(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676821
(24)【登録日】2020年3月16日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】バインダを含まない石炭系成形活性炭の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/33 20170101AFI20200330BHJP
C01B 32/336 20170101ALI20200330BHJP
【FI】
C01B32/33
C01B32/336
【請求項の数】16
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-502127(P2019-502127)
(86)(22)【出願日】2017年1月26日
(65)【公表番号】特表2019-512454(P2019-512454A)
(43)【公表日】2019年5月16日
(86)【国際出願番号】CN2017072715
(87)【国際公開番号】WO2017166920
(87)【国際公開日】20171005
【審査請求日】2018年11月27日
(31)【優先権主張番号】201610201435.1
(32)【優先日】2016年3月31日
(33)【優先権主張国】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】518347358
【氏名又は名称】チャイナ エナジー インベストメント コーポレーション リミテッド
(73)【特許権者】
【識別番号】518347369
【氏名又は名称】神華新疆能源有限責任公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】陳建強
(72)【発明者】
【氏名】許新田
(72)【発明者】
【氏名】趙龍
(72)【発明者】
【氏名】王洪強
(72)【発明者】
【氏名】韓暁林
(72)【発明者】
【氏名】陸曉東
(72)【発明者】
【氏名】漆涛
(72)【発明者】
【氏名】庄巍
(72)【発明者】
【氏名】李晋
(72)【発明者】
【氏名】呉亮亮
(72)【発明者】
【氏名】李建瑞
(72)【発明者】
【氏名】王成
【審査官】
▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】
中国特許出願公開第102530938(CN,A)
【文献】
中国特許出願公開第102126722(CN,A)
【文献】
特開2006−083052(JP,A)
【文献】
特開2001−170481(JP,A)
【文献】
特開昭49−053601(JP,A)
【文献】
特開昭63−011512(JP,A)
【文献】
特開平04−021511(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/00−32/991
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭系成形活性炭の製造方法であって、
バインダを使用しない成形工程を経て原炭から成形炭を得るステップIと、
ステップIで得られた前記成形炭を破砕、造粒した後、炭化処理および賦活処理を行い、活性炭を得るステップIIとを含み、
前記成形工程は、
原炭を粉砕することにより、平均粒径20μm以上の粉炭であって、粒径80μm以下の粉炭の含有量が90wt%以上、粒径40μm〜80μmの粉炭の含有量が10wt%以上である粉炭を得るステップaと、
ステップaで得られた粉炭を成形装置の供給ホッパ内に供給し、前記供給ホッパ内の材料に対して脱泡処理を行うステップbと、
前記供給ホッパ内の材料の温度を50℃〜100℃、含水量を2wt%〜8wt%に調節するステップcと、
前記供給ホッパ内の材料を前記成形装置に供給して成形を行い、成形炭を得るステップdと、を含むことを特徴とする製造方法。
【請求項2】
前記成形工程は、
