特許第6676836号(P6676836)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676836
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】プラズマ生成装置
(51)【国際特許分類】
   H05H 1/46 20060101AFI20200330BHJP
   F02P 3/01 20060101ALI20200330BHJP
   F02P 23/04 20060101ALI20200330BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   H05H1/46 R
   F02P3/01 A
   F02P23/04 B
   H05H1/24
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-549910(P2014-549910)
(86)(22)【出願日】2013年11月29日
(86)【国際出願番号】JP2013082155
(87)【国際公開番号】WO2014084341
(87)【国際公開日】20140605
【審査請求日】2016年11月24日
【審判番号】不服2018-12681(P2018-12681/J1)
【審判請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2012-263706(P2012-263706)
(32)【優先日】2012年11月30日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504293528
【氏名又は名称】イマジニアリング株式会社
(72)【発明者】
【氏名】池田 裕二
【合議体】
【審判長】 瀬川 勝久
【審判官】 小松 徹三
【審判官】 山村 浩
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−204405(JP,A)
【文献】 特開2011−169179(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/015964(WO,A1)
【文献】 特開平6−302399(JP,A)
【文献】 特開平3−219091(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05H 1/46
F02P 3/01 , 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波を発振する電磁波発生装置と上記電磁波発生装置から発振された電磁波を放射す
る放射アンテナとを有する電磁波放射装置、及び
上記電磁波放射装置を制御する制御装置を備えるプラズマ生成装置であって、
上記電磁波放射装置は、上記電磁波発生装置から出力された進行波電力と、上記放射ア
ンテナから反射された反射波電力とを検出する電力検出器を備え、
上記制御装置は、当該プラズマ生成装置により生成されるプラズマの状態変化に対応した電磁波の発振制御として、上記電力検出器により検出する進行波電力の値に対する反射波電力の値の割合が、反射波電力が少なく発振された電磁波のうち大部分が燃焼室内に吸収され上記割合が小さくなるような値として設定される第一の閾値よりも大きく設定され、反射波電力が大きく、発振された電磁波のうち大部分が反射波となるような値である第二の閾値以上であるか否かを判断し、上記割合が第二の閾値以上であれば、上記電磁波の発振出力を一定時間停止するよう発振禁止信号を発し、第二の閾値未満の場合は、上記割合が第一の閾値より大きいか小さいかにより、上記電磁波の発振パターンを複数の発振パターンから上記割合に応じて選択し、上記電磁波の発振パターンを自動制御する
ことを特徴とするプラズマ生成装置。
【請求項2】
放電ギャップにおいて放電プラズマを生成する放電装置をさらに備え、
上記放電装置が、上記制御装置により制御されることを特徴とする請求項1に記載のプラズマ生成装置。
【請求項3】
上記制御装置は、上記割合が、第一の閾値以下であれば、上記電磁波の発振パターンとして基本の発振パターンを用いるよう指令信号を出すことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプラズマ生成装置。
【請求項4】
上記基本の発振パターンは、断続的な電磁波パルスを含むことを特徴とする請求項3に記載のプラズマ生成装置。
