特許第6676782号(P6676782)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676782
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】画像表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 27/01 20060101AFI20200330BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20200330BHJP
   B60K 35/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   G02B27/01
   B60R11/02 C
   B60K35/00 A
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-556121(P2018-556121)
(86)(22)【出願日】2016年12月15日
(86)【国際出願番号】JP2016087393
(87)【国際公開番号】WO2018109902
(87)【国際公開日】20180621
【審査請求日】2019年3月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】酒井 重史
【審査官】 右田 昌士
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−045252(JP,A)
【文献】 実開平07−005886(JP,U)
【文献】 国際公開第2016/190135(WO,A1)
【文献】 特開2016−014861(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01
B60K 35/00
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光部材に向けて第1画像の光及び第2画像の光を出射し、前記透光部材から視認領域に向けて前記第1画像の光及び前記第2画像の光を反射させ、前記第1画像に対応する第1虚像及び前記第2画像に対応する第2虚像を、前記視認領域からみて前記透光部材を介した位置に表示する画像表示装置であって、
前記第1画像及び前記第2画像を表示する表示部と、
前記第1画像の光及び前記第2画像の光を前記透光部材に向けて出射する投影光学系とを備え、
前記表示部は、同一の平面上の異なる表示領域において前記第1画像及び前記第2画像を表示し、
前記投影光学系は、前記視認領域内の視点からの距離が異なる位置に前記第1虚像及び前記第2虚像を形成するように、前記第1画像の光の像点及び前記第2画像の光の像点をそれぞれ設定し、
前記表示部は、前記第1画像及び前記第2画像を表示する1つの表示面を持ち、又は、前記第1画像を表示する1つの表示面と前記第2画像を表示する1つの表示面とを持ち、
前記投影光学系は、前記表示部における前記第1画像の表示領域から前記透光部材における前記第1画像の光の入射領域へ至る第1光路の光路長と、前記表示部における前記第2画像の表示領域から前記透光部材における前記第2画像の光の入射領域へ至る第2光路の光路長とが異なり、
前記投影光学系は、前記第1光路のみに設けられた第1平面ミラーと前記第2光路のみに設けられた第2平面ミラーとの少なくとも一方を含み、
前記投影光学系は、前記第1光路及び前記第2光路に共通に設けられ、反射光を集中又は発散させる少なくとも1つの共通曲面ミラーを含み、
前記投影光学系は、
前記第1画像の光及び第2画像の光を前記透光部材に向けて反射し、反射光を集中又は発散させる第1共通曲面ミラーと、
前記第1画像の光及び第2画像の光を前記第1共通曲面ミラーに向けて反射し、反射光を集中又は発散させる第2共通曲面ミラーとを含み、
前記第1平面ミラー及び前記第2平面ミラーの少なくとも一方が、前記表示部と前記第2共通曲面ミラーとの間の光路に設けられている、
画像表示装置。
【請求項2】
透光部材に向けて第1画像の光及び第2画像の光を出射し、前記透光部材から視認領域に向けて前記第1画像の光及び前記第2画像の光を反射させ、前記第1画像に対応する第1虚像及び前記第2画像に対応する第2虚像を、前記視認領域からみて前記透光部材を介した位置に表示する画像表示装置であって、
前記第1画像及び前記第2画像を表示する表示部と、
前記第1画像の光及び前記第2画像の光を前記透光部材に向けて出射する投影光学系とを備え、
前記表示部は、同一の平面上の異なる表示領域において前記第1画像及び前記第2画像を表示し、
前記投影光学系は、前記視認領域内の視点からの距離が異なる位置に前記第1虚像及び前記第2虚像を形成するように、前記第1画像の光の像点及び前記第2画像の光の像点をそれぞれ設定し、
前記表示部は、前記第1画像及び前記第2画像を表示する1つの表示面を持ち、又は、前記第1画像を表示する1つの表示面と前記第2画像を表示する1つの表示面とを持ち、
前記投影光学系は、前記表示部における前記第1画像の表示領域から前記透光部材における前記第1画像の光の入射領域へ至る第1光路の光路長と、前記表示部における前記第2画像の表示領域から前記透光部材における前記第2画像の光の入射領域へ至る第2光路の光路長とが異なり、
前記投影光学系は、前記第1光路のみに設けられ、反射光を集中又は発散させる第1曲面ミラーと、前記第2光路のみに設けられ、反射光を集中又は発散させる第2曲面ミラーとの少なくとも一方を含み、
前記投影光学系は、前記第1光路及び前記第2光路に共通に設けられ、反射光を集中又は発散させる少なくとも1つの共通曲面ミラーを含み、
前記投影光学系は、
前記第1光路及び前記第2光路に共通に設けられ、前記透光部材に向けて前記第1画像の光及び第2画像の光を反射し、反射光を集中又は発散させる第1共通曲面ミラーと、
前記第1共通曲面ミラーに向けて前記第1画像の光を反射する前記第1曲面ミラーと、
