【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1に記載の特徴の組み合わせを有する燃料高圧ポンプによって解決される。
【0008】
本発明の有利な形態は従属請求項の対象である。
【0009】
燃料噴射システムにおいて燃料に高圧を加える燃料高圧ポンプは、ポンプケーシングであって、作動時に運動軸線に沿って並進運動するポンプピストンが内部に案内される、ポンプケーシングの第1の端部領域とポンプケーシングの第2の端部領域との間に配置されたケーシング孔と、第1の端部領域と第2の端部領域との間でケーシング孔に対して平行に延びる外壁領域と、を備えるポンプケーシングを有している。さらに、燃料高圧ポンプは、ポンプケーシングの外壁領域と共に減衰総容積を画成するダンパケーシングを備えるダンパ装置を有している。ダンパケーシングは、外壁領域に対して接線方向で、深さ軸線に沿って延びるケーシング深さと、運動軸線に対して半径方向で、外壁領域から離れるように長手方向軸線に沿って延びるケーシング長さとを有しており、ケーシング長さはケーシング深さよりも大きく形成されている。
【0010】
したがって、根底となる思想は、ダンパ装置がポンプケーシングの上側の端部に組み付けられている従来公知の燃料高圧ポンプとは異なり、ダンパ装置を、燃料高圧ポンプのポンプケーシングに側方で設けることである。これにより、できるだけ小さな直径を有する固い材料からポンプケーシングを製造することができる。したがって、燃料高圧ポンプは、競争力があるままで、燃料高圧ポンプのために使用時に必要となる構造空間に関する利点も得ることができる。なぜならば、燃料高圧ポンプの主要構成要素、つまりポンプケーシングの直径を全体的に縮小することができるからである。ポンプケーシングのためのロッド材料の直径が特定の直径を越えると、従来は燃料高圧ポンプの上側の端部に組み付けられているダンパ装置のための構造空間がもはや足りなくなってしまうので、ダンパ装置は側方でポンプケーシングに組み付けられる。しかし、十分な減衰効果を達成するためには、ダンパ装置は、予め規定された容積を提供しなければならない。このことを可能にするために、ダンパ装置はポンプケーシングから離れて周囲に突出するように延びている。これにより、運動軸線に対して半径方向でポンプケーシングの外壁領域から延びる長手方向軸線に沿ったケーシング長さが生じ、このケーシング長さは、深さ軸線に沿って外壁領域に対して接線方向に延びるケーシング深さよりも明らかに大きく形成されている。
【0011】
したがって、ダンパ装置は、半径方向でポンプケーシングに沿って組み付けられており、ダンパケーシングの長手方向軸線は、ポンプ軸線、つまりポンプピストンの運動軸線に対して少なくともほぼ直角に延びている。ポンプケーシングにおけるダンパケーシングの側方の配置は、電気的な接続コネクタ配向に関して比較的大きな順応性または可変性を可能にするという別の利点を有している。公知の燃料高圧ポンプでは、例えば電気的なコネクタは側方に向けることしかできなかった。下方に向かう傾きは大抵の場合は不可能であった。なぜならば、下方には大抵の場合多くの妨害輪郭が位置していたからである。これにより、通常は、単に約180°である方向付けのための角度範囲が生じていた。提案された燃料高圧ポンプおよびダンパ装置の側方の配置では、例えばコイルおよび付属する電気的なコネクタのような電気的な構成部材を、ポンプケーシングにおいて360°の角度範囲で方向付けすることが可能である。
【0012】
有利には、ダンパケーシングは、取付けフランジ構造を有している。この取付けフランジ構造により、ダンパケーシングをポンプケーシングに取り付けることができる。したがって、例えばダンパケーシングはポンプケーシングの外壁領域に溶接されていてよい。
【0013】
ポンプケーシングにおけるダンパケーシングの取付け時の溶接シームにとっても、ダンパケーシングが側方でポンプケーシングに配置されている場合に利点が生じる。例えば、大抵の場合に溶接によって直接にポンプケーシングに結合されているダンパカバーとして形成されているダンパ装置が従来公知である。燃料高圧ポンプの作動中に、このようなダンパカバーは、特に圧力ピーク時に、燃料高圧ポンプの内部に占める圧力に基づいた力を受ける。この圧力にさらされている面積は、通常、このようなダンパカバーとポンプケーシングとの間の結合横断面の直径である。ダンパ装置の、いまや側方の、長手方向側での取付けにより、このような溶接シームの長さも、液圧が作用する面積も著しく減らすことができる。これにより、著しく小さな液圧負荷、ひいては燃料高圧ポンプの全体的により大きな頑丈さが生じる。溶接シームの小さな長さも、これにより燃料高圧ポンプの組付け時のサイクル時間を減らすことができ、ひいては組付けコストを減らすことができるという利点を有している。加えて、溶接エラーまたはボイドの恐れも減少し、このことは燃料高圧ポンプの作動時の漏れのリスクも同様に低下させる。
