特許第6676763号(P6676763)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676763
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】燃料高圧ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 59/44 20060101AFI20200330BHJP
   F02M 59/36 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F02M59/44 E
   F02M59/36 F
【請求項の数】9
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-538829(P2018-538829)
(86)(22)【出願日】2017年1月23日
(65)【公表番号】特表2019-503452(P2019-503452A)
(43)【公表日】2019年2月7日
(86)【国際出願番号】EP2017051274
(87)【国際公開番号】WO2017129504
(87)【国際公開日】20170803
【審査請求日】2018年9月10日
(31)【優先権主張番号】102016201082.4
(32)【優先日】2016年1月26日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ ハウプト
(72)【発明者】
【氏名】ヤヴズ クアト
(72)【発明者】
【氏名】ベアント ヴェリッシュ
【審査官】 小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2003−097388(JP,A)
【文献】 特開平11−280602(JP,A)
【文献】 特開2013−167257(JP,A)
【文献】 特開2004−138071(JP,A)
【文献】 特開2006−214301(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
F02M 59/36
F02M 55/04
F02M 63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料に高圧を加える燃料高圧ポンプ(10)であって、
圧力室(34)と、作動中に運動軸線(24)に沿って前記圧力室(34)内において並進的に昇降運動するポンプピストン(22)とを備えたポンプハウジング(14)と、
該ポンプハウジング(14)に配置されており緩衝器容積(40)を備えた低圧緩衝器(20)であって、緩衝器長手方向軸線(32)の周りに対称的に形成された緩衝器エレメント(46)を有する低圧緩衝器(20)と、を有し、
前記緩衝器長手方向軸線(32)は、前記運動軸線(24)に対して5°〜175°の角度を成して配置されており
前記緩衝器長手方向軸線(32)と前記運動軸線(24)との交点(S)が、前記圧力室(34)内に配置されていることを特徴とする、燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項2】
前記緩衝器長手方向軸線(32)は、前記ポンプピストン(22)の前記運動軸線(24)に対してほぼ垂直に配置されている、請求項1記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項3】
前記緩衝器エレメント(46)は、少なくとも1つの緩衝装置(48)、前記低圧緩衝器(20)の前記緩衝器容積(40)を一緒に画成する緩衝器カバー(52)、および前記緩衝装置(48)に予荷重を加えるスペーサ(50)を備え、前記緩衝器エレメント(46)は、前記緩衝器長手方向軸線(32)に沿って前記緩衝器容積(40)内に配置されている、請求項1または2記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項4】
前記ポンプハウジング(14)は、前記圧力室(34)に燃料を供給する供給領域(36)と、前記ポンプピストン(22)の前記運動軸線(24)に沿って前記圧力室(34)とは反対側に位置している駆動領域(38)とを有しており、該駆動領域(38)内に、前記ポンプピストン(22)を駆動する駆動エレメントが配置されており、前記供給領域(36)と前記駆動領域(38)とは、前記緩衝器容積(40)によって互いに流体接続されている、請求項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項5】
