特許第6677267号(P6677267)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6677267
(24)【登録日】2020年3月17日
(45)【発行日】2020年4月8日
(54)【発明の名称】冷凍サイクル装置
(51)【国際特許分類】
   F24F 1/12 20110101AFI20200330BHJP
   F24F 13/24 20060101ALI20200330BHJP
   F04B 39/00 20060101ALI20200330BHJP
【FI】
   F24F1/12
   F24F13/24
   F04B39/00 102G
   F04B39/00 102S
【請求項の数】6
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-70230(P2018-70230)
(22)【出願日】2018年3月30日
(65)【公開番号】特開2019-178856(P2019-178856A)
(43)【公開日】2019年10月17日
【審査請求日】2019年3月25日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】新樹グローバル・アイピー特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】久山 和志
(72)【発明者】
【氏名】岡本 哲也
(72)【発明者】
【氏名】津村 宜伸
(72)【発明者】
【氏名】陳 柯壁
(72)【発明者】
【氏名】浮舟 正倫
【審査官】 田中 一正
(56)【参考文献】
【文献】 実開平05−010843(JP,U)
【文献】 特開2010−243033(JP,A)
【文献】 特開平09−166338(JP,A)
【文献】 特開昭63−199938(JP,A)
【文献】 特開平10−205454(JP,A)
【文献】 特開2016−023900(JP,A)
【文献】 米国特許第6336794(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24F 1/12
F24F 13/24
F04B 39/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部材(20a)を有する筐体(20)と、
前記底部材上に配置された第2弾性部材(24)と、
前記底部材上に、前記第2弾性部材を介して配置された台(21)と、
前記台上に配置された第1弾性部材(23)と、
前記台上に、前記第1弾性部材を介して配置された、冷媒を圧縮する圧縮機(1)と、
前記台上に配置された、エコノマイザー熱交換器(10)、水熱交換器(11)からなる群から少なくとも1つと、
を備え、
前記圧縮機の重心の前記台上への投影位置Pと、前記位置Pと最も近い第1弾性部材の重心の前記台上へ投影位置との距離をr1としたとき、
前記台上で、前記位置Pを中心として、半径がr1の1.5倍の円を書いたときに、前記円の内部に、前記第2弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Qが入るように、前記圧縮機および前記第2弾性部材が配置されている(ただし、前記第2弾性部材が、前記圧縮機の重心に対して対称に配置されている場合を除く。)、
冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記台上で、前記位置Pを中心として、半径がr1の円を書いたときに、前記円の内部に、前記第2弾性部材の配置重心の台上への投影位置Qが入るように、前記圧縮機および前記第2弾性部材が配置されている、
請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
底部材(20a)を有する筐体(20)と、
前記底部材上に配置された第2弾性部材(24)と、
前記底部材上に、前記第2弾性部材を介して配置された台(21)と、
前記台上に配置された第1弾性部材(23)と、
前記台上に、前記第1弾性部材を介して配置された、冷媒を圧縮する圧縮機(1)と、
前記台上に配置された、エコノマイザー熱交換器(10)、水熱交換器(11)からなる群から少なくとも1つと、
を備え、
前記第1弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Sと、前記位置Sと最も近い第1弾性部材の重心の台上への投影位置との距離をr2としたとき、
