(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記係止部の導電ワイヤ係止部分と前記ワイヤ支持部の導電ワイヤ巻回部分を結ぶ直線上からずれた位置に前記ワイヤ接続部が配設され、前記係止部の導電ワイヤ係止部分、前記ワイヤ支持部の導電ワイヤ巻回部分および前記ワイヤ接続部の部材間を引き廻される前記導電ワイヤが、これら部材間を蛇行するように張設されていることを特徴とする請求項1記載のコイル部品。
前記樹脂製ベース部上に、前記端子電極の、細長板状とされた導電接続片の脚部を嵌合させる嵌合孔が配されたリブ部を備えており、このリブ部は、該導電接続片の脚部に変形が生じていても、該導電接続片が傾くのを抑制し得る程度に深い嵌合孔を形成できる高さとされていることを特徴とする請求項5〜8のうちいずれか1項記載のコイル部品。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、近年、コイル部品の小型化についての要求が厳しく、また端子電極の長さに対する制限も厳しくなっており、上述した従来技術のような「突起部126b、127b」等を設けるスペースの余裕もなくなってきている。このような小型化の要請は今後、より厳しいものとなることが予想される。
さらに、上記従来技術においては、ボビン102と端子126、127との間の端末部121a、121bの一部は、コイル部品の外形表面に沿うことがない空中配線となってしまう。ここで、「空中配線」とは、導電ワイヤの両端を支持する支持部材の間に、導電ワイヤを支持するものはなく、導電ワイヤが空中を通すような状態である。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、端子電極から巻線部に導電ワイヤを導く際に、導電ワイヤを沿わせるための構造を設けるスペースがないような場合にも、空中配線が生じる虞を排除することができ、モールド工程等における断線の発生を防止することができるコイル部品およびコイル部品の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るコイル部品およびコイル部品の製造方法は、以下の特徴を備えている。
本発明に係るコイル部品は、
導電ワイヤと接続されるワイヤ接続部を有する端子電極と、この端子電極からの前記導電ワイヤを巻回してなる巻線部とを備えたコイル部品において、
前記端子電極において、前記ワイヤ接続部の前記巻線部側に、前記導電ワイヤの端部が係止される係止部を設け、
前記係止部からの前記導電ワイヤが前記ワイヤ接続部と電気的に接続され得るように、前記導電ワイヤを前記ワイヤ接続部内に通すように構成し、
前記ワイヤ接続部に通された前記導電ワイヤを支持する構造
からなるワイヤ支持部が前記ワイヤ接続部に対して前記係止部とは逆側に設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
また、前記
ワイヤ支持部が、前記端子電極の側部から側方に向けて突出する
構成であることが好ましい。
また、前記端子電極は、前記ワイヤ支持部を挟んで、前記ワイヤ接続部とは逆側に、前記ワイヤ支持部の長手方向に幅広とされた幅広部を有し、
この幅広部の、前記ワイヤ支持部側には、前記端子電極の側方から切込みが形成され、この切込みと前記ワイヤ支持部の前記側方側の先端部とが組み合わされてV字型切欠き部が形成され、
前記導電ワイヤは、前記ワイヤ支持部の周面を約半周巻回された状態で、前記V字型切欠き部に嵌め入れられるように構成されていることが好ましい。
【0011】
また、前記コイル部品の、前記端子電極の設置側には、樹脂製ベース部が設けられ、
前記樹脂製ベース部には、前記導電ワイヤを前記端子電極から前記巻線部まで案内するガイド部が形成され、
このガイド部は、少なくとも、前記導電ワイヤを表面に沿わせて前記コイル部品の横方向に案内する側面ガイド部材および底面ガイド部材と、これら側面ガイド部材および底面ガイド部材よりも前記巻線部に近い位置に形成された、前記導電ワイヤを前記コイル部品の縦方向に案内する縦溝ガイド部材と、を備えていることが好ましい。
また、前記端子電極の前記ワイヤ支持部の上面と前記底面ガイド部材の底面とが面一となるように形成されていることが好ましい。
【0012】
また前記縦溝ガイド部材は、始端側と終端側の少なくとも一方の