前記ポンプハウジング(14)は、前記供給領域(36)を前記緩衝器容積(40)に接続する、前記緩衝器長手方向軸線(32)に対してほぼ平行に延びる供給領域孔(42)と、前記駆動領域(38)を前記緩衝器容積(40)に接続する、前記運動軸線(24)に対してほぼ平行に延びる補償孔(44)とを有しており、前記供給領域孔(42)と前記補償孔(44)とは、前記緩衝器長手方向軸線(32)に沿って前記緩衝器カバー(52)とは反対側に位置するように前記緩衝器容積(40)内に開口している、請求項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項6】
前記ポンプハウジング(14)に入口弁(16)が配置されており、該入口弁(16)は、それに沿って弁エレメントが作動中に運動する弁軸線(26)を有しており、該弁軸線(26)は、前記ポンプピストン(22)の前記運動軸線(24)に対してほぼ平行に配置されていて、かつ前記運動軸線(24)と合致している、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項7】
前記入口弁(16)は、コイル(28)と電気的な差込みコネクタ(30)とを備えたデジタル式の入口弁(16)として形成されており、前記コイル(28)および/または前記電気的な差込みコネクタ(30)は、前記弁軸線(26)を中心にして360°回転可能に配置されている、請求項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項8】
前記入口弁(16)は、前記供給領域(36)に配置されている、請求項4または5を引用する、請求項または記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【請求項9】
前記ポンプハウジング(14)は、鍛造ハウジング(12)として形成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の燃料高圧ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の燃料噴射系において燃料に高圧を加える燃料高圧ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
燃料噴射系における燃料高圧ポンプは、燃料に高圧を加えるために使用され、このとき圧力は、例えばガソリンエンジンでは150バール〜400バールの範囲にあり、かつディーゼルエンジンでは、1500バール〜3000バールの範囲にある。それぞれの燃料において生じさせることができる圧力が高ければ高いほど、燃料の燃焼中に燃焼室内において発生するエミッションが僅かになり、これは特に、エミッションの低減が益々強く望まれるという背景から好適である。
【0003】
それぞれの燃料において高い圧力を得ることができるようにするために、燃料高圧ポンプは、典型的にはピストンポンプとして形成されている。ポンプピストンは、圧力室内において並進的に運動し、かつ圧力室内に配置された燃料を、周期的に圧縮しかつ膨張させる。
【0004】
このようなピストンポンプの、このとき発生する不均一な圧送によって、燃料高圧ポンプの低圧側または吸込み側においては、容積流において変動が発生し、このような変動は、系全体における圧力変動または圧力脈動に結び付いている。これらの変動は、燃料高圧ポンプの充填損失を引き起こすおそれがあり、これによって内燃機関において必要な燃料量の正確な調量を保証することができなくなる。不均一な圧送によって生じる圧力脈動は、さらに、例えば供給管路のような部材であるポンプコンポーネント内に振動を励起し、このような振動は、不所望の騒音、または最悪な場合には様々な部材における損傷をも引き起こすおそれがある。
【0005】
したがって、燃料高圧ポンプは、多くの場合、いわゆる低圧緩衝器を有しており、この低圧緩衝器は、容積流における変動を補償し、ひいては発生する圧力脈動を減じる。
【0006】
例えば緩衝コンポーネントを使用することが公知であり、この緩衝コンポーネントは、液圧式のアキュムレータとして作動し、このアキュムレータは、容積流における変動を補償し、ひいては発生する圧力脈動を減じる。そのためには例えば、ガス容積を燃料から切り離す変形可能な緩衝装置が使用される。例えば供給系において圧力が上昇すると、変形可能な緩衝装置が変形し、これによってガス容積が圧縮され、余剰燃料のためのスペースが形成される。後の時点において圧力が再び低下すると、ガス容積におけるガスは再び膨張する。
【0007】
変形可能な緩衝装置としては、例えば金属製の緩衝器カプセルが公知であり、これらの緩衝器カプセルは、ガスによって満たされておりかつ縁部で溶接されている2つの金属ダイヤフラムを有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、低圧緩衝器を備えた改善された燃料高圧ポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、請求項1に記載の特徴の組合せによって解決される。
