(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、リチウム反応性やそれに関連するサイクル寿命、デンドライト形成、電解質適合性、および組立や安全性の問題を含む種々の技術的課題が、このようなセルおよびバッテリーの使用を制限している。例えば、多くのリチウムベースの電気化学セルは、ラジカル重合機構によりリチウム表面上にアクリレートモノマー(例えば、アクリル酸のポリエチレングリコールエステル)を重合して形成されたポリマー材料を含んでいる。しかしながら、結果として生じるポリマーは、イオウが放電する間に生成したポリスルフィド等の電気化学セル内に存在する種により求核攻撃を受けやすいエステル基を含有している。ポリマーのエステル基上へのポリスルフィドの求核攻撃により、低伝導性高分子量チオカルボキシレート塩が形成されたり、架橋ブリッジが切断されたり、粘性のある低伝導性アルコキシドが生成したり、また、イオウの部分的不可逆損失に至ったりする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、気化学セルにおける保護層および/または他の構成要素として使用するためのポリマーと一般的に関係している。本発明は、場合によっては、相互に関係する産出物、特定の課題に対する別の解決策、および/または1以上のシステムおよび/または物品の多数の種々の用途を含む。
【0005】
ポリマーおよび係るポリマーを含む物品が提供される。場合によっては、ポリマーは、少なくとも2つのチオール基を含む第1のタイプのモノマー、少なくとも1つのビニル基または少なくとも1つのアルキニル基を含む第2のタイプのモノマー、および所望により第3のタイプのモノマーの重合ユニットよりなるか、またはそれらが反応して形成されているものである。態様によっては、第1のタイプのモノマーは2つのチオールよりなるものである。態様によっては、第1のタイプのモノマーは、3つのチオール基を含む。態様によっては、第2のタイプのモノマーは、1−3のビニル基(例えば、2つのビニル基)よりなる。態様によっては、第2のタイプのモノマーは、1−3のアルキニル基(例えば、3つのアルキニル基)よりなる。
【0006】
態様によっては、ポリマーは、2つのチオール基を含む第1のタイプのモノマーおよび2つのビニル基を含む第2のタイプのモノマーの重合ユニットよりなるか、またはそれらが反応して形成されているものである。態様によっては、ポリマーは、3つのチオール基を含む第1のタイプのモノマーおよび2つのビニル基を含む第2のタイプのモノマーの重合ユニットよりなるか、またはそれらが反応して形成されているものである。態様によっては、ポリマーは、2つのチオール基を含む第1のタイプのモノマーおよび3つのビニル基を含む第2のタイプのモノマーの重合ユニットよりなるか、またはそれらが反応して形成されているものである。
【0007】
場合によっては、第1のタイプモノマーが、式(A)または式(B)の化合物である:
【化1】
(式中、L
1またはL
2は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、例えばアルキレンオキサイド鎖等、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、または所望により置換されていてもよいヘテロアリーレン;そして、R
aは、H、アルキル、または−L
2SHである。)。
【0008】
場合によっては、第1のタイプのモノマーは、式(A)の化合物であり;式中、L
1は、−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−(C
2−C
3−アルキレン)−または−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−C(O)−(C
2−C
3−アルキレン)であり;該C
2−C
3−アルキレンオキサイドは、独立してエチレンオキサイドまたは1,2−プロピレンオキサイドであり;nは、1から100までの整数である。態様によっては、nは1から10までの整数である。
【0009】
場合によっては、第1のタイプのモノマーは、式(B)の化合物であり;L
2は−(C
1−C
3−アルキレン)−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−(C
1−C
3−アルキレン)-または-(C
1−C
3−アルキレン)−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−OC(O)−(C
1−C
3−アルキレン)−であり;該C
2−C
3−アルキレンオキサイドは、独立してエチレンオキサイドまたは1,2−プロピレンオキサイドであり;R
aはHまたはアルキルであり;そしてnは1から10までの整数である。
【0010】
1つの態様において、第1のタイプのモノマーは、次の化合物である;
【化2】
。
【0011】
もう1つの態様においては、第1のタイプのモノマーは、次の化合物である;
【化3】
式中nは1から10までの整数である。
【0012】
態様によっては、第2のタイプのモノマーは、式(C)の化合物である;
【化4】
(式中、X
1は、−CR
c=CH
2または−C≡CHであり;
L
3は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、所望により置換されていてもよいヘテロアリーレン、−(CO)−、−(CO)O−、−(CO)NH−、−C=NH−、−NH−、−C(OH)−、−O−、または−S−である;
R
bは、所望により置換されていてもよいアルキル、所望により置換されていてもよいヘテロアルキル、所望により置換されていてもよいシクロアルキル、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール、または所望により置換されていてもよいヘテロアリール;そして
R
cはHまたはアルキルである。)。
【0013】
場合によっては、L
3は、異なる化学構造を有するアルキレンオキサイドユニットのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド鎖、例えば、エチレンオキサイドおよび1,2−プロピレンオキサイドのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド鎖、を含む、アルキレンオキサイド鎖よりなる。
【0014】
態様によっては、第2のタイプのモノマーは式(D)の化合物である;
【化5】
式中、X
2およびX
3は-CR
d=CH
2または-C≡CHであり;
L
4は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、所望により置換されていてもよいヘテロアリーレン、−(CO)−、−(CO)O−、−(CO)NH−、−C=NH−、−NH−、−C(OH)−、−O−、または−S−であり;そして
R
dは、Hまたはアルキルである。
【0015】
場合によっては、L
4は、異なる化学構造を有するアルキレンオキサイドユニットのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド鎖、例えば、エチレンオキサイドおよび1,2−プロピレンオキサイドのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド鎖、を含む、アルキレンオキサイド鎖よりなる。
【0016】
態様によっては、L
4は下記構造を有している:
【化6】
式中、各nは、独立して0−10であり、R
6は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、または所望により置換されていてもよいヘテロアリーレンである。
【0017】
態様によっては、L
4は、−(O)−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−であり、式中、該C
2−C
3−アルキレンオキサイドは、独立してエチレンオキサイドまたは1,2−プロピレンオキサイドであり、そしてnは、1から10までの整数である。
【0018】
態様によっては、L
4は、下記構造を有している:
【化7】
式中、R
7は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよい ヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、または所望により置換されていてもよいヘテロアリーレンである。
【0019】
態様によっては、第2のタイプのモノマーは、次の化合物の1つである。
【化8】
式中、nは、1−100の整数である。
【0020】
態様によっては、第3のタイプのモノマーは、少なくとも1つ、少なくとも2つ、または2つよりも多くの、チオール基と反応性のある官能基よりなる。態様によっては、第3のタイプのモノマーは、1以上のイソシアネート基よりなる。態様によっては、第3のタイプのモノマーは、1以上のシアネートエステル基よりなる。態様によっては、第3のタイプのモノマーは、1以上のチオシアネート基よりなる。態様によっては、第3のタイプのモノマーは、1以上のイソチオシアネート基よりなる。態様によっては、第3のタイプのモノマーは、1以上のエポキシ基よりなる。態様によっては、第3のタイプのモノマーは、イソシアネート基、シアネートエステル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、および/またはエポキシ基の組合せよりなる。
【0021】
態様によっては、第3のタイプのモノマーは式(E)の化合物である。
【化9】
式中、L
5は、アルキレン、アリーレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、またはアルキレン-アリーレン-アルキレンであり、そのいずれも所望により置換されていてもよく;
R
eおよびR
fは、イソシアネート基、シアネートエステル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、またはエポキシ基である。
【0022】
場合によっては、L
5は、次の基の1つである。
【化10】
【0023】
態様によっては、第3のタイプのモノマーは、次の化合物の1つである。
【化11】
【0024】
上記態様のいずれにおいても、第2のタイプのモノマーに対する第1のタイプのモノマーの比は、約1:1と約1:5の間、または約1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5であり得る。上記態様のいずれにおいても、第3のタイプのモノマーに対する第1のタイプのモノマーの比は、約2:1であってもよく、そして、第2のタイプのモノマーに対する第1のタイプのモノマーの比は、約2:1と約2:5の間であってよく、または約2:1、または約2:2、または約2:3、または約2:4、または約2:5である。
【0025】
また、電気化学セルに使用するための物品を提供するものであり、該物品は上述の態様の何れかの態様におけるポリマーよりなる。場合によっては、該物品は、電極としての使用のためのものであってもよい。場合によっては、該物品は、(例えば、電気化学セルにおける)保護構造または保護層としての使用のためのものであってもよい。場合によっては、該物品は、電気化学セル内部のセパレータとして配列されてもよい。態様によっては、電気活性層;および該電気活性層に接触しているポリマー層よりなり、そして上述の態様の何れかの態様で記載されているようなポリマーよりなる物品が提供される。態様によっては、該物品は、アノード、上述の態様の何れかの態様におけるようなポリマーよりなる前記アノードに隣接する保護層、およびカソードよりなる。
【0026】
また、電気化学セルを提供するものであり、該電気化学セルは、アノード;カソード、および、該アノードおよび/またはカソードに隣接して配列される上記態様の何れかの態様において記載されたようなポリマーよりなるポリマー層よりなる。態様によっては、該電気化学セルはカソード;ポリマー層よりなる物品およびアノード活性材料よりなる電気活性層よりなり、該ポリマー層が、該カソードと該電気活性層との間に配列される。態様によっては、リチウムよりなるアノード;上記態様の何れかの態様におけるようなポリマーよりなる該アノードに隣接する保護層、およびカソードよりなる電気化学セルが提供される。
【0027】
上記態様のいずれかの態様において、電気活性層は、リチウム金属またはリチウム金属合金を含む、リチウムよりなっていてもよい。上記態様のいずれかの態様において、アノードは、リチウム金属またはリチウム金属合金を含む、リチウムよりなっていてもよい。
【0028】
上記態様のいずれかの態様において、カソードは、カソード活性種として、元素イオウ等、イオウよりなっていてもよい。
【0029】
上記態様のいずれかの態様において、ポリマー層の伝導性は、約10
−5S/cm
2以上、約10
−4S/cm
2以上、または、約10
−3S/cm
2以上であり得る。
【0030】
上記態様のいずれかの態様において、保護層は、厚さ1μm未満であり得る。
【0031】
上記態様のいずれかの態様において、保護層は、アノードの表面上に形成されてもよい。上記態様のいずれかの態様において、保護層は、カソードの表面上に形成されてよい。
【0032】
上記態様のいずれかの態様において、ポリマー層または保護層は、少なくとも1つのリチウム塩をさらに含有していてもよい。例えば、該リチウム塩は、LiNO
3、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、リチウムビスオキサラトボレート(lithium bis-oxalatoborate)、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2F)
2、LiC(C
jF
2j+1SO
2)
3(式中、jは1から20までの範囲における整数である。)、および一般式(C
jF
2j+1SO
2)
kXLi(jは1から20までの範囲における整数であり、Xが酸素またはイオウから選択されるときは、kは1であり、Xが窒素またはリンから選択されるときは、kは2であり、そしてXが炭素または珪素から選択されるときは、kは3である。)から選択されてよい。
【0033】
上記態様のいずれかの態様において、ポリマーのイオン伝導性は、乾燥状態において室温で少なくとも約1 x 10
-4 S/cmであってよい。
【0034】
上記態様のいずれかの態様において、ポリマーは、膨潤状態において、少なくとも10 kg/cm
2の加圧力に対して安定であるゲルであってよい。
【0035】
上記態様のいずれかの態様において、ポリマー層または保護層の厚さは、約0.5μmないし約25μmの範囲内にある。
【0036】
上記態様のいずれかの態様において、ポリマーの重量は、液体電解質に接触したとき、約10%ないし約60%増加してもよい。
【0037】
また、保護層として、セパレータとして、または電解質として使用するためのポリマーを提供するものであり、該ポリマーは、上記態様のいずれかの態様におけるように、少なくとも2つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマー、少なくとも1つのビニル基または少なくとも1つのアルキニル基よりなる第2のタイプのモノマー、および所望により第3のタイプのモノマーの重合ユニットよりなるものである。
【0038】
本発明の他の側面、態様、および特徴が、添付図面と関連して考慮され、以下の詳細な記述から明らかとなろう。添付図面は、概略であり、一定の縮小比で描かれているものではない。明確性のために、すべての図におけるすべての構成要素を標識化しているものでなく、当業者が発明を理解でき説明が必要ないものは、発明の各態様におけるあらゆる構成要素を表示しているものでもない。言及することにより本明細書に組み込まれているすべての特許出願および特許は、そっくりそのまま、言及することにより取り込まれる。コンフリクトがある場合には、定義を含む本明細書が、統制するものである。
【0039】
