特許第6676768号(P6676768)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676768
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】紙葉類繰出装置及び異物検知方法
(51)【国際特許分類】
   B65H 7/06 20060101AFI20200330BHJP
   B65H 3/06 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B65H7/06
   B65H3/06 350A
【請求項の数】9
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-541791(P2018-541791)
(86)(22)【出願日】2016年9月28日
(86)【国際出願番号】JP2016078725
(87)【国際公開番号】WO2018061129
(87)【国際公開日】20180405
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237639
【氏名又は名称】富士通フロンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西田 光孝
(72)【発明者】
【氏名】南新 勇人
(72)【発明者】
【氏名】池田 朴人
(72)【発明者】
【氏名】島村 達也
【審査官】 冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−230759(JP,A)
【文献】 特開2007−326704(JP,A)
【文献】 特開平5−132169(JP,A)
【文献】 特開2015−180982(JP,A)
【文献】 実開平4−50264(JP,U)
【文献】 特開2008−210303(JP,A)
【文献】 特開2006−206231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H1/00−3/68、7/00−7/20、43/00−43/08
G03G15/00
G07D11/00−13/00
H04N1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙葉類を入れる投入部と、
前記投入部に入れられた紙葉類を繰り出す繰り出しローラと、
前記繰り出しローラを回転させる回転軸と、
前記回転軸まわりに対して回転可能に前記回転軸に支持され、紙葉類を束ねた結束部材によって回転される検知部材と、
前記検知部材の回転を検知する第1の検知部と、を備え、
前記検知部材は、前記回転軸の径方向において、前記繰り出しローラの外周面に沿って形成されて前記結束部材が接する接触面を有し、前記接触面が、前記繰り出しローラの前記外周面よりも所定距離だけ前記回転軸側に位置する、紙葉類繰出装置。
【請求項2】
前記検知部材は、前記投入部から繰り出される紙葉類の、前記回転軸に沿う辺の中央に対向して配置されている、
請求項1に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項3】
前記検知部材は、前記投入部から繰り出される紙葉類の、前記回転軸に沿う辺の両端側にそれぞれ対向して配置されている、
請求項1に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項4】
前記繰り出しローラによって前記投入部から繰り出された紙葉類を送る給送ローラと、
前記給送ローラと共に回転して紙葉類を1枚ずつに分離する分離ローラと、
紙葉類の繰り出し方向において前記給送ローラの下流側に配置され、前記繰り出し方向に対する紙葉類の斜行を検知する第2の検知部と、を更に備える、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項5】
前記給送ローラを駆動する駆動機構と、
前記駆動機構を制御する制御部と、を更に備え、
前記制御部は、前記第2の検知部によって紙葉類の斜行が検知されたときに前記給送ローラを逆転するように制御する、
請求項に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項6】
前記駆動機構は、単一のパルスモータを有し、当該パルスモータによって前記繰り出しローラ、前記給送ローラ、前記分離ローラを駆動する、
請求項に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項7】