【0010】
本発明の好適な構成は、従属請求項の対象である。
【0011】
燃料に高圧を加える燃料高圧ポンプは、圧力室と、作動中に運動軸線に沿って圧力室内において並進的に昇降運動するポンプピストンとを備えたポンプハウジングと、ポンプハウジングに配置されていて緩衝器容積を備えた低圧緩衝器とを有しており、低圧緩衝器は、緩衝器長手方向軸線の周りに対称的に形成された緩衝器エレメントを有している。緩衝器長手方向軸線は、運動軸線に対して5°〜175°の角度を成して配置されている。
【0012】
従来公知の燃料高圧ポンプでは、低圧緩衝器は、燃料高圧ポンプのポンプハウジングの上端部に取り付けられ、つまり低圧緩衝器は、圧力室内において並進的に昇降運動するポンプピストンの運動軸線を含むライン上に位置している。
【0013】
これに対して、本発明では、低圧緩衝器を、ポンプピストンを含むライン上に設けるのではなく、ポンプハウジングにおいて側部に配置することが提案される。したがって、低圧緩衝器は、ポンプハウジングにおいて上側に配置されているのではなく、側部に取り付けられている。
【0014】
緩衝器長手方向軸線は、好ましくは、運動軸線に対して30°〜120°、好適には60°〜100°の角度を成して配置されている。
【0015】
特に好ましくは、緩衝器長手方向軸線は、ポンプピストンの運動軸線に対してほぼ垂直に配置されている。
【0016】
特に好ましくは、緩衝器長手方向軸線と運動軸線との交点が、圧力室内に配置されている。すなわち、低圧緩衝器は、ポンプハウジングにおいて側部に配置されており、つまり低圧緩衝器は、圧力室の高さにおいてポンプハウジングに位置するようになっている。
【0017】
しかしながらまた、低圧緩衝器が、利用可能な構造空間に関連して、運動軸線に対して側方にずらされて配置されており、ゆえに緩衝器長手方向軸線と運動軸線との交点が生じないような構成も可能である。
【0018】
好適な構成では、緩衝器エレメントは、少なくとも1つの緩衝装置、低圧緩衝器の緩衝器容積を一緒に画成する緩衝器カバー、および緩衝装置に予荷重を加えるスペーサを有しており、この場合緩衝器エレメントは、特に緩衝器長手方向軸線に沿って緩衝器容積内に配置されている。
【0019】
緩衝装置としては、好ましくは、2つのダイヤフラムの内部にガス容積が閉じ込められている緩衝器カプセルが適している。
【0020】
スペーサは、個別の部材として形成されていてよいが、しかしながらまた、スペーサを緩衝器カバーに一体に組み込んで形成することも可能である。
【0021】
特に好ましくは、緩衝装置は、低圧緩衝器を周囲に対して閉鎖する緩衝器カバーよりも近傍で圧力室に向かって配置されている。
【0022】
好ましくは、ポンプハウジングは、圧力室に燃料を供給する供給領域と、ポンプピストンの運動軸線に沿って圧力室とは反対側に位置している駆動領域とを有しており、駆動領域内に、ポンプピストンを駆動する駆動エレメントが配置されており、供給領域と駆動領域とは、緩衝器容積によって互いに流体接続されている。
【0023】
したがって、低圧緩衝器または低圧緩衝器内における緩衝器容積は、少なくとも燃料高圧ポンプの供給領域および駆動領域に関して分配箇所として機能する。
【0024】
好ましくは、ポンプハウジングは、供給領域を緩衝器容積に接続する、緩衝器長手方向軸線に対してほぼ平行に延びている供給領域孔と、駆動領域を緩衝器容積に接続する、運動軸線に対してほぼ平行に延びている補償孔とを有している。特に、供給領域孔と補償孔とは、緩衝器長手方向軸線に沿って緩衝器カバーとは反対側に位置するように緩衝器容積内に開口するように構成されている。
【0025】
しかしながらまた、供給領域孔を緩衝器カバーに配置すること、ひいては緩衝器容積内への補償孔の入口とは反対側に位置するように配置することも可能である。供給領域孔は、緩衝器カバーにおいて側部にまたは真ん中に配置されていてよい。
【0026】
両孔、つまり供給領域孔および補償孔は、緩衝器容積の巧妙な側部における配置形態と分配箇所としてのその機能とによって、従来の燃料高圧ポンプに比べて比較的短く構成することができる。これによって、圧力脈動のより良好な緩衝作用を生じさせることが可能である。このことには、また製造においても利点がある。なぜなら、短い孔によって、これらの孔の比較的短い加工時間が可能だからである。これによって、ポンプハウジングの製造時におけるコストを大幅に減じることができる。さらに追加的に得られる利点としては、上に述べた孔の横断面を、例えば大きな孔直径または長孔およびこれに類したものによって、部分的に極めて大きく形成することができ、かつこれによって、より良好な緩衝特性を得ることができるということがある。
【0027】