一部の成形炭を粒径3mm以下の石炭粒子となるように破砕し、前記供給ホッパ内の前記粉炭の質量の10wt%〜40wt%を占める量の前記石炭粒子を前記供給ホッパに供給するステップeを、さらに含むことを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記成形工程は、
一部の成形炭を粒径0.5mm〜2.5mmの石炭粒子となるように破砕するステップeを含むことを特徴とする請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
ステップdにおいて、スクリュー式強制フィーダを用いて前記供給ホッパ内の材料を前記成形装置に供給することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
ステップdにおいて、前記成形装置は、対向ローラ式成形装置であることを特徴とする請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記成形工程は、
前記原炭を粉砕する前に、前記原炭の粉砕性指数が55%以上となるように石炭の調合を行うステップa1を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記成形工程は、
前記原炭を粉砕する前に、前記原炭の粉砕性指数が60%〜80%となるように石炭の調合を行うステップa1を含むことを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記成形工程は、
前記粉炭を供給ホッパに供給する前に、前記粉炭を撹拌ホッパに供給して撹拌およびプレ脱泡処理を行うことでプレ脱泡後の前記粉炭の密度を0.6kg/L〜0.8kg/Lにするステップb1を、さらに含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項9】
二軸スクリュー式フィーダまたはスターバルブを用いて、前記撹拌ホッパ内の前記粉炭を前記供給ホッパに供給することを特徴とする請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
ステップaで得られる前記粉炭のうち、粒径80μm以下の前記粉炭の含有量が95wt%以上、粒径40μm以下の前記粉炭の含有量が70wt%以上であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項11】
ステップbにおいて、前記供給ホッパ内の圧力は、0kPa〜3kPaの負圧であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項12】
ステップbにおいて、前記負圧は、2.5kPa〜3kPaであることを特徴とする請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
ステップcにおいて、前記供給ホッパ内の材料の温度を70℃〜85℃に、含水量を2wt%〜6wt%にすることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項14】
ステップIIにおいて、破砕、造粒した後の材料を炭化処理前に酸化処理し、
前記酸化処理の条件として、窒素と空気との混合気体であって酸素含有量8vol%〜15vol%の該混合気体を酸化剤に用い、材料を200℃〜250℃で1.5時間〜4時間酸化処理することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項15】
ステップIIにおいて、前記炭化処理の条件として、温度が300℃〜500℃、炭化雰囲気酸素含有量が5vol%以下、炭化処理時間が1.5時間〜4時間であることを特徴とする請求項1〜14のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項16】