前記台上で、前記位置Sを中心として、半径がr2の1.5倍の円を書いたときに、前記円の内部に、前記第2弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Qが入るように、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が配置されている(ただし、前記第2弾性部材が、前記圧縮機の重心に対して対称に配置されている場合を除く。)、
冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記台上で、前記位置Sを中心として、半径がr2の円を書いたときに、前記円の内部に、前記第2弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Qが入るように、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が配置されている、
請求項3に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
底部材(20a)を有する筐体(20)と、
前記底部材上に配置された第2弾性部材(24)と、
前記底部材上に、前記第2弾性部材を介して配置された台(21)と、
前記台上に配置された第1弾性部材(23)と、
前記台上に、前記第1弾性部材を介して配置された、冷媒を圧縮する圧縮機(1)と、
前記台上に配置された、エコノマイザー熱交換器(10)、水熱交換器(11)からなる群から少なくとも1つと、
を備え、
前記第2弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Qと、前記位置Qから最も遠い前記第2弾性部材の重心の前記台上への投影位置との距離をr3としたとき、
前記台上で、前記位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書いたとき、前記円の内部に、前記圧縮機の重心の前記台上への投影位置Pが入るように、前記圧縮機および前記第2弾性部材が配置されている(ただし、前記第2弾性部材が、前記圧縮機の重心に対して対称に配置されている場合を除く。)、
冷凍サイクル装置。
【請求項6】
底部材(20a)を有する筐体(20)と、
前記底部材上に配置された第2弾性部材(24)と、
前記底部材上に、前記第2弾性部材を介して配置された台(21)と、
前記台上に配置された第1弾性部材(23)と、
前記台上に、前記第1弾性部材を介して配置された、冷媒を圧縮する圧縮機(1)と、
前記台上に配置された、エコノマイザー熱交換器(10)、水熱交換器(11)からなる群から少なくとも1つと、
を備え、
前記第2弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Qと、前記位置Qから最も遠い第2弾性部材の重心の前記台上への投影位置との距離をr3としたとき、
前記台上で、前記位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書いたとき、前記円の内部に、前記第1弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Sが入るように、前記第1弾性部材および前記第2弾性部材が配置されている(ただし、前記第2弾性部材が、前記圧縮機の重心に対して対称に配置されている場合を除く。)、
冷凍サイクル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
二重防振構造を備える冷凍装置
【背景技術】
【0002】
ヒートポンプ装置は、使用環境によっては、低騒音性能が求められている。低騒音性能を実現するためには、ヒートポンプの冷媒回路を構成する圧縮機の振動の機器全体への伝達を抑制する必要がある。このような目的のために、特許文献1(特開2005−241197号公報)は、二重防振構造を開示している。特許文献1においては、機体内に第2の防振材を介して支持部材を配置し、さらに、圧縮機を第1の防振材を介して支持部材に取り付けている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の図1図4などを見ると、第2の防振材は、支持部材の四隅に配置され、圧縮機は、支持部材の端に配置されている。このように、圧縮機を、支持部材の振動の中心から離れた位置に配置すると、台が振動したときに、圧縮機に大きな遠心力が作用し、配管に大きな負荷がかかるなどの課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
