(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する塗装システムおよび固定式操作ロボットの実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、以下では、自動車などの車両が被塗装物である場合について説明するが、被塗装物は車両には限られない。
【0012】
また、以下に示す実施形態では、「水平」、「垂直」、「鉛直」、「同一」あるいは「対称」といった表現を用いるが、厳密に「水平」、「垂直」、「鉛直」、「同一」あるいは「対称」であることを要しない。すなわち、上記した各表現は、製造精度、設置精度などのずれを許容する。
【0013】
まず、実施形態に係る塗装システム1について
図1および
図2を用いて説明する。
図1は、実施形態に係る塗装システム1の側面模式図であり、
図2は、実施形態に係る塗装システム1の上面模式図である。
【0014】
ここで、
図1は、
図2におけるY軸正方向視の側面図である。このため、
図2におけるY軸正方向視で手前側の装置に隠れるロボットや装置の記載を省略している。なお、
図1および
図2に示した各ロボットの構成の詳細については、
図4および
図5を用いて後述する。
【0015】
また、
図1および
図2には、説明をわかりやすくするために、鉛直上向きが正方向であるZ軸を含む3次元の直交座標系を図示している。かかる直交座標系は、以下の説明で用いる他の図面においても示す場合がある。
【0016】
また、以下では、搬送装置210の搬送向き(X軸正方向)を「前側」あるいは「下流側」、逆向きを「後側」あるいは「上流側」、搬送向きに向かって右を「右側」、左を「左側」と記載する。また、上面視で、搬送装置210の搬送向きについて中央を通る面を対称面P2(
図2参照)、一対の塗装ロボット10R1,10R2の中間位置と、一対の塗装ロボット10L1,10L2の中間位置とを通る面を対称面P1(
図1および
図2参照)とする。
【0017】
なお、
図1および
図2に示すように、塗装ブース200内には、塗装ロボット10、移動式操作ロボット20、固定式操作ロボット40といったロボットがそれぞれ複数台設置される。このため、複数台設置されるロボットなどの装置については、符号の末尾に識別用の文字を付加することとする。
【0018】
たとえば、搬送装置210の右側に設置される装置には「R」を、左側に設置される装置には「L」を付加する。また、搬送向きに沿って複数の装置がある場合には、さらに、数字を付加する。たとえば、塗装ロボット10L2は、搬送装置210の左側に設置された複数の塗装ロボット10のうちの1台であり、
図2に示した場合では、搬送向きの下流側に設置された塗装ロボット10を指す。
【0019】
なお、
図1および
図2に示した移動式操作ロボット20、走行台30およびガイド31を省略することとしてもよい。すなわち、塗装ブース200内のロボットを、塗装ロボット10および固定式操作ロボット40とすることとしてもよい。この点については、
図11を用いて後述する。
【0020】
ここで、ワーク500は、対称面P2について、たとえば、対称な形状である。ただし、ワーク500は厳密に対称な形状である必要はなく、ワーク500の左側のロボットおよび右側のロボットが同じ動作を行う程度の形状であればよい。
【0021】
ワーク500の左側については、塗装ロボット10L1,10L2、移動式操作ロボット20L1,20L2が作業を行う。また、ワーク500の右側については、塗装ロボット10R1,10R2、移動式操作ロボット20R1,20R2が作業を行う。なお、固定式操作ロボット40a,40bは、ワーク500の前後における開閉部材の操作を行う。
【0022】
なお、
図2に示したように、ワーク500は、対称面P2について対称な形状であるので、搬送装置210を挟んで対向する各ロボットは、お互いに左右対称な動作を行いつつワーク500に対する塗装や操作を行う。具体的には、移動式操作ロボット20R1,20L1、走行台30R1,30L1、塗装ロボット10R1,10L1、塗装ロボット10R2,10L2、走行台30R2,30L2、移動式操作ロボット20R2,20L2は、それぞれ、左右対称な動作を行う。
【0023】
以下、塗装ブース200(
図1参照)内に設置されるロボット等の各装置について説明する。塗装ブース200内には、搬送装置210と、走行台30と、ガイド31とが設置される。ここで、塗装ブース200は、外部と隔離された空間を有する塗装用の部屋である。
【0024】
塗装ブース200の床面には、コンベアなどの搬送装置210が設置される。そして、搬送装置210は、被塗装物であるワーク500を、所定の搬送向き(
図1および
図2の場合ではX軸正方向)へ、所定の速度で搬送する。なお、ワーク500は、図示しない治具などによって搬送装置210の可動部分に固定された状態で搬送される。
【0025】
また、ガイド31は、たとえば、搬送装置210の床面に設置され、上記した対称面P2について対称な位置に一対設置される(
図2参照)。なお、
図2に示すように、搬送装置210の右側にはガイド31Rが、左側にはガイド31Lがそれぞれ設置される。ここで、走行台30は、ガイド31に沿って走行可能である。つまり、走行台30は、同図のX軸正方向にもX軸負方向にも走行可能である。そして、走行台30は、上記した移動式操作ロボット20を支持する。
【0026】
図2に示すように、走行台30は、各ガイド31に2つずつ設置される。すなわち、右側のガイド31Rには、走行台30R1,30R2が、左側のガイド31Lには、走行台30L1,30L2が、それぞれ設置される。ここで、各走行台30は、それぞれ独立して走行可能である。つまり、走行台30に支持される移動式操作ロボット20は、それぞれ独立して移動可能である。なお、以下では、走行台30を含めて移動式操作ロボット20と呼ぶ場合がある。
【0027】
塗装ロボット10は、ワーク500を塗装するロボットであり、たとえば、6軸の多関節ロボットである。塗装ロボット10は、塗装ブース200の壁面や天井面に固定される。具体的には、塗装ロボット10は、塗装ブース200を囲うように配設された支柱や梁などに固定され、たとえば、固定箇所の内側に上壁や側壁といった壁面が取り付けられる。なお、塗装ロボット10は、内部に不燃性ガスなどの気体を導入して内圧を高めることで、外部からの気体の流入を抑えることができる。
【0028】
ここで、塗装ロボット10は、
図1および
図2に示したように、一対の塗装ロボット10R1,10R2の第1軸(
図4のA11参照)が、同一直線上にあるようにそれぞれ設置される。
【0029】
また、一対の塗装ロボット10R1,10R2は、かかる第1軸まわりに回転する第1アーム(
図4の11参照)がお互いに離れる向きに延伸するようにそれぞれ設置される。なお、
図2に示した一対の塗装ロボット10L1,10L2についても同様である。
【0030】
このように、塗装ロボット10を設置することで、ロボットの高密度配置が可能となる。そして、ロボットを高密度配置することで、塗装ブース200のフットプリント(上面視における面積)を抑制することができる。ここで、塗装ブース200のランニングコストは、空調などの塗装環境維持のためのコストが大きく、かかるフットプリントに比例する。したがって、ロボットの高密度配置によってかかるランニングコストの抑制が可能となる。
