(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。なお、以下の説明において前方とは園芸用結束機10の使用時に被結束物Sに臨む方向(
図2における右方向)を意味し、後方とは前方の逆方向(
図2における左方向)を意味する。
【0025】
本実施形態に係る園芸用結束機10は、農作物栽培において誘引結束作業に使用されるものであり、
図1〜3に示すように、直線的に形成された細長のメインハンドル11と、メインハンドル11に対して回動可能に取り付けられたクリンチャアーム30と、クリンチャアーム30に対して回動可能に取り付けられた操作ハンドル50と、を備えている。クリンチャアーム30は、
図4に示すように、引張バネ25によって常時付勢されており、通常時においてはメインハンドル11に対して開いた状態となっている。この状態から操作ハンドル50とメインハンドル11とを握り込むことで、
図3に示すように、クリンチャアーム30がメインハンドル11に対して閉じ方向に回動するようになっている。そして、クリンチャアーム30がメインハンドル11に対して所定の位置まで閉じ方向に回動したときに、メインハンドル11の先端部11aからテープ60を引き出すために、クリンチャアーム30の先端部30aでテープ60を把持する把持動作が実行されるとともに、クリンチャアーム30がメインハンドル11に対して前記所定の位置から更に閉じ方向に回動して完全に閉じた状態(閉じ状態)となったときに、テープ60で被結束物Sを結束してテープ60を切断する結束動作が実行されるようになっている。すなわち、把持動作の際には、ハンドルが完全に閉じる位置まで握り締めずに、所定の位置までクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して回動させる。一方、結束動作の際には、ハンドルが完全に閉じる位置まで握り締める操作をして、クリンチャアーム30をメインハンドル11に対して前記所定の位置から更に閉じ方向に回動させる。このように、握り締め操作の終点位置によって把持動作と結束動作とを切り替え可能となっている。詳しくは後述するが、本実施形態においては、把持動作を行うときには、前記所定の位置から更に閉じ方向に回動できないようにクリンチャアーム30の移動が規制される一方、結束動作を行うときには、この規制が解除される。このため、作業者が握り締め操作の終点位置を意識しなくても、奥まで握り締める操作をすれば、自動的に把持動作と結束動作とが交互に行われるようになっている。
【0026】
被結束物Sを結束するときには、まずハンドルを握り込んでクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して閉じ方向に回動させる。これにより、クリンチャアーム30の先端部30aでテープ60を把持する把持動作が実行される。その後、ハンドルの握り込みを解除してクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して開き方向に回動させると、
図19に示すように、テープ60を把持した状態でクリンチャアーム30の先端部30aとメインハンドル11の先端部11aとが互いに離れていき、クリンチャアーム30とメインハンドル11との間にテープ60が張られた状態となる。この状態で張られたテープ60の外側から苗木や枝などの被結束物Sを入れ込み、再びハンドルを握り込んでクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して閉じ方向に回動させる。これにより、
図22に示すように、被結束物Sを結束するテープループの両端がステープル61で結着され、テープ60が切断される(結束動作が実行される)。このように、1回目の握り込み動作では把持動作が実行され、2回目の握り込み動作では結束動作が実行される。そして、この把持動作と結束動作とを交互に実行することで、被結束物Sを結束可能となっている。なお、本実施形態においては、テープループの両端を結着する結着手段としてステープル61を使用しているが、これに限らず、接着や溶着によってテープループの両端を結着するようにしてもよい。
【0027】
メインハンドル11は、
図1等に示すように、直線的に形成された棒状の部材であり、長手方向に沿ってテープ60やステープル61を配置できるように形成されている。このメインハンドル11には、ステープルマガジン12と、プッシャユニット13と、テープガイド16と、ステープルドライバ18と、テープマガジン20と、が取り付けられている。
【0028】
