特許第6676816号(P6676816)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6676816L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6676816
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/375 20060101AFI20200330BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20200330BHJP
   A61K 9/30 20060101ALI20200330BHJP
   A23L 33/15 20160101ALI20200330BHJP
   A23L 33/175 20160101ALI20200330BHJP
   A23L 33/24 20160101ALI20200330BHJP
   A23L 33/25 20160101ALI20200330BHJP
   A61P 39/06 20060101ALI20200330BHJP
   A61P 17/18 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   A61K31/375
   A61K31/198
   A61K47/38
   A61K47/32
   A61K47/04
   A61K9/20
   A61K9/30
   A23L33/15
   A23L33/175
   A23L33/24
   A23L33/25
   A61P39/06
   A61P17/18
【請求項の数】9
【全頁数】30
(21)【出願番号】特願2019-174777(P2019-174777)
(22)【出願日】2019年9月25日
【審査請求日】2019年9月26日
(31)【優先権主張番号】特願2019-102674(P2019-102674)
(32)【優先日】2019年5月31日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】316008352
【氏名又は名称】シオノギヘルスケア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村里 博志
(72)【発明者】
【氏名】友田 宜孝
(72)【発明者】
【氏名】磯見 幸夫
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 健
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−077010(JP,A)
【文献】 特開2003−155232(JP,A)
【文献】 特開2014−034529(JP,A)
【文献】 特開2008−024702(JP,A)
【文献】 特開2008−260778(JP,A)
【文献】 特開2007−186470(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/69
A23L 33/00−33/29
A61P 17/18
A61P 39/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、
(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤、及び
(D)軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つのケイ酸化合物、
を含有する圧縮成形製剤。
【請求項2】
前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する顆粒圧縮成形製剤であって、 造粒物に、造粒物を構成する造粒成分として、前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる群より選択される少なくとも(A)及び(C)成分が配合されてなり、
(D)が、前記造粒成分として、及び/または、造粒物とは別に、後添加成分として配合されてなることを特徴とする、
請求項1に記載する圧縮成形製剤。
【請求項3】
(B)が、前記造粒成分として、または、造粒物とは別に、後添加成分として配合されてなることを特徴とする、
請求項2に記載する圧縮成形製剤。
【請求項4】
硬度が30N以上であり、日本薬局方(第17改正)規定の崩壊試験法(補助盤なし、37℃の精製水使用)による崩壊時間が50分以内である、請求項1〜3のいずれか1項に記載する圧縮成形製剤。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載する圧縮成形製剤の表面がさらにコーティングされてなる、被覆製剤。
【請求項6】
下記1〜3の工程を有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載する圧縮成形製剤、または請求項5に記載する被覆製剤の製造方法:
1.前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる群より選択される少なくとも(A)及び(C)成分、または(A)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物を調製する工程、
2.前記造粒物と、前記(B)、(D)及び滑沢剤からなる群より選択される少なくとも一つの後添加成分とを混合する工程、及び
3.前記2の工程で得られた混合物を圧縮成形する工程。
【請求項7】
請求項6に記載する製造方法であって、前記1〜3の工程に加えて、さらに下記4の工程を有する、請求項5に記載する被覆製剤の製造方法:
4.前記3の工程で得られた圧縮成形製剤をコーティングする工程。
【請求項8】
(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、及び
(D)軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つのケイ酸化合物、
を含有する顆粒圧縮成形製剤についてキャッピングを抑制する方法であって、
造粒用結合剤として、さらに(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を配合することを特徴とする、キャッピング抑制方法。
【請求項9】
(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、
(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤、及び
(D)軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素よりなる群から選択される少なくとも1つのケイ酸化合物、
を含有する顆粒圧縮成形製剤について、崩壊性または/及び摩損度を改善する方法であって、
造粒成分として前記(A)、(B)、(C)、及び(D)成分からなる群より選択される少なくとも(A)及び(C)成分、または少なくとも(A)、(C)及び(D)成分を含む造粒物と、
前記(B)、(D)及び滑沢剤からなる群より選択される少なくとも一つの後添加成分とを混合して、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の混合物を調製し、
当該混合物を圧縮成形することを特徴とする、前記崩壊性または/及び摩損度の改善方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬効成分としてビタミンC(本発明では「アスコルビン酸」とも称する)とL−システインを高含量有する圧縮成形製剤、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
しみ、そばかす、日やけなどによる色素沈着は、加齢や紫外線などの影響で、メラニンが過剰に増えることによって生じる。これに対して、ビタミンCにはメラニン生成を抑える作用が、またL−システインには肌細胞の新陳代謝を活性化する作用が知られており、これらに加えて、肌の正常な働きを助ける作用が知られているパントテン酸カルシウムを配合した製剤が、しみ、そばかす、日やけ、かぶれ等による色素沈着症の緩和を効能・効果とする医薬品として、従来から製造販売されている(例えば非特許文献1及び2等参照)。また当該製剤は、上記効能・効果に加えて、歯ぐきからの出血や鼻血等の出血予防;及び肉体疲労時、妊娠、授乳期、病中病後の体力低下時、老年期のビタミンCの補給に対しても効能・効果がある。
【0003】
こうしたL−システイン配合ビタミンC含有製剤がより高い効果を発揮するためには、一日当たりの服用量を多くすることが求められるものの、L−システインは流動性及び圧縮成形性が悪いため、その含有量を増やすことが難しいという問題があった(特許文献1等参照)。また、L−システインとアスコルビン酸を含む錠剤は、少量の打錠はできても、大量生産すると、配合する製剤添加物によっては、流動性が悪く打錠ができなかったり、キャッピングなどの打錠障害を引き起こしたり、あるいは成分含量のバラツキや重量の偏差が大きくなる等、所望の製剤が効率的に且つ安定的に製造できないという問題があった(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−186470号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】ビタミンC主薬製剤(L−システイン配合)「シナール(登録商標)Lホワイト錠」添付文書(2012年9月改訂)(http://www.shionogi-hc.co.jp/wellness/medicine/vitamin/cnlw/doc/cnlw.pdf)