【0031】
さらに、塗装ロボット10は、
図1に示したように、一対の塗装ロボット10R1,10R2の中間位置における対称面P1について、それぞれの「アーム構成」が対称である。ここで、「アーム構成」とは、各アームを旋回または回転させる各軸の配置を指す。そして、各軸の配置には、隣り合う各軸のなす角、隣り合う各軸の軸間距離が含まれる。
【0032】
すなわち、「アーム構成」が対称という場合、アームの外形や、形状の差異は問わない。つまり、アームの外形や、形状が異なっていても、各軸の配置が対称であれば、アーム構成は対称であるという。同様に、アームの外形や、形状が異なっていても、各軸の配置が同一であれば、アーム構成は同一であるという。
【0033】
このように、アーム構成が対称のロボットを用いることで、教示データを反転させて利用することが可能となるので、教示データの生成コストを抑制することができ、ロボットの製造コストを抑制することができる。なお、
図2に示した一対の塗装ロボット10L1,10L2についても同様である。
【0034】
また、塗装ロボット10は、
図2に示したように、対称面P2について対称な位置に一対ずつ設置される。そして、対称面P2について対向する塗装ロボット10R1,10L1、塗装ロボット10R2,10L2は、対称面P2についてそれぞれ対称なアーム構成を有する。
【0035】
ここで、上記したように、一対の塗装ロボット10R1,10R2、塗装ロボット10L1,10L2は、対称面P1について対称なアーム構成をそれぞれ有しているので、
図2における斜向かいの位置にある塗装ロボット10同士は、同一のアーム構成である。つまり、塗装ロボット10R1および塗装ロボット10L2と、塗装ロボット10R2および塗装ロボット10L1とは、同一のアーム構成である。
【0036】
このように、塗装ロボット10を配置することで、上記した教示データの共通化や利用、簡単な修正による再利用を行いつつ、対称面P2について対称なワーク500を効率良く塗装することができる。たとえば、塗装ロボット10R1の教示データにおけるY軸の向きを反転させることで、塗装ロボット10L1の教示データとして用いることができる。なお、塗装ロボット10R2および塗装ロボット10L2についても同様である。
【0037】
移動式操作ロボット20は、ワーク500における開閉部材を操作するロボットである。具体的には、移動式操作ロボット20は、水平方向に伸縮する2軸のアームと、昇降軸とを備えた3軸の多関節ロボットであり、ワーク500における側面のドアを開閉する。また、移動式操作ロボット20は、上記した走行台30に支持されるので、ガイド31に沿って移動自在、すなわち、搬送装置210の搬送向きに沿って移動自在である。
【0038】
ここで、
図1に示すように、移動式操作ロボット20は、塗装ロボット10よりも低い位置に設置される。このように、塗装ロボット10よりも低い位置に移動式操作ロボット20を設置することで、塗装ロボット10と移動式操作ロボット20とを干渉させにくくすることができる。なお、
図1に示したように、移動式操作ロボット20の到達可能高さよりも高い位置に塗装ロボット10を設置することが好ましい。
【0039】
なお、仮に、移動式操作ロボット20よりも構造が複雑で重量のある塗装ロボット10を移動式にしようとすると、走行台30やガイド31を、より耐荷重が大きく複雑なものとする必要がある。しかしながら、実施形態のように、比較的軽量な移動式操作ロボット20を走行台30で移動させることで、走行台30やガイド31の簡略化が可能となり、塗装システム1のコストを抑制することができる。なお、移動式操作ロボット20および走行台30は、内部に不燃性ガスなどの気体を導入して内圧を高めることで、外部からの気体の流入を抑えることができる。
【0040】
固定式操作ロボット40は、ワーク500における前後の開閉部材を操作するロボットであり、たとえば、水平リンクを有する6軸の多関節ロボットである。また、固定式操作ロボット40は、第1軸が鉛直軸(Z軸)まわりに第1アーム(
図6の41参照)が旋回するように、塗装ブース200の壁面や天井面に固定される。そして、固定式操作ロボット40は、たとえば、ボンネット(
図3の520)やテールゲート(
図3の530)といったワーク500の前後における開閉部材を開閉する。
【0041】
具体的には、
図1および
図2に示したように、搬送向きの上流側に位置する固定式操作ロボット40aが、ワーク500のテールゲート(
図3の530)を開閉し、下流側に位置する固定式操作ロボット40bが、ワーク500のボンネット(
図3の520)を開閉する。また、
図1および
図2に示したように、固定式操作ロボット40a,40bは、搬送向きについて、塗装ロボット10R1,10R2を挟む位置にそれぞれ設置される。
【0042】
また、固定式操作ロボット40a,40bは、搬送向きについて、ガイド31R,31Lの延伸範囲と少なくとも一部が重なるように設置される。このように、固定式操作ロボット40a,40bを配置することで、塗装ブース200の全長を短く抑えることができる。
【0043】
固定式操作ロボット40aは、閉まった状態のテールゲート(
図3の530)を係止し、各アームの姿勢を変更することでテールゲートを開ける。そして、搬送されるワーク500に追従するようにアームの姿勢を変更させながらテールゲートを開けたまま保持する。そして、テールゲートを開けることによって開放される部位の塗装が完了すると、テールゲートを閉める。なお、固定式操作ロボット40bも同様の手順でボンネット(
図3の520)を開閉する。
【0044】
ここで、固定式操作ロボット40は、移動式操作ロボット20よりも高い位置に設置される。なお、
図1では、固定式操作ロボット40と、塗装ロボット10とが同等の高さに設置される場合を例示しているが、両ロボットを異なる高さにそれぞれ設置することとしてもよい。
【0045】
また、
図1および
図2に示した場合では、X軸に沿った向きについて、搬送装置210の右側に固定式操作ロボット40aを、左側に固定式操作ロボット40bをそれぞれ配置した。このように配置することで、塗装ブース200の左右方向の強度バランスをとりやすくなる。
【0046】
なお、搬送装置210の左側に固定式操作ロボット40aを、右側に固定式操作ロボット40bをそれぞれ配置することにしてもよい。また、2台の固定式操作ロボット40を双方とも右側に配置してもよく、双方とも左側に配置してもよい。さらに、固定式操作ロボット40aおよび固定式操作ロボット40bのうちいずれか一方を省略することとしてもよい。
【0047】
なお、
図2に示した場合では、Y軸に沿った向きについて、塗装ロボット10よりも搬送装置210から遠い位置に移動式操作ロボット20を配置したが、移動式操作ロボット20を塗装ロボット10よりも近い位置に配置することとしてもよい。また、搬送装置210からの距離が同等の位置に両ロボットを配置することとしてもよい。
【0048】
次に、ワーク500の具体例について
図3を用いて説明する。
図3は、ワーク500の説明図である。なお、
図3は、ワーク500の上面図であり、側面の開閉部材を開けた状態を示している。
