特許第6676776号(P6676776)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676776
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】リアクトル
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20200330BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20200330BHJP
   H01F 29/12 20060101ALI20200330BHJP
   H01F 21/04 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   H01F37/00 Z
   H01F37/00 M
   H01F37/00 C
   H01F27/28 K
   H01F29/12 A
   H01F21/04
【請求項の数】9
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2018-547194(P2018-547194)
(86)(22)【出願日】2017年9月19日
(86)【国際出願番号】JP2017033663
(87)【国際公開番号】WO2018079134
(87)【国際公開日】20180503
【審査請求日】2019年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-213314(P2016-213314)
(32)【優先日】2016年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591057278
【氏名又は名称】株式会社江口高周波
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100090273
【弁理士】
【氏名又は名称】國分 孝悦
(72)【発明者】
【氏名】鶴崎 一也
(72)【発明者】
【氏名】江口 洋平
(72)【発明者】
【氏名】真弓 康弘
【審査官】 木下 直哉
(56)【参考文献】
【文献】 実公昭03−008034(JP,Y1)
【文献】 特開昭58−147107(JP,A)
【文献】 特開2013−185882(JP,A)
【文献】 特開平04−302409(JP,A)
【文献】 特表2015−530752(JP,A)
【文献】 特開2010−016235(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102013111266(DE,A1)
【文献】 特開2014−212198(JP,A)
【文献】 西独国特許出願公告第01213048(DE,B)
【文献】 実開昭56−031480(JP,U)
【文献】 特開2013−161546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 37/00
H01F 21/04
H01F 27/28
H01F 29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気回路の定数としてのインダクタンスが可変のリアクトルであって、
第1の周回部と、第2の周回部と、第1の接続部とを有する第1のコイルと、
第3の周回部と、第4の周回部と、第2の接続部とを有する第2のコイルと、
前記第1のコイルを支持する第1の支持部材と、
前記第2のコイルを支持する第2の支持部材と、
前記第1のコイルと前記第2のコイルを保持する保持部材と、を有し、
前記第1の周回部、前記第2の周回部、前記第3の周回部、および前記第4の周回部は、それぞれ、その内側の領域を囲むように周回する部分であり、
前記第1の接続部は、前記第1の周回部の一端と、前記第2の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、
前記第2の接続部は、前記第3の周回部の一端と、前記第4の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、
前記第1のコイルと前記第2のコイルは、直列または並列に接続され、
前記第1の周回部と前記第2の周回部は、同一面にあり、
前記第3の周回部と前記第4の周回部は、同一面にあり、
前記第1の周回部および前記第2の周回部と、前記第3の周回部および前記第4の周回部は、間隔を有して平行な状態で配置され、
前記第1のコイルと前記第2のコイルとの両方または一方は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの軸を回動軸として回動することと、前記軸に垂直な方向に平行移動することとの両方または一方を行い、
前記軸は、前記第1の周回部の中心および前記第2の周回部の中心の中間の位置と、前記第3の周回部の中心および第4の周回部の中心の中間の位置とを通る軸であり、
前記保持部材は、前記第1の周回部および前記第2の周回部と、前記第3の周回部および前記第4の周回部とが間隔を有して平行になるようにすることと、前記回動および前記平行移動の両方または一方が行われた前記第1のコイルおよび前記第2のコイルが動かないようにすることと、を行う1つまたは複数の部材からなり、
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との両方または一方には移動穴が形成され、
前記移動穴には、前記保持部材が挿入され、
前記移動穴は、前記移動穴に挿入された前記保持部材が、前記軸に垂直な面に平行な方向に移動可能な大きさおよび形状を有し、
前記移動穴に挿入された前記保持部材が動くことにより、前記第1の支持部材と、前記第2の支持部材との両方または一方が動くことを特徴とするリアクトル。
【請求項2】
前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との両方または一方には複数の移動穴が形成され、
前記複数の移動穴の形状は、円弧状であり、
前記移動穴に挿入された前記保持部材が動くことにより、前記第1の支持部材と、前記第2の支持部材との両方または一方が回動することを特徴とする請求項に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの両方または一方が無段階で回動することにより、第1の状態と第2の状態との双方の状態をとることができ、
前記第1の状態は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルから発生する磁界の向きが相互に同じになるように、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルが相互に重なる状態であり、
前記第2の状態は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルから発生する磁界の向きが相互に逆になるように、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルが相互に重なる状態であることを特徴とする請求項1または2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記第1のコイルと前記第2のコイルとの両方または一方は、前記回動と前記平行移動との双方が可能であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記第1の周回部、前記第2の周回部、前記第3の周回部、および前記第4の周回部の形状および大きさは、それらの全長の60[%]以上の部分で同じであることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記第1の周回部および前記第2の周回部から発生する磁界の向きは相互に逆向きであり、
前記第3の周回部および前記第4の周回部から発生する磁界の向きは相互に逆向きであることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記第1のコイルと前記第2のコイルの巻回数が2回以上であることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のリアクトル。
【請求項8】
前記第1のコイルおよび前記第2のコイルがそれぞれ複数あり、
前記複数の第1のコイルおよび前記複数の第2のコイルは直列または並列に接続されることを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のリアクトル。
【請求項9】
前記第1の支持部材、前記第2の支持部材、および前記保持部材は、絶縁性および非磁性を有することを特徴とする請求項1〜の何れか1項に記載のリアクトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リアクトルに関し、特に、電気回路に用いて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地球温暖化防止のために二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量を削減するニーズは大きい。例えば、鉄鋼分野では、高周波で加熱を行うための誘導加熱装置を高効率で運転することが実現されている。また、加熱効率の悪いガス加熱炉の代替技術としての誘導加熱装置の導入が近年増加している。また、自動車・物流分野では、電気自動車・クレーン等への移動体への給電手段としての非接触で給電する技術の開発が行われている。
【0003】
これらの共通技術は、高周波発生装置にコンデンサ(静電容量C)と負荷コイル(インダクタンスL)とを直列または並列に接続して、電圧共振または電流共振を発生させる技術である。これらの技術では、共振電流が負荷コイルに流れたときに発生する磁束で被加熱物を非接触で加熱することができる。また、これらの技術では、共振電流が負荷コイルに流れたときに発生する磁束に基づく電磁誘導現象を利用して、非接触で給電することができる。尚、共振電流とは、周波数が共振周波数の電流のことを指す。
【0004】
このように共振現象を利用する場合、コンデンサ(静電容量C)と加熱コイル・負荷コイル(インダクタンスL)とが決定すれば高周波発生装置における周波数(共振周波数)が一義的に決定される。
共振回路においては、静電容量CおよびインダクタンスLと負荷回路の抵抗Rとが、負荷インピーダンスを決める要素となる。このため、静電容量CとインダクタンスLのそれぞれの数値のバランスをとることも必要となる。
【0005】
これらの加熱コイル・負荷コイルのインダクタンスLの大きさによっては、高周波発生装置の動作周波数が共振周波数にならない場合がある。このような場合、高周波発生装置を構成する電気回路に、固定インダクタンスを供するためのリアクトルを別途追加・設置して利用することが多い。
電気回路に追加・設置するインダクタンス要素としてのリアクトルとして、コアを使用しない空芯リアクトルや、コアを利用したリアクトルがある。このようなリアクトルに関する技術として、特許文献1〜6に記載の技術がある。
【0006】
特許文献1には、空芯リアクトルの電磁力に伴う振動対策として、空芯リアクトルを保持、固定する手段が開示されている。具体的に特許文献1に記載の技術では、空芯リアクトルに2つ以上の棒を貫通させる。これら2つ以上の棒をL型の支持物に固定する。
【0007】
特許文献2には、コアを利用した高周波リアクトルから高電圧下において発生するコロナ放電の対策として、高周波リアクトルの電界を緩和させる手段が開示されている。具体的に特許文献2に記載の技術では、上下方向において相互に間隔をあけた状態で配置される複数のコアブロックにより、コアを構成する。コアの上端は、導電性の上固定板により固定される。コアの下端は、導電性の下固定板により固定される。下固定板は、碍子を介してベースに接続される。ベースと下固定板との距離を、コアブロックのギャップよりも大きくする。
【0008】
特許文献3には、基板に配置される高周波電子回路に関する技術として、2つのコイル間の相対的な位置を変更しインダクタンスLを調整する技術が開示されている。具体的に特許文献3に記載の技術では、同一形状のコイルを2つ用いる。これら2つのコイルのギャップの変更や、コイル端を軸にして2つのコイルを回動させたり開閉させたりすることによりコイルの回転角度や開閉角度の変更を行う。
【0009】
特許文献4には、プリント基板に配置される2つのインダクタの重なる面積や相互の距離を変更することによりインダクタンスを変化させる技術を用いて、小型変圧器を実現する手段が開示されている。
【0010】
特許文献5には、半導体チップに集積される2つのインダクタの直並列接続を切り換えることにより、発振器の周波数範囲を拡大する手段が開示されている。
特許文献6には、半導体チップに展開した2つのインダクタの形状や位置を、共振器間のEM(電磁)結合が低減するように決定することが開示されている。
また、特許文献5、6には、2つのインダクタを、8の字状のインダクタや、四つ葉のクローバー状のインダクタで構成することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2014−45110号公報
【特許文献2】特許第5649231号公報
【特許文献3】特開昭58−147107号公報
【特許文献4】特開2014−212198号公報
【特許文献5】特許第5154419号公報
【特許文献6】特表2007−526642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
共振回路では、回路の共振周波数から必要とされるインダクタンスが予め設定されている。共振回路に設置するリアクトルのインダクタンスは、その共振回路に対して予め設定されている値を目標にして設計、製造される。
しかしながら、リアクトルを製造する際には、銅管、導体を巻き回してコイルを構成する。また、コアを有するリアクトルを製造する際には、例えば、コアとコアとの間に非磁性体からなるギャップ材を挿入する。このギャップ材が挿入されたコアに対してコイルを取り付けるといった組み立て作業を経て製造される。従って、製造・組立後のリアクトルにて実現されるインダクタンスの値には、少なからず設計値との差が生じる。
