(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、必要により添付図面を参照しつつ、本発明の実施形態の一例を詳細に説明する。本発明の摩擦伝動ベルトは、プーリと接触可能な摩擦伝動面を備えていれば特に限定されず、Vベルト、Vリブドベルト、平ベルトなどであってもよい。また、摩擦伝動ベルトは、摩擦伝動部(リブなど)が形成されたベルトであってもよく、代表的な伝動ベルトは、ベルト周長方向に延びる複数のV字状リブ部が形成され、伝動効率の高いVリブドベルトである。本発明でも、被水時の耐発音性の向上効果が最も大きい点から、摩擦伝動ベルトの中でも、被水時の耐発音性の向上の要求が特に強いVリブドベルトに特に好適に利用できる。
【0014】
図1に示すように、本発明の摩擦伝動ベルト(Vリブドベルト)1は、ベルト背面(ベルトの外周面)を形成し、かつカバー帆布(織物、編物、不織布など)で構成された伸張層4と、この伸張層の片面側(一方の面側)に形成され、摩擦伝動面(摩擦伝動部の表面)を有する圧縮層(圧縮ゴム層)2と、圧縮層(圧縮ゴム層)2の摩擦伝動面に被覆(積層)されてベルト内周面を形成し、プーリに接触可能な複合繊維層5と、前記伸張層4と圧縮層2との間にベルト長手方向(周長方向)に沿って埋設された芯体3とを備えている。この例では、芯体3は、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)であり、伸張層4と圧縮層2とに接して、両層の間に介在している。
【0015】
圧縮層2には、ベルト長手方向に伸びる複数の断面V字状溝が形成され、この溝の間には断面V字形(逆台形)の複数のリブが形成されており、リブの二つの傾斜面(表面)が摩擦伝動面を形成している。そして、摩擦伝動面は、複合繊維層5を介して、プーリと接触可能であり、前記複合繊維層5は、セルロース系繊維を含む繊維部材とイソシアネート化合物とを含む。
【0016】
なお、本発明は、圧縮層2にプーリとの摩擦伝動面(または摩擦伝動部)が形成された伝動ベルトに好適に適用される。本発明の摩擦伝動ベルトは前記構造に限定されず、例えば、伸張層4をゴム組成物で形成してもよく、圧縮層2と伸張層4との間には、芯体3と伸張層4または圧縮層2との接着性を向上させるため、接着層を介在させてもよい。芯体3は、伸張層4と圧縮層2との間に埋設できればよく、例えば、圧縮層2に埋設させてもよく、伸張層4に接触させつつ圧縮層2に埋設させてもよい。さらに、芯体3は前記接着層に埋設させてもよく、圧縮層2と接着層または接着層と伸張層4との間に芯体3を埋設してもよい。
【0017】
以下に、ベルトを構成する各部材、およびベルトの製造方法の詳細を説明する。
【0018】
[複合繊維層]
複合繊維層は、繊維部材およびイソシアネート化合物を含んでいる。
【0019】
(繊維部材)
本発明では、繊維部材を構成する繊維がセルロース系繊維を含むため、摩擦伝動面において吸水性に優れ、プーリとベルトとの間に水膜が形成され難く、スティックスリップの発生が抑制され、被水時の耐発音性が高い。
【0020】
(A)セルロース系繊維
セルロース系繊維には、セルロース繊維(植物、動物またはバクテリアなどに由来するセルロース繊維)、セルロース誘導体の繊維が含まれる。
【0021】
セルロース繊維としては、例えば、木材パルプ(針葉樹、広葉樹パルプなど)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(綿繊維(コットンリンター)、カポックなど)、ジン皮繊維(麻、コウゾ、ミツマタなど)、葉繊維(マニラ麻、ニュージーランド麻など)などの天然植物由来のセルロース繊維(パルプ繊維);ホヤセルロースなどの動物由来のセルロース繊維;バクテリアセルロース繊維;藻類のセルロースなどが挙げられる。
【0022】
セルロース誘導体の繊維としては、例えば、セルロースエステル繊維;再生セルロース繊維(レーヨン、キュプラ、リヨセルなど)などが挙げられる。
【0023】
これらのセルロース系繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、吸水性の点から、綿繊維や麻などのセルロース繊維や、レーヨンなどの再生セルロース繊維が好ましく、綿繊維などのセルロース繊維が特に好ましい。
【0024】
セルロース系繊維は、短繊維であってもよいが、強度の点から、長繊維、短繊維を撚り合わせたスパン糸(紡績糸)が好ましい。長繊維は、モノフィラメント糸であってもよく、マルチフィラメント糸であってもよい。マルチフィラメント糸は、無撚糸または撚糸であってもよい。撚糸は、複数の片撚糸を下撚り糸として上撚りした糸(例えば、諸撚糸、駒撚糸、ラング撚糸など)であってもよく、片撚糸と単糸とを下撚り糸として上撚りした撚糸(例えば、壁撚糸など)であってもよい。これらのうち、セルロース繊維の場合、スパン糸や、スパン糸のマルチフィラメント糸が好ましく、スパン糸が特に好ましい。
【0025】
スパン糸の場合、セルロース系繊維(特に、セルロース繊維)の太さ(番手)は、例えば5〜100番手、好ましくは10〜80番手、さらに好ましくは20〜70番手(特に30〜50番手)程度である。太さが小さすぎると、複合繊維層の機械的特性が低下する虞があり、太さが大きすぎると、吸水性が低下する虞がある。
【0026】
(B)合成繊維
繊維部材は、セルロース系繊維が摩耗するのを抑制して被水時の耐発音性を長期に亘って持続させるために、セルロース系繊維に加えて、合成繊維をさらに含んでいてもよい。
【0027】
合成繊維としては、例えば、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維など)、ビニルアルコール系繊維(ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体の繊維、ビニロンなど)、ポリアミド繊維(ポリアミド6繊維、ポリアミド66繊維、ポリアミド46繊維などの脂肪族ポリアミド繊維、アラミド繊維などの芳香族ポリアミド繊維など)、アクリル繊維、ポリエステル繊維[ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)繊維などのC
2−4アルキレンC
6−14アリレート系繊維、ポリアリレート系繊維など]、ポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾール(PBO)繊維、ポリウレタン繊維などが挙げられる。これらの合成繊維は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。
【0028】
合成繊維も、短繊維であってもよいが、強度の点から、長繊維であるモノフィラメント糸やマルチフィラメント糸が好ましく、マルチフィラメント糸が特に好ましい。マルチフィラメント糸は、無撚糸または撚糸であってもよい。撚糸は、複数の片撚糸を下撚り糸として上撚りした糸(例えば、諸撚糸、駒撚糸、ラング撚糸など)であってもよく、片撚糸と単糸とを下撚り糸として上撚りした撚糸(例えば、壁撚糸など)であってもよい。