【0049】
図3に示すように、ワーク500は、いわゆる4ドアの車両であり、内装部材やエンジンなどが未装着の状態である。ワーク500は、搬送装置210の可動部分に固定された状態で搬送される。また、ワーク500は、前方から後方に向けてAピラー501、Bピラー502およびCピラー503を備える。
示している。
【0050】
ここで、Bピラー502は、側面のドアを閉めた状態ではワーク500の室内側に位置するため、ドアを閉めた状態では塗装しにくい位置にあるといえる。このため、塗装システム1は、前ドアおよび後ドアを開けた状態でBピラー502の塗装を行う。
【0051】
ワーク500は、開閉部材として、右側の側面に、右前ドア510RFと、右後ドア510RRとを備え、左側の側面に、左前ドア510LFと、左後ドア510LRとを備える。これらのドア510は、横向きに開閉する。なお、このように、ワーク500の左右側面に設けられる開閉部材を側面開閉部材と呼ぶ。なお、以下の説明では、「側面」を「サイド」と呼ぶ場合もある。
【0052】
また、ワーク500は、開閉部材として、前方にボンネット等の前方開閉部材520と、後方にテールゲートやトランクといった後方開閉部材530とを備える。前方開閉部材520および後方開閉部材530は、上下向きに開閉する。
【0053】
このように、ワーク500の前後に設けられる開閉部材をまとめて「前後開閉部材」と呼ぶこととする。なお、以下の説明では、「前方」を「フロント」、「後方」を「リア」または「テール」と呼ぶ場合もある。
【0054】
塗装システム1は、
図3に示したワーク500のいわゆる内板塗装を行う。塗装システム1は、すなわち、上記した開閉部材を開けた状態で開放される部位、たとえば、上記したBピラー502、ワーク500における側面のパネルであるサイドパネル、各ドア510の内側といった箇所の塗装を行う。なお、具体的な塗装手順については
図10を用いて後述する。
【0055】
次に、塗装ロボット10の構成について
図4を用いて説明する。
図4は、塗装ロボット10を示す斜視図である。ここで、
図4に示す塗装ロボット10のアーム構成は、
図1に示した塗装ロボット10R2に相当する。なお、
図1に示した塗装ロボット10R1は、
図4に示した塗装ロボット10とアーム構成が対称である。
【0056】
図4に示すように、塗装ロボット10は、第1軸A11、第2軸A12、第3軸A13、第4軸A14、第5軸A15および第6軸A16の6つの回転軸を有する6軸のロボットである。
【0057】
なお、塗装ロボット10は、各軸に対応する関節部を有しており、各関節部を駆動する動力源であるアクチュエータ(図示せず)によって各アームを旋回または回転させることで姿勢を変更する。また、
図4に示した6軸のロボットは、塗装ロボット10の一例であり、軸数が6軸以外のロボットを用いることとしてもよい。
【0058】
塗装ロボット10は、基端側から先端側へ向けて、ベース部10B、第1アーム11、第2アーム12、第3アーム13、第4アーム14、第5アーム15および第6アーム16を備える。
【0059】
ベース部10Bは、塗装ブース200(
図1参照)などの他の部材へ固定される。ここで、
図4に示すように、ベース部10Bは直方体状の形状をしており、6つの面のうち第1アーム11が設けられる面以外の5つの面のいずれかを、上記した他の部材の取付面へ固定することが可能である。すなわち、かかるベース部10Bによれば塗装ロボット10を自在に配置することができる。
【0060】
第1アーム11は、ベース部10Bに基端側が支持され、
図4に示すX軸に沿った向きの第1軸A11まわりに回転する。第2アーム12は、第1アーム11の先端側に基端側が支持され、第1軸A11と垂直な第2軸A12まわりに旋回する。第3アーム13は、第2アーム12の先端側に基端側が支持され、第2軸A12と平行な第3軸A13まわりに旋回する。
【0061】
第4アーム14は、第3アーム13の先端側に基端側が支持され、第3軸A13と垂直な第4軸A14まわりに回転する。第5アーム15は、第4アーム14の先端側に基端側が支持され、第4軸A14に所定角度傾いて交差する第5軸A15まわりに回転する。第6アーム16は、第5アーム15の先端側に基端側が支持され、第5軸A15に所定角度傾いて交差する第6軸A16まわりに回転する。
【0062】
なお、塗装ロボット10の先端のアームである第6アーム16には、塗装ガンなどのエンドエフェクタ10E(
図4に破線で示す)を着脱可能である。また、塗装ロボット10は、エンドエフェクタ10Eに接続するケーブルやチューブなどを通す内部空間を有しており、かかるケーブル等を、外部に露出することなくエンドエフェクタ10Eに接続することができる。
【0063】
なお、
図1に示した固定式操作ロボット40a,40bとして、
図4に示したロボットまたはアーム構成が対称のロボットを用いることができる。この場合、エンドエフェクタとしては、
図3に示した前方開閉部材520や後方開閉部材530を係止する鈎状のエンドエフェクタ(図示せず)を用いることができる。なお、詳細については、
図12を用いて後述する。
【0064】
次に、移動式操作ロボット20の構成について
図5を用いて説明する。
図5は、移動式操作ロボット20を示す斜視図である。
図5に示すように、移動式操作ロボット20は、走行台30に支持されており、ガイド31に沿って同図のX軸正方向およびX軸負方向に移動自在である。なお、
図5に示す移動式操作ロボット20の設置向きは、
図1に示した移動式操作ロボット20R1に相当する。
【0065】
図5に示すように、移動式操作ロボット20は、第1軸A21および第2軸A22という2つの回転軸と、第3軸A23という1つの昇降軸とを有する3軸のロボットである。移動式操作ロボット20は、基端側から先端側へ向けて、ベース部20B、第1アーム21、第2アーム22および第3アーム23を備える。
【0066】
ベース部20Bは、走行台30に固定される。第1アーム21は、鉛直向きの第1軸A21まわりに旋回可能にベース部20Bに基端側が支持される。第2アーム22は、第1軸A21と平行な第2軸A22まわりに旋回可能に第1アーム21の先端側に基端側が支持される。
【0067】
ここで、第2アーム22は、水平に延伸する水平延伸部22aと、水平延伸部22aの先端側から鉛直上方に延伸する鉛直延伸部22bとを備える。なお、鉛直延伸部22bには、第3アーム23を昇降させる昇降機構が内蔵される。
【0068】
第3アーム23は、第2アーム22の鉛直延伸部22bの上面から先端部が突出するように第2アーム22に支持され、第3軸A23に沿って昇降する。なお、移動式操作ロボット20の先端のアームである第3アーム23には、ワーク500(
図3参照)の開閉部材を係止するエンドエフェクタ20Eを着脱可能である。
【0069】
図5に示したように、エンドエフェクタ20Eの形状は、たとえば、水平向きに延伸するリンクの先端が下方に屈曲したものとすることができる。ここで、上面視において、エンドエフェクタ20Eの水平に延伸する向きと、第2アーム22の水平に延伸する向きとのなす角は、任意の角度で固定することができる。なお、第3アーム23を第3軸A23まわりに回転自在とし、移動式操作ロボット20を4軸のロボットとしてもよい。
