(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676777
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】最適化された電子スリッピングクラッチの休止挙動
(51)【国際特許分類】
B25B 23/14 20060101AFI20200330BHJP
B25B 23/147 20060101ALI20200330BHJP
B25B 23/157 20060101ALI20200330BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
B25B23/14 630G
B25B23/14 610A
B25B23/147
B25B23/157 Z
B25F5/00 G
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2018-553085(P2018-553085)
(86)(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公表番号】特表2019-513567(P2019-513567A)
(43)【公表日】2019年5月30日
(86)【国際出願番号】EP2017055789
(87)【国際公開番号】WO2017174300
(87)【国際公開日】20171012
【審査請求日】2018年10月6日
(31)【優先権主張番号】16164008.1
(32)【優先日】2016年4月6日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】ベネディクト ベッカート
(72)【発明者】
【氏名】ゲルマー マイエンドレス
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフガング シューベルト
【審査官】
亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−066947(JP,A)
【文献】
実開昭59−046676(JP,U)
【文献】
特開2012−045679(JP,A)
【文献】
特開平08−099270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25B 21/00 − 23/18
B25F 5/00
B25D 11/00
F16D 41/00 − 47/06
F16D 48/00 − 48/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動工具(1)のクラッチ(5)を操作する方法であって、前記電動工具(1)は電気モータ(3)と、前記電動工具(1)のモータ電力の制御のための制御装置(8)と、少なくとも1つのセンサ(12)とを備え、前記電動工具(1)は第1の操作モード又は第2の操作モードで操作可能であり、前記第1の操作モードにおいて前記クラッチ(5)は前記電気モータ(3)の速度が所定の速度閾値を下回った場合に所定の期間後に起動され、前記第2の操作モードにおいて前記クラッチ(5)は第1の所定のモータ電流閾値を上回った場合に起動され、
前記第2の操作モードを設定する工程と、
前記電気モータ(3)のモータ電流を測定する工程と、
前記第1の所定のモータ電流閾値より低い第2の所定のモータ電流閾値を超えた場合にモータ速度を第1の速度値から第2の速度値へと低下させる工程であって、よって前記電動工具(1)により生成することができるトルクが第1のトルク値から第2のトルク値へと上昇する工程と
を備える、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記電動工具(1)の位置値及びアライメント値を前記少なくとも1つのセンサ(12)で取得する工程と、
最初に取得された位置値と2番目に取得された位置値との差又は最初に取得されたアライメント値と2番目に取得されたアライメント値との差が所定の閾値を下回った場合に、同じねじがなおもねじ止めされようとしていると仮定し、前記モータ速度を第1の速度値から第2の速度値へと低下させる工程と
をさらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電動工具(1)の起動スイッチ(9)を起動モードに設定する工程と、
前記起動スイッチ(9)を休止モードに設定する工程と、
前記起動スイッチ(9)を再起動モードに設定する工程であって、前記電動工具(1)の位置値及びアライメント値を前記少なくとも1つのセンサ(12)で取得し、最初に取得された前記位置値と2番目に取得された前記位置値との差又は最初に取得されたアライメント値と2番目に取得されたアライメント値との差が所定の閾値を下回った場合に、同じねじがなおもねじ止めされようとしていると仮定し、前記モータ速度を第1の速度値から第2の速度値へと低下させるか、前記電気モータ(3)をパルス駆動とする工程と
を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
請求項1乃至3の少なくとも1つに記載の方法において用いられる電動工具(1)。
【請求項5】
少なくとも1つの第1のギアと、少なくとも1つの第2のギアとからなるトランスミッション(4)を備え、前記1つのギアでは、前記電動工具(1)により生成することができるトルクがモータ電流の増加と対数比にあり、別の1つのギアでは、前記電動工具(1)により生成することができるトルクがモータ電流の増加と線形比にある、ことを特徴とする請求項4に記載の電動工具(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動工具、特に電動締付け機(スクリュードライバーあるいはスクリュードライバードリル)のクラッチを操作する方法に関する。このような電動工具は電気モータと、電動工具のモータ電力の開ループ制御及び閉ループ制御のための開閉ループ制御装置と、少なくとも1つのセンサとを備える。この電動工具は第1の操作モード又は第2の操作モードで操作可能であり、第1の操作モードにおいてクラッチが所定の期間後に起動されるのは速度が所定の速度閾値を下回った場合であり、第2の操作モードにおいてクラッチが起動されるのは第1の所定のモータ電流閾値を上回った場合である。
【0002】
さらに、本発明は、本発明の方法を用いて操作可能な電動工具に関する。
【背景技術】
【0003】
電動締付け機は、本来的にねじを他の材料(被締付け物)にねじ止めするために用いられる。これらの材料は、例えば、木材、プラスチック、金属、鉱物材料等である。
【0004】
電動締付け機のドリルでねじを材料に徐々に挿入して材料にねじ込む際には、加える力の相当分又はトルクの相当分を増加させて、ねじをほぼ一定速度で打ち込みができるようにすることが必要である。特に、いわゆるねじ頭部の埋め込み(皿穴へ沈み込ませ)、具体的には、ねじ頭部が平面状表面のねじ(皿ねじ)の終端部を材料表面と面一にするには、高い電力出力、具体的には、大きな力の作用及びより高い電動工具のトルクが必要となる。その理由はねじ頭部の特別な形状にある。このねじ頭部は一般的には円錐台の形状を有するため、その部分を材料内に埋め込もうとしたときには相応に抵抗力が高くなるのである。
【0005】
このような場合、長さが同一の複数のねじを、硬度が一定ではない材料にねじ止めして面一(ねじ頭部を材料表面と面一にする)にする場合に問題が生じる。特に木材の構造は連続的に均一でないことが多いため、木材の硬度は(場所により)大きく異なることがある。木材の第1の箇所で第1のねじを締付けするときには、比較的小さな力を加えるか又は比較的小さなトルクしか必要としないこともあり得る。しかし、第2の(同じ)ねじを同じ木材のもう一つの箇所に同じ深さまで締付けようとするとき、実質的により大きな力を作用させるか、又はより大きなトルクを生成させる必要性が生じ得る。この問題は、ねじ頭部が円錐台の形状のねじ(皿ねじ)を材料表面と面一になるように埋め込んでねじ止めしようとする際に、特に顕著となる。
【0006】
加えて、電動締付け機が通常充電式バッテリで稼働し、ユーザーにとって実用的にするには小型にする必要があるため、この問題はより難しくなる。電動工具の性能も同時に低下してしまう。
【0007】