【0014】
有利な形態では、ケーシング長さが、ダンパケーシングのケーシング深さの少なくとも2倍の大きさに形成されている。これにより、ポンプケーシングの外壁領域に極めてフレキシブルに取り付けることができる、極めて細く構成されたダンパ装置を提供することができる。
【0015】
有利には、ダンパケーシングの、外壁領域から離れるように延びるケーシング長さは、運動軸線に対して垂直方向に延びるポンプケーシングの直径dと少なくとも同一の大きさに形成されている。つまり、ダンパ装置に対するポンプケーシングの直径dは極めて小さく、組込み状態において僅かな構造空間しか要求しない。
【0016】
この場合、有利には、ポンプケーシングはd<4cmの直径を有するロッド材料から形成されている。
【0017】
ポンプケーシングの製造のためのロッド材料に必要となる直径dは、ポンプケーシングの製造価格に多大な影響を与える。ダンパ装置を側方でポンプケーシングに沿って取り付けることにより、ロッド材料の必要となる直径dを著しく減らすことができ、このことはポンプケーシングのための製造コストを低下させる。
【0018】
有利には、ポンプケーシングは、外壁領域に切欠きを有している。この場合、ダンパケーシングは、切欠きに整合してこの切欠きを閉じるように、外壁領域に配置されている。この場合、切欠きにより規定される切欠き容積と、ダンパケーシングにより規定されるダンパケーシング容積とが共に、減衰総容積を規定する。
【0019】
切欠き容積が設けられていることにより、ダンパ装置を長手方向軸線に沿ってより短く形成することも可能である。なぜならば、既にポンプケーシングの一部分が、総容積の減衰に寄与し得るからである、これによって、有利には燃料高圧ポンプ全体の構造空間を節減することができる。有利には、切欠きから別の孔がポンプケーシングの内方に向かって出発する。したがって、この場合切欠きは複数の機能を満たし、一方では減衰総容積の別の部分を提供し、しかも燃料高圧ポンプの別の部分への別の接続部分も提供する。
【0020】
有利には、切欠き容積は、減衰総容積の最大で1/3である。これにより、減衰総容積の主な部分がダンパケーシング内に配置され、ポンプケーシングは、特に細いロッド材料から、つまり極めて小さな直径dを有するロッド材料から製造することができる。
【0021】
ダンパ装置の一部が側方でポンプケーシング内に突入している場合、有利には燃料高圧ポンプ全体のための構造空間を減らすことができる。このことは例えば、ダンパ装置と流入弁との間の接続孔またはポンプピストンの駆動領域への接続孔を比較的短く保持するために利用することができる。これにより、圧力ピークの減衰の改善と、ポンプケーシングの製造時におけるこれらの接続孔の比較的短い加工時間とが得られ、このことはやはりポンプケーシング全体の製造コストを低下させる。さらに、横断面を部分的に極めて大きく形成することも可能であり、これにより、例えば接続孔が大きな孔直径を有することができ、または長孔として構成することができる。このこともダンパ装置の減衰特性の改善に寄与する。
【0022】
有利には、切欠きの壁およびダンパケーシングの壁は互いに整合して配置されているので、切欠きは、ポンプケーシングにおけるダンパケーシングの取付けによって、整合して閉じることができる。
【0023】
有利には、ダンパケーシング内にダンパカプセルが配置されている。このダンパカプセルは、外壁領域に対して接線方向に延びるカプセル高さと、運動軸線に対して半径方向に延びるカプセル長さとを有している。この場合、カプセル長さはカプセル高さよりも大きく形成されている。これにより、ダンパカプセルは有利には側方でポンプケーシングの外壁領域から離れるように延びている。
【0024】
有利には、ダンパカプセルは互いに溶接された2つのダイヤフラムから構成されている。これらのダイヤフラムはその間にガス容積を包囲している。ガス容積は圧縮可能であるので、作動時に、ダイヤフラムは変形可能である。
【0025】
ダンパカプセルは、主に円形かつ、有利にはカプセル高さ軸線を中心として回転対称的に形成されている。したがって、カプセル長さは、運動軸線に対して垂直方向に延びるカプセル長さ軸線に沿ったダンパカプセルの横断面の横断面長さに一致する。ダンパカプセルは、有利には、ダンパカプセルのカプセル長さ軸線が、運動軸線に対して垂直方向に延びるカプセル長さに沿って延びるように、ダンパケーシング内に配置される。