第1観点の冷凍サイクル装置は、筐体と、第2弾性部材と、台と、第1弾性部材と、圧縮機と、を備えている。筐体は、底部材を有している。第2弾性部材は、底部材上に配置されている。台は、底部材上に、第2弾性部材を介して、配置されている。第1弾性部材は、台上に配置されている。圧縮機は冷媒を圧縮する。圧縮機は、台上に、第1弾性部材を介して配置されている。圧縮機の重心の台上への投影位置を位置Pとする。距離r1を、位置Pと、前記位置Pと最も近い第1弾性部材の重心の台上へ投影位置との距離と定義する。台上で、位置Pを中心として、半径がr1の1.5倍の円を書く。円の内部に、第2弾性部材の配置重心の台上への投影位置Qが入るように、圧縮機および前記第2弾性部材が配置されている。
【0005】
第1観点の冷凍サイクル装置は、圧縮機が、第2弾性部材の配置重心の近傍に配置されているため、台が振動しても、圧縮機にかかる遠心力が低く抑えられ、第1弾性部材にかかるせん断力が低く、圧縮機接続配管への応力が低い。
【0006】
第2観点の冷凍サイクル装置は、第1観点の冷凍サイクル装置において、台上で、位置Pを中心として、半径がr1の円を書いたときに、円の内部に、第2弾性部材の配置重心の台上への投影位置Qが入るように、圧縮機および第2弾性部材が配置されている。
【0007】
第2観点の冷凍サイクル装置は、圧縮機が、第2弾性部材の配置重心のより近傍に配置されているため、台が振動しても、圧縮機にかかる遠心力がより低く抑えられ、第1弾性部材にかかるせん断力がより低く、圧縮機接続配管への応力がより低い。
【0008】
第3観点の冷凍サイクル装置は、筐体と、第2弾性部材と、台と、第1弾性部材と、圧縮機と、を備えている。筐体は、底部材を有している。第2弾性部材は、底部材上に配置されている。台は、底部材上に、第2弾性部材を介して、配置されている。第1弾性部材は、台上に配置されている。圧縮機は冷媒を圧縮する。圧縮機は、台上に、第1弾性部材を介して配置されている。第1弾性部材の配置重心の台上への投影位置を位置Sとする。距離r2を位置Sと、位置Sと最も近い第1弾性部材の重心の台上への投影位置との距離と定義する。台上で、位置Sを中心として、半径がr2の1.5倍の円を書く。円の内部に第2弾性部材の配置重心の台上への投影位置Qが入るように、第1弾性部材と第2弾性部材が配置されている。
【0009】
第3観点の冷凍サイクル装置は、上面視で、第1弾性部材の配置重心が、第2弾性部材の配置重心の近傍に配置されているため、台が振動しても、圧縮機にかかる遠心力が低く抑えられ、第1弾性部材にかかるせん断力が低く、圧縮機接続配管への応力を低くする。
【0010】
第4観点の冷凍サイクル装置は、第3観点の冷凍サイクル装置において、台上で、位置Sを中心として、半径がr2の円を書いたときに、円の内部に、第2弾性部材の配置重心の台上への投影位置Qが入るように、第1弾性部材および第2弾性部材が配置されている。
【0011】
第4観点の冷凍サイクル装置は、上面視で、第1弾性部材の配置重心が、第2弾性部材の配置重心のより近傍に配置されているため、台が振動しても、圧縮機にかかる遠心力がより低く抑えられ、第1弾性部材にかかるせん断力がより低く、圧縮機接続配管への応力をより低くする。
【0012】
第5観点の冷凍サイクル装置は、筐体と、第2弾性部材と、台と、第1弾性部材と、圧縮機と、を備えている。筐体は、底部材を有している。第2弾性部材は、底部材上に配置されている。台は、底部材上に、第2弾性部材を介して、配置されている。第1弾性部材は、台上に配置されている。圧縮機は冷媒を圧縮する。圧縮機は、台上に、第1弾性部材を介して配置されている。台上で、第2弾性部材の配置重心の位置Qと、位置Qから最も遠い第2弾性部材の重心位置との距離をr3とする。台上で、位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書く。円の内部に、圧縮機の重心の台上への投影位置Pが入るように、圧縮機および第2弾性部材が配置されている。
【0013】
第5観点の冷凍サイクル装置は、圧縮機が、第2弾性部材の配置重心の近傍に配置されているため、台が振動しても、圧縮機にかかる遠心力が低く抑えられ、第1弾性部材にかかるせん断力が低く、圧縮機接続配管への応力を低くする。