前記導電ワイヤを嵌め入れて案内するリード溝を備え、
始端側と終端側のいずれか他方の導電ワイヤが、該リード溝よりも一段高い位置において前記リード溝と並行するようにして案内される台状部を備えていることが好ましい。
【0013】
また、前記導電ワイヤを挟んで前記台状部と対向する位置に、前記他方の導電ワイヤの、前記縦溝ガイド部材からのはずれを防止する庇部を設けていることが好ましい。
また、前記係止部の導電ワイヤ係止部分と前記ワイヤ支持部の導電ワイヤ巻回部分を結ぶ直線上からずれた位置に前記ワイヤ接続部が配設され、前記係止部の導電ワイヤ係止部分、前記ワイヤ支持部の導電ワイヤ巻回部分および前記ワイヤ接続部の部材間に引き廻される前記導電ワイヤが、これら部材間を蛇行するように張設されていることが好ましい。
【0014】
また、前記樹脂製ベース部上に、前記端子電極の、細長板状とされた導電接続片の脚部を嵌合させる嵌合孔が配されたリブ部を備えており、このリブ部は、該導電接続片の脚部に変形が生じていても、該導電接続片が傾くのを抑制し得る程度に深い嵌合孔を形成できる高さとされていることが好ましい。
【0015】
さらに、本発明に係るコイル部品の製造方法は、
導電ワイヤと接続されるワイヤ接続部を有する端子電極と、この端子電極からの前記導電ワイヤを巻回してなる巻線部とを備えたコイル部品の製造方法において、
前記端子電極において、前記ワイヤ接続部の前記巻線部側に設けられた係止部に前記導電ワイヤの始端部を係止し、
この後、前記導電ワイヤと前記端子電極との間に電気的な接続がなされ得るように、前記導電ワイヤを前記ワイヤ接続部に通し、
この後、前記導電ワイヤを前記巻線部側とは反対方向に案内し、迂回させて前記巻線部に導くことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明のコイル部品によれば、端子電極において、接続部のコイル部側に係止部が設けられている。その係止部に、導電ワイヤの端部(始端部)が係止されている。この後、導電ワイヤを従来のようにコイル部の方向に向かわせるのではなく、このコイル部とは逆側に位置する、導電ワイヤとの接続部に向かわせる。さらに、この接続部からの導電ワイヤを、この接続部に対して、前記係止部とは逆側に位置するワイヤ支持構造により支持させているので、この後、コイル部品の外形の適切な部分に沿わせながら、導電ワイヤを引き廻して、コイル部まで到達させることができる。
【0017】
また、本発明のコイル部品の製造方法においては、端子電極において、接続部のコイル部側に係止部を設けるようにしている。導電ワイヤの端部(始端部)を前記係止部に係止し、この後、導電ワイヤを従来のようにコイル部の方向に向かわせるのではなく、このコイル部とは逆側に位置する、導電ワイヤとの接続部に向かわせる。さらに、この接続部からの導電ワイヤを、巻線部とは反対方向に案内し、迂回させた後に巻線部に導くようにしている。
【0018】
したがって、本発明のコイル部品およびコイル部品の製造方法によれば、コイル部品等の小型化等に伴い、導電ワイヤをコイル部品の外形に沿わせて引き廻すスペース的な余裕がない状態においても、導電ワイヤにかかる応力を分散することができる。これと同時に、空中配線が生じる虞を排除することができ、モールド工程等において断線の発生を防止することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態に係るコイル部品について図面を参照しつつ説明する。本実施形態のコイル部品は、例えば、電磁弁に適用したものである。
【0021】
電磁弁は、例えば、自動車に搭載される各種機器の電気回路要素として使用されるものであり、防水や防塵のためにオーバーモールドを施したものがある。そのような電磁弁においては、モールド樹脂と導電ワイヤとの熱膨張係数の違いにより、導電ワイヤが大きな応力を受けることになる。特に、コイル部品に対して小型化の要請が強い場合等において、導電ワイヤが空中配線となってしまうと、この導電ワイヤの断線が生じる虞が大きい。
【0022】
そこで、本実施形態に係るコイル部品においては、端子電極からコイル部に導電ワイヤを直接引き渡さないようにしている。具体的には、端子電極からの導電ワイヤを、巻線部方向とは逆方向に一旦引出し、コイル部品の上方に形成した樹脂製のベース部の各部に沿うように迂回させる。その後、巻線部に供給することにより、空中配線が生じないようにしている。