【非特許文献2】ビタミンC主薬製剤(L−システイン配合)「シナール(登録商標)イクシプレミアム」添付文書 (http://www.info.pmda.go.jp/downfiles/otc/PDF/J1801000114_01_B.pdf)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アスコルビン酸(ビタミンC)とL−システインを高含量有する圧縮成形製剤について、第1に、製造時に生じる打錠障害(キャッピング)を改善することを課題とする。第2に、前記圧縮成形製剤について、適度な硬度を有しながらも、崩壊性を改善する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従来、広く製造承認されているL−システイン配合ビタミンC含有製剤は、1日あたりのL−システインの服用量が30〜160mg、アスコルビン酸(ビタミンC)の服用量が300〜1200mgであり(前記特許文献1)、この服用量になるように、1回2錠を一日に3回服用するように製剤化されている。本発明者らは、一日に服用するアスコルビン酸の量が1200mgを超え、且つL−システインの量が160mgを超えるL−システイン配合ビタミンC高含量圧縮成形製剤を開発すべく研究していたところ、アスコルビン酸を1200mgを超えて配合すると、錠剤の打錠性が著しく低下し、打錠障害(キャッピング)が生じるという問題があることを見出した。これを解消すべく鋭意検討を重ねたところ、顆粒圧縮成形法を用いて製造される圧縮成形製剤(以下、これを「圧縮成形製剤」と称する場合がある)において、造粒物を構成する成分(以下、これを「造粒成分」と称する)として、アスコルビン酸とともに特定の造粒用結合剤を用いることで、当該打錠障害が抑制できることを確認した。
【0008】
また、本発明者らは、造粒成分として、特定の造粒用結合剤を配合すると、打錠性は改善されて、製剤の硬度を高めることができるものの、一方で、崩壊性が低下して崩壊時間が遅延し、効果発現に時間がかかるという問題があることを知見した。そこでこれを解消すべくさらに鋭意検討を重ねたところ、圧縮成形に際して、ケイ酸化合物がこれを解消する成分として有効であることを見出した。具体的には、顆粒圧縮成形法において、造粒成分として、及び/または、造粒物とは別に、ケイ酸化合物を添加配合し、その混合物を圧縮成形することで調製した製剤が、所望の硬度を維持しながらも、前記の崩壊性が改善され、所望な崩壊性を発揮することを確認した。また、造粒成分として、及び/または、造粒物とは別に、ケイ酸化合物を添加配合して圧縮成形することで摩損度が低下し、良好な品質の圧縮成形製剤が安定して製造できることを確認した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づいて、さらなる改良を重ねて完成したものであり、下記の実施形態を包含するものである。
【0010】
(I)L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤
(I−1)下記の(A)〜(D)成分を含有する圧縮成形製剤:
(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、
(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤、及び
(D)ケイ酸化合物。
(I−2)前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する顆粒圧縮成形製剤であって、
造粒物に、造粒物を構成する造粒成分として、前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる群より選択される少なくとも(A)及び(C)成分が配合されてなり、
(D)が、前記造粒成分として、及び/または、造粒物とは別に、後添加成分として配合されてなることを特徴とする、(I−1)に記載する圧縮成形製剤。
(I−3)(B)が、前記造粒成分として、または、造粒物とは別に、後添加成分として配合されてなることを特徴とする、(I−2)に記載する圧縮成形製剤。
(I−4)前記(A)及び(C)成分を含有する造粒物1(アスコルビン酸含有造粒物1)と前記(B)及び(D)成分の混合物の圧縮成形物であるか、または前記(A)、(B)及び(C)成分を含有する造粒物2(アスコルビン酸含有造粒物2)と前記(D)成分の混合物の圧縮成形物である、(I−1)〜(I−3)のいずれかに記載する圧縮成形製剤。
(I−5)前記アスコルビン酸含有造粒物1及び2がさらに(D)成分を含有するものである、(I−4)に記載する圧縮成形製剤。
(I−6)(D)のケイ酸化合物が、軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも一種である、(I−1)〜(I−5)のいずれかに記載する圧縮成形製剤。
(I−7)硬度が30N以上であり、日本薬局方(第17改正)規定の崩壊試験法(補助盤なし、37℃の精製水使用)による崩壊時間が50分以内である、(I−1)〜(I−6)のいずれかに記載する圧縮成形製剤。
(I−8)一服用単位100質量%あたり、(A)成分を30〜90質量%、(B)成分を2〜20質量%、(C)成分を0.1〜10質量%、及び(D)成分を0.1〜10質量%の割合で含有する、(I−1)〜(I−7)のいずれかに記載する圧縮成形製剤。
(I−9)アスコルビン酸含有造粒物1または2に後添加する(D)成分の割合が、圧縮成形製剤に配合する(D)成分の全量100質量%あたり10〜100質量%である、(I−2)〜(I−8)のいずれかに記載する圧縮成形製剤。
(I−10)(I−1)〜(I−9)のいずれかに記載する圧縮成形製剤の表面がさらにコーティングされてなる、被覆製剤。
(I−11)コーティングがフィルムコーティングまたは糖衣コーティングである、(I−10)に記載する被覆製剤。
(I−12)硬度が30N以上であり、日本薬局方(第17改正)規定の崩壊試験法(補助板なし、37℃の精製水使用)による崩壊時間が60分以内である、(I−8)または(I−11)に記載する被覆製剤。
【0011】
(II)L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤の製造方法
(II−1)下記1〜3の工程を有する、(I−1)〜(I−9)のいずれか1項に記載する圧縮成形製剤、または(I−10)〜(I−12)に記載する被覆製剤の製造方法:
1.前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる群より選択される少なくとも(A)及び(C)成分、または(A)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物を調製する工程、
2.前記造粒物と、前記(B)成分、(D)成分及び滑沢剤よりなる群から選択される少なくとも一つの後添加成分を混合する工程、及び
3.前記2の工程で得られた混合物を圧縮成形する工程
(II−2)下記1’〜3’の工程を有する、(I−4)〜(I−9)のいずれかに記載する圧縮成形製剤、または(I−10)〜(I−12)のいずれかに記載する被覆製剤の製造方法:
1’.前記(A)及び(C)成分を含有する造粒物1、前記(A)、(B)及び(C)成分を含有する造粒物2、または前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物3を調製する工程、
2’.前記造粒物1と少なくとも前記(B)及び(D)成分を混合するか、または前記造粒物2と少なくとも前記(D)成分を混合するか、または前記造粒物3と少なくとも滑沢剤を混合する工程、
及び
3’.前記で得られた混合物を圧縮成形する工程。
(II−3)前記造粒物1及び2がさらに(D)成分を含有するものである、(II−2)に記載する製造方法。
(II−4)前記1〜3または前記1’〜3’の工程に加えて、さらに下記4の工程を有する、(II−1)〜(II−3)のいずれかに記載する被覆製剤の製造方法:
4.前記3または3’の工程で得られた圧縮成形製剤をコーティングする工程。
【0012】
(III)L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤のキャッピング抑制方法
(III−1)(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、及び
(D)ケイ酸化合物、
を含有する顆粒圧縮成形製剤についてキャッピングを抑制する方法であって、
造粒用結合剤として、(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を配合することを特徴とする、キャッピング抑制方法。
(III−2)(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、及び
(D)ケイ酸化合物、
を含有する圧縮成形製剤についてキャッピングを抑制する方法であって、
(A)成分または(A)及び(D)成分に加えて、さらに(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の水膨潤性高分子化合物を用いて造粒後、これに(B)及び(D)成分を混合する工程を有するか、
(A)及び(B)成分または(A)、(B)及び(D)成分に加えて、さらに(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤を用いて造粒後、これに(D)成分を混合する工程を有するか、または、
(A)、(B)及び(D)成分に加えて、さらに(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤を用いて造粒後、これに少なくとも滑沢剤を含む後添加成分を混合する工程を有する
ことを特徴とする、キャッピング抑制方法。
(III−3)(D)のケイ酸化合物が、軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも一種である、(III−1)または(III−2)に記載するキャッピング抑制方法。
【0013】
(IV)L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤の崩壊性または/及び摩損度の改善方法
(IV−1)(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、
(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤、及び
(D)ケイ酸化合物、
を含有する圧縮成形製剤について崩壊性または/及び摩損度を改善する方法であって、
造粒成分として、前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる群より選択される少なくとも(A)及び(C)成分、または(A)、(C)及び(D)成分を含む造粒物と、