前記投入部は、前記繰り出しローラ側へ向かって紙葉類を移動させる移動機構を有し、
前記制御部は、前記第2の検知部によって紙葉類の斜行が検知された後、紙葉類を前記繰り出しローラから離れる方向へ移動させるように前記移動機構を制御する、
請求項5または6に記載の紙葉類繰出装置。
【請求項8】
投入部に入れられた紙葉類を繰り出しローラによって前記投入部から繰り出し、前記繰り出しローラの回転軸まわりに対して回転可能に支持された検知部材が、紙葉類を束ね結束部材によって回転されたことを検知部により検知する、異物検知方法であって、
前記回転軸の径方向において、前記繰り出しローラの外周面に沿って形成されて前記結束部材が接する接触面を有し、前記接触面が、前記繰り出しローラの前記外周面よりも所定距離だけ前記回転軸側に位置する前記検知部材を用いる、異物検知方法
【請求項9】
紙葉類を入れる投入部と、
前記投入部に入れられた紙葉類を繰り出す繰り出しローラと、
前記繰り出しローラを回転させる回転軸と、
前記回転軸まわりに対して回転可能に前記回転軸に支持され、紙葉類を束ねた結束部材によって回転される検知部材と、
前記検知部材の回転を検知する第1の検知部と、を備え、
前記検知部材は、前記投入部から繰り出される紙葉類の、前記回転軸に沿う辺の両端側にそれぞれ対向して配置されている、紙葉類繰出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙葉類繰出装置及び異物検知方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、現金自動預払機(以下、ATM[Automated Teller Machine]と称する。)は、紙葉類としての紙幣を取り扱う紙幣取扱装置を備えている。紙幣取扱装置は、紙幣を出し入れするための入出金部を有しており、入出金部に、紙幣取扱装置の内部へ紙幣を送るための紙幣繰出装置が設けられている。この種の紙幣繰出装置は、紙幣を入れる投入部を有し、投入部に入れられた紙幣を1枚ずつに分離して繰り出すことにより、紙幣取扱装置の内部へ紙幣を送る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−180981号公報
【特許文献2】特開2016−33783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、紙幣繰出装置の投入部には、例えば、ゴムバンド、クリップ、ステープル等の結束部材によって束ねられた複数枚の紙幣が投入される場合がある。この場合、紙幣繰出装置は、結束部材で束ねられた紙幣を1枚ずつに分離することができず、結束部材で束ねられた紙幣を繰り出すことで、紙幣や結束部材が搬送路上に詰まったり、結束部材によって紙幣繰出装置が破損したりするおそれがあった。
【0005】
関連技術の紙幣繰出装置としては、例えば、カメラで結束部材を撮像して画像解析することにより結束部材を検知する構成や、磁気センサによってクリップ等の金属異物を検知する構成が知られている。しかし、このような構成を紙幣繰出装置に付加することで、紙幣繰出装置の製造コストがかさむ不都合がある。
【0006】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、紙葉類を束ねた結束部材を検知する構成を比較的安価に実現することができる紙葉類繰出装置及び異物検知方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の開示する紙葉類繰出装置の一態様は、紙葉類を入れる投入部と、前記投入部に入れられた紙葉類を繰り出す繰り出しローラと、前記繰り出しローラを回転させる回転軸と、前記回転軸まわりに対して回転可能に前記回転軸に支持され、紙葉類を束ねた結束部材によって回転される検知部材と、前記検知部材の回転を検知する第1の検知部と、を備える。前記検知部材は、前記回転軸の径方向において、前記繰り出しローラの外周面に沿って形成されて前記結束部材が接する接触面を有し、前記接触面が、前記繰り出しローラの前記外周面よりも所定距離だけ前記回転軸側に位置する。
【発明の効果】
【0008】
本願の開示する紙葉類繰出装置の一態様によれば、紙葉類を束ねた結束部材を検知する構成を比較的安価に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施例の紙幣取扱扱装置を示す模式図である。
図2図2は、実施例の紙幣取扱装置が有する紙幣繰出装置を示す模式図である。
