【課題を解決するための手段】
【0023】
特に、さらなるセットアップ作業などを必要とせずに、単一のクランプ(取り付け)セットアップにおいて可能な限り完璧に測定対象を測定およびチェックできるようにすることが意図される。方法は、好ましくは、自動化されたまたは少なくとも部分的に自動化された実装に好適である。
【0024】
さらに、方法は、ゲージナットの使用に起因するいずれのエラーも最小限にすること、または可能な限り回避することが意図される。さらに、方法は、測定対象のいずれの変形/撓みとも可能な限り無関係に、測定対象のねじ山によって移動量偏差を決定できるようにすることが意図される。さらに、方法は、測定対象の(全体的な)縦方向範囲に対して可能な限り平行に移動量偏差を決定できるようにすることが意図される。
【0025】
最後に、方法を実施するのに好適な測定システム、特に座標測定機を特定することが意図される。さらに、測定システム、特に座標測定機の有利な使用を特定することが意図される。最後に、方法を実施するコンピュータプログラムを特定することが意図される。
【0026】
本発明のこの目的は、測定対象、特にボールねじスピンドルのねじ山をゲージレス測定のための方法であって、
− ねじ溝の繰り返しのまたは連続的なプローブ検査を含む、第1のねじ山セクションにおける部分的な移動量偏差を検出するステップと、
− ねじ溝の繰り返しのまたは連続的なプローブ検査を含む、少なくとも1つの第2のねじ山セクションにおける部分的な移動量偏差を検出するステップと、
− 検出された部分的な移動量偏差に基づいて総合的な移動量偏差を決定するステップと
を有し、
これらのねじ山セクションにおける移動量偏差は、それぞれの場合に局所参照座標系に関して検出され、
参照座標系は、ねじ山セクション間でオフセットされる、方法によって達成される。
【0027】
このようにして、本発明の目的は十分に達成される。
【0028】
本発明によれば、測定対象のねじ山は、すなわちいくつかのセクションまたはセグメントに分割され、その後、これらセクションは、セクションに関連して部分的な移動量偏差を決定するために別々に測定される。最後に、部分的な移動量偏差は、ねじ山に関する総合的な移動量偏差を決定するために組み合わされ得る。これは、例えば、ねじ山の作業移動量に関する。
【0029】
この構成の1つの利点は、いわばねじ山が「スライスで」測定されるため、測定対象の撓みまたは何らかの他の曲がりが最大でも測定結果に対してわずかな効果を有するにすぎないことである。そのため、それぞれのセクションにおけるねじ山の適応は、− 十分に小さく選択されたサイズの − セクションの曲がりが考慮されたと仮定して実行され得る。
【0030】
用語「ゲージレス測定」は、特に座標ベースの測定を意味すると理解されるべきであり、ここで、適切な適応によって空間点を決定できるようにする測定システムが使用される。これに基づき、複数のまたは多数の検出された空間点を使用して、縦方向におけるねじ山の範囲および従って移動量偏差が決定され得る。
【0031】
例えば、移動量偏差は、規定された整定値の位置からの、ねじスピンドル上のナットの実際の位置の偏差を説明する。整定値の位置は、通常、所与のピッチおよび(整数回または非整数回)の周回から得られる。換言すると、整定値の位置は、理想的な平均ピッチに基づき得る。これに関連して、既に上記で述べた国際標準ISO 3408−3:2006が再度注目され、これは、適切な特徴変数およびそれらの決定に関する詳細な情報を与える。
【0032】
本開示による方法により、少なくとも、それぞれのねじ山セクションおよび最終的にねじ山全体またはねじ山の適切な大きさの動作範囲にわたるねじ山のピッチまたはねじ山の縦方向範囲を決定することが意図される。
【0033】
参照座標系は、例えば、座標系または部分的な移動量偏差を検出しかつ表すのに好適な同様の基準であり得る。
【0034】