前記第1共通曲面ミラーに向けて前記第2画像の光を反射する前記第2曲面ミラーとを含む、
画像表示装置。
【請求項3】
前記視認領域の位置が変わるように前記第1共通曲面ミラーを動かすアクチュエータを備える、
請求項1または2に記載の画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドアップディスプレイ装置などの画像表示装置に係り、特に、ウィンドシールドなどの透明な部材を介して虚像を視認させる画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のヘッドアップディスプレイは、フロントウィンドウのガラス(ウィンドシールド)やコンバイナに向けて映像を投影し、運転者の視界の前方に虚像として各種の情報を表示させるものであり、近年、様々なタイプの製品が実用化されている。
【0003】
一般的なヘッドアップディスプレイでは、デフューザなどのスクリーンに結像された中間像を投影光学系(拡大ミラーなど)によってウィンドシールドやコンバイナに投影する。従って、投影光学系の位置が固定されている場合でも、中間像が結像されるスクリーンの位置を変えることによって、運転者に見える虚像の前後方向の位置を変えることができる。
【0004】
下記の特許文献1に記載されるヘッドアップディスプレイ装置では、3つのスクリーンにそれぞれ映像が描画され、その映像がミラーで反射されてフロントガラスに投影される(特許文献1の図3)。3つのスクリーンは投影手段であるミラーからの距離が異なるため、それぞれのスクリーンの映像に対応する3つの虚像は、運転者から見て前後方向の位置が異なるように見える。
【0005】
また、下記の特許文献2に記載されるヘッドアップディスプレイ装置では、2つのスクリーンにそれぞれ映像が描画され、その映像が光学部の凹面鏡において反射されてフロントガラスに投影される(特許文献2の図1図5)。このヘッドアップディスプレイ装置においても、2つのスクリーンの映像に対応する2つの虚像は、運転者からみて前後方向の位置が異なるように見える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−150947号公報
【特許文献2】特開2015−34919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
光線の走査によってスクリーンに中間像を結像させる場合、ビーム径が小さいほど解像度が向上するため、通常は、スクリーンに入射する光線を光学系によって集束させる。光学系により光線を集束させるため、ビーム径は光学系からの距離に応じて異なる。スクリーンが1つであれば、そのスクリーンで焦点が合うように(ビーム径が最小となるように)光学系を構成することで、良好な解像度が得られる。ところが、スクリーンが複数の場合、何れか1つのスクリーンに光線の焦点を合わせると、他のスクリーンにおいてビーム径が大きくなる。そのため、上述した特許文献1に記載されるヘッドアップディスプレイ装置では、1つのスクリーンに光線の焦点を合わせた場合、他の2つのスクリーンにおいて解像度が低下する。光線を平行光へ近づけるように光学系を構成すれば、スクリーンの位置によるビーム径の違いは小さくなるが、この方法ではビーム径を十分に絞ることができないため、各スクリーンの解像度が低下する。
【0008】
他方、上述した特許文献2に記載されるヘッドアップディスプレイ装置では、光線の走査を行う焦点変更部として、凹面鏡の曲率を変更可能なMEMSミラーが用いられており、2つのスクリーンにそれぞれ焦点を合わせることができる(特許文献2の図5)。しかしながら、MEMSミラーによる凹面鏡の曲率の制御では、複雑な曲率の制御が必要になるため演算負荷が重くなるという問題や、スポット径の小さい光線の焦点を精度よくスクリーンに合わせることが困難であるという問題がある。
【0009】
更に、上述した従来のヘッドアップディスプレイ装置では、中間像を結像させるための複数のスクリーンを光学系に対して異なる位置に配置させる必要があるため、装置サイズが大型化するという問題がある。
【0010】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、簡易な構成でありながら、視点からの距離が異なる複数の虚像を形成することができる画像表示装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、透光部材に向けて第1画像の光及び第2画像の光を出射し、前記透光部材から視認領域に向けて前記第1画像の光及び前記第2画像の光を反射させ、前記第1画像に対応する第1虚像及び前記第2画像に対応する第2虚像を、前記視認領域からみて前記透光部材を介した位置に表示する画像表示装置に関するものである。この画像表示装置は、前記第1画像及び前記第2画像を表示する表示部と、前記第1画像の光及び前記第2画像の光を前記透光部材に向けて出射する投影光学系とを備える。前記表示部は、同一の平面上の異なる表示領域において前記第1画像及び前記第2画像を表示する。前記投影光学系は、前記視認領域内の視点からの距離が異なる位置に前記第1虚像及び前記第2虚像を形成するように、前記第1画像の光の像点及び前記第2画像の光の像点をそれぞれ設定する。
【0012】
この構成によれば、前記表示部における同一の平面上の異なる表示領域において前記第1画像及び前記第2画像が表示される。そのため、それぞれの表示領域が同一の平面上にない場合に比べて構成が簡易になり、装置のサイズが小型になる。
【0013】
好適に、前記表示部は、前記第1画像及び前記第2画像を表示する1つの表示面を持ってよい。
【0014】
この構成によれば、1つの表示面に2つの画像(第1画像、第2画像)が表示されるため、2つの画像の表示手段を共通化することが可能になり、前記表示部の構成が簡易になる。
【0015】
好適に、前記表示部は、前記第1画像を表示する1つの表示面と前記第2画像を表示する1つの表示面とを持ってよい。
【0016】