【0014】
第6観点の冷凍サイクル装置は、筐体と、第2弾性部材と、台と、第1弾性部材と、圧縮機と、を備えている。筐体は、底部材を有している。第2弾性部材は、底部材上に配置されている。台は、底部材上に、第2弾性部材を介して、配置されている。第1弾性部材は、台上に配置されている。圧縮機は冷媒を圧縮する。圧縮機は、台上に、第1弾性部材を介して配置されている。台上で、第2弾性部材の配置重心の位置Qと、位置Qから最も遠い第2弾性部材の重心位置との距離をr3とする。台上で、位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書く。円の内部に、第1弾性部材の配置重心の台上への投影位置Sが入るように、第1弾性部材および第2弾性部材が配置されている。
【0015】
第6観点の冷凍サイクル装置は、上面視で、第1弾性部材の配置重心が、第2弾性部材の配置重心の近傍に配置されているため、台が振動しても、圧縮機にかかる遠心力が低く抑えられ、第1弾性部材にかかるせん断力が低く、圧縮機接続配管への応力を低くする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態の冷凍サイクル装置の外観の斜視図。
図2】第1実施形態の冷凍サイクル装置の冷媒回路を示す図。
図3】第1実施形態の冷凍サイクル装置を前面から見た模式図。
図4】第1実施形態の冷凍サイクル装置を上面から見た図。
図5】第1実施形態の台21上の圧縮機1の配置を示す図。
図6】配置重心の計算方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
(1)冷凍サイクル装置の冷媒回路の構成
第1実施形態の冷凍サイクル装置100の外観の斜視図を図1に、冷媒回路を図2に示す。本実施形態の冷凍サイクル装置100は、ヒートポンプを用いた、水の加熱、および/または、冷却装置である。加熱または冷却された水を用いて、給湯器や、冷水器として利用できる。また、加熱または冷却された水を媒体として用いて、暖房、冷房を行う空気調和装置を構成してもよい。
【0018】
本実施形態の冷凍サイクル装置100の冷媒回路は、図2に示すように、圧縮機1、アキュムレーター2、四方切換弁3、空気熱交換器4、逆止弁9、第1膨張弁7、第2膨張弁8、エコノマイザー熱交換器10、水熱交換器11を備えている。各機器および分岐12は、配管41〜54で接続され、冷媒は各機器を循環して、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。冷凍サイクル装置100は、さらに、空気熱交換器4に空気を送るファン5、ファンを駆動するファンモーター6を備えている。
【0019】
水を加熱する場合は、次のように冷凍サイクル装置100は動作する。冷媒は、圧縮機1で圧縮され、凝縮器としての水熱交換器11に送られる。冷媒は主に、第1膨張弁7で減圧され、蒸発器として作用する空気熱交換器4で気化して、再び、圧縮機1へ送られる。水は、水入側配管61より水熱交換器11に入り、冷媒に加熱されて、水出口側配管62より、排出される。水の加熱と冷却は、四方切換弁3の切換により冷媒の流れを変更することにより、行われる。水を冷却する場合は、水熱交換器11は、冷媒の蒸発器として作用する。
【0020】
(2)冷凍サイクル装置内の各機器の配置
冷凍サイクル装置内の各機器の配置を、図3の正面図、図4の上面図を用いて説明する。なお、判りやすさのため、図3図4では、冷媒配管、制御信号線、電力供給配線などの記載は適宜、省略されている。
【0021】
筐体20は、図1、3、4に示すように、底部材20a、天部材20b、前部材20c、右側部材20d、後部材20e、左側部材20fより、構成されている。筐体20は、冷凍サイクルを構成する機器の外側を覆っている。
【0022】
筐体20内部の空間は、図3、4に示すように、仕切板25によって、概略、左側の空気熱交換器4、ファン5を配置した熱交換室と、右側の圧縮機1などの機器を配置した機械室に分けられる。
【0023】
図3に示すように、機械室には、底部材20a上に、4つの第2弾性部材24が配置され、その上に、台21が配置されている。第2弾性部材24は、図4では、台21の隅に配置されているが、大きな一片から構成されていてもよいし、2以上に分割されていてもよい。第2弾性部材24の材料は、ゴム、または、ウレタンである。
【0024】