概略であり一定の縮小比で描かれているものではない添付図面を参照し、実施例を介して、本発明を記述するが、本発明はそれらの実施態様に限定されるものではない。図面においては、説明されている各同一の構成要素、または、ほぼ同一の構成要素は、代表的に一つの数字で表されている。明確性のために、すべての図におけるすべての構成要素を標識化しているものでなく、当業者が発明を理解でき説明が必要ないものは、発明の各態様におけるあらゆる構成要素を表示しているものでもない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ポリマー、より具体的には、物品および/または電気化学セルに使用するためのポリマーを提供するものである。開示ポリマーは、電気化学セル中、例えば、保護層、および/または他の好適な任意の構成成分として、アルカリ電気化学セル(例えば、リチウム金属および/またはリチウムイオン電気化学セル)中に組み込まれてもよい。本明細書に記載されているポリマーは、(例えば、Liポリスルフィド、Li表面等の存在下で)バッテリー環境と高度な適合性を発揮し得る。例えば、ポリマーは、物品または電気化学セル中に存在し得る求核試薬(例えば、ポリスルフィド)の存在下においても安定でありうるものであり、機械的結着性および/またはイオン伝導性が改良されるという効果がある。さらに、ポリマーは、リチウム表面等、種々の表面上に、迅速に形成および硬化し得る。
【0042】
本願明細書に開示されているポリマーは、保護層としておよび/または保護構造(例えば、多層構造等)中に、電解質として、および/またはセパレータとして、電極あるいは電気化学セル等の物品中に組み込むことができる。一実施例において、ポリマーは、本明細書に開示されているように、電気活性層および1以上のポリマー(例えば、ポリマーの複数層)を含有する物品(例えば、電極等)中に組み込まれてもよい。ポリマーは、保護層として、および/または保護構造中に用いてもよく、また、例えば、電気活性材料と電解質(または、電解質中の1以上の反応性種)との間のセパレータとして配列されてもよい。電気化学セルの電解質からの電気活性層の分離は、(例えば、リチウムバッテリーに対しては)、充電中のデンドライト形成を減少あるいは防止すること、電解質または電解質中の構成要素(例えば、溶媒、塩および/またはカソード放電産出物)とリチウムとの反応を減少あるいは防止すること、サイクル寿命を増加させること、および安全性(例えば、熱暴走を防止すること)を向上させることを含んで、いろんな面で電気化学セルの性能を向上させることができる。実例として、電解質と電気活性リチウム層とが反応すると、アノード上に抵抗性のフィルムバリアーが形成され、それはバッテリーの内部抵抗を増加させ、定格電圧でバッテリーにより供給されることができる電流の量を低下させることになり得る。
【0043】
ポリマーは、電気化学セル等の物品中に組み込まれてもよい。例えば、物品は、アノード(例えば、リチウムを含有するアノード)、該ポリマーを含有し該アノードに隣接して配列される保護層、およびカソードを含んでいてもよい。電気化学セルは、例えば、一次電池、または放電、充電を多数回できる二次バッテリーであってもよい。例えば、本明細書に記載されているポリマー、物品、および/または電気化学セルは、リチウム-イオウバッテリーに関連して使用することができる。本明細書に記載されている電気化学セルは、車、コンピューター、パーソナルデジタルアシスタント、モバイルテレフォン、時計、ポータブルビデオカメラ、デジタルカメラ、サーモメータ―、カルキュレーター、ラップトップバイオス、コミュニケーション装置、またはリモートカーロック等の製造/操作を含む種々の応用に用いることもできる。
【0044】
A.ポリマー組成物
本明細書に開示されているポリマー(例えば、チオール-エン(thiol-ene)ポリマー)は、少なくとも2つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーを、少なくとも1つのビニル基または少なくとも1つのアルキニル基よりなる第2のタイプのモノマーと反応させることにより形成させることができる。該反応は、第3のタイプのモノマー、例えば、チオール基と反応性のある1以上の官能基を含有するモノマーを所望により含んでいてもよい。
【0045】
特に、種々のチオール-エンポリマーが提供される。係るポリマーは、リチウム-イオウバッテリー等(例えば、リチウムポリスルフィド、リチウム表面等)のバッテリーの構成要素の存在下で高い安定性を示すので、本明細書に記載されている物品や電気化学セルにおける使用に有利である。例えば、他の材料がバッテリー使用中(例えば、イオウ放電中)に発生するポリスルフィドと反応するかもしれず、そして他の求核試薬がバッテリー中に存在する一方で、本明細書に開示のチオール-エンポリマーは、求核攻撃を受けやすいエステル等の官能基の量が少ないか、あるいは実質的に皆無であり得る。該ポリマーは、リチウムポリスルフィドによる求核攻撃に対して安定であるアミド基を含んでいてもよい。さらに、アミド基含有ポリマーは、電極表面(例えば、リチウムアノード表面)等、種々の表面に対する改良付着力を示し得る。
【0046】
本明細書に開示のポリマーは、ランダムコポリマーおよびブロックコポリマーを含む、コポリマーであってもよい。該ポリマーを形成する方法は、短時間でなされるもの(fast)であっても、忍耐力を要する(robust)なものであっても、また選択的なものであってもよい。チオール-エンポリマーの場合、チオール基とビニル基間の反応は、普通、オレフィン性2重結合へのチオールのラジカル付加を含む。しかしながら、ラジカル鎖成長反応と違って、一般に、ラジカル的に誘導されたチオール-エン重合反応が、段階成長風に進行することができ、結果として得られる高分子の微細構造、それ故に、ポリマー特性の優れた制御を可能としている。さらに、チオール-エンポリマーの重合は、リチウム表面上で素早く進行し得る。
【0047】
反応パートナー(例えば、モノマー)の選択性故に、チオール-エンポリマーは、非常に規則的交互的に構成することができることが多い。
図1Aに示されているように、重合は、2つのチオール基を含有する第1のタイプのモノマーとビニル基を含有する第2のタイプのモノマーを反応させること、チオール-エンポリマーを製造することを含むことができる。
図1Bは、線状で非架橋のチオール-エンポリマーの模式的な図を示している。そのような材料は、普通、フレキシブルなC−S−Cチオエーテル結合から生じる比較的低いガラス転移温度(Tg)を示す。
オリゴマー出発物質(例えば、2つのビニル基よりなるオリゴマーと反応された2つのチオール基よりなるオリゴマー)を使用すると、誘導された相分離を有するマルチセグメントブロックコポリマーを製造することができ、
図1Cに示されているようにセグメント比により材料パラメーターを仕立てることができる。モノマー出発物質を使用してブロックコポリマーを製造する他の方法は、当該技術分野で公知でもある(例えば、リビング重合)。
【0048】
ビニル基の性質により、ポリマーはマイケル付加反応を経由して形成されてもよいということに留意すべきである。例えば、第2のタイプのモノマーは、第1のタイプのモノマーのチオール基により求核攻撃を受けることができるエレクトロンプアーな2重結合(例えば、α,β-不飽和カルボニル基)を含み得る。代わりに、または、さらに、エレクトロンプアーな2重結合よりなるモノマーはアニオンステップ成長反応を経て進むこともできる。
【0049】
ハイパーブランチ(Hyperbranched)および/または架橋ポリマーは、2つより多くの反応性官能基を含む少なくとも1つのモノマーを使用して製造されてもよい。例えば、第1のタイプのモノマーは、2つのチオール基よりなっていてもよく、第2のタイプのモノマーは、2つより多くのビニル基よりなっていてもよい。また、
図1Dに示されているように、第1のタイプのモノマーが、2つより多くのチオール基よりなっていてもよく、そして、第2のタイプのモノマーが、2つのビニル基よりなっていてもよい。別の実施例においては、第1のタイプのモノマーが、2つより多くのチオール基よりなっていてもよく、そして、第2のタイプのモノマーも、2つより多くのビニル基よりなっていてもよい。以下により詳しく記載されているように、他のケースにおいては、第3のタイプのモノマーを導入して、ハイパーブランチおよび/または架橋ポリマーを製造してもよい。
【0050】
本明細書においては多くの議論が、2つまたは3つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーおよび/または2つまたは3つのビニル基よりなる第2のタイプのモノマーに焦点があてられているが、係るモノマーは具体例としてのみ記述されているということ、そして、本明細書に開示されているそれぞれのタイプのモノマーは、特定の応用に好適ないかなる数の官能性基(重合位)よりなっていてもよいということが理解されるべきである。例えば、第1のタイプのモノマーは、4つ、5つ、6つ、またはそれより多くのチオール基よりなっていてもよく、および/または第2のタイプのモノマーは、4つ、5つ、6つ、またはそれより多くのビニル基よりなっていてもよい。ポリマーは、少なくとも2つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーと少なくとも2つのビニル基よりなる第2のタイプのモノマーとの反応により形成されてもよい。例えば、第1のタイプのモノマーは、2つ、3つ、または4つのチオール基を含んでいてもよく、および/または第2のタイプのモノマーは、2つ、3つまたは4つのビニル基を含んでいてもよい。
【0051】
ある場合には、ポリマーは、2つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーと2つのビニル基よりなる第2のタイプのモノマーの反応により形成される。場合によっては、ポリマーは、2つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーと3つのビニル基よりなる第2のタイプのモノマーの反応により形成される。場合によっては、ポリマーは、3つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーと2つのビニル基よりなる第2のタイプのモノマーの反応により形成される。場合によっては、ポリマーは、3つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーと3つのビニル基よりなる第2のタイプのモノマーの反応により形成される。
【0052】
モノマーは、任意の好適な比で供給されてもよい。場合によっては、第2のタイプのモノマーに対する第1のタイプのモノマーの比は、約1:1と約1:5の間、または約 1:1、または約1:2、または約1:3、または約1:4、または約1:5である。
【0053】
第3のタイプのモノマーに対する、少なくとも2つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーの比は、約2:1であってもよく、そして、少なくとも2つのビニル基よりなる第2のタイプのモノマーに対する、少なくとも2つのチオール基よりなる第1のタイプのモノマーの比は、約2:1と約2:5の間であってよく、または約2:1、または約2:2、または約2:3、または約2:4、または約2:5である。
【0054】
第1のタイプのモノマーは、例えば、2つのチオール基、3つのチオール基、またはそれ以上を含むことができる。例えば、第1のタイプのモノマーは、式(A)または式(B)の化合物であってよい:
【化12】
(式中、L
1またはL
2は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、例えばアルキレンオキサイド鎖等、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、または所望により置換されていてもよいヘテロアリーレン;そしてR
aは、H、アルキル、または−L
2SHである)。例えば、L
1またはL
2は、アルキレンオキサイド鎖、例えば、異なる化学構造(例えば、C
2−アルキレンオキサイド、C
3−アルキレンオキサイド等)を有するアルキレンオキサイドユニットを含有するアルキレンオキサイド鎖を含んでいてもよい。
【0055】
第1のタイプのモノマーは、式(A)の化合物、HS−L
1−SHであってもよく;式中、L
1は、−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−(C
2−C
3−アルキレン)−または−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−C(O)−(C
2−C
3−アルキレン)であり;該C
2−C
3−アルキレンオキサイドは独立してエチレンオキサイドまたは1,2−プロピレンオキサイドであり;nは、1から100まで、例えば、1から10までの整数である。
【0056】
第1のタイプのモノマーは、式(B);R
aC(L
2SH)
3の化合物であってもよく;式中、L
2は、−(C
1−C
3−アルキレン)−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−(C
1−C
3−アルキレン)−または−(C
1−C
3−アルキレン)−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−OC(O)−(C
1−C
3−アルキレン)−であり;該C
2−C
3−アルキレンオキサイドは独立してエチレンオキサイドまたは1,2−プロピレンオキサイドであり;R
aは、Hまたはアルキルであり;そして、nは1から10までの整数である。
【0057】
第1のタイプのモノマーの具体例は、次の化合物を含む;
【化13】
(式中、nは1から10までの整数である。)。
【0058】
第2のタイプのモノマーは、第1のタイプのモノマーと反応しポリマーを形成することのできる少なくとも1つの基を含んでいてもよい。例えば、第2のタイプのモノマーは、少なくとも1つのビニル基、例えば1−3つのビニル基(例えば、2つのビニル基)等を含有していてもよい。第2のタイプのモノマーは、少なくとも1つのアルキニル基、例えば、1−3つのアルキニル基(例えば、3つのアルキニル基)を含有していてもよい。
【0059】
第2のタイプのモノマーは、式(C)の化合物であってもよい;
【化14】
式中、X
1は、−CR
c=CH
2または−C≡CHであり;
L
3は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、所望により置換されていてもよいヘテロアリーレン、−(CO)−、−(CO)O−、−(CO)NH−、−C=NH−、−NH−、−C(OH)−、−O−、または−S−であり;
R
bは、所望により置換されていてもよいアルキル、所望により置換されていてもよいヘテロアルキル、所望により置換されていてもよいシクロアルキル、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキル、所望により置換されていてもよいアリール、または所望により置換されていてもよいヘテロアリールであり;そして
R
cは、Hまたはアルキルである。
【0060】
第2のタイプのモノマーは、式(D)の化合物であってもよい;
【化15】
式中、X
2およびX
3は-CR
d=CH
2または-C≡CHであり;
L
4は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、所望により置換されていてもよいヘテロアリーレン、−(CO)−、−(CO)O−、−(CO)NH−、−C=NH−、−NH−、−C(OH)−、−O−、または−S−であり;そして
R
dは、Hまたはアルキルである。
【0061】
式(C)または式(D)中、L
3またはL
4は、例えば、エチレンオキサイドと1,2−プロピレンオキサイドのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド等、異なる化学構造を有するアルキレンオキサイドユニットのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド鎖を含む、アルキレンオキサイド鎖を含有していてもよい。
