸線に沿って延びるケーシング深さと、運動軸線に対して半径方向で、外壁領域から離れるように長手方向軸線に沿って延びるケーシング長さとを有しており、ケーシング長さはケーシング深さよりも大きく形成されている。
【0010】
したがって、根底となる思想は、ダンパ装置がポンプケーシングの上側の端部に組み付けられている従来公知の燃料高圧ポンプとは異なり、ダンパ装置を、燃料高圧ポンプのポンプケーシングに側方で設けることである。これにより、できるだけ小さな直径を有する固い材料からポンプケーシングを製造することができる。したがって、燃料高圧ポンプは、競争力があるままで、燃料高圧ポンプのために使用時に必要となる構造空間に関する利点も得ることができる。なぜならば、燃料高圧ポンプの主要構成要素、つまりポンプケーシングの直径を全体的に縮小することができるからである。ポンプケーシングのためのロッド材料の直径が特定の直径を越えると、従来は燃料高圧ポンプの上側の端部に組み付けられているダンパ装置のための構造空間がもはや足りなくなってしまうので、ダンパ装置は側方でポンプケーシングに組み付けられる。しかし、十分な減衰効果を達成するためには、ダンパ装置は、予め規定された容積を提供しなければならない。このことを可能にするために、ダンパ装置はポンプケーシングから離れて周囲に突出するように延びている。これにより、運動軸線に対して半径方向でポンプケーシングの外壁領域から延びる長手方向軸線に沿ったケーシング長さが生じ、このケーシング長さは、深さ軸線に沿って外壁領域に対して接線方向に延びるケーシング深さよりも明らかに大きく形成されている。
【0011】
したがって、ダンパ装置は、半径方向でポンプケーシングに沿って組み付けられており、ダンパケーシングの長手方向軸線は、ポンプ軸線、つまりポンプピストンの運動軸線に対して少なくともほぼ直角に延びている。ポンプケーシングにおけるダンパケーシングの側方の配置は、電気的な接続コネクタ配向に関して比較的大きな順応性または可変性を可能にするという別の利点を有している。公知の燃料高圧ポンプでは、例えば電気的なコネクタは側方に向けることしかできなかった。下方に向かう傾きは大抵の場合は不可能であった。なぜならば、下方には大抵の場合多くの妨害輪郭が位置していたからである。これにより、通常は、単に約180°である方向付けのための角度範囲が生じていた。提案された燃料高圧ポンプおよびダンパ装置の側方の配置では、例えばコイルおよび付属する電気的なコネクタのような電気的な構成部材を、ポンプケーシングにおいて360°の角度範囲で方向付けすることが可能である。
【0012】
有利には、ダンパケーシングは、取付けフランジ構造を有している。この取付けフランジ構造により、ダンパケーシングをポンプケーシングに取り付けることができる。したがって、例えばダンパケーシングはポンプケーシングの外壁領域に溶接されていてよい。
【0013】
ポンプケーシングにおけるダンパケーシングの取付け時の溶接シームにとっても、ダンパケーシングが側方でポンプケーシングに配置されている場合に利点が生じる。例えば、大抵の場合に溶接によって直接にポンプケーシングに結合されているダンパカバーとして形成されているダンパ装置が従来公知である。燃料高圧ポンプの作動中に、このようなダンパカバーは、特に圧力ピーク時に、燃料高圧ポンプの内部に占める圧力に基づいた力を受ける。この圧力にさらされている面積は、通常、このようなダンパカバーとポンプケーシングとの間の結合横断面の直径である。ダンパ装置の、いまや側方の、長手方向側での取付けにより、このような溶接シームの長さも、液圧が作用する面積も著しく減らすことができる。これにより、著しく小さな液圧負荷、ひいては燃料高圧ポンプの全体的により大きな頑丈さが生じる。溶接シームの小さな長さも、これにより燃料高圧ポンプの組付け時のサイクル時間を減らすことができ、ひいては組付けコストを減らすことができるという利点を有している。加えて、溶接エラーまたはボイドの恐れも減少し、このことは燃料高圧ポンプの作動時の漏れのリスクも同様に低下させる。
【0014】
有利な形態では、ケーシング長さが、ダンパケーシングのケーシング深さの少なくとも2倍の大きさに形成されている。これにより、ポンプケーシングの外壁領域に極めてフレキシブルに取り付けることができる、極めて細く構成されたダンパ装置を提供することができる。
【0015】
有利には、ダンパケーシングの、外壁領域から離れるように延びるケーシング長さは、運動軸線に対して垂直方向に延びるポンプケーシングの直径dと少なくとも同一の大きさに形成されている。つまり、ダンパ装置に対するポンプケーシングの直径dは極めて小さく、組込み状態において僅かな構造空間しか要求しない。