圧縮機1は、弾性部材取付部22を含んでいる。弾性部材取付部22には、第1弾性部材23が取り付けられる。圧縮機1は、台21の上に、3つの第1弾性部材23、および、ボルト(図示せず)によって、支持されている。第1弾性部材23は、防振ゴムである。
【0025】
圧縮機1は、第1弾性部材とボルトで、台21に支持されていてもよいし、第1弾性部材のみで、台21に支持されていてもよい。
【0026】
第1弾性部材23は、圧縮機1を支持できれば、1片から構成されていてもよいし、複数であってもよい。第1弾性部材23の材料は、ゴムのほかに、ウレタンであってもよい。第1弾性部材23と第2弾性部材24の、材料およびばね定数は、異なっていても同一であってもよい。
【0027】
つまり、圧縮機1は、第1弾性部材23と、台21と、第2弾性部材24を介した、二重防振構造の上に配置されている。したがって、冷凍サイクル装置100の運転によって、圧縮機1が振動しても、その振動の伝達や、騒音の発生は、抑制されている。
【0028】
第1電装品31と、第2電装品32とは、図3図4に示すように、電装品ケーシング30に、収容され、固定されている。電装品ケーシング30は、台21に、固定されている。第1電装品31は、圧縮機を制御するインバータを構成するパワーデバイスである。第2電装品32は、第1膨張弁7、ファンモーター6、第2膨張弁8、四方切換弁3を制御する。
【0029】
図3図4に示すように、台21の上に、圧縮機1、電装品ケーシング30の他に、アキュムレーター2、エコノマイザー熱交換器10、水熱交換器11、その他の冷凍サイクル構成部品15も配置され、固定されている。また、図2の台21の枠は、冷媒回路を構成する部品のうち台21の上に配置されている部品を示している。図3図4の、その他の冷凍サイクル構成部品15は、第1膨張弁7、第2膨張弁8、逆止弁9、四方切換弁3を含んでいる。冷凍サイクル構成部品15は、配管やその他の支持部材(図示せず)によって、台21に固定されている。
【0030】
(3)防振構造における圧縮機、弾性部材の配置についての説明
(3−1)配置重心についての説明
本実施形態の圧縮機1の配置位置について説明する前に、配置重心について説明する。
【0031】
ここで、配置重心とは、台21の振動の中心(節)となる点である。言い換えると、台が振動するときに動かない点である。したがって、正確には、台21に荷重がかかった状態、つまり、台21に機器を全て載せた状態で、測定、または、計算する必要がある。しかし、設計段階では、そのような機器を載せる前に、圧縮機の位置を決定する必要がある。そこで、本開示においては、第2弾性部材の配置重心を次のように計算したものと定義する。第2弾性部材24の配置重心は、台21上で、各第2弾性部材24の重心位置の配置重心を原点とする位置ベクトルに、単位荷重に対する各第2弾性部材24のばね反力(スカラー量)を掛け、各第2弾性部材24に対応するベクトルを求め、そのベクトルの和がゼロになるように、定めた位置である。
【0032】
具体的には、配置重心は次のように計算することができる。ここでは、例として、図6に示すように、三つの第2弾性部材241、242、243が配置され、この上に、台21が配置されていたとする。台21の上面は、平面であるとする。台21上に仮に位置Qを決める。第2弾性部材241、242、243の重心の台21上への投影した位置をそれぞれ位置E、F、Gとする。最初に、位置QからQEの位置ベクトルを求め、それに、単位荷重に対する一つ目の第2弾性部材241のばね反力を掛け合わせて、その大きさとQEの方向を持つベクトルv1をかく。
【0033】
次に、二つ目の第2弾性部材242は、一つ目の第2弾性部材241とばね定数、面積、厚みが同一であるとする。そのとき、v2の大きさは、v1に距離の比QF/QEを掛けた長さになる。位置Qを基点として、QFの方向に、大きさv2のベクトルv2を書く。次に、三つ目の第2弾性部材243は、一つ目の第2弾性部材241とばね定数、面積、厚みが異なるとする。v3は、v1×(距離の比QG/QE)×(面積の比)×(ばね定数の比)×(厚みの比)を掛けた長さになる。位置Qを基点として、QGの方向に、大きさv3のベクトルv3を書く。
【0034】
このようにして作成したベクトルv1、v2、v3のベクトル和を計算する。このベクトル和が0または、ほとんど0になれば、計算を終了して、その位置Qを配置重心とする。0にならなければ、位置Qを変更して、ベクトル和が0またはほとんど0になるまで計算を続け、0になった点を配置重心とする。