【0013】
空芯のリアクトルのインダクタンスは、巻き回されるコイルの直径・巻き半径(等価半径)・巻回数・全長、およびリアクトルの周囲の磁気遮蔽状況等により変化する。
また、コアを有するリアクトルのインダクタンスは、このような空芯リアクトルのインダクタンスに影響する因子以外に、コアとコアとの間のギャップの影響も受ける。さらに、コアを有するリアクトルのインダクタンスは、コイルに印加する周波数、電圧および電流でも変化する。
【0014】
特許文献1、2に記載の技術では、リアクトルのインダクタンスが固定される。従って、以下のようにしてリアクトルのインダクタンスを調整する必要がある。まず、リアクトルを製造・仮組みする。次に、仕様上求められる周波数、電圧、および電流を、製造・仮組みしたリアクトルに印加して、製造・仮組みされたリアクトルのインダクタンスを測定する。一般的に、構造上大型となる高周波大電流のリアクトルのインダクタンスが、一度の製造・仮組みで、仕様上求められるインダクタンスの範囲内に入ることは少ない。リアクトルのインダクタンスが、仕様上求められるインダクタンスの範囲内に入らない場合、リアクトルを解体し、インダクタンスの測定値と目標値とのずれを最小化すべく、リアクトルを調整したうえで、再度、インダクタンスを測定する。
【0015】
具体的には、空芯のリアクトルでインダクタンスを大きくするには、全体のコイル長を短くしたり、コイルの巻回数を増やしたりする等の手段がとられる。また、コアを有するリアクトルでインダクタンスを大きくするには、コアとコアとの間のギャップを小さくしたり、コイルの巻回数を増やしたりする等の手段がとられる。インダクタンスが小さくなるようにするためには、インダクタンスを大きくするための前述した手段と逆の手段をとる。
【0016】
また、前述した製造・仮組み後のリアクトルのインダクタンスの調整には時間を要する。場合によっては、リアクトルの製造・仮組みを、数回繰返して、リアクトルのインダクタンスを調整することもある。このような場合、リアクトルのインダクタンスの調整に多大な時間を要す。
【0017】
また、或る電気回路で必要とされるインダクタンスの値が決まると、そのインダクタンスを有するリアクトルを設計・製造する。その電気回路と周波数および電流が同じ電気回路であっても、インダクタンスが異なる電気回路に対しては、その電気回路で必要とされるインダクタンスを有するリアクトルを別途設計、製造する必要がある。このように、インダクタンスの要求仕様に見合ったリアクトルをその都度、或いはインダクタンスの段階ごとに設計・製造・調整する必要がある。
例えば、電流の仕様値が1000[A]であり、周波数の仕様値が20[kHz]のリアクトルであっても、インダクタンスが異なる仕様値であれば、異なる仕様値ごとに、1台ずつ、リアクトルを設計・製造・調整する必要がある。
【0018】
そこで、インダクタンスを可変とするリアクトルに関する技術として特許文献3、4に記載の技術がある。しかしながら、特許文献3に記載の技術は、プリント基板上で使用する高周波電子回路に関する技術である。従って、この高周波電子回路に大電流を流すのは容易ではない。また、特許文献4に記載の技術もIC内部において用いられるスパイラルインダクタを前提としている。従って、このICに大電流を流すのは容易ではない。また、特許文献3、4に記載の技術とも、インダクタンスの調整範囲は限られたものとなる。
【0019】
また、特許文献5、6に記載の技術は、微小な電流を扱う半導体チップに製造されるインダクタに関する技術である。更に、特許文献5、6に記載の技術では、インダクタを製造すると、後にインダクタンスを調整することができない。従って、インダクタの設計段階または製造後にインダクタンスの変更が必要になった際に、時間とコストをかけざるを得ない。
【0020】
本発明は、以上の問題点に鑑みてなされたものであり、多種多様の仕様に対して広範囲にインダクタンスを容易に変更することができるリアクトルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明のリアクトルは、電気回路の定数としてのインダクタンスが可変のリアクトルであって、第1の周回部と、第2の周回部と、第1の接続部とを有する第1のコイルと、第3の周回部と、第4の周回部と、第2の接続部とを有する第2のコイルと、前記第1のコイルを支持する第1の支持部材と、前記第2のコイルを支持する第2の支持部材と、前記第1のコイルと前記第2のコイルを保持する保持部材と、を有し、前記第1の周回部、前記第2の周回部、前記第3の周回部、および前記第4の周回部は、それぞれ、その内側の領域を囲むように周回する部分であり、前記第1の接続部は、前記第1の周回部の一端と、前記第2の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、前記第2の接続部は、前記第3の周回部の一端と、前記第4の周回部の一端とを相互に接続する部分であり、前記第1のコイルと前記第2のコイルは、直列または並列に接続され、前記第1の周回部と前記第2の周回部は、同一面にあり、前記第3の周回部と前記第4の周回部は、同一面にあり、前記第1の周回部および前記第2の周回部と、前記第3の周回部および前記第4の周回部は、間隔を有して平行な状態で配置され、前記第1のコイルと前記第2のコイルとの両方または一方は、前記第1のコイルおよび前記第2のコイルの軸を回動軸として回動することと、前記軸に垂直な方向に平行移動することとの両方または一方を行い、前記軸は、前記第1の周回部の中心および前記第2の周回部の中心の中間の位置と、前記第3の周回部の中心および第4の周回部の中心の中間の位置とを通る軸であり、前記保持部材は、前記第1の周回部および前記第2の周回部と、前記第3の周回部および前記第4の周回部とが間隔を有して平行になるようにすることと、前記回動および前記平行移動の両方または一方が行われた前記第1のコイルおよび前記第2のコイルが動かないようにすることと、を行う1つまたは複数の部材からなり、前記第1の支持部材と前記第2の支持部材との両方または一方には移動穴が形成され、前記移動穴には、前記保持部材が挿入され、前記移動穴は、前記移動穴に挿入された前記保持部材が、前記軸に垂直な面に平行な方向に移動可能な大きさおよび形状を有し、前記移動穴に挿入された前記保持部材が動くことにより、前記第1の支持部材と、前記第2の支持部材との両方または一方が動くことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、第1の実施形態のリアクトルの構成の一例を示す図である。
図2A図2Aは、第1の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の一例を示す図である。
図2B図2Bは、第1の実施形態の第2のコイルおよび第2の支持部材の構成の一例を示す図である。
図3A図3Aは、或る状態の第1のコイルと、当該状態から180[°]回動した状態の第1のコイルとを重ねて示す図である。
図3B図3Bは、或る状態の第2のコイルと、当該状態から180[°]回動した状態の第2のコイルとを重ねて示す図である。
図4図4は、第1の実施形態の第1のコイルおよび第2のコイルの位置関係の一例を示す図である。
図5A図5Aは、第1の実施形態の第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の向きの第1の例を、第1のコイルおよび第2のコイルの回路記号と共に示す図である。
図5B図5Bは、第1の実施形態の第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の向きの第2の例を、第1のコイルおよび第2のコイルの回路記号と共に示す図である。
図6A図6Aは、第1の実施形態の第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の第1の例を、リアクトルに配置された状態の第1のコイルと第2のコイルと共に示す図である。
図6B図6Bは、第1の実施形態の第1のコイルおよび第2のコイルに生じる磁束の第2の例を、リアクトルに配置された状態の第1のコイルと第2のコイルと共に示す図である。
図7図7は、第1の実施形態の第1のコイルおよび第2のコイルの位置関係の調整方法の一例を説明する図である。
図8A図8Aは、第1の実施形態の移動穴の変形例を示す図である。
図8B図8Bは、第1の実施形態第1のコイルおよび第2のコイルの位置関係の調整方法の変形例を説明する図である。
図9図9は、第1の実施形態リアクトルの変形例を示す図である。
図10A図10Aは、第1の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の第1の変形例を示す図である。
図10B図10Bは、第1の実施形態の第2のコイルおよび第2の支持部材の構成の第1の変形例を示す図である。
図11A図11Aは、第1の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の第2の変形例を示す図である。
図11B図11Bは、第1の実施形態の第2のコイルおよび第2の支持部材の構成の第2の変形例を示す図である。
図12A図12Aは、第2の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の一例を示す図である。
図12B図12Bは、第2の実施形態の第2のコイルおよび第2の支持部材の構成の一例を示す図である。
図13図13は、第2の実施形態の第1のコイルおよび第2のコイルの位置関係の一例を示す図である。
図14図14は、第3の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の一例を示す図である。
図15図15は、第4の実施形態のリアクトルの構成の第1の例を示す図である。
図16A図16Aは、第4の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の第1の例を示す図である。
図16B図16Bは、第4の実施形態の第2のコイルおよび第2の支持部材の構成の第1の例を示す図である。
図17図17は、第4の実施形態のリアクトルの構成の第2の例を示す図である。
図18A図18Aは、第4の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の第2の例を示す図である。
図18B図18Bは、第4の実施形態の第2のコイルおよび第2の支持部材の構成の第2の例を示す図である。
図19A図19Aは、第5の実施形態の第1のコイルおよび第1の支持部材の構成の一例を示す図である。
図19B図19Bは、第5の実施形態の第2のコイルおよび第2の支持部材の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
まず、第1の実施形態を説明する。
<リアクトルの構成>
図1は、本実施形態のリアクトルの構成の一例を示す図である。尚、各図に示すX、Y、Z座標は、各図における向きの関係を示すものである。○の中に●が示されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示す。○の中に×が示されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。
【0024】
図1は、本実施形態のリアクトルの構成を示す図である。図2Aは、第1のコイル1および第1の支持部材2の構成の一例を示す図である。図2Bは、第2のコイル3および第2の支持部材4の構成の一例を示す図である。図3Aは、或る状態の第1のコイル1と、当該状態から180[°]回動した状態の第1のコイル1とを重ねて示す図である。図3Aでは、表記の都合上、これら2つの第1のコイル1の一方を実線で示し、他方を破線で示す。図3Bは、或る状態の第2のコイル3と、当該状態から180[°]回動した状態の第2のコイル3とを重ねて示す図である。図3Bでも、図3Aと同様に、表記の都合上、これら2つの第2のコイル3の一方を実線で示し、他方を破線で示す。尚、後述するように第2のコイル3は回動しないが、図3Bでは、第2のコイル3が回動するものと仮定する。
【0025】
図2Aおよび図3Aは、図1において、第1の支持部材2の第2の支持部材4と対向する面をZ軸に沿って見た図である。図2Bおよび図3Bは、図1において、第2の支持部材4の第1の支持部材2と対向する面をZ軸に沿って見た図である。
【0026】
本実施形態のリアクトルは、電気回路の定数としてのインダクタンスが可変のリアクトルである。図1図2Aおよび図2Bにおいて、本実施形態のリアクトルは、第1のコイル1と、第1の支持部材2と、第2のコイル3と、第2の支持部材4と、サポート5a〜5dと、ボルト6a〜6dと、ナット7a〜7bと、を有する。表記の都合上、ボルト6c、6dに対するナットの図示を省略するが、ボルト6a、6bに対するナット7a、7bと同様に、ボルト6c、6dに対するナットも配置される。以下、説明の都合上、図示は省略されているが、ボルト6c、6dに対するナットをナット7c、7dと表記する。
【0027】
まず、第1のコイル1および第1の支持部材2について説明する。
第1の支持部材2は、第1のコイル1を支持するための部材である。第1のコイル1は、第1の支持部材2に、固定されている。穴2e、2fは、第1のコイル1を外部に引き出すための穴である。
第1の支持部材2および後述の第2の支持部材4とは、第1のコイル1と後述の第2のコイル3との間隔Gを一定に保持できるように、サポート5a〜5dを介してボルト6a〜6dおよびナット7a〜7dで固定される。図2Aに示すように、第1の支持部材2には第1の支持部材2を第2の支持部材4に取り付けられるようにするための移動穴2a〜2dが形成される。移動穴2a〜2dは、第2の支持部材4に取り付けられた第1の支持部材2を回動させることを可能にするための穴である。
【0028】