【0029】
マルチフィラメント糸(または撚糸)は、複数の繊維(または糸)で形成された複合糸(または複合繊維)であってもよい。複合糸(撚糸)は、カバリング糸[芯糸とこの芯糸に巻き付けた(カバリングした)鞘糸とを含む糸(撚糸)]であってもよい。複合糸は、前記セルロース系繊維と合成繊維との複合糸であってもよいが、合成繊維同士の複合繊維(合成繊維の複合糸)が汎用される。
【0030】
合成繊維の複合糸は、例えば、複数のポリエステル繊維(例えば、PET繊維とPTT繊維)をコンジュゲートした複合糸、芯糸および鞘糸の双方を合成繊維で構成したカバリング糸[例えば、芯糸および鞘糸のうち、いずれか一方を伸縮性繊維で構成した糸、例えば、芯糸をポリウレタン繊維(PU繊維)などの伸縮性繊維で形成し、鞘糸をポリエステル繊維(PET繊維など)で形成したカバリング糸または複合糸など]などであってもよい。
【0031】
本発明では、複合繊維層の耐摩耗性を向上させるとともに、摩擦伝動面(または繊維部材の表面)にゴムが滲出するのを抑制できるために、断面の嵩を大きくした嵩高加工糸、例えば、複数の繊維を含み、捲縮されたコンジュゲート糸(クリンプ繊維の複合糸)、芯糸を前記合成繊維でカバリングしたカバリング糸、捲縮加工糸(捲縮加工された前記合成繊維の糸)、ウーリー加工糸、タスラン加工糸、インタレース加工糸などが好ましく、コンジュゲート糸やカバリング糸が特に好ましい。前記コンジュゲート糸は、複数のポリマーが相分離して繊維軸方向に貼り合わせた断面構造を有し、前記ポリマーの熱収縮率の差を利用して、熱処理により捲縮を生じさせた嵩高加工糸である。また、カバリング糸は、芯糸の表面に他の糸を巻き付けて覆う(カバリングする)ことにより、糸全体の断面の嵩を大きくした嵩高加工糸である。代表的な嵩高加工糸は、ポリエステル系複合糸、例えば、PTTとPETとをコンジュゲートした複合糸(PTT/PETコンジュゲート糸)、PBTとPETとをコンジュゲートした複合糸(PBT/PETコンジュゲート糸)などのコンジュゲート糸;芯糸としてのポリウレタン(PU)糸(PU弾性糸)の表面にポリエステル繊維(PET繊維)を巻き付けてカバリングした複合糸(PET/PUカバリング糸)、PU糸を芯糸としてポリアミド(PA)をカバリングした複合糸(PA/PUカバリング糸)などのカバリング糸が例示できる。これらの複合糸のうち、伸縮性や耐摩耗性に優れる点から、PTT/PETコンジュゲート糸および/またはPET/PUカバリング糸が好ましい。
【0032】
このような嵩高加工糸は、繊維部材を嵩高くするとともに、繊維が伸縮性を有する。そのため、嵩高加工糸をベルトに用いると、嵩高さによってベルト本体のゴムが摩擦伝動面(または繊維部材の表面)に滲出するのを防止でき、摩擦伝動面におけるドライ状態での摩擦係数増大とウェット状態での摩擦係数低下とを防止できる。しかも、セルロース系繊維(または紡績糸)によって摩擦伝動面は高い吸水能力を有しているため、ウェット状態での摩擦伝動面の摩擦係数低下を防止し、ドライ状態とウェット状態との摩擦係数の差を十分に小さくできる。
【0033】
合成繊維(特に、マルチフィラメント糸)の繊度は、例えば20〜600dtex、好ましくは50〜300dtex、さらに好ましくは60〜200dtex(特に70〜100dtex)程度であってもよい。
【0034】
繊維部材における合成繊維の割合は、セルロース系繊維100質量部に対して、例えば250質量部以下(例えば0〜200質量部)であってもよく、例えば1〜150質量部(例えば1〜100質量部)、好ましくは3〜80質量部、さらに好ましくは5〜75質量部(特に10〜70質量部)程度である。また、合成繊維の割合は、被水時の耐発音性を長期に亘って持続できる点から、セルロース100質量部に対して、例えば5〜70質量部(例えば5〜50質量部)、さらに好ましくは10〜40質量部(特に20〜30質量部)程度である。合成繊維の割合が多すぎると、複合繊維層の吸水性が低下し、被水時の耐発音性が低下する虞がある。
【0035】
(C)他の繊維
繊維部材は、セルロース系繊維および合成繊維の他に、他の繊維をさらに含んでいてもよい。他の繊維としては、羊毛、絹などの動物由来の繊維や、炭素繊維、ガラス繊維、金属繊維などの無機繊維などが挙げられる。他の繊維の割合は、セルロース系繊維100質量部に対して、例えば100質量部以下(例えば0〜100質量部)であってもよく、例えば0.1〜30質量部、好ましくは0.5〜20質量部、さらに好ましくは1〜10質量部程度である。他の繊維の割合が多すぎると、複合繊維層の吸水性が低下し、被水時の耐発音性が低下する虞がある。
【0036】
(D)繊維部材の構造
繊維部材は、伝動ベルトの摩擦伝動面を被覆可能な形態(構造)であればよく、通常、編布、織布、不織布などから選択された少なくとも1種の布帛(または帆布)で形成できる。これらの布帛のうち、編布で繊維部材を形成するのが好ましい。編布は、伸縮性に優れるため、加硫時のゴムの流れに追従して拡張し、ゴムが摩擦伝動面に露出するのを防ぐことができ、被水時の耐発音性を向上できる。さらに編布は、摩擦伝動面の輪郭(リブ形状など)に沿わせて繊維部材を積層するために好適である。
【0037】
なお、編布は、糸を直線状に交錯させることなく、ループを作ることで形成される。すなわち、編布は、1本または2本以上の編糸が編目(ループ)を形成し、そのループに次の糸を引っ掛けて新しいループを連続的に形成して編成された編組織(構造)を有する。そのため、伸縮性が高く、摩擦伝動面のリブ部などの凹凸面に容易に沿わせて積層でき、加硫成形に伴って摩擦伝動面を被覆して接合する繊維部材を形成できる。
【0038】
編布(または編布の編成)は、緯編(または緯編で編成された編布)、経編(または経編で編成された編布)のいずれであってもよい。好ましい編布は緯編(または緯編で編成された編布)である。
【0039】
また、編布は単層に編成された単層編布、多層に編成された多層編布であってもよい。緯編(または緯編の編組織)のうち、単層の緯編としては、平編(天竺編)、ゴム編、タック編、パール編、鹿の子編(表鹿の子、裏鹿の子)などが挙げられ、多層の緯編としては、スムース編、インターロック編、ダブルリブ編、シングルピケ編、ポンチローマ編、ミラノリブ編、ダブルジャージ編、鹿の子編(両面鹿の子)などが挙げられる。また、経編(または経編の編組織)のうち単層の経編としては、シングルデンビー、シングルコードなどが挙げられ、多層の経編としては、ハーフトリコット、ダブルデンビー、ダブルアトラス、ダブルコード、ダブルトリコットなどが挙げられる。これらの編布は、単独でまたは二種以上組み合わせて繊維部材を形成してもよい。
【0040】