図3図3は、実施例の紙幣繰出装置を示す平面図である。
図4図4は、実施例の紙幣繰出装置を示す側面図である。
図5図5は、実施例の紙幣繰出装置を、投入部側とは反対側から示す背面図である。
図6図6は、実施例の紙幣繰出装置において、第1の検知部が結束部材を検知したときの駆動機構の制御動作を説明するためのフローチャートである。
図7図7は、実施例の紙幣繰出装置において、第2の検知部が紙幣の斜行を検知したときの駆動機構の制御動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本願の開示する紙葉類繰出装置及び異物検知方法の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施例によって、本願の開示する紙葉類繰出装置及び異物検知方法が限定されるものではない。
【実施例】
【0011】
(紙幣取扱装置の構成)
図1は、実施例の紙幣取扱装置を示す模式図である。図1に示すように、実施例の紙幣取扱装置1は、紙幣3を入金及び出金するための入出金部5と、紙幣3を鑑別するための鑑別部6と、紙幣3を一時的に収容するための収容部としての複数の保留部7と、紙幣3を格納するための複数の格納部8と、を備える。また、紙幣取扱装置1は、入出金部5、鑑別部6、保留部7及び格納部8を相互に連結して紙幣3を双方向に搬送する双方向搬送路9を有する搬送機構10と、搬送機構10を制御する制御部11と、を備える。
【0012】
紙幣取扱装置1における入出金部5は、入金部と出金部とを兼ねるが、入金部と出金部がそれぞれ独立して設けられてもよい。実施例では、入金部と出金部とを含めて入出金部5と称する。保留部7は、巻取ドラム7aに紙幣3を巻き付けて収容する巻取ドラム型である。複数の格納部8には、紙幣3が金種毎に分類されて格納される。なお、紙幣取扱装置1は、保留部7及び格納部8の個数が複数に限定されるものではなく、少なくとも1つの保留部7及び格納部8を備えて構成されればよい。また、制御部11は、入出金部5、鑑別部6、保留部7、格納部8をそれぞれ制御する。
【0013】
説明の便宜上、図1以降において、紙幣取扱装置1の配置の一例として、紙幣取扱装置1の奥行き方向をX方向とし、紙幣取扱装置1の幅方向(図1の紙面に直交する方向)をY方向とし、紙幣取扱装置1の高さ方向をZ方向とする。紙幣取扱装置1において、X、Y、Z方向を限定するものではない。
【0014】
紙幣3としては、例えばポリマー等の樹脂材料によって形成された紙幣も含む。また、本発明に係る紙幣取扱装置1について、例えば、本実施例では、紙葉類の一例として、紙幣3を用いて説明するが、紙幣3に限定されるものではない。紙葉類としては、例えば、紙幣3以外に小切手、金券、有価証券、バウチャー券、その他の金銭的価値を有する媒体も含まれる。
【0015】
(紙幣繰出装置の構成)
図1に示すように、入出金部5には、入出金部5へ入金された紙幣3を双方向搬送路9へ繰り出すための紙幣繰出装置12が設けられている。紙幣繰出装置12は、制御部11に接続されており、制御部11によって制御される。
【0016】
図2は、実施例の紙幣取扱装置1が有する紙幣繰出装置12を示す模式図である。図3は、実施例の紙幣繰出装置12を示す平面図である。図4は、実施例の紙幣繰出装置12を示す側面図である。図5は、実施例の紙幣繰出装置12を、投入部側とは反対側から示す背面図である。
【0017】
図2に示すように、実施形態の紙幣繰出装置12は、紙幣3を入れる投入部15と、投入部15に入れられた紙幣3を繰り出す繰り出しローラとしての複数のピックローラ16と、給送ローラとしての複数のフィードローラ17と、フィードローラ17と共に回転して紙幣を1枚ずつに分離する複数の分離ローラ18と、フィードローラ17と共に回転して紙幣3を搬送する複数の搬送ローラ19と、を備える。
【0018】
また、図2に示すように、紙幣繰出装置12は、ピックローラ16を支持する回転軸16aと、フィードローラ17を支持する回転軸17aと、分離ローラ18を支持する回転軸18aと、搬送ローラ19を支持する回転軸19aと、を備える。各々複数のピックローラ16、フィードローラ17、分離ローラ18及び搬送ローラ19は、各回転軸16a、17a、18a、19aの軸方向に対して所定の間隔をあけてそれぞれ配置されている。各回転軸16a、17a、18a、19aは、互いに平行に配置されており、図示しないフレームに支持されている。各回転軸16a、17a、18a、19aは、後述する駆動機構34によって駆動されることで、ピックローラ16、フィードローラ17、分離ローラ18及び搬送ローラ19をそれぞれ回転させる。