本実施形態では、移動穴2a〜2dの平面形状は、円弧状である。移動穴2a、2dは、第1の仮想円の円弧に沿うように配置される。移動穴2b、2cは、移動穴2a、2dよりも第1の支持部材2の中心側に位置する。移動穴2b、2cは、第1の仮想円よりも半径が小さく、且つ、第1の仮想円と同心の第2の仮想円の円弧に沿うように配置される。第1のコイル1は、図2Aに示す移動穴2a〜2dにサポート5a〜5dおよびボルト6a〜6dが通され、且つ、サポート5a〜5dおよびボルト6a〜6dの位置が固定された状態であっても、回動することができる。第1のコイル1を回動して第1のコイル1の位置が決められた後、ナット7a〜7dを用いることにより、第1のコイル1はその位置で固定され、回動しなくなる。本実施形態では、第1のコイル1の軸(回動軸)は、第1の支持部材2の中心2gを通り、第1の支持部材2の面に垂直な方向(Z軸方向)の軸である。
【0029】
図2Aに示すように、第1の支持部材2の平面形状は、正方形である。第1の支持部材2は、第1のコイル1のZ軸方向の位置が変化しないように第1のコイル1を支持できる強度を有し、且つ、絶縁性および非磁性を有する材料で形成される。ただし、第1のコイル1の支持部材2の平面形状は、正方形に限定されない。第1のコイル1の支持部材2の平面形状は、例えば、長方形でも円形でも構わない。第1の支持部材2は、例えば、ガラス積層エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂等を用いて形成される。
【0030】
図2Aにおいて、第1のコイル1は、第1の周回部1aと、第2の周回部1bと、第1の接続部1cと、第1の引出部1dと、第2の引出部1eとを有する。第1の周回部1a、第2の周回部1b、第1の接続部1c、第1の引出部1d、および第2の引出部1eは、一体である。
【0031】
本実施形態では、第1のコイル1の巻回数は1[回]である。また、本実施形態では、第1の周回部1a、第2の周回部1b、および第1の接続部1cによりアラビア数字の8の字の形状が形成される場合を例に挙げて説明する。尚、図3Aでは、表記の都合上、第1の引出部1dおよび第2の引出部1eの図示を省略する。また、図3Aでは、重ねて示す2つの第1のコイル1のそれぞれに対し符号を付す。
【0032】
第1の周回部1aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第2の周回部1bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第1の周回部1aと第2の周回部1bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。尚、第1の周回部1aと第2の周回部1bは、厳密に同一の水平面に配置されていなくてもよく、例えば、設計上の公差の範囲内であれば、同一の水平面に配置されているといえる。このことは、以下の説明における「同一の水平面」についても同じである。
第1の接続部1cは、第1の周回部1aの第1の端1fと、第2の周回部1bの第1の端1gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
【0033】
第1の引出部1dは、第1の周回部1aの第2の端1hに接続される。第1の周回部1aの第2の端1hは、穴2eの位置にある。第2の引出部1eは、第2の周回部1bの第2の端1iに接続される。第2の周回部1bの第2の端1iは、穴2fの位置にある。
【0034】
第1の引出部1dおよび第2の引出部1eは、第1のコイル1を外部と接続するための引き出し線となる。図2Aにおいて、第1の引出部1dおよび第2の引出部1eを破線で示しているのは、第1の引出部1dおよび第2の引出部1eが、図2Aに示す第1の支持部材2の面とは反対側の面にあることを示す。
【0035】
図3Aにおいて、第1のコイル1は、実線で示す状態から、180[°]回動すると、破線で示す状態になる。
図2Aに示すように、第1の支持部材2の中心2g(回動軸)は、第1の周回部1aの中心1kと、第2の周回部1bの中心1jとの中間に位置する。第1の周回部1aと第2の周回部1bは、第1の支持部材2の中心2g(第1のコイル1の回動軸)を介して反対側の位置にある。即ち、第1の周回部1aと第2の周回部1bは、第1のコイル1が回動する方向における角度が180[°]ずれた状態を保つように配置される。この角度は、第1の支持部材2の中心2g(回動軸)と、第1の周回部1aの中心1kとを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線と、第1の支持部材2の中心2gと、第2の周回部1bの中心1jとを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線とのなす角度である。尚、図2Aにおいて、第1の支持部材2の中心2gと、第1の周回部1aの中心1kと、第2の周回部1bの中心1jは、仮想的に示す点であり、実在する点ではない。
【0036】
第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさは完全に同じであるのが最も好ましい。ただし、図2Aおよび図2Bに示すように、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさを完全に同じにすることができない場合がある。
【0037】
第1のコイル1および第2のコイル3に交流電流を流した場合に、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bのそれぞれの内部を貫く磁束の状態が、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさが完全に同じである場合と大きく異ならなければ、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさは完全に同じでなくてもよい。
【0038】
本発明者らは、第1〜第5の実施形態のリアクトルを含む種々のリアクトルについて、第1のコイルおよび第2のコイルの大きさ、第1のコイルおよび第2のコイルのギャップ(Z軸方向の間隔)、第1のコイルおよび第2のコイルの形状等を変更し、後述する(2)式で定義される可変倍率βを測定した。ただし、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさは完全に同じにした。その結果、可変倍率βの範囲は、約2.3〜5.6倍であった。この範囲に対応する結合係数kの範囲は約0.4〜0.7になる。尚、結合係数kは、以下の(1)式で表される。
M=±k√(L1・L2) ・・・(1)
ここで、Mは、第1のコイル1および第2のコイル3の相互インダクタンスである。L1は、第1のコイル1の自己インダクタンスである。L2は、第2のコイル3の自己インダクタンスである。結合係数kは、第1のコイル1および第2のコイル3の形状、大きさ、相対位置で決まるものであり、0≦k≦1の関係がある。k=1は漏れ磁束がない場合であるが実際には漏れ磁束が発生するので結合係数kは1未満の値となる。
【0039】
そこで、第1のコイルおよび第2のコイル間の標準的な結合係数ksの値として、この範囲の平均値(=0.55(=(0.4+0.7)÷2))を採用する。この標準的な結合係数ksは、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさとが完全に同じ場合の結合係数の代表値となる。
【0040】
ここで、合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βの最低値βminを2.0と仮定する。合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、以下の(2)式で表される。尚、合成インダクタンスGLは、第1のコイル1と第2のコイル3との接続によって合成されたインダクタンスとして、交流電源回路側より評価されるインダクタンスである。
β=(2L+2M)÷(2L−2M)=(2L+2kL)÷(2L−2kL)=(1+k)÷(1−k) ・・・(2)
【0041】
ただし、ここでは、説明を簡単にするために、第1のコイル1、第2のコイル3の自己インダクタンスL1、L2をL(L1=L2=L)とする。
【0042】
この可変倍率βの最低値βmin(=2.0)を(2)式に代入すると、第1のコイルおよび第2のコイル間の結合係数の最低値kminは約0.33になる。この結合係数の最低値kmin(=0.33)を、標準的な結合係数ks(=0.55)で割ると、0.6(=0.33/0.55)になる。つまり、可変倍率βの最低値βmin(=2.0)を確保するには、結合係数の最低値kminとして0.33が必要になる。結合係数の最低値kminとして0.33を実現するためには、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさが、それらの全長の60[%]の部分で同じであればよい。また、実用上、可変倍率βの最低値βminは、2.5が好ましく、3.0がより好ましい。これに対応するためには、前述したのと同様の計算の結果から、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の形状および大きさが、それらの全長の78[%]の部分で同じになるのが好ましく、91[%]以上の領域で同じになるのがより好ましい。
【0043】
以上の観点から、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさが、それらの全長の60[%]以上の部分で同じであれば、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさは同じであるものとみなすことができる。ただし、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60[%]は、78[%]であることが好ましく、91[%]であることがより好ましい。
【0044】
このことから、第1の周回部1aと第2の周回部1bの形状および大きさに関し、以下のことが言える。
第1のコイル1が180[°]回動したときに、第1の周回部1aの全長の60[%]以上の長さの部分が、前記回動する前に第2の周回部1bがあった領域と重なる。第1の周回部1aの全長は、第1の周回部1aの第1の端1fから第2の端1hまでの長さである。
【0045】
図3Aにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものとすると、図3Aにおいて破線で下側に示す第1の周回部1aの全長の60[%]以上の長さの部分が、実線で下側に示す第2の周回部1bと重なる。
【0046】
また、第1のコイル1が180[°]回動したときに、第2の周回部1bの全長の60[%]以上の長さの部分が、前記回動する前に第1の周回部1aがあった領域と重なる。第2の周回部1bの全長は、第2の周回部1bの第1の端1gから第2の端1iまでの長さである。
【0047】
図3Aにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものとすると、図3Aにおいて破線で上側に示す第2の周回部1bの全長の60[%]以上の長さの部分が、実線で上側に示す第1の周回部1aと重なる。
尚、前述したように、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60[%]は、78[%]であることが好ましく、91[%]であることがより好ましい。
【0048】
次に、第2のコイル3および第2の支持部材4について説明する。
第2の支持部材4は、第2のコイル3を支持するための部材である。第2のコイル3は、第2の支持部材4に、固定されている。図2Bに示すように、第2の支持部材4には、第1の支持部材2が第2の支持部材4に取り付けられるようにするための穴4a〜4dが形成される。穴4a〜4dは、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6dおよびナット7a〜7dを用いて、第1の支持部材2と第2の支持部材4とを固定するための穴である。穴4a〜4dの直径は、ボルト6a〜6dの外径よりも僅かに大きい。穴4e、4fは、第2のコイル3を外部に引き出すための穴である。第1の支持部材2と第2の支持部材4とは、穴4a、4b、4c、4dに、サポート5a、5b、5c、5dおよびボルト6a、6b、6c、6dがそれぞれ通され、且つ、サポート5a〜5dおよびボルト6a〜6dの位置が固定され、且つ、ナット7a〜7dが締め付けられた状態では、動かすことできない。本実施形態では、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dは、保持部材として機能する。本実施形態では、保持部材は、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bと、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bとが間隔を有して平行になる状態で、回動により位置が調整された第1のコイル1が動かないように第1のコイル1が固定された第1の支持部材2および第2のコイル3が固定された第2の支持部材4を保持する。
【0049】
図2Bに示すように、第2の支持部材4の平面形状は、正方形である。ただし、第2のコイルの支持部材の平面形状は、正方形に限定されない。第2のコイルの支持部材の平面形状は、例えば、長方形でも円形でも構わない。第2の支持部材4は、第2のコイル3のZ軸方向の位置が変化しないように第2のコイル3を支持できる強度を有し、且つ、絶縁性および非磁性を有する材料で形成される。第2の支持部材4は、例えば、ガラス積層エポキシ樹脂、熱硬化性樹脂等を用いて形成される。
【0050】
図2Bにおいて、第2のコイル3は、第3の周回部3aと、第4の周回部3bと、第2の接続部3cと、第3の引出部3dと、第4の引出部3eとを有する。第3の周回部3a、第4の周回部3b、第2の接続部3c、第3の引出部3d、および第4の引出部3eは、一体である。
【0051】
本実施形態では、第2のコイル3の巻回数は1[回]である。また、本実施形態では、第3の周回部3a、第4の周回部3b、および第2の接続部3cによりアラビア数字の8の字の形状が形成される場合を例に挙げて説明する。尚、図3Bでは、表記の都合上、第3の引出部3dおよび第4の引出部3eの図示を省略する。また、図3Bでは、重ねて示す2つの第2のコイル3のそれぞれに対し符号を付す。