この構成によれば、2つの表示面の各々に1つの画像(第1画像、第2画像)が表示されるため、画像ごとに独立の表示手段を設けることが可能になり、画像ごとに異なる表示特性(解像度、輝度など)を設定し易くなる。
【0017】
好適に、上記画像表示装置に係る第1の発明において、前記表示部における前記第1画像の表示領域から前記透光部材における前記第1画像の光の入射領域へ至る第1光路の光路長と、前記表示部における前記第2画像の表示領域から前記透光部材における前記第2画像の光の入射領域へ至る第2光路の光路長とが異なってもよい。
【0018】
この構成によれば、前記第1光路の光路長と前記第2光路の光路長とが異なるため、前記視認領域内の視点から見て、前記第1画像に対応する前記第1虚像が形成される位置と、前記第2画像に対応する前記第2虚像が形成される位置とが異なる。
【0019】
好適に、上記第1の発明において、前記投影光学系は、前記第1光路のみに設けられた第1平面ミラーと前記第2光路のみに設けられた第2平面ミラーとの少なくとも一方を含んでよい。
【0020】
この構成によれば、前記第1平面ミラー及び前記第2平面ミラーの少なくとも一方を設けることにより、これらの平面ミラーが設けない場合に比べて光路が長くなる。そのため、前記第1光路の光路長と前記第2光路の光路長とを独立に設定することが可能になる。
【0021】
好適に、上記第1の発明において、前記投影光学系は、前記第1光路及び前記第2光路に共通に設けられ、反射光を集中又は発散させる少なくとも1つの共通曲面ミラーを含んでよい。
【0022】
この構成によれば、前記共通曲面ミラーにおいて反射光が集中又は発散することにより、前記投影光学系の特性(焦点距離等)が設定される。
【0023】
好適に、上記第1の発明において、前記投影光学系は、前記第1画像の光及び第2画像の光を前記透光部材に向けて反射し、反射光を集中又は発散させる第1共通曲面ミラーと、前記第1画像の光及び第2画像の光を前記第1共通曲面ミラーに向けて反射し、反射光を集中又は発散させる第2共通曲面ミラーとを含んでよい。前記第1平面ミラー及び前記第2平面ミラーの少なくとも一方が、前記表示部と前記第2共通曲面ミラーとの間の光路に設けられていてよい。
【0024】
この構成によれば、前記第1共通曲面ミラー及び前記第2共通曲面ミラーにおいて反射光が集中又は発散することにより、前記投影光学系の焦点距離等の特性が設定される。また、前記第1共通曲面ミラー及び前記第2共通曲面ミラーにおいて画像が拡大される場合、前記表示部と前記第2共通曲面ミラーとの間の光路(第1光路、第2光路)における画像(第1画像、第2画像)のサイズは比較的小さい。そのため、平面ミラー(第1平面ミラー、第2平面ミラー)を小型にすることが可能になる。
【0025】
好適に、上記画像表示装置に係る第2の発明において、前記投影光学系は、前記表示部における前記第1画像の表示領域から前記透光部材における前記第1画像の光の入射領域へ至る第1光路を形成する第1光学系と、前記表示部における前記第2画像の表示領域から前記透光部材における前記第2画像の光の入射領域へ至る第2光路を形成する第2光学系とを含んでよい。前記第1光学系と前記第2光学系とが異なる合成焦点距離を持ってよい。
【0026】
この構成によれば、前記第1光路を形成する前記第1光学系と前記第2光路を形成する前記第2光学系とが異なる合成焦点距離を持つため、前記視認領域内の視点から見て、前記第1画像に対応する前記第1虚像が形成される位置と、前記第2画像に対応する前記第2虚像が形成される位置とが異なる。
【0027】
好適に、上記第2発明において、前記投影光学系は、前記第1光路のみに設けられ、反射光を集中又は発散させる第1曲面ミラーと、前記第2光路のみに設けられ、反射光を集中又は発散させる第2曲面ミラーとの少なくとも一方を含んでよい。
【0028】
この構成によれば、前記第1曲面ミラー及び前記第2曲面ミラーの少なくとも一方を設けることにより、前記第1光学系の合成焦点距離と前記第2光学系の合成焦点距離とを独立に設定することが可能になり、両者の合成焦点距離の差を作り易くなる。2つの光学系(第1光学系、第2光学系)において合成焦点距離の差を作ることにより、前記第1光路の光路長と前記第2光路の光路長との差を作るための平面ミラーを省略することが可能になる。
【0029】
好適に、上記第2発明において、前記投影光学系は、前記第1光路及び前記第2光路に共通に設けられ、反射光を集中又は発散させる少なくとも1つの共通曲面ミラーを含んでよい。
【0030】
この構成によれば、前記共通曲面ミラーにおいて反射光が集中又は発散することにより、前記第1光学系及び前記第2光学系のそれぞれにおける投影光学系の特性(合成焦点距離等)が設定される。共通の曲面ミラーを用いることで、構成が簡易になる。
【0031】
好適に、上記第2の発明において、前記投影光学系は、前記第1光路及び前記第2光路に共通に設けられ、前記透光部材に向けて前記第1画像の光及び第2画像の光を反射し、反射光を集中又は発散させる第1共通曲面ミラーと、前記第1共通曲面ミラーに向けて前記第1画像の光を反射する前記第1曲面ミラーと、前記第1共通曲面ミラーに向けて前記第2画像の光を反射する前記第2曲面ミラーとを含んでよい。
【0032】
この構成によれば、前記第1曲面ミラー及び前記第1共通曲面ミラーにおいて前記第1光学系の合成焦点距離が設定され、前記第2曲面ミラー及び前記第1共通曲面ミラーにおいて前記第2光学系の合成焦点距離が設定される。2つの光学系(第1光学系、第2光学系)においてそれぞれ合成焦点距離が設定されるため、両者の合成焦点距離の差を作り易くなる。2つの光学系(第1光学系、第2光学系)において合成焦点距離の差を作ることにより、前記第1光路の光路長と前記第2光路の光路長との差を作るための平面ミラーを省略することが可能になる。
また、この構成によれば、2つの曲面ミラー(第1曲面ミラー、第2曲面ミラー)によって2つの画像(第1画像、第2画像)の光が共に前記第1共通ミラーに向けて反射される。これにより、前記表示部と前記第1共通曲面ミラーとの間で光路(第1光路、第2光路)が折り返されるため、装置サイズが小型になる。
