(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676925
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】合成樹脂製ボトル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
B65D1/02 221
【請求項の数】6
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-213380(P2015-213380)
(22)【出願日】2015年10月29日
(65)【公開番号】特開2017-81614(P2017-81614A)
(43)【公開日】2017年5月18日
【審査請求日】2018年9月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】313005282
【氏名又は名称】東洋製罐株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】特許業務法人 英知国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 武
(72)【発明者】
【氏名】三浦 正樹
【審査官】
吉澤 秀明
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭56−097209(JP,U)
【文献】
特開2002−293316(JP,A)
【文献】
特開2007−290718(JP,A)
【文献】
特開2007−091338(JP,A)
【文献】
米国特許第05226550(US,A)
【文献】
特開2007−314200(JP,A)
【文献】
特開2007−290762(JP,A)
【文献】
特開2015−030486(JP,A)
【文献】
特開平11−301630(JP,A)
【文献】
意匠登録第1204134(JP,S)
【文献】
意匠登録第1412183(JP,S)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボトル胴部に一対の把持用凹部を備え、
前記把持用凹部は、縦方向に沿った縦周縁を有する縦長形状の外周縁を有し、
前記把持用凹部内には、縦方向及び横方向に対して傾斜した線状の傾斜リブが複数設けられ、
前記把持用凹部内に設けられた前記傾斜リブの全ては、前記把持用凹部の横断面における最深部を横切らず、当該傾斜リブに沿った線が、当該傾斜リブの一端からの延長で前記外周縁の縦長さ略中央を横切る中央線と平面視で交わり、当該傾斜リブの他端からの延長で前記縦周縁と平面視で交わり、
全ての前記傾斜リブの配置が、前記把持用凹部の中央部に対して放射状に設けられていることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【請求項2】
前記中央線上での前記把持用凹部の最深部位置から前記傾斜リブに沿った線と前記中央線との平面視交点までの距離は、前記中央線上での前記把持用凹部の最深部位置から前記外周縁までの距離に対して、10〜80%の距離であることを特徴とする請求項1記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項3】
前記中央線から前記傾斜リブに沿った線と前記縦周縁との平面視交点までの距離は、前記中央線から前記縦周縁の縦端までの距離に対して、20〜90%の距離であることを特徴とする請求項1又は2記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項4】
前記把持用凹部内には、当該把持用凹部の横断面における最深部を横切って一対の前記縦周縁の一方から他方に架け渡される横リブが少なくとも一つ形成され、前記傾斜リブは、前記横リブで区切られた前記把持用凹部内に形成されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項5】
前記傾斜リブは、前記中央線の上下に少なくとも一本設けられることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の合成樹脂製ボトル。
【請求項6】
前記傾斜リブの高さ又は深さが、0.2〜2mmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載の合成樹脂製ボトル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成樹脂製ボトル、特に、把持用凹部を有する合成樹脂製ボトルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
