特許第6676914号(P6676914)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676914
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】舶用冷凍装置
(51)【国際特許分類】
   F25B 49/02 20060101AFI20200330BHJP
   F25B 1/00 20060101ALI20200330BHJP
   B63B 35/24 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F25B49/02 570B
   F25B1/00 381H
   B63B35/24 A
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-195097(P2015-195097)
(22)【出願日】2015年9月30日
(65)【公開番号】特開2017-67394(P2017-67394A)
(43)【公開日】2017年4月6日
【審査請求日】2018年9月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 智也
(72)【発明者】
【氏名】上野 明敏
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 実開昭61−018478(JP,U)
【文献】 特開平03−152333(JP,A)
【文献】 特開2014−159923(JP,A)
【文献】 特開昭54−085456(JP,A)
【文献】 実開昭59−016966(JP,U)
【文献】 特開平03−236580(JP,A)
【文献】 特開2004−340525(JP,A)
【文献】 実開昭57−169922(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F25B 49/02
F25B 1/00
B63B 35/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶に搭載され、圧縮機構(30)と、冷媒が流れる冷媒室(S1)が内部に形成されたシェル(41)と上記冷媒室(S1)に挿通されて冷却水が流れる冷却管(42)とを有する水冷式の凝縮器(40)と、膨脹機構(50)と、蒸発器(60)とが順次接続された冷媒回路(20)を備えた舶用冷凍装置であって、
上記凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰な異常状態であるか否かを判定する異常判定部(81)と、
上記異常判定部(81)が異常状態と判定すると、上記舶用冷凍装置を運転させたまま上記凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減するための所定の異常時動作を行う異常時動作部(82)とを備えている
ことを特徴とする舶用冷凍装置。
【請求項2】
請求項1において、
上記冷媒回路(20)の高圧圧力を検出する高圧圧力センサ(93)と、
上記冷媒回路(20)の低圧圧力を検出する低圧圧力センサ(94)と、
上記凝縮器(40)に流入する冷却水の温度を検出する入口温度センサ(95)と、
上記凝縮器(40)から流出する冷却水の温度を検出する出口温度センサ(96)とを備え、
上記異常判定部(81)は、上記高圧圧力センサ(93)の検出値と上記低圧圧力センサ(94)の検出値とがそれぞれ所定の正常範囲内の圧力であり、且つ上記出口温度センサ(96)の検出値から上記入口温度センサ(95)の検出値を減じた温度差が所定値よりも小さい場合に、上記異常状態であると判定する
ことを特徴とする舶用冷凍装置。
【請求項3】
請求項1において、
上記凝縮器(40)に流入する冷却水の圧力を検出する入口圧力センサ(97)と、
上記凝縮器(40)から流出する冷却水の圧力を検出する出口圧力センサ(98)とを備え、
上記異常判定部(81)は、上記入口圧力センサ(97)の検出値から上記出口圧力センサ(98)の検出値を減じた水頭損失が所定の正常値よりも大きい場合に、上記異常状態であると判定する
ことを特徴とする舶用冷凍装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
上記異常時動作部(82)は、上記異常時動作として警報を発する
ことを特徴とする舶用冷凍装置。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1つにおいて、
上記凝縮器(40)に冷却水を流入させる流入管(71)と、
上記凝縮器(40)から流出した冷却水が流れる流出管(72)と、
一端が上記流入管(71)に接続され、他端が上記流出管(72)に接続されたバイパス管(76)と、
上記バイパス管(76)に設けられ、該バイパス管(76)を開閉する開閉弁(77)とを備え、
上記異常時動作部(82)は、上記異常時動作として上記開閉弁(77)を閉状態から開状態に制御する
ことを特徴とする舶用冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水冷式の凝縮器を備え、船舶の空気調和装置等に用いられる舶用冷凍装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の空気調和装置等の舶用冷凍装置に、水冷式の凝縮器が用いられている(例えば、下記の特許文献1を参照)。特許文献1の水冷式の凝縮器は、内部に冷媒が流通する冷媒室が形成されたシェルと、シェル内において冷媒室に挿通されて冷却水が流れる複数の冷却管とを有し、冷却水と冷媒とを熱交換させるように構成されている。このような舶用冷凍装置に搭載された水冷式の凝縮器では、冷却水が流通して常時冷却水に接する冷却管は、腐食によって穴があくおそれがある。
【0003】