【請求項5】
上記制御装置は、上記割合が、第一の閾値より大きく、第二の閾値より小さい場合には、上記割合に応じて、上記反射波電力の値が小さくなり上記割合が第一の閾値以下となるよう電磁波の発振パターンを調整することを特徴とする請求項3又は請求項4に記載のプラズマ生成装置。
【請求項6】
上記電磁波の発振パターンの調整が、上記電磁波の発振周波数、電力、出力タイミング、出力期間及び出力回数、電磁波パルスのパルス幅、パルス周期及びバースト周期内のパルス位置、並びに電磁波の定在波位相からなる群より選択される少なくとも1種の調整により行われることを特徴とする請求項5に記載のプラズマ生成装置。
【請求項7】
内燃機関に用いられる請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のプラズマ生成装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ生成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、電磁波を用いたプラズマ生成装置が開発されている。例えば特開2007−113570号公報には、内燃機関等において、混合気の着火前や着火後に燃焼室にマイクロ波を放射してプラズマ放電を起こすプラズマ生成装置が開示されている。このプラズマ生成装置によると、点火プラグの放電を用いて局所的なプラズマを作り、このプラズマをマイクロ波により拡大させることができる。
【0003】
しかし、従来のプラズマ生成装置においては、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率が十分とは言えないという不都合がある。また、プラズマ状態は周囲の条件の変化等により揺動するため、プラズマの発生・拡大効率を高い状態で維持することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−113570号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率を向上させ、さらには周囲の条件の変化等によるプラズマ状態の変化に対応し、プラズマの発生・拡大効率を高い状態で維持することができるプラズマ生成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた発明は、
電磁波を発振する電磁波発生装置と上記電磁波発生装置から発振された電磁波を放射する放射アンテナとを有する電磁波放射装置、及び
上記電磁波放射装置を制御する制御装置
を備えるプラズマ生成装置であって、
上記電磁波放射装置は、上記電磁波発生装置から出力された進行波電力と、上記放射アンテナから反射された反射波電力とを検出する電力検出器を備え、
上記制御装置は、上記電力検出器により検出された進行波電力の値に対する反射波電力の値の割合に基づいて、上記電磁波の発振パターンを自動制御する
ことを特徴とするプラズマ生成装置である。
【0007】
本発明のプラズマ生成装置は、上記進行波電力の値に対する反射波電力の値の割合に基づいて、プラズマへの電磁波の吸収がより促進するよう電磁波の発振パターンを自動制御することができる。そのため、当該プラズマ生成装置によると、生成されるプラズマの状態変化に対応し、プラズマの発生・拡大効率を高い状態で維持することができる。
【0008】
本発明のプラズマ生成装置は、放電ギャップにおいて放電プラズマを生成する放電装置をさらに備え、上記放電装置が、上記制御装置により制御されることを特徴とする。当該プラズマ生成装置は、放電装置により放電プラズマとしての初期プラズマをより効率よく生成することができる。また、この放電プラズマに電磁波を吸収させて効率よくプラズマを拡大し、さらにこのプラズマの状態変化に対応した電磁波の発振制御を行うことで、プラズマの拡大効率をより高い状態で維持することができる。
【0009】
本発明のプラズマ生成装置において、上記制御装置は、上記進行波電力の値に対する反射波電力の値の割合が第一の閾値以下であれば、上記電磁波の発振パターンとして基本の発振パターンを用いるよう指令信号を出すことが好ましい。上記割合が第一の閾値以下であり、上記放射アンテナから十分な量の電磁波が放射され、この放射された電磁波がプラズマに十分吸収されている場合には、設定した基本の発振パターンを継続することで、効率よくプラズマを発生・拡大させることができる。
【0010】