【0070】
ここで、移動式操作ロボット20の動作について説明する。ワーク500のドア510(
図3参照)を開く場合、移動式操作ロボット20は、第3アーム23を上昇させた状態でドア510のウィンドウガラスが格納される空間の上方へエンドエフェクタ20Eの先端を移動させる。
【0071】
そして、移動式操作ロボット20は、第3アーム23を下降させることでドア510を係止する。つづいて、第1アーム21および第2アーム22を折りたたむことで、ドア510を開ける。そして、移動式操作ロボット20は、ドア510を開いた状態で係止したまま、搬送されるワーク500(
図3参照)に追従するようにガイド31上を移動する。
【0072】
つづいて、塗装ロボット10(
図4参照)による該当箇所の塗装が完了すると、移動式操作ロボット20は、第1アーム21および第2アーム22のなす角度を大きくすることで、ドア510を閉め、第3アーム23を上昇させることでドア510の係止を解除する。そして、移動式操作ロボット20は、ワーク500の搬送向きとは反対方向にガイド31上を移動し、所定のホームポジションに戻る。
【0073】
なお、
図5では、1つの走行台30が、1つの移動式操作ロボット20を支持する場合を示したが、1つの走行台30で、2つの移動式操作ロボット20を支持することとしてもよい。つまり、一対のガイド31それぞれに走行台30をそれぞれ1つずつ設置し、各走行台30が2つの移動式操作ロボット20をそれぞれ支持することとしてもよい。
【0074】
次に、固定式操作ロボット40の構成について
図6を用いて説明する。
図6は、固定式操作ロボット40を示す斜視図である。ここで、
図6に示す固定式操作ロボット40の設置向きは、
図1に示した固定式操作ロボット40bに相当する。なお、
図1に示した固定式操作ロボット40aのアーム構成は、固定式操作ロボット40bと同様である。
【0075】
図6に示すように、固定式操作ロボット40は、第1軸A41、第2軸A42、第3軸A43、第4軸A44、第5軸A45および第6軸A46の6つの回転軸を有する6軸のロボットである。なお、後述するように、第4軸A44および第5軸A45はベルトまたは平行リンク機構などの閉リンク機構によって連動するので5自由度のロボットと呼ぶこともできる。
【0076】
なお、固定式操作ロボット40は、各軸に対応する関節部を有しており、各関節部を駆動する動力源であるアクチュエータ(図示せず)によって各アームを旋回または回転させることで姿勢を変更する。また、
図6に示した6軸のロボットは、固定式操作ロボット40の一例であり、軸数が6軸以外のロボットを用いることとしてもよい。
【0077】
固定式操作ロボット40は、基端側から先端側へ向けて、ベース部40B、第1アーム41、第2アーム42、第3アーム43、第4アーム44および第5アーム45を備える。また、固定式操作ロボット40は、第5アーム45に着脱可能な先端治具40Eを備える。ベース部40Bは、塗装ブース200(
図1参照)などの他の部材へ固定される。
【0078】
第1アーム41は、ベース部40Bに基端側が支持され、
図6に示すZ軸に沿った向き(鉛直向き)の第1軸A41まわりに旋回する。このように、第1アーム41は、鉛直軸まわりに旋回するので、塗装ロボット10(
図4参照)や、塗装ブース200(
図1参照)と干渉しにくい。したがって、塗装システム1(
図1参照)自体の設置スベースを削減することができる。
【0079】
第2アーム42は、第1アーム41の先端側に基端側が支持され、第1軸A41と平行な第2軸A42まわりに旋回する。このように、第2アーム42を、さらに鉛直軸まわりに旋回させることで、搬送されるワーク500(
図1参照)に追従しやすい。
【0080】
ここで、第2アーム42のアーム長は、第1アーム41のアーム長よりも短い。なお、アーム長とは、各アームの延伸向きにおける長さのことを指す。このように、第2アーム42のアーム長を、第1アーム41のアーム長よりも短くすることで、たとえば、固定式操作ロボット40が退避姿勢をとった場合に、第1アーム41および第2アーム42の接続部分が塗装ブース200(
図1参照)の側壁と干渉しにくい。
【0081】
第3アーム43は、第2アーム42の先端側に基端側が支持され、第2軸A42と平行な第3軸A43まわりに回転するとともに、第3軸A43に沿って下方へ延伸する。このように、第3アーム43を、第2アーム42から下方に延伸させることで、塗装ブース200(
図1参照)の高さを抑えることができる。
【0082】
なお、ベース部40B、第1アーム41、第2アーム42および第3アーム43は、内部に不燃性ガスなどの気体を導入して内圧を高めた内圧室を有する。逆に、第4アーム44以降は、後述するように内圧を高める必要がないので、内圧室を省略することができ、構造を簡略化することができる。
【0083】
第4アーム44は、第3アーム43の先端側に基端側が支持され、第3軸A43と垂直な第4軸A44まわりに旋回する。第5アーム45は、第4アーム44の先端側に基端側が支持され、第4軸A44と平行な第5軸A45まわりに旋回する。先端治具40E(第6アームに相当)は、第5アーム45に基端側が着脱可能に支持され、水平向きの第6軸A46まわりに旋回する。そして、先端治具40Eは、塗装ブース200(
図1参照)内を所定の搬送向きに搬送されるワーク500(
図1参照)における前または後の開閉部材を操作する。
【0084】
ここで、第5アーム45は、第4アーム44が第3アーム43に対して旋回した場合であっても、第3アーム43に対する相対姿勢を維持する。すなわち、第4アーム44が第4軸A44まわりに「θ度」旋回すると、第5アーム45が第5軸A45まわりに「−θ度」旋回する。
【0085】
このように、第4アーム44の姿勢に関わらず、第5アーム45の向きは変化しないので、ワーク500(
図1参照)との干渉を回避しつつ、開閉部材の開閉を円滑に行うことができる。
【0086】
先端治具40Eは、第5アーム45に基端側が支持され、第5軸A45と垂直な第6軸A46まわりに旋回する。先端治具40Eの基端側は、水平向きに延伸し、さらに、下方へ屈曲して延伸する形状を有している。そして、先端治具40Eの先端側には、たとえば、鈎状の係止部が設けられる。かかる係止部は、操作対象を係止する。
【0087】
つまり、
図6に示すように、先端治具40Eは、第6軸A46と係止部における水平向きの中央部とが水平向きにオフセット量61だけオフセットしている。
【0088】
このように、第6軸A46と係止部とをオフセットさせることで、後述するように、操作対象を係止したか否か、すなわち、操作対象の係止に成功したか否かを容易に判定することが可能となる。なお、先端治具40Eの基端側を、下方へ延伸し、さらに、水平向きに屈曲して延伸する形状としてもよい。また、オフセット量61を0としてもよい。
【0089】
また、
図6に示したように、第6軸A46が第5軸A45と垂直な場合、オフセットの向きは、第4軸A44や第5軸A45に沿った向きとなる。なお、
図6では、第6軸A46よりも係止部がY軸負方向へオフセットした場合を示したが、Y軸正方向へオフセットすることとしてもよい。また、先端治具40Eの取付向きをZ軸周りに90度回転させ、第6軸A46を第5軸A45と平行にすることもできる。この場合、オフセットの向きは、第6軸A46と垂直な水平向きとなる。