【0019】
投入部15には、例えば矩形状の紙幣3の長辺がピックローラ16の回転軸16aに沿う向きとされ、短辺がピックローラ16によって繰り出される方向に沿う向きで紙幣3が入れられる。言い換えると、投入部15には、紙幣3の厚み方向がX方向に沿って向き、紙幣3の長辺方向がY方向に沿って向き、紙幣3の短辺方向がZ方向に沿って向く姿勢で入れられる。また、投入部15には、紙幣3が互いに向きを揃えて重ねられた状態で入れられる。
【0020】
図2に示すように、投入部15は、入金時に投入部15に入れられた紙幣3を、ピックローラ16側へ向かってX方向に移動させる移動機構22を有する。移動機構22は、紙幣3が長辺方向を下方へ向けて載置される底板23と、投入部15を開閉可能に覆う天板24と、底板23に沿って往復移動可能に設けられたステージ25と、ステージ25によって移動された紙幣3をフィードローラ17と分離ローラ18との間へ案内するガイド板26と、を有する。
【0021】
移動機構22は、ステージ25をX方向へ移動することで、紙幣3をピックローラ16側へ所定の押圧力で押圧し、ピックローラ16の外周面によって紙幣が適正に繰り出される。また、移動機構22は、投入部15に投入された紙幣3を全て繰り出した後、制御部11によって、X方向においてピックローラ16側から離れた初期位置へステージ25を戻すように制御される。また、投入部15は、出金時に紙幣取扱装置1の格納部8から出金される紙幣3も収容されるように構成されている。
【0022】
(検知部材及び第1の検知部の構成)
また、図3図4及び図5に示すように、紙幣繰出装置12は、紙幣3を結束する結束部材20との接触によってピックローラ16の回転軸16aまわりに回転される検知部材30と、検知部材30の回転を検知する複数の第1の検知部31と、を備える。
【0023】
図3及び図5に示すように、検知部材30は、回転軸16a方向における両端側に配置される両端側検知部材30−1、30−2と、回転軸16a方向における中央側に配置される中央側検知部材30−3と、を含んでいる。第1の検知部31は、両端側検知部材30−1、30−2の回転をそれぞれ検知する第1の両端側検知部31−1、31−2と、中央側検知部材30-3の回転を検知する第1の中央側検知部31-3と、を含んでいる。以下、説明の便宜上、両端側検知部材30−1、30−2及び中央側検知部材30−3に共通する説明については、検知部材30として説明する。同様に、第1の両端側検知部31−1、31−2及び第1の中央側検知部31−3に共通する説明については、第1の検知部31として説明する。
【0024】
図3及び図5に示すように、両端側検知部材30−1、30−2は、回転軸16aの軸方向において各ピックローラ16の位置よりも回転軸16aの両端側に配置されている。中央側検知部材30−3は、回転軸16aの軸方向に間隔をあけた2つのピックローラ16の間に配置されている。
【0025】
検知部材30(30−1、30−2、30−3)は、例えば樹脂材料、金属材料によって略半円筒状に形成されており、図3図4及び図5に示すように、ピックローラ16の回転軸16aまわりに対して回転可能に回転軸16aに支持される回転部30aと、第1の検知部31の検知光を遮るための遮光部30bと、を有する。
【0026】
検知部材30の回転部30aは、例えば軸受け部材(図示せず)を介して回転軸16aに回転可能に設けられている。回転部30aには、回転軸16aまわりにおいて所定の姿勢になるように付勢する付勢部材(図示せず)が設けられてもよく、結束部材20によって回転部30aが付勢部材の付勢力に抗して回転されるように構成されてもよい。検知部材30が有する遮光部30bは、回転軸16a方向に対して厚みを有する板状に形成されており、回転部30aの外周面から回転軸16aの径方向へ延びている。
【0027】
検知部材30が有する回転部30aの外周面は、結束部材20が接する接触面Cとして機能する。接触面Cは、図3及び図4に示すように、回転軸16a(ピックローラ16)の径方向において、ピックローラ16の外周面Dに沿って形成されている。また、回転軸16aの径方向において、接触面Cは、ピックローラ16の外周面Dよりも所定距離Rだけ回転軸16aの中心側に位置する。言い換えると、回転部30aの接触面Cは、ピックローラ16の径方向において、ピックローラ16の外周面Dに対して所定量の段差をなすように、ピックローラ16よりも小径に形成されている。
【0028】