【0062】
第2のタイプのモノマーは、式(D)の化合物であってもよく、L
4は、
【化16】
の構造を有しており、式中、各nは、独立して0−10であり、R
6は、所望により置換されていてもよいアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、または所望により置換されていてもよいヘテロアリーレンである。また、L
4は、−(O)−(C
2−C
3−アルキレンオキサイド)
n−であり、式中、該C
2−C
3−アルキレンオキサイドは、エチレンオキサイドまたは1,2−プロピレンオキサイドであり、そしてnは、1から10までの整数である。
【0063】
第2のタイプのモノマーは、L
4が、
【化17】
の構造を有する式(D)の化合物であってもよく、式中、R
7は、所望により置換されていてもよい アルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロアルキレン、所望により置換されていてもよいシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいヘテロシクロアルキレン、所望により置換されていてもよいアリーレン、または所望により置換されていてもよいヘテロアリーレンである。例えば、R
7は、エチレンオキサイドおよび1,2−プロピレンオキサイドのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド鎖等、異なる化学構造を有するアルキレンオキサイドユニットのコポリマーよりなるアルキレンオキサイド鎖を含む、アルキレン鎖またはアルキレンオキサイド鎖を含有していてもよい。
【0064】
第2のタイプのモノマーの具体例は、以下の化合物を含む;
【化18】
式中、nは、1−100の整数である。C
2−C
3アルキレンオキサイドは、例えば、エチレンオキサイドまたは1,2−プロピレンオキサイドであってもよい。
【0065】
第3のタイプのモノマーは、チオール基と反応性のある官能基、例えば、イソシアネート基、シアネートエステル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、エポキシ基、またはそれらの組合せ等を少なくとも1つ、少なくとも2つ、または2つよりも多く有してなる。例えば、第3のタイプのモノマーは、式(E)の化合物であってもよい;
【化19】
式中、L
5は、アルキレン、アリーレン、アリーレン-アルキレン-アリーレン、またはアルキレン-アリーレン-アルキレンであり、それらのいずれも所望により
【化20】
等で置換されていてもよく;
R
eおよびR
fは、イソシアネート基、シアネートエステル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、またはエポキシ基である。第3のタイプのモノマーの具体例は、次の化合物を含む;
【化21】
【0066】
第3のタイプのモノマーを組み込むと、架橋ポリマー構造を製造する能力を付与し得る。例えば、第3のタイプのモノマーは、第1のポリマー鎖のチオール基、ビニル基、および/またはアルキニル基と反応する(例えば、結合を形成する)第1の官能基および第2のポリマー鎖のチオール基、ビニル基、および/またはアルキニル基と反応する(例えば、結合を形成する)第2の官能基を含んでいてもよく、それにより第1ポリマーと第2ポリマーとの間に架橋が形成される。典型的には、第3のタイプのモノマーの上のイソシアネート基、シアネートエステル基、チオシアネート基、イソチオシアネート基、またはエポキシは、第1のタイプのモノマー上のまたはポリマー上のチオール基から求核攻撃を受け得る。
【0067】
第3のモノマーは、また、別のモノマーまたはポリマーの官能基と付加環化反応を受け、環状構造を形成し得る。場合によっては、付加環化反応は、多数の第3のモノマー間で起こり環状構造を形成し得る。このような環状構造は、ポリマーの安定性および/または機械的結着性を高め、そして、別の面では、物品または電気化学セル性能を向上させ得るものである。例えば、
図6Aに示されているように、第3のモノマーは、2つのイソシアネート基を含んでいてもよく、その1つは、2つの他の第3のモノマーのイソシアネート基と付加環化反応を受け、置換された6員環ヘテロサイクリック環を形成し得る。場合によっては、ポリマー上に存在する少なくとも1つのイソシアネート基が、他のモノマーまたはポリマーのイソシアネート基と付加環化反応を経て反応し、置換された6員環ヘテロサイクリック環を形成し得る。別の具体例においては、第3のモノマーが、2つのシアネートエステル基を含んでいてもよく、その1つが2つの他の第3モノマーのシネートエステル基と付加環化反応を受け、置換されたトリアジン環を形成し得る(
図6B)。場合によっては、ポリマー上に存在する少なくとも1つのシアネートエステル基が、他のモノマーまたはポリマーのシアネートエステル基と付加環化反応を経て反応し、置換されたトリアジン環を形成し得る。このような環状構造は、(例えば2つのポリマー間の)架橋基としての役割を果たし得る。
【0068】
ポリマーは当該技術分野において公知の方法を使用して形成し得る。重合は、溶媒の存在下で行われてもよく、また、場合によっては、溶媒の不存在下で行われてもよい。ポリマーは、所望により光開始剤の存在下に、UV光に暴露して形成し得る。例えば、本明細書に記載されているモノマーの混合物を、光開始剤の存在下に溶媒と混ぜ合わせて、プレポリマー溶液を形成してもよい。
重合は、例えば、該プレポリマー溶液に対してまず表面を暴露することにより、表面上で行われてもよい。次に、プレポリマー溶液を電磁放射線(例えば、UV照射)に晒し、重合を開始してもよい。場合によっては、プレポリマー溶液を表面に塗布し、表面上にモノマーの混合物を含有するフィルムまたは層を形成し、次に、電磁放射線に晒し重合を開始してもよい。第1のタイプのモノマー、第2のタイプのモノマー、および/または第3のタイプのモノマーを同時に重合してもよい。所望であれば、第1のタイプのモノマー、第2のタイプのモノマー、および/または第3のタイプのモノマーを順次重合してもよい。
【0069】
重合は、好適な時間行い、所望のポリマーを製造し得る。場合によっては、反応は、該反応が実質的に完了するのに要求される時間実施し、場合によっては、時間は、該反応が実質的に完了するに必要な最小の時間を維持してもよい。重合の終了は、当該技術分野で公知の方法を使用して行ってもよい。例えば、単官能性モノマーを停止剤として、および/またはポリマーの鎖成長を減じるために添加することができる。場合によっては、重合は、単純に、電磁放射線に対する暴露を停止することにより停止してもよい。
【0070】
場合によっては、重合を電気活性材料(例えば、リチウム等の金属あるいはリチウム合金等の金属合金)の表面上で実施してもよい。電気活性材料の表面上にポリマーを形成すると、多くの点において有利になり得る。例えば、ポリマーはリチウムカチオンを通すことができ得るが、存在し得る他の望ましくないカチオン/アニオン(例えば、イオウカソードを含む種々の態様において存在し得るポリスルフィドアニオン)は通さない。結果として、電気活性材料は、有害な反応から保護され、および/または電気化学セルのサイクル寿命が延び得る。また、重合は、保護層(例えば、セラミックガラス)の表面で実施されてもよい。
【0071】
任意の好適な溶媒を、重合反応に利用し(例えば、プレポリマー溶液を形成し)得る。低沸点を有するか、および/または、モノマーおよび/または反応構成要素と実質的に反応性がない溶媒を選択し得る。該溶媒は、非水性、水性、またはそれらの混合物であってもよい。非水溶媒の具体例は、例えば、N-メチルアセトアミド(例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)等)、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル(例えば、ブタノン)、カーボネート、スルホン、亜硫酸塩、スルホラン、脂肪族エーテル、非環式エーテル、環式エーテル、グリム、ポリエーテル、ホスフェートエステル、シロキサン、ジオキソラン 、N-アルキルピロリドン(例えば、N-メチルピロリドン(NMP)等)、上記の置換形態、およびそれらのブレンド等の非水有機溶媒が挙げられるが、それらのものに限定されるものではない。使用し得る非環式エーテルの具体例は、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン(DME)、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2-ジメトキシプロパン、および1,3-ジメトキシプロパンが挙げられるが、それらのものに限定されるものではない。使用し得る環式エーテルの具体例は、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン(DOL)、およびトリオキサンが挙げられるが、それらのものに限定されるものではない。使用し得るポリエーテルの具体例は、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、高級(higher)グリム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、およびブチレングリコールエーテルが挙げられるが、それらのものに限定されるものではない。使用し得るスルホンの具体例は、スルホラン、3-メチルスルホラン、および3-スルホレンが挙げられるが、それらのものに限定されるものではない。前記のフッ素化誘導体は、液体電解質溶媒としても有用である。本明細書に記載されている上記溶媒の混合物もまた使用できる。
【0072】
本明細書に開示されるポリマーの重合において利用される代表的な溶媒としては、ブタノン(メチルエチルケトンまたはMEKとも呼ばれる)およびジオキソランが挙げられる。
【0073】
任意の適切な光開始剤を使用して、ポリマーの重合を助けることができる。場合によっては、光開始剤はラジカル光開始剤である。ラジカル光開始剤の具体例としては、限定するものではないが、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(例えば、Irgacure(登録商標)819)が含まれる。
【0074】
重合は、不活性雰囲気、例えば、真空または不活性ガス(例えば、窒素、アルゴン)の雰囲気下で行ってもよい。様態により、反応は大気圧下で行われる。
【0075】
反応は、任意の適切な温度で行ってよい。態様によっては、反応は約20〜70℃の温度で行われる。場合(すべてではないが)によっては、ほぼ室温の温度で実施される反応が好ましいものとなり得る。
【0076】
(例えば、表面上での)ポリマーの形成に続いて、該ポリマーを乾燥してもよい。例えば、ポリマーを、加熱し、および/または真空下に置き、それにより、残留溶媒を除去してもよく、あるいは適切な時間(例えば、一晩)、そのままにしておき、溶媒を蒸発させてもよい。場合によっては、ポリマーを50℃と200℃の間、または50℃と140℃の間、または50℃と100℃の間の温度に加熱する。他の温度範囲もまた可能である。
【0077】
プレポリマー溶液および/または結果として得られるポリマーに他の成分を含めることもできることを認識すべきである。例えば、本明細書に記載されるような、1つ以上のアルカリ金属塩(例えば、リチウム塩)が、場合によっては存在してもよい。ポリマー(例えば、保護ポリマー層またはポリマーゲル層)および/または電解質は、イオン伝導度を高めるために、当該技術分野で知られているように、1以上のイオン電解質塩を含んでもよい。塩は、リチウムまたはナトリウムの塩から選択することができる。 特に、アノードまたはカソードがリチウムを含む場合、その塩はリチウム塩であってもよい。
【0078】
好適なリチウム塩は、例えば、LiNO
3、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、Li
2SiF
6、LiSbF
6、LiAlCl
4、リチウムビス - オキサラトボレート(LiBOB)、LiCF
3SO
3、LiN(SO
2F)
2、LiC(C
jF
2j+1SO
2)
3(式中、jは1から20までの範囲の整数である。)および一般式(C
jF
2j+1SO
2)
kXLiの塩(式中、jは1から20までの範囲の整数であり、Xが酸素またはイオウから選択されるとき、kは1であり、Xが窒素またはリンから選択されるとき、kは2であり、そして、Xが炭素またはケイ素から選択されるとき、kは3である))から選択してもよい。好適な塩は、LiC(CF
3SO
2)
3、LiN(CF
3SO
2)
2、LiN(SO
2F)
2、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4および LiCF
3SO
3から選択される。溶媒中の塩の濃度は、約0.5〜約2.0M、約0.7〜約1.5M、または約0.8〜約1.2M(Mはモル濃度、または1リットルあたりのモル数を表す)の範囲内であり得る。 他の好適なリチウム塩が本明細書に記載されている。
【0079】
本明細書に記載されている電気化学セルに使用するポリマー層は、本明細書に記載されているポリマーの混合物を含んでもよく、および/または他のポリマー材料と組合せてもよい。例えば、ポリマー層は、本明細書に記載されているチオール-エンポリマーとポリエーテルホモポリマーまたはポリエーテルコポリマーとのブレンドを含んでもよい。ポリエーテルホモポリマーまたはポリエーテルコポリマーの具体例は、限定するものではないが、PEO、PPOおよびpTHFまたはそれらのコポリマー(例えば、Alkox EP(登録商標)-シリーズ)が挙げられる。例えば、更なるポリマー(例えば、ポリエーテルホモポリマーまたはポリエーテルコポリマー)に対するチオール-エンポリマー(例えば、セクションAからの)の比は、約5:95と約95:5の間、例えば、75:25と25:75の間であってもよい。
【0080】
B.電気化学セル
好適なポリマー組成物のタイプを一般的に記載してきたが、以下に、セクションAに記載されているポリマーの電気化学セルへの取り込みを記述する。本明細書に記載されている多くの態様は、リチウムベースの電気化学セルを記述しているが、任意の類似のアルカリ金属電気化学セル(アルカリ金属アノードを含む)を使用することができるということが理解されるべきである。
【0081】
本明細書に記載されているように、保護層および/または保護構造(例えば、多層構造)として、電極(Li-アノード等のアノード、または、イオウカソード等のカソード)等の物品に、または電気化学セルに使用され得る。保護層および/または保護構造は、例えば、電気活性材料および電解質(あるいは電解質中の種)等の電気化学セル内の構成成分間を物理的に分離するように、または、それらの間の接触を少なくとも低減するように配列される。例えば、リチウム-イオウ電気化学セルにとっては、本明細書に開示のポリマーを含む保護層は、ポリスルフィド種(例えば、ポリスルフィドアニオン)間の接触が、セル内部のリチウム表面(例えば、アノード)と接触することを有利に低減し、あるいは防止し得る。保護層および/または保護構造は、電解質(または、電解質中の種)に対して実質的に不透過性であってもよい。ある特定の場合においては、保護層および/または保護構造は、電解質の存在下に実質的に膨潤していなくてもよい。保護層および/または保護構造は、電気活性材料と直接、物理的に接触して配列されていてもよいし、または1以上の介在層を介して電気活性材料から物理的に分離されていてもよい。
【0082】
保護層および/または保護構造は、場合によっては、実質的に非多孔質であってもよい。しかしながら、ある特定の態様においては、多孔質保護層または構造を所望してもよいということが理解されるべきである。例えば、保護層および/または保護構造は、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2ミクロン以下、1ミクロン以下、0.5ミクロン以下、0.1ミクロン以下、50nm以下、20nm以下、10nm以下、または5nm以下の平均細孔径を有し得る。