【0016】
この場合、有利には、ポンプケーシングはd<4cmの直径を有するロッド材料から形成されている。
【0017】
ポンプケーシングの製造のためのロッド材料に必要となる直径dは、ポンプケーシングの製造価格に多大な影響を与える。ダンパ装置を側方でポンプケーシングに沿って取り付けることにより、ロッド材料の必要となる直径dを著しく減らすことができ、このことはポンプケーシングのための製造コストを低下させる。
【0018】
有利には、ポンプケーシングは、外壁領域に切欠きを有している。この場合、ダンパケーシングは、切欠きに整合してこの切欠きを閉じるように、外壁領域に配置されている。この場合、切欠きにより規定される切欠き容積と、ダンパケーシングにより規定されるダンパケーシング容積とが共に、減衰総容積を規定する。
【0019】
切欠き容積が設けられていることにより、ダンパ装置を長手方向軸線に沿ってより短く形成することも可能である。なぜならば、既にポンプケーシングの一部分が、総容積の減衰に寄与し得るからである、これによって、有利には燃料高圧ポンプ全体の構造空間を節減することができる。有利には、切欠きから別の孔がポンプケーシングの内方に向かって出発する。したがって、この場合切欠きは複数の機能を満たし、一方では減衰総容積の別の部分を提供し、しかも燃料高圧ポンプの別の部分への別の接続部分も提供する。
【0020】
有利には、切欠き容積は、減衰総容積の最大で1/3である。これにより、減衰総容積の主な部分がダンパケーシング内に配置され、ポンプケーシングは、特に細いロッド材料から、つまり極めて小さな直径dを有するロッド材料から製造することができる。
【0021】
ダンパ装置の一部が側方でポンプケーシング内に突入している場合、有利には燃料高圧ポンプ全体のための構造空間を減らすことができる。このことは例えば、ダンパ装置と流入弁との間の接続孔またはポンプピストンの駆動領域への接続孔を比較的短く保持するために利用することができる。これにより、圧力ピークの減衰の改善と、ポンプケーシングの製造時におけるこれらの接続孔の比較的短い加工時間とが得られ、このことはやはりポンプケーシング全体の製造コストを低下させる。さらに、横断面を部分的に極めて大きく形成することも可能であり、これにより、例えば接続孔が大きな孔直径を有することができ、または長孔として構成することができる。このこともダンパ装置の減衰特性の改善に寄与する。
【0022】
有利には、切欠きの壁およびダンパケーシングの壁は互いに整合して配置されているので、切欠きは、ポンプケーシングにおけるダンパケーシングの取付けによって、整合して閉じることができる。
【0023】
有利には、ダンパケーシング内にダンパカプセルが配置されている。このダンパカプセルは、外壁領域に対して接線方向に延びるカプセル高さと、運動軸線に対して半径方向に延びるカプセル長さとを有している。この場合、カプセル長さはカプセル高さよりも大きく形成されている。これにより、ダンパカプセルは有利には側方でポンプケーシングの外壁領域から離れるように延びている。
【0024】
有利には、ダンパカプセルは互いに溶接された2つのダイヤフラムから構成されている。これらのダイヤフラムはその間にガス容積を包囲している。ガス容積は圧縮可能であるので、作動時に、ダイヤフラムは変形可能である。
【0025】
ダンパカプセルは、主に円形かつ、有利にはカプセル高さ軸線を中心として回転対称的に形成されている。したがって、カプセル長さは、運動軸線に対して垂直方向に延びるカプセル長さ軸線に沿ったダンパカプセルの横断面の横断面長さに一致する。ダンパカプセルは、有利には、ダンパカプセルのカプセル長さ軸線が、運動軸線に対して垂直方向に延びるカプセル長さに沿って延びるように、ダンパケーシング内に配置される。
【0026】
有利には、ダンパカプセルは、切欠き容積内に突入して延びるように、ダンパケーシング内に配置されている。したがって、燃料高圧ポンプ全体により必要とされる構造空間をできるだけ小さく維持することができる。
【0027】
有利には、ダンパケーシング内に、ダンパケーシング壁からダンパカプセルを離間させるための少なくとも1つのスペーサスリーブが配置されている。この場合、スペーサスリーブは、切欠き容積内に突入するように延びている。このようなスペーサスリーブは、有利には、ダンパカプセルをダンパケーシング壁から離して保持するように設けられており、これにより、ダンパカプセルを取り囲んで燃料が流れることが可能にされる。しばしば、このようなスペーサスリーブは、さらに別の機能を有している、すなわち、ダンパカプセルを形成する2つのダイヤフラムを結合するために設けられている溶接シームへ予荷重を及ぼす。