本実施例における接触面Cは、上述の所定距離Rが例えば1mm程度に設定されており、検知対象とする結束部材20の厚み(例えば束ねた紙幣3の厚み方向に対するゴムバンド等の厚み)に基づいて設定される。また、接触面Cは、結束部材20との接触時の作動性を高めるために、例えば、微細な凹凸等の粗面加工が接触面Cに施されてもよく、摩擦係数を高めるゴム材が接触面Cに設けられてもよい。
【0029】
なお、検知部材30の回転部30aにおいて、回転軸16a方向に対する接触面Cの幅が、紙幣3の長辺方向において結束部材20を検知可能な検知範囲となり、幅を広くすることが好ましい。しかし、接触面Cの幅を大きくすることで検知部材30の回転抵抗が増えるおそれがあるので、検知部材30の回転動作の信頼性と、検知範囲の大きさとを相互に考慮して適正に設定されている。
【0030】
第1の検知部31は、図4に示すように、回転軸16aまわりに回転する検知部材30の遮光部30bの回転軌跡上において、検知部材30が回転軸16aまわりに回転したときに遮光部30bが進入する所定位置に配置されており、制御部11に接続されている。第1の検知部31としては、例えば光学センサが用いられており、図3及び図5に示すように、検知光を発する発光部31aと、発光部31aが発した検知光を受光する受光部31bと、を有する。発光部31aと受光部31bは、回転軸16aまわりに回転する検知部材30の遮光部30bが通過可能な間隙をあけて、互いに対向して配置されている。
【0031】
第1の検知部31は、検知部材30が図4に示すA方向へ回転したときに、検知部材30の遮光部30bが発光部31aと受光部31bとの間へ進入し、検知光を遮ることで検知部材30の回転を検知する。この検知とは逆に、第1の検知部31は、検知部材30が回転したときに、検知部材30の遮光部30bが発光部31aと受光部31bとの間から抜け出て、検知光の斜行状態が解消されることで検知部材30の回転を検知してもよい。なお、第1の検知部31は、光学センサに限定されるものではなく、検知部材30の回転を検知する機械式センサが用いられてもよい。
【0032】
紙幣3を束ねる結束部材20としては、例えば、ゴムバンド、輪ゴム、クリップ、ステープル等の各種の結束部材20を含むが、検知部材30(30−1、30−2、30−3)が検知対象とする結束部材20としては、弾性材料によって環状や帯状に形成された特にゴムバンド、輪ゴム等の結束部材20を検知する。なお、検知部材30は、ゴムバンド、輪ゴム等の結束部材20を検知するものに限定されるものではなく、例えば、ゴム製のクリップや、表面が粗面加工された金属製のクリップ等のように、表面が平滑な金属製のクリップ等に比べて、表面の摩擦係数が高い結束部材20も検知可能である。
【0033】
なお、本実施例の紙幣繰出装置12では、紙幣3の長辺方向における3つの検知範囲で結束部材20を検知するために3つの両端側検知部材30−1、30−2及び中央側検知部材30−3を有するが、この構成に限定するものではない。紙幣繰出装置12は、中央側検知部材30−3のみ、または両端側検知部材30−1、30−2のみを有して構成されてもよい。また、紙幣繰出装置12は、例えば4つ以上の検知部材30が回転軸16a方向に対して等間隔に配置されてもよく、結束部材20の検知精度が高められる。
【0034】
(第2の検知部の構成)
また、紙幣繰出装置12は、図4及び図5に示すように、ピックローラ16による紙幣3の繰り出し方向に対する紙幣3の斜行を検知する一組の第2の検知部32−1、32−2と、フィードローラ17等を駆動する駆動機構34と、を備える。
【0035】
第2の検知部32−1、32−2は、ピックローラ16による紙幣3の繰り出し方向においてフィードローラ17の下流側に配置されている。第2の検知部32−1、32−2は、例えば光学センサが用いられており、図2及び図4に示すように、検知光を発する発光部32aと、発光部32aが発した検知光を受光する受光部32bと、を有する。発光部32aと受光部32bは、フィードローラ17と搬送ローラ19によって送られた紙幣3が通過可能な間隙をあけて、互いに対向して配置されている。
【0036】
第2の検知部32−1、32−2は、フィードローラ17と搬送ローラ19によって送られた紙幣3の通過を検知する位置センサとして機能すると共に、フィードローラ17と搬送ローラ19によって送られた紙幣3の斜行を検知する斜行センサとしても機能する。一組の第2の検知部32−1、32−2は、フィードローラ17の回転軸17a方向(搬送ローラ19の回転軸19a方向)に対して所定間隔をあけて配置されており、取り扱う紙幣3の長辺の長さに基づいて所定間隔が設定されている。