参照座標系は、例えば、測定対象の縦軸と一致するゼロ点を有し得る。ゼロ点から始まって、同様に縦軸と一致する縦方向を規定することがさらに可能である。測定対象が湾曲しているかまたは何らかの他の方法で変形している場合、縦方向は、その縦軸において少なくとも近似され得る。参照座標系は、現在の周回数および/または現在の周回角度ならびに結果的に生じる位置のシフトについての情報をさらに提供し得る。所与の整定値のピッチにおいて、測定対象の縦軸に沿った実際の位置と整定値の位置との間の偏差を決定することが可能である。
【0035】
新しいねじ山セクションが測定されるとき、参照座標系が再決定される必要があることは必須である。従って、理想化された参照座標系は、異なるセクションが測定されるときに測定対象にわたって「移動する」。換言すると、ねじ山は、いくつかのスライスに分割され、これは、互いに対してわずかにオフセットされて(横方向にまたは角度の点で)測定対象の曲がりを再現し得る。評価中、これらのスライスは、再度同軸上に位置合わせされかつ組み合わせられて、総合的な移動量偏差の判断を行うことを可能にする。これは、好ましくは、測定対象のいずれの変形からも特に妨害する効果なしに実行される。
【0036】
方法の上述の実施形態は、それぞれの場合に現在のねじ山セクションの測定対象の実際の構成を考慮しながら、結果として生じる総合的な移動量偏差の検出および決定を可能にする。参照座標系の位置合わせおよび組み合わせは、総合的な移動量偏差を精密に示す一方、測定対象のいずれの撓みも悪影響を有しない。
【0037】
図に関して、この手法は、湾曲した構成に配置されたチェーンの全長の決定と比較され得、個々のチェーンリンクは、対応する参照座標系を使用して個別に考慮される。対応する長さの偏差を組み合わせることを可能にするため、チェーンは、理論上、直線に引かれ、従って、参照座標系は、対応する方法でそれら自体を軸方向に位置合わせする。
【0038】
換言すると、局所コンポーネント軸が使用されて、ねじ山セクションのそれぞれに対して参照座標系を形成しかつ向ける。これは、測定対象の縦軸に対して平行な縦方向において起こり得る移動量偏差が、様々な局所コンポーネント軸間での対応する同軸上の位置合わせが行われるときに全体として合計され得るという利点を有する。
【0039】
全体として、これは、総合的な移動量偏差の低エラーの決定を可能にし、これは、ねじ山またはそれが設けられるねじ駆動部の精度に関する重要なパラメータを表す。
【0040】
方法の実施形態の例では、総合的な移動量偏差は、部分的な移動量偏差を組み合わせることによって決定される。これは、好ましくは、測定対象の曲がりとは無関係にまたは実質的に無関係に行われる。このようにして、総合的な移動量偏差は、存在し得るいずれの撓みとも無関係に決定され得る。
【0041】
従って、総合的な移動量偏差は、測定対象の実際の向きとは無関係にかなりの精度で決定され得る。
【0042】
方法の別の実施形態の例によれば、ねじ山セクションの参照座標系は、それぞれの場合に、縦方向の座標軸が測定対象の瞬間縦軸と位置合わせされるように、好ましくはそれと一致するように位置合わせされる。少なくとも座標軸が理想的な方法で直線であるとき、位置合わせは、接線方向の向きまたは他の近似方向の向きを含み得ることが自明である。
【0043】
方法がもっぱら雄ねじに制限されないことは自明である。方法は、雌ねじ、例えば対応するナットにも同様の方法で使用され得る。
【0044】
方法の別の実施形態の例によれば、局所参照座標系の縦方向の座標軸は、総合的な移動量偏差を決定するために直線的にまたは位置合わせされて(概念上またはコンピュータ的に)向けられる。そのため、部分的な移動量偏差は、単純に合計され得る。
【0045】
方法の別の実施形態の例によれば、ねじ山セクションは、少なくとも一回の周回、好ましくは複数回の周回であって、それに沿って部分的な移動量偏差が決定される、少なくとも一回の周回、好ましくは複数回の周回を含む。整数倍または小数値がそれにより含まれ得ることが自明である。しかしながら、少なくとも1つのねじ山セクションにおける周回数は、ねじ山の動作範囲における総周回数を下回る必要がある。