【0023】
以下、本実施形態に係るコイル部品1を
図1を用いて説明する。
コイル部品1は、ボビン2と、一対の端子電極3A,3Bと、導電ワイヤ4と、ヨーク5と、導電ワイヤ4を沿わせて引き廻すベース部9を備えている。
ボビン2は、成形性、量産性、微細加工性、電気絶縁性、低廉性および機械的な強度等を考慮し、6,6−ナイロン等の熱可塑性樹脂を用いて成形されている。また、熱硬化性樹脂を使用することもできる。
また、このボビン2は、導電ワイヤ4が巻回される巻芯部6(
図6を参照)と、巻芯部6の両端部に形成された鍔部7,8を有し、さらに、鍔部7から連続する可塑性樹脂からなるベース部9と一体成形されている。なお、巻芯部6に導電ワイヤ4が巻回されて巻線部20が構成される。また、鍔部7には、後述のように、切欠部7Aを適宜に設けることができる。
【0024】
一対の端子電極3A,3Bは互いに対称形状とされており、リン青銅や真鍮等の金属板を打ち抜き加工することにより形成される。第1の端子電極3Aは、端子電極本体11Aと、この端子電極本体11Aから上方に突出する接続片13Aを有しており、一方、第2の端子電極3Bは、端子電極本体11Bと、この端子電極本体11Bから上方に突出する接続片13Bを有している。
【0025】
端子電極本体11A、11Bは、鍔部7から連続するベース部9に圧入されている。この端子電極本体11A、11Bをベース部9に圧入することにより、第1および第2の端子電極3A、3Bがボビン2に固定される。接続片13A、13Bは、端子電極本体11A、11Bの上部に連続しており、外部電源と電気的に接続される。
【0026】
また、導電ワイヤ4は、絶縁皮膜によって被覆された銅、アルミニウム等の線材からなる。
なお、絶縁皮膜には、加熱、有機溶剤の塗布、あるいは紫外線照射等により融解する材質が用いられている。この導電ワイヤ4は、所望の電磁気特性が得られるようなターン数で巻芯部6に巻回されている。
【0027】
また、ヨーク5は、コイル部品1の電磁作用を強化するために設けられたものであり、例えば、フランジ部(
図1において外表面に現れる面が周面とされる)を備えた形状とされており、バーリングプレス等の手法で形成されている。また、このヨーク5はインサート成形によってボビン2と一体に形成される。なお、ヨーク5には、後述のように、切欠部5Aを適宜に設けることができる。
また、鍔部7の、この切欠部5Aと対応した位置において、上述した切欠部7Aが設けられている。
また、ベース部9は6,6−ナイロン等の可塑性樹脂からなり、ボビン2と一体成形されており、以下に説明するように導電ワイヤ4を沿わせて引き廻すための形状を備えている。
【0028】
次に、
図2を用いて、始端側の端子電極本体11Aについて説明する。
前述したように、端子電極本体11Aはベース部9に埋め込まれており、端子電極本体11Aがベース部9の側面から、側方に飛び出すように露出している。この端子電極本体11Aは、縦長平板部14Aの側方において、下から順に、係止片15A、接続端子16A(請求項1のワイヤ接続部に対応する)およびワイヤ支持部17Aが突出するように配設されている。また、縦長平板部14Aの一部がベース部9と面接触している。なお、この縦長平板部14Aは、プレス打ち抜き加工により形成されるため、プレス打ち抜き時にねじれを防止するため、例えば、端子の厚み以上の厚さに設定されている。
【0029】
ここで、係止片15Aは、導電ワイヤ4のワイヤ始端部4A側が、最初に係止される(巻き付けられる)、屈曲された棒状の係止片15Aである。また、接続端子16Aは、係止片15Aに係止した導電ワイヤ4を、カシメおよび抵抗溶着により電気的に接続する。また、接続端子16Aは、導電ワイヤ4を所定距離に亘って内包し得るように、断面J字状の帯形状とされたものとなっている。さらに、ワイヤ支持部17Aは、接続端子16Aからの導電ワイヤ4を半周に亘って巻き付け得るように、外部側方に延びる棒状をなしている。
【0030】
また、縦長平板部14Aにおいて、ワイヤ支持部17Aよりも上方の部分は、側方に長尺とされた幅広部18Aとして形成されている。この幅広部18Aのワイヤ支持部17A側は斜めに切り欠かれ、ワイヤ支持部17Aの先端部上面と組み合わせられてV字型切欠き部19Aが形成されている。