1.8〜4リットルのような比較的大容量の合成樹脂製ボトルにおいて、別パーツの把手を取り付け成形することに代えて、ボトルの胴部に一対の把持用凹部を設けたものが、油類、酒類、洗剤などの各種容器として一般に普及している。このような把持用凹部を有する合成樹脂製ボトルは、別パーツの把手を取り付けるものと比較して、コストダウンが可能であり、また、省資源、環境保全の要請に合致するものとして、多くの需要を得ている。
【0003】
把持用凹部を有するボトルは、凹部の強度確保や持ち易さ追求の観点から、凹部の内外にリブやビードを設けることがなされている。その一例として、凹部内に横方向に延設される複数のリブを設けたものが知られている。下記特許文献1に記載のものでは、凹部の底面に胴部の周方向及び口部の中心軸線方向の双方に対して傾斜する方向に延在した複数のリブを設けて、複数のリブ間の凹部にボトルを把持する際の指挿入部を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−314200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前述した従来技術は、ボトル軸に沿った縦長状の外周縁を有する把持用の凹部に対して、凹部の左右縁間に架け渡されるように横方向に延びるリブ(横リブ)を複数設けており、横リブによって凹部の補強を図ると共に、複数の横リブ間に指挿入部を形成してボトルの持ち易さを改善している。これによると、横リブによる補強で、凹部を掴んだときの変形量を抑えることができ、また、内圧が加わったときに凹部全体が膨出反転して内圧が低下しても元の状態に戻らない現象(バックリング)を回避することが可能になる。
【0006】
このような横リブを設けると、成形後のリーク試験時の内圧上昇や落下衝撃時に内容物から受ける衝撃荷重に対して、把持用凹部が完全に反転してしまうバックリング現象は避けることができる。しかしながら、このようなリブを設けたとしても、内圧の上昇などによって凹部が外側に膨らむ現象を完全に抑えることはできない。すなわち、従来技術のような横リブを設けているか否かに拘わらず、ボトルの内圧が上昇すると、把持用凹部は、その内圧によって外側に向けてある程度膨らみ、内圧が下がるとその膨らみは無くなって元の凹部の状態に戻る。そして、この膨らみの程度は、ボトルの軽量化により胴部の肉厚を薄く設計した場合には、より顕著になる。
【0007】
このような膨らみは、リーク試験などで加えられる内圧(27kPa程度)で確認でき、内圧を下げることで膨らみ自体は無くなるので、ボトルの容器としての機能に何ら悪影響を及ぼすことはない。しかしながら、外に向けて膨らむ際の変形で、把持用凹部内に周囲から中央付近に向けて折れスジが残ってしまうことがあり、この折れスジが製品の外観性を損ない、製品価値を低下させてしまう問題があった。特に、軽量化のために胴部の肉厚を薄く設計した場合には、このような折れスジが目立って残り易くなり、前述した問題がより顕在化することになる。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するために提案されたものである。すなわち、本発明の課題は、胴部に把持用凹部を有する合成樹脂製ボトルにおいて、ボトルの内圧上昇時に、凹部が外向きに膨らんだ際に生じる折れスジによる製品価値の低下を抑制すること、などが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
このような課題を解決するために、本発明による合成樹脂製ボトルは、以下の構成を具備するものである。
ボトル胴部に一対の把持用凹部を備え、前記把持用凹部は、縦方向に沿った縦周縁を有する縦長形状の外周縁を有し、前記把持用凹部内には、縦方向及び横方向に対して傾斜した線状の傾斜リブが
複数設けられ、
前記把持用凹部内に設けられた前記傾斜リブ
の全ては、前記把持用凹部の横断面における最深部を横切らず、当該傾斜リブに沿った線が、当該傾斜リブの一端からの延長で前記外周縁の縦長さ略中央を横切る中央線と平面視で交わり、当該傾斜リブの他端からの延長で前記縦周縁と平面視で交わ
り、全ての前記傾斜リブの配置が、前記把持用凹部の中央部に対して放射状に設けられていることを特徴とする合成樹脂製ボトル。
【発明の効果】
【0010】