【0033】
好適に、上記第2の発明において、上記画像表示装置は、前記視認領域の位置が変わるように前記第1共通曲面ミラーを動かすアクチュエータを備えてもよい。
【0034】
この構成によれば、前記視認領域の位置を変更するために複数のミラーを動かす場合に比べてアクチュエータの数が減り、構成が簡易になる。
【0035】
好適に、上記第2の発明において、前記投影光学系は、前記第1光路の光路長と前記第2光路の光路長とが異なっていてもよい。例えば、前記投影光学系は、前記第1光路のみに設けられた第1平面ミラーと前記第2光路のみに設けられた第2平面ミラーとの少なくとも一方を含んでもよい。
【0036】
この構成によれば、2つの光学系(第1光学系、第2光学系)における合成焦点距離の差に加えて、前記第1光路の光路長と前記第2光路の光路長と差が設定されるため、前記第1虚像が形成される位置と前記第2虚像が形成される位置との距離の差を作り易くなる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、簡易な構成でありながら、視点からの距離が異なる複数の虚像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明の実施形態に係る画像表示装置が車両に搭載された状態を説明するための図である。
図2】本発明の実施形態に係る画像表示装置によって表示される虚像を説明するための図である。
図3】第1の実施形態に係る画像表示装置の構成の一例を示す図である。
図4】表示部における表示面と表示領域の例を示す図である。図4Aは1つの表示面に2つの表示領域が設けられた例を示し、図4Bは2つの表示面にそれぞれ表示領域が設けられた例を示す。
図5】表示部の一変形例を示す図である。
図6】第2の実施形態に係る画像表示装置の構成の一例を示す図である。
図7】第3の実施形態に係る画像表示装置の構成の一例を示す図である。
図8図7に示す画像表示装置における投影光学系を矢印Aの方向から見た図である。
図9】第4の実施形態に係る画像表示装置の構成の一例を示す図である。
図10】第5の実施形態に係る画像表示装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施形態に係る画像表示装置について説明する。
本実施形態に係る画像表示装置は、視点からの距離が異なる複数の位置に虚像を形成する装置であり、例えば、運転者の前方の近い位置と遠い位置にそれぞれ虚像を形成する車両用のヘッドアップディスプレイ装置である。
【0040】
図1は、本実施形態に係る画像表示装置10が車両1に搭載された状態を説明するための図である。図1の例において、画像表示装置10は、ステアリングホイール4より前方のダッシュボード2の内部に埋設される。
【0041】
画像表示装置10は、ウィンドシールド3の第1入射領域PA1に向けて第1画像の光L1を出射するとともに、ウィンドシールド3の第2入射領域PA2に向けて第2画像の光L2を出射する。ウィンドシールド3は、本発明における透光部材に相当する。ウィンドシールド3が半反射面として機能することにより、これらの光(L1,L2)がウィンドシールド3から運転者5の視認領域SAに向けて反射されて、運転者5の眼に届く。運転者5は、第1画像の光L1によって第1虚像IM1を視認し、第2画像の光L2によって第2虚像IM2を視認する。
【0042】
図2は、本実施形態に係る画像表示装置10によって表示される虚像を説明するための図である。図1及び図2に示すように、運転者5から見た虚像(IM1,IM2)は、ウィンドシールド3を介して前方の位置に形成される。図の例では、第1虚像IM1が第2虚像IM2に比べて遠い位置に形成される。
【0043】
図3は、第1の実施形態に係る画像表示装置10の構成の一例を示す図である。図3の例において、画像表示装置10は、表示部11と、投影光学系12と、アクチュエータ15と、制御部16を有する。
【0044】
表示部11は、第1虚像IM1及び第2虚像IM2に対応する第1画像及び第2画像を表示する。表示部11は、同一の平面上の異なる表示領域において第1画像及び第2画像を表示する。例えば表示部11は、LEDなどの光源からの光を液晶パネルにおいて透過若しくは反射させることにより、平面状の表示面において画像を表示する装置(液晶ディスプレイ)を含む。
【0045】
図4は、表示部11における表示面と表示領域の例を示す図である。図4Aの例において、表示部11は1つの表示面111を有しており、表示面111に2つの表示領域(DA1,DA2)が設けられている。表示部11は、第1表示領域DA1において第1画像を表示し、第2表示領域DA2において第2画像を表示する。図4Aのように表示面が1つの場合、表示部11は1つの表示手段(液晶ディスプレイ等)を用いて構成される。
【0046】
他方、図4Bの例において、表示部11は2つの表示面111A及び111Bを有する。表示面111Aには、第1画像を表示する第1表示領域DA1が設けられる。表示面111Bには、第2画像を表示する第2表示領域DA2が設けられる。図4Bのように表示面が2つの場合、表示部11は2つの表示手段(液晶ディスプレイ等)を用いて構成される。
【0047】
投影光学系12は、表示部11に表示された第1画像の光L1及び第2画像の光L2を、ウィンドシールド3に向けて出射する。投影光学系12は、視認領域SAの視点Eからの距離が異なる位置に第1虚像IM1及び第2虚像IM2を形成するように、第1画像の光L1の像点及び第2画像の光L2の像点をそれぞれ設定する。
【0048】
本実施形態において、投影光学系12は、第1光路OP1の光路長と第2光路OP2の光路長とが異なる。第1光路OP1は、表示部11の第1表示領域DA1からウィンドシールド3の第1入射領域PA1へ至る第1画像の光L1の光路である。第2光路OP2は、表示部11の第2表示領域DA2からウィンドシールド3の第2入射領域PA2へ至る第2画像の光L2の光路である。第1光路OP1の光路長と第2光路OP2の光路長とが異なることにより、第1画像の光L1の像点と第2画像の光L2の像点とのずれが生じるため、視点Eから第1虚像IM1までの距離と視点Eから第2虚像IM2までの距離との違いが生じる。