このV字型切欠き部19Aは、導電ワイヤ4が嵌め入れられ、この後、ベース部9方向に引き渡される際に、この導電ワイヤ4の保持部として機能する。
【0031】
図2において、係止片15Aから接続端子16Aを通ってワイヤ支持部17A、およびV字型切欠き部19Aに至る導電ワイヤ4の形状は、係止片15Aからワイヤ支持部17A、あるいは係止片15AからV字型切欠き部19Aに向かって直線的に張設されていない。導電ワイヤ4は、接続端子16Aで保持されることによって屈曲した形状となり、張力をもって縦長平板部14Aの側部に沿い、巻線部20とは逆方向(
図2において上方向)に引き渡されるように構成されている。
【0032】
図3は、
図2に示すワイヤ始端側の端子電極3A部分を、ベース部9を取り除いた状態において示す図であり、端子電極3Aの、接続片13Aの根元部分においては、強度補強部71が設けられている様子が示されている。
この強度補強部71は、端子電極3Aとベース部9との接合強度を向上させる脚部分が、「n」字型に形成されたものである。このn字型の脚部分はベース部9に嵌め合わされることにより、端子電極3Aが横方向へ引き出される力Fに対して、ベース部9上の規定位置に強く保持される効果がある。すなわち、縦長平板部14Aはベース部9内に埋設される部分が少ないので、縦長平板部14Aとベース部9との接合強度、言い換えれば、端子電極3Aとベース部9との接続強度を維持するため、この強度補強部71が設けられている。
【0033】
次に、
図4を用いて、ベース部9について説明する。
前述したように、このベース部9は、ボビン2の上面においてボビン2と一体とされている。ベース部9の前側には、導電ワイヤ4を巻線部20側に導く、左右対称形状に設けられたワイヤ案内壁部24A、24Bと、これら2つの案内壁部24A、24Bに挟まれたV字型傾斜部25と、を備える。同時に、ベース部9の後側には、台状平坦部26を備えており、この台状平坦部26の略中央部には、空気の逃げ道、または固定治具の爪を通すための孔、または製造時に固定治具に取り付けるための位置決め部として透孔27が設けられている。
【0034】
さらに、台状平坦部26上には、接続片嵌合孔61A、61Bのそれぞれ3面(表裏面および一方の側面)を囲むように、リブ部28が台状平坦部26から突出するようにして設けられている。上面から観察したとき、このリブ部28は「H」字型となる。このリブ部28の両脇の接続片嵌合孔61A、61Bに、接続片13A、13Bの脚部を嵌め入れて端子電極3A、3Bをベース部9に固定する。
【0035】
なお、端子電極3A、3Bを製造する際、製造効率を上げる目的で、母材となるフープから複数個の同じ形状の端子電極を打ち抜くため、全ての端子電極には同じ抜き方向に微小の変形が生じる。しかし、実際のコイル部品1においては、同じ形状の1対の端子電極3A、3Bが互いに線対称となるように、端子電極3A、3Bのいずれか一方を他方に対して反転させた向きで、これら両者をベース部9に嵌合させて使用する。このため、端子電極3A、3Bの変形に伴い、一方はコイル部品の正面側を向くように、他方はコイル部品の背面側を向くように、端子電極3A、3Bの表面から突出することとなる。
【0036】
このように変形が発生している状態でこの端子電極3A、3Bをベース部9に嵌合させると、2つの端子電極3A、3Bにおいては、変形の突出方向が互いに逆となっていることから、2つの接続片13A、13Bが互いに逆方向に傾いてしまう虞がある。
【0037】
このような問題を解決するため、接続片嵌合孔61A、61Bの孔幅は接続片13A、13Bの厚みと略同等に設定して、なるべく両者の隙間をなくし、また、この接続片13A、13Bを両面側から挟持するようにした、接続片13A、13Bのそれぞれの3面(表裏面および一方の側面)を囲むリブ部28が設けられている。この、リブ部28は、ベース部9上に、所定値以上の高さ(変形が発生していても、接続片13A、13Bが傾くのを抑制し得る程度に、十分に深い接続片嵌合孔61A、61Bを形成できる高さ)を有するように設けられ、これによって接続片嵌合孔61A、61Bの深さを増大させ、変形が発生していても、接続片13A、13Bが傾くのを抑制することができる。
【0038】
こうすることにより、接続片13A、13Bの傾きに対する変形の影響が抑制されて、共に垂直方向(巻線部の軸方向)に延びるように揃えることが可能である。
