特許第6676961号(P6676961)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6676961
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】空気圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04B 49/10 20060101AFI20200330BHJP
【FI】
   F04B49/10 331C
【請求項の数】10
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2015-252335(P2015-252335)
(22)【出願日】2015年12月24日
(65)【公開番号】特開2017-115705(P2017-115705A)
(43)【公開日】2017年6月29日
【審査請求日】2018年9月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】特許業務法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野田 貴史
(72)【発明者】
【氏名】横田 伴義
(72)【発明者】
【氏名】圷 康輔
(72)【発明者】
【氏名】保科 壮希
【審査官】 井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭50−104080(JP,A)
【文献】 特開2010−014057(JP,A)
【文献】 特開2001−141598(JP,A)
【文献】 特開2004−157055(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 49/10
F04B 49/06
F04B 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮空気生成部と、前記圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気を貯留する空気タンクと、前記空気タンクの内圧を検出する圧力センサと、前記圧縮空気生成部を制御する制御部と、を備える空気圧縮機であって、
前記空気タンクの内圧が所定の範囲内に維持されるように前記圧縮空気生成部が制御される通常運転モードと、前記空気タンクの内圧の変化に基づいてエア漏れが検出されるエア漏れ検出モードと、を含む複数の運転モードのうちから任意の運転モードを選択可能であり、
前記制御部は、前記エア漏れ検出モードが選択されると、
前記空気タンクの内圧を測定して事前測定値を取得し、取得された前記事前測定値が所定の基準値よりも大きい場合には、前記空気タンクの内圧を測定して第1測定値を取得し、取得された前記事前測定値が前記基準値よりも小さい場合には、前記圧縮空気生成部の作動によって前記空気タンクの内圧を前記基準値よりも高い状態にし、かつ前記圧縮空気生成部が停止してから第2所定時間が経過した後に前記空気タンクの内圧を測定して前記第1測定値を取得し、
前記第1測定値を取得してから第1所定時間が経過した後に前記空気タンクの内圧を再度測定して第2測定値を取得し、
前記第1測定値と前記第2測定値との差分値を第1基準値と比較し、
前記差分値が前記第1基準値よりも大きい場合にはエア漏れありと判定し、前記差分値が前記第1基準値よりも小さい場合にはエア漏れなしと判定する、
空気圧縮機。
【請求項2】
エア漏れありと判定した前記制御部は、その判定結果を音と光の少なくとも一方によって報知する、請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項3】
前記制御部によって制御されるLEDを有し、
エア漏れありと判定した前記制御部は、前記LEDを点灯または点滅させて判定結果を報知する、
請求項に記載の空気圧縮機。
【請求項4】
前記制御部によって制御されるスピーカを有し、
エア漏れありと判定した前記制御部は、前記スピーカに報知音を発せさせて判定結果を報知する、
請求項に記載の空気圧縮機。
【請求項5】
前記基準値,第1基準値,第1所定時間の少なくとも1つを変更可能である、請求項1〜のいずれか一項に記載の空気圧縮機。
【請求項6】
前記第2所定時間を変更可能である、請求項に記載の空気圧縮機。
【請求項7】
前記第1所定時間が経過するまでの間、前記圧縮空気生成部の動力源であるモータを運転させない、請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項8】
前記制御部は、判定結果を報知した後に、前記空気タンクから圧縮空気が漏れ出さないように電磁バルブを制御する、請求項に記載の空気圧縮機。
【請求項9】