【0035】
第1弾性部材の配置重心も同様に考える。ただし、いずれの場合も、配置重心の位置は、上面視で、台21上に投影した位置で考える。
【0036】
(3−2)第1実施形態における圧縮機、第1、第2弾性部材の配置位置についての説明
次に、第1実施形態において、台21上の圧縮機1の配置について、説明する。
【0037】
図5に、本実施形態における圧縮機1(弾性部材取付部22を含む)、第1弾性部材23x、23y、23z、台21、および、第2弾性部材24a、24b、24c、24dの配置を示す。ここで、位置A、B、C、Dは、それぞれ、第2弾性部材24a、24b、24c、24dの重心の台21上への上面視、投影位置を示す。位置X,Y,Zは、第1弾性部材23x、23y、23zの重心の台21上への上面視、投影位置を示す。
【0038】
第1実施形態において、第2弾性部材24の配置重心を計算する。第1実施形態においては、第2弾性部材24a、24b、24c、24dは、同じ材料から構成されており、かつ、大きさ、厚みも同じである。したがって、第2弾性部材の配置重心は、直線BD、ACの交点である、位置Qである。
【0039】
第1弾性部材23の配置重心も、第2弾性部材24の配置重心と同様に計算できる。第1実施形態の場合は、図5に示すように、第1弾性部材23x、23y、23zの重心の、上面視、台21上への投影位置X,Y,Zは、正三角形の頂点である。第1弾性部材23x、23y、23zは同じ材料、同じ面積、同じ厚みである。3つの第1弾性部材23を合わせた重心の台21上に投影した位置Sは、正三角形XYZの重心の位置Sである。
【0040】
次に、第1実施形態において、圧縮機1は、円筒形状である。圧縮機1の重心は、図5の円の中心で近似できる。したがって、圧縮機1の重心の台21上への投影位置は、位置Pである。つまり、本実施形態においては、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pと、第1弾性部材の配置重心の台21上への投影位置Sは、一致している。
【0041】
また、本実施形態において、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pと、位置Pに最も近い第1弾性部材23xの重心の台21上への投影位置Xとの距離は、PX=r1である。ここで、本実施形態においては、その他の第1弾性部材23y、23zと、圧縮機1の重心の位置Pとの距離PY=PZ=PX=r1も成立している。
【0042】
同様に、本実施形態において、第1弾性部材23の配置重心の台21上への投影位置Sと、位置Sに最も近い第1弾性部材23xの重心の台21上への投影位置Xとの距離は、SX=r2=r1=PXである。ここで、本実施形態においては、その他の第1弾性部材23y、23zと、圧縮機1の重心の位置Pとの距離SY=SZ=SX=r2も成立している。
【0043】
また、第2弾性部材24a、24b、24c、24dの重心の台21への投影位置を示す位置A、B、C、Dと、第2弾性部材の配置重心の台21上への投影位置Qとの距離のうち、もっとも長いものをr3とすると、AQ=r3である。本実施形態の場合は、AQ=BQ=CQ=DQ=r3が成り立つ。
【0044】
また、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pと、第2弾性部材24の配置重心の台21上への投影位置Qとの距離PQ=D1とする。
【0045】
本実施形態においては、圧縮機1は、第2弾性部材24の配置重心の近傍に配置する。具体的には、台21上で、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pを中心として、半径がr1の1.5倍の円を書いたときに、円の内部に、第2弾性部材24の配置重心の台21上への投影位置Qが入るように、圧縮機1および第2弾性部材24が配置されている。本実施形態では、位置Pを中心として半径がr1の円の中に、位置Qは収まっている。具体的には、PQ=D1=r1×0.38である。
【0046】
別の観点で言うと、第1弾性部材23および第2弾性部材24の配置は、次の条件を満たす。上面視において、第2弾性部材24の配置重心の台21上への投影位置Qと、第1弾性部材23の配置重心の台21上への投影位置Sとの距離SQが、r2の1.5倍以下である。本実施形態は、SQは、r2の1倍以下である。より、具体的には、SQ=D1=r2×0.38である。