【0039】
また、上記V字型傾斜部25は前面側に向かって下降するような平滑な傾斜面とされており、また、ワイヤ案内壁部24A、24BのV字型傾斜部25側の側壁面は各々、ワイヤ案内壁面23A、23Bとされている。なお、ワイヤ支持部17A、17Bの上面と、それに続くV字型傾斜部25は、それらの境界部において面一とされている。
【0040】
次に、
図5を用いて、縦溝部30について説明する。
ベース部9には、V字型傾斜部25に続く縦溝部30が設けられている。
すなわち、導電ワイヤ4は、V字型傾斜部25と巻線部20との間の領域において、この縦溝部30によって保持されるように構成されている。
【0041】
また、縦溝部30の底面(
図5において前面側を向いた面)上において、巻線部20に近い側の領域において、各々所定の厚みの第1段部31および第2段部32が形成されている。第1段部31には始端側の導電ワイヤ4が嵌り込むような形状とされたリード溝33が形成されている。また、第2段部32は第1段部31よりも所定量だけ高く形成された平坦面からなる台状部62を備えており、終端側の導電ワイヤ4がこの台状部62の平坦面に沿って案内されるように形成されている。このようにして、始端側の導電ワイヤ4と終端側の導電ワイヤ4が近づきすぎないようにして、絶縁性が確保されるように配慮されている。
【0042】
またこの終端側の導電ワイヤ4を引き廻すときにこの縦溝部30から脱落しないように保持し得るよう、ワイヤ案内壁部24Bからワイヤ案内壁部24A側に向かって突出する庇部34が設けられている。
また、始端側の導電ワイヤ4は鍔部7のワイヤ引込み口35から巻線部20側に引き込まれるようになっており、また、終端側の導電ワイヤ4は鍔部7のワイヤ引出し口36を介して巻線部20側から引き出されるように形成されている。
【0043】
次に、
図6は、巻線部20(ボビン2に巻回されているもの)内に、始端側の導電ワイヤ4が引き込まれ、また、巻線部20(ボビン2に巻回されているもの)から、終端側の導電ワイヤ4が引き出される様子を示すものである。
この
図6では、見易さの便宜のため、巻線部20に巻回された導電ワイヤ4は図示を省略した形式としている。
この
図6に示すように、始端側の導電ワイヤ4が巻芯部6の最上部の最内周位置まで鍔部7の内壁面にそって導かれる様子が示されており、また、終端側の導電ワイヤ4が巻芯部6の最上部の最外周位置から上記縦溝部30側に引き出される様子が示されている。
【0044】
なお、巻芯部6の外周面には、導電ワイヤ4がスムーズに巻回されるように、1本ごとの導電ワイヤ4に応じた巻き溝41が形成されている。この巻き溝41を、ボビン2の軸の延びる方向から透視的に観察した場合、巻き溝41が略「C」字状に観察される。この「C」字状の切欠口に相当する部分には、ワイヤ移行部42が設けられている。このワイヤ移行部42は整列巻線を構成するために、導電ワイヤ4を一つの巻き溝41から隣接の巻き溝41に巻き渡す役割を果たしている。言い換えれば、導電ワイヤ4は、このワイヤ移行部42で改行されている。
【0045】
次に、
図7を用いて、終端側の端子電極本体11Bについて説明する。
前述したように、端子電極3Bは、前述した端子電極3Aと、互いに対称形状をなしており、端子電極本体11Bも前述した端子電極本体11Aと、互いに対称形状をなしており、その他は同様に形成されている。したがって、説明の煩雑さを避けるため、同様の機能を有する部材は、端子電極本体11Aの付号のうち、Aとの符号を、Bとの符号に書き替えて示し、形状の詳細な説明は省略する。
【0046】
端子電極本体11Bにおいては、
図7に示すように、縦長平板部11Bの外方側部の上方から下方に向かって幅広部18B、V字型切欠き部19B、ワイヤ支持部17B、接続端子16B、そして最終的にワイヤ終端部4Bが巻回される係止片15Bが形成されている。
この結果、終端側の導電ワイヤ4は、これらの部材に沿って引き廻されて保持されることになる。
【0047】
なお、この端子電極本体11Bにおいても、端子電極本体11Aの場合と同様に、導電ワイヤ4が部材間を蛇行するように引き廻され、接続端子16Bでカシメおよび抵抗溶着によって固定され、張設保持される。また、各部材の配設位置および屈曲方向等が端子電極本体11Aの場合と左右逆に形成されているので、導電ワイヤ4の蛇行方向は逆方向となる。