【0049】
図3の例において、投影光学系12は、第1平面ミラー121と、第2平面ミラー122と、第1共通曲面ミラー131と、第2共通曲面ミラー132を有する。
【0050】
第1共通曲面ミラー131及び第2共通曲面ミラー132は、第1光路OP1及び第2光路OP2に共通に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第1共通曲面ミラー131は、第1画像の光L1及び第2画像の光L2をウィンドシールド3に向けて反射する。第2共通曲面ミラー132は、第1画像の光L1及び第2画像の光L2を第1共通曲面ミラー131に向けて反射する。
【0051】
第1平面ミラー121は、表示部11と第2共通曲面ミラー132との間の第1光路OP1に設けられており、表示部11から入射した第1画像の光L1を第2共通曲面ミラー132に向けて反射する。第2平面ミラー122は、表示部11と第2共通曲面ミラー132との間の第2光路OP2に設けられており、表示部11から入射した第2画像の光L2を第2共通曲面ミラー132に向けて反射する。
【0052】
アクチュエータ15は、制御部16の制御に従って、視認領域SAの位置が変わるように第1共通曲面ミラー131を動かす機構であり、例えばモータや圧電素子などを用いて構成される。
【0053】
制御部16は、画像表示装置10の全体的な動作を制御する回路であり、例えばプログラムの命令コードに従って処理を実行するコンピュータを用いて構成される。制御部16は、表示部11において表示させる画像の生成や、アクチュエータ15による第1共通曲面ミラー131の位置、姿勢、傾きなどの制御を行う。
【0054】
図3に示す画像表示装置10では、表示部11における同一平面上の異なる表示領域(DA1,DA2)に第1画像及び第2画像が表示される。第1表示領域DA1に表示された第1画像の光L1は、第1平面ミラー121に入射し、第1平面ミラー121から第2共通曲面ミラー132に向けて反射され、第2共通曲面ミラー132から第1共通曲面ミラー131に向けて反射され、第1共通曲面ミラー131からウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第1入射領域PA1に入射する。また、第2表示領域DA2に表示された第2画像の光L2は、第2平面ミラー122に入射し、第2平面ミラー122から第2共通曲面ミラー132に向けて反射され、第2共通曲面ミラー132から第1共通曲面ミラー131に向けて反射され、第1共通曲面ミラー131からウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第2入射領域PA2に入射する。ウィンドシールド3に入射した第1画像の光L1及び第2画像の光L2は、それぞれ視認領域SAに向けて反射され、視認領域SA内にある運転者5の眼に届く。運転者5の視点Eから見て、第1画像の光L1による第1虚像IM1及び第2画像の光L2による第2虚像IM2はウィンドシールド3を介した前方の位置に形成される。図3に示すように、第1画像の光L1の第1光路OP1は、第2画像の光L2の第2光路OP2に比べて、光路長が長い。そのため、第1画像の光L1の像点は、第2画像の光L2の像点に比べて、第1共通曲面ミラー131からの光路が長い。従って、第1虚像IM1は第2虚像IM2に比べて視点Eから遠い位置に形成される。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る画像表示装置10によれば、表示部11における同一の平面上の異なる表示領域(DA1、DA2)に第1画像及び第2画像が表示される。第1画像の光L1の像点及び第2画像の光L2の像点は、投影光学系12において別個に設定され、これにより、視点Eからの距離が異なる位置に第1虚像IM1及び第2虚像IM2が形成される。そのため、第1画像及び第2画像の表示領域が同一の平面上にない場合(位置をずらして配置された異なるスクリーンを用いる場合など)に比べて構成を簡易化できるとともに、装置のサイズを小型にすることができる。
【0056】
また、本実施形態に係る画像表示装置10によれば、1つの表示面111に2つの画像(第1画像、第2画像)を表示させることにより、2つの画像の表示手段を共通化できるため、表示部11の構成を更に簡易化できる。
【0057】
更に、本実施形態に係る画像表示装置10によれば、2つの表示面111A及び111Bに2つの画像(第1画像、第2画像)を表示させることにより、画像ごとに独立の表示手段を設けることができるため、画像ごとに異なる表示特性(解像度、輝度など)を設定し易くすることができる。
【0058】
また、本実施形態によれば、第1共通曲面ミラー131及び第2共通曲面ミラー132において反射光を集中又は発散させることにより、投影光学系12の焦点距離等の特性を簡易な構成で設定できる。第1共通曲面ミラー131及び第2共通曲面ミラー132において2つの画像(第1画像、第2画像)が拡大される場合、表示部11と第2共通曲面ミラー132との間の光路(第1光路OP1、第2光路OP2)では各画像のサイズが比較的小さい。そのため、表示部11と第2共通曲面ミラー132との間に平面ミラー(第1平面ミラー、第2平面ミラー)を設けることにより、平面ミラーのサイズを小型にすることができる。
【0059】
しかも、本実施形態によれば、2つの画像の光(L1、L2)をウィンドシールド3に向けて反射させる第1共通曲面ミラー131がアクチュエータ15で駆動されることにより、視認領域SAの位置が変更される。これにより、視認領域SAの位置を変更するために複数のミラーを動かす場合に比べてアクチュエータの数を削減できるため、構成を簡易化できる。
【0060】
