(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676802
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】計時器のための調整された跳躍表示機構
(51)【国際特許分類】
G04B 19/253 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
G04B19/253 G
【請求項の数】14
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-40235(P2019-40235)
(22)【出願日】2019年3月6日
(65)【公開番号】特開2019-158878(P2019-158878A)
(43)【公開日】2019年9月19日
【審査請求日】2019年3月6日
(31)【優先権主張番号】18161514.7
(32)【優先日】2018年3月13日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】504341564
【氏名又は名称】モントレー ブレゲ・エス アー
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ツァウク
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・リエド
【審査官】
池田 剛志
(56)【参考文献】
【文献】
特公昭48−019275(JP,B1)
【文献】
米国特許第01860260(US,A)
【文献】
西独国特許第01063087(DE,B)
【文献】
スイス国特許発明第00203181(CH,A5)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G04B1/00−99/00
G04C1/00−99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
跳躍移動する少なくとも1つの表示部材(100)を含む計時器表示機構(1)であって、前記機構(1)は、第1の車セット(4)と第2の車セット(30)との間に少なくとも1つのばね(2)を含み、前記第1の車セット(4)又は前記第2の車セット(30)のそれぞれは、駆動車セット(201)によって駆動されるように構成し、前記第2の車セット(30)又は前記第1の車セット(4)のそれぞれは、周辺スネイル(51)カム(5)を駆動又は支持するように構成し、前記カム(5)は、前記表示部材(100)の跳躍を制御するように構成した触手(6)が横断し、前記機構(1)は、係止/解放手段(70)を含み、前記係止/解放手段(70)は、一方の、前記第2の車セット(30)又は前記第1の車セット(4)のそれぞれによって駆動される少なくとも1つの爪(7)、及びもう一方の、第3の車セット(80)を含み、前記第3の車セット(80)は、前記第3の車セット(80)の角度位置に応じて、前記少なくとも1つの爪(7)を停止し、前記カム(5)の回転を防止するか、又は前記少なくとも1つの爪(7)を解放し、前記カム(5)の回転を可能にするように構成する、計時器表示機構(1)において、前記第3の車セット(80)は、前記第1の車セット(4)又は前記第2の車セット(30)のそれぞれの作用下、錨部品軸(D8)回りに角移動可能な錨部品(8)であり、前記錨部品(8)は、前記錨部品(8)の角度位置に応じて、前記少なくとも1つの爪(7)を停止し、前記カム(5)の回転を防止するか又は前記少なくとも1つの爪(7)を解放し、前記カム(5)の回転を可能にするように構成することを特徴とする、計時器表示機構(1)。
【請求項2】
前記機構(1)は、調整列を含む調整機構(9)を含み、前記調整列は、前記第2の車セット(30)又は前記第1の車セット(4)のそれぞれの列と嵌合し、前記第2の車セット(30)又は前記第1の車セット(4)のそれぞれは、前記爪(7)を解放した際に前記カム(5)を駆動又は支持し、前記カム(5)の回転速度を制限することを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項3】
前記少なくとも1つのばね(2)は、前記車セット(4)の心軸(41)と前記第2の車セット(30)との間に巻かれることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項4】