そこで、従来、上述のような水冷式凝縮器では、冷却管を構成する金属(主に銅)よりもイオン化傾向が高い亜鉛等からなる犠牲陽極を設け、冷却管よりも先に犠牲陽極を腐食させることにより、冷却管の腐食を防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−122670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、冷却管を通過する冷却水の水量が多すぎる場合には、犠牲陽極を設けても冷却管が腐食して穴があくおそれがある。冷却管に穴があくと、高圧冷媒が冷却管へ漏れ、やがて冷却管の内外の圧力が等しくなると、今度は、冷却管内の冷却水が冷媒回路内に浸入する。冷却水が冷媒回路内に浸入すると、冷媒回路の構成部品が冷却水によって故障するおそれがある。従来の舶用冷凍装置では、冷却管を流れる冷却水の水量を測定する手段がなく、冷却管に穴があくのを未然に防ぐことができなかった。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、水冷式の凝縮器を備えた舶用冷凍装置において、凝縮器の冷却管の破損を未然に防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の発明は、船舶に搭載され、圧縮機構(30)と、冷媒が流れる冷媒室(S1)が内部に形成されたシェル(41)と上記冷媒室(S1)に挿通されて冷却水が流れる冷却管(42)とを有する水冷式の凝縮器(40)と、膨脹機構(50)と、蒸発器(60)とが順次接続された冷媒回路(20)を備えた舶用冷凍装置であって、上記凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰な異常状態であるか否かを判定する異常判定部(81)と、上記異常判定部(81)が異常状態と判定すると、上記舶用冷凍装置を運転させたまま上記凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減するための所定の異常時動作を行う異常時動作部(82)とを備えている。
【0008】
第1の発明では、冷媒回路(20)では、冷媒が循環して冷凍サイクルが行われる。このとき、水冷式の凝縮器(40)では、冷媒室(S1)内に流入した冷媒と、該冷媒室(S1)内に挿通された冷却管(42)内を流れる冷却水との間において熱交換が行われ、冷媒が冷却水に放熱して凝縮する。
【0009】
ところで、水冷式の凝縮器(40)において、冷却水が流通して常時冷却水に接する冷却管(42)は、腐食によって穴があくおそれがある。特に、冷却管(42)の水量が多すぎると、穴があくおそれが高くなる。冷却管(42)に穴があくと、冷媒室(S1)の高圧の冷媒が冷却管(42)内へ漏れて冷媒室(S1)内の圧力が低下する。そして、冷媒室(S1)内の圧力が冷却管(42)内の圧力と等しくなるまで低下すると、冷却管(42)内の冷却水が冷媒室(S1)内に漏れて冷媒回路(20)に浸入し、冷媒回路(20)の構成部品が故障するおそれがある。
【0010】
そこで、第1の発明では、異常判定部(81)と異常時動作部(82)とを設け、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰で冷却管(42)に穴があくおそれのある異常状態を判定すると、所定の異常時動作を行って凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減するようにしている。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、上記冷媒回路(20)の高圧圧力を検出する高圧圧力センサ(93)と、上記冷媒回路(20)の低圧圧力を検出する低圧圧力センサ(94)と、上記凝縮器(40)に流入する冷却水の温度を検出する入口温度センサ(95)と、上記凝縮器(40)から流出する冷却水の温度を検出する出口温度センサ(96)とを備え、上記異常判定部(81)は、上記高圧圧力センサ(93)の検出値と上記低圧圧力センサ(94)の検出値とがそれぞれ所定の正常範囲内の圧力であり、且つ上記出口温度センサ(96)の検出値から上記入口温度センサ(95)の検出値を減じた温度差が所定値よりも小さい場合に、上記異常状態であると判定する。
【0012】
ところで、冷媒回路(20)における高圧圧力と低圧圧力とが正常範囲内の圧力であるとき、冷媒回路(20)において冷凍サイクルが正常に行われていると推定することができる。また、冷媒回路(20)において冷凍サイクルが正常に行われている際に、凝縮器(40)における放熱量が少なすぎる場合、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰であると推定することができる。
【0013】
そこで、第2の発明では、この推定を利用し、冷媒回路(20)の高圧圧力と低圧圧力とがそれぞれ正常範囲内の圧力であって、凝縮器(40)から流出する冷却水と凝縮器(40)に流入する冷却水の温度差が小さすぎる場合に、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると判定することとしている。
【0014】
第3の発明は、第1の発明において、上記凝縮器(40)に流入する冷却水の圧力を検出する入口圧力センサ(97)と、上記凝縮器(40)から流出する冷却水の圧力を検出する出口圧力センサ(98)とを備え、上記異常判定部(81)は、上記入口圧力センサ(97)の検出値から上記出口圧力センサ(98)の検出値を減じた水頭損失が所定の正常値よりも大きい場合に、上記異常状態であると判定する。
【0015】
ところで、凝縮器(40)における冷却水の流量が多すぎると、水頭損失が大きくなり、逆に、凝縮器(40)における冷却水の流量が少なすぎると、水頭損失が小さくなる。そのため、凝縮器(40)における水頭損失が、所定の正常値よりも大きい場合には、凝縮器(40)における冷却水の流量が過剰である異常状態であると推定することができる。
【0016】