前記(B)、(D)及び滑沢剤からなる群より選択される少なくとも一つの後添加成分を混合して、(A)、(B)、(C)及び(D)成分の混合物を調製し、
当該混合物を圧縮成形する、
ことを特徴とする、崩壊性または/及び摩損度の改善方法。
(IV−2)(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、
(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤、及び
(D)ケイ酸化合物、
を含有する圧縮成形製剤について崩壊性または/及び摩損度を改善する方法であって、
前記(A)及び(C)成分を含有する造粒物1に、前記(B)及び(D)成分を混合し、得られた(A)、(B)、(C)及び(D)成分の混合物を圧縮成形するか、または
前記(A)、(B)及び(C)成分を含有する造粒物2に、前記(D)成分を混合し、得られた(A)、(B)、(C)及び(D)成分の混合物を圧縮成形するか、または
前記(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物3に、少なくとも滑沢剤を混合し、得られた(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含む混合物を圧縮成形する
ことを特徴とする、崩壊性または/及び摩損度の改善方法。
(IV−3)前記造粒物1及び2がさらに(D)成分を含有するものである、(IV−2)に記載する崩壊性改善方法。
(IV−4)硬度の低下を抑えながら、崩壊性または/及び摩損度を改善する方法である、(IV−1)〜(IV−3)のいずれかに記載する崩壊性改善方法。
(IV−5)(D)のケイ酸化合物が、軽質無水ケイ酸及び含水二酸化ケイ素からなる群より選択される少なくとも一種である、(IV−1)〜(IV−4)のいずれかに記載する崩壊性または/及び摩損度の改善方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の圧縮成形製剤は、アスコルビン酸(ビタミンC)を1日1200mgの服用量を超え、またL−システインを1日160mgの服用量を超えるように、各成分を配合したL−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤であり、L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤において生じ得る打錠障害(キャッピング)が、製剤成分として、特定の造粒用結合剤を含むことで抑制されてなることを特徴とする。つまり、本発明の圧縮成形製剤は、打錠障害(キャッピング)が抑制されてなるL−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤である。
また本発明のキャッピング抑制方法は、L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤において生じ得る打錠障害(キャッピング)を抑制し、当該製剤を安定的に効率良く製造する方法として有用である。
【0015】
また、本発明の圧縮成形製剤は、前述するように、アスコルビン酸とL−システインに加えて、特定の造粒用結合剤を含むL−システイン配合ビタミンC高含有製剤である。本発明の圧縮成形製剤には、当該造粒用結合剤の配合により所望な硬度を備えながらも、さらにケイ酸化合物を含むことで、良好な崩壊性を発揮することを特徴とする製剤が含まれる。当該本発明の圧縮成形製剤は、所望な硬度を備えながらも、良好な崩壊性を有するL−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤である。またこうした構成を採用することにより、本発明の圧縮成形製剤は、摩損度の低下も抑制されてなり、良質な製剤を安定的に効率良く製造することができる。
また、本発明が提供する崩壊性改善方法は、L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤に所定の造粒用結合剤を配合することで改善される硬度に悪影響を与えることなく、崩壊性の低下を改善し、崩壊性の低下によって生じ得る薬効発現効果の遅延(遅効性)を回避し抑制する方法として有用である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(I)L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤、及びその製造方法
本発明のL−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤(以下、単に「本発明製剤」とも称する)は、下記の(A)〜(D)成分を含有する圧縮成形物であることを特徴とする:
(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、
(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、
(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の造粒用結合剤、及び
(D)ケイ酸化合物。
【0017】
以下これらの成分について説明する。
(A)成分
アスコルビン酸としては、ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えば日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書に収載されているアスコルビン酸を使用することができる。アスコルビン酸は、光学活性化合物であるが、L−アスコルビン酸(厳密にはこれをビタミンCと称する)に限らず、D−アスコルビン酸も使用することができる。また両者の混合物であってもよい。アスコルビン酸の塩としては、ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えばアスコルビン酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を挙げることができる。アスコルビン酸のアルカリ金属塩としては、例えばアスコルビン酸のカリウム塩やナトリウム塩を、またアルカリ土類金属塩としては、例えばアスコルビン酸のカルシウム塩やマグネシウム塩を挙げることができる。(A)成分として好ましくはアスコルビン酸であり、より好ましくはL−アスコルビン酸である。
【0018】
本発明製剤に含まれるアスコルビン酸またはその塩の量は、成人1人が1日に服用するアスコルビン酸の量に換算して1200mgを超える量であって、少なくともL−システイン配合ビタミンC含有製剤に求められる薬効と本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。ここで「成人1人が1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量」とは、本発明製剤を成人1人が1日に1剤(1錠)服用するように設計した場合は、1剤中に含まれるアスコルビン酸またはその塩の量はアスコルビン酸の量に換算して1200mgを超える量であることを意味する。また、例えば、成人1人が1日に3剤(3錠)服用するように設計した場合は、1剤中に含まれるアスコルビン酸またはその塩の量はアスコルビン酸の量に換算して前記量の1/3に相当する量であることを意味し、同様に、成人1人が1日に6剤(6錠)服用するように設計した場合は、1剤中に含まれるアスコルビン酸またはその塩の量はアスコルビン酸の量に換算して前記量の1/6に相当する量であることを意味する。本発明製剤は、成人1人の1日あたりのアスコルビン酸の服用量が1200mgを超えるように、1日に1回、または2〜3回に分けて服用することができる。なお、1200mgを超える量として、制限されないものの、好ましくは1200mgより多く3000mg以下、より好ましくは1300mg以上2000mg以下、さらに好ましくは1400mg以上1800mg以下を例示することができる。
【0019】
なお、本発明において「成人」とは15歳以上の男女を意味する。但し、本発明製剤は成人が服用するための製剤に限定されるものではなく、15歳未満の小児が服用するものであってもよい。小児が服用する場合、各年齢区分に応じて成人が1日に服用する量の1/2や2/3などに減量して用いることができる。
【0020】
また、本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれるアスコルビン酸またはその塩(総質量)の割合は、L−システイン配合ビタミンC含有製剤に求められる薬効と本発明の効果を発揮する範囲で適宜設定することができるものの、例えば、30〜90質量%の範囲を例示することができる。好ましくは40〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%の範囲である。
【0021】
(B)成分
L−システインとしても、ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えば日本薬局方、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格または食品添加物公定書に収載されているL−システインを使用することができる。L−システインの塩としては、ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えばL−システインの塩酸塩、硝酸塩及び酢酸塩等の無機酸塩;L−システインのカリウム塩やナトリウム塩等のアルカリ金属塩;またはL−システインのカルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩を挙げることができる。L−システインの塩として好ましくはL−システインの塩酸塩、つまり塩酸システインである。(B)成分として好ましくは、L−システインである。
【0022】