【0083】
本明細書に記載されているポリマーを含有する1以上の層を、電気活性材料の活性表面と電解質との間に位置付けてもよい。例えば、ポリマー層は、アノードの保護層として役に立ち得る。別の具体例においては、ポリマー層は、カソードの保護層として(例えば、カソード表面がスムーズでない場合に)役に立ち得る。
【0084】
リチウムアノードおよび他のアルカリ金属アノードの保護のための種々の技術および構成要素が知られているが、これらの保護層は、特に充電可能なバッテリーにおいて特別な難題を引き起こす。リチウムバッテリーは、各ディスチャージ/チャージサイクルにおいて、リチウムアノードからリチウムの除去および再めっきにより機能するので、リチウムイオンは、いかなる保護層をも通過することができなければならない。材料が、アノードで除去されたり、再めっきされたりするので、保護層は形態学的変化に耐えることができなければならない。電気活性層を保護することにおける保護層の有効性は、保護層がどれだけ良好に電気活性層と一体化されているか、該層における何らかの欠陥の存在、および/または該層の平滑性に、少なくとも1部分依存し得る。リチウムイオンの十分な通過を可能とする保護層は、実質的な量のLi表面を電流伝導に有利に関与させることができ、カソードから移動するある特定の種(例えば、液体電解質および/またはイオウベースのカソードから生成したポリスルフィド)に対して、金属性Liアノードを保護し、そして、高電流密度誘起表面損傷を妨げる。しかしながら、どの単一の薄いフィルム材料でも、電気活性リチウム層の表面に堆積されたとき、そこを通じてLiイオンの十分な通過を可能とするすべての必要な特性を有しているわけではない。
【0085】
場合によっては、本明細書に記載されている課題解決には、リチウムよりなるアノードを含む物品、または何らかの他の適切な電気活性材料、および、電気活性層とセルの電解質との間に位置付けられている本明細書に開示のポリマーよりなる保護層の使用を要する。保護層は、ポリマー(例えば、チオール-エンポリマー)の単一層であってもよい。
【0086】
本発明に記載されている物品は、本明細書に記載され、電気化学セルの電気活性層と電解質との間に位置付けられているようなポリマーよりなる多層構造を(例えば、保護層または保護構造として)含んでいてもよい。多層構造は、例えば、少なくとも第1のイオン伝導性材料層(例えば、セラミック層、ガラス質層、ガラス質-セラミック層、または第2のポリマー層)および本明細書に開示されそしてイオン伝導性材料に隣接して位置づけられている少なくとも1以上のポリマーから形成された第1のポリマー層を含んでいてもよい。この態様においては、多層構造は、交互イオン伝導性材料層およびポリマー層のセットをいくつか所望により含むことができ、および/または異なるポリマーの層を含むことができる。多層構造は、アノード(例えば、電解質中の種)に悪影響を及ぼし得る特定の化学種の通過を制限しながら、リチウムイオンの十分な通過を可能にすることができる。ポリマーは、フレキシビリティーが最も必要とされるシステムに対して,すなわち、チャージ及びディスチャージにより形態変化が起こる電極の表面で、フレキシビリティーを付与するように選択することができるので、この配列は重大な利点を提供することができる。
【0087】
イオン性化合物(すなわち、塩)を、開示されているポリマーおよびポリマー層中に含んでもよい。例えば、リチウム塩は、比較的多量にポリマー層中に有利に含まれ得る。リチウム塩および/または他の塩を含むと、ポリマーのイオン伝導性が増加し得る。ポリマーのイオン伝導性における増加は、電気化学セル内の関連するアノードとカソードとの間のイオン拡散を高めることができる。それ故、塩を含むと、電気化学セルから利用可能な比出力の増加を可能にし、および/またはそこを通過するイオン種の拡散速度の増加により、電気化学セルの有効寿命を延ばし得る。
【0088】
ここで、図面に戻ると、
図2Aは、電気化学セルに使用できる物品の特定の具体例を示している。物品10は、電気活性材料(例えば、リチウム金属)よりなる電気活性層20を含んでいる電極15(例えば、アノードまたはカソード)を含んでいる。電気活性層は、保護構造30でカバーされていてもよく、該構造は、例えば、電気活性層20の表面20’上に配置されているイオン伝導性層30a(例えば、セラミック層、ガラス質層、ガラス質-セラミック層、あるいは第2のポリマー層)および本明細書に開示された1以上のポリマーから形成されたポリマー層30bを含むことができる。保護構造は、効果的なバリアーとしての働きをし、本明細書に記載されている電解質中のある特定の種との反応から電気活性材料を保護し得る。所望により、物品10は電解質40を含んでおり、それは、該保護構造に隣接して、例えば、電気活性層と向かい側上に、置かれてもよい。電解質はイオンを貯蔵したり輸送したりするための媒体として機能することができる。電解質40は、本発明に開示の組成物から形成されるゲルポリマー電解質よりなっていてもよい。
【0089】
別の層「でカバーされている」、「上に」、または「に隣接している」として言及されている層は、それが、直接、その層、でカバーされている、上に、または、に隣接している、ことでもよく、また、介在層が存在してもよい、ということを意味している。例えば、アノードまたはカソードに隣接しているとして本明細書に記載されているポリマー層は、該アノードまたはカソードに直接的に隣接していてもよく(例えば、物理的に直接接触していてもよく)、また、介在層(例えば、別の保護層)が該アノードとカソードとの間に置かれていてもよい。別の層に「直接(的)に隣接している」、「直接(的)上に」、または「に接触している」層は、介在層が存在していないことを意味している。ある層が、別の層、「でカバーされている」、「上に」、または「に隣接している」として言及されているときは、それは、外層の全体あるいは一部、でカバーされている、上に、あるいは、に隣接している、ということも理解されるべきである。
【0090】
図2Aは、代表的な図であり、図に示されているすべての構成要素が存在している必要はなく、該図に示されていないさらなる構成要素が存在してもよい、ということを正しく理解すべきである。例えば、保護構造30は、3、4、5またはそれ以上の数の層を含んでいる多層構造であってもよい。
図2Aは、電気活性層の表面上に直接配置されているイオン伝導性層30aを示しているが、ポリマー層30bが、電気活性層の表面上に直接配置されていてもよい。別の具体例においては、電解質40は、物品中に存在しなくてもよい。別の配置でも可能である。
【0091】
別の具体例においては、イオン伝導性層30aが存在せず、ポリマー層30bが電気活性層に直接的に隣接して置かれてもよい。
図2Bに描かれているように、物品11(例えば、電極)は、単一のポリマー層30bから形成されている保護構造30でカバーされている電気活性層20を含んでいてもよい。ポリマー層30bは、本明細書に開示されているポリマーから構成されていてもよく、電気活性層の活性表面20’上に配置されていてもよい。
図2Cに説明的に示されているように、物品は、開示されているポリマーの1以上の層および/またはイオン伝導性材料の1以上の層を含有する保護構造を含んでいてもよい。保護構造は、アノードの活性表面とカソードの活性表面の間に、例えば、電気活性材料の活性表面とセルの対応する電解質の間に、置かれてもよい。1以上のポリマー層および/または1以上のイオン伝導性材料は、本明細書に記載されている多層構造を形成してもよい。
【0092】
多層構造を採用する1つの利点は、上記構造の有益な機械的特性である。イオン伝導性層に隣接するポリマー層のポジショニングは、イオン伝導性層にひびが入る傾向を減少させることができ、そして、上記構造のバリアー特性を増加させることができる。それ故、これらの積層物または複合構造は、ポリマー層を介在させていない構造より、製造プロセスの間のハンドリングによる応力に対してより強靭となり得る。さらに、多層構造は、セルの充放電サイクルの間にアノードから行ったり来たりするリチウムの移動に伴う容量変化の耐性を増加させることもできる。
【0093】
図2Cにおいて、物品12は、電気活性材料(例えば、リチウム金属)よりなる電気活性層20よりなる電極17(例えば、アノードあるいはカソード)を含む。保護構造30は、電気活性層20上に配置され、該層をカバーしており、少なくとも、本明細書に開示されているポリマーから形成された第1のポリマー層30bを含む多層構造である。第1のポリマー層は、電気活性層に隣接して置かれており、そして第1のイオン伝導性層30aは第1のポリマー層に隣接して置かれている。多層構造は、所望により、イオン伝導性材料層30aとポリマー層30bとを交互にしたいくつかのセットを含むことができる。多層構造は、アノードに悪影響を与え得るある特定の化学種(例えば、電解質中における種)の通過を制限しつつ、例えば、リチウムイオンの通過を可能とすることができる。この配列は、最も必要とされるシステム、すなわち、充放電によって形態学的変化が生じる電極の表面にフレキシビリティーを付与するようにポリマーを選択することができるので、大きな利点を提供することができる。
図2Cは、電気活性層に隣接して直接配置された第1のポリマー層30bを示しているが、イオン伝導層30aは、電気活性層に直接隣接していてもよい。他の構成も可能である。
【0094】
図3に示されているように、
図2Cのアノードよりなる(または、他の態様においては、
図2Aの物品15または
図2Bの物品11よりなる)物品10は、他の構成要素と合わせ電気化学セル13を形成してもよい。電気化学セルは、電解質に隣接あるいは内に位置付けられているセパレータ50を含んでいる。場合によっては、セパレータ50は、本明細書に開示されている1以上のポリマーから形成されていてもよい。電気化学セルは、さらにカソード活性材料よりなるカソード60を含んでいてもよい。上記したように、保護構造30は、電気活性層20と電解質40との間、および/または電気活性層20とカソード60との間に組み込まれてもよい。
図3中、保護構造30は、複数のイオン伝導性層30aおよびポリマー層30bよりなる。イオン伝導性層30aとポリマー層30bとは交互に配置されているが、他の配置も可能である。ポリマー層30bは、本明細書に開示されている(例えば、セクションAに記述されているような)ポリマーから形成されていてもよい。4つの別個の層が描かれているが、任意の適切な数の所望の層を用いることができることを理解されたい。
【0095】
本明細書に記載される多層構造は、例えば、電解質、カソード、または電気化学セルの特定の用途に依存し得る様々な全体的厚さを有していてもよい。場合によっては、多層構造は、1mm以下、700ミクロン以下、300ミクロン以下、250ミクロン以下、200ミクロン以下、150ミクロン以下、100ミクロン以下、75ミクロン以下、50ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、または5ミクロン以下、または2ミクロン以下を有しうる。多層構造は、100nmより大きい、250nmより大きい、500nmより大きい、1ミクロンより大きい、2ミクロンより大きい、5ミクロンより大きい、10ミクロンより大きい、または20ミクロンより大きい厚さを有してもよい。 他の厚さも可能である。上記範囲の組み合わせも可能である。
【0096】
ポリマーが保護層として使用される場合、厚さは、例えば、約1ミクロン以下であってもよい。例えば、厚さは、約10nmと約200nmの間(例えば、約20nmと約100nmの間、または約50nmと約100nmの間)、または1ミクロンより大きく、例えば、約1ミクロンと約50ミクロンの間(例えば、約1ミクロンと約25ミクロンの間、または約25ミクロンと約50ミクロンとの間)であってもよい。
【0097】
一般に、ポリマー層は、任意の好適な厚さを有することができる。
厚さは、約0.01ミクロン〜約20ミクロンの範囲にわたって変化し得る。例えば、ポリマー層の厚さは、0.05〜0.15ミクロンの厚さ、0.1〜1ミクロンの厚さ、1〜5ミクロンの厚さ、または5〜10ミクロンの厚さであり得る。ポリマー層の厚さは、例えば、10ミクロン以下、5ミクロン以下、2.5ミクロン以下、1ミクロン以下、500nm以下、250nm以下、100nm以下、50nm以下、25nm以下、または10nm以下であり得る。ポリマー層はまた、10nmを超える、25nmを超える、50nmを超える、100nmを超える、250nmを超える、500nmを超える、1ミクロンを超える、または1.5ミクロンを超える厚さを有することができる。例えば、ポリマー層は1ミクロンの厚さを有することができる。他の厚さも可能である。上述の範囲の組み合わせ(例えば、10nmより大きく1ミクロン以下の厚さ)も可能である。
【0098】
電気化学セルは、一般に、電気活性層よりなる。電気活性層は、アノードの一部を形成していてもよい。好適な電気活性材料は、限定されるものではないが、導電性基材上に堆積されたリチウム箔およびリチウム等のリチウム金属、およびリチウム合金(例えば、リチウム-アルミニウム合金およびリチウム-スズ合金)を含む。リチウムは、1つのフィルムとして、または所望により保護層によって分離されていてもよいいくつかのフィルムとして含有させることができる。アノードは、1つ以上のバインダー材料(例えば、ポリマーなど)を含有してもよい。典型的は、電気活性層(例えば、電極の一部として)は、リチウム金属またはリチウム金属合金よりなる。
【0099】
本明細書に記載されている電気化学セルのカソードにおけるカソード活物質として使用するのに適した電気活性材料は、それらのものに限定されるものではないが、電気活性遷移金属カルコゲニド、電気活性伝導性ポリマー、イオウ、炭素および/またはそれらの組み合わせを含むことができる。本明細書で使用されている「カルコゲナイド」という用語は、酸素、イオウおよびセレンの元素の1つ以上を含む化合物に関する。好適な遷移金属カルコゲニドの例としては、それらのものに限定されるものではないが、Mn、V、Cr、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Y、Zr、Nb、Mo、Ru、Rh、Pd、Ag、Hf、Ta、W、Re、Os、 Irからなるグループから選択される遷移金属の電気活性なオキサイド、スルフィドおよびセレニドなどが挙げられる。1つの態様においては、遷移金属カルコゲナイドは、ニッケル、マンガン、コバルトおよびバナジウムの電気活性酸化物、および鉄の電気活性硫化物からなるグループから選択される。1つの態様においては、カソードは、次の材料を1以上含んでいる:二酸化マンガン、ヨウ素、クロム酸銀、酸化銀と五酸化バナジウム、酸化銅、オキシリン酸銅、硫化鉛、硫化銅、硫化鉄、ビスマス酸鉛、三酸化ビスマス、二酸化コバルト、塩化銅、二酸化マンガン、および炭素。別の実施形態においては、カソード活性層は、電気活性伝導性ポリマーよりなる。好適な電気活性伝導性ポリマーの例としては、それらのものに限定されるわけではないが、ポリピロール、ポリアニリン、ポリフェニレン、ポリチオフェン、およびポリアセチレンからなるグループから選択される電気活性電気伝導性ポリマーを含む。伝導性ポリマーの例には、ポリピロール、ポリアニリン、およびポリアセチレンが含まれる。
【0100】
態様によっては、本明細書に記載されている電気化学セルにおいてカソード活性材料として使用するための電気活性材料は、電気活性イオウ含有材料を含む。本明細書で使用されている「電気活性イオウ含有材料」は、任意の形態の元素イオウよりなるカソード活性材料に関し、電気化学的活性は、イオウ原子または部分の酸化または還元を含む。本発明の実施に有用な電気活性イオウ含有物質の性質は、当該技術分野で知られているように、広く変化し得る。例えば、1つの態様において、電気活性イオウ含有材料は元素イオウよりなる。別の実施形態において、電気活性イオウ含有材料は、元素イオウとイオウ含有ポリマーとの混合物よりなる。したがって、好適な電気活性イオウ含有材料は、これらに限定されるものではないが、イオウ原子およびイオウ原子および炭素原子よりなる有機材料(ポリマーであってもなくてもよい)が含まれ得る。好適な有機材料には、さらに、ヘテロ原子、伝導性ポリマーセグメント、複合材料、および伝導性ポリマーよりなるものが含まれる。