前記第2の車セット(30)は、前記触手(6)の軌道の外側で、少なくとも1つの周辺爪(7)を支持する胴部(3)であることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項5】
前記第1の車セット(4)は、偏心クランク・ピン(42)を含み、前記偏心クランク・ピン(42)は、溝(81)を永続的に案内し、枢動する前記錨部品(8)の周期的な前後運動を制御し、枢動する前記錨部品(8)は、前記錨部品軸(D8)の両側に、前記錨部品(8)の角度位置に応じて、前記爪(7)を停止又は解放するくちばし(83)及び停止部(84)を含み、前記爪(7)を前記くちばし(83)により解放することと、前記爪(7)が前記停止部(84)上に戻り、当接することとの間の前記各爪(7)の角度進行は、跳躍継続時間を規定することを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項6】
前記機構(1)は、香箱(10)を含み、前記香箱(10)は、一方の、前記香箱(10)の心軸と、もう一方の、前記胴部(3)との間に少なくとも1つの前記ばね(2)を備え、前記香箱(10)の前記心軸は、前記第1の車セット(4)の前記心軸(41)と一体であるか又は前記心軸(41)を形成することを特徴とする、請求項3に記載の機構(1)。
【請求項7】
前記第1の車セット(4)は、整数の歯車比で枢動し、前記駆動車セット(201)によって駆動すること、前記スネイル(51)は、前記跳躍後のゼロ再設定境界部(52)を備えること、前記爪(7)が前記くちばし(83)により解放されることと、前記爪(7)が前記停止部(84)上に戻り、当接することとの間の、前記第1の車セット(4)の軸(D4)に対する前記各爪(7)の角度進行は、跳躍継続時間を規定し、前記跳躍継続時間は、前記カム(5)の上で前記触手(6)が進行する継続時間に対応し、前記触手(6)は、最初に、前記スネイル(51)の下側段(511)から上側段(512)に徐々に昇る傾斜部を進行し、次に、前記ゼロ再設定境界部(52)を横断すると、瞬時に落下し、前記下側段(511)に戻ることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項8】
前記各跳躍は、早期の状態と後期の状態との間の前記表示部材(100)の状態の変化、及び跳躍継続時間に対応し、前記跳躍継続時間は、前記早期の状態の安定表示と、前記後期の状態の安定表示との間で経過する時間期間に対応することを特徴とする、請求項1に記載の機構。
【請求項9】
前記第1の入力車セット(4)は、前記連続駆動車セット(201)によって駆動され、前記連続駆動車セット(201)が1回転する間、1回転又は整数回転又は全ての分数回転を完了するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項10】
前記第2の車セット(30)は、香箱(3)であり、前記香箱(3)は、駆動車セット(201)によって駆動されるように構成し、前記第3の車セット(80)を支持すること、及び前記第1の車セット(4)は、前記周辺スネイル(51)カム(5)を駆動又は支持するように構成することを特徴とする、請求項1に記載の表示機構(1)。
【請求項11】
前記表示部材(100)は、周期的に跳躍移動することを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項12】
前記表示部材(100)は、日付表示部材であることを特徴とする、請求項1に記載の機構(1)。
【請求項13】
請求項1に記載の表示機構(1)を含む計時器ムーブメント(500)。
【請求項14】
請求項13に記載のムーブメント(500)又は請求項1に記載の表示機構(1)を含む時計(1000)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、跳躍移動する少なくとも1つの表示部材を備える計時器表示機構に関し、上記機構は、第1の車セットと第2の車セットとの間に少なくとも1つのばねを備え、上記第1の車セット又は上記第2の車セットのそれぞれは、駆動車セットを駆動するように構成する。
【0002】
本発明は、そのような表示機構を含む計時器ムーブメントにも関する。
【0003】
本発明は、そのような計時器ムーブメント及び/又はそのような表示機構を含む時計にも関する。
【0004】
