特許第6677201号(P6677201)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677201
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】車両の衝撃吸収部材
(51)【国際特許分類】
   B60R 19/18 20060101AFI20200330BHJP
   B60R 19/03 20060101ALI20200330BHJP
   B62D 21/15 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   B60R19/18 N
   B60R19/03 Z
   B60R19/18 Q
   B62D21/15 A
【請求項の数】7
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-57474(P2017-57474)
(22)【出願日】2017年3月23日
(65)【公開番号】特開2018-158671(P2018-158671A)
(43)【公開日】2018年10月11日
【審査請求日】2019年5月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000110321
【氏名又は名称】トヨタ車体株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三浦 寿久
【審査官】 畔津 圭介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−322861(JP,A)
【文献】 米国特許第4671550(US,A)
【文献】 米国特許第6062632(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 19/00
B62D 17/00−25/08
B62D 25/14−29/04
F16F 1/00−15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
木材の変形を利用して車両の衝突荷重を吸収する車両の衝撃吸収部材であって、
車両ボディの端縁で梁状に設けられており、外側面が前記衝突荷重を受ける荷重入力面となり、年輪の軸心が前記荷重入力面に沿って延びる上下一対の支持用木材と、
年輪の軸心が前記上下一対の支持用木材の荷重入力面に対して直角方向に延びるようにそれらの支持用木材間に挟まれて、前記支持用木材の長手方向における一端側から他端側まで配置されており、前記衝突荷重を受ける荷重入力面が前記支持用木材の荷重入力面と同一面上、あるいは、前記支持用木材の荷重入力面よりも内側に位置している衝撃吸収用木材と、
を有する車両の衝撃吸収部材。
【請求項2】
請求項1に記載された車両の衝撃吸収部材であって、
複数本の角柱状の衝撃吸収用木材が横並びの状態で前記上下一対の支持用木材間に挟まれている車両の衝撃吸収部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2のいずれかに記載された車両の衝撃吸収部材であって、
前記衝撃吸収用木材における荷重入力面は、前記上下一対の支持用木材における荷重入力面よりも所定寸法だけ内側に位置している車両の衝撃吸収部材。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれかに記載された車両の衝撃吸収部材であって、
前記衝撃吸収用木材は、前記支持用木材の長手方向における両側から前記支持用木材と年輪の方向が等しい一対の押さえ用木材によって挟まれて拘束されている車両の衝撃吸収部材。
【請求項5】
請求項4に記載された車両の衝撃吸収部材であって、
前記一対の押さえ用木材は、前記衝撃吸収用木材における荷重入力面に連続する凹面を備えている車両の衝撃吸収部材。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された車両の衝撃吸収部材であって、
前記衝撃吸収用木材と前記上下一対の支持用木材とは、車幅方向に延びる車両のバンパーリインフォースに沿って取付け可能に構成されている車両の衝撃吸収部材。
【請求項7】
請求項1から請求項5のいずれかに記載された車両の衝撃吸収部材であって、
前記衝撃吸収用木材と前記上下一対の支持用木材とは、車両前後方向に延びる車両のロッカーに沿って取付け可能に構成されている車両の衝撃吸収部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、木材の潰れを利用して車両の衝突荷重を吸収する車両の衝撃吸収部材に関する。
【背景技術】
【0002】