図5は、表示部11の変形例を示す図である。図5の変形例において、表示部11は、レーザなどの光源112と、光源112からの光線LSを反射するスキャナ113と、スキャナ113において反射された光線LSが走査されることによって画像(第1画像、第2画像)が結像されるスクリーン114とを有する。スキャナ113は、例えば制御部16の制御に従って傾きが変化する鏡面を持ったMEMS素子である。制御部16は、光源112において発生する光線LSの各色の光強度とスキャナ113の角度とを制御することにより、所定の画像をスクリーン114に結像させる。本実施形態によれば、スクリーン114における同一平面上の異なる領域に2つの画像(第1画像、第2画像)が結像されるため、スクリーン114に入射する光線のビーム径を画像ごとに調整する必要がない。
【0061】
なお、表示部11には、上記の変形例以外にも、例えば多数の微小鏡面がアレイ状に配列されたMEMS素子に光を当てて反射させることにより画像を表示するディスプレイ装置や、有機EL素子などの多数の自発光素子がアレイ状に配置されたディスプレイ装置などを用いてもよい。
【0062】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。図6は、第2の実施形態に係る画像表示装置10の構成の一例を示す図である。図6に示す画像表示装置10は、図3に示す画像表示装置10におけるアクチュエータ15を省略し、投影光学系12を投影光学系12Aに置き換えたものであり、他の構成は図3に示す画像表示装置10と同様である。第2の実施形態に係る画像表示装置10は、第1画像の光L1及び第2画像の光L2をコンバイナ3Aに入射する。コンバイナ3Aは、例えばウィンドシールド3の前に配置されており、運転者5はコンバイナ3Aを介して第1虚像IM1及び第2虚像IM2を視認する。コンバイナ3Aは、本発明における透光部材に相当する。
【0063】
投影光学系12Aは、第1平面ミラー121A及び第2平面ミラー122Aを有する。第1平面ミラー121Aは、表示部11から入射した第1画像の光L1をコンバイナ3Aの第1入射領域PA1に向けて反射する。第2平面ミラー122Aは、表示部11から入射した第2画像の光L2をコンバイナ3Aの第2入射領域PA2に向けて反射する。
【0064】
図6に示すように、第1画像の光L1の第1光路OP1は第2画像の光L2の2光路OP2に比べて光路長が長い。そのため、第1画像の光L1による第1虚像IM1は第2画像の光L2による第2虚像IM2に比べて視点Eから遠い位置に形成される。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0065】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。図7は、第3の実施形態に係る画像表示装置10の構成の一例を示す図である。図8は、図7に示す画像表示装置10における投影光学系12Bを矢印Aの方向から見た図である。図7及び図8に示す画像表示装置10は、図3に示す画像表示装置10における投影光学系12を投影光学系12Bに置き換えたものであり、他の構成は図3に示す画像表示装置10と同様である。
【0066】
投影光学系12Bは、第1平面ミラー121B及び121Cと、第1共通曲面ミラー131Bと、第2共通曲面ミラー132Bを有する。
【0067】
第1共通曲面ミラー131B及び第2共通曲面ミラー132Bは、第1光路OP1及び第2光路OP2に共通に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第1共通曲面ミラー131Bは、第1画像の光L1及び第2画像の光L2をウィンドシールド3に向けて反射する。第2共通曲面ミラー132Bは、第1画像の光L1及び第2画像の光L2を第1共通曲面ミラー131に向けて反射する。
【0068】
第1平面ミラー121B及び121Cは、表示部11と第2共通曲面ミラー132との間の第1光路OP1において直列に設けられている。図8において示すように、第1平面ミラー121Bは、表示部11から入射した第1画像の光L1を第1平面ミラー121Cに向けて反射する。第1平面ミラー121Cは、第1平面ミラー121Bから入射した第1画像の光L1を共通曲面ミラー132Bに向けて反射する。
【0069】
アクチュエータ15は、制御部16の制御に従って、視認領域SAの位置が変わるように第1共通曲面ミラー131Bを動かす。
【0070】
図7に示す画像表示装置10では、第1表示領域DA1に表示された第1画像の光L1が第1平面ミラー121Bに入射し、第1平面ミラー121Bから第1平面ミラー121Cに向けて反射され、第1平面ミラー121Cから第2共通曲面ミラー132Bに向けて反射され、第2共通曲面ミラー132Bから第1共通曲面ミラー131Bに向けて反射され、第1共通曲面ミラー131Bからウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第1入射領域PA1に入射する。また、第2表示領域DA2に表示された第2画像の光L2が第1共通曲面ミラー131Bに直接入射し、第2共通曲面ミラー132Bから第1共通曲面ミラー131Bに向けて反射され、第1共通曲面ミラー131Bからウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第2入射領域PA2に入射する。ウィンドシールド3に入射した第1画像の光L1及び第2画像の光L2は、それぞれ視認領域SAに向けて反射され、視認領域SA内にある運転者5の眼に届く。図7に示すように、第1画像の光L1の第1光路OP1は第2画像の光L2の第2光路OP2に比べて長いため、第1画像の光L1の像点は第2画像の光L2の像点に比べて第1共通曲面ミラー131からの光路が長くなる。従って、第1虚像IM1は第2虚像IM2に比べて視点Eから遠い位置に形成される。
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0071】
<第4の実施形態>