ステップIIにおいて、賦活処理の条件として、賦活の媒介として水蒸気を用い、850℃〜950℃で賦活反応を行い、反応時間を3時間〜8時間とすることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【0001】
〔技術分野〕
本発明は、石炭系活性炭を製造する分野に属し、特に、本発明は、バインダを含まない石炭系成形活性炭の製造方法に関する。
【0002】
〔背景技術〕
活性炭は、高度に発達した細孔構造と大きな比表面積を有するため、その応用範囲が食品や医薬品の脱色および脱臭、防毒マスクから、溶媒の精製や回収、高度な水処理、煙やガスの浄化、血液の浄化等まで、幅広く拡大している。これに伴い、活性炭の吸着性および強度等の特性に関して、新規かつより高度な要求が寄せられている。
【0003】
また、活性炭の生産において、原材料として石炭を用いて石炭系活性炭を製造する方法が広く応用されている。使用時に高い強度を有する活性炭を得るために、通常、炭化、賦活を行う前に石炭の成形処理(briquetting treatment)を行う必要がある。したがって、石炭の高強度成形は、高強度の活性炭を製造するための基盤となる。
【0004】
原炭の深穴加工(deep processing)において粉炭成形技術が広く使用されているが、多くの粉炭成形技術には、瀝青炭等の様々なバインダを添加する必要がある。これにより、コストが増加するだけでなく、製造した成形炭を天日干しまたは加熱および焼き固める必要があるため、生産効率が低下する。さらに、加熱された後、常用の瀝青炭、コールタール等のバインダが溶融、揮発することにより、最終製品の強度が低下することがある。また、活性炭の生産において、瀝青炭等の残留物が活性炭の細孔を塞ぐことがあり、また、一部の残留物には有害物質が含まれているため、活性炭の品質を向上させ難くなる。したがって、石炭系活性炭の製造では非粘結炭の応用が限られている。
【0005】
現在、バインダを含まない石炭系活性炭の製造に関する研究がますます注目されている。CN 101402454 Aには、炭化、賦活処理前に粉炭をプレス成形する成形活性炭の製造方法が開示されている。しかし、この方法は、バインダを余分に添加しないことを目的としているため、原材料である粉炭に大量の弱粘結炭および強粘結炭(strong caking rich coal)を入れなければならなかった。また、大量の粘結炭を入れると、炭化工程中における粒子の発泡やコークス化を避けるためには、炭化工程中に徐々に温度を上げなければならない。さらに、得られる活性炭に十分な大きさの表面積を持たせるためには、長い賦活時間が必要であった。
【0006】
また、CN 1033262 Aには、非粘結粉炭を10μm以下に粉砕した後にプレス成形を行うステップを含む活性炭の製造方法が開示されている。該特許文献によれば、原炭の粉砕後の粒径が小さければ小さいほど、微粒子同士間の単位重量当たりの接触点の数が増加し、粒子中の準微粒子同士間の粘着力が向上すると記されている。しかし、粉炭は、粉砕後の粒径が小さければ小さいほど、凝集する可能性が高くなるため、後続のプレス成形に必要な水分の制御が困難になり、粉砕も困難になる。それゆえ、装置の性能に対する要求が高く、幅広い利用は難しくなる。同時に、本発明者の研究によると、粉炭の粒径が小さすぎると、成形後の内部細孔が過度に小さくなるため、活性炭の製造時には、後続の炭化揮発分の放出や、内部細孔への賦活用気体の拡散、さらに最終製品の収率および吸着性に悪影響を及ぼす。
【0007】
したがって、バインダを含まない石炭系成形活性炭の新たな製造方法を提案する必要がある。
【0008】
〔発明の内容〕
本発明の目的は、バインダを使用しない場合の石炭系成形活性炭の製造では適切な成形炭を製造し難く、活性炭の品質が低いという従来技術の課題を解決する、石炭系成形活性炭の製造方法を提供することである。
【0009】
前記目的を実現するために、本発明は以下の技術案を用いる。
【0010】
石炭系成形活性炭の製造方法であって、
成形工程を経て原炭から成形炭(coal briquettes)を得るステップIと、