上記基本の発振パターンは、断続的な電磁波パルスを含むことが好ましい。本発明のプラズマ生成装置は、断続的な電磁波パルスを含む基本の発振パターンを用いることで、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率を向上させることができる。すなわち、当該プラズマ生成装置によると、プラズマに所定のパルス幅の電磁波を放射してプラズマを拡大させ、発生したラジカルの生存期間には電磁波の放射を休止させ、この拡大・休止のサイクルを繰り返すことで、効率よくプラズマの拡大を行うことができるため、結果として消費電力を低減させ、プラグ等の摩耗を抑制することができる。
【0011】
上記制御装置は、上記割合が、第一の閾値よりも大きく設定された第二の閾値以上であれば、発振出力を一定時間停止するよう停止指令信号を出すことが好ましい。上記進行波電力の値に対する反射波電力の値の割合が第二の閾値以上であり、上記放射アンテナから放射される電磁波の量が進行波電力に対して不十分で、高い割合で反射波電力となるような場合には、同じ条件で出力を継続することは消費電力の無駄となる。本発明のプラズマ生成装置によると、このような場合には発振出力を一定時間停止し、プラズマ形成領域の条件等を調整して不具合を改善することができるため、最終的な消費電力の低減に繋がる。
【0012】
上記制御装置は、上記割合が、第一の閾値より大きく第二の閾値より小さい場合には、上記割合に応じて、上記反射波電力の値が小さくなり上記割合が第一の閾値以下となるよう電磁波の発振パターンを調整することが好ましい。上記進行波電力の値に対する反射波電力の値の割合が、第一の閾値より大きく第二の閾値より小さい場合であって、上記放射アンテナにおいて反射する反射波電力の量はある程度多いものの、発振出力を停止してプラズマ形成領域等の条件を再検討するまでのことはない場合であれば、電磁波の発振パターンを調整することで十分改善することができる。
【0013】
上記電磁波の発振パターンの調整は、上記電磁波の発振周波数、電力、出力タイミング、出力期間及び出力回数、電磁波パルスのパルス幅、パルス周期及びバースト周期内のパルス位置、並びに電磁波の定在波位相からなる群より選択される少なくとも1種の調整により行われることが好ましい。上記放射アンテナからの反射波電力の低減は、プラズマが形成される領域のラジカル量、温度、圧力等の条件に合わせて、発振する電磁波の周波数、電力、出力タイミング等を調整することにより効率的に行うことができる。
【0014】
本発明のプラズマ生成装置は、内燃機関に好適に用いられる。本発明のプラズマ生成装置は、電磁波の進行波電力に対する反射波電力の割合、すなわちプラズマの発生状況に合わせて、用いる電磁波の発振パターンを制御することにより、プラズマの発生・拡大効率を向上させることができる。そのため、このようなプラズマ生成装置を備えるエンジン等の内燃機関は、燃料の燃焼効率が向上し、燃費を効果的に改善することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプラズマ生成装置によると、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率を向上させ、さらには周囲の条件の変化等によるプラズマ発生状態の変化に対応してより効率的にプラズマを発生・拡大させることができる。そのため、本発明のプラズマ生成装置は、自動車エンジン等に用いることで燃費を効果的に改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態に係る内燃機関の断面図である。
図2】実施形態に係るプラズマ生成装置のブロック図である。
図3】実施形態に係るプラズマ生成装置における反射波電力の時間的変動の例を示す図である。
図4】実施形態に係るプラズマ生成装置における電磁波の基本の発振パターンの例を示す図である。
図5】実施形態に係るプラズマ生成装置における電磁波のその他15の発振パターンの例を示す図である。
図6】実施形態に係るプラズマ生成装置における電磁波の発振制御の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0018】
<実施形態1>
−内燃機関−