本発明は、特に時計のための計時器表示機構の分野に関する。
【背景技術】
【0005】
日付機構を備えるムーブメントは、様々な駆動機構:
−直接駆動機構;
−半瞬間機構;
−瞬間機構;
を備える。
【0006】
直接駆動機構の一例は、書籍「Les montres compliquees(複雑時計)」、Francois Lecoultre著(Simonin編)、「Quantieme simple(単純カレンダ機構)」及び「Quantieme perpetuel trainant(連続式永久カレンダ)」の章に記載されている。
【0007】
半瞬間機構は、単純な構造であるため、かなり一般的である。可撓性爪は、日押さえが跳躍するまで日付駆動車上で準備状態にされ、したがって、第2の部の跳躍のみが瞬間的である。この構造は、主な市販の時計ムーブメント、特に、以下:ETA2824、2892、Breguet7700、1050、7875、Blancpain1150、1180、1280で見られる。
【0008】
瞬間機構の一例は、書籍「Les montres compliquees(複雑時計)」、Francois Lecoultre著(Simonin編)、「Quantieme perpetuel instantan(瞬間永久カレンダ)」の章に記載されている。システムを有する他の構造が存在し、システムは、昼の部の間、ばねを巻き/準備状態にし、真夜中に起動させ、これにより、ばねを解放し、日付表示器駆動機能を実施する。この種のムーブメント、例えば、Breguet8810又はBlancpain6950のムーブメントが市場に存在する。
【0009】
複雑瞬間日付機構、例えば、永久カレンダ又は大型開口若しくは転子の日付表示を行う際、瞬間解放により、構成要素を高速で移動させる。構成要素に加えられる動的応力は、慣性のために目立つ。高速度が高慣性と組み合わさると、(1時間から数時間かかる)直接駆動機能の場合では存在しない高い応力がもたらされ、動作の混乱が生じる、例えば、2重跳躍が起こることがある。
【0010】
同じ問題は、表示が跳躍と共に変化する場合、日付表示に関し上記した特定のケース以外にも、他の表示、例えば、AM/PM若しくは昼/夜表示又はあらゆるレトログラード表示にも影響を及ぼす。
【0011】
BROWN名義のスイス特許第CH203181A号は、それぞれ1の位、10の位及び100の位のための3つの円板上の円弧角度を表示する恒星計時器を開示しており、10の位の円板は、7個の数字0から6のみを担い、数字7、8及び9を担う同心扇形部と関連付けられ、当該円板に接続される。遊びは、1の位の円板によって、この扇形部が3つの区分を連続的に通過して駆動されることを可能にし、10の位の円板の4つの回転のうち3つの回転が終了すると、10の位の円板は静止したままになる。上記円板の回転により、10の位の円板の4番目の回転時に作動されるデバイスは、この扇形部との接続を解除し、同時に、引き込み可能な歯を10の位の円板の縁部に出現させ、これにより、1の位の円板が、10の位の円板を急速に連続駆動し、表示360及び次に001のための2つの区分を通過させることを可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】スイス特許第CH203181A号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】書籍「Les montres compliquees(複雑時計)」、Francois Lecoultre著(Simonin編)、「Quantieme simple(単純カレンダ機構)」、「Quantieme perpetuel trainant(連続式永久カレンダ)」及び「Quantieme perpetuel instantane(瞬間永久カレンダ)」の章
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特に、排他的ではないが、永久カレンダ又は大型開口若しくは転子の日付表示等の複雑日付機構等、表示が跳躍と共に変化する表示機構に関し、ユーザに数秒間見えるように真夜中に瞬間的に日付を変更させることが有利である。例えば、2月28日から3月1日までの変更は、3から4秒かかる。この瞬間性という概念の低減は定性的になる。
【0015】