ステープルマガジン12は、ステープル61を収容するための長尺部材である。このステープルマガジン12は、
図1等に示すように、メインハンドル11の長手方向に沿って配置されており、内部にステープル61を収容可能となっている。ステープルマガジン12に収容されるステープル61は、コ字形に形成された複数のステープル61を接着剤で接合したものが使用される。ステープルマガジン12に収容されたステープル61は、後述するプッシャユニット13によって先端方向へと押し付けられる。ステープルマガジン12の先端には、後述するステープルドライバ18を導入するための長孔が設けられている。また、このステープルマガジン12は、後端側に設けられた軸を中心にメインハンドル11に対して揺動可能に取り付けられている。
【0029】
プッシャユニット13は、
図1等に示すように、ステープルマガジン12内に挿抜可能に取り付けられる部材である。このプッシャユニット13は、
図6等に示すように、ステープルマガジン12内のステープル61を前方へと付勢している。ステープルマガジン12内にステープル61をセットするときには、このプッシャユニット13を引き下げて、ステープルマガジン12の上方からステープル61を挿入する。
【0030】
ステープルドライバ18は、
図6等に示すように、ステープルマガジン12の先端付近に臨むようにメインハンドル11の先端部11aに固定されたプレートである。このステープルドライバ18は、ステープル61を1つだけ打ち出せるようにステープル61の幅とほぼ同じ幅で形成されている。クリンチャアーム30がメインハンドル11に対して完全に閉じた状態まで回動すると、
図22に示すように、ステープルドライバ18がステープルマガジン12内に進入して、ステープルマガジン12内の先頭のステープル61を打ち出すようになっている。詳しくは、クリンチャアーム30が閉じ方向に移動すると、クリンチャアーム30がステープルマガジン12を押してステープルドライバ18の方向へと揺動させる。ステープルマガジン12が揺動することで、ステープルドライバ18がステープルマガジン12の内部へと進入し、ステープル61を打ち出すようになっている。打ち出されたステープル61は、テープ60を貫通した後に、後述するクリンチャ33にクリンチされてテープ60を抱き込むように両脚が屈折し、これにより重ね合わせたテープ60の端部60aが結着されるようになっている。
【0031】
テープマガジン20は、
図1等に示すように、メインハンドル11の後端部に連設されてテープ60を収容するためのものである。このテープマガジン20は、リール状に巻回されたテープ60を収容可能であり、テープ60を出し入れするために開閉可能な蓋を備えている。このテープマガジン20に収容されたテープ60は、メインハンドル11に沿って、メインハンドル11の先端部11aまで引き出される。メインハンドル11の先端部11aまで引き出されたテープ60は、
図12及び
図13に示すように、後述するテープガイド16によって端部60aが保持される。
【0032】
テープガイド16は、
図6及び
図7に示すように、メインハンドル11の先端部11aに配置されており、メインハンドル11に設けられたテープガイド揺動軸19を中心に揺動可能に取り付けられている。このテープガイド16は、
図13に示すように、中央にテープ60を引き出し可能にガイドする誘導路を備えている。このテープガイド16の誘導路は、挿通したテープ60が外れないようにテープ60の両側部、前面、後面の四方向を覆うような形状となっている。この誘導路に挿通したテープ60は先端から引き出されてクリンチャアーム30に臨むようになっている。このテープ60の端部60aは、後述するクリンチャアーム30のテープ把持装置35によって把持されて必要量が引き出される。
【0033】
このテープガイド16は、
図8に示すように、揺動軸孔16aと、スリット16bと、背面部16cと、突き当て部16dと、テープ保持部16eと、切断刃取付部16fと、を備える。
【0034】
揺動軸孔16aは、テープガイド揺動軸19を貫通させるための丸穴である。この揺動軸孔16aは、テープガイド16の下方(クリンチャアーム30から見て遠い側)に設けられている。この揺動軸孔16aがテープガイド揺動軸19に軸支されることで、テープガイド16はクリンチャアーム30に臨む端部が前方へと揺動可能となっている。なお、特に図示しないが、テープガイド16は付勢部材によって常に後方へと付勢されている。
【0035】