さらに、早すぎるクラッチの起動も問題となり得る。ねじ頭部を材料表面と面一になるよう埋め込む(皿取り)のために過剰な力又はトルクを作用させると、特別な設定によりクラッチが早く作動し(すなわち、ドライブトレインの遮断)、ねじに十分なトルクを伝達することができず、もはやねじの打ち込みはできなくなる。そのような場合にユーザーは、電動工具のスイッチを切断して再起動せざるを得ない。このようにしてクラッチがつながり、ドライブトレインが閉状態とされるため、再度必要なトルクが生成されてねじがさらに打ち込まれる。しかし、かかる作業工程の中断は、作業工程の望ましくない長期化を意味する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そのため、本発明の目的は、上述の課題を解決することであり、特にほぼ一様な力又はトルクを加えることにより、不均質な材料への適正なねじ止めを確実にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は独立項1の要旨及び独立項4の要旨によって達成される。従属項には、優位性のある態様が記載されている。
【0010】
特にこの場合、この目的は、電動工具、特に電動締付け機(スクリュードライバーあるいはスクリュードライバードリル)のクラッチを操作する方法であって、この電動工具は電気モータと、電動工具のモータ電力の開ループ制御及び閉ループ制御のための開閉ループ制御装置と、少なくとも1つのセンサとを備え、この電動工具は第1の操作モード又は第2の操作モードで操作可能であり、第1の操作モードにおいては、速度が所定の速度閾値を下回った場合かつ所定の期間後にクラッチが起動され、第2の操作モードにおいては、第1の所定のモータ電流閾値を上回った場合にクラッチが起動される、方法によって達成される。
【0011】
本発明の方法は、
−第2の操作モードを設定する工程と、
−電気モータのモータ電流を測定する工程と、そして
−第2の所定のモータ電流閾値を超えた場合に、モータ速度を第1の速度値から第2の速度値へと低下させる工程であって、それにより電動工具により生成され得るトルクが第1のトルク値から第2のトルク値へと上昇する工程、
からなる。
【0012】
モータートルクの関数としての速度の低下により、相応の大きなトルクによる作業を確実に継続することができる。この場合、さらに速度の低下によって打ち込み速度を安全な速度へと減速させ、ねじ頭部が不意に材料に過度に深く埋め込まれることを防ぐことができる。この目的で電動工具のスイッチが切断されるのではなく、材料の表面でねじ頭部の端部を面一にするための埋め込み作業(皿取り)がユーザーの監視下で行われるということは注記されるべきである。比較的遅い回転速度により、この場合、ねじ頭部の最も正確な皿取りと配置が確実になる。第2のトルク値は、電動工具により生成することができる最大のトルク値であり得る。
【0013】
電動工具の第1の操作モードはいわゆる硬いねじ止めのケース(硬質目地)用に提供され、第2の操作モードはいわゆる柔らかいねじ止めのケース(軟質目地)用に提供される。硬いねじ止めのケースの場合にねじは比較的硬い材料(例えば、金属)にねじ止めされ、柔らかいねじ止めのケースの場合にねじは比較的硬い材料(例えば、トウヒ材)にねじ止めされる。
【0014】
この場合、第1の所定のモータ電流の閾値は、第2の所定のモータ電流の閾値より大きい。
【0015】
本発明の効果的な態様において、
電動工具のため
の位置値及
びアライメント
値を少なくとも1つ
のセンサで検出し、
最初に取得された位置値と
2番目に取得された位置値の差又は
最初に取得されたアライメント値と
2番目に取得されたアライメント値の差が所定の閾値を下回った場合に、モータ速度を第1の速度値から第2の速度値へと低下させる。このように、電動工具の位置及び/又はアライメントがねじ止め過程で変わったかどうかが判定される。この理由は、電動工具の位置及び/又はアライメントの変化をそれらの相違値の大きさに基づいて決めると、電動工具が第1のねじから第2のねじへと移動され、第2のねじが第1のねじに代わってねじ止めされると仮定できるからである。よって、この場合、速度は低下せず、電動工具の起動スイッチの位置に基づいてユーザーが選択することができる。しかし、相違がそれなりに小さな値の場合、電動工具の位置及び/又はアライメントはねじ止め過程で変化せず、同じねじがなおもねじ止めされようとしていると仮定することができる。したがって、この場合には速度が低下し、トルクが増加させられる。そのため、一つのねじの連続するねじ止め過程において、一方では上昇トルクを他方ではねじ頭部の材料表面と面一となる正確な埋め込み(皿取り)のための低回転速度を、ユーザーに速度を低下させることにより提供することができる。