【0037】
第2の検知部32−1、32−2は、例えばクリップやステープル等の結束部材20が上述の第1の検知部31(31−1、31−2、31−3)によって検知されずに、このような結束部材20によって束ねられた紙幣3がピックローラ16によって繰り出されたときに、結束部材20によって束ねられた紙幣3を検知する。例えば、紙幣3の外周の一端がクリップやステープル等の結束部材20で止められて束ねられた複数の紙幣3は、複数枚のうちの1枚の紙幣3が結束部材20から外れ、フィードローラ17と分離ローラ18によって1枚に分離されて送られる場合がある。このような場合には、結束部材20の結束力の影響により、紙幣3が繰り出し方向に対して真っ直ぐに送られず、紙幣3が繰り出し方向に対して斜行した状態でフィードローラ17と搬送ローラ19とで送られることになる。また、クリップやステープル等の結束部材20で束ねられた複数枚の紙幣3がフィードローラ17によって送られた場合、摩擦係数が紙幣3と異なる結束部材20の存在や、結束部材20で束ねられた複数枚の紙幣3全体の重心位置が長辺方向における一端側へ片寄る等の影響により、紙幣3が繰り出し方向に対して斜行した状態で送られやすい。
【0038】
このように紙幣3が斜行して送られた場合、一組の第2の検知部32−1、32−2によって紙幣3がそれぞれ検知されたタイミングの時間差に基づいて紙幣の斜行の有無が判定される。時間差が閾値を超えたとき、制御部11は、紙幣3に斜行が生じたと判定される。
【0039】
このように第2の検知部32−1、32−2は、結束部材20で束ねられた紙幣3が送られたときに生じる紙幣3の斜行を検知することにより、結果的に結束部材20の有無を検知することが可能とされている。第2の検知部32−1、32−2は、結束部材20として、第1の検知部31によって検知されなかったゴムバンド、輪ゴム以外の金属製のクリップやステープルで束ねられた紙幣3の通過を検知する。
【0040】
駆動機構34は、上述した制御部11によって制御される。図4及び図5に示すように、駆動機構34は、駆動源として単一のパルスモータ(ステッピングモータ)35を有しており、パルスモータ35によってピックローラ16、フィードローラ17、分離ローラ18及び搬送ローラ19をそれぞれ駆動する。これにより、駆動機構34は、単一のパルスモータ35を用いてピックローラ16等をそれぞれ駆動することで、制御部11からの制御信号に応じて、紙幣3を繰り出し方向へ送る正転の駆動状態から停止、停止から逆転の駆動状態へと切り替えを迅速に行うことが可能とされると共に、駆動機構34の構成が簡素化されている。
【0041】
また、図4及び図5に示すように、駆動機構34は、ピックローラ16の回転軸16aに設けられたプーリ37と、フィードローラ17の回転軸17aに設けられたプーリ38と、これらのプーリ37、38間に掛け渡された駆動ベルト39と、を有する。駆動機構34は、駆動ベルト39を介して、ピックローラ16とフィードローラ17とを連動させて回転駆動する。
【0042】
(第1の検知部による結束部材の検知動作)
まず、紙幣繰出装置12では、結束部材20で束ねられていない紙幣3が投入部15へ入れられた場合、移動機構22のステージ25によって紙幣3がピックローラ16側へ圧接されることで、紙幣3がピックローラ16の外周面に接触し、紙幣3がピックローラ16によって繰り出される。この場合、検知部材30の接触面Cは、ピックローラ16の径方向において、ピックローラ16の外周面よりも回転軸16a側に位置して窪んでいる。このため、ピックローラ16に押圧された紙幣3が接触面Cに接することがなく、紙幣3によって検知部材30が回転されない。したがって、紙幣3が繰り出される場合には、検知部材30が回転しないので、第1の検知部31よって結束部材20が検知されない。
【0043】
一方、紙幣繰出装置12では、ゴムバンド等の結束部材20で束ねられた紙幣3が投入部15へ入れられた場合も、この紙幣3が移動機構22のステージ25によってピックローラ16側へ圧接される。この場合、紙幣3がピックローラ16の外周面に接触すると共に、結束部材20によって束ねられた紙幣3の厚み方向(X方向)に対して突出する結束部材20が、図4に示すように、検知部材30の接触面Cに接触する。結束部材20で束ねられた紙幣3が、ピックローラ16によって繰り出されるのに伴い、紙幣3と共に結束部材20が移動する。このとき、結束部材20が紙幣3と共に移動することで、接触面Cに押圧された結束部材20の摩擦力によって、検知部材30を回転軸16aまわりのA方向へ回転させる。検知部材30が回転することで、遮光部30bが第1の検知部31の検知光を遮り、第1の検知部31によって検知部材30の回転が検知される。