背面部16cは、テープ60を後方から支持する板状の部位である。この背面部16cの両側からは、テープ保持部16eが前方に突出して設けられている。テープ保持部16eは、背面部16cと協働してテープ60を保持するためのものである。本実施形態においては、上下の二箇所にそれぞれ一対のテープ保持部16eを設けており、4つのテープ保持部16eが設けられている。それぞれのテープ保持部16eは略L字形に形成されており、上下それぞれ一対のテープ保持部16eの先端が互いに対向するように配置されている。これにより、対向するテープ保持部16eの先端の間に、スリット16bが形成されている。このスリット16bは、後述する把持部材37を誘導路内に進入可能とするためのものでる。
【0036】
突き当て部16dは、
図8に示すように、背面部16cの上端縁に形成されており、後述する把持部材37の傾斜面37dに接触し、この傾斜面37dに沿って摺動するための部位である。この突き当て部16dは、R状に先端方向へ突出して形成されており、これにより把持部材37の傾斜面37dの両側のエッジに接触しないように形成されている。傾斜面37dのエッジに接触しないようにすることで、後述するように突き当て部16dと把持部材37とでテープ60を挟み込んで引っ張ったときに、テープ60に穴が開いたり切れたりすることを防止している。
【0037】
切断刃取付部16fは、被結束物Sの結束後にテープ60を切断する切断刃17を固定するための部位である。この切断刃取付部16fには、
図6等に示すように、テープ60の誘導路よりも後方で、テープ60の誘導路に対して角度を形成するように、切断刃17が取り付けられる。このように切断刃17をテープガイド16に固定することで、テープガイド16が揺動したときに、切断刃17がテープガイド16に連動して揺動するようになっている。
【0038】
すなわち、
図12に示すように、通常時における切断刃17は、刃先17aが後方を向くように配置されているが、テープ60を切断するときには、
図22に示すように、刃先17aが上方を向くように移動する。このように、本実施形態に係る切断刃17は、テープ60を切断するときに、刃先17aがテープ60に臨むように露出する。なお、本実施形態においてはテープ60がテープガイド16に連動して揺動するようにしているが、例えばテープガイド16が直進方向に移動するように形成し、このテープガイド16に連動して切断刃17が直進方向に移動するようにしてもよい。また、切断刃17が移動するのではなく、テープガイド16やステープルマガジン12などの切断刃17近傍の部材が移動し、切断刃17の刃先17aがテープ60に臨むように露出する構造としてもよい。
【0039】
なお、上記したテープガイド16及び切断刃17の両側は、
図1に示すように、メインハンドル11の一部である側壁部11bによって覆われており、
図2及び
図6等に示すように、側面視でテープガイド16及び切断刃17が露出しないようになっている。言い換えると、メインハンドル11は、側面視で切断刃17の刃先17aに重なるように配置された側壁部11bを備えている。この側壁部11bは、切断刃17の状態にかかわらず(切断刃17が移動した前後のいずれにおいても)、側面視で常に切断刃17の刃先17aに重なるように配置されている。このため、メインハンドル11の先端部11aで異物を挟み込んだとしても、切断刃17が異物に刺さることがない。なお、この側壁部11bの後方は傾斜部11cとなっており、メインハンドル11の先端部11aで被結束物Sを挟み込んだ場合でも、被結束物Sを後方(メインハンドル11及びクリンチャアーム30の内側)に誘導するようになっている。
【0040】
また、
図4及び
図5に示すように、メインハンドル11の両側には、ローラ状係合部14が突出形成されており、メインハンドル11の下面には、指掛部15が突出形成されている。ローラ状係合部14は、後述する操作ハンドル50のリンク部52を摺動案内するための突起である。指掛部15は、メインハンドル11と操作ハンドル50とを握り込んだときに、握り込んだ指を引っ掛けるための突起である。
【0041】
クリンチャアーム30は、
図1等に示すように、平行に接続された一対の板金部材30bで構成されている。このクリンチャアーム30は、メインハンドル11との間にC字形の開口部を形成できるように、先端部30aの方向へ曲線的に延びるアーム部32を備えている。このクリンチャアーム30は、後端部付近に設けられた回転軸31によってメインハンドル11に対して回動可能に取り付けられている。
【0042】
このクリンチャアーム30には、クリンチャ33と、テープ把持装置35と、把持装置カバー41と、が取り付けられている。