【0052】
第3の周回部3aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第4の周回部3bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第3の周回部3aと第4の周回部3bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0053】
第2の接続部3cは、第3の周回部3aの第1の端3fと、第4の周回部3bの第1の端3gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
【0054】
第3の引出部3dは、第3の周回部3aの第2の端3hに接続される。第3の周回部3aの第2の端3hは、穴4eの位置にある。第4の引出部3eは、第4の周回部3bの第2の端3iに接続される。第4の周回部3bの第2の端3iは、穴4fの位置にある。
【0055】
第3の引出部3dおよび第4の引出部3eは、第2のコイル3を外部と接続するための引き出し線となる。図2Bにおいて、第3の引出部3dおよび第4の引出部3eを破線で示しているのは、第3の引出部3dおよび第4の引出部3eが、図2Bに示す第2の支持部材4の面とは反対側の面にあることを示す。
【0056】
前述したように本実施形態では、第2のコイル3は回動しない。しかしながら、図3Bでは、第2のコイル3が、回動すると仮定する。そうすると、第2のコイル3は、実線で示す状態から、180[°]回動して、破線で示す状態になる。第2のコイル3が回動すると仮定した場合の第2のコイル3の軸(回動軸)は、第2の支持部材4の中心4gを通り、第2の支持部材4の面に垂直な方向(Z軸方向)の軸である(図2Bを参照)。
【0057】
図2Bに示すように、第2の支持部材4の中心4g(回動軸)は、第3の周回部3aの中心3jと、第4の周回部3bの中心3kとの中間の位置を含む位置に配置される。第3の周回部3aと第4の周回部3bは、第2の支持部材4の中心4g(第2のコイル3の回動軸)を介して反対側の位置にある。即ち、第3の周回部3aと第4の周回部3bは、第1のコイル1が回動する方向における角度が180[°]ずれた状態を保つように配置される。この角度は、第2の支持部材4の中心4g(回動軸)と、第3の周回部3aの中心3jとを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線と、第2の支持部材4の中心4g(回動軸)と、第4の周回部3bの中心3kとを相互に最短距離で結ぶ仮想的な直線とのなす角度である。尚、図2Bにおいて、第2の支持部材4の中心4gと、第3の周回部3aの中心3jと、第4の周回部3bの中心3kは、仮想的に示す点であり、実在する点ではない。
【0058】
また、第3の周回部3aと第4の周回部3bの形状および大きさに関し、以下のことが言える。
第2のコイル3が180[°]回動すると仮定したときに、第3の周回部3aの全長の60[%]以上の長さの部分が、前記回動する前に第4の周回部3bがあった領域と重なる。第3の周回部3aの全長は、第3の周回部3aの第1の端3fから第2の端3hまでの長さである。
【0059】
図3Bにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものと仮定すると、図3Bにおいて破線で上側に示す第3の周回部3aの全長の60[%]以上の長さの部分が、実線で上側に示す第4の周回部3bと重なる。
【0060】
また、第2のコイル3が180[°]回動すると仮定したときに、第4の周回部3bの全長の60[%]以上の長さの部分が、前記回動する前に第3の周回部3aがあった領域と重なる。第4の周回部3bの全長は、第4の周回部3bの第1の端3gから第2の端3iまでの長さである。
【0061】
図3Bにおいて、実線で示す状態から破線で示す状態になるものとすると、図3Bにおいて破線で下側に示す第4の周回部3bの全長の60[%]以上の長さの部分が、実線で下側に示す第3の周回部3aと重なる。
尚、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60[%]は、78[%]であることが好ましく、91[%]であることがより好ましい。
【0062】
次に、第1のコイル1と第2のコイル3の設置の方法について説明する。
図1図2A、および図2Bに示すように、第1の支持部材2と、第2の支持部材4との間には、第1のコイル1および第2のコイル3のZ軸方向の位置が変化しないように、サポート5a〜5dが設けられる。サポート5a〜5dの形状および大きさは同じである。本実施形態では、サポート5a〜5dの形状は、中空円筒形状である。サポート5a、5b、5c、5dの一端部分を移動穴2a、2b、2c、2dに、他端部分を穴4a、4b、4c、4dに挿入した後、サポート5a、5b、5c、5dの中空部分に、それぞれボルト6a、6b、6c、6dが通される。このとき、ボルト6a、6b、6c、6dは、図1の上側から、穴4a、4b、4c、4dおよび移動穴2a、2b、2c、2dに挿入される。そして、ボルト6a、6b、6c、6dの先端が、図1において、第2の支持部材4の下方(Z軸の負の方向)まで突出するようにする。このようにしてボルト6a、6b、6c、6dの突出した部分に対しナット7a、7b、7c、7dを取り付け、ボルト6a、6b、6c、6dおよびナット7a、7b、7c、7dで、第1の支持部材2、第2の支持部材4およびサポート5a、5b、5c、5dを固定する。このようにすることにより、第1の支持部材2および第2の支持部材4の相対的な位置決めがなされ、2つの支持部材2、4の相対的な位置関係が固定される。尚、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dは、第1の支持部材2および第2の支持部材4の相対的な位置決めができる強度を有し、且つ、絶縁性および非磁性を有する材料で形成される。
【0063】
以上のようにして、第1のコイル1と第2のコイル3は、一定の間隔Gを有した状態で、そのコイル面が平行になるように配置される(図1を参照)。間隔Gの大きさは、第1のコイル1と第2のコイル3との絶縁距離等により定まる値よりも大きくなるように設定できる。尚、平行とは、厳密に平行でなくてもよく、例えば、設計上の公差の範囲内であれば、平行であるといえる。このことは、以下の説明における「平行」についても同じである。また、第1のコイル1のコイル面とは、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bで囲まれる領域における水平面(X−Y平面)である。第2のコイル3のコイル面とは、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bで囲まれる領域における水平面(X−Y平面)である。
【0064】
また、本実施形態では、第1のコイル1の第2のコイル3への投影面と、第2のコイル3から第1のコイル1への投影面とが相互に重なるようよう配置される位置(図2Aおよび図2Bに示す状態)を設計原点とする。本実施形態では、第1のコイル1は、この設計原点を基準として、そのコイル面が第2のコイル3のコイル面と平行な状態を保ったまま、回動することができる。
【0065】
ボルト6a〜6dおよびナット7a〜7dでサポート5a〜5dを介して第1のコイル1および第2のコイル3を固定しない状態で、少なくともサポート5a〜5dおよびボルト6a〜6dを第1の支持部材2および第2の支持部材4に取り付ける。移動穴2aは、第1のコイル1の回動軸と同軸で、サポート5a〜5dおよびボルト6a〜6dが回動できる大きさおよび形状を有する。従って、ボルト6a〜6dおよびナット7a〜7dでサポート5a〜5dを介して第1のコイル1および第2のコイル3を固定しない状態で、少なくともサポート5a〜5dおよびボルト6a〜6dを第1の支持部材2および第2の支持部材4に取り付けた状態で移動穴2a〜2dに沿って第1の支持部材2を回動することで、第1の支持部材2の位置を調整することができる。この調整した位置で、ボルト6a〜6dおよびナット7a〜7dでサポート5a〜5dを介して第1のコイル1および第2のコイル3を固定する。
【0066】
その後、第1のコイル1および第2のコイル3は、それぞれ第1の引出部1d、第2の引出部1e、第3の引出部3d、第4の引出部3eを介して、図示しない交流電源回路に接続され、1台のリアクトルとして構成される。
尚、図2Aおよび図2Bにおいて、第1のコイル1および第2のコイル3の中に示す矢印線は、同時刻における交流電流の向きである。第1のコイル1および第2のコイル3に流れる交流電流の向きについては、図4を参照しながら後述する。
【0067】
次に、第1のコイル1と第2のコイル3の位置関係について説明する。
図4は、第1のコイル1と第2のコイル3の位置関係の一例を示す図である。図4は、図2Bと同じ方向から、第1のコイル1と第2のコイル3とを同時に見ている図である。即ち、図4は、第1のコイル1の支持部材2の、第1のコイル1の取付面の反対側から、第1のコイル1と第2のコイル3とを同時に透視して見ている図である。
【0068】
図4の一番上には、合成インダクタンスGLが最小値になるときの第1のコイル1と第2のコイル3の配置を示す。図4の一番下には、合成インダクタンスGLが最大値になるときの第1のコイル1と第2のコイル3の配置を示す。図4の真ん中には、合成インダクタンスGLが中間値(最小値を上回り最大値を下回る値)になるときの第1のコイル1と第2のコイル3の配置を示す。
【0069】
図4において、表記の都合上、第1のコイル1を実線で示し、第2のコイル3を破線で示す。また、図4において、実線、破線で示す矢印線は、それぞれ、第1のコイル1、第2のコイル3に流れる交流電流の(同時刻における同一の方向から見た場合の)向きを示す。
【0070】
図4の一番上および真ん中では、第1のコイル1が回動することにより、設計原点(図4の一番下に示す状態)から移動した配置を示す。
図4の一番下に示す状態を第1の状態とする。また、図4の一番上に示す状態を第2の状態とする。
図4の一番下に示すように、第1の状態は、第1のコイル1の第1の周回部1aと、第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向する位置にあり、且つ、第1のコイル1の第2の周回部1bと、第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向する位置にある状態である。
【0071】
図4の一番上に示すように、第2の状態は、第1のコイル1の第1の周回部1aと、第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向する位置にあり、且つ、第1のコイル1の第2の周回部1bと、第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向する位置にある状態である。
【0072】
ここで、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bの形状および大きさと、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bの形状および大きさに関し、以下のことが言える。
【0073】
図4の一番下に示す第1の状態において、第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第1の周回部1aの全長の60[%]以上の長さの部分と、第3の周回部3aの全長の60[%]以上の長さの部分とが相互に重なる。また、第1の状態において、第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第2の周回部1bの全長の60[%]以上の長さの部分と、第4の周回部3bの全長の60[%]以上の長さの部分とが相互に重なる。
【0074】
図4の一番上に示す第2の状態において第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第1の周回部1aの全長の60[%]以上の長さの部分と、第4の周回部3bの全長の60[%]以上の長さの部分とが相互に重なる。また、第2の状態において第1のコイル1および第2のコイル3を中心軸に沿う方向(Z軸方向)から見た場合に、第2の周回部1bの全長の60[%]以上の長さの部分と、第3の周回部3aの全長の60[%]以上の長さの部分とが相互に重なる。
尚、以上の説明において、可変倍率βの最低値βminに応じて、60[%]は、78[%]であることが好ましく、91[%]であることがより好ましい。
【0075】
ここで、第1の接続部1cおよび第2の接続部3cの長さは、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの長さに比べて短い。従って、第1のコイル1(第1の周回部1a、第2の周回部1b、および第1の接続部1c)および第2のコイル3(第3の周回部3a、第4の周回部3b、および第2の接続部3c)の形状および大きさが、それらの全長の60[%]以上(好ましくは78[%]以上、より好ましくは91[%]以上)の部分で同じであるとしても実質的な相違はない。
【0076】
従って、前述した説明において、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさに替えて、第1のコイル1(第1の周回部1a、第2の周回部1b、および第1の接続部1c)および第2のコイル3(第3の周回部3a、第4の周回部3b、および第2の接続部3c)の形状および大きさで前述した規定をしてもよい。
【0077】
次に、図4図5A図5B図6A図6Bを参照しながら、リアクトルにおけるインダクタンスの調整方法の一例を説明する。リアクトルにおけるインダクタンスは、前述した合成インダクタンスGLである。
【0078】