上記した車両の衝撃吸収部材に関する技術が特許文献1に記載されている。特許文献1に記載の衝撃吸収部材100は、図12に示すように、角柱状の木材102と、木材102を収納する外筒104とを備えている。木材102は、年輪の軸心方向が外筒104の軸方向と一致するようにその外筒104に収納されている。そして、車両衝突時の衝突荷重Fが木材102と外筒104とに対して軸方向から加わることで、木材102及び外筒104が共に軸方向に潰れ、車両衝突時の衝撃が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−182560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した衝撃吸収部材100は、角柱状の木材102等の軸方向における一端で衝突荷重Fを受ける構成である。即ち、衝突荷重Fが入力する荷重入力面の面積が小さい。このため、例えば、車両が電柱に衝突する場合等のように、衝突部位が具体的に特定できない場所に使用すると、性能を発揮できない場合がある。
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、衝突荷重を受ける荷重入力面を従来よりも大きくして、広い範囲で衝突荷重を吸収できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題は、各請求項の発明によって解決される。請求項1の発明は、木材の変形を利用して車両の衝突荷重を吸収する車両の衝撃吸収部材であって、車両ボディの端縁で梁状に設けられており、外側面が前記衝突荷重を受ける荷重入力面となり、年輪の軸心が前記荷重入力面に沿って延びる上下一対の支持用木材と、年輪の軸心が前記上下一対の支持用木材の荷重入力面に対して直角方向に延びるようにそれらの支持用木材間に挟まれて、前記支持用木材の長手方向における一端側から他端側まで配置されており、前記衝突荷重を受ける荷重入力面が前記支持用木材の荷重入力面と同一面上、あるいは、前記支持用木材の荷重入力面よりも内側に位置している衝撃吸収用木材とを有する。
【0007】
本発明によると、上下一対の支持用木材は、車両ボディの端縁で梁状に設けられており、外側面が衝突荷重を受ける荷重入力面となる。また、衝撃吸収用木材は、上下一対の支持用木材間に挟まれて、前記支持用木材の長手方向における一端側から他端側まで配置されている。そして、衝撃吸収用木材の荷重入力面は、前記支持用木材の荷重入力面と同一面上、あるいは、前記支持用木材の荷重入力面よりも内側に位置している。このように、衝突荷重を受ける荷重入力面が広い範囲に設けられているため、広い範囲で前記衝突荷重を受けられるようになる。したがって、例えば、車両が電柱に衝突する場合等のように、衝突部位が具体的に特定できない場所でも、確実に衝突荷重を吸収できる。また、衝撃吸収用木材の年輪の軸心は、前記支持用木材の荷重入力面に対して直角方向、即ち、想定される衝突荷重の方向に延びているため、前記衝撃吸収用木材が潰れることで、比較的大きな衝突荷重を吸収できるようになる。さらに、衝撃吸収用木材は、年輪の軸心が荷重入力面に沿って延びる一対の支持用木材によって上下から挟まれて拘束されている。このため、上下一対の支持用木材により衝撃吸収用木材を大きな強度で拘束できるようになる。
【0008】
請求項2の発明によると、複数本の角柱状の衝撃吸収用木材が横並びの状態で前記上下一対の支持用木材間に挟まれている。このため、短い角柱状の木材を有効利用できる。
【0009】
請求項3の発明によると、衝撃吸収用木材における荷重入力面は、上下一対の支持用木材における荷重入力面よりも所定寸法だけ内側に位置している。このため、衝突荷重は最初に上下一対の支持用木材の荷重入力面に入力されて前記一対の支持用木材が潰れた後、衝撃吸収用木材の荷重入力面に入力される。そして、衝突荷重が衝撃吸収用木材の荷重入力面に入力された後は、衝撃吸収用木材と一対の支持用木材とが共に潰れるようになる。このため、衝突荷重が加わる初期では、木材(支持用木材)が潰れる際の荷重は比較的小さく、その後、木材(衝撃吸収用木材+支持用木材)が潰れる荷重が大きくなる。
【0010】
請求項4の発明によると、衝撃吸収用木材は、支持用木材の長手方向における両側から前記支持用木材と年輪の方向が等しい一対の押さえ用木材によって挟まれて拘束されている。このため、衝撃吸収用木材が衝突荷重を受けて年輪の軸方向に潰れる際、年輪の径方向に変形し難くなる。
【0011】
請求項5の発明によると、一対の押さえ用木材は、衝撃吸収用木材における荷重入力面に連続する凹面を備えている。
【0012】
請求項6の発明によると、衝撃吸収用木材と上下一対の支持用木材とは、車幅方向に延びる車両のバンパーリインフォースに沿って取付け可能に構成されている。このため、衝撃吸収部材により車両前後方向における衝突荷重を吸収できるようになる。