前記第1測定値と前記第2測定値は、複数回測定した圧力の平均値である、請求項1に記載の空気圧縮機。
【請求項10】
圧縮空気生成部と、前記圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気を貯留する空気タンクと、前記空気タンクの内圧を検出する圧力センサと、前記圧縮空気生成部を制御する制御部と、を備える空気圧縮機であって、
前記空気タンクの内圧が所定の範囲内に維持されるように前記圧縮空気生成部が制御される通常運転モードと、前記空気タンクの内圧の変化に基づいてエア漏れが検出されるエア漏れ検出モードと、を含む複数の運転モードのうちから任意の運転モードを選択可能であり、
前記制御部は、前記エア漏れ検出モードが選択されると、
前記空気タンクの内圧を測定して事前測定値を取得し、取得された前記事前測定値が第1の基準値よりも大きい場合には、前記空気タンクの内圧を測定して第1測定値を取得し、取得された前記事前測定値が前記第1の基準値よりも小さい場合には、前記圧縮空気生成部の作動によって前記空気タンクの内圧を前記第1の基準値よりも高い状態にし、かつ前記圧縮空気生成部が停止してから第2所定時間が経過した後に前記空気タンクの内圧を測定して前記第1測定値を取得し、
前記第1測定値を取得してから第1所定時間が経過した後に前記空気タンクの内圧を再度測定して第2測定値を取得し、
前記第1測定値と前記第2測定値との圧力変化率をあらかじめ決められている第2の基準値と比較し、
前記圧力変化率が前記第2の基準値よりも大きい場合にはエア漏れありと判定し、前記圧力変化率が前記第2の基準値よりも小さい場合にはエア漏れなしと判定する、
空気圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は空気圧縮機に関するものであり、特に、空気工具(釘打機やネジ打機)等に用いられる空気圧縮機であって、圧縮空気生成部と圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気を貯留するタンクとを備える空気圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機は、圧縮空気生成部と、圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気を貯留するタンクと、を有する。例えば、圧縮空気生成部は、動力源と、動力源から出力される駆動力によって往復駆動されるピストンと、ピストンを往復動可能に収容し、ピストンの往復動に伴って容積が変化するシリンダと、を含む。動力源には、回転駆動力を出力する電動モータが用いられることがあり、この場合、電動モータから出力される回転駆動力は、変換機構によって往復駆動力に変換されてピストンに伝達される。
【0003】
シリンダ内のピストンが上死点から下死点に移動すると、シリンダの容積が拡大してシリンダ内が負圧になり、シリンダ内に空気が導入される。シリンダ内に導入された空気は、シリンダ内を下死点から上死点に移動するピストンによって圧縮され、圧力が高められる。圧縮された空気(高圧空気)は、所定の配管を介してタンクに送られ、該タンクに貯留される。
【0004】
特許文献1には、圧縮機本体への電力供給がOFF状態になると、通電状態の時にあらかじめ蓄電池に蓄えられていた電力が報知手段へ供給され、この報知手段によって空気タンクの残圧が作業者へ報知される空気圧縮機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−14057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
空気工具(釘打機やネジ打機)等に用いられる空気圧縮機においては、エアー漏れを検出するために石鹸水などを用いられており、空気圧縮機本体のみで作業者が簡単にエア漏れを確認することができなかった。
【0007】
本発明の目的は、エア漏れを検出する機能を備えた空気圧縮機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の空気圧縮機は、圧縮空気生成部と、前記圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気を貯留する空気タンクと、前記空気タンクの内圧を検出する圧力センサと、前記圧縮空気生成部を制御する制御部と、を備える。また、本発明の空気圧縮機では、前記空気タンクの内圧が所定の範囲内に維持されるように前記圧縮空気生成部が制御される通常運転モードと、前記空気タンクの内圧の変化に基づいてエア漏れが検出されるエア漏れ検出モードと、を含む複数の運転モードのうちから任意の運転モードを選択可能である。前記制御部は、前記エア漏れ検出モードが選択されると、前記空気タンクの内圧を測定して第1測定値を取得し、前記第1測定値を取得してから第1所定時間が経過した後に前記空気タンクの内圧を再度測定して第2測定値を取得し、前記第1測定値と前記第2測定値との差分値を第1基準値と比較し、前記差分値が前記第1基準値よりも大きい場合にはエア漏れありと判定し、前記差分値が前記第1基準値よりも小さい場合にはエア漏れなしと判定する。