【0090】
このように、先端治具40Eを第5アーム45に対して旋回可能とすることで、操作対象との相対角度を微調整しやすく、操作対象の係止や、係止解除を効率よく行うことができる。また、第6軸A46の向きを変更可能とすることで、操作対象に対する固定式操作ロボット40の姿勢の自由度が高まる。
【0091】
また、先端治具40Eを旋回させる動力源からの出力に基づき、先端治具40Eが係止部で操作対象の係止に成功したか否かを判定することができる。たとえば、係止動作の後に先端治具40Eを上方へ移動させる際、先端治具40Eの姿勢を保持するトルクが所定値よりも大きい場合に、操作対象の係止に成功したと判定することができる。なお、上記したように、先端治具40Eの係止部を第6軸A46からオフセットさせた形状とすることで、検出感度を高めることができ、係止判定の精度を向上させることができる。
【0092】
また、第4アーム44および先端治具40Eをそれぞれ旋回させる動力源であるアクチュエータ(図示せず)は、第3アーム43の内部に配置される。そして、第4アーム44を旋回させる動力源からの駆動力は、第4アーム44に内蔵されるベルトおよびプーリによって伝達され、第4アーム44の旋回に連動するように第5アーム45が旋回する。
【0093】
また、先端治具40Eを旋回させる動力源からの駆動力は、第4アーム44および第5アーム45に内蔵されるベルトおよびプーリによって伝達され、先端治具40Eを旋回させる。
【0094】
このように、第4アーム44、第5アーム45および先端治具40Eは、駆動源を有していないので、内圧を高める仕組みが不要となる。したがって、第4アーム44、第5アーム45および先端治具40Eの構成を簡略化することができる。なお、ベルトおよびプーリの伝達機構に代えてギアやシャフト等の伝達機構を用いることとしてもよい。
【0095】
なお、
図6では、第4アーム44および第5アーム45が機構的に連動する固定式操作ロボット40を示したが、第4アーム44と第5アーム45とが独立して動作するように固定式操作ロボット40を構成することとしてもよい。この場合、第4アーム44と第5アーム45とが上記した連動動作を行うように制御することとしてもよい。
【0096】
次に、
図1に示した上流側の固定式操作ロボット40aの動作例を
図7A〜
図7Eを用いて説明する。
図7A〜
図7Eは、上流側の固定式操作ロボット40aの姿勢その1〜その5を示す図である。なお、
図7A〜
図7Dでは、先端治具40Eを、
図2に示した対称面P2に沿って移動させる場合を示しているが、対称面P2と平行な任意の面上を移動させることとしてもよい。また、
図7A〜
図7Dでは、
図6に示した第6軸A46が対象面P2と垂直に維持されるものとする。
【0097】
図7Aに示したのは、閉まった状態の後方開閉部材530へアクセスする固定式操作ロボット40aの姿勢である。
図7Aに示すように、固定式操作ロボット40aは、第1アーム41および第2アーム42を旋回させて上流側から後方開閉部材530へアクセスする。
【0098】
ここで、第4アーム44は、第3軸A43よりも上流側で、第4軸A44が対称面P2と垂直な姿勢をとる。このようにすることで、第4アーム44を後方開閉部材530から遠ざけることができるので、第4アーム44と、後方開閉部材530との干渉を防止することができる。なお、
図7Aに示した第4アーム44は、先端側を斜め下方へ下げた姿勢をとっている。
【0099】
図7Bに示したのは、後方開閉部材530を開けた状態における固定式操作ロボット40aの姿勢である。
図7Bに示すように、固定式操作ロボット40aは、第4アーム44を、先端側が
図7Aよりも上昇する向きに旋回させるとともに、先端治具40Eを対称面P2上に維持するように第1アーム41および第2アーム42を旋回させる。
【0100】
さらに、これらの動作と連動させて第3アーム43を回転軸A43まわりに回転させることで、第4軸A44を対称面P2と平行に維持する。なお、
図6を用いて既に説明したように、第4アーム44を旋回させても、第3アーム43と、第5アーム45との相対姿勢は維持される。
【0101】
図7Cに示したのは、後方開閉部材530を開けた状態で、搬送されるワーク500に追従する固定式操作ロボット40aの姿勢の一例である。
図7Cに示すように、固定式操作ロボット40aは、先端治具40Eが対称面P2上を下流側へ移動するように各回転軸を連動させる。なお、先端治具40Eの高さは、
図7Bにおける高さを維持する。
【0102】
図7Dに示したのは、後方開閉部材530を再び閉めた状態における固定式操作ロボット40aの姿勢である。
図7Dに示すように、固定式操作ロボット40aは、第4アーム44を先端側が
図7Cよりも下降する向きに旋回させるとともに、先端治具40Eを対称面P2上に維持するように第1アーム41および第2アーム42を旋回させる。さらに、これらの動作と連動させて第3アーム43を回転軸A43まわりに回転させることで、第4軸A44を対称面P2と平行に維持する。
【0103】
図7Eに示したのは、ホームポジションにおける固定式操作ロボット40aの姿勢の一例である。
図7Eに示すように、固定式操作ロボット40aは、第4アーム44の先端側を対称面P2とは反対側の下方へ旋回させるとともに、第1アーム41および第2アーム42を折り畳んだ姿勢をとることで、対称面P2との距離を確保する。
【0104】
これにより、ワーク500との干渉を防止することができる。なお、
図7Eの姿勢は、
図7Aに示した姿勢の前段階、
図7Dに示した姿勢の後段階でとることができる。このように、固定式操作ロボット40aが、搬送向きの上流側からワーク500にアクセスすることで、後方開閉部材530を開く動作、開いた状態を維持する動作および閉める動作を円滑に行うことができる。
【0105】
次に、
図1に示した下流側の固定式操作ロボット40bの動作例を
図8A〜
図8Eを用いて説明する。
図8A〜
図8Eは、下流側の固定式操作ロボット40bの姿勢その1〜その5を示す図である。なお、
図8A〜
図8Dでは、先端治具40Eを、
図2に示した対称面P2に沿って移動させる場合を示しているが、対称面P2と平行な任意の面上を移動させることとしてもよい。また、
図8A〜
図8Dでは、
図6に示した第6軸A46は、対象面P2と垂直に維持されるものとする。
【0106】
図8Aに示したのは、閉まった状態の前方開閉部材520へアクセスする固定式操作ロボット40bの姿勢である。
図8Aに示すように、固定式操作ロボット40bは、第1アーム41および第2アーム42を旋回させて下流側から前方開閉部材520へアクセスする。
【0107】
ここで、第4アーム44は、第3軸A43よりもベース部40Bから遠い位置で、第4軸A44が対称面P2と垂直な姿勢をとる。このようにすることで、ワーク500と固定式操作ロボット40bとの干渉を防止することができる。なお、
図8Aに示した第4アーム44は、先端側を斜め下方へ下げた姿勢をとっている。
【0108】
図8Bに示したのは、前方開閉部材520を開けた状態における固定式操作ロボット40bの姿勢である。