【0028】
例えば、少なくとも1つのスペーサスリーブがダンパケーシング内に配置されていてよいが、ダンパカプセルの両側にそれぞれ1つのスペーサスリーブを配置することも可能である。
【0029】
可能な形態では、複数のダンパカプセルおよび複数のスペーサスリーブがダンパケーシング内に配置されていてよい。
【0030】
スペーサスリーブは、有利には半径方向の切欠きを有しており、これにより燃料がスペーサスリーブを通って流れることができる。
【0031】
有利な形態では、ダンパカプセルおよび/またはスペーサスリーブは専らダンパケーシング内に取り付けられている。取付けは有利には、力接続によって行われる。例えば、スペーサスリーブはばね弾性的に形成されていてよく、これにより、スペーサスリーブがダンパカプセルをダンパケーシング内に位置保持することができる。
【0032】
これにより、少なくとも1つのダンパカプセルまたは少なくとも1つのスペーサスリーブをダンパケーシング内に取り付けることによって、ダンパ装置を、まず燃料高圧ポンプのポンプケーシングの外側に前組付けで準備することが可能である。その後に初めて、ダンパ装置全体がモジュールとして、例えば溶接により、燃料高圧ポンプのポンプケーシングに取り付けられる。したがって、ダンパ装置は、いわゆる「カートリッジ型ダンパ」として、メイン組付けライン外で、または場合によってはそれどころかサプライヤにおいて、前組み付けすることができる。これにより、燃料高圧ポンプの製造時に、全体的に、例えば組付けにおけるサイクルタイムの減少による利点が生じ得る。
【0033】
有利には、さらに、ダンパケーシングの一方の側が、少なくともダンパカプセルまたはスペーサスリーブの直径の長さだけ開いて形成されている。この開口内に、ダンパ装置の前組付け時にダンパカプセルとスペーサスリーブとから成るセットを側方から挿入することができる。
【0034】
有利には、ダンパケーシングが、流体接続部を取り付けるための少なくとも1つの幾何学的な接続部を形成する。この場合、幾何学的な接続部は、有利にはダンパケーシングの長手方向軸線に対して平行に延びている。
【0035】
この幾何学的な接続部に取り付け可能な流体接続部は、例えば、燃料高圧ポンプの低圧領域からの流入部であってよい。しかし、ここにいわゆるMPIシステムのための接続部または出口を接続することも可能である。流体接続部または幾何学的な接続部内には、例えばフィルタも形成されていてよい。流体接続部および幾何学的な接続部は、例えば、流体接続部が簡単なクリップ嵌めで幾何学的な接続部に取り付けることができるように形成されていてよい。しかし、代替的に、流体接続部を幾何学的な接続部に溶接結合することも考えられる。
【0036】
したがって、大抵の場合、ダンパ装置は、ダンパケーシング、ダンパカプセルおよびスペーサスリーブから成っている。スペーサスリーブは、例えばダンパカプセルの予荷重のために作用する。任意では、ダンパ装置は、別の構成要素、例えば別のダンパカプセル、別のスペーサスリーブ、流入部接続部、流入部フィルタ、MIPシステム用の低圧接続部、シール等を含んでいてもよい。
【0037】
可能な形態では、ダンパケーシングは、一体形の深絞り部材として形成されている。この場合、ダンパケーシングは例えば、ダンパカプセルの収容空間および異なる液体接続部のための幾何学的な接続部を同時に形成することができる。
【0038】
代替的に、カバーを備えるダンパケーシングを形成することも考えられる。
【0039】
以下、本発明の有利な形態を、添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】ダンパ装置が取り付けられているポンプケーシングを備える燃料高圧ポンプを示す斜視図である。
図2】ポンプケーシングおよびダンパ装置を通る、図1に示した燃料高圧ポンプの横断面図である。
図3】ダンパ装置の領域における、図2に対応する拡大した横断面図である。
図4】ダンパ装置のみを示す、図2および図3に対応する拡大した横断面図である。
図5図3および図4によるダンパ装置内に配置されているスペーサスリーブを示す斜視図である。
図6図3または図4に示すダンパ装置のためのダンパケーシングの第1の実施形態を示す斜視図である。