本発明製剤に含まれるL−システインまたはその塩の量は、成人1人が1日に服用するL−システインの量に換算して160mgを超える量であって、少なくともL−システイン配合ビタミンC含有製剤に求められる薬効と本発明の効果を発揮する量であればよく、その範囲で適宜設定調整することができる。ここで「成人1人が1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量」とは、本発明製剤を成人1人が1日に、例えば1剤(1錠)服用するように設計した場合は、1剤中に含まれるL−システインまたはその塩の量はL−システインの量に換算して160mgを超える量であることを意味する。また、例えば、成人1人が1日に3剤(3錠)服用するように設計した場合は、1剤中に含まれるL−システインまたはその塩の量はL−システインの量に換算して前記量の1/3に相当する量であることを意味し、同様に、成人1人が1日に6剤(6錠)服用するように設計した場合は、1剤中に含まれるL−システインまたはその塩の量はL−システインの量に換算して前記量の1/6に相当する量であることを意味する。本発明製剤は、成人1人の1日あたりのL−システインの服用量が160mgを超えるように、1日に1回、または2〜3回に分けて服用することができる。160mgを超える量として、制限されないものの、好ましくは160mgより多く350mg以下、より好ましくは180mg以上300mg以下、さらに好ましくは200mg以上240mg以下を例示することができる。
【0023】
また、本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれるL−システインまたはその塩(総質量)の割合は、L−システイン配合ビタミンC含有製剤に求められる薬効と本発明の効果を発揮する範囲で適宜設定することができるものの、例えば、2〜20質量%の範囲を例示することができる。好ましくは4〜17質量%、より好ましくは6〜15質量%の範囲である。
【0024】
(C)成分
(C)成分として用いる造粒用結合剤は、一般に医薬品添加剤のうち、水又はエタノールを加えるとき粘調性のある液となり、造粒用の結合剤として使用される化合物のうち、ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物のいずれかに該当するものである。
【0025】
ここでポリビニルアルコール化合物は、化合物中に (-CH2CH(OH)-)n で示される構造を有する重合物である。具体的には、ポリビニルアルコール、またはビニルアルコールと他のモノマー化合物との共重合体を挙げることができる。ここでビニルアルコールの共重合体としては、グラフトコポリマーのように主鎖の一部から別のポリマーが分岐している共重合体、ランダムコポリマーのようにポリマーの構成単位が無秩序に配列しているようなコポリマー、またはブロックコポリマーなどを挙げることができる。具体的には、ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えば医薬品添加物規格または食品添加物公定書に収載されているポリビニルアルコール化合物を使用することができる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールアクリル酸・メタクリル酸共重合体、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマー等を例示することができる。好ましくはポリビニルアルコールアクリル酸・メタクリル酸共重合体であり、なかでもポリビニルアルコールアクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体(PVAコポリマー)、特に平均重合度が500程度のPVAコポリマーが好ましい。
【0026】
なお、ポリビニルアルコールは、けん化度の程度により完全けん化物と部分けん化物に分類されるが、本発明ではいずれのポリビニルアルコールをも使用することができる。その分子量は、特に制限されないが、例えば10,000〜300,000程度、好ましくは30,000〜200,000程度のものを例示することができる。ポリビニルアルコールアクリル酸・メタクリル酸共重合体の分子量も、特に制限されないものの、10,000〜200,000程度、好ましくは30,000〜100,000程度、より好ましくは30,000〜50,000程度のものを例示することができる。ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフトコポリマーの分子量も、特に制限されないものの、10,000〜100,000程度、好ましくは30,000〜70,000程度のものを例示することができる。
【0027】
ポリビニルピロリドン化合物は、N-ビニル-2-ピロリドンをモノマーとする重合物である。ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えば医薬品添加物規格または食品添加物公定書に収載されているポリビニルピロリドン化合物を使用することができる。具体的には、ポリビニルピロリドン、及びクロスポリビニルピロリドン等を例示することができる。好ましくはポリビニルピロリドンである。ポリビニルピロリドン化合物の分子量も、特に制限されないものの、100,000〜150,000程度のものを例示することができる。
【0028】
本発明において(C)成分として使用されるセルロース化合物は、前述するように水又はエタノールを加えるとき粘調性のある液となる特性を有するものである。この限りにおいて、ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えば医薬品添加物規格または食品添加物公定書に結合剤として収載されているセルロース化合物を使用することができる。具体的には、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒプロメロース(ヒドロキシプロピルメチルセルロース)、メチルセルロース等を例示することができる。好ましくはヒドロキシプロピルセルロース、及びヒプロメロースである。
【0029】
これらの造粒用結合剤は、1種単独で使用することができるほか、2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。好ましい造粒用結合剤は、ポリビニルアルコール化合物またはポリビニルピロリドン化合物である。本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれる前記造粒用結合剤の割合は、本発明製剤が本発明の効果を発揮する範囲で適宜設定することができる。制限されないものの、例えば、0.1〜10質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5〜5質量%、より好ましくは1〜3.5質量%の範囲である。
【0030】
(D)成分
(D)成分として用いるケイ酸化合物としては、ヒトの体内に適用できるものであればよく、例えば医薬品添加物規格または食品添加物公定書に収載されているケイ酸化合物を使用することができる。具体的には、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、ケイ酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩(例えば、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム等)、及びメタケイ酸アルミン酸塩を例示することができる。これらのケイ酸化合物は、1種単独で使用することができるほか、2種以上を任意に組み合わせて用いることもできる。好ましくは、軽質無水ケイ酸、及び含水二酸化ケイ素であり、より好ましくは軽質無水ケイ酸である。
【0031】
本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれる前記ケイ酸化合物の割合は、本発明製剤が本発明の効果を発揮する範囲で適宜設定することができる。制限されないものの、例えば、0.1〜10質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5〜8質量%、より好ましくは1〜6質量%の範囲である。
【0032】
(E)任意の薬理活性成分
本発明製剤には、本発明の効果を損なわないことを限度として、前述する(A)及び(B)成分に加えて、さらに他の薬理活性成分が含まれていても良い。制限されないものの、例えば、パントテン酸、パントテン酸カルシウム、パントテン酸ナトリウム及びパンテノールなどのパントテン酸類;コハク酸d−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロール、コハク酸dl−α−トコフェロールカルシウム、酢酸d−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、d−α−トコフェロール及びdl−α−トコフェロールなどのビタミンE;塩酸チアミン、硝酸チアミン、硝酸ビスチアミン、チアミンジスルフィド、チアミンジアセチル硫酸エステル、塩酸フルスルチアミン、塩酸ジセチアミン、オクトチアミン、シコチアミン、ビスイブチアミン、ビスベンチアミン及びベンフォチアミンなどのビタミンB1;リボフラビン、酪酸リボフラビン及びリン酸リボフラビンナトリウムなどのビタミンB2;塩酸ピリドキシン及びリン酸ピリドキサールなどのビタミンB6;シアノコバラミン、塩酸ヒドロキソコバラミン、酢酸ヒドロキソコバラミン及びメコバラミンなどのビタミンB12;ニコチン酸及びニコチン酸アミドなどのニコチン酸類;ヨクイニン、オロチン酸、ビオチン、γ−オリザノール、グルクロノラクトン、グルクロン酸アミド、ユビデカレノンなどを挙げることができる。
【0033】
なかでも好ましくはパントテン酸類であり、より好ましくはパントテン酸カルシウムである。本発明製剤にパントテン酸類を配合する場合、その配合量としては、成人1人が1日に服用するパントテン酸量に換算して5〜50mgを例示することができる。また、本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれるパントテン酸類(総質量)の割合は、L−システイン配合ビタミンC高含有製剤に求められる薬効と本発明の効果を発揮する範囲で適宜設定することができるものの、例えば、0.1〜3質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.3〜2質量%、より好ましくは0.8〜1.5質量%の範囲である。
【0034】
(F)任意の担体・添加剤