これらの編組織の編布のうち、単層の緯編(例えば、平編(天竺編)を編組織とする緯編)、または多層編布(例えば、鹿の子編(鹿の子編を編組織とする緯編)など)が好ましく、被水時の耐発音性の点から、多層編布が特に好ましい。繊維部材を多層編布で形成すると、摩擦伝動面に繊維部材の嵩高い層を形成でき、圧縮層を形成するゴム組成物が繊維部材の表面側(摩擦伝動面の表面側)に滲出するのを抑制できる。なお、摩擦伝動面に繊維部材の嵩高い層を形成する手段としては、編布の層の数を増加する方法、嵩高加工糸の嵩を大きくする方法などが挙げられる。なお、多層編布において、編布の層の数は、例えば2〜5層、好ましくは2〜3層、さらに好ましくは2層であってもよい。
【0041】
特に、セルロース系繊維に対して適度の割合で前記嵩高加工糸を組み合わせて編布(特に、多層編布または多層の編布組織)を形成すると、摩擦伝動面(または繊維部材の表面)へのゴムの滲出を有効に防止できる。さらに、多層編布では、厚み方向において、摩擦伝動面(または繊維部材の表面)側の層に、摩擦伝動面と反対側の層に比べて多くのセルロース系繊維を含有させることにより、摩擦伝動面における吸水性をより向上できる。摩擦伝動面(または繊維部材の表面)側の層に多くのセルロース系繊維を含有する多層の編布は、例えば、複数の層のうち、摩擦伝動面(または繊維部材の表面)側の層をセルロース系繊維だけで、またはセルロース系繊維と合成繊維を含む糸とで編成し、摩擦伝動面と反対側の層を合成繊維を含む糸(ポリエステル系複合糸など)で編成することにより作製してもよい。なお、多層編布において、摩擦伝動面(または繊維部材の表面)側の層に向かって、連続的または段階的にセルロース系繊維の含有量を多くしてもよい。
【0042】
繊維部材(編布など)での繊維または糸の密度は、例えば、ウェール方向およびコース方向で、それぞれ30本/インチ以上(例えば32〜70本/インチ、好ましくは34〜60本/インチ、さらに好ましくは35〜55本/インチ)であってもよい。また、合計で60本/インチ以上(例えば62〜120本/インチ、好ましくは70〜115本/インチ、さらに好ましくは80〜110本/インチ、特に90〜105本/インチ)であってもよい。所定の繊維または糸密度を有する繊維部材(編布など)は、目開き(または編目)が大きすぎることがなく、耐摩耗性と吸水性とのバランスに優れている。なお、繊維部材の合計密度が小さすぎると、耐摩耗性が低下する上に、吸水性も低下する虞がある。
【0043】
さらに、繊維部材(例えば、合成繊維として嵩高加工糸などの複合糸を編成した編布)は、嵩高さは、ゴムの滲出を抑制できる範囲で選択でき、例えば2cm
3/g以上(例えば2.2〜4.5cm
3/g)、好ましくは2.4cm
3/g以上(例えば2.5〜4cm
3/g)程度であってもよい。なお、嵩高さの上限は特に限定されず、例えば4cm
3/g以下(例えば2.3〜3.8cm
3/g)、または3.5cm
3/g以下(例えば2.5〜3.3cm
3/g)であってもよい。なお、嵩高さ(cm
3/g)は、編布の厚み(cm)を単位面積当たりの質量(g/cm
2)で除算することにより算出できる。
【0044】
繊維部材の目付は、例えば50〜500g/m
2、好ましくは80〜400g/m
2、さらに好ましくは100〜350g/m
2程度であってもよい。
【0045】
(イソシアネート化合物)
複合繊維層は、前記繊維部材に加えてイソシアネート化合物を含むことにより、複合繊維層の耐摩耗性が高まり、被水時の耐発音性を長期に亘って持続できる。詳しくは、イソシアネート化合物は、反応性の高いイソシアネート基を有するため、繊維部材を構成するセルロース系繊維や後述する圧縮層のゴム成分における官能基(ヒドロキシル基やカルボキシル基などの活性水素原子を有する基)と反応して、繊維部材自体の機械的特性および圧縮層との接着性を向上することにより、複合繊維層の耐摩耗性を向上できる。本発明では、複合繊維層を構成する繊維部材がイソシアネート化合物と組み合わされるため、帆布処理剤として汎用されているレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)やエポキシ樹脂を用いることなく、複合繊維層の接着性や機械的特性を向上できる。
【0046】
イソシアネート化合物は、前述のように、イソシアネート基を有していればよいが、複合繊維層の耐摩耗性を向上させる観点から、複数のイソシアネート基を有するポリイソシアネート(特にジイソシアネート)が好ましい。
【0047】
さらに、イソシアネート化合物は、汎用のイソシアネート化合物(ブロック剤で保護されていないイソシアネート化合物であり、後述する熱反応型イソシアネート化合物を構成するポリイソシアネートとして例示されているポリイソシアネートなど)であってもよいが、ベルトの成形時には繊維部材の伸縮性を阻害せず、ベルトの加硫後には硬化して耐摩耗性を高めることができ、ベルトの生産性を向上できる点から、熱反応型イソシアネート化合物(ブロックドイソシアネート)が好ましい。詳しくは、イソシアネート化合物が熱反応型であると、ベルトの成形時には、イソシアネート基がブロック剤で保護されて不活性であり、硬化しないため、繊維部材の伸びを阻害しない一方で、ゴムを加硫する時の熱で、ブロック剤が解離し、イソシアネート基が活性化して前述の官能基と反応して硬化する。そのため、熱反応型イソシアネート化合物を用いると、ベルトの生産性を低下させることなく、ベルトの耐摩耗性を高めることができる。
【0048】
熱反応型イソシアネート化合物としては、慣用の熱反応型ポリイソシアネートを利用できる。詳しくは、熱反応型ポリイソシアネートを構成するポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート[プロピレンジイソシアネート、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、リジンジイソシアネート(LDI)などの脂肪族ジイソシアネートや、1,6,11−ウンデカントリイソシアネートメチルオクタン、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアネートなどの脂肪族トリイソシアネートなど]、脂環族ポリイソシアネート[シクロヘキサン1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、水添キシリレンジイソシアネート、水添ビス(イソシアナトフェニル)メタンなどの脂環族ジイソシアネートや、ビシクロヘプタントリイソシアネートなどの脂環族トリイソシアネートなど]、芳香族ポリイソシアネート[フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、ナフタレンジイソシアネート(NDI)、ビス(イソシアナトフェニル)メタン(MDI)、トルイジンジイソシアネート(TODI)、1,3−ビス(イソシアナトフェニル)プロパンなどの芳香族ジイソシアネートなど]などが挙げられる。
【0049】
これらのポリイソシアネートは、多量体(二量体や三量体、四量体など)、アダクト体、変性体(ビウレット変性体、アロハネート変性体、ウレア変性体など)などの誘導体や、複数のイソシアネート基を有するウレタンオリゴマーなどであってもよい。