【0009】
本発明の一態様では、前記制御部は、前記エア漏れ検出モードが選択されると、前記第1測定値を取得する前に、前記空気タンクの内圧を測定して事前測定値を取得し、前記事前測定値と第2基準値とを比較し、前記事前測定値が前記第2基準値よりも大きい場合には前記第1測定値を取得し、前記事前測定値が前記第2基準値よりも小さい場合には、前記圧縮空気生成部を作動させて前記空気タンクの内圧を前記第2基準値よりも高い状態にした後に前記第1測定値を取得する。
【0010】
本発明の他の態様では、前記制御部は、前記圧縮空気生成部を作動させて前記空気タンクの内圧を前記第2基準値よりも高い状態にしてから第2所定時間が経過した後に前記第1測定値を取得する。
【0011】
本発明の他の態様では、エア漏れありと判定した前記制御部は、その判定結果を音と光の少なくとも一方によって報知する。
【0012】
本発明の他の態様では、前記制御部によって制御されるLEDが設けられ、エア漏れありと判定した前記制御部は、前記LEDを点灯または点滅させて判定結果を報知する。
【0013】
本発明の他の態様では、前記制御部によって制御されるスピーカが設けられ、エア漏れありと判定した前記制御部は、前記スピーカに報知音を発せさせて判定結果を報知する。
【0014】
本発明の他の態様では、前記第1基準値,第2基準値,第1所定時間の少なくとも1つを変更可能である。
【0015】
本発明の他の態様では、前記第2所定時間を変更可能である。
【0016】
本発明の他の態様では、前記第1所定時間が経過するまでの間、前記圧縮空気生成部の動力源であるモータを運転させない。
【0017】
本発明の他の態様では、前記制御部は、判定結果を報知した後に、前記空気タンクから圧縮空気が漏れ出さないように電磁バルブを制御する。
【0018】
本発明の他の態様では、前記第1測定値と前記第2測定値は、複数回測定した圧力の平均値である。
【0019】
本発明の他の態様では、空気圧縮機は、圧縮空気生成部と、前記圧縮空気生成部によって生成された圧縮空気を貯留する空気タンクと、前記空気タンクの内圧を検出する圧力センサと、前記圧縮空気生成部を制御する制御部と、を備える。この空気圧縮機では、前記空気タンクの内圧が所定の範囲内に維持されるように前記圧縮空気生成部が制御される通常運転モードと、前記空気タンクの内圧の変化に基づいてエア漏れが検出されるエア漏れ検出モードと、を含む複数の運転モードのうちから任意の運転モードを選択可能である。前記制御部は、前記エア漏れ検出モードが選択されると、前記空気タンクの内圧を測定して第1測定値を取得し、前記第1測定値を取得してから第1所定時間が経過した後に前記空気タンクの内圧を再度測定して第2測定値を取得し、前記第1測定値と前記第2測定値との圧力変化率をあらかじめ決められている基準値と比較し、前記圧力変化率が前記基準値よりも大きい場合にはエア漏れありと判定し、前記圧力変化率が前記基準値よりも小さい場合にはエア漏れなしと判定する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、エア漏れを検出する機能を備えた空気圧縮機が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】エアコンプレッサの外観を示す図である。
図2】エアコンプレッサの内部構造を示す図である。
図3】操作パネルを示す図である。
図4】制御部の構成を示す図である。
図5】通常運転モード選択時におけるタンク内圧の変化を示す図である。
図6】エア漏れ検出モード選択時における制御フローを示す図である。
図7】エア漏れ検出モード選択時におけるタンク内圧の変化の一例を示す図である。
図8】エア漏れ検出モード選択時におけるタンク内圧の変化の他の一例を示す図である。
図9】エアコンプレッサの使用状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の空気圧縮機の実施形態の一例について説明する。本実施形態に係る空気圧縮機は、電動モータ(以下「モータ」)を動力源とする圧縮空気生成部を備えるレシプロ型のエアコンプレッサである。本実施形態に係るエアコンプレッサの用途は特に限定されないが、圧縮空気の圧力によって釘やネジを木材などに打ち込む空気工具に圧縮空気を供給する供給源としての利用に適している。以下、本実施形態に係るエアコンプレッサについて図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