本発明製剤の製造にあたり、前述する成分以外に、本発明の効果を損なわないことを限度として、適宜、従来公知の担体や添加剤を任意に配合することができる。これらの担体や添加剤としては、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊補助剤、滑沢剤、安定剤、界面活性剤、抗酸化剤、緩衝剤、pH調整剤、分散剤、溶解補助剤、流動化剤、光沢剤、矯味剤、甘味剤、清涼化剤、着色剤、矯臭剤、香料、吸着剤、糖衣剤、懸濁化剤、静電防止剤、可塑剤、及び芳香剤等を、制限なく、例示することができる。
【0035】
賦形剤としては、本発明の効果を損なわないことを限度として制限されないものの、例えば、乳糖、精製白糖、ぶどう糖、粉糖、果糖、マルトース、還元麦芽糖水あめ、結晶セルロース、粉末セルロース、コーンスターチ、馬鈴薯デンプン、糖アルコール(マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール等)、トレハロース、無機塩、デキストラン、デキストリン、βーシクロデキストリン、ショ糖脂肪酸エステル、大豆レシチン、トラガント末、アラビアゴム、プルラン、カオリン等を挙げることができる。これらは1種単独または2種以上を任意に組み合わせて使用することができる。本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれる賦形剤の割合は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲であるかぎり制限されないものの、例えば、0.1〜70質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%の範囲である。
【0036】
結合剤としては、本発明の効果を損なわないことを限度として制限されないものの、例えば、アラビアガム、アラビアゴム粉末、ゼラチン、α化デンプン、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、寒天、プルラン、デキストリン、セラック、ショ糖、トラガント、トラガント末、キサンタンガム、ペクチン、ポリアクリル酸ナトリウム、グァーガム等を挙げることができる。本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれる結合剤の割合は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲であるかぎり制限されないものの、例えば、0.1〜5質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5〜4質量%、より好ましくは1〜3質量%の範囲である。
【0037】
崩壊剤としては、本発明の効果を損なわないことを限度として制限されないものの、例えばコーンスターチ、馬鈴薯デンプン、部分α化デンプン、ヒドロキシプロピルスタ−チ、デンプングリコール酸ナトリウム、カルボキシメチルスターチナトリウム、低置換度カルボキシメチルスターチナトリウム、カルメロースカルシウム、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、クロスカルメロースナトリウム、結晶セルロース、粉末セルロース、クロスポビドン、カルメロースナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム等を挙げることができる。本発明製剤の質量を100質量%とした場合、それに含まれる崩壊剤の割合は、本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲であるかぎり制限されないものの、例えば、0.1〜15質量%の範囲を例示することができる。好ましくは0.5〜10質量%、より好ましくは1〜5質量%の範囲である。
【0038】
滑沢剤としては、本発明の効果を損なわないことを限度として制限されないものの、例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸、タルク、ショ糖脂肪酸エステル、フマル酸ステアリルナトリウム、カルナウバロウ、グリセリン脂肪酸エステル、硬化油等を挙げることができる。
【0039】
矯味剤としては、制限されないものの、例えばクエン酸、酒石酸、リンゴ酸等の有機酸、グルタミン酸ナトリウム、5’−イノシン酸ナトリウム、5−グアニル酸ナトリウム、アスパラギン酸ナトリウム、カラメルを例示することができる。
【0040】
甘味料としては、制限されないものの、例えばサッカリンナトリウム、グリチルリチン酸二カリウム、アスパルテーム、ステビア、ラカンカ、ソーマチン、アセスルファムカリウム、スクラロース、ショ糖、果糖、ブドウ糖、乳糖、麦芽糖、ソルビトール、マルチトール、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、グリセロール、イノシトール、還元麦芽糖水アメ、パラチノース、カップリングシュガー、ハチミツ等の高甘味度甘味料を例示することができる。
【0041】
本発明製剤は固体形状を有する。かかる製剤としては、錠剤、粒剤及び丸剤を挙げることができる。好ましくは錠剤である。なお、錠剤は単層からなるものであっても、2層以上の複層構造を有するものであってもよい。
【0042】
本発明製剤は、好ましくは、(A)、(B)、(C)及び(D)成分からなる群より選択される少なくとも(A)成分と(C)成分を混合し、これを造粒してアスコルビン酸含有造粒物を調製し、次いで、これに本発明製剤を構成する他の成分を混合して(A)〜(D)成分を含む混合物を調製し、さらにこれを圧縮成形することで製造することができる。
【0043】
アスコルビン酸含有造粒物(以下、単に「造粒物」とも称する)の調製には、(A)成分と(C)成分に加えて、(D)成分及び(B)成分の少なくとも一方を用いることもできる。(A)、(B)、(C)及び(D)成分のうち、造粒物を構成する成分として、好ましくは(A)及び(C)成分、または(A)、(C)及び(D)成分である。造粒物の調製には、本発明の効果を損なわないことを限度として、任意の添加剤を配合することができる。かかる添加剤としては、顆粒圧縮成形法において造粒物の製造に使用される添加剤を用いることができ、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊助剤、吸着剤、流動化剤、滑沢剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、及び抗酸化剤等を例示することができる。制限されないものの、好ましくは賦形剤、結合剤、崩壊剤、及び流動化剤である。
【0044】
前記造粒物に後添加する成分(本発明ではこれを「後添加成分」とも称する)には、(A)、(B)、(C)及び(D)成分のうち、前記造粒物の調製に使用されなかった成分を用いることができる。しかし、これに限られず、本発明の効果を損なわないことを限度として、造粒物の調製に使用された成分を重複して、後添加成分として用いることもできる。例えば、後述する実験例に示すように、(D)成分は、造粒物の調製に使用すると同時に、後添加成分として重複して使用することで、崩壊時間を改善(短縮)するように作用する。(A)、(B)、(C)及び(D)成分のうち、特に(B)成分及び(D)成分は、後添加成分として好適に使用することができる。また、後添加成分として、本発明の効果を損なわないことを限度として、前記(A)、(B)、(C)及び/または(D)成分と組み合わせるか、または単独で、任意の添加剤を用いることもできる。かかる添加剤としては、顆粒圧縮成形法において造粒物に後添加して使用される添加剤を用いることができ、例えば、賦形剤、結合剤、崩壊剤、崩壊助剤、吸着剤、流動化剤、滑沢剤、甘味剤、矯味剤、清涼化剤、着色剤、pH調整剤、界面活性剤、及び抗酸化剤等を例示することができる。好ましくは、賦形剤、結合剤、崩壊剤、流動化剤、及び滑沢剤である。なお、前述する造粒物が(A)、(B)、(C)及び(D)成分の全てを含む場合、後添加成分は前述する添加剤だけから構成されるものであってもよい。この場合の添加剤には少なくとも滑沢剤が含まれていることが好ましい。
【0045】
本発明製剤の製造方法には、下記の方法が含まれる。
まず前述する(A)成分と(C)成分を混合後、造粒してアスコルビン酸含有造粒物(便宜上、これを「造粒物1」とも称する)を調製し、次いで、これに後添加成分として(B)成分と(D)成分を混合して(A)〜(D)成分の混合物を調製し、これを圧縮成形する方法。
【0046】
また別の態様として、前述する(A)成分と(B)成分と(C)成分を混合後、造粒してアスコルビン酸及びシステイン含有造粒物(便宜上、これを「造粒物2」とも称する)を調製し、次いで、これに後添加成分として(D)成分を混合して(A)〜(D)成分の混合物を調製し、これを圧縮成形する方法。
さらに別の態様として、前述する(A)成分と(B)成分と(C)成分と(D)成分を混合後、造粒してアスコルビン酸及びシステイン含有造粒物(便宜上、これを「造粒物3」とも称する)を調製し、次いで、これに後添加成分として少なくとも滑沢剤を混合して(A)〜(D)成分を含む混合物を調製し、これを圧縮成形する方法。
【0047】
なお、前記造粒物1及び2の調製には、それぞれ(A)成分と(C)成分、または(A)成分と(B)成分と(C)成分に加えて、(D)成分を用いることもできる。造粒成分として(D)成分を用いる場合、後添加成分から(D)成分を除外してもよいし、重ねて用いてもよい。また必要に応じて、本発明の効果が妨げられないことを限度として、造粒物1または2に後添加する成分として、さらに(C)成分を用いることも制限されるものではない。
【0048】
以上のことから、本発明製剤には、(A)成分及び(C)成分を含有する造粒物または(A)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物(以上、造粒物1)と、(B)成分と(D)成分とを混合した組成物の圧縮成形物;(A)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物(造粒物1)と、(B)成分とを混合した組成物の圧縮成形物;(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含有する造粒物(造粒物2)または(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物(造粒物3)と、(D)成分とを混合した組成物の圧縮成形物;(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含有する造粒物(造粒物3)と、少なくとも滑沢剤などの添加物をとを混合した組成物の圧縮成形物が含まれる。