ステップIで得られた前記成形炭を破砕、造粒した後、炭化処理および賦活処理を行い、活性炭を得るステップIIとを含み、
前記成形工程は、
前記原炭を粉砕することにより、平均粒径20μm以上の粉炭であって粒径80μm以下の粉炭の含有量が90wt%以上、粒径40μm〜80μmの粉炭の含有量が10wt%以上である粉炭を得るステップaと、
ステップaで得られた粉炭を成形装置(briquetting apparatus)の供給ホッパ内に供給し、前記供給ホッパ内の材料に対して脱泡処理を行うステップbと、
前記供給ホッパ内の材料の温度を50℃〜100℃、含水量を2wt%〜8wt%に調節するステップcと、
前記供給ホッパ内の材料を前記成形装置に供給して成形を行い、成形炭を得るステップdと、を含む製造方法。
【0011】
本発明の製造方法において、前記原炭は適用範囲が広く、非粘結炭、弱粘結炭、弱中粘結炭、強中粘結炭および強粘結炭のうち1種類、または複数種類からなる混合物であってもよい。なお、前記非粘結炭、弱粘結炭、弱中粘結炭、強中粘結炭または強粘結炭は、本分野において熟知されている。つまり、これらを粘結指数Gで分類すると、0〜5では非粘結炭、5〜20では弱粘結炭、20〜50では弱中粘結炭、50〜65では強中粘結炭、65を超える場合は強粘結炭となる。
【0012】
当業者が理解できるように、原炭の粘結指数が高ければ高いほど、高強度の成形炭を成形、製造し易くなり、逆に、原炭の粘結指数が低ければ低いほど、高強度の成形炭の成形、製造が困難になる。本発明の成形工程は、原炭に対して様々な調整を行うため、粘結指数の高い原炭を用いても、粘結指数の低い原炭を用いても、高強度の成形炭の製造が達成できる。したがって、特に非粘結炭、または、非粘結炭を主成分とする原炭の成形に適している。一例として、前記原炭は、その全部が非粘結炭であってもよく、あるいは、前記原炭のうち、非粘結炭の含有量が50wt%を超え(例えば60wt%、70wt%、80wt%または90wt%)、残部が弱粘結炭等であってもよい。本発明において、前記原炭が非粘結炭であることが好ましく、前記非粘結炭の粘結指数が≦2、例えば0、1または2であることがさらに好ましい。
【0013】
本発明の製造方法におけるステップaでは、原炭を粉砕することにより、特定の粒度分布を有する粉炭を得る。本発明者の研究によると、前記粉炭が前記粒度分布を有する場合、成形工程中に、粒径が異なる粉炭の合理的配合を実現でき、成形強度が向上することを見出した。ステップaで得られる粉炭のうち、粒径80μm以下の粉炭の含有量が95wt%以上、粒径40μm以下の粉炭の含有量が70wt%以上であることが好ましい。前記粉炭の平均粒径は20μm〜40μm、例えば30μmであることがさらに好ましい。前記粉炭の粒径は200μm以下、例えば150μm以下、または100μm以下であることがより好ましい。当業者が理解できるように、対応する標準篩を選択して粉砕後の原炭を篩い分けすることにより、前記粒度分布を有する粉炭を得ることができる。もちろん、当業者が理解できるように、本発明の原炭は、使用前に、廃石の除去処理および/または灰分の低減処理等を行い、例えば、灰分の含有量を6wt%以下(例えば2wt%〜5wt%、または3wt%)にすることが望ましい。
【0014】
本発明の製造方法におけるステップbでは、前記粉炭を成形装置の供給ホッパ内に供給すると共に前記供給ホッパ内の材料を脱泡することにより、粉炭の粒子同士間および粒子表面に付着している空気を減らし、成形強度を高めることができる。当業者が理解できるように、前記供給ホッパに対して気体の抽出(または真空化)を行うことにより、脱泡を実現してもよい。一例として、前記供給ホッパの頂部および/または側壁に濾過シートを設置する(気体の排出、および粉炭の不排出を確保する)と共に、前記濾過シートの背面に真空抽出装置を連結することにより、粉炭に付着している気体を、濾過シートおよび真空システムを介して排出してもよい。ステップbでは、前記供給ホッパ内の圧力は、0kPa〜3kPaの負圧(当業者が理解できるように、負圧であるために端点値0は含まれない)、例えば0.6kPaの負圧、1kPaの負圧または2kPaの負圧であることが好ましい。前記供給ホッパの負圧を2.5kPa〜3kPaに調節することがより好ましい。