好ましくは、ポンプハウジングに入口弁が配置されており、入口弁は、それに沿って弁エレメントが作動中に運動する弁軸線を有しており、弁軸線は、ポンプピストンの運動軸線に対してほぼ平行に配置されている。特に好ましくは、ポンプピストンの弁軸線と運動軸線とは互いに合致している。
【0028】
すなわち、このように構成されていると、入口弁は、ポンプハウジングの、従来は低圧緩衝器が配置されていた箇所に位置しており、つまり駆動領域から見て圧力室の上側に位置している。
【0029】
入口弁は、好ましくはコイルと電気的な差込みコネクタとを備えたデジタル式の入口弁として形成されており、かつコイルおよび/または電気的な差込みコネクタは、コイルまたは電気的な差込みコネクタが弁軸線を中心にして360°回転可能に配置されているように設けられている。このように構成されていると、電気的なコネクタの方向付けに関して、比較的大きなフレキシビリティまたは可変性を得ることができるという利点が得られる。入口弁が通常のようにポンプハウジングにおいて側部に配置されている燃料高圧ポンプの公知のデザインでは、通常、コイルまたは電気的な差込みコネクタは、単に側部においてしか方向付けることができず、傾けることは、しばしばせいぜい下方に向かってしか多くの場合可能でない。なぜなら、ここには大抵多くの障害輪郭が存在しているからである。すなわち、通常は単に、方向付けのためには約180°の角度範囲におけるフレキシビリティしか存在していない。しかしながら、ポンプハウジングにおいて上側に入口弁を配置する配置形態によって、いまや、コイルまたは電気的な差込みコネクタを360°にわたって回転させることが可能であり、つまり360°の角度範囲におけるフレキシビリティが生じ、単に、ポンプハウジングを固定するフランジねじへの接近可能性だけに注意を払えばよい。
【0030】
特に好ましくは、入口弁は、供給領域に配置されている。すなわち緩衝器容積は、供給領域および駆動領域のための分配箇所として機能するのみならず、例えば入口弁のような、燃料によって貫流されるその他のエレメントのための分配箇所としても機能する。
【0031】
特に好ましい構成では、ポンプハウジングは、鍛造ハウジングとして形成されている。
【0032】
鍛造ハウジングでは、低圧緩衝器のための相応の構造空間を、棒材料から製造されるポンプハウジングに比べて比較的容易に提供することができる。なぜならば、棒材料を使用する場合には、場合によっては、必要な棒直径を極めて大きく選択しなくてはならず、ゆえにハウジング原料に対する比較的高いコスト、ひいては機械式の加工のためのより多くの手間に基づく比較的高いコストが発生するからである。したがって、低圧緩衝器をポンプハウジングにおいて側部に配置する配置形態は、鍛造ハウジングの使用によって容易になる。
【0033】
次に本発明の好適な構成について、添付の図面を参照しながら詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1】低圧緩衝器および入口弁を備えた燃料高圧ポンプを示す斜視図である。
図2図1に示した燃料高圧ポンプを示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1に斜視図で示す燃料高圧ポンプ10は、鍛造ハウジング12として形成されたポンプハウジング14を有している。ポンプハウジング14には、入口弁16、燃料高圧ポンプ10に燃料を供給する供給接続部18、および低圧緩衝器20が配置されている。さらに、ポンプハウジング14内にはポンプピストン22が配置されており、このポンプピストン22は、運動軸線24に沿った並進運動によって、供給接続部18を介して供給される燃料を、燃料高圧ポンプ10内において周期的に圧縮・弛緩する。
【0036】
図1から分かるように、運動軸線24に沿って、ポンプピストン22を含むラインに入口弁16が配置されており、つまり、それに沿って弁エレメント(図示せず)が入口弁16の作動中に移動する弁軸線26が、ポンプピストン22の運動軸線24と合致するようになっている。
【0037】
すなわち、入口弁16は、ポンプハウジング14において上側に配置されている。
【0038】
入口弁16は、図示の実施形態では、デジタル式の入口弁16として形成されており、ゆえにコイル28および電気的な差込みコネクタ30を有している。入口弁16がポンプハウジングにおいて上側に配置されていることによって、コイル28および電気的な差込みコネクタ30は、運動軸線24と合致する弁軸線26を中心にして、360°の角度範囲において自由に回転することができる。これによって、ポンプハウジング14におけるコイル28または電気的な差込みコネクタ30のフレキシブルな配置形態が可能である。
【0039】