【0101】
例示的な実施形態として、本明細書に記載されている物品または電気化学セルは、Li−アノードおよびイオウ−カソードを含いんでいてもよい。
【0102】
イオン伝導性層は、例えば、セラミック層、ガラス層、ガラスーセラミック層、または第2のポリマー層を含いんでいてもよい。好適なイオン伝導性材料には、例えば、シリカ、アルミナ、またはリチウムフォスフェート、リチウムアルミネート、リチウムシリケート、リチウムリンオキシニトリド、リチウムタンタルオキサイド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムチタンオキサイド、リチウムシルコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムボロスルフィド、およびリチウムホスホスルフィド、および上記の2つ以上の組み合わせ等のリチウム含有ガラス材料が挙げられる。本明細書に記載されている態様に使用される好適なリチウム合金としては、リチウムと、アルミニウム、マグネシウム、ケイ素、インジウム、および/またはスズの合金を挙げることができる。これらの材料は、態様によっては好ましい一方で、他のセル化学も考え得る。
【0103】
図2に示されているように、1セットの態様において、電気化学セルに使用する物品は、イオン‐伝導性相を含んでいてもよい。態様によっては、該イオン伝導性相は、セラミック層、ガラス質層、またはガラス質−セラミック層、例えば、リチウムイオンに対して伝導性のあるイオン伝導性セラミック/ガラスである。他の態様においては、イオン伝導性層は、金属イオン(例えば、リチウムイオン)に対して伝導性のある第2のポリマー層である。
【0104】
態様によっては、好適な第2のポリマーは、金属イオン(例えば、リチウムイオン)に対して高い伝導性を有し、電子に対しては最小の伝導性であるポリマーを含む。このような第2のポリマーの例としては、イオン伝導性ポリマー、スルホン化ポリマー、および炭化水素ポリマーを含む。ポリマーの選択は、セルに使用される電解質およびカソードの特性を含む多くの要因に依存するであろう。好適なイオン伝導性ポリマーは、例えば、リチウム電気化学セル用の固体高分子電解質やゲルポリマー電解質に有用であることが知られているイオン伝導性ポリマー、例えば、ポリエチレンオキシドなどを含み得る。好適なスルホン化ポリマーは、例えば、スルホン化シロキサンポリマー、スルホン化ポリスチレン-エチレン−ブチレンポリマー、およびスルホン化ポリスチレンポリマーを含み得る。好適な炭化水素ポリマーとしては、例えば、エチレン−プロピレンポリマー、ポリスチレンポリマーなどを含み得る。
【0105】
第2のポリマーとしては、例えば、アルキルアクリレート、グリコールアクリレート、ポリグリコールアクリレート、ポリグリコールビニルエーテル、およびポリグリコールジビニルエーテル、およびポリジビニルポリ(エチレングリコール)等のモノマーの重合から形成された架橋ポリマー材料を含むことができる。架橋ポリマー材料は、塩、例えば、リチウム塩をさらに含有し、イオン伝導性を高めてもよい。
【0106】
好適なガラスおよび/またはセラミックは、それらのものに限定されるわけではないが、当該分野で知られているような「改質剤」部分および「ネットワーク」部分を含有することとして特徴付けられているものを含む。改質剤は、ガラスまたはセラミック中で金属イオン伝導性の金属酸化物を含み得る。ネットワーク部分は、金属カルコゲナイド、例えば、金属酸化物または金属硫化物を含み得る。リチウム金属および他のリチウム−含有電極に対しては、イオン伝導性層は、それを越えてリチウムイオンの通過を可能とするために、リチウム化されてもよくまたはリチウムを含有してもよい。イオン伝導性層は、リチウムナイトライド、リチウムシリケート、リチウムボレート、リチウムアルミネート、リチウムホスフェート、リチウムホスホラスオキシニトリド、リチウムシリコスルフィド、リチウムゲルマノスルフィド、リチウムオキシド(例えば、Li
2O、LiO、LiO
2、LiRO
2(Rは、希土類金属である。))、リチウムランタンオキサイド、リチウムチタンオキサイド、リチウムボロスルフィド、リチウムアルミノスルフィド、リチウムホスホスルフィドおよびそれらの組合せ等の材料を含有する層を含み得る。イオン伝導性の材料の選択は、限定されるものではないが、セルに使用される電解質やカソードの特性を含む多数の要因に依存するであろう。
【0107】
1セットの態様においては、イオン伝導性層は、非電気活性金属層である。非電気活性金属層は、リチウムアノードを採用する場合においては、金属アロイ層、例えば、リチウム化金属層を含有していてもよい。金属アロイ層のリチウム含有量は、例えば、金属の特定の選択、所望のリチウムイオン伝導性、および金属アロイ層の所望のフレキシビリティーに応じて、約0.5重量%から約20重量%まで変化させ得る。イオン伝導性材料においいて使用する好適な金属は、それらに限定されるものではないが、Al、Zn、Mg、Ag、Pb、Cd、Bi、Ga、In、Ge、Sb、As、およびSnを含む。時には、上記したような金属の組合せをイオン伝導性材料において使用してもよい。
【0108】
態様によっては、イオン伝導性材料は非ポリマー性である。ある態様においては、イオン伝導性材料は、リチウム(または他のイオン)に対して高い伝導性であり、そして電子に対しては最小の伝導性である層により部分的にまたは全体的に定義される。言い換えれば、イオン伝導性材料は、リチウムイオンのようなある特定のイオンが該層を越えて通過することを可能とするか、電子が外層を越えて通過することを阻止るように選択されたものであってよい。態様によっては、イオン伝導性材料は、単一のイオン種のみが該層を通過することを可能とする層を形成する(すなわち、該層は単一イオン伝導性層であってもよい)。他の態様においては、イオン伝導性材料は、電子に対して実質的に伝導性であってもよい。
【0109】
イオン伝導層は、プラズマ変換ベースの技術(例えば、プラズマ強化化学真空蒸着(PECVD)(plasma enhanced chemical vacuum deposition)、電子ビーム蒸着、マグネトロンスパッタリング、化学蒸着(例えば、レーザー増強化学気相蒸着)、熱蒸着、ジェット蒸着、レーザアブレーション、および他の適切な形成技術、堆積技術、および/またはそれらの任意の適切な組み合わせを使用するようないかなる好適な方法により、形成または堆積されてもよい。使用される技術は、堆積される材料のタイプ、層の厚さなどに依存し得る。あるいは、電気活性材料の層を適切な条件下で窒素などのガスに暴露して、電気活性材料層の表面で電気活性材料と反応させてイオン伝導層を形成してもよい。
【0110】
イオン導電性材料層の厚さは、約1nmから約10ミクロンの範囲にわたって変化してもよい。例えば、イオン伝導性材料層の厚さは、1−10nmの間の厚さ、10−100nmの間の厚さ、100−1000nmの間の厚さ、1−5ミクロンの間の厚さ、または5−10ミクロンの間の厚さであってもよい。態様によっては、イオン導電性材料層の厚さは、例えば、10ミクロン以下、5ミクロン以下、1000nm以下、500nm以下、250nm以下、100nm以下、50nm以下、25nm以下、または10nm以下であってもよい。ある態様においては、イオン導電性材料層は、10nm以上、25nm以上、50nm以上、100nm以上、250nm以上、500nm以上、1000nm以上、または1500nm以上の厚さを有してもよい。上記範囲の組合せも可能である(例えば、10nm以上500nm以下の厚さ)。他の厚さも可能である。場合によっては、イオン伝導性層は、多層構造におけるポリマー層と同じ厚さを有する。
【0111】
態様によっては、ポリマーの伝導性は、乾燥状態において決定される。ポリマー層の乾燥状態のイオン伝導性は、例えば、約10
−7S/cmから、約10
−3S/cmの範囲にわたって変化し得る。態様によっては、乾燥状態のイオン伝導性は、約0.1mS/cmと約1mS/cmの間、または約0.1mS/cmと約0.9mS/cmの間、または約0.15mS/cmと約0.85mS/cmの間である。ある態様においては、乾燥状態のイオン伝導性は、10
−5S/cm以上、10
−4 S/cm以上であってもよい。態様によっては、乾燥状態のイオン伝導性は、例えば、10
−3S/cm以下、10
−4S/cm以下、10
−5S/cm以下であってもよい。上記範囲の組合せも可能である(例えば、10
−5S/cm以上10
−3S/cm以下の乾燥状態のイオン伝導性)。他の乾燥状態のイオン伝導性も可能である。
【0112】
乾燥状態のイオン伝導性は、インピーダンス分光法によって測定することができる。態様によっては、伝導性は、ポリマーよりなる層(例えば、本明細書に記載されているような)を2つの電極の間に挟む「コンデンサ」タイプのセルにおいて、(例えば、乾燥状態で)測定し得る。電極は、不活性(Ni、Pt、Cuまたはカーボンよりなる)であっても、または活性(例えば、Li、Li−アロイ)であってもよい。全スペクトル電気化学インピーダンスは、例えば〜5−10mVの電圧振幅を有する周波数の範囲(例えば、0.1Hzから1MHzまで)で測定することができる。インピーダンスの虚数部は、全周波数範囲の実数部に対してプロットすることができます。導電率計算のために、実数軸を高い周波数で持つグラフの切片の値R(オーム)が、下記式で使用される:
s=1/R*T/A,
(式中、sは伝導性(S/cm)、Rは高周波切片(オーム)の値、Tはポリマー層の厚さ(cm)、Aは電極間に挟まれたポリマーフィルムの面積(cm
2)である。)。
【0113】
本明細書に記載されているポリマーは、セパレータとして電気化学セルに組み込むこともできる。例えば、電気化学セルは、電気活性層を含むアノード、本明細書に記載のポリマー(例えば、ポリマー層として)を含むセパレータ、およびカソードを含んでいてもよい。このようなセパレータは、リチウム(例えば、金属リチウム)を含む電気活性材料を含む電気化学セルにおける使用に適したものとなり得る。一般に、セパレータは、電気化学セル内のカソードとアノードとの間に置かれる。セパレータは、陽極と陰極との間のイオンの輸送を可能にしながら、短絡を防止するために、陽極と陰極を互いに分離または絶縁し得る。セパレータは多孔質であってもよく、細孔は電解質で部分的または実質的に満たされていてもよい。
【0114】
セパレータは、セルの製造中にアノードおよびカソードと交互に配置される自立膜として供給されてもよい。あるいは、セパレータ層は、電極の一方の表面に直接適用されてもよい。セパレータは、電気化学セルのアノードおよび/またはカソードに隣接させ(例えば、直接隣接させ)ることを含め、電気化学セルのアノードとカソードとの間に置いてもよい。セパレータの厚さは、例えば、約1ミクロンと約20ミクロンとの間であってもよい。
【0115】
本明細書に記載の物品は、当該技術分野で知られている基材をさらに含んでもよい。基材は、アノード活性材料を堆積させるための支持体として有用であり、セル製造中に薄いリチウムフィルムアノードを取り扱うためのさらなる安定性を付与し得る。さらに、導電性基材の場合、基材は、アノード全体で生成された電流を効率的に収集し、外部回路につながる電気的接触を取り付けるための効率的な表面を提供するのに有用な電流コレクタとして機能することもできる。アノードの分野では広範囲の基材が知られている。好適な基材は、それらのものに限定されるさけではないが、金属箔、ポリマーフィルム、金属化ポリマーフィルム、導電性ポリマーフィルム、導電性コーティングを有するポリマーフィルム、導電性金属コーティングを有する導電性ポリマーフィルム 伝導性粒子が分散された高分子フィルムからなるグループから選択されるものが挙げられる。一態様においては、基材は金属化ポリマーフィルムである。 他の態様においては、基材は、非導電性材料から選択されてもよい。
【0116】
電気化学セルまたはバッテリーセルに使用される電解質は、イオンの貯蔵および輸送のための媒体として機能することができ、固体電解質およびゲル電解質の特別な場合、これらの材料は、アノードとカソードの間のセパレータとしてさらに機能することができる。材料がアノードとカソードとの間のイオン(例えば、リチウムイオン)の輸送を容易にする限り、イオンを貯蔵し輸送することができる液体、固体またはゲル材料のどのようなものでも使用できる。電解質は、アノードとカソードとの間の短絡を防止するために電子的に非導電性である。態様によっては、電解質は、非固体電解質を含いんでいてもよい。
【0117】
例えば、
図3に示すような電解質40は、本明細書に開示されているポリマーから形成されるポリマーゲル(例えば、ポリマーゲル電解質)を含んでもよい。当業者に知られているように、溶媒をポリマーに添加し、ポリマーを溶媒中で膨潤させてゲルを形成すると、該ポリマーゲルは、溶媒を含まないポリマーよりも、より容易に変形する(従って、より低い降伏強さを有する)。特定のポリマーゲルの降伏強さは、ポリマーの化学組成、ポリマーの分子量、もしあればポリマーの架橋度、ポリマーゲル層の厚み、ポリマーを膨潤させるために使用される溶媒の化学組成、ポリマーゲル中の溶媒の量、ポリマーゲルに添加される塩等の任意の添加剤、任意のそのような添加剤の濃度、およびポリマーゲル中の任意のカソード放電生成物の存在等の様々な要因に依存し得る。
【0118】
ポリマーゲルは、溶媒中でポリマーの少なくとも一部を膨潤させてゲルを形成することによって形成してもよい。ポリマーは、液体電解質について記載されているような任意の適切な溶媒中で膨潤させてもよい。溶媒としては、例えば、ジメチルアセトアミド(DMAc)、N−メチルピロリドン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、スルホラン、スルホンおよび/または他の適切な溶媒が挙げられる。ポリマーは、ポリマーに対する親和性を有する溶媒と、ポリマーに対する親和性のない溶媒(いわゆる非溶媒)、例えば、PVOH、1,2−ジメトキシエタン(DME)、ジグリム、トリグリム、1,3−ジオキソラン(DOL)、THF、1,4−ジオキサン、環式および線状エーテル、エステル(ジメチルカーボネートおよびエチレンカーボネートなどのカーボネート)、アセタールおよびケタール等とを含む溶媒混合物中で膨潤させてもよい。
【0119】
ポリマーは、1,2−ジメトキシエタンおよび/または1,3−ジオキソラン溶媒中で膨潤し得る。ポリマーゲルを調製するための溶媒は、本明細書に記載の溶媒から選択することができ、本明細書に記載のリチウム塩から選択されるリチウム塩等、電解質塩を含んでいてもよい。
【0120】
本明細書に記載の電解質層は、少なくとも1ミクロン、少なくとも5ミクロン、少なくとも10ミクロン、少なくとも15ミクロン、少なくとも20ミクロン、少なくとも25ミクロン、少なくとも30ミクロン、少なくとも40ミクロン、少なくとも50ミクロン、少なくとも70ミクロン、少なくとも100ミクロン、少なくとも200ミクロン、少なくとも500ミクロン、または少なくとも1mmであり得る。態様によっては、電解質層の厚さは、1mm以下、500ミクロン以下、200ミクロン以下、100ミクロン以下、70ミクロン以下、50ミクロン以下、40ミクロン以下、30ミクロン以下、20ミクロン以下、10ミクロン以下、または50ミクロン以下である。他の値も可能である。上記の範囲の組み合わせも可能である。態様によっては、(例えば、ポリマーがゲルポリマー層として使用される場合)、厚さは、例えば、約1ミクロンと約10ミクロンとの間であり得る。
【0121】