【0015】
本発明の製造方法におけるステップcでは、前記供給ホッパ内の材料の温度が50℃〜100℃、含水量が2wt%〜8wt%となるように前記粉炭の温度および水分を調整する。前記供給ホッパ内の材料の温度を70℃〜85℃に、含水量を2wt%〜6wt%、例えば3wt%または4wt%にすることが好ましい。合理的な含水量とすれば、後続のプレス成形工程において材料のバインダとしての機能が発揮され、粉炭の粒子表面の気体付着量の低減に好適である。但し、水分が多すぎると、粉炭の粒子同士間の結合に影響を及ぼし、脱泡装置による後続の処理が困難となる。また、前記温度範囲とすれば、粉炭の粒子が軟化し易く、成形に好適である。但し、温度が高すぎると、粉炭中の水分が析出し易くなる。したがって、前記脱泡処理、温度調節および水分調節のこの三者は、互いに密接に関連していると共に、それぞれが粉炭の成形に重要な役割を果たす。本発明者の大量の研究によると、前記供給ホッパ内の材料の温度および含水量が前記範囲内である場合、粉炭の粘結、成形に好適であることを見出した。当業者が理解できるように、温度および水分の調節工程は、前記供給ホッパの中で行われてもよく、その他の処理工程および/または粉炭の運搬工程中に行われてもよい。例えば、前記供給ホッパ内の材料の含水量が要求を満たすように原炭の粉砕時に含水量を調節し、前記供給ホッパ内の材料の温度が要求を満たすように粉炭の運搬工程中に粉炭を加熱してもよい。これは本分野において熟知されているため、ここではその説明を省略する。
【0016】
本発明の製造方法におけるステップdでは、前記供給ホッパ内の材料を成形装置に供給して成形する。本発明の好ましい一実施形態によれば、前記供給ホッパ内の材料は、スクリュー式強制フィーダ(screw forced feeder)により前記成形装置内に供給される。これにより、粉炭は、成形装置内に供給されたとき、強制供給スクリューによる圧縮力を受けて体積が縮小するため、付着している気体が押し出され、さらに脱泡され易くなる。本発明において、材料の成形方式としては、例えば押出成形、圧縮成形または圧延成形等、様々な方式がある。また、それに対応する成形装置も様々である。これは本分野において熟知されている。成形効果を高めるために、前記成形装置は対向ローラ式成形装置(double roller briquetting apparatus)であることが好ましく、さらに好ましくは、成形時、前記対向ローラ式成形装置の対向ローラ同士間のライン圧力が7t/cm〜15t/cmであり、10t/cm〜15t/cmであることがより好ましい。
【0017】
本発明の製造方法によれば、前記成形工程は、一部の成形炭を粒径3mm以下、好ましくは0.5〜2.5mm(例えば1mmまたは2mm)の石炭粒子となるように破砕し、前記供給ホッパ内の粉炭の質量の10wt%〜40wt%、好ましくは25wt%〜30wt%を占める量の前記石炭粒子を前記供給ホッパに供給するステップeをさらに含むことが好ましい。本発明者の研究によると、粉炭と混合された前記石炭粒子を成形するとき、この石炭粒子がプレス工程中に成形炭のコア骨格となるため、成形炭の強度が効果的に向上することを図らずも見出した。
【0018】
本発明の製造方法によれば、前記成形工程は、原炭を粉砕するステップaの前に、前記原炭の粉砕性指数が55%以上、好ましくは60%〜80%(例えば65%または75%)となるように石炭を調合するステップa1をさらに含むことが好ましい。なお、粉砕性指数は、原炭の硬度と脆性とを表す。本発明者の研究によると、石炭の調合を行って原炭の粉砕性指数を前記範囲内に調節すれば、後続の成形効果が向上し易いことを見出した。
【0019】