【0050】
ポリイソシアネートの変性体または誘導体としては、例えば、ポリイソシアネート(ヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ポリイソシアネートなど)と多価アルコール(トリメチロールプロパンやペンタエリスリトールなど)とのアダクト体、前記ポリイソシアネートのビュレット体、前記ポリイソシアネートの多量体などを好ましく使用できる。外観や強度などの塗膜特性の点から、ポリイソシアネート(例えば、脂肪族ポリイソシアネート)の多量体(例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体などのイソシアヌレート環を有するポリイソシアネートなど)が特に好ましい。
【0051】
これらのポリイソシアネートのうち、脂肪族ポリイソシアネートまたはその誘導体(例えば、HDIまたはその三量体など)、芳香族ポリイソシアネート(TDI、MDIなど)などが汎用される。
【0052】
熱反応型イソシアネート化合物のブロック剤(保護剤)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノールなどのC
1−24モノアルコール類またはそのアルキレンオキサイド付加物(例えば、エチレンオキサイドなどのC
2−4アルキレンオキサイド付加物);フェノール、クレゾール、レゾルシンなどのフェノール類;アセトキシム、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサンオキシムなどのオキシム類;ε−カプロラクタム、バレロラクタムなどのラクタム類;ジブチルアミン、エチレンイミンなどの第2級アミン類などが挙げられる。これらのブロック剤は、単独でまたは二種以上組み合わせて使用できる。これらのうち、オキシム類やラクタム類などが汎用される。
【0053】
熱反応型イソシアネート化合物のイソシアネート基の含有率は、特に限定されないが、例えば1〜50重量%、好ましくは3〜40重量%、さらに好ましくは5〜30重量%程度であってもよい。
【0054】
熱反応型イソシアネート化合物の解離温度(ブロック剤が解離して、活性イソシアネート基が再生する温度)は、ゴム成分の加硫工程の前のベルト成形工程での加熱温度以上(通常、後述する複合繊維層形成工程において、浸漬によって液状組成物が含浸した繊維部材の乾燥温度以上)であり、ゴム成分の加硫温度以下であればよく、解離温度が高いと、乾燥温度を高くできるため、生産性を向上できる。具体的な解離温度は100℃以上(例えば110〜200℃)程度であればよく、例えば120℃以上(好ましくは150℃以上、さらに好ましくは180℃以上)であってもよく、例えば120〜250℃(例えば150〜240℃)、好ましくは160〜230℃(例えば170〜220℃)、さらに好ましくは175〜210℃(特に180〜200℃)程度である。解離温度が低すぎると、乾燥温度を高くできないため、乾燥に時間がかかり、生産性が低下する虞がある。
【0055】
イソシアネート化合物の割合は、複合繊維層中1〜30質量%程度であってもよく、柔軟性と耐摩耗性とを両立でき、繊維部材やベルトの柔軟性を保持したまま、耐摩耗性を高めて被水時の耐発音性を長期に亘って持続できる点から、例えば3〜20質量%、好ましくは5〜18質量%(特に5〜15質量%)、さらに好ましくは10〜15質量%(特に11〜13質量%)程度である。イソシアネート化合物の割合が少なすぎると、耐摩耗性の向上効果が低下して被水時の耐発音性が低下する虞があり、逆に多すぎると、繊維部材やベルトの柔軟性が低下する虞がある。
【0056】
イソシアネート化合物の存在形態は、繊維部材を構成する繊維の少なくとも一部を被覆する形態であればよい。繊維部材中に存在するイソシアネート化合物の分布領域としても、繊維部材の表面、内部の繊維間のいずれに存在していてもよいが、複合繊維層の耐摩耗性を向上できる点から、内部の繊維間(多孔質構造)も含めて繊維部材全体に亘って略均一(特に、均一)に分布して存在するのが好ましい。本発明では、後述するように、イソシアネート化合物を含む液状組成物中に繊維部材を浸漬する方法により、容易に繊維部材中にイソシアネート化合物を均一に分布させることができる。
【0057】
(複合繊維層の特性)
複合繊維層は、繊維部材およびイソシアネート化合物に加えて、イソシアネート化合物の硬化剤(例えば、アルカンジオールなどのポリオール類や、アルキレンジアミンやアレーンジアミン(キシリレンジアミンなど)などのポリアミン類など)をさらに含んでいてもよい。硬化剤の割合は、イソシアネート化合物100質量部に対して100質量部以下であってもよく、例えば0.1〜50質量部、好ましくは0.5〜30質量部、さらに好ましくは1〜10質量部程度である。
【0058】
複合繊維層は、他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、慣用の添加剤、例えば、界面活性剤、分散剤、フィラー、着色剤、安定剤、表面処理剤、レベリング剤などが挙げられる。他の成分の割合は、セルロース系繊維100質量部に対して10質量部以下であってもよく、例えば0.01〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部、さらに好ましくは0.5〜2質量部程度である。
【0059】
但し、慣用の添加剤の中でも、複合繊維層は、前述のように、イソシアネート化合物によって高い耐摩耗性を有しているため、繊維に対する慣用の接着処理が不要であり、イソシアネート化合物以外の接着成分(特に、レゾシルン−ホルムアルデヒド樹脂およびエポキシ樹脂)を含まないのが好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲では、接着成分としての効果を発現しない微量の接着成分を含む場合は、接着成分を含まないことと同義とする。
【0060】
複合繊維層の平均厚みは0.1mm以上(例えば0.1〜5mm程度)であってもよく、例えば0.2〜3mm、好ましくは0.3〜2mm(例えば0.5〜1.5mm)、さらに好ましくは0.7〜1mm(特に0.8〜0.9mm)程度である。複合繊維層の厚みが薄すぎると、被水時の耐発音性が低下する虞がある。
【0061】
[圧縮層]
圧縮層は、通常、ゴム(またはゴム組成物)で形成できる。ゴム(ゴム組成物を構成するゴム)としては、公知のゴム成分および/またはエラストマー、例えば、ジエン系ゴム(天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(ニトリルゴム)、水素化ニトリルゴム(水素化ニトリルゴムと不飽和カルボン酸金属塩との混合ポリマーを含む)など)、エチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、アルキル化クロロスルフォン化ポリエチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム、アクリル系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、フッ素ゴムなどが例示できる。これらの成分は単独または組み合わせて使用できる。これらのゴム成分のうち、有害なハロゲンを含まず、耐オゾン性、耐熱性、耐寒性を有し、経済性にも優れる点から、エチレン−α−オレフィンエラストマー(エチレン−プロピレン共重合体(EPM)、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体(EPDMなど)などのエチレン−α−オレフィン系ゴム)が好ましい。