低圧緩衝器20は、ポンプハウジング14において側部に配置されていて、つまり緩衝器軸線32は、運動軸線24に対して角度を成して配置されている。本実施形態では、緩衝器軸線32は、運動軸線24に対してほぼ垂直に配置されているが、両軸線の間において5°〜175°の範囲内の他の角度を設定することも可能である。
【0040】
ポンプハウジング14において側部に低圧緩衝器20を配置する配置形態は、比較的大きな詳細図で図2に断面図で示されている。
【0041】
この断面図で認識できるように、燃料高圧ポンプ10はポンプハウジング14の内部に圧力室34を有しており、この圧力室34内において、ポンプピストン22は、作動中に運動軸線24に沿って並進的に昇降運動する。さらに、ポンプハウジング14には複数の孔が設けられており、これらの孔は、燃料を供給接続部18から圧力室34に供給する供給領域36と、駆動領域38とを画成しており、駆動領域38内には、ポンプピストン22を作動時に駆動する駆動エレメント(図示せず)が配置されている。駆動領域38は、ポンプピストン22の運動軸線24に沿って、ポンプピストン22に関して圧力室34とは反対の側に位置しており、これに対して供給領域36は、圧力室34に直接隣接して配置されている。
【0042】
図1および図2を一緒に見て分かるように、入口弁16は供給領域36に配置されており、これによって圧力室34への燃料の供給を制御することができる。
【0043】
図2から分かるように、供給領域36と駆動領域38とは、低圧緩衝器20の緩衝器容積40を通して互いに流体接続されている。低圧緩衝器20は、ポンプハウジング14において側部に巧妙に配置されており、すなわち緩衝器容積40を供給領域36または駆動領域38に接続する孔を、特に短く形成することができるようになっている。これらの孔は、一方では、供給領域36を緩衝器容積40に接続する供給領域孔42であり、他方では、駆動領域38を緩衝器容積40に接続する補償孔44である。
【0044】
図2からさらに分かるように、低圧緩衝器20の内部には、緩衝器エレメント46が、緩衝器長手方向軸線32に沿ってこの緩衝器長手方向軸線32の周りに対称的に配置されている。緩衝器エレメント46は、ほぼ、緩衝装置48として形成された少なくとも1つの緩衝器カプセル、少なくとも1つのスペーサ50および緩衝器カバー52である。緩衝装置48は、2つのダイヤフラム54から形成されており、これらのダイヤフラム54は、縁部領域56において互いに溶接されていて、かつガス容積58をその間に閉じ込めており、これによって緩衝装置48は全体としてフレキシブルであり、かつ緩衝器容積40または供給領域36または駆動領域38において発生する圧力変動を、変形によって吸収することができる。縁部領域56を安定化させるために設けられているスペーサ50は、緩衝装置48のこの縁部領域56に予荷重を加える。緩衝器容積40は、緩衝器カバー52によって一緒に画成され、追加的に本実施形態では、ポンプハウジング14は、内部に緩衝器エレメント46が配置されている、鍛造によって形成された凹部60を形成している。
【0045】
さらに図2から分かるように、低圧緩衝器20または緩衝器容積40は、ポンプハウジング14において側部に配置されていて、その周りに緩衝器エレメント46が対称的に配置されている緩衝器長手方向軸線32が、圧力室34内においてポンプピストン22の運動軸線24と交点Sで交差するようになっている。すなわち、緩衝器容積40は、運動軸線24に沿って見て、圧力室34の高さに位置しており、このことは、利用できる構造空間に関して特に好適である。
【0046】
図2からさらに分かるように、供給領域孔42と補償孔44とは、緩衝器カバー52とは反対側に位置するように緩衝器容積40に開口している。しかしながら、両孔42,44は、その長手方向に関して同じ方向に方向付けられているのではなく、互いにほぼ垂直に配置されている。したがって、供給領域孔42は、緩衝器長手方向軸線32に対してほぼ平行に延びており、これに対して補償孔44は、ポンプピストン22の運動軸線24に対してほぼ平行に延びている。これによって、供給領域孔42は端面側の一端部で緩衝器容積40に開口しており、これに対して補償孔44は、貫通された側壁を有しており、この側壁を介して補償孔44は、緩衝器容積40に開口している。
【0047】
緩衝器容積40、供給領域孔42および補償孔44の特別な配置形態によって、両孔42,44を特に短く形成することができ、このことは、一方では圧力脈動の比較的良好な緩衝を可能にし、他方では、これらの短い孔は比較的短い加工時間しか必要としないので、製造においても好適である。さらに、両孔42,44の横断面を特に大きく、かつ運動軸線24に対する任意の角度で構成することができ、これによって同様に、再び比較的良好な緩衝特性を得ることができる。したがって、低圧緩衝器20が燃料高圧ポンプ10の種々異なった領域に燃料を分配する分配エレメントとして設けられていると、好適である。
図1
図2