本実施形態は、本発明に係るプラズマ生成装置1を備えた内燃機関である。内燃機関10は、内燃機関本体11と、放電装置12と、電磁波放射装置13と、制御装置35とを備えている。内燃機関10においては、放電装置12により放電プラズマを発生し、電磁波放射装置13からの電磁波によりこの放電プラズマを拡大・維持して混合気を燃焼させる燃焼サイクルが繰り返し行われる。電力検出器15は、電磁波発生装置31から発振される電磁波の進行波電力及び放射アンテナ16から反射される反射波電力を検出してその値を制御装置35に送信する。制御装置35は、上記進行波電力に対する反射波電力の割合に対応し、電磁波発生装置31から発振される電磁波の発振パターンを決定する。
【0019】
−内燃機関本体−
内燃機関本体11は、図1に示すように、シリンダブロック21と、シリンダヘッド22と、ピストン23とを備えている。シリンダブロック21には、横断面が円形のシリンダ24が複数形成されている。各シリンダ24内には、ピストン23が往復自在に設けられている。ピストン23は、コネクティングロッドを介して、クランクシャフトに連結されている(図示省略)。クランクシャフトは、シリンダブロック21に回転自在に支持されている。各シリンダ24内においてシリンダ24の軸方向にピストン23が往復運動すると、コネクティングロッドがピストン23の往復運動をクランクシャフトの回転運動に変換する。
【0020】
シリンダヘッド22は、ガスケット18を挟んで、シリンダブロック21上に載置されている。シリンダヘッド22は、シリンダ24、ピストン23及びガスケット18と共に、円形断面の燃焼室20を区画する区画部材を構成している。燃焼室20の直径は、例えば、電磁波放射装置13が燃焼室20へ放射するマイクロ波の波長の半分程度である。
【0021】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、放電装置12の一部を構成する点火プラグ40が1つずつ設けられている。図1に示すように、点火プラグ40では、燃焼室20に露出する先端部が、燃焼室20の天井面51(シリンダヘッド22における燃焼室20に露出する面)の中心部に位置している。点火プラグ40の先端部には、中心電極40a及び接地電極40bが設けられている。中心電極40aの先端と接地電極40bの先端部との間には、放電ギャップが形成されている。
【0022】
シリンダヘッド22には、各シリンダ24に対して、吸気ポート25及び排気ポート26が形成されている。吸気ポート25には、吸気ポート25の吸気側開口を開閉する吸気バルブ27と、燃料を噴射するインジェクター29とが設けられている。一方、排気ポート26には、排気ポート26の排気側開口を開閉する排気バルブ28が設けられている。なお、内燃機関10は、燃焼室20において強いタンブル流が形成されるように吸気ポート25が設計されている。
【0023】
−放電装置−
放電装置12は、燃焼室20毎に設けられている。図2に示すように、放電装置12は、電源8及び放電電極6を備えている。この放電電極6は、高電圧パルスを出力する点火コイル14と、点火コイル14から出力された高電圧パルスが供給される点火プラグ40とを備えている。
【0024】
点火コイル14は、電源8に接続されている。点火コイル14は、制御装置35から点火信号を受けると、電源8から印加された電圧を昇圧し、昇圧後の高電圧パルスを点火プラグ40の中心電極40aに出力する。点火プラグ40では、高電圧パルスが中心電極40aに印加されると、放電ギャップにおいて絶縁破壊が生じてスパーク放電が生じる。スパーク放電の放電経路には、放電プラズマが生成される。
【0025】
−電磁波放射装置−
電磁波放射装置13は、図2に示すように、電磁波発生装置31と、電力検出器15と、放射アンテナ16とを備えている。
【0026】
電磁波発生装置31は、制御装置35から電磁波駆動信号を受けると、所定の発振パターンでマイクロ波パルスを繰り返し出力する。電磁波発生装置31は、電磁波駆動信号のパルス幅の時間に亘って、マイクロ波パルスを繰り返し出力する。電磁波発生装置31では、半導体発生装置がマイクロ波パルスを生成する。なお、半導体発生装置の代わりに、マグネトロン等の他の発生装置を使用してもよい。
【0027】
放射アンテナ16は、例えば燃焼室20に1つずつ設けられている。放射アンテナ16は、燃焼室20の天井面において点火プラグ40の近傍に設けられている。放射アンテナ16は、シリンダヘッド22から電気的に絶縁されている。
【0028】