【0043】
クリンチャ33は、前述したステープルドライバ18の先端に対向するように、クリンチャアーム30の先端部30aに固定されている。これにより、
図22に示すように、ステープルドライバ18によってステープル61が打ち出されたときに、打ち出されたステープル61の両脚がクリンチャ33によってクリンチされて内側に折り曲げられるようになっている。クリンチャ33がステープル61の両脚を内側に折り曲げることで、テープ60が綴じられて結着されるようになっている。
【0044】
テープ把持装置35は、クリンチャアーム30の先端部30aに取り付けられ、メインハンドル11の先端部11aから引き出されたテープ60の端部60aを把持可能な装置である。このテープ把持装置35は、支持部36と、把持部材37と、把持部材付勢手段38と、ロック部材39と、ロック部材付勢手段40と、を備える。
【0045】
支持部36は、
図6等に示すように、テープ60の引き出し方向に沿ってクリンチャアーム30に固定されており、テープ60の後面を支持可能な板状の受部36aを備える。この受部36aには、
図9に示すように、凹部36bが形成されている。この凹部36bは、後述する把持部材37の接触部37cに係合する箇所であり、テープ60よりも幅狭で、接触部37cよりも幅広の溝を備えている。また、受部36aの両側には、移動規制部36cが突出形成されている。この移動規制部36cは、テープガイド16を当接させることでクリンチャアーム30の回動を規制するために設けられている。
【0046】
把持部材37は、支持部36に対向するように設けられており、テープ60を掴むために支持部36の方向へ作動可能に設けられている。この把持部材37は、
図10に示すように、回動軸孔37aと、爪部37bと、接触部37cと、傾斜面37dと、谷状部37eと、周面37fと、被係止部37gと、回転阻止部37iと、を備える。
【0047】
回動軸孔37aは、把持部材回動軸42を貫通させるための孔であり、この回動軸孔37aに把持部材回動軸42を貫通させることで、把持部材37はクリンチャアーム30に対して回動可能に軸支されている。
【0048】
爪部37bは、支持部36の受部36aと協働してテープ60を掴むための突出部である。この爪部37bの先端には、上述した凹部36bに入り込むことができる接触部37cが形成されている。これにより、把持部材37が作動したときに、支持部36及び把持部材37の互いに係合する凹凸形状(凹部36b及び接触部37c)によって、テープ60を強固に把持可能となっている。すなわち、この凹凸形状でテープ60を把持すると、テープ60の中間部が凹部36bの溝に押し込まれた状態となる。この状態では、折れ曲がったテープ60の復元力が凹部36bのエッジ部分に作用して摩擦力が大きくなるため、テープ60が抜けにくくなっている。
【0049】
上記した爪部37bの、メインハンドル11側の面は、傾斜面37dを形成している。この傾斜面37dは、テープガイド16の突き当て部16dに臨むように配置されており、テープガイド16の突き当て部16dを接触させて誘導するために設けられている。また、この傾斜面37dの反先端側には、谷状部37eが設けられている。この谷状部37eは、傾斜面37dに沿って摺動したテープガイド16がそれ以上摺動できないようにするためのものであり、傾斜面37dに対して角度を設けることで形成されている。
【0050】
また、把持部材37の、反メインハンドル11側の周面37fには、被係止部37g及び回転阻止部37iが設けられている。この被係止部37g及び回転阻止部37iは、把持部材37の周面37fに突出形成された突起を利用して形成されており、後述するロック部材39を係合させるためのものである。ロック部材39は、この把持部材37の周面37fに沿って移動し、状況に応じて被係止部37gまたは回転阻止部37iに係合可能となる。
【0051】
把持部材付勢手段38は、把持部材37を支持部36の方向に付勢するためのものである。本実施形態に係る把持部材付勢手段38は、
図7等に示すような捩りコイルバネである。この把持部材付勢手段38が把持部材37を付勢することで、後述するロック部材39によるロックが解除されたときに把持部材37が作動し、支持部36と把持部材37とでテープ60を両側から挟み込んで把持可能となっている。
【0052】
ロック部材39は、把持部材37に係合することで把持部材付勢手段38の付勢力に抗して把持部材37を待機位置に保持するためのものである。このロック部材39は、
図11に示すように、回動軸孔39aと、係止部39bと、被押圧部39cと、を備える。