図8Bに示すように、固定式操作ロボット40bは、第4アーム44を、先端側が
図8Aよりも上昇する向きに旋回させるとともに、先端治具40Eを対称面P2上に維持するように第1アーム41および第2アーム42を旋回させる。
【0109】
さらに、これらの動作と連動させて第3アーム43を回転軸A43まわりに回転させることで、第4軸A44を対称面P2と垂直に維持する。なお、
図6を用いて既に説明したように、第4アーム44を旋回させても、第3アーム43と、第5アーム45との相対姿勢は維持される。
【0110】
図8Cに示したのは、前方開閉部材520を開けた状態で、搬送されるワーク500に追従する固定式操作ロボット40bの姿勢の一例である。
図8Cに示すように、固定式操作ロボット40bは、先端治具40Eが対称面P2上を下流側へ移動するように各回転軸を連動させる。なお、先端治具40Eの高さは、
図8Bにおける高さを維持する。
【0111】
図8Dに示したのは、前方開閉部材520を再び閉めた状態における固定式操作ロボット40bの姿勢である。
図8Dに示すように、固定式操作ロボット40bは、第4アーム44を、先端側が
図8Cよりも下降する向きに旋回させるとともに、先端治具40Eを対称面P2上に維持するように第1アーム41および第2アーム42を旋回させる。さらに、これらの動作と連動させて第3アーム43を回転軸A43まわりに回転させることで、第4軸A44を対称面P2と垂直に維持する。
【0112】
図8Eに示したのは、ホームポジションにおける固定式操作ロボット40bの姿勢の一例である。
図8Eに示すように、固定式操作ロボット40bは、第4アーム44の先端側を対称面P2とは反対側の下方へ旋回させるとともに、第1アーム41および第2アーム42を折り畳んだ姿勢をとることで、対称面P2との距離を確保する。
【0113】
これにより、ワーク500との干渉を防止することができる。なお、
図8Eの姿勢は、
図8Aに示した姿勢の前段階、
図8Dに示した姿勢の後段階でとることができる。このように、固定式操作ロボット40bが、搬送向きの下流側からワーク500にアクセスすることで、前方開閉部材520を開く動作、開いた状態を維持する動作および閉める動作を円滑に行うことができる。
【0114】
次に、実施形態に係る塗装システム1の構成について
図9を用いて説明する。
図9は、塗装システム1の構成を示すブロック図である。
図9に示すように、塗装システム1は、塗装ブース200内に、搬送装置210と、塗装ロボット10と、移動式操作ロボット20と、固定式操作ロボット40とを備える。なお、上記したように、移動式操作ロボット20を省略することとしてもよい。
【0115】
また、塗装システム1は、ロボット制御装置100を備える。なお、搬送装置210、塗装ロボット10、移動式操作ロボット20および固定式操作ロボット40は、ロボット制御装置100に接続されている。
【0116】
また、塗装システム1は、上位装置300を備える。上位装置300は、搬送装置210およびロボット制御装置100の動作に関する全体制御を行う。また、上位装置300は、ワーク500(
図3参照)の種別を示す車種情報などの情報をロボット制御装置100へ通知する。なお、上位装置300は、後述するロボット制御装置100と同様にコンピュータや各種の回路を含んだ装置である。ここで、かかる上位装置300を省略し、上記した車種情報を搬送装置210や、ネットワーク接続された端末装置などの装置から受け取ることとしてもよい。
【0117】
搬送装置210は、既に説明したように、ワーク500を所定の搬送向きに搬送するコンベアなどの装置である。なお、搬送装置210は、ワーク500の位置を検出するセンサなどの検出装置(図示せず)を有しており、ワーク500が通過したタイミングなどをロボット制御装置100へ通知する。また、搬送装置210は一定速度でワーク500を搬送するものとする。
【0118】
塗装ロボット10は、ワーク500の塗装を行うロボットである。
図1および
図2に示した場合では、塗装ロボット10は、塗装ブース200内に4台設置される。なお、塗装ロボット10の構成については
図4を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。
【0119】
移動式操作ロボット20は、ワーク500の開閉部材のうち側面開閉部材であるドア510(
図3参照)を操作するロボットである。
図1および
図2に示した場合では、移動式操作ロボット20は、塗装ブース200内に4台設置される。なお、
図9では、走行台30(
図1参照)を移動式操作ロボット20に含めて記載している。また、移動式操作ロボット20の構成については
図5を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。
【0120】
固定式操作ロボット40は、ワーク500の開閉部材のうち前方開閉部材520や後方開閉部材530(
図3参照)といった前後開閉部材を操作するロボットである。
図1および
図2に示した場合では、固定式操作ロボット40は、塗装ブース200内に2台設置される。なお、固定式操作ロボット40の構成は
図6を用いて既に説明したので、ここでの説明を省略する。
【0121】
ロボット制御装置100は、制御部110と、記憶部120とを備える。制御部110は、タイミング取得部111と、動作制御部112とを備える。記憶部120は、教示情報121を記憶する。なお、
図9には、説明を簡略化するために、1台のロボット制御装置100を示したが、塗装ロボット10や、移動式操作ロボット20にそれぞれ対応するロボット制御装置を用いることとしてもよい。この場合、各制御装置を束ねる上位のロボット制御装置を設けることとしてもよい。
【0122】
ここで、ロボット制御装置100は、たとえば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0123】
コンピュータのCPUは、たとえば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部110のタイミング取得部111および動作制御部112として機能する。
【0124】
また、タイミング取得部111および動作制御部112の少なくともいずれか一つまたは全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0125】
また、記憶部120は、たとえば、RAMやHDDに対応する。RAMやHDDは、教示情報121を記憶することができる。なお、ロボット制御装置100は、有線や無線のネットワークで接続された他のコンピュータや可搬型記録媒体を介して上記したプログラムや各種情報を取得することとしてもよい。さらに、上記したように、ロボット制御装置100を複数台の相互に通信可能な装置として構成してもよく、上位または下位の装置と通信可能な階層式の装置として構成してもよい。
【0126】
制御部110は、搬送装置210から、ワーク500(
図3参照)を搬送装置210の可動部分に固定する台座などの治具の位置情報(パルス信号)や、各装置を排他的に動作させるためのインターロック信号を取得しつつ、各ロボットの動作制御を行う。なお、ロボット制御装置100が複数台で構成される場合には、制御部110は、ロボット制御装置100間の同期をとる処理を併せて行う。