【0044】
一般に、複数枚の紙幣3を束ねるゴムバンド等の結束部材20は、紙幣3の長辺方向における中央に取り付けられる場合が多いので、主に中央側検知部材30−3によってゴムバンド等の結束部材20が検知される。また、結束部材20が紙幣3の長辺方向の一端側に取り付けられた場合であっても、両端側検知部材30−1、30−2のいずれかによってゴムバンド等の結束部材20が検知される。
【0045】
(第1の検知部の検知結果に基づく駆動機構の制御動作)
図6は、第1の検知部31が結束部材20を検知したときの駆動機構34の制御動作を説明するためのフローチャートである。上述のように紙幣繰出装置12では、図6に示すように、投入部15に入れられた紙幣3をピックローラ16によって繰り出し(ステップS1)、制御部11が、第1の検知部31の検知結果に基づいて検知部材30の回転の有無を判定する(ステップS2)。制御部11は、検知部材30の回転を検知しない場合(ステップS2のNo)、ピックローラ16によって紙幣3の繰り出し動作を続ける。
【0046】
一方、第1の検知部31によって検知部材30の回転が検知された場合には(ステップS2のYes)、制御部11は、駆動機構34による紙幣3の繰り出し動作を停止し(ステップS3)、駆動機構34によってピックローラ16を逆転させる(ステップS4)。最後に、結束部材20で束ねられた紙幣3をピックローラ16から離れる方向へ移動させるように、移動機構22によってステージ25を初期位置へ戻し(ステップS5)、結束部材20で束ねられた紙幣3を利用者へ返却する。なお、このとき、制御部11は、図示しない表示部や警告灯等によって結束部材20の取り外しを利用者へ促すように通知する制御を行ってもよい。
【0047】
(第2の検知部による結束部材の検知動作)
紙幣繰出装置12では、紙幣3を束ねたクリップ、ステープル等の結束部材20が第1の検知部31によって検知されずに、このような結束部材20で束ねられた紙幣3がピックローラ16によって繰り出され、フィードローラ17と搬送ローラ19によって送られる場合がある。この場合、クリップ、ステープル等で束ねられた紙幣3は、上述したように繰り出し方向に対して斜行しやすいので、一組の第2の検知部32−1、32−2によって紙幣3の斜行の有無を検知することで、制御部11が結束部材20の有無を判定する。すなわち、制御部11は、第2の検知部32−1、32−2の検出結果に基づいて紙幣3が斜行していると判定した場合、結束部材20が有ると判定する。また、制御部11は、第2の検知部32−1、32−2の検知結果に基づいて紙幣3が斜行していると判定しない場合、結束部材20が無いと判定する。
【0048】
(第2の検知部の検知結果に基づく駆動機構の制御動作)
図7は、実施例の紙幣繰出装置12において、第2の検知部32−1、32−2が紙幣3の斜行を検知したときの駆動機構34の制御動作を説明するためのフローチャートである。上述のように紙幣繰出装置12では、図7に示すように、ピックローラ16側から送られた紙幣3をフィードローラ17と搬送ローラ19によって送り(ステップS11)、制御部11が、第2の検知部32−1、32−2の検知結果に基づいて紙幣3の斜行の有無を判定する(ステップS12)。制御部11は、紙幣3が斜行していると判定しない場合(ステップS12のNo)、フィードローラ17と搬送ローラ19によって紙幣3の繰り出し動作を続ける。
【0049】
一方、制御部11は、第2の検知部32−1、32−2の検知結果に基づいて紙幣3が斜行していると判定した場合(ステップ12のYes)、駆動機構34の紙幣3の繰り出し動作を停止し(ステップS13)、駆動機構34によってフィードローラ17及び搬送ローラ19、分離ローラ18、ピックローラ16を逆転させる(ステップS14)。これにより、紙幣3及び結束部材20は投入部15側へ戻される。最後に、結束部材20で束ねられた紙幣3をピックローラ16から離れる方向へ移動させるように、移動機構22によってステージ25を初期位置へ戻し(ステップS15)、結束部材20で束ねられた紙幣3を利用者へ返却する。このとき、上述と同様に制御部11は、表示部や警告灯等によって結束部材20の取り外しを利用者へ促すように通知する制御を行ってもよい。
【0050】
(異物検知方法)