本発明は、ユーザが跳躍を見ることができる、調整された表示駆動デバイスの展開を提案するものであり、より詳細には、調整された日付表示機構について記載する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この目的で、本発明は、請求項1に記載の跳躍移動する表示部材を有する計時器表示機構に関する。
【0017】
本発明は、そのような表示機構を含む計時器ムーブメントにも関する。
【0018】
本発明は、そのような計時器ムーブメント及び/又はそのような表示機構を含む時計にも関する。
【0019】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照しながら以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明による、表示部材を有する計時器表示機構の概略平面図であり、表示部材は、正午に出現すると跳躍移動する。この機構は、ムーブメントによって駆動される第1の車セットの心軸と、表示部材の跳躍を制御する滑り子が横断する周辺スネイル・カムを支持する胴部との間にばねを有する香箱を含み、跳躍は、ここでは周期的な跳躍である。胴部は、周辺爪を支持し、周辺爪は、ケースに応じて、枢動する錨部品の停止部又はくちばしと協働するように配置され、錨部品の枢動は、第1の車セットの偏心部によって制御される。胴部の自由回転は、図の左部分の調整機構によって制動する。
【
図2A】
図1の線A−Dに沿って取った
図1の機構の断面図である。胴部、錨部品及び転子の領域をより詳細に表す。
【
図2B】
図1の線A−Bに沿って取った
図1の機構の断面図である。調整機構の領域をより詳細に表す。
【
図3】
図1の線B−Cに沿って取った
図1の機構の断面図である。
【
図4】
図1と同様の、正午より少し前の約11:00の同じ機構の図である。
【
図5】
図1と同様の、正午より少し後の約12:30の同じ機構の図である。
【
図6】
図1と同様の、真夜中より少し前の約23:00の同じ機構の図である。
【
図7】
図1と同様の、真夜中より少し後の約00.30の同じ機構の図である。
【
図8】
図1と同様の、調整機構の領域のみの図である。
【
図9】
図1と同様の、胴部及び錨部品の領域のみの図であり、錨部品は、午後のための実線及び午前のための点線における極限角度位置で表される。
【
図10】
図1と同様の、表示部材を制御するカム及び滑り子/触腕の領域のみの図である。
【
図11】ムーブメントを備える時計のブロック図であり、ムーブメントは、一方で、本発明による表示機構を含み、もう一方で、本発明による別の表示機構を駆動する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明は、跳躍移動する表示部材100を有する計時器表示機構1に関する。より詳細には、この表示部材は、周期的に跳躍移動する。このことは、図示の実施形態に該当する。
【0022】
この機構1は、第1の車セット4と第2の車セット30との間に少なくとも1つのばね2を備える。この第1の車セット4又は第2の車セット30のそれぞれは、駆動車セット201によって駆動されるように構成し、駆動車セット201は、表示機構自体の中、又はムーブメント500若しくは同様のもの等の外部機構のいずれかの中に含まれる。
【0023】
本発明によれば、駆動車セット201によって直接駆動されない車セット、即ち、第2の車セット30又は第1の車セット4のそれぞれは、カム5を駆動又は支持するように構成する。
【0024】
より詳細には、このカム5は、触手6が横断する周辺スネイル・カム51であり、触手6は、そのような表示部材100の跳躍、特に周期的な跳躍を制御するように構成する。
【0025】
機構1は、係止/解放手段70を含み、係止/解放手段70は、一方の、第2の車セット30又は第1の車セット4のそれぞれによって駆動される少なくとも1つの爪7、及びもう一方の、第3の車セット80を含み、第3の車セット80は、その角度位置に応じて、この少なくとも1つの爪7を停止してカム5の回転を防止するか又はこの少なくとも1つの爪7を解放してカム5の回転を可能にするように構成される。
【0026】
このカム5の機能は、触手6に対し一定期間の進行を課し、ユーザにはっきりと見える表示の変更をもたらすものである。したがって、跳躍は、数秒にわたって広がり、カムの縁部において可能な最長の進行経路に対応する。
【0027】