そこで、第3の発明では、この推定を利用し、凝縮器(40)に流入する冷却水の圧力から凝縮器(40)から流出する冷却水の圧力を減じた差圧(水頭損失)が、所定の正常値よりも大きい場合に、凝縮器に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると判定することとしている。
【0017】
第4の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記異常時動作部(82)は、上記異常時動作として警報を発する。
【0018】
第4の発明では、異常判定部(81)が、凝縮器(40)における冷却水の流量が過剰である異常状態であると判定すると、異常時動作部(82)が、凝縮器(40)における冷却水の流量を低減するための所定の異常時動作として警報を発する。
【0019】
第5の発明は、第1乃至第3のいずれか1つの発明において、上記凝縮器(40)に冷却水を流入させる流入管(71)と、上記凝縮器(40)から流出した冷却水が流れる流出管(72)と、一端が上記流入管(71)に接続され、他端が上記流出管(72)に接続されたバイパス管(76)と、上記バイパス管(76)に設けられ、該バイパス管(76)を開閉する開閉弁(77)とを備え、上記異常時動作部(82)は、上記異常時動作として上記開閉弁(77)を閉状態から開状態に制御する。
【0020】
第5の発明では、異常判定部(81)が、凝縮器(40)における冷却水の流量が過剰である異常状態であると判定すると、異常時動作部(82)が、凝縮器(40)における冷却水の流量を低減するための所定の異常時動作として、バイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を閉状態から開状態に制御する。これにより、流入管(71)を流れる冷却水の一部がバイパス管(76)に流入して凝縮器(40)をバイパスする。よって、凝縮器(40)へ流入する冷却水の流量が低減する。
【発明の効果】
【0021】
第1の発明によれば、舶用冷凍装置に、水冷式の凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰な異常状態であるか否かを判定する異常判定部(81)と、該異常判定部(81)が異常状態と判定すると凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減するための所定の異常時動作を行う異常時動作部(82)とを設けることとした。このような異常判定部(81)と異常時動作部(82)とにより、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰で冷却管(42)に穴があくおそれのある異常状態であるときに、所定の異常時動作を行うことで、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減して冷却管(42)に穴があくのを回避することができる。つまり、水冷式の凝縮器(40)を備えた舶用冷凍装置において、凝縮器(40)の冷却管(42)の破損を未然に防止することができる。
【0022】
また、第2の発明によれば、冷媒回路(20)における高圧圧力と低圧圧力とが正常範囲内の圧力であるときに、冷媒回路(20)において冷凍サイクルが正常に行われていると推定し、冷凍サイクルが正常であって凝縮器(40)における放熱量が少なすぎる場合に凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると推定することとした。そのため、冷媒回路(20)の高圧圧力と低圧圧力と凝縮器(40)に流入する冷却水の温度と凝縮器(40)から流出する冷却水の温度とを検出することにより、容易に凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態を検知することができる。
【0023】
また、第3の発明によれば、凝縮器(40)における冷却水の水頭損失が、所定の正常値よりも大きい場合に、凝縮器(40)における冷却水の流量が過剰である異常状態であると推定することとした。そのため、凝縮器(40)に流入する冷却水の圧力と凝縮器(40)から流出する冷却水の圧力とから水頭損失を算出することにより、容易に凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態を検知することができる。
【0024】
また、第4の発明によれば、異常時動作部(82)が、異常時動作として警報を発することとした。この警報により、作業者は、凝縮器(40)における冷却水の流量が過剰である異常状態であることを検知することができるため、凝縮器(40)における冷却水の流量を低減する等の措置を行うことで、凝縮器(40)の冷却管(42)の破損(穴あき)を未然に防止することができる。
【0025】
また、第5の発明によれば、異常時動作部(82)が、異常時動作としてバイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を開状態に制御することとした。これにより、流入管(71)を流れる冷却水の一部がバイパス管(76)に流入して凝縮器(40)をバイパスすることにより、凝縮器(40)へ流入する冷却水の流量を低減することができる。よって、凝縮器(40)の冷却管(42)の破損(穴あき)を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る空気調和装置の概略構成図である。
図2図2は、本発明の実施形態1に係る水冷式の凝縮器の一部を切り欠いて示す全体図である。
図3図3は、本発明の実施形態1に係る水冷式の凝縮器の前蓋を後側から見た図である。
図4図4は、本発明の実施形態2に係る空気調和装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0028】
《発明の実施形態1》