図5A図5B図6A図6Bは、第1のコイル1と第2のコイル3に交流電流を流すことにより生じる磁束の向きの一例を示す図である。図5A図5Bでは、第1のコイル1と第2のコイル3を示す回路記号と共に磁束の向きを示す。図6A図6Bでは、リアクトルとして構成・配置された状態での第1のコイル1と第2のコイル3と共に磁束の向きを示す。
【0079】
図5A図6Aは、合成インダクタンスGLが最小値になるときの磁束の向きを示す図である。図5B図6Bは、合成インダクタンスGLが最大値になるときの磁束の向きを示す図である。図5Aおよび図5Bにおいて、第1のコイル1と第2のコイル3に付している矢印は、交流電流の向きであり、第1のコイル1と第2のコイル3とを貫く矢印線は、磁束の向きを示す。図6A図6Bにおいて、○の中に●、×が示されているものは、交流電流の向きを示す。○の中に●が示されているものは、紙面の奥側から手前側に向かう方向を示し、○の中に×が示されているものは、紙面の手前側から奥側に向かう方向を示す。また、図6Aにおいて破線で示す矢印線と、図6Bにおいて矢印と共に実線で示すループは、磁束の向きを示す。
【0080】
図4の一番上に示す第2の状態では、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向し、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向する。そして、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第2の周回部3bに流れる交流電流の(同時刻における同一の方向から見た場合の)向きは相互に逆向きである。同様に、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第3の周回部3aに流れる交流電流の(同時刻における同一の方向から見た場合の)向きは相互に逆向きである。
【0081】
従って、図5Aに示すように、第1のコイル1および第2のコイル3から発生する磁束は相互に弱め合う。この場合の合成インダクタンスGLは、以下の(3)式で表される。
GL=L1+L2−2M ・・・(3)
【0082】
(3)式で表される合成インダクタンスGLが、リアクトルの合成インダクタンスGLの最小値となる。
このとき、第1のコイル1および第2のコイル3に交流電流を流すことにより発生する磁束は図6Aに示すようになる。
【0083】
図4の一番下に示す第1の状態は、図4の一番上に示す第2の状態から、第1のコイルを180[°]回動させた状態である。この第1の状態では、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第3の周回部3aとが相互に対向し、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第4の周回部3bとが相互に対向する。そして、第1のコイル1の第1の周回部1aと第2のコイル3の第3の周回部3aに流れる交流電流の(同時刻における同一の方向から見た場合の)向きは相互に同じ向きである。同様に、第1のコイル1の第2の周回部1bと第2のコイル3の第4の周回部3bに流れる交流電流の(同時刻における同一の方向から見た場合の)向きは相互に同じである。
【0084】
従って、図5Bに示すように、第1のコイル1および第2のコイル3から発生する磁束は相互に強め合う。この場合の合成インダクタンスGLは、以下の(4)式で表される。
GL=L1+L2+2M ・・・(4)
(4)式で表される合成インダクタンスが、合成インダクタンスGLの最大値になる。このとき、第1のコイル1および第2のコイル3に交流電流を流すことにより発生する磁束は図6Bに示すようになる。
【0085】
以上のように、図4の一番上に示す第2の状態から、第1のコイル1を180[°]回転移動させると、図4の一番下に示す第1の状態になる。第1のコイル1を第2のコイル3に対して相対的に回動した位置に置くことにより、第1のコイル1と第2のコイル3に流れる交流電流の(同時刻における同一の方向から見た場合の)向きを相互に同じ向きにしたり逆向きにしたりすることができる。従って、図4の一番下に示す第1の状態のときの第1のコイル1の位置を0[°]とすると、0[°]〜180[°]の範囲内で第1のコイル1の回動位置を決めてその位置まで第1のコイル1を回動し固定すると、合成インダクタンスGLを、その最小値から最大値の範囲のいずれかの値にほぼ正確に設定・固定できる。
【0086】
具体的には、図4の真ん中に示すように、第1のコイル1を、0[°]と180[°]の中間まで回して固定した場合、第1のコイル1のコイル面と第2のコイル3のコイル面のうち、(面1)と記した部分では、第1のコイル1に流れる電流により発生する磁束の向きと第2のコイル3に流れる電流により発生する磁束の向きが、相互に強め合う。一方、(面2)と記した部分では、第1のコイル1に流れる電流により発生する磁束の向きと第2のコイル3に流れる電流により発生する磁束の向きが、相互に弱め合う。従って、第1のコイル1に流れる電流による磁束と第2のコイル3に流れる電流による磁束には、相互に強め合う部分と相互に弱め合う部分とが混在する。よって、合成インダクタンスGLは、その最小値と最大値の間の数値となる。
【0087】
図7は、第1のコイル1および第1の支持部材2と、第2のコイル3および第2の支持部材4とを同一方向から見た図である。具体的に図7では、支持部材2の面のうち第1のコイル1の取付面とは反対側の面を、その上方(Z軸の正の方向から負の方向に向かって)から透視した図を示す。
図7では、支持部材2に形成された移動穴2a、2b、2c、2dと、それらの移動穴2a、2b、2c、2dを貫通するサポート5a、5b、5c、5d(図7ではボルト6a、6b、6c、6dの下に位置する)と、ボルト6a、6b、6c、6dとがそれぞれ嵌合した状態で、移動穴2a、2b、2c、2dに沿って、第1のコイル1と第1の支持部材2とが無段階で回動可能となっている。
【0088】
図7において、第1のコイル1および支持部材2の回動に伴い、合成インダクタンスGLは、最大値より小さい値となる。従って、製作上の誤差等で生じる実際のインダクタンスの値と、インダクタンスの設計値との差を容易に微調整により修正できる。インダクタンスの調整が終了した後、調整後のインダクタンスでリアクトルのインダクタンスを固定するため、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dを用いて、第1のコイル1および第1の支持部材2と、第2のコイル3および第2の支持部材4との相対的な位置が固定される。
【0089】
次に、第1のコイル1および第2のコイル3を構成する部材について説明する。
第1のコイル1および第2のコイル3を構成する導体は、どのような形態であってもよい。第1のコイル1および第2のコイル3を構成する導体として、例えば、水冷ケーブル、空冷ケーブル、または水冷銅管を用いることができる。また、第1のコイル1および第2のコイル3を構成する導体としてケーブルを用いる場合、そのケーブルにおける電線の本数を1本で構成してもよいし、複数本(例えばリッツ線)で構成してもよい。これら電線の形態に応じて、第1のコイル1および第2のコイル3(の電線)に高周波(数百[Hz]〜数百[kHz])の大電流(例えば100[A]以上の電流、好ましくは500[A]以上の電流)を流すことができる。第1のコイル1に交流電流を流すことにより、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bは、それぞれ反対方向の磁界をつくる。同様に、第2のコイル3に交流電流を流すことにより、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bは、それぞれ反対方向の磁界をつくる。
【0090】
第1のコイル1を回動させ、リアクトルのインダクタンスの値として所定のインダクタンスの値が得られた後、第1のコイル1、第2のコイル3を、ボルト6a〜6dおよびナット7a〜7dを用いて、それぞれ、第1の支持部材2および第2の支持部材4に固定する。第1の引出部分1d、第2の引出部1eと、第3の引出部分3d、第4の引出部3eと、図示しない交流電源回路からの固定配線とを相互に接続する。例えば、交流電源回路からの一方の配線を第2の引出部1eに接続し、第1の引出部1dと第3の引出部3dとを相互に接続し、第4の引出部3eを交流電源回路からのもう一方の配線へ接続する。この場合、第1のコイル1と第2のコイル3とは、電気的に直列に接続される。このようにしてリアクトルは電気回路に組み込まれる。リアクトルが組み込まれた電気回路が動作(通電)している間は、第1のコイル1および第1の支持部材2と、第2のコイル3および第2の支持部材4との相対的な位置は固定されたまま変わらない。
【0091】
以上のように本実施形態では、第1の支持部材2に、円弧状の移動穴2a、2b、2c、2dを形成すると共に、第2の支持部材4に穴4a〜4dを形成する。そして、移動穴2a、2b、2c、2dおよび穴4a、4b、4c、4dに、それぞれ、サポート5a、5b、5c、5dおよびボルト6a、6b、6c、6dを挿入した状態として移動穴2a、2b、2c、2dに沿って、第1の支持部材2に取り付けられた第1のコイル1を回動させる。そして、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dを用いて、第1のコイル1および第2のコイル3のコイル面が平行になるように、第1のコイル1を支持する第1の支持部材2と、第2のコイル3を支持する第2の支持部材4を固定する。
【0092】
従って、例えば、インダクタンスの設計値を、合成インダクタンスGLの最大値より若干小さめの値に設定することにより、第1のコイル1を回動して、製造上の誤差等で生じる実際のインダクタンスの値と、インダクタンスの設計値との差を低減することができる。従来のように、コイルの形状、寸法および巻数を変更したり、コア間の間隔(ギャップ)を変更したりする必要がない。従って、極めて短時間に、容易にインダクタンスを修正することができる。よって、大幅なコストの削減につながる。よって、製造・組み上げられたリアクトルのインダクタンスの値を簡単に且つ正確に目標値に調整することができる。さらに、共通の設計・製造過程で製造されたリアクトルを、例えば、様々な製品における広範囲の製品(例えば、電力変換回路や共振回路)に適用することができる。従って、多種多様の仕様に対して広範囲にインダクタンスを容易に変更することができるリアクトルを実現することができる。また、リアクトルに高周波大電流を流すことができる。尚、インダクタンスの調整時の第1のコイル1の設計原点からの回動量は、大きくても小さくても構わない。
【0093】
[変形例1]
本実施形態では、第1のコイル1と第2のコイル3とのうち、第1のコイル1を回動させ、第2のコイル3を固定する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1のコイル1と第2のコイル3の少なくとも何れか一方を回動させるようにしていれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、第1のコイル1と第2のコイル3との双方を回動させてもよい。このようにする場合、例えば、第2のコイル3の第2の支持部材4を、第1のコイル1の第1の支持部材2と同じにすればよい。
【0094】
[変形例2]
本実施形態では、第1のコイル1が180[°]回動するように移動穴2a、2b、2c、2dを構成する場合を例に挙げて説明した。しかしながら、移動穴は、製造上の誤差等で生じる実際のインダクタンスの値と、インダクタンスの設計値との差を修正する範囲をカバーできる長さを有していれば、必ずしもこのようにする必要はない。図8A図8Bは、移動穴の変形例を示す図である。具体的に図8Aは、図2Aに対応する図であり、第1の支持部材81の面のうち、第1のコイル1の取付面をZ軸に沿って見た図である。また、図8Bは、図7に対応する図であり、第1の支持部材81の面のうち第1のコイル1の取付面とは反対側の面を、その上方から透視した図(Z軸の正の方向から負の方向に向かって透視した図)を示す。
【0095】
図8Aおよび図8Bに示すように、4つの独立した移動穴81a〜81dを、第1の支持部材81に形成してもよい。移動穴81a〜81dは、移動穴2a、2b、2c、2dよりも短い円弧状を有する。このようにした場合、サポート5a・ボルト6a、サポート5b・ボルト6b、サポート5c・ボルト6c、サポート5d・ボルト6dは、それぞれ、移動穴81a、81b、81c、81dの形成されている範囲で動く。この場合、第1のコイル1が回動する角度は、180[°]よりも小さい。尚、本変形例の場合でも、変形例1のように、第2の支持部材4を図8Aおよび図8Bに示す支持部材81とすることにより、第2のコイル3を回動させる構成を採用することができる。
【0096】
ここで、第1のコイル1の第1の方向(例えば右回り)における回動角度の絶対値と、第2のコイル3の第2の方向(第1の方向とは反対方向、例えば左回り)における回動角度の絶対値の合計の範囲を0°〜180°にすることができる(即ち、当該合計の最大値を180°にすることができる)。このようにすれば、第1のコイル1および第2のコイル3の双方を回動させることにより、図4の一番下に示す第1の状態と、図4の一番上に示す第2の状態と、それらの状態の間の状態とを連続的に得ることができる。
【0097】
[変形例3]
本実施形態では、第1の支持部材2に移動穴2a、2b、2c、2dを形成することにより、第1のコイル1を回動させる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1のコイル1と第2のコイル3とのうち少なくとも何れか一方を回動していれば、必ずしもこのようにする必要はない。例えば、第1の支持部材2および第2の支持部材4の中心2g、4gの位置に穴を形成し、その穴に回動軸を挿入する。このとき、第1の支持部材2を回動軸に直接または部材を介して連結し、第2の支持部材4を回動軸と連結しないようにする。また、所望の回動角度で回動軸を固定できるようにする。このようにして第1の支持部材2および第2の支持部材4のうち、第1の支持部材2のみを所望の回動角度まで回動できるようにすることができる。第1の支持部材2を所望の回動角度まで回動した後、回動軸を固定し、第1のコイルが回動しないようにする。このようにする場合、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bと、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bとが間隔を有して平行になるように第1のコイル1および第2のコイル3を保持する保持部材と、第1のコイル1が回動しないように第1のコイル1および第2のコイル3を保持する保持部材とを別々の保持部材としてもよい。