本発明の製造方法によれば、前記成形工程は、前記粉炭をステップbの供給ホッパに供給する前に、前記粉炭を撹拌ホッパに供給して撹拌およびプレ脱泡処理を行うことでプレ脱泡後の前記粉炭の密度を0.6kg/L〜0.8kg/Lとする、ステップb1をさらに含むことが好ましい。例えば、後続のプレス成形のために、密封式撹拌ホッパを用いて粉炭を撹拌しながら、気体を抽出しておく。本発明の好ましい一実施形態によれば、二軸スクリュー式フィーダまたはスターバルブ(star valve)を用いて、前記撹拌ホッパ内の前記粉炭を前記供給ホッパに供給する。前記二軸スクリュー式フィーダおよびスターバルブという2種類の装置は、粉炭の運搬工程中に粉炭を圧縮する作用があるため、運搬工程中に粉炭への気体の再付着、再混入を減らし、安定した粉炭運搬を実現することができる。
【0020】
本発明の製造方法におけるステップIIでは、ステップIで得られた成形炭を破砕、造粒した後、炭化処理および賦活処理を行い、活性炭を得る。なお、成形炭の破砕と造粒、および、造粒で得られた粒状材料の炭化処理や賦活処理は、活性炭の製造工程における周知の処理ステップであり、当業者に熟知されている。
【0021】
本発明の製造方法によれば、当業者に熟知されている方法を、材料の破砕、造粒に適用することができる。例えば、破砕機を用いて破砕、造粒してもよく、好ましくは造粒によって材料の粒径を1mm〜10mm、より好ましくは6.7mm〜8mmにする。
【0022】
本発明において、前記炭化処理の条件としては、温度が300℃〜500℃、炭化雰囲気酸素含有量が5vol%以下、炭化処理時間が1.5時間〜4時間であってもよい。炭化後の材料は、強度が高くなり、その炭化水素化合物中に亀裂付きの炭素構造体が複数形成されているため、一定の吸着能力を有する。これらの亀裂は、賦活工程中にさらに発達した微細孔構造を形成する。前記賦活処理の条件としては、賦活の媒介として水蒸気を用い、850℃〜950℃で賦活反応を行い、反応時間を3時間〜8時間とする。
【0023】
本発明の好ましい一実施形態によれば、ステップIIでは、造粒した後の材料を炭化処理前に酸化剤によって部分的に酸化させる酸化処理を行う。本発明の酸化処理の条件として、窒素と空気との混合気体であって酸素含有量8vol%〜15vol%の該混合気体を酸化剤に用い、材料を200℃〜250℃で1.5時間〜4時間酸化処理することにより、材料の酸化を軽い程度に制御する。この処理は、本発明の高強度の粒状材料のプレ酸化処理に好適であり、後続の炭化工程における黒鉛化反応が抑制されるため、細孔の増加に好適である。
【0024】
従来技術に比べ、本発明の製造方法は以下の利点を有する。
【0025】
1.本発明の原炭成形工程は、石炭の適用範囲が広く、成形が最も困難な非粘結炭を原炭として用いる場合でも、バインダを何ら必要とせずに、89%を超える強度の成形炭製品を得ることができ、活性炭の強度等の品質の向上に好適である。
【0026】
2.成形工程ではバインダを添加しないため、コストが低減するとともに、後続の天日干しおよび加熱(stoved)工程を省くことができ、生産率が向上する。
【0027】
3.本発明の原炭成形工程では、原炭を非常に小さい粒径に粉砕する必要がなく、活性炭製造時の内部細孔の形成に好適である。
【0028】
4.本発明は、非粘結炭、または非粘結炭を主成分とする混合炭を原炭として用いる活性炭の製造に、特に適している。原炭の全体的な粘結指数が低いため、活性炭の品質のさらなる向上に好適である。
【0029】
〔発明を実施するための形態〕
〔具体的な実施形態〕
以下、実施例に基づき、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0030】
以下の実施例/比較例における関連パラメータの測定方法は以下の通りである。
【0031】
平均粒度:GB/T 19077.1−2008に基づく粒度分析;レーザー回折法
粉砕性指数:GB/T 2565−2014に基づく石炭粉砕性指数の測定方法(すなわちハードグローブ法)
ドラム強度:GB/T 7702.3−2008に基づき測定した。