【0046】
従って、ねじ山セクションは、螺旋に沿ったn*2*π rad(パイrad)の周回または対応する円周角/回転角度にわたって延在し得、ここで、nは、整数または非整数であり得る。従って、nは、例えば、スピンドルの全範囲に依存して1〜10の値を取り得る。より大きい値が考えられる。例えば、nは、4.5であり得るため、この実施形態の例では、4.5回の周回(1620°(度)の回転角度に対応する)が、対応するセクションにおいて考慮され得る。
【0047】
整定値のピッチまたは整定値のねじ山の高さの知識を前提として、ここで、規定された回転の整定値の移動量が決定され得る。測定により、実際の移動量がそれとの比較で得られる。絶対値の観点では、移動量偏差は、整定値の移動量と実際の移動量との差に対応する。
【0048】
方法の別の実施形態の例によれば、個々の測定セクションの結果として生じる部分的な偏差は、理想的な構成のゲージナットの概念上の寸法を考慮しながら決定される。通常、そのようなゲージナットは、数回の周回の範囲に及ぶ。従って、ゲージベースの測定の場合、ゲージナットの構成は、縦方向におけるゲージナットの決定された位置に対して、従ってそれぞれの部分的な移動量偏差の決定に対しても影響を有する。
【0049】
従って、一方では、ゲージナットは、平滑作用を有し、かつ瞬間的な移動量偏差(例えば、一回の周回以内)を補償し得る。しかしながら、原理上、ゲージナットはそれ自体もエラーを受けやすいため、ねじ山の構成に起因しないまたは直接起因しない追加的なエラーが結果に入り得る。
【0050】
ねじ山の構成を説明する決定された空間点の評価では、ねじ山構成およびねじ山の範囲に基づいて生じる移動距離および移動量変動または移動量偏差をコンピュータ的に決定するために、対応する測定システムは、理想的な構成のゲージナットに基づき得る。
【0051】
方法の別の実施形態の例によれば、隣接するねじ山セクションは、少なくとも部分的に重なり合う。このようにして、いわば「スライド」測定が可能である。全体として、従って、さらに高い精度で総合的な移動量偏差を決定することが可能である。
【0052】
方法の別の実施形態の例によれば、ねじ山セクションの少なくともいくつかは、異なる長さを有する。それにより、一方では、ねじ山の異なるセクションが異なる曲がりを有することを考慮することが可能である。他方では、それにより、範囲依存精度要件に応答することが可能である。さらに、少なくとも部分的に重なり合う異なる長さのねじ山セクションも、結果を検証するために使用され得る。
【0053】
例えば、ボールねじスピンドルのためのねじ山は、ねじ山入り口、ねじ山出口、およびねじ山入り口とねじ山出口との間の有効長に分割され得る。
【0054】
方法の別の実施形態の例によれば、測定対象は、測定中に周期的または連続的に回転される。これにより、測定が単純化および加速される。なぜなら、測定対象自体が回転される場合、ねじ山の輪郭をプローブ検査するための少なくとも1つのプローブを備えるプローブヘッドの一部では、あまり複雑な移動が必要とされないためである。
【0055】
さらに、測定対象の移動は、例えば、動作の忠実度、同心度、丸み、シリンダー形状などの特定の位置公差または形状公差の決定を単純にする。これは、ねじ山の特定の溝形状、すなわち、ねじ溝またはねじ山のフライトの断面の検出にも当てはまる。さらに、このようにして、プローブヘッド自体の構成に伴う出費を最小限にすることが可能である。
【0056】
方法の別の実施形態の例によれば、測定対象は、ターンテーブルに取り付けられる。ターンテーブルは、例えば、チャックまたは測定対象を保持するのに好適な何らかの他のマウントを担持し得る。
【0057】