【0016】
本発明のさらなる効果的な態様においては、
電動工具の操作スイッチを起動モードに設定する工程と、
操作スイッチを休止モードに設定する工程と、
操作スイッチを
再起動モードに設定する工程
であって、電動工具
の位置値及
びアライメント値を少なくとも1つのセンサで検出
し、
最初に取得された位置値と
2番目に取得された位置値
との差又は
最初に取得されたアライメント値
と2番目に取得されたアライメント値
との差が所定の閾値を下回った場合に、
同じねじがなおもねじ止めされようとしていると仮定し、モータ速度を第1の速度値から第2の速度値へと低下させる工程であって、第2の速度値は電気モータのパルス駆動に対応する工程、が提供される。
【0017】
このようにして、ねじ止め過程で電動工具の位置及び/又はアライメントが変わったかどうかが判定できる。この理由は、電動工具の位置及び/又はアライメントの変化を相違値の大きさに基づいて決めると、電動工具が第1のねじから第2のねじへと移動され、第2のねじが第1のねじに代わってねじ止めされると仮定できるからである。よって、この場合、速度は低下せず、電動工具の起動スイッチの位置に基づいてユーザーが選択することができる。しかし、それなりに小さな相違値の場合、電動工具の位置及び/又はアライメントはねじ止め過程で変化せず、同じねじがなおもねじ止めされようとしていると仮定することができる。そのため、この場合、速度が低下してパルス駆動となり、トルクが増加する。そのため、一つのねじの連続するねじ止めの手順として、一方で上昇トルクが電気モータのパルス駆動でユーザーに提供され、もう一方でねじ頭部が材料表面と面一となる正確な埋め込み(皿取り)のための低回転速度が提供される。ねじの部分的な回転を一時的又は継続的に行うパルス駆動により、ねじ頭部の埋め込みについての推定又はモニターをさらに正確に行うことができる。
【0018】
この場合センサは、ジャイロセンサ、リニアセンサ等として構成され得る。
【0019】
この目的はさらに、本発明の手法を用いて操作可能な電動工具によっても達成される。
【0020】
本発明のさらなる効果的な態様の1つによれば、電動工具の構成において、トランスミッション装置は、少なくとも1つの第1のギアと、1つの第2のギアとを備え、その1つのギアでは、電動工具により生成することができるトルクがモータ電流の増加と対数比にあり、もう一つ別のギアでは、電動工具により生成することができるトルクがモータ電流の増加と線形比にある。このようにして、同じ速度でも、1つのギアではもう一つ別のギアよりも高いトルクを生成することができ、よってねじ頭部の材料表面と面一となる正確な埋め込み(皿取り)が効率化される。
【0021】
本発明の他の優位性は、以下の図面の記載から明らかとなる。本発明の様々な実施例が図面に説明されている。図面、発明の詳細な説明、及び請求の範囲には、本発明の様々な特徴の組み合わせが記載されている。当業者であれば、それぞれの特徴を考慮し、さらなる有意義な組み合わせを実現するであろう。
【0022】
同一及び同等の要素には、図面において同一の参照番号が付与されている。図面は以下の通りである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の方法を実施する本発明の電動工具の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の方法を実施する本発明の電動工具1を示す。
【0025】
電動工具1は、電動締付け機(スクリュードライバーあるいはスクリュードライバードリル)として実現され、実質的に、ハウジング2と、駆動装置としての電気モータ3と、クラッチ5を備えたトランスミッション4と、駆動シャフト6と、出力シャフト7と、開閉ループ制御装置8と、起動スイッチ9と、充電式バッテリ10とを備える。