【0127】
タイミング取得部111は、上記した位置情報やインターロック信号を搬送装置210から取得する。そして、タイミング取得部111は、取得した位置情報やインターロック信号に応じて各ロボットの動作タイミングを決定し、決定した動作タイミングを動作制御部112へ通知する。たとえば、タイミング取得部111は、ワーク500(
図3参照)が塗装ブース200内の所定位置に達したタイミングを取得し、取得したタイミングに基づいて各ロボットを動作させるよう動作制御部112へ指示する。
【0128】
動作制御部112は、タイミング取得部111からの指示および教示情報121に基づいて各ロボットを動作させる。動作制御部112は、各ロボットの動力源であるアクチュエータ(図示せず)におけるエンコーダ値を用いつつフィードバック制御を行うなどして各ロボットの動作精度を向上させる。また、動作制御部112は、上位装置300からワーク500(
図3参照)の種別を示す車種情報を受け取った場合には、かかる種別に対応して各ロボットを動作させる。
【0129】
また、動作制御部112は、固定式操作ロボット40の先端治具40E(
図6参照)がワーク500の前後における開閉部材の係止に成功したか否かの判定、すなわち、係止状態の判定を行う判定部を備える。具体的には、判定部は、先端治具40Eを旋回させるアクチュエータなどの動力源の出力トルクが所定値よりも大きい場合に、開閉部材の係止に成功したと判定する。なお、出力トルクは、トルクセンサで検出することとしてもよいし、動力源のトルク指令値や電流値から換算した値に基づいて検出することとしてもよい。
【0130】
教示情報121は、各ロボットへ動作を教示するティーチング段階で作成され、各ロボットの動作経路を規定するプログラムである「ジョブ」を含んだ情報である。なお、塗装システム1では、上記したように、アーム構成が対称なロボットを用いたり、搬送装置210(
図2参照)について左右対称な位置に各ロボットを配置したりしているので、各ロボット用の教示データを反転させて利用することが可能となる。したがって、塗装システム1によれば、かかる教示データを含んだ教示情報121の生成の手間とコストとを抑制することができる。
【0131】
次に、塗装システム1の動作手順について
図10を用いて説明する。
図10は、塗装システム1の動作手順を示すシーケンス図である。なお、同図に示す「ホーム」は「ホームポジション」の略であり、各ロボットの待機姿勢や待機位置をあらわす。また、同図の縦軸は、時間(T)をあらわしており、縦軸の向きに時間が経過するものとする。
【0132】
なお、以下では、
図2に示した各ロボット、
図3に示したワーク500を用いつつ説明を行うこととする。また、以下では、まず、ワーク500のテールゲート(
図3の530)および後ドア(
図3の510RRおよび510LR)の開閉を伴うワーク500の後半分の塗装手順について説明する。つづいて、ボンネット(
図3の520)および前ドア(
図3の510RFおよび510LF)の開閉を伴うワーク500の前半分の塗装手順について説明する。
【0133】
まず、後半分の塗装手順について説明する。
図10に示すように、移動式操作ロボット20R1,20L1は、ホームポジションで待機し(ステップS201)、タイミングt1で、ワーク500の後ドアをそれぞれ開く(ステップS202)。なお、タイミングt1では、固定式操作ロボット40aはホームポジションで待機しており(ステップS101)、塗装ロボット10R1,10L1もホームポジションで待機している(ステップS301)。
【0134】
固定式操作ロボット40aは、タイミングt2で、ワーク500のテールゲートを開き(ステップS102)、搬送されるワーク500に追従してアームの姿勢を変更しつつテールゲートを開いたまま保持する(ステップS103)。なお、ステップS102の処理手順において動作制御部112(
図9参照)の判定部が、ワーク500におけるテールゲートの係止に成功したか否かを判定することとしてもよい。また、係止に失敗したと判定した場合に、係止動作を所定回数繰り返すこととしてもよい。一方、移動式操作ロボット20R1,20L1は、後ドアを開いて保持した状態で、搬送されるワーク500に追従して搬送向きへ移動する(ステップS203)。
【0135】
塗装ロボット10R1,10L1は、後ドアが開かれることによって開放されたサイドパネルを塗布する(ステップS302)。つづいて、塗装ロボット10R1,10L1は、開かれた状態のテールゲートの内側を塗布する(ステップS303)。つづいて、塗装ロボット10R1,10L1は、開かれた状態の後ドアの内側を塗布し(ステップS304)、ステップS304の塗布が完了すると、ホームポジションに戻る(ステップS305)。
【0136】
固定式操作ロボット40aは、塗装ロボット10R1,10L1によるテールゲートの塗布が完了したタイミング以降のタイミングt4で、ワーク500のテールゲートを閉じ(ステップS104)、ステップS104の処理が完了すると、ホームポジションに戻る(ステップS105)。
【0137】
一方、移動式操作ロボット20R1,20L1は、塗装ロボット10R1,10L1による後ドアの内側の塗布が完了したタイミング以降のタイミングt6で、ワーク500の後ドアをそれぞれ閉じ(ステップS204)、ステップS204の処理が完了すると、ワーク500の搬送向きとは反対方向に移動してホームポジションに戻る(ステップS205)。
【0138】
なお、上記したように、ワーク500の後ドアは、タイミングt1で開かれ、タイミングt6で閉じられる。一方、ワーク500のテールゲートは、タイミングt1よりも遅いタイミングt2で開かれ、タイミングt6よりも早いタイミングt4で閉じられる。すなわち、テールゲートおよび後ドアは開かれている期間が重複している。
【0139】
このように、前後開閉部材を開いている期間と、側面開閉部材を開いている期間とを重複させることで、塗装処理を短時間で行うことができる。なお、
図10では、ワーク500の後ドアよりも先にテールゲートを閉める場合を示したが、後ドアよりも後にテールゲートを閉めるように塗装を行ってもよい。
【0140】
次に、前半分の塗装手順について説明する。
図10に示すように、固定式操作ロボット40bは、ホームポジションで待機し(ステップS601)、タイミングt3で、ワーク500のボンネットを開き(ステップS602)、搬送されるワーク500に追従してアームの姿勢を変更しつつボンネットを開いたまま保持する(ステップS603)。なお、ステップS602の処理手順において動作制御部112(
図9参照)の判定部が、ワーク500におけるボンネットの係止に成功したか否かを判定することとしてもよい。また、係止に失敗したと判定した場合に、係止動作を所定回数繰り返すこととしてもよい。
【0141】
なお、タイミングt3では、移動式操作ロボット20R2,20L2はホームポジションで待機しており(ステップS501)、塗装ロボット10R2,10L2もホームポジションで待機している(ステップS401)。
【0142】
一方、移動式操作ロボット20R2,20L2は、タイミングt4で、ワーク500の前ドアをそれぞれ開き(ステップS502)、前ドアを開いて保持した状態で、搬送されるワーク500に追従して搬送向きへ移動する(ステップS503)。なお、