【0013】
請求項7の発明によると、衝撃吸収用木材と上下一対の支持用木材とは、車両前後方向に延びる車両のロッカーに沿って取付け可能に構成されている。これため、衝撃吸収部材により車両側面方向からの衝突荷重を吸収できるようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、衝突荷重を受ける荷重入力面が従来よりも大きくなり、広い範囲の衝突荷重を吸収できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態1に係る衝撃吸収部材を備える車両前部の模式平面図である。
図2】本実施形態に係る衝撃吸収部材が取付けられたバンパーリインフォースの縦断面図(図1のII-II矢視断面図)である。
図3】本実施形態に係る衝撃吸収部材を表す模式斜視図である。
図4】前記衝撃吸収部材を表す部分正面図(図3のIV-IV矢視図)である。
図5】衝撃吸収部材に加わる荷重と変形量(ストローク)との関係を表すグラフである。
図6】変更例1に係る衝撃吸収部材を表す模式斜視図である。
図7】変更例1に係る衝撃吸収部材を部分正面図(図6のVII-VII矢視図)である。
図8】変更例2に係る衝撃吸収部材を表す模式斜視図である。
図9】変更例2に係る衝撃吸収部材を表す模式斜視図である。
図10】変更例2に係る衝撃吸収部材に対して局部的に衝突荷重が加わる様子を表す模式斜視図である。
図11】衝突荷重により衝撃吸収部材が変形した様子を表す模式斜視図である。
図12】従来の衝撃吸収部材を表す模式斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態1]
以下、図1から図11に基づいて本発明の実施形態1に係る衝撃吸収部材について説明する。本実施形態に係る衝撃吸収部材20は、車両前方衝突時に車両10に加わる衝突荷重Fを軽減するための部材である。ここで、図中に示す前後左右、及び上下は、衝撃吸収部材20が取付けられている車両10の前後左右、及び上下に対応している。
【0017】
<車両10の前部構造の概要について>
車両10の前部には、図1図2に示すように、左右両側位置に車両前後方向に延びる筒状の骨格部材であるサイドメンバ12が設けられている。そして、左右のサイドメンバ12の前端フランジ部12f(図2参照)に車幅方向に延びるフロントバンパ14が連結されている。フロントバンパ14は、サイドメンバ12に連結されるバンパーリインフォース15と、前記バンパーリインフォース15と緩衝材とを覆うバンパーカバー(図示省略)とから構成されている。そして、フロントバンパ14のバンパーリインフォース15に梁状の衝撃吸収部材20が取付けられている。即ち、バンパーリインフォース15が本発明の車両ボディの端縁に相当する。
【0018】
バンパーリインフォース15は、図2に示すように、上板部15uと縦板部15wと下板部15dとにより前側が開放された角形溝状に形成されている。そして、バンパーリインフォース15の角形溝内に衝撃吸収部材20が収納されている。また、バンパーリインフォース15の上板部15uと下板部15dとには、衝撃吸収部材20をバンパーリインフォース15に取付けるためのボルト30が通されるボルト孔15hが形成されている。
【0019】
<衝撃吸収部材20について>
衝撃吸収部材20は、車両の前方衝突時の衝突荷重Fを吸収する部材であり、図2図4に示すように、上下一対の支持用木材22と、上下一対の支持用木材22に挟まれて拘束される多数本の衝撃吸収用木材21とから構成されている。上下一対の支持用木材22は、図3に示すように、一定幅の梁状に形成された厚板であり、年輪22eの軸心が長手方向(車幅方向(左右方向))に延びるように構成されている。そして、上下一対の支持用木材22の幅方向における前端面が衝突荷重Fを受ける荷重入力面22fとなっている。ここで、前記支持用木材22としては、杉、あるいは檜のような針葉樹が好適に使用される。
【0020】
衝撃吸収部材20の衝撃吸収用木材21は、主に衝突荷重Fを吸収する木材である。衝撃吸収用木材21は、図3図4に示すように、前記支持用木材22の幅寸法よりも寸法Lだけ小さい長さ寸法に設定された角柱状に形成されている。そして、角柱状の衝撃吸収用木材21の軸心が支持用木材22の荷重入力面22fに対して直角方向、即ち、車両前後方向に延びるように配置されている。また、衝撃吸収用木材21の年輪21eの軸心は衝撃吸収用木材21の軸心に沿って車両前後方向に延びるように構成されている。
【0021】