図1は、本発明の実施形態1に係る空気調和装置(10)の概略構成図である。本実施形態の空気調和装置(10)は、船舶用の空調システムに設けられている。具体的には、空気調和装置(10)は、船舶用のデッキ等の屋外に設けられ、吸込ダクトを介して船舶用の船室(図示省略)内の室内空気と屋外の室外空気とを取り込み、温度調節した後、給気ダクト(図示省略)を介して船室内に供給する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態の空気調和装置(10)は、冷媒回路(20)と、水回路(70)と、送風ファン(15)と、コントローラ(80)と、これらを収容するケーシング(11)とを備えている。
【0030】
〈冷媒回路〉
冷媒回路(20)は、圧縮機ユニット(圧縮機構)(30)、凝縮器(40)、膨張弁(膨脹機構)(50)、蒸発器(60)を順に配管で接続して構成した閉回路である。冷媒回路(20)では、圧縮機ユニット(30)と凝縮器(40)とが高圧ガス配管(24)によって接続され、凝縮器(40)と膨張弁(50)とが高圧液配管(25)によって接続され、膨張弁(50)と蒸発器(60)とが低圧液配管(26)によって接続され、蒸発器(60)と圧縮機ユニット(30)とが低圧ガス配管(27)によって接続されている。高圧液配管(25)には、電磁弁(29)が設けられている。この冷媒回路(20)には、冷媒が充填されている。
【0031】
−圧縮機ユニット−
圧縮機ユニット(30)は、3台の圧縮機、即ち第1〜第3圧縮機(31,32,33)を備えている。なお、圧縮機ユニット(30)に設けられた圧縮機(31,32,33)の台数は、単なる一例である。第1〜第3圧縮機(31,32,33)は、それぞれ全密閉型のスクロール圧縮機によって構成されている。
【0032】
圧縮機ユニット(30)において、第1及び第2圧縮機(31,32)は互いに並列に接続され、第3圧縮機(33)は、この並列に接続された第1及び第2圧縮機(31,32)に対して、並列に接続されている。
【0033】
具体的には、第1及び第2圧縮機(31,32)の吸入管(21a,22a)は、互いに接続された状態で、蒸発器(60)の出口に接続された低圧ガス配管(27)に接続されている。一方、第3圧縮機(33)の吸入管(23a)は、そのまま低圧ガス配管(27)に接続されている。第1〜第3圧縮機(31,32,33)の吐出管(21b,22b,23b)は、いずれも凝縮器(40)の冷媒入口に接続された高圧ガス配管(24)に接続されている。各吐出管(21b,22b,23b)には、各圧縮機(31,32,33)から高圧ガス配管(24)へ向かう向きの冷媒の流通を許容する一方、逆向きの冷媒の流通を阻止する逆止弁(28)が設けられている。
【0034】
このような構成により、圧縮機ユニット(30)において、第1〜第3圧縮機(31,32,33)は、吸入管(21a,22a,23a)を介して低圧ガス配管(27)から吸い込んだ冷媒を圧縮し、圧縮した冷媒を吐出管(21b,22b,23b)を介して高圧ガス配管(24)へ吐出する。
【0035】
−凝縮器−
凝縮器(40)は、冷媒回路(20)と水回路(70)とに接続され、冷媒を冷却水(具体的には、海水や河川等から取り込まれた水)と熱交換させる水冷式の凝縮器であり、図2に示すように、いわゆるシェル・アンド・チューブ型の熱交換器であり、密閉型の円筒状のシェル(41)と、該シェル(41)内部に設けられた複数の銅製の冷却管(42)とを備えている。シェル(41)は、胴部(41a)と、一対の管板(端板)(41b,41c)と、一対の蓋板(41d,41e)とを備えている。
【0036】
胴部(41a)は、前後方向に長い円筒状に形成されている。胴部(41a)は、両端が一対の管板(41b,41c)によって閉塞され、内部に冷媒が流通する冷媒室(S1)が形成されている。胴部(41a)の上部には、冷媒を冷媒室(S1)に導入する導入管(43)が接続され、胴部(41a)の下部には、冷媒室(S1)の冷媒を導出する導出管(44)が接続されている。導入管(43)の他端は、冷媒回路(20)の高圧ガス配管(24)に接続され、導出管(44)の他端は、冷媒回路(20)の高圧液配管(25)に接続されている。
【0037】
一対の管板(41b,41c)は、前管板(41b)と後管板(41c)とによって構成されている。前管板(41b)と後管板(41c)は、ネーバル黄銅と鉄の圧着鋼(クラッド鋼)によって形成されている。前管板(41b)は、胴部(41a)の前端を閉塞し、後管板(41c)は、胴部(41a)の後端を閉塞している。
【0038】
一対の蓋板(41d,41e)は、前蓋板(41d)と後蓋板(41e)とによって構成されている。前蓋板(41d)と後蓋板(41e)は、アルミニウム青銅によって形成され、それぞれドーム状に形成されている。
【0039】
図3に示すように、前蓋板(41d)は、胴部(41a)の前側に設けられ、前管板(41b)との間に、冷却水が流通する前側水室(S2)を形成している。また、前蓋板(41d)は、前側水室(S2)を入口水室(S21)と出口水室(S22)とに仕切る仕切板部(41f)を有している。前蓋板(41d)には、冷却水の給水管(45)と排水管(46)とが接続されている。給水管(45)は入口水室(S21)に開口し、排水管(46)は出口水室(S22)に開口している。また、前蓋板(41d)には、2つの犠牲陽極(47)が取り付けられている。2つの犠牲陽極(47)は、入口水室(S21)と出口水室(S22)のそれぞれに1つずつ設けられている。
【0040】
一方、後蓋板(41e)は、胴部(41a)の後側に設けられ、後管板(41c)との間に、冷却水が流通する後側水室(S3)を形成している。後蓋板(41e)には、前蓋板(41d)と同様に、2つの犠牲陽極(47)が取り付けられている。
【0041】
図1に示すように、複数の冷却管(42)は、冷媒室(S1)において、胴部(41a)の軸に平行に延び、互いに間隔を空けて配設されている。複数の冷却管(42)は、前端が前管板(41b)に支持される一方、後端が後管板(41c)に支持されるように、両管板(41b,41c)に挿入されている。この複数の冷却管(42)によって入口水室(S21)、後側水室(S3)及び出口水室(S22)は連通され、これら3つの水室(S3,S21,S22)と複数の冷却管(42)とによって複数の冷却水流路が形成されている。