図10では、移動式操作ロボット20R2,20L2がワーク500の前ドアをそれぞれ開くタイミングと、固定式操作ロボット40aがワーク500のテールゲートを閉じるタイミングとがともにタイミングt4となっているが、両タイミングを揃える必要はない。
【0143】
塗装ロボット10R2,10L2は、開かれた状態のボンネットの内側を塗布する(ステップS402)。つづいて、塗装ロボット10R2,10L2は、後ドアおよび前ドアが開かれることによって開放されたBピラー(
図3の502)を塗布する(ステップS403)。つづいて、塗装ロボット10R2,10L2は、前ドアが開かれることによって開放されたサイドパネルの前部分を塗布する(ステップS404)。
【0144】
つづいて、塗装ロボット10R2,10L2は、開かれた状態の前ドアの内側を塗布する(ステップS405)。そして、塗装ロボット10R2,10L2は、サイドパネルの後部分を塗布し(ステップS406)、ステップS406の処理が完了すると、ホームポジションに戻る(ステップS407)。
【0145】
固定式操作ロボット40bは、塗装ロボット10R2,10L2によるボンネットの塗布が完了したタイミング以降のタイミングt5で、ワーク500のボンネットを閉じ(ステップS604)、ステップS604の処理が完了すると、ホームポジションに戻る(ステップS605)。
【0146】
一方、移動式操作ロボット20R2,20L2は、塗装ロボット10R2,10L2によるサイドパネルの後部分の塗布が完了したタイミング以降のタイミングt7で、ワーク500の前ドアをそれぞれ閉じる(ステップS504)。そして、移動式操作ロボット20R2,20L2は、ステップS504の処理が完了すると、ワーク500の搬送向きとは反対方向に移動してホームポジションに戻る(ステップS505)。
【0147】
なお、上記したように、ワーク500の後ドアは、タイミングt1で開かれ、タイミングt6で閉じられる。一方、ワーク500の前ドアは、タイミングt1よりも遅いタイミングt4で開かれ、タイミングt6よりも遅いタイミングタイミングt7で閉じられる。すなわち、前ドアおよび後ドアは開かれている期間が重複している。
【0148】
このように、前ドアが開かれている期間と、後ドアが開かれている期間とを重複させることで、両ドアを開けた状態での塗装が好ましい箇所(たとえば、
図3のBピラー502)の塗装を良好に行うことができる。また、両期間を重複させることで、塗装処理を短時間で行うことができる。
【0149】
なお、上記したように、ワーク500の前ドアは、タイミングt4で開かれ、タイミングt7で閉じられる。一方、ワーク500のボンネットは、タイミングt4よりも早いタイミングt3で開かれ、タイミングt7よりも早いタイミングt5で閉じられる。すなわち、ボンネットおよび前ドアは開かれている期間が重複している。
【0150】
このように、前後開閉部材を開いている期間と、側面開閉部材を開いている期間とを重複させることで、塗装処理を短時間で行うことができる。なお、
図10では、ワーク500の前ドアよりも先にボンネットを閉める場合を示したが、前ドアよりも後にボンネットを閉めるように塗装を行ってもよい。
【0151】
上述してきたように、実施形態に係る塗装システム1は、複数の塗装ロボット10と、固定式操作ロボット40とを備える。塗装ロボット10は、塗装ブース200内に固定され、所定の搬送向きに搬送される車両(ワーク500)を塗装する。固定式操作ロボット40は、搬送向きについて複数の塗装ロボット10の上流側または下流側で塗装ブース200内に固定され、車両(ワーク500)における前または後の開閉部材を操作する。また、固定式操作ロボット40は、鉛直軸まわりに旋回する第1アーム41を備える。
【0152】
このように、実施形態に係る塗装システム1によれば、塗装ロボット10と、固定式操作ロボット40とが干渉しづらいので、各ロボットを密集して配置することができる。したがって、塗装システム1全体としての設置スペースを削減することができる。
【0153】
なお、実施形態に係る塗装システム1では、移動式操作ロボット20を搬送装置210の右側と左側とに2台ずつ設ける場合について説明したが、各側に1台ずつ設けることとしてもよい。この場合、いわゆる4ドアの車両では、移動式操作ロボット20は、後ドアを閉めた後に、前ドアを開ける動作を行うことになる。また、いわゆる2ドアの車両の場合には、各側に1台ずつの移動式操作ロボット20で足りる。
【0154】
次に、第1の変形例に係る塗装システム1aについて
図11を用いて説明する。
図11は、第1の変形例に係る塗装システム1aの上面模式図である。なお、
図11は、
図2に示した塗装システム1から移動式操作ロボット20、走行台30およびガイド31を省略した図に相当する。また、
図11では、
図2と共通する構成については、同一の符号を付すとともに、詳細な説明を省略する。
【0155】
図11に示すように、ワーク500の側面におけるドアは、治具等を用いて開いた状態で固定される。このような場合、
図2に示した移動式操作ロボット20は不要である。つまり、ワーク500の側面におけるドアの開閉が不要である場合には、塗装システム1aにおけるロボットを、塗装ロボット10および固定式操作ロボット40に限ることができる。
【0156】
なお、
図11では、塗装ロボット10が4台である場合を示したが、2台以上の任意の台数としてもよい。また、
図11では、塗装ロボット10群の上流側および下流側にそれぞれ1台ずつの固定式操作ロボット40を示したが、いずれか一方を省略することとしてもよい。
【0157】
次に、第2の変形例に係る塗装システム1bについて
図12を用いて説明する。
図12は、第2の変形例に係る塗装システム1bの上面模式図である。なお、
図12は、
図11に示した塗装システム1aの固定式操作ロボット40を、
図6に示したロボットから
図4に示したロボットへ変更した図に相当する。
【0158】
図12に示すように、固定式操作ロボット40は、
図4に示した塗装ロボット10と同様のアーム構成を有するロボットである。ここで、固定式操作ロボット40は、鉛直向きの回転軸A49を有する回転台49上に設置される。回転台49は、塗装ブース200(
図1参照)の床面などに固定される。なお、以下では、回転台49を含めて固定式操作ロボット40と呼ぶこととする。
【0159】
このように、固定式操作ロボット40に回転軸A49を追加することで、
図4に示した第1アーム11を鉛直軸である回転軸A49まわりに旋回させることができる。したがって、ホームポジション等の退避姿勢をとりやすくなるので、ワーク500や塗装ロボット10との干渉を起こりにくくすることができる。
【0160】
なお、
図12に示した固定式操作ロボット40a,40bについて、回転軸A49を第1軸と呼ぶ場合、
図4に示した第1軸A11〜第6軸A16は、それぞれ、第2軸〜第7軸に相当することになる。
【0161】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施例に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。