(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676774
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】減衰器カプセル、圧力脈動減衰器、および高圧燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
F02M 59/44 20060101AFI20200330BHJP
F02M 55/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
F02M59/44 E
F02M55/00 E
F02M59/44 A
F02M59/44 V
F02M59/44 S
F02M59/44 N
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2018-545342(P2018-545342)
(86)(22)【出願日】2017年2月7日
(65)【公表番号】特表2019-510915(P2019-510915A)
(43)【公表日】2019年4月18日
(86)【国際出願番号】EP2017052660
(87)【国際公開番号】WO2017148661
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2018年8月28日
(31)【優先権主張番号】102016203217.8
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】508097870
【氏名又は名称】コンチネンタル オートモーティヴ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Continental Automotive GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ヤヴズ クアト
【審査官】
小笠原 恵理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−220198(JP,A)
【文献】
特開2015−021468(JP,A)
【文献】
特開2012−132400(JP,A)
【文献】
特表2006−521487(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0103985(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 59/44
F02M 55/00
F02M 59/00
F02M 37/00
F04B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料噴射システムにおける高圧燃料ポンプ(10)の圧力脈動減衰器(22)のための減衰器カプセル(24)であって、少なくとも1つのダイヤフラム(30)によって形成された減衰容積(28)を有しており、前記ダイヤフラム(30)は、圧力脈動により変形軸線(36)に沿って変形可能な、前記減衰容積(28)を形成するための変形領域(34)と、該減衰容積(28)を閉鎖する閉鎖要素(32)に前記ダイヤフラム(30)を接続するための接続領域(40)とを有しており、
前記ダイヤフラム(30)は異形成形領域(42)を有しており、該異形成形領域は、前記変形領域(34)を、前記変形軸線(36)の方向で、前記減衰器カプセル(24)の取り付け状態で前記減衰器カプセル(24)を保持する保持要素から離間するためのスペーサ(44)を形成し、
前記変形領域(34)と、前記接続領域(40)と、前記異形成形領域(42)とは、一体のダイヤフラム構成部分(46)として形成されており、
前記異形成形領域(42)は横断面でU字形成形部(62)として形成されており、第1のU字脚部(68)は前記接続領域(40)を形成しており、第2のU字脚部(70)は、前記減衰器カプセル(24)を前記保持要素に支持するための支持領域(74)を形成している、減衰器カプセル(24)。
【請求項2】
燃料噴射システムにおける高圧燃料ポンプ(10)の圧力脈動減衰器(22)のための減衰器カプセル(24)であって、少なくとも1つのダイヤフラム(30)によって形成された減衰容積(28)を有しており、前記ダイヤフラム(30)は、圧力脈動により変形軸線(36)に沿って変形可能な、前記減衰容積(28)を形成するための変形領域(34)と、該減衰容積(28)を閉鎖する閉鎖要素(32)に前記ダイヤフラム(30)を接続するための接続領域(40)とを有しており、