【0062】
圧縮層全体(またはゴム組成物全量)に対するゴムの割合は、例えば20質量%以上(例えば25〜80質量%)、好ましくは30質量%以上(例えば35〜75質量%)、さらに好ましくは40質量%以上(例えば45〜70質量%)であってもよい。
【0063】
圧縮層(または圧縮ゴム層を形成するゴムまたはゴム組成物)は、必要に応じて、各種添加剤を含んでいてもよい。添加剤(配合剤)としては、公知の添加剤、例えば、加硫剤または架橋剤[例えば、オキシム類(キノンジオキシムなど)、グアニジン類(ジフェニルグアニジンなど)、有機過酸化物(ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、ジアルキルパーオキサイドなど)など]、加硫助剤、加硫促進剤、加硫遅延剤、補強剤(カーボンブラック、含水シリカなどの酸化ケイ素など)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化鉄、酸化銅、酸化チタン、酸化アルミニウムなど)、充填剤(クレー、炭酸カルシウム、タルク、マイカなど)、可塑剤、軟化剤(パラフィンオイル、ナフテン系オイルなどのオイル類など)、加工剤または加工助剤(ステアリン酸、ステアリン酸金属塩、ワックス、パラフィンなど)、老化防止剤(芳香族アミン系老化防止剤、ベンズイミダゾール系老化防止剤など)、接着性改善剤[レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、ヘキサメトキシメチルメラミンなどのメラミン樹脂、これらの共縮合物(レゾルシン−メラミン−ホルムアルデヒド共縮合物など)など]、着色剤、粘着付与剤、カップリング剤(シランカップリング剤など)、安定剤(酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤など)、潤滑剤、難燃剤、帯電防止剤などが例示できる。これらの添加剤は単独または組み合わせて使用でき、これらの添加剤はゴムの種類や用途、性能などに応じて選択できる。
【0064】
添加剤の割合も、ゴムの種類などに応じて適宜選択できる。例えば、補強剤(カーボンブラックなど)割合は、ゴム100質量部に対して、10質量部以上(例えば20〜150質量部)、好ましくは20質量部以上(例えば25〜120質量部)、さらに好ましくは30質量部以上(例えば35〜100質量部)、特に40質量部以上(例えば50〜80質量部)であってもよい。
【0065】
圧縮層(またはゴム組成物)は、短繊維を含んでいてもよい。短繊維としては、前記繊維部材を構成する繊維として例示された繊維の短繊維[例えば、綿やレーヨンなどのセルロース系短繊維、ポリエステル系短繊維(PET短繊維など)、ポリアミド短繊維(ポリアミド6などの脂肪族ポリアミド短繊維、アラミド短繊維など)など]が挙げられる。短繊維は単独でまたは2種以上組み合わせてもよい。
【0066】
短繊維の平均繊維長は、例えば0.1〜30mm(例えば0.2〜20mm)、好ましくは0.3〜15mm、さらに好ましくは0.5〜5mm程度であってもよい。
【0067】
これらの短繊維は、必要に応じて、界面活性剤、シランカップリング剤、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などで表面処理してもよい。
【0068】
短繊維は、ゴム成分との接着性を向上させるため、必要に応じて、接着処理を施してもよい。接着処理としては、慣用の接着処理を利用でき、例えば、接着性成分[例えば、エポキシ化合物、イソシアネート化合物]を有機溶媒(トルエン、キシレン、メチルエチルケトン等)に溶解させた樹脂系処理液などへの浸漬処理、レゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)への浸漬処理、ゴム組成物を有機溶媒に溶解させたゴム糊への浸漬処理が挙げられる。
【0069】
短繊維の割合は、ゴム100質量部に対して、例えば0.5〜50質量部(例えば1〜40質量部)、好ましくは3〜30質量部(例えば5〜25質量部)程度であってもよい。
【0070】
圧縮層(圧縮ゴム層など)の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択でき、例えば1〜30mm、好ましくは1.5〜25mm、さらに好ましくは2〜20mm程度であってもよい。
【0071】
[芯体]
芯体としては、特に限定されないが、通常、ベルト幅方向に所定間隔で配列した心線(撚りコード)を使用できる。心線は、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維(ポリアルキレンアリレート系繊維)、ポリアミド繊維(アラミド繊維など)などの合成繊維、炭素繊維などの無機繊維などを含んでいてもよい。
【0072】
心線としては、通常、マルチフィラメント糸を使用した撚りコード(例えば、諸撚り、片撚り、ラング撚りなど)を使用できる。心線の平均線径(撚りコードの繊維径)は、例えば0.5〜3mm、好ましくは0.6〜2mm、さらに好ましくは0.7〜1.5mm程度であってもよい。心線は、ベルトの長手方向に埋設されていてもよく、さらにベルトの長手方向に平行に所定のピッチで並列的に埋設されていてもよい。
【0073】
ゴムとの接着性を改善するため、心線には、前記短繊維と同様に、エポキシ化合物、イソシアネート化合物などによる種々の接着処理を施してもよい。
【0074】
[伸張層]
伸張層は、圧縮層と同様のゴム組成物で形成してもよく、帆布などの布帛(補強布)で形成してもよい。布帛(補強布)としては、例えば、織布、広角度帆布、編布、不織布などの布材などが挙げられる。これらのうち、平織、綾織、朱子織などの形態で製織した織布や、経糸と緯糸との交差角が90〜120°程度の広角度帆布や編布などが好ましい。補強布を構成する繊維としては、前記繊維部材の項で例示した繊維(吸水性繊維、非吸水性繊維など)などを利用できる。
【0075】
また、補強布には、接着処理を施してもよい。接着処理としては、例えば、前記短繊維の項で例示した接着処理を施してもよい。さらに、慣用の接着処理に代えて、または慣用の接着処理を施した後、補強布とゴム組成物とをカレンダーロールに通して補強布にゴム組成物を刷り込むフリクション処理、補強布にゴム糊を塗布するスプレディング処理、補強布にゴム組成物を積層するコーティング処理などを施してもよい。