この表示の変更を可能な限り均一に生じさせるため、有利には、機構1は、カム5を支持する車セットの回転速度を調整する調整機構9を含む。この調整機構9は、特に図示のバージョンでは調整列を含み、調整列は、第2の車セット30又は第1の車セット4のそれぞれの列と嵌合し、第2の車セット30又は第1の車セット4は、カム5を駆動又は支持し、爪7を解放した際の回転速度を制限する。
【0028】
より詳細には、図示の非限定的な実施形態では、機構1は、一方の、第1の車セット4の心軸41と、もう一方の、第2の車セット30との間に巻かれた少なくとも1つのばね2を含む。更により詳細には、この第2の車セット30は胴部3であり、胴部3は、触手6の軌道、特に、触手6の軌道の外側を妨害せずに、少なくとも1つの周辺爪7を支持する。この胴部3は、周辺カム5を支持し、周辺カム5は、より詳細には、表示部材100跳躍後の少なくとも1つのゼロ再設定境界部52を含み、より詳細には、必ずしもそうではないが、スネイル51である。カム5は、触手6が横断し、触手6は、特に、表示部材100の周期的な跳躍、特に、排他的ではないが、日付表示部材の跳躍を制御するように構成する。
【0029】
図示の実施形態では、スネイル51は、下側段511から上側段512まで延在する長い傾斜部、及び単一境界部52を含む。触手6は、図示の非限定変形形態では滑り子である。他の図示しない変形形態では、この触手は、カム外形の上を擦る単一の爪又はそれ以外のものとすることができる。
【0030】
他の図示しない変形形態では、スネイルは、その周囲上に、交互のそのような傾斜部及びそのような境界部を含むことができる。より詳細には、排他的ではないが、各傾斜部に対応する角度区分は、同一である。
【0031】
図示の実施形態では、第3の車セット80は、停止器であり、特に、第1の車セット4又は第2の車セット30のそれぞれの作用下、錨部品軸D8回りに角移動可能な錨部品8である。この錨部品8は、その角度位置に応じて、上記少なくとも1つの爪7を停止し、カム5の回転を防止するか、又は上記少なくとも1つの爪7を解放し、カム5の回転を可能にするように構成する。
【0032】
より詳細には、第1の車セット4は、偏心クランク・ピン42を含み、偏心クランク・ピン42は、解放錨部品8内に含まれる溝81を永続的に案内し、枢動する錨部品8の周期的な前後運動を制御する。錨部品8は、錨部品軸D8の両側にくちばし83及び停止部84を含み、錨部品8の角度位置に応じて爪7を停止又は解放する。
【0033】
くちばし83により爪7が解放されることと、爪7が停止部84上へ戻り、当接することとの間の各爪7の角度進行は、跳躍の継続時間、即ち、表示変更の継続時間を規定する。
【0034】
図示の特定のケースでは、唯一の爪7がある。
【0035】
図示の特定のケースでは、カム5上に唯一のゼロ再設定境界部52がある。
【0036】
図示される本発明の特定の適用例では、機構1は、香箱10を含み、香箱10は、一方の香箱10の心軸と、もう一方の胴部3との間に少なくとも1つのそのようなばね2を備え、香箱10の心軸は、第1の車セット4の心軸41と一体であるか又は心軸41を形成する。
【0037】
しかし、このばね2は、あらゆる適切なばねとすることができ、この香箱のばねは、本発明の産業的な実装に十分に適した、単なる特定のケースである。
【0038】
非限定的な図示の例では、ばね2は、駆動車セット201によって巻かれ、駆動車セット201は、24時車であるか、又は24時車への列に接続される。ばねは、24時車以外の手段、例えば、自動巻列によって巻くこともでき、自動巻列は、回転錘、手巻機構又はそれ以外によって駆動される。
【0039】
より詳細には、第1の車セット4は、整数の歯車比で枢動し、駆動車セット201によって駆動される。
【0040】
錨部品8の前後運動は、爪7がくちばし83により解放されることと、爪7が停止部84上に戻り、当接することとの間の、第1の車セット4の軸D4に対する各爪7の角度進行を規定する。この角度進行は、跳躍継続時間を規定し、跳躍継続時間は、カム5の上で触手6が進行する継続時間に対応し、触手6は、最初に、スネイル51の下側段511から上側段512に徐々に上昇する緩やかな傾斜部を進行し、次に、ゼロ再設定境界部52を横断すると、瞬時に落下し、下側段511に戻る。境界部52の急な側を介する、この下側段511への戻り位置は、瞬時に生じ、例えば、星形車上のクリック爪システム等による表示に影響を与えることはない。
【0041】
したがって、各跳躍は、早期の状態と後期の状態との間の表示部材100の状態の変化に対応し、跳躍継続時間は、早期の状態の安定表示と、後期の状態の安定表示との間で経過する時間期間に対応する。