このような特徴を有する合成樹脂製ボトルは、内圧の上昇によって把持用凹部が外側に膨らんで変形する際に、前述した構成によって把持用凹部の周囲から中央付近に向けて延びる傾斜リブが優先的に変形することになり、変形による折れスジを傾斜リブ内に誘導することができる。これによって、内圧が低下して膨らみが元の凹部に戻った際に、不規則な折れスジが残ってしまうのを回避することができ、折れスジが残ったとしても、傾斜リブ内に折れスジが形成されることになるので、外観性の悪化やそれによる製品価値の低下を抑止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の実施形態に係る合成樹脂製ボトルの把持用凹部を示した説明図((a)が平面図、(b)がA−A断面図)である。
【
図2】本発明の実施形態に係る合成樹脂製ボトルの把持用凹部を示した説明図であり、複数の傾斜リブを設けた例を示している。
【
図3】本発明の実施形態に係る合成樹脂製ボトルの把持用凹部を示した説明図((a)が平面図、(b)がA−A断面図)であり、横リブと傾斜リブを設けた例を示している。
【
図4】本発明の実施形態に係る合成樹脂製ボトルの全体構成を示した説明図((a)が外観図、(b)が(a)におけるA−A断面図)である。
【
図5】
図4に示した合成樹脂製ボトルの把持用凹部を示した説明図((a)が平面図、(b)が(a)のB−B断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。尚、ここでの縦又は縦方向は、ボトルを立てた状態での上下方向(鉛直に沿った方向)を指しており、横又は横方向は、ボトルを立てた状態での左右方向(水平に沿った方向)を指している。なお、以下の図において、異なる図における同一符号は、共通部位を指しており、重複説明を省略する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態に係る合成樹脂製ボトルの把持用凹部を示している。把持用凹部10はボトル胴部に一対設けられるが、ここではその一方を示している。把持用凹部10は、縦長形状の外周縁10Aを有している。図においては、縦長形状として、縦方向に沿った縦周縁10aと横方向に沿った横周縁10bを有する縦長矩形状の例を示しているが、これに限らず、縦方向に沿った縦周縁10aを有する長円形状などであってもよい。ここでの外周縁10Aは、明確なエッジによって特定される場合と、明確なエッジによって特定されない場合がある。明確なエッジによって特定されない場合は、最深部から最も近い凹部を形成する湾曲の開始点、或いは凹部を成形するための金型の外周縁に対応する位置で外周縁10Aを特定することができる。
【0014】
本発明の実施形態に係る合成樹脂製ボトルは、このような把持用凹部10内に、縦方向及び横方向に対して傾斜した傾斜リブ20が設けられる。傾斜リブ20は、ボトルの外側に突出する凸部であってもよいし、ボトルの内側に凹む凹部であってもよい。以下の図示では、ボトルの外側に突出する凸部として傾斜リブ20を説明する。
【0015】
傾斜リブ20は、線状に形成されている。図示の例では、傾斜リブ20は平面視で直線的に形成されているが、立体的にみると把持用凹部10の表面上に形成されるので、把持用凹部10の表面に沿った形状(例えば湾曲形状)になっている。また、傾斜リブ20は、平面視で直線的である必要は無く、平面視で曲線的に形成されていても良い。
【0016】
ここで、把持用凹部10内に形成される傾斜リブ20の形成状態を特定する上での仮想線として、図示の仮想線20L,10X,10Yを以下のように定義する。仮想線20Lは、傾斜リブ20に沿った線を傾斜リブ20の形成範囲から更に延長した線である。仮想線10Xは、把持用凹部10の外周縁10Aの縦長さ略中央を横切る線である(以下、中央線10Xという。)。また、仮想線10Yは、把持用凹部10の横断面における最深部を連ねた線である。図示の例では、把持用凹部10の横幅の中央を連ねた線が仮想線10Yになっている。
【0017】
このような仮想線によって特定される傾斜リブ20の形成条件は、以下のとおりとなる。一つには、仮想線20Lの一端側の延長(仮想線20Lの傾斜リブ20の一端からの延長)が中央線10Xと平面視で交わる。一つには、仮想線20Lの他端側の延長(仮想線20Lの傾斜リブ20の一端からの延長)が縦周縁10aと平面視で交わる。また、傾斜リブ20が把持用凹部10の横断面における最深部を横切らない(すわわち、傾斜リブ20の形成範囲内において、仮想線20Lが仮想線10Yを横切らない。)。
【0018】