原理上、測定対象は、縦方向範囲/縦軸が垂直方向に向けられて配置され得る。従って、測定対象は、ターンテーブル上に立たせられるか、または上に取り付けられたターンテーブルから下げられる。
【0058】
しかしながら、これは、縦方向範囲/縦軸が水平に向けられた測定対象を配置することを除外しない。この場合、しかしながら、明白な撓み/曲がりが必然的に予期され得る。
【0059】
方法の別の実施形態の例によれば、プローブ検査は、座標測定機を使用して実施される。プローブ検査は、触覚または光学手段によって実施され得る。一般的な観点では、接触プローブおよび近接プローブが知られている。プローブは、測定用ヘッドに配置され、測定用ヘッドは、通常、座標測定機のフレームに対して可動である。
【0060】
方法の別の実施形態の例によれば、測定は、直径値、位置公差、形状公差、表面特性および溝プロファイル形状データを含む群から選択される少なくとも1つのさらなる特性値を決定することもさらに含む。
【0061】
別の態様によれば、本開示は、測定システム、特に座標測定機であって、
− ねじ山が設けられた測定対象を受け入れるためのレセプタクルと、
− 測定用プローブを受け入れるための少なくとも1つの測定用ヘッドと、
− 少なくとも2つの空間軸上で測定用プローブを移動させるための駆動ユニットと、
− 測定用ヘッドおよび駆動ユニットに結合される制御装置と
を有し、
制御装置は、測定システムが、本明細書で説明した実施形態の1つによる方法を実行することを可能にする。
【0062】
これは、一般的に、測定用プローブの移動のための制御コマンドを出力し、かつ例えば測定対象との接触を示す測定用プローブからの信号を受信するために、駆動ユニットおよびそれに取り付けられた測定用ヘッドまたは測定用プローブと通信する制御装置を含む。
【0063】
制御装置は、決定された空間座標を処理および評価して、方法に従ってねじ山の総合的な移動量偏差を決定することを可能にするようにさらに設計され得る。
【0064】
制御/評価の部分的なタスクまたは部分的な態様が、データを交換するために少なくとも一時的に測定システムに結合される空間的に分離された制御ユニットにより、例えば別個のコンピュータにより実行され得ることが自明である。
【0065】
従って、測定システムは、データ交換および制御コマンド交換のためにインターフェースも備え得る。
【0066】
測定システムの実施形態の例によれば、前記システムは、ターンテーブルであって、その上に測定対象のためのレセプタクルが取り付けられる、ターンテーブルをさらに有し、制御装置は、ねじ山を測定するために、測定用ヘッドおよび測定対象の連結された移動を生じるように設計される。
【0067】
連結された移動は、測定用ヘッドおよび測定対象の少なくとも一時的な時間並行運動を含み得る。しかしながら、時間的に直接重ならずに測定対象および測定用ヘッドを移動させることも考えられる。
【0068】
別の態様によれば、本開示は、本明細書で説明する実施形態の例の1つによるねじ山測定のための方法を実施するための、本明細書で説明する実施形態の例の1つによる測定システムの使用に関する。
【0069】
最後に、本開示は、コンピュータプログラムであって、本明細書で説明する実施形態の例の1つによる測定システム、特に座標測定機が、コンピュータプログラムが測定システムの制御装置で実行されると、本明細書で説明する実施形態の例の1つによるねじ山測定のための方法を実施することを可能にするプログラムコードを有するコンピュータプログラムにさらに関する。
【0070】
本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の上述の特徴および下記の依然として説明されていない特徴は、それぞれの場合に特定された組み合わせのみならず、他の組み合わせまたはそれら自体でも使用され得ることは言うまでもない。
【0071】
本発明のさらなる特徴および利点は、図面を参照して、複数の好ましい実施形態の例の以下の説明から明らかになる。