図7図3または図4に示すダンパ装置のためのダンパケーシングの第2の実施形態を上から見た平面図である。
図8図7に示したダンパケーシングと、ダンパケーシングに取り付けられた流体接続部の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
図1は、燃料高圧ポンプ10の斜視図を示している。この燃料高圧ポンプ10により、例えばガソリンまたはディーゼルなどの燃料に高圧を加えることができる。燃料高圧ポンプ10は、この燃料高圧ポンプ10の要素を収容するためのポンプケーシング12を有している。このポンプケーシング12は、第1の端部領域14と、第2の端部領域16とを有している。図1に示した実施形態では、燃料高圧ポンプ10のポンプケーシング12に、フランジ18が配置されている。このフランジ18により、ポンプケーシング12を内燃機関のエンジンブロックに取り付けることができる。
【0042】
ポンプケーシング12内には、ケーシング孔20が配置されている。このケーシング孔20内では、作動中に、ポンプピストン22が、運動軸線24に沿って第1の端部領域14と第2の端部領域16との間で並進運動する。ケーシング孔20は、第1の端部領域14において、加圧室26を形成している。この加圧室26内で、燃料はポンプピストン22の運動によって圧縮される。第1の端部領域14とは反対の側で、ポンプケーシング12は第2の端部領域16において駆動装置28に配置されている。この駆動装置28は、ポンプピストン22を、作動中に並進運動させる。駆動装置28は、例えば内燃機関のカムシャフトに連結されていてよく、カムシャフト上に、ポンプピストン22は例えばばね30を介して保持される。
【0043】
フランジ18は、ポンプケーシング12の外壁領域32に配置されている。この外壁領域32は、第1の端部領域12と第2の端部領域16との間で運動軸線24に対して平行に延びている。
【0044】
加えて、外壁領域32にはダンパ装置34が配置されている。
【0045】
図1では、ダンパ装置34のダンパケーシング36しか見ることができない。図2は、ダンパ装置34を備えるポンプケーシング12の横断面を示している。ダンパ装置34の内部が露出して示されている。
【0046】
図2において判るように、ダンパケーシング36は、外壁領域32に対して接線方向で深さ軸線40に沿って延びるケーシング深さ38を有している。さらに、ダンパケーシング36は、運動軸線24に対して半径方向で外壁領域32から離れるように長手方向軸線44に沿って延びるケーシング長さ42を有している。
【0047】
図2から判るように、この場合、ケーシング長さ42は、ケーシング深さ38よりも大きく形成されている。特に、本実施形態では、ケーシング長さ42は、ケーシング深さ38の約2倍の大きさに形成されている。
【0048】
したがって、ダンパ装置34は、これまでに公知であるように、第1の端部領域14、つまり燃料高圧ポンプ10のヘッド領域に設けられているのではなく、ポンプケーシング12の側方に半径方向に配置されている。これにより、ポンプケーシング12を製造するために、比較的小さな直径dを有するロッド材料46を使用することが可能である。ダンパ装置34のための構造空間を提供しなければならなかったので、このことは従来不可能であった。ダンパ装置34の新規の位置決めにより、今や、ポンプケーシング12を全体的に廉価に製造することが可能である。
【0049】
図1に示した例示的な実施形態において判るように、原理的に、ダンパケーシング36の、外壁領域32から延びるケーシング長さ42がポンプケーシング12の直径dとまさに同一の大きさであるように、ポンプケーシング12の直径dを短く形成することができる。例えば、ポンプケーシング12は、d<4cmの直径を有するロッド材料46から形成されていてよい。
【0050】
図3は、図2に対応する横断面の拡大図を、ダンパケーシング36がポンプケーシング12に取り付けられている領域で示している。
【0051】
ポンプケーシング12は、外壁領域32において、ダンパケーシング36により閉じられる切欠き48を有していることが判る。したがって、切欠き48は、ダンパケーシング36により形成されるダンパケーシング容積52と共に、減衰総容積54を規定する切欠き容積50を形成する。減衰総容積54の一部がポンプケーシング12内、すなわち切欠き48内に配置されていることによって、燃料高圧ポンプ10の半径方向における更なる構造空間を節減することができる。しかし、減衰総容積54の大部分は、主にダンパケーシング容積52により形成されており、この場合、切欠き容積54は減衰総容積54の最大で1/3である。