【0049】
造粒物1の調製は、まず、(C)成分である造粒用結合剤を精製水などの水性溶媒に溶解または懸濁し、この溶解または懸濁液を用いて、(A)成分であるアルコルビン酸またはその塩を造粒することで実施することができる。造粒に使用する造粒用結合剤の溶解または懸濁液の濃度としては、制限されないものの、1〜20質量%程度を例示することができる。好ましくは5〜15質量%程度である。(A)成分は、予め、例えば目開き500μm程度の篩いを用いて篩過しておくことが好ましい。造粒物1に、さらに(D)成分を配合する場合は、(A)成分と(D)成分を予め混合して前記と同様に篩過しておくことが好ましい。なお、造粒物1に(D)成分を配合する場合、その配合量は、本発明製剤に配合する(D)成分の全量を100質量%とした場合、制限されないものの、10〜90質量%の範囲から選択することができる。好ましくは20〜80質量%であり、より好ましくは50〜75質量%である。また、造粒物1の調製には、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述する任意の添加剤を配合することもできる。
【0050】
また造粒物2の調製も、造粒物1と同様に、まず、(C)成分である造粒用結合剤を精製水などの水性溶媒に溶解または懸濁し、この溶解または懸濁液を用いて、(A)成分であるアルコルビン酸またはその塩及び(B)成分との混合物を造粒することで実施することができる。造粒に使用する造粒用結合剤の溶解または懸濁液の濃度としては、造粒物1と同様であり、制限されないものの、1〜20質量%程度を例示することができる。(A)成分及び(B)成分は、予め、例えば目開き500μm程度の篩いを用いて篩過しておくことが好ましい。
【0051】
造粒物2に、さらに(D)成分を配合する場合、つまり造粒物3の調製には、(A)成分と(B)成分と(D)成分とを予め混合して前記と同様に篩過しておくことが好ましい。なお、造粒物2に(D)成分を配合する場合、つまり造粒物3の調製に際して(D)成分を配合する量は、造粒物1と同様に、本発明製剤に配合する(D)成分の全量を100質量%とした場合、制限されないものの、10〜90質量%の範囲から選択することができる。また、造粒物2及び造粒物3の調製には、造粒物1と同様に、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述する任意の添加剤を配合することもできる。
【0052】
アスコルビン酸含有造粒物(造粒物1、2、及び3)の調製には、制限されることなく公知の造粒装置を使用することができる。具体的には、流動層造粒機、撹拌造粒機、押出造粒機、転動造粒機、ワースター造粒機またはこれらを組み合わせた造粒機を挙げることができる。好ましくは流動層造粒機である。前述するように、(A)+(C)成分、(A)+(C)+(D)成分、(A)+(B)+(C)成分、または(A)+(B)+(C)+(D)成分に、必要に応じて賦形剤や結合剤等の添加剤を添加混合した粉体混合物に、造粒用結合剤の溶解若しくは懸濁液を添加し、前述する造粒機を用いて造粒し、得られた造粒物を、例えば流動層乾燥機等を用いて乾燥することで、アスコルビン酸含有造粒物(造粒物1、2及び3)を得ることができる。なお、得られた造粒物は、次いで整粒工程に供することで、所望の平均粒子径になるように調整されてもよい。平均粒子径としては、制限されないものの、80〜200μm、好ましくは100〜150μmの範囲を例示することができる(篩による測定)。
【0053】
斯くして調製したアスコルビン酸含有造粒物に、後添加する成分(後添加成分)は、予め混合しておき、必要に応じて、例えば目開き500μm程度の篩いを用いて篩過しておいてもよい。後添加成分として、(D)成分と(B)成分とを併せて用いる場合は、両成分を予め混合しておき、必要に応じて、例えば目開き500μm程度の篩いを用いて篩過しておいてもよいし、また(D)成分と(B)成分とを別々に添加混合してもよい。アスコルビン酸含有造粒物(造粒物1〜3)に(D)成分を後添加する場合、当該(D)成分の配合量は、本発明製剤に配合する(D)成分の全量を100質量%とした場合、制限されないものの、10〜100質量%の範囲から選択することができる。好ましくは10〜90質量%であり、より好ましくは20〜70質量%であり、さらに好ましくは25〜50質量%である。またアスコルビン酸含有造粒物(造粒物1〜3)に(B)成分を後添加する場合、当該(B)成分の配合量は、本発明製剤に配合する(B)成分の全量を100質量%とした場合、制限されないものの、10〜100質量%の範囲から選択することができる。
【0054】
アスコルビン酸含有造粒物に後添加する成分として、本発明の効果を妨げないことを限度として、前述するように、前記(A)〜(D)成分からなる群より選択される少なくとも一つに加えて、任意の添加剤を配合することもできる。かかる後添加剤として、好ましくは滑沢剤である。
【0055】
前述のアスコルビン酸含有造粒物に、前述する後添加成分を添加し十分混合した後、これを圧縮成形することで本発明の圧縮成形製剤を調製することができる。圧縮成形は、定法に従って実施することができ、特に制限されない。例えば、ロータリー式打錠機、単発打錠機での圧縮成形などを使用することができる。また圧縮成形をする際の圧力についても、所望の硬度を有し、製造時や運搬時に割れや欠け等が生じない圧縮成形体が製造できる条件であれば、特に制限されないものの、通常、10MPa〜200MPaの圧力を挙げることができる。好ましくは50MPa〜180MPaである。
【0056】
本発明製剤(裸剤・素剤)の1剤あたりの質量は、1日の服用回数と服用1回あたりの製剤数から、適宜設定調整することができる。例えば、制限されるものではないが、成人1人に対して1日に3回、1回2錠服用するように設計した場合、本発明製剤(裸剤・素剤)の1剤あたりの質量としては、150〜600mgの範囲から選択することができる。好ましくは200〜400mgである。
【0057】
また、本発明製剤(裸剤・素剤)の大きさは、制限されないものの、例えば円形の錠剤(円柱状)に成形した場合、その直径は、約5mm〜約15mmの範囲を挙げることができる。好ましくは約7mm〜約12mmである。またその厚みは、制限されないもの、約3mm〜約6mmの範囲を挙げることができる。
【0058】
本発明製剤(裸剤・素剤)は、打錠障害の1つであるキャッピングが抑制されていることを特徴とする。キャッピングの有無は、圧縮成形製剤50剤を50mL容量のキャップつきガラス瓶にとり、キャップを閉めた後、振盪器(YS−8D:株式会社ヤヨイ製)にて5分間(ストローク数200回/分)振り、5分後にキャッピング(完全に分離)した製剤の数を数えることで評価することができる。後述する実験例に記載するように、本発明製剤(裸剤・素剤)は、アスコルビン酸含有造粒物の調製に際して、(C)成分を用いずに製造した圧縮成形製剤(比較例1及び2)と比較して、キャッピングの発生が有意に抑制されている。
【0059】
また、本発明製剤(裸剤・素剤)は、30N以上の硬度を有し、且つ崩壊時間は50分以内であることが好ましい。ここで硬度は、後述する実施例に記載するように、圧縮成形製剤の直径方向(長手方向)の硬度(N)を意味する。硬度は、錠剤硬度計(SCHLEUNIGER 6D 型:フロイント産業株式会社製)を用いて、ランダムに選択される10剤について、その直径方向(長手方向)の硬度を測定して、平均値を求めることで算出することができる。硬度として、好ましくは30N〜300Nであり、より好ましくは50N〜250Nであり、特に好ましくは70N〜200Nである。
【0060】
崩壊時間は、後述する実施例に記載するように、圧縮成形製剤6剤について、日本薬局方一般試験法(即放性製剤:錠剤[素錠])の崩壊試験に準じて、崩壊試験(補助盤なし)を実施して、6剤のすべての製剤が崩壊するまでに要する時間として求めることができる。具体的には、試験器の6本のガラス管のそれぞれに試料の製剤を1剤ずつ入れ、試験液として精製水を用いて、37±2℃で試験器を作動させ、試料の崩壊の様子を目視で観察する。ガラス管内に試料の残留物を全く認めなくなった時を「崩壊」と判断し、その時点までの経過時間を崩壊時間(分)とする。崩壊時間として、50分以内、好ましくは40分以内、より好ましくは30分以内、特に好ましくは20分以内である。下限値は制限されないが、崩壊するまでの最短時間として例えば5分程度を挙げることができる。
【0061】
さらに、本発明製剤(裸剤・素剤)は、摩損度が1%以下と低いことが好ましい。摩損度は、後述する実施例に記載するように、本発明製剤10剤を50mL容量のソケットにとり、フタをした後、振盪器(YS−8D:株式会社ヤヨイ製)にて上下に5分間(200回/分)振り、振とうにより摩損した割合を算出することで求めることができる。具体的には、本発明製剤10剤の質量(質量1)を測定した後、上記振盪器により5分間振とう後、ソケット内の製剤を10号篩いに取り出し、粉をふるい落とした後に、製剤10錠の質量(質量2)を再度測定する。振とう前後の製剤の質量差(質量1−質量2)から、下記式により摩損度を求める。この実験を3回実施し(n=3)、平均値を最終の摩損度(%)とすることができる。摩損度は、好ましくは1%以下であり、より好ましくは0.7%以下である。
【0062】
[数1]
摩損度(%)=〔(質量1−質量2)/質量1〕×100
【0063】
後述する実験例に記載するように、本発明製剤(裸剤・素剤)は、(D)成分であるケイ酸化合物を、アスコルビン酸含有造粒物に配合するだけでなく、さらにこれに後添加することで、造粒物だけに配合して製造した圧縮成形製剤(実施例)よりも、より崩壊時間が短くなるとともに、摩損度(%)が有意に低下し、割れや破損の発生を有意に抑制することができる。
【0064】
(II)被覆製剤、及びその製造方法
本発明の被覆製剤(以下、「本被覆製剤」とも称する)は、前述する本発明製剤(裸剤・素剤)の表面がコーティングされなる製剤である。本被覆製剤には、本発明製剤の表面が糖衣で被覆されてなる糖衣製剤、及び表面がフィルムなどで被覆されてなるフィルムコーティング製剤が含まれる。当該フィルムには、即溶性、遅溶性、胃溶性、及び腸溶性といった特性を有するフィルムが含まれる。