2つ以上の溶媒が電解質(例えば、液体電解質またはゲルポリマー電解質)に用いられる態様では、溶媒は、任意の好適な比率で、例えば、第2の溶媒に対する第1の溶媒の比、約1:1、約1.5:1、約2:1、約1:1.5または約1:2で存在してもよい。ある態様においては、第1の溶媒および第2の溶媒の比は、100:1と1:100の間、または50:1と1:50の間、または25:1と1:25の間、または10:1と1:10の間、または5:1と1:5の間であってもよい。態様によっては、第2の溶媒に対する第1の溶媒の比は、約0.2:1以上、約0.5:1以上、約0.8:1以上、約1:1以上、約1.2:1以上、約1.5:1以上、約1.8:1以上、約2:1以上、または約5:1である。第2の溶媒に対する第1の溶媒の比は、約5:1以下、約2:1以下、約1.8:1以下、約1.5:1以下、約1.2:1以下、約1:1以下、約0.8:1以下、または約0.5:1以下であってもよい。上述の範囲の組み合わせも可能である(例えば、約0.8:1以上約1.5:1以下の比)。第1の溶媒は1,2−ジメトキシエタンであり、第2の溶媒は1,3−ジオキソランであるが、本明細書に記載の溶媒のいずれも第1の溶媒または第2の溶媒として使用できることを理解されたい。さらなる溶媒(例えば、第3の溶媒)を含んでもよい。
【0122】
有用な非水性電解質溶媒の例としては、それらのものに限定されるものではないが、非水性有機溶媒、例えば、N−メチルアセトアミド、アセトニトリル、アセタール、ケタール、エステル、カーボネート、スルホン、亜硫酸塩、スルホラン、脂肪族エーテル、非環式エーテル、環状エーテル、グリム、ポリエーテル、ホスフェートエステル、シロキサン、ジオキソラン、N−アルキルピロリドン、前記化合物の置換された形態、およびそれらのブレンド等が挙げられる。使用し得るアクリルエーテルの例としては、それらのものに限定されるものではないが、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、トリメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、1,2−ジメトキシプロパン、1,3−ジメトキシプロパンが挙げられる。使用し得る環状エーテルの例としては、それらのものに限定されるものではないが、テトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、およびトリオキサンが挙げられる。ポリエーテルの例としては、それらのものに限定されるものではないが、ジエチレングリコールジメチルエーテル(ジグリム)、トリエチレングリコールジメチルエーテル(トリグリム)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(テトラグリム)、高級グリム、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ブチレングリコールエーテルが挙げられる。スルホンの例としては、それらのものに限定されるものではないが、スルホラン、3−メチルスルホラン、3−スルホレンが挙げられる。上記のフッ素化誘導体は、液体電解質溶媒としても有用である。本明細書に記載の溶媒の混合物も使用することができる。
【0123】
電解質は、イオン伝導性を付与する1つ以上のイオン電解質塩および1つ以上の液体電解質、ゲルポリマー材料、またはポリマー材料を含むことができる。好適な非水性電解質は、液体電解質、ゲルポリマー電解質、および固体ポリマー電解質からなるグループから選択される材料1つ以上を含む有機電解質を含いんでいてもよい。
【0124】
本明細書に記載されるように、ポリマーが特定の電気化学システム用の他の材料と比較して有利な特性を有するかどうかを決定することが望ましい場合がある。したがって、単純なスクリーニング試験を用いて候補物質間の選択を助けることができる。1つの簡単なスクリーニングテストは、例えば、ゲル電解質層、セパレータ、または保護層のような電気化学セルにおける望ましい化学を有する得られたポリマー層をセル中に配置することを含む。次いで、電気化学セルは、多数回の放電/充電サイクルにかけられ、電気化学セルは、対照システムにおけるものと比較して、阻害性または他の破壊的挙動(例えば、電気活性材料表面の劣化)が起こるか否かについて観察してもよい。対照システムと比較して、セルのサイクル中に阻害性または他の破壊的挙動が観察される場合、それは、組み立てられた電気化学セル内でのポリマーの分解または他の可能性のある劣化メカニズムを示している可能性がある。同じ電気化学セルを使用して、当業者に知られている方法を用いてポリマーの電気伝導性およびイオン電導性を評価することも可能である。測定された値は、候補物質の間で選択するために比較されてもよく、対照中の基準材料との比較に使用されてもよい。
【0125】
ポリマーが好適な機械的強度を有するかどうかを決定するための別の簡単なスクリーニングテストは、これらに限定されないが、デュロメータ試験、引張試験機を用いた降伏強度試験、および他の適切な試験方法を含む任意の好適な機械試験方法を用いて行うことができる。一組の態様において、ポリマーは、電気活性材料(例えば、金属リチウム)の降伏強度以上の降伏強度を有する。例えば、ポリマーの降伏強度は、電気活性材料(例えば、金属リチウム)の降伏強度の約2倍、3倍、または4倍より大きくてもよい。態様によっては、ポリマーの降伏強度は、電気活性材料(例えば、金属リチウム)の降伏強度の10倍、8倍、6倍、5倍、4倍、または3倍以下である。上記範囲の組み合わせもまた可能である。特定の一態様においては、ポリマーの降伏強度は、約10kg/cm
2(すなわち、約980kPa)より大きい。上記の限界値より大きいかまたはそれ未満の他の降伏強度もまた可能である。ポリマーを特徴付けるための他の簡単なテストが、当業者によって実施されてもよい。
【0126】
本明細書で開示されるポリマーがポリマーゲル電解質層として使用される態様によっては、該ポリマー層は、膨潤した状態において、少なくとも10kg/cm
2、少なくとも20kg/cm
2、または少なくとも30kg/cm
2の加圧力に対して安定である。態様によっては、安定性は、電気化学セルと共に使用される電解質溶媒において決定され得る。態様によっては、電解質は1,2−ジメトキシエタンと1,3−ジオキソランとの1:1混合物中に8重量%のリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミドと4重量%のLiNO
2である。態様によっては、電解質中の全塩濃度は、約8〜約24重量%であってもよい。他の濃度も可能である。
【0127】
本明細書に記載の電気化学セルは、例えば自動車、コンピュータ、パーソナルデジタルアシスタント、携帯電話、時計、カムコーダ、デジタルカメラ、温度計、計算機、ラップトップBIOS、通信機器またはリモート 車のロックを作製または操作等の色々な応用に使用することができる。
【0128】
C.定義
便宜上、本明細書、実施例および添付の特許請求の範囲で使用されるある特定の用語をここに列挙する。
【0129】
特定の官能基および化学用語の定義については、以下でより詳細に説明する。本発明の目的のために、元素の周期律表、CAS版、Handbook of Chemistry and Physics、第75版、内表紙に従って化学元素を同定し、特定の官能基は一般にそこに記載されているように定義される。
さらに、有機化学の一般的原理、ならびに特定の官能部分および反応性は、Organic Chemistry、Thomas Sorrell、University Science Books、Sausalito:1999に記載されており、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
本明細書で使用する用語「脂肪族」は、飽和および不飽和の直鎖(すなわち、非分岐)、分岐鎖、非環式、環式または多環式脂肪族炭化水素を含み、それらは、1つ以上の官能基で所望により置換されている。当業者には理解されるように、「脂肪族」は、本明細書では、それらのものに限定されるわけではないが、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニルおよびシクロアルキニル部分を含むように意図されている。それ故、本明細書で使用されているように、「アルキル」という用語は、直鎖、分岐、および環状アルキル基を含む。類似の慣例が、「アルケニル」、「アルキニル」などのような他の一般的な用語に適用される。さらに、本明細書で使用されているように、「アルキル」、「アルケニル」、「アルキニル」などの用語は、置換基および非置換基の両方を包含する。ある態様においては、本明細書中で使用されているように、「低級アルキル」は、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基(環状、非環式、置換、非置換、分岐または非分枝)を示すために使用されている。
【0131】
ある態様においては、本明細書に記載されている化合物に使用されるアルキル基、アルケニル基およびアルキニル基は、1〜20個の脂肪族炭素原子を含む。例えば、態様によっては、アルキル基、アルケニル基、またはアルキニル基は、2個以上の炭素原子、4個以上の炭素原子、6個以上の炭素原子、8個以上の炭素原子10個以上の炭素原子、12個以上の炭素原子、14個以上の炭素原子、16個以上の炭素原子、または18個以上の炭素原子を有していてもよい。ある態様においては、アルキル、アルケニル、またはアルキニル基は、20個以下の炭素原子、18個以下の炭素原子、16個以下の炭素原子、14個以下の炭素原子、12個以下の炭素原子、10個以下の炭素原子、8個以下の炭素原子、6個以下の炭素原子、4個以下の炭素原子、または2個以下の炭素原子を有していてもよい。上記の範囲の組み合わせも可能である(例えば、2個以上の炭素原子および6個以下の炭素原子)。他の範囲も可能である。
【0132】
例示的な脂肪族基には、それらのものに限定されるものではないが、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、シクロプロピル、−CH
2−シクロプロピル、ビニル、アリル、n−ブチル、sec−ブチル、イソブチル、tert−ブチル、シクロブチル、−CH
2−シクロブチル、n−ペンチル、sec−ペンチル、イソペンチル、tert−ペンチル、シクロペンチル、−CH
2−シクロペンチル、n−ヘキシル、sec−ヘキシル、シクロヘキシル、−CH
2−シクロヘキシル部分等が挙げられ、それらは、1つ以上の置換基を有していてもよい。アルケニル基としては、それらのものに限定されるわけではないが、例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イルなどを含む。代表的なアルキニル基としては、それらのものに限定されるわけではないが、エチニル、2−プロピニル(プロパルギル)、1−プロピニルなどを含む。
【0133】
本明細書で使用されているような「アルキレン」という用語は、二価のアルキル基を言う。「アルキレン」基は、ポリメチレン基、すなわち、−(CH
2)z−(zは正の整数、例えば1〜20、1〜10、1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、または2〜3)である。置換アルキレン鎖は、1つ以上のメチレン水素原子が置換基で置換されているポリメチレン基である。好適な置換基には、置換脂肪族基について本明細書に記載されているものが含まれる。
【0134】
一般に、接尾辞「−エン(ene)」は2価の基を表すために使用される。それ故、本明細書で定義されている用語のいくつかは、その部分の二価バージョンを記述するために接尾辞「−エン」で変更することができる。例えば、二価炭素環は「カルボシクリレン」であり、二価アリール環は「アリーレン」であり、二価ベンゼン環は「フェニレン」であり、二価複素環は「ヘテロシクリレン」であり、二価ヘテロアリール環は「ヘテロアリーレン」であり、二価アルキル鎖は、「アルキレン」であり、2価のアルケニル鎖は「アルケニレン」であり、2価のアルキニル鎖は「アルキニレン」であり、2価のヘテロアルキル鎖は「ヘテロアルキレン」であり、2価のヘテロシクロアルキル環は「ヘテロシクロアルキレン」であり、2価のヘテロアルケニル鎖は「ヘテロアルケニレン」であり、二価のヘテロアルキニル鎖は「ヘテロアルキニレン」などである。
【0135】
本明細書で使用されているような「アルコキシ」または「チオアルキル」という用語は、酸素原子を介して、または硫黄原子を介して親分子に結合した、先に定義されているような、アルキル基を言う。ある態様においては、アルコキシ基またはチオアルキル基は、アルキル基、アルケニル基、アルキル基に関して、本明細書に記載されている炭素原子の範囲等の炭素原子の範囲を含んでいる。アルコキシの例には、それらのものに限定されるわけではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、tert-ブトキシ、ネオペントキシおよびn-ヘキソキシが含まれる。チオアルキルの例としては、それらのものに限定されるわけではないが、メチルチオ、エチルチオ、プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオなどが含まれる。
【0136】
本発明の化合物の上記脂肪族(および他の)部分の置換基の例としては、それらのものに限定されるものではないが、脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;F;Cl;Br;I;−OH;−NO
2;−CN;−CF
3;−CH
2CF
3;−CHCl
2;−CH
2OH;−CH
2CH
2OH;−CH
2NH
2;−CH
2SO
2CH
3;−C(O)R
x;−CO
2(R
x);−CON(R
x)
2;−OC(O)R
x;−OCO
2R
x;−OCON(R
x)
2;−N(R
x)
2;−S(O)
2R
x;−NR
x(CO)R
xが挙げられ、前出の各R
xは独立して、それらのものに限定されるわけではないが、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、またはヘテロアリールアルキルであり、前記および明細書に記載されている脂肪族置換基、ヘテロ脂肪族置換基、アリールアルキル置換基、またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれも、置換または非置換、分岐または非分岐、環状または非環状であってもよく、そして上記および本明細書に記載されているアリール置換基またはヘテロアリール置換基のいずれも、置換または非置換であってもよい。一般的に適用可能な置換基のさらなる例は、本明細書に記載されている実施例に示される特定の態様によって例示される。
【0137】
一般に、本明細書で使用されている「アリール」および「ヘテロアリール」という用語は、好ましくは3〜14個の炭素原子を有する安定な単環式または多環式、複素環式、多環式、および多複素環式不飽和部分を言い、それぞれは置換または非置換であってよい。置換基は、それらのものに限定されるわけではないが、前述の置換基のいずれか、すなわち、脂肪族部分または本明細書に開示される他の部分の置換基のいずれかを含み、安定な化合物の形成をもたらす。本明細書に記載されているある態様において、「アリール」は、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニルなどを含むがこれらに限定されない1または2個の芳香族環を有する単環式または二環式炭素環系を言う。ある態様においては、本明細書で使用されている、「ヘテロアリール」という用語は、5〜10個の環原子を有する環式芳香族基を言い、そのうちの1個の環原子は、S、OおよびNから選択され;0,1または2個の環原子は、S、O、およびNから独立して選択される追加のヘテロ原子であり;そして、残りの環原子は炭素であり、環原子のいずれかを介して分子の残りに結合しており、例えば、ピリジル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニルなどである。
【0138】
アリール基およびヘテロアリール基は、非置換であっても置換されていてもよいことが理解されたく、その置換は、1個、2個、3個またはそれ以上の水素原子を、以下の部分のいずれか1つ以上と独立してその上に置換することを含むが、それらのものに限定されるわけではない:脂肪族;ヘテロ脂肪族;アリール;ヘテロアリール;アリールアルキル;ヘテロアリールアルキル;アルコキシ;アリールオキシ;ヘテロアルコキシ;ヘテロアリールオキシ;アルキルチオ;アリールチオ;ヘテロアルキルチオ;ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I−OH;−NO