【0042】
−膨張弁−
膨張弁(50)は、いわゆる温度自動膨張弁である。膨張弁(50)の感温筒(51)は、低圧ガス配管(27)の蒸発器(60)の出口付近に取り付けられ、低圧ガス配管(27)の表面と接している。
【0043】
−電磁弁−
電磁弁(29)は、第1〜第3圧縮機(31,32,33)の起動時及び停止前に使用する弁であり、第1〜第3圧縮機(31,32,33)を保護するために設けられている。もし仮に、第1〜第3圧縮機(31,32,33)を停止させた後に、蒸発器(60)内に液状の冷媒が残っていたとすれば、次に第1〜第3圧縮機(31,32,33)を運転させる際に、液状の冷媒が第1〜第3圧縮機(31,32,33)に入り込み、第1〜第3圧縮機(31,32,33)に過大な負荷がかかることになる。そこで、第1〜第3圧縮機(31,32,33)を停止させる場合は、電磁弁(29)を閉じた状態で、蒸発器(60)内の液冷媒がなくなるまで第1〜第3圧縮機(31,32,33)をしばらく運転させて、その後、第1〜第3圧縮機(31,32,33)を停止させている。また、第1〜第3圧縮機(31,32,33)を起動させる場合にも、電磁弁(29)を閉じた状態で、蒸発器(60)内に戻った液冷媒がなくなるまで第1〜第3圧縮機(31,32,33)をしばらく運転させて、その後、電磁弁(29)を開くようにしている。
【0044】
−蒸発器−
蒸発器(60)は、いわゆるクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器であって、銅製の伝熱管とアルミニウム製のフィンとによって構成されている。この蒸発器(60)は、冷媒を空気と熱交換させる。
【0045】
〈水回路〉
水回路(70)は、冷却水(具体的には、海水や河川等から取り込まれた水)を凝縮器(40)に流入させる流入管(71)と、凝縮器(40)から流出した冷却水を排出する流出管(72)と、手動式の流量調整弁(73)とを備えている。流入管(71)は、ケーシング(11)の外部に設けられた冷却水入口(74)と凝縮器(40)の給水管(45)との間に接続され、流出管(72)は、ケーシング(11)の外部に設けられた冷却水出口(75)と凝縮器(40)の排水管(46)との間に接続されている。
【0046】
ところで、本願の空気調和装置(10)では、水冷式の凝縮器(40)の冷却水として海水や河川等から取り込まれた水が用いられる。また、船舶では、通常、空気調和装置(10)の凝縮器(40)の冷却水の他に、エンジン、冷凍機、電気機器、発電機などの冷却水としても海水や河川等から取り込まれた水が用いられる。通常、海水や河川の水は、ポンプによって汲み上げられ、冷却水を使用する各機器(空気調和装置(10)の凝縮器(40)を含む)に分配される。つまり、空気調和装置(10)の凝縮器(40)の水回路(70)には、他の冷却水を使用する各機器と共有するポンプによって海水や河川の水が搬送される。そのため、水回路(70)に流入する冷却水の水量をポンプによって調節することができない。そこで、本実施形態では、バイパス管(76)と、開閉弁(77)とを設けている。
【0047】
具体的には、バイパス管(76)は、一端が流入管(71)において凝縮器(40)と流量調整弁(73)との間に接続され、他端が流出管(72)に接続されている。開閉弁(77)は、コントローラ(80)によって開閉制御される電磁弁によって構成されている。
【0048】
このような構成により、水回路(70)において、開閉弁(77)が閉状態である際には、流入管(71)に流入した冷却水は、そのまま凝縮器(40)に流入し、凝縮器(40)において冷媒と熱交換した後、流出管(72)に流出する。一方、水回路(70)において、開閉弁(77)が閉状態から開状態に切り換わると、流入管(71)に流入した冷却水は、その一部がバイパス管(76)に流入し、凝縮器(40)をバイパスして流出管(72)に流出する。つまり、開閉弁(77)が開状態に切り換わると、流入管(71)に流入した冷却水の一部がバイパス管(76)に流入して凝縮器(40)をバイパスすることにより、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が低減することとなる。
【0049】
〈送風ファン〉
送風ファン(15)は、ケーシング(11)内において、ダクト(図示省略)と連通し、冷媒回路(20)の蒸発器(60)が設置された空間に設けられている。送風ファン(15)は、船室内の室内空気と屋外の室外空気とをダクトを介してケーシング(11)の内部に取り込み、該空気を、蒸発器(60)において冷媒と熱交換するように蒸発器(60)に導く。また、送風ファン(15)は、蒸発器(60)を通過して温度が調節された空気を、ダクトを介して船室等の室内空間に供給する。
【0050】
〈センサ、コントローラ〉
−センサ−
空気調和装置(10)には、高圧圧力開閉器(91)と低圧圧力開閉器(92)と高圧圧力センサ(93)と低圧圧力センサ(94)と入口温度センサ(95)と出口温度センサ(96)とが設けられている。
【0051】
高圧圧力開閉器(91)は、各吐出管(21b,22b,23b)において各圧縮機(31,32,33)と逆止弁(28)との間に1つずつ設けられている。各高圧圧力開閉器(91)は、各圧縮機(31,32,33)から吐出された高圧ガス冷媒の圧力が所定の上限値を上回る高圧異常の際に、作動してON信号をコントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0052】
低圧圧力開閉器(92)は、低圧ガス配管(27)に設けられている。低圧圧力開閉器(92)は、蒸発器(60)から流出して圧縮機ユニット(30)に吸入される低圧ガス冷媒の圧力が所定の下限値を下回る低圧異常の際に、作動してON信号をコントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0053】
高圧圧力センサ(93)は、高圧ガス配管(24)に設けられている。高圧圧力センサ(93)は、圧縮機ユニット(30)から吐出された高圧ガス冷媒の圧力を検出し、コントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0054】