【0076】
また、伸張層はゴム(ゴム組成物)で形成してもよい。ゴム組成物には、背面駆動時に背面ゴムの粘着により発生する異音を抑制するために、さらに圧縮層と同様の短繊維を含有させてもよい。短繊維は、ゴム組成物中でランダムに配向させてもよい。さらに、短繊維は一部が屈曲した短繊維であってもよい。
【0077】
さらに、背面駆動時の異音を抑制するために、伸張層の表面(ベルトの背面)に凹凸パターンを設けてもよい。凹凸パターンとしては、編布パターン、織布パターン、スダレ織布パターン、エンボスパターンなどが挙げられる。これらのパターンのうち、織布パターン、エンボスパターンが好ましい。さらに、繊維樹脂混合層で伸張層の背面の少なくとも一部を被覆してもよい。
【0078】
伸張層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば0.5〜10mm、好ましくは0.7〜8mm、さらに好ましくは1〜5mm程度であってもよい。
【0079】
[接着層]
接着層は、前記の通り、必ずしも必要ではない。接着層(接着ゴム層)は、例えば、前記圧縮層(圧縮ゴム層)と同様のゴム組成物(エチレン−α−オレフィンエラストマーなどのゴム成分を含むゴム組成物)で構成できる。接着層のゴム組成物は、さらに接着性改善剤(レゾルシン−ホルムアルデヒド共縮合物、アミノ樹脂など)を含んでいてもよい。
【0080】
接着層の厚みは、ベルトの種類などに応じて適宜選択できるが、例えば、0.2〜5mm、好ましくは0.3〜3mm、さらに好ましくは0.5〜2mm程度であってもよい。
【0081】
なお、前記伸張層および接着層のゴム組成物において、ゴム成分としては、前記圧縮ゴム層のゴム組成物のゴム成分と同系統または同種のゴムを使用する場合が多い。また、これらのゴム組成物において、加硫剤または架橋剤、共架橋剤または架橋助剤、加硫促進剤等の添加剤の割合は、それぞれ、前記圧縮層のゴム組成物と同様の範囲から選択できる。
【0082】
[摩擦伝動ベルトの製造方法]
本発明の摩擦伝動ベルトの製造方法は、繊維部材とイソシアネート化合物とを含む複合繊維層用シートを形成する複合繊維層形成工程を含む。
【0083】
(複合繊維層形成工程)
複合繊維層形成工程において、繊維部材とイソシアネート化合物とを含む複合繊維層用シートを形成する方法としては、特に限定されないが、繊維部材中に均一にイソシアネート化合物を分布させ易い点から、イソシアネート化合物を含む液状組成物を利用する方法が好ましく、例えば、液状組成物を繊維部材に塗布またはスプレーする方法であってもよく、液状組成物中に繊維部材を浸漬する方法(浸漬処理)であってもよい。これらの方法では、液状組成物が繊維部材の内部に浸透するため、繊維部材の表面および内面にイソシアネート化合物を略均一に分布させることができ、繊維部材全体に亘って略均一に繊維表面をイソシアネート化合物で被覆できる。これらの方法のうち、繊維部材の内部にまで浸透させ易く、かつ作業性にも優れる点から、浸漬処理により、繊維部材中にイソシアネート化合物を含浸させて両者を一体化する方法が特に好ましい。なお、本明細書および特許請求の範囲中で「繊維部材とイソシアネート化合物が一体化する」とは、繊維部材の繊維間にイソシアネート化合物が分布している状態を意味する。
【0084】
イソシアネート化合物を含む液状組成物は、溶媒を含んでいてもよい。溶媒としては、疎水性有機溶媒であってもよいが、環境負荷が小さい点から、水性溶媒(水、エタノールやイソプロパノールなどの低級アルコール、アセトンなどのケトン類など)が好ましく、水が特に好ましい。
【0085】
液状組成物中のイソシアネート化合物の割合(固形分濃度)は、作業性および繊維部材やベルトの柔軟性を良好に保ったまま、耐摩耗性を高めて被水時の耐発音性を長期に亘って持続できる点から、例えば1〜8質量%、好ましくは1〜6質量%、さらに好ましくは2〜5質量%(特に4〜5質量%)程度である。イソシアネート化合物の割合が少なすぎると、耐摩耗性の向上効果が低下する虞があり、逆に多すぎると、水溶液の粘度上昇により作業性が低下し、繊維部材やベルトの柔軟性も低下する虞がある。
【0086】
本発明では、イソシアネート化合物であるため、液状組成物の取り扱いも優れている。すなわち、慣用の処理剤であるRFL液を使用すると、調液に長時間の熟成が必要であり生産性が低下するが、イソシアネートを含む液状組成物(特に、イソシアネートを含む水溶液)では、希釈するだけで使用でき、生産性を向上できる。さらに、イソシアネート化合物の中でも、汎用のイソシアネート化合物であれば、浸漬液の状態でも硬化が徐々に進行して取り扱い性が低下するが、熱反応型イソシアネート化合物を用いると、浸漬液としての寿命が長く、取り扱いが容易で生産性を向上できる。
【0087】
液状組成物が溶媒を含む場合、繊維部材を液状組成物で浸漬などの処理を施した後、溶媒を除去するために乾燥するが、乾燥は、自然乾燥であってもよいが、生産性の点から、加熱して乾燥するのが好ましい。繊維部材に浸透させた液状組成物を乾燥させることにより、繊維部材の内部から表面に亘って、繊維の表面にイソシアネート化合物を付着できる。乾燥温度は、イソシアネート化合物として熱反応型イソシアネート化合物を利用する場合、乾燥処理での加熱によりイソシアネート化合物が活性化および硬化して繊維部材の柔軟性が低下するのを抑制でき、繊維部材の伸びが不足することによるベルトの形状不良を抑制できる点から、熱反応型イソシアネート化合物の解離温度未満の温度で乾燥すればよい。解離温度をTとするとき、T−10℃以下であってもよく、例えばT−120℃〜T−20℃、好ましくはT−100℃〜T−30℃、さらに好ましくはT−90℃〜T−50℃程度であってもよい。具体的な乾燥温度は、120℃未満であってもよく、例えば60〜115℃、好ましくは80〜110℃、さらに好ましくは90〜105℃程度である。
【0088】
乾燥時間は特に限定されないが、本発明では、イソシアネート化合物として解離温度の高い熱反応型イソシアネート化合物を用いることにより、比較的高温で乾燥できるため、乾燥時間が短くでき、ベルトの生産性を向上できる。乾燥時間は、30分以下(特に10分以下)であってもよく、例えば0.5〜10分、好ましくは1〜8分、さらに好ましくは3〜7分程度である。
【0089】
(被覆工程)
本発明の摩擦伝動ベルトは、前記複合繊維層形成工程以外は、慣用の摩擦伝動ベルトの製造方法を利用でき、摩擦伝動面(圧縮ゴム層)を複合繊維層で被覆する被覆工程を経て製造できる。この被覆工程は、例えば、複合繊維層用シートと、ゴム(またはゴム組成物)で構成された圧縮層用シートと、芯体と、伸張層用シートとを積層し、得られた積層体を成形型で筒状に成形し、加硫してスリーブを成形し、この加硫スリーブを所定幅にカッティングすることにより、複合繊維層が摩擦伝動面(圧縮ゴム層)を被覆したベルトを作製できる。
【0090】
より詳細には、Vリブドベルトは、例えば、以下の方法で製造できる。
【0091】
(第1の製造方法)