上下一対の支持用木材22の間には、図3図4に示すように、多数本の衝撃吸収用木材21が隙間なく左右方向に一列に並べられた状態で配置されている。そして、多数本の衝撃吸収用木材21の後端面が、図3に示すように、上下一対の支持用木材22の幅方向における後端面に面一となるように位置合わせされている。また、多数本の衝撃吸収用木材21の前端面は、上下一対の支持用木材22の荷重入力面22f(前端面)から寸法Lだけ内側に入り込んだ位置に位置決めされている。そして、多数本の衝撃吸収用木材21の前端面が衝突荷重Fを受ける荷重入力面21fとなっている。ここで、衝撃吸収用木材21としては、支持用木材22と同様に杉、あるいは檜のような針葉樹が好適に使用される。
【0022】
上下一対の支持用木材22と多数本の衝撃吸収用木材21とには、図2に示すように、バンパーリインフォース15の上板部15uと下板部15dとのボルト孔15hに対応する位置に、前記ボルト30が通されるボルト孔21h,22hが形成されている。ここで、図3図4には、衝撃吸収用木材21と支持用木材22とのボルト孔21h,22hは省略されている。
【0023】
<衝撃吸収部材20の取付けについて>
衝撃吸収部材20をバンパーリインフォース15に取付ける場合には、先ず、図3図4に示すように、多数本の衝撃吸収用木材21を相互に接着し、さらに衝撃吸収用木材21の集合体を上下一対の支持用木材22と接着する。この状態で、バンパーリインフォース15の上板部15uと下板部15dとのボルト孔15hに対応する位置にボルト孔21h,22hを形成する。次に、図2に示すように、バンパーリインフォース15の上板部15uと下板部15dとの間に衝撃吸収部材20を収納する。このとき、バンパーリインフォース15(上板部15u、下板部15d)のボルト孔15hと、衝撃吸収用木材21及び支持用木材22のボルト孔21h,22hとを位置合わせする。この状態で、前記ボルト孔15h,21h,22hにボルト30を通し、ボルト30にナット35を螺合させて締付けることで、衝撃吸収部材20をバンパーリインフォース15に取付けることができる。
【0024】
ここで、衝撃吸収用木材21の集合体を上下一対の支持用木材22に接着する例を示したが、衝撃吸収用木材21の集合体と支持用木材22との接着を省略することも可能である。また、接着により衝撃吸収用木材21の集合体を形成する代わりに、嵌め合わせ構造を利用して衝撃吸収用木材21の集合体を形成することも可能である。さらに、衝撃吸収用木材21の本数が少ない場合には、接着、あるいは嵌め合わせ工程を省略して、ボルト30とナット35との締付け力のみで衝撃吸収用木材21を固定することも可能である。
【0025】
<衝撃吸収部材20の動作について>
次に、図5に基づいて、衝撃吸収部材20の動作について説明する。ここで、図5における横軸は、衝突荷重Fが加わったときの衝撃吸収部材20の潰れ量(ストロ−ク)を表しており、縦軸は、衝撃吸収部材20が潰れる際の荷重を表している。
【0026】
車両10が、例えば、電柱等に対して前方から衝突すると、衝突荷重Fは、先ず、衝撃吸収部材20の上下一対の支持用木材22の荷重入力面22fに入力する。ここで、支持用木材22の年輪22eの軸心は荷重入力面22fに沿って延びているため、支持用木材22が潰れ始める際の限界荷重F0は比較的小さい。衝突荷重Fが入力された初期段階では、図5に示すように、衝突荷重Fが上下一対の支持用木材22の限界荷重F0を超えた状態で、それらの支持用木材22が幅方向(車両前後方向)に潰れるようになる。
【0027】
そして、上下一対の支持用木材22が寸法Lだけ潰れると、衝突荷重Fは衝撃吸収用木材21の荷重入力面21fに入力する。ここで、衝撃吸収用木材21の年輪21eの軸心は車両前後方向に延びているため、衝撃吸収用木材21が潰れ始める際の限界荷重Fxは支持用木材22が潰れ始める際の限界荷重F0よりも格段に大きくなる。そして、衝突荷重Fが衝撃吸収用木材21の限界荷重Fxを超えた状態で、衝撃吸収用木材21が支持用木材22と共に幅方向(車両前後方向)に潰れるようになる。即ち、衝撃吸収用木材21と支持用木材22とが潰れることで、衝突荷重Fが吸収される。
【0028】
ここで、上下一対の支持用木材22が潰れ始める際の限界荷重F0は、支持用木材22の厚み寸法T2(図4参照)を増減させることで調整可能である。また、衝撃吸収用木材21が潰れ始める際の限界荷重Fxは、同じく衝撃吸収用木材21の厚み寸法T1を増減させることで調整可能である。
【0029】
<本実施形態に係る衝撃吸収部材20の長所について>