図1に示されるように、エアコンプレッサ1は、フレーム等の骨格部と、骨格部に連結された互いに平行な2つの空気タンク10a,10bと、を含む基台11を有する。それぞれの空気タンク10a,10bの両端部下面には脚部12が取り付けられており、エアコンプレッサ1は、4つの脚部12によって所望の設置場所に置かれる。また、基台11の両端部にはハンドル13が設けられており、作業者は、ハンドル13を把持してエアコンプレッサ1を持ち運ぶことができる。
【0024】
図2に示されるように、基台11には圧縮空気生成部20が搭載されている。圧縮空気生成部20は、動力源であるモータ21と、クランクケース22と、2つのシリンダ(第1シリンダ23A,第2シリンダ23B)と、を含む。通常、圧縮空気生成部20は、図1に示されるカバー14によって覆われている。
【0025】
再び図2を参照すると、モータ21は、ステータ21aと、ステータ21aの内側に組み込まれたロータ21bと、ロータ21bと一体化された回転軸(モータ回転軸21c)と、ロータ21bの回転位置を検出するホール素子などを有する。つまり、モータ21はDCブラシレスモータである。モータ21は、クランクケース22の外に配置されているが、クランクケース22のカバーに固定されており、クランクケース22と一体化されている。
【0026】
モータ回転軸21cは、ロータ21bを貫通してロータ21bの軸方向両側に突出している。ロータ21bの軸方向一方側に突出しているモータ回転軸21cの突出部は、クランクケース22を貫通しており、クランクケース22に設けられている軸受によって回転自在に支持されている。
【0027】
クランクケース22を挟んでモータ21と反対側には、モータ21をインバータ制御するための半導体スイッチング素子などが搭載された回路基板を含む制御部30が配置されている。制御部30は、クランクケース22と対向するように配置され、空気タンク10bに固定されている。
【0028】
第1シリンダ23Aおよび第2シリンダ23Bは、クランクケース22の両側に設けられている。第1シリンダ23Aと第2シリンダ23Bは、モータ回転軸21cの回転方向に関して180度異なる位置に配置されており、第1シリンダ23Aには第1ピストン23aが往復動可能に収容され、第2シリンダ23Bには第2ピストン23bが往復動可能に収容されている。
【0029】
モータ回転軸21cの回転運動を第1ピストン23aの往復運動に変換するために、第1ピストン23aには、第1コネクティングロッドの一端がピン結合されており、第1コネクティングロッドの他端は、モータ回転軸21cに装着されている偏心カムに回転自在に結合されている。また、モータ回転軸21cの回転運動を第2ピストン23bの往復運動に変換するために、第2ピストン23bには、第2コネクティングロッドの一端がピン結合されており、第2コネクティングロッドの他端は、モータ回転軸21cに装着されている他の偏心カムに回転自在に結合されている。そこで、以下の説明では、モータ回転軸21cを“クランクシャフト21c”と呼ぶ場合がある。モータ21から出力される回転駆動力は、クランクシャフト21c,偏心カムおよびコネクティングロッド(第1コネクティングロッド,第2コネクティングロッド)からなる変換機構によって往復駆動力に変換されてピストン(第1ピストン23a,第2ピストン23b)に伝達される。
【0030】
第1ピストン23aが第1シリンダ23Aの上室を圧縮する方向に駆動されるとき、第2ピストン23bは第2シリンダ23Bの上室を膨張させる方向に駆動される。一方、第2ピストン23bが第2シリンダ23Bの上室を圧縮する方向に駆動されるとき、第1ピストン23aは第1シリンダ23Aの上室を膨張させる方向に駆動される。
【0031】
それぞれのシリンダ23A,23Bのシリンダヘッドの内側には、バッファ室が設けられている。第1ピストン23aが第1シリンダ23Aの上室を圧縮する方向に駆動され、上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第1シリンダ23Aの上室とバッファ室との間にある逆止弁が開かれる。すると、第1ピストン23aによって圧縮された空気は、第1シリンダ23Aと第2シリンダ23Bとを連通させている第1配管24を介して第2シリンダ23Bの上室に送られる。
【0032】
第2ピストン23bが第2シリンダ23Bの上室を圧縮する方向に駆動され、上室内の空気の圧力が所定圧力よりも高くなると、第2シリンダ23Bの上室とバッファ室との間にある逆止弁が開かれる。すると、第2ピストン23bによって圧縮された空気は、第2シリンダ23Bと空気タンク10aとを連通させている第2配管を介して空気タンク10aに送られ、貯留される。尚、空気タンク10a,10bは第3配管を介して互いに連通している。よって、空気タンク10a,10b内の圧力は均等に保たれる。