前記ダイヤフラム(30)は異形成形領域(42)を有しており、該異形成形領域は、前記変形領域(34)を、前記変形軸線(36)の方向で、前記減衰器カプセル(24)の取り付け状態で前記減衰器カプセル(24)を保持する保持要素から離間するためのスペーサ(44)を形成し、
前記変形領域(34)と、前記接続領域(40)と、前記異形成形領域(42)とは、一体のダイヤフラム構成部分(46)として形成されており、
前記異形成形領域(42)は横断面でS字形成形部(76)として形成されており、前記S字形成形部は、前記接続領域(40)における、前記ダイヤフラム(30)と前記閉鎖要素(32)との間の接続シーム(80)に予荷重を加えるための接触ループ(78)を有している、減衰器カプセル(24)。
【請求項3】
前記異形成形領域(42)はばね要素(50)として形成されており、前記変形軸線(36)に対して平行な方向でばね弾性的に形成されている、請求項1または2記載の減衰器カプセル(24)。
【請求項4】
前記異形成形領域(42)は、作動中に燃料が流れることができる貫通孔(52)を有している、請求項1から3までのいずれか1項記載の減衰器カプセル(24)。
【請求項5】
前記変形領域(34)、前記接続領域(40)、および前記異形成形領域(42)は、前記変形軸線(36)に対して平行に延在する、前記減衰器カプセル(24)の中心軸線(54)を中心として回転対称的に配置および/または形成されている、請求項1から4までのいずれか1項記載の減衰器カプセル(24)。
【請求項6】
前記異形成形領域(42)は、前記中心軸線(54)を中心として回転対称的に配置された異形成形リング(60)として形成されており、前記異形成形リングは、中断開口(64)により離間された複数の異形成形部分リング(66)から形成されている、請求項5記載の減衰器カプセル(24)。
【請求項7】
前記ダイヤフラム(30)と前記閉鎖要素(32)とは、前記減衰容積(28)を形成するために気密に互いに接続されており、前記減衰容積(28)にはガス(38)が配置されている、請求項1から6までのいずれか1項記載の減衰器カプセル(24)。
【請求項8】
前記閉鎖要素(32)は、前記ダイヤフラム(30)に対して鏡像対称的に形成された変形領域(34)と、該ダイヤフラム(30)に対して鏡像対称的に形成された接続領域(40)とを有する閉鎖ダイヤフラム(56)として形成されており、該閉鎖ダイヤフラムは、ダイヤフラム(30)に対して完全に鏡像対称的に形成されている、請求項1から7までのいずれか1項記載の減衰器カプセル(24)。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか1項記載の減衰器カプセル(24)を有する、高圧燃料ポンプ(10)用の圧力脈動減衰器(22)。
【請求項10】
請求項9記載の圧力脈動減衰器(22)を有する、燃料噴射システム内の燃料に高圧を付与するための高圧燃料ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高圧燃料ポンプの圧力脈動減衰器用の減衰器カプセル、このような減衰器カプセルを有する圧力脈動減衰器、ならびに圧力脈動減衰器を有する高圧燃料ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧燃料ポンプは、内燃機関の燃焼室に燃料を噴射する燃料噴射システム内で、燃料に高圧を付与するために使用される。このとき圧力は、例えばガソリン内燃機関では150bar〜400barの範囲にあり、ディーゼル内燃機関では1500bar〜2500barの範囲にある。各燃料において生成することのできる圧力が高くなるほど、内燃機関における燃料の燃焼中に発生するエミッションは減少し、これは特に、エミッションの低減がますます所望されるという背景のもとでは特に好ましいことである。
【0003】
各燃料において高圧を得ることができるように、高圧燃料ポンプは典型的にはピストンポンプとして形成されており、この場合ポンプピストンは圧力室内で並進運動を行い、燃料を周期的に圧縮および膨張する。したがって、このようなピストンポンプにより主に生じる不均一な圧送により、高圧燃料ポンプの低圧領域における体積流において変動が生じ、これはシステム全体における圧力変動につながる。このような変動により、高圧燃料ポンプにおいては充填損失が生じる恐れがあり、これにより、燃焼室で必要な燃料量の正確な調量が難しくなる。さらに、生じる圧力脈動により、例えば高圧燃料ポンプへの供給管路などのポンプの構成要素に振動が引き起こされ、このような振動は、望ましくない騒音、または最悪の場合、様々な構成要素の損傷も引き起こす恐れがある。
【0004】