電力検出器15は、電磁波発生装置31から発振される電磁波の進行波電力及び放射アンテナ16から反射される反射波電力を検出する。これらの値は、制御装置35に送信される。制御装置35においては、上記進行波電力に対する反射波電力の割合を算出し、その値に対応し、電磁波発生装置31から発振される電磁波の発振パターンが決定される。制御装置35は、駆動シークエンスを制御し、上記決定された電磁波の発振パターンを例えばリアルタイムで自動制御するよう構成されている。
【0029】
−制御装置の動作−
制御装置35の動作について説明する。
【0030】
制御装置35は、内燃機関10の運転条件に基づいて、制御マップから燃焼室20の点火タイミングを決定し、燃焼室20に対して設けられた放電装置12と、燃焼室20に対して1つ設けられた電磁波放射装置13とを制御する。
【0031】
制御装置35は、放電装置12に点火信号を出力する。放電装置12では、点火信号を受けると、上述したように、点火プラグ40の放電ギャップにおいてスパーク放電が生じる。
【0032】
制御装置35は、点火信号の出力タイミングに対応するタイミングで(例えば、点火信号の出力タイミングの直後)、電磁波駆動信号を電磁波放射装置13に出力する。電磁波発生装置31は、所定の発振パターンの電磁波駆動信号を受けると、電磁波放射期間に亘って、上記所定の発振パターンの電磁波を出力する。
【0033】
電力検出器15は、電磁波発生装置31から発振される電磁波の進行波電力Pf及び放射アンテナ16から反射される反射波電力Prの値を制御装置35に送る。制御装置35は、電力検出器15から送られたこれらの値から、上記進行波電力Pfに対する反射波電力Prの割合(Pr/Pf)を算出する。
【0034】
本実施形態では、制御装置35は、算出された上記進行波電力Pfに対する反射波電力Prの割合(Pr/Pf)に応じて、予めプログラムされた所定の発振パターンの中から適切な発振パターンを選択する。制御装置35には、点火プラグ40における放電プラズマの状態、燃焼室20内の燃焼状態等に応じて変化する上記進行波電力Pfに対する上記反射波電力Prの割合(Pr/Pf)に対応して選択される、複数の発振パターンが予めプログラムされている。
【0035】
放射アンテナ16から反射される反射波電力Prの値は、燃焼室20の状態等により変化する。例えば、放電装置12において、点火プラグ40でスパーク放電が生じ、放電プラズマが発生すると、放射アンテナ16から放射される電磁波はこの放電プラズマに効率よく吸収されるため、反射波電力Prは低い値となる。このように燃焼室20が電磁波を吸収し易い状態である場合には、この反射波電力Prが低い値となる。
【0036】
図6のフローチャートに、本実施形態に係るプラズマ生成装置における電磁の発振制御の手順を示す。制御装置35は、上記進行波電力Pfに対する上記反射波電力Prの割合(Pr/Pf)が、第一の閾値Pt1よりも大きく設定された第二の閾値Pt2以上であるか否かを判断する。Pr/PfがPt2以上である場合(YES)には、発振禁止信号が発せられ、発振出力を一定時間停止する。Pr/PfがPt2より小さい値である場合(NO)には、引き続き、Pr/Pfが第一の閾値Pt1以下であるか否かを判断する。Pr/PfがPt1以下である場合(YES)には、上記複数の発振パターンの中から基本の発振パターンを選択する。Pr/PfがPt1より大きい値である場合(NO)には、すなわち、Pr/Pfの値が、Pt1より大きく、かつPt2より小さい場合には、基本の発振パターンを変形したその他の発振パターンを選択する。その他の発振パターンとしては、例えば図5に示すような各種のパターン等が挙げられる。Pt1より大きく、かつPt2より小さい範囲内において、Pr/Pfの値に応じて、適切な発振パターンが選択される。
【0037】
Pr/Pfの値が第一の閾値Pt1以下である場合に選択される基本の発振パターンとしては、例えば、図4に示すように、ある一定のパルス幅twとパルス周期tpを有するバースト(B1、B2)が、ある一定時間繰り返されるようなパターン等が挙げられる。また、各バースト間には、遅れ時間tdが設定される。本実施形態の内燃機関においては、この基本の発振パターンに従って放射される電磁波により、点火プラグ40で発生する放電プラズマを拡大・維持して混合気の燃焼を促進することができる。
【0038】
第一の閾値Pt1としては、目的、燃焼室環境、外部環境等に応じて適宜、適切な数値を設定することができるが、通常、反射波電力Prが少なく、発振された電磁波のうちの大部分が燃焼室内に吸収され、進行波電力Pfに対する反射波電力Prの割合が小さくなるような値を設定する。第一の閾値は、通常0.5以下であり、0.4以下が好ましく、0.3以下がより好ましく、0.2以下がさらに好ましく、0.1以下が特に好ましい。