2;−CN;−CF
3;−CH
2CF
3;−CHCl
2;−CH
2OH;−CH
2CH
2OH;−CH
2NH
2;−CH
2SO
2CH
3;−C(O)R
x;−CO
2(R
x);−CON(R
x)
2;−OC(O)R
x;−OCO
2R
x;−OCON(R
x)
2;−N(R
x)
2;−S(O)
2R
x;−NR
x(CO)R
x(前記各R
xは、それらのものに限定されるわけではないが、独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含む);上記および本明細書に記載の脂肪族置換基、ヘテロ脂肪族置換基、アリールアルキル置換基またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれも、置換または非置換、分岐または非分岐、環式または非環式であってもよく;そして、上記および本明細書に記載のアリール置換基またはヘテロアリール置換基のいずれも、置換または非置換であってもよい。一般的に適用可能な置換基のさらなる例は、本明細書に記載の実施例に示される特定の態様によって例示されている。
【0139】
本明細書で使用されている用語「シクロアルキル」は、具体的には、3〜7個、好ましくは3〜10個の炭素原子を有する基を言う。適切なシクロアルキルとしては、それらに限定されるわけではないが、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルなどが挙げられ、他の脂肪族、ヘテロ脂肪族または複素環式部分の場合におけるように、それらは、それらのものに限定されないが、脂肪族; ヘテロ脂肪族; アリール; ヘテロアリール; アリールアルキル; ヘテロアリールアルキル; アルコキシ; アリールオキシ; ヘテロアルコキシ; ヘテロアリールオキシ; アルキルチオ; アリールチオ; ヘテロアルキルチオ; ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO
2;−CN;−CF
3;−CH
2CF
3;−CHCl
2;−CH
2OH;−CH
2CH
2OH;−CH
2NH
2;−CH
2SO
2CH
3;−C(O)R
x;−CO
2(R
x);−CON(R
x)
2;−OC(O)R
x;−OCO
2R
x;−OCON(R
x)
2;−N(R
x)
2;−S(O)
2R
x;−NR
x(CO)R
x(各R
xは、それらのものに限定されるわけではないが、独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含む)、を含む置換基で所望により置換されていてもよく、上記および本明細書に記載の脂肪族置換基、ヘテロ脂肪族置換基、アリールアルキル置換基またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれも、置換または非置換、分岐または非分岐、環式または非環式であってもよく、そして、上記および本明細書に記載のアリール置換基またはヘテロアリール置換基のいずれも、置換または非置換であってもよい。一般的に適用可能な置換基のさらなる例は、本明細書に記載の実施例に示される特定の態様によって例示されている。
【0140】
本明細書で使用されている「ヘテロ脂肪族」という用語は、例えば炭素原子の代わりに、1つ以上の酸素原子、硫黄原子、窒素原子、リン原子またはケイ素原子を含む脂肪族部分を言う。ヘテロ脂肪族部分は、分岐、非分岐、環式または非環式であってもよく、モルホリノ、ピロリジニル等の飽和および不飽和複素環を含む。ある態様においては、ヘテロ脂肪族部分は、その上の1つ以上の水素原子を、以下の、しかしそれらに限定されない、1つ以上の部分で独立して置換することによって置換される:脂肪族; ヘテロ脂肪族; アリール; ヘテロアリール; アリールアルキル; ヘテロアリールアルキル; アルコキシ; アリールオキシ; ヘテロアルコキシ; ヘテロアリールオキシ; アルキルチオ; アリールチオ; ヘテロアルキルチオ; ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO
2;−CN;−CF
3;−CH
2CF
3;−CHCl
2;−CH
2OH;−CH
2CH
2OH;−CH
2NH
2;−CH
2SO
2CH
3;−C(O)R
x;−CO
2(R
x);−CON(R
x)
2;−OC(O)R
x;−OCO
2R
x;−OCON(R
x)
2;−N(R
x)
2;−S(O)
2R
x;−NR
x(CO)R
x(前記各R
xは、それらのものに限定されるわけではないが、独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含む);上記および本明細書に記載の脂肪族置換基、ヘテロ脂肪族置換基、アリールアルキル置換基またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれも、置換または非置換、分岐または非分岐、環式または非環式であってもよく;そして、上記および本明細書に記載のアリール置換基またはヘテロアリール置換基のいずれも、置換または非置換であってもよい。一般的に適用可能な置換基のさらなる例は、本明細書に記載の実施例に示される特定の態様によって例示されている。
【0141】
用語「ビニル基」は、当該技術分野においてその通常の意味を与えられ、基−CH=CH
2(所望により置換されていてもよい)を意味する。
「チオール基」という用語は、当該技術分野においてその通常の意味を与えられ、−SH基を意味する。
「チオシアネート基」という用語は、当該技術分野においてその通常の意味を与えられ、-S-C≡Nを意味する。
「イソシアネート基」という用語は、当該技術分野においてその通常の意味を与えられ、基-N=C=Oを意味する。
「イソチオシアネート基」という用語は、当該技術分野においてその通常の意味を与えられ、-N=C=S基を意味する。
「エポキシ基」という用語は、当該技術分野におけるその通常の意味を与えられ、以下の基:
【化22】
を意味し、それは、所望により置換されていてもよい。
「シアネートエステル基」という用語は、当該技術分野においてその通常の意味を与えられ、その基−O−C≡Nを意味する。
本明細書で用いられる「ハロ」および「ハロゲン」という用語は、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を意味する。
「ハロアルキル」という用語は、それに結合した1個、2個または3個のハロゲン原子を有する、上記したようなアルキル基を意味し、クロロメチル、ブロモエチル、トリフルオロメチルなどの基によって例示される。
【0142】
本明細書で使用されている「ヘテロシクロアルキル」または「複素環」という用語は、非芳香族の5−、6−または7−員環または多環式基を意味し、それらに限定されるものではないが、酸素、硫黄および窒素から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する縮合6員環を含む二環式または三環式基を含み、(i)各5員環は0〜1個の二重結合を有し、各6員環は0〜2個の二重結合を有し、(ii)窒素および硫黄ヘテロ原子は、所望により酸化されていてもよく、(iii)窒素ヘテロ原子は、必要に応じて四級化されていてもよく、(iv)上記複素環のいずれかがベンゼン環に縮合していてもよい。代表的な複素環としては、それらに限定されるものではないが、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニルおよびテトラヒドロフリルが挙げられる。ある態様においては、「置換ヘテロシクロアルキルまたは複素環」基が利用され、本明細書で使用されているように、1個、2個または3個の水素原子を、独立して、以下のもの(それらのものに限定されるわけではないが)で置き換えるとによって置換された上記定義のヘテロシクロアルキルまたは複素環基を意味している:脂肪族; ヘテロ脂肪族; アリール; ヘテロアリール; アリールアルキル; ヘテロアリールアルキル; アルコキシ; アリールオキシ; ヘテロアルコキシ; ヘテロアリールオキシ; アルキルチオ; アリールチオ; ヘテロアルキルチオ; ヘテロアリールチオ;−F;−Cl;−Br;−I;−OH;−NO
2;−CN;−CF
3;−CH
2CF
3;−CHCl
2;−CH
2OH;−CH
2CH
2OH;−CH
2NH
2;−CH
2SO
2CH
3;−C(O)R
x;−CO
2(R
x);−CON(R
x)
2;−OC(O)R
x;−OCO
2R
x;−OCON(R
x)
2;−N(R
x)
2;−S(O)
2R
x;−NR
x(CO)R
x(前記各R
xは、それらのものに限定されるわけではないが、独立して、脂肪族、ヘテロ脂肪族、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルまたはヘテロアリールアルキルを含む);上記および本明細書に記載の脂肪族置換基、ヘテロ脂肪族置換基、アリールアルキル置換基またはヘテロアリールアルキル置換基のいずれも、置換または非置換、分岐または非分岐、環式または非環式であってもよく;そして、上記および本明細書に記載のアリール置換基またはヘテロアリール置換基のいずれも、置換または非置換であってもよい。一般的に適用可能な置換基のさらなる例は、本明細書に記載の実施例に示される特定の態様によって例示されている。
【0143】
用語「独立して選択される」は、R基が同一であっても異なっていてもよいことを示すために本明細書中で使用される。
【0144】
実施例
本明細書に記載されるポリマーの非限定的な実施例は、以下の実践的な実施例によって例示される。
【0145】
実施例1
以下の例は、少なくとも2つのチオール基を含む反応モノマーおよび2つのビニル基を含むモノマーを介して形成されるポリマーを記載する。種々のジチオールおよびトリチオール化合物が市販されている(例えば、Bruno Bock Chemische Fabrik GmbH&Co. KG Marschacht、ドイツから、またはSigma Aldrichから)。
図4は、この実施例で用いたチオール分子1を示す。 2つの異なる等級、ETTMP 700等級およびETTMP 1300等級(両方ともPEG鎖の分子量を指す)を用いた。
1H-NMR分光法により、ETTMP700についてn = 2-3、ETTMP1300についてn = 6-7が明らかになった。場合によっては、後者のチオールは、前者と比較して改良されたイオン伝導度を与えることが分かった。これは、Liイオン輸送をより良く支持するPEGの量の増加の結果であり得る。場合によっては、チオールの商業的供給源は、関連するエステルを含み得る。エステルの存在は、ポリスルフィド攻撃がポリマーの分解をもたらし得るので、Li / Sバッテリー用途における使用に影響を及ぼし得る。
したがって、エステルを含まないチオール(例えば、加水分解的に安定なチオール)の形態が望ましい場合があり、例えば、
図5に示すスキームに従って調製してもよい。
【0146】
ポリマーを合成するために使用されるジビニルモノマーも
図4(A-E)に示されている。これらは、主に加水分解に安定なビニルエーテル(B)、アクリルアミド(C-F)およびAのような非活性化オレフィンである。ある態様においては、光開始剤(例えば、Irgacure(登録商標)819)を添加せずに、Bと1および2との反応がそれぞれ起こった。同様の結果がヘキサメチレンジビニルエーテルおよびシクロヘキシルジビニルエーテルで観察された。1とチオール-エン付加におけるアクリルアミドC-Fの反応性は予想どおりに進行した。溶媒(例えば、MEK、ジオキソラン)溶液を調製し、ドクターブレードされたフィルムを、光開始剤としてIrgacure(登録商標)819を用いて1重量%で385nmでUV硬化した。場合によっては、+ 6℃での保存状態で、調製された溶液は1週間後にゲル化した。
【0147】
イオン伝導度を調べるために、チオール - エンフィルムをガラス上で硬化させ、インピーダンス分光法を行った。すべてのフィルムの機械的結着性を目視検査した。電解質吸収の効果を観察した。チオール - エンフィルムでコートされたNi基板の小片を蓋に取り付け、溶媒混合物で満たされたバイアルの内側に置いた。蒸気圧により、フィルムは電解質と接触し、フィルム形態の変化を観察した。
【0148】
チオール - エン付加と同様に、チオール-イン反応も知られており、チオールはアルキン三重結合とのラジカル付加反応を受け得る。本実施例では、1,3-ジエチニルベンゼンをコモノマーとして選択した。Irgacure(登録商標)819の存在下での1およびAの長期安定溶液を調製し、該溶液はUV光に露光すると迅速に重合した。比較のために、チオール - エンポリマーフィルムを10重量%PEO(分子量100,000g /モル)とブレンドし、得られたフィルムのイオン伝導性を表1にまとめた。
【0149】
フィルムの厚さは、約1〜約20ミクロン、典型的には約5〜約10ミクロンの範囲であった。しかしながら、およそ約50〜約75ミクロンの範囲のより厚い膜厚も達成された。
さらに厚い厚さ(1mmを超える)自立フィルムも達成された。約1mmを超える厚さを有するフィルムはバルク重合し得ることが分った。
【0151】
硬化フィルムの乾燥状態のイオン伝導性は、インピーダンス分光法によって測定して、一般に>10
-6S/cmであった。ETTMP 1300を使用した場合、PEOの添加は、本質的に導電性に影響を与えなかった。しかし、PEOをETTMP 700グレードに添加すると、伝導性が2桁低下した。これは、ETTMP700(n = 2〜3)が優先的にPEO相に入るLi導電性塩を吸収することができないことによると考えられる。
しかしながら、これはその結晶化度のために室温での導電率が低いこと(<< 10
-6 S/cm)が知られている。フィルムの機械的観察により、比較的柔らかいフィルムおよび粘着性のフィルムが明らかになった。PEOの添加により、粘着性および柔軟性が減少した。電解質摂取後にフィルムの品質に問題が生じた。数分以内にポリマーコーティングがしわを帯び、表面に目に見えるクラックが観察された。
【0152】
調査された別のクラスのエン成分は、ビスアクリルアミドであった。非極性誘導体(E、F)はAldrichから購入したが、極性のPEG化バージョン(C、D)を合成した。 表2-4を参照。
【0156】
表2には、硬化フィルムのイオン伝導性が示されている。表3および表4は、それぞれ、電解質吸収前後の目視検査時のフィルムの機械的性質を記載している。比較のために、チオール化合物を含まない純ビスアクリルアミドモノマーCおよびDからフィルムをキャスティングおよび硬化させた。比較的短鎖のモノマーCは、非常に低い導電率(10
−11S/cm)を示したが、Jeffamine(登録商標)誘導体Dは、より高い乾燥状態のイオン伝導性(10
−6S/cm)を構成していた。このJeffamine(登録商標)ベースのモノマーのPEG鎖は、より長いだけでなく、鎖の柔軟性を高めるのに役立ち得るプロピレンオキシド単位も含んでいる。それゆえ、Dの硬化樹脂は導体として機能することができる。電解質吸収時の即時のクラック形成が観察された。CおよびDについては、電解液蒸気との接触の最初の1分以内に、クラック形成が起こり、1時間未満でフィルム全体に広がった。
【0157】
トリチオール1とビスアクリルアミドC-Fとのチオール - エン反応で調製されたコポリマーフィルムは、同様の乾燥状態のイオン伝導性を示した。Jeffamine(登録商標)ベースのモノマーDおよびETTMPトリチオール(その分子量に関係なく)との組み合わせは良好な値に達した。 しかし、直鎖状PEOを配合することなく、改良された値が観察された。上記のように、直鎖状EOはかなりの量のLiTFSI電導度塩を保持することができ、これは結晶性で、より低い可動性の相にトラップされ、実質的に導電性に寄与しない可能性がある。電解質吸収前、ポリマーフィルム1 + Cは透明でわずかに粘着性であり、フィルム1+ Dは透明で粘着性であった。すべての場合において、10重量%のPEOの添加は、フィルムの粘着性を有意に低下させた。ポリマーフィルム1+Cでは、電解質吸収後(8時間後)にクラック形成は観察されなかった。しかし、1週間後、ニッケル箔からのディウェッティング(dewetting)が観察され、続いてフィルム全体にクラックが形成された。