【0098】
[変形例4]
本実施形態では、第1のコイル1と第2のコイル3とが直列に接続される場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1のコイル1と第2のコイル3とを並列に接続してもよい。具体的には、交流電源回路からの一方の配線を第1の引出部1dと第3の引出部3eとの双方に接続し、交流電源回路からのもう一方の配線を第2の引出部1eと第4の引出部3dとの双方に接続すればよい。
第1のコイル1と第2のコイル3とを並列に接続した場合、合成インダクタンスGLの最大値は、以下の(5)式で表される。
GL=(L1+M)×(L2+M)÷(L1+L2+2M) ・・・(5)
(5)式で表される合成インダクタンスGLが、並列接続時の合成インダクタンスGLの最大値になる。従って、直列接続の場合と同様、この合成インダクタンスGLの最大値より若干小さめの設計値に設定することで、製造後の合成インダクタンスGLを短時間で精度良く調整・固定できる。
【0099】
[変形例5]
本実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3のコイル面が一定の間隔Gを有した状態で相互に平行になるようにする場合を例に挙げて説明した。しかしながら、必ずしもこのようにする必要はなく、第1のコイル1および第2のコイル3の少なくとも何れか一方をZ軸方向に動かすことにより、間隔Gを変化させてもよい。間隔Gを小さくすると相互インダクタンスMが大きい値となる。一方、間隔Gを大きくすると相互インダクタンスMが小さい値となる。
【0100】
図9は、リアクトルの変形例の構成を示す図である。図9は、図1に対応する図である。尚、表記の都合上、図9では、第1の引出部1d、第2の引出部1e、第3の引出部3d、第4の引出部3eの図示を省略する。図9に示すように、例えば、第1のコイル1の支持部材2と第2のコイル3の支持部材4との間のスペーサ12a、12bを、スペーサ12a、12bよりも長いスペーサ12c、12dに変更して、支持部材2、4の間の長さを長くする。このようにすることにより、第1のコイル1および第2のコイル3の間隔Gを変化させることができる。
【0101】
[変形例6]
((変形例6−1))
第1の周回部、第2の周回部、および第1の接続部により形成される形状は、アラビア数字の8の字状に限定されない。同様に、第3の周回部、第4の周回部、および第2の接続部により形成される形状も、アラビア数字の8の字状に限定されない。例えば、図10Aおよび図10Bのようにしてもよい。
【0102】
図10Aは、第1のコイル101および第1の支持部材102の第1の変形例を示す図である。図10Bは、第2のコイル103および第2の支持部材104の第1の変形例を示す図である。図10Aは、図2Aに対応する図であり、図10Bは、図2Bに対応する図である。
【0103】
第1の支持部材102は、第1のコイル101を支持するための部材である。第1のコイル101は、第1の支持部材102に固定される。図10Aに示すように、第1の支持部材102には、穴102a、102bが形成される。穴102a、102bは、図2Aに示した穴2e、2fに対応するものであり、第1のコイル101を外部に引き出すための穴である。第1の支持部材102は、図2Aに示した第1の支持部材2に対し、穴2e、2fを穴102a、102bとしたものである。
【0104】
第1のコイル101は、第1の周回部101aと、第2の周回部101bと、第1の接続部101cと、第1の引出部101dと、第2の引出部101eとを有する。第1の周回部101a、第2の周回部101b、第1の接続部101c、第1の引出部101d、および第2の引出部101eは、一体である。
【0105】
第1のコイル101の巻回数は1[回]である。第1の周回部101aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第2の周回部101bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第1の周回部101aと第2の周回部101bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0106】
第1の接続部101cは、第1の周回部101aの第1の端101fと、第2の周回部101bの第1の端101gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第1の引出部101dは、第1の周回部101aの第2の端101hに接続される。第1の周回部101aの第2の端101hは、穴102bの位置にある。第2の引出部101eは、第2の周回部101bの第2の端101iに接続される。第2の周回部101bの第2の端101iは、穴102aの位置にある。
【0107】
第2の支持部材104は、第2のコイル103を支持するための部材である。第2のコイル103は、第2の支持部材104に、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dにより固定される。図10Bに示すように、第2の支持部材104には、第2のコイル103が第2の支持部材104に取り付けられるようにするための穴4a〜4d、104a、104bが形成される。穴104a、104bは、穴4e、4fに対するものであり、第2のコイル103を外部に引き出すための穴である。第2の支持部材104は、図2Bに示した第2の支持部材に対し、穴4e、4fを穴104a、104bとしたものである。
【0108】
第2のコイル103は、第3の周回部103aと、第4の周回部103bと、第2の接続部103cと、第3の引出部103dと、第4の引出部103eとを有する。第3の周回部103a、第4の周回部103b、第2の接続部103c、第3の引出部103d、および第4の引出部103eは、一体である。
【0109】
第2のコイル103の巻回数は1[回]である。第3の周回部103aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第4の周回部103bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第3の周回部103aと第4の周回部103bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0110】
第2の接続部103cは、第3の周回部103aの第1の端103fと、第4の周回部103bの第1の端103gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第3の引出部103dは、第3の周回部103aの第2の端103hに接続される。第3の周回部103aの第2の端103hは、穴104aの位置にある。第4の引出部103eは、第4の周回部103bの第2の端103iに接続される。第4の周回部103bの第2の端103iは、穴104bの位置にある。
【0111】
尚、第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部の最外周の輪郭の形状は、その他の形状(例えば、真円、楕円、矩形)であってもよい。
【0112】
((変形例6−2))
第1の周回部および第2の周回部の接続と、第3の周回部および第4の周回部の接続は、図2Aおよび図2Bに示す接続に限定されない。即ち、第1の周回部および第2の周回部を流れる交流電流の向きと、第3の周回部および第4の周回部を流れる交流電流の向きは、図2Aおよび図2Bに示す向きに限定されない。
【0113】
図11Aは、第1のコイル111および第1の支持部材112の第2の変形例を示す図である。図11Bは、第2のコイル113および第2の支持部材114の第2の変形例を示す図である。図11Aは、図2Aに対応する図であり、図11Bは、図2Bに対応する図である。
【0114】
第1の支持部材112は、第1のコイル111を支持するための部材である。第1のコイル111は、第1の支持部材112に、固定される。図11Aに示すように、第1の支持部材112には、穴112a、112bが形成される。穴112a、112bは、図2Aに示した穴2e、2fに対応するものであり、第1のコイル111を外部に引き出すための穴である。第1の支持部材112は、図2Aに示した第1の支持部材2に対し、穴2e、2fを穴112a、112bとしたものである。
【0115】
第1のコイル111は、第1の周回部111aと、第2の周回部111bと、第1の接続部111cと、第1の引出部111dと、第2の引出部111eとを有する。第1の周回部111a、第2の周回部111b、第1の接続部111c、第1の引出部111d、および第2の引出部111eは、一体である。
【0116】
第1のコイル111の巻回数は1[回]である。第1の周回部111aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第2の周回部111bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第1の周回部111aと第2の周回部111bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0117】
第1の接続部111cは、第1の周回部111aの第1の端111fと、第2の周回部111bの第1の端111gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第1の引出部111dは、第1の周回部111aの第2の端111hに接続される。第1の周回部111aの第2の端111hは、穴112bの位置にある。第2の引出部111eは、第2の周回部111bの第2の端111iに接続される。第2の周回部111bの第2の端111iは、穴112aの位置にある。
【0118】
第2の支持部材114は、第2のコイル113を支持するための部材である。第2のコイル113は、第2の支持部材114に、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dにより固定される。図11Bに示すように、第2の支持部材114には、第2のコイル113が第2の支持部材114に取り付けられるようにするための穴4a〜4d、114a、114bが形成される。穴114a、114bは、穴4e、4fに対するものであり、第2のコイル113を外部に引き出すための穴である。第2の支持部材114は、図2Bに示した第2の支持部材に対し、穴4e、4fを穴114a、114bとしたものである。
【0119】
第2のコイル113は、第3の周回部113aと、第4の周回部113bと、第2の接続部113cと、第3の引出部113dと、第4の引出部113eとを有する。第3の周回部113a、第4の周回部113b、第2の接続部113c、第3の引出部113d、および第4の引出部113eは、一体である。
【0120】
第3の周回部113aは、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第4の周回部113bも、その内側の領域を囲むように周回する部分である。第3の周回部113aと第4の周回部113bは、同一の水平面(X−Y平面)に配置される。
【0121】
第2の接続部113cは、第3の周回部113aの第1の端113fと、第4の周回部113bの第1の端113gとを相互に接続する部分であり、周回していない部分である。
第3の引出部113dは、第3の周回部113aの第2の端113hに接続される。第3の周回部113aの第2の端113hは、穴114aの位置にある。第4の引出部113eは、第4の周回部113bの第2の端113iに接続される。第4の周回部113bの第2の端113iは、穴114bの位置にある。
【0122】
図2A図2Bに示す構成では、図2A図2Bの紙面に向かって、同時刻において、第1の周回部1aでは左回りに電流が流れ、第2の周回部1bでは右回りに電流は流れ、第3の周回部3aでは右回りに電流が流れ、第4の周回部3bでは左回りに流れる。従って、2つの周回部(第1の周回部1aと第2の周回部1b、第3の周回部3aと第4の周回部3b)に流れる電流の向きは逆向きである。
【0123】
これに対し、図11A図11Bに示す構成では、図11A図11Bの紙面に向かって、同時刻において、第1の周回部111aおよび第2の周回部111bでは右回りに電流が流れ、第3の周回部113aおよび第4の周回部113bでは右回りに電流が流れる。従って、2つの周回部(第1の周回部111aおよび第2の周回部111b、第3の周回部113aおよび第4の周回部113b)に流れる電流の向きは同じ向きである(図11Aおよび図11Bにおいて第1のコイル111および第2のコイル113の傍らに示す矢印線を参照)。図11A図11Bに示す場合の合成インダクタンスGLの交流電源回路から見た可変倍率βは、図2A図2Bに示す構成の場合と異なるが、合成インダクタンスGLを変化させる原理は、図2A図2Bおよび図11A図11Bに示す何れの構成でも同じである。
【0124】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を説明する。第1の実施形態では、第1のコイル1を回動させる場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第1のコイル1を、Z軸に垂直な方向(第1のコイル1のコイル面に沿う方向)へ平行移動させる場合を例に挙げて説明する。尚、垂直とは、厳密に垂直でなくてもよく、例えば、設計上の公差の範囲内であれば、垂直であるといえる。このことは、以下の説明における「垂直」についても同じである。このように本実施形態と第1の実施形態とでは、第1のコイル1を動かすための構成の一部が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1図11Bに付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0125】