【0039】
第二の閾値Pt2としては、目的、燃焼室環境、外部環境等に応じて適宜、適切な数値を設定することができるが、通常、上記割合が第二の閾値Pt2を超えるような場合としては、反射波電力Prが大きく、発振された電磁波のうちの大部分が反射波となるような場合であって、発振する電磁波の各種条件の調整程度では改善不可能であり、装置の不具合、放射アンテナの配置等、電磁波の出力を停止して、物理的な調整を必要とするような場合を想定したものである。従って、第二の閾値Pt2としては、通常、0.6以上であり、0.7以上が好ましく、0.8以上がより好ましく、0.9以上がさらに好ましい。
【0040】
上記割合Pr/Pfの値が、第一の閾値Pt1より大きく、第二の閾値Pt2より小さい場合に選択されるその他の発振パターンとしては、上記反射波電力Prの値が小さくなり上記割合Pr/Pfが第一の閾値Pt1以下となる発振パターンであれば特に限定されないが、基本の発振パターンのうち、上記電磁波の発振周波数、電力、出力タイミング、出力期間及び出力回数、電磁波パルスのパルス幅、パルス周期及びバースト周期内のパルス位置、並びに電磁波の位相からなる群より選択される少なくとも1種を変更したパターン、例えば、基本の発振パターンよりデューティー(tw/tp)を変更(例えば大きく)したパターン、バースト時間(図4に示す、B1、B2の長さ)又はバースト周期(図4に示す、B1+td2の長さ)を変更したパターン、バースト周期内での電磁波の発信回数、パルスではなく連続波としたパターン(この場合、電磁波出力を変更することが好ましい)、変則的なパルスパターン、または、これらのパターンの組合せ等を用いることができる。その他の発振パターンの具体例として、例えば図5に示すパターン等が挙げられる。また、電磁波の位相を調節する場合、対象となるプラズマに対して、電磁波の腹の部分が位置するように、電磁波の位相を0°〜90°までダイナミックに変動させ、割合Pr/Pfの値が最小となるように調節する。
【0041】
上記割合Pr/Pfの値が、第二の閾値Pt2以上である場合に、発振出力を一定時間停止する停止信号は、発振出力トランジスタのバイアス電圧に接続されていてもよい。
【0042】
−実施形態1の効果−
本実施形態のプラズマ発生装置では、電磁波の放射アンテナからの反射波電力の大きさに合わせて、適切な電磁波の発振パターンを用いるよう制御されるため、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率を向上させ、さらには周囲の条件の変化等によるプラズマ状態の変化に細かく対応してより効率的にプラズマを発生・拡大させることができる。そのため、本実施形態のプラズマ生成装置1は、自動車エンジン等に用いることで燃費を効果的に改善することができる。
【0043】
−実施形態の変形例1−
本実施形態の変形例1では、制御装置35において、第一の閾値Pt1と第二の閾値Pt2との間に第三の閾値Pt3が設定されている。進行波電力Pfに対する反射波電力Prの割合(Pr/Pf)が第一の閾値Pt1より大きく第三の閾値Pt3以下である場合、及び第三の閾値Pt3より大きく第二の閾値Pt2より小さい場合には、上記反射波電力Prの値がより小さくなり上記割合(Pr/Pf)が第一の閾値Pt1以下となるように、それぞれに適切な発振パターンが選択される。このように、本発明のプラズマ生成装置1によると、電磁波の発振パターンを、反射波電力の進行波電力に対する割合、すなわち、燃焼室内の燃焼状態、放電プラズマの強度等に合わせて、より細かく設定し、制御することができる。そのため、本実施形態のプラズマ生成装置1は、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率をさらに向上させることができる。なお、上記閾値の設定はさらに追加してもよい。
【0044】
−実施形態の変形例2−
本実施形態の変形例2では、電磁波の放射アンテナが点火プラグ40に内蔵されている。本実施形態の点火プラグ40は、一般的なスパークプラグと同様に、導電体からなる主体金具と、主体金具を貫通する筒状の碍子とを備え、碍子には、棒状の中心導体が収容され、一方の端部は碍子から露出して直流電流と電磁波の混合回路との接続部となる。もう一方の端部は、碍子から露出して放電電極の陰極と電磁波放射アンテナとを兼ねている。本実施形態のような構造とすることで、自動車エンジンの燃焼室の構造を変更することなく、市販のスパークプラグと同様に本発明のプラズマ生成装置1を取り付けることができ、容易に燃費の低減効果を得ることが可能となる。