【0047】
さらに、圧縮機1と第2弾性部材24の配置位置を次のように定義できる。位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書いたとき、円の内部に、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pが入る。第1実施形態では、PQ=D1=r3×0.19である。
【0048】
また、第1弾性部材23と第2弾性部材24の配置位置を次のように定義できる。位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書いたとき、円の内部に、第1弾性部材23の重心の台21上への投影位置Sが入る。第1実施形態では、SQ=D1=r3×0.19である。
【0049】
(4)特徴
(4−1)
本実施形態の冷凍サイクル装置100においては、圧縮機1は、底部材20a上に第1弾性部材23、台21、第2弾性部材24を介して、配置されている。つまり、二重防振構造が採用されることによって、圧縮機1の振動の伝達の抑制、静穏化が図られている。
【0050】
このような二重防振構造において、本実施形態では、圧縮機1の台21上での配置位置に条件を設けている。つまり、圧縮機1を、第2弾性部材24の配置重心の近傍に配置している。より、具体的には、台21上で、圧縮機1の重心の位置Pを中心として、半径がr1の1.5倍の円を書いたときに、円の内部に、第2弾性部材24の配置重心の位置Qが入るように、圧縮機1および第2弾性部材24が配置されている。ここで、r1は、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pと、位置Pと最も近い第1弾性部材23の重心の台21上へ投影位置Xとの距離である。このように配置するメリットについて、以下に詳述する。
【0051】
二重防振構造において、台21が振動するとき、圧縮機1は、台21の配置重心から、離れれば離れるほど大きな遠心力を受ける。遠心力が大きくなると、遠心力の水平方向成分であるせん断力が大きくなる。第1弾性部材23は、一般的に水平方向の剛性が小さい。そのため、せん断力が大きいと、第1弾性部材23は、大きく変形する。特に圧縮機の振動変位が大きくなることで圧縮機接続配管への応力が大きくなったり、最悪の場合は第1弾性部材が破断する恐れが生じる。また、圧縮機1は、台21の配置重心から、離れれば離れるほど、台21の振動の中心(節)となる点から遠くなるため、台21の振動変位に由来する圧縮機の振動変位も大きくなり、圧縮機接続配管への応力が大きくなる。特に輸送時には、台21に大きな横揺れが生じる恐れがあり、振動が大きいとこのような対策として、専用固定部材や、第1弾性部材23の水平方向への特別ばね剛性仕様設計を要する場合がある。
【0052】
逆に、実施形態1の構成では、圧縮機1は、台21の配置重心から近くに配置されているので、遠心力が小さくなる。第1弾性部材への水平方向のせん断力も小さくなり、圧縮機接続配管への応力も小さくできる。さらに、圧縮機1の筐体20に対する振動変位も小さくできるため、圧縮機接続配管への負荷も低減できる。輸送時の特別の振動対策も不要となる。
【0053】
また、圧縮機1が台21の配置重心から離れれば、上述したように遠心力が大きくなり、圧縮機を転覆させようという、モーメントも大きくなり、第1弾性部材23にも過荷重がかかる恐れがある。本実施形態では、これとは逆に、圧縮機1を第2弾性部材24の配置重心の近傍に配置しているため、圧縮機を転覆させようというモーメントを低減でき、第1弾性部材23の破損を防止できる。
【0054】
一方、底部材20a上には、剛性向上のためリブ等の凹凸が設けられている場合がある。第2弾性部材24は、底部材20a上に配置されているが、これらの凹凸のため、自由に配置場所を選べないことも多い。そこで、本実施形態のごとく、第2弾性部材24の配置重心の台21上への投影位置Qが、位置Pを中心とする半径r1×1.5の円の中との基準を設ければ、比較的、容易に、第2弾性部材24の配置を決定することができる。
【0055】
(4−2)
また、本実施形態の冷凍サイクル装置100は、より、好ましくは、圧縮機1、および、第2弾性部材24が次のように配置されている。すなわち、第2弾性部材24の配置重心の台21上への投影位置Qが、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pを中心とする半径r1の円の中にあるようにする。