【0053】
回動軸孔39aは、ロック部材回動軸43を貫通させるための孔である。この回動軸孔39aにロック部材回動軸43を貫通させることで、ロック部材39はクリンチャアーム30に対して回動可能に軸支されている。
【0054】
係止部39bは、把持部材37の移動を規制するための部位であり、把持部材37に係合可能に突出形成されている。この係止部39bは、
図6等に示すように把持部材37の周面37fに対向配置されており、周面37fに形成された被係止部37g及び回転阻止部37iに係合可能となっている。具体的には、係止部39bが被係止部37gに係合することで、
図12に示すように、テープ把持装置35がテープ60を把持せずに開いた待機状態を取り得るように形成されている。そして、ロック部材39が回動して係止部39bが被係止部37gから外れると、
図18に示すように、テープ把持装置35がテープ60を把持可能に閉じた把持状態を取り得るように形成されている。この把持状態においては、係止部39bが回転阻止部37iに係合可能に臨んでおり、把持部材37の移動が阻止されるようになっている。回転阻止部37iが係止部39bに臨むことで、ロック部材39が再び回動するまでは、テープ把持装置35が把持状態を維持するようになっている。
【0055】
被押圧部39cは、ロック部材39を揺動させるときに押し上げられる部位であり、
図7等に示すように、テープガイド16の先端に臨むように配置されている。このように配置することで、クリンチャアーム30をメインハンドル11に対して閉じ方向に回動させたときに、テープガイド16が後述するロック部材付勢手段40の付勢力に抗してロック部材39を押動するように構成されている。
【0056】
ロック部材付勢手段40は、ロック部材39を把持部材37に係合する方向に付勢するためのものである。本実施形態に係るロック部材付勢手段40は、
図7等に示すような圧縮バネである。このロック部材付勢手段40がロック部材39を付勢することで、ロック部材39の係止部39bは、常に被係止部37gまたは回転阻止部37iに係合する方向に付勢されている。
【0057】
把持装置カバー41は、上記したテープ把持装置35を覆うカバーであり、
図12及び
図13に示すように、クリンチャアーム30の2枚の板金部材30bの間に固定されている。本実施形態に係る把持装置カバー41は、左右に分割可能な分割片で構成されており、内部にテープ把持装置35を収容している。この把持装置カバー41は、下方が開口しており、この開口の奥にテープ把持装置35の受部36aや爪部37bが配置されている。この把持装置カバー41は、
図12に示すように、テープ把持装置35の前方を覆う前方突出部41aを備えている。この前方突出部41aが板金部材30bの先端よりも前方に突出しているため、作物の間にクリンチャアーム30を挿し込むときには、曲線的に形成された前方突出部41aのみが作物等に当たり、テープ把持装置35が作物等に当たらないようになっている。
【0058】
操作ハンドル50は、
図2〜5に示すように、園芸用結束機10の本体に固定された基部材51と、基部材51に着脱可能なカバー材55と、を備える。
【0059】
基部材51は、メインハンドル11やクリンチャアーム30に直接作用する金属製の部品である。この基部材51は、
図4及び
図5に示すように、回動支点51aを軸に回動可能にクリンチャアーム30に取り付けられている。そしてこの回動支点51aから見て一方にメインハンドル11に係合するリンク部52を備えるとともに、回動支点51aから見て他方にハンドル支持部53を備える。なお、ハンドル支持部53は、カバー材55を取り付けることでレバー操作部55cとして機能する部位である。
【0060】
リンク部52は、メインハンドル11に係合して梃子の作用点となる部分である。このリンク部52の先端にはフック52cが形成され、このフック52cがメインハンドル11のローラ状係合部14に係合することで、
図4に示すように、クリンチャアーム30がメインハンドル11に対して所定の角度で開いた状態を維持するようになっている。
【0061】
この状態から、操作ハンドル50とメインハンドル11とを握り締めると、