【0048】
次に、
図8は、ベース部9の背面の形状を示すものである。
ベース部9の背面側の領域には、
図3に示すヨーク5のフランジ部よりも上方の筒状部の外部を被覆する台状平坦部26が設けられている。この台状平坦部26の側面は大略円錐台の側面の一部により形成されており、上方に向かうにしたがって細くなるように形成されている。このように、上方部分を細く形成することにより、自動巻線機で導電ワイヤ4を引き廻す際に、ワイヤの送り出し口となるノズル先端をこの台状平坦部26の側面に衝突させることなく、容易に移動させることができる。
【0049】
また、上述したように構成されたコイル部品1は、樹脂剤によるオーバーモールド外装部を被覆されて、防水加工が施される。この外装部を設けることにより、雨等の外部からの水分がコイル部品1内に侵入するのを防止し、これによってコイル部品1内でのショート等の不測の事態の発生を防止することができる。この外装部は例えば、6・6−ナイロン等の可塑性樹脂等により形成することができ、例えば1mm程度以下の厚みにより形成する。
【0050】
次に、導電ワイヤ4の始端から終端までの引き廻し工程、さらには外装部による樹脂封止工程について、再び
図2〜
図8を用いて説明する。
図2および
図3に示すように、まず、導電ワイヤ4の、ワイヤ始端部4Aを係止片15Aに巻きつけるようにして係止した後、導電ワイヤ4を接続端子16Aの折曲端子部21内に通し、ワイヤ支持部17Aのコイル部品1の前面側を半周巻くようにした後V字型切欠き部19Aを通して、コイル部品1の背面側に引き出す。この後、導電ワイヤ4をワイヤ支持部17Aの上面と同じ高さで幅広部18Aの背面側を移行させ、幅広部18Aの接続片13A側の側面に沿わせてコイル部品1の前面側に引き出す。
【0051】
なお、前述したように、導電ワイヤ4の巻回操作(導電ワイヤ4の、係止片15Aへの係止処理、およびワイヤ支持部17Aへの巻回処理等を含む)が全て終了した後、接続端子16Aにおいて、導電ワイヤ4のカシメ、および抵抗溶接がなされ、導電ワイヤ4と接続端子16Aとの電気的な接続が確実になされることになる。上記カシメの処理は、上記折曲端子部21に導電ワイヤ4が通されている状態で、上記折曲端子部21を、図示されないカシメ器を用いてカシメて、導電ワイヤ4を挟持するものであり、抵抗溶接処理は、接続端子16Aに電流を流しながら圧力をかけて、導電ワイヤ4と上記折曲端子部21との溶接を行うものである。
なお、接続端子16Bにおいても、同様にして導電ワイヤ4のカシメ、および抵抗溶接がなされる。
【0052】
本実施形態においては、係止片15Aを設けているので、導電ワイヤ4のワイヤ始端部4Aを係止することができる。さらに、この状態で導電ワイヤ4の引き廻し処理を行うことができるので、製造性を向上させることができる。
また、外方側部に突出するワイヤ支持部17Aを設けたことにより導電ワイヤ4を、このワイヤ支持部17Aに巻きつけることが可能である。さらに、幅広部18Aとワイヤ支持部17Aの間にV字型切欠き部19Aを形成したことにより、導電ワイヤ4をこのV字型切欠き部19Aに嵌め入れて保持させることが可能である。また、これらのいずれによっても、導電ワイヤ4を端子電極3Aの外表面に密着させて、導電ワイヤ4に加わる応力を分散することができる。たとえ導電ワイヤを絡げるスペースを確保することが難しくても、エンジンルーム等温度条件が過酷な環境内で使用された時における導電ワイヤ4の断線を防止することができる。
【0053】
すなわち、前述したように、従来のコイル部品における導電ワイヤは、始端側の端子電極から巻線部に直接引き渡すようにしていたため、特に、製品の小型化を図る場合に空中配線が生じ易かったが、本実施形態においては、導電ワイヤ4の始端側の端子電極3Aから、巻線部20とは反対方向(
図3では上方向)に一旦、引き廻すようにしており、導電ワイヤ4を沿わせる上述したような構造(這わせや密着巻回ができ、応力分散ができるような構造)を形成することができ、エンジンルーム等温度条件が過酷な環境内で使用された時における導電ワイヤ4の断線を防止することができる。
【0054】
次に、幅広部18Aの背面側から、接続片13Aとの間を通してコイル部品1の前面側に引き出された始端側の導電ワイヤ4は、
図4に示すように、ベース部9のV字型傾斜部25に導かれる。