【0026】
電気モータ3、トランスミッション4、駆動シャフト6、及び出力シャフト7は、ハウジング2に配置されている。電動工具1を保持するためのハンドル11の第1の端部は、ハウジング2の下部に配置されている。電動工具1の起動スイッチ9は、ハンドル11に配置されている。充電式バッテリ10は、電動工具1のエネルギー源として、ハンドル11の第2の端部に着脱可能に取り付けられている。
【0027】
開閉ループ制御装置8は、電気モータ3等の開ループ制御及び閉ループ制御を実行する。この目的のため、開閉ループ制御装置8は起動スイッチ9、充電式バッテリ10、及び電気モータ3に接続されている。特に、モータ電流、速度、及び生成トルクは、開閉ループ制御装置8を使用して、測定、開ループ制御及び閉ループ制御が可能である。測定は、この場合、センサ(図面に非表示)を用いて行う。
【0028】
さらに、電動工具はセンサ12を備え、このセンサ12は電動工具の様々なパラメータを測定して開閉ループ制御装置8に伝達することができる。センサ12は、ジャイロセンサ及び/又は加速度センサ並びにリニアセンサ及び/又は位置センサである。センサ12は、電動工具1の位置変化及び/又はアライメント変化を特定するために用いられる。
【0029】
電気モータ3はトルクを生成し、駆動シャフト6に伝達する。駆動シャフト6は続いてトランスミッション4に接続される。トランスミッション4はクラッチ5を備え、このクラッチ5はスリッピングクラッチとして実現できる。トランスミッション4では、第1のギア又は第2のギアが選択され設定できる。出力シャフト7はトランスミッション4に接続されている。クラッチ5は、駆動シャフト6を出力シャフト7に接続か又は駆動シャフト6を出力シャフト7から切断する。ビット13(締付け機のブレードとも呼ぶこともできるビット)は、出力シャフト7の自由端7aに締結される。ビット13は、ねじ14、15のねじ頭14a、15a(例えば、皿ねじ状、フィリップスねじ状等)へと挿入できる。
【0030】
電気モータ3によりトルクが生成される。その生成トルクは、駆動シャフト6、トランスミッション4、クラッチ5、出力シャフト7、そして最後にビット13へと伝達される。ビット13がねじ14、15のねじ頭14a、15aに挿入された場合、電気モータ3により生成されるトルクはねじ14、15に伝達され、ねじ14、15は中心軸Nの回りを回転方向Rに回転する。ねじ14、15に働くトルクにより、ねじ14、15を材料(被締付け物)Wに挿入させてそこに締結してよい。
【0031】
測定されたモータ電流によりクラッチ5は起動される。モータ電流はこの場合電気モータ3により生成されるトルクの関数である。そのため、電気モータ3により生成されるトルクは、モータ電流を検出することにより特定できる。測定されたモータ電流が所定値を超えた場合、クラッチ5が起動、具体的には、駆動シャフト6と出力シャフト7が互いに切断される。この場合、電動工具1の構成では、第1のギアにおいて電動工具1により生成されるトルクはモータ電流の増加に対して対数比となり、第2のギアにおいて電動工具1により生成することができるトルクはモータ電流の増加に対して線形比となる。このようにして、同じモータ電流では第2のギアよりも第1のギアで大きなトルクが生成され、クラッチ5が駆動シャフト6と出力シャフト7を切断することはない。
【0032】
ねじ14、15を材料Wにねじ止める際、トランスミッション4のギアは最初に選択スイッチ16で選択される。この場合、第1のギア又は第2のギアを選択してよい。しかし、代替の実施例では、三つ以上のギアを選択し得る。
【0033】
続いて、対応の操作モードを選択する。柔らかいねじ止め用の第1の操作モードと硬いねじ止め用の第2の操作モードのどちらかを選ぶことができる。この場合、第2の操作モードが選択され、第2の操作モードでは、第1の所定のモータ電流の閾値を超えるとクラッチ5が起動される。
【0034】
第1の操作モード又は第2の操作モードの選択は、選択スイッチで実行する。選択スイッチは、図面に表示されていない。