低圧圧力センサ(94)は、低圧ガス配管(27)に設けられている。低圧圧力センサ(94)は、蒸発器(60)から流出して圧縮機ユニット(30)に吸入される低圧ガス冷媒の圧力を検出し、コントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0055】
入口温度センサ(95)は、流入管(71)に設けられている。入口温度センサ(95)は、流入管(71)を通過して凝縮器(40)に流入する冷却水の温度を検出し、コントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0056】
出口温度センサ(96)は、流出管(72)に設けられている。出口温度センサ(96)は、凝縮器(40)から流出管(72)に流出した冷却水の温度を検出し、コントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0057】
なお、本実施形態では、後述する異常判定部(81)による異常状態の判定に、高圧圧力センサ(93)と低圧圧力センサ(94)と入口温度センサ(95)と出口温度センサ(96)との検出値が用いられる。
【0058】
−コントローラ−
コントローラ(80)は、圧縮機ユニット(30)の運転容量を調節するように構成されている。具体的に、コントローラ(80)には、高圧圧力センサ(93)の検出値と、低圧圧力センサ(94)の検出値とが入力される。これらの検出値は、コントローラ(80)によって、圧縮機ユニット(30)の運転容量の調節に用いられる。また、コントローラ(80)は、高圧圧力開閉器(91)又は低圧圧力開閉器(92)からON信号を受信すると圧縮機ユニット(30)の運転を停止する保護制御を行うように構成されている。
【0059】
さらに、コントローラ(80)は、異常判定部(81)と、異常時動作部(82)とを備え、水冷式の凝縮器(40)において、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰で冷却管(42)に穴があくおそれがある場合に、凝縮器に流入する冷却水の水量を低減するように構成されている。
【0060】
異常判定部(81)は、水冷式の凝縮器(40)において、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰な異常状態であるか否かを判定する。具体的には、本実施形態では、異常判定部(81)は、冷媒回路(20)の高圧圧力(高圧圧力センサ(93)の検出値)と冷媒回路(20)の低圧圧力(低圧圧力センサ(94)の検出値)とがそれぞれ所定の正常範囲内の圧力であって、凝縮器(40)から流出する冷却水の温度(出口温度センサ(96)の検出値)から凝縮器(40)に流入する冷却水の温度(入口温度センサ(95)の検出値)を減じた温度差が所定値よりも小さい場合に、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると判定するように構成されている。
【0061】
異常時動作部(82)は、異常判定部(81)が異常状態と判定すると、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減するための所定の異常時動作を行うように構成されている。本実施形態では、異常時動作部(82)は、異常時動作として水回路(70)のバイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を開状態に制御するように構成されている。この異常時動作により、流入管(71)を流れる冷却水の一部を、バイパス管(76)に流入させて流出管(72)に流出させる。つまり、異常時動作部(82)は、異常時動作として、流入管(71)を流れる冷却水の一部を、バイパス管(76)に流入させて凝縮器(40)をバイパスさせることにより、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減するように構成されている。
【0062】
本実施形態では、コントローラ(80)は、空気調和装置(10)の各要素を本願で開示するように制御する処理部としてのマイクロコンピュータと、実施可能な制御プログラムが記憶されたメモリやハードディスク等とを含んでいる。なお、上記コントローラ(80)は、空気調和装置(10)の制御部の一例であり、コントローラ(80)の詳細な構造やアルゴリズムは、本発明に係る機能を実行するどのようなハードウェアとソフトウェアとの組み合わせであってもよい。
【0063】
−運転動作−
空気調和装置(10)の運転動作について説明する。
【0064】
まず、コントローラ(80)によって、冷媒回路(20)の電磁弁(29)と水回路(70)の流量調整弁(73)とが開状態に制御される。この状態において、コントローラ(80)は、圧縮機ユニット(30)の第1〜第3圧縮機(31,32,33)と送風ファン(15)の運転を開始することで、冷却した空気を船内に供給する冷房運転が実行される。
【0065】
具体的には、第1〜第3圧縮機(31,32,33)において圧縮されて吐出された高圧ガス冷媒が、高圧ガス配管(24)を介して凝縮器(40)に流入する。水冷式の凝縮器(40)では、冷媒室(S1)において、冷媒が複数の冷却管(42)を流れる冷却水と熱交換して(放熱して)凝縮する。凝縮器(40)において凝縮した冷媒は、高圧液配管(25)によって膨張弁(50)に導かれ、該膨張弁(50)を通過する際に減圧されて気液二相状態となる。
【0066】
膨張弁(50)を通過した冷媒は、低圧液配管(26)を通過して蒸発器(60)へ流入する。蒸発器(60)では、伝熱管を流れる冷媒が、フィン間を通過する空気と熱交換して(該空気から吸熱して)蒸発する。蒸発器(60)において蒸発した冷媒は、過熱蒸気となって低圧ガス配管(27)を介して圧縮機ユニット(30)に流入する。
【0067】