本実施形態と第1の実施形態との違いは、第1の支持部材2に形成される移動穴である。
図12Aは、本実施形態の第1の支持部材121の構成の一例を示す図である。図12Aは、図2Aに対応する図である。図12Aは、第1の支持部材121の面のうち、第1のコイル1の取付面をZ軸に沿って見た図である。図12Bは、第1のコイル1および第1の支持部材121と、第2のコイル3および第2の支持部材4とを同一方向から見た図である。図12Bは、図7に対応する図である。図12Bは、第1の支持部材121の面のうち、第1のコイル1の取付面とは反対側の面を、その上方から透視した図(Z軸の正の方向から負の方向に向かって透視した図)を示す。
【0126】
図12Aに示すように、移動穴121a〜121dは、長手方向(図12ではY軸方向)が相互に平行なトラック状(長方形に対し短辺を外側に突出する半円弧状とした形状)を有する。移動穴121a〜121dの形状および大きさは同じである。移動穴121a、121bのY軸方向の位置およびZ軸方向の位置は同じであり、X軸方向の位置が異なる。移動穴121c、121dのY軸方向の位置およびZ軸方向の位置は同じであり、X軸方向の位置が異なる。また、移動穴121a、121cのX軸方向の位置およびZ軸方向の位置は同じであり、Y軸方向の位置が異なる。移動穴121b、121dのX軸方向の位置およびZ軸の位置は同じであり、Y軸方向の位置が異なる。移動穴121a〜121dは、移動穴121a、121b、121c、121dに挿入されたサポート5a、5b、5c、5dおよびボルト6a、6b、6c、6dがY軸方向に平行移動できる大きさおよび形状を有する。尚、形状、大きさ、位置は、厳密に同じでなくてもよく、例えば、設計上の公差の範囲内であれば同じといえる。
【0127】
図12Bに示すように、第1のコイル1を取り付けた第1の支持部材121に形成された移動穴121a、121b、121c、121dと、その移動穴121a、121b、121c、121dを貫通するサポート5a、5b、5c、5dと、ボルト6a、6b、6c、6dとがそれぞれ嵌合した状態で、移動穴121a、121b、121c、121dに沿って、第1のコイル1と第1の支持部材121とが無段階で平行移動可能となっている。図12Bでは、サポート5a、5b、5c、5dは、ボルト6a、6b、6c、6dの下に(Z軸の負の方向側に)位置する。このように、サポート5a・ボルト6a、サポート5b・ボルト6b、サポート5c・ボルト6c、サポート5d・ボルト6dは、それぞれ、移動穴121a、121b、121c、121dの形成されている範囲で動く。このため、図12Bに示すように、第1のコイル1が取り付けられた第1の支持部材121は、Y軸方向に平行移動する。
【0128】
図12Bにおいて、第1のコイル1と第1の支持部材121の平行移動に伴い、合成インダクタンスGLは、最大値より小さい値となる。従って、製作上の誤差等で生じる実際のインダクタンスの値と、インダクタンスの設計値との差を容易に微調整により修正できる。インダクタンスの調整が終了した後、調整後のインダクタンスでリアクトルのインダクタンスを固定するため、サポート5a〜5d、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dを用いて、第1の支持部材121および第2の支持部材4の相対的な位置が固定される。本実施形態では、サポート5a〜5d、12a、12b、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dは、保持部材として機能する。本実施形態では、保持部材は、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bと、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bとが間隔を有して平行になる状態で、平行移動により位置が調整された第1のコイル1が動かないように第1のコイル1および第2のコイル3を保持する。
【0129】
図13は、第1のコイル1と第2のコイル3の位置関係の一例を示す図である。図13は、図4真ん中の図に対応する図である。尚、合成インダクタンスGLが最小値、最大値になるときの第1のコイル1と第2のコイル3との配置の一例は、それぞれ、図4の一番上の図、図4一番下の図と同じになる。
【0130】
図13に示すように、第1のコイル1をY軸方向に平行移動して固定した場合、第1のコイル1のコイル面と第2のコイル3のコイル面のうち、(面1)と記した部分では、第1のコイル1に流れる電流により発生する磁束の向きと第2のコイル3に流れる電流により発生する磁束の向きが、相互に強め合う。一方、(面2)と記した部分では、第1のコイル1に流れる電流により発生する磁束の向きと第2のコイル3に流れる電流により発生する磁束の向きが、相互に弱め合う。従って、第1のコイル1に流れる電流による磁束と第2のコイル3に流れる電流による磁束には、相互に強め合う部分と相互に弱め合う部分とが混在する。よって、合成インダクタンスGLは、その最小値と最大値の間の数値となる。
【0131】
以上のように、第1のコイル1を第2のコイル3に対し平行移動させても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
本実施形態においても、第1の実施形態で説明した変形例1、3〜6の変形例を採用することができる。また、製造上の誤差等で生じる実際のインダクタンスの値と、インダクタンスの設計値との差を修正する範囲をカバーできる長さを有していれば、必ずしも、図12Aおよび図12Bに示すように移動穴121a〜121dを構成しなくてもよい。例えば、移動穴121a、121cを繋いだ移動穴と、移動穴121b、121dを繋いだ移動穴との2つの移動穴を、第1の支持部材に形成してもよい。また、第2の支持部材4を、第1の実施形態で説明した第1の支持部材2に変更することにより、第1のコイル1を平行移動させ、第2のコイル3を回動させるようにしてもよい。
【0132】
尚、本実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3は回動しない。そこで、本実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3が第1の実施形態と同様にして回動するものとして、第1の周回部1a、第2の周回部1b、第3の周回部3a、および第4の周回部3bの形状および大きさについての、第1の実施形態で説明した規定を適用する。
【0133】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を説明する。第1の実施形態では、第1のコイル1を回動させる場合を例に挙げて説明し、第2の実施形態では、第1のコイル1を平行移動させる場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第1のコイル1の回動および平行移動の双方を実現する場合を例に挙げて説明する。このように本実施形態と第1〜第2の実施形態とでは、第1のコイル1を動かすための構成の一部が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1〜第2の実施形態と同一の部分については、図1図13に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0134】
本実施形態と第1〜第2の実施形態との違いは、第1の支持部材2に形成される移動穴である。
図14は、本実施形態の第1のコイル1および第1の支持部材141の構成の一例を示す図である。図14は、図2Aに対応する図であり、第1の支持部材141の面のうち、第1のコイル1の取付面をZ軸に沿って見た図である。
図14に示すように、移動穴141a、141b、141c、141dは、それぞれ、円弧状の領域142a、142b、142c、142dと、突出領域143a、143b、143c、143dとを有する。移動穴141a、141b、141c、141dは、第1の実施形態で説明した移動穴2a、2b、2c、2dと第2の実施形態で説明した移動穴121a、121b、121c、121dとを合成したものである。ただし、移動穴121a、121b、121c、121dと重複する部分は、移動穴2a、2b、2c、2dの領域から除かれる。
【0135】
第1のコイル1を取り付けた第1の支持部材141に形成された移動穴141a、141b、141c、141dと、それらの移動穴141a、141b、141c、141dをそれぞれ貫通するサポート5a、5b、5c、5dと、ボルト6a、6b、6c、6dとがそれぞれ嵌合した状態で、移動穴141a、141b、141c、141dの円弧状の領域142a、142b、142c、142dに沿って、第1のコイル1と第1の支持部材141とが回動可能となっている。
また、サポート5a、5b、5c、5dおよびボルト6a、6b、6c、6dが、それぞれ、突出領域143a、143b、143c、143dにある状態で、第1の支持部材141を突出領域143a、143b、143c、143dに沿って移動させることで、第1のコイル1および第1の支持部材141が平行移動可能となっている。本実施形態では、サポート5a〜5d、12a、12b、ボルト6a〜6d、およびナット7a〜7dは、保持部材として機能する。本実施形態では、保持部材は、第1の周回部1aおよび第2の周回部1bと、第3の周回部3aおよび第4の周回部3bとが間隔を有して平行になる状態で、回動および平行の両方または一方により位置が調整された第1のコイル1が動かないように第1のコイル1および第2のコイル3を保持する。
【0136】
以上のように、第1のコイル1を第2のコイル3に対し回動および平行移動させても、第1〜第2の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、このようにすれば、リアクトルのインダクタンスの値の調整範囲をより拡大することができる。また、本実施形態でも、第1〜第2の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0137】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を説明する。第1〜第3の実施形態では、第1のコイル1および第2のコイル3の巻回数がそれぞれ1回である場合を例に挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、第1コイルおよび第2コイルの巻回数が複数回である場合について説明する。このような本実施形態と第1〜第3の実施形態は、第1コイルおよび第2コイルの巻回数が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1の実施形態と同一の部分については、図1図14に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0138】
<第1の例>
図15は、本実施形態のリアクトルの構成の第1の例を示す図である。図15は、図1に対応する図である。図16Aは、第1のコイル151および第1の支持部材2の構成の一例を示す図である。図16Bは、第2のコイル152および第2の支持部材4の構成の一例を示す図である。図16A図16Bは、それぞれ、図2A図2Bに対応する図である。
【0139】
本例では、図15図16A、および図16Bに示すように、第1のコイル151および第2のコイル152の巻回数をそれぞれ2回とし、同じ巻回数としている。また、図15図16A、および図16Bに示すように、第1のコイル151および第2のコイル152の形状を平巻形状としている。ここで、平巻とは、図15図16A、および図16Bに示すように、コイル面に平行な方向に沿って、複数回コイルを巻き回すことをいう。
【0140】
このように平巻形状にすれば、第1のコイル151と第2のコイル152を、それらのコイル面が間隔Gを有して相互に平行になるように配置したときに、図15に示すコイル幅Wを広くすることができる。コイル幅Wとは、コイルを構成したときに相互に隣接する導体群の、コイル面に平行な方向(図15ではX軸方向)の長さである。間隔Gが同じであれば、コイル幅Wが広いほど、間隔Gの間を磁束が通りづらくなり、磁気抵抗が大きくなる。従って、第1のコイル151と第2のコイル152との相互インダクタンスMが大きくなる。本実施形態においても、第1の実施形態で説明したのと同様の方法で、第1のコイル151を回動して、製造上の誤差等で生じる実際のインダクタンスの値と、インダクタンスの設計値との差を低減することができる。
以上のように第1のコイル151と第2のコイル152を平巻形状として、巻回数を複数回としても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0141】
<第2の例>
図17は、本実施形態のリアクトルの構成の第2の例を示す図である。図17は、図1に対応する図である。図18Aは、第1のコイル171および第1の支持部材2の構成の一例を示す図である。図18Bは、第2のコイル172および第2の支持部材4の構成の一例を示す図である。図18A図18Bは、それぞれ、図2A図2Bに対応する図である。
【0142】
本例では、図17図18A、および図18Bに示すように、第1のコイル171および第2のコイル172の巻回数をそれぞれ2回とし、同じ巻回数としている。また、図17図18A、および図18Bに示すように、第1のコイル171と第2のコイル172の形状を縦巻形状としている。ここで、縦巻とは、図17図18A、および図18Bに示すように、コイル面に垂直な方向(図17ではZ軸方向)に沿って、複数回コイルを巻き回すことをいう。
【0143】
このように縦巻形状にした場合には、コイル幅Wは、巻回数が1回の場合と同じである。