【0042】
より詳細には、第1の入力車セット4は、連続駆動車セット201によって駆動され、連続駆動車セット201が1回転する間、1回転又は整数回転又は全ての分数回転を達成するように構成する。
【0044】
駆動車セット201は、従来の計時器ムーブメントに対しエネルギー及び時間基準(24時間に1回転)をもたらす24時車である。
【0045】
この駆動車201は、ここでは更なる24時車である第1の入力車セット4を駆動する。この第1の入力車セット4は、偏心クランク・ピン42を支持し、第1の入力車セット4の心軸41は、更なる香箱3のばね2に接続される。したがって、この更なる香箱3は、ここでは、24時間ごとに1回転巻かれる。
【0046】
偏心クランク・ピン42は、錨部品8の溝81と連続的に協働し、溝81は、図の特定のケースでは、更なる24時車の真っすぐな長方形の溝である。したがって、解放錨部品8は、24時間で1回の前後運動を行う。図示の例は、ある日付の特定のケースでは、真夜中における単一の日単位の跳躍に関係するが、歯車比、歯7の数及び歯7の位置、第3の車セット80の数、特に錨部品8の数、並びに/又はゼロ再設定境界部52の数を適合させることによって、別の周期を有するあらゆる表示に本発明を外挿し、様々な跳躍機能を実施することが可能であることを理解されたい。
【0047】
例えば、正午及び真夜中の2回の日単位の跳躍を有する適用例は、AM/PM指示器の状態を変更することができるか、又は6:00及び18:00の2回の日単位の跳躍を有する適用例は、昼/夜指示器の状態を変更することができる。
【0048】
更に別の適用例は、週単位の表示に関係し、7日間で回転し、曜日を表示する。多くの他の適用例が当業者に利用可能であり、有利である。というのは、本発明は、表示変更に対する新規の可視性をもたらし、この新規の可視性は、ユーザにとって好ましい改良とみなされるためである。
【0049】
したがって、錨部品8の前後運動は、胴部3の回転、特に図のケースでは、胴部3の爪7を介して香箱10の胴部3の回転を作動させ、上記胴部が、真夜中に約330°の角度で回転し、正午に更なる30°の角度で回転することを可能にする。
【0050】
特定の実施形態では、偏心クランク・ピン42は、心軸41に摩擦により組み付けられ、例えば、その日の真夜中に跳躍を割り送るようにする。
【0051】
胴部3の330°の回転は、カム5、特にスネイル51を介して、表示機構、特に日付表示器を駆動させ、スネイル51は、カム5に取り付けられ、触手6に運動を与え、触手6は、図では、表示部材100を移動させるように構成した日付駆動車の滑り子である。後続の、特に日付の表示機能は、公知の様式、例えば、単純な機構又は永久カレンダ機構の形態で実施される。
【0052】
更なる30°の回転は、解放錨部品8の機能でのみ必要であるため、なくなる。
【0053】
より詳細には、有利な様式では、機構1は、調整機構9にも接続されるか、又は調整機構9を含む。胴部3は、調整機構9の列と嵌合し、特に、図示の変形形態では、調整車92のカナ91と嵌合し、調整車92は、調整がんぎ車94と一体であるがんぎカナ95と嵌合する。調整車92は、胴部3が回転する間に駆動される。調整がんぎ車94は、歯95を含み、歯95は、調整アンクル・レバー97と協働するように構成し、調整アンクル・レバー97は、アンクル石98及び99を含む。胴部3により付与されるトルクを受け、調整アンクル・レバー97は、アンクル石を一方から他方に交互に通過させ、調整アンクル・レバー97と一体である慣性錘970を駆動する。調整アンクル・レバー97のこの発振運動は、てんぷ/ひげぜんまいほどの等時性はないが、機能を適切に調整することができる固有の振動数を有する。この発振器の振動数は、相補ばね971により実質的に修正することができ、相補ばね971は、ここでは、ねじ頭972上で動くように組み付けられ、これにより、わずかな程度まで機能時間の変更を可能にする。
【0054】
調整機構9の他の変形形態は、慣性、遠心制動、磁気制動又は渦電流制動又はそれ以外の使用による調速器を使用することもできる。
【0055】
胴部の1回転の速度を約2から8秒に制限するのは、この調整システムである。
【0056】
図4から
図7は、前述の適用例のシーケンスを示す。
【0057】