したがって、通常、高圧燃料ポンプの低圧領域には、圧力脈動減衰器が設けられる。圧力脈動減衰器は、体積流における変動を補償し、したがって生じる圧力脈動を低減する液圧アキュムレータとして機能する。この目的のために、ガス体積を燃料から分離する、例えば変形可能な要素が使用される。このような変形可能な要素は、例えば、少なくとも1つのダイヤフラムによって画成され減衰容積を有する減衰器カプセルとして形成することができる。高圧燃料ポンプの例えば低圧領域において圧力が上昇すると、減衰器カプセルが変形し、このとき、その内部に閉じ込められているガス体積が圧縮され、燃料の過剰な液体のためにスペースを提供する。その後の時点で圧力が再び下がると、ガスは再び膨張し、したがって貯えられた燃料液が再び解放される。
【0005】
上述したような減衰器カプセルは、主として、金属から成る少なくとも1つのダイヤフラムを有している。このダイヤフラムにより減衰容積が少なくとも部分的に画成され、減衰容積にはガスが充填され、閉じ込められている。減衰器カプセルは、圧力脈動減衰器内に通常、いわゆるスペーサスリーブによって取り付けられ、このスペーサスリーブは一方ではスペーサ部材として機能し、他方では組み付けの際に予荷重をかけられて、例えば溶接によりその内部に減衰容積が閉じ込められている接続領域の負荷を軽減する。
【0006】
主として深絞り部品または打ち抜き部品として製造されるこのようなスペーサスリーブの製造は、比較的手間がかかり、したがってコストがかかる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、高圧燃料ポンプの圧力脈動減衰器内に減衰器カプセルを取り付けるための選択的な可能性を提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1の特徴を有する減衰器カプセルによって解決される。
【0009】
このような減衰器カプセルを有する圧力脈動減衰器、ならびにこのような圧力脈動減衰器を有する高圧燃料ポンプは、他の独立請求項の対象である。
【0010】
本発明の有利な構成は、従属請求項の対象である。
【0011】
燃料噴射システムにおける高圧燃料ポンプの圧力脈動減衰器のための減衰器カプセルは、少なくとも1つのダイヤフラムによって形成された減衰容積を有しており、ダイヤフラムは、圧力脈動により変形軸線に沿って変形可能な、減衰容積を形成するための変形領域と、減衰容積を閉鎖する閉鎖要素にダイヤフラムを接続するための接続領域とを有している。ダイヤフラムは異形成形領域を有しており、異形成形領域は、変形領域を、変形軸線の方向で、減衰器カプセルの取り付け状態で減衰器カプセルを保持する保持要素から離間するためのスペーサを形成している。変形領域と接続領域と異形成形領域とは、一体のダイヤフラム構成部分として形成されている。
【0012】
減衰カプセルがスペーサとは別個に形成されている公知の装置とは異なり、ダイヤフラムが、それ自体スペーサを形成することができるように形成されている異形成形領域を有することにより、減衰器カプセルをスペーサスリーブの機能と組み合わせることが提案される。これにより、従来のように、減衰器カプセルと付加的なスペーサとを組み付けるのではなく、減衰器カプセル自体を圧力脈動減衰器に組み付けるだけでよいので、組み付けの手間は著しく減じられる。全体として、部品の取り扱いも著しく簡単になるので、このことは全体として著しいコスト削減につながる。さらに、スペーサスリーブの機能を減衰器カプセル自体に、すなわちダイヤフラムにまとめることによって構成部品コストも減らすことができる。
【0013】
好適には、異形成形領域はばね要素として形成されており、異形成形領域は特に、変形軸線に対して平行な方向でばね弾性的に形成されている。
【0014】
これまで使用されていたスペーサスリーブは2つの役目を有している。すなわち、一方では減衰器カプセルに予荷重を加えて、他方では高圧燃料ポンプの圧力脈動減衰器において減衰器カプセルをセンタリングする。これら両機能を満たすために、スペーサスリーブはしばしば僅かにばね弾性的に形成されている。したがって、もともとのスペーサスリーブの全ての機能を引き受けるべき異形成形領域も同じくばね要素として形成されていると好適である。
【0015】
好適には、異形成形領域は、作動中燃料が流れることができる貫通孔を有している。特に好適には、これらの貫通孔は、燃料が異形成形領域を半径方向で貫流することができるように配置されている。
【0016】
好適には、変形領域、接続領域、および異形成形領域は、変形軸線に対して平行に延在する、減衰器カプセルの中心軸線を中心として回転対称的に配置および/または形成されている。
【0017】