図5に示すように、フック52cがローラ状係合部14から外れ、リンク部52の前面に形成された摺動面52aの上をローラ状係合部14が摺動する。このように摺動面52aがローラ状係合部14に沿って滑ることにより、クリンチャアーム30がメインハンドル11に対して閉じ方向に回動する。なお、ローラ状係合部14を係合させる摺動面52aは、ステープル61を打ち出す際の操作荷重を低減するために傾斜が段階的に変化している。すなわち、把持動作を行うときの摺動面52aの傾斜よりも、結束動作を行うときの傾斜を大きくすることで、同じ操作荷重でも結束動作を行うときにより大きな力を得ることができるようにしている。このようにすることで、大きな力を必要とする結束動作であっても、軽い操作荷重で操作できるようにしている。このように摺動面52aの傾斜が変化するため、摺動面52aの傾斜が変化する部分には突部52bが形成されている。
【0062】
カバー材55は、
図2等に示すように、基部材51が露出しないように覆う部材であり、操作ハンドル50の外部に接触したり操作されたりする部分はすべてカバー材55で覆われている。このカバー材55は、フックカバー部55aと、レバー操作部55cと、を備える。
【0063】
フックカバー部55aは、上記したリンク部52や、メインハンドル11とクリンチャアーム30との交差部X(
図4及び
図5参照)を覆う部位である。このフックカバー部55aの側面には、
図1等に示すように、レバー操作部55cとメインハンドル11とを握り込んだ指に沿う曲線突起55bが設けられている。このような曲線突起55bを設けることで、握り込み易く、機械を上向きで保持したときでも軽い握り込みで保持することができる操作ハンドル50が実現されている。
【0064】
レバー操作部55cは、ハンドル支持部53を覆う部位であり、操作ハンドル50を操作するときに作業者が握り込む部位である。このレバー操作部55cがメインハンドル11へと接近する方向へ握り込み操作されると、基部材51が回動支点51aを中心に回動し、リンク部52がメインハンドル11に作用することで、メインハンドル11とクリンチャアーム30とが互いに閉じ方向に回動する。
【0065】
次に、この園芸用結束機10の使用方法について説明する。
この園芸用結束機10で結束作業を行うときには、まず、
図12及び
図13に示すように、ロック部材39と把持部材37とを係合させ、把持部材37を待機状態としておく。
【0066】
この状態でハンドルを握り込んでクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して閉じ方向に回動させると、
図14に示すように、テープガイド16のテープ保持部16eがロック部材39の被押圧部39cに当たる。
【0067】
更にクリンチャアーム30を回動させると、
図15に示すように、ロック部材39が押し上げられて回動する。ロック部材39が回動することで、ロック部材39の係止部39bが把持部材37の被係止部37gから外れ、把持部材37が回動する。これにより、把持部材37の爪部37bがテープガイド16の背面部16cに押し付けられ、テープガイド16から引き出されたテープ60の端部60aがテープガイド16の誘導路内で把持される。
【0068】
このとき、更にクリンチャアーム30を回動させようとすると、
図16に示すように、テープガイド16のテープ保持部16eが支持部36の移動規制部36cに当たる。このように、本実施形態においては、テープガイド16が、クリンチャアーム30の回動を規制する移動規制手段として機能するようになっている。このようにクリンチャアーム30の回動が規制されることで、クリンチャアーム30は完全に閉じた状態(結束動作を実行する閉じ状態)まで回動できないようになっている。なお、テープガイド16がクリンチャアーム30の回動を規制するか否かは、テープ把持装置35の状態によって自動的に切り替わる。すなわち、テープ把持装置35が待機状態にあるときには、上記したようにクリンチャアーム30の回動を規制するが、テープ把持装置35が把持状態にあるときには、テープガイド16がテープ把持装置35に作用することで(詳しくは後述)、クリンチャアーム30の回動を規制しない位置まで移動するようになっている(
図21参照)。
【0069】
このように1回目の握り込み動作を行うと、
図17に示すように、把持部材37がテープガイド16の誘導路内に進入し、誘導路内でテープガイド16の背面部16cと協働してテープ60を把持する。この状態でハンドルの握り込みが解除されてクリンチャアーム30がメインハンドル11に対して開き方向に回動すると、
図18に示すように、把持部材37がテープ60を把持した状態で誘導路内を滑り、誘導路を抜けたところで支持部36と協働してテープ60を把持する。
【0070】
さらにクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して開き方向に回動させると、