【0026】
有利には、ダンパカプセルは、切欠き容積内に突入して延びるように、ダンパケーシング内に配置されている。したがって、燃料高圧ポンプ全体により必要とされる構造空間をできるだけ小さく維持することができる。
【0027】
有利には、ダンパケーシング内に、ダンパケーシング壁からダンパカプセルを離間させるための少なくとも1つのスペーサスリーブが配置されている。この場合、スペーサスリーブは、切欠き容積内に突入するように延びている。このようなスペーサスリーブは、有利には、ダンパカプセルをダンパケーシング壁から離して保持するように設けられており、これにより、ダンパカプセルを取り囲んで燃料が流れることが可能にされる。しばしば、このようなスペーサスリーブは、さらに別の機能を有している、すなわち、ダンパカプセルを形成する2つのダイヤフラムを結合するために設けられている溶接シームへ予荷重を及ぼす。
【0028】
例えば、少なくとも1つのスペーサスリーブがダンパケーシング内に配置されていてよいが、ダンパカプセルの両側にそれぞれ1つのスペーサスリーブを配置することも可能である。
【0029】
可能な形態では、複数のダンパカプセルおよび複数のスペーサスリーブがダンパケーシング内に配置されていてよい。
【0030】
スペーサスリーブは、有利には半径方向の切欠きを有しており、これにより燃料がスペーサスリーブを通って流れることができる。
【0031】
有利な形態では、ダンパカプセルおよび/またはスペーサスリーブは専らダンパケーシング内に取り付けられている。取付けは有利には、力接続によって行われる。例えば、スペーサスリーブはばね弾性的に形成されていてよく、これにより、スペーサスリーブがダンパカプセルをダンパケーシング内に位置保持することができる。
【0032】
これにより、少なくとも1つのダンパカプセルまたは少なくとも1つのスペーサスリーブをダンパケーシング内に取り付けることによって、ダンパ装置を、まず燃料高圧ポンプのポンプケーシングの外側に前組付けで準備することが可能である。その後に初めて、ダンパ装置全体がモジュールとして、例えば溶接により、燃料高圧ポンプのポンプケーシングに取り付けられる。したがって、ダンパ装置は、いわゆる「カートリッジ型ダンパ」として、メイン組付けライン外で、または場合によってはそれどころかサプライヤにおいて、前組み付けすることができる。これにより、燃料高圧ポンプの製造時に、全体的に、例えば組付けにおけるサイクルタイムの減少による利点が生じ得る。
【0033】
有利には、さらに、ダンパケーシングの一方の側が、少なくともダンパカプセルまたはスペーサスリーブの直径の長さだけ開いて形成されている。この開口内に、ダンパ装置の前組付け時にダンパカプセルとスペーサスリーブとから成るセットを側方から挿入することができる。
【0034】
有利には、ダンパケーシングが、流体接続部を取り付けるための少なくとも1つの幾何学的な接続部を形成する。この場合、幾何学的な接続部は、有利にはダンパケーシングの長手方向軸線に対して平行に延びている。
【0035】
この幾何学的な接続部に取り付け可能な流体接続部は、例えば、燃料高圧ポンプの低圧領域からの流入部であってよい。しかし、ここにいわゆるMPIシステムのための接続部または出口を接続することも可能である。流体接続部または幾何学的な接続部内には、例えばフィルタも形成されていてよい。流体接続部および幾何学的な接続部は、例えば、流体接続部が簡単なクリップ嵌めで幾何学的な接続部に取り付けることができるように形成されていてよい。しかし、代替的に、流体接続部を幾何学的な接続部に溶接結合することも考えられる。
【0036】
したがって、大抵の場合、ダンパ装置は、ダンパケーシング、ダンパカプセルおよびスペーサスリーブから成っている。スペーサスリーブは、例えばダンパカプセルの予荷重のために作用する。任意では、ダンパ装置は、別の構成要素、例えば別のダンパカプセル、別のスペーサスリーブ、流入部接続部、流入部フィルタ、MIPシステム用の低圧接続部、シール等を含んでいてもよい。
【0037】
可能な形態では、ダンパケーシングは、一体形の深絞り部材として形成されている。この場合、ダンパケーシングは例えば、ダンパカプセルの収容空間および異なる液体接続部のための幾何学的な接続部を同時に形成することができる。
【0038】
代替的に、カバーを備えるダンパケーシングを形成することも考えられる。
【0039】
以下、本発明の有利な形態を、添付の図面に基づき詳しく説明する。