【0033】
ここで、図2に示される第1シリンダ23Aの上室には外気が導入される。すなわち、第1ピストン23aは外気を圧縮し、第2ピストン23bは、第1ピストン23aによって圧縮された外気(空気)をさらに圧縮する。換言すれば、第1ピストン23aは1段目の低圧用のピストンであり、第2ピストン23bは2段目の高圧用のピストンである。また、第1シリンダ23Aは1段目の低圧用のシリンダであり、第2シリンダ23Bは2段目の高圧用のシリンダである。このように、本実施形態に係るエアコンプレッサ1は、空気を2段階で圧縮する。具体的には、第1ピストン23aによって1.0[MPa]前後の圧縮空気を生成し、第2ピストン23bによって4.0〜4.5[MPa]程度の圧縮空気を生成する。
【0034】
図1に示されるように、空気タンク10a,10bの端部上方には、圧縮空気の取り出し口であるカプラ15a,15bが設けられている。さらに、空気タンク10a,10bとカプラ15a,15bとの間には、圧縮空気の圧力を調節する減圧弁16a,16bがそれぞれ設けられている。減圧弁16a,16bによって調節された圧縮空気の圧力は、それぞれの減圧弁16a,16bの近傍に設置されている圧力計17a,17bによって計測され、表示される。
【0035】
また、図2に示されるように、空気タンク10aには、空気タンク10a,10b内の圧力が所定圧力よりも高くなると自動的に開く安全弁18aが設けられている。一方、空気タンク10bにはドレン装置18bが設けられており、ドレン装置18bが操作されると、空気タンク10a,10b内の水分が圧縮空気と一緒に排出される。図1に示されるように、カバー14の上面には操作パネル19が設けられており、この操作パネル19に設けられている不図示の入力部を介して、制御部30(図2)に各種の指令や命令が入力される。
【0036】
エアコンプレッサ1の運転中には、図2に示される圧縮空気生成部20や制御部30の温度が上昇する。そこで、エアコンプレッサ1には、クランクケース22を挟んで対向する2つの冷却ファン(第1冷却ファン25a,第2冷却ファン25b)が設けられている。第1冷却ファン25aは、主に圧縮空気生成部20に冷却風を供給するための冷却ファンであって、モータ21を挟んでクランクケース22と対向する位置に配置されている。第2冷却ファン25bは、主に制御部30に冷却風を供給するための冷却ファンであって、クランクケース22と制御部30との間に配置されている。
【0037】
ここで、本実施形態に係るエアコンプレッサ1は複数の運転モードを有する。使用者は、エアコンプレッサ1が有する複数の運転モードのうちから任意の運転モードを選択可能である。具体的には、エアコンプレッサ1は、“通常運転モード”および“エア漏れ検出モード”の少なくとも2つの運転モードを有する。図3に示されるように、操作パネル19には、モード切替スイッチ26が設けられており、このモード切替スイッチ26が押されると、通常運転モードが選択される。また、モード切替スイッチ26が長押しされると(例えば、モード切替スイッチ26が押された状態が5秒以上継続すると、)、エア漏れ検出モードが選択される。換言すれば、モード切替スイッチ26が長押しされると、運転モードが通常運転モードからエア漏れ検出モードに切り替わる。
【0038】
図4に示されるように、制御部30は、中央処理ユニット(以下「CPU」)31,ランダムアクセスメモリ(以下「RAM」)32,リードオンリーメモリ(以下「ROM」)33およびタイマ34を有し、上記のようにして選択された運転モードに従って圧縮空気生成部20を制御する。尚、ROM33には、圧縮空気生成部20を制御するための制御プログラムが格納されており、RAM32は、制御プログラムの実行に必要なデータや演算結果を一時的に格納するために用いられる。
【0039】
また、空気タンク10bには、空気タンク10bの内圧を検出する圧力センサ35が設けられている。圧力センサ35は、空気タンク10bの内圧に応じた電気信号(検出信号)を制御部30に出力する。尚、空気タンク10bの内圧と空気タンク10a(図1)の内圧とが均等に保たれることは既述のとおりである。そこで、以下の説明では、空気タンク10a,10aの内圧を“タンク内圧”と総称する。つまり、圧力センサ35によってタンク内圧が検出され、その検出結果が制御部30に入力される。通常、圧力センサ35は、所定のサンプリング周期でタンク内圧を検出し、検出信号を制御部30に出力する。本実施形態における圧力センサ35は1秒毎にタンク内圧を検出し、検出信号を制御部30に出力する。制御部30は、圧力センサ35によって検出されたタンク内圧を示す数値を操作パネル19に設けられている表示部27に表示する。