【0032】
活性炭に関するパラメータの測定方法は以下の通りである。
【0033】
ヨウ素吸着値:GB/T 7702.3−2008に基づき測定した。
【0034】
メチレンブルー付着値:GB/T 7702.6−2008に基づき測定した。
【0036】
強度:GB/T 7072.3−2008に基づき測定した。
【0037】
その他のパラメータはいずれも中国国家標準または本分野の通常規格に基づいて測定する。
【0038】
以下の実施例/比較例では、前記原炭は、以下の石炭から選ばれる1つまたは複数である。
【0039】
中国新疆の保利炭鉱から入手の新疆ハミ石炭。その指標としては、水分が5.17wt%、気乾ベース灰分が1.31wt%、無水無灰ベース揮発分が35.54wt%、粘結指数が2の非粘結炭に属し、燃え殻特性が3、粉砕性指数が55%である。
【0040】
中国新疆のトクスン黒山炭鉱の黒山鉱区から入手の長炎炭。その指標としては、水分が3.43wt%、気乾ベース灰分が3.52wt%、無水無灰ベース揮発分が37.16wt%、粘結指数が0の非粘結炭に属し、燃え殻特性が3、粉砕性指数が68%である。
【0041】
以下の実施例/比較例では、前記成形装置としては、対向ローラ式成形装置(BEPEX社製;型番:MS150)を用いた。
【0042】
<実施例1>
(1)新疆ハミ石炭を平均粒径29μmの粉炭に粉砕し、篩い分けを行った。粒径80μmを超える粉炭の含有量が2.5wt%、粒径40μmを超える粉炭の含有量が28wt%であった。
【0043】
(2)ステップ(1)で得られた粉炭を成形装置の供給ホッパ内に供給すると共に、前記供給ホッパ内の負圧を2.5kPa〜3kPaに維持しながら前記供給ホッパ内の材料に対して脱泡処理を行った。
【0044】
(3)前記供給ホッパ内の材料の温度を50℃〜55℃に維持し、含水量を7wt%〜8wt%に調節した。
【0045】
(4)スクリュー式強制フィーダを用いて前記供給ホッパ内の材料を成形装置に供給し、成形時の対向ローラ同士間のライン圧力を約11t/cm〜12t/cmとしながら成形を行い、成形材料(成形炭)を得た。
【0046】
成形炭の強度を測定したところ、そのドラム強度は89.2%であった。
【0047】
<実施例2>
新疆ハミ石炭と黒山鉱区の長炎炭とを質量比1:1で混合した混合物を原炭とした以外は、実施例1と同様である。
【0048】
成形炭の強度を測定したところ、そのドラム強度は91.4%であった。
【0049】
<実施例3>
(1)新疆ハミ石炭と黒山鉱区の長炎炭とを質量比1:1で均一に混合し、平均粒径35μmの粉炭に粉砕し、篩い分けを行った。粒径80μmを超える粉炭の含有量が8.2wt%、粒径40μmを超える粉炭の含有量が22wt%であった。
【0050】
(2)ステップ(1)で得られた粉炭を、頂部に気体抽出パイプラインが設けられた撹拌ホッパに供給し、撹拌後の粉炭の密度が0.60kg/L〜0.65kg/Lとなるように撹拌、脱泡を行った。その後、スターバルブを介して前記撹拌ホッパ内の粉炭を成形装置の供給ホッパに供給した。
【0051】
(3)前記供給ホッパ内の負圧を2.5kPa〜3kPaに維持しながら、前記供給ホッパ内の材料に対して脱泡処理を行った。
【0052】
(4)前記供給ホッパ内の材料の温度を80℃〜85℃に維持し、含水量を2wt%〜3wt%に調節した。
【0053】
(5)スクリュー式強制フィーダを用いて前記供給ホッパ内の材料を成形装置に供給し、成形時の対向ローラ同士間のライン圧力を約11t/cm〜12t/cmとしながら成形を行い、成形材料を得た。
【0054】
成形炭の強度を測定したところ、そのドラム強度は91.8%であった。
【0055】
<実施例4>
(1)新疆ハミ石炭を平均粒径22μmの粉炭に粉砕し、篩い分けを行った。粒径80μmを超える粉炭の含有量が2wt%、粒径40μmを超える粉炭の含有量が15wt%であった。
【0056】