導電ワイヤ4はV字型傾斜部25の表面に沿うとともに、ワイヤ案内壁部24Aのワイヤ案内壁面23Aの表面に沿うことにより案内されて斜面を下降し、縦溝部30に導かれる。
【0055】
なお、前述したように、導電ワイヤ4が前面側に引き出された際に、ワイヤ支持部17Aの上面から上記V字型傾斜部25の表面に移行することになるが、前述したようにワイヤ支持部17Aの上面と上記V字型傾斜部25の表面とは面一の高さに設定されているので、V字型傾斜部25の表面からワイヤ支持部17Aの上面への導電ワイヤ4の引き渡しがスムーズに行われる。こうすれば、空中配線のように、熱衝撃などによる応力が、支持部である両端部に集中することはなく、前記ワイヤ支持部17Aの上面と上記V字型傾斜部25の表面に分散することができ、導電ワイヤ4の断線を防止することができる。
【0056】
V字型傾斜部25により縦溝部30に案内された始端側の導電ワイヤ4は、
図5に示すように、V字型傾斜部25の縁部で支持されて縦溝部30を略垂直に降下するように引き廻される。
縦溝部30には、前述したように、リード溝33が設けられた第1段部31が形成されている。また、導電ワイヤ4はこのリード溝33に嵌り込むようにして、ベース部9と一体成形されたボビン2の鍔部7の位置まで導かれ、ワイヤ引き込み口35を介して鍔部7の内側に引き込まれる。
【0057】
このようにして、鍔部7の内側に引き込まれた始端側の導電ワイヤ20は、
図6に示すように、鍔部7の内壁面に沿って巻芯部6の位置(最内周位置)まで案内される。
この後、導電ワイヤ4は周知の巻回方法によって、巻芯部6に、多数層に亘って巻回されて巻線部20を形成する。但し、この
図6においては説明の便宜上、この巻線部20の図示は省略している。
導電ワイヤ4は、巻線部20の最外周から、再び鍔部7の内壁面に沿って導かれた後、ワイヤ引き出し口36(
図5を参照)を介して縦溝部30に引き出される。
【0058】
ワイヤ引き出し口36を介して縦溝部30に引き出された、終端側の導電ワイヤ4は、
図5に示すように、第2段部32の台状部62と庇部34の間を通過するように引き廻され、次にV字型傾斜部25の縁部からV字型傾斜部25の表面に沿うように案内される。
このように、縦溝部30においては、ベース部9の構造を簡単にするため、1つの縦溝部30によって、始端側の導電ワイヤ4と終端側の導電ワイヤ4を案内しつつ、この両導電ワイヤ4の距離を確保して絶縁性を高める構成とされている。
【0059】
すなわち、縦溝部30の第1段部31と第2段部32の高さ関係は第2段部32が一段高く設定され、また始端側の導電ワイヤ4はリード溝33に嵌め入れられて、図中縦溝部30の左端側に保持される。その一方、この後、ワイヤ案内壁部24Bのワイヤ案内壁面23Bに沿うように案内される終端側の導電ワイヤ4は、図中縦溝部30の右端側(第2段部32の右端側)に位置することになる。したがって、両導電ワイヤ4は互いに所定の距離をもって離間することになり、耐電圧や絶縁抵抗を確保する上で有利である。
また始端側の導電ワイヤ4をリード溝33に嵌め入れて保持することにより、その後、巻芯部6に導電ワイヤ4を巻回する操作が容易となる。
【0060】
V字型傾斜部25の表面に沿うように案内された終端側の導電ワイヤ4は、
図4に示すように、V字型傾斜部25の表面(底面)に沿うとともに、ワイヤ案内壁部24Bのワイヤ案内壁面23Bにも沿うようにして端子電極3Bのワイヤ支持部17Bの上面まで斜面を上がるようにして引き上げられる。この後、導電ワイヤ4は、終端側の端子電極本体11Bの幅広部18Bの背面側表面に沿って、
図7に示す終端側のV字型切欠き部19Bまで引き廻される。
【0061】
なお、V字型傾斜部25の表面とワイヤ支持部17Bの上面は面一とされているので、V字型傾斜部25の表面からワイヤ支持部17Bの上面への導電ワイヤ4の引き渡しがスムーズに行われる。こうすれば、空中配線のように、熱衝撃などによる応力が、支持部である両端部に集中することはなく、前記ワイヤ支持部17Bの上面と上記V字型傾斜部25の表面に分散することができ、この引き渡し部分での断線の虞を回避することができる。
【0062】
終端側のV字型切欠き部19Bまで引き廻された終端側の導電ワイヤ4は、この後、
図7に示すように、終端側のワイヤ支持部17Bを半周に亘って巻回し、接続端子16B内を通過し、最後に係止片15Bに係止される。