圧縮機ユニット(30)に流入した冷媒は、二手に分かれ、一方は、互いに並列に接続された第1及び第2圧縮機(31,32)に吸入され、他方は、第3圧縮機(33)に吸入される。各圧縮機(31,32,33)へ吸入された冷媒は、圧縮された後に各圧縮機(31,32,33)から吐出される。
【0068】
〈異常状態の判定と異常時動作〉
空気調和装置(10)では、水冷式の凝縮器(40)において、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰で冷却管(42)に穴があくおそれがある際(異常状態の際)に、凝縮器に流入する冷却水の水量を低減するための異常時動作を行う。
【0069】
具体的には、冷媒回路(20)における高圧圧力と低圧圧力とが正常範囲内の圧力であるとき、冷媒回路(20)において冷凍サイクルが正常に行われていると推定することができる。また、冷媒回路(20)において冷凍サイクルが正常に行われている際に、凝縮器(40)における放熱量が少なすぎる場合、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰であると推定することができる。
【0070】
そこで、コントローラ(80)では、上述の推定を利用し、冷媒回路(20)の高圧圧力(高圧圧力センサ(93)の検出値)と冷媒回路(20)の低圧圧力(低圧圧力センサ(94)の検出値)とがそれぞれ所定の正常範囲内の圧力であって、凝縮器(40)から流出する冷却水の温度(出口温度センサ(96)の検出値)から凝縮器(40)に流入する冷却水の温度(入口温度センサ(95)の検出値)を減じた温度差が所定値よりも小さい場合に、異常判定部(81)が、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると判定する。異常判定部(81)が異常状態と判定すると、異常時動作部(82)が、バイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を開状態に制御する異常時動作を行う。
【0071】
このような異常時動作により、流入管(71)を流れる冷却水の一部が、バイパス管(76)に流入して流出管(72)に流出する。つまり、異常時動作では、流入管(71)を流れる冷却水の一部が、凝縮器(40)をバイパスして流出管(72)に流出することにより、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が低減される。
【0072】
−実施形態1の効果−
以上のように、本実施形態によれば、本発明に係る舶用冷凍装置を構成する空気調和装置(10)に、水冷式の凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰な異常状態であるか否かを判定する異常判定部(81)と、該異常判定部(81)が異常状態と判定すると凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減するための所定の異常時動作を行う異常時動作部(82)とを設けることとした。このような異常判定部(81)と異常時動作部(82)とにより、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰で冷却管(42)に穴があくおそれのある異常状態であるときに、所定の異常時動作を行うことで、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減して冷却管(42)に穴があくのを回避することができる。つまり、水冷式の凝縮器(40)を備えた舶用冷凍装置としての空気調和装置(10)において、凝縮器(40)の冷却管(42)の破損を未然に防止することができる。
【0073】
また、本実施形態によれば、冷媒回路(20)における高圧圧力と低圧圧力とが正常範囲内の圧力であるときに、冷媒回路(20)において冷凍サイクルが正常に行われていると推定し、冷凍サイクルが正常であって凝縮器(40)における放熱量が少なすぎる場合に凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると推定することとした。そのため、冷媒回路(20)の高圧圧力と低圧圧力と凝縮器(40)に流入する冷却水の温度と、凝縮器(40)から流出する冷却水の温度とを検出することにより、容易に凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態を検知することができる。
【0074】
また、本実施形態によれば、異常時動作部(82)が、異常時動作としてバイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を開状態に制御することとした。これにより、流入管(71)を流れる冷却水の一部がバイパス管(76)に流入して凝縮器(40)をバイパスすることにより、凝縮器(40)へ流入する冷却水の流量を低減することができる。よって、凝縮器(40)の冷却管(42)の破損(穴あき)を未然に防止することができる。
【0075】
《発明の実施形態2》
実施形態2に係る空気調和装置(10)は、実施形態1の空気調和装置(10)の構成を一部変更したものである。図4に示すように、実施形態2では、実施形態1の流入管(71)に設けられた入口温度センサ(95)の代わりに入口圧力センサ(97)が設けられ、また、実施形態1の流出管(72)に設けられた出口温度センサ(96)の代わりに出口圧力センサ(98)が設けられている。
【0076】
入口圧力センサ(97)は、入口温度センサ(95)と同じ位置、即ち、流入管(71)のバイパス管(76)と凝縮器(40)との間に設けられている。入口圧力センサ(97)は、流入管(71)を通過して凝縮器(40)に流入する冷却水の圧力を検出し、コントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0077】