図19に示すように、テープ60を把持した状態でクリンチャアーム30の先端部30aとメインハンドル11の先端部11aとが互いに離れていき、クリンチャアーム30とメインハンドル11との間にテープ60が張られた状態となる。
【0071】
この状態で、張られたテープ60の外側から苗木や枝などの被結束物Sを入れ込み、クリンチャアーム30を閉じ方向に回動させると、
図20に示すように、被結束物Sを結束するテープループが形成される。
【0072】
図20の状態から更にハンドルを握り込んでクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して閉じ方向に回動させると、テープガイド16の突き当て部16dが把持部材37の傾斜面37dに突き当たり、突き当て部16dが把持部材37の傾斜面37dにガイドされて前方へと移動する。このようにテープガイド16が前方へと移動することで、テープ保持部16eが支持部36の移動規制部36cに当たらない位置へとテープガイド16が退避する。テープガイド16が退避することで、テープガイド16によるクリンチャアーム30の回動規制が解除され、クリンチャアーム30を完全に閉じた状態(結束動作を実行する閉じ状態)まで回動可能な状態となる。なお、このようにテープガイド16が移動し始めた段階では、
図23に示すように、ロック部材39の係止部39bが把持部材37の回転阻止部37iに臨んでおり、把持部材37の移動が規制されている。
【0073】
そして、
図21に示すように、突き当て部16dが傾斜面37dの先にある谷状部37eに係合するまでテープガイド16が前方へと揺動する。このように突き当て部16dが谷状部37eに係合すると、テープガイド16と把持部材37とで協働してテープ60を保持した状態となる。なお、
図24に示すように、突き当て部16dが谷状部37eに係合する直前に、テープガイド16のテープ保持部16eがロック部材39の被押圧部39cを押し上げて、ロック部材39を揺動させる。これにより、把持部材37の移動規制が解除される。
【0074】
この
図21の状態から更にハンドルを握り込んでクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して閉じ方向に回動させると、
図22に示すように、テープガイド16と把持部材37とが一緒に前方へと倒れこむ。このとき、テープガイド16はテープ60を保持しつつ移動するため、テープ60に張力が付与される。テープガイド16と一緒に把持部材37が移動することで、テープ把持装置35がテープ60を離すが、離されたテープ60は、張力が付与されたテープ60によって下から押さえこまれているので、クリンチャアーム30の先端部30aから外れることはない。そして、テープガイド16が揺動することで、テープガイド16に固定された切断刃17がテープ60に接近する方向へ揺動し、張り詰められたテープ60を切断する。同時に、切断刃17よりも後方でステープルドライバ18によってステープル61が打ち込まれる。
【0075】
なお、
図25に示すように、クリンチャアーム30をメインハンドル11に対して閉じ方向に回動させる過程で、テープガイド16のテープ保持部16eが、ロック部材39の被押圧部39cから外れる。このため、ロック部材39を押し上げていた力がなくなるので、ロック部材39はロック部材付勢手段40の付勢力によって移動し、把持部材37に係合可能な状態となる。また、把持部材37は、テープガイド16と一緒に移動することで、待機状態よりも前方まで移動している。
【0076】
最後に、ハンドルの握り込みを解除してクリンチャアーム30をメインハンドル11に対して開き方向に回動させると、
図12に示すように、把持部材37がロック部材39に係合してテープ把持装置35が待機状態となる。このように、園芸用結束機10が初期状態に戻り、1回の結束作業が完了する。
【0077】
以上説明したように、本実施形態によれば、テープガイド16は、後述する第1の位置と第2の位置との間で移動可能に取り付けられている。すなわち、テープ把持装置35が作動してテープ60の端部60aを把持するときには、
図17に示すように、テープガイド16の先端が支持部36の受部36aに臨むように、テープガイド16が支持部36に近接した第1の位置にある。一方、切断刃17が作用してテープ60を切断するときには、