図4は、正午より少し前の約11:00のシステムの状態を示す。爪7は、錨部品8の停止部84と当接係合している。偏心クランク・ピン52は、錨部品8の長方形溝81の第1の端部811にかなり近接している。触手6の滑り子は、スネイル51の下側段511上に、径方向一点鎖線により表されるゼロ再設定境界部52にすぐ近接して載置される。したがって、日付駆動システムは非起動状態にある。
【0058】
図5は、正午より少し後の約12:30のシステムの状態を示す。爪7は、錨部品8のくちばし83と当接係合している。偏心クランク・ピン52は、長方形溝81の第1の端部811に依然として近接している。触手6の滑り子は、スネイル51の下側段511上に、ゼロ再設定境界部52から角距離α、ここでは約30°で載置される。日付駆動機構は依然として非起動状態にある。
【0059】
図6は、真夜中より少し前の約23:00のシステムの状態を示す。爪7の先端は、錨部品8のくちばし83の先端と接触している。したがって、この先端同士の接触が終了すると、胴部3が解放され、ほぼ1回転、回転することになる。偏心クランク・ピン52は、午後、錨部品8の長方形溝81を横断し、現在、この長方形溝81の第2の端部812に非常に近接している。触手6の滑り子は、スネイル51の下側段511上に、ゼロ再設定境界部52にすぐ近接して、依然として載置されている。日付駆動機構は依然として非起動状態にある。
【0060】
そのわずかな後、真夜中の辺りで、爪7は、錨部品8のくちばし83を離れ、胴部3は、角度β、ここでは約330°回転する。
図1で詳述した調整機構9によって調整されるこの回転の間、回転が数秒継続し、ユーザにはっきりと見え、触手6の滑り子は、最初にスネイル51の下側段511を横断し、次に上側段512に昇り、日付駆動機構を起動し、新たな日付を表示するようにする。滑り子6は、ゼロ再設定境界部52を通過すると落下する。
【0061】
図7は、真夜中より少し後の約00:30のシステムの状態を示す。
図7は、錨部品8の停止部84と再度当接係合している。偏心クランク・ピン52は、長方形溝81の第2の端部812に依然として近接している。触手6の滑り子は、一点鎖線で示す高い位置から低い位置に再度落下し、スネイル51の下側段511上に載置されている。進行角度βは、
図6のゼロ再設定境界部52と
図7のゼロ再設定境界部52との間に形成された角度である。
【0062】
本発明は、そのような表示機構1を含む計時器ムーブメント500にも関する。
【0063】
本発明は、そのようなムーブメント500及び/又はそのような表示機構1を含む計時器、特に、時計(clock又はwatch)1000にも関する。
【0065】
真夜中の作動は、他の原理を使用して、例えば(一定力の種類の)付勢カナにより達成することができる。例えば、第3の車セット80は、第1の車セット4の心軸41と一体である星形車又はカナである。
【0066】
別の変形形態は、図示のものとは逆構成を形成する。第2の車セット30は、香箱3であり、香箱3は、駆動車セット201によって駆動されるように構成し、第3の車セット80を支持する。この場合、第1の車セット4は、上記周辺スネイル51カム5を駆動又は支持するように構成する。
【0067】
この場合、時打調速器型の別の種類の調整システム、例えば、渦電流調速器又は磁気調速器又は静電調速器又はそれ以外によって、調整を保証することができる。
【0068】
選択した調整機構9の種類によって規定される機能時間は、自由に選択することができ、ここでは、非限定的に1から30秒の間に設定する。実際、これらの速度では、速度によって生成される動的応力を無視でき、静的応力しか分からない。
【0069】
日付跳躍は、静的応力と判断できる応力のみ生成するように生じ、跳躍の間、構成要素の慣性に関係する動的影響は、無視できる。
【0070】
跳躍は、昼の背景では瞬時に生じるとみなされるが、依然としてユーザにはっきりと見えるものであり、高級な印象を与える。
【0071】
跳躍は数秒に限定されるため、情報の損失及び動作欠陥の危険性があるような日付修正のための時限は限られる。
【符号の説明】
【0072】
1 計時器表示機構
2 ばね
4 第1の車セット
5 カム
6 触手
7 爪
8 留め部品
9 調整機構
30 第2の車セット
41 心軸
51 周辺スネイル
52 ゼロ再設定境界部
70 係止/解放手段
80 第3の車セット
81 溝
83 くちばし
84 停止部
100 表示部材
201 駆動車セット
511 下側段
512 上側段
1000 時計
D4 軸
D8 錨部品軸