このように形成された傾斜リブ20は、ボトル内圧の上昇によって把持用凹部10が外側に膨らんで変形する際に、傾斜リブ20が優先的に変形することになり、変形による折れスジを傾斜リブ20内に誘導することができる。これによって、ボトルの内圧が低下して把持用凹部10の膨らみが元の凹部に戻った際に、不規則な折れスジが残ってしまうのを回避することができ、折れスジが残ったとしても、傾斜リブ20内に折れスジが形成されることになるので、外観性の悪化やそれによる製品価値の低下を抑止することができる。
【0019】
このような傾斜リブ20は、把持用凹部10内に、一つ設けることで、それに応じた効果を得ることができるが、複数設けることで、より高い効果を得ることができる。その際、
図2に示すように、中央線10Xの上下に少なくとも一つずつ設けることが好ましく、更には、把持用凹部10の中央部10Pに対して放射状に複数設けることが好ましい。
【0020】
傾斜リブ20の傾き程度は、
図1に示すように、中央線10X上での把持用凹部10の最深部位置(中央線10Xと仮想線10Yの平面視交点P)から仮想線20Lと中央線10Xとの平面視交点までの距離Xと、中央線10Xから傾斜リブ20に沿った線と縦周縁10aとの平面視交点までの距離Yによって設定される。ここでは、距離Xは、平面視交点Pから外周縁10Aまでの距離X
0に対して、10〜80%の距離(X/X
0=0.1〜0.8)にすることが好ましい。また、距離Yは、中央線10Xから縦周縁10aの縦端までの距離Y
0に対して、20〜90%の距離(Y/Y
0=0.2〜0.9)にすることが好ましい。このように傾斜リブ20の傾き程度を設定することで、縦長形状の外周縁10Aを有する把持用凹部10において、内圧上昇時の膨らみによって生じる折れスジを適正に傾斜リブ20内に誘導することができる。
【0021】
図3は、前述した従来技術のような横リブを備えている把持用凹部に対して傾斜リブを設けた例を示している。ここでは、横リブ30を中央線10Xに沿って一つ形成した例を示しているが、横リブ30は、必要な箇所に単数又は複数設けることができる。
【0022】
横リブ30は、把持用凹部10内において、把持用凹部10の最深部を横切って一対の縦周縁10aの一方から他方に架け渡されている。これに対して、傾斜リブ20は、横リブ30で区切られた把持用凹部10内に形成されている。すなわち、把持用凹部10は、横リブ30を設けることで複数の指挿入部に区切られることになるが、そのような場合には、指挿入部毎に傾斜リブ20を設けることで、効果的に膨らみ時の折れスジを傾斜リブ20内に誘導することができる。この際の傾斜リブ20の形成条件は、横リブ30の有無とは無関係に、前述した例と同様に設定することができる。
【0023】
図4は、本発明の実施形態に係る合成樹脂製ボトルを示している。合成樹脂製ボトル1は、口部2、胴部3および底部4からなるボトル本体5の胴部3に、一対の把持用凹部10を設けてなり、この一対の把持用凹部10の回りに平面部6を設けている。
【0024】
ボトル本体5は、筒体をなし、口部2には注ぎ口2Aとキャップを止めるための螺子部2Bが設けられている。胴部3は、強度上から断面形状が円形をなしているが、多角形でも良い。この胴部3の上部には肩部パネル7が設けられ、中間部にある一対の把持用凹部10の間には背面パネル8が設けられ、この背面パネル8の反対側にはラベルを貼るためのラベル部9が設けられている。
【0025】
一対の把持用凹部10は、ボトル本体5の胴部3の中間部両側に設けられ、縦長の矩形をなした凹部であり、その凹部の底には3本の横リブ30がほぼ等間隔且つ胴部3の径方向に設けられている。このように構成された一対の把持用凹部10は、平面部6にて囲われているので、両側の把持用凹部10および平面部6全体がパネルとして作用し、そのパネル効果により、前述した肩部パネル7および背面パネル8ならびに底部4と相俟って、容積変化を吸収することができる。
【0026】
これにより、肩部パネル7および背面パネル8ならびに底部4だけでは、その容積変化を吸収することができないような大きな容積変化があっても、これにプラスして両側の把持用凹部10および平面部6の全体により、その大きな容積変化を吸収して、ラベル部9を凹ましたりする変形が起きないようにしている。また、図示の例では、ラベル部9に横ビード9Aを設けることで、ラベル部9を更に補強している。
【0027】