【0065】
糖衣やフィルムによる被覆(コーティング)は、例えばパンコーティング法、流動層コーティング法、転動コーティング法、ドライコーティング法、またはこれらの方法を組み合わせることで実施することができる。この際、定法に従って、糖衣成分やフィルム成分を水や有機溶媒(エタノール等)に溶解または分散させてスプレーコーティングすることや、またフィルム成分を直接噴霧して、熱や圧力をかけてドライコーティングすることもできる。
【0066】
糖衣形成のために使用される糖衣成分としては、制限されないものの、ショ糖(白糖、精製白糖)、果糖、ブドウ糖、乳糖、トレハロースなどの単糖類や二糖類;エリスリトール、マンニトール、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、粉末還元麦芽糖水飴、還元乳糖などの糖アルコール等の糖類を挙げることができる。また糖衣液には、タルク、沈降炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、リン酸水素カルシウム、リン酸二水素カルシウム、硫酸カルシウム、乳酸カルシウム、及びカオリン等の賦形剤、酸化チタンや酸化鉄などの着色料が含まれていてもよい。
【0067】
フィルムコーティング剤としては、例えば水溶性高分子化合物、胃溶性高分子化合物、及び腸溶性高分子化合物を挙げることができる。水溶性高分子化合物としては、制限されないものの、例えばメチルセルロース、ヒプロメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール(部分けん化物)、ポリビニルアルコール・アクリル酸・メタクリル酸メチル共重合体、ポリビニルピロリドンなどを挙げることができる。胃溶性高分子化合物としては、制限されないものの、例えばポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート等のポリビニルアセタール系高分子、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ブチル−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、メタクリル酸メチル−メタクリル酸ジエチルアミノエチル共重合体等の胃溶性メタクリル酸系高分子化合物を挙げることができる。腸溶性高分子化合物としては、制限されないものの、例えばメタクリル酸−アクリル酸エチル共重合体、メタクリル酸−メタクリル酸メチル共重合体、メタクリル酸コポリマーS、アクリル酸メチル−メタクリル酸メチル−メタクリル酸コポリマー等の腸溶性メタクリル酸系高分子化合物;酢酸フタル酸セルロース、ヒプロメロースフタレート、ヒプロメロースアセテートサクシネート、ポリビニルアセテートフタレート、カルボキシメチルエチルセルロース等の腸溶性セルロース系高分子化合物を挙げることができる。
【0068】
糖衣やフィルムによって形成される被覆(コーティング)層(被膜)は、本発明製剤(裸剤・素剤)の表面全体または一部であってもよいが、本発明製剤に含まれるL−システインに起因する臭いをマスキングするという効果を得るためには、本発明製剤の表面全体が被覆されていることが好ましい。本発明製剤(裸剤・素剤)とその被覆層との割合(質量比)は、制限されないものの、糖衣については、本発明製剤(裸剤・素剤)100質量部に対して、被覆層30〜200質量部の範囲を、またフィルムコーティングについては、本発明製剤(裸剤・素剤)100質量部に対して、被覆層3〜10質量部の範囲を挙げることができる。
【0069】
本被覆製剤の崩壊時間は60分以内であることが好ましい。ここで崩壊時間は、前述する方法で測定することができる。好ましくは50分以内であり、より好ましくは40分以内であり、さらに好ましくは30分以内である。
【0070】
(III)L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤のキャッピング抑制方法
本発明は、前述する(A)成分、(B)成分、及び(D)成分を含有する圧縮成形製剤についてキャッピングを抑制する方法を提供する。
【0071】
当該方法は、顆粒圧縮成形製剤の製造工程において、造粒用結合剤として、(C)ポリビニルアルコール系化合物、ポリビニルピロリドン系化合物、及びセルロース系化合物からなる群より選択される少なくとも一種の化合物を配合することで実施することができる。具体的には、顆粒圧縮成形製剤の製造のうち、アルコルビン酸含有造粒物の調製工程において、造粒用結合剤として、前記の化合物を用いることで実施することができる。より具体的には、(A)成分を含む組成物を(C)成分を用いて造粒した後、これに(B)及び(D)成分を混合し、調製した混合物を圧縮成形することで、キャッピングが抑制された圧縮成形製剤を調製することができる。また別の態様として、(A)及び(D)成分を含む組成物を(C)成分を用いて造粒した後、これに(B)成分または(B)及び(D)成分を混合し、調製した混合物を圧縮成形する方法;並びに、(A)、(B)及び(D)成分を含む組成物を(C)成分を用いて造粒した後、これに(D)成分および/または任意の添加剤(例えば滑沢剤など)を混合し、調製した混合物を圧縮成形する方法によっても、キャッピングが抑制された圧縮成形製剤を調製することができる。
【0072】
なお、(A)〜(D)成分、圧縮成形製剤の調製に使用する任意成分、それらの配合割合、(C)成分を用いた造粒方法、並び圧縮成形方法などについては、前述する(I)の記載を参考にすることができ、当該記載はここに援用することができる。後述する実験例に示すように、アスコルビン酸含有造粒物の調製に際して造粒成分のひとつに(C)成分を用いて、圧縮成形製剤を製造することで、造粒成分として(C)成分を用いないで圧縮成形製剤(比較例1及び2)を製造する場合と比較して、キャッピングの発生を有意に抑制することができる。
【0073】
(IV)L−システイン配合ビタミンC高含有圧縮成形製剤の崩壊性または/及び摩損度の改善方法
本発明は、前述する(A)〜(D)成分を含有する圧縮成形製剤について崩壊性または/及び摩損度を改善する方法を提供する。
【0074】
当該方法は、顆粒圧縮成形製剤の製造工程において、少なくとも前記(A)及び(C)成分を含有する造粒物に、前記(B)成分、(D)成分、及び滑沢剤からなる群より選択される少なくとも一つの後添加成分を混合し、得られた(A)、(B)、(C)及び(D)成分の混合物を圧縮成形することで実施することができる。なお、前記造粒物には、(A)及び(C)成分に加えて(D)成分を配合することもできる。具体的には、(A)及び(C)成分を含む造粒物に、(B)成分及び(D)成分を後添加して混合し、調製した混合物を圧縮成形することで、崩壊性または/及び摩損度が改善された圧縮成形製剤を調製することができる。また、(A)、(C)及び(D)成分を含む造粒物に、(B)成分または(B)成分と(D)成分を後添加して混合し、調製した混合物を圧縮成形することで、崩壊性または/及び摩損度が改善された圧縮成形製剤を調製することができる。さらに、(A)、(B)、(C)及び(D)成分を含む造粒物に、(D)成分および/または滑沢剤を後添加して混合し、調製した混合物を圧縮成形することで、崩壊性または/及び摩損度が改善された圧縮成形製剤を調製することができる。
【0075】
なお、(A)〜(D)成分、顆粒圧縮成形製剤の調製に使用する任意成分、それらの配合割合、(C)成分を用いた造粒方法、並び圧縮成形方法などについては、前述する(I)の記載を参考にすることができ、当該記載はここに援用することができる。後述する実験例に示すように、アスコルビン酸含有造粒物に造粒成分として(D)成分を配合することで、顆粒圧縮成形製剤の崩壊性を高め、または/及び、摩損度を低下させることができるだけでなく、アスコルビン酸含有造粒物に(D)成分を後添加することでも、顆粒圧縮成形製剤の崩壊性を高め、または/及び、摩損度を低下させることができ、崩壊性が良好な圧縮成形製剤を、安定的に製造し提供することができる。さらに、(D)成分をアスコルビン酸含有造粒物に配合するとともに、当該造粒物に同時に後添加することで、より崩壊時間が短くなるとともに、摩損度(%)が有意に低下し、割れや破損の発生を有意に抑制することができる。
【0076】
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
【実施例】
【0077】
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。以下の実験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、45%以下の相対湿度、及び大気圧条件下で実施した。また、特に言及しない限り、「%」は質量%を、「部」は質量部を意味するものとする。
【0078】
なお、実施例で使用した化合物は下記の通りである。
軽質無水ケイ酸:アドソリダー101(富士シリシア社)
結晶セルロース:セオラスKG−1000(旭化成株式会社)
ポリビニルアルコールアクリル酸・メタクリル酸メチル共重合:POVACOATタイプF(平均分子量約40,000)(日新化成)
ポビドン(ポリビニルピロリドン):Kollidon 90F(BASF株式会社)ヒドロキシプロピルセルロース:HPC−L(日本曹達株式会社)
ヒプロメロース:VIVAPHARM HPMC E6(JRS PHARMA)
トウモロコシデンプン:局方コンスターチホワイト(日本コーンスターチ株式会社)
クロスカルメロースナトリウム:DISOLCEL(明台化工)
ステアリン酸マグネシウム:ステアリン酸マグネシウム植物(太平化学産業)
【0079】
実験例1 顆粒圧縮成形製剤(実施例1〜4)の製造とその評価
(1)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の製造
(a)アスコルビン酸含有造粒物の調製
表1に記載する量のアスコルビン酸、軽質無水ケイ酸、及び賦形剤として結晶セルロースを、篩(目開き500μm)で篩過した後、流動層造粒機(MP-01ND型:株式会社パウレック製)に仕込んで、約5分間混合した。これを、給気80℃条件下で流動させながら、表1に記載する造粒用結合剤を予め精製水に溶解して調製しておいた水溶液(実施例1〜4は10%水溶液、比較例1は5%水溶液)を15g/分の速度で添加し、実施例1及び2は約10分間、実施例3及び4及び比較例1は約20分間かけて造粒した。一方、比較例2は、造粒用結合剤の水溶液に代えて精製水を用い、それ以外は実施例1〜4と同様に造粒した。造粒後、吸気温度が約80℃、排気温度が約40℃になるまで乾燥し、平均粒子径が約100〜150μmのアスコルビン酸含有造粒物を調製した。