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。図9は、第4の実施形態に係る画像表示装置10の構成の一例を示す図である。図9に示す画像表示装置10は、図3に示す画像表示装置10における投影光学系12を投影光学系12Cに置き換えたものであり、他の構成は図3に示す画像表示装置10と同じである。
【0072】
投影光学系12Cは、異なる合成焦点距離を持った2つの光学系(12C−1、12C−2)を有する。第1光学系12C−1は、表示部11の第1表示領域DA1からウィンドシールド3の第1入射領域PA1へ至る第1光路OP1を形成する。第2光学系12C−2は、表示部11の第2表示領域DA2からウィンドシールド3の第2入射領域PA2へ至る第2光路OP2を形成する。第1光学系12C−1の合成焦点距離は第2光学系12C−2の合成焦点距離に比べて長い。第1光学系12C−1の合成焦点距離と第2光学系12C−2の合成焦点距離とが異なることにより、第1画像の光L1の像点と第2画像の光L2の像点とのずれが生じるため、視点Eから第1虚像IM1までの距離と視点Eから第2虚像IM2までの距離との違いが生じる。
【0073】
図9の例において、投影光学系12Cは、第1曲面ミラー141と、第2曲面ミラー142と、第1共通曲面ミラー131Cを有する。第1光学系12C−1は第1曲面ミラー141と第1共通曲面ミラー131Cを含み、第2光学系12C−2は第2曲面ミラー142と第1共通曲面ミラー131Cを含む。
【0074】
第1共通曲面ミラー131Cは、第1光路OP1及び第2光路OP2に共通に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第1共通曲面ミラー131Cは、第1画像の光L1及び第2画像の光L2をウィンドシールド3に向けて反射する。
【0075】
第1曲面ミラー141は、表示部11と第1共通曲面ミラー131Cとの間の第1光路OP1に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第1曲面ミラー141は、表示部11から入射した第1画像の光L1を第1共通曲面ミラー131Cに向けて反射する。第2曲面ミラー142は、表示部11と第1共通曲面ミラー131Cとの間の第2光路OP2に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第2曲面ミラー142は、表示部11から入射した第2画像の光L2を第1共通曲面ミラー131Cに向けて反射する。
【0076】
アクチュエータ15は、制御部16の制御に従って、視認領域SAの位置が変わるように第1共通曲面ミラー131Cを動かす。
【0077】
図9に示す画像表示装置10では、第1表示領域DA1に表示された第1画像の光L1が第1曲面ミラー141に入射し、第1曲面ミラー141から第1共通曲面ミラー131Cに向けて反射され、第1共通曲面ミラー131Cからウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第1入射領域PA1に入射する。また、第2表示領域DA2に表示された第2画像の光L2が第2曲面ミラー142に入射し、第2曲面ミラー142から第1共通曲面ミラー131Cに向けて反射され、第1共通曲面ミラー131Cからウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第2入射領域PA2に入射する。ウィンドシールド3に入射した第1画像の光L1及び第2画像の光L2は、それぞれ視認領域SAに向けて反射され、視認領域SA内にある運転者5の眼に届く。第1光路OP1を形成する第1光学系12C−1は、第2光路OP2を形成する第2光学系12C−2に比べて合成焦点距離が長いため、第1虚像IM1は第2虚像IM2に比べて視点Eから遠い位置に形成される。
【0078】
本実施形態に係る画像表示装置10によれば、第1曲面ミラー141及び第1共通曲面ミラー131Cにおいて第1光学系12C−1の合成焦点距離が設定され、第2曲面ミラー142及び第1共通曲面ミラー131Cにおいて第2光学系12C−2の合成焦点距離が設定される。2つの光学系(第1光学系12C−1、第2光学系12C−2)においてそれぞれ合成焦点距離が設定されるため、両者の合成焦点距離の差を作り易くなる。2つの光学系(第1光学系12C−1、第2光学系12C−2)において合成焦点距離の差を作ることにより、第1光路OP1の光路長と第2光路OP2の光路長との差を作るための平面ミラー(例えば図3における第1平面ミラー121、第2平面ミラー122)を省略できる。そのため、全体の構成を更に簡易化できるとともに、装置のサイズを更に小型化できる。
【0079】
また、本実施形態に係る画像表示装置10によれば、2つの曲面ミラー(第1曲面ミラー141、第2曲面ミラー142)によって2つの画像(第1画像、第2画像)の光が共に第1共通曲面ミラー131Cに向けて反射される。これにより、表示部11と第1共通曲面ミラー131Cとの間で2つの光路(第1光路OP1、第2光路OP2)が共に折り返されるため、装置のサイズを一層小型にすることができる。
【0080】
<第5の実施形態>
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。図10は、第5の実施形態に係る画像表示装置10の構成の一例を示す図である。図10に示す画像表示装置10は、図3に示す画像表示装置10における投影光学系12を投影光学系12Dに置き換えたものであり、他の構成は図3に示す画像表示装置10と同じである。
【0081】
投影光学系12Dは、既に説明した投影光学系12C(図9)と同様に、異なる合成焦点距離を持った2つの光学系(12D−1、12D−2)を有する。
【0082】
図10の例において、投影光学系12Dは、第1平面ミラー121Dと、第2平面ミラー122Dと、第1曲面ミラー141Dと、第2曲面ミラー142Dと、第1共通曲面ミラー131Dを有する。第1光学系12D−1は、第1平面ミラー121Dと、第1曲面ミラー141Dと、第1共通曲面ミラー131Dを含む。第2光学系12D−2は、第2平面ミラー122Dと、第2曲面ミラー142Dと、第1共通曲面ミラー131Dを含む。