【0040】
制御部30は、制御プログラムに基づき、かつ、選択されている運転モードに応じて圧縮空気生成部20を制御する。以下、制御部30によって実行される制御を通常運転モード選択時とエア漏れ検出モード選択時とに分けて説明する。
【0041】
(通常運転モード選択時)
図4に示されている制御部30は、タンク内圧が所定の範囲内に維持されるように、圧縮空気生成部20を制御する。具体的には、制御部30は、図5に示されるように、タンク内圧が所定の下限値(Pmin)と所定の上限値(Pmax)との間に維持されるように、圧縮空気生成部20を制御する。図1等に示されている空気タンク10a,10bに貯留されている圧縮空気が消費されると、タンク内圧が低下する。そこで、図4に示されている制御部30は、タンク内圧が下限値(Pmin)まで低下すると圧縮空気生成部20(モータ21)を作動させて圧縮空気を生成する。その後、タンク内圧が上限値(Pmax)まで上昇すると、制御部30は圧縮空気生成部20(モータ21)を停止させて圧縮空気の生成を中止する。その後、タンク内圧が再び下限値(Pmin)まで低下すると、制御部30は圧縮空気生成部20(モータ21)を再び作動させて圧縮空気の生成を再開する。
【0042】
このように、通常運転モードが選択されると、制御部30は、圧縮空気生成部20(モータ21)を断続的に作動させて、タンク内圧を下限値(Pmin)と上限値(Pmax)との間に維持する。本実施形態では、下限値(Pmin)は2.3[MPa]に設定され、上限値(Pmax)は4.3[MPa]に設定されている。また、上記のような圧縮空気生成部20(モータ21)の作動および停止のタイミングが圧力センサ35によるタンク内圧の検出結果に基づいて判断されることはもちろんである。
【0043】
(エア漏れ検出モード選択時)
図4に示されている制御部30は、エア漏れ検出モードが選択されると、図6に示されているエア漏れ検出用の制御フローを実行する。エア漏れ検出モードが選択されると、制御部30はステップ101を実行する。ステップ101において、制御部30は、図4に示されているタイマ34のカウントをリセットするとともに、タンク内圧を測定して測定値を取得する。具体的には、制御部30は、エア漏れ検出モードが選択されたときに圧力センサ35によって検出されたタンク内圧を事前測定値(P0)としてRAM32に格納する。
【0044】
その後、制御部30は図6に示されているステップ102に移行する。ステップ102において、制御部30は、事前測定値(P0)と第2基準値(Ps)とを比較する。タンク内圧が低過ぎると、エア漏れの検出が不可能または困難になる。そこで、エア漏れ検出の可否を判定する基準値として第2基準値(Ps)が予め設定されている。図5に示されるように、本実施形態における第2基準値(Ps)は、下限値(Pmin)よりも大きく、かつ、上限値(Pmax)よりも小さい値に設定されている。換言すれば、本実施形態における第2基準値(Ps)は、下限値(Pmin)よりも高く、かつ、上限値(Pmax)よりも低い圧力である。ただし,エア漏れを測定する対象物によっては第2基準値(Ps)が下限値(Pmin)よりも小さい値に設置される場合もある。
【0045】
再び図6を参照する。制御部30は、ステップ102において事前測定値(P0)が第2基準値(Ps)よりも大きいと判断すると、ステップ103に移行する。一方、制御部30は、ステップ102において事前測定値(P0)が第2基準値(Ps)よりも小さいと判断すると、ステップ104に移行してモータ21(図4)を起動させ、事前測定値(P0)が第2基準値(Ps)よりも大きい状態になった後にステップ103に移行する。つまり、タンク内圧を第2基準値(Ps)よりも高い状態にした後にステップ103に移行する。
【0046】
ステップ103では、モータ21が運転されているか否か、つまりモータ21が回転しているか否かが判定される。制御部30は、ステップ103においてモータ21が回転していないと判断した場合にはステップ105に移行し、モータ21が回転していると判断した場合にはステップ201に移行する。
【0047】
ステップ105に移行した制御部30は、タンク内圧を再度測定して測定値を取得する。具体的には、制御部30は、圧力センサ35によって検出されたタンク内圧を第1測定値(P1)としてRAM32に格納する。なお、第1測定値(P1)は、測定ポイント付近で複数回測定した圧力の平均値であってもよい。
【0048】