同じ巻回数とした場合、平巻形状に比べ縦巻形状の方が、2つのコイル間の相互インダクタンスMは小さくなる。しかしながら、リアクトルとしてのインダクタンスの調整方法は平巻形状と縦巻形状とで変わりはない。
以上のように第1のコイル171と第2のコイル172を縦巻形状として、巻回数を複数回としても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。
【0144】
<変形例>
本実施形態では、巻回数が2回である場合を例に挙げて説明した。しかしながら、巻回数は2回に限定されず、3回以上であってもよい。巻回数は、リアクトルの大きさ、合成インダクタンスGLの大きさ、およびリアクトルのコスト等に応じて決めればよい。また、本実施形態では、第1のコイル151の巻回数と第2のコイル152の巻回数とが同じであり、第1のコイル171の巻回数と第2のコイル172の巻回数とが同じである場合を例に挙げて説明した。しかしながら、これらの巻回数は異なっていてもよい。
【0145】
また、本実施形態では、第1の実施形態で説明した第1の支持部材2に対して、第1のコイル151、171と第2のコイル152、172を適用する場合を例に挙げて示した。しかしながら、例えば、第1の実施形態の変形例2、第2の実施形態、または第3の実施形態で説明した第1の支持部材81、121、141に対して、第1のコイル151、171と第2のコイル152、172を適用してもよい。また、第1の実施形態の変形例6で説明した第1のコイル101、111および第2のコイル103、113に対して本実施形態の手法を適用してもよい。
また、本実施形態においても、第1〜第3の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。
【0146】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態を説明する。第1〜第4の実施形態では、それぞれ1つのコイルが取り付けられた2つの支持部材(例えば第1の支持部材2および第2の支持部材4)を、コイル間の距離が間隔Gになるように平行に配置する例を挙げて説明した。これに対し、本実施形態では、1つの支持部材(例えば第1の支持部材2および第2の支持部材4)に取り付けるコイルが複数である場合を例に挙げて説明する。このように、本実施形態と第1〜第4の実施形態は、1つの支持部材に取り付けるコイルの数が異なることによる構成が主として異なる。従って、本実施形態の説明において、第1〜第4の実施形態と同一の部分については、図1図18に付した符号と同一の符号を付す等して詳細な説明を省略する。
【0147】
図19Aは、第1のコイル191a、191bおよび第1の支持部材192の構成の一例を示す図である。図19Bは、第2のコイル193a、193bおよび第2の支持部材194の構成の一例を示す図である。
第1のコイル191a、191bは、それらのコイル面(8の字状の部分)の中央部が相互に重なり、且つ、それらのコイル面がちょうど90[°]ずれた状態で第1の支持部材192上に配置・固定される。即ち、第1のコイル191a、191bは、第1の支持部材192の中心を通り、且つ、第1の支持部材192の板面に垂直な軸を対称軸として、4回対称の位置に配置・固定される。
【0148】
同様に、第2のコイル193a、193bは、それらのコイル面(8の字状の部分)の中央部が相互に重なり、且つ、それらのコイル面がちょうど90[°]ずれた状態で第2の支持部材194上に配置・固定される。即ち、第のコイル193a、193bは、第2の支持部材194の中心を通り、且つ、第2の支持部材194の板面に垂直な軸を対称軸として、4回対称の位置に配置・固定される。
【0149】
また、第1の実施形態等で説明したように、第1のコイル191a、191bおよび第1の支持部材192を配置した際に、第1のコイル191a、191bと第2のコイル193a、193bとが間隔Gを有した状態で、第1のコイル191a、191bと第2のコイル193a、193bのコイル面(第1の支持部材192および第2の支持部材194の板面)が平行になるようにする。間隔Gは、一定であっても可変であってもよい。
【0150】
第1の支持部材192には、第1のコイル191aが第1の支持部材192に取り付けられるようにするための穴192a、192bが形成されると共に、第1のコイル191bが第1の支持部材192に取り付けられるようにするための穴192c、192d、192e、192fが形成される。穴192e、192fは、第1のコイル191a、191bが図19Aに示す面上で相互に干渉しないように、第1のコイル191bの第1のコイル191aに重なる部分を、図19Aに示す面とは反対側の面に配置するためのものである。また、図19Aに示す例では、第1の支持部材192には、リアクトルのインダクタンスの値を調整するために第1の支持部材192を平行移動するための移動穴192g〜192jが形成されている。移動穴192g〜192jは、図12Aおよび図12Bに示した移動穴121a〜121dと同じ役割を有する。
【0151】
第2の支持部材194には、第2のコイル193aが第2の支持部材194に取り付けられるようにするための穴194a、194bが形成されると共に、第2のコイル193bが第2の支持部材194に取り付けられるようにするための穴194c、194d、194e、194fが形成される。穴194e、194fは、第2のコイル193a、193bが図19Bに示す面上で相互に干渉しないように、第2のコイル193bの第2のコイル193aと重なる部分を、図19Bに示す面とは反対側の面に位置するためのものである。また、第2の支持部材194には、第2のコイル193a、193bが第2の支持部材194に取り付けられるようにするための穴194g〜194jが形成されている。穴194g〜194jは、図2Bに示した穴4a〜4dと同じ役割を有する。
以上のように、1つの支持部材(第1の支持部材192および第2の支持部材194)に複数のコイル191a、191b、193a、193bに取り付けても、第1の実施形態と同様の効果が得られる。さらに、このようにすれば、リアクトルのインダクタンスの値の調整範囲をより拡大することができる。
【0152】
<変形例>
本実施形態では、第1のコイル191a、191bおよび第2のコイル193a、193bが、それぞれ90[°]ずれて配置される場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1のコイルの数および第2のコイルの数は、3以上あってもよい。第1のコイルの数をNとし第2のコイルの数をNとする(Nは2以上の整数)。N個のコイルの配置される角度が90/(N/2)[°]ずれた状態とする。そうすると、N個の第1のコイルおよびN個の第2のコイルによる合成インダクタンスGLを、図4を参照しながら説明した合成インダクタンスGLの調整の理論により加減・調整できることとなる。
【0153】
また、本実施形態では、複数の第1のコイル191a、191bが取り付けられた第1の支持部材192を平行移動させる場合を例に挙げて説明した。しかしながら、第1の実施形態で説明したように、複数の第1のコイルが取り付けられた第1の支持部材を回動させてもよい。また、第3の実施形態で説明したように、複数の第1のコイルが取り付けられた第1の支持部材が回動および平行移動の双方を行うようにしてもよい。また、本実施形態でも、第1〜第4の実施形態で説明した種々の変形例を採用することができる。尚、第1のコイル191a、191bおよび第2のコイル193a、193bの接続は、全てを直列に接続しても、全てを並列に接続しても、一部を直列に他の一部を並列に接続してもよい。
【0154】
(実施例)
次に、実施例を説明する。
<実施例1>
本実施例では、第4の実施形態の第1の例のリアクトルを用いた。
第1のコイル151および第2のコイル152の形状は図15に示す形状である。第1のコイル151の第1の周回部151aおよび第2の周回部151bの長手方向の長さを400[mm]とし、短手方向の長さを200[mm]とした。第2のコイル152の第3の周回部152aおよび第4の周回部152bの長手方向の長さを400[mm]とし、短手方向の長さを200[mm]とした。
【0155】
45sqのリッツ線をホースに通したものを第1のコイル151および第2のコイル152とした。第1のコイル151および第2のコイル152は同じものである。第1のコイル151および第2のコイル152を直列に接続した。
第2コイル152を固定したまま第1のコイル151を第2コイル152に対し相対的に回動し、回動角度を調整した。それぞれの回動角度で第1のコイル151を保持した状態で、第1のコイル151および第2のコイル152に、20[kHz]、1000[A]の高周波電流を流して合成インダクタンスGLと、リアクトルの電力損失とを測定した。
【0156】
第2のコイル152を固定したまま第1のコイル151を第2のコイル152に対し相対的に回動させると、合成インダクタンスGLが変化し、その回動角度を調整することにより、インダクタンスの微調整が可能であることを確認した。
【0157】
第2のコイル152を固定したまま第1のコイル151を第2のコイル152に対し相対的に回動した場合、合成インダクタンスGLが最小値となるのは、第1のコイル151の第1の周回部151aと第2のコイル152の第4の周回部152bとが相互に重なり、且つ、第1のコイル151の第2の周回部151bと第2のコイル152の第3の周回部152aとが相互に重なる場合であった(図4の一番上の図に示す状態を参照)。この場合のリアクトルのインダクタンスの値は4.0[μH]であり、リアクトルの電力損失は8.1[kW]であった。
【0158】
一方、第2のコイル152を固定したまま第1のコイル151を第2のコイル152に対し相対的に回動した場合、合成インダクタンスGLが最大値となるのは、第1のコイル151の第1の周回部151aと第2のコイル152の第3の周回部152aとが相互に重なり、且つ、第1のコイル151の第2の周回部151bと第2のコイル152の第4の周回部152bとが相互に重なる場合であった(図4の一番下の図に示す状態を参照)。この場合のリアクトルのインダクタンスの値は13.5[μH]であった。また、リアクトルの電力損失は8.0[kW]であり、合成インダクタンスGLが最小値の場合と殆ど変化が無かった。
【0159】
実施例1に示す検証試験結果により、製造・組み上げられたリアクトルのインダクタンスの値を簡単に且つ正確に目標値に調整できることが確認できた。また、従来、インダクタンスの仕様が、例えば5[μH]、8[μH]、12[μH]と3種類の異なるリアクトルを設計・製造する場合、3つの異なるリアクトルを設計・製造し、その後、製造したリアクトルを調整する必要があった。これに対し、本実施例では、1台のリアクトルを設計・製造するのみで、出荷時の調整により、それぞれ5[μH]、8[μH]、12[μH]の異なる仕様のリアクトルを実現でき、設計・製造工程が大幅にコストダウンできることを確認した。
尚、第4の実施形態の第1の例の第1のコイル151および第2のコイル152を、図12Aおよび図12Bに示した第2の実施形態の支持部材121に適用し、第2のコイル152を固定したまま第1のコイル151を、第2のコイル152に対し相対的に平行移動した場合にも、合成インダクタンスGLが変化し、その移動量を調整することにより、インダクタンスの微調整が可能であることを確認した。
【0160】
<実施例2>
本実施例では、第5の実施形態の第1のコイル191a、191bおよび第2のコイル193a、193bの巻回数を5回とし、且つ、第2のコイル193a、193bを固定した状態で、第1のコイル191a、191bを回動できるリアクトルを作製した。第1のコイルおよび第2のコイルの形状は図19Aおよび図19Bに示す形状である(ただし、第1のコイルおよび第2のコイルの形状は平巻形状としている)。
第1のコイルおよび第2のコイルの各周回部(第1の周回部、第2の周回部、第3の周回部、および第4の周回部)の長さを、約400[mm]とした。
また、ホースに45sqのリッツ線を通したものを、第1のコイルおよび第2のコイルとした。第1のコイル191a、191bおよび第2のコイル193a、193bは同じものである。全てのコイルを直列に接続した。
【0161】
第2のコイルに対し、第1のコイルを相対的に回転し、第1のコイルの位置を、合成インダクタンスGLが最大値となる位置に調整し、その位置で第1のコイルを固定した。このようにして構成したリアクトルに20[kHz]、500[A]の高周波電流を通電した。
リアクトルのインダクタンスを測定し、第1のコイルの位置の調整に要した時間は1時間であった。合成インダクタンスGLの最大値は51.5[μH]であり、リアクトルの電力損失は7.2[kW]であった。
【0162】
発明者らの実績によると、特許文献2に記載のコア入り高周波リアクトルにおいて、本実施例のリアクトルと同等の仕様の20[kHz]、500[A]、50[μH]のリアクトルを新規に製造する場合、製造と、通電試験と、インダクタンスの測定とを行った後、リアクトルのインダクタンスを目標値に調整する。このため、一度装置を解体してコアのギャップを加減したうえで、再組立と、通電試験とを行い、インダクタンスを再測定する工程が必要であった。
リアクトルの解体、再組立が追加の1回のみで終了した場合でも、最低1日間の工程が必要であった。これに対し、本実施例では、前述したように、リアクトルの製造後、リアクトルのインダクタンスを1時間で目標値に調整することができ、リアクトルのインダクタンスの調整工程の大幅な短縮によるコストダウン効果を確認した。
【0163】
尚、以上説明した本発明の実施形態および実施例は、何れも本発明を実施するにあたっての具体化の例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその技術思想、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明は、誘導性負荷を有する電気回路等に利用できる。
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図14
図15
図16A
図16B
図17
図18A
図18B
図19A
図19B