【0080】
(b)L−システイン含有組成物の後添加
前記で調製したアスコルビン酸含有造粒物に、後添加成分として、表1に記載する割合で、L−システイン、軽質無水ケイ酸、流動化剤として結晶セルロース、崩壊剤としてクロスカルメロースナトリウム、及び滑沢剤としてステアリン酸マグネシウムを添加し、篩(目開き500μm)で篩過した後、袋混合で十分に混和した。
【0081】
(c)圧縮成形
混和した全成分含有組成物を、ロータリー打錠機(コレクト24:株式会社菊水製作所製、臼サイズ直径9.0mm)(回転盤回転数:40〜60rpm、オートフィーダー回転数:40〜80rpm)に供給し、表1に記載する3種の打錠圧にて打錠し、1錠あたり350mgの錠剤(実施例1〜4、比較例1)を製造した。
【0082】
(2)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の物性評価試験
製造した錠剤について、厚み(mm)、硬度(N)、崩壊時間(分)、摩損度(%)、及び打錠障害性(キャッピング)を下記の方法に従って測定し評価した。なお、試験には圧縮成形(打錠成形)後すぐの錠剤を使用した。
【0083】
(a)厚み(mm)
厚み計(C1012BS 型:株式会社ミツトヨ製)を用いて錠剤の厚み方法の長さ(mm)を測定する。錠剤10錠について測定し、その平均値を求めた。
【0084】
(b)硬度(N)
錠剤硬度計(SCHLEUNIGER 6D 型:フロイント産業株式会社製)を用いて錠剤の直径方向の硬度(N)を測定する。錠剤10錠について測定し、その平均値を求めた。
【0085】
(c)崩壊時間(分)
錠剤を6錠(n=6)とり、日本薬局方一般試験法(即放性製剤:錠剤[素錠])の崩壊試験に準じて、崩壊試験(補助盤なし)を実施して、6錠のすべての錠剤が崩壊するまでの時間を測定した。具体的には、試験器の6本のガラス管のそれぞれに試料の錠剤を1錠ずつ入れ、試験液として水を用いて、37±2℃で試験器を作動させ、試料の崩壊の様子を観察する。ガラス管内に試料の残留物を全く認めなくなった時を「崩壊」と判断し、その時点までの経過時間を崩壊時間(分)とした。
【0086】
(d)摩損度(%)
錠剤10錠を50mL容量のソケットにとり、フタをした後、振盪器(YS−8D:株式会社ヤヨイ製)にて上下に5分間(200回/分)振り、振とうにより摩損した割合を算出した。具体的には、錠剤10錠の質量(質量1)を測定した後、上記振盪器により5分間振とう後、ソケット内の錠剤を10号篩いに取り出し、粉をふるい落とした後に、錠剤10錠の質量(質量2)を再度測定した。振とう前後の錠剤の質量差(質量1−質量2)から、下記式により摩損度を求めた。この実験を3回実施し(n=3)、平均値を最終の摩損度(%)とした。
【0087】
[数2]
摩損度(%)=〔(質量1−質量2)/質量1〕×100
【0088】
(e)キャッピング(個)
錠剤50錠を50mL容量のキャップつき11Kガラス瓶にとり、キャップを閉めた後、振盪器(YS−8D:株式会社ヤヨイ製)にて5分間(ストローク数200回/分)振り、5分後にキャッピング(完全に分離)した錠剤の数を数えた。この実験を2回実施した(n=2)。
【0089】
(3)試験結果とその評価
各錠剤の処方とその物性を表1に示す。
【表1】
表1のキャッピング試験結果に示すように、造粒工程で、造粒用結合剤を使用しないと、高い割合で打錠障害(キャッピング)が生じることが確認された(比較例2)。また造粒用結合剤としてデンプンを使用した場合でもキャッピングは十分抑制できないことが確認された(比較例1)。これに対して、造粒用結合剤として、ポリビニルアルコール系化合物、ポリビニルピロリドン系化合物、およびセルロース系化合物を用いることで、有意に打錠特性が改善されて、キャッピングが抑制できることが確認された。特にポリビニルアルコール系化合物、及びポリビニルピロリドン系化合物は、セルロース系化合物よりも少ない量でキャッピングを抑制することができる。
【0090】
実験例2 顆粒圧縮成形製剤(実施例1、2及び5〜12)の製造とその評価
(1)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の製造
表2(実施例1及び5〜9、比較例3)及び表3(実施例2及び10〜12)に記載する処方に従って、前述する実験例1と同様に、アルコルビン酸含有造粒物を製造し、これに後添加成分を配合混和して、圧縮成形し、1錠あたり350mgまたは333mgの錠剤を製造した。
【0091】
(2)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の物性評価試験
製造した錠剤について、実験例1と同様に、厚み(mm)、硬度(N)、崩壊時間(min)、摩損度(%)、及び打錠障害性(キャッピング)を測定し評価した。なお、試験には圧縮成形(打錠成形)後すぐの錠剤を使用した。
【0092】
(3)試験結果とその評価
各錠剤の処方とその物性を表2及び3に示す。
【表2】
【表3】
比較例3と実施例5に示すように、造粒成分としてケイ酸化合物を配合すると(実施例5)、配合しない場合(比較例3)と比較して、錠剤の硬度が高くなる一方で、崩壊時間は短縮し、崩壊性が改善することが確認された。さらにケイ酸化合物を、造粒成分としてだけでなく、後添加成分としても配合すると(実施例1)、より錠剤の硬度が高くなるとともに、さらに崩壊時間も短縮し、崩壊性がより一層改善することが確認された。また摩損度(%)も低下することが確認された。また実施例6〜9に示すように、ケイ酸化合物を使用することによる崩壊性改善効果は、後添加成分として配合するケイ酸化合物の量に依存することが確認された(表2参照)。
また、同様の効果は実施例2と実施例10、及び実施例11と12からも確認された(表3)。
これらのことから、本発明の顆粒圧縮成形製剤において、造粒成分または造粒成分及び後添加成分としてのケイ酸化合物の使用は、顆粒圧縮成形製剤の硬度を高めるかまたは大きく影響を与えることなく、崩壊性の改善(崩壊性促進)に有用であることが確認された。また摩損度(%)の改善にも有効に作用することが確認された。
【0093】
実験例3 顆粒圧縮成形製剤(実施例6及び13〜18)の製造とその評価
(1)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の製造
表4(実施例6及び13〜18、比較例4)に記載する処方に従って、前述する実験例1と同様に、アルコルビン酸含有造粒物を製造し、これに後添加成分を配合混和して、圧縮成形し、1錠あたり333mgの錠剤を製造した。
【0094】
(2)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の物性評価試験
製造した錠剤について、実験例1と同様に、厚み(mm)、硬度(N)、崩壊時間(min)、摩損度(%)、及び打錠障害性(キャッピング)を測定し評価した。なお、試験には圧縮成形(打錠成形)後すぐの錠剤を使用した。
【0095】
(3)試験結果とその評価
各錠剤の処方とその物性を表4に示す。
【表4】
実施例6及び13〜15に示すように、造粒成分としてケイ酸化合物を配合すると、配合しない場合(比較例4)と比較して、崩壊時間は短縮し、崩壊性が改善することが確認された。またその効果は、造粒成分に配合するケイ酸化合物の量に依存して高くなることが確認された。また実施例16及び17に示すように、ケイ酸化合物として、軽質無水ケイ酸のみならず含水二酸化ケイ素を用いた場合も同様に、用量依存的に崩壊時間が短縮し、崩壊性が改善することが確認された。
また実施例18に示すように、ケイ酸化合物を、造粒成分としてでなく、後添加成分として配合した場合でも、配合しない場合(比較例4)と比較して崩壊時間は短縮し、崩壊性が改善することが確認された。
以上のことから、本発明の顆粒圧縮成形製剤において、ケイ酸化合物は、所望の硬度を保ちながらも、崩壊性の改善(崩壊性促進)に有効に作用することが確認された。
【0096】
実験例4 顆粒圧縮成形製剤(実施例19〜20)の製造とその評価
(1)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の製造
表5(実施例19〜20、比較例5)に記載する処方に従って、前述する実験例1と同様に、アルコルビン酸含有造粒物(システインを含む)を製造し、これに後添加成分を配合混和して、圧縮成形し、1錠あたり333mgの錠剤を製造した。
【0097】
(2)顆粒圧縮成形製剤(錠剤)の物性評価試験
製造した錠剤について、実験例1と同様に、厚み(mm)、硬度(N)、崩壊時間(min)、摩損度(%)、及び打錠障害性(キャッピング)を測定し評価した。なお、試験には圧縮成形(打錠成形)後すぐの錠剤を使用した。
【0098】
(3)試験結果とその評価
各錠剤の処方とその物性を表5に示す。
【表5】
実施例19に示すように、システインを造粒成分として配合した場合でも、造粒成分にケイ酸化合物を配合することで、配合しない場合(比較例5)と比較して、硬度が高まる一方で、崩壊時間は短縮し、崩壊性が改善することが確認された。またその傾向は、ケイ酸化合物を造粒成分として配合するとともに、後添加成分としても配合することで、より高まることが確認された。
以上のことから、本発明の顆粒圧縮成形製剤において、ケイ酸化合物は、システインが造粒成分及び後添加成分のいずれかの成分として配合されているかに関わらず、所望の硬度を保ちながらも、崩壊性の改善(崩壊性促進)に有効に作用することが確認された。
【要約】
【課題】薬効成分としてアスコルビン酸とL−システインを高含量有する圧縮成形製剤、及びその製造方法を提供する。
【解決手段】(A)1日に服用するアスコルビン酸量に換算して1200mgを超える量のアスコルビン酸またはその塩、(B)1日に服用するL−システイン量に換算して160mgを超える量のL−システインまたはその塩、(C)ポリビニルアルコール化合物、ポリビニルピロリドン化合物、及びセルロース化合物からなる群より選択される少なくとも一種の水膨潤性高分子化合物、及び(D)ケイ酸化合物、を含有する圧縮成形製剤。
【選択図】なし