変形軸線は単に、減衰器カプセルのダイヤフラムが変形する方向を規定する。ダイヤフラムの変形は通常、その縁部では、中心軸線が延在する中心よりも僅かである。ダイヤフラムの最大の変形が予想されるこの領域では、変形軸線と中心軸線とがほぼ一致している。中心軸線を中心としてダイヤフラムを回転対称的に構成することにより、好適には、圧力脈動減衰器の内側でのダイヤフラムのセンタリングが容易になる。
【0018】
好適には、異形成形領域は、中心軸線を中心として回転対称的に配置された異形成形リングとして形成されており、この異形成形リングは特に、中断開口によって離間された複数の異形成形部分リングから形成されている。異形成形リングは好適には特に簡単に製造することができ、このことは、一緒になって異形成形リングを形成する異形成形部分リングにも同様に当てはまる。これらの異形成形部分リングは、好適には中断開口によって互いに離間され、これは、スペーサの機能を形成する領域が、すなわち異形成形領域が360°環状に閉じられているのではなく、異形成形リングの剛性を減らし、したがってばね効果を高めるためにこれら中断開口を有していることを意味する。さらにこれにより、燃料がこの領域を好適には良好に貫流することができる。
【0019】
好適な構成では、異形成形領域は横断面でU字形成形部として形成されている。この場合、第1のU字脚部は接続領域を形成しており、第2のU字脚部は減衰器カプセルを保持要素に支持するための支持領域を形成している。
【0020】
原則的にはもともとのスペーサスリーブの機能を担っている異形成形リングが、公知のスペーサスリーブと同様に、これにより、付加的な第2の減衰器カプセルの良好なセンタリングを提供することができるように構成されていると、特に好適である。このために、U字形成形部として構成されている異形成形領域が、減衰容積を形成するためにダイヤフラムに接続されている閉鎖要素を取り囲んでいると特に好適である。したがって、閉鎖要素に隣接して、別の減衰器カプセルを、異形成形領域を介して、特にU字形成形部の支持領域を介して、センタリングすることができる。
【0021】
特に好適には、U字形成形部は丸みを帯びて構成されており、作動中に燃料が流れることができる貫通孔は、好適には、第1のU字脚部と第2のU字脚部との間に配置されているU字ウェブに位置している。U字形成形部、特に丸み付けされたU字形成形部は、製造の際に特に簡単に形成され、したがって、ダイヤフラムに異形成形領域を形成するのに特に好適に適している。
【0022】
代替的に、異形成形領域は横断面でS字形成形部として形成されており、S字形成形部は、接続領域における、ダイヤフラムと閉鎖要素との間の接続シームに予荷重を加えるための接触ループを有している。これは、もともとのスペーサスリーブの離間機能を満たす異形成形領域が、組み付け後に、ダイヤフラムと閉鎖要素との間の接続の領域が好適には予荷重を受け、これにより接続の負荷が軽減されるように構成されていることを意味する。
【0023】
好適には、ダイヤフラムと閉鎖要素とは、減衰容積を形成するために気密に互いに接続されており、特に互いに接着または溶接されており、減衰容積には特にガスが配置されている。したがって好適には、ダイヤフラムと閉鎖要素とは、規定された圧力下で、充填物、すなわち、減衰容積内に配置されたガスを有して密に溶接されている。しかしながら、ダイヤフラムと閉鎖要素とが、例えば接着などの別の形式で互いに気密に接続される別の選択的態様も考えられる。減衰容積内の規定された圧力により、圧力脈動減衰器内に減衰器カプセルが組み込まれた場合に、圧力脈動の規定された減衰が可能となる。
【0024】
好適には、閉鎖要素は、ダイヤフラムに対して鏡像対称的に形成された変形領域と、ダイヤフラムに対して鏡像対称的に形成された接続領域とを有する閉鎖ダイヤフラムとして形成されている。このような構成では、閉鎖ダイヤフラムとダイヤフラムとが、その接続領域で互いに重ねられており、そこで気密に互いに接続されている。
【0025】
閉鎖ダイヤフラムがダイヤフラムに対して特に完全に鏡像対称的に構成されていると好適である。この場合は、ダイヤフラムおよび閉鎖ダイヤフラムがそれぞれ、スペーサを形成する異形成形領域を有している。したがって、一緒に減衰器カプセルを形成するダイヤフラムと閉鎖ダイヤフラムとは両方ともそれぞれ、もともとのスペーサスリーブの機能を組み込まれて有している。すなわち、ここに形成された減衰器カプセルは、もともとの装置と比較すると好適には1つの減衰器カプセルと2つのスペーサスリーブとを代わりに使用することができる。
【0026】
高圧燃料ポンプのための圧力脈動減衰器は、好適には、少なくとも1つの上記の減衰器カプセルを有している。
【0027】