【0045】
−実施形態の変形例3−
本実施形態の変形例3では、プラズマ生成装置1は放電装置12を備えていない。本実施形態のプラズマ生成装置1においては、電磁波放射装置13から放射される電磁波により燃焼室内にプラズマを発生させることができる。このように発生したプラズマにさらに電磁波を放射することで、プラズマを拡大・維持させることができる。
【0046】
<実施形態2>
−排ガス分解装置−
本発明に係るプラズマ生成装置は、排ガス分解装置として用いることができる。電磁波発生装置と、所定の電磁波帯域を共振するマイクロ波共振空洞(キャビティ)と、キャビティ内に電磁波を放射する放射アンテナと、キャビティ内の気体に対し部分放電して気体をプラズマ化する放電電極とを備え、放射アンテナは、放電電極によるプラズマ生成領域に電磁波による強電界場を形成するものである。本発明のプラズマ発生装置は、電磁波の放射アンテナからの反射波電力の大きさに合わせて、適切な電磁波の発振パターンを用いるよう制御されるため、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率を向上させ、さらには周囲の条件の変化等によるプラズマ状態の変化に細かく対応してより効率的にプラズマを発生・拡大させることができる。そのため、当該プラズマ発生装置を備える排ガス分解装置は、より効率よく排ガスを分解することができる。
【0047】
有害排出物、化学物質、浮遊粒子状物質、スス等をプラズマによる生成物(OHラジカル、オゾン(O))を利用して化学的に酸化、反応させ、無害化するために、マイクロ波共振空洞(キャビティ)内流体22に、高圧場(大気圧、または、0.2MPa以上)の非平衡プラズマを発生させる。大気圧・非平衡プラズマの最大のメリットは、熱・化学平衡の制約を回避して、温度・圧力とほぼ独立に反応速度や原料転換率を制御できる点にある。生成したプラズマと反応させる反応器(リアクタ)の設計自由度が高く、軽量・コンパクト、かつ応答性のよいリアクタを構築することもできる。大気圧・非平衡プラズマは、例えば、メタンからメタノールの直接合成、天然ガスの水蒸気改質、アセチレン合成、天然ガスの液化などへの利用も考えられている。
【0048】
燃焼・反応室での未燃ガスやスス、NOX等の排ガスは、プラズマ発生に伴うオゾン、OHラジカルの強酸化力によって炭素−炭素結合、炭素−水素結合を切断し、酸化、OHラジカルによる化学反応によりNO、COなどの安定した無害な酸化物や炭素へと排ガス成分を無害化する。下流側に設けた測定部において、OHセンサ、Oセンサによって、リアルタイムでOHラジカル、Oの発生量、もしくは発光強度を測定する。この測定結果を演算し、ある制御範囲のもとで、放射アンテナ及び放電電極を任意の値に制御することで、貫流する有害物質等の処理量を制御することができる。
【0049】
<実施形態3>
−オゾン発生・滅菌・消毒装置、消臭装置−
本発明を航空機用ジェットエンジンに適用する場合は、本装置をジェットエンジン排気コーン近傍に設置することで、水分を含んだ高圧蒸気を本装置で発生する非平衡プラズマにより多量のOHラジカル、Oに変換することができる。これにより従来、飛行中の排気ガスにより大気汚染をしていたが、排気ガスを多量のOHラジカル、Oの強力な酸化力をもって無害なガスに分解するとともに、フロン等で破壊された成層圏のオゾン層修復のために多量のOを発生させることができる。本発明のプラズマ発生装置は、用いる電力に対するプラズマの発生・拡大効率を向上させ、さらには周囲の条件の変化等によるプラズマ状態の変化に細かく対応してより効率的にプラズマを発生・拡大させることができるため、当該プラズマ発生装置を備えるこれらの装置は、より効率よくオゾン発生・滅菌・消毒・消臭を行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
以上説明したように、本発明は、自動車エンジン等の内燃機関、排ガス処理装置等に用いられるプラズマ発生装置として好適である。
【符号の説明】
【0051】
1 プラズマ生成装置
6 放電電極
8 電源
12 放電装置
13 電磁波放射装置
14 点火コイル
15 電力検出器
16 放射アンテナ
31 電磁波発生装置
35 制御装置
40 点火プラグ
図1
図2
図3
図4
図5
図6