(2)ステップ(1)で得られた粉炭を成形装置の供給ホッパ内に供給すると共に、実施例1で製造された成形炭を粒径1mm〜3mmの石炭粒子に破砕した後、前記供給ホッパ内の粉炭の質量の25wt%を占める量の当該石炭粒子を前記供給ホッパに供給した。
【0057】
(3)前記供給ホッパ内の負圧を2kPa〜2.5kPaに維持しながら、前記供給ホッパ内の材料に対して脱泡処理を行った。
【0058】
(4)前記供給ホッパ内の材料の温度を50℃〜55℃に維持し、含水量を5wt%〜6wt%に調節した。
【0059】
(5)スクリュー式強制フィーダを用いて前記供給ホッパ内の材料を成形装置に供給し、成形時の対向ローラ同士間のライン圧力を約11t/cm〜12t/cmとしながら成形を行い、成形材料を得た。
【0060】
成形炭の強度を測定したところ、そのドラム強度は92.6%であった。
【0061】
<実施例5>
(1)実施例4のステップ(1)で得られた粉炭を、頂部に気体抽出パイプラインが設けられた撹拌ホッパに供給し、撹拌後の粉炭密度が0.75kg/L〜0.80kg/Lとなるように撹拌し、脱泡処理を行った。
【0062】
(2)二軸スクリュー式フィーダを用いて前記撹拌ホッパ内の粉炭を成形装置の供給ホッパに供給すると共に、実施例3で製造された成形炭を粒径1mm〜3mmの石炭粒子に破砕した後、前記供給ホッパ内の粉炭の質量の35wt%を占める量の当該石炭粒子を前記供給ホッパに供給した。
【0063】
(3)前記供給ホッパ内の負圧を2.5kPa〜3kPaに維持しながら、前記供給ホッパ内の材料に対して脱泡処理を行った。
【0064】
(4)前記供給ホッパ内の材料の温度を70℃〜75℃に維持し、含水量を2wt%〜3wt%に調節した。
【0065】
(5)スクリュー式強制フィーダを用いて前記供給ホッパ内の材料を成形装置に供給し、成形時の対向ローラ同士間のライン圧力を約11t/cm〜12t/cmとしながら成形を行い、成形材料を得た。
【0066】
成形炭の強度を測定したところ、そのドラム強度は94.3%である。
【0067】
<比較例1>
新疆ハミ石炭に水を噴霧し、含水量を12wt%に調節した後、新疆ハミ石炭を平均粒度8.1μmに粉砕し、粉炭を得た。得られた粉炭を成形装置に供給し、成形時の対向ローラ同士間のライン圧力を約11t/cm〜12t/cmとしながら成形を行い、成形材料を得た。
【0068】
成形材料の強度を測定したところ、そのドラム強度は90.4%であった。
【0069】
<比較例2>
新疆ハミ石炭を10mm未満の粒子に粉砕した後、10wt%の瀝青炭を入れ、粉砕、篩い分けを行い、粒径64μm〜80μmの粉炭を製造した。得られた粉炭を成形装置に供給し、成形時の対向ローラ同士間のライン圧力を約11t/cm〜12t/cmとしながら成形を行い、成形材料を得た。
【0070】
成形材料の強度を測定し、そのドラム強度は85%であった。
【0071】
<比較例3>
新疆ハミ石炭を粉砕、篩い分けることで粒径64μm〜80μmの粉炭を製造し、30wt%のコールタールを入れた。撹拌機で均一に撹拌した後、プロッダに入れ、標準寸法の成形炭を製造した。20℃で48時間天日干しを行った後、200℃で2時間加熱した。
【0072】
成形炭の強度を測定したところ、そのドラム強度は91.8%であった。
【0073】
<実施例6〜10>
実施例1〜5でそれぞれ製造された成形炭に対して造粒、酸化、炭化および賦活処理を行った。前記成形炭を造粒することにより、粒径6.7mm〜8mmの粒状材料を得た。
【0074】
前記粒状材料の酸化の条件としては、外熱式電気加熱転炉の中に、窒素と酸素との混合気体であって酸素含有量を約8vol%に制御した該混合気体を吹き込み、220℃で4h反応させた。炭化の条件としては、外熱式電気加熱転炉の中で、窒素気流下、500℃で4時間焙焼し、前記粒子材料を炭化させた。賦活の条件としては、賦活剤の存在下、すならち、炭化粒子1kg当たり水蒸気1.5kg/hrの流速の水蒸気気流下、転炉の中の炭化粒子を900℃で4時間賦活し、活性炭製品を得た。
【0075】
前記各活性炭に関する個々の特性を表1に示す。