図22に示すように、テープガイド16の先端が前方へと移動し、テープガイド16が支持部36から離れた第2の位置にある。このように、テープガイド16は、テープ把持装置35が作動してテープ60の端部60aを把持するときの位置(第1の位置)と、切断刃17が作用してテープ60を切断するときの位置(第2の位置)と、が異なるように移動可能となっている。このような構成によれば、テープ把持装置35でテープ60を把持するときには、テープ把持装置35とテープガイド16との距離をできるだけ短くすることができるので、テープ把持装置35の把持不良を防止することができる。また、切断刃17でテープ60を切断するときには、テープ把持装置35とテープガイド16との距離を長くすることができるので、引き出し口から十分な掴み代を確保した上でテープ60を切断することができる。よって、切断後の作業において、テープ把持装置35で確実にテープ60を把持することができる。また、従来のように掴み代を確保するために切断刃17に対してテープ60が斜めになるような配置とする必要がないので、切断刃17に対してテープ60を略垂直に当てることができ、テープ60の切断不良を防止することができる。
【0078】
また、テープガイド16は、メインハンドル11に対して揺動可能に取り付けられている。このような構成によれば、テープガイド揺動軸19からテープガイド16の先端方向へとテープ60をガイドすることができ、テープガイド16が揺動してもテープ60の引き出し側にあるテープガイド揺動軸19が移動しないので、テープガイド16の移動に伴いテープ60が弛んだり引っ張られたりすることがない。よって、テープガイド16が移動する場合でもテープ60を安定的に保持することができる。
【0079】
また、切断刃17で切断されるテープ60に張力を付与するために、テープガイド16はテープ60を保持しつつ移動するように構成されている。このような構成によれば、切断刃17でテープ60を切断するときに、テープガイド16が移動して掴み代を確保するだけではなく、テープガイド16が移動することでテープ60に張力が付与されてテープ60の切断が容易となり、テープ60の切断不良を防止することができる。
【0080】
また、テープガイド16は、把持部材37の傾斜面37dにガイドされて移動し、傾斜面37dの先にある谷状部37eに係合した後に把持部材37と共に更に移動するように構成されている。このような構成によれば、把持部材37がテープガイド16と共に移動するので、テープガイド16の移動を利用して把持部材37を初期位置(
図12に示すようなテープ60を把持していない状態)に移動させることができる。しかも、テープガイド16が谷状部37eに至るまでは把持部材37が移動しないので、切断の直前までテープ60を掴んだ状態を維持することができる。
【0081】
また、テープガイド16が把持部材37の傾斜面37dにガイドされて移動しているときに、把持部材37の移動を規制する規制手段(ロック部材39)を備える。このような構成によれば、テープガイド16が傾斜面37dに勢いよくぶつかるなどしたときでも、把持部材37が意図せずに移動してしまうことを防止することができる。よって、意図しないタイミングでテープ60を離してしまうことを防止できる。
【0082】
また、切断刃17は、テープガイド16に連動して移動する。このような構成によれば、切断刃17を痛めにくくすることができ、また、切断不良を防止することができる。すなわち、もし切断刃17がメインハンドル11に固定されていたとすると、
図22に示すように切断刃17でテープ60を切断するときに、テープガイド16がテープ60が引っ張りながら移動するので、切断刃17の刃先17aでテープ60の表面を擦るような動きが生じてしまう。このような動きが生じると、切断刃17を痛めたり、切断不良が生じたりするおそれがある。この点、切断刃17がテープガイド16と一緒に移動するようにすれば、切断刃17の刃先17aとテープ60の表面との相対位置の変化を小さくすることができるので、上記したような問題を生じにくくすることができる。
【0083】
なお、上記した実施形態においては、テープ把持装置35がテープ60を挟み込んで把持するようにしているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、従来使用されているような、テープ60に爪を突き刺してテープ60を保持する機構であっても本実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0084】
また、上記した実施形態においては、テープガイド16が揺動するようにしたが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば、テープガイド16が前後に直動するような構造であってもよい。