本実施形態に係る衝撃吸収部材20によると、上下一対の支持用木材22は、バンパーリインフォース15の位置(車両ボディの端縁)で梁状に設けられており、前端面(外側面)が衝突荷重Fを受ける荷重入力面22fとなる。また、衝撃吸収用木材21は、上下一対の支持用木材22間に挟まれて、支持用木材22の長手方向における一端側から他端側まで配置されている。そして、衝撃吸収用木材21の荷重入力面21fは、前記支持用木材22の外側面(荷重入力面22f)よりも内側に位置している。このように、衝突荷重Fを受ける荷重入力面21f,22fが広い範囲に設けられているため、広い範囲で衝突荷重Fを受けられるようになる。したがって、例えば、車両10が電柱に衝突する場合等のように、衝突部位が具体的に特定できない場所でも、確実に衝突荷重Fを吸収できる。
【0030】
また、衝撃吸収用木材21の年輪21eの軸心は、支持用木材22の荷重入力面22fに対して直角方向、即ち、想定される衝突荷重Fの方向に延びるため、衝撃吸収用木材21が潰れることで、比較的大きな衝突荷重Fを吸収できるようになる。さらに、衝撃吸収用木材21は、年輪22eの軸心が荷重入力面22fに沿って延びる一対の支持用木材22によって上下から挟まれて拘束されている。このため、衝撃吸収用木材21が上下一対の支持用木材22により大きな強度で拘束されるようになる。また、衝撃吸収部材20は木材により形成されているため、例えば、軽金属により等しい荷重吸収性能を有する衝撃吸収部材を製造する場合よりも軽量化を図ることができる。
【0031】
<変更例1>
ここで、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更が可能である。例えば、本実施形態では、多数本の衝撃吸収用木材21を上下一対の支持用木材22で挟んで拘束する例を示した。しかし、図6図7に示すように、上下一対の支持用木材22に加えて、左右一対の押さえ用木材23によって多数本の衝撃吸収用木材21を左右方向から挟んで拘束することも可能である。即ち、左右一対の押さえ用木材23は、上下一対の支持用木材22と同様に年輪23eの軸心が荷重入力面23fに沿うように設けられている。また、左右一対の押さえ用木材23の前部には、上下一対の支持用木材22の荷重入力面22fと衝撃吸収用木材21の荷重入力面21fとの位置関係に合わせて、角形溝部23mが形成されている。
【0032】
そして、前記押さえ用木材23の角形溝部23mの底面23bが衝撃吸収用木材21の荷重入力面21fと面一となるように位置合わせされている。この状態で、左右一対の押さえ用木材23は、図7等に示すように、上下一対の支持用木材22に対して木ネジ34等により固定される。即ち、押さえ用木材23の角形溝部23mの底面23bが本発明の支持用木材の凹面に相当する。このように、多数本の衝撃吸収用木材21が上下一対の支持用木材22に加え、左右一対の押さえ用木材23によって左右方向から挟んで拘束されるため、衝撃吸収用木材21が衝突荷重Fを受けて年輪21eの軸方向に潰れる際、年輪21eの径方向に変形し難くなる。
【0033】
<変更例2>
本実施形態では、多数本の衝撃吸収用木材21における衝撃荷重Fの荷重入力面21fを上下一対の支持用木材22における衝撃荷重Fの荷重入力面22fよりも寸法Lだけ内側に配置する例を示した。しかし、衝撃吸収部材20を二段階に分けて潰す必要がない場合は、図8に示すように、衝撃吸収用木材21における衝撃荷重Fの荷重入力面21fと上下一対の支持用木材22における衝撃荷重Fの荷重入力面22fとを面一に設けることも可能である。また、図9に示すように、多数本の衝撃吸収用木材21を上下一対の支持用木材22に加えて、左右一対の押さえ用木材23によって挟んで拘束することも可能である。
【0034】
ここで、図10は、変更例2に係る衝撃吸収部材20を備える車両10が電柱Hに衝突する様子を模式的に表している。また、図11は、このときに衝撃吸収部材20の衝撃吸収用木材21の荷重入力面22fと上下一対の支持用木材22の荷重入力面22fとが潰れ始める様子を模式的に表している。
【0035】
本実施形態では、衝撃吸収部材20をバンパーリインフォース15に取付ける例を示した。しかし、車両10の左右両端部で車両前後方向に延びるロッカー(サイドシル)の内部空間に前記衝撃吸収部材20を収納することも可能である。また、前記衝撃吸収部材20をロッカー(サイドシル)の下側にボルト止めすることも可能である。これにより、車両10の側面衝突荷重を前記衝撃吸収部材20により吸収することが可能となる。
【符号の説明】
【0036】
10・・・・車両
15・・・・バンパーリインフォース(車両ボディの端縁)
20・・・・衝撃吸収部材
21・・・・衝撃吸収用木材
21f・・・荷重入力面
21e・・・年輪
22・・・・支持用木材
22f・・・荷重入力面
22e・・・年輪
23・・・・押さえ用木材
23m・・・角形溝部
23b・・・底面(凹面)
23f・・・荷重入力面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12