【0083】
第1共通曲面ミラー131Dは、第1光路OP1及び第2光路OP2に共通に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第1共通曲面ミラー131Dは、第1画像の光L1及び第2画像の光L2をウィンドシールド3に向けて反射する。
【0084】
第1曲面ミラー141Dは、第1平面ミラー121Dと第1共通曲面ミラー131Dとの間の第1光路OP1に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第1曲面ミラー141Dは、第1平面ミラー121Dから入射した第1画像の光L1を第1共通曲面ミラー131Dに向けて反射する。
【0085】
第2曲面ミラー142Dは、第2平面ミラー122Dと第1共通曲面ミラー131Dとの間の第2光路OP2に設けられており、反射光を集中又は発散させる。第2曲面ミラー142Dは、第2平面ミラー122Dから入射した第2画像の光L2を第1共通曲面ミラー131Dに向けて反射する。
【0086】
第1平面ミラー121Dは、表示部11と第1曲面ミラー141Dとの間の第1光路OP1に設けられており、表示部11から入射した第1画像の光L1を第1曲面ミラー141Dに向けて反射する。
【0087】
第2平面ミラー122Dは、表示部11と第2曲面ミラー142Dとの間の第2光路OP2に設けられており、表示部11から入射した第1画像の光L1を第2曲面ミラー142Dに向けて反射する。
【0088】
図10に示す画像表示装置10では、第1表示領域DA1に表示された第1画像の光L1が第1平面ミラー121Dに入射し、第1平面ミラー121Dから第1曲面ミラー141Dに向けて反射され、第1曲面ミラー141Dから第1共通曲面ミラー131Dに向けて反射され、第1共通曲面ミラー131Dからウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第1入射領域PA1に入射する。また、第2表示領域DA2に表示された第2画像の光L2が第2平面ミラー122Dに入射し、第2平面ミラー122Dから第2曲面ミラー142Dに向けて反射され、第2曲面ミラー142Dから第1共通曲面ミラー131Dに向けて反射され、第1共通曲面ミラー131Dからウィンドシールド3に向けて反射されて、ウィンドシールド3の第2入射領域PA2に入射する。ウィンドシールド3に入射した第1画像の光L1及び第2画像の光L2は、それぞれ視認領域SAに向けて反射され、視認領域SA内にある運転者5の眼に届く。第1光路OP1を形成する第1光学系12C−1は、第2光路OP2を形成する第2光学系12C−2に比べて合成焦点距離が長い。また、図10において示すように、第1光路OP1の光路長は第2光路OP2の光路長に比べて長い。そのため、第1虚像IM1は第2虚像IM2に比べて視点Eから遠い位置に形成される。
【0089】
本実施形態によれば、2つの光学系(第1光学系12D−1、第2光学系12D−2)における合成焦点距離の差に加えて、第1光路OP1の光路長と第2光路OP2の光路長と差が設定されるため、第1虚像IM1が形成される位置と第2虚像IM2が形成される位置との距離の差を更に作り易くなる。また、それぞれの光学系において設定可能な合成焦点距離の範囲に制限がある場合でも、第1光路OP1の光路長と第2光路OP2の光路長と差を設定することにより、第1虚像IM1が形成される位置と第2虚像IM2が形成される位置との距離の差をより広範囲に設定することが可能になる。また、第1虚像IM1が形成される位置と第2虚像IM2が形成される位置との距離とそれぞれの虚像の投影倍率との関係を、個別に調整することが可能になる。
【0090】
以上、本発明の幾つかの実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、更に種々のバリエーションを含んでいる。
【0091】
例えば、上述した実施形態において挙げた投影光学系における平面ミラーの数や、曲面ミラーの数、共通曲面ミラーの数は一例であり、これらのミラーの数は任意でよい。また、上述した実施形態における各ミラーの形状や配置も一例であり、他の形状や他の配置でもよい。
【0092】
また、上述した実施形態では、視点からの距離が異なる2つの虚像が形成される例を挙げたが、本発明の他の実施形態では、視点からの距離が異なる3以上の虚像が形成されてもよい。
【0093】
また、図9及び図10の例において、2つの曲面ミラー(141及び142、141D及び142D)が物理的に分離しているが、これらの曲面ミラーは一体に形成されてもよい。
【0094】
本発明における透光部材は、光を透過する性質を持った部材であり、透明性の度合いは用途に応じて任意に選択可能である。
【符号の説明】
【0095】
1…車両1、2…ダッシュボード、3…ウィンドシールド、3A…コンバイナ、4…ステアリングホイール、5…運転者、10…画像表示装置、11…表示部、111,111A,111B…表示面、112…光源112、113…スキャナ113、114…スクリーン114、12…投影光学系、12C−1,12D−1…第1光学系、12C−2,12D−2…第2光学系、121,121A,121B,121C,121D…第1平面ミラー、122,122A,122D…第2平面ミラー、131,131B,131C,131D…第1共通曲面ミラー、132,132B…第2共通曲面ミラー、141,141D…第1曲面ミラー、142,142D…第2曲面ミラー、15…アクチュエータ、16…制御部、DA1…第1表示領域、DA2…第2表示領域、PA1…第1入射領域、PA2…第2入射領域、IM1…第1虚像、IM2…第2虚像、OP1…第1光路、OP2…第2光路、L1…第1画像の光、L2…第2画像の光、SA…視認領域、E…視点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10