【0056】
このように配置することによって、圧縮機1への遠心力がより小さくなり、第1弾性部材23への水平方向のせん断力もより小さくなり、圧縮機接続配管への応力もより小さくできる。さらに、圧縮機1の筐体20に対する振動変位もより小さくできるため、圧縮機接続配管への負荷もより低減できる。
【0057】
また、第2弾性部材24の配置重心に対して、その周囲を取り巻いて、転覆モーメントを打ち消すように第1弾性部材23が配置されることになり、台21の振動に対する、圧縮機1の挙動が安定する。
【0058】
(4−3)
本実施形態の冷凍サイクル装置100の別の側面は、第1弾性部材23と、第2弾性部材24を、次の条件を満たすように配置する。台21上で、第1弾性部材の配置重心の前記台上への投影位置Sを中心として、半径がr2の1.5倍の円を書く。ここで、r2は、位置Sと、位置Sと最も近い第1弾性部材の重心の台上への投影位置との距離である。この円の内部に、前記第2弾性部材の配置重心の台21上への投影位置Qが入るようにする。
【0059】
このように、第1弾性部材23および第2弾性部材24を配置することにより、(4−1)と同様に、圧縮機1にかかる遠心力を低減し、第1弾性部材23への水平方向のせん断力も低減でき、圧縮機接続配管への応力を低減できる。
【0060】
(4−4)
また、本実施形態の冷凍サイクル装置100は、より、好ましくは、第1弾性部材23、および、第2弾性部材24が次のように配置されている。すなわち、第2弾性部材24の配置重心の台21上への投影位置Qが、第1弾性部材の配置重心の台21上への投影位置Sを中心とする半径r2の円の中にあるようにする。
【0061】
このように配置することによって、圧縮機1への遠心力がより小さくなり、第1弾性部材23への水平方向のせん断力もより小さくなり、圧縮機接続配管への応力もより小さくできる。さらに、圧縮機1の筐体20に対する振動変位もより小さくできるため、圧縮機接続配管への負荷もより低減できる。
【0062】
また、第2弾性部材24の配置重心に対して、その周囲を取り巻いて、転覆モーメントを打ち消すように第1弾性部材23が配置されることになり、台21の振動に対する、圧縮機1の挙動が安定する。
【0063】
(4−5)
本実施形態の冷凍サイクル装置100の別の側面は、圧縮機1と、第2弾性部材24を、次の条件を満たすように配置する。台21上で、第2弾性部材24の配置重心の台上への投影位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書く。この円の内部に、圧縮機1の重心の台21上への投影位置Pが入るようにする。
【0064】
このように、圧縮機1および第2弾性部材24を配置することにより、(4−1)と同様に、圧縮機1にかかる遠心力を低減し、第1弾性部材23にかかるせん断力を低減し、圧縮機接続配管への応力を低減できる。
【0065】
(4−6)
本実施形態の冷凍サイクル装置100の別の側面は、第1弾性部材23と、第2弾性部材24を、次の条件を満たすように配置する。台21上で、第2弾性部材の配置重心の台上への投影位置Qを中心として、半径がr3の0.2倍の円を書く。この円の内部に、第1弾性部材23の配置重心の台21上への投影位置Sが入るようにする。
【0066】
このように、第1弾性部材23および第2弾性部材24を配置することにより、(4−1)と同様に、圧縮機1にかかる遠心力を低減し、第1弾性部材23にかかるせん断力を低減し、圧縮機接続配管への応力を低減できる。
【0067】
以上、本開示の実施形態を説明したが、特許請求の範囲に記載された本開示の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。
【符号の説明】
【0068】
1 圧縮機
2 アキュムレーター
3 四方切換弁
4 空気熱交換器
5 ファン
6 モーター
7 第1膨張弁
8 第2膨張弁
9 逆止弁
10 エコノマイザー熱交換器
11 水熱交換器
20 筐体
20a 底部材
21 台
23 第1弾性部材
24 第2弾性部材
30 電装品ケーシング
100 冷凍サイクル装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2005−241197号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6