この終端側の端子電極本体11Bにおける導電ワイヤ4の引き廻し処理、ならびに接続端子16Bにおける導電ワイヤ4のカシメおよび抵抗溶接の処理については、前述した始端側の端子電極本体11Aにおける、導電ワイヤ4の引き廻し処理、ならびに接続端子16Aにおける導電ワイヤ4のカシメおよび抵抗溶接の処理と同様であるので、詳しい説明は省略する。
【0063】
ただし、前述した始端側の端子電極本体11Aの場合とは、ワイヤ支持部17B、接続端子16Bおよび係止片15Bにおける導電ワイヤ4の蛇行態様が逆形状となるように引き廻す。
また、この終端側の導電ワイヤ4は、係止片15Bに係止された後、カッタ等を用いて所定の長さに切断される。
【0064】
この後、このコイル部品1の全体が覆われるように、6,6−ナイロン等の種々の樹脂剤等によって樹脂成型を行う。この時、溶融した樹脂材を金型内に射出し、その圧力で金型内の空いている空間を全て樹脂材で埋めるようにする。この場合、全ての空間が繋がるような流動通路を作るように、ヨーク5には適宜に大きな切欠部5Aが形成されている。また、巻線部20に過大な圧力を与えないように、鍔部7の、ヨーク5の切欠部5Aに対応する場所に、断面積が小さな切欠部7Aが設けられている。こうすると、樹脂材の金型内での流れを確保できる上、その圧力による、巻線部への悪影響を最小限に抑えることができる。
この場合に、樹脂材の効率化および製品の小型化のためモールド厚はできるだけ薄くする(例えば1mm以下)ことが好ましいが、微小でもモールドがなされていない部分が存在すると、その部分から水分がコイル部品1内に侵入し、ショート等の原因となるので、コイル部品1の全面に亘って、確実にオーバーモールドされていることが肝要である。
【0065】
本発明のコイル部品およびその製造方法は、導電ワイヤ4を端子電極3Aから直接、巻線部20に引き入れていない。導電ワイヤ4は、一旦、端子電極3Aとは逆側、すなわち、導電ワイヤ4を沿わせる構造を形成し得るベース部9において引き廻してから、巻線部20に引き入れることにより、導電ワイヤ4が空中配線とされるのを防止することができる。同時に、導電ワイヤ4にかかる応力の分散を図り、エンジンルーム等温度条件が過酷な環境内で使用された時において導電ワイヤ4の断線を防止することができるようにしている。
【0066】
したがって、この目的を達成し得る構成であればよく、端子電極3A、3Bやベース部9の形状としては、種々のタイプのものを採用することができる。
例えば、上記実施形態においては、端子電極3A、3Bにおいて、ワイヤ支持部17A、17Bでこの周面に導電ワイヤ4を巻き付けるようにしている。しかし、このワイヤ支持部17A、17Bに替えて、他の形状をなすワイヤ支持部材によって導電ワイヤ4を支持させてもよい。
また、V字型切欠き部19A、19Bについては、これを省略したり、他の導電ワイヤ保持部材によって代替することが可能である。
【0067】
また、上記実施形態においては、端子電極3A、3Bにおける接続端子16A、16Bと導電ワイヤ4を抵抗溶接を用いて電気的に接続しているが、レーザー溶接等の他の溶接やハンダ付け等の接続手法を用いることも可能である。
また、上記実施形態においては、ヨーク5がモールド内に配設されているが、コイル部品1のオーバーモールドをした後、その外側からヨーク5を被せるように、ヨーク5をモールド外に配設するようにしてもよい。
【0068】
また、上記実施形態においては、始端側の導電ワイヤ4の巻線部20へのワイヤ引込み口35と、終端側の導電ワイヤ4の巻線部20からのワイヤ引出し口36とが近接しており、同一の縦溝部30を用いて、始端側の導電ワイヤ4および終端側の導電ワイヤ4を案内するようにしているが、始端側の導電ワイヤ用の縦溝部と終端側の導電ワイヤ用の縦溝部をコイル部品1の周方向に離れた2つの位置に別々に設けるようにした場合、ベース部9の形状がより複雑になる虞があるが、そのように別々に設けることも勿論可能である。
【0069】
なお、上記実施形態のコイル部品は、車載用の電磁弁に用いるものとされているが、本発明のコイル部品としては、これに限られるものではなく、自動車に搭載される各種部材の切替動作を行うものを始めとして、一般の機械や機構の動作や制御を行わせるために用いられる種々のコイル部品として用いることができる。