先ず、外周面に可撓性ジャケットを装着した円筒状内型を用い、外周面の可撓性ジャケットに未加硫の伸張層用シートを巻きつけ、このシート上に芯体を形成する心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、さらに未加硫の圧縮層用シートと複合繊維層用シートとを巻き付けて積層体を作製する。次に、前記内型に装着可能な外型として、内周面に複数のリブ型が刻設された筒状外型を用い、この外型内に、前記積層体が巻き付けられた内型を、同心円状に設置する。その後、可撓性ジャケットを外型の内周面(リブ型)に向かって膨張させて積層体(圧縮層)をリブ型に圧入し、加硫する。そして、外型から内型を抜き取り、複数のリブを有する加硫ゴムスリーブを外型から脱型することによりスリーブ状のVリブドベルトを作製できる。なお、スリーブ状のVリブドベルトは、必要により、カッターを用いて、加硫ゴムスリーブをベルト長手方向に所定の幅にカットし、Vリブドベルトを作製してもよい。この第1の製造方法では、伸張層、芯体、圧縮層、複合繊維層を備えた積層体を一度に膨張させて複数のリブを有するスリーブ(またはVリブドベルト)に仕上げることができる。
【0092】
(第2の製造方法)
第1の製造方法に関連して、例えば、特開2004−82702号公報に開示される方法(複合繊維層および圧縮層のみを膨張させて予備成形体(半加硫状態)とし、次いで伸張層と芯体とを膨張させて前記予備成形体に圧着し、加硫一体化してVリブドベルトに仕上げる方法)を採用してもよい。
【実施例】
【0093】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。なお、以下に、ゴム組成物の調製方法、ベルトの作製方法、各物性の測定方法または評価方法などを示す。
【0094】
[ゴム組成物]
表1に示すゴム組成物をバンバリーミキサーでゴム練りし、この練りゴムをカレンダーロールに通して所定厚みの未加硫圧延ゴムシート(圧縮層用シート)を作製した。また、表1に示すゴム組成物を用い、圧縮層用シートと同様にして、伸張層用シートを作製した。なお、表1の成分は下記の通りである。
【0095】
EPDM:ダウ・ケミカル社製、「ノーデルIP4640」
酸化亜鉛:正同化学工業(株)製、「酸化亜鉛3種」
ステアリン酸:日油(株)製「ステアリン酸つばき」
カーボンブラック:東海カーボン(株)製、「シーストV」、平均粒子径55nm
軟化剤:パラフィン系オイル、出光興産(株)製、「NS−90」
老化防止剤:大内新興化学工業(株)製、「ノクラックMB」
有機過酸化物:日油(株)製、「パークミルD−40」
共架橋剤:大内新興化学工業(株)製、「バルノックPM」
【0096】
【表1】
【0097】
実施例1
[熱反応型イソシアネート含浸編布の調製]
セルロース系繊維としての綿紡績糸(40番手、1本)と、合成繊維としてのPTT/PETコンジュゲート複合糸(繊度84dtex)とを、セルロース系繊維/合成繊維=80/20の質量比で編成し、編組織が緯編(鹿の子、2層)の編布(繊維部材)を作製した。得られた編布の厚みは0.85mmであり、編布密度(ウェール+コース)は100本/インチであった。
【0098】
なお、編布の平均厚みおよび編布の密度は次のようにして測定した。編布の平均厚みは、JIS L 1096(2010)に準拠し、不自然なしわや張力を除いて編布を平らな台上に置き、定荷重式測厚器にて5箇所の厚みを測定し、平均値を算出し、平均厚みとした。編布の密度は、JIS L 1096(2010)に準拠し、不自然なしわや張力を除いて編布を平らな台上に置き、1インチの長さにおける編目の数を任意の5箇所で測定し、平均値を算出し、平均密度とした。
【0099】
熱反応型イソシアネートX(第一工業製薬(株)製「エラストロンBN−27」、解離温度180℃、固形分濃度30質量%)を固形分濃度が5質量%となるように水で希釈した浸漬液に、得られた編布を10秒間浸漬した後、100℃で5分間乾燥し、熱反応型イソシアネートが含浸した編布(複合繊維層用シート)を調製した。
【0100】
[Vリブドベルトの調製]
外周面に可撓性ジャケットを装着した円筒状内型を用い、外周面の可撓性ジャケットに未加硫の伸張層用シートを巻きつけ、このシート上に芯体となる心線(撚りコード)を螺旋状にスピニングし、さらに未加硫の圧縮層用シートと複合繊維層用シート(熱反応型イソシアネート含浸編布)とを巻き付けて積層体を作製した。なお、心線には、1100dtex/1×4構成のアラミドコードを用いた。ゴムとの接着性を向上させるため、予め心線をレゾルシン−ホルマリン−ラテックス液(RFL液)へ浸漬処理した後、EPDMを含むゴム組成物を有機溶媒(トルエン)に溶解させた処理液でコーティング処理を行った。
【0101】
この筒状積層体が巻き付けられた内型を、内周面に複数のリブ型が刻設された筒状外型内に同心円状に設置し、前記可撓性ジャケットを膨張させて積層体をリブ型に圧入し、180℃で30分間加硫した。そして、外型から内型を抜き取り、複数のリブを有する加硫ゴムスリーブを外型から脱型し、カッターを用いて、加硫ゴムスリーブをベルト長手方向に所定の幅にカットし、Vリブドベルト(リブ数:6個、周長:980mm、ベルト形:K形、ベルト厚み:4.3mm、リブ高さ:2mm、リブピッチ:3.56mm)を作製した。
【0102】
[耐久試験条件1]
直径140mmの駆動プーリ(Dr.)、直径60mmのテンションプーリ1(Ten.1)、直径50mmの従動プーリ1(Dn.1)、直径60mmのテンションプーリ2(Ten.2)、直径111mmの従動プーリ2(Dn.2)を順に配した
図2にレイアウトを示す試験機を用いてベルトを走行し、耐久試験を行った。試験機の各プーリに、得られたVリブドベルトを掛架し、駆動プーリの回転数を800±160rpmで変動させ、従動プーリ1の負荷を16N・m、従動プーリ2は無負荷とし、ベルト張力は200N/6リブとした。駆動プーリと従動プーリ2の中心の位置でベルトの圧縮層側から注水を行った。注水は60秒に1回(5秒間)行い、注水量は100cc/秒(500cc/5秒)とした。試験温度は25℃で、試験時間は60分とした。
【0103】
比較例1
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、熱反応型イソシアネートを含む浸漬液での浸漬処理および乾燥処理を行わなかった以外は実施例1と同様にしてVリブドベルトを調製し、耐久試験条件1で走行させた。
【0104】
実施例1および比較例1で得られたVリブドベルトを、耐久試験条件1で走行させ、耐久試験前後の注水時のスリップ率を下記式に従って求め、耐久試験後の注水時の発音有無、および耐久試験後の摩擦伝動面の外観状態の確認を行った結果を表2に示す。
【0105】
スリップ率(%)=[(K1−K2)/K1]×100
[式中、K1=N1/R1、K2=N2/R2であり、R1は無負荷運転時の駆動プーリの回転速度(rpm)、N1は無負荷運転時の従動プーリの回転速度(rpm)、R2は負荷運転時の駆動プーリの回転速度(rpm)、N2は負荷運転時の従動プーリの回転速度(rpm)を示す]