以上のように構成された紙幣繰出装置12を用いて結束部材20を検知する実施例の異物検知方法について説明する。実施例の異物検知方法は、投入部15に入れられた紙幣3をピックローラ16によって投入部15から繰り出し、ピックローラ16の回転軸16aまわりに対して回転可能に支持された検知部材30が、紙幣3を束ねる結束部材20によって回転されたことを第1の検知部31により検知する。
【0051】
上述のように実施例の紙幣繰出装置12は、ピックローラ16を回転させる回転軸16aに対して回転可能に回転軸16aに支持されて結束部材20によって回転軸16aまわりに回転される検知部材30と、検知部材30の回転を検知する第1の検知部31と、を備える。これにより、紙幣繰出装置12は、例えば紙幣3を束ねたゴムバンド、輪ゴム等の結束部材20を検知することが可能になる。したがって、紙幣繰出装置12によれば、磁気センサを用いて金属探知する構成や、カメラを用いて結束部材20を画像解析する構成を付加することで紙幣繰出装置12の製造コストの増加を招くことを避け、結束部材20を検知する構成を比較的安価に実現できる。
【0052】
また、実施例の紙幣繰出装置12の検知部材30は、ピックローラ16の回転軸16aの径方向において、ピックローラ16の外周面Dに沿って形成されて結束部材20が接する接触面Cを有し、接触面Cが、ピックローラ16の外周面Dよりも所定距離Rだけ回転軸16a側に位置する。これにより、結束部材20で結束されていない紙幣3によって検知部材30が回転することなく、結束部材20を適正に検知することが可能となる。したがって、検知部材30の動作信頼性、結束部材20の検知精度を高めることができる。
【0053】
また、実施例の紙幣繰出装置12の検知部材30は、投入部15から繰り出される紙幣3の、回転軸16aに沿う辺の中央に対向して配置されている。これにより、検知部材30によって、例えば紙幣3の長辺の中央に取り付けられた結束部材20を適正に検知することができる。一般に、ゴムバンド等の結束部材20は紙幣3の長辺の中央に取り付けられることが多く、このような結束部材20の検知動作の信頼性が高められる。
【0054】
また、実施例の紙幣繰出装置12の検知部材30は、投入部15から繰り出される紙幣3の、回転軸16aに沿う辺の両端側にそれぞれ対向して配置されている。これにより、検知部材30によって、例えば紙幣3の長辺の両端側の一方に取り付けられた結束部材20を適正に検知することができる。したがって、例えば紙幣3の長辺の一端側に片寄って取り付けられたクリップ等の結束部材20の検知精度を高めることができる。
【0055】
また、実施例の紙幣繰出装置12は、紙幣3の繰り出し方向においてフィードローラ17の下流側に配置されて繰り出し方向に対する紙幣3の斜行を検知する第2の検知部32を備える。これにより、第1の検知部31によって検知されなったクリップ、ステープル等の結束部材20で束ねられた紙幣3の斜行に基づいて、このような結束部材20の有無を検知することが可能となる。したがって、結束部材20の検知精度を更に高めることができる。
【0056】
また、実施例の紙幣繰出装置12の制御部11は、第2の検知部32によって紙幣3の斜行が検知されたときにフィードローラ17を逆転するように制御する。これによって、結束部材20で束ねられた紙幣3を投入部15側へ戻すことが可能になる。
【0057】
また、実施例の紙幣繰出装置12の駆動機構34は、単一のパルスモータ35によってピックローラ16、フィードローラ17、分離ローラ18を駆動する。このように、1つのパルスモータ35でピックローラ16、フィードローラ17、分離ローラ18を駆動することで、駆動機構34を簡素化し、パルスモータ35によって迅速に逆転させて、結束部材20で束ねられた紙幣3を利用者へ返却する動作に移ることができる。
【0058】
また、実施例の紙幣繰出装置12の制御部11は、第2の検知部32によって紙幣3の斜行が検知された後、紙幣3をピックローラ16から離れる方向へ移動させるように移動機構22を制御する。これにより、移動機構22によって紙幣3を利用者へ返却することができる。
【符号の説明】
【0059】
1 紙幣取扱装置
3 紙幣
11 制御部
12 紙幣繰出装置
15 投入部
16 ピックローラ(繰り出しローラ)
16a 回転軸
17 フィードローラ(給送ローラ)
18 分離ローラ
20 結束部材
22 移動機構
30(30−1、30−2、30−3) 検知部材
31(31−1、31−2、31−3) 第1の検知部
32−1、32−2 第2の検知部
34 駆動機構
35 パルスモータ
C 接触面
D 外周面
R 所定距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7