【0052】
ダンパケーシング36内には、ダンパカプセル56が配置されている。このダンパカプセル56は、同様に半径方向でポンプケーシング12から離れる方向に延びている。したがって、ダンパカプセル56は、外壁領域32に対して接線方向に延びるカプセル高さ58を有しており、運動軸線24に対して半径方向に延びるカプセル長さ60を有している。この場合、カプセル長さ60は、カプセル高さ58よりも大きく形成されている。
【0053】
ダンパカプセル56は、主に2つのダイヤフラム62から形成されている。これらのダイヤフラム62は、縁部領域64で互いに溶接されていて、これによりその間にガス容積66を包囲している。作動時に、ダンパケーシング36には燃料が充填されている。燃料高圧ポンプ10の作動時に、燃料内で広範に伝播する圧力ピークが発生すると、ダンパケーシング36内の燃料質量が高められ、変形可能な両ダイヤフラム62を互いに近づく方向に押圧し、その際にガス容積66が圧縮される。圧力ピークが再び収まると、ガス容積66は再び膨脹することができ、ダイヤフラム62はその当初の形状へと戻ることができる。このガス容積66により、相応して圧力ピークが緩和され、システム全体を損傷から守ることができる。
【0054】
ダンパケーシング36内には、本実施形態では、単に1つのダンパカプセル56しか設けられていないが、複数のダンパカプセル56がダンパケーシング36内に配置されていることも可能である。
【0055】
ダンパカプセル56は、スペーサスリーブ68によりダンパケーシング壁70から間隔を空けて保持される。したがって、一方では、ダンパカプセル56を良好に取り囲みながら燃料が流過することができ、他方では、スペーサスリーブ68が、縁部領域64において溶接シームに予荷重を加えることができ、これにより、この溶接シームを安定化させるという付加的な効果を有している。
【0056】
例示的なスペーサスリーブ68が図5に斜視図で示されている。スペーサスリーブ68が半径方向の切欠きを有しており、これにより、燃料が良好に貫流できることが判る。
【0057】
図3および図4からは、スペーサスリーブ68およびダンパカプセル56が、ポンプケーシング12に設けられた切欠き48内に突入して延びていることが判る。それにもかかわらず、これらの要素は、切欠き48内に取り付けられているのではなく、ダンパケーシング36内にのみ取り付けられている。このことは、例えば、スペーサスリーブ68がばね弾性的な要素として形成されていることによって実現される力接続により行われる。図3および図4に示した実施形態では、ダンパカプセル56の両側にそれぞれ1つのスペーサスリーブ68が設けられており、これらのスペーサスリーブ68がばね弾性的に形成されているので、スペーサスリーブ68は、ばね力によってダンパカプセル56をダンパケーシング36内に位置保持する。
【0058】
ダンパ装置34の要素が、専らダンパケーシング36に取り付けられていて、切欠き48に取り付けられていないことにより、ダンパ装置34を、カートリッジ型ダンパとして燃料高圧ポンプ10の外側に前組付けし、その後、ポンプケーシング12に固定することが可能である。
【0059】
図6に斜視図で示されているように、ダンパ装置34の前組付けをポンプケーシング12の外側でできるだけ簡単に実現することができるように、ダンパケーシング36の一方の側が開放しているので、この側に少なくとも1つのダンパカプセル56と少なくとも1つのスペーサスリーブ68から成るセットを挿入することができる。
【0060】
例えば、ダンパケーシング36は、図6に示したように一体形の深絞り部材72として形成されていてよい。この製造方法では、図7にダンパケーシング36を上から見た平面図で示すように、幾何学的な接続部74を統合して設けることも可能である。この幾何学的な接続部74に流体接続部76を取り付けることができる。この場合、幾何学的な接続部74は、有利にはダンパケーシング36の長手方向軸線44に対して平行に延びている。
【0061】
図8は、取り付けられた流体接続部76を有するダンパ装置34の横断面図を示している。
【0062】
流体接続部76は、例えば低圧領域からの流入部であるか、または例えばMPIシステムのための出口であってもよい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8