【0106】
【表2】
【0107】
表2の結果から明らかなように、イソシアネート化合物で被覆処理していない比較例1では、耐久試験前のスリップ率は実施例1と同等であったが、耐久試験後のスリップ率が大きく、異音が発生した。また、摩擦伝動面において、繊維部材である綿が脱落していることが確認された。一方、イソシアネート化合物で被覆処理した実施例1では、耐久試験後もスリップ率の上昇や異音の発生はなく、外観上も顕著な変化は見られなかった。
【0108】
実施例2
実施例1と同様の方法で加硫ゴムスリーブを製造した後、カッターを用いて、加硫ゴムスリーブをベルト長手方向に所定の幅にカットし、Vリブドベルト(リブ数:3個、周長:1500mm、ベルト形:K形、ベルト厚み:4.3mm、リブ高さ:2mm、リブピッチ:3.56mm)を作製した。
【0109】
[耐久試験条件2]
直径140mmの駆動プーリ(Dr.)、直径50mmの従動プーリ(Dn.)、直径55mmのアイドラープーリ1(Id.1)、直径55mmのテンションプーリ(Ten.)、直径55mmのアイドラープーリ2(Id.2)を順に配した
図3にレイアウトを示す試験機を用いてベルトを走行し、耐久試験を行った。試験機の各プーリに、得られたVリブドベルト(リブ数3、周長1500mm)を掛架し、駆動プーリの回転数を800rpm、従動プーリの負荷を15N・mとし、ベルト張力は150N/3リブとした。駆動プーリと従動プーリの中心の位置でベルトの圧縮層側から注水を行った。注水は60秒に1回(5秒間)行い、注水量は100cc/秒(500cc/5秒)とした。試験温度は25℃で、試験時間は45分とした。
【0110】
実施例3
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、熱反応型イソシアネートXを含む浸漬液の固形分濃度が3質量%となるように希釈する以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0111】
実施例4
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、熱反応型イソシアネートXを含む浸漬液の固形分濃度が1質量%となるように希釈する以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0112】
実施例5
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、セルロース系繊維と合成繊維との質量比を、セルロース系繊維/合成繊維=60/40の質量比で編成する以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0113】
実施例6
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、セルロース系繊維と合成繊維との質量比を、セルロース系繊維/合成繊維=50/50の質量比で編成する以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0114】
実施例7
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、セルロース系繊維と合成繊維との質量比を、セルロース系繊維/合成繊維=30/70の質量比で編成する以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0115】
実施例8
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、熱反応型イソシアネートXの代わりに熱反応型イソシアネートY(第一工業製薬(株)製「エラストロンBN−77」、解離温度120℃、固形分濃度30質量%)を用いる以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0116】
実施例9
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、編組織が緯編(鹿の子、2層)の編布(厚み0.85mm、編布密度100本/インチ)の代わりに編組織が緯編(鹿の子、単層)の編布(厚み0.6mm、編布密度80本/インチ)を作製する以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0117】
実施例10
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、合成繊維としてPTT/PETコンジュゲート複合糸(繊度84dtex)の代わりにPET/PUカバリング糸(繊度84dtex)を用いる以外は実施例2と同様の方法でVリブドベルトを調製し、耐久試験条件2で走行させた。
【0118】
実施例2〜10で得られたVリブドベルトを、耐久試験条件2で走行させ、耐久試験後の注水時の発音有無、および耐久試験後の摩擦伝動面の外観状態の確認を行って下記基準で評価し、耐久試験後のスリップ率を前記式に従って求めた結果を表3に示す。
【0119】
(外観状態の基準)
A:目視可能なホツレなし
B:微小なホツレ発生
C:大きなホツレ発生。
【0120】
なお、表3中の付着率は、下記式に基づいて算出できる。
【0121】
付着率(%)=[(被覆処理後の繊維部材質量−被覆処理前の繊維部材質量)/被覆処理後の繊維部材質量]×100
【0122】
【表3】
【0123】
表3の結果から明らかなように、実施例2〜4において、浸漬液固形分濃度および繊維部材へのイソシアネート化合物の付着率が高くなるに従って繊維部材のホツレの発生が抑えられ、耐摩耗性や耐発音性が向上するとともに、スリップ率も低下する傾向にあった。
【0124】
実施例2および実施例5〜7の結果からは、セルロース系繊維の割合が高くなるに従って耐発音性が向上するとともに、スリップ率も低下する傾向にあった。
【0125】
実施例2の結果と実施例8の結果とを比較すると、熱反応型イソシアネートの解離温度について120℃と180℃とは同等の結果であった。
【0126】
実施例2の結果と実施例9の結果とを比較すると、単層の編布よりも2層の編布の方が、耐発音性およびスリップ率のいずれも優れていた。
【0127】
実施例2の結果と実施例10の結果とを比較すると、合成繊維の種類についてPTT/PETコンジュゲート複合糸とPET/PUカバリング糸とは同等の結果であった。
【0128】
参考例1
熱反応型イソシアネート含浸編布の調製において、浸漬後の乾燥温度を180℃とした以外は実施例1と同様の方法でVリブドベルトを調製したが、乾燥温度が高すぎるため、繊維部材の伸度が低下し、リブ形状不良が発生した。このような不具合を防ぐためには、ブロックドイソシアネートの解離温度は高い方が好ましく、繊維部材の乾燥温度はブロックドイソシアネートの解離温度よりも十分に低くするのが好ましい。