【0158】
さらに、ビスアクリルアミドモノマーは、チオール化合物に対して過剰に使用してもよい。迅速なチオール−エン重合の後、過剰のビスアクリルアミドの単独重合が起こり、相互浸透ネットワーク(IPN)が構築され得る。より柔らかいチオール−エンネットワークは、フィルムの全体的な機械的性質を支持するより硬い架橋ポリアクリルアミドによって浸透されてもよい。1と3倍過剰のJeffamine(登録商標)誘導体Dとの反応は、化学量論的反応に由来するものよりも優れた膜質を示し、粘着性はもはや問題ではなかった。イオン伝導性は許容可能であった(表5)。
【0160】
要約すると、チオール−エン化学は、保護Liアノードのインサイチュ調製のための実行可能な経路であることが示されている。反応は迅速に進行し、フィルムは様々な基材上で効率よく硬化することができる。これらのフィルムは、10
−5S/cmに近いイオン伝導性を有し、許容可能な機会的特性を有していた。
【0161】
実験:
チオール−エンフィルムは、ジオキサン、ジオキソラン、またはメチルエチルケトン(MEK)のような比較的低沸点で不活性な溶媒のコモノマー組成物5〜50重量%溶液(官能性に関して1:1)を、選択基材上にキャスティングすることにより調製した。この溶液は、伝導度塩として5〜10重量%のLiTFSIをさらに含んでいた。新たにキャストされたフィルムの硬化は、UV光源としてLEDランプを使用し、ラジカル光開始剤Irgacure(登録商標)819を用いて遂行された。照射プロセスはλ=385nm、パワー密度20mW/cm
2で2.5分間行った。用途に応じて、3つの異なる基材を使用した:
1)ガラス板または光学PET箔(例えば、乾燥状態のLiイオン伝導性の測定に使用するための)、
2)ニッケル箔(例えば、膨潤、電解質吸収および機械的安定性を決定するための使用のための)、そして
3)リチウム箔(例えば、Li/Sバッテリー(C/Sカソードを有する)におけるフルセル測定に使用するための)
【0162】
実施例2
2重量%のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート塩を有し、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート):トリエチレングリコールジビニルエーテル1:1、1:2および1:3のモル官能性比表面積を含む混合物を調製した。混合物を乾燥1,3−ジオキソラン、ジオキサン、またはメチルエチルケトン(20−80%モノマー/溶媒)で希釈し、3種類の基材(ガラス、銅箔およびアルミニウム箔)上にコーティングし、Ar雰囲気下にUV光(λ=385nm)にさらした。紫外線照射後、モノマーは完全に硬化した。フィルムを一晩乾燥させて、溶媒を蒸発させた。得られたフィルムは、プロフィロメトリおよびドロップゲージで測定して約12ミクロンの厚さを有していた。
【0163】
実施例3
2重量%のトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート塩を有し、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート):トリエチレングリコールジビニルエーテルおよびトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート):1,4−シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル1:1および1:3の モル官能性比を有する混合物を調製した。混合物を1,3−ジオキソラン、場合によってはメチルエチルケトンまたはジオキサンで20〜80%固形分またはモノマー含量に希釈し、3種類の基材(ガラスおよび銅箔)上にコーティングし、Ar雰囲気下、UV光(λ=385nm)にさらした。紫外線照射後、モノマーは完全に硬化した。フィルムを一晩乾燥させて、溶媒を蒸発させた。得られたフィルムは、プロフィロメトリーによって測定したところ、約12ミクロンの厚さを有していた。
【0164】
実施例4
第1の例では、ジオキサン2.31gにチオジエタンチオール0.72gとトリエチレングリコールジビニルエーテル1.59gを添加した。溶液を攪拌し、ビニル基のカチオン性光開始剤の役割を果たす、トリアリールスルホニウムヘキサアンチオメート塩(triarylsulfonium hexaantiomate salts)0.05gを添加した。得られた溶液をアルミニウム箔のような金属基材上にコーティングし、ウェブ速度(web speed)2ft /分でUVランプ(λ=385nm)の下を通過させて材料を重合させた。得られたフィルムの厚さは約10ミクロンであった。得られたポリマーのゲル伝導度は、1.3*10
−4S/cmであった。
【0165】
第2の例では、2.31gのジオキサンに0.53gのチオジエタンチオールおよび1.78gのトリエチレングリコールジビニルエーテルを添加した。溶液を撹拌し、0.05gのトリアリールスルホニウムヘキサアンチオメート塩を添加した。得られた溶液を上記と同じ方法で硬化させた。得られたフィルムの厚さは約10ミクロンであった。ゲル伝導率は2.9*10
−5S/cmであった。
【0166】
第3の例では、0.16gのLiTFSIに0.72gのチオジエタンチオールおよび1.59のトリエチレングリコールジビニルエーテルを加えた。溶液を撹拌し、2.31gのジオキサンおよび0.05gのトリアリールスルホニウムヘキサアンチオメート塩を添加した。得られた溶液を、ガラス、PETおよび/またはアルミニウム箔のような金属基材上にコーティングし、次いでウェブ速度2ft/分で、UVランプ下を通過させることによって硬化/重合させた。
【0167】
第4の例では、2.31gの1,3−ジオキソランに1.31gのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)および1.08gのトリエチレングリコールジビニルエーテルを加えた。得られた溶液を1時間攪拌し、0.05gのトリアリールスルホニウムヘキサアンチオメート塩を加え、均一な溶液が形成されるまで撹拌した。得られた溶液を銅箔のような金属基材上にコーティングし、次にウェブ速度2ft/分でUVランプ下を通過させ、確実に硬化するようにした。ゲル導電性は1.6*10
−4S/cmであった。
【0168】
第5の例では、2.31gの1,3−ジオキソランに0.91gのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)および1.46gのトリエチレングリコールジビニルエーテルを加えた。得られた溶液を1時間攪拌し、0.05gのトリアリールスルホニウムヘキサアンチオメート塩を加え、均一な溶液が形成されるまで撹拌した。得られた溶液を銅箔のような金属基材上にコーティングし、次にウェブ速度2ft/分でUVランプ下を通過させ、確実に硬化するようにした。得られたフィルムの厚さは約10ミクロンであった。ゲルの導電性は〜1*10
−5S/cmであった。
【0169】
第6の例では、2.31gの1,3−ジオキソランに0.70gのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)および1.61gのトリエチレングリコールジビニルエーテルを添加した。得られた溶液を1時間攪拌し、0.05gのトリアリールスルホニウムヘキサアンチオメート塩を加え、均一な溶液が形成されるまで撹拌した。得られた溶液を銅箔のような金属基材上にコーティングし、次にウェブ速度2ft/分でUVランプ下を通過させ、確実に硬化するようにした。得られたフィルムの厚さは約10ミクロンであった。ゲル伝導性は3.1*10
−5S/cmであった。
【0170】
第7の例では、2.31gのジオキサンに1.31gのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)および1.00gの1,4−シクロヘキサンジオールジビニルエーテルを添加した。次に、0.05gのトリアリールスルホニウムヘキサアンチオメート塩を溶液に添加し、均一な溶液が形成されるまで撹拌した。得られた溶液を金属基材上にコーティングし、次いでウェブスピード2ft/分でUVランプ下を通過させてコーティングを重合させた。得られたフィルムの厚さは約10ミクロンであった。ゲル伝導性は1.59*10
−6S/cmであった。
【0171】
第8の例では、2.31gのジオキサンに1.90gのトリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)および0.81gのブタンジオールジビニルエーテルを添加した。撹拌後、0.05gのトリアリールスルホニウムヘキサアアンチオメート塩を溶液に添加し、均一な溶液が形成されるまで混合した。得られた溶液を金属基材上にコーティングし、次いでウェブスピード2ft/分でUVランプ下を通過させてコーティングを重合させた。得られたフィルムの厚さは約10ミクロンであった。ゲル伝導度は1.5*10
−5S/cmであった。
【0172】
上記のすべての例のフィルム厚さは、プロフィルメーターおよびドロップゲージを用いて測定した。上記実施例のゲル伝導性は、インピーダンス分光法を用いて測定した。
【0173】
本発明のいくつかの態様を本明細書に記載し説明してきたが、当業者は、機能を実行し、および/または結果および/または 本明細書に記載の1以上の利点を得るためのさまざまな他の手段および/または構造を難なく思い描くであろう。そのような変形および/または修正の各々は、本発明の範囲内であるとみなされる。より一般的には、当業者は、本明細書に記載される全てのパラメータ、寸法、材料、および構成が例示的なものであること、そして、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、特定の用途または本発明の教示が使用される用途に依存することを容易に理解するであろう。当業者は、本明細書に記載された本発明の特定の態様と多くの均等物を認識するか、またはわずかなルーチン的実験を用いて確認することができるであろう。したがって、前述の態様は単なる例示として提示されていること、そして添付の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内で、本発明は、具体的に記載および請求される以外の方法で実施されてもよいことが理解されるべきである本発明は、本明細書に記載されている個々の特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法に向けられている。加えて、そのような特徴、システム、物品、材料、キット、および/または方法が相互に矛盾しない場合、そのような特徴、システム、物品、材料、キットおよび/または方法の2つ以上の任意の組合せは、本発明の範囲に含まれる。
【0174】
本明細書および特許請求の範囲において使用される不定冠詞「a」および「an」は、明確に異なる指摘がない限り、「少なくとも1つ」を意味すると理解されるべきである。
【0175】
本明細書および特許請求の範囲において使用される「および/または(and/or)」というフレーズは、そのように結合された要素、すなわち、ある場合には結合的に存在し、他の場合には離接的に存在する要素の「一方または両方(either or both)」を意味すると理解されるべきである。そうでないと明確に指摘されない限り、特に特定されているそれらの要素に関係しようが、しまいにかかわらず、「および/または(and/or)」のフレーズによって具体的に特定される要素以外に、他の要素が所望により存在してもよい。それ故、非限定的な例として、「Aおよび/またはB(A and/or B)」への言及は、「含む(comprising)」などの開放型言語と併せて使用される場合、一態様では、BなしのA(所望によりB以外の要素を含む);他の態様では、AなしのB(所望によりA以外の要素を含む);さらに別の態様では、AとBの両者(所望により他の要素を含む)等を参照することができる。
【0176】
本明細書および特許請求の範囲で使用する「または(or)」は、上記で定義されているように、「および/または(and/or)」と同じ意味を有すると理解すべきである。例えば、リスト中の項目を分離する場合、「または(or)」あるいは「および/または(and/or)」は包括的、すなわち、多数の要素または要素のリストの少なくとも1つを含むが、また1つより多くも含んでおり、所望によりリストにない項目をさらに含んでいると解釈されるものである。「〜の1つだけ(only one of)」または「〜の正確に1つ(exactly one of )」、または、特許請求の範囲において使用されるときは、「〜のみからなる(consisting of)」等の、そうでないとして明確に指摘されている用語のみが、多数の要素または要素のリストの正確に1つを含むことに言及している。一般に、本明細書で使用されているような「または(or)」という用語は、「どちらかの(either)」、「〜の1つ(one of)」、「〜の一つだけ(only one of)」、または「〜の正確に1つ(exactly one of )」等の排他性の用語が前にあるとき、排他的な選択肢(すなわち、「1つまたは他のもの、しかし両者ではない」)を示しているとて解釈されるだけである。「本質的に〜からなる(consisting essentially of )」は、特許請求の範囲で使用されるときは、特許法の分野で使用されるような通常の意味を有するものとする。
【0177】
本明細書および特許請求の範囲で使用されるように、1以上の要素のリストを参照して、「少なくとも1つの(at least one)」というフレーズは、要素のリストにおけるずれか1つまたは複数の要素から選択される少なくとも1つの要素を意味すると理解されるべきであるが、要素のリスト内に特にリストされた各要素そしてあらゆる要素の少なくとも1つを必ずしも含んでいるものではなく、そして、要素のリストにおける要素の任意の組み合わせを排除しているものではない。この定義は、具体的に特定されている要素に関係しようがしまいが、「少なくとも1つの(at least one)」というフレーズが指す要素のリスト内で具体的に特定されている要素以外の要素が所望により存在しうることを可能にしているものでもある。しかして、非限定的例として、AおよびBの少なくとも1つ(at least one of A and B)(または、同様な意味合いで、「AまたはBの少なくとも1つ(at least one of A or B)、または同様な意味合いで「Aおよび/またはBの少なくとも1つ(at least one of A and/or B))は、1つの態様において、Bは全く存在しないで、少なくとも1つのA、所望により1つのAより多くを含んでいること(そして所望によりB以外の要素を含んでいること)を意味しており;別の態様においては、Aは全く存在しないで、少なくとも1つのB、所望により1つのBより多くを含んでいること(そして所望によりA以外の要素を含んでいること)を意味しており;また別の態様においては、少なくとも1つのA、所望により1つのAより多くを含んでおり、および少なくとも1つのB、所望により1つのBより多くを含んでいること(そして所望により、他の要素を含んでいること)等を意味しうる。
【0178】
特許請求の範囲および上記明細書において、「よりなる(comprising)」、「含む(including)」、「備える(carrying)」、「有する(having)」、「含有する(containing)」、「伴う(involving)」、「保持する(holding)」などの全ての移行句は、開放式、すなわちそれを含むが、それに限定されないと理解されるべきものである。特許審査手続の米国特許庁マニュアル第2111.03項に記載されているように、移行句「のみからなる(consisting of)」および「から本質的になる(consisting essentially of)」のみが、それぞれ閉鎖移行句または半閉鎖移行句である。