【0035】
次に、クラッチ5のトリガ条件を設定装置17で設定する。この設定では、電気モータ3に生成され、ねじ14、15に伝達されるトルクによりクラッチ5が駆動シャフト6と出力シャフト7を切断することが定められる。上述の通り、トルクはモータ電流に基づいて定められる。
【0036】
第1のねじ14は、ビット13により材料Wにねじ込まれる。電動工具1又は電気モータ3の起動は、起動スイッチ9の起動(押下)により実行される。起動スイッチ9は、この目的で矢印方向Aに動かされる。電源1又は電気モータ3のスイッチを切断するには、起動スイッチ9を矢印方向Bに動かす。矢印方向Bの移動は、ばね(非表示)により行われる。対応のセンサは、この場合、継続的にモータ電流を測定する。モータ電流からのトルクが以前に記録した閾値を超えない場合、ねじ14はC方向に材料Wの中でねじ頭までねじ込まれる。ねじ頭部14aを材料表面と面一となるよう埋め込む(皿取り)のに通常最高水準のトルクが必要となるのは、それが円錐台形であるために材料W中で最大の抵抗力が発生するためである。
【0037】
第1のねじ14が材料Wにねじ止めされた後、第2のねじ15は他の箇所で材料Wにねじ止めされる。その際、第2のねじ15は、材料Wが第1のねじ14の箇所よりも硬い箇所でねじ止められる場合が考えられる。この場合、ねじ止めのためにより大きなトルクが必要となる。材料Wの硬い箇所に第2のねじ15をねじ止めする間に、生成トルクを定めるモータ電流がその閾値を超えた場合、クラッチ5は作動されず、駆動シャフト6と出力シャフト7は切断されない。代わりに、電気モータの速度が低下し、そのためトルクを増加させることができる。第2のねじ15、特にねじ頭部15aは、より高いトルクで材料Wにねじ止めして材料方面と面一にしてよい。電動工具1のユーザーは、この場合起動スイッチ9を離す(矢印方向Bに)必要がなく、押下し続ける(矢印方向Aに)ことができるのは、速度の低下とトルクの増加が自動的に発生するためである。低速且つ接続された材料Wへのねじ14、15のゆっくりとした挿入により、ユーザーは、ねじ14、15あるいはねじ頭部14a、15aが材料Wの表面に対して面一に押圧されるのを観察しやすくなる。ねじ14、15が材料Wへ深すぎて挿入されることを防ぐことができる。
【0038】
本発明の代替の実施例を以下で述べる。ねじ止めに必要となるトルクが過剰に高く、このことをモータートルクが閾値以上であることに基づき特定できる場合、電気モータ3は完全に停止される。その場合、ユーザーは起動スイッチ9を切断し(矢印方向Bに)、続いて再起動する(矢印方向Aに)。しかし、センサ12、具体的にはジャイロセンサ及び/又は加速度センサ並びにリニアセンサ及び/又は位置センサは電動工具1の位置の変化又はアライメント変化を検知しない。これは、電動工具1がねじ14、15から移動せず、同じねじ14、15がなおもねじ止めされようとしていることを意味している。このようにして、開閉ループ制御装置8には、電気モータ3が低速回転し、よって高水準のトルクを生成することになる旨が指示される。あるいは、電気モータ3は速度を下げる代わりにパルス駆動で運転してよい。パルス駆動では、出力シャフト7は中心軸Nの回りを四分の一回転するだけである。このようにしてトルクを上昇させ、ねじ14、15のねじ止め及びねじ頭部14a、15aの材料表面と面一となるような埋め込み(皿取り)を継続することができる。
【0039】
しかし、センサ12、すなわちジャイロセンサ及び/又は加速度センサ並びにリニアセンサ及び/又は位置センサが電動工具1の位置の変化又はアライメント変化を検知する場合(すなわち、閾値を超えた場合、
すなわち最初の位置及び
2番目の位置
の差分若しくは
最初のアライメント値
及び2番目のアライメントの差分が
閾値を超えた場
合)、電動工具1はねじ14からもう一つのねじ15へと移動したと仮定することができる。そのため、ねじ止めを同じねじ14を対象として行うことはもはやない。このような場合、ユーザーが起動スイッチ9を切断し(矢印方向Bに)、続いて再起動すると(矢印方向Aに)、電気モータ3の速度は下がらずに、パルス駆動も設定されない。そうすると、新しいねじ15は、速度域全域でねじ止めされ得る。