一方、ステップ201に移行した制御部30は、ステップ201〜204を実行した後にステップ105を実行して第1測定値(P1)をRAM32に格納する。ステップ201に移行した制御部30は、ステップ104において起動させたモータ21を停止させる。続いて制御部30は、タイマ34にカウントを開始させる(ステップ202)。次に、制御部30は、第2所定時間が経過した後にタイマ34を停止させ、カウントをリセットした後にステップ105を実行する。具体的には、制御部30は、タイマ34のカウントが所定値(T2)に達したか否かを判定し(ステップ203)、カウントが所定値(T2)に達した場合にはステップ204に移行してタイマ34を停止させ、カウントをリセットした上でステップ105を実行する。
【0049】
ステップ105において第1測定値(P1)をRAM32に格納した制御部30は、ステップ106に移行してタイマ34にカウントを開始させる。次に、制御部30は、第1所定時間が経過した後にタイマ34を停止させ、カウントをリセットした後にステップ109に移行する。具体的には、制御部30は、タイマ34のカウントが所定値(T1)に達したか否かを判定し(ステップ107)、カウントが所定値(T1)に達した場合にはステップ108に移行してタイマ34を停止させ、カウントをリセットした上でステップ109に移行する。
【0050】
ステップ109に移行した制御部30は、タンク内圧を再度測定して測定値を取得する。具体的には、制御部30は、圧力センサ35によって検出されたタンク内圧を第2測定値(P2)としてRAM32に格納する。なお、第2測定値(P2)は、測定ポイント付近で複数回測定した圧力の平均値であってもよい。
【0051】
続くステップ110では、ステップ105において取得された第1測定値(P1)とステップ109において取得された第2測定値(P2)との差が第1基準値(Pj)と比較される。具体的には、制御部30は、RAM32に格納されている第1測定値(P1)と第2測定値(P2)との差分値△P(P1−P2)を算出し、これを予め設定されている第1基準値(Pj)と比較する。
【0052】
その後、制御部30は、差分値△P(P1−P2)が第1基準値(Pj)よりも大きい場合には“エア漏れあり”と判定してステップ111に移行し、操作パネル19に設けられているLED28を点灯させた上で処理を終了する。一方、差分値△P(P1−P2)が第1基準値(Pj)よりも小さい場合には“エア漏れなし”と判定し、LED28を点灯させることなく処理を終了する。つまり、第2基準値(Ps)はエア漏れ検出の可否を判定する閾値であるのに対し、第1基準値(Pj)は、エア漏れの有無を判定する閾値である。
【0053】
以上のように、エア漏れ検出モードが選択されると、事前に測定した第1測定値(P1)と、第1測定値(P1)を測定してから第1所定時間(T1)が経過した後に測定した第2測定値(P2)との差分値△P(P1−P2)と、第1基準値(Pj)と、が比較され、その比較結果に基づいてエア漏れの有無が判定される(図7)。換言すれば、一定時間内におけるタンク内圧の低下量が所定の閾値よりも大きいか否かによってエア漏れの有無が判定される。また、差分値△Pに変えて、第1測定値(P1)と第2測定値(P2)との間の圧力変化率(勾配)を求め、求められた圧力変化率(勾配)を予め決められている圧力変化率に関する基準値と比較し、圧力変化率が大きい場合(急勾配の場合)には“エア漏れあり”と判断し、圧力変化率が小さい場合(緩やかな勾配の場合)には“エア漏れなし”と判断してもよい。
【0054】
ここで、図6に示されるように、第1測定値(P1)の測定(ステップ105)に先立ってモータ21の回転の有無が判定される(ステップ103)。そして、モータ21が回転していない場合にはそのまま第1測定値(P1)が測定される一方、モータ21が回転している場合にはステップ201〜204が実行された後に第1測定値(P1)が測定される。このように、第1測定値(P1)の測定に先立ってモータ21の回転の有無を判定し、その判定結果によって制御を異ならせている理由について説明する。
【0055】
制御部30は、ステップ102において事前測定値(P0)が第2基準値(Ps)よりも小さいと判断すると、ステップ104に移行してモータ21を起動させ、タンク内圧を上昇させる。このときのタンク内圧の変化をグラフ化すると図8に示すようになる。つまり、モータ21を起動させて空気タンク10a,10b(図1)に圧縮空気を充填すると、温度上昇(圧縮熱)によってタンク内圧は一時的に高い値を示す。その後、モータ21を停止させると、空気タンク10a,10b内の圧縮空気の温度が低下し、これに伴ってタンク内圧も低下する。つまり、第1測定値(P1)を正確に測定するためには、温度変化によるタンク内圧の変化が落ち着くのを待つ必要がある。そこで、図6に示されている制御フローでは、ステップ104でモータ21を起動させてタンク内圧を上昇させた場合には、ステップ201〜204を実行してからステップ105が実行されるようになっている。要するに、ステップ201でモータ21を停止させた後、第2所定時間(T2)が経過してから第1測定値(P1)を測定するようになっている。