燃料噴射システム内の燃料に高圧を付与するための高圧燃料ポンプは、好適には、減衰器カプセルを備えたこのような圧力脈動減衰器を有している。
【0028】
減衰器カプセルは、圧力脈動減衰器内で、圧力脈動減衰器の減衰器ハウジングを形成するハウジング内に配置されていてよく、または高圧燃料ポンプのハウジングに載置されていてよい。この場合単に、減衰器カバーによって閉鎖すればよく、高圧燃料ポンプのハウジングは、減衰器カバーと共に圧力脈動減衰器を形成する。
【0029】
本発明の好適な構成を、以下に添付の図面に基づき詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】減衰器カプセルを有している、第1の実施形態の圧力脈動減衰器を備えた高圧燃料ポンプを示す縦断面図である。
【
図2】
図1の高圧燃料ポンプにおける、第2の実施形態による圧力脈動減衰器の縦断面図である。
【
図3】第1の実施形態による減衰器カプセルを示す断面図である。
【
図4】第2の実施形態による減衰器カプセルを示す断面図である。
【
図5】第3の実施形態による減衰器カプセルを示す断面図である。
【
図6】第4の実施形態による減衰器カプセルを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1には、高圧燃料ポンプ10の縦断面図が示されている。この高圧燃料ポンプはハウジング12内に圧力室14を有しており、この圧力室内で、燃料は、ポンプピストン16の並進運動により周期的に圧縮および膨張させられる。圧縮後は、高圧をかけられた燃料は、高圧接続部18を介して圧力室14から出ていく。圧力室14には、高圧燃料ポンプ10の低圧領域20からの燃料が供給される。低圧領域20には、圧力脈動減衰器22が配置されており、この圧力脈動減衰器は、高圧燃料ポンプ10の作動中、とりわけ圧力室14内でのポンプピストン16の運動により生じる圧力脈動を減衰する。このために低圧減衰器22は減衰器カプセル24を有している。
【0032】
図1に示した圧力脈動減衰器22の第1の実施形態では、圧力脈動減衰器は、圧力脈動減衰器22を形成するように高圧燃料ポンプ10のハウジング12と協働する減衰器カバー26によって形成されている。
【0033】
減衰器カプセル24は、ダイヤフラム30と閉鎖要素32との気密な結合により形成された減衰容積28を有している。
【0034】
この場合、ダイヤフラム30は変形領域34を有しており、この変形領域は、圧力脈動減衰器22内で圧力脈動が生じたとき、変形軸線36に沿って変形することができ、これによりガス38が配置されている減衰容積28を圧縮して、圧力脈動を発生させる燃料のためにスペースを形成する。ダイヤフラム30は、変形領域34と一体に形成されている接続領域40を有しており、この接続領域で、閉鎖要素32とダイヤフラム30とは、例えば溶接または接着によって気密に互いに接続されている。
【0035】
この実施形態では、閉鎖要素32は、少なくとも変形領域34と接続領域40とを同様に有している点で、ダイヤフラム30に対してほぼ鏡像対称的に形成されている。
【0036】
しかしながら、ダイヤフラム30は、閉鎖要素32とは異なり、閉鎖要素32の接続領域40を取り囲む異形成形領域42をさらに有しており、この異形成形領域42は、異形成形領域42が載置されているハウジング12からダイヤフラム30の変形領域34を変形軸線36の方向で離間するために、スペーサ44を形成している。異形成形領域42も、接続領域40と変形領域34と一体に形成されていてよく、これにより全体としてダイヤフラム30は、一体的なダイヤフラム構成部分46として形成される。
【0037】
減衰器カプセル24については、
図3〜
図6に基づきさらに詳しく後述する。
【0038】
図2には、圧力脈動減衰器22の第2の実施形態の縦断面図が示されており、この場合、圧力脈動減衰器は固有の減衰器ハウジング48を有しているので、高圧燃料ポンプ10のハウジング12はもはや、圧力脈動減衰器22の部分領域を形成しない。むしろ、第2の実施形態では、圧力脈動減衰器22は予め組み立てられてから、高圧燃料ポンプのハウジング12に、完成された組み立て状態で取り付けられる。
図2の圧力脈動減衰器22は、1つだけではなくて2つも減衰器カプセル24を有している。
【0039】
図3〜
図6では、減衰器カプセル24の断面図が様々な実施形態で示されている。もちろん、全ての実施形態を、
図1および
図2の圧力脈動減衰器22の両実施形態に使用することができる。
【0040】
減衰器カプセル24の以下に記載する全ての実施形態では、異形成形領域42はばね要素50として形成されており、変形軸線36の方向でばね運動をする。さらに、異形成形領域42は、以下に記載する全ての実施形態では、作動中燃料が流れることができる貫通孔52を有している。これらの貫通孔52は付加的な特徴であり、必ずしも設けられている必要はない。