一方、出口圧力センサ(98)は、出口温度センサ(96)と同じ位置、即ち、流出管(72)のバイパス管(76)と凝縮器(40)との間に設けられている。出口圧力センサ(98)は、凝縮器(40)から流出管(72)に流出した冷却水の圧力を検出し、コントローラ(80)に送信するように構成されている。
【0078】
また、実施形態2では、コントローラ(80)の異常判定部(81)が、実施形態1と異なる異常判定を行うように構成されている。具体的には、異常判定部(81)は、入口圧力センサ(97)の検出値から出口圧力センサ(98)の検出値を減じた差圧(水頭損失)が、所定の正常値よりも大きい場合に、凝縮器に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると判定するように構成されている。なお、異常時動作部(82)によって実行される異常時動作は、実施形態1と同様である。
【0079】
〈異常状態の判定と異常時動作〉
実施形態2においても、空気調和装置(10)では、水冷式の凝縮器(40)において、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰で冷却管(42)に穴があくおそれがある際(異常状態の際)に、凝縮器に流入する冷却水の水量を低減するための異常時動作を行う。
【0080】
具体的には、凝縮器(40)における冷却水の流量が多すぎると、水頭損失が大きくなり、逆に、凝縮器(40)における冷却水の流量が少なすぎると、水頭損失が小さくなる。そのため、凝縮器(40)における水頭損失が、所定の正常値よりも大きい場合には、凝縮器(40)における冷却水の流量が過剰である異常状態であると推定することができる。
【0081】
そこで、コントローラ(80)では、上述の推定を利用し、凝縮器(40)に流入する冷却水の圧力(入口圧力センサ(97)の検出値)から凝縮器(40)から流出する冷却水の圧力(出口圧力センサ(98)の検出値)を減じた差圧(水頭損失)が、所定の正常値よりも大きい場合に、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態であると判定する。
【0082】
異常判定部(81)が異常状態と判定すると、異常時動作部(82)が、水回路(70)のバイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を開状態に制御する異常時動作を行う。具体的には、異常時動作部(82)は、開閉弁(77)を開状態に制御して流入管(71)を流れる冷却水の一部を、凝縮器(40)をバイパスするようにバイパス管(76)に流入させることにより、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減する。
【0083】
上述のような異常時動作により、流入管(71)を流れる冷却水の一部が、バイパス管(76)に流入して流出管(72)に流出する。つまり、異常時動作では、流入管(71)を流れる冷却水の一部が、凝縮器(40)をバイパスして流出管(72)に流出することにより、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が低減される。
【0084】
−実施形態2の効果−
本実施形態2によれば、凝縮器(40)における冷却水の水頭損失が、所定の正常値よりも大きい場合に、凝縮器(40)における冷却水の流量が過剰である異常状態であると推定することとした。そのため、凝縮器(40)に流入する冷却水の圧力と凝縮器(40)から流出する冷却水の圧力とから水頭損失を算出することにより、容易に凝縮器(40)に流入する冷却水の水量が過剰である異常状態を検知することができる。つまり、本実施形態2においても実施形態1と同様の効果を得ることが可能になる。
【0085】
《その他の実施形態》
上記各実施形態では、コントローラ(80)を、異常時動作部(82)が異常時動作として、水回路(70)のバイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を開状態に制御する異常時動作を行うように構成されていた。しかしながら、異常時動作は、上記各実施形態のものに限られない。例えば、開閉弁(77)を手動の開閉弁に構成し、コントローラ(80)を、異常時動作部(82)が異常時動作として警報を発するように構成されていてもよい。このような場合、異常時動作部(82)によって発せられた警報によって、作業者が異常状態であることを検知することができる。よって、作業者によって、水回路(70)のバイパス管(76)に設けられた開閉弁(77)を開状態にする等の凝縮器(40)における冷却水の流量を低減する措置を行うことにより、上記各実施形態と同様に、凝縮器(40)の冷却管(42)の破損(穴あき)を未然に防止することができる。
【0086】
なお、上述のように、異常時動作部(82)が異常時動作として警報を発する場合、作業者によって、流入管(71)に設けられた手動式の流量調整弁(73)の開度を低減することとしてもよい。流量調整弁(73)の開度を低減することで、流入管(71)に流入する冷却水の水量が低減されるため、凝縮器(40)に流入する冷却水の水量を低減することができる。よって、上記各実施形態と同様に、凝縮器(40)の冷却管(42)の破損(穴あき)を未然に防止することができる。なお、この場合、バイパス管(76)と開閉弁(77)とを省略することとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0087】
以上説明したように、本発明は、水冷式の凝縮器を備え、船舶の空気調和装置等に用いられる舶用冷凍装置について有用である。
【符号の説明】
【0088】
10 空気調和装置
20 冷媒回路
30 圧縮機ユニット(圧縮機構)
40 凝縮器
41 シェル
42 冷却管
50 膨張弁(膨脹機構)
60 蒸発器
71 流入管
72 流出管
76 バイパス管
77 開閉弁
81 異常判定部
82 異常時動作部
93 高圧圧力センサ
94 低圧圧力センサ
95 入口温度センサ
96 出口温度センサ
97 入口圧力センサ
98 出口圧力センサ
S1 冷媒室
図1
図2
図3
図4