【0056】
図9は、エアコンプレッサ1の使用状態の一例を示している。図示されている使用状態では、エアコンプレッサ1とサブタンク40とがエアホース41を介して接続され、サブタンク40と空気工具50とがエアホース51を介して接続されている。図示されている空気工具50は、圧縮空気の圧力によって釘を木材などに打ち込む釘打機である。
【0057】
エアコンプレッサ1の空気タンク10a,10bに貯留されている圧縮空気は、エアホース41を経由してサブタンク40に送られ、サブタンク40に貯留される。サブタンク40に貯留されている圧縮空気は、エアホース51を経由して釘打機50に供給される。
【0058】
図9に示されるようにエアコンプレッサ1、サブタンク40および釘打機50がエアホース41,51を介して一連に接続されている場合、エアコンプレッサ1、エアホース41,51、サブタンク40および釘打機50のいずれかにおいてエア漏れが発生すると、エアコンプレッサ1の空気タンク10a,10bの内圧が低下する。
【0059】
従って、図9に示される接続状態の下でエア漏れ検出モードを実行した結果、“エア漏れあり”と判定されれば、エアコンプレッサ1、エアホース41,51、サブタンク40および釘打機50のいずれかにおいてエア漏れが発生していることがわかる。その後、釘打機50との接続を解除した上で再度エア漏れ検出モードを実行し、その結果、“エア漏れなし”と判定されれば、エア漏れの発生源は釘打機50であると特定できる。一方、“エア漏れあり”と判定されれば、エア漏れの発生源は釘打機50ではなく、釘打機50よりも上流側に位置しているサブタンク40、エアホース41、51またはエアコンプレッサ1であると特定できる。このように、エアコンプレッサ1に接続されているサブタンク40、エアホース41,51、釘打機50を順番に取り外しながらエア漏れ検出モードを複数回実行すれば、最終的にはエア漏れの発生源を特定することができる。
【0060】
このように、本実施形態に係るエアコンプレッサ1によれば、エアコンプレッサ自体におけるエア漏れはもちろんのこと、エアコンプレッサ1に接続されているサブタンク40、エアホース41,51、釘打機50におけるエア漏れも検出することができる。
【0061】
本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。例えば、第1基準値(Pj),第2基準値(Ps),第1所定時間(T1),第2所定時間(T2)の少なくとも1つを変更可能とすることができる。この場合、操作パネル19にある入力部を操作してそれぞれの値を任意の値に変更可能とすることができる。
【0062】
圧縮空気の温度変化に伴うタンク内圧の変化が無視または許容できる場合には、図6に示されるステップ201〜204を省略してもよい。
【0063】
上記実施形態では、エア漏れありと判定した制御部30は、その判定結果を光によって報知した。具体的には、制御部30は、操作パネル19に設けられているLED28を点灯させて判定結果を報知した。しかし、LED28を点滅させたり、それまで点灯していたLED28を消灯させたりして判定結果を報知してもよい。また、光に加えて、または、光に代えて音によって判定結果を報知してもよい。例えば、LED28に加えて、または、LED28に代えてスピーカを設け、スピーカに報知音やメッセージを発せさせて判定結果を報知してもよい。
【0064】
さらに、制御部30が判定結果を報知するとともに、図示しない電磁バルブ等の開閉手段を操作して、空気タンク10a,10bからエアホース41や空気工具50への圧縮空気の供給を自動で停止させる実施形態も本発明に含まれる。
【0065】
上記実施形態に係るエアコンプレッサ1は、2組のシリンダおよびピストンを備えた多段式の空気圧縮機であったが、シリンダおよびピストンは1組でも3組以上でもよい。また、本発明が適当される空気圧縮機はレシプロ型のエアコンプレッサに限られず、例えばロータリー型のエアコンプレッサに適用することもできる。
【符号の説明】
【0066】
1 エアコンプレッサ
10a,10b 空気タンク
19 操作パネル
20 圧縮空気生成部
21 モータ
21a ステータ
21b ロータ
21c モータ回転軸(クランクシャフト)
22 クランクケース
23A 第1シリンダ
23B 第2シリンダ
23a 第1ピストン
23b 第2ピストン
26 モード切替スイッチ
27 表示部
28 LED
30 制御部
32 RAM
33 ROM
34 タイマ
35 圧力センサ
40 サブタンク
41,51 エアホース
50 空気工具(釘打機)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9