【0041】
特に好適には、
図3〜
図6の全ての実施形態では、変形領域34、接続領域40、および異形成形領域42は、変形軸線36に対して平行に、減衰器カプセル24の中心を通って延在する中心軸線54を中心として回転対称的に配置されている。この場合、接続領域40と変形領域34とは、中心軸線54を中心として回転対称的に配置されているだけではなく、回転対称的に形成されており、したがって360°環状である。
【0042】
図3は、減衰器カプセル24の第1の実施形態の断面図を示しており、この実施形態では、閉鎖要素32は閉鎖ダイヤフラム56として形成されており、ダイヤフラム30に対して鏡像対称的に、変形領域34と接続領域40とを有している。閉鎖ダイヤフラム56とダイヤフラム30とはこの場合、接続領域40で気密な溶接シーム58により互いに結合されている。ただし、閉鎖ダイヤフラム56は異形成形領域42を有していない。
【0043】
図3の異形成形領域42は異形成形リング60として形成されており、異形成形リング60は横断面でU字形成形部62として形成されている。異形成形リング60は中心軸線54を中心として完全に360°環状に形成されているのではなくて、異形成形リング60を異形成形部分リング66に分割する中断開口64が設けられている。これらの中断開口64は、異形成形リング60の剛性を減じるために機能し、したがって異形成形領域42のばね効果を高める。しかしながら、中断開口は必要に応じてなくすこともでき、これにより、異形成形リング60は、中心軸線54を中心として完全に360°環状に形成される。
【0044】
U字形成形部62として形成された異形成形リング60は、第1のU字脚部68と第2のU字脚部70とを有しており、これらの脚部はU字ウェブ72によって互いに接続されている。この場合、U字形成形部62は丸みを帯びて形成されているので、第1のU字脚部68とU字ウェブ72と第2のU字脚部70とは段差なく互いに移行している。
【0045】
第1のU字脚部68は、ダイヤフラム30の接続領域40を形成しており、第2のU字脚部70は、異形成形領域42を、例えば高圧燃料ポンプ10のハウジング12に支持することができる支持領域74を形成する。
【0046】
U字形成形部62は、閉鎖ダイヤフラム56を取り囲むように配置されている。
【0047】
図4には、減衰器カプセル24の第2の実施形態の断面図が示されている。閉鎖ダイヤフラム56は、
図3に示した実施形態と同様に形成されているが、ダイヤフラム30は異なる形状を有している。この場合、異形成形領域42は単なるU字形成形部62として形成されているのではなく、S字形成形部76として、接続領域40において閉鎖ダイヤフラム56も取り囲んでいる。S字形成形部76は接触ループ78を有しており、この接触ループは、閉鎖ダイヤフラム56の接続領域40を押し、これにより、溶接シーム58により形成された、閉鎖ダイヤフラム56とダイヤフラム30との間の接続シーム80に予荷重をかける。したがって、異形成形領域42は
図4では、組み付け後に溶接シーム58が予荷重を受け、これにより溶接シーム58の負荷が軽減されるように成形されている。S字形成形部76は、接触ループ78の他に別のS字形ループ82を有しており、このS字形ループは、
図3に示した第1の実施形態における第2のU字脚部70のように、支持領域74として機能する。加えて、このS字形ループ82は、別の減衰器カプセル24のセンタリングのために利用することもできる。
【0048】
図5には、減衰器カプセル24の第3の実施形態の断面図が示されている。この場合、閉鎖ダイヤフラム56は、ダイヤフラム30に関して完全に鏡像対称的に形成されている。異形成形領域42はこの場合も横断面でU字形成形部62として形成されているが、U字形成形部62は閉鎖ダイヤフラム56またはダイヤフラム30を取り囲んでいるのではなくて、接続領域40から離れるように曲げられて形成されている。
【0049】
図6には、減衰器カプセル24の第4の実施形態の断面図が示されている。同じく閉鎖ダイヤフラム56とダイヤフラム30とは、互いに完全に鏡像対称的に形成されている。この場合、異形成形領域42は単に接続領域40から離れるように曲げられて形成されており、これにより間隔領域が形成されている。
【0050】
図5および
図6の実施形態では、閉鎖ダイヤフラム56およびダイヤフラム30がそれぞれ異形成形領域42を、組み込まれたスペーサ44として有しており、すなわちこの構成部分は、通常の配置の減衰器カプセル24および2つのスペーサスリーブの代わりを成している。