また、この合成樹脂製ボトル1は、把持用凹部10の周りの平面部6の上下端部に接続して径方向に延びる凹状の横ビード11,11’が周設してある。平面部6と横ビード11,11’との接続部は、傾斜部12となっている。この周囲凹状の横ビード11,11’により、胴部3が、把持力や減圧力によって変形することが少なくなっている。横ビード11,11’は、必ずしも傾斜部12によって平面部6に接続している必要はなく、少しの間隔を空けて平面部6に隣接させていてもよい。また、横ビード11,11’は上側または下側だけに設けてもよい。
【0028】
把持用凹部10の径断面における両最深部10Sと胴部3の軸中心Tとを通る一点鎖線13,13により形成する角度θは、120゜以上180゜の範囲、すなわち、120゜≦θ≦180゜の範囲にあり、その結果、胴部3を手指と掌とで持ち易くなる。角度θが120゜より小さいと(θ<120゜)、両把持用凹部10間において手指の掛かりが少なくなって持ちづらくなり、θが180゜を超えると(θ>180゜)、両把持用凹部6間の手指の掛かりが多くなりすぎて、逆に持ちづらくなる。
【0029】
把持用凹部10に設けられた横リブ30は、図示した例では、凹部の底からの頂面高さが3ないし6mmで、そのピッチが20ないし25mmある。この把持用凹部10の3本の横リブ30は、耐バックリング強度を向上させるため、或いは把持用凹部10の把持強度を高めるために設けられている。そして、一方の把持用凹部10における3本の横リブ30のいずれかの間に形成された指挿入部には親指を、他方の把持用凹部10における3本の横リブ30の間に形成される指挿入部には残りの指を入れることで、胴部3をしっかりと把持することができる。すなわち、これら3本の横リブ30は、把持用凹部10内を複数の指挿入部に区切って、合成樹脂製ボトル1を持ち易くする機能を有している。
【0030】
このような把持用凹部10において、
図5に示すように、横リブ30によって区切られた指挿入部内に前述した傾斜リブ20が設けられている。傾斜リブ20は、その高さ(又は深さ)が0.2〜2mm程度、その幅が1〜4mm程度に形成されている。図示の例では、横リブ30で区切られた一つの指挿入部内に左右2つの傾斜リブ20が設けられ、把持用凹部10内の全体では、上下及び左右に対称となるように、4つの傾斜リブ20が設けられている。ここで、傾斜リブ20の高さ(又は深さ)は、0.2mmより小さいと傾斜リブ20の折れスジを誘導する効果が得られ難く、2mmより大きいと成形時に傾斜リブの金型内に樹脂が入り難くなって賦形が困難となる。
【0031】
成形後のリーク試験などで、合成樹脂製ボトル1の内圧を27kPa程度に上昇させた場合には、把持用凹部10は横リブ30による補強でバックリングは回避することができるが、圧力に応じて指挿入部が外側に膨らむ現象は避けられない。この膨らみは、合成樹脂製ボトル1の軽量化を図るために胴部3の肉厚を薄くするとより顕著に現れる。前述したように傾斜リブ20は、この膨らみによる折れスジ発生を傾斜リブ20内に誘導することで、外観性の劣化を抑止している。傾斜リブ20は、前述した形成条件の範囲内であれば、直線的な線状リブに限らず、デザイン性を考慮した各種の形状にすることが可能である。これによって、仮にリーク試験の内圧上昇後に折れスジが残ったとしても、これを傾斜リブ20内に収めて目立たなくすることができる。
【0032】
合成樹脂製ボトル1を構成する材料は特に限定されるものではなく、例示するならば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、共重合ポリエステル等を採用することができる。また、この合成樹脂製ボトル1の容量も、特に限定されるものではないが、実用上1.8リットル、2.7リットル、4リットル等の大型ボトルにおいてその効果を発揮することができる。また、その用途は使用頻度の高い内容物、例えば、酒精、食用油、醤油その他の調味料等が例示される。
【0033】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこれらの実施の形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。また、上述の各実施の形態は、その目的及び構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0034】
1:合成樹脂製ボトル,2:口部,2A:注ぎ口,2B:螺子部,
3:胴部,4:底部,5:ボトル本体,
6:平面部,7:肩部パネル,8:背面パネル,
9:ラベル部,9A:横ビード,
10:把持用凹部,10S:最深部,
10A:外周縁,10a:縦周縁,10X:仮想線(中央線),10Y:仮想線,
11,11’:横ビード,12:傾斜部,13:一点破線,
20:傾